(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、例えば、「45°」、「平行」、「垂直」あるいは「直交」等の角度は、特に記載がなければ、厳密な角度との差異が5度未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との差異は、4度未満であることが好ましく、3度未満であることがより好ましい。
【0014】
[消音管状構造体]
本発明の消音管状構造体は、
筒状の管状部、および、管状部の内周面側に、少なくとも一部が一体成形された枠体部を有する管状部材と、
管状部材の枠体部の開口面に交換可能に配置される蓋部材と、を有し、
枠体部と蓋部材とが共鳴型の消音構造を構成する消音管状構造体である。
【0015】
本発明の消音管状構造体の一例について、
図1〜
図3を用いて説明する。
図1は、本発明の消音管状構造体の一例を示す模式的な斜視図である。
図2は、
図1に示す消音管状構造体のB−B線断面図である。
図3は、
図1に示す消音管状構造体が有する吸音機構を示す斜視図である。
【0016】
図1および
図2に示すように、消音管状構造体10は、管状部材12と蓋部材14とを有する。
【0017】
図4に管状部材の一例を模式的に示す断面図を示す。また、
図5に
図4をa方向から見た断面図を示す。
図4および
図5に示すように、管状部材12は、両底面が開放された筒状の管状部16と、管状部16の内周面側に一体成形された枠体部18とを有する。
管状部16は、筒の中心軸方向に垂直な断面形状(開口断面の形状)が長方形状の筒状の部位である。
枠体部18は、管状部16の内側の面(内周面)の一面に垂直な方向に高さを有する枠状の部位である。言い換えると、枠体部18は、立方体形状で、一面を貫通する開口を有する形状で、開口の一方の面(開口面)が管状部16の内周面で塞がれている。
【0018】
管状部16と枠体部18とは、一体成形されている。すなわち、管状部16と枠体部18とは、接着剤、機械的接続方法を用いずに一体的に形成されている。
【0019】
蓋部材14は、板状部材であり、枠体部18の開口面に配置されている。
図3に示す例では、蓋部材14aは、平面形状が四角形状で、枠体部18の開口面よりも小さく、開口面の一部を覆うように配置されている。具体的には、蓋部材14aは、
図3中y方向の長さが枠体部18の長さと略同じで、x方向の長さが枠体部18の長さよりも短い。
【0020】
本発明において、管状部材12の枠体部18と、蓋部材14とは、消音構造20を構成する。消音構造20は、吸音および反射の少なくとも一方の機能を発現して消音する構造である。
図3に示す消音構造20aにおいては、蓋部材14aは、
図3中y方向には枠体部18の開口面を全て覆い、x方向には、枠体部18の開口面の一部のみを覆う。これによって、消音構造20aは、枠体部18と蓋部材14aとに囲まれる中空部24と、枠体部18の開口面の、蓋部材14aに覆われていない開口部22とを有する構成となる。開口部22は、中空部24と外部とを連通する。
このような構成の消音構造20aは、気柱共鳴またはヘルムホルツ共鳴を生じる共鳴構造となる。
【0021】
周知のとおり、共鳴構造による消音は、共鳴現象を利用して特定の周波数(周波数帯域)の音を選択的に消音するものである。
気柱共鳴は、開管または閉管内に、管の長さに応じて定在波が生じることで共鳴が起こる現象である。
また、ヘルムホルツ共鳴は、開口部の空気がマスとして機能し、開口部を持った容器の内部にある空気がバネとしての役割を果たし、共鳴する現象である。
【0022】
図3に示す消音構造20aを気柱共鳴が生じる共鳴構造として用いる場合には、枠体部18および蓋部材14aが閉管として作用して中空部24に定在波が生じることで共鳴が起こる。
従って、消音構造20aを気柱共鳴が生じる共鳴構造として用いる場合には、気柱共鳴の共鳴周波数を、管状部内で共鳴する音を消音するように適宜設定すればよい。気柱共鳴の共鳴周波数は、管の長さ(開口部22からの深さ)と開口端補正(開口部22の大きさに対応)等によって決まる。中空部24の深さ、開口部22の大きさ等を調整することで、共鳴する音の周波数を適宜設定することができる。
【0023】
