【実施例】
【0095】
以下の各実施例および各比較例に示した測定値は、次の条件によって測定した。
【0096】
(i)極限粘度(単位:dl/g)
所定の濃度となるように重合体を1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン溶媒に溶解させ、3種類の試料を調製した。それぞれの試料の重合体濃度は、0.1g/dl、0.2g/dlおよび0.5g/dlとした。温度135℃の条件下、これらの試料の還元粘度をウベローデ型粘度計を用いて測定した。「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年、共立出版会社刊)の第491頁に記載の計算法に従い、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿することによって極限粘度を求めた。
【0097】
(ii)エチレン単位含有量(単位:質量%)
高分子ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店刊)の第619頁に記載のIRスペクトル測定に準拠し、IRスペクトル法によってエチレン単位含有量を求めた。なお、ここでいう「エチレン単位」とはエチレン由来の構造単位を意味する。
【0098】
(iii)各重合工程における重合活性(単位:g/g)
各重合工程において生成した重合体の質量(g)をその重合工程に供給した固体触媒成分の質量(g)で除すことによって、重合活性を算出した。
【0099】
(iv)共重合体成分の含有量FEP(単位:質量%)
共重合体成分の含有量FEP(単位:質量%)は、下記式により算出した。式中、Wtは単位時間あたりの重合体(単独重合体成分および共重合体成分)の全製造量を示し、WEPは重合工程(III)における単位時間あたりの共重合体成分の製造量を示す。
【0100】
FEP=WEP/Wt×100
(v)各重合工程で生成した重合体の極限粘度(単位:dl/g)
後述する重合工程(I)で生成した重合体成分の極限粘度[η]P1、重合工程(II)で生成した重合体成分の極限粘度[η]P2、重合工程(III)で生成した共重合体成分の極限粘度[η]EPは、下記式により算出した。
【0101】
[η]P1=[η]1
[η]P2=([η]2−[η]P1×WP1/(WP1+WP2))×(WP1+WP2)/WP2
[η]EP=([η]3−[η]P1×WP1/100−[η]P2×WP2/100)×100/WEP
[η]1:重合工程(I)の重合体の極限粘度(dl/g)
[η]2:重合工程(II)後の重合体の極限粘度(dl/g)
[η]3:重合工程(III)後の重合体の極限粘度(dl/g)
WP1:重合工程(I)における重合体製造量(kg/時間)
WP2:重合工程(II)における重合体製造量(kg/時間)
(vi)各重合工程で生成した重合体成分のエチレン単位含有量(単位:質量%)
重合工程(III)で生成した重合体成分のエチレン単位含有量EEP(単位:質量%)は、下記式により算出した。
【0102】
EEP=E3×100/FEP
E3:重合工程(III)後の重合体のエチレン単位含有量(単位:質量%)
(vii)フィッシュアイ数(単位:個/100cm
2)
スクリュー径20mmφの単軸押出機を備えるTダイフィルム加工機(田辺プラスチックス機械(株)製、Tダイ幅:100mm)に重合体を供給し、温度210℃の条件で厚さ50μmのシートを作製した。得られたシートをスキャナー(セイコーエプソン株式会社製、商品名:GT−9600、解像度1600dpi)の原稿台上に載置した。その後、ハンザハードクロムフェロタイプ板(商品名、近江屋写真用品株式会社製)の鏡面処理された面がシート側に向くように、当該フェロタイプ板をシート上に載置した。スキャナーの解像度を900dpi、各画素の階調を8bitに設定し、シートの画像を白黒像としてコンピューターに取り込み、ビットマップ形式で保存した。この画像を画像解析ソフト(旭化成エンジニアリング株式会社製、商品名:A像くん(登録商標))を用いて2値化した。フィッシュアイは周辺よりも明るい部分として認識された。フィッシュアイの形状は不定形であったので、フィッシュアイと同じ面積を有する円の直径をフィッシュアイの大きさとし、直径200μm以上のフィッシュアイの数を測定した。フィッシュアイ数は、シート100cm
2あたりの数とした。
【0103】
運転性の評価は、以下の通り実施した。
【0104】
運転性○;気相重合リアクター内で、塊化物が発生することがなく、安定的に連続製造ができた。
【0105】
運転性×;気相重合リアクター内の粒子の流動不良が悪化し、リアクターからの抜き出し不良や、リアクター内での塊が発生し、安定的に運転できなかった。
【0106】
(実施例1)
[オレフィン重合用触媒(固体触媒)の調整]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分の合成
工程(1−1A):撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた100mLのフラスコを窒素で置換した後、該フラスコに、トルエン36.0mL、四塩化チタン22.5mLを投入し、撹拌した。フラスコ内の温度を0℃とした後、同温度でマグネシウムエトキシド1.88gを30分おきに4回投入した後、0℃で1.5時間撹拌した。次いで、2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル0.60mLをフラスコ内に投入した後でフラスコ内の温度を10℃に昇温した。その後、同温度で2時間撹拌し、トルエン9.8mLを投入した。次いで、フラスコ内の温度を1.2K/分の速度で昇温し、60℃の時点でフラスコ内に2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル3.15mLを投入し、110℃まで昇温した。同温度で3時間、フラスコ内に投入した成分を撹拌した。得られた混合物を固液分離して固体を得た。該固体を100℃にてトルエン56.3mLで3回洗浄した。
工程(1−1B):洗浄後の固体にトルエン38.3mLを投入し、スラリーを形成した。該スラリーに四塩化チタン15.0mL、2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル0.75mLを投入して混合物を形成し、110℃で1時間混合物を攪拌した。その後、攪拌した混合物を固液分離し、該固体を60℃にてトルエン56.3mLで3回洗浄し、さらに室温にてヘキサン56.3mLで3回洗浄し、洗浄後の固体を減圧乾燥してオレフィン重合用固体触媒成分を得た。この固体触媒成分について、チタン原子含有量は2.53重量%であり、エトキシ基含有量は0.44重量%であり、内部電子供与体含有量は13.7重量%であり、またレーザ回折・散乱法による中心粒径は59.5μmであった。
【0107】
[予備重合]
内容積3Lの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気処理したn−ヘキサン1.3L、トリエチルアルミニウム26ミリモル、t−ブチル−n−プロピルメトキシシラン2.6ミリモルを収容させた。その中に上記固体触媒成分10gを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン10gを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積150Lの攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタン100Lを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0108】
[重合工程I(オレフィン事前重合反応装置を用いたプロピレン単独重合)]
