特許第6902641号(P6902641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧

特許6902641ダイシングダイアタッチフィルム、並びに、ダイシングダイアタッチフィルムを用いた半導体パッケージ及びその製造方法
<>
  • 特許6902641-ダイシングダイアタッチフィルム、並びに、ダイシングダイアタッチフィルムを用いた半導体パッケージ及びその製造方法 図000007
  • 特許6902641-ダイシングダイアタッチフィルム、並びに、ダイシングダイアタッチフィルムを用いた半導体パッケージ及びその製造方法 図000008
  • 特許6902641-ダイシングダイアタッチフィルム、並びに、ダイシングダイアタッチフィルムを用いた半導体パッケージ及びその製造方法 図000009
  • 特許6902641-ダイシングダイアタッチフィルム、並びに、ダイシングダイアタッチフィルムを用いた半導体パッケージ及びその製造方法 図000010
  • 特許6902641-ダイシングダイアタッチフィルム、並びに、ダイシングダイアタッチフィルムを用いた半導体パッケージ及びその製造方法 図000011
  • 特許6902641-ダイシングダイアタッチフィルム、並びに、ダイシングダイアタッチフィルムを用いた半導体パッケージ及びその製造方法 図000012
  • 特許6902641-ダイシングダイアタッチフィルム、並びに、ダイシングダイアタッチフィルムを用いた半導体パッケージ及びその製造方法 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6902641
(24)【登録日】2021年6月23日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】ダイシングダイアタッチフィルム、並びに、ダイシングダイアタッチフィルムを用いた半導体パッケージ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20210701BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20210701BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20210701BHJP
   C09J 7/00 20180101ALI20210701BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20210701BHJP
   C09J 171/00 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   H01L21/78 M
   C09J7/35
   C09J7/38
   C09J7/00
   C09J163/00
   C09J171/00
【請求項の数】6
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2020-44660(P2020-44660)
(22)【出願日】2020年3月13日
【審査請求日】2020年11月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】特許業務法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】森田 稔
【審査官】 鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−157589(JP,A)
【文献】 特開2012−207222(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/158994(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
C09J 7/35
C09J 7/00
C09J 7/38
C09J 171/00
C09J 163/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤層と粘着剤層とが積層されてなるダイシングダイアタッチフィルムであって、
前記接着剤層が、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、フェノキシ樹脂(C)及び無機充填材(D)を含有するフィルム状接着剤の層であり、
前記フェノキシ樹脂(C)の25℃における弾性率が500MPa以上であり、
前記接着剤層中、前記エポキシ樹脂(A)と前記フェノキシ樹脂(C)の各含有量の合計に占める前記フェノキシ樹脂(C)の割合が、10〜60質量%であり、
前記接着剤層と前記粘着剤層の25〜80℃の範囲における剥離力が0.40N/25mm以下であり、
前記接着剤層は、熱硬化後の熱伝導率が1.0W/m・K以上であることを特徴とする、ダイシングダイアタッチフィルム。
【請求項2】
前記接着剤層を25℃から5℃/分の昇温速度で昇温したとき、25〜80℃の範囲における硬化前弾性率G’が10kPa以上であることを特徴とする、請求項1に記載のダイシングダイアタッチフィルム。
【請求項3】
前記接着剤層を25℃から5℃/分の昇温速度で昇温したとき、120℃における溶融粘度が500〜10000Pa・sの範囲にあることを特徴とする、請求項1又は2に記載のダイシングダイアタッチフィルム。
【請求項4】
前記粘着剤層がエネルギー線硬化性である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のダイシングダイアタッチフィルム。
【請求項5】
表面に少なくとも1つの半導体回路が形成された半導体ウェハの裏面に、請求項1〜4のいずれか1項に記載のダイシングダイアタッチフィルムを、前記接着剤層を半導体ウェハの裏面に接するように熱圧着して設ける第1の工程と、
前記半導体ウェハと前記接着剤層とを同時にダイシングすることにより、粘着剤層上に、半導体チップ及び前記接着剤層を備える接着剤層付き半導体チップを得る第2の工程と、
前記接着剤層から前記粘着剤層を取り除き、前記接着剤層付き半導体チップと配線基板とを前記接着剤層を介して熱圧着する第3の工程と、
前記接着剤層を熱硬化する第4の工程と、
を含むことを特徴とする半導体パッケージの製造方法。
【請求項6】
半導体チップと配線基板、又は、半導体チップ間が、請求項1〜4のいずれか1項に記載のダイシングダイアタッチフィルムが有する接着剤層の熱硬化体により接着されてなることを特徴とする、半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングダイアタッチフィルム、並びに、ダイシングダイアタッチフィルムを用いた半導体パッケージ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化及び高機能化、多機能化が進む中で、その内部に搭載される半導体パッケージにおいても高機能化、多機能化が進んでおり、半導体ウェハ配線ルールの微細化が進行している。高機能化、多機能化に伴い、半導体チップを多段に積層したスタックドMCP(Multi Chip Package)が普及しており、携帯電話、携帯オーディオ機器用のメモリパッケージなどに搭載されている。また、携帯電話等の多機能化に伴い、パッケージの高密度化、高集積化も推し進められている。これに伴い、半導体チップの多段積層化がさらに進行している。
【0003】
このようなメモリパッケージの製造過程における配線基板と半導体チップとの接着、また、半導体チップ間の接着(いわゆる、ダイアタッチ)には、フィルム状接着剤(ダイアタッチフィルム)が使用され、チップの多段積層化に伴い、ダイアタッチフィルムの薄膜化も要求されている。また、近年、ウェハ配線ルールの微細化が進行しており、半導体素子表面には熱がより一層発生しやすい。したがって、熱をパッケージ外部へ逃がし易くするために、これらダイアタッチフィルムには高熱伝導性の要求が高まってきている。
熱伝導性ダイアタッチフィルムとしては、一般的に熱伝導性フィラーを用いたフィルムが設計されている。
【0004】
熱伝導性ダイアタッチフィルムとして用いることができる材料としては、例えば、特許文献1に、平均粒径2〜9μmで比表面積が0.8〜8.0m/gである球状アルミナフィラーと、特定の重量含有比率で高分子量成分及び低分子量成分を含む樹脂成分とを含む、ダイボンディングフィルムとして使用される接着シートが記載されている。特許文献1記載の技術によれば、この接着シートを用いることで被着体の凹凸部への埋め込み性が高まり、ボイドの発生を抑制できるとされる。
また、特許文献2には、ダイアタッチ層と粘着層と基材層とがこの順に積層されたダイシングダイアタッチフィルムにおいて、ダイアタッチ層と粘着層との常温時と高温時の剥離力を制御することにより、ピックアップ不安定性が改善されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6366228号公報
【特許文献2】特開2010−232422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、熱伝導性接着剤層(熱伝導性ダイアタッチフィルム)と粘着剤層(ダイシングフィルム)とを積層してなるダイシングダイアタッチフィルムを用いた半導体ウェハのダイシング〜ピックアップ工程について、半導体装置の生産性の向上を企図して検討を重ねた。その結果、半導体ウェハのダイシングによるチップ化後、ピックアップコレットを用いて、チップ裏面に熱伝導性ダイアタッチフィルムを残してダイシングフィルムから剥離し、このチップを配線基板上に熱圧着する工程を繰り返すうちに、ピックアップコレットが蓄熱すること、蓄熱したピックアップコレットを用いてチップをピックアップすると、熱伝導率の高いダイアタッチフィルムを介してダイシングフィルムにも熱が伝達し、ダイアタッチフィルムとダイシングフィルムとの剥離性が低下してピックアップ不良が生じやすくなることがわかってきた。