図3に示す消音構造20aをヘルムホルツ共鳴が生じる共鳴構造として用いる場合には、枠体部18および蓋部材14aが容器として作用して開口部22の空気が質量(マス)として、中空部24にある空気がばねとしての役割を果たし、マスバネの共鳴をし、開口部22の壁近傍部での熱粘性摩擦により吸音する構造である。
従って、消音構造20aをヘルムホルツ共鳴が生じる共鳴構造として用いる場合には、ヘルムホルツ共鳴の共鳴周波数を、管状部内で共鳴する音を消音するように適宜設定すればよい。ヘルムホルツ共鳴の共鳴周波数は、中空部24の内容積および開口部22の面積等によって決まる。従って、消音構造20aの中空部24の内容積および開口部22の面積等を調整することで、共鳴する音の周波数を適宜設定することができる。
【0024】
なお、開口部22と中空部24を有する消音構造20において、気柱共鳴が生じる共鳴構造となるか、ヘルムホルツ共鳴が生じる共鳴構造となるかは、開口部22の大きさ、位置、中空部24の大きさ等によって決まる。従って、これらを適宜調整することで、気柱共鳴とヘルムホルツ共鳴のいずれの共鳴構造とするかを選択できる。
気柱共鳴の場合は、開口部が狭いと音波が開口部で反射して中空部内に音波が侵入し難くなるため、開口部がある程度広いことが好ましい。具体的には、開口部が長方形状の場合には、短辺の長さが1mm以上であるのが好ましく、3mm以上であるのがより好ましく、5mm以上であるのがさらに好ましい。開口部が円形状の場合には、直径が上記範囲であるのが好ましい。
一方、ヘルムホルツ共鳴の場合は、吸音させるためには開口部の側壁において熱粘性摩擦を生じる必要があるため、開口部がある程度狭いことが好ましい。具体的には、開口部が長方形状の場合には、短辺の長さが0.5mm以上20mmが好ましく、1mm以上15mm以下がより好ましく、2mm以上10mm以下がさらに好ましい。開口部が円形状の場合には、直径が上記範囲であるのが好ましい。
【0025】
このように、管状部材12の枠体部18と蓋部材14aとが消音構造20aを構成することで、管状部16内を通過する音を消音することができる。
【0026】
前述のとおり、管状部の外周面の一部に開口を設けて、開口の位置に合わせて消音構造を構成する枠体部を管状部の外周部に形成する構成では、管状部材の構造強度が小さくなってしまうという問題があった。また、枠体部(消音構造)を配置するためのスペースが必要となるため、スペースの狭い電子機器(例えば、複写機等)、および、自動車等では配置が困難な場合が多いという問題があった。
【0027】
これに対して、本発明の消音管状構造体10は、管状部16の内周面側に枠体部18を一体成形して、この枠体部18の開口部に蓋部材を配置して消音構造を構成する。管状部16の外周面に開口を形成する必要がないため、管状部材の構造強度が低下することがなく、高い強度を保つことができる。また、枠体部18が、管状部16の内周面に約垂直方向に形成されるため、管状部16の剛性がより高くなる。
また、消音構造20を管状構造の内部に配置するため、消音構造20を配置するためのスペースが必要なく、スペースの狭い電子機器、および、自動車等でも配置が容易となる。
【0028】
ここで、上述のような共鳴構造を有する消音構造20aは、可聴域の音に共鳴するものであるのが好ましい。本発明において可聴域とは、20Hz〜20000Hzである。また、消音構造20aは、より聞こえやすい100Hz〜16000Hzの音に共鳴するものであるのがより好ましく、200Hz〜12000Hzの音に共鳴するものであるのがさらに好ましい。
また、管状部16において、管状部16内で共鳴する音の共鳴周波数の周波数帯において音が通り易くなる。従って、消音構造20aは、管状部16内の共鳴周波数の音を消音するものであるのが好ましい。
なお、管状部材12の管状部16が他のダクト等に接続されて用いられる場合には、管状部16内で共鳴する音の共鳴周波数は、他のダクトに接続された状態での管状部16内で共鳴する音の共鳴周波数である。
【0029】
また、消音構造20aは、管状部16内で共鳴する音の音圧の腹の位置、すなわち、音圧が高くなる位置に配置されるのが好ましい。消音構造20aを管状部16内で共鳴する音の音圧の腹の位置に配置することで、吸音の効果をより高くすることができる。
ここで、本発明の消音管状構造体10においては、消音構造20aを構成する枠体部18は、管状部16の内周面に、管状部16と一体的に形成される。従って、管状部16の内周面における枠体部18の位置は、管状部16内で共鳴する音の腹の位置となるように予めシミュレーションまたは実験等によって設定される。