攪拌機付きSUS304製ベッセルタイプのスラリー重合リアクターをオレフィン事前重合反応装置として用いて、プロピレンの単独重合を行った。すなわち、プロピレン、水素、トリエチルアルミニウム、t−ブチル−n−プロピルジメトキシシランおよび予備重合触媒成分のスラリーをリアクターに連続的に供給し、重合反応を行った。反応条件は以下の通りとした。
【0109】
重合温度:50℃、
攪拌速度:150rpm、
リアクターの液レベル:18L、
プロピレンの供給量:18kg/時間、
水素の供給量:36NL/時間、
トリエチルアルミニウムの供給量:32.4ミリモル/時間、
t−ブチル−n−プロピルジメトキシシランの供給量:0.64ミリモル/時間、
予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.49g/時間、
重合圧力:2.6MPa(ゲージ圧)。
【0110】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.38時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は0.44kg/時間であった。また、この重合工程における重合活性は912g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.99dl/gであった。
【0111】
[重合工程II(多段気相重合反応装置によるプロピレン単独重合(気相重合))]
鉛直方向に6段の反応領域を有し、その内最上段が流動層であり、残りの5段が噴流層である多段気相重合リアクターを多段気相重合反応装置として準備した。
【0112】
前段のスラリー重合リアクターから上記多段気相重合リアクターの最上段である流動層に、ポリプロピレン粒子および液状プロピレンを含むスラリーを失活させることなく連続供給した。
【0113】
多段気相重合リアクター内でのポリプロピレン粒子の段間移送は、ダブル弁方式により行った。この移送手段は、上段の反応領域と下段の反応領域を1インチサイズの配管で接続し、配管に二つの開閉弁を設け、下側の弁を閉じた状態で上側の弁を開け、上段の反応領域から弁の間にパウダーを溜め込み、その後、上側の弁を閉じた後に下側の弁を開けることで下段の反応領域にポリプロピレン粒子を移送するものである。
【0114】
上記構成の多段気相重合リアクターの下部からプロピレンおよび水素を連続的に供給した。これにより、各反応領域にそれぞれ流動層または噴流層を形成させ、ガス組成および圧力を一定に保つようプロピレンと水素の供給量をコントロールし、過剰ガスをパージしながらプロピレンの単独重合を更に行った。反応条件は以下の通りとした。
【0115】
重合温度:70℃、
重合圧力:2.0MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:27m
3/時間、
ポリプロピレン粒子のホールドアップ量:1段目(流動層)3.1kg
2段目(噴流層)6.9kg
3段目(噴流層)6.7kg
4段目(噴流層)5.5kg
5段目(噴流層)6.1kg
6段目(噴流層)6.5kg
当該リアクターにおいては、平均滞留時間は3.4時間であり、リアクター内ガスの濃度比(水素/(水素+プロピレン))は6.8モル%であり、排出されたポリマー粒子は16.3kg/時間であった。この重合工程における重合活性は32586g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は1.01dl/gであった。
【0116】
[重合工程III(流動層型オレフィン重合反応装置によるプロピレン−エチレン共重合(気相重合))]
前段の多段気相重合リアクターから排出されるポリプロピレン粒子を流動層型オレフィン重合反応装置としての流動層型リアクターに連続的に供給した。流動層型リアクターはガス分散板を備えたものであり、前段の多段気相重合リアクターから流動層型リアクターへのポリプロピレン粒子の移送手段は、上記のダブル弁方式で行った。
【0117】
上記構成の流動層型リアクターにプロピレン、エチレンおよび水素を連続的に供給し、ガス組成および圧力を一定に保つようにガス供給量の調整および過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンとエチレンとの共重合を行った。反応条件は以下の通りとした。
【0118】
重合温度:70℃、
重合圧力:2.0MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:44m
3/時間、
ポリマー粒子ホールドアップ量:17kg。
【0119】
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は0.71時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が40.6モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が2.2モル%であった。排出されたポリマー粒子は24.0kg/時間であり、安定的に製造ができた。この重合工程における重合活性は15772g/gであった。得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が2.67dl/g、含有量が32.0質量%、エチレン単位含有量が43.5質量%であった。表1に結果を示す。また、最終的に得られた重合体のエチレン単位含有量は13.9質量%であった。これらの結果を表1に示す。
【0120】
(実施例2)
[予備重合]
実施例1と同様の方法で予備重合を実施した。
【0121】
[重合工程I(スラリー重合リアクターを用いたプロピレン単独重合)]
下記の項目について反応条件を変更したことの他は、実施例1の重合工程Iと同様にしてプロピレンの単独重合を行った。
【0122】
トリエチルアルミニウムの供給量:31.4ミリモル/時間、
t−ブチル−n−プロピルジメトキシシランの供給量:0.61ミリモル/時間、
予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.53g/時間、
重合圧力:2.7MPa(ゲージ圧)。
【0123】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.37時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は0.48kg/時間であった。また、この重合工程における重合活性は895g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.99dl/gであった。
【0124】
[重合工程II(多段気相重合リアクターによるプロピレン単独重合(気相重合))]
実施例1の重合工程IIにおいて用いたものと同様の多段気相重合リアクターを用い、以下の反応条件以外は、実施例1と同様の方法でプロピレンの単独重合を更に行った。
【0125】
ポリプロピレン粒子のホールドアップ量:1段目(流動層)3.1kg
2段目(噴流層)7.3kg
3段目(噴流層)7.5kg
4段目(噴流層)6.0kg
5段目(噴流層)6.8kg
6段目(噴流層)6.5kg
当該リアクターにおいては、平均滞留時間は3.6時間であり、リアクター内ガスの濃度比(水素/(水素+プロピレン))は7.0モル%であり、排出されたポリマー粒子は16.5kg/時間であった。この重合工程における重合活性は30040g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は1.02dl/gであった。
【0126】
[重合工程III(流動層型リアクターによるプロピレン−エチレン共重合(気相重合))]
実施例1の重合工程IIIにおいて用いたものと同様の流動層型リアクター用い、実施例1と同様の方法でプロピレンとエチレンとの共重合を行った。
【0127】