【0007】
本発明は、熱伝導性ダイアタッチフィルムとダイシングフィルムとを積層してなるダイシングダイアタッチフィルムであって、半導体加工におけるピックアップ工程において、ピックアップコレットが蓄熱してもピックアップ不良を生じにくく、また、配線基板に熱圧着した際のボイドの発生も抑制できるダイシングダイアタッチフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、ダイアタッチフィルムの構成材料にフェノキシ樹脂を含有させることにより、無機充填剤を含む熱伝導性ダイアタッチフィルムとしながらも、ピックアップ工程におけるダイシングフィルムとの剥離性が改善することがわかってきた。さらに、本発明者は、フェノキシ樹脂として常温(25℃)弾性率が一定以上の値を示すものを採用し、エポキシ樹脂及びその硬化剤とを組合せて各特定量配合して、熱硬化後の熱伝導率が一定以上に高まるよう制御したダイアタッチフィルムにより、上記課題を、より高いレベルで解決でき、さらにダイアタッチ性も高められることを見い出した。
本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を重ねて完成されるに至ったものである。
【0009】
本発明の上記課題は下記の手段により解決される。
〔1〕
接着剤層と粘着剤層とが積層されてなるダイシングダイアタッチフィルムであって、
前記接着剤層が、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、フェノキシ樹脂(C)及び無機充填材(D)を含有するフィルム状接着剤の層であり、
前記フェノキシ樹脂(C)の25℃における弾性率が500MPa以上であり、
前記接着剤層中、前記エポキシ樹脂(A)と前記フェノキシ樹脂(C)の各含有量の合計に占める前記フェノキシ樹脂(C)の割合が、10〜60質量%であり、
前記接着剤層と前記粘着剤層の25〜80℃の範囲における剥離力が0.40N/25mm以下であり、
前記接着剤層は、熱硬化後の熱伝導率が1.0W/m・K以上であることを特徴とする、ダイシングダイアタッチフィルム。
〔2〕
前記接着剤層を25℃から5℃/分の昇温速度で昇温したとき、25〜80℃の範囲における硬化前弾性率G’が10kPa以上であることを特徴とする、〔1〕に記載のダイシングダイアタッチフィルム。
〔3〕
前記接着剤層を25℃から5℃/分の昇温速度で昇温したとき、120℃における溶融粘度が500〜10000Pa・sの範囲にあることを特徴とする、〔1〕又は〔2〕に記載のダイシングダイアタッチフィルム。
〔4〕
前記粘着剤層がエネルギー線硬化性である、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のダイシングダイアタッチフィルム。
〔5〕
表面に少なくとも1つの半導体回路が形成された半導体ウェハの裏面に、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のダイシングダイアタッチフィルムを、前記接着剤層を半導体ウェハの裏面に接するように熱圧着して設ける第1の工程と、
前記半導体ウェハと前記接着剤層とを同時にダイシングすることにより、粘着剤層上に、半導体チップ及び前記接着剤層を備える接着剤層付き半導体チップを得る第2の工程と、
前記接着剤層から前記粘着剤層を取り除き、前記接着剤層付き半導体チップと配線基板とを前記接着剤層を介して熱圧着する第3の工程と、
前記接着剤層を熱硬化する第4の工程と、
を含むことを特徴とする半導体パッケージの製造方法。
〔6〕
半導体チップと配線基板、又は、半導体チップ間が、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のダイシングダイアタッチフィルムが有する接着剤層の熱硬化体により接着されてなることを特徴とする、半導体パッケージ。
【0010】
本発明において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタアクリルの一方又は両方を意味する。(メタ)アクリレートについても同様である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のダイシングダイアタッチフィルムは、熱伝導性ダイアタッチフィルムとダイシングフィルムとを積層してなり、半導体加工におけるピックアップ工程において、ピックアップコレットが蓄熱した状態になってもピックアップ不良を生じにくく、また、ダイアタッチ性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の半導体パッケージの製造方法の第1の工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
図2図2は、本発明の半導体パッケージの製造方法の第2の工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
図3図3は、本発明の半導体パッケージの製造方法の第3の工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
図4図4は、本発明の半導体パッケージの製造方法のボンディングワイヤーを接続する工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
図5図5は、本発明の半導体パッケージの製造方法の多段積層実施形態例を示す概略縦断面図である。
図6図6は、本発明の半導体パッケージの製造方法の別の多段積層実施形態例を示す概略縦断面図である。
図7図7は、本発明の半導体パッケージの製造方法により製造される半導体パッケージの好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[ダイシングダイアタッチフィルム]
本発明のダイシングダイアタッチフィルムは、接着剤層(ダイアタッチフィルム)と粘着剤層(ダイシングフィルム)とが積層されてなる。本発明のダイシングダイアタッチフィルムは、基材(基材フィルムとも称す。)上に粘着剤層と接着剤層とがこの順に設けられた形態とすることができ、接着剤層上に剥離フィルムが設けられていてもよい。また、ダイシングフィルム及びダイアタッチフィルムは、ダイシングダイアタッチフィルムの作製において記載するように、特定の形状であることも好ましい。
本発明のダイシングダイアタッチフィルムの接着剤層は、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、フェノキシ樹脂(C)及び無機充填材(D)を含有するフィルム状接着剤の層である。
この接着剤層を構成するフェノキシ樹脂(C)は、常温(25℃)弾性率が500MPa以上であり、接着剤層中、エポキシ樹脂(A)とフェノキシ樹脂(C)の各含有量の合計に占めるフェノキシ樹脂(C)の割合は10〜60質量%である。
また、本発明のダイシングダイアタッチフィルムは、接着剤層と粘着剤層との間の剥離力(硬化前剥離力)が、25〜80℃の範囲において、0.40N/25mm以下である。また、接着層の熱硬化後の熱伝導率が1.0W/m・K以上である。
【0014】
本発明のダイシングダイアタッチフィルムを構成する各層の形態について、順に説明する。
【0015】
<接着剤層>
本発明のダイシングダイアタッチフィルムを構成する接着剤層は、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、フェノキシ樹脂(C)及び無機充填材(D)を少なくとも含有する。
【0016】
(エポキシ樹脂(A))
上記エポキシ樹脂(A)は、エポキシ基を持つ熱硬化型の樹脂である限り、特に制限なく用いることができ、液体、固体または半固体のいずれであってもよい。本発明において液体とは、軟化点が25℃未満であることをいい、固体とは、軟化点が60℃以上であることをいい、半固体とは、軟化点が上記液体の軟化点と固体の軟化点との間(25℃以上60℃未満)にあることをいう。本発明で使用するエポキシ樹脂(A)としては、好適な温度範囲(例えば60〜120℃)で低溶融粘度に到達することができるフィルム状接着剤を得る観点から、軟化点が100℃以下であることが好ましい。なお、本発明において、軟化点とは、軟化点試験(環球式)法(測定条件:JIS−2817に準拠)により測定した値である。
【0017】
本発明で使用するエポキシ樹脂(A)において、硬化体の架橋密度が高くなり、結果として、配合される無機充填剤(D)同士の接触確率が高く接触面積が広くなることでより高い熱伝導率が得られるという観点から、エポキシ当量は500g/eq以下であることが好ましく、150〜450g/eqであることがより好ましい。なお、本発明において、エポキシ当量とは、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数(g/eq)をいう。
エポキシ樹脂(A)の質量平均分子量は、通常、10,000未満が好ましく、5,000以下がより好ましい。下限値に特に制限はないが、300以上が実際的である。
質量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)分析による値である。
【0018】
エポキシ樹脂(A)の骨格としては、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、クレゾールノボラック型、ジシクロペンタジエン型、ビフェニル型、フルオレンビスフェノール型、トリアジン型、ナフトール型、ナフタレンジオール型、トリフェニルメタン型、テトラフェニル型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型、トリメチロールメタン型等が挙げられる。このうち、樹脂の結晶性が低く、良好な外観を有するフィルム状接着剤を得られるという観点から、トリフェニルメタン型、ビスフェノールA型、クレゾールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型が好ましい。
