【文献】
Javier NAVAS, et al.,Revealing the role of Pb2+ in the stability of organic-inorganic hybrid perovskite CH3NH3Pb1-xCdxI3: an experimental and theoretical study,Physical Chemistry Chemical Physics,Royal Society of Chemistry,2015年10月07日,Vol.17 No.37,Page.23886-23896
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A、B、X、及びMを構成成分とし、Mのモル数量をM及びBの合計モル数量で除したモル比[M/(M+B)]の値が0.7以下である、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物。
(Aは、前記ぺロブスカイト型結晶構造においてBを中心とする6面体の各頂点に位置する成分であって、セシウムイオン、有機アンモニウムイオン、又はアミジニウムイオンである。Bは、鉛イオンである。Mは、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、コバルトイオン、マンガンイオン、ガリウムイオン、マグネシウムイオン、又はインジウムイオンであり、Mの少なくとも一部は、前記ぺロブスカイト型結晶構造においてBの一部を置換する。Xは、前記ぺロブスカイト型結晶構造においてBを中心とする8面体の各頂点に位置する成分を表し、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン及びチオシアン酸イオンからなる群より選ばれる1種以上の陰イオンである。)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を示して本発明を詳細に説明する。
<化合物>
本発明の化合物は、A、B、X、及びMを構成成分とし、Mのモル数量をM及びBの合計モル数量で除したモル比[M/(M+B)]の値が0.7以下である、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物である。
本発明において、Aは、前記ぺロブスカイト型結晶構造においてBを中心とする6面体の各頂点に位置する成分であって、セシウムイオン、有機アンモニウムイオン、又はアミジニウムイオンである。
Bは、鉛イオンである。
Mは、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、コバルトイオン、マンガンイオン、ガリウムイオン、マグネシウムイオン、又はインジウムイオンであり、Mの少なくとも一部は、前記ぺロブスカイト型結晶構造においてBの一部を置換する。
Xは、前記ぺロブスカイト型結晶構造においてBを中心とする8面体の各頂点に位置する成分を表し、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン及びチオシアン酸イオンからなる群より選ばれる1種以上の陰イオンである。
【0011】
通常、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の基本構造は、3次元構造又は2次元構造である。
3次元構造の場合、その組成式は、A’B’X’
3で表される。ここで、A’は有機カチオン又は無機カチオンを表し、B’は金属カチオンを表し、X’はハロゲン化物イオン又はチオシアン酸イオンを表す。
2次元構造の場合、その組成式は、A’
2B’X’
4で表される。ここで、A’、B’及びX’は、前述と同じ意味を表す。
上記3次元構造の場合、B’を中心とし、頂点をX’とする、B’X’
6で表される頂点共有八面体の3次元ネットワークを有する。
上記2次元構造の場合、B’を中心とし、頂点をX’とする、B’X’
6で表される8面体が同一平面上の4つの頂点のX’を共有することにより、2次元的に連なったBX’
6からなる層とA’からなる層が交互に積層された構造を形成する。
B’は、X’の八面体配位をとることができる金属カチオンである。
A’は、B’を中心とする六面体の各頂点に位置する。
本明細書において、ペロブスカイト型結晶構造は、X線回折パターンにより確認することができる。
前記3次元構造のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の場合、X線回折パターンにおいて、通常、2θ=12〜18°の位置に(hkl)=(001)に由来するピーク、又は2θ=18〜25°の位置に(hkl)=(100)に由来するピークが確認される。2θ=13〜16°の位置に、(hkl)=(001)に由来するピークが、又は2θ=20〜23°の位置に、(hkl)=(100)に由来するピークが確認されることがより好ましい。
前記2次元構造のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の場合、X線回折パターンにおいて、通常、2θ=1〜10°の位置に、(hkl)=(002)由来のピークが確認され、2θ=2〜8°の位置に、(hkl)=(002)由来のピークが確認されることがより好ましい。
【0012】
本発明において、A、B、X、及びMを構成成分とするペロブスカイト型結晶構造を有する化合物としては、特に限定されず、3次元構造、2次元構造、疑似2次元構造のいずれの構造を有する化合物であってもよい。
3次元構造の場合には、ペロブスカイト型結晶構造は、AB
(1−a)M
aX
(3+δ)で表される。
2次元構造の場合には、ペロブスカイト型結晶構造は、A
2B
(1−a)M
aX
(4+δ)で表される。
ここで、前記aは、前述のモル比[M/(M+B)]を表す。
前記δは、B及びMの電荷バランスに応じて適宜変更が可能な数であり、0以上0.7以下である。例えば、Aが1価の陽イオン、Bが2価の陽イオン(Pbイオン)、Mが2価又は3価の金属イオン、及びXが1価の陰イオンである場合、前記化合物が中性(電荷が0)となるようにδを選択することができる。
【0013】
本発明者らが鋭意検討した結果、ぺロブスカイト型結晶構造を有する化合物において、B’成分の金属カチオンを鉛イオン(B成分)とし、複数ある鉛イオン(B成分)の一部をM成分として、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、コバルトイオン、マンガンイオン、ガリウムイオン、マグネシウムイオン、又はインジウムイオンで置換することにより、発光強度が向上することを見出した。
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物におけるMの少なくとも一部は、Bで表される鉛イオンの一部を置換する成分を意味する。Mは、前述の基本構造において、B成分(鉛イオン)が存在する位置に存在しているか、A成分が存在する位置に存在しているか、又は基本構造を構成する骨格の格子間隙に存在していてもよい。但し、Mの少なくとも一部は、前記ペロブスカイト型結晶構造においてBの一部を置換していることが好ましい。
【0014】
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する化合物であることが好ましい。
APb
(1−a)M
aX
(3+δ)(0<a≦0.7,0≦δ≦0.7)…(1)[一般式(1)中、Aはセシウムイオン、有機アンモニウムイオン、又はアミジニウムイオンであり、Mはアルミニウムイオン、亜鉛イオン、コバルトイオン、マンガンイオン、ガリウムイオン、マグネシウムイオン、又はインジウムイオンであり、Xは塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン及びチオシアン酸イオンからなる群より選ばれる1種以上の陰イオンである。一般式(1)中、aは0より大きく、0.7以下であり、δは0以上、0.7以下である。]
【0015】
一般的にペロブスカイトの基本的構造形態は、ABX
3構造であり、頂点共有BX
6八面体の3次元ネットワークを有する。ABX
3構造中のB成分は、Xアニオンの八面体配位をとることができる金属カチオンである。Aカチオンは、B原子を中心とする六面体の各頂点に位置し、一般に有機カチオン又は無機カチオンである。ABX
3構造のX成分は、通常、ハロゲン化物イオンである。
【0016】
本発明者らが鋭意検討した結果、上記ABX
3で表されるペロブスカイト型結晶構造の基本構造において、B成分の金属カチオンを鉛とし、前記3次元ネットワーク中に複数ある鉛イオンの一部を他の原子で置換することにより、発光強度が向上することを見出した。
本発明において、一般式(1)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、A、B成分として鉛、M及びXを主成分とする。ここで、Mは金属カチオンである鉛イオンの一部を置換する原子を意味する。尚、Mは前記基本構造でB成分(鉛イオン)が存在する位置を置換しているか、A成分が存在する位置を置換しているか、又は前記基本構造を構成する骨格の格子間隙に存在してもよい。但し、Mの少なくとも一部は、前記ペロブスカイト型結晶構造においてBの一部を置換していることが好ましい。
以下、本発明における、A、B、X、及びMを構成成分とするペロブスカイト型の結晶構造を有する化合物について説明する。
【0017】
〔A〕
本発明の化合物中、Aは前記ぺロブスカイト型結晶構造においてBを中心とする6面体の各頂点に位置する成分であって、セシウムイオン、有機アンモニウムイオン、又はアミジニウムイオンである。本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物において、Aがセシウムイオン、炭素原子数が3以下の有機アンモニウムイオン、又は炭素原子数が3以下のアミジニウムイオンである場合、一般的にペロブスカイト型結晶構造は、AB
(1−a)M
aX
3で表される、3次元構造を有する。
化合物中、Aは有機アンモニウムイオンが好ましい。
【0018】
Aの有機アンモニウムイオンとして具体的には、下記一般式(A1)で表される陽イオンが挙げられる。
【0020】
一般式(A1)中、R
1〜R
4は、それぞれ独立に、水素原子、置換基としてアミノ基を有していてもよいアルキル基、又は置換基としてアミノ基を有していてもよいシクロアルキル基を表す。但し、R
1〜R
4の全てが水素原子となることはない。
【0021】
R
1〜R
4で表されるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、置換基としてアミノ基を有していてもよい。
R
1〜R
4で表されるアルキル基の炭素原子数は、通常1〜20であり、1〜4であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。
【0022】
R
1〜R
4で表されるシクロアルキル基は、置換基としてアミノ基を有していてもよい。
R
1〜R
4で表されるシクロアルキル基の炭素原子数は、通常3〜30であり、3〜11であることが好ましく、3〜8であることがより好ましい。
【0023】
R
1〜R
4で表される基としては、水素原子又はアルキル基であることが好ましい。
一般式(A1)に含まれるアルキル基及びシクロアルキル基の数を少なくすること、並びにアルキル基及びシクロアルキル基の炭素原子数を小さくすることにより、発光強度が高い3次元構造のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を得ることができる。
アルキル基又はシクロアルキル基の炭素原子数が4以上の場合、2次元、及び/又は擬似2次元(quasi―2D)のペロブスカイト型の結晶構造を一部あるいは全体に有する化合物を得ることができる。2次元のペロブスカイト型結晶構造が無限大に積層すると3次元のペロブスカイト型結晶構造と同等になる(参考文献:P.P.Boixら、J.Phys.Chem.Lett.2015,6,898−907など)。
R
1〜R
4で表されるアルキル基に含まれる炭素原子の合計数は1〜4であることが好ましく、R
1〜R
4で表されるシクロアルキル基に含まれる炭素原子の合計数は3〜4であることが好ましい。R
1が炭素原子数1〜3のアルキル基であり、R
2〜R
4が水素原子であることがより好ましい。
【0024】
Aは、CH
3NH
3+(メチルアンモニウムイオンともいう。)、C
2H
5NH
3+(エチルアンモニウムイオンともいう。) 又はC
3H
7NH
3+(プロピルアンモニウムイオンともいう。)であること
が好ましく、CH
3NH
3+ 又はC
2H
5NH
3+であることより好ましく、CH
3NH
3+であることがさらに好ましい。
【0025】
Aで表されるアミジニウムイオンとしては、例えば、下記一般式(A2)で表されるアミジニウムイオンが例として挙げられる。
(R
5R
6N=CH−NR
7R
8)
+・・・(A2)
【0026】
一般式(A2)中、R
5〜R
8は、それぞれ独立に、水素原子、置換基としてアミノ基を有していてもよいアルキル基、又は置換基としてアミノ基を有していてもよいシクロアルキル基を表す。
【0027】
R
5〜R
8で表されるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、置換基としてアミノ基を有していてもよい。
R
5〜R
8で表されるアルキル基の炭素原子数は、通常1〜20であり、1〜4であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。
【0028】
R
5〜R
8で表されるシクロアルキル基は、置換基としてアミノ基を有していてもよい。
R
5〜R
8で表されるシクロアルキル基の炭素原子数は、通常3〜30であり、3〜11であることが好ましく、3〜8であることがより好ましい。
【0029】
R
5〜R
8で表される基としては、水素原子又はアルキル基が好ましい。
一般式(A2)に含まれる、アルキル基及びシクロアルキル基の数を少なくすること、並びにアルキル基及びシクロアルキル基の炭素原子数を小さくすることにより、発光強度が高い3次元構造のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を得ることができる。
アルキル基又はシクロアルキル基の炭素原子数が4以上の場合、2次元、及び/又は擬似2次元(quasi―2D)のペロブスカイト型結晶構造を一部あるいは全体に有する化合物を得ることができる。また、R
5〜R
8で表されるアルキル基に含まれる炭素原子の合計数は1〜4であることが好ましく、R
5〜R
8で表されるシクロアルキル基に含まれる炭素原子の合計数は3〜4であることが好ましい。R
5が炭素原子数1〜3のアルキル基であり、R
6〜R
8が水素原子であることがより好ましい。
【0030】
〔M〕
ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物において、B成分の金属カチオンを鉛とし、複数ある鉛イオンの一部を他の原子で置換することにより、発光強度を向上させることができる。
本発明の化合物中、Mの少なくとも一部は、金属カチオンである鉛イオンの一部を置換する。
より詳細には、Mはアルミニウムイオン、亜鉛イオン、コバルトイオン、マンガンイオン、ガリウムイオン、マグネシウムイオン、又はインジウムイオンである。