また、管状部材12の管状部16が他のダクト等に接続されて用いられる場合には、音圧の腹の位置は、他のダクトに接続された状態での管状部16内で音圧の腹の位置である。
管状部16内の共鳴としては例えば、管状部16終端部が開放されている場合、その部位で音響インピーダンスが大きく変化するために反射が生じる。その反射音が管状部16内の透過音と干渉を起こす。特定の周波数においては、その干渉により管状部16内に定在波が生じて共鳴となる。
【0030】
また、枠体部18は予め位置決めされて、管状部16の内周面に、管状部16と一体的に形成されるので、消音構造20aの管状部16内での位置決めが容易である。
また、消音構造20aの位置精度を大幅に高めることができるので、確実に高い吸音効果を得ることができる。特に、共鳴による消音構造20aは、管状部16内における配置によって音響特性が大きく変化するため、消音構造20aの位置決め精度は重要である。
また、消音構造を管状部とは別体で作製して管状部内に配置する構成では、大量に作製する場合に同じ音響特性を得るのが難しい。これに対して、本発明では容易にかつ高精度に位置決めできるので、大量に作製する場合でも同じ音響特性を容易に安定して得ることができる。
また、消音構造20aの位置ズレ等が起こらないため、位置ズレによって音圧の腹の位置からズレて吸音効果が低下することを防止できる。
【0031】
なお、
図3に示す例では、枠体部18の全てが管状部16と一体成形される構成としたが、これに限定はされず、枠体部18の少なくとも一部が管状部16と一体成形されていればよい。例えば、枠体部18を構成する4枚のフレームのうちの1枚または2枚または3枚が管状部16と一体成形された構成としてもよい。
【0032】
管状部材12(管状部16および枠体部18)の材料としては、金属材料、樹脂材料、強化プラスチック材料、および、カーボンファイバ等を挙げることができる。金属材料としては、例えば、アルミニウム、チタン、マグネシウム、タングステン、鉄、スチール、クロム、クロムモリブデン、ニクロムモリブデン、銅、および、これらの合金等の金属材料を挙げることができる。また、樹脂材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリアミドイド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルフォン、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリイミド、ABS樹脂(アクリロニトリル (Acrylonitrile)、ブタジエン(Butadiene)、スチレン (Styrene)共重合合成樹脂)、ポリプロピレン、および、トリアセチルセルロース等の樹脂材料を挙げることができる。また、強化プラスチック材料としては、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)、および、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastics)を挙げることができる。また、天然ゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)、シリコーンゴム等ならびにこれらの架橋構造体を含むゴム類を挙げることができる。
また、空気を含む構造体、すなわち、発泡材料、中空材料、多孔質材料等を用いることもできる。多数の膜型の防音構造体を用いる場合に各セル間で通気しないためにはたとえば独立気泡の発泡材料などを用いて枠を形成することができる。例えば、独立気泡ポリウレタン、独立気泡ポリスチレン、独立気泡ポリプロピレン、独立気泡ポリエチレン、独立気泡ゴムスポンジなど様々な素材を選ぶことができる。独立気泡体を用いることで、連続気泡体と比較すると音、水、気体等を通さず、また構造強度が大きいため、枠材料として用いるには適している。このように、内部に空気を含む材料系を用いることで管状部材を軽量化することができる。また、断熱性を付与することができる。
【0033】
