特許第6902876号(P6902876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6902876ポリチオフェン及びその組成物、並びにその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902876
(24)【登録日】2021年6月24日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】ポリチオフェン及びその組成物、並びにその用途
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20210701BHJP
【FI】
   C08G61/12
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-15212(P2017-15212)
(22)【出願日】2017年1月31日
(65)【公開番号】特開2018-123213(P2018-123213A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(72)【発明者】
【氏名】奥崎 秀典
(72)【発明者】
【氏名】箭野 裕一
(72)【発明者】
【氏名】西山 正一
【審査官】 横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/102129(WO,A1)
【文献】 特開2015−063652(JP,A)
【文献】 特開2014−065898(JP,A)
【文献】 特開2015−168793(JP,A)
【文献】 特開平02−043216(JP,A)
【文献】 特開2015−078338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/12
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
H01B 1/00−1/24
H01G 9/00−9/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し構造及び下記一般式(2)で表される繰り返し構造を含むポリチオフェンであって、重量平均分子量が2万以上であり、導電率が300S/cm以上であることを特徴とするポリチオフェン。
【化1】
[上記式(1)及び式(2)中、Lは、下記式(4)で表される基を表す。Mは、各々独立に、水素イオン、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムカチオンを表す。]
【化3】
[上記式(4)中、mは、1〜6のいずれかの整数を表す。Rは、メチル基を表す。]
【請求項2】
重量平均分子量が3万以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリチオフェン。
【請求項3】
重量平均分子量が3万以上10万以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリチオフェン。
【請求項4】
ゲル浸透クロマトグラムにおいて、2つ以上のピークを有し、尚且つ保持時間の最も早い第1のピークトップの分子量(Mp)が2.5万以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のポリチオフェン。
【請求項5】
ゲル浸透クロマトグラムにおいて、2つ以上のピークを有し、尚且つ保持時間の最も早い第1のピークトップのピーク強度が、次に保持時間の早い第2のピークトップのピーク強度の0.5倍以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のポリチオフェン。
【請求項6】
下記一般式(5)又は下記一般式(6)で表される繰り返し構造の存在比率が20重量%未満であることを特徴とする、請求項1に記載のポリチオフェン。
【化4】
[上記式(5)及び(6)中、L及びMは、請求項1と同義。]
【請求項7】
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載のポリチオフェンを含むことを特徴とする導電性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は従来よりも分子量の大きな自己ドープ型ポリチオフェンに関するものである。具体的には重量平均分子量が2万以上のポリマーであり、高分子量化することで、従来よりも高い電気伝導度を有する自己ドープ型ポリチオフェンを提供することが可能となる。
【背景技術】
【0002】
ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等に代表されるπ共役高分子に対して、電子受容性化合物をドーパントとしてドープした外部ドープ型導電性高分子が開発されているが、不溶不融であるために精製が困難であることや、安定したドーピングを維持することが難しいという課題があった。一方で、水溶性の付与とドーピング作用を兼ね備えた置換基(スルホ基、スルホネート基等)を直接又はスペーサを介してポリマー主鎖中に有する、いわゆる自己ドープ型導電性高分子が開発され、例えば、スルホン化ポリアニリン、スルホン化ポリチオフェン等が知られている(例えば、非特許文献1、2参照)。これらの中でも直鎖のアルキレンスルホン酸基が置換したポリ(4−(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)−1−ブタンスルホン酸)(PEDT−S)は、比較的高い導電率を示すことが報告されている(例えば特許文献1、非特許文献3、4参照)。また、PEDOT−S以外に、高い導電性と優れた水溶性を兼ね備えた自己ドープ型導電性高分子が報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
近年、新規な用途として透明電極や低ESRコンデンサへの適用検討が盛んに検討されており、市場からはさらに高い導電性を有する導電性高分子の要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4974095号公報
【特許文献2】国際公開第2014/007299号パンフレット
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Journal of the American Chemical Society, 117, 10055−10062(1995)