本発明の別の側面としては、前記Mは2価又は3価の金属元素の陽イオンである。
【0031】
ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の結晶構造を維持させ、十分な発光強度を得る観点から、Mはアルミニウムイオン、亜鉛イオン、コバルトイオン、マンガンイオン、又はマグネシウムイオンであることが好ましく、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、又はマグネシウムイオンであることがより好ましく、亜鉛イオンが特に好ましい。
Mは、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、コバルトイオン、マンガンイオン、ガリウムイオン、マグネシウムイオン、及びインジウムイオンからなる群より選ばれる2種類以上のイオンを含んでいてもよい。
【0032】
〔a〕
ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の結晶構造を維持させ、十分な発光強度を得る観点から、前記MのPbに対する置換量はMのモル数量をM及びBの合計モル数量で除したモル比である、a=[M/(Pb+M)]が0より大きく0.7以下である。aは、0.01以上0.7以下であることが好ましく、0.02以上0.5以下であることがより好ましく、0.03以上0.3以下であることがさらに好ましく、0.1以上0.3以下であることが特に好ましい。
本発明の別の側面としては、aは、0.08以上0.25以下であることが好ましく、0.15以上0.35以下であることがより好ましい。
【0033】
本発明において、aの値は、下記{aの算出方法}に記載している通り、合成後の化合物中のM及びBのモル数量を誘導結合プラズマ質量分析計(以下、ICP−MSともいう。)により測定した値から算出した値である。
【0034】
{aの算出方法}
本発明に係る化合物中において、前記a、即ち前記モル比[M/(M+B)]の値は、ICP−MS(ELAN DRCII、パーキンエルマー製)より測定することができる。ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を硝酸、N,N−ジメチルホルムアミド等を用いて溶解した後に測定を行うことができる。
具体的には、前記モル比[M/(M+B)]の値は、下記式(T)に従って算出した値とする。下記式(T)中、Mmolは、ICP−MSで測定したMのモル数量であり、Pbmolは、ICP−MSで測定したPbのモル数量を示す。
[M/(M+B)]=(Mmol)/(Mmol+Pbmol) …(T)
【0035】
本発明においては、合成後の化合物中のMのPbに対する置換量をより正確に算出できる観点から、前記{aの算出方法}により算出した値を「a」とすることが好ましい。
なお、aの値は、簡易的に、本発明の化合物を合成する際に、本発明の化合物におけるaが所望の値になるように調整した仕込み比の値から算出することもできる。
【0036】
〔X〕
Xは塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン及びチオシアン酸イオンからなる群より選ばれる1種以上の陰イオンである。Xが、塩化物イオン又は臭化物イオンを含有する場合、Xの合計モル数量に対する塩化物イオン又は臭化物イオンの含有量は、10〜100モル%が好ましく、30〜100モル%がより好ましく、70〜100モル%がさらに好ましく、80〜100モル%が特に好ましい。
Xが2種以上のハロゲン化物イオンを含む場合、塩化物イオン 又は臭化物イオンの含有率は、Xの合計モル数量に対して、10モル%以上が好ましく、30モル%以上がより好ましく、70モル%以上がさらに好ましく、80モル%以上が特に好ましい。
なかでも、Xは臭化物イオンを含むことが好ましい。Xが2種以上のハロゲン化物イオンである場合、前記ハロゲン化物イオンの含有比率は、発光波長により適宜選ぶことができる。
本発明の別の側面としては、Xが塩化物イオン及び臭化物イオンを含むことが好ましく、Xの合計モル数量に対して塩化物イオンの含有量が20〜40モル%、臭化物イオンの含有量が50〜80モル%であることが好ましい。
本発明のさらに別の側面としては、Xが塩化物イオン及び臭化物イオンを含むことが好ましく、[臭化物イオン/塩化物イオン]で表されるモル比が1.5〜2.0であることが好ましい。
【0037】
Xとして2種以上のイオンを選択する場合には、臭化物イオンと塩化物イオンとの組み合わせ、又は、臭化物イオンとヨウ化物イオンとの組み合わせが好ましい。
【0038】
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物であって、AB
(1−a)M
aX
(3+δ)で表される、3次元構造のペロブスカイト型の結晶構造を有する化合物の具体例としては、CH
3NH
3Pb
(1−a)Zn
aBr
3(0<a≦0.7)、CH
3NH
3Pb
(1−a)Al
aBr
(3+δ)(0<a≦0.7、0<δ≦0.7)、CH
3NH
3Pb
(1−a)Co
aBr
3(0<a≦0.7)、CH
3NH
3Pb
(1−a)Mn
aBr
3(0<a≦0.7)、CH
3NH
3Pb
(1−a)Mg
aBr
3(0<a≦0.7)、CsPb
(1−a)Zn
aBr
3(0<a≦0.7)、CsPb
(1−a)Al
aBr
(3+δ)(0<a≦0.7、0<δ≦0.7)、CsPb
(1−a)Co
aBr
3(0<a≦0.7)、CsPb
(1−a)Mn
aBr
3(0<a≦0.7)、CsPb
(1−a)Mg
aBr
3(0<a≦0.7)、CH
3NH
3Pb
(1−a)Zn
aBr
(3−y)I
v(0<a≦0.7、0<y<3)、CH
3NH
3Pb
(1−a)Al
aBr
(3+δ−y)I
y(0<a≦0.7、0<δ≦0.7、0<y<3)、CH
3NH
3Pb
(1−a)Co
aBr
(3−y)I
y(0<a≦0.7、0<y<3)、CH
3NH
3Pb
(1−a)Mn
aBr
(3−y)I
y(0<a≦0.7、0<y<3)、CH
3NH
3Pb
(1−a)Mg
aBr
(3−y)I
y(0<a≦0.7、0<y<3)、CH
3NH
3Pb
(1−a)Zn
aBr
(3−y)Cl
v(0<a≦0.7、0<y<3)、CH
3NH
3Pb
(1−a)Al
aBr
(3+δ−y)Cl
y(0<a≦0.7、0<δ≦0.7、0<y<3)、CH
3NH
3Pb
(1−a)Co
aBr
(3−y)Cl
y(0<a≦0.7、0<y<3)、CH
3NH
3Pb
(1−a)Mn
aBr
(3−y)Cl
y(0<a≦0.7、0<y<3)、CH
3NH
3Pb
(1−a)Mg
aBr
(3−y)Cl
y(0<a≦0.7、0<y<3)、(H
2N=CH−NH
2)Zn
aBr
3(0<a≦0.7)、(H
2N=CH−NH
2)Mg
aBr
3(0<a≦0.7)、(H
2N=CH−NH
2)Pb
(1−a)Zn
aBr
(3−y)I
v(0<a≦0.7、0<y<3)、(H
2N=CH−NH
2)Pb
(1−a)Zn
aBr
(3−y)Cl
v(0<a≦0.7、0<y<3)等が好ましいものとして挙げられる。但し、前記(3+δ―y)は必ず0以上となる。
【0039】
本発明に係るペロブスカイト型の結晶構造を有する化合物であって、A
2B
(1−a)M
aX
(4+δ)で表される、2次元構造のペロブスカイト型の結晶構造を有する化合物の具体例としては、(C
4H
9NH
3)
2Pb
(1−a)Zn
aBr
4(0<a≦0.7)、(C
4H
9NH
3)
2Pb
(1−a)Mg
aBr
4(0<a≦0.7)、(C
4H
9NH
3)
2Pb
(1−a)Co
aBr
4(0<a≦0.7)、(C
4H
9NH
3)
2Pb
(1−a)Mn
aBr
4(0<a≦0.7)、(C
7H
15NH
3)
2Pb
(1−a)Zn
aBr
4(0<a≦0.7)、(C
7H
15NH
3)
2Pb
(1−a)Mg
aBr
4(0<a≦0.7)、(C
7H
15NH
3)
2Pb
(1−a)Co
aBr
4(0<a≦0.7)、(C
7H
15NH
3)
2Pb
(1−a)Mn
aBr
4(0<a≦0.7)、(C
4H
9NH
3)
2Pb
(1−a)Zn
aBr
(4-y)I
y(0<a≦0.7、0<y<4)、(C
4H
9NH
3)
2Pb
(1−a)Mg
aBr
(4-y)I
y(0<a≦0.7、0<y<4)、(C
4H
9NH
3)
2Pb
(1−a)Co
aBr
(4-y)I
y(0<a≦0.7、0<y<4)、(C
4H
9NH
3)
2Pb
(1−a)Mn
aBr
(4-y)I
y(0<a≦0.7、0<y<4)、(C
4H
9NH
3)
2Pb
(1−a)Zn
aBr
(4-y)Cl
y(0<a≦0.7、0<y<4)、(C
4H
9NH
3)
2Pb
(1−a)Mg
aBr
(4-y)Cl
y(0<a≦0.7、0≦δ≦0.7、0<y<4)、(C
4H
9NH
3)
2Pb
(1−a)Co
aBr
(4-y)Cl
y(0<a≦0.7、0<y<4)、(C
4H
9NH
3)
2Pb
(1−a)Mn
aBr
(4-y)Cl
y(0<a≦0.7、0<y<4)等が
好ましいものとして挙げられる。
【0040】
≪発光スペクトル≫
本発明のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、可視光波長領域に蛍光を発する発光体であり、Xが臭化物イオンの場合は、通常480nm以上、好ましくは500nm以上、より好ましくは520nm以上、また、通常700nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲の範囲にピークがある蛍光を発するものである。
上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
本発明の別の側面としては、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物中のXが臭化物イオンの場合、発する蛍光のピークは、通常480〜700nmであり、500〜600nmであることが好ましく、520〜580nmであることがより好ましい。
Xがヨウ化物イオンの場合は、通常520nm以上、好ましくは530nm以上、より好ましくは540nm以上、また、通常800nm以下、好ましくは750nm以下、より好ましくは730nm以下の波長範囲の範囲にピークがある蛍光を発するものである。
上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
本発明の別の側面としては、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物中のXがヨウ化物イオンの場合、発する蛍光のピークは、通常520〜800nmであり、530〜750nmであることが好ましく、540〜730nmであることがより好ましい。
Xが塩化物イオンの場合は、通常300nm以上、好ましくは310nm以上、より好ましくは330nm以上、また、通常600nm以下、好ましくは580nm以下、より好ましくは550nm以下の波長範囲の範囲にピークがある蛍光を発するものである。
上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
本発明の別の側面としては、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物中のXが塩化物イオンの場合、発する蛍光のピークは、通常300〜600nmであり、310〜580nmであることが好ましく、330〜550nmであることがより好ましい。
【0041】
本発明のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の最大発光強度は、蛍光光度計を用いて測定した可視光波長領域の最大強度と、紫外可視吸光光度計を用いて測定した励起光の透過率から求めることができる。
蛍光光度計としては、例えば、蛍光分光光度計RF−1500(島津製作所製)や、分光蛍光光度計FT−6500(日本分光製)を用いることができる。紫外可視吸光光度計としては、例えば、日本分光製の紫外可視吸光光度計V−670(日本分光製)を用いることができる。
本発明において前記化合物の最大発光強度は、下記式(S)に従って補正した値とすることができる。下記式(S)中、Pmaxは、可視光波長領域の最大強度であり、Epは、励起光の透過率(%)を示す。
Pmax/(100−Ep)×100 …(S)
本発明の1つの側面は、X成分として臭化物イオンを含む本発明の化合物であって、波長530nm付近の最大発光強度が10以上である化合物である。
前記波長530nm付近の最大発光強度は、下記式(S)−1で求めることができる。
[波長530nm付近の最大発光強度/(100−波長430nmの透過率)]×100… (S)−1
式(S)−1中、波長530nm付近の最大強度とは、波長520〜540nmの間に確認された最も強度の高いピークの発光強度を意味する。
前記波長530nm付近の最大発光強度としては、10〜100であることが好ましく、20〜90であることがより好ましく、30〜80であることがさらに好ましい。
本発明の別の側面は、X成分として臭化物イオン及び塩化物イオンを含む本発明の化合物であって、波長500nm付近の最大発光強度が40以上である化合物である。
前記波長500nm付近の最大発光強度は、下記式(S)−2で求めることができる。
[波長500nm付近の最大発光強度/(100−波長430nmの透過率)]×100… (S)−2
式(S)−2中、波長500nm付近の最大強度とは、波長490〜510nmの間に確認された最も強度の高いピークの発光強度を意味する。
前記波長500nm付近の最大発光強度としては、40〜100であることが好ましく、50〜80であることがより好ましい。
本発明のさらに別の側面は、X成分として臭化物イオン及びヨウ化物イオンを含む本発明の化合物であって、波長540nm付近の最大発光強度が10以上である化合物である。
前記540nm付近の最大発光強度は、下記式(S)−3で求めることができる。
[波長540nm付近の最大発光強度/(100−波長430nmの透過率)]×100… (S)−3
式(S)−3中、波長500nm付近の最大強度とは、波長530〜550nmの間に確認された最も強度の高いピークの発光強度を意味する。
前記波長540nm付近の最大発光強度としては、10〜50であることが好ましく、15〜30であることがより好ましい。
【0042】
<組成物>
本発明は、上述のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物と、溶媒及び/又は樹脂とを含む組成物を提供する。
前記組成物は、上述の本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物以外のその他の成分を有していてもよい。その他の成分としては、例えば、若干の不純物、並びにA、B、X、及び/又はMを構成成分とするアモルファス構造を有する化合物が挙げられる。不純物としては、例えば、A、B、及び/又はMを含むハロゲン化物、B、及び/又はMの酸化物や複合酸化物、並びに、A、B、X及び/又はMを含むその他の化合物が挙げられる。
【0043】