ここで、管状部材12は、排気口等に利用可能な点から、難燃材料や耐熱性の高い材料からなることが好ましい。耐熱性は、例えば、建築基準法施行令の第百八条の二各号を満たす時間で定義することができる。建築基準法施行令の第百八条の二各号を満たす時間が5分間以上10分間未満の場合が難燃材料であり、10分間以上20分間未満の場合が準不燃材料であり、20分間以上の場合が不燃材料である。ただし耐熱性は各分野ごとで定義されることが多い。そのため、消音管状構造体を利用する分野に合わせて、管状部材12を、その分野で定義される難燃性相当以上の耐熱性を有する材料からなるものとすればよい。
【0034】
また、管状部16の開口断面の形状は、特に制限的ではなく、例えば、正方形、長方形、ひし形、又は平行四辺形等の他の四角形、正三角形、2等辺三角形、又は直角三角形等の三角形、正五角形、又は正六角形等の正多角形を含む多角形、若しくは円形、楕円形等であっても良いし、不定形であっても良い。
【0035】
また、枠体部18の開口断面の形状は、特に制限的ではなく、例えば、正方形、長方形、ひし形、又は平行四辺形等の他の四角形、正三角形、2等辺三角形、又は直角三角形等の三角形、正五角形、又は正六角形等の正多角形を含む多角形、若しくは円形、楕円形等であっても良いし、不定形であっても良い。
【0036】
管状部16の大きさ(開口断面の大きさ)、肉厚および長さ等は、特に制限的ではなく、求められるサイズ等に応じて適宜設定すればよい。
【0037】
枠体部18の肉厚(フレーム厚み)および高さ(管状部16の内周面に垂直な方向の高さ)も、蓋部材14を確実に固定、支持することができれば、特に制限的ではなく、例えば、枠体部18の開口断面の大きさ等に応じて設定することができる。
【0038】
また、管状部16と枠体部18とが、一体的に形成された構成は、圧縮成形、射出成形、インプリント、削り出し加工、および3次元形状形成(3D)プリンタを用いた加工方法などの単純な工程で作製することができる。
ここで、管状構造に開口を設けることは、一括成形だけでは難しい場合が多く、後から穴開け加工が必要になる。後から加工が必要となる場合、位置決め精度が問題になる。これに対して、本発明では、管状部16と枠体部18とが一体成形されるため、位置決めに問題がない。
【0039】
蓋部材14aの材料としては、上述した管状部材12の材料と同様の材料を用いることができる。なお、蓋部材14aと管状部材12の材料は同じであっても異なっていてもよい。
特に、蓋部材14aと管状部材12が同じ材料であれば、熱や湿度などに対する特性が等しいために環境変化に対して扱いが容易となる。また、同じ材料同士は接着が容易な場合が多く、蓋部材を確実に管状部材に固定する上でも利点がある。
【0040】
蓋部材14aの厚みは、特に制限的ではなく、必要な強度、小型化等に応じて適宜設定することができる。
【0041】
また、枠体部18への蓋部材14aの固定方法は特に制限的ではなく、両面テープまたは接着剤を用いる方法、ネジ止め等の機械的固定方法、圧着等が適宜利用可能である。この固定方法についても、管状部材の材質と同様に耐熱、耐久性、耐水性の観点から選択することができる。例えば、接着剤としては、セメダイン社「スーパーX」シリーズ、スリーボンド社「3700シリーズ(耐熱)」、太陽金網株式会社製耐熱エポキシ系接着剤「Duralcoシリーズ」などを選択することができる。また、両面テープとしては、スリーエム製高耐熱両面粘着テープ9077などを選択することができる。このように、要求する特性に対して様々な固定方法を選択することができる。
【0042】
ここで、
図3に示す消音構造20aにおいては、蓋部材14として、枠体部18の開口面よりも小さい板状の蓋部材14aを用いて、開口面の一部を覆うことで開口部22および中空部24を有する共鳴構造となるものとしたが、これに限定はされない。
例えば、
図6に示す消音構造20bのように、蓋部材14として、枠体部18の開口面を全面的に覆う大きさの板状の部材で、厚み方向に貫通する開口部15を有する蓋部材14bを用いて、この蓋部材14bで枠体部18の開口面を覆う構成とする。これによって、消音構造20bは、枠体部18および蓋部材14bに囲まれる中空部24と、蓋部材14bに形成された開口部15とを有する共鳴構造となる。
【0043】
図6に示す消音構造30bは、気柱共鳴またはヘルムホルツ共鳴を生じる共鳴構造となる。