【0019】
本発明に用いる接着剤層中(接着剤層形成用組成物の固形分(溶媒を除いた全量)中)、エポキシ樹脂(A)の含有量は、3〜30質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。含有量を上記好ましい下限値以上とすることにより、フィルム状接着剤の熱伝導率をより向上させることができる。他方、上記好ましい上限値以下とすることにより、オリゴマー成分の生成を抑え、多少の温度変化ではフィルム状態(フィルムタック性等)の変化を生じにくくすることができる。
【0020】
(エポキシ樹脂硬化剤(B))
上記エポキシ樹脂硬化剤(B)としては、アミン類、酸無水物類、多価フェノール類等の任意の硬化剤を用いることができる。本発明では、上記エポキシ樹脂(A)および後記フェノキシ樹脂(C)が低溶融粘度となり、かつある温度を超える高温で硬化性を発揮し、速硬化性を有し、さらに、室温での長期保存が可能な保存安定性の高い接着剤層とする観点から、潜在性硬化剤を用いることが好ましい。
潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド化合物、イミダゾール化合物、硬化触媒複合系多価フェノール化合物、ヒドラジド化合物、三弗化ホウ素−アミン錯体、アミンイミド化合物、ポリアミン塩、およびこれらの変性物やマイクロカプセル型のものを挙げることができる。より優れた潜在性(室温での安定性に優れ、かつ、加熱により硬化性を発揮する性質)を有し、硬化速度がより速い観点から、イミダゾール化合物を用いることがより好ましい。
これらは1種を単独で用いても、もしくは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
エポキシ樹脂(A)100質量部に対するエポキシ樹脂硬化剤(B)の含有量は、0.5〜100質量部が好ましく、1〜80質量部がより好ましい。含有量を上記好ましい下限値以上とすることにより硬化時間をより短くすることができ、他方、上記好ましい上限値以下とすることにより、過剰の硬化剤のフィルム状接着剤中への残留を抑えることができる。結果、残留硬化剤の水分の吸着が抑えられ、半導体装置の信頼性の向上を図ることができる。
【0022】
(フェノキシ樹脂(C))
上記フェノキシ樹脂(C)は、常温(25℃)弾性率が500MPa以上である。上記フェノキシ樹脂(C)の常温(25℃)弾性率は、2000MPa以下が好ましい。このような弾性率を有するフェノキシ樹脂を用いることにより、ダイアタッチ性とピックアップ性の両立をより高いレベルで実現することが可能になる。
常温(25℃)弾性率は、後述する実施例に記載の方法により決定することができる。なお、接着剤層が2種以上のフェノキシ樹脂を含有する場合の常温(25℃)弾性率は、後述する実施例に記載の方法における常温弾性率測定用のフェノキシ樹脂フィルムとして、接着剤層を構成する混合比率でフェノキシ樹脂を配合して作製したフィルムを用いて決定することができる。
【0023】
上記フェノキシ樹脂(C)としては、質量平均分子量は、通常、10000以上である。上限値に特に制限はないが、5000000以下が実際的である。
上記フェノキシ樹脂(C)の質量平均分子量は、GPC〔ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)〕によるポリスチレン換算で求める。
【0024】
上記フェノキシ樹脂(C)のガラス転移温度(Tg)は、120℃未満が好ましく、100℃未満がより好ましく、90℃未満がより好ましい。下限は、0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましい。
上記フェノキシ樹脂(C)のガラス転移温度は、昇温速度0.1℃/分でDSCにより測定されたガラス転移温度である。
【0025】
本発明に用いる接着剤層は、フェノキシ樹脂(C)として、少なくとも1種のフェノキシ樹脂を含有する。
なお、本発明においてエポキシ樹脂(A)とフェノキシ樹脂(C)とは、エポキシ当量(1当量のエポキシ基あたりの樹脂の質量)が500g/eq以下である樹脂がエポキシ樹脂(A)に、エポキシ当量が500g/eqを越えるものがフェノキシ樹脂(C)に、それぞれ分類される。
【0026】
フェノキシ樹脂(C)は、ビスフェノールもしくはビフェノール化合物とエピクロルヒドリンのようなエピハロヒドリンとの反応、液状エポキシ樹脂とビスフェノールもしくはビフェノール化合物との反応で得ることができる。
いずれの反応においても、ビスフェノールもしくはビフェノール化合物としては、下記一般式(A)で表される化合物が好ましい。
【0027】
【化1】
【0028】
一般式(A)において、Lは、単結合または2価の連結基を表し、Ra1およびRa2は、各々独立に置換基を表す。maおよびnaは各々独立に、0〜4の整数を表す。
【0029】
において、2価の連結基は、アルキレン基、フェニレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO−、または、アルキレン基とフェニレン基とが組み合わされた基が好ましい。
アルキレン基は、炭素数が1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3がさらに好ましく、1または2が特に好ましく、1が最も好ましい。
アルキレン基は、−C(Rα)(Rβ)−が好ましく、ここで、RαおよびRβは各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基を表す。RαとRβが互いに結合して、環を形成してもよい。RαおよびRβは、水素原子またはアルキル基(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル)が好ましい。アルキレン基は、なかでも−CH−、−CH(CH)、−C(CH−が好ましく、−CH−、−CH(CH)がより好ましく、−CH−がさらに好ましい。
【0030】
フェニレン基は、炭素数が6〜12が好ましく、6〜8がより好ましく、6がさらに好ましい。フェニレン基は、例えば、p−フェニレン、m−フェニレン、o−フェニレンが挙げられ、p−フェニレン、m−フェニレンが好ましい。
アルキレン基とフェニレン基が組み合わされた基としては、アルキレン−フェニレン−アルキレン基が好ましく、−C(Rα)(Rβ)−フェニレン−C(Rα)(Rβ)−がより好ましい。
αとRβが結合して形成する環は、5または6員環が好ましく、シクロペンタン環、シクロヘキサン環がより好ましく、シクロヘキサン環がさらに好ましい。
【0031】
は、単結合またはアルキレン基、−O−、−SO−が好ましく、アルキレン基がより好ましい。
【0032】
a1およびRa2は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子が好ましく、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子がより好ましく、アルキル基がさらに好ましい。
【0033】
maおよびnaは、0〜2が好ましく、0または1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0034】
ビスフェノールもしくはビフェノール化合物は、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAD、ビスフェノールAP、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールTMC、ビスフェノールZや、4,4’−ビフェノール、2,2’−ジメチル−4,4’−ビフェノール、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、カルド骨格型ビスフェノール等が挙げられ、ビスフェノールA、ビスフェノールAD、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、4,4’−ビフェノールが好ましく、ビスフェノールA、ビスフェノールE、ビスフェノールFがより好ましく、ビスフェノールAが特に好ましい。
【0035】
上記の液状エポキシ樹脂としては、脂肪族ジオール化合物のジグリシジルエーテルが好ましく、下記一般式(B)で表される化合物がより好ましい。
【0036】
【化2】
【0037】
一般式(B)において、Xはアルキレン基を表し、nbは1〜10の整数を表す。
【0038】
アルキレン基は、炭素数が2〜10が好ましく、2〜8がより好ましく、3〜8がさらに好ましく、4〜6が特に好ましく、6が最も好ましい。
例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、オクチレンが挙げられ、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘプタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレンが好ましい。
【0039】
nbは1〜6が好ましく、1〜3がより好ましく、1がさらに好ましい。
【0040】
ここで、nbが2〜10の場合、Xはエチレンまたはプロピレンが好ましく、エチレンがさらに好ましい。
【0041】
ジグリシジルエーテルにおける脂肪族ジオール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオールが挙げられる。
【0042】
上記反応において、ビスフェノールもしくはビフェノール化合物や脂肪族ジオール化合物は各々において、単独で反応して得られたフェノキシ樹脂で、2種以上混合して反応して得られたフェノキシ樹脂でも構わない。例えば、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルとビスフェノールAとビスフェノールFの混合物との反応が挙げられる。