前記組成物としては、上述の本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物が溶媒中に分散している溶液組成物、上述の本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物が溶媒中に分散している分散液組成物、及び上述の本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物が樹脂中に分散している樹脂組成物が挙げられる。
【0044】
<分散液組成物>
本発明に係る分散液組成物は、上述の本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物と、液体とを含み、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物が液体中に分散している分散液組成物である。本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を分散液組成物にすることで、さらに量子収率を向上させることができる。
本明細書において「液体」とは、1気圧、25℃において液体状態をとる物質のことをいう。
本明細書において「液体中に分散している」とは、粒子が液体中に浮遊あるいは懸濁している状態のことをいう。
【0045】
分散液組成物は、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物及び液体以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、不純物、A、B、X、及び/又はMを構成成分とするアモルファス構造を有する化合物、並びにキャッピング配位子が挙げられる。
不純物としては、例えば、A、B、及び/又はMを含むハロゲン化物、B、及び/又はMの酸化物や複合酸化物、並びに、A、B、X及び/又はMを含むその他の化合物が挙げられる。その他の成分は、分散液組成物の総質量に対して10質量%以下であることが好ましい。
【0046】
分散液組成物に含まれる液体(但し、樹脂は除く。)は、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を分散させることができる溶媒であれば特に限定されない。
分散液組成物に含まれる液体(但し、樹脂は除く。)は、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を溶解し難いものが好ましい。
分散液組成物に含まれる液体(但し、樹脂は除く。)としては、例えば、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテート等のエステル;γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン;ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等のエーテル;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、メトキシプロパノール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール等のアルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル;N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド基を有する有機溶媒;アセトニトリル、イソブチロニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリル等のニトリル基を有する有機溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭化水素基を有する有機溶媒;塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化した炭化水素基を有する有機溶媒;n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素基を有する有機溶媒;ジメチルスルホキシド、1−オクタデセンが挙げられる。
【0047】
これらの中でもメチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテート等のエステル;γ−ブチロラクトン、アセトン、ジメチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン;ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等のエーテル、アセトニトリル、イソブチロニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリル等のニトリル基を有する有機溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート基を有する有機溶媒;塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化した炭化水素基を有する有機溶媒;n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素基を有する有機溶媒は、極性が低く本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を溶解し難いと考えられるため好ましく、塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化した炭化水素基を有する有機溶媒;n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系有機溶媒がより好ましい。
【0048】
本発明に係る分散液組成物は、キャッピング配位子を含んでいてもよい。キャッピング配位子とは、粒子(本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物)の表面に吸着して分散溶媒中に安定して分散させるための化合物であり、キャッピング配位子としては、例えば、後述する一般式(A3)で表されるアンモニウム塩、及び(A4)で表されるカルボキシ基を有する化合物が挙げられる。本発明に係る分散液組成物は、一般式(A3)で表されるアンモニウム塩、及び一般式(A4)で表されるカルボキシ基を有する化合物のいずれか一方を含んでいてもよく、両方を含んでいてもよい。
【0049】
分散液組成物は、一般式(A3)で表されるアンモニウム塩を含んでいてもよい。
【0051】
一般式(A3)中、R
9〜R
12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基としてアミノ基を有していてもよいアルキル基、置換基としてアミノ基を1つ有していてもよい不飽和炭化水素基、又は置換基としてアミノ基を有していてもよいシクロアルキル基を表す。
【0052】
R
9〜R
12で表されるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、置換基としてアミノ基を有していてもよい。
R
9〜R
12で表されるアルキル基の炭素原子数は、通常1〜20であり、5〜20であることが好ましく、8〜20であることがより好ましい。
R
9〜R
12で表される不飽和炭化水素基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、置換基としてアミノ基を1つ有していてもよい。R
9〜R
12で表される不飽和炭化水素基の炭素原子数は、通常2〜20であり、5〜20であることが好ましく、8〜20であることがより好ましい。
【0053】
R
9〜R
12で表されるシクロアルキル基は、置換基としてアミノ基を有していてもよい。
R
9〜R
12で表されるシクロアルキル基の炭素原子数は、通常3〜30であり、3〜20であることが好ましく、3〜11であることがより好ましい。
【0054】
R
9〜R
12は、水素原子、アルキル基、又は不飽和炭化水素基であることが好ましい。不飽和炭化水素基としては、アルケニル基が好ましい。
【0055】
一般式(A3)で表されるアンモニウム塩は、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の表面に吸着していてもよく、溶媒中に分散していてもよい。前記アンモニウム塩のカウンターアニオンとしては、特に制限は無いがBr
−、Cl
−、I
−、F
−のハロゲン化物イオンが挙げられる。
一般式(A3)で表されるアンモニウム塩としては、n−オクチルアミンの塩、オレイルアミンの塩が好ましい。
【0056】
分散液組成物は、下記一般式(A4)で表されるカルボキシ基を有する化合物を含んでいてもよい。
R
13―CO
2H・・・(A4)
【0057】
一般式(A4)中、R
13は、置換基としてカルボキシ基を1つ有していてもよいアルキル基、置換基としてカルボキシ基を1つ有していてもよい不飽和炭化水素基、又は置換基としてカルボキシ基を1つ有していてもよいシクロアルキル基を表す。
【0058】
R
13で表されるアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、置換基としてカルボキシ基を1つ有していてもよい。R
13で表されるアルキル基の炭素原子数は、通常1〜20であり、5〜20であることが好ましく、8〜20であることがより好ましい。
R
13で表される不飽和炭化水素基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、置換基としてカルボキシ基を1つ有していてもよい。R
13で表される不飽和炭化水素基の炭素原子数は、通常2〜20であり、5〜20であることが好ましく、8〜20であることがより好ましい。
【0059】
R
13で表されるシクロアルキル基は、置換基としてカルボキシ基を1つ有していてもよい。
R
13で表されるシクロアルキル基の炭素原子数は、通常3〜30であり、3〜20であることが好ましく、3〜11であることがより好ましい。
【0060】
R
13はアルキル基、又は不飽和炭化水素基であることが好ましい。不飽和炭化水素基としては、アルケニル基が好ましい。
【0061】
一般式(A4)で表されるカルボキシ基を有する化合物は、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の表面に吸着していてもよく、溶媒中で分散していてもよい。
一般式(A4)で表されるカルボキシ基を有する化合物としては、オレイン酸が好ましい。
【0062】
分散液組成物に含まれる、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の含有量は、特に限定されるものではないが、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を凝集させにくくする観点、及び濃度消光を防ぐ観点から、前記分散液組成物の総質量に対して、50質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることがより好ましく、また、十分な量子収率を得る観点から、1質量ppm以上とすることが好ましく、10質量ppm以上とすることがより好ましい。
本発明の別の側面としては、分散液組成物に含まれる、前記ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の含有量は、前記分散液組成物の総質量に対して、1質量ppm以上50質量%以下とすることが好ましく、10質量ppm以上10質量%以下とすることがより好ましい。
本明細書において、分散液組成物の総質量に対する、前記ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の含有量は、例えば、ICP−MS、誘導結合プラズマ発光分光分析法(以下、ICP−AESともいう。)、イオンクロマトグラフ等によって、前記ペロブスカイト型結晶構造を構成する元素を分析する事で測定する事ができ、また前記ペロブスカイト型結晶構造を構成する元素の一部を測定し、モル比から算出することにより測定することもできる。
【0063】
分散液組成物中に分散している、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の平均粒径は、特に限定されるものではないが、十分に結晶構造を維持させる観点から、平均粒径が1nm以上であることが好ましく、2nm以上であることがより好ましく、3nm以上であることがさらに好ましく、また、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を沈降させにくくする観点から、平均粒径が10μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、500nm以下であることがさらに好ましい。
本発明の別の側面としては、分散液組成物に分散している、前記ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の平均粒径が1nm〜10μmであることが好ましく、2nm〜1μmであることがより好ましく、3nm〜500nmであることがさらに好ましい。
本明細書において、分散液組成物中に分散している、前記ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の平均粒径は、例えば、透過型電子顕微鏡(以下、TEMともいう。)、走査型電子顕微鏡(以下、SEMともいう。)により測定することができる。具体的には、TEM、又はSEMにより、前記分散液組成物中に分散している、20個の前記ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の粒径を観察し、それらの平均値を計算することにより、前記平均粒径を求めることができる。
【0064】
分散液組成物に含まれる本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の粒度分布は、特に限定されるものではないが、十分に結晶構造を維持させる観点から、メディアン径のD50が3nm以上であることが好ましく、4nm以上であることがより好ましく、5nm以上であることがさらに好ましく、また、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を沈降させにくくする観点から、5μm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。
本発明の別の側面としては、分散液組成物に含まれる前記ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の粒度分布においてメディアン径のD50が3nm〜5μmであることが好ましく、4nm〜500nmであることがより好ましく、5nm〜100nmであることが更に好ましい。
本明細書において、分散液組成物中に分散している、前記ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の粒度分布は、例えば、TEM、SEMにより測定することができる。具体的には、TEM、又はSEMにより、前記分散液組成物中に分散している、20個の前記ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の粒径を観察し、それらの分布から、前記メディアン径のD50を求めることができる。
