特許第6902337号(P6902337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6902337ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902337
(24)【登録日】2021年6月23日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/01 20060101AFI20210701BHJP
   C08F 2/34 20060101ALI20210701BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   C08F2/01
   C08F2/34
   C08F10/00
【請求項の数】3
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2016-153179(P2016-153179)
(22)【出願日】2016年8月3日
(65)【公開番号】特開2018-21123(P2018-21123A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】糸口 聡
(72)【発明者】
【氏名】荒川 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】吉村 直人
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−161735(JP,A)
【文献】 特開2008−150466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2、6−246
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン製造システムを用いて、オレフィンの重合を行う、下記ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法であって、
前記ポリオレフィン製造システムが、
鉛直方向に延びる円筒部と、
前記円筒部に形成され、下方に行くほど内径が小さくなると共に下端にガス導入用開口を有する縮径部と、
を備え、
前記縮径部の内面と当該縮径部よりも上方の前記円筒部の内面とによって囲まれ、その内部に噴流層が形成される噴流層型オレフィン重合反応領域と、
前記噴流層型オレフィン重合反応領域の後段に接続された流動層型オレフィン重合反応領域と
を備え、
前記噴流層型オレフィン重合反応領域の数が3以上であり、
前記ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法が、
前記噴流層型オレフィン重合反応領域を用いて、オレフィンを重合し、
プロピレン単独重合体成分(I−1)または下記プロピレン共重合体成分(I−2)またはこれら両方の成分を得る工程(1)と、
前記工程(1)で得られたプロピレン単独重合体成分(I−1)またはプロピレン共重合体成分(I−2)またはこれら両方の成分の存在下、
流動層型オレフィン重合反応領域を用いて、オレフィンを重合し、
ヘテロファジックプロピレン重合材料を得る工程(2)と
を含むヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
ヘテロファジックプロピレン重合材料:プロピレン単独重合体成分(I−1)と下記プロピレン共重合体成分(II)とからなるプロピレン重合材料、または、
プロピレン共重合体成分(I−2)と下記プロピレン共重合体成分(II)とからなるプロピレン重合材料、または、
プロピレン単独重合体成分(I−1)とプロピレン共重合体成分(I−2)とプロピレン共重合体成分(II)とからなるプロピレン重合材料である。
プロピレン共重合体成分(I−2):プロピレンに由来する単量体単位と、エチレンおよび炭素数4以上、12以下のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位からなる共重合体成分であって、
エチレンおよび炭素数4以上、12以下のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位の含有量が0.01重量%以上、15重量%未満である(但し、プロピレン共重合体成分(I−2)の全重量を100重量%とする)
プロピレン共重合体成分。
プロピレン共重合体成分(II):エチレンおよび炭素数4以上、12以下のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位と、プロピレンに由来する単量体単位とを含有する共重合体成分であって、
エチレンおよび炭素数4以上、12以下のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位の含有量が15重量%以上、80重量%以下である(但し、プロピレン共重合体成分(II)の全重量を100重量%とする)
プロピレン共重合体成分。
前記ヘテロファジックプロピレン重合材料に含まれる上記プロピレン共重合体成分(II)は、32重量%以上である(但し、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする)。
【請求項2】
前記ポリオレフィン製造システムは、前記噴流層型オレフィン重合反応領域の後段に接続された流動層型オレフィン重合反応領域が2以上である、請求項1に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
【請求項3】
前記ポリオレフィン製造システムは、最後段に流動層型オレフィン重合反応領域を備える、請求項1または2に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン製造システム、ポリオレフィンの製造方法およびヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、簡易な構成でありながら滞留時間分布を小さくすることのできるオレフィン重合反応装置、ポリオレフィン製造システム、および、ポリオレフィン製造方法が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、結晶性プロピレン系重合体部と非晶性プロピレン系重合体部とを有するプロピレン系重合体の製造方法であって、粘着性が低減した重合体粒子を得ることができるプロピレン系重合体の製造方法が開示されている。
【0004】
さらに、特許文献3には、効率的に水素濃度を低減させて、より高分子量のオレフィン重合体を製造することができるオレフィン重合体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−161735号公報(2009年7月23日公開)
【特許文献2】特開2005−290102号公報(2005年10月20日公開)
【特許文献3】特開2010−59413号公報(2010年3月18日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年では、ポリオレフィンからなる成形体に含まれる欠陥(ゲル)を更に低減することが求められている。また、近年では、コモノマー含有量の多いプロピレン重合材料や、このようなプロピレン重合材料をより安定的に連続製造する方法が求められる。
【0007】
本発明は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、得られるポリオレフィンからなる成形体に含まれるゲルを低減し、かつポリオレフィンを安定的に連続製造可能な、ポリオレフィン製造システム、ポリオレフィンの製造方法およびヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
<1>鉛直方向に延びる円筒部と、前記円筒部に形成され、下方に行くほど内径が小さくなると共に下端にガス導入用開口を有する縮径部とを備え、前記縮径部の内面と当該縮径部よりも上方の前記円筒部の内面とによって囲まれ、その内部に噴流層が形成される噴流層型オレフィン重合反応領域と、前記噴流層型オレフィン重合反応領域の後段に接続された流動層型オレフィン重合反応領域とを備え、前記噴流層型オレフィン重合反応領域の数が3以上である、ポリオレフィン製造システム。
【0010】
<2> 前記噴流層型オレフィン重合反応領域の後段に接続された流動層型オレフィン重合反応領域が2以上である、<1>に記載のポリオレフィン製造システム。
【0011】
<3> 最後段に流動層型オレフィン重合反応領域を備える、<1>または<2>に記載のポリオレフィン製造システム。
【0012】
<4> <1>〜<3>のいずれか1つに記載のポリオレフィン製造システムを用いて、オレフィンの重合を行うポリオレフィンの製造方法。
【0013】
<5> 前記ポリオレフィンが、プロピレンに由来する単量体単位と、エチレンおよび炭素数4以上、12以下のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位とを含有するプロピレン共重合体であり、前記プロピレン共重合体に含有される前記プロピレンに由来する単量体単位の含有量が50重量%以上、95重量%以下であり、前記エチレンおよび前記炭素数4以上、12以下のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位の含有量が5重量%以上、50重量%以下である(但し、前記プロピレン共重合体の全重量を100重量部とする)、<4>に記載のポリオレフィンの製造方法。
【0014】
<6> <1>〜<3>のいずれか1つに記載のポリオレフィン製造システムを用いて、オレフィンの重合を行う下記ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法であって、前記噴流層型オレフィン重合反応領域を用いて、オレフィンを重合し、プロピレン単独重合体成分(I−1)または下記プロピレン共重合体成分(I−2)またはこれら両方の成分を得る工程(1)と、前記工程(1)で得られたプロピレン単独重合体成分(I−1)またはプロピレン共重合体成分(I−2)またはこれら両方の成分の存在下、流動層型オレフィン重合反応領域を用いて、オレフィンを重合し、ヘテロファジックプロピレン重合材料を得る工程(2)とを含むヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
ヘテロファジックプロピレン重合材料:プロピレン単独重合体成分(I−1)と下記プロピレン共重合体成分(II)とからなるプロピレン重合材料、または、
プロピレン共重合体成分(I−2)と下記プロピレン共重合体成分(II)とからなるプロピレン重合材料、または、
プロピレン単独重合体成分(I−1)とプロピレン共重合体成分(I−2)とプロピレン共重合体成分(II)とからなるプロピレン重合材料。
【0015】
プロピレン共重合体成分(I−2):プロピレンに由来する単量体単位と、エチレンおよび炭素数4以上、12以下のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位からなる共重合体成分であって、エチレンおよび炭素数4以上、12以下のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位の含有量が0.01重量%以上、15重量%未満である(但し、プロピレン共重合体成分(I−2)の全重量を100重量%とする)プロピレン共重合体成分。
【0016】
プロピレン共重合体成分(II):エチレンおよび炭素数4以上、12以下のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位と、プロピレンに由来する単量体単位とを含有する共重合体成分であって、エチレンおよび炭素数4以上、12以下のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位の含有量が15重量%以上、80重量%以下である(但し、プロピレン共重合体成分(II)の全重量を100重量%とする)
プロピレン共重合体成分。
【0017】
<7> ヘテロファジックプロピレン重合材料に含まれる上記プロピレン共重合体成分(II)は、32重量%以上である(但し、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする)、<6>に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、得られるポリオレフィンからなる成形体に含まれるゲルを低減し、かつポリオレフィンを安定的に連続製造可能な、ポリオレフィン製造システム、ポリオレフィンの製造方法およびヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係るポリオレフィン製造システムの概略構成図である。
図2図1に示す多段気相重合反応装置の拡大概略断面図である。
図3図2に示す多段気相重合反応装置の部分拡大概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0021】
<ポリオレフィン製造システム>
本実施形態に係るポリオレフィン製造システムは、鉛直方向に延びる円筒部と、円筒部に形成され、下方に行くほど内径が小さくなると共に下端にガス導入用開口を有する縮径部とを備え、縮径部の内面と縮径部よりも上方の円筒部の内面とによって囲まれ、その内部に噴流層が形成される噴流層型オレフィン重合反応領域と、噴流層型オレフィン重合反応領域の後段に接続された流動層型オレフィン重合反応領域とを備え、噴流層型オレフィン重合反応領域の数が3以上であるものである。なお、以下では、図1図3に基づいて本実施形態に係るポリオレフィン製造システムの構成の一例を説明するが、本発明に係るポリオレフィン製造システムの構成はこの限りではない。
【0022】
図1は、本実施形態に係るポリオレフィン製造システムの概略構成図であり、図2は、図1に示す多段気相重合反応装置の拡大概略断面図であり、図3は、図2に示す多段気相重合反応装置の部分拡大概略断面図である。
【0023】