【非特許文献2】Journal of the Chemical Society, Chemical Communications, 23, 1694−1695(1990)
【非特許文献3】Chemistry of Materials, 21, 1815−1821(2009)
【非特許文献4】Advanced Materials, 23, 4403−4408(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自己ドープ型導電性高分子は帯電防止材、コンデンサの固体電解質、透明電極等への応用が期待される。ただし、従来公知の自己ドープ型導電性高分子については、固体電解コンデンサ等に要求される高導電性を発現させることが困難であった。自己ドープ型導電性高分子の導電性を高めることができれば、固体電解コンデンサ等の性能をさらに向上させることが可能である。本発明の目的は、従来に無い高導電性を示す自己ドープ型導電性高分子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、後述する一般式(1)で表される繰り返し構造及び下記一般式(2)で表される繰り返し構造を含むポリチオフェンであって、重量平均分子量が2万以上であるポリチオフェンが、従来の自己ドープ型導電性高分子では成し得なかった極めて高い導電性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち本発明は、後述する一般式(1)で表される繰り返し構造及び下記一般式(2)で表される繰り返し構造を含むポリチオフェンであって、重量平均分子量が2万以上であるポリチオフェン及びその用途に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の自己ドープ型ポリチオフェンよりも顕著に高い導電性を示すという顕著な効果を奏する。このため、本発明のポリチオフェンは、固体電解コンデンサ等の性能を向上させることができる点で、産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ゲル浸透クロマトグラフィー法によって、2つの分子量ピークを有するポリチオフェンを分析した場合に得られるクロマトグラムの概念図。
図2】実施例で得られたポリチオフェンのゲル浸透クロマトグラフィー測定結果。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明のポリチオフェンは、下記一般式(1)で表される繰り返し構造及び下記一般式(2)で表される繰り返し構造を含むものであって、重量平均分子量が2万以上であることを特徴とする。
【0013】
【化1】
【0014】
[上記式(1)及び式(2)中、Lは、下記式(3)又は(4)で表される基を表す。Mは、各々独立に、水素イオン、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムカチオンを表す。]
【0015】
【化2】
【0016】
[上記式(3)中、lは、6〜12のいずれかの整数を表す。]
【0017】
【化3】
【0018】
[上記式(4)中、mは、1〜6のいずれかの整数を表す。Rは、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、又はフッ素原子を表す。]
本発明の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ法で分析値であり、プルラン換算の分子量である。
【0019】
本発明のポリチオフェンは、重量平均分子量が2万以上である。本発明のポリチオフェンの重量平均分子量については、導電性を高められるという点で、3万以上であることが好ましく、3万以上10万以下であることがより好ましく、3万より大きく8万より小さいことがより好ましい。
【0020】
本発明のポリチオフェンは、特に限定するものではないが、ゲル浸透クロマトグラフ法から得られるクロマトグラムにおいて、2つ以上のピークを有する場合、当該2つ以上のピークのうち保持時間の最も早い第1のピークトップ(図1のX部分に相当)の分子量(Mp)が2.5万以上であることが好ましく、また2つ以上のピークを有する場合であって当該2つ以上のピークのうち保持時間の最も早い第1のピークトップ(図1のX部分に相当)のピーク強度が、次に保持時間の早い第2のピークトップ(図1のY部分に相当)のピーク強度の0.5倍以上であることが好ましい。
【0021】
本発明のポリチオフェンについては、特に限定するものではないが、例えば、導電性組成物として用いることができる。
【0022】
上記式(1)又は(2)中、Mは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムカチオンを表す。
【0023】
前記のアルカリ金属イオンとしては、特に限定するものではないが、例えば、Liイオン、Naイオン、又はKイオンが好ましい。
【0024】
前記のアミン化合物の共役酸としては、アミン化合物にヒドロン(H)が付加してカチオン種になったものを示し、スルホン酸基と反応して共役酸を形成するアミン化合物であればよく、特に限定するものではないが、例えば、sp3混成軌道を有するN(Rで表されるアミン化合物[共役酸としては[NH(Rで表される。]、又はsp2混成軌道を有するアミン化合物(例えば、ピリジン類化合物、イミダゾール類化合物)等が挙げられる。
【0025】
前記置換基Rとしては、特に限定するものではないが、各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。
【0026】
前記炭素数1〜6のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、2−エチルブチル基、又はシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0027】
前記置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、アミノ基、又はヒドロキシ基を有する炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体的には、トリフルオロメチル基、又は2−ヒドロキシエチル基等が例示される。
【0028】
これらのうち、置換基Rとしては、独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又は2−ヒドロキシエチル基が好ましい。
【0029】