【0065】
≪aの算出≫
本発明に係る分散液組成物中において、上述のMのモル数量をM及びBの合計モル数量で除したモル比[M/(M+B)]の値は、ICP−MS(ELAN DRCII、パーキンエルマー製)を用いて測定することができる。分散液組成物中のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は硝酸、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒を用いて溶解した後に測定を行うことができる。
具体的な算出方法は、前記の本発明に係る化合物の算出方法と同様である。
【0066】
≪量子収率の測定≫
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物の量子収率は、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス製、商品名C9920−02、測定条件:励起光450nm、室温、大気下)を用いて測定することができる。分散液組成物の量子収率は、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物が前記分散液組成物の総質量に対して、100〜2000ppm(μg/g)の濃度となるように調節して測定することができる。
本発明の1つの側面は、A成分として有機アンモニウムイオンを含む本発明の化合物を含む組成物であって、上記方法で測定した量子収率が、80%以上である組成物である。
前記量子収率としては、80〜100%であることが好ましく、85〜100%であることがより好ましい。
本発明の別の側面は、A成分としてセシウムイオンを含む本発明の化合物を含む組成物であって、上記方法で測定した量子収率が、31%以上である組成物である。
前記量子収率としては、31〜100%であることが好ましく、33〜80%であることがより好ましい。
【0067】
<樹脂組成物>
本発明に係る樹脂組成物は、上述の本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物と、樹脂とを含み、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物が樹脂中に分散している樹脂組成物である。
本明細書において「樹脂」とは、有機高分子化合物を意味する。
本明細書において「樹脂中に分散している」とは、粒子が樹脂中に浮遊あるいは懸濁している状態のことをいう。
樹脂組成物は、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物及び樹脂以外のその他の成分を有していてもよい。その他の成分としては、前記の本発明に係る分散液組成物が含んでいてもよいその他の成分と同様である。その他の成分は、分散液組成物の総質量に対して10質量%以下であることが好ましい。
本発明に係る樹脂組成物の形態は特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜決定することができる。ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物が分散している樹脂組成物を膜状にしたものでもよく、板状に成形したものでもよい。
【0068】
本発明に係る樹脂組成物において、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物が分散している樹脂は、特に限定されるものではないが、前記樹脂組成物を製造する温度において、前記ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対する溶解度が低いものが好ましい。
前記樹脂としては、例えば、ポリスチレン、メタクリル樹脂、等が挙げられる。
【0069】
樹脂組成物に含まれる、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の量は、特に限定されるものではないが、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を凝集させにくくする観点、及び濃度消光を防ぐ観点から、前記樹脂組成物の総質量に対して50質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることがより好ましく、また、十分な量子収率を得る観点から、1質量ppm以上とすることが好ましく、10質量ppm以上とすることがより好ましい。
本発明の別の側面としては、樹脂組成物に含まれる、前記ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の含有量は、前記樹脂組成物の総質量に対して、1質量ppm以上50質量%以下とすることが好ましく、10質量ppm以上10質量%以下とすることがより好ましい。
【0070】
樹脂組成物に分散している、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の平均粒径は、特に限定されるものではないが、前記の分散液組成物中に分散している、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の平均粒径と同様である。
【0071】
樹脂組成物に含まれる本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の粒度分布は、特に限定されるものではないが、前記の分散液組成物に含まれる本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の粒度分布と同様である。
【0072】
≪aの算出≫
本発明に係る樹脂組成物に含まれる本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物において、上述のMのモル数量をM及びBの合計モル数量で除したモル比[M/(M+B)])の値は、前記の本発明に係る分散液組成物と同様に、ICP−MS(ELAN DRCII、パーキンエルマー製)を用いて測定することができる。
【0073】
≪量子収率の測定≫
本発明に係る樹脂組成物の量子収率は、前記の本発明に係る分散液組成物と同様に、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス製、商品名C9920−02、測定条件:励起光450nm、室温、大気下)を用いて測定することができる。
【0074】
<ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の製造方法>
本発明のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、溶液を用いた自己組織化反応によって合成することができる。
例えば、鉛イオン及び上述のX成分を含む化合物と、上述のM成分及び上述のX成分を含む化合物と、上述のA成分及び上述のX成分を含む化合物とを溶媒に溶解させた溶液を基板に塗布し、溶媒を除去することにより、本発明のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を合成することができる。
その他の方法としては、鉛イオン及び上述のX成分を含む化合物と、上述のM成分及び上述のX成分を含む化合物とを溶媒に溶解させた溶液を基板に塗布し、溶媒を除去することで塗布膜を形成し、上述のA成分及び上述のX成分を含む化合物を溶媒に溶解させた溶液を上記塗布膜上に塗布し、溶媒を除去することにより、本発明のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を合成することができる。
合成する際、aとδが所望の値になるように、上記配合する化合物の種類とその量を調整すればよい。
【0075】
塗布方法としては、グラビア塗布法、バー塗布法、印刷法、スプレー法、スピンコーティング法、ディップ法、ダイコート法等が挙げられる。
【0076】
溶媒を除去する方法としては、減圧、乾燥及び送風のいずれか1以上を行い、溶媒を揮発させることが挙げられる。乾燥は常温下で行ってもよく、加熱して行ってもよい。加熱する場合の温度は、乾燥にかかる時間と基板の耐熱性とを考慮して適宜決定することができるが、50〜200℃が好ましく、50〜100℃がより好ましい。
【0077】
化合物の製造方法に用いられる溶媒は、上述のA、B、M、X、及びその他の成分を溶解し得るものであれば特に限定されるものではなく、例えば、前記の分散液組成物に含まれる液体(但し、樹脂は除く。)と同様のものが挙げられる。
【0078】
なかでも上述のA、B、M、X、及びその他の成分の溶解性を確保し易い観点から、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド基を有する有機溶媒、ジメチルスルホキシドが好ましく用いられ、とりわけN,N−ジメチルホルムアミドが好ましく用いられる。
上記有機溶媒は、分岐構造又は環状構造を有していてもよく、−O−、−CO−、−COO−、−OH等の官能基を複数有していてもよく、水素原子がフッ素等のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0079】
前記ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の製造方法において用いられる溶液中の溶媒の量は、前記溶液の総質量に対して50質量%以上とすることが好ましく、90質量%以上とすることがより好ましい。
【0080】
<分散液組成物の製造方法>
本発明に係る分散液組成物は、既知文献(Nano Lett. 2015, 15, 3692−3696、ACSNano,2015,9,4533−4542等)を参考に、以下に述べる方法によって製造することができる。
例えば、本発明に係る分散液組成物の製造方法としては、鉛イオン及びX成分を含む化合物と、M成分及びX成分を含む化合物と、A成分を含む化合物又はA成分及びX成分を含む化合物とを、溶媒に溶解させ、溶液を得る工程と、得られた溶液と、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対する溶解度が、溶液を得る工程で用いた溶媒よりも低い溶媒とを混合する工程とを含む製造方法(分散液組成物の製造方法の第1の実施形態)が挙げられる。
また、鉛イオン及びX成分を含む化合物と、M成分及びX成分を含む化合物と、A成分を含む化合物又はA成分及びX成分を含む化合物とを、高温の溶媒に添加して溶解させ、溶液を得る工程と、得られた溶液を冷却する工程とを含む製造方法(分散液組成物の製造方法の第2の実施形態)が挙げられる。
【0081】
<分散液組成物の製造方法の第1の実施形態>
以下、鉛イオン及びX成分を含む化合物と、M成分及びX成分を含む化合物と、A成分を含む化合物又はA成分及びX成分を含む化合物とを、溶媒に溶解させ、溶液を得る工程と、得られた溶液と、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対する溶解度が、溶液を得る工程で用いた溶媒よりも低い溶媒とを混合する工程とを含む製造方法について説明する。
なお、溶解度とは、混合する工程をおこなう温度における溶解度を意味する。
前記製造方法は、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を安定して分散できる観点から、キャッピング配位子を加える工程を含むことが好ましい。キャッピング配位子は、前述の混合する工程の前に添加する事が好ましく、A成分、B成分、X成分及びM成分を溶解させた溶液にキャッピング配位子を添加、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対する溶解度が、溶液を得る工程で用いた溶媒よりも低い溶媒に添加、又はA成分、B成分、X成分及びM成分を溶解させた溶液、及びペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対する溶解度が、溶液を得る工程で用いた溶媒よりも低い溶媒の両方に添加してもよい。
前記製造方法は、前述の混合する工程のあと、遠心分離、ろ過などの手法により粗大粒子を除去する工程を含んでいていることが好ましい。前記除去する工程によって除去する粗大粒子のサイズは、好ましくは10μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは500nm以上である。
【0082】
前述の溶液と、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対する溶解度が、前記溶液を得る工程で用いた溶媒よりも低い溶媒とを混合する工程は、(a)前記溶液を、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対する溶解度が溶液を得る工程で用いた溶媒よりも低い溶媒に滴下する工程であってもよく、(b)前記溶液に、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対する溶解度が溶液を得る工程で用いた溶媒よりも低い溶媒を滴下する工程であってもよいが、分散性を高める観点から(a)であることが好ましい。
滴下する際には攪拌を行う事が分散性を高める観点から好ましい。
前記溶液と、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対する溶解度が、前記溶液を得る工程で用いた溶媒よりも低い溶媒とを混合する工程において、温度には特に制限は無いが、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の析出し易さを確保する観点から、0〜40℃の範囲であることが好ましく、10〜30℃の範囲であることがより好ましい。
【0083】
製造する際、aとδが所望の値になるように、上記配合する化合物の種類とその量を調整すればよい。
【0084】
前記製造方法で用いるペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対する溶解度の異なる2種類の溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、メトキシプロパノール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル;N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド基を有する有機溶媒;ジメチルスルホキシド、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテート等のエステル;γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン;ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等のエーテル;アセトニトリル、イソブチロニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリル等のニトリル基を有する有機溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート基を有する有機溶媒;塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化した炭化水素基を有する有機溶媒;n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素基を有する有機溶媒からなる群より選ばれる2種の溶媒が挙げられる。
