(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持部が係止部を備え、該係止部が一方の前記側壁部に設けられた被係止部に係止されて、前記内側蓋壁部が両端の前記側壁部に支持されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電線用外装体。
前記支持部が支持体を備え、該支持体が一方の前記側壁部に沿って延在して、前記内側蓋壁部が両端の前記側壁部に支持されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電線用外装体。
前記熱可塑性樹脂発泡シートが、引張強さ3MPa以上10MPa以下であり、前記熱可塑性樹脂発泡シート面上における第1の基準直線方向の引張強さに対する、該第1の基準直線に対し直交する第2の基準直線方向の引張強さの割合が、50%以上200%以下である請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電線用外装体。
前記熱可塑性樹脂発泡シートの断面積に対する、前記電線の延び方向に対し直交方向における前記電線用外装体の断面積の割合が、1.1以上100以下である請求項1乃至9のいずれか1項に記載の電線用外装体。
【背景技術】
【0002】
車両等に配索される電線の外周に装着される電線用外装体として、複数の板状部材の間に中空構造が形成された中空板材でワイヤーハーネスの外周を覆うことにより、外力からワイヤーハーネスを保護するプロテクタが知られている(特許文献1)。特許文献1では、前記中空板材の中空構造として、山部と谷部からなる凹凸部が波状に連続する形状を有する板状部材である介在部材が用いられている。
【0003】
特許文献1の前記介在部材の中空構造を有する中空板材では、プロテクタに機械的強度を付与するために、一対の側壁部の他方の先端部から蓋部と重ね合せ可能なように延出する延出片を形成し、この延出片を蓋部と溶着等により接合することが必要な場合がある。
【0004】
しかし、前記介在部材の中空構造を有する中空板材は、機械的特性に異方性がある。また、前記介在部材の中空構造を有する中空板材を用いたプロテクタでは、蓋部及び延出片に対して鉛直方向の機械的強度に劣る。
【0005】
従って、溶着等によって延出片と蓋部とを接合するにあたり、延出片と蓋部が上記鉛直方向からの力を受けると、延出片が蓋部から離れてしまい、十分な接合信頼性が得られないという問題や、プロテクタが押し潰されてしまうという問題がある。また、プロテクタが押し潰されてしまうことで、プロテクタに収容されている電線が破損してしまうという問題がある。
【0006】
また、延出片や蓋部に係止片を設け、該係止片を側壁部に設けられた係止孔に嵌めることで、延出片と蓋部に機械的強度を付与してプロテクタが押し潰されてしまうことを防止しようとしても、上記の通り、特許文献1の中空板材には、機械的特性に異方性があるので、プロテクタが押し潰されるのを確実に防止することは難しいという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた機械的強度を有し、接合部の接合信頼性に優れた電線用外装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様は、熱可塑性樹脂発泡シートが折り曲げられて形成された、電線の外周に装着される電線用外装体であって、前記電線の延び方向に沿って延在し、前記電線を収容する収容部を形成する複数の壁部を備え、前記複数の壁部が、外側蓋壁部と、該外側蓋壁部と重なり合って接合された内側蓋壁部と、前記内側蓋壁部の両端と隣接する側壁部と、を有し、前記内側蓋壁部が、両端の前記側壁部に支持される支持部を有する電線用外装体である。
【0010】
本発明の態様は、前記内側蓋壁部が前記外側蓋壁部と重なり合った部位のうち、少なくとも一部が、押し込み強度5N以上、好ましくは10N以上、さらに好ましくは20N以上を有する電線用外装体である。
【0011】
本明細書中、「押し込み強度」とは、相互に接触して重なり合っている接合前の外側蓋壁部と内側蓋壁部に対して、鉛直方向から力を付与した際に、内側蓋壁部が外側蓋壁部と接触した状態から少なくとも一部が非接触状態へ変化した時の力の大きさまたは内側蓋壁部若しくは外側蓋壁部が座屈したときの力の大きさを意味する。