このように、前記sp3混成軌道を有するアミン化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、トリエチルアミン、ノルマル−プロピルアミン、イソプロピルアミン、ノルマルブチルアミン、ターシャリーブチルアミン、ヘキシルアミン、エタノールアミン化合物(例えば、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、メチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン)、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、3−メチルアミノ−1,2−プロパンジオール、3−ジメチルアミノ−1,2−プロパンジオール、又は1,4−ブタンジアミン等が挙げられる。
【0030】
また、前記sp2混成軌道を有するアミン化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、イミダゾール化合物(例えば、イミダゾール、N−メチルイミダゾール、1、2−ジメチルイミダゾール)、ピリジンピコリン、ルチジン等が挙げられる。
【0031】
このように、アミン化合物の共役酸におけるアミン化合物については、導電性に優れる点で、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エタノールアミン化合物、又はイミダゾール化合物が好ましい。
【0032】
すなわち、アミン化合物の共役酸としては、導電性に優れる点で、アンモニウム、モノエタノールアミンの共役酸、ジエタノールアミンの共役酸、トリエタノールアミンの共役酸、又はイミダゾールの共役酸が好ましい。
【0033】
前記の第4級アンモニウムカチオンとしては、特に限定するものではないが、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラノルマルプロピルアンモニウムカチオン、テトラノルマルブチルアンモニウムカチオン、又はテトラノルマルヘキシルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。これらのうち、導電性に優れる点で、テトラメチルアンモニウムカチオン、又はテトラエチルアンモニウムカチオンであることが好ましい。
【0034】
上記式(3)中、lは6〜12のいずれかの整数を表し、導電性に優れる点で、6〜8のいずれかの整数であることが好ましい。
【0035】
上記式(4)中、Rは、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、又はフッ素原子を表す。
【0036】
炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、2−エチルブチル基、又はシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0037】
式(4)のRについては、成膜性に優れる点で、水素原子、メチル基、エチル基、又はフッ素原子であることが好ましい。
【0038】
上記式(4)中、mは1〜6のいずれかの整数を表し、導電性に優れる点で、mは1〜4のいずれかの整数であることが好ましく、2であることがより好ましい。
【0039】
上記式(2)で表される繰り返し構造は、上記式(1)で表される繰り返し構造の自己ドーピング状態を表す。
【0040】
一般的に、ドーピングにより絶縁体−金属転移を引き起こすドーパントは、アクセプタとドナーに分けられる。前者は、ドーピングにより導電性ポリマーの高分子鎖の近くに入り主鎖の共役系からπ電子を奪う。結果として、主鎖上に正電荷(正孔、ホール)が注入されるため、p型ドーパントとも呼ばれる。また、後者は、逆に主鎖の共役系に電子を与えることになり、この電子が主鎖の共役系を動くことになるため、n型ドーパントとも呼ばれる。
【0041】
本発明におけるドーパントは、ポリマー分子内に共有結合で結びついたスルホ基又はスルホナート基であり、p型ドーパントである。本発明における導電性ポリマーについては、外部からドーパントを添加することなく導電性を発現することができ、一般的に自己ドープ型導電性高分子と呼ばれている。
【0042】
本発明のポリチオフェンは、少なくとも水を含む溶媒中、酸化剤の存在下、下記一般式(8)で表されるチオフェンモノマーを2〜20重量%濃度で、反応液全体が混ざり合うように、均一強攪拌下に酸化重合することによって得ることができる。
【0043】
なお、ここでいう「チオフェンモノマーの濃度」とは、チオフェンモノマーの重量/(チオフェンモノマー+溶媒+酸化剤)の重量×100(重量%)で表される値である。
【0044】
【化4】
【0045】
[上記式(8)中、Lは上記式(3)又は式(4)を表す。Mは、金属イオンを表わす。]
式(8)におけるMで表される金属イオンとしては、特に限定するものではないが、例えば、遷移金属イオン、貴金属イオン、非鉄金属イオン、アルカリ金属イオン(例えば、Liイオン、Naイオン、及びKイオン)、又はアルカリ土類金属イオン等が挙げられる。
【0046】
式(8)で表されるチオフェンモノマーを重合した後のポリマーは、好ましくは、金属塩である。必要に応じて、得られたポリマーを酸処理することでMを水素イオンへ変換可能であり、さらにこれをアミン化合物と反応させることで、Mをアミン化合物の共役酸へ変換可能である。
【0047】
上記式(1)又は式(2)において、Lが上記式(3)で表される、本発明のポリチオフェンを得るためのチオフェンモノマーとしては、特に限定するものではないが、具体的には、6−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)ヘキサン−1−スルホン酸、6−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)ヘキサン−1−スルホン酸ナトリウム、6−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)ヘキサン−1−スルホン酸リチウム、6−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)ヘキサン−1−スルホン酸カリウム、8−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)オクタン−1−スルホン酸、8−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)オクタン−1−スルホン酸ナトリウム、又は8−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)オクタン−1−スルホン酸カリウム等が例示される。