【0085】
前記製造方法に含まれる、溶液を得る工程で用いる溶媒としては、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対する溶解度が高い溶媒が好ましく、例えば、室温(10℃〜30℃)で前記工程をおこなう場合、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、メトキシプロパノール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル;N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド基を有する有機溶媒;ジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0086】
前記製造方法に含まれる、混合する工程で用いる溶媒としては、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対する溶解度が低い溶媒が好ましく、例えば、室温(10℃〜30℃)で前記工程をおこなう場合、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテート等のエステル;γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン;ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等のエーテル;アセトニトリル、イソブチロニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリル等のニトリル基を有する有機溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート基を有する有機溶媒;塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化した炭化水素基を有する有機溶媒;n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素基を有する有機溶媒が挙げられる。
【0087】
溶解度の異なる2種類の溶媒において、溶解度の差は100μg/溶媒100g〜90g/溶媒100gであることが好ましく、1mg/溶媒100g〜90g/溶媒100gであることがより好ましい。溶解度の差を100μg/溶媒100g〜90g/溶媒100g)にする観点から、例えば、室温(10℃〜30℃)で混合する工程をおこなう場合、溶液を得る工程で用いる溶媒が、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド基を有する有機溶媒やジメチルスルホキシドであり、混合する工程で用いる溶媒が塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化した炭化水素基を有する有機溶媒;n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素基を有する有機溶媒であることが好ましい。
【0088】
<分散液組成物の製造方法の第2実施形態>
鉛イオン及びX成分を含む化合物と、M成分及びX成分を含む化合物と、A成分を含む化合物又はA成分及びX成分を含む化合物とを、高温の溶媒に添加して溶解させ、溶液を得る工程と、得られた溶液を冷却する工程とを含む製造方法について説明する。
【0089】
前記製造方法では、温度の差による溶解度の差によって本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を析出させ、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液を製造することができる。
【0090】
前記製造方法は、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を安定して分散できる観点から、キャッピング配位子を加える工程を含んでいることが好ましい。
前記製造方法は、冷却する工程のあと、遠心分離、ろ過などの手法により粗大粒子を除去する工程を含んでいることが好ましい。上記除去工程によって除去する粗大粒子のサイズは、好ましくは10μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは500nm以上である。
【0091】
ここで、高温の溶媒とは、鉛イオン及びX成分を含む化合物と、M成分及びX成分を含む化合物と、A成分を含む化合物又はA成分及びX成分を含む化合物とが、溶解する温度の溶媒であればよく、例えば、60〜600℃の溶媒であることが好ましく、80〜400℃の溶媒であることがより好ましい。
冷却する温度としては、−20〜50℃であることが好ましく、−10〜30℃であることがより好ましい。
冷却速度としては、特に制限は無いが、0.1〜1500℃/minであることが好ましく、10〜150℃/minであることがより好ましい。
【0092】
前記製造方法に用いる溶媒としては、B成分及びX成分を含む化合物と、A成分を含む化合物又はA成分及びX成分を含む化合物とを溶解しうる溶媒であれば、特に限定されるものではないが、例えば、前記の分散液組成物に含まれる液体(但し、樹脂は除く。)と同様のものが挙げられる。
【0093】
ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液から、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を取り出す方法としては、固液分離を行うことでペロブスカイト型結晶構造を有する化合物のみを回収する方法が挙げられる。
前述の固液分離方法は、ろ過などの方法や、溶媒の蒸発を利用した方法などが挙げられる。
【0094】
<樹脂組成物の製造方法>
例えば、本発明に係る樹脂組成物の製造方法としては、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、又は本発明に係る分散液組成物と、溶媒に樹脂が溶解している溶液とを混合する工程と、溶媒を除去する工程とを含む製造方法が挙げられる。
また、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、又は本発明に係る分散液組成物と、モノマーとを混合する工程と、モノマーを重合させて樹脂組成物を得る工程とを含む製造方法が挙げられる。
【0095】
以下、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、又は本発明に係る分散液組成物と、溶媒に樹脂が溶解している溶液とを混合する工程と、溶媒を除去する工程とを含む、樹脂組成物の製造方法について説明する。
【0096】
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、又は本発明に係る分散液組成物と、溶媒樹脂が溶解している溶液とを混合する工程において(a)本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、又は本発明に係る分散液組成物を溶媒に樹脂が溶解している溶液に滴下してよいし、(b)溶媒に樹脂が溶解している溶液を本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、又は本発明に係る分散液組成物に滴下してもよいが、分散性を高める観点から(a)であることが好ましい。
混合する際には攪拌を行う事が分散性を高める観点から好ましい。
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、又は本発明に係る分散液組成物と、溶媒に溶解している樹脂とを混合する工程において、温度には特に制限は無いが、均一に混合する観点から、0〜100℃の範囲であることが好ましく、10〜80℃の範囲であることがより好ましい。
【0097】
溶媒を除去する方法としては、室温静置による自然乾燥でもよいし、真空乾燥機を用いた減圧乾燥や加熱によって溶媒を蒸発させる方法等が挙げられる。
【0098】
上述の樹脂を溶解させる溶媒としては、樹脂を溶解しうる溶媒であれば特に限定されないが、上述の本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を溶解し難いものが好ましい。
上述の樹脂が溶解している溶媒としては、例えば、前記の分散液組成物に含まれる液体(但し、樹脂は除く。)と同様のものが挙げられる。
【0099】
中でもメチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテート等のエステル類;γ−ブチロラクトン、アセトン、ジメチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン;ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等のエーテル、アセトニトリル、イソブチロニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリル等のニトリル基を有する有機溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系有機溶媒;塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化した炭化水素基を有する有機溶媒;n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素基を有する有機溶媒は極性が低く、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を溶解し難いと考えられるため好ましく、塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化した炭化水素基を有する有機溶媒;n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素基を有する有機溶媒がより好ましい。
【0100】
以下、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、又は本発明に係る分散液組成物と、モノマーとを混合する工程と、モノマーを重合させて樹脂組成物を得る工程とを含む製造方法について説明する。
【0101】
ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、又は本発明に係る分散液組成物と、モノマーとを混合する工程は、(a)本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、又は本発明に係る分散液組成物をモノマーに滴下してよいし、(b)モノマーを本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、又は本発明に係る分散液組成物に滴下してもよいが、分散性を高める観点から(a)であることが好ましい。
混合する際には攪拌を行う事が分散性を高める観点から好ましい。
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、又は本発明に係る分散液組成物と、モノマーとを混合する工程において、温度には特に制限は無いが、均一に混合する観点から、0〜100℃の範囲であることが好ましく、10〜80℃の範囲であることがより好ましい。
【0102】
前記製造方法において用いるモノマーとしては、スチレン、メチルメタクリレートが挙げられる。
【0103】
前記製造方法において、モノマーを重合させる方法としては、ラジカル重合などの公知の重合反応を適宜用いる事ができる。例えばラジカル重合の場合は、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、又は本発明に係る分散液組成物と、モノマーとの混合物に、ラジカル重合開始剤を添加し、ラジカルを発生させることで重合反応を用い、ラジカルを発生させることで重合反応が進行する。
ラジカル重合開始剤は特に限定されるものではないが、光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、bis(2,4,6−trimethylbenzoyl)−phenylphosphineoxide等が挙げられる。
【0104】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0105】
<膜>
本発明に係る膜は、上述の本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む膜である。前記膜は、上述の本発明に係る樹脂組成物を含む膜であってもよい。
【0106】
本発明に係る膜の厚みは、通常、0.01μm〜10mmであり、0.1μm〜1mmであることが好ましく、1μm〜0.5mmであることがより好ましい。
本明細書において、前記膜の厚みは、マイクロメータにより任意の3点において測定し、その平均値を算出することにより得ることができる。
【0107】
本発明に係る膜は、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を、1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
【0108】
<膜の製造方法>
本発明に係る膜は、例えば、溶液を用いた自己組織化反応によって製造することができる。ここで、溶液を用いた自己組織化反応は、上述の本発明に係る化合物の製造方法と同様である。
【0109】
本発明に係る膜の製造方法のその他の方法としては、例えば、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物を用いた塗布方法、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む溶液組成物を用いた塗布方法が挙げられる。
ここで、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物は、上述の本発明に係る分散液組成物と同様である。本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む溶液組成物は、上述の溶液組成物と同様である。分散液組成物および溶液組成物は、上述の本発明に係る樹脂組成物を含む組成物であってもよい。
【0110】
分散液組成物または溶液組成物を用いた塗布方法の一形態としては、分散液組成物または溶液組成物を基板に塗布し、溶媒を除去することにより、本発明に係る膜を製造する方法が挙げられる。
分散液組成物または溶液組成物を用いた塗布方法の他の一形態としては、モノマーをさらに含む分散液組成物またはモノマーをさらに含む溶液組成物を基板に塗布し、溶媒を除去し、モノマーを重合させることにより、本発明に係る膜を製造する方法が挙げられる。