【0043】
フェノキシ樹脂(C)は、本発明では、液状エポキシ樹脂とビスフェノールもしくはビフェノール化合物との反応で得られたフェノキシ樹脂が好ましく、下記一般式(I)で表される繰り返し単位のフェノキシ樹脂がより好ましい。
【0044】
【化3】
【0045】
一般式(I)において、L、Ra1、Ra2、maおよびnaは、一般式(A)におけるL、Ra1、Ra2maおよびnaと同義であり、好ましい範囲も同じである。Xおよびnbは、一般式(B)におけるXおよびnbと同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0046】
本発明では、これらのなかでも、ビスフェノールAと1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルとの重合体が好ましい。
【0047】
フェノキシ樹脂(C)の質量平均分子量は、10000以上が好ましく、10000〜100000がより好ましい。
また、フェノキシ樹脂(C)中に僅かに残存するエポキシ基の量は、エポキシ当量で、5000g/eqを越えることが好ましい。
【0048】
フェノキシ樹脂(C)のガラス転移温度(Tg)は、100℃未満が好ましく、90℃未満がより好ましい。下限は、0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましい。
【0049】
フェノキシ樹脂(C)は、上記のような方法で合成してもよく、また市販品を使用しても構わない。市販品としては、例えば、1256(ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、三菱化学(株)製)、YP−50(ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、新日化エポキシ製造(株)製)、YP−70(ビスフェノールA/F型フェノキシ樹脂、新日化エポキシ製造(株)製)、FX−316(ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、新日化エポキシ製造(株)製)、および、FX−280S(カルド骨格型フェノキシ樹脂、新日化エポキシ製造(株)製)、4250(ビスフェノールA型/F型フェノキシ樹脂、三菱化学(株)製)、FX−310(低弾性高耐熱型フェノキシ樹脂、新日化エポキシ製造(株)製)等が挙げられる。
接着剤層中、エポキシ樹脂(A)とフェノキシ樹脂(C)の各含有量の合計に占めるフェノキシ樹脂(C)の割合は10〜60質量%であり、15〜50質量%とすることも好ましく、18〜45質量%とすることも好ましい。
【0050】
(無機充填剤(D))
上記無機充填剤(D)は、熱伝導性を有する無機充填剤である限り特に制限されない。無機充填剤(D)は、接着剤層に熱伝導性を付与する。
上記無機充填剤(D)は、熱伝導性材料からなる粒子または熱伝導性材料で表面被覆されてなる粒子であって、これらの熱伝導性材料の熱伝導率が12W/m・K以上であることが好ましく、30W/m・K以上であることがより好ましい。
上記熱伝導性材料の熱伝導率が上記好ましい下限値以上であると、目的の熱伝導率を得るために配合する無機充填剤(D)の量を低減することができ、接着剤層の溶融粘度の上昇が抑制されて、基板に圧着する際に基板の凹凸部への埋め込み性をより向上させることができる。結果、ボイドの発生をより確実に抑制できる。
本発明において、上記熱伝導性材料の熱伝導率は、25℃における熱伝導率を意味し、各材料の文献値を用いることができる。文献に記載がない場合にも、例えば、セラミックスであればJIS R 1611により測定される値、金属であれば、JIS H 7801により測定される値を代用することができる。
【0051】
無機充填剤(D)としては、例えば、熱伝導性のセラミックスがあげられ、アルミナ粒子(熱伝導率:36W/m・K)、窒化アルミニウム粒子(熱伝導率:150〜290W/m・K)、窒化ホウ素粒子(熱伝導率:60W/m・K)、酸化亜鉛粒子(熱伝導率:54W/m・K)、窒化ケイ素フィラー(熱伝導率:27W/m・K)、炭化ケイ素粒子(熱伝導率:200W/m・K)および酸化マグネシウム粒子(熱伝導率:59W/m・K)が好ましく挙げられる。
特にアルミナ粒子は高熱伝導率を有し、分散性、入手容易性の点で好ましい。また、窒化アルミニウム粒子や窒化ホウ素粒子は、アルミナ粒子よりもさらに高い熱伝導率を有する観点で好ましい。本発明では、なかでもアルミナ粒子と窒化アルミニウム粒子が好ましい。
また、熱伝導性を有する金属で表面被覆された粒子も挙げられる。例えば、銀(熱伝導率:429W/m・K)、ニッケル(熱伝導率:91W/m・K)及び金(熱伝導率:329W/m・K)等の金属で表面被覆された、シリコーン樹脂粒子及びアクリル樹脂粒子等が好ましく挙げられる。
特に、銀で表面被覆されたシリコーン樹脂粒子は、応力緩和性並びに高耐熱性の観点から好ましい。
【0052】
無機充填剤(D)は、表面処理や表面改質されていてもよく、このような表面処理や表面改質としては、シランカップリング剤やリン酸もしくはリン酸化合物、界面活性剤が挙げられ、本明細書において記載する事項以外は、例えば、国際公開第2018/203527号における熱伝導フィラーの項又は国際公開第2017/158994号の窒化アルミニウム充填剤の項における、シランカップリング剤、リン酸もしくはリン酸化合物及び界面活性剤の記載を適用することができる。
【0053】
無機充填剤(D)をエポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)及びフェノキシ樹脂(C)等の樹脂成分に配合する方法としては、粉体状の無機充填剤と必要に応じてシランカップリング剤、リン酸もしくはリン酸化合物や界面活性剤とを直接配合する方法(インテグラルブレンド法)、もしくはシランカップリング剤、リン酸もしくはリン酸化合物や界面活性剤等の表面処理剤で処理された無機充填剤を有機溶剤に分散させたスラリー状無機充填剤を配合する方法を使用することができる。
また、シランカップリング剤により無機充填剤(D)を処理する方法としては特に限定されず、溶媒中で無機充填剤(D)とシランカップリング剤を混合する湿式法、気相中で無機充填剤(D)とシランカップリング剤を処理させる乾式法、上記インテグラルブレンド法などが挙げられる。
【0054】
特に、窒化アルミニウム粒子は、高熱伝導化に貢献するものの、加水分解によりアンモニウムイオンを生成しやすいため、吸湿率が小さいフェノール樹脂と併用したり、表面改質により加水分解が抑制されていることが好ましい。窒化アルミニウムの表面改質方法としては、表面層に酸化アルミニウムの酸化物層を設け耐水性を向上させ、リン酸もしくはリン酸化合物による表面処理を行い樹脂との親和性を向上させる方法が特に好ましい。
【0055】
無機充填剤(D)の表面をシランカップリング剤で表面処理することも好ましい。
また、さらにイオントラップ剤を併用するのも好ましい。
【0056】
シランカップリング剤は、ケイ素原子にアルコキシ基、アリールオキシ基のような加水分解性基が少なくとも1つ結合したものであり、これに加えて、アルキル基、アルケニル基、アリール基が結合してもよい。アルキル基は、アミノ基、アルコキシ基、エポキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基が置換したものが好ましく、アミノ基(好ましくはフェニルアミノ基)、アルコキシ基(好ましくはグリシジルオキシ基)、(メタ)アクリロイルオキシ基が置換したものがより好ましい。
シランカップリング剤は、例えば、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイルオキプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0057】
シランカップリング剤や界面活性剤は、無機充填剤(D)100質量部に対し、0.1〜2.0質量部含有させるのが好ましい。
シランカップリング剤や界面活性剤の含有量を上記好ましい範囲とすることにより、無機充填剤(D)の凝集を抑制ながら、過剰なシランカップリング剤や界面活性剤の半導体組立加熱工程(例えばリフロー工程)における揮発による接着界面での剥離を抑制することができ、ボイドの発生が抑えられ、接着性を向上させることができる。
【0058】
無機充填剤(D)の形状は、フレーク状、針状、フィラメント状、球状、鱗片状のものが挙げられるが、高充填化及び流動性の観点から球状粒子が好ましい。
また、無機充填剤(D)の平均粒径(d50)は、0.1〜3.5μmが好ましい。平均粒径(d50)とは、いわゆるメジアン径であり、レーザー回折・散乱法により粒度分布を測定し、累積分布において粒子の全体積を100%としたときに50%累積となるときの粒径を意味する。
【0059】
本発明に用いる接着剤層は、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、フェノキシ樹脂(C)および無機充填剤(D)の各含有量の合計に占める無機充填剤(D)の割合が、30〜70体積%である。上記無機充填剤(D)の含有割合が上記下限値以上であると、フィルム状接着剤に所望とする熱伝導率及び溶融粘度を付与することができ、半導体パッケージからの放熱効果が得られ、フィルム状接着剤のはみ出し不良も抑制することができる。また、上記上限値以下であると、フィルム状接着剤に所望とする溶融粘度を付与することができ、ボイドの発生を抑制することができる。また、熱変化時に半導体パッケージに生じる内部応力を緩和することもでき、接着力も向上させることができる。
成分(A)〜(D)の各含有量の合計に占める無機充填剤(D)の割合は、20〜60体積%が好ましく、20〜50体積%がより好ましい。
上記無機充填剤(D)の含有量(体積%)は、各成分(A)〜(D)の含有質量と比重から算出することができる。
【0060】
(その他の成分)
