(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
環状フレームの開口内に配置された被加工物の裏面に貼着されるとともに外周縁が該環状フレームに貼着されたエキスパンドシートをエキスパンドするエキスパンド方法であって、
該環状フレームを保持する保持面を有した保持手段で該環状フレームを保持する環状フレーム保持ステップと、
該環状フレームが保持された状態で被加工物の外周と該環状フレームの内周との間の該エキスパンドシートを該保持面と直交する方向に押圧手段で押圧して該エキスパンドシートをエキスパンドするエキスパンドステップと、
該エキスパンドステップで該エキスパンドシートをエキスパンドした状態で、保持テーブルで該エキスパンドシートを介して被加工物の裏面側全面を吸引保持する吸引保持ステップと、
該吸引保持ステップを実施した後、該押圧手段による押圧を解除する押圧解除ステップと、
を備え、
該保持テーブルの外周側には、該エキスパンドシートの収縮を防止する微小突起部が形成されているエキスパンド方法。
環状フレームの開口内に配置された被加工物の裏面に貼着されるとともに外周縁が該環状フレームに貼着されたエキスパンドシートをエキスパンドするエキスパンド装置であって、
該環状フレームを保持する保持面を有した保持手段と、
該保持手段で保持された該環状フレームの内周と被加工物の外周との間の該エキスパンドシートを該保持面と直交する方向に押圧する押圧手段と、
該エキスパンドシートを押圧する押圧位置と該押圧手段を該押圧位置から退避した退避位置とに移動させる移動手段と、
該エキスパンドシートをエキスパンドした状態で該エキスパンドシートを介して被加工物の裏面側全面を吸引保持する吸引保持面を含む保持テーブルと、を備え、
該保持テーブルの外周側には、該エキスパンドシートの収縮を防止する微小突起部が形成されているエキスパンド装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、保持テーブルで被加工物を吸引保持した状態でエキスパンドを解除すると、エキスパンドシートが波打ち、収縮することによって保持テーブルのバキュームがリークし、ウエーハを確実に吸引保持できず、チップ間に形成した間隔を維持できないという問題がある。間隔が維持できないと、後のハンドリングで隣接するチップ同士が接触して損傷するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、確実にチップ間隔を維持しうるエキスパンド方法及びエキスパンド装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、環状フレームの開口内に配置された被加工物の裏面に貼着されるとともに外周縁が該環状フレームに貼着されたエキスパンドシートをエキスパンドするエキスパンド方法であって、該環状フレームを保持する保持面を有した保持手段で該環状フレームを保持する環状フレーム保持ステップと、該環状フレームが保持された状態で被加工物の外周と該環状フレームの内周と間の該エキスパンドシートを該保持面と直交する方向に押圧手段で押圧して該エキスパンドシートをエキスパンドするエキスパンドステップと、該エキスパンドステップで該エキスパンドシートをエキスパンドした状態で、保持テーブルで該エキスパンドシートを介して被加工物
の裏面側全面を吸引保持する吸引保持ステップと、該吸引保持ステップを実施した後、該押圧手段による押圧を解除する押圧解除ステップと、を備え、該保持テーブルの外周側には、該エキスパンドシートの収縮を防止する微小突起部が形成されている。
【0007】
また、本発明は、環状フレームの開口内に配置された被加工物の裏面に貼着されるとともに外周縁が該環状フレームに貼着されたエキスパンドシートをエキスパンドするエキスパンド装置であって、該環状フレームを保持する保持面を有した保持手段と、該保持手段で保持された該環状フレームの内周と被加工物の外周との間の該エキスパンドシートを該保持面と直交する方向に押圧する押圧手段と、該エキスパンドシートを押圧する押圧位置と該押圧手段を該押圧位置から退避した退避位置とに移動させる移動手段と、該エキスパンドシートをエキスパンドした状態で該エキスパンドシートを介して被加工物