【0111】
<積層構造体>
本発明に係る積層構造体は、上述の本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層を有する積層構造体である。
【0112】
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層の厚みは、通常、0.01μm〜10mmであり、0.1μm〜1mmであることが好ましく、1μm〜0.5mmであることがより好ましい。
本明細書において、前記膜の厚みは、マイクロメータにより任意の3点において測定し、その平均値を算出することにより得ることができる。
【0113】
本発明に係る積層構造体は、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層を、一層のみ有していても、二層以上有していてもよい。
【0114】
本発明に係る積層構造体が有していてもよい、本発明に係る本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層以外の層としては、基板、バリア層、光散乱層等が挙げられる。
【0115】
(基板)
基板は、特に制限は無いが、発光した光を取り出す観点から、透明な基板が好ましい。基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等から構成されるフレキシブル基板、ガラス基板が挙げられる。
【0116】
(バリア層)
バリア層とは、大気中の水蒸気等から、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層を保護する機能を有する層である。
バリア層は、特に制限は無いが、発光した光を取り出す観点から、透明な層が好ましい。バリア層としては、例えば、SiO
2膜、Al
2O
3膜等の公知のバリア層を用いることができる。
【0117】
(光散乱層)
光散乱層は、発光した光を散乱する機能を有する層である。
光散乱層は、特に制限は無いが、発光した光を取り出す観点から、透明な層が好ましい。光散乱層としては、例えば、シリカ粒子等の光散乱粒を含む層、増幅拡散フィルムが挙げられる。
【0118】
図1は、本実施形態の積層構造体の構成を模式的に示す断面図である。第1の積層構造体1aは、第1の基板20および第2の基板21の間に、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層10が設けられている。そして、膜10は、封止層22によって封止されている。
本発明の一つの側面は、第1の基板20と、第2の基板21と、第1の基板20と第2の基板21との間に位置する本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物含む層10と、封止層と、を有する積層構造体であって、前記封止層が、前記ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む前記層10の前記第1の基板20、及び第2の基板21と接していない面上に配置されることを特徴とする積層構造体1aである。
本発明の別の側面は、プリズムシート50と、導光板60と、前記第1の積層構造体1aと、がこの順に積層された積層構造体1bである。
【0119】
<積層構造体の製造方法>
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層の製造方法は、上述の本発明に係る膜の製造方法と同様である。そのため、本発明に係る積層構造体は、上述の本発明に係る膜の製造方法と、公知の方法とを組み合せることにより、製造することができる。
【0120】
<発光装置>
本発明に係る発光装置は、本発明に係る積層構造体と、光源とを有する発光装置である。積層構造体に光源から発光した光が照射されると、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層に吸収され、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層が発光し、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層から発光した光を取り出す装置である。本発明に係る発光装置において、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層は、通常、波長変換発光層として機能する。
本発明の一つの側面は、プリズムシート50と、導光板60と、前記第1の積層構造体1aと、光源30と、がこの順に積層された発光装置2である。
【0121】
本発明に係る発光装置において、本発明に係る積層構造体が有していてもよい上述以外の層としては、例えば、光反射部材層、輝度強化層、プリズムシート、導光板、要素間の媒体材料層が挙げられる。
【0122】
(光源)
光源は、特に制限は無いが、積層構造体におけるペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層を発光させるという観点から、600nm以下の発光波長を有する光源が好ましい。光源としては、例えば、青色発光ダイオード等の発光ダイオード(LED)、レーザー、ELが挙げられる。
【0123】
本発明に係る発光装置の具体例としては、ELディスプレイ、液晶ディスプレイが挙げられる。ELディスプレイ、液晶ディスプレイにおいて、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層は、通常、波長変換発光層として機能する。
【0124】
本発明に係る発光装置の他の具体例としては、照明が挙げられる。青色発光ダイオードを光源として使用し、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層を波長変換発光層として機能させることで、白色発光の照明を実現することができる。
【0125】
<液晶ディスプレイ>
図2に示すように、本実施形態の液晶ディスプレイ3は、液晶パネル40と、本実施形態の発光装置2とを、視認側からこの順に備える。発光装置2は、第2の積層構造体1bと光源30とを備える。第2の積層構造体1bは、前述の第1の積層構造体1aが、プリズムシート50と、導光板60と、をさらに備えたものである。ディスプレイは、任意の適切なその他の部材をさらに備えていてもよい。
本発明の一つの側面は、液晶パネル40と、プリズムシート50と、導光板60と、前記第1の積層構造体1aと、光源30と、がこの順に積層された液晶ディスプレイ3である。
【0126】
<用途>
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、並びにこれを含む分散液組成物及び樹脂組成物の用途としては、例えば、ELディスプレイや液晶ディスプレイ用の波長変換材料が挙げられる。
具体的には、(1)本発明のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物をガラスチューブ等の中に入れて封止し、これを導光板の端面(側面)に沿うように、光源である青色発光ダイオードと導光板の間に配置して、青色光を緑色光や赤色光に変換するバックライト(オンエッジ方式のバックライト)、(2)本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を樹脂等に分散させてシート化し、これを2枚のバリアーフィルムで挟んで封止したフィルムを、導光板の上に設置して、導光板の端面(側面)に置かれた青色発光ダイオードから導光板を通して前記シートに照射される青色の光を緑色光や赤色光に変換するバックライト(表面実装方式のバックライト)、(3)本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を、樹脂等に分散させて青色発光ダイオードの発光部近傍に設置し、照射される青色の光を緑色光や赤色光に変換するバックライト(オンチップ方式のバックライト)、及び(4)本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を、レジスト中に分散させて、カラーフィルター上に設置し、光源から照射される青色の光を緑色光や赤色光に変換するバックライトが挙げられる。
【0127】
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、並びにこれを含む分散液組成物及び樹脂組成物の用途としては、例えば、レーザーダイオード用の波長変換材料が挙げられる。
具体的には、本発明のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を樹脂等に分散させて成形し、光源である青色発光ダイオードの後段に配置して、青色光を緑色光や赤色光に変換して白色光を発する照明が挙げられる。
【0128】
また、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、例えば、LEDの発光層の材料として用いることができる。
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含むLEDとしては、例えば、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物とZnSなどの導電性粒子を混合して膜状に積層し、片面にn型輸送層を積層し、もう片面をp型輸送層で積層した構造をしており、電流を流すことで、p型半導体の正孔と、n型半導体の電子が接合面のペロブスカイト結晶構造を有する化合物中で電荷を打ち消すことで発光する方式が挙げられる。
【0129】
さらに、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、太陽電池の活性層に含まれる電子輸送性材料として利用することができる。
前記太陽電池としては、構成は特に限定されないが、例えば、フッ素ドープされた酸化スズ(FTO)基板、酸化チタン緻密層、多孔質酸化アルミニウム層、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む活性層、2,2’,7,7’−tetrakis−(N,N’−di−p−methoxyphenylamine)−9,9’−spirobifluorene(Spiro−OMeTAD)などのホール輸送層、及び、銀(Ag)電極をこの順で有する太陽電池が挙げられる。
酸化チタン緻密層は、電子輸送の機能、FTOのラフネスを抑える効果、及び、逆電子移動を抑制する機能を有する。
多孔質酸化アルミニウム層は、光吸収効率を向上させる機能を有する。
活性層に含まれる、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、電荷分離及び電子輸送の役割をはたす。
【実施例】
【0130】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0131】
(ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の合成)
[実施例1]
2.5cm×2.5cmサイズのガラス基板を用意した。このガラス基板をオゾンUV処理した。
70℃で臭化鉛(PbBr
2)をN,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と記載する)の溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化鉛溶液を作製した。同様に、70℃で臭化亜鉛(ZnBr
2)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化亜鉛溶液を作製した。次いで、70℃で臭化メチルアンモニウム(CH
3NH
3Br)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化メチルアンモニウム溶液を作製した。上記の臭化鉛溶液と臭化亜鉛溶液をモル比で[Zn/(Zn+Pb)]が0.03となるように混合し溶液を作製した。次いで、モル比で[臭化メチルアンモニウム/(Zn+Pb)]=1となるように更に溶液を混合した。
上記のガラス基板に、1000rpmの回転数で前記溶液をスピンコートにより塗布し、大気中100℃で10分間乾燥させることで、化合物の塗布膜を得た。
前記塗布膜の化合物のX線回折パターンをX線回折測定装置(XRD、Cu Kα線、X’pert PRO MPD、スペクトリス社製)で測定した所、2θ=14°の位置に(hkl)=(001)由来のピークを有しており、3次元のペロブスカイト型結晶構造を有していることを確認した。
【0132】
[実施例2]
[Zn/(Zn+Pb)]を0.05とする以外は上記実施例1と同様の方法で化合物の塗布膜を得た。
前記塗布膜の化合物のX線回折パターンをX線回折測定装置(XRD、Cu Kα線、X’pert PRO MPD、スペクトリス社製)で測定した所、2θ=14°の位置に(hkl)=(001)由来のピークを有しており、3次元のペロブスカイト型結晶構造を有していることを確認した。
【0133】
[実施例3]
[Zn/(Zn+Pb)]を0.1とする以外は上記実施例1と同様の方法で化合物の塗布膜を得た。
前記塗布膜の化合物のX線回折パターンをX線回折測定装置(XRD、Cu Kα線、X’pert PRO MPD、スペクトリス社製)で測定した所、2θ=14°の位置に(hkl)=(001)由来のピークを有しており、3次元のペロブスカイト型結晶構造を有していることを確認した。
【0134】
[実施例4]
[Zn/(Zn+Pb)]を0.2とする以外は上記実施例1と同様の方法で化合物の塗布膜を得た。
【0135】
[実施例5]
[Zn/(Zn+Pb)]を0.3とする以外は上記実施例1と同様の方法で化合物の塗布膜を得た。
【0136】
[比較例1]
2.5cm×2.5cmサイズのガラス基板を用意した。このガラス基板をオゾンUV処理した。
70℃で臭化鉛(PbBr
2)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化鉛溶液を作製した。70℃で臭化メチルアンモニウム(CH
3NH
3Br)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化メチルアンモニウム溶液を作製した。次いで、モル比で臭化メチルアンモニウム/Pb=1となるように溶液を混合した。
上記のガラス基板に、1000rpmの回転数で前記溶液をスピンコートにより塗布し、100℃で10分間乾燥させることで、化合物の塗布膜を得た。
前記塗布膜の化合物のX線回折パターンをX線回折測定装置(XRD、Cu Kα線、X’pert PRO MPD、スペクトリス社製)で測定した所、2θ=14°の位置に(hkl)=(001)由来のピークを有しており、3次元のペロブスカイト型結晶構造を有していることを確認した。
【0137】
(発光スペクトル測定)
実施例1〜5、及び比較例1で得られたペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の塗布膜の発光スペクトルを、蛍光光度計(島津製作所製、商品名RF−1500、測定条件:励起光430nm、感度LOW)を用いて測定した。また、紫外可視吸光光度計(日本分光製、商品名V−670)を用いて、前記塗布膜波長430nmの透過率(%)を測定した。