図1に示すように、ポリオレフィン製造システム11は、主として、オレフィン事前重合反応装置13と、オレフィン事前重合反応装置13の後段に接続された多段気相重合反応装置15と、多段気相重合反応装置15の後段に接続された第1の流動層型オレフィン重合反応装置17と、第1の流動層型オレフィン重合反応装置17の後段に接続された第2の流動層型オレフィン重合反応装置19とを備えている。なお、図1では、説明の便宜上、オレフィン事前重合反応装置13、多段気相重合反応装置15、第1および第2の流動層型オレフィン重合反応装置17,19はそれぞれ他の装置から分離した状態で示している。また、本明細書において「後段」とは、ポリオレフィン製造システム11における下流側を意味するものとする。以下、各装置について具体的に説明する。
【0024】
(オレフィン事前重合反応装置13)
オレフィン事前重合反応装置13は、オレフィン重合用触媒の存在下でオレフィンを重合させてポリオレフィン粒子を形成するための装置である。
【0025】
オレフィン事前重合反応装置13としては、特に限定されないが、例えば、スラリー重合反応装置、塊状重合反応装置、攪拌槽式気相重合反応装置、流動床式気相重合反応装置が挙げられる。なお、これらの装置は、1種を単独で用いてもよく、同一種類の複数の装置を組み合わせて用いてもよく、異なる種類の装置を2以上の組み合わせて用いてもよい。塊状重合反応装置としては、具体的には、例えば、特公昭41−12916号公報、特公昭46−11670号公報、特公昭47−42379号公報に記載の撹拌槽型反応装置やループ型反応装置などの公知の重合反応装置を挙げることができる。なお、塊状重合とは、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素:シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等の不活性溶媒が実質的に存在しない下で、プロピレン、ブテン等のオレフィン単量体をオレフィン重合用触媒とし、重合溶媒中にオレフィン重合用触媒を分散させて、生成する重合体が重合溶媒に溶解しない状態で重合を行う方法である。この重合は、重合溶媒が液状に保たれ、生成する重合体が重合溶媒に溶解しない温度および圧力で行う。その際、重合温度は、通常30〜100℃であり、好ましくは40〜80℃である。また、重合圧力は、通常、常圧〜10MPaG、好ましくは0.5〜5MPaGである。
【0026】
(多段気相重合反応装置15)
本実施形態に係る多段気相重合反応装置15は、オレフィン事前重合反応装置13によって生成したポリオレフィン粒子に対して、実質的に気相状態でオレフィン重合反応を行うための装置である。
【0027】
図2に示すように、多段気相重合反応装置15は、主として、鉛直方向に延びる円筒部12と、円筒部12に設けられたそらせ板20、および、円筒部12内に設けられた筒状バッフル(縮径部)30を備えている。筒状バッフル30は、円筒部12に形成され、下方に行くほど内径が小さくなると共に下端にガス導入用開口(図示せず)を有している。なお、本明細書において、噴流層型オレフィン重合反応領域25(以下、単に「反応領域25」ともいう)とは、筒状バッフル30の内面(上側面)と、筒状バッフル30よりも上方の円筒部12の内面とによって囲まれた領域を指す。より具体的には、噴流層型オレフィン重合反応領域25は、筒状バッフル30の内面(上側面)と、筒状バッフル30よりも上方、かつ、そらせ板20よりも下方の円筒部12の内面とによって囲まれた領域である。なお、本明細書において、「円筒部に形成され」とは、上述のように円筒部内に形成される構成だけではなく、円筒部に接続されて形成される構成も含むものとする。つまり、本実施形態において、バッフルは、上述したように円筒部内に設けられる構成としてもよく、または、当該円筒部の下方に接続される構成としてもよい。
【0028】
本実施形態では、複数の噴流層型オレフィン重合反応領域25を設けるため、円筒部12内にそらせ板20と筒状バッフルと30を複数設けた多段気相重合反応装置15としてもよい。その場合、そらせ板20および筒状バッフル30は、円筒部12の軸方向に交互に配置されていることが好ましい。なお、この場合、噴流層型オレフィン重合反応領域25は、筒状バッフル30よりも上方、かつ、そらせ板20よりも下方の円筒部12の内面とによって囲まれた領域を指す。
【0029】
また、多段気相重合反応装置15には、噴流層型オレフィン重合反応領域25だけではなく、流動層型オレフィン重合反応領域(図示せず)を設ける構成としてもよい。具体的には、例えば、円筒部12内に分散板(図示せず)を設置して、分散板上方に流動層型オレフィン重合反応領域(図示せず)を設けてもよい。これにより、円筒部12内には、噴流層型オレフィン重合反応領域25と流動層型オレフィン重合反応領域とが存在する。さらに、分散板を備える円筒部12と組み合わせることで、噴流層型オレフィン重合反応領域25と流動層型オレフィン重合反応領域とを複数組み合わせた多段気相重合反応装置15としても良い。
【0030】
噴流層の安定化の観点からは、円筒部12の内径は5m以下であることが好ましく、3.5m以下であることがより好ましい。
【0031】
多段気相重合反応装置15においては、ゲルを抑制する観点から、噴流層型オレフィン重合反応領域25の数は3以上であり、好ましくは4以上であり、より好ましくは5以上である。
【0032】
各反応領域25内においては、筒状バッフル30の下端30bに形成されたガス導入用開口から上方に向かってオレフィン含有ガスが高速で流入することによって、反応領域25内にはポリオレフィン粒子の噴流層が形成されるようになっている。そらせ板20は、噴流したポリオレフィン粒子が飛散するのを防止する役割を果たしている。これによって、フリーボードゾーンを短縮することができ、高い容積効率が達される。
【0033】
そらせ板20は、上端20aが閉じられると共に下方に向かうほど外径が大きくなる円錐形状をなし、下端20bは、円筒部12の内壁からは離間されている。これにより、吹き上げられた粒子は、そらせ板20の内面に衝突し、噴流層の環状構造へと取り込まれる。一方、ガスは下端20bと円筒部12の内壁との間を通って上方に流通することとなる。
【0034】
筒状バッフル30は、下方に向かうほど内径が小さくなるようにされたテーパー円筒であり、上端30aが円筒部12の内壁に接している。これにより、ガスは、下端30bの円形状のガス導入用開口から上方に流通し、上端30aと円筒部12との間からは流通しないようにされている。
【0035】
各反応領域25間のポリオレフィン粒子の移送として、ダウンカマー管による方法が挙げられる。円筒部12内に設けられた上方の筒状バッフル30には、これを貫通するようにダウンカマー管35aが設けられ、最下段の筒状バッフル30にはダウンカマー管35bが設けられている。ダウンカマー管35aは、上方の反応領域25から下方の反応領域25へとポリオレフィン粒子を降下させる。ダウンカマー管35bは、最下段の反応領域25からポリオレフィン粒子を抜き出して円筒部12外へと排出するためのものである。このダウンカマー管35bには2つのバルブV71,V72が直列に配設されており、これらのバルブを逐次開閉することにより、ポリオレフィン粒子を次工程に排出することができる。
【0036】
各反応領域25において安定な噴流層を形成するためには、筒状バッフル30は以下の条件を満足することが好ましい。すなわち、筒状バッフル30は、筒状バッフル30の下端30bのガス導入用開口の開口径dの円筒部12の内径dに対する比率(d/d)が0.35以下であることが好ましい。また、図3における筒状バッフル30の傾斜角α30すなわち、筒状バッフル30の内面の水平面とのなす角は、円筒部12内に存在するポリオレフィン粒子の安息角以上とされることが好ましく、傾斜角α30は、安息角以上であって、ポリオレフィン粒子が重力により全量自然に排出され得る角度以上とすることがより好ましい。これにより、ポリオレフィン粒子のスムーズな下方への移動が達成される。
【0037】
図3におけるそらせ板20の傾斜角α20すなわち、そらせ板20の外面(下側面)の水平面とのなす角も円筒部12内に存在するポリオレフィン粒子の安息角以上とされることが好ましい。これにより、そらせ板20にポリオレフィン粒子が付着することを十分に防止できる。
【0038】
ポリオレフィン粒子の安息角は、例えば、35〜50°程度であり、傾斜角α30およびα20は、55°以上とすることが好ましい。
【0039】
なお、そらせ板20および筒状バッフル30は、それぞれ、図示しないサポートにより、円筒部12に固定されており、このサポートによるガス流れやポリオレフィン流れへの影響はほとんどない。円筒部12、そらせ板20および筒状バッフル30の材質としては、例えば、カーボンスチール、SUS304およびSUS316Lなどを用いることができる。なお、SUSは、JIS(日本工業規格)で規定されるステンレス規格である。腐食成分(例えば、塩素などのハロゲン成分)を多く含む触媒を使用するにあっては、SUS316Lを用いることが好ましい。
【0040】
図2に示すように、円筒部12の下部には、ガス供給ノズル40が設けられており、ラインL30およびコンプレッサ54を介して、ガス状のオレフィンモノマーが円筒部12の下部に供給される。一方、円筒部12の上部には、ガス排出ノズル61が設けられている。円筒部12内を上昇したガスは、ラインL40を介して外部に排出され、必要に応じて設置されるサイクロン62によりガス同伴粒子が排出される。ガスは、熱交換器63、コンプレッサ64、熱交換器65および気液分離器66における処理を経た後、ラインL35を介してラインL30内に導入されてリサイクルされる。なお、円筒部12の装置下部には、ガス供給ノズル40以外に運転終了時にポリオレフィン粒子を排出できる排出ノズル(図示せず)を設けてもよい。また、運転終了時の多段気相重合反応装置15の粉体存量を軽減することを目的に、円筒部12の下部のガス流れを阻害しない位置に、逆円錐形状の内装物(図示せず)を設置してもよい。
【0041】
また、円筒部12には、気液分離器66で分離された液体オレフィンを円筒部12の外から、所定の反応領域25内に供給する液体供給ノズル50が設けられている。より具体的には、図3に示すように、液体供給ノズル50は上から2段目の筒状バッフル30のガス導入用開口近傍に配設され、噴流に向けた液体オレフィンが噴射されるようになっている。この液体供給ノズル50には、液化されたオレフィン単量体を必要に応じて供給するポンプおよびラインL20が接続されている。また、図3においては、液体供給ノズル50は筒状バッフル30のガス導入用開口近傍に配設されているが、当該液体供給ノズル50の位置はこれに限定されるものではなく、例えば、そらせ板20の下端近傍に配設してもよい。あるいは、筒状バッフル30の内面に液化されたオレフィン単量体を供給できるように、液体供給ノズル50は、筒状バッフル30の側面を貫通させて配設してもよい。
【0042】
さらに、円筒部12における筒状バッフル30の外面に面する部分には、ガス排出ノズル60を複数設けても良い。より具体的には、図3に示すように、ガス排出ノズル60は上から2段目の筒状バッフル30の外面に面する部分に設けてもよい。このガス排出ノズル60は、ラインL41を介してラインL40に接続されている。ガス排出ノズル60から排出されるガス量は、液体供給ノズル50から供給された気化したガス量とほぼ同じとなるようにそれぞれバルブ等により制御される。したがって、液体供給ノズル50から液化されたオレフィンが円筒部12内に供給された場合でも、円筒部12内のガス空塔速度は上下でほぼ一定に維持される。
【0043】
また、円筒部12における最上段の筒状バッフル30よりも高い位置には、ラインL5が接続され、オレフィン事前重合反応装置13で形成された、オレフィン重合用触媒の固体粒子を含有するポリオレフィン粒子が、最上段の反応領域25に供給される。
【0044】
このようにして本実施形態では、オレフィン事前重合反応装置13および多段気相重合反応装置15により2段の重合工程が実現されている。そしてオレフィン事前重合反応装置13によりポリオレフィン粒子を重合して成長させて、好ましくは粒径500μm以上、より好ましくは700μm以上、特に好ましくは粒径850μm以上の比較的大きなポリオレフィン粒子とすることにより、多段気相重合反応装置15においてより安定な噴流層が形成できる。
【0045】
なお、本実施形態では、図1に示したように、ポリオレフィン製造システム11は、オレフィン事前重合反応装置13を備えた構成としているが、本発明に係るポリオレフィン製造システムは、オレフィン事前重合反応装置を備えない構成としてもよい。その場合には、ラインL5を介して、予備重合触媒または固体触媒が直接、多段気相重合反応装置15に供給され、多段気相重合反応装置15内でオレフィンの重合が行われる。
【0046】
また、本発明のポリオレフィン製造システムは、上述したように一つの多段気相重合反応装置15が複数の噴流層型オレフィン重合反応領域25を有する構成としてもよく、あるいは、一つの噴流層型オレフィン重合反応領域を有する気相重合反応装置(筒)を複数接続することで、ポリオレフィン製造システムを構成してもよい。
【0047】
(第1および第2の流動層型オレフィン重合反応装置17,19)
本実施形態に係る第1および第2の流動層型オレフィン重合反応装置17,19(図1参照)は、気相状態のオレフィン単量体を媒体として、その媒体中でオレフィン重合用触媒およびポリオレフィン(以下、オレフィン重合体ということもある)を主として媒体の流れによって流動状態に保ちながら、気相状態のオレフィン単量体を重合するための装置である。
【0048】
本実施形態では、流動化を促進するため、第1および第2の流動層型オレフィン重合反応装置17,19のそれぞれには、補助的に撹拌装置(図示せず)を設けてもよい。
【0049】
第1および第2の流動層型オレフィン重合反応装置17,19における重合温度は、通常、0〜120℃であり、好ましくは20〜100℃であり、より好ましくは40〜100℃である。また、重合圧力は、流動層型オレフィン重合反応装置17,19内でオレフィンが気相として存在し得る範囲内であればよく、通常、常圧〜10MPaG、好ましくは0.2〜8MPaG、より好ましくは0.5〜5MPaGである。
【0050】