本発明に用いる接着剤層は、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、フェノキシ樹脂(C)および無機充填剤(D)の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、高分子化合物を含有してもよい。
高分子化合物としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロン等のポリアミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。これらの高分子化合物は単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本発明に用いる接着剤層は、イオントラップ剤(イオン捕捉剤)、硬化触媒、粘度調整剤、酸化防止剤、難燃剤、着色剤等をさらに含有していてもよい。例えば、国際公開第2017/158994号のその他の添加物を含むことができる。
【0061】
本発明に用いる接着剤層中に占める、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、フェノキシ樹脂(C)および無機充填剤(D)の含有量の合計の割合は、例えば、60質量%以上とすることができ、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上とすることもできる。また、上記割合は100質量%でもよく、95質量%以下とすることもできる。
【0062】
(接着剤層の特性)
−熱硬化後の熱伝導率−
本発明に用いる接着剤層は、熱硬化後において、熱伝導率が1.0W/m・K以上である。熱伝導率は、1.4W/m・K以上が好ましい。熱伝導率が上記下限値未満であると、発生した熱をパッケージ外部へ逃がしにくくなる傾向にある。本発明の熱伝導性フィルム状接着剤は熱硬化後にこのような優れた熱伝導率を発揮することにより、本発明の熱伝導性フィルム状接着剤を半導体ウェハや配線基板等の被着体に密着させ、熱硬化することによって、半導体パッケージ外部への放熱効率が向上された半導体パッケージを得ることができる。
熱伝導率の上限は、特に限定されるものではないが、通常は30W/m・K以下である。
ここで、熱伝導率の測定における熱硬化後とは、接着剤層の硬化が完了した状態を意味する。具体的には、昇温速度10℃/分でDSC(示差走査熱量計)測定を行った際に反応熱ピークが見られなくなった状態をいう。
本発明において、このような熱硬化後の接着剤層の熱伝導率とは、熱伝導率測定装置(商品名:HC−110、英弘精機(株)製)を用いて、熱流計法(JIS−A1412に準拠)により熱伝導率を測定した値をいう。具体的には、実施例に記載の測定方法を参照することができる。
熱伝導率を上記の範囲とするには、無機充填剤(D)の含有量、さらには、無機充填剤(D)の種類に加え、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)及びフェノキシ樹脂(C)等の共存する化合物もしくは樹脂の種類やこれらの含有量により調整できる。このことは、下記の硬化前弾性率や溶融粘度についても同様である。
【0063】
−硬化前弾性率−
本発明に用いる接着剤層は、ピックアップ性を高める観点から、熱硬化前の接着剤層を25℃から5℃/分の昇温速度で昇温したとき、25〜80℃の範囲における硬化前弾性率G’が10kPa以上であることが好ましい。また、上記測定条件において、25℃における硬化前弾性率は400kPa以上が好ましく、450kPa以上がより好ましく、500kPa以上がさらに好ましく、600kPa以上とすることも好ましい。また、上記測定条件において、80℃における硬化前弾性率は12kPa以上が好ましく、15kPa以上とすることも好ましく、20kPa以上とすることも好ましい。
硬化前弾性率G’は、後述する実施例に記載の方法により決定することができる。
本発明において、熱硬化前の接着剤層とは、接着剤層形成後、25℃以上の温度条件下に曝されていない接着剤層を意味する。本発明のダイシングダイアタッチフィルムは、通常、10℃以下の温度条件下で保管されるため、上記の熱硬化前の接着剤層とは、通常、接着剤層を形成後、10℃以下の温度で保存(保管)されている接着剤層を意味する。
【0064】
(溶融粘度)
本発明に用いる接着剤層は、ダイアタッチ性を高める観点から、熱硬化前の接着剤層を25℃から5℃/分の昇温速度で昇温したとき、120℃の範囲における溶融粘度が500〜10000Pa・sの範囲にあることが好ましく、1000〜10000Pa・sの範囲にあることがより好ましく、1500〜9200Pa・sの範囲にあることがさらに好ましい。
溶融粘度は、後述する実施例に記載の方法により決定することができる。
【0065】
(接着剤層の形成)
本発明に用いる接着剤層は、接着剤層の構成成分を含有する接着剤層形成用組成物(ワニス)を調製し、この組成物を、離型処理された剥離フィルム上に塗布し、乾燥させて形成することができる。接着剤層形成用組成物は、通常は溶媒を含有する。
接着剤層の厚みは200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましく、30μm以下とすることも好ましく、20μm以下とすることも好ましい。接着剤層の厚みは通常は1μm以上であり、2μm以上とすることも好ましく、4μm以上としてもよい。
フィルム状接着剤の厚みは、接触・リニアゲージ方式(卓上型接触式厚み計測装置)により測定することができる。
離型処理された剥離フィルムとしては、得られるフィルム状接着剤のカバーフィルムとして機能するものであればよく、公知のものを適宜採用することができる。例えば、離型処理されたポリプロピレン(PP)、離型処理されたポリエチレン(PE)、離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。塗工方法としては、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、ロールナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、リバースコーター等を用いた方法が挙げられる。
接着剤層は、ウェハと貼り合わせる面の算術平均粗さRaが3.0μm以下であることが好ましく、被着体と貼り合わせるいずれの側の表面の算術平均粗さRaも3.0μm以下であることがより好ましい。
上記の算術平均粗さRaは、2.0μm以下であることがより好ましく、1.5μm以下であることがさらに好ましい。下限値は特に制限はないが、0.1μm以上であることが実際的である。
【0066】
<粘着剤層>
本発明のダイシングダイアタッチフィルムを構成する粘着剤層及びその形成方法は、ダイシングフィルム(ダイシングテープ)として用いられる一般的な構成、方法を適宜に適用することができる。粘着剤層を構成する粘着剤としては、粘着フィルム用途に用いられる一般的な粘着剤、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等を適宜に用いることができる。なかでも、粘着剤層はエネルギー線硬化性であることが好ましい。
【0067】
上記アクリル系粘着剤としては、例えば(メタ)アクリル酸およびそれらのエステルで構成される樹脂、(メタ)アクリル酸およびそれらのエステルとそれらと共重合可能な不飽和単量体(例えば酢酸ビニル、スチレン、アクリルニトリル等)との共重合体等が用いられる。また、これらの樹脂を2種類以上混合しても良い。これらの中でも(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシルおよび(メタ)アクリル酸ブチルから選ばれる1種以上と、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルおよび酢酸ビニルの中から選ばれる1種以上との共重合体が好ましい。これにより、被着体との密着性や粘着性の制御が容易になる。
【0068】
本発明に用いる粘着剤層をエネルギー線硬化性とするために、粘着剤層を構成するポリマー中に重合性基(例えば炭素−炭素不飽和結合)を導入したり、粘着剤層中に重合性モノマーを配合したりすることができる。この重合性モノマーは、重合性基を2つ以上(好ましくは3つ以上)有することが好ましい。
エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線等が挙げられる。
【0069】
本発明に用いる粘着剤層として、例えば、特開2010−232422号公報、特許第2661950号公報、特開2002−226796号公報、特開2005−303275号公報等を参照することができる。
【0070】
粘着剤層の厚さは、1〜200μmが好ましく、2〜100μmがより好ましく、3〜50μmがさらに好ましく、5〜30μmとすることも好ましい。
【0071】
本発明のダイシングダイアタッチフィルムは、接着剤層と粘着剤層との間の25〜80℃の範囲における剥離力が0.40N/25mm以下である。この剥離力は、粘着剤層がエネルギー線硬化性の場合には、エネルギー線照射後の接着剤層と粘着剤層との間の剥離力である。接着剤層と粘着剤層との間の25℃における剥離力は0.3N/25mm以下が好ましく、0.2N/25mm以下がより好ましい。また、接着剤層と粘着剤層との間の80℃における剥離力は0.35N/25mm以下が好ましい。
上記剥離力は、実施例に記載の方法により決定することができる。
【0072】
<ダイシングダイアタッチフィルムの作製>
本発明のダイシングダイアタッチフィルムの作製方法は、接着剤層と粘着剤層とを積層した構造とできれば特に制限されない。