なお、本明細書中において、異なる構成の消音構造に対して30a、30b・・・のように、異なる符合を付すが、これらの消音構造を区別する必要が無い場合には、符号30を付す。同様に、異なる構成の蓋部材に対して14a、14b・・・のように、異なる符合を付すが、これらの蓋部材を区別する必要が無い場合には、符号14を付す。
【0044】
あるいは、蓋部材14として、枠体部18の開口面を全面的に覆う大きさの板状の部材を用い、枠体部18の側面に開口部を設けて、蓋部材14で枠体部18の開口面を覆う構成としてもよい。消音構造20は、枠体部18および蓋部材14に囲まれる中空部24と、枠体部18に形成された開口部とを有する共鳴構造となる。
【0045】
また、
図1に示す例では、消音構造20aは、気柱共鳴またはヘルムホルツ共鳴を生じる共鳴構造としたが、これに限定はされない。
例えば、
図7に示す消音構造20cのように、蓋部材14として、振動可能な膜状の蓋部材14cを用いて、この蓋部材14cで枠体部18の開口面を覆う構成としてもよい。消音構造20cは、膜状の蓋部材14cが周縁部を枠体部18に固定されて振動可能に支持されており、膜振動を利用する共鳴構造である。
【0046】
消音構造20cの膜振動の共鳴周波数は、管状部内で共鳴する音を消音するように適宜設定すればよい。膜振動の共鳴周波数は、膜状の蓋部材14cの大きさ、厚み、硬さ等によって決まる。従って、消音構造20cの蓋部材14cの大きさ、厚み、硬さ等を調整することで、共鳴する音の周波数を適宜設定することができる。
【0047】
膜状の蓋部材14cの材料としては、アルミニウム、チタン、ニッケル、パーマロイ、42アロイ、コバール、ニクロム、銅、ベリリウム、リン青銅、黄銅、洋白、錫、亜鉛、鉄、タンタル、ニオブ、モリブデン、ジルコニウム、金、銀、白金、パラジウム、鋼鉄、タングステン、鉛、および、イリジウム等の各種金属;PET(ポリエチレンテレフタレート)、TAC(トリアセチルセルロース)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PMP(ポリメチルペンテン)、COP(シクロオレフィンポリマー)、ゼオノア、ポリカーボネート、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)、PAR(ポリアリレート)、アラミド、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PES(ポリエーテルサルフォン)、ナイロン、PEs(ポリエステル)、COC(環状オレフィン・コポリマー)、ジアセチルセルロース、ニトロセルロース、セルロース誘導体、ポリアミド、ポリアミドイミド、POM(ポリオキシメチレン)、PEI(ポリエーテルイミド)、ポリロタキサン(スライドリングマテリアルなど)および、ポリイミド等の樹脂材料等が利用可能である。さらに、薄膜ガラスなどのガラス材料、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)およびGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)のような繊維強化プラスチック材料を用いることもできる。また、天然ゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、EPDM、シリコーンゴム等ならびにこれらの架橋構造体を含むゴム類を用いることができる。または、それらを組合せたものでもよい。
または、それらを組合せたものでもよい。
【0048】
また、金属材料を用いる場合には、錆びの抑制等の観点から、表面に金属めっきを施してもよい。
【0049】
膜状の蓋部材14cのヤング率は、膜振動することができれば特に制限的ではない。膜状の蓋部材14cのヤング率は、1000Pa〜1000GPaであることが好ましく、10000Pa〜500GPaであることがより好ましく、1MPa〜300GPaであることが最も好ましい。
【0050】
また、膜状の蓋部材14cの密度も、膜振動することができるものであれば、特に制限的ではない。膜状の蓋部材14cの密度は、10kg/m
3〜30000kg/m
3であることが好ましく、100kg/m
3〜20000kg/m
3であることがより好ましく、500kg/m
3〜10000kg/m
3であることが最も好ましい。
【0051】