なお、本実施形態では、ポリオレフィン製造システム1は、第1および第2の流動層型オレフィン重合反応装置17,19の2つの装置が多段気相重合反応装置15の後段に接続された構成とすることで、噴流層型オレフィン重合反応領域25の後段に接続された流動層型オレフィン重合反応領域を2以上とする構成について説明したが、本発明に係るポリオレフィン製造システムは、噴流層型オレフィン重合反応領域25の後段に接続される流動層型オレフィン重合反応領域の数は、特に限定されるものではない。また、コモノマー含有量の多いプロピレン重合材料などの粘着性が高いポリオレフィンにおいても安定的に製造できる観点から、流動層型オレフィン重合反応領域を最後段に備えることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0051】
例えば、詳しくは後述するヘテロファジックプロピレン重合材料の製造時において、粘着性が高いプロピレン共重合体成分(II)の重合時に、オレフィンガスの組成を変えることでポリマー組成の異なるプロピレン共重合成分を安定的に得られるとの観点から、多段気相重合反応装置15の後段に2以上の流動層型オレフィン重合反応装置を設置することで、噴流層型オレフィン重合反応領域25の後段に流動層型オレフィン重合反応領域を2以上接続することが好ましい。
【0052】
その際、2以上の流動層型オレフィン事前重合反応装置の接続方法は特に限定されない。したがって、例えば、一方の流動層型オレフィン重合反応装置の流動層に抜き出し配管(図示せず)を設け、他方の流動層型オレフィン重合反応装置に圧送する構成としてもよい。この場合、他方の流動層型オレフィン重合反応装置への入り口(図示せず)は、流動層の中でも、流動層の上でも構わない。
【0053】
次に、本実施形態に係るポリオレフィン製造システム1を用いて、オレフィンの重合を行うポリオレフィンの製造方法について、再度図1を参照して説明する。
【0054】
<ポリオレフィンの製造方法>
本実施形態に係るポリオレフィンの製造方法(以下、単に「ポリオレフィンの製造方法」ともいう)では、ポリオレフィン製造システム1を用いて、オレフィンの重合を行い、ポリオレフィンを製造する。
【0055】
本実施形態に係るポリオレフィンの製造において用いられるオレフィンの種類は限定されないが、炭素数1〜12のα−オレフィンであることが好ましい。このようなオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン,4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられ、中でも、エチレン、プロピレン、1−ブテンが好ましい。
【0056】
また、本実施形態に係るポリオレフィンの種類は、限定されないが、炭素数1〜12のα−オレフィンからなる群より選ばれる一種以上のオレフィンに基づく単量体単位を有するポリオレフィンであることが好ましい。本実施形態において得られるポリオレフィンは、プロピレンに基づく単量体単位を有するポリオレフィンであることがより好ましい。なお、当該ポリオレフィンは、単独重合体でも、共重合体でもよい。当該単独重合体とは、具体的には、炭素数1〜12のα−オレフィンからなる群より選ばれる一種のオレフィンに基づく単量体単位を有する単独重合体である。また、当該共重合体としては、エチレンに基づく単量体単位と炭素数3〜12のα−オレフィンからなる群より選ばれる一種以上のオレフィンに基づく単量体単位とを有する共重合体、プロピレンに基づく単量体単位と炭素数4〜12のα−オレフィンからなる群より選ばれる一種以上のオレフィンに基づく単量体単位とを有する共重合体などが挙げられる。エチレンに基づく単量体単位と炭素数3〜12のα−オレフィンからなる群より選ばれる一種以上のオレフィンに基づく単量体単位とを有する共重合体としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体が挙げられる。プロピレンに基づく単量体単位と炭素数4〜12のα−オレフィンからなる群より選ばれる一種以上のオレフィンに基づく単量体単位とを有する共重合体としては、例えば、プロピレン−1−ブテン共重合体が挙げられる。本発明において、ポリオレフィンは、上記単独重合体と共重合体とを含む組成物、または、異なる共重合体との組成物でもよい。特に、本発明において、ポリオレフィンは、単独重合体および共重合体がプロピレンに基づく単量体単位を有している、単独重合体と共重合体とを含む組成物、または、異なる共重合体との組成物である、ヘテロファジックプロピレンプロピレン重合材料であることが好ましい。
【0057】
本発明において、ポリオレフィンは、上記共重合体の中でも特に、プロピレンに基づく単量体単位を有するプロピレン共重合体であることが好ましい。当該プロピレン共重合体における、プロピレンに由来する単量体単位の含有量は、例えば50重量%以上、95重量%以下であり、好ましくは70重量%以上、95重量%以下であり、より好ましくは75重量%以上、90重量%以下である(但し、プロピレン共重合体の全重量を100重量%とする)。
【0058】
プロピレン共重合体における、エチレンおよび炭素数4以上、12以下のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位の含有量は、例えば5重量%以上、50重量%以下であり、好ましくは5重量%以上、30重量%以下であり、より好ましくは10重量%以上、25重量%以下である(但し、プロピレン共重合体の全重量を100重量%とする)。
【0059】
[ポリオレフィン製造システム1を用いたポリオレフィンの製造方法の詳細]
本実施形態に係るポリオレフィンの製造方法では、多段気相重合反応装置15において、ポリオレフィン粒子に対して、実質的に気相状態でオレフィン重合反応を行わせる。その際、予めオレフィン事前重合反応装置13においてポリオレフィン粒子を重合して成長させておき、成長したポリオレフィン粒子を、多段気相重合反応装置15に供給してもよい。あるいは、予備重合触媒または固体触媒を直接、多段気相重合反応装置15に供給して、オレフィンの重合を行ってもよい。
【0060】
多段気相重合反応装置15では、多段気相重合反応装置15の下部からオレフィンおよび水素を連続的に供給し、各反応領域25のそれぞれに噴流層を形成させ、ガス組成および圧力を一定に保つようオレフィンと水素の供給量をコントロールし、オレフィンの単独重合を行うことができる。図2を用いてより具体的に説明すると、オレフィンおよび水素をガス供給ノズル40から連続的に供給し、各反応領域25のそれぞれに噴流層を形成させ、ガス排出ノズル61から連続的にガスを排出する。また、ラインL41を介して、各反応領域25に供給されるガス流量の調整を行ってもよい。
【0061】
また、多段気相重合反応装置15で用いるガスとしては、オレフィンおよび水素以外に窒素等の不活性ガスを用いることができる。
【0062】
また、多段気相重合反応装置15を用いてポリプロピレンを製造する場合、重合温度は、例えば0〜120℃であり、好ましくは20〜100℃であり、より好ましくは40〜100℃である。
【0063】
また、多段気相重合反応装置15を用いてポリプロピレンを製造する場合の重合圧力は、例えば常圧〜10MPaであり、好ましくは0.2〜8MPaであり、より好ましくは0.5〜5MPaである。
【0064】
また、多段気相重合反応装置15を用いてポリプロピレンを製造する場合の循環ガスは、反応領域25で安定的に噴流層を形成させるために、特開2009−161735号公報に記載の最小ガス空塔速度Ums以上になるように供給を行う必要がある。また、多段気相重合反応装置15に分散板(図示せず)を設置することで、多段気相重合反応装置15に流動層型オレフィン重合反応領域(図示せず)を設ける場合には、特開2009−161735号公報に記載の最小流動化速度Umf以上にガスを供給する必要がある。
【0065】
また、反応領域25内における噴流層高さは、特開2009−161735号公報に記載の最大噴流層高さLsMAX以下であり、安定な噴流層を形成させる観点から、当該噴流層高さは、筒状バッフル30よりも高いことが好ましい。
【0066】
それから、多段気相重合反応装置15内で生成したポリプロピレン粒子を、流動層型オレフィン重合反応装置17に移送し、流動層型オレフィン重合反応装置17に、プロピレン、エチレンおよび水素を連続的に供給し、ガス組成および温度、圧力を一定に保つようにガス供給量を調整しながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンとエチレンとの共重合を行う。
【0067】
本実施形態によれば、流動層型オレフィン重合反応装置17内で生成したポリオレフィンをさらに流動層型オレフィン重合反応装置19に移送し、流動層型オレフィン重合反応装置19内で流動層型オレフィン重合反応装置17と同様の操作を行うことで、異なる組成の重合体材料を製造することができ、より多様な組成を有するポリオレフィンの製造が可能になるという効果が得られる。
【0068】
本発明においてポリオレフィンを製造するために使用される触媒としては、チーグラー・ナッタ型触媒やメタロセン系触媒等が挙げられ、好ましくは、チーグラー・ナッタ型触媒である。チーグラー・ナッタ型触媒としては、例えば、マグネシウム化合物にチタン化合物を接触させて得られる固体触媒成分等のTi−Mg系触媒、マグネシウム化合物にチタン化合物を接触させて得られる固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および必要に応じて電子供与性化合物等の第3成分を含有する触媒等が挙げられ、好ましくは、マグネシウム化合物にチタン化合物を接触させて得られる固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および必要に応じて電子供与性化合物等の第3成分とを含有する触媒であり、さらに好ましくは、マグネシウム化合物にハロゲン化チタン化合物を接触させて得られる固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および電子供与性化合物を含有する触媒である。触媒として、少量のオレフィンを接触させ、予備活性化させたものを用いてもよい。
【0069】
続いて、本実施形態に係るポリオレフィンの製造方法の一具体例として、ポリオレフィン製造システム1を用いてオレフィンの重合を行う、ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造について、再度図1を参照して具体的に説明する。
【0070】
<ポリオレフィン製造システム1を用いたテロファジックプロピレン重合材料の製造方法>
本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法は、ポリオレフィン製造システム1を用いてオレフィンの重合を行うものであって、具体的には、多段気相重合反応装置15を用いてオレフィンを重合し、プロピレン単独重合体成分(I‐1)またはプロピレン共重合体成分(I−2)またはこれら成分の両方を得る工程(1)と、この工程(1)で得られたプロピレン単独重合体成分(I−1)またはプロピレン共重合体成分(I−2)またはこれら両方の成分の存在下、流動層型オレフィン重合反応装置17、さらには流動層型オレフィン重合反応装置19を用いて、オレフィンを重合し、ヘテロファジックプロピレン重合材料を得る工程(2)とを含むものである。
【0071】
(ヘテロファジックプロピレン重合材料)
本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料とは、
(i)プロピレン単独重合体成分(I‐1)とプロピレン共重合体成分(II)とからなるプロピレン重合材料、または、
(ii)プロピレン共重合体成分(I‐2)とプロピレン共重合体成分(II)とからなるプロピレン重合材料、または、
(iii)プロピレン単独重合体成分(I‐1)とプロピレン共重合体成分(I‐2)とプロピレン共重合体成分(II)とからなるプロピレン重合材料である。
【0072】
本実施形態において、プロピレン単独重合体成分(I−1)とは、プロピレンに由来する単量体単位からなる単独重合体成分である。
【0073】
また、プロピレン共重合体成分(I−2)およびプロピレン共重合体成分(II)とは、より具体的には、以下の通りである。
【0074】
プロピレン共重合体成分(I−2):
プロピレンに由来する単量体単位と、エチレンおよび炭素数4以上、12以下のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位からなる共重合体成分であって、エチレンおよび炭素数4以上、12以下のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位の含有量が0.01重量%以上、15重量%未満、好ましくは0.01重量%以上、12重量%未満、より好ましくは3重量%以上、10重量%未満である(但し、プロピレン共重合体成分(I−2)の全重量を100重量%とする)。
【0075】
プロピレン共重合体成分(II):
エチレンおよび炭素数4以上、12以下のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位と、プロピレンに由来する単量体単位とを含有する共重合体成分であって、エチレンおよび炭素数4以上、12以下のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位の含有量が15重量%以上、80重量%以下、好ましくは20重量%以上、70重量%以下、より好ましくは25重量%以上、60重量%以下である(但し、プロピレン重合体成分(II)の全重量を100重量%とする)。
【0076】
プロピレン共重合体成分(I−2)としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−1−デセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−デセン共重合体成分等が挙げられ、好ましくは、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分が挙げられる。