の裏面側全面を吸引保持する吸引保持面を含む保持テーブルと、を備え、該保持テーブルの外周側には、該エキスパンドシートの収縮を防止する微小突起部が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るエキスパンド方法は、環状フレームを保持する保持面を有した保持手段で環状フレームを保持する環状フレーム保持ステップと、環状フレームが保持された状態で被加工物の外周と環状フレームの内周との間のエキスパンドシートを保持面と直交する方向に押圧手段で押圧してエキスパンドシートをエキスパンドするエキスパンドステップと、エキスパンドシートをエキスパンドした状態で、保持テーブルでエキスパンドシートを介して被加工物を吸引保持する吸引保持ステップと、吸引保持ステップを実施した後、押圧手段による押圧を解除する押圧解除ステップとを備え、保持テーブルの外周側には、エキスパンドシートの収縮を防止する微小突起部が形成されていることから、押圧解除ステップを実施するときに、エキスパンドシートが収縮して吸引保持面から吸引力がリークするおそれがない。したがって、本発明によれば、微小突起部によりエキスパンドシートの収縮を防ぎつつ、分割済みの被加工物の吸引保持を維持することができるため、隣り合うチップの間隔を確実に維持することが可能となり、後のハンドリング時にチップ同士が接触して損傷するおそれを防止することができる。
【0009】
本発明に係るエキスパンド装置は、環状フレームを保持する保持面を有した保持手段と、保持手段で保持された環状フレームの内周と被加工物の外周との間のエキスパンドシートを保持面と直交する方向に押圧する押圧手段と、エキスパンドシートを押圧する押圧位置と押圧手段を押圧位置から退避した退避位置とに移動させる移動手段と、エキスパンドシートをエキスパンドした状態でエキスパンドシートを介して被加工物を吸引保持する吸引保持面を含む保持テーブルとを備え、保持テーブルの外周側には、エキスパンドシートの収縮を防止する微小突起部が形成されているため、例えば、エキスパンドシートをエキスパンドして隣り合うチップの間に間隔を形成した後、保持テーブルで被加工物を吸引保持した状態でエキスパンドシートの押圧を解除したときに、エキスパンドシートが収縮して吸引保持面から吸引力がリークするおそれがなく、隣り合うチップの間隔を確実に維持することが可能となる。これにより、後のハンドリング時にチップ同士が接触して損傷するおそれを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1 ウエーハユニット
図1に示すウエーハWは、円形板状の被加工物の一例であって、その表面Waには、格子状の分割予定ラインSによって区画されたそれぞれの領域にデバイスDが形成されている。ウエーハWの表面Waと反対側の面である裏面Wbには、例えばダイアタッチフィルム(DAF)と称される粘着テープ(図示せず)を介してエキスパンドシート2が貼着される。エキスパンドシート2は、少なくともウエーハWよりも大きいサイズを有し、例えばポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等からなる基材層の上に糊層が積層された2層構造からなり、エキスパンド性を有している。
【0012】
ウエーハWを個々のデバイスDを有するチップへと分割する場合には、中央が開口した環状フレーム4の下面にエキスパンドシート2の外周縁を貼着し、環状フレーム4の中央から露出したエキスパンドシート2にウエーハWの裏面Wbを貼着して表面Waを上向きに露出させることにより、環状フレーム4の開口を塞いで外周縁に貼着されたエキスパンドシート2にウエーハWを貼着して形成されたウエーハユニット1を準備する。ウエーハユニット1において、ウエーハWの外周と環状フレーム4の内周との間のリング状に露出した領域が、エキスパンドシート2に外力を加えるべき領域であるとともに、エキスパンドシート2をエキスパンドした後に弛みが生じやすい弛み領域3となっている。本実施形態に示すウエーハWは、表面Wa側から分割予定ラインSに沿って例えばレーザ加工されて分割起点Gが形成されている。この分割起点Gは、ウエーハWの内部の強度が低下した改質層であるが、これに限られない。例えば、全ての分割予定ラインSに沿って切削加工することによりウエーハWを完全切断(フルカット)した切削溝を形成し、これを分割起点Gとしてもよいし、全ての分割予定ラインSに沿ってレーザ加工することによりウエーハWを完全切断した溝を形成し、この溝を分割起点Gとしてもよい。