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は0.78時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が39.4モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が2.0モル%であった。排出されたポリマー粒子は26.6kg/時間であり、安定的に製造ができた。この重合工程における重合活性は48141g/gであった。得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が2.88dl/g、含有量が37.6質量%、エチレン単位含有量が43.9質量%であった。また、最終的に得られた重合体のエチレン単位含有量は16.5質量%であった。これらの結果を表1に示す。
【0128】
(実施例3)
[予備重合]
内容積3Lの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気処理したn−ヘキサン1.0L、トリエチルアルミニウム20ミリモル、t−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン2.0ミリモルを収容させた。その中に実施例1に記載の固体触媒成分7gを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン7gを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積150Lの攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタン100Lを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0129】
[重合工程I(スラリー重合リアクターを用いたプロピレンーエチレン共重合)]
下記の項目について反応条件を変更したことの他は、実施例1の重合工程Iと同様にしてプロピレンとエチレンの共重合を行った。
【0130】
プロピレンの供給量:30kg/時間、
エチレンの供給量:0.045kg/時間、
水素の供給量:5.4NL/時間、
トリエチルアルミニウムの供給量:17.9ミリモル/時間、
t−ブチル−n−プロピルジメトキシシランの供給量:3.58ミリモル/時間、
予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.35g/時間、
重合圧力:3.0MPa(ゲージ圧)。
【0131】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.24時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は0.48kg/時間であった。また、この重合工程における重合活性は1377g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は2.13dl/gであり、エチレン単位含有量が1.3質量%であった。
【0132】
[重合工程II(多段気相重合リアクターによるプロピレンーエチレン共重合(気相重合))]
実施例1の重合工程IIにおいて用いたものと同様の多段気相重合リアクターを用い、以下の反応条件以外は、実施例1と同様の方法でプロピレンとエチレンの共重合を行った。
【0133】
重合温度:57℃、
重合圧力:1.7MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:32m
3/時間、
ポリプロピレン粒子のホールドアップ量:1段目(流動層)3.0kg
2段目(噴流層)6.3kg
3段目(噴流層)7.1kg
4段目(噴流層)6.0kg
5段目(噴流層)5.8kg
6段目(噴流層)6.1kg
当該リアクターにおいては、平均滞留時間は5.5時間であり、リアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が4.16モル%であり、(水素/(水素+プロピレン))は1.1モル%であり、排出されたポリマー粒子は9.7kg/時間であった。この重合工程における重合活性は26139g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は2.26dl/gであり、エチレン単位含有量が5.7質量%であった。
【0134】
[重合工程III−1(流動層型リアクターによるプロピレン−エチレン共重合(気相重合))]
実施例1の重合工程IIIにおいて用いたものと同様の流動層型リアクターを用い、以下条件以外は、実施例1の重合工程IIIと同様の方法でプロピレンとエチレンとの共重合を行った。
【0135】
重合圧力:1.7MPa(ゲージ圧)
ポリマー粒子ホールドアップ量:34kg
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は1.7時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が21.8モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が1.4モル%であった。排出されたポリマー粒子は10.3kg/時間であった。この重合工程における重合活性は29334g/gであった。
【0136】
[重合工程III−2(流動層型リアクターによるプロピレン−エチレン共重合(気相重合))]
重合工程III―1の流動層型リアクターから排出されるポリプロピレン粒子をさらに後段の流動層型リアクターに連続的に供給した。重合工程III−2の流動層型リアクターは、重合工程III―1の流動層型リアクターと同様に、ガス分散板を備えたものであり、重合工程III―1の流動層型リアクターから重合工程III―2の流動層型リアクターへのポリプロピレン粒子の移送手段は、ダブル弁方式で行った。
【0137】
以下条件以外は、実施例1の重合工程IIIと同様の方法でプロピレンとエチレンとの共重合を行った。
【0138】
重合温度:70℃、
重合圧力:1.6MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:44m
3/時間、
ポリマー粒子ホールドアップ量:14kg。
【0139】
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は0.59時間であった。また、リアクター内のガス濃度比を重合工程III―1と同様の値になるように調整した。排出されたポリマー粒子は24.0kg/時間であり、安定的に製造ができた。この重合工程における重合活性は11371g/gであった。得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が2.93dl/g、含有量が65.8質量%、エチレン単位含有量が23.8質量%であった。また、最終的に得られた重合体のエチレン単位含有量は17.6質量%であった。これらの結果を表2に示す。
【0140】
(実施例4)
[予備重合]
内容積3Lの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気処理したn−ヘキサン1.3L、トリエチルアルミニウム26ミリモル、t−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン2.6ミリモルを収容させた。その中に実施例1の固体触媒成分10gを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン10gを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積150Lの攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタン100Lを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0141】
[重合工程I(スラリー重合リアクターを用いたプロピレン単独重合)]