例えば、離型処理した剥離ライナー上に粘着剤を含む塗布液を塗布し、乾燥することにより粘着剤層を形成し、粘着剤層と基材フィルムとを貼り合わせることによって、基材フィルム、粘着剤層、剥離ライナーが順に積層されたフィルム(ダイシングフィルム)を作製する。これとは別に、剥離フィルム上に接着剤層形成用組成物を塗布し、乾燥して剥離フィルム上に接着剤層を形成することによって、ダイアタッチフィルムを作製する。次いで、剥離ライナーを剥がして露出させた粘着剤層と接着剤層とが接するようにして、ダイシングフィルムとダイアタッチフィルムを貼り合わせることによって、基材フィルム、粘着剤層、接着剤層、剥離フィルムが順に積層されたダイシングダイアタッチフィルムを得ることができる。
上記のダイシングフィルムとダイアタッチフィルムとの貼り合わせは、加圧条件下で行うことが好ましい。
上記のダイシングフィルムとダイアタッチフィルムとの貼り合わせにおいて、ダイシングフィルムの形状は、リングフレームの開口部を覆うことができる限り特に制限されないが、円形状であることが好ましく、ダイアタッチフィルムの形状は、ウェハの裏面を覆うことができる限り特に制限されないが、円形状であることが好ましい。ダイシングフィルムはダイアタッチフィルムよりも大きく、接着剤層の周囲に粘着剤層が露出した部分を有する形状であることが好ましい。このように、所望の形状に裁断されたダイシングフィルム及びダイアタッチフィルムを貼り合わせることが好ましい。
上記のようにして作製したダイシングダイアタッチフィルムは、使用時には、剥離フィルムを剥離して使用する。
【0073】
[半導体パッケージおよびその製造方法]
次いで、図面を参照しながら本発明の半導体パッケージおよびその製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明および図面中、同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図1図7は、本発明の半導体パッケージの製造方法の各工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
【0074】
本発明の半導体パッケージの製造方法においては、先ず、第1の工程として、図1に示すように、表面に少なくとも1つの半導体回路が形成された半導体ウェハ1の裏面(すなわち、半導体ウェハ1の半導体回路が形成されていない面)に、本発明のダイシングダイアタッチフィルムを接着剤層の側を熱圧着し、半導体ウェハ1に接着剤層2と粘着剤層3を設ける。図1では、接着剤層2を粘着剤層3よりも小さくしめしているが、両層の大きさ(面積)は、目的に応じて適宜に設定される。熱圧着の条件は、エポキシ樹脂(A)が事実上熱硬化しない温度で行う。例えば、70℃、圧力0.3MPaの条件が挙げられる。
半導体ウェハ1としては、表面に少なくとも1つの半導体回路が形成された半導体ウェハを適宜用いることができ、例えば、シリコンウェハ、SiCウェハ、GaAsウェハ、GaNウェハが挙げられる。本発明のダイシングダイアタッチフィルムを半導体ウェハ1の裏面に設けるには、例えば、ロールラミネーター、マニュアルラミネーターのような公知の装置を適宜用いることができる。
【0075】
次いで、第2の工程として、図2に示すように、半導体ウェハ1と接着剤層2とを同時にダイシングすることにより、粘着剤層3上に、半導体チップ4と接着剤層2とを備える接着剤層付き半導体チップ5を得る。ダイシングテープ3としては特に制限されず、適宜公知のダイシングテープを用いることができる。さらに、ダイシングに用いる装置も特に制限されず、適宜公知のダイシング装置を用いることができる。
【0076】
次いで、第3の工程として、必要により粘着剤層をエネルギー線で硬化して粘着力を低減し、ピックアップにより接着剤層2から粘着剤層3を取り除いた後、図3に示すように、接着剤層付き半導体チップ5と配線基板6とを接着剤層2を介して熱圧着し、配線基板6に接着剤層付き半導体チップ5を実装する。配線基板6としては、表面に半導体回路が形成された基板を適宜用いることができ、例えば、プリント回路基板(PCB)、各種リードフレーム、および、基板表面に抵抗素子やコンデンサー等の電子部品が搭載された基板が挙げられる。
このような配線基板6に接着剤層付き半導体チップ5を実装する方法としては特に制限されず、接着剤層2を利用して接着剤層付き半導体チップ5を配線基板6または配線基板6の表面上に搭載された電子部品に接着させることが可能な従来の方法を適宜採用することができる。
【0077】
次いで、第4の工程として、接着剤層2を熱硬化させる。熱硬化の温度としては、接着剤層2の熱硬化開始温度以上であれば特に制限がなく、使用するエポキシ樹脂(A)、フェノキシ樹脂(C)及びエポキシ硬化剤(B)の種類により異なるものであり、一概に言えるものではないが、例えば、100〜180℃が好ましく、より高温にて硬化した方が短時間で硬化可能であるという観点から、140〜180℃がより好ましい。温度が熱硬化開始温度未満であると、熱硬化が進まず接着剤層2の強度が低下する傾向にあり、他方、上記上限を超えると硬化過程中に接着剤層2中のエポキシ樹脂、硬化剤や添加剤等が揮発して発泡しやすくなる傾向にある。また、硬化処理の時間は、例えば、10〜120分間が好ましい。
【0078】
次いで、本発明の半導体パッケージの製造方法では、図4に示すように、配線基板6と接着剤層付き半導体チップ5とをボンディングワイヤー7を介して接続することが好ましい。このような接続方法としては特に制限されず、従来公知の方法、例えば、ワイヤーボンディング方式の方法、TAB(Tape Automated Bonding)方式の方法等を適宜採用することができる。
【0079】
また、搭載された半導体チップ4の表面に、別の半導体チップ4を熱圧着、熱硬化し、再度ワイヤーボンディング方式により配線基板6と接続することにより、複数個積層することもできる。例えば、図5に示すように半導体チップをずらして積層する方法、もしくは図6に示すように2層目以降の接着剤層2を厚くすることで、ボンディングワイヤー7を埋め込みながら積層する方法等がある。
【0080】
本発明の半導体パッケージの製造方法では、図7に示すように、封止樹脂8により配線基板6と接着剤層付き半導体チップ5とを封止することが好ましく、このようにして半導体パッケージ9を得ることができる。封止樹脂8としては特に制限されず、半導体パッケージの製造に用いることができる適宜公知の封止樹脂を用いることができる。また、封止樹脂8による封止方法としても特に制限されず、適宜公知の方法を採用することが可能である。
【実施例】
【0081】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、室温とは25℃を意味し、MEKはメチルエチルケトン、PETはポリエチレンテレフタレートである。
【0082】
(実施例1)
[1.粘着剤層(ダイシングフィルム)の作製]
(1)基材フィルムの作製
低密度ポリエチレン(LDPE、密度0.92g/cm、融点110℃)の樹脂ペレットを230℃で溶融し、押出機を用いて厚さ70μmの長尺フィルム状に成形した。得られたフィルムに100kGyの電子線を照射し、基材フィルムを作製した。
【0083】
(2)粘着剤層の作製
ブチルアクリレートが50モル%、2−ヒドロキシエチルアクリレートが45モル%およびメタクリル酸が5モル%からなる、質量平均分子量80万の共重合体を調製した。ヨウ素価が20となるように、2−イソシアナトエチルメタクリレートを添加して、ガラス転移温度−40℃、水酸基価30mgKOH/g、酸価5mgKOH/gのアクリル系共重合体を調製した。
次に、上記で調製したアクリル系共重合体100質量部に対して、ポリイソシアネートとしてコロネートL(商品名、日本ポリウレタン製)を5質量部加え、光重合開始剤としてEsacure KIP 150(商品名、Lamberti社製)を3質量部加えた混合物を、酢酸エチルに溶解させ、攪拌して粘着剤組成物を調製した。
次に、離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムよりなる剥離ライナー上に、この粘着剤組成物を乾燥後の厚さが20μmになるように塗工し、110℃で3分間乾燥させて粘着剤層を形成した後、上記で調製した基材フィルムと粘着剤層とを貼り合わせ、基材フィルム上に粘着剤層が形成されたダイシングフィルムを作製した。
【0084】
[2.接着剤層(ダイアタッチフィルム)の作製]
トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(商品名:EPPN−501H、質量平均分子量:1000、軟化点:55℃、半固体、エポキシ当量:167g/eq、日本化薬(株)製)56質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:YD−128、質量平均分子量:400、軟化点:25℃以下、液体、エポキシ当量:190g/eq、新日化エポキシ製造(株)製)49質量部、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(商品名:YP−50、質量平均分子量:70000、Tg:84℃、常温(25℃)弾性率:1700MPa、新日化エポキシ製造(株)製)30質量部及びMEK67質量部を1000mlのセパラブルフラスコ中において温度110℃で2時間加熱攪拌し、樹脂ワニスを得た。
次いで、この樹脂ワニスを800mlのプラネタリーミキサーに移し、アルミナフィラー(商品名:AO−502、(株)アドマテックス製、平均粒径(d50):0.6μm)205質量部を添加して、イミダゾール型硬化剤(商品名:2PHZ−PW、四国化成(株)製)8.5質量部、シランカップリング剤(商品名:サイラエースS−510、JNC株式会社製)3.0質量部を加えて室温において1時間攪拌混合後、真空脱泡して混合ワニスを得た。
次いで、得られた混合ワニスを厚み38μmの離型処理されたPETフィルム(剥離フィルム)上に塗布して、130℃で10分間加熱乾燥し、縦300mm、横200mm、厚みが10μmの接着剤層が剥離フィルム上に形成されたダイアタッチフィルムを作製した。
【0085】
[3.ダイシングダイアタッチフィルムの作製]