尚、前記塗布膜間の発光強度の比較は、波長530nm付近の最大発光強度を、以下の式(S)−1で補正して行った。
[波長530nm付近の最大発光強度/(100−波長430nmの透過率)]×100(S)−1
式(S)−1中、波長530nm付近の最大強度とは、波長520〜540nmの間に確認された最も強度の高いピークの発光強度を意味する。
【0138】
以下の表1に、実施例1〜5、比較例1のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の構成と、最大発光強度を記載する。表1中、「M/(M+Pb)」は、Mのモル数量をM及びB(鉛イオン)の合計モル数量で除したモル比を表す。
【0139】
【表1】
【0140】
上記の結果から、本発明を適用した実施例1〜5に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、本発明を適用しない比較例1のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物と比して、優れた発光強度を有していることが確認できた。
【0141】
≪ICP−MSによる測定≫
実施例2で得られたガラス基板上のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対して硝酸1mL添加し、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を溶解させた。溶解後の溶液をイオン交換水で合計10mlとし、ICP−MS(ELAN DRCII、パーキンエルマー製)によってPb、及びMのモル数量を測定し、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に含まれるMのモル数量を[M/(M+Pb)]の式に当てはめて評価した。
ICP−MSによる測定の結果、実施例2の[M/(M+Pb)]の値が0.054であった。
【0142】
(ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の合成)
[実施例6]
2.5cm×2.5cmサイズのガラス基板を用意した。このガラス基板をオゾンUV処理した。
70℃で臭化鉛(PbBr
2)をN,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と記載する)の溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化鉛溶液を作製した。同様に、70℃で臭化亜鉛(ZnBr
2)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化亜鉛溶液を作製した。次いで、70℃で塩化メチルアンモニウム(CH
3NH
3Cl)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の塩化メチルアンモニウム溶液を作製した。上記の臭化鉛溶液と臭化亜鉛溶液をモル比で[Zn/(Zn+Pb)]が0.1となるように混合し溶液を作製した。次いで、モル比で[塩化メチルアンモニウム/(Zn+Pb)]=1となるように更に溶液を混合した。
上記のガラス基板に、1000rpmの回転数で前記溶液をスピンコートにより塗布し、大気中100℃で10分間乾燥させることで、化合物の塗布膜を得た。
【0143】
[実施例7]
2.5cm×2.5cmサイズのガラス基板を用意した。このガラス基板をオゾンUV処理した。
70℃で臭化鉛(PbBr
2)をN,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と記載する)の溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化鉛溶液を作製した。同様に、70℃で臭化亜鉛(ZnBr
2)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化亜鉛溶液を作製した。次いで、70℃でヨウ化メチルアンモニウム(CH
3NH
3I)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度のヨウ化メチルアンモニウム溶液を作製した。上記の臭化鉛溶液と臭化亜鉛溶液をモル比で[Zn/(Zn+Pb)]が0.1となるように混合し溶液を作製した。次いで、モル比で[ヨウ化メチルアンモニウム/(Zn+Pb)]=1となるように更に溶液を混合した。
上記のガラス基板に、1000rpmの回転数で前記溶液をスピンコートにより塗布し、大気中100℃で10分間乾燥させることで、化合物の塗布膜を得た。
【0144】
[比較例2]
2.5cm×2.5cmサイズのガラス基板を用意した。このガラス基板をオゾンUV処理した。
70℃で臭化鉛(PbBr
2)をN,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と記載する)の溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化鉛溶液を作製した。次いで、70℃で塩化メチルアンモニウム(CH
3NH
3Cl)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の塩化メチルアンモニウム溶液を作製した。次いで、モル比で[塩化メチルアンモニウム/(Pb)]=1となるように更に溶液を混合した。
上記のガラス基板に、1000rpmの回転数で前記溶液をスピンコートにより塗布し、大気中100℃で10分間乾燥させることで、化合物の塗布膜を得た。
【0145】
[比較例3]
2.5cm×2.5cmサイズのガラス基板を用意した。このガラス基板をオゾンUV処理した。
70℃で臭化鉛(PbBr
2)をN,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と記載する)の溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化鉛溶液を作製した。次いで、70℃でヨウ化メチルアンモニウム(CH
3NH
3I)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度のヨウ化メチルアンモニウム溶液を作製した。次いで、モル比で[ヨウ化メチルアンモニウム/(Pb)]=1となるように更に溶液を混合した。
上記のガラス基板に、1000rpmの回転数で前記溶液をスピンコートにより塗布し、大気中100℃で10分間乾燥させることで、化合物の塗布膜を得た。
【0146】
(発光スペクトル測定)
実施例6及び比較例2で得られたペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の塗布膜の発光スペクトルを、蛍光光度計(日本分光製、商品名FT−6500、測定条件:励起光430nm、感度High)を用いて測定した。また、紫外可視吸光光度計(日本分光製、商品名V−670)を用いて、前記塗布膜の波長430nmの透過率(%)を測定した。
尚、前記塗布膜間の発光強度の比較は、波長500nm付近の最大発光強度を、以下の式(S)−2で補正して行った。
[波長500nm付近の最大発光強度/(100−波長430nmの透過率)]×100… (S)−2
式(S)−2中、波長500nm付近の最大強度とは、波長490〜510nmの間に確認された最も強度の高いピークの発光強度を意味する。
【0147】
(発光スペクトル測定)
実施例7及び比較例3で得られたペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の塗布膜の発光スペクトルを、蛍光光度計(日本分光製、商品名FT−6500、測定条件:励起光430nm、感度High)を用いて測定した。また、紫外可視吸光光度計(日本分光製、商品名V−670)を用いて、前記塗布膜の波長430nmの透過率(%)を測定した。
尚、前記塗布膜間の発光強度の比較は、波長540nm付近の最大発光強度を、以下の式(S)−3で補正して行った。
[波長540nm付近の最大発光強度/(100−波長430nmの透過率)]×100… (S)−3
式(S)−3中、波長540nm付近の最大強度とは、波長530〜550nmの間に確認された最も強度の高いピークの発光強度を意味する。
【0148】
以下の表2に、実施例6〜7、比較例2〜3のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の構成と、最大発光強度を記載する。表2中、「M/(M+Pb)」は、Mのモル数量をM及びB(鉛イオン)の合計モル数量で除したモル比を表す。
【0149】
【表2】
【0150】
上記の結果から、本発明を適用した実施例6のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、本発明を適用しない比較例2のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物と比して、優れた発光強度を有していることが確認できた。
また、本発明を適用した実施例7のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、本発明を適用しない比較例3のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物と比して、優れた発光強度を有していることが確認できた。
【0151】
(ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の合成)
[実施例8]
2.5cm×2.5cmサイズのガラス基板を用意した。このガラス基板をオゾンUV処理した。
70℃で臭化鉛(PbBr
2)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化鉛溶液を作製した。同様に、70℃で臭化アルミニウム(AlBr
3)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化アルミニウム溶液を作製した。
次いで、70℃で臭化メチルアンモニウム(CH
3NH
3Br)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化メチルアンモニウム溶液を作製した。上記の臭化鉛溶液と臭化アルミニウム溶液をモル比で[Al/(Al+Pb)]が0.03となるように混合し溶液を作製した。次いで、モル比で[臭化メチルアンモニウム/(Al+Pb)]=1となるように更に溶液を混合した。
上記のガラス基板に、1000rpmの回転数で前記溶液をスピンコートにより塗布し、大気中100℃で10分間乾燥させることで、化合物の塗布膜を得た。
【0152】
[実施例9]
[Al/(Al+Pb)]を0.05とする以外は上記実施例8と同様の方法でペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の塗布膜を得た。
【0153】
[実施例10]
2.5cm×2.5cmサイズのガラス基板を用意した。このガラス基板をオゾンUV処理した。
70℃で臭化鉛(PbBr
2)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化鉛溶液を作製した。同様に、70℃で臭化コバルト(CoBr
2)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化コバルト溶液を作製した。
次いで、70℃で臭化メチルアンモニウム(CH
3NH
3Br)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化メチルアンモニウム溶液を作製した。上記の臭化鉛溶液と臭化コバルト溶液をモル比で[Co/(Co+Pb)]が0.1となるように混合し溶液を作製した。次いで、モル比で[臭化メチルアンモニウム/(Co+Pb)]=1となるように更に溶液を混合した。
上記のガラス基板に、1000rpmの回転数で前記溶液をスピンコートにより塗布し、大気中100℃で10分間乾燥させることで、化合物の塗布膜を得た。
【0154】
[実施例11]
2.5cm×2.5cmサイズのガラス基板を用意した。このガラス基板をオゾンUV処理した。
70℃で臭化鉛(PbBr
2)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化鉛溶液を作製した。同様に、70℃で臭化マンガン(MnBr
2)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化マンガン溶液を作製した。
次いで、70℃で臭化メチルアンモニウム(CH
3NH
3Br)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化メチルアンモニウム溶液を作製した。上記の臭化鉛溶液と臭化マンガン溶液をモル比で[Mn/(Mn+Pb)]が0.1となるように混合し溶液を作製した。次いで、モル比で[臭化メチルアンモニウム/(Mn+Pb)]=1となるように更に溶液を混合した。
上記のガラス基板に、1000rpmの回転数で前記溶液をスピンコートにより塗布し、大気中100℃で10分間乾燥させることで、化合物の塗布膜を得た。
【0155】
[実施例12]
2.5cm×2.5cmサイズのガラス基板を用意した。このガラス基板をオゾンUV処理した。
70℃で臭化鉛(PbBr
2)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化鉛溶液を作製した。同様に、70℃で臭化マグネシウム(MgBr
2)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化マグネシウム溶液を作製した。
次いで、70℃で臭化メチルアンモニウム(CH
3NH
3Br)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化メチルアンモニウム溶液を作製した。上記の臭化鉛溶液と臭化マグネシウム溶液をモル比で[Mg/(Mg+Pb)]が0.03となるように混合し溶液を作製した。次いで、モル比で[臭化メチルアンモニウム/(Mg+Pb)]=1となるように更に溶液を混合した。
上記のガラス基板に、1000rpmの回転数で前記溶液をスピンコートにより塗布し、大気中100℃で10分間乾燥させることで、化合物の塗布膜を得た。
【0156】
[実施例13]
[Mg/(Mg+Pb)]を0.05とする以外は上記実施例12と同様の方法で化合物の塗布膜を得た。
【0157】
[実施例14]
[Mg/(Mg+Pb)]を0.1とする以外は上記実施例12と同様の方法で化合物の塗布膜を得た。
【0158】
(発光スペクトル測定)
発光強度の比較方法は上記実施例1〜5及び比較例1と同様の方法で行なった。
【0159】
以下の表3に、実施例8〜14及び比較例1のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の構成と、最大発光強度を記載する。表3中、「M/(M+Pb)」は、Mのモル数量をM及びB(鉛イオン)の合計モル数量で除したモル比を表す。
【0160】
【表3】
【0161】