【0012】
本発明の態様は、前記内側蓋壁部と前記外側蓋壁部との接合手段が、接着、溶着及び/または嵌合手段である電線用外装体である。
【0013】
本発明の態様は、前記接合手段が溶着であり、溶着部の引張破壊強度が70N以上である電線用外装体である。
【0014】
本発明の態様は、前記支持部が係止部を備え、該係止部が一方の前記側壁部に設けられた被係止部に係止されて、前記内側蓋壁部が両端の前記側壁部に支持されている電線用外装体である。
【0015】
本発明の態様は、前記内側蓋壁部が、前記係止部から前記電線の延び方向に対し直交方向に延在した部位にて、前記外側蓋壁部と接合されている電線用外装体である。
【0016】
本発明の態様は、前記支持部が支持体を備え、該支持体が一方の前記側壁部に沿って延在して、前記内側蓋壁部が両端の前記側壁部に支持されている電線用外装体である。
【0017】
本発明の態様は、前記熱可塑性樹脂発泡シートが、引張強さ3MPa以上10MPa以下であり、前記熱可塑性樹脂発泡シート面上における第1の基準直線方向の引張強さに対する、該第1の基準直線に対し直交する第2の基準直線方向の引張強さの割合が、50%以上200%以下である電線用外装体である。
【0018】
本発明の態様は、前記熱可塑性樹脂発泡シートの密度が、200Kg/m
3以上1000Kg/m
3以下である電線用外装体である。
【0019】
本発明の態様は、前記熱可塑性樹脂発泡シートの断面積に対する、前記電線の延び方向に対し直交方向における前記電線用外装体の断面積の割合が、1.1以上100以下である電線用外装体である。
【0020】
本発明の態様は、前記電線の延び方向に対し直交方向の前記電線用外装体の断面形状が、多角形である電線用外装体である。
【0021】
本発明の態様は、外装体付きワイヤーハーネスであって、ワイヤーハーネスと、上記電線用外装体と、を備え、前記電線用外装体は、前記ワイヤーハーネスの外周に装着されている外装体付きワイヤーハーネスである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の電線用外装体の態様によれば、外側蓋壁部と重なり合って配置された内側蓋壁部が、該内側蓋壁部の両端と隣接する側壁部に支持されていることにより、機械的強度、特に、内側蓋壁部に対して鉛直方向であって外側蓋壁部から内側蓋壁部への方向の機械的強度に優れた電線用外装体の構造を得ることができる。従って、内側蓋壁部に対して外側蓋壁部から内側蓋壁部へ鉛直方向の力が負荷されても、電線用外装体が押し潰されてしまうことを防止できる。
【0023】
また、外側蓋壁部と内側蓋壁部の接合前に内側蓋壁部に対して上記鉛直方向の力が負荷されても、電線用外装体が押し潰されてしまったり、内側蓋壁部が外側蓋壁部から離れてしまったりすることを防止できるので、外側蓋壁部と内側蓋壁部の接合時の接合信頼性が向上し、接合の作業性も向上する。また、内側蓋壁部と外側蓋壁部の接合時に、収容部に収容されている電線の破損を防止できる。
【0024】
また、上記の通り、接合の作業性も向上するので、接合作業の自動化を可能とし、電線用外装体の生産性が向上する。
【0025】
本発明の電線用外装体の態様によれば、内側蓋壁部と外側蓋壁部が重なり合った部位のうち、少なくとも一部が押し込み強度5N以上、好ましくは10N以上、さらに好ましくは20N以上を有することにより、内側蓋壁部に対して上記鉛直方向の機械的強度がさらに向上して、さらに優れた外側蓋壁部と内側蓋壁部の接合信頼性が得られる。
【0026】
本発明の電線用外装体の態様によれば、溶着部の引張破壊強度が70N以上であることにより、さらに優れた外側蓋壁部と内側蓋壁部の接合信頼性が得られる。
【0027】
本発明の電線用外装体の態様によれば、熱可塑性樹脂発泡シートの密度が、200Kg/m
3以上1000Kg/m
3以下であることにより、機械的特性の異方性が防止されて、さらに優れた外側蓋壁部と内側蓋壁部の接合信頼性が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態例に係る電線用外装体について、図面を用いながら説明する。
【0030】
まず、