下記の項目について反応条件を変更したことの他は、実施例1の重合工程Iと同様にしてプロピレンの単独重合を行った。
【0142】
水素の供給量:36NL/時間、
トリエチルアルミニウムの供給量:33.6ミリモル/時間、
t−ブチル−n−プロピルジメトキシシランの供給量:0.67ミリモル/時間、
予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.47g/時間、
重合圧力:2.6MPa(ゲージ圧)。
【0143】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.38時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は0.75kg/時間であった。また、この重合工程における重合活性は1575g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は1.00dl/gであった。
【0144】
[重合工程II(多段気相重合リアクターによるプロピレン単独重合(気相重合))]
実施例1の重合工程IIにおいて用いたものと同様の多段気相重合リアクターを用い、以下の反応条件以外は、実施例1と同様の方法でプロピレン単独重合を更に行った。
【0145】
重合温度:70℃、
重合圧力:2.0MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:27m
3/時間、
ポリプロピレン粒子のホールドアップ量:1段目(流動層)2.9kg
2段目(噴流層)5.6kg
3段目(噴流層)5.2kg
4段目(噴流層)4.9kg
5段目(噴流層)5.3kg
6段目(噴流層)5.9kg
当該リアクターにおいては、平均滞留時間は3.4時間であり、リアクター内ガスの濃度比(水素/(水素+プロピレン))は6.8モル%であり、排出されたポリマー粒子は15.1kg/時間であった。この重合工程における重合活性は30197g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は1.00dl/gであった。
【0146】
[重合工程III−1(流動層型リアクターによるプロピレン−エチレン共重合(気相重合))]
実施例1の重合工程IIIにおいて用いたものと同様の流動層型リアクター用い、以下条件以外は、実施例1の重合工程IIIと同様の方法でプロピレンとエチレンの共重合を行った。
【0147】
重合温度:70℃、
重合圧力:2.0MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:44m
3/時間、
ポリマー粒子ホールドアップ量:27.5kg。
【0148】
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は1.0時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が41.5モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が2.3モル%であった。排出されたポリマー粒子は26.6kg/時間であった。この重合工程における重合活性は24325g/gであった。重合工程III−1で得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が2.71dl/g、エチレン単位含有量が43.4質量%であった。表3に結果を示す。
【0149】
[重合工程III−2(流動層型リアクターによるプロピレン−エチレン共重合(気相重合))]
以下条件以外は、 実施例3の重合工程III―2と同様の流動層型リアクターを用い、同様の方法でプロピレンとエチレン共重合を行った。
【0150】
重合圧力:1.9MPa(ゲージ圧)
ポリマー粒子ホールドアップ量:14.9kg
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は0.49時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が32.0モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が1.9モル%であった。
【0151】
排出されたポリマー粒子は30.6kg/時間であり、安定的に製造ができた。この重合工程における重合活性は8460g/gであった。重合工程III−2で得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が3.10dl/g、エチレン単位含有量が33.6質量%であった。また、全体に占める重合工程IIIの重合割合は、52.4重量%であり、その内訳は、重合工程III−1が36.5重量%であり、重合工程III−2が15.9重量%であった。また、最終的に得られた重合体のエチレン含有量は21.2質量%であった。これらの結果を表3に示す。
【0152】
(実施例5)
[予備重合]
内容積3Lの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気処理したn−ヘキサン1.1L、トリエチルアルミニウム22ミリモル、t−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン2.2ミリモルを収容させた。その中に実施例1に記載の固体触媒成分5.5gを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン27.5gを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積150Lの攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタン100Lを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0153】
[重合工程I(スラリー重合リアクターを用いたプロピレン単独重合)]
下記の項目について反応条件を変更したことの他は、実施例1の重合工程Iと同様にしてプロピレンの単独重合を行った。
【0154】
水素の供給量:59NL/時間、
トリエチルアルミニウムの供給量:24.1ミリモル/時間、
t−ブチル−n−プロピルジメトキシシランの供給量:4.8ミリモル/時間、
予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.30g/時間、
重合圧力:2.7MPa(ゲージ圧)。
【0155】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.37時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は0.43kg/時間であった。また、この重合工程における重合活性は1436g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.84dl/gであった。
【0156】
[重合工程II(多段気相重合リアクターによるプロピレン単独重合(気相重合))]
実施例1の重合工程IIにおいて用いたものと同様の多段気相重合リアクターを用い、以下の反応条件以外は、実施例1と同様の方法でプロピレン単独重合を更に行った。
【0157】
重合温度:70℃、
重合圧力:2.0MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:27m
3/時間、
ポリプロピレン粒子のホールドアップ量:1段目(流動層)2.9kg
2段目(噴流層)5.9kg
3段目(噴流層)5.2kg
4段目(噴流層)4.9kg
5段目(噴流層)5.3kg
6段目(噴流層)5.9kg
当該リアクターにおいては、平均滞留時間は5.4時間であり、リアクター内ガスの濃度比(水素/(水素+プロピレン))は12.3モル%であり、排出されたポリマー粒子は7.74kg/時間であった。この重合工程における重合活性は24278g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.85dl/gであった。表3に結果を示す。