上記の結果から、本発明を適用した実施例8〜14のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、本発明を適用しない比較例1のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物と比して、優れた発光強度を有していることが確認できた。
【0162】
(ペロブスカイト型結晶構造を含む分散液組成物の合成)
[実施例15]
臭化メチルアンモニウム(CH
3NH
3Br)0.32mmol、臭化鉛(PbBr
2)0.388mmol、臭化亜鉛(ZnBr
2)0.012mmol、n−オクチルアミン40μL、オレイン酸1mL、及びDMF10mLを混合して溶液を作製した。
次いで、20mLのトルエンをマグネチックスターラーで攪拌しながら、前記の溶液4mLを前記トルエンに添加した。1時間攪拌した後、10000rpm、10分間の遠心分離で沈殿を分離する事で、上澄みのペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物を得た。
【0163】
[実施例16]
臭化鉛(PbBr
2)を0.38mmol、臭化亜鉛(ZnBr
2)0.02mmol、とする以外は上記実施例15と同様の方法でペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物を得た。
【0164】
[実施例17]
臭化鉛(PbBr
2)を0.36mmol、臭化亜鉛(ZnBr
2)0.04mmol、とする以外は上記実施例15と同様の方法でペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物を得た。
【0165】
[比較例4]
臭化メチルアンモニウム(CH
3NH
3Br)0.32mmol、臭化鉛(PbBr
2)0.4mmol、n−オクチルアミン40μL、オレイン酸1mL、及びDMF10mLを混合して溶液を作製した。
次いで、20mLのトルエンをマグネチックスターラーで攪拌しながら、前記の溶液4mLを前記トルエンに添加した。1時間攪拌した後、10000rpm、10分間の遠心分離で沈殿を分離する事で、上澄みのペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物を得た。
【0166】
(M置換量の測定)
実施例15〜17及び比較例4で得られたペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物10mLに対してDMF1mLを添加し、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を溶解させた。溶解後の溶液中のM(Zn)及びB(Pb)のモル数量をICP−MS(ELAN DRCII、パーキンエルマー製)により測定し、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に含まれるM(Zn)のモル数量を[M/(M+Pb)]の式に当てはめて評価した。
【0167】
(量子収率測定)
実施例15〜17及び比較例4で得られたペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物の量子収率を、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス製、商品名C9920−02、測定条件:励起光450nm、室温、大気下)を用いて測定した。
前記分散液組成物の総質量に対するペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の濃度を1000ppm(μg/g)として量子収率の測定を行った。
ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の濃度の測定方法について説明する。実施例15〜17及び比較例4で得られたペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物10mLに対して、DMF1mLを添加し、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を溶解させた。得られた溶液中のM(Zn)及びB(Pb)のモル数量を、ICP−MS(ELAN DRCII、パーキンエルマー製)により測定し、モル比からCH
3NH
3Pb
(1−a)ZnaBr
3(0<a≦0.7)、またはCH
3NH
3PbBr
3の式に当てはめてペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の濃度を測定した。
【0168】
以下の表4に、実施例15〜17及び比較例4のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物の構成と、量子収率を示す。表4中、「M/(M+Pb)」は、ICP−MSにより測定したMのモル数量をM及びB(鉛イオン)の合計モル数量で除したモル比を表す。
【0169】
【表4】
【0170】
上記の結果から、本発明を適用した実施例15〜17のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物は、本発明を適用しない比較例4のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物と比して、優れた量子収率を有していることが確認できた。
【0171】
(ペロブスカイト型結晶構造を含む分散液組成物の合成)
[実施例18]
炭酸セシウム0.814gと1−オクタデセンの溶媒40mLと、オレイン酸2.5mLを混合した。マグネチックスターラーで攪拌して、窒素を流しながら150℃で1時間加熱して炭酸セシウム溶液を調製した。
臭化鉛(PbBr
2)0.193g、及び臭化亜鉛(ZnBr
2)0.0508gを1−オクタデセンの溶媒20mLと混合した。マグネチックスターラーで攪拌して窒素を流しながら120℃の温度で1時間加熱した後、オレイン酸2mL、オレイルアミン2mLを添加した。160℃の温度に昇温した後、上述の炭酸セシウム溶液を1.6mL添加した。添加後、反応容器を氷水に漬けることで、室温まで降温した。
次いで、分散液を10000rpm、5分間の遠心分離で沈殿を分離する事で、沈殿のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を得た。
ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物をトルエン5mLに分散させた後、分散液50μLを分取して、トルエン5mLに再分散させることで、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物及び溶媒を含む分散液を得た。ICP−MS、及びイオンクロマトグラフによって測定したペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の濃度は、200ppm(μg/g)であった。
【0172】
[比較例5]
炭酸セシウム0.814gと1−オクタデセンの溶媒40mLと、オレイン酸2.5mLを混合した。マグネチックスターラーで攪拌して、窒素を流しながら150℃で1時間加熱して炭酸セシウム溶液を調製した。
臭化鉛(PbBr
2)0.276gを1−オクタデセンの溶媒20mLと混合した。マグネチックスターラーで攪拌して窒素を流しながら120℃の温度で1時間加熱した後、オレイン酸2mL、オレイルアミン2mLを添加した。160℃の温度に昇温した後、上述の炭酸セシウム溶液を1.6mL添加した。添加後、反応容器を氷水に漬けることで、室温まで降温した。
次いで、分散液を10000rpm、5分間の遠心分離で沈殿を分離する事で、沈殿のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を得た。
ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物をトルエン5mLに分散させた後、分散液50μLを分取して、トルエン5mLに再分散させることで、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物及び溶媒を含む分散液を得た。ICP−MS、及びイオンクロマトグラフによって測定したペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の濃度は、200ppm(μg/g)であった。
【0173】
(M置換量の測定)
実施例18で得られたペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物10mLに対してDMF1mLを添加し、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を溶解させた。溶解後の溶液中のM(Zn)及びB(Pb)のモル数量をICP−MS(ELAN DRCII、パーキンエルマー製)により測定し、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に含まれるM(Zn)のモル数量を[M/(M+Pb)]の式に当てはめて評価した。
【0174】
(量子収率測定)
実施例18及び比較例5で得られたペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物の量子収率を、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス製、商品名C9920−02、測定条件:励起光450nm、室温、大気下)を用いて測定した。前記分散液組成物の総質量に対するペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の濃度を200ppm(μg/g)に調整して量子収率の測定を行った。
【0175】
(ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の測定)
実施例18及び比較例5で得られた組成物におけるペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の濃度は、それぞれ、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物及び溶媒を含む分散液に、N,N−ジメチルホルムアミドを添加することでペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を溶解させた後、ICP−MS(ELANDRCII、パーキンエルマー製)、及びイオンクロマトグラフを用いて測定した。
【0176】
以下の表5に、実施例18及び比較例5のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物の構成と、量子収率を記載する。表5中、「M/(M+Pb)」は、Mのモル数量をM及びB(鉛イオン)の合計モル数量で除したモル比を表す。
【0177】
【表5】
【0178】
上記の結果から、本発明を適用した実施例18のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物は、本発明を適用しない比較例5のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物と比して、優れた量子収率を有していることが確認できた。
【0179】
[参考例1]
実施例15〜18に記載のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物と樹脂を混合した後に、溶媒を除去する事で、本発明を適用したペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む樹脂組成物を得ることができ、ガラスチューブ等の中に入れて封止した後に、これを光源である青色発光ダイオードと導光板の間に配置することで、青色発光ダイオードの青色光を緑色光や赤色光に変換することができるバックライトを製造する。
【0180】
[参考例2]
実施例15〜18に記載のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物と樹脂を混合した後に、溶媒を除去してシート化する事で本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む樹脂組成物を得ることができ、これを2枚のバリアーフィルムで挟んで封止したフィルムを導光板の上に設置することで、導光板の端面(側面)に置かれた青色発光ダイオードから導光板を通して前記シートに照射される青色の光を緑色光や赤色光に変換することができるバックライトを製造する。
【0181】
[参考例3]
実施例15〜18に記載のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物と樹脂を混合した後に、溶媒を除去する事で本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む樹脂組成物を得ることができ、青色発光ダイオードの発光部近傍に設置することで照射される青色の光を緑色光や赤色光に変換することができるバックライトを製造する。
【0182】
[参考例4]
実施例15〜18に記載のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物とレジストを混合した後に、溶媒を除去する事で波長変換材料を得ることができる。得られた波長変換材料を光源である青色発光ダイオードと導光板の間や、光源であるOLEDの後段に配置することで、光源の青色光を緑色光や赤色光に変換することができるバックライトを製造する。
【0183】
[参考例5]
実施例1〜18に記載のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物をZnSなどの導電性粒子を混合して成膜し、片面にn型輸送層を積層し、もう片面をp型輸送層で積層することでLEDを得る。電流を流すことによりp型半導体の正孔と、n型半導体の電子が接合面のペロブスカイト結晶構造を有する化合物中で電荷を打ち消されることで発光させることができる。
【0184】
[参考例6]
フッ素ドープされた酸化スズ(FTO)基板の表面上に、酸化チタン緻密層を積層させ、その上から多孔質酸化アルミニウム層を積層し、その上に実施例1〜17に記載のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を積層し、その上から2,2−,7,7−tetrakis−(N,N−di−p−methoxyphenylamine)9,9−spirobifluorene (Spiro−OMeTAD)などのホール輸送層を積層し、その上に銀(Ag)層を積層し、太陽電池を作製する。
【0185】
[参考例6]
実施例15〜18に記載のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物と樹脂を混合した後に、溶媒を除去して成形する事で本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む樹脂組成物を得ることができ、これを青色発光ダイオードの後段に設置することで、青色発光ダイオードから前記樹脂成形体に照射される青色の光を緑色光や赤色光に変換して白色光を発するレーザーダイオード照明を製造する。