【0048】
上記式(1)又は式(2)において、Lが上記式(4)で表される、本発明のポリチオフェンを得るためのチオフェンモノマーとしては、特に限定するものではないが、具体的には、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−プロパンスルホン酸カリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−エチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−プロピル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−ブチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−ペンチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−ヘキシル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−イソプロピル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−イソブチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−イソペンチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−フルオロ−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸カリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸アンモニウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸トリエチルアンモニウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−ブタンスルホン酸ナトリウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−ブタンスルホン酸カリウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−ブタンスルホン酸ナトリウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−ブタンスルホン酸カリウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−フルオロ−1−ブタンスルホン酸ナトリウム、又は4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−フルオロ−1−ブタンスルホン酸カリウム等が例示される。
【0049】
本発明のポリチオフェンについては、導電性に優れる点で、下記一般式(5)で表される繰り返し構造及び(6)で表される繰り返し構造の合計存在比率が、20重量%未満であることが好ましく、10重量%未満であることがより好ましく、5重量%未満であることがより好ましい。当該繰り返し構造の存在比率(重量%)については、仕込み原料のマテリアルバランスから見積もることもできるし、ポリマー中の単位構造毎のモル比率と単位構造の分子量から見積もることもできる。
【0050】
【化5】
【0051】
[上記式(5)及び(6)中、Lは、上記式(3)又は(4)を表す。Mは、上記式(1)及び(2)と同じ定義を表す。]
上記一般式(5)及び(6)で表される繰り返し単位については、上記式(8)で表されるチオフェンモノマーの重合の際に、下記一般式(9)で表されるチオフェンモノマーが原料として共存する場合に生じるものである。すなわち、本発明のポリチオフェンを合成する際に、モノマー原料として下記式(9)で表されるチオフェンモノマーを20重量%以上含有しないことが導電性の観点から好ましい。
【0052】
なお、下記式(9)で表される化合物については、前記式(8)で表される化合物を製造する際に副成物として同伴する傾向がある。このため、前記モノマー原料中の式(9)で表されるチオフェンモノマーの量を20重量%未満とする方法としては、特に限定するものではないが、前記式(8)で表される化合物を製造する際に下記式(9)で表される化合物の生成を抑えるための条件制御を行う方法、又は前記式(8)で表される化合物の製造後に精製によって下記式(9)で表される化合物を取り除く方法等が挙げられる。
【0053】
【化6】
【0054】
[上記式(9)中、Lは上記式(3)又は(4)を表す。Mは、金属イオンを表わす。]
式(9)におけるMで表される金属イオンとしては、特に限定するものではないが、例えば、遷移金属イオン、貴金属イオン、非鉄金属イオン、アルカリ金属イオン(例えば、Liイオン、Naイオン、及びKイオン)、又はアルカリ土類金属イオン等が挙げられる。
【0055】
上記式(9)で表されるチオフェンモノマーとしては、具体的に、具体的には、6−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキセピン−3−イル)ヘキサン−1−スルホン酸、6−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキセピン−3−イル)ヘキサン−1−スルホン酸ナトリウム、6−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキセピン−3−イル)ヘキサン−1−スルホン酸リチウム、6−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキセピン−3−イル)ヘキサン−1−スルホン酸カリウム、8−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキセピン−3−イル)オクタン−1−スルホン酸、8−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキセピン−3−イル)オクタン−1−スルホン酸ナトリウム、又は8−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキセピン−3−イル)オクタン−1−スルホン酸カリウム等が例示される。