【0158】
[重合工程III−1(流動層型オレフィン重合反応装置によるプロピレン−エチレン共重合(気相重合))]
鉛直方向に二つの分散板を設置することで2段の反応領域を有する流動層型リアクターを流動層型オレフィン重合反応装置として準備した。
【0159】
前段の多段気相重合リアクターから上記流動層型リアクターの上段の反応領域に、実施例1の重合工程IIIと同様にダブル弁方式によりポリプロピレン粒子を移送した。また、流動層型リアクターの上段流動層から下段流動層へのポリプロピレン粒子の移送においても、ダブル弁方式を使用した。
【0160】
上記構成の多段気相重合リアクターの下部からプロピレン、エチレンおよび水素を連続的に供給した。これにより、各反応領域に流動層を形成させ、ガス組成および圧力を一定に保つようプロピレン、エチレンおよび水素の供給量をコントロールし、過剰ガスをパージしながらプロピレンとエチレンの共重合を更に行った。反応条件は以下の通りとした。
【0161】
重合温度:70℃、
重合圧力:2.0MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:37m
3/時間、
ポリプロピレン粒子のホールドアップ量:1段目(噴流層)8.9kg
2段目(噴流層)9.0kg
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は1.9時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が24.7モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が3.7モル%であった。排出されたポリマー粒子は10kg/時間であった。この重合工程における重合活性は7641g/gであった。
【0162】
重合工程III−1で得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が2.21dl/g、エチレン単位含有量が43.5質量%であった。表3に結果を示す。
【0163】
[重合工程III−2(流動層型リアクターによるプロピレン−エチレン共重合(気相重合))]
以下条件以外は、実施例3の重合工程III―2と同様の流動層型リアクターを用い、同様の方法でプロピレンとエチレン共重合を行った。
【0164】
重合圧力:1.9MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:40m
3/時間、
ポリマー粒子ホールドアップ量:13kg。
【0165】
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は1.2時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が13.4モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が0.11モル%であった。
排出されたポリマー粒子は10.6kg/時間であり、安定的に製造ができた。この重合工程における重合活性は1861g/gであった。重合工程III−2で得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が4.99dl/g、エチレン単位含有量が23.7質量%であった。また、全体に占める重合工程IIIの重合割合は、27.2重量%であり、その内訳は、重合工程III−1が21.5重量%であり、重合工程III−2が5.8重量%であった。また、最終的に得られた重合体のエチレン含有量は10.7質量%であった。これらの結果を表3に示す。
【0166】
(比較例1)
[固体触媒の調整]
内容積200Lの攪拌機付きのSUS製反応容器を窒素で置換した後、ヘキサン80L、テトラブトキシチタン6.55モル、フタル酸ジイソブチル2.8モルおよびテトラブトキシシラン98.9モルを投入し均一溶液とした。次に濃度2.1モル/Lのブチルマグネシウムクロリドのジイソブチルエーテル溶液51Lを反応容器内の温度を5℃に保ちながら5時間かけて徐々に滴下した。滴下終了後室温でさらに1時間攪拌した後、室温で固液分離し、トルエン70Lで3回洗浄を繰り返した。次いで、スラリー濃度が0.6kg/Lになるようにトルエンを抜き出した後、n−ブチルエーテル8.9モルと四塩化チタン274モルの混合液を加えた後、更にフタル酸クロライドを20.8モル加え110℃で3時間反応を行った。反応終了後、95℃のトルエンで2回洗浄を行った。次いで、スラリー濃度を0.6kg/Lに調整した後、フタル酸ジイソブチル3.13モル、n−ジブチルエーテル8.9モルおよび四塩化チタン137モルを加え、105℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離した後、95℃のトルエン90Lで2回洗浄を行った。次いで、スラリー濃度を0.6kg/Lに調整した後、n−ジブチルエーテル8.9モルおよび四塩化チタン137モルを加え、95℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離し、同温度でトルエン90Lで3回洗浄を行った。次いで、スラリー濃度を0.6kg/Lに調整した後、n−ジブチルエーテル8.9モルおよび四塩化チタン137モルを加え、95℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離し、同温度でトルエン90Lで3回洗浄を行った後、更にヘキサン90Lで3回洗浄した後、減圧乾燥して固体触媒成分11.0kgを得た。固体触媒成分はチタン原子1.89重量%、マグネシウム原子20重量%、フタル酸エステル8.6重量%、エトキシ基0.05重量%、ブトキシ基0.21重量%を含有した微紛のない良好な粒子性状を有していた。
【0167】
[予備重合]
内容積3Lの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気処理したn−ヘキサン1.5L、トリエチルアルミニウム37.5ミリモル、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン3.75ミリモルを収容させた。その中に上記固体触媒成分15gを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン15gを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積150Lの攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタン100Lを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0168】
[重合工程I(スラリー重合リアクターを用いたプロピレン単独重合)]
内容積42Lの攪拌機付きSUS304製ベッセルタイプのスラリー重合リアクターを用いて、プロピレンの単独重合を行った。すなわち、プロピレン、水素、トリエチルアルミニウム、シクロヘキシルエチルジメトキシシランおよび予備重合触媒成分のスラリーをリアクターに連続的に供給し、重合反応を行った。反応条件は以下の通りとした。
【0169】
重合温度:70℃、
攪拌速度:150rpm、
リアクターの液レベル:18L、
プロピレンの供給量:25kg/時間、
水素の供給量:215NL/時間、
トリエチルアルミニウムの供給量:35.1ミリモル/時間、
シクロヘキシルエチルジメトキシシランの供給量:5.3ミリモル/時間、
予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.57g/時間、
重合圧力:4.1MPa(ゲージ圧)。