また、膜状の蓋部材14cの厚さは、膜振動することができれば、特に制限的ではない。例えば、膜状の蓋部材14cの厚さは、0.005mm(5μm)〜1mmであることが好ましく、0.007mm(7μm)〜0.5mmであることがより好ましく、0.01mm(10μm)〜0.25mm(250μm)であることが最も好ましい。
【0052】
また、枠体部18への膜状の蓋部材14aの固定方法は特に制限的ではなく、両面テープまたは接着剤を用いる方法、ネジ止め等の機械的固定方法、圧着等が適宜利用可能である。
【0053】
ここで、本発明において、蓋部材14は、枠体部18に交換可能に取り付けられている。従って、蓋部材14を取り替えることで異なる周波数帯域の音を消音可能となる。
本発明において交換可能とは、両面テープ、接着剤および粘着剤等による固定方法、テープで側壁側から固定する方法、あるいは、ネジ止め等の機械的接続方法、はめ合い構造による固定方法などのように、蓋部材14および枠体部18を損傷することなく、容易に取り外して再度取り付けることができることをいう。
例えば、
図3及び
図6に示すような開口部を有する共鳴構造の消音構造20において、開口部の大きさが異なる蓋部材14に変更することで消音する音の周波数帯域を変更することができる。また、
図7に示すような膜状の蓋部材14cを有する消音構造20cにおいて、蓋部材14cを、厚み、硬さ等が異なる蓋部材14cに変更することで消音する音の周波数帯域を変更することができる。あるいは、
図3及び
図6に示すような開口部を有する消音構造20の蓋部材14を、
図7に示すような膜状の蓋部材14cに変更して消音する音の周波数帯域を変更することができる。
【0054】
また、上記共鳴型の消音構造の内部もしくは外部に多孔質吸音体を配置することで、消音の周波数帯域を広げること、また高周波の吸音効果を持たせることが可能である。例えば、多孔質吸音体を枠体内部に配置した後に蓋部材を取り付けてもよいし、蓋部材に多孔質吸音材がついていて、それを枠体に取り付けてもよい。
多孔質吸音体としては、特に限定はなく、従来公知の多孔質吸音体が適宜利用可能である。例えば、発泡ウレタン、軟質ウレタンフォーム、木材、セラミックス粒子焼結材、フェノールフォーム等の発泡材料および微小な空気を含む材料;グラスウール、ロックウール、マイクロファイバー(3M社製シンサレートなど)、フロアマット、絨毯、メルトブローン不織布、金属不織布、ポリエステル不織布、金属ウール、フェルト、インシュレーションボードおよびガラス不織布等のファイバーおよび不織布類材料;木毛セメント板;シリカナノファイバーなどのナノファイバー系材料;石膏ボード;種々の公知の多孔質吸音体が利用可能である。
多孔質吸音体の流れ抵抗には特に限定はないが、1000〜100000(Pa・s/m
2)が好ましく、5000〜80000(Pa・s/m
2)がより好ましく、10000〜50000(Pa・s/m
2)がさらに好ましい。
【0055】
以上、本発明の消音管状構造体についての種々の実施形態を挙げて詳細に説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良又は変更をしてもよいのはもちろんである。
【実施例】
【0056】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0057】
[参考例1]
図8に示すような、L字型ダクトを作製した。
図8に示すように、L字型ダクトは、ABS製で、幅50mm、高さ80mm、長さ300mmの第1管構造と、幅50mm、高さ40mm、長さ30mmの第2管構造とを有し、第1管構造の端部の側面(幅50mmの面)に、第2管構造が接続された構造とした。すなわち、第1管構造の長さ方向と第2管構造の長さ方向は90°で交わるものとした。第1管構造の長さ方向の、第2管構造から遠い側の端面が開放端であり、また、第2管構造の長さ方向の、第1管構造に接続されない側の端面が開放端である。
【0058】
L字型ダクトの第2管構造の開放端にスピーカー(ソニー株式会社製SRS-XB10)を配置し、第1管構造の開放端から200mmの距離に1/2インチマイクロフォン(アコー株式会社製TYPE 7146、以下、単に「マイクロフォン」ともいう)を配置した。
スピーカーからホワイトノイズを発生させて、マイクロフォンで音圧を20秒間測定した。測定した音圧に高速フーリエ変換(FFT:fast Fourier transform)を行い、周波数ごとの音圧を、20秒間の平均値にして求めた。これらの測定プログラムは、Labview(National Instruments社)を用いて作成した。