【0056】
上記式(1)又は式(2)において、Lが上記式(4)で表される、本発明のポリチオフェンを得るためのチオフェンモノマーとしては、特に限定するものではないが、具体的には、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキセピン−3−イルオキシ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキセピン−3−イルオキシ]−1−プロパンスルホン酸カリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキセピン−3−イルオキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキセピン−3−イルオキシ]−1−エチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキセピン−3−イルオキシ]−1−プロピル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキセピン−3−イルオキシ]−1−ブチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキセピン−3−イルオキシ]−1−ペンチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキセピン−3−イルオキシ]−1−ヘキシル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキセピン−3−イルオキシ]−1−イソプロピル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキセピン−3−イルオキシ]−1−イソブチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキセピン−3−イルオキシ]−1−イソペンチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキセピン−3−イルオキシ]−1−フルオロ−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキセピン−イルオキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸カリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキセピン−3−イルオキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキセピン−3−イルオキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸アンモニウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキセピン−3−イルオキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸トリエチルアンモニウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキセピン−3−イルオキシ]−1−ブタンスルホン酸ナトリウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキセピン−3−イルオキシ]−1−ブタンスルホン酸カリウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキセピン−3−イルオキシ]−1−メチル−1−ブタンスルホン酸ナトリウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキセピン−3−イルオキシ]−1−メチル−1−ブタンスルホン酸カリウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキセピン−3−イルオキシ]−1−フルオロ−1−ブタンスルホン酸ナトリウム、又は4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキセピン−3−イルオキシ]−1−フルオロ−1−ブタンスルホン酸カリウム等が例示される。
【0057】
本発明のポリチオフェンの製造に用いる少なくとも水を含む溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、水又は水とアルコール化合物の混合物が挙げられる。
【0058】
水としては、重合反応を阻害する成分を含むものでなければ特に支障はないが、例えば、純水、蒸留水、又はイオン交換水を用いることができる。
【0059】
アルコール化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、又はブタノール等が挙げられる。これらのアルコール化合物は、水と併用して使用する。
【0060】
これらの溶媒のうち、より高分子量のポリチオフェンが得られる点で、水又はメタノール水溶液が好ましく、水がより好ましい。
【0061】
また、本発明のポリチオフェンの製造に用いる少なくとも水を含む溶媒については、特に限定するものではないが、脱気を行ったものを用いてもよいし、窒素等の不活性ガスで置換したものを用いてもよい。
【0062】
本発明のポリチオフェンの製造に用いる酸化剤としては、酸化的脱水素化反応による酸化重合を進行させるものを用いることができ、特に限定するものではないが、例えば、硫酸系酸化剤、塩酸系酸化剤、硝酸系酸化剤、金属系酸化剤、過酸化水素、酸素等が挙げられ、これらを単独で又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0063】
ここで、硫酸系酸化剤としては、具体的には、過硫酸、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等が例示される。
【0064】
塩酸系酸化剤としては、具体的には、過塩素酸、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、塩素酸、塩素酸アンモニウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム等が例示される。
【0065】
硝酸系酸化剤としては、具体的には、硝酸、発煙硝酸等が例示される。
【0066】