【0077】
本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料としては、例えば、(プロピレン)−(エチレン−プロピレン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレンーエチレン)−(エチレン−プロピレン)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン)−(エチレン−プロピレン)−(エチレン−プロピレン)ヘテロファジック重合材料等が挙げられる。
【0078】
本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料において、ヘテロファジックプロピレン重合材料に含まれるプロピレン重合体成分(II)は、好ましくは32重量%以上、より好ましくは35重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上である(但し、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする)。
【0079】
本実施形態において、プロピレン共重合体成分(I−2)またはプロピレン共重合体成分(II)に用いられる、炭素数4以上、12以下のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチル−1−ペンテン等が挙げられ、好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、より好ましくは1−ブテンである。
【0080】
以下、本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法について、再度図1を参照して、具体的に説明する。
【0081】
[ポリオレフィン製造システム1を用いたヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法の詳細]
本実施形態に係るヘテロプロピレン重合材料の製造方法は、ポリオレフィン製造システム1を用いてオレフィンの重合を行うものであり、以下に示す工程(1)と、工程(2)とを含むものである。
【0082】
工程(1)
工程(1)では、例えば、多段気相重合反応装置15を用いて、オレフィンを重合し、プロピレン単独重合体成分(I−1)またはプロピレン共重合体成分(I−2)またはこれら両方の成分を得ることができる。
【0083】
プロピレン単独重合体成分(I−1)は、例えば、多段気相重合反応装置15の下部から、プロピレンおよび水素を連続的に供給し、多段気相重合反応装置15の各反応領域25にそれぞれ噴流層を形成させ、ガス組成および圧力を一定に保つよう、プロピレンと水素との供給量をコントロールすることで得られる。
【0084】
また、プロピレン共重合体成分(I−2)は、例えば、多段気相重合反応装置15の下部からプロピレン、エチレンおよび炭素数4以上、12以下のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位および水素を連続的に供給し、多段気相重合反応装置15の各反応領域25にそれぞれ噴流層を形成させ、ガス組成および圧力を一定に保つよう、上記各物質の供給量をコントロールすることによって得られる。
【0085】
なお、本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法において、多段気相重合反応装置15における重合温度は、例えば0〜120℃であり、好ましくは20〜100℃であり、より好ましくは40〜100℃である。
【0086】
また、多段気相重合反応装置15における重合圧力は、例えば常圧〜10MPaであり、好ましくは0.2〜8MPaであり、より好ましくは0.5〜5MPaである。
【0087】
また、多段気相重合反応装置15を用いてポリプロピレンを製造する場合の循環ガスは、反応領域25で安定的に噴流層を形成させるために、特開2009−161735号公報に記載の最小ガス空塔速度Ums以上になるように供給を行う必要がある。また、多段気相重合反応装置15に分散板(図示せず)を設置することで、多段気相重合反応装置15内に流動層型オレフィン反応領域が設けられる場合には、特開2009−161735号公報に記載の最小流動化速度Umf以上にガスを供給する必要がある。
【0088】
また、多段気相重合反応装置15において、形成される噴流層は3以上であり、好ましくは4以上であり、より好ましくは5以上である。
【0089】
工程(2)
工程(2)では、例えば、工程(1)で得られたプロピレン単独重合体成分(I−1)またはプロピレン重合体成分(I−2)またはこれら両方の成分の存在下、流動層型オレフィン重合反応装置17、さらには流動層型オレフィン重合反応装置19を用いて、オレフィンを重合し、ヘテロファジックプロピレン重合材料を得てもよい。その際、用いる流動層型オレフィン重合反応装置の数は、1つであってもよいが、好ましくは2以上である。
【0090】
本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法において、流動層型オレフィン重合反応装置17,19における重合温度は、例えば0〜120℃であり、好ましくは20〜100℃であり、より好ましくは40〜100℃である。
【0091】
また、流動層型オレフィン重合反応装置17,19における重合圧力は、例えば常圧〜10MPaであり、好ましくは0.2〜8MPaであり、より好ましくは0.5〜5MPaである。
【0092】
また、流動層型オレフィン重合反応装置17,19における循環ガスは、特開2009−161735号公報に記載の最小流動化速度Umf以上でガスを供給する必要がある。
【0093】
また、流動層型オレフィン重合反応装置17,19において、分散板(図示せず)を含む構成とした場合には、当該分散板からの流動層高さは、塔径の10倍以下であることが好ましい。
【0094】
本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法によれば、ポリオレフィン製造システム1を用いることによって、得られるヘテロファジックプロピレン重合材料にゲルが多量に発生することを防ぐことができる。また、この方法によれば、多段気相重合反応装置15内で塊化物が発生することはないため、ヘテロファジックプロピレン重合材料を安定的に連続製造することができる。
【実施例】
【0095】
以下の各実施例および各比較例に示した測定値は、次の条件によって測定した。
【0096】
(i)極限粘度(単位:dl/g)
所定の濃度となるように重合体を1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン溶媒に溶解させ、3種類の試料を調製した。それぞれの試料の重合体濃度は、0.1g/dl、0.2g/dlおよび0.5g/dlとした。温度135℃の条件下、これらの試料の還元粘度をウベローデ型粘度計を用いて測定した。「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年、共立出版会社刊)の第491頁に記載の計算法に従い、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿することによって極限粘度を求めた。
【0097】
(ii)エチレン単位含有量(単位:質量%)
高分子ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店刊)の第619頁に記載のIRスペクトル測定に準拠し、IRスペクトル法によってエチレン単位含有量を求めた。なお、ここでいう「エチレン単位」とはエチレン由来の構造単位を意味する。
【0098】
(iii)各重合工程における重合活性(単位:g/g)
各重合工程において生成した重合体の質量(g)をその重合工程に供給した固体触媒成分の質量(g)で除すことによって、重合活性を算出した。
【0099】
(iv)共重合体成分の含有量FEP(単位:質量%)
共重合体成分の含有量FEP(単位:質量%)は、下記式により算出した。式中、Wtは単位時間あたりの重合体(単独重合体成分および共重合体成分)の全製造量を示し、WEPは重合工程(III)における単位時間あたりの共重合体成分の製造量を示す。
【0100】
FEP=WEP/Wt×100
(v)各重合工程で生成した重合体の極限粘度(単位:dl/g)
後述する重合工程(I)で生成した重合体成分の極限粘度[η]P1、重合工程(II)で生成した重合体成分の極限粘度[η]P2、重合工程(III)で生成した共重合体成分の極限粘度[η]EPは、下記式により算出した。
【0101】
[η]P1=[η]1
[η]P2=([η]2−[η]P1×WP1/(WP1+WP2))×(WP1+WP2)/WP2
[η]EP=([η]3−[η]P1×WP1/100−[η]P2×WP2/100)×100/WEP
[η]1:重合工程(I)の重合体の極限粘度(dl/g)
[η]2:重合工程(II)後の重合体の極限粘度(dl/g)
[η]3:重合工程(III)後の重合体の極限粘度(dl/g)
WP1:重合工程(I)における重合体製造量(kg/時間)
WP2:重合工程(II)における重合体製造量(kg/時間)
(vi)各重合工程で生成した重合体成分のエチレン単位含有量(単位:質量%)
重合工程(III)で生成した重合体成分のエチレン単位含有量EEP(単位:質量%)は、下記式により算出した。
【0102】
EEP=E3×100/FEP
E3:重合工程(III)後の重合体のエチレン単位含有量(単位:質量%)
(vii)フィッシュアイ数(単位:個/100cm
スクリュー径20mmφの単軸押出機を備えるTダイフィルム加工機(田辺プラスチックス機械(株)製、Tダイ幅:100mm)に重合体を供給し、温度210℃の条件で厚さ50μmのシートを作製した。得られたシートをスキャナー(セイコーエプソン株式会社製、商品名:GT−9600、解像度1600dpi)の原稿台上に載置した。その後、ハンザハードクロムフェロタイプ板(商品名、近江屋写真用品株式会社製)の鏡面処理された面がシート側に向くように、当該フェロタイプ板をシート上に載置した。スキャナーの解像度を900dpi、各画素の階調を8bitに設定し、シートの画像を白黒像としてコンピューターに取り込み、ビットマップ形式で保存した。この画像を画像解析ソフト(旭化成エンジニアリング株式会社製、商品名:A像くん(登録商標))を用いて2値化した。フィッシュアイは周辺よりも明るい部分として認識された。フィッシュアイの形状は不定形であったので、フィッシュアイと同じ面積を有する円の直径をフィッシュアイの大きさとし、直径200μm以上のフィッシュアイの数を測定した。フィッシュアイ数は、シート100cmあたりの数とした。
【0103】
運転性の評価は、以下の通り実施した。
【0104】
運転性○;気相重合リアクター内で、塊化物が発生することがなく、安定的に連続製造ができた。
【0105】
運転性×;気相重合リアクター内の粒子の流動不良が悪化し、リアクターからの抜き出し不良や、リアクター内での塊が発生し、安定的に運転できなかった。
【0106】
(実施例1)
[オレフィン重合用触媒(固体触媒)の調整]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分の合成
工程(1−1A):撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた100mLのフラスコを窒素で置換した後、該フラスコに、トルエン36.0mL、四塩化チタン22.5mLを投入し、撹拌した。フラスコ内の温度を0℃とした後、同温度でマグネシウムエトキシド1.88gを30分おきに4回投入した後、0℃で1.5時間撹拌した。次いで、2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル0.60mLをフラスコ内に投入した後でフラスコ内の温度を10℃に昇温した。その後、同温度で2時間撹拌し、トルエン9.8mLを投入した。次いで、フラスコ内の温度を1.2K/分の速度で昇温し、60℃の時点でフラスコ内に2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル3.15mLを投入し、110℃まで昇温した。同温度で3時間、フラスコ内に投入した成分を撹拌した。得られた混合物を固液分離して固体を得た。該固体を100℃にてトルエン56.3mLで3回洗浄した。
工程(1−1B):洗浄後の固体にトルエン38.3mLを投入し、スラリーを形成した。該スラリーに四塩化チタン15.0mL、2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル0.75mLを投入して混合物を形成し、110℃で1時間混合物を攪拌した。その後、攪拌した混合物を固液分離し、該固体を60℃にてトルエン56.3mLで3回洗浄し、さらに室温にてヘキサン56.3mLで3回洗浄し、洗浄後の固体を減圧乾燥してオレフィン重合用固体触媒成分を得た。この固体触媒成分について、チタン原子含有量は2.53重量%であり、エトキシ基含有量は0.44重量%であり、内部電子供与体含有量は13.7重量%であり、またレーザ回折・散乱法による中心粒径は59.5μmであった。
【0107】
[予備重合]
内容積3Lの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気処理したn−ヘキサン1.3L、トリエチルアルミニウム26ミリモル、t−ブチル−n−プロピルメトキシシラン2.6ミリモルを収容させた。その中に上記固体触媒成分10gを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン10gを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積150Lの攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタン100Lを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0108】
[重合工程I(オレフィン事前重合反応装置を用いたプロピレン単独重合)]