参考例1の結果を音圧の基準として、本発明の実施例における消音効果の評価を行った。
まず、
図9に参考例1の測定結果を示す。
図9は、L字型ダクトからの透過音量と周波数との関係を示すグラフである。入射音圧をホワイトノイズとしたため、それぞれの周波数の透過率に対応する。
図9によると、このL字型ダクトにおいては、500Hz〜1000Hzの範囲では810Hzにおいて透過率が最も大きくなり、この周波数で透過する共鳴を生じることが分かる。
以下、周波数810Hzに着目し、周波数810Hzの通りやすい音がどこまで減少させることができるかを中心に実験を行った。
【0059】
次に、スピーカーからホワイトノイズを発生させたまま、マイクロフォンを第1管構造の内部で移動させて、L字型ダクト内部での音圧分布を調べた。
図10に810Hzにおける結果を示す。
図10から、開放端でのインピーダンス変化によって、L字型ダクトの内部にモードが生じることがわかる。
【0060】
[実施例1]
参考例1と同サイズのABS製のL字型ダクトであって、第1管構造の幅50mmの面の内周面側に、第1管構造の開放端から80mmの位置と190mmの位置に高さ20mm、幅50mm、厚み3mmのフレームが一体成形されたL字型ダクト(管状部材)を作製した。作製は、XYZプリンティング社製の3Dプリンターを用いて行った。形成した2枚のフレームの幅を50mmとしたため、2枚のフレームは両端が高さ80mmの面と接しており、高さ80mmの面が枠体部を兼ねて、2枚のフレームと共に枠体部を構成している。また、L字型ダクトの2枚のフレーム以外の部分が本発明の管状部に相当する。
【0061】
蓋部材として、第1管構造の長さ方向の長さが、一体成形された2枚のフレーム間の距離+フレーム厚み(計116mm)で、幅50mm、厚み2mmのアクリル板を用意した。このアクリル板の長さ方向の一端から3mmの位置から23mmの位置まで、長さ20mmの開口部を形成した。開口部の幅は44mmで、幅方向の両端部それぞれ3mmずつ残した。
【0062】
開口部を有するアクリル板を、2枚のフレームに両面テープで固定した。開口部側を第1管構造の開放端側として取り付けて消音管状構造体を作製した。
これによって、
図11に示すような消音構造を形成した。中空部は、長さ110mm、幅50mm、高さ20mmであり、開口部は長さ20mm、幅44mmである。この消音構造は、気柱共鳴を生じる共鳴構造である。この共鳴構造の共鳴周波数は、810Hzである。
【0063】
作製した消音管状構造体について、参考例1と同様にして音圧を測定した。消音構造の消音効果を評価するため、20×log
10(参考例1の音圧/実施例1の音圧)として、実施例1での透過損失量をdBを単位として評価した。
結果を
図12に示す。
【0064】
図12から、L字型ダクトの共鳴周波数である810Hzにおいて約24dBの大きな消音効果が得られることがわかる。ここで、
図10によると、810Hzにおいて、L字型ダクト内のモードは、開放端から90mmの位置に腹(音圧のピーク)を有する。実施例1において、消音構造の開口部は、L字型ダクトの開放端から80mmから100mmまでの間に形成されており、ちょうど腹の位置に存在することがわかる。
このように、L字型ダクト内の共鳴周波数において音圧の腹の位置に配置することで大きな消音効果を得ることができる。
【0065】
[実施例2]
2枚のフレームの位置をそれぞれ開放端から70mmと180mmの位置とした以外は実施例1と同様にして消音管状構造体を作製した。すなわち、消音構造がL字型ダクトの開放端から70mmの位置に形成される。
実施例1と同様にして透過損失量を評価した。結果を
図13に示す。
実施例2の場合、消音構造の開口部が、音圧の腹の位置からわずかにずれている。そのため、実施例1と比較するとわずかに透過損失量が小さいが、大きな消音効果を得ることができることがわかる。
【0066】
[実施例3]
2枚のフレームの位置をそれぞれ開放端から20mmと130mmの位置とした以外は実施例1と同様にして消音管状構造体を作製した。すなわち、消音構造がL字型ダクトの開放端から20mmの位置に形成される。
実施例1と同様にして透過損失量を評価した。
【0067】