【0170】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.79時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は4.93kg/時間であった。また、この重合工程における重合活性は8710g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.97dl/gであった。
【0171】
[重合工程II(噴流層型リアクターによるプロピレン単独重合(気相重合))]
鉛直方向に2段の反応領域を有する噴流層型リアクターを準備した。筒状バッフルおよびそらせ板の材質はSUS304(表面はバフ#300仕上げ)とし、これら以外の構成の材質はSUS316(表面はバフ#300仕上げ)とした。このリアクターは、攪拌機付き流動層型リアクターを改造したものである。すなわち、リアクター内の攪拌機および分散板を撤去し、これらに代えて筒状バッフルおよびそらせ板からなる組み合わせを鉛直方向に且つ同軸に2段配置したものである。なお、筒状バッフルおよびそらせ板として、実施例3において使用したものと同様の形状および大きさのものを使用した。
【0172】
前段のスラリー重合リアクターから噴流層型リアクターの上段の反応領域に、ポリプロピレン粒子および液状プロピレンを含むスラリーを間欠的に複数回にわたって供給した。なお、スラリー重合リアクターと噴流層型リアクターとは、配管によって連通しており、この配管に配設された開閉弁によって、噴流層型リアクターに供給するスラリー量を調節した。
【0173】
上記構成の噴流層型リアクターの下部からプロピレンおよび水素を連続的に供給した。これにより、上段および下段の反応領域にそれぞれ噴流層を形成させ、圧力を一定に保つように過剰ガスをパージしながらプロピレンの単独重合を更に行った。反応条件は以下の通りとした。
【0174】
重合温度:70℃、
重合圧力:1.8MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:140m
3/時間、
プロピレンの供給量:20kg/時間、
水素の供給量:1360NL/時間、
ポリプロピレン粒子のホールドアップ量:57kg(上段:28.5kg,下段:28.5kg)。
【0175】
当該反応装置においては、スラリーの平均滞留時間は4.2時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は13.6kg/時間であった。また、この重合工程における重合活性は15300g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.97dl/gであった。
【0176】
[重合工程III(流動層型リアクターによるプロピレン−エチレン共重合(気相重合))]
前段の噴流層型リアクターから排出されるポリプロピレン粒子を流動層型リアクターに連続的に供給した。この流動層型リアクターは、SUS316L製であり、ガス分散板および攪拌機を備えたものである。
【0177】
上記構成の流動層型リアクターにプロピレン、エチレンおよび水素を連続的に供給し、圧力を一定に保つように過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンとエチレンとの共重合を行った。反応条件は以下の通りとした。
【0178】
重合温度:70℃、
重合圧力:1.4MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:140m
3/時間、
プロピレンの供給量:34kg/時間、
エチレンの供給量:7.3kg/時間、
水素の供給量:49NL/時間、
ポリマー粒子ホールドアップ量:55kg。
【0179】
当該反応装置においては、ポリマー粒子の平均滞留時間は3.6時間であった。排出されたポリマー粒子は19.7kg/時間であり、安定的に製造ができた。また、この重合工程における重合活性は10800g/gであった。また、得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が4.30dl/g、含有量が30.9質量%、エチレン単位含有量が32質量%であった。また、最終的に得られた重合体のエチレン含有量は10質量%であった。これらの結果を表1に示す。
【0180】
(比較例2)
[予備重合]
内容積3Lの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気処理したn−ヘキサン1.5L、トリエチルアルミニウム30ミリモル、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン3.9ミリモルを収容させた。その中に比較例1で用いたものと同様の固体触媒成分13.3gを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン26.6gを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積150Lの攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタン100Lを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0181】
[重合工程I−1(スラリー重合リアクターを用いたプロピレン単独重合)]
下記の項目について反応条件を変更したことの他は、比較例1の重合工程Iと同様にしてプロピレンの単独重合を行った。
【0182】
重合温度:75℃、
プロピレンの供給量:20kg/時間、
水素の供給量:205NL/時間、
トリエチルアルミニウムの供給量:40.5ミリモル/時間、
シクロヘキシルエチルジメトキシシランの供給量:6.08ミリモル/時間、
予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.56g/時間、
重合圧力:4.41MPa(ゲージ圧)。
【0183】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.33時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は2.45kg/時間であった。また、この重合工程における重合活性は4352g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.93dl/gであった。
【0184】
[重合工程I−2(スラリー重合リアクターを用いたプロピレン単独重合)]
内容積163Lの攪拌機付きSUS304製ベッセルタイプのスラリー重合リアクターに、前段のリアクターから排出されるスラリーを直接供給し、引き続きプロピレンの単独重合を行った。反応条件は以下の通りとした。
【0185】
重合温度:75℃、
攪拌速度:150rpm、
リアクターの液レベル:44L、
プロピレンの供給量:11kg/時間、
水素の供給量:105NL/時間、
重合圧力:4.0MPa(ゲージ圧)。
【0186】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.57時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は5.9kg/時間であった。この重合工程における重合活性は6133g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.93dl/gであった。
【0187】
[重合工程I−3(スラリー重合リアクターを用いたプロピレン単独重合)]
重合工程I−2において用いたスラリー重合リアクターと同様の構成のリアクターに、上記重合工程I−2を経て得られたポリプロピレン粒子を供給した。下記の項目について反応条件を変更したことの他は、上記重合工程I−2と同様にしてプロピレンの単独重合を引き続き行なった。
【0188】
重合温度:70℃、
プロピレンの供給量:6kg/時間、
水素の供給量:35NL/時間、