攪拌機付きSUS304製ベッセルタイプのスラリー重合リアクターをオレフィン事前重合反応装置として用いて、プロピレンの単独重合を行った。すなわち、プロピレン、水素、トリエチルアルミニウム、t−ブチル−n−プロピルジメトキシシランおよび予備重合触媒成分のスラリーをリアクターに連続的に供給し、重合反応を行った。反応条件は以下の通りとした。
【0109】
重合温度:50℃、
攪拌速度:150rpm、
リアクターの液レベル:18L、
プロピレンの供給量:18kg/時間、
水素の供給量:36NL/時間、
トリエチルアルミニウムの供給量:32.4ミリモル/時間、
t−ブチル−n−プロピルジメトキシシランの供給量:0.64ミリモル/時間、
予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.49g/時間、
重合圧力:2.6MPa(ゲージ圧)。
【0110】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.38時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は0.44kg/時間であった。また、この重合工程における重合活性は912g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.99dl/gであった。
【0111】
[重合工程II(多段気相重合反応装置によるプロピレン単独重合(気相重合))]
鉛直方向に6段の反応領域を有し、その内最上段が流動層であり、残りの5段が噴流層である多段気相重合リアクターを多段気相重合反応装置として準備した。
【0112】
前段のスラリー重合リアクターから上記多段気相重合リアクターの最上段である流動層に、ポリプロピレン粒子および液状プロピレンを含むスラリーを失活させることなく連続供給した。
【0113】
多段気相重合リアクター内でのポリプロピレン粒子の段間移送は、ダブル弁方式により行った。この移送手段は、上段の反応領域と下段の反応領域を1インチサイズの配管で接続し、配管に二つの開閉弁を設け、下側の弁を閉じた状態で上側の弁を開け、上段の反応領域から弁の間にパウダーを溜め込み、その後、上側の弁を閉じた後に下側の弁を開けることで下段の反応領域にポリプロピレン粒子を移送するものである。
【0114】
上記構成の多段気相重合リアクターの下部からプロピレンおよび水素を連続的に供給した。これにより、各反応領域にそれぞれ流動層または噴流層を形成させ、ガス組成および圧力を一定に保つようプロピレンと水素の供給量をコントロールし、過剰ガスをパージしながらプロピレンの単独重合を更に行った。反応条件は以下の通りとした。
【0115】
重合温度:70℃、
重合圧力:2.0MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:27m/時間、
ポリプロピレン粒子のホールドアップ量:1段目(流動層)3.1kg
2段目(噴流層)6.9kg
3段目(噴流層)6.7kg
4段目(噴流層)5.5kg
5段目(噴流層)6.1kg
6段目(噴流層)6.5kg
当該リアクターにおいては、平均滞留時間は3.4時間であり、リアクター内ガスの濃度比(水素/(水素+プロピレン))は6.8モル%であり、排出されたポリマー粒子は16.3kg/時間であった。この重合工程における重合活性は32586g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は1.01dl/gであった。
【0116】
[重合工程III(流動層型オレフィン重合反応装置によるプロピレン−エチレン共重合(気相重合))]
前段の多段気相重合リアクターから排出されるポリプロピレン粒子を流動層型オレフィン重合反応装置としての流動層型リアクターに連続的に供給した。流動層型リアクターはガス分散板を備えたものであり、前段の多段気相重合リアクターから流動層型リアクターへのポリプロピレン粒子の移送手段は、上記のダブル弁方式で行った。
【0117】
上記構成の流動層型リアクターにプロピレン、エチレンおよび水素を連続的に供給し、ガス組成および圧力を一定に保つようにガス供給量の調整および過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンとエチレンとの共重合を行った。反応条件は以下の通りとした。
【0118】
重合温度:70℃、
重合圧力:2.0MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:44m/時間、
ポリマー粒子ホールドアップ量:17kg。
【0119】
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は0.71時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が40.6モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が2.2モル%であった。排出されたポリマー粒子は24.0kg/時間であり、安定的に製造ができた。この重合工程における重合活性は15772g/gであった。得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が2.67dl/g、含有量が32.0質量%、エチレン単位含有量が43.5質量%であった。表1に結果を示す。また、最終的に得られた重合体のエチレン単位含有量は13.9質量%であった。これらの結果を表1に示す。
【0120】
(実施例2)
[予備重合]
実施例1と同様の方法で予備重合を実施した。
【0121】
[重合工程I(スラリー重合リアクターを用いたプロピレン単独重合)]
下記の項目について反応条件を変更したことの他は、実施例1の重合工程Iと同様にしてプロピレンの単独重合を行った。
【0122】
トリエチルアルミニウムの供給量:31.4ミリモル/時間、
t−ブチル−n−プロピルジメトキシシランの供給量:0.61ミリモル/時間、
予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.53g/時間、
重合圧力:2.7MPa(ゲージ圧)。
【0123】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.37時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は0.48kg/時間であった。また、この重合工程における重合活性は895g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.99dl/gであった。
【0124】
[重合工程II(多段気相重合リアクターによるプロピレン単独重合(気相重合))]
実施例1の重合工程IIにおいて用いたものと同様の多段気相重合リアクターを用い、以下の反応条件以外は、実施例1と同様の方法でプロピレンの単独重合を更に行った。
【0125】
ポリプロピレン粒子のホールドアップ量:1段目(流動層)3.1kg
2段目(噴流層)7.3kg
3段目(噴流層)7.5kg
4段目(噴流層)6.0kg
5段目(噴流層)6.8kg
6段目(噴流層)6.5kg
当該リアクターにおいては、平均滞留時間は3.6時間であり、リアクター内ガスの濃度比(水素/(水素+プロピレン))は7.0モル%であり、排出されたポリマー粒子は16.5kg/時間であった。この重合工程における重合活性は30040g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は1.02dl/gであった。
【0126】
[重合工程III(流動層型リアクターによるプロピレン−エチレン共重合(気相重合))]
実施例1の重合工程IIIにおいて用いたものと同様の流動層型リアクター用い、実施例1と同様の方法でプロピレンとエチレンとの共重合を行った。
【0127】
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は0.78時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が39.4モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が2.0モル%であった。排出されたポリマー粒子は26.6kg/時間であり、安定的に製造ができた。この重合工程における重合活性は48141g/gであった。得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が2.88dl/g、含有量が37.6質量%、エチレン単位含有量が43.9質量%であった。また、最終的に得られた重合体のエチレン単位含有量は16.5質量%であった。これらの結果を表1に示す。
【0128】
(実施例3)
[予備重合]
内容積3Lの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気処理したn−ヘキサン1.0L、トリエチルアルミニウム20ミリモル、t−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン2.0ミリモルを収容させた。その中に実施例1に記載の固体触媒成分7gを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン7gを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積150Lの攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタン100Lを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0129】
[重合工程I(スラリー重合リアクターを用いたプロピレンーエチレン共重合)]
下記の項目について反応条件を変更したことの他は、実施例1の重合工程Iと同様にしてプロピレンとエチレンの共重合を行った。
【0130】
プロピレンの供給量:30kg/時間、
エチレンの供給量:0.045kg/時間、
水素の供給量:5.4NL/時間、
トリエチルアルミニウムの供給量:17.9ミリモル/時間、
t−ブチル−n−プロピルジメトキシシランの供給量:3.58ミリモル/時間、
予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.35g/時間、
重合圧力:3.0MPa(ゲージ圧)。
【0131】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.24時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は0.48kg/時間であった。また、この重合工程における重合活性は1377g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は2.13dl/gであり、エチレン単位含有量が1.3質量%であった。
【0132】
[重合工程II(多段気相重合リアクターによるプロピレンーエチレン共重合(気相重合))]
実施例1の重合工程IIにおいて用いたものと同様の多段気相重合リアクターを用い、以下の反応条件以外は、実施例1と同様の方法でプロピレンとエチレンの共重合を行った。
【0133】
重合温度:57℃、
重合圧力:1.7MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:32m/時間、
ポリプロピレン粒子のホールドアップ量:1段目(流動層)3.0kg
2段目(噴流層)6.3kg
3段目(噴流層)7.1kg
4段目(噴流層)6.0kg
5段目(噴流層)5.8kg
6段目(噴流層)6.1kg
当該リアクターにおいては、平均滞留時間は5.5時間であり、リアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が4.16モル%であり、(水素/(水素+プロピレン))は1.1モル%であり、排出されたポリマー粒子は9.7kg/時間であった。この重合工程における重合活性は26139g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は2.26dl/gであり、エチレン単位含有量が5.7質量%であった。
【0134】
[重合工程III−1(流動層型リアクターによるプロピレン−エチレン共重合(気相重合))]
実施例1の重合工程IIIにおいて用いたものと同様の流動層型リアクターを用い、以下条件以外は、実施例1の重合工程IIIと同様の方法でプロピレンとエチレンとの共重合を行った。
【0135】
重合圧力:1.7MPa(ゲージ圧)
ポリマー粒子ホールドアップ量:34kg
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は1.7時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が21.8モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が1.4モル%であった。排出されたポリマー粒子は10.3kg/時間であった。この重合工程における重合活性は29334g/gであった。
【0136】
[重合工程III−2(流動層型リアクターによるプロピレン−エチレン共重合(気相重合))]
重合工程III―1の流動層型リアクターから排出されるポリプロピレン粒子をさらに後段の流動層型リアクターに連続的に供給した。重合工程III−2の流動層型リアクターは、重合工程III―1の流動層型リアクターと同様に、ガス分散板を備えたものであり、重合工程III―1の流動層型リアクターから重合工程III―2の流動層型リアクターへのポリプロピレン粒子の移送手段は、ダブル弁方式で行った。
【0137】
以下条件以外は、実施例1の重合工程IIIと同様の方法でプロピレンとエチレンとの共重合を行った。
【0138】
重合温度:70℃、
重合圧力:1.6MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:44m/時間、
ポリマー粒子ホールドアップ量:14kg。