図1、2、3を用いて、本発明の第1実施形態例に係る外装体を用いた外装体付き付きワイヤーハーネスの実施形態例について説明する。本発明の実施形態例に係る外装体付きワイヤーハーネス1は、複数の電線が束ねられたワイヤーハーネス2と、ワイヤーハーネス2の外周に装着される第1実施形態例に係る外装体(電線用外装体)11と、を有する。外装体11は、ワイヤーハーネス2の延び方向(
図1、2の長手方向x)に沿って延在する複数の壁部20を備えており、複数の壁部20に囲まれて形成され、ワイヤーハーネス2を収容する収容部31を有している。なお、
図1、2においては、ワイヤーハーネス2を1本の円柱形状で示しているが、ワイヤーハーネス2は、1本以上の電線を束ねたものである。
【0031】
第1実施形態例に係る外装体11の複数の壁部20は、1枚の熱可塑性樹脂発泡シートを折り曲げることにより一体的に形成されている。
図1、2に示すように、熱可塑性樹脂発泡シートは、4つの折曲部200a〜200dを折り曲げることにより複数の壁部20が形成されている。複数の壁部20は、底壁部21と、底壁部21の端縁から折曲部200aを介して連設された第1の側壁部22と、底壁部21の端縁から折曲部200bを介して連設された第2の側壁部23と、第1の側壁部22の先端から折曲部200cを介して連設された内側蓋壁部24と、第2の側壁部23の先端から折曲部200dを介して連設された外側蓋壁部25とを有している。
【0032】
図1、2に示すように、外装体11の、長手方向xに対して直交方向である短手方向yの断面形状は、四角形状となっている。
【0033】
図3に示すように、折曲部200a〜200dのうち折曲部200dには、後述する係止部である複数の係止片251がそれぞれ挿入可能に、長手方向xに沿って所定の間隔毎に被係止部である複数の係止孔201が形成されている。すなわち、第2の側壁部23の先端(外側蓋壁部25の基部)に係止孔201が形成されている。
【0034】
図1、2に示すように、内側蓋壁部24は、長手方向xに対して直交方向である短手方向yに沿って、第1の側壁部22の先端から第2の側壁部23の先端まで、底壁部21に対して略水平に延びている。内側蓋壁部24の先端は、第2の側壁部23と接した状態となっている。内側蓋壁部24の先端は、係止孔201に挿入可能な係止片(支持部)251を有している。
【0035】
外側蓋壁部25は、内側蓋壁部24を上から覆い重なるように配置されている。内側蓋壁部24の先端に形成された係止片251は、第2の側壁部23の先端(外側蓋壁部25の基部)に形成された係止孔201に対応して所定の間隔毎に設けられている。係止片251が係止孔201に挿入、嵌められることで、内側蓋壁部24の先端が第2の側壁部23の先端に固定され、また、内側蓋壁部24上に外側蓋壁部25が重なり合う構造を形成することが可能となっている。すなわち、係止片251が係止孔201に挿入、嵌められることで、係止片25が支持部として機能し、内側蓋壁部24は、係止手段や嵌合手段によって、第2の側壁部23に固定されている。
【0036】
内側蓋壁部24の先端が第2の側壁部23の先端に固定され、内側蓋壁部24の基部は第1の側壁部22の先端と一体であるため、内側蓋壁部24は、その先端において第2の側壁部23に支持され、その基部において第1の側壁部22に支持された構造となっている。
【0037】
このように、内側蓋壁部24は、その一端が第1の側壁部22に支持され、他端が第2の側壁部23に支持されていることから、内側蓋壁部24に対して外側蓋壁部25から内側蓋壁部24へ鉛直方向の力が負荷されても、外装体11が押し潰されてしまったり、内側蓋壁部24が外側蓋壁部25から離れてしまったりすることを防止できる。従って、内側蓋壁部24と外側蓋壁部25を接合する際に、内側蓋壁部24に対して上記鉛直方向の力が負荷されても、内側蓋壁部24と外側蓋壁部25を確実に接合できるので、外側蓋壁部25と内側蓋壁部24の接合信頼性が向上し、また、接合作業も容易化する。
【0038】
このように、接合の作業性も向上するので、接合作業の自動化を可能とし、熱可塑性樹脂発泡シートが折り曲げられて形成される外装体11の生産性が向上する。
【0039】
また、内側蓋壁部24と外側蓋壁部25の接合時に、内側蓋壁部24に対して上記鉛直方向の力が負荷されても、外装体11が押し潰されてしまったり、内側蓋壁部24が外側蓋壁部25から離れてしまったりすることを防止できるので、収容部31に収容されているワイヤーハーネス2の破損を防止できる。