重合圧力:3.8MPa(ゲージ圧)。
【0189】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.51時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は8.1kg/時間であった。この重合工程における重合活性は3813g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.93dl/gであった。
【0190】
[重合工程II(流動層型リアクターによるプロピレン単独(気相重合))]
前段のスラリー重合リアクターから排出されるスラリーを直接動層型リアクターに供給し、引き続きプロピレンの単独重合を行った。
【0191】
上記構成の流動層型リアクターにプロピレンおよび水素を連続的に供給し、ガス組成および圧力を一定に保つようにガス供給量の調整および過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンの単独重合を行った。反応条件は以下の通りとした。
【0192】
重合温度:80℃、
重合圧力:1.8MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:100m
3/時間、
ポリマー粒子ホールドアップ量:40kg。
【0193】
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は2.69時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が12.6モル%であった。排出されたポリマー粒子は14.9kg/時間であった。この重合工程における重合活性は12162g/gであった。得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が0.90dl/gであった。表1に結果を示す。
【0194】
[重合工程III(流動層型リアクターによるプロピレンーエチレン共重合(気相重合))]
前段のスラリー重合リアクターから排出されるスラリーを直接流動層型リアクター(内容積1.0m
3)に供給し、プロピレンとエチレンの共重合を行った。
【0195】
上記構成の流動層型リアクターにプロピレン、エチレンおよび水素を連続的に供給し、ガス組成および圧力を一定に保つようにガス供給量の調整および過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンとエチレンの共重合を行った。反応条件は以下の通りとした。
【0196】
重合温度:70℃、
重合圧力:1.4MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:140m
3/時間、
ポリマー粒子ホールドアップ量:70kg。
【0197】
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は3.29時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が27.5モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が2.9モル%であった。排出されたポリマー粒子は21.3kg/時間であり、安定的に製造ができた。この重合工程における重合活性は11355g/gであった。得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が2.97dl/g、含有量が30.0質量%、エチレン単位含有量が34.0質量%であった。また、最終的に得られた重合体のエチレン含有量は10.2質量%であった。これらの結果を表1に示す。
【0198】
(比較例3)
[予備重合]
内容積3Lの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気処理したn−ヘキサン1.7L、トリエチルアルミニウム34ミリモル、t−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン3.4ミリモルを収容させた。その中に実施例1で用いたものと同様の固体触媒成分15.9gを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン15.9gを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積150Lの攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタン100Lを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0199】
[重合工程I−1(スラリー重合リアクターを用いたプロピレン単独重合)]
下記の項目について反応条件を変更したことの他は、実施例1の重合工程Iと同様にしてプロピレンの単独重合を行った。
【0200】
重合温度:78℃、
プロピレンの供給量:15kg/時間、
水素の供給量:69NL/時間、
トリエチルアルミニウムの供給量:41.4ミリモル/時間、
t−ブチル−n−プロピルジメトキシシランの供給量:8.0ミリモル/時間、
予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.65g/時間、
重合圧力:4.18MPa(ゲージ圧)。
【0201】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.40時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は1.25kg/時間であった。また、この重合工程における重合活性は1919g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.90dl/gであった。表1に結果を示す。
【0202】
[重合工程I−2(スラリー重合リアクターを用いたプロピレン単独重合)]
下記の項目について反応条件を変更したことの他は、比較例2の重合工程I−2と同様にして、引き続きプロピレンの単独重合を行った。
【0203】
重合温度:76℃、
プロピレンの供給量:7kg/時間、
水素の供給量:29NL/時間、
重合圧力:3.8MPa(ゲージ圧)。
【0204】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.75時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は1.85kg/時間であった。この重合工程における重合活性は2850g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.90dl/gであった。
【0205】
[重合工程I−3(スラリー重合リアクターを用いたプロピレン単独重合)]
下記の項目について反応条件を変更したことの他は、比較例2の重合工程I−3と同様にして、引き続きプロピレンの単独重合を行った。
【0206】
重合温度:69℃、
プロピレンの供給量:5kg/時間、
水素の供給量:16NL/時間、
重合圧力:3.4MPa(ゲージ圧)。
【0207】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.67時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は4.36kg/時間であった。この重合工程における重合活性は1939g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.90dl/gであった。表1に結果を示す。
【0208】
[重合工程II(流動層型リアクターによるプロピレン単独(気相重合))]
下記の項目について反応条件を変更したことの他は、比較例2の重合工程IIと同様にして、引き続きプロピレンの単独重合を行った。