【0139】
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は0.59時間であった。また、リアクター内のガス濃度比を重合工程III―1と同様の値になるように調整した。排出されたポリマー粒子は24.0kg/時間であり、安定的に製造ができた。この重合工程における重合活性は11371g/gであった。得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が2.93dl/g、含有量が65.8質量%、エチレン単位含有量が23.8質量%であった。また、最終的に得られた重合体のエチレン単位含有量は17.6質量%であった。これらの結果を表2に示す。
【0140】
(実施例4)
[予備重合]
内容積3Lの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気処理したn−ヘキサン1.3L、トリエチルアルミニウム26ミリモル、t−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン2.6ミリモルを収容させた。その中に実施例1の固体触媒成分10gを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン10gを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積150Lの攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタン100Lを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0141】
[重合工程I(スラリー重合リアクターを用いたプロピレン単独重合)]
下記の項目について反応条件を変更したことの他は、実施例1の重合工程Iと同様にしてプロピレンの単独重合を行った。
【0142】
水素の供給量:36NL/時間、
トリエチルアルミニウムの供給量:33.6ミリモル/時間、
t−ブチル−n−プロピルジメトキシシランの供給量:0.67ミリモル/時間、
予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.47g/時間、
重合圧力:2.6MPa(ゲージ圧)。
【0143】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.38時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は0.75kg/時間であった。また、この重合工程における重合活性は1575g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は1.00dl/gであった。
【0144】
[重合工程II(多段気相重合リアクターによるプロピレン単独重合(気相重合))]
実施例1の重合工程IIにおいて用いたものと同様の多段気相重合リアクターを用い、以下の反応条件以外は、実施例1と同様の方法でプロピレン単独重合を更に行った。
【0145】
重合温度:70℃、
重合圧力:2.0MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:27m/時間、
ポリプロピレン粒子のホールドアップ量:1段目(流動層)2.9kg
2段目(噴流層)5.6kg
3段目(噴流層)5.2kg
4段目(噴流層)4.9kg
5段目(噴流層)5.3kg
6段目(噴流層)5.9kg
当該リアクターにおいては、平均滞留時間は3.4時間であり、リアクター内ガスの濃度比(水素/(水素+プロピレン))は6.8モル%であり、排出されたポリマー粒子は15.1kg/時間であった。この重合工程における重合活性は30197g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は1.00dl/gであった。
【0146】
[重合工程III−1(流動層型リアクターによるプロピレン−エチレン共重合(気相重合))]
実施例1の重合工程IIIにおいて用いたものと同様の流動層型リアクター用い、以下条件以外は、実施例1の重合工程IIIと同様の方法でプロピレンとエチレンの共重合を行った。
【0147】
重合温度:70℃、
重合圧力:2.0MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:44m/時間、
ポリマー粒子ホールドアップ量:27.5kg。
【0148】
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は1.0時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が41.5モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が2.3モル%であった。排出されたポリマー粒子は26.6kg/時間であった。この重合工程における重合活性は24325g/gであった。重合工程III−1で得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が2.71dl/g、エチレン単位含有量が43.4質量%であった。表3に結果を示す。
【0149】
[重合工程III−2(流動層型リアクターによるプロピレン−エチレン共重合(気相重合))]
以下条件以外は、 実施例3の重合工程III―2と同様の流動層型リアクターを用い、同様の方法でプロピレンとエチレン共重合を行った。
【0150】
重合圧力:1.9MPa(ゲージ圧)
ポリマー粒子ホールドアップ量:14.9kg
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は0.49時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が32.0モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が1.9モル%であった。
【0151】
排出されたポリマー粒子は30.6kg/時間であり、安定的に製造ができた。この重合工程における重合活性は8460g/gであった。重合工程III−2で得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が3.10dl/g、エチレン単位含有量が33.6質量%であった。また、全体に占める重合工程IIIの重合割合は、52.4重量%であり、その内訳は、重合工程III−1が36.5重量%であり、重合工程III−2が15.9重量%であった。また、最終的に得られた重合体のエチレン含有量は21.2質量%であった。これらの結果を表3に示す。
【0152】
(実施例5)
[予備重合]
内容積3Lの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気処理したn−ヘキサン1.1L、トリエチルアルミニウム22ミリモル、t−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン2.2ミリモルを収容させた。その中に実施例1に記載の固体触媒成分5.5gを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン27.5gを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積150Lの攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタン100Lを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0153】
[重合工程I(スラリー重合リアクターを用いたプロピレン単独重合)]
下記の項目について反応条件を変更したことの他は、実施例1の重合工程Iと同様にしてプロピレンの単独重合を行った。
【0154】
水素の供給量:59NL/時間、
トリエチルアルミニウムの供給量:24.1ミリモル/時間、
t−ブチル−n−プロピルジメトキシシランの供給量:4.8ミリモル/時間、
予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.30g/時間、
重合圧力:2.7MPa(ゲージ圧)。
【0155】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.37時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は0.43kg/時間であった。また、この重合工程における重合活性は1436g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.84dl/gであった。
【0156】
[重合工程II(多段気相重合リアクターによるプロピレン単独重合(気相重合))]
実施例1の重合工程IIにおいて用いたものと同様の多段気相重合リアクターを用い、以下の反応条件以外は、実施例1と同様の方法でプロピレン単独重合を更に行った。
【0157】
重合温度:70℃、
重合圧力:2.0MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:27m/時間、
ポリプロピレン粒子のホールドアップ量:1段目(流動層)2.9kg
2段目(噴流層)5.9kg
3段目(噴流層)5.2kg
4段目(噴流層)4.9kg
5段目(噴流層)5.3kg
6段目(噴流層)5.9kg
当該リアクターにおいては、平均滞留時間は5.4時間であり、リアクター内ガスの濃度比(水素/(水素+プロピレン))は12.3モル%であり、排出されたポリマー粒子は7.74kg/時間であった。この重合工程における重合活性は24278g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.85dl/gであった。表3に結果を示す。
【0158】
[重合工程III−1(流動層型オレフィン重合反応装置によるプロピレン−エチレン共重合(気相重合))]
鉛直方向に二つの分散板を設置することで2段の反応領域を有する流動層型リアクターを流動層型オレフィン重合反応装置として準備した。
【0159】
前段の多段気相重合リアクターから上記流動層型リアクターの上段の反応領域に、実施例1の重合工程IIIと同様にダブル弁方式によりポリプロピレン粒子を移送した。また、流動層型リアクターの上段流動層から下段流動層へのポリプロピレン粒子の移送においても、ダブル弁方式を使用した。
【0160】
上記構成の多段気相重合リアクターの下部からプロピレン、エチレンおよび水素を連続的に供給した。これにより、各反応領域に流動層を形成させ、ガス組成および圧力を一定に保つようプロピレン、エチレンおよび水素の供給量をコントロールし、過剰ガスをパージしながらプロピレンとエチレンの共重合を更に行った。反応条件は以下の通りとした。
【0161】
重合温度:70℃、
重合圧力:2.0MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:37m/時間、
ポリプロピレン粒子のホールドアップ量:1段目(噴流層)8.9kg
2段目(噴流層)9.0kg
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は1.9時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が24.7モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が3.7モル%であった。排出されたポリマー粒子は10kg/時間であった。この重合工程における重合活性は7641g/gであった。
【0162】
重合工程III−1で得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が2.21dl/g、エチレン単位含有量が43.5質量%であった。表3に結果を示す。
【0163】
[重合工程III−2(流動層型リアクターによるプロピレン−エチレン共重合(気相重合))]
以下条件以外は、実施例3の重合工程III―2と同様の流動層型リアクターを用い、同様の方法でプロピレンとエチレン共重合を行った。
【0164】
重合圧力:1.9MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:40m/時間、
ポリマー粒子ホールドアップ量:13kg。
【0165】
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は1.2時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が13.4モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が0.11モル%であった。
排出されたポリマー粒子は10.6kg/時間であり、安定的に製造ができた。この重合工程における重合活性は1861g/gであった。重合工程III−2で得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が4.99dl/g、エチレン単位含有量が23.7質量%であった。また、全体に占める重合工程IIIの重合割合は、27.2重量%であり、その内訳は、重合工程III−1が21.5重量%であり、重合工程III−2が5.8重量%であった。また、最終的に得られた重合体のエチレン含有量は10.7質量%であった。これらの結果を表3に示す。
【0166】
(比較例1)
[固体触媒の調整]