【0013】
2 エキスパンド装置
図2に示すエキスパンド装置10は、
図1に示したウエーハユニット1のウエーハWを分割するとともに、環状フレーム4の開口内に配置されたウエーハWの裏面Wbに貼着されるとともに外周縁が環状フレーム4に貼着されたエキスパンドシート2をエキスパンドするエキスパンド装置の一例である。エキスパンド装置10は、装置ベース11を有しており、装置ベース11の上面には、カセット12が載置されるカセット載置ステージ13と、チャンバ200を有しエキスパンドシート2をエキスパンドすることによりウエーハWを分割する分割ユニット20と、分割ユニット20によりエキスパンドされることにより弛みが生じた上記弛み領域3を加熱して熱収縮させるヒートシュリンクユニット30と、ウエーハWを洗浄する洗浄ユニット40と、チャンバ500を有しエキスパンドシート2を紫外線の照射により硬化させる紫外線照射ユニット50とを備えている。
【0014】
カセット12には、複数のウエーハユニット1が上下方向に積層されて収納される。カセット12は、カセット載置ステージ13に着脱可能にセットされる。カセット載置ステージ13はZ軸方向に昇降可能となっており、カセット載置ステージ13が昇降することでカセット12内の1つのウエーハユニット1が所定の搬出位置に位置づけられる。
【0015】
カセット載置ステージ13の近傍には、カセット12に対してウエーハユニット1を引き出したり収容したりするプッシュプル16が配設されている。プッシュプル16によってカセット12から引き出されたウエーハユニット1は、カセット載置ステージ13の近傍に配設されたY軸方向に延在する断面L字状の一対の第1ガイドレール14に仮置きされる。一対の第1ガイドレール14は、X軸方向に互いに接近したり離反したりすることができ、ウエーハユニット1が一対の第1ガイドレール14に載置されてから互いに接近することにより、環状フレーム4の端縁に係合してウエーハユニット1を所定の搬送開始位置に位置決めすることができる。
【0016】
装置ベース11の上面中央には、旋回動可能な搬送ユニット17が配設されている。搬送ユニット17は、フレーム支持部170の先端に装着され環状フレーム4を吸引保持する複数の吸引パッド171を備え、第1ガイドレール14と第2ガイドレール15との間でウエーハユニット1を搬送したり、第2ガイドレール15とヒートシュリンクユニット30との間でウエーハユニット1を搬送したりすることができる。また、分割ユニット20とヒートシュリンクユニット30との間にはプッシュプル18が配設されている。プッシュプル18は、一対の第2ガイドレール15に載置されたウエーハユニット1を分割ユニット20、ヒートシュリンクユニット30に対して押し込んだり引き出したりすることができる。
【0017】
図3に示すように、分割ユニット20は、チャンバ200内に、環状フレーム4を保持する保持手段21と、
図2に示したエキスパンドシート2を下方から押圧する押圧手段となる突き上げ部24とを備えている。保持手段21は、中央に開口部(図示せず)を有し環状フレーム4の下面が載置されるフレーム載置プレート22と、中央に開口部23aを有し環状フレーム4の上面を押さえるフレーム押さえプレート23とを備えている。フレーム押さえプレート23は固定され、フレーム載置プレート22は、複数の昇降機構25により昇降可能となっている。昇降機構25は、エアシリンダ250とピストン251とからなり、ピストン251の先端にフレーム載置プレート22が固定されている。そして、保持手段21では、フレーム載置プレート22に環状フレーム4が載置された状態で、フレーム載置プレート22が上昇することにより、フレーム載置プレート22とフレーム押さえプレート23との間に環状フレーム4を挟んで、ウエーハユニット1を保持することができる。
【0018】