【0040】
内側蓋壁部24と外側蓋壁部25の重なり合った部位の押し込み強度は、内側蓋壁部24に対して上記鉛直方向の機械的強度がさらに向上して、さらに優れた接合信頼性が得られる点から、5N以上の部分を有することが好ましく、10N以上の部分を有することがより好ましく、20N以上の部分を有することが特に好ましい。一方で、押し込み強度の上限は、特に限定されず、押し込み強度が大きい程好ましいが、例えば140Nである。
【0041】
上記押し込み強度は、引張/圧縮試験機等(例えばインストロン ジャパン社製電気式万能材料試験機3300シリーズ等)を用いて先端径5mmのプローブによる押し込み試験を実施することにより測定することができる。この際、押し込みの強度を徐々に増加させていき、内側蓋壁部24が外装体11の内部に落ち込む、または内側蓋壁部24若しくは外側蓋壁部25が座屈した強度を押し込み強度とした。
【0042】
また、内側蓋壁部24は、外側蓋壁部25と重なり合った状態で、外側蓋壁部25と接合されている。すなわち、内側蓋壁部24の外面が外側蓋壁部25の内面と接した状態で、内側蓋壁部24と外側蓋壁部25が固定されている。外側蓋壁部25と重なり合った状態で接合された内側蓋壁部24が、その先端において第2の側壁部23に支持され、その基部において第1の側壁部22に支持されていることにより、機械的強度、特に、内側蓋壁部24及び外側蓋壁部25に対して上記鉛直方向の機械的強度に優れた外装体11の構造を得ることができる。従って、外装体付きワイヤーハーネス1の車両等への装着作業時や装着後に、内側蓋壁部24及び外側蓋壁部25に対して上記鉛直方向から力が負荷されても、外装体11が押し潰されてしまうことを防止でき、ひいては、収容部31に収容されているワイヤーハーネス2の破損を防止できる。
【0043】
内側蓋壁部24と外側蓋壁部25との接合部の位置は、特に限定されず、内側蓋壁部24が外側蓋壁部25に固定されていればよいが、例えば、接合信頼性をさらに向上させつつ優れた接合作業性を得る点から、内側蓋壁部24のうち、内側蓋壁部24の係止片251から短手方向yに延在した領域にて、外側蓋壁部25と接合されているのが好ましい。
【0044】
内側蓋壁部24と外側蓋壁部25との接合手段は、特に限定されず、例えば、接着剤等を用いた接着手段、超音波溶着、熱溶着等の溶着手段、係止部材、リベット等を用いた嵌合手段、ホッチキス等を用いた貫通固定手段等を挙げることができる。このうち、接合部の機械的強度と接合作業の容易性の点から溶着手段が好ましい。
【0045】
溶着手段を用いる場合の接合部の引張破壊強度は、特に限定されないが、例えば、優れた接合信頼性の点から70N以上が好ましく、100N以上がより好ましく、140N以上が特に好ましい。一方で、上記引張破壊強度の上限は、特に限定されず、引張破壊強度が大きい程好ましいが、例えば、200Nである。
【0046】
長手方向xに直交する断面において、熱可塑性樹脂発泡シートの断面積に対する、外装体11の断面積の割合(外装体11の断面積/熱可塑性樹脂発泡シートの断面積)は、例えば、1.1以上100以下が好ましい。前記割合は、機械的強度の点から1.2以上50以下がより好ましく、1.3以上25以下が特に好ましい。前記割合を算出するにあたり、熱可塑性樹脂発泡シートの断面積は、前記断面における熱可塑性樹脂発泡シートの平均肉厚×前記断面における熱可塑性樹脂発泡シートの周方向の長さから算出される。また、外装体11の断面積は、前記熱可塑性樹脂発泡シートの断面積+収容部31の断面積から算出される。
【0047】
図1、2に示すように、収容部31は、底壁部21、第1の側壁部22、第2の側壁部23及び内側蓋壁部24で囲まれた部分である。収容部31は、底壁部21、第1の側壁部22、第2の側壁部23及び内側蓋壁部24により長手方向xにおける一側と他側が貫通した筒状に形成されおり、ワイヤーハーネス2を収容することができる。
【0048】
次に、外装体11に用いられる熱可塑性樹脂発泡シートについて説明する。熱可塑性樹脂発泡シートの樹脂種については、熱可塑性樹脂であれば、特に限定されず、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。