内容積200Lの攪拌機付きのSUS製反応容器を窒素で置換した後、ヘキサン80L、テトラブトキシチタン6.55モル、フタル酸ジイソブチル2.8モルおよびテトラブトキシシラン98.9モルを投入し均一溶液とした。次に濃度2.1モル/Lのブチルマグネシウムクロリドのジイソブチルエーテル溶液51Lを反応容器内の温度を5℃に保ちながら5時間かけて徐々に滴下した。滴下終了後室温でさらに1時間攪拌した後、室温で固液分離し、トルエン70Lで3回洗浄を繰り返した。次いで、スラリー濃度が0.6kg/Lになるようにトルエンを抜き出した後、n−ブチルエーテル8.9モルと四塩化チタン274モルの混合液を加えた後、更にフタル酸クロライドを20.8モル加え110℃で3時間反応を行った。反応終了後、95℃のトルエンで2回洗浄を行った。次いで、スラリー濃度を0.6kg/Lに調整した後、フタル酸ジイソブチル3.13モル、n−ジブチルエーテル8.9モルおよび四塩化チタン137モルを加え、105℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離した後、95℃のトルエン90Lで2回洗浄を行った。次いで、スラリー濃度を0.6kg/Lに調整した後、n−ジブチルエーテル8.9モルおよび四塩化チタン137モルを加え、95℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離し、同温度でトルエン90Lで3回洗浄を行った。次いで、スラリー濃度を0.6kg/Lに調整した後、n−ジブチルエーテル8.9モルおよび四塩化チタン137モルを加え、95℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離し、同温度でトルエン90Lで3回洗浄を行った後、更にヘキサン90Lで3回洗浄した後、減圧乾燥して固体触媒成分11.0kgを得た。固体触媒成分はチタン原子1.89重量%、マグネシウム原子20重量%、フタル酸エステル8.6重量%、エトキシ基0.05重量%、ブトキシ基0.21重量%を含有した微紛のない良好な粒子性状を有していた。
【0167】
[予備重合]
内容積3Lの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気処理したn−ヘキサン1.5L、トリエチルアルミニウム37.5ミリモル、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン3.75ミリモルを収容させた。その中に上記固体触媒成分15gを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン15gを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積150Lの攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタン100Lを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0168】
[重合工程I(スラリー重合リアクターを用いたプロピレン単独重合)]
内容積42Lの攪拌機付きSUS304製ベッセルタイプのスラリー重合リアクターを用いて、プロピレンの単独重合を行った。すなわち、プロピレン、水素、トリエチルアルミニウム、シクロヘキシルエチルジメトキシシランおよび予備重合触媒成分のスラリーをリアクターに連続的に供給し、重合反応を行った。反応条件は以下の通りとした。
【0169】
重合温度:70℃、
攪拌速度:150rpm、
リアクターの液レベル:18L、
プロピレンの供給量:25kg/時間、
水素の供給量:215NL/時間、
トリエチルアルミニウムの供給量:35.1ミリモル/時間、
シクロヘキシルエチルジメトキシシランの供給量:5.3ミリモル/時間、
予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.57g/時間、
重合圧力:4.1MPa(ゲージ圧)。
【0170】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.79時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は4.93kg/時間であった。また、この重合工程における重合活性は8710g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.97dl/gであった。
【0171】
[重合工程II(噴流層型リアクターによるプロピレン単独重合(気相重合))]
鉛直方向に2段の反応領域を有する噴流層型リアクターを準備した。筒状バッフルおよびそらせ板の材質はSUS304(表面はバフ#300仕上げ)とし、これら以外の構成の材質はSUS316(表面はバフ#300仕上げ)とした。このリアクターは、攪拌機付き流動層型リアクターを改造したものである。すなわち、リアクター内の攪拌機および分散板を撤去し、これらに代えて筒状バッフルおよびそらせ板からなる組み合わせを鉛直方向に且つ同軸に2段配置したものである。なお、筒状バッフルおよびそらせ板として、実施例3において使用したものと同様の形状および大きさのものを使用した。
【0172】
前段のスラリー重合リアクターから噴流層型リアクターの上段の反応領域に、ポリプロピレン粒子および液状プロピレンを含むスラリーを間欠的に複数回にわたって供給した。なお、スラリー重合リアクターと噴流層型リアクターとは、配管によって連通しており、この配管に配設された開閉弁によって、噴流層型リアクターに供給するスラリー量を調節した。
【0173】
上記構成の噴流層型リアクターの下部からプロピレンおよび水素を連続的に供給した。これにより、上段および下段の反応領域にそれぞれ噴流層を形成させ、圧力を一定に保つように過剰ガスをパージしながらプロピレンの単独重合を更に行った。反応条件は以下の通りとした。
【0174】
重合温度:70℃、
重合圧力:1.8MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:140m/時間、
プロピレンの供給量:20kg/時間、
水素の供給量:1360NL/時間、
ポリプロピレン粒子のホールドアップ量:57kg(上段:28.5kg,下段:28.5kg)。
【0175】
当該反応装置においては、スラリーの平均滞留時間は4.2時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は13.6kg/時間であった。また、この重合工程における重合活性は15300g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.97dl/gであった。
【0176】
[重合工程III(流動層型リアクターによるプロピレン−エチレン共重合(気相重合))]
前段の噴流層型リアクターから排出されるポリプロピレン粒子を流動層型リアクターに連続的に供給した。この流動層型リアクターは、SUS316L製であり、ガス分散板および攪拌機を備えたものである。
【0177】
上記構成の流動層型リアクターにプロピレン、エチレンおよび水素を連続的に供給し、圧力を一定に保つように過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンとエチレンとの共重合を行った。反応条件は以下の通りとした。
【0178】
重合温度:70℃、
重合圧力:1.4MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:140m/時間、
プロピレンの供給量:34kg/時間、
エチレンの供給量:7.3kg/時間、
水素の供給量:49NL/時間、
ポリマー粒子ホールドアップ量:55kg。
【0179】
当該反応装置においては、ポリマー粒子の平均滞留時間は3.6時間であった。排出されたポリマー粒子は19.7kg/時間であり、安定的に製造ができた。また、この重合工程における重合活性は10800g/gであった。また、得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が4.30dl/g、含有量が30.9質量%、エチレン単位含有量が32質量%であった。また、最終的に得られた重合体のエチレン含有量は10質量%であった。これらの結果を表1に示す。
【0180】
(比較例2)
[予備重合]
内容積3Lの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気処理したn−ヘキサン1.5L、トリエチルアルミニウム30ミリモル、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン3.9ミリモルを収容させた。その中に比較例1で用いたものと同様の固体触媒成分13.3gを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン26.6gを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積150Lの攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタン100Lを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0181】
[重合工程I−1(スラリー重合リアクターを用いたプロピレン単独重合)]
下記の項目について反応条件を変更したことの他は、比較例1の重合工程Iと同様にしてプロピレンの単独重合を行った。
【0182】
重合温度:75℃、
プロピレンの供給量:20kg/時間、
水素の供給量:205NL/時間、
トリエチルアルミニウムの供給量:40.5ミリモル/時間、
シクロヘキシルエチルジメトキシシランの供給量:6.08ミリモル/時間、
予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.56g/時間、
重合圧力:4.41MPa(ゲージ圧)。
【0183】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.33時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は2.45kg/時間であった。また、この重合工程における重合活性は4352g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.93dl/gであった。
【0184】
[重合工程I−2(スラリー重合リアクターを用いたプロピレン単独重合)]
内容積163Lの攪拌機付きSUS304製ベッセルタイプのスラリー重合リアクターに、前段のリアクターから排出されるスラリーを直接供給し、引き続きプロピレンの単独重合を行った。反応条件は以下の通りとした。
【0185】
重合温度:75℃、
攪拌速度:150rpm、
リアクターの液レベル:44L、
プロピレンの供給量:11kg/時間、
水素の供給量:105NL/時間、
重合圧力:4.0MPa(ゲージ圧)。
【0186】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.57時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は5.9kg/時間であった。この重合工程における重合活性は6133g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.93dl/gであった。
【0187】
[重合工程I−3(スラリー重合リアクターを用いたプロピレン単独重合)]
重合工程I−2において用いたスラリー重合リアクターと同様の構成のリアクターに、上記重合工程I−2を経て得られたポリプロピレン粒子を供給した。下記の項目について反応条件を変更したことの他は、上記重合工程I−2と同様にしてプロピレンの単独重合を引き続き行なった。
【0188】
重合温度:70℃、
プロピレンの供給量:6kg/時間、
水素の供給量:35NL/時間、
重合圧力:3.8MPa(ゲージ圧)。
【0189】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.51時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は8.1kg/時間であった。この重合工程における重合活性は3813g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.93dl/gであった。
【0190】
[重合工程II(流動層型リアクターによるプロピレン単独(気相重合))]
前段のスラリー重合リアクターから排出されるスラリーを直接動層型リアクターに供給し、引き続きプロピレンの単独重合を行った。
【0191】
上記構成の流動層型リアクターにプロピレンおよび水素を連続的に供給し、ガス組成および圧力を一定に保つようにガス供給量の調整および過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンの単独重合を行った。反応条件は以下の通りとした。
【0192】
重合温度:80℃、
重合圧力:1.8MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:100m/時間、
ポリマー粒子ホールドアップ量:40kg。
【0193】
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は2.69時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が12.6モル%であった。排出されたポリマー粒子は14.9kg/時間であった。この重合工程における重合活性は12162g/gであった。得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が0.90dl/gであった。表1に結果を示す。
【0194】
[重合工程III(流動層型リアクターによるプロピレンーエチレン共重合(気相重合))]
前段のスラリー重合リアクターから排出されるスラリーを直接流動層型リアクター(内容積1.0m)に供給し、プロピレンとエチレンの共重合を行った。
【0195】
上記構成の流動層型リアクターにプロピレン、エチレンおよび水素を連続的に供給し、ガス組成および圧力を一定に保つようにガス供給量の調整および過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンとエチレンの共重合を行った。反応条件は以下の通りとした。
【0196】
重合温度:70℃、
重合圧力:1.4MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:140m/時間、