突き上げ部24は、筒状に形成されており、移動手段26によって昇降可能となっている。ウエーハユニット1が保持手段21に保持されると、突き上げ部24の上方側にエキスパンドシート2の弛み領域3が位置づけられるようになっている。移動手段26は、例えばエアシリンダとピストンとから構成され、移動手段26によって突き上げ部24を上昇させることにより、エキスパンドシート2の弛み領域3を下方から押圧して突き上げることができる。突き上げ部24の上端には、突き上げ時にエキスパンドシート2との摩擦を緩和する複数の図示しないコロ部が回転自在に取り付けられている。なお、チャンバ200内には、冷却ノズルが配設されており、ウエーハWを分割する際には、チャンバ200内が例えば10℃以下に冷却される。
【0019】
図4に示すように、ヒートシュリンクユニット30は、環状フレーム4を保持する保持面320を有した保持手段31と、保持手段31で保持された環状フレーム4の内周とウエーハWの外周との間のエキスパンドシート2の弛み領域3を保持面320と直交する方向に押圧する押圧手段となる突き上げ部36と、突き上げ部36でエキスパンドシート2を押圧する押圧位置と突き上げ部36を押圧位置から退避した退避位置とに突き上げ部36を移動させる移動手段38と、エキスパンドシート2をエキスパンドした状態でエキスパンドシート2を介してウエーハWを吸引保持する吸引保持面34aを含む保持テーブル34と、エキスパンドシート2の弛み領域3を加熱する加熱手段39とを備えている。
【0020】
保持手段31は、中央に開口部32aを有し環状フレーム4の下面が載置されるフレーム載置プレート32と、中央に開口部33aを有し環状フレーム4の上面を押さえるフレーム押さえプレート33とを備えている。フレーム載置プレート32は、複数の昇降機構37によってZ軸方向に昇降可能となっている。昇降機構37は、エアシリンダ370とピストン371とからなり、ピストン371が昇降することにより、フレーム載置プレート32を昇降させることができる。また、フレーム載置プレート32の四隅には、X軸方向に進退可能なセンタリングガイド321がそれぞれ配設されている。センタリングガイド321は、X軸方向に移動することにより、フレーム載置プレート32の保持面320に載置された環状フレーム4の位置を調整し、ウエーハユニット1の中心出しをすることができる。
【0021】
フレーム押さえプレート33は、フレーム載置プレート32と略同寸法の矩形状に形成されている。フレーム押さえプレート33には、エアシリンダ330とピストン331とからなる進退機構が接続されており、進退機構によってフレーム載置プレート32の上方に対して水平方向(Y軸方向)に進退可能となっている。フレーム押さえプレート33の四隅には、上記センタリングガイド321が挿入される長孔33bが形成されている。このように構成される保持手段31では、フレーム載置プレート32に環状フレーム4が載置された状態で、フレーム載置プレート32が上昇することにより、フレーム載置プレート32とフレーム押さえプレート33との間に環状フレーム4を挟んで、ウエーハユニット1を保持することができる。
【0022】
加熱手段39は、図示しないエアシリンダで上下方向に伸縮するロッド390と、ロッド390の下端に固定されたフランジ部391と、フランジ部391の下面に固定された環状の加熱体392とを備えている。加熱体392は、例えば、赤外線を下方に向けて照射し、エキスパンドシート2の弛み領域3を加熱することにより熱収縮(ヒートシュリンク)させることができる。
【0023】
突き上げ部36は、上記分割ユニット20の突き上げ部24と同様の構成である。すなわち、突き上げ部36は、筒状に形成されており、移動手段38によってZ軸方向に昇降可能となっている。ウエーハユニット1が保持手段31に保持されると、突き上げ部36の上方側にエキスパンドシート2の弛み領域3が位置づけられるようになっている。
図5に示すように、突き上げ部36の上端には、突き上げ時にエキスパンドシート2との摩擦を緩和する複数のコロ部36aが回転自在に取り付けられている。移動手段38は、突き上げ部36を昇降させるエアシリンダ380を備え、突き上げ部36を押圧位置と退避位置とにそれぞれ移動させることができる。押圧位置は、エアシリンダ380によって突き上げ部36を上昇させることにより、突き上げ部36のコロ部36aがエキスパンドシート2の弛み領域3を下方から押圧して突き上げることができる位置である。一方、退避位置は、エアシリンダ380により突き上げ部36を下降させることにより、押圧位置から離れ弛み領域3にコロ部36aが接触しない位置である。