【0049】
外装体11に用いられる熱可塑性樹脂発泡シートの密度は、特に限定されないが、例えば、機械的特性の異方性が防止されて、さらに優れた内側蓋壁部24と外側蓋壁部25の接合信頼性が得られるとともに、外装体11の設計の自由度が向上する点から、200Kg/m
3以上1000Kg/m
3以下が好ましく、軽量性と機械的強度とのバランスをより向上させる点から、300Kg/m
3以上600Kg/m
3以下がより好ましく、350Kg/m
3以上550Kg/m
3以下が特に好ましい。所定の密度を有する熱可塑性樹脂発泡シートが折り曲げられることで、外装体11が形成される。
【0050】
熱可塑性樹脂発泡シートの厚さは、特に限定されないが、例えば、折り曲げ容易性と機械的強度とのバランスをより向上させる点から、0.80mm以上5.0mm以下が好ましく、1.0mm以上2.5mm以下が特に好ましい。
【0051】
また、熱可塑性樹脂発泡シートには、両面または片面に、非発泡層を有していてもよい。すなわち、熱可塑性樹脂発泡シートは、発泡層と該発泡層上に形成された非発泡層とを有する構成としてもよい。熱可塑性樹脂発泡シートの表面に非発泡層が形成されていることにより、外装体11の曲げ弾性が向上して、収容されるワイヤーハーネス2の保護性能がより向上する。なお、外装体11の曲げ弾性をより向上させる点から、熱可塑性樹脂発泡シートの両面に非発泡層を有する3層構造の構成が好ましい。
【0052】
非発泡層の厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm以上100μm以下が挙げられる。
【0053】
また、熱可塑性樹脂発泡シートの発泡層の気泡数密度は、特に限定されないが、例えば、その下限値は、機械的特性の異方性をより確実に防止して内側蓋壁部24と外側蓋壁部25との接合信頼性をより向上させる点から、800個/mm
3以上が好ましく、1000個/mm
3以上が特に好ましい。一方で、上記気泡数密度の上限値は、例えば、優れた機械的強度を得る点から、10
10個/mm
3以下を挙げることができる。
【0054】
熱可塑性樹脂発泡シート面上における任意の第1の基準直線方向の引張強さに対する、該第1の基準直線に対し直交する第2の基準直線方向の引張強さの割合は、特に限定されないが、例えば、50%以上200%以下、より好ましくは60%以上180%以下、さらに好ましくは80%以上120%以下である。熱可塑性樹脂発泡シートが上記引張強さの割合の範囲を有することにより、機械的特性の等方性をより向上させることができるので、内側蓋壁部24と外側蓋壁部25との接合信頼性をより向上させることができる。
【0055】
また、熱可塑性樹脂発泡シートの引張強さは、特に限定されないが、その下限値は、収容されるワイヤーハーネス2の保護性能がより向上する点から3MPa以上が好ましく、4MPa以上がより好ましく、6MPa以上が特に好ましい。一方で、上記引張強さの上限値は、外装体11の成形性の点から10MPa以下が好ましい。
【0056】
次に、本発明の第2実施形態例に係る外装体について、図面を用いながら説明する。なお、第1実施形態例に係る外装体と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。
【0057】
上記第1実施形態例に係る外装体11では、短手方向yの断面形状は四角形状となっていたが、これに代えて、
図4に示すように、第2実施形態例に係る外装体12では、短手方向yの断面形状は三角形状である。
【0058】
図4、5に示すように、熱可塑性樹脂発泡シートは、3つの折曲部200e〜200gを折り曲げることにより複数の壁部20が形成されている。複数の壁部20は、第1の側壁部22と、第1の側壁部22の端縁から折曲部200eを介して連設された内側蓋壁部24と、第1の側壁部22の端縁から折曲部200fを介して連設された第2の側壁部23と、第2の側壁部23の先端から折曲部200gを介して連設された外側蓋壁部25とを有している。すなわち、外装体12では、底壁部は存在せず、第1の側壁部22の基部と第2の側壁部23の基部が直接連なった構成となっている。
【0059】