次いで、ダイシングフィルムをリングフレームの開口部を覆うように貼り合わせることができるような円形状に裁断した。また、ダイアタッチフィルムをウェハ裏面を覆うことができるような円形状に裁断した。
上記のように裁断したダイシングフィルムから剥離ライナーを剥離して露出させた粘着剤層と、上記のように裁断したダイアタッチフィルムの接着剤層とを、ロールプレス機を用いて、荷重0.4MPa、速度1.0m/minの条件にて貼り合わせ、ダイシングダイアタッチフィルムを作製した。このダイシングダイアタッチフィルムは、ダイシングフィルムがダイアタッチフィルムよりも大きく、接着剤層の周囲に粘着剤層が露出した部分を有する。
【0086】
(実施例2)
アルミナフィラー(商品名:AO−502、(株)アドマテックス製、平均粒径(d50):0.6μm)320質量部を使用する以外は実施例1と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0087】
(実施例3)
アルミナフィラー(商品名:AO−502、(株)アドマテックス製、平均粒径(d50):0.6μm)480質量部を使用する以外は実施例1と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0088】
(実施例4)
ビスフェノールA型フェノキシ樹脂に代えてビスフェノールA・F共重合型フェノキシ樹脂(商品名:YP−70、質量平均分子量:55000、Tg:72℃、常温(25℃)弾性率:1400MPa、新日化エポキシ製造(株)製)30質量部を使用する以外は実施例1と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0089】
(実施例5)
ビスフェノールA型フェノキシ樹脂に代えて低弾性高耐熱型フェノキシ樹脂(商品名:FX−310、質量平均分子量:40000、Tg:110℃、常温(25℃)弾性率:500MPa、新日化エポキシ製造(株)製)30質量部を使用する以外は実施例1と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0090】
(実施例6)
ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(商品名:YP−50、質量平均分子量:70000、Tg:84℃、常温(25℃)弾性率:1700MPa、新日化エポキシ製造(株)製)44質量部、アルミナフィラー(商品名:AO−502、(株)アドマテックス製、平均粒径(d50):0.6μm)350質量部を使用する以外は実施例1と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0091】
(実施例7)
ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(商品名:YP−50、質量平均分子量:70000、Tg:84℃、常温(25℃)弾性率:1700MPa、新日化エポキシ製造(株)製)70質量部、アルミナフィラー(商品名:AO−502、(株)アドマテックス製、平均粒径(d50):0.6μm)400質量部を使用する以外は実施例1と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0092】
(実施例8)
ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(商品名:YP−50、質量平均分子量:70000、Tg:84℃、常温(25℃)弾性率:1700MPa、新日化エポキシ製造(株)製)50質量部、銀フィラー(商品名:AG−4−8F、(株)DOWAエレクトロニクス製、平均粒径(d50):2.0μm)360質量部を使用する以外は実施例1と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0093】
(実施例9)
ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(商品名:YP−50、質量平均分子量:70000、Tg:84℃、常温(25℃)弾性率:1700MPa、新日化エポキシ製造(株)製)50質量部、銀フィラー(商品名:AG−4−8F、(株)DOWAエレクトロニクス製、平均粒径(d50):2.0μm)610質量部を使用する以外は実施例1と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0094】
(実施例10)
ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(商品名:YP−50、質量平均分子量:70000、Tg:84℃、常温(25℃)弾性率:1700MPa、新日化エポキシ製造(株)製)50質量部、銀フィラー(商品名:AG−4−8F、(株)DOWAエレクトロニクス製、平均粒径(d50):2.0μm)950質量部を使用する以外は実施例1と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0095】
(比較例1)
ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(商品名:YP−50、質量平均分子量:70000、Tg:84℃、常温(25℃)弾性率:1700MPa、新日化エポキシ製造(株)製)10質量部、アルミナフィラー(商品名:AO−502、(株)アドマテックス製、平均粒径(d50):0.6μm)280質量部を使用する以外は実施例1と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0096】
(比較例2)
ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(商品名:YP−50、質量平均分子量:70000、Tg:84℃、常温(25℃)弾性率:1700MPa、新日化エポキシ製造(株)製)250質量部、アルミナフィラー(商品名:AO−502、(株)アドマテックス製、平均粒径(d50):0.6μm)800質量部を使用する以外は実施例1と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0097】
(比較例3)
ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(商品名:YP−50、質量平均分子量:70000、Tg:84℃、常温(25℃)弾性率:1700MPa、新日化エポキシ製造(株)製)250質量部、アルミナフィラー(商品名:AO−502、(株)アドマテックス製、平均粒径(d50):0.6μm)130質量部を使用する以外は実施例1と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0098】
(比較例4)
ビスフェノールF+1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル型フェノキシ樹脂(商品名:YX−7180、質量平均分子量:50000、Tg:15℃、常温(25℃)弾性率:200MPa、三菱ケミカル(株)製)30質量部、アルミナフィラー(商品名:AO−502、(株)アドマテックス製、平均粒径(d50):0.6μm)320質量部を使用する以外は実施例1と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0099】
(比較例5)
アクリルポリマー溶液(商品名:S−2060、質量平均分子量:500000、Tg:−23℃、常温(25℃)弾性率:50MPa、固形分25%(有機溶媒:トルエン)、東亜合成(株)製)120質量部(うちアクリルポリマー質量部30質量部)、アルミナフィラー(商品名:AO−502、(株)アドマテックス製、平均粒径(d50):0.6μm)320質量部を使用する以外は実施例1と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0100】
上記で作製した各ダイシングダイアタッチフィルムについて、硬化前弾性率、溶融粘度、剥離力、ダイアタッチ性評価、熱伝導率及び連続ピックアップ性を、それぞれ以下に示す方法により実施した。
得られた結果を接着剤層の組成と共に、下記表1にまとめて示す。
【0101】
<硬化前弾性率及び溶融粘度の測定>
上記で作製したダイシングダイアタッチフィルムから縦5.0cm×横5.0cmのサイズの正方形を切り取り、ダイシングフィルム(粘着剤層及び基材フィルム)と剥離フィルムを剥離し、切り取った試料を積層し、ステージ70℃の熱板上で、ハンドローラーにて貼り合わせて、厚さが約1.0mmである接着剤層の試験片を得た。
この試験片について、レオメーター(RS6000、Haake社製)を用い、温度範囲20〜250℃、昇温速度5℃/minでの粘性抵抗の変化を測定した。得られた温度−粘性抵抗曲線から、25℃及び80℃における硬化前弾性率G’(kPa)と120℃における溶融粘度(Pa・s)をそれぞれ算出した。
【0102】
<剥離力>
上記で作製したダイシングダイアタッチフィルムについて、ダイシングフィルム(粘着剤層)側から紫外線照射装置(商品名:RAD−2000F/8、リンテック株式会社製、照射量200mJ/cm)を用いて紫外線を照射し、室温及び80℃の恒温槽中において、接着剤層とダイシングフィルム(粘着剤層及び基材フィルム)との層間剥離強度をそれぞれ測定した。
測定条件:JISZ0237準拠、180°剥離試験
測定装置:引張試験機(島津製作所製、型番:TCR1L型)
【0103】
<ダイアタッチ性評価>
上記で作製したダイシングダイアタッチフィルムを、先ず、剥離フィルムを剥がして、マニュアルラミネーター(商品名:FM−114、テクノビジョン社製)を用いて温度70℃、圧力0.3MPaにおいてダミーシリコンウェハ(8inchサイズ、厚さ100μm)の一方の面に接着させた。次いで、2軸のダイシングブレード(Z1:NBC−ZH2050(27HEDD)、DISCO社製/Z2:NBC−ZH127F−SE(BC)、DISCO社製)が設置されたダイシング装置(商品名:DFD−6340、DISCO社製)を用いて、10mm×10mmの正方形のサイズになるようにダミーシリコンウェハ側からダイシングを実施して、接着剤層付きダミーチップを得た。