【0024】
突き上げ部36の内側に保持テーブル34が配設されている。保持テーブル34は、ウエーハWを吸引保持する吸引保持面34aを有するポーラス板340と、ポーラス板340を収容する枠体341とを備えている。ポーラス板340は、円盤状に形成され、例えばポーラスセラミックス等の多孔質部材によって構成されている。本実施形態に示すポーラス板340の吸引保持面34aは、ウエーハWと相似形に形成され、かつ、ウエーハWと略同一の面積を有している。
図6に示す枠体341は、例えばステンレスで構成されており、その上面341aは吸引保持面34aと面一となっている。
【0025】
図5に示す枠体341の中央には、ポーラス板340に連通する流路342が形成されている。流路342には、バルブ343を介して吸引源344に連通している。バルブ343を開くことにより、ポーラス板340と吸引源344とが連通し、吸引源344の吸引力を吸引保持面34aに作用させて、吸引保持面34aでウエーハWを吸引保持することができる。移動手段38は、エアシリンダ380のほかに、保持テーブル34を昇降させるためのエアシリンダ381とピストン382とを備えている。ピストン382の上端に保持テーブル34が固定されており、ピストン382の上下方向の移動によって保持テーブル34を昇降させることができる。
【0026】
図6に示すように、保持テーブル34の外周側には、エキスパンドシート2の収縮を防止する微小突起部35が複数形成されている。図示の例に示す微小突起部35は、その先端が尖っており、エキスパンドシート2の動きを規制することができる。すなわち、保持テーブル34でウエーハWを吸引保持した状態で、エキスパンドシート2の押圧を解除する際に、エキスパンドシート2の弛み領域3が波打つように動いても、微小突起部35がエキスパンドシート2の下面に入り込んでエキスパンドシート2が収縮するのを防ぐことができる。本実施形態に示す微小突起部35は、ポーラス板340の外周側の吸引保持面34aから枠体341の上面341aにわたって複数形成されているが、これに限定されず、枠体341の上面341aのみに微小突起部35が形成されてもよい。つまり、複数の微小突起部35は、保持テーブル34の外周側において全体としてリング状となるように形成されていればよい。微小突起部35の高さは、例えば0.05mm〜1mm程度に設定されている。
【0027】
このように、本発明に係るエキスパンド装置10では、保持テーブル34の外周側にエキスパンドシート2の収縮を防止する微小突起部35が形成されているため、例えば、突き上げ部36でエキスパンドシート2をエキスパンドして隣り合うチップの間に間隔を形成した後、保持テーブル34でウエーハWを吸引保持した状態でエキスパンドシート2の押圧を解除したときに、エキスパンドシート2が収縮して吸引保持面34aから吸引力がリークするおそれがなく、隣り合うチップの間隔を確実に維持することが可能となる。これにより、後のハンドリング時にチップ同士が接触して損傷するおそれを防止することができる。
【0028】
3 エキスパンド方法
次に、分割ユニット20を用いて、ウエーハWを個々のチップへと分割する動作例を説明するとともに、ヒートシュリンクユニット30を用いて、環状フレーム4の開口内に配置されたウエーハWの裏面Wbに貼着されるとともに外周縁が環状フレーム4に貼着されたエキスパンドシート2をエキスパンドするエキスパンド方法について説明する。
【0029】
まず、
図7(a)に示すように、フレーム載置プレート22に、ウエーハユニット1の環状フレーム4が載置される。環状フレーム4は、開口部22aと同心状に載置され、ウエーハWは開口部22aの中で浮いた状態となる。
図7(b)に示すように、フレーム載置プレート22が上昇することにより、フレーム押さえプレート23とフレーム載置プレート22とに環状フレーム4が挟まれ、その高さ位置に保持される。このとき、図示しない冷却ノズルから冷却流体が噴射され、エキスパンドシート2とともに粘着テープ(DAF)の全体が冷却されて硬化した状態になる。