図5に示すように、折曲部200e〜200gのうち折曲部200gには、後述する係止部である複数の係止片251がそれぞれ挿入可能に、長手方向xに沿って所定の間隔毎に被係止部である複数の係止孔201が形成されている。すなわち、第2の側壁部23の先端(外側蓋壁部25の基部)に係止孔201が形成されている。
【0060】
また、
図4に示すように、内側蓋壁部24は、短手方向yに沿って、第1の側壁部22の先端から第2の側壁部23の先端まで直線状に延びている。内側蓋壁部24の先端は、第2の側壁部23と接した状態となっている。内側蓋壁部24の先端は、係止孔201に挿入可能な係止片(支持部)251を有している。
【0061】
外側蓋壁部25は、内側蓋壁部24を上から覆い重なるように配置されている。係止片251が係止孔201に挿入、嵌められることで、内側蓋壁部24の先端が第2の側壁部23の先端に固定され、また、内側蓋壁部24上に外側蓋壁部25が重なり合う構造を形成することが可能となる。すなわち、係止片251が係止孔201に挿入、嵌められることで、係止片25が支持部として機能する。
【0062】
外装体12でも、内側蓋壁部24の先端が第2の側壁部23の先端に固定され、内側蓋壁部24の基部は第1の側壁部22の先端と一体であるため、内側蓋壁部24は、その先端において第2の側壁部23に支持され、その基部において第1の側壁部22に支持された構造となっている。すなわち、内側蓋壁部24は、その一端が第1の側壁部22に支持され、他端が第2の側壁部23に支持されている構造となっている。
【0063】
上記から、第2実施形態例に係る外装体12でも、第1実施形態例に係る外装体11と同様に、内側蓋壁部24に対して外側蓋壁部25から内側蓋壁部24へ鉛直方向の力が負荷されても、外装体12が押し潰されてしまったり、内側蓋壁部24が外側蓋壁部25から離れてしまったりすることを防止できる。従って、内側蓋壁部24と外側蓋壁部25を接合する際に、内側蓋壁部24に対して上記鉛直方向の力が負荷されても、内側蓋壁部24と外側蓋壁部25を確実に接合できるので、外側蓋壁部25と内側蓋壁部24の接合信頼性が向上し、収容部31に収容されているワイヤーハーネスの破損を防止できる。
【0064】
また、外装体12も、内側蓋壁部24は、外側蓋壁部25と重なり合った状態で外側蓋壁部25と接合されており、内側蓋壁部24は、その先端において第2の側壁部23に支持され、その基部において第1の側壁部22に支持されている。よって、第2実施形態例に係る外装体12でも、第1実施形態例に係る外装体11と同様に、機械的強度、特に、内側蓋壁部24及び外側蓋壁部25に対して上記鉛直方向の機械的強度に優れた外装体12の構造を得ることができるので、車両等への装着作業時や装着後に、内側蓋壁部24及び外側蓋壁部25に対して上記鉛直方向から力が負荷されても、外装体12が押し潰されてしまうことを防止できる。
【0065】
次に、本発明の第3実施形態例に係る外装体について、図面を用いながら説明する。なお、第1、第2実施形態例に係る外装体と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。
【0066】
第1、第2実施形態例に係る外装体では、支持部として、内側蓋壁部24の先端に係止部である係止片251を備えていたが、これに代えて、
図6に示すように、第3実施形態例に係る外装体13では、内側蓋壁部24の先端に支持体300を備えている。
【0067】
支持体300は、内側蓋壁部24の先端と折り曲げ部301を介して連設している。すなわち、支持体300は、内側蓋壁部24から伸延する部分の折り返し構造となっている。また、支持体300の先端は、底壁部21内面と当接している。支持体300は第2の側壁部23内面に沿って延在している。支持体300は、外装体13の長手方向に外装体13の一端から他端まで延在していてもよく、外装体13の長手方向の一部に形成されていてもよい。
【0068】
外装体13では、支持体300が第2の側壁部23に沿って延在し、その先端が底壁部21と当接することで支持部として機能し、内側蓋壁部24の先端が第2の側壁部23に支持される。外装体13でも、内側蓋壁部24の基部は第1の側壁部22の先端と一体であるため、内側蓋壁部24は、その先端において第2の側壁部23に支持され、その基部において第1の側壁部22に支持された構造となっている。すなわち、内側蓋壁部24は、その一端が第1の側壁部22に支持され、他端が第2の側壁部23に支持されている構造となっている。