次いで、ウェハ裏面側から紫外線照射装置(商品名:RAD−2000F/8、リンテック株式会社製、照射量200mJ/cm)を用いて紫外線を照射し、ダイボンダー(商品名:DB−800、(株)日立ハイテクノロジーズ製)にて120℃、圧力0.1MPa(荷重400gf)、時間1.0秒の条件において、上記接着剤層付きダミーチップをリードフレーム基板(42Arroy系、凸版印刷(株)製)の実装面側と貼り合わせるように、熱圧着した。
基板上に熱圧着した接着剤層付きダミーチップについて、超音波探傷装置(SAT)(日立パワーソリューションズ製 FS300III)を用いて、接着剤層とリードフレーム基板実装面との界面におけるボイドの発生の有無を観察し、下記評価基準に基づき、ダイアタッチ性評価を行った。
− 評価基準 −
A:実装したダミーチップ24個の全てにおいてボイドが観察されない。
B:実装したダミーチップ24個のうちボイド発生したチップが1〜5個ある。
C:実装したダミーチップ24個のうちボイド発生したチップが6個以上ある。
【0104】
<熱硬化後の熱伝導率>
上記で作製したダイシングダイアタッチフィルムから一辺50mm以上の四角片を切り取り、ダイシングフィルム(粘着剤層及び基材フィルム)と剥離フィルムとを剥離し、切り取った試料を重ねあわせて厚みが5mm以上の接着剤層積層体を得た。
この試料を、直径50mm、厚さ5mmの円盤状金型の上に置き、圧縮プレス成型機を用いて温度150℃、圧力2MPaにおいて10分間加熱して取り出した後、さらに乾燥機中において温度180℃で1時間加熱することにより接着剤層を熱硬化させ、直径50mm、厚さ5mmの円盤状試験片を得た。
この試験片について、熱伝導率測定装置(商品名:HC−110、英弘精機(株)製)を用いて、熱流計法(JIS−A1412に準拠)により熱伝導率(W/(m・K))を測定した。
【0105】
<連続ピックアップ性評価>
上記で作製したダイシングダイアタッチフィルムを、先ず、剥離フィルムを剥がして、マニュアルラミネーター(商品名:FM−114、テクノビジョン社製)を用いて温度70℃、圧力0.3MPaにおいてダミーシリコンウェハ(8inchサイズ、厚さ100μm)の一方の面に接着させた。次いで、2軸のダイシングブレード(Z1:NBC−ZH2050(27HEDD)、DISCO社製/Z2:NBC−ZH127F−SE(BC)、DISCO社製)が設置されたダイシング装置(商品名:DFD−6340、DISCO社製)を用いて5mm×5mmの正方形のサイズになるようにダミーシリコンウェハ側からダイシングを実施して、接着剤層付きダミーチップを得た。
次いで、ウェハ裏面側から紫外線照射装置(商品名:RAD−2000F/8、リンテック株式会社製、照射量200mJ/cm)を用いて紫外線を照射し、ダイボンダー(商品名:DB−800、(株)日立ハイテクノロジーズ製)にて120℃、圧力0.1MPa(荷重400gf)、時間1.0秒の条件において、上記接着剤層付きダミーチップをダイシングフィルム(粘着剤層及び基材フィルム)よりピックアップし、リードフレーム基板(42Arroy系、凸版印刷(株)製)の実装面側と貼り合わせるように、熱圧着した。このピックアップして熱圧着する工程を連続的に繰り返し行い、下記評価基準に基づき、連続ピックアップ性評価を行った。
− 評価基準 −
A:連続してピックアップ、熱圧着を行ったダミーチップ96個の全てにおいて、ピックアップミスや、ダイシングフィルム上への接着剤層残り等の不良が見られない。
B:連続してピックアップ、熱圧着を行ったダミーチップ96個のうち、ピックアップミスや、ダイシングフィルム上への接着剤層残り等の不良が発生したチップが1〜10個である。
C:連続してピックアップ、熱圧着を行ったダミーチップ96個のうち、ピックアップミスや、ダイシングフィルム上への接着剤層残り等の不良が発生したチップが11個以上である。
【0106】
<平均粒径(d50)の測定>
上記で用いた各無機充填剤0.1gとMEK9.9gを秤量し、これらの混合物に超音波分散処理を5分行い、測定用試料を調製した。この測定用試料について、レーザー回折・散乱法(型式:LMS−2000e、(株)セイシン企業製)により測定した粒度分布の粒径の体積分率の累積カーブから、平均粒径(d50)を求めた。
【0107】
<フェノキシ樹脂の常温(25℃)弾性率>
各種フェノキシ樹脂30質量部及びMEK(メチルエチルケトン)70質量部を500mlのセパラブルフラスコ中において、温度110℃で2時間加熱攪拌し、樹脂ワニスを得た。
次いで、この樹脂ワニスを厚み38μmの離型処理されたPETフィルム(剥離フィルム)上に塗布して、130℃で10分間加熱乾燥し、縦300mm、横200mm、厚みが100μmである、フェノキシ樹脂フィルムを得た。
このフェノキシ樹脂フィルムを5mm×17mmのサイズに切り取り、動的粘弾性測定装置(商品名:Rheogel−E4000F、(株)ユービーエム製)を用いて、測定温度範囲0〜100℃、昇温速度5℃/min、及び周波数1Hzの条件下で測定を行い、25℃における弾性率の値を求めた。
なお、比較例5で用いたアクリル樹脂についても、フェノキシ樹脂と同様に、上記方法に従って25℃における弾性率を求めた。
【0108】
<フェノキシ樹脂のガラス転移温度(Tg)>
上記弾性率の測定に記載の方法により作製したフェノキシ樹脂フィルムについて、示差走査熱量計(型番:DSC7000、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、昇温速度5℃/minの条件で測定し、吸熱ピーク側へベースラインがシフトする温度をガラス転移温度(Tg)として測定した。
【0109】
<質量平均分子量>
各種フェノキシ樹脂について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(型番:HLC&#8722;8320、東ソー株式会社製)を用いて、テトラヒドロフランを溶離液として使用し、流速1ml/min、カラム室の温度を40℃の条件で測定した。質量平均分子量は標準ポリスチレン検量線を用いて算出した。
【0110】
なお、比較例5で用いたアクリル樹脂についても、フェノキシ樹脂と同様に、上記方法に従って、25℃における弾性率、ガラス転移温度、質量平均分子量を求めた。
【0111】
【表1-1】
【0112】
【表1-2】

【0113】
<表の注>
接着剤層の欄における「−」は、その成分を含有していないことを意味する。
【0114】
上記表1から、以下のことがわかる。
比較例1のダイシングダイアタッチフィルムは、エポキシ樹脂(A)とフェノキシ樹脂(C)の各含有量の合計に占めるフェノキシ樹脂(C)の割合が、10質量%未満であり、80℃における接着剤層と粘着剤層との間における剥離力が0.40N/25mm越えである。この比較例1のダイシングダイアタッチフィルムは、ピックアップコレットの蓄熱により、連続してピックアップした際には、96個のチップのうち11個以上のチップでピックアップ不良が生じてしまい、ピックアップ性に劣っていた。
比較例2及び3のダイシングダイアタッチフィルムは、エポキシ樹脂(A)とフェノキシ樹脂(C)の各含有量の合計に占めるフェノキシ樹脂(C)の割合が、70質量%越えである。この比較例2及び3のダイシングダイアタッチフィルムは、配線基板に熱圧着した際に、24個のチップのうち6個以上のチップでボイドが発生してしまい、ボイド発生の抑制が不十分であった。また、比較例3のダイシングダイアタッチフィルムは、熱硬化後の接着剤層の熱伝導率が1.0W/m・K以未満と低く、半導体パッケージに適用される接着剤としての放熱性も十分でなかった。
比較例4のダイシングダイアタッチフィルムは、フェノキシ樹脂(C)の25℃における弾性率が500MPa未満である。また、比較例5のダイシングダイアタッチフィルムは、フェノキシ樹脂を含有せず、アクリル樹脂(25℃における弾性率が500MPa未満)を含有する。これらの比較例4及び5のダイシングダイアタッチフィルムは、ピックアップコレットの蓄熱により、連続してピックアップした際には、96個のチップのうち11個以上のチップでピックアップ不良が生じてしまい、ピックアップ性に劣っていた。
これに対して、本発明の実施例1〜10のダイシングダイアタッチフィルムは、半導体加工における連続ピックアップ性に優れ、ピックアップコレットが蓄熱してもピックアップ不良を生じにくかった。また、配線基板に熱圧着した際のボイドの発生の抑制にも優れていた。
【符号の説明】
【0115】
1 半導体ウェハ
2 接着剤層
3 粘着剤層
4 半導体チップ
5 フィルム状接着剤付き半導体チップ
6 配線基板
7 ボンディングワイヤー
8 封止樹脂
9 半導体パッケージ
【要約】      (修正有)
【課題】ピックアップ工程でピックアップコレットが蓄熱した状態になってもピックアップ不良を生じにくく、配線基板に熱圧着した際のボイドの発生も抑制できるダイシングダイアタッチフィルムを提供する。
【解決手段】接着剤層2と粘着剤層3とが積層されてなるダイシングダイアタッチフィルムであって、接着剤層が、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、フェノキシ樹脂及び無機充填材を含有するフィルム状接着剤の層であり、フェノキシ樹脂の25℃における弾性率が500MPa以上であり、接着剤層中、エポキシ樹脂とフェノキシ樹脂の各含有量の合計に占めるフェノキシ樹脂の割合が、10〜60質量%であり、接着剤層と粘着剤層の25〜80℃の範囲における剥離力が0.40N/25mm以下であり、接着剤層の熱硬化後の熱伝導率が1.0W/m・K以上である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7