金属系酸化剤としては、具体的には、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、バナジン酸塩、ビスマス酸塩、鉄(II)塩、鉄(III)塩、セリウム(IV)塩等が例示される。
【0067】
また、鉄(II)塩としては、具体的には、FeCl、FeSO等が例示される。これらは無水物を使用しても、水和物を使用してもよい。より好ましくは、取扱いが容易で反応容器の腐食回避の観点からFeSO・7HOが望ましい。
【0068】
また、鉄(III)塩としては、具体的には、FeCl、Fe(SO、過塩素酸鉄、パラ−トルエンスルホン酸鉄(III)、ヘキサシアノ鉄(III)塩等が例示される。これらは無水物を使用しても、水和物を使用してもよい。
【0069】
また、過マンガン酸塩としては、具体的には、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸マグネシウム等が例示される。
【0070】
また、重クロム酸塩としては、具体的には、重クロム酸アンモニウム、重クロム酸カリウム等が例示される。
【0071】
これらの酸化剤のうち、好ましくは、硫酸系酸化剤、塩酸系酸化剤、硝酸系酸化剤、及び金属系酸化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化剤と金属系酸化剤を含む混合物であることが好ましく、硫酸系酸化剤、塩酸系酸化剤、硝酸系酸化剤、及び金属系酸化剤(いずれも、標準酸化還元電位が1.0〜5.0ボルトの範囲)からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化剤と鉄(II)塩又は鉄(III)塩を含む混合物であることがより好ましく、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化剤とFeSO4・7HO、FeCl、及びFe(SOからなる群より選ばれる少なくとも1種の鉄塩を含む混合物であることがより好ましい。
【0072】
鉄(III)塩単独系、又は過硫酸塩と鉄塩(II又はIII)との併用系であり、
鉄(II)塩としては、特に限定するものではないが、例えば、FeSO・7HOが好ましい。鉄(III)塩としては、特に限定するものではないが、例えば、FeCl、Fe(SOが好ましい。
【0073】
本発明のポリチオフェンの製造に用いる酸化剤の量としては、特に限定するものではないが、上記式(1)等で表されるチオフェンモノマーの仕込みモル数に対して、0.5〜50倍モルである。より好ましくは、1〜20倍モルである。更に好ましくは、1〜10倍モルである。
【0074】
本発明のポリチオフェンの製造に用いる酸化剤が、例えば、鉄(III)塩単独系の場合、原料として用いられるチオフェンモノマーの仕込みモル数に対して、鉄(III)塩が等倍モル以上であり、且つ溶媒に対する鉄濃度が10重量%以上となるように用いて重合させることが好ましい。より良好な導電性を発現させるために必要なドーピングの観点からは、溶媒に対する鉄濃度が20重量%以上であることがさらに好ましい。なお、ここでいう「鉄濃度」とは、鉄塩/(鉄塩+水)×100(重量%)で表される値であり、鉄塩は無水物として計算する。
【0075】
また、本発明のポリチオフェンの製造に用いる酸化剤が、例えば、過硫酸塩と鉄(II又はIII)塩との併用系である場合には、原料として用いられるチオフェンモノマーの仕込みのモル数に対して、過硫酸塩が0.5〜20倍モルの範囲であり、且つ鉄(II又はIII)塩が0.01〜10倍モルの範囲であることが好ましく、過硫酸塩が1.5〜10倍モルの範囲であり、且つ鉄(II又はIII)塩が0.05〜5倍モルの範囲であることがより好ましい。
【0076】
本発明のポリチオフェンの製造において、反応の圧力は、特に限定するものではないが、常圧、減圧、加圧のいずれであってもよい。
【0077】
本発明のポリチオフェンの製造については、粘度上昇に伴う重合反応の停滞を防ぐように反応液を撹拌させることが重要である。このような撹拌方法としては、特に限定するものではないが、例えば、ポッター型ホモジナイザーによる撹拌、超音波式ホモジナイザーによる撹拌、又はホモミキサーによる撹拌等が挙げられる。なお、必要に応じてホモミキサー撹拌、ホモジナイザー撹拌、及びその他の撹拌方法から選ばれる2つ以上の撹拌方法を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
本発明のポリチオフェンの製造における反応雰囲気は、特に限定するものではないが、大気中であってもよいし、窒素やアルゴン等の不活性ガス中であってもよい。なお、好ましくは不活性ガス中である。
【0079】
本重合反応の反応温度は、例えば、上記式(1)で表されるチオフェンモノマーを酸化重合できる温度であり、特に限定するものではないが、−10〜150℃の範囲が好ましく、10〜100℃の範囲が更に好ましい。
【0080】
本発明のポリチオフェンの製造における反応時間は、例えば、上記式(1)等で表されるチオフェンモノマーの酸化重合が十分進行する時間が好ましく、特に限定するものではないが、例えば、0.5〜200時間の範囲が好ましく、0.5〜80時間の範囲が更に好ましい。
【0081】
発明のポリチオフェンの製造における反応方法については、特に限定するものではないが、例えば、本重合反応に用いる酸化剤が、鉄(II又はIII)塩単独系の場合、原料として用いられるチオフェンモノマーを水溶液として、これに前記酸化剤を一度に又はゆっくりと滴下する方法が挙げられる。また、逆に酸化剤の固体又は水溶液に本発明のチオフェンモノマーの水溶液を一度に又はゆっくりと滴下する方法を行ってもよい。
【0082】
また、過硫酸塩と鉄(II又はIII)塩との併用系である場合には、チオフェンモノマーの水溶液中に過硫酸塩と鉄(II又はIII)塩とを固体又は水溶液として、同時に又は順次添加してもよく、また逆に過硫酸塩と鉄(II又はIII)塩の水溶液中にチオフェンモノマーの水溶液を添加してもよい。
【0083】
本発明のポリチオフェンについては、以上のような製造工程の後、そのまま用いることもできるし、精製して用いることもできる。本発明のポリチオフェンの精製法としては、特に限定するものではないが、例えば、溶媒洗浄、再沈殿、遠心沈降、限外ろ過、透析、イオン交換樹脂処理等が挙げられる。それぞれ単独で行っても又は組み合わせても良い。
【0084】
本発明のポリチオフェンの典型的な単離精製方法は、特に限定されないが、例えば、以下のとおりである。
【0085】