【0069】
従って、第3実施形態例に係る外装体13でも、第1、第2実施形態例に係る外装体11、12と同様に、内側蓋壁部24と外側蓋壁部25を接合する際に、内側蓋壁部24に対して外側蓋壁部25から内側蓋壁部24へ鉛直方向の力が負荷されても、内側蓋壁部24と外側蓋壁部25を確実に接合できるので、外側蓋壁部25と内側蓋壁部24の接合信頼性が向上し、収容部31に収容されているワイヤーハーネスの破損を防止できる。
【0070】
また、第3実施形態例に係る外装体13でも、第1、第2実施形態例に係る外装体11、12と同様に、機械的強度、特に、内側蓋壁部24及び外側蓋壁部25に対して上記鉛直方向の機械的強度に優れた外装体13の構造を得ることができるので、車両等への装着作業時や装着後に、内側蓋壁部24及び外側蓋壁部25に対して上記鉛直方向から力が負荷されても、外装体13が押し潰されてしまうことを防止できる。
【0071】
次に、本発明の実施形態例に係る外装体の形成方法、及び外装体へワイヤーハーネスを装着して外装体付きワイヤーハーネスを形成する方法について、それぞれ説明する。ここでは、第1実施形態例に係る外装体11の形成方法、及び第1実施形態例に係る外装体11へワイヤーハーネス2を装着して外装体付きワイヤーハーネス1を形成する方法を例にとって説明する。
【0072】
外装体11の形成方法では、先ず、外装体11を形成するための母材となる熱可塑性樹脂発泡シートから、外装体11に相当する部分を切り出す、切り出し加工を行う。切り出し加工としては、例えば、トムソン刃金型での打ち抜き等が挙げられる。
【0073】
上記のように形成された外装体11をワイヤーハーネス2へ装着する方法では、先ず、底壁部21に対して第1の側壁部22、第2の側壁部23が略垂直となるように、折曲部200a,200bで折り曲げる。折曲部200a,200bで折り曲げると、第1の側壁部22の先端と第2の側壁部23の先端との間が長手方向xに沿って上方に開口した形状となる。
【0074】
折曲部200a,200bを折り曲げた後、底壁部21にワイヤーハーネス2を載置し、底壁部21に対して内側蓋壁部24が略平行となるように、折曲部200cで折り曲げる。折曲部200cで内側蓋壁部24を折り曲げると、収容部31内にワイヤーハーネス2が挿通された状態で収容される。次に、内側蓋壁部24の係止片251を、それぞれ、第2の側壁部23の先端に形成された係止孔201に挿入して係止する。係止片251を係止孔201に係止することで、内側蓋壁部24を第2の側壁部23の先端に固定する。次に、底壁部21に対して外側蓋壁部25が略平行となるように、折曲部200dで折り曲げる。折曲部200dで外側蓋壁部25を折り曲げると、内側蓋壁部24上に外側蓋壁部25が重なり合う構造が形成される。
【0075】
次に、例えば、外側蓋壁部25上に鉛直方向から加熱手段を押し当てて、内側蓋壁部24と外側蓋壁部25を溶着することにより、第1の側壁部22,第2の側壁部23の先端の間の開口が塞がれた状態が固定され、外装体11がワイヤーハーネス2の外周に装着される。
【0076】
なお、外装体11は、ワイヤーハーネス2を構成する複数の電線を分散しないように固定するための固定用テープの外周に装着されていてもよく、固定用テープを使用していない複数の電線の外周に装着されていてもよい。また、外装体11は、1本の電線の外周に装着されていてもよい。
【0077】
次に、本発明の他の実施形態例について説明する。上記第1、第3実施形態例に係る外装体では短手方向の断面形状は四角形状、第2実施形態例に係る外装体では短手方向の断面形状は三角形状であったが、これに代えて、五角形以上の多角形でもよい。
【0078】
また、上記各実施形態例に係る外装体では、ワイヤーハーネスが略直線状に延在していることに対応して、複数の壁部は、ワイヤーハーネスの延び方向に沿って直線状に形成されていたが、これに代えて、複数の壁部は、延在方向の途中で、ワイヤーハーネスの形状に沿うように分岐されていてもよく、また、ワイヤーハーネスの形状に沿うように曲げられていてもよい。また、収容部は、ワイヤーハーネスの形状に沿うように、拡径、縮径されていてもよい。