【0030】
次いで、
図7(c)に示すように、移動手段26により突き上げ部24が上昇して、コロ部24aが回転しながらエキスパンドシート2の弛み領域3をウエーハWの表面Waと直交する上方向に押圧することにより、ウエーハWがエキスパンドシート2とともに所定の拡張位置まで突き上げられる。拡張位置まで突き上げられたエキスパンドシート2は、放射方向に引っ張られて拡張する。エキスパンドシート2の拡張にともない、ウエーハWは、
図1に示した分割起点Gが形成された分割予定ラインSに沿って分断され、個々のチップCへと分割される。また、ウエーハWの裏面Wbに貼着されている粘着テープも個々のチップCに貼着した状態でチップCごと破断される。したがって、エキスパンドシート2の上には、多数のDAF付きのチップCが、互いに僅かに離間した状態で貼着した状態となっている。ウエーハWを個々のチップCへと分割したら、
図7(d)に示すように、移動手段26によって突き上げ部24を下降させる。なお、粘着テープは、粘性があって分割しにくいものであるが、上記のように冷却ノズルから噴出された冷却流体により冷却されて硬化した状態で拡張されるため、確実に分割される。
【0031】
(1)載置ステップ
ウエーハWが個々のチップCへと分割された後、ウエーハユニット1は、
図3に示したプッシュプル18によってフレーム載置プレート22から一対の第2ガイドレール15上に引き出され、
図4に示した搬送ユニット17によりヒートシュリンクユニット30に搬送される。具体的には、搬送ユニット17の吸引パッド171で環状フレーム4の上面を吸引保持して、ウエーハユニット1を第2ガイドレール15から搬出し、
図8に示すように、保持手段31のフレーム載置プレート32の保持面320に環状フレーム4を載置する。これにより、環状フレーム4は、開口部32aと同心状に載置され、ウエーハWは開口部32aの中で浮いた状態となる。
【0032】
(2)環状フレーム保持ステップ
図9に示すように、フレーム載置プレート32が上昇することにより、フレーム押さえプレート33とフレーム載置プレート32とに環状フレーム4が挟まれ、その高さ位置で保持される。このとき、ウエーハWは開口部32a,32aの中で浮いた状態となる。このようにして、保持手段31でウエーハユニット1の環状フレーム4を保持する。突き上げ部36の上方には、エキスパンドシート2の弛み領域3が位置づけられている。
【0033】
(3)エキスパンドステップ
図10に示すように、環状フレーム4が保持された状態で、ウエーハWの外周と環状フレーム4の内周との間のエキスパンドシート2の弛み領域3を保持面320と直交する方向に突き上げ部36で押圧してエキスパンドシート2をエキスパンドする。具体的には、移動手段38によって保持テーブル34とともに突き上げ部36が上昇することにより、コロ部36aが回転しながらエキスパンドシート2の弛み領域3を下方から突き上げ、エキスパンドシート2を放射方向にエキスパンドする。その結果、ウエーハWに対して放射方向の外力が作用し、隣り合うチップCの間が拡がって間隔5が形成される。バルブ343は閉じており、ポーラス板340と吸引源344とは連通していない。
【0034】
エキスパンドステップでは、
図11に示すように、コロ部36aの上端360の高さ位置が保持テーブル34の吸引保持面34aよりも上側に位置するように突き上げ部36の移動量を調整することが好ましい。これにより、エキスパンドシート2の拡張中に微小突起部35がエキスパンドシート2の下面に接触してキズがつくのを防ぐことができる。また、保持テーブル34に図示しないエア供給源を接続しておき、保持テーブル34の吸引保持面34aからエア345を上方に噴出させるエアブローを実施することで、エキスパンドシート2の下面が微小突起部35に非接触となるようにしてもよい。
【0035】
(4)吸引保持ステップ
エキスパンドステップでエキスパンドシート2をエキスパンドした状態で、
図12に示すように、バルブ343を開いてポーラス板340と吸引源344とを連通させ、吸引力を吸引保持面34aに作用させてエキスパンドシート2を介してウエーハWを吸引保持する。このとき、