【0209】
循環ガス風量:120m
3/時間、
ポリマー粒子ホールドアップ量:55kg。
【0210】
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は4.12時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が8.5モル%であった。排出されたポリマー粒子は13.4kg/時間であった。この重合工程における重合活性は13830g/gであった。得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が0.90dl/gであった。表1に結果を示す。
【0211】
[重合工程III(流動層型リアクターによるプロピレンーエチレン共重合(気相重合))]
下記の項目について反応条件を変更したことの他は、比較例2の重合工程IIIと同様にして、プロピレンとエチレンの共重合を行った。
【0212】
循環ガス風量:160m
3/時間、
ポリマー粒子ホールドアップ量:60kg。
【0213】
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は3.24時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が29.6モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が2.2モル%であった。排出されたポリマー粒子は18.5kg/時間であり、安定的に製造ができた。この重合工程における重合活性は7948g/gであった。得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が2.73dl/g、含有量が27.9質量%、エチレン単位含有量が34.4質量%であった。また、最終的に得られた重合体のエチレン含有量は9.6質量%であった。これらの結果を表1に示す。
【0214】
(比較例4)
[予備重合]
内容積3Lの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気処理したn−ヘキサン1.4L、トリエチルアルミニウム28ミリモル、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン2.8ミリモルを収容させた。その中に比較例1で用いたものと同様の固体触媒成分22gを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン44gを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積150Lの攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタン100Lを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0215】
[重合工程I(スラリー重合リアクターを用いたプロピレン単独重合)]
下記の項目について反応条件を変更したことの他は、比較例1の重合工程Iと同様にしてプロピレンの単独重合を行った。
【0216】
プロピレンの供給量:18kg/時間、
水素の供給量:180NL/時間、
トリエチルアルミニウムの供給量:43.2ミリモル/時間、
シクロヘキシルエチルジメトキシシランの供給量:6.8ミリモル/時間、
予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.66g/時間、
重合圧力:4.3MPa(ゲージ圧)。
【0217】
当該リアクターにおいては、スラリーの平均滞留時間は0.38時間であり、排出されたポリプロピレン粒子は1.99kg/時間であった。また、この重合工程における重合活性は3031g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.92dl/gであった。
【0218】
[重合工程II(多段気相重合リアクターによるプロピレン単独重合(気相重合))]
実施例1の重合工程IIにおいて用いたものと同様の多段気相重合リアクターを用い、以下の反応条件以外は、実施例1と同様の方法でプロピレンの単独重合を更に行った。
【0219】
重合圧力:1.8MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:25m
3/時間、
ポリプロピレン粒子のホールドアップ量:1段目(流動層)2.6kg
2段目(噴流層)5.9kg
3段目(噴流層)5.9kg
4段目(噴流層)5.9kg
5段目(噴流層)5.8kg
6段目(噴流層)6.0kg
当該リアクターにおいては、平均滞留時間は4.1時間であり、リアクター内ガスの濃度比(水素/(水素+プロピレン))は13.8モル%であり、排出されたポリマー粒子は10.8kg/時間であった。この重合工程における重合活性は13437g/gであった。また、得られたポリプロピレン粒子の極限粘度は0.93dl/gであった。表1に結果を示す。
【0220】
[重合工程III―1(噴流層型リアクターによるプロピレン−エチレン共重合(気相重合))]
鉛直方向に2段の反応領域を有する噴流層型リアクターを準備した。
【0221】
前段の多段気相重合リアクターから上記噴流層型リアクターの上段の反応領域に、実施例1の重合工程IIIと同様にダブル弁方式によりポリプロピレン粒子を移送した。噴流層型リアクターの上段噴流層から下段噴流層へのポリプロピレン粒子の移送においても、ダブル弁方式を使用した。
【0222】
上記構成の多段気相重合リアクターの下部からプロピレン、エチレンおよび水素を連続的に供給した。これにより、各反応領域に噴流層を形成させ、ガス組成および圧力を一定に保つようプロピレン、エチレンおよび水素の供給量をコントロールし、過剰ガスをパージしながらプロピレンとエチレンの共重合を更に行った。反応条件は以下の通りとした。
【0223】
重合温度:70℃、
重合圧力:1.8MPa(ゲージ圧)、
循環ガス風量:22m
3/時間、
ポリプロピレン粒子のホールドアップ量:1段目(噴流層)8.9kg
2段目(噴流層)7.0kg
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は1.20時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が25.6モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が2.2モル%であった。排出されたポリマー粒子は14.1kg/時間であった。この重合工程における重合活性は4977g/gであった。
【0224】
[重合工程III―2(噴流層型リアクターによるプロピレン−エチレン共重合(気相重合))]
鉛直方向に1段の反応領域を有する噴流層型リアクターを準備した。
【0225】
前段の噴流層型リアクターから上記噴流層型リアクターの反応領域に、実施例1の重合工程IIIと同様にダブル弁方式によりポリプロピレン粒子を移送した。
【0226】
以下の反応条件以外は、重合工程III―1の噴流層型リアクターと同様に、プロピレンとエチレンの共重合を更に行った。
【0227】
ポリプロピレン粒子のホールドアップ量:8.9kg
当該リアクターにおいては、ポリマー粒子の平均滞留時間は0.58時間であった。また、リアクター内ガスの濃度比は、重合工程III―1と同様になるように調整した。
排出されたポリマー粒子は15.5kg/時間であったが、重合工程IIIにおいて、粒子の流動不良により、粒子の移送トラブルが頻発し、安定的に製造ができなかった。この重合工程における重合活性は2147g/gであった。得られたポリマー粒子に含まれる共重合体成分は、極限粘度が2.76dl/g、含有量が30.1質量%、エチレン単位含有量が31.2質量%であった。また、最終的に得られた重合体のエチレン含有量は9.4質量%であった。これらの結果を表1に示す。
【表1】
【表2】
【表3】