まず、重合反応後のポリマー水溶液をアセトン等の貧溶媒に添加し、ポリマーを沈殿させた後、減圧ろ過で得たポリマーを当該貧溶媒でろ液が無色透明になるまで洗浄する。このポリマーに、水に不溶なFe塩が含まれている場合、一度水酸化ナトリウム水溶液中に添加し、水に溶解するNa塩型ポリマーに変換することが好ましい。
【0086】
次に、これをアルコール等の貧溶媒に添加してポリマーを沈殿させるとともに、アルカリ分を除去し、減圧濾過により得た固体をアルコール等の貧溶媒で洗浄する。次いでアセトン等の貧溶媒で洗浄し、Na塩型ポリマーを得る。
【0087】
得られたNa塩型ポリマーを、引き続き、H型ポリマーに変換する場合には、陽イオン交換樹脂で処理する。処理方法としては、例えば、得られたNa塩型ポリマーの水溶液を陽イオン交換樹脂が充填されたカラムに通液させる方法や、陽イオン交換樹脂を水溶液に添加するボディーフィード法等が挙げられる。この場合、処理後にろ紙やガラスフィルター等で陽イオン交換樹脂を除去することができる。このようにして本発明のポリチオフェンを含む水溶液が得られる。また、得られた水溶液は、アセトン等の貧溶媒に添加して沈殿させ、減圧ろ過して得た固体を当該貧溶媒でよく洗い、減圧乾燥してH型ポリマーとして得てもよい。得られたH型ポリマーを再度水に溶解させて本発明のポリチオフェンを含む水溶液を作製してもよい。また、重合反応後のポリマー水溶液からポリマーを再沈殿により析出させることなく限外ろ過等により無機塩等を脱塩した後に本工程を行ってもよい。引き続き、アニオン成分の除去を目的に陰イオン交換樹脂で処理してもよい。また、陽・陰イオン交換樹脂混合品で処理してもよい。さらに必要に応じて、限外ろ過等の方法により濃度調整を行ってもよい。
【0088】
重合後処理の各工程では必要に応じて、遠心沈降、ホモジナイズ処理を行ってもよい。これにより、ろ過効率の改善を図ることができる。
【0089】
更に、各種アミンとの塩を形成させる場合には、例えば、H塩型ポリマーの水溶液に、各種アミンの原液若しくはその水溶液又はその他適当な溶媒で希釈したものを加えることで容易にアミン塩型ポリマーに変換することができる。例えば、アンモニア水で処理した場合には、反応液を粗濃縮し、その水溶液をアセトン等の貧溶媒に添加してポリマー沈殿させた後、減圧濾過により得た固体を当該貧溶媒で洗浄し、減圧乾燥することでアンモニウム塩型ポリマーが得られる。
【0090】
本発明においてポリチオフェンの導電率は、特に限定するものではないが、フィルム状態での導電率(電気伝導度)として、300S/cm以上であることが好ましい。
【0091】
本発明のポリチオフェンを含む水溶液の濃度は、ポリチオフェンが溶解する濃度であれば特に限定されないが、例えば0.1〜10.0重量%ポリチオフェンを含むものである。なお、導電率及び操作性に優れる点で、本発明の導電性組成物中のポリチオフェンの濃度は、0.005〜7重量%の範囲であることが好ましく、0.01〜5重量%の範囲であることがより好ましい。
【0092】
本発明のポリチオフェンを含む導電性組成物については、特に限定するものではないが、水溶性樹脂、界面活性剤、架橋剤、アルコール、糖類からなる群から選ばれる少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0093】
本発明の導電性組成物における水溶性樹脂としては、特に限定するものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、水溶性ポリエステル、又は水溶性ポリウレタン等が好ましい。
【0094】
水溶性樹脂の分子量は、水溶性が良好であれば特に制限されないが、好ましくはMw=1千〜200万、より好ましくは1万〜150万、更に好ましくはMw=1千〜25万、更に好ましくは1千〜10万の範囲である。
【0095】
本発明の導電性組成物における界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、又はシリコーン系界面活性剤等が使用できるが、より好ましくは非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種である。
【0096】
非イオン界面活性剤としては特に限定するものではないが、例えば、ポリエチレングリコール型界面活性剤、アセチレングリコール型界面活性剤、多価アルコール型界面活性剤、高分子型非イオン界面活性剤等が挙げられる。
【0097】
前記のポリエチレングリコール型界面活性剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、又はポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0098】
アセチレングリコール型界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、サーフィノール(エアプロダクツ社製)、オルフィン(日信化学工業社製)等が挙げられる。
【0099】
多価アルコール型界面活性剤としては、例えば、グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、高アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。
【0100】
高分子型非イオン界面活性剤としては、特に限定するものではないが、ポリビニルピロリドン及びポリビニルピロリドンの共重合体等が挙げられる。本発明に使用されるポリビニルピロリドンの平均分子量は1千〜200万であり、好ましくは1万〜150万である。ポリビニルピロリドンの共重合体としては、特に限定するものではないが、親水性部と疎水性部をポリマー鎖中に併せ持つものが好ましく、例えば、ポリビニルピロリドンをポリビニルアルコールにグラフトしたコポリマーや、[ビニルピロリドン−酢酸ビニル]ブロック共重合体、[ビニルピロリドン−メチルメタクリレート]共重合体、[ビニルピロリドン−ノルマルブチルメタクリレート]共重合体、[ビニルピロリドン−アクリルアミド]共重合体などが例示できる。
【0101】
両性界面活性剤としては特に限定するものではないが、例えば、ベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。ベタイン型両性界面活性剤としては特に限定するものではないが、例えば、アルキルジメチルベタイン、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等が挙げられる。
【0102】