ポリマー粒子ホールドアップ量:70kg。
【0197】
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は3.29時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が27.5モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が2.9モル%であった。排出されたポリマー粒子は21.3kg/時間であり、安定的に製造ができた。この重合工程における重合活性は11355g/gであった。得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が2.97dl/g、含有量が30.0質量%、エチレン単位含有量が34.0質量%であった。また、最終的に得られた重合体のエチレン含有量は10.2質量%であった。これらの結果を表1に示す。
【0198】
(比較例3)
[予備重合]
内容積3Lの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気処理したn−ヘキサン1.7L、トリエチルアルミニウム34ミリモル、t−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン3.4ミリモルを収容させた。その中に実施例1で用いたものと同様の固体触媒成分15.9gを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン15.9gを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積150Lの攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタン100Lを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0199】
[重合工程I−1(スラリー重合リアクターを用いたプロピレン単独重合)]
下記の項目について反応条件を変更したことの他は、実施例1の重合工程Iと同様にしてプロピレンの単独重合を行った。
【0200】
重合温度:78℃、
プロピレンの供給量:15kg/時間、
水素の供給量:69NL/時間、
トリエチルアルミニウムの供給量:41.4ミリモル/時間、
t−ブチル−n−プロピルジメトキシシランの供給量:8.0ミリモル/時間、
予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.65g/時間、
重合圧力:4.18MPa(ゲージ圧)。
【0201】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.40時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は1.25kg/時間であった。また、この重合工程における重合活性は1919g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.90dl/gであった。表1に結果を示す。
【0202】
[重合工程I−2(スラリー重合リアクターを用いたプロピレン単独重合)]
下記の項目について反応条件を変更したことの他は、比較例2の重合工程I−2と同様にして、引き続きプロピレンの単独重合を行った。
【0203】
重合温度:76℃、
プロピレンの供給量:7kg/時間、
水素の供給量:29NL/時間、
重合圧力:3.8MPa(ゲージ圧)。
【0204】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.75時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は1.85kg/時間であった。この重合工程における重合活性は2850g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.90dl/gであった。
【0205】
[重合工程I−3(スラリー重合リアクターを用いたプロピレン単独重合)]
下記の項目について反応条件を変更したことの他は、比較例2の重合工程I−3と同様にして、引き続きプロピレンの単独重合を行った。
【0206】
重合温度:69℃、
プロピレンの供給量:5kg/時間、
水素の供給量:16NL/時間、
重合圧力:3.4MPa(ゲージ圧)。
【0207】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.67時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は4.36kg/時間であった。この重合工程における重合活性は1939g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.90dl/gであった。表1に結果を示す。
【0208】
[重合工程II(流動層型リアクターによるプロピレン単独(気相重合))]
下記の項目について反応条件を変更したことの他は、比較例2の重合工程IIと同様にして、引き続きプロピレンの単独重合を行った。
【0209】
循環ガス風量:120m/時間、
ポリマー粒子ホールドアップ量:55kg。
【0210】
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は4.12時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が8.5モル%であった。排出されたポリマー粒子は13.4kg/時間であった。この重合工程における重合活性は13830g/gであった。得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が0.90dl/gであった。表1に結果を示す。
【0211】
[重合工程III(流動層型リアクターによるプロピレンーエチレン共重合(気相重合))]
下記の項目について反応条件を変更したことの他は、比較例2の重合工程IIIと同様にして、プロピレンとエチレンの共重合を行った。
【0212】
循環ガス風量:160m/時間、
ポリマー粒子ホールドアップ量:60kg。
【0213】
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は3.24時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が29.6モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が2.2モル%であった。排出されたポリマー粒子は18.5kg/時間であり、安定的に製造ができた。この重合工程における重合活性は7948g/gであった。得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が2.73dl/g、含有量が27.9質量%、エチレン単位含有量が34.4質量%であった。また、最終的に得られた重合体のエチレン含有量は9.6質量%であった。これらの結果を表1に示す。
【0214】
(比較例4)
[予備重合]
内容積3Lの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気処理したn−ヘキサン1.4L、トリエチルアルミニウム28ミリモル、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン2.8ミリモルを収容させた。その中に比較例1で用いたものと同様の固体触媒成分22gを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン44gを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積150Lの攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタン100Lを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0215】
[重合工程I(スラリー重合リアクターを用いたプロピレン単独重合)]
下記の項目について反応条件を変更したことの他は、比較例1の重合工程Iと同様にしてプロピレンの単独重合を行った。
【0216】
プロピレンの供給量:18kg/時間、
水素の供給量:180NL/時間、
トリエチルアルミニウムの供給量:43.2ミリモル/時間、
シクロヘキシルエチルジメトキシシランの供給量:6.8ミリモル/時間、
予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.66g/時間、
重合圧力:4.3MPa(ゲージ圧)。
【0217】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.38時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は1.99kg/時間であった。また、この重合工程における重合活性は3031g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.92dl/gであった。
【0218】
[重合工程II(多段気相重合リアクターによるプロピレン単独重合(気相重合))]
実施例1の重合工程IIにおいて用いたものと同様の多段気相重合リアクターを用い、以下の反応条件以外は、実施例1と同様の方法でプロピレンの単独重合を更に行った。
【0219】
重合圧力:1.8MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:25m/時間、
ポリプロピレン粒子のホールドアップ量:1段目(流動層)2.6kg
2段目(噴流層)5.9kg
3段目(噴流層)5.9kg
4段目(噴流層)5.9kg
5段目(噴流層)5.8kg
6段目(噴流層)6.0kg
当該リアクターにおいては、平均滞留時間は4.1時間であり、リアクター内ガスの濃度比(水素/(水素+プロピレン))は13.8モル%であり、排出されたポリマー粒子は10.8kg/時間であった。この重合工程における重合活性は13437g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.93dl/gであった。表1に結果を示す。
【0220】
[重合工程III―1(噴流層型リアクターによるプロピレン−エチレン共重合(気相重合))]
鉛直方向に2段の反応領域を有する噴流層型リアクターを準備した。
【0221】
前段の多段気相重合リアクターから上記噴流層型リアクターの上段の反応領域に、実施例1の重合工程IIIと同様にダブル弁方式によりポリプロピレン粒子を移送した。噴流層型リアクターの上段噴流層から下段噴流層へのポリプロピレン粒子の移送においても、ダブル弁方式を使用した。
【0222】
上記構成の多段気相重合リアクターの下部からプロピレン、エチレンおよび水素を連続的に供給した。これにより、各反応領域に噴流層を形成させ、ガス組成および圧力を一定に保つようプロピレン、エチレンおよび水素の供給量をコントロールし、過剰ガスをパージしながらプロピレンとエチレンの共重合を更に行った。反応条件は以下の通りとした。
【0223】
重合温度:70℃、
重合圧力:1.8MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:22m/時間、
ポリプロピレン粒子のホールドアップ量:1段目(噴流層)8.9kg
2段目(噴流層)7.0kg
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は1.20時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が25.6モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が2.2モル%であった。排出されたポリマー粒子は14.1kg/時間であった。この重合工程における重合活性は4977g/gであった。
【0224】
[重合工程III―2(噴流層型リアクターによるプロピレン−エチレン共重合(気相重合))]
鉛直方向に1段の反応領域を有する噴流層型リアクターを準備した。
【0225】
前段の噴流層型リアクターから上記噴流層型リアクターの反応領域に、実施例1の重合工程IIIと同様にダブル弁方式によりポリプロピレン粒子を移送した。
【0226】
以下の反応条件以外は、重合工程III―1の噴流層型リアクターと同様に、プロピレンとエチレンの共重合を更に行った。
【0227】
ポリプロピレン粒子のホールドアップ量:8.9kg
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は0.58時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、重合工程III―1と同様になるように調整した。
排出されたポリマー粒子は15.5kg/時間であったが、重合工程IIIにおいて、粒子の流動不良により、粒子の移送トラブルが頻発し、安定的に製造ができなかった。この重合工程における重合活性は2147g/gであった。得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が2.76dl/g、含有量が30.1質量%、エチレン単位含有量が31.2質量%であった。また、最終的に得られた重合体のエチレン含有量は9.4質量%であった。これらの結果を表1に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0228】
本発明のポリオレフィン製造システムを用いて得られるポリオレフィンは、例えば、自動車内装部品および外装部品等の自動車部品、食品・医療容器、家具や電気製品の部品、土木・建築材料等の原料として利用することができる。
【符号の説明】
【0229】
11 ポリオレフィン製造システム
12 円筒部
15 多段気相重合反応装置
17,19 流動層型オレフィン重合反応装置
25 反応領域
30 筒状バッフル(縮径部)
図1
図2
図3