[実施例4]
2枚のフレームの位置をそれぞれ開放端から140mmと250mmの位置とした以外は実施例1と同様にして消音管状構造体を作製した。すなわち、消音構造がL字型ダクトの開放端から140mmの位置に形成される。
実施例1と同様にして透過損失量を評価した。
実施例1〜4の810Hzにおける透過損失量を
図14に示す。
【0068】
図14から、いずれの実施例でも、すなわち、消音構造の位置がどの位置でも消音効果が得られていることがわかる。また、消音構造の位置(開口部の位置)によって、消音効果が大きく変わり、音圧の腹の位置に消音構造の開口部が配置されるのが好ましいことがわかる。
以上から、消音構造の位置決め精度および使用中に位置ズレが発生しないことが重要であることがわかる。本発明においては、消音構造のフレーム(枠体部)をL字型ダクト(管状部)と一体成形しているため、位置決め精度が高く、また、位置ズレが発生しないため、高い消音効果が得られることがわかる。
【0069】
[実施例5]
実施例1と同様にして、開放端から80mmと100mmの位置にフレーム(高さ20mm)を有するL字型ダクト(管状部材)を作製した。
蓋部材として、第1管構造の長さ方向の長さが、2枚のフレーム間の距離+フレーム厚み(計26mm)で、幅50mm、厚み5mmのアクリル板を用意した。このアクリル板の中央に6.3mm×6.3mmの正方形状の貫通孔を形成した。
この蓋部材を2枚のフレームに両面テープで固定して消音管状構造体を作製した。
これによって形成される消音構造は、貫通孔(開口部)と背面に体積(中空部)とを有するヘルムホルツ共鳴器である。この共鳴構造の共鳴周波数は、810Hzである。
【0070】
[実施例6]
2枚のフレームの位置をそれぞれ開放端から20mmと40mmの位置とした以外は実施例5と同様にして消音管状構造体を作製した。
【0071】
[実施例7]
2枚のフレームの位置をそれぞれ開放端から140mmと160mmの位置とした以外は実施例5と同様にして消音管状構造体を作製した。
【0072】
実施例5〜7の消音管状構造体の音響性能を実施例1と同様にして測定した。
図15に810Hzにおける透過損失量を示す。
図15から、消音構造の位置がどの位置でも消音効果が得られていることがわかる。特に、音圧の腹の位置に消音構造が配置される実施例5(開放端から80mmの位置)の透過損失量が高いことがわかる。
【0073】
[実施例8]
蓋部材に形成される貫通孔を6.0mm×6.0mmとした以外は実施例5と同様にして消音管状構造体を作製した。
【0074】
[実施例9]
蓋部材に形成される貫通孔を6.6mm×6.6mmとした以外は実施例5と同様にして消音管状構造体を作製した。
【0075】
実施例8および9の消音管状構造体の音響性能を実施例1と同様にして測定した。
図16に実施例5、8および9の透過損失量の測定結果を示す。
【0076】
図16から、蓋部材に形成される貫通孔の大きさを変えることで、ヘルムホルツ共鳴の共鳴周波数を変えることができることがわかる。すなわち、本発明の消音管状構造体は、蓋部材の種類を変えることで、共鳴構造の共鳴周波数を変えて、吸音する周波数を容易に変更可能であることがわかる。
【0077】
[実施例10]
2枚のフレームの位置をそれぞれ開放端から80mmと130mmの位置とし、フレームの高さを32mmとし、さらに、2枚のフレームの間の幅方向両端部側に厚み2mm、高さ32mmの2枚のフレームを有する構成とした以外は実施例5と同様にしてL字型ダクト(管状部材)を作製した。すなわち、L字型ダクトは、4枚のフレームで囲まれる長方形状(50mm×46mm)の開口を有する枠体部が一体成形されている。
【0078】
蓋部材として、第1管構造の長さ方向の長さが、2枚のフレーム間の距離+フレーム厚み(計56mm)で、幅50mm、厚み75μmのPETフィルム(東レ株式会社製)を用意した。
この蓋部材を4枚のフレームに両面テープで固定して消音管状構造体を作製した。
これによって形成される消音構造は、膜振動可能な膜振動型の共鳴構造である。この共鳴構造の共鳴周波数は、810Hzである。
【0079】
実施例10の消音管状構造体の音響性能を実施例1と同様にして測定したところ、810Hzにおいて、8.5dBの透過損失量を得た。このように、膜振動を用いても、ダクトの消音をすることができた。
以上より本発明の効果は明らかである。