図13に示すように、エキスパンドシート2は、弛み領域3がコロ部36aで上方に突き上げられた状態で、保持テーブル34の吸引保持面34aに吸引保持され、エキスパンドシート2の下面に微小突起部35が入り込んだ状態となる。
【0036】
(5)押圧解除ステップ
吸引保持ステップを実施した後、突き上げ部36による押圧を解除する。具体的には、
図14に示すように、保持テーブル34でウエーハWを吸引保持した状態で、移動手段38によって突き上げ部36を下降させ、コロ部36aをエキスパンドシート2の弛み領域3から離反させる。エキスパンドシート2に対して外力が作用しなくなると、
図15に示すように、エキスパンドシート2の弛み領域3が例えば矢印Y方向に波打つように動くが、複数の微小突起部35がエキスパンドシート2の下面に入り込んだ状態となっているため、エキスパンドシート2の動きが規制され、エキスパンドシート2が収縮するのを防ぐことができる。これにより、外周側の吸引保持面34aからエキスパンドシート2が浮き上がることはなく、吸引保持面34aから吸引力がリークするおそれがない。
【0037】
(6)ヒートシュリンクステップ
押圧解除ステップを実施した後、エキスパンドシート2は伸びきっており、弛み領域3には弛みが生じている。
図16に示すように、加熱手段39が下降することにより、エキスパンドシート2の弛み領域3に接近して、加熱体392から例えば赤外線を弛み領域3に向けて照射して熱収縮させる。赤外線が照射された部分が縮むことにより、エキスパンドシート2が保持テーブル34に対して平行に伸張した状態となり、隣り合うチップCの間隔5を維持することができる。ヒートシュリンクステップを完了後、ウエーハユニット1は、
図1に示した洗浄ユニット40に搬送されて、洗浄処理・乾燥処理が施される。その後、ウエーハユニット1は、紫外線照射ユニット50に搬送され、エキスパンドシート2に紫外線が照射されて硬化処理が施される。
【0038】
このように、本発明に係るエキスパンド方法は、保持手段31で環状フレーム4を保持する環状フレーム保持ステップと、環状フレーム4が保持された状態でウエーハWの外周と環状フレーム4の内周との間のエキスパンドシート2の弛み領域3を保持面320と直交する方向に突き上げ部36で押圧してエキスパンドシート2をエキスパンドするエキスパンドステップと、エキスパンドシート2をエキスパンドした状態で、保持テーブル34でエキスパンドシート2を介してウエーハWを吸引保持する吸引保持ステップと、吸引保持ステップを実施した後、突き上げ部36による押圧を解除する押圧解除ステップとを備え、保持テーブル34の外周側には、エキスパンドシート2の収縮を防止する微小突起部35が形成されていることから、押圧解除ステップを実施するときに、エキスパンドシート2が収縮して吸引保持面34aから吸引力がリークするおそれがない。したがって、本発明によれば、微小突起部35によりエキスパンドシート2の収縮を防ぎつつ、分割済みのウエーハWの吸引保持を維持することができるため、隣り合うチップの間隔5を確実に維持することが可能となり、後のハンドリング時にチップ同士が接触して損傷するおそれを防止することができる。
【符号の説明】
【0039】
1:ウエーハユニット 2:エキスパンドシート 3:弛み領域
4:環状フレーム 5:間隔
10:エキスパンド装置 11:装置ベース 12:カセット
13:カセット載置ステージ 14:第1ガイドレール 15:第2ガイドレール
16:プッシュプル 17:搬送ユニット 170:フレーム支持部
171:吸引パッド 18:プッシュプル
20:分割ユニット 21:保持手段 22:フレーム載置プレート 22a:開口部
23:フレーム押さえプレート 23a:開口部 24:突き上げ部
24a:コロ部 25:昇降機構 26:移動手段
30:ヒートシュリンクユニット 31:保持手段
32:フレーム載置プレート 32a:開口部 320:保持面
321:センタリングガイド 33:フレーム押さえプレート 33a:開口部
33b:長孔 34:保持テーブル 34a:吸引保持面 340:ポーラス板
341:枠体 342:流路 343:バルブ 344:吸引源 345:エア
35:微小突起部 36:突き上げ部 36a:コロ部
37:昇降機構 38:移動手段 39:加熱手段
40:洗浄ユニット 50:紫外線照射ユニット