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基を有するものであれば特に限定されないが、パーフルオロアルカン、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸、又はパーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0103】
シリコーン系界面活性剤としては特に限定されないが、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性ポリジメチルシロキサン、ヒドロキシル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基含有ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、又はシリコーン変性アクリル化合物などが挙げられる。
【0104】
界面活性剤は単独で添加してもよいし、2種以上を混合して添加してもよい。
本発明の導電性組成物における架橋剤としては、特に限定するものではないが、シラン化合物、ブロックイソシアネート化合物等が挙げられる。これらは2種類以上を併用して使用してもよい。
【0105】
上記シラン化合物としては、特に限定するものではないが、グリシジル基又はアミノ基を有するアルコキシシラン化合物であることが好ましく、例えば、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、8−グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、又は3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらはアルコール溶液として使用してもよく、また2種類以上を併用してもよい。
【0106】
上記ブロックイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、加熱によりブロック剤が解離し、生成したイソシアネート基がバインダの水酸基やカルボキシル基等と反応するものであるものが好ましい。当該ブロックイソシアネート化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、ヘキサメチレンジイソシナネート3量体の各種アミンブロック型(例えば、ジイソプロピルアミンなど)、明成化学工業社製のSU−268A、村山化学研究所社製フィキサーシリーズ、又は第一工業製薬社製のエラストロンBNシリーズなどが挙げられる。
【0107】
上記ブロックイソシアネートのブロック剤解離温度は、特に限定されないが、100℃以上、200℃以下であることが好ましい。高分子基材への適用を考えた場合、耐熱性の点から、より好ましくは100℃以上、150℃以下である。
【0108】
本発明の導電性組成物におけるアルコールとしては、特に限定するものではないが、例えば、1価のアルコール、2価のアルコール、3価のアルコール、及び糖アルコールからなる群より選択される少なくとも一種のアルコールが挙げられる。
【0109】
1価のアルコールとしては、特に限定するものではないが、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ブチルセルソロブ等が挙げられるが、操作性の点から、エタノールが好ましい。2価アルコールとしては、特に限定するものではないが、入手の観点から、エチレングリコールが好ましい。3価アルコールとしては、特に限定するものではないが、例えば、グリセロールが好ましい。
【0110】
本発明の導電性組成物における糖類としては、特に限定するものではないが、例えば、エリトリトール、ソルビトール、アラビトール等が好ましい。より好ましくはソルビトールである。
【0111】
本発明の導電性組成物を調製する際の温度は、特に限定するものではないが、例えば、室温〜加温下で行うことができる。好ましくは0℃以上100℃以下が好ましい。
調製する際の雰囲気は、特に限定するものではないが、大気中でも、不活性ガス中でもよい。
【0112】
本発明の導電性組成物を調製する際には、スターラーチップ、攪拌羽根等による一般的な混合溶解操作に加えて、超音波照射、ホモジナイズ処理(例えば、メカニカルホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等の使用)を行ってもよい。ホモジナイズ処理する場合には、ポリマーの熱劣化を防ぐため、冷温しながら行うことが好ましい。
【0113】
本発明の導電性組成物中の固形分の粒径は、特に限定するものではないが、小さいほど水溶性が良好であり、導電性や成膜時の均一な膜形成の観点からも望ましい。
【0114】
本発明の導電性組成物についてはどのような粘度であってもかまわないが、産業利用の点で、20℃における粘度が、1000mPa・s以下であることが好ましく、100mPa・s以下であることがより好ましく、50mPa・s以下であることがより好ましい。
【0115】
本発明の導電性組成物から導電膜を形成する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、本発明の導電性組成物を、基材に塗布し乾燥することが挙げられる。
【0116】
前記の基材としては、特に限定するものではないが、例えば、高分子基材又は無機基材が挙げられる。高分子基材としては、特に限定するものではないが、例えば、熱可塑性樹脂、不織布、紙、又はレジスト膜基板等が挙げられる。前記の熱可塑性樹脂としては、特に限定するものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリレート、又はポリカーボネート等が挙げられる。前記の不織布としては、例えば、天然繊維、合成繊維、又はガラス繊維等が挙げられる。前記の紙としては一般的なセルロースを主成分とするものが挙げられる。前記の無機基材としては、ガラス、セラミックス、酸化アルミニウム、又は酸化タンタル等が挙げられる。
【0117】
本発明の導電性組成物の塗布方法としては、例えば、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ディスペンサ法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、スピンコート法、又はインクジェット法等が挙げられる。好ましくはバーコート法、スピンコート法である。
【0118】
本発明の導電性組成物を塗布して得られたウエット塗膜について、乾燥させることによって、本発明の導電膜が得られる。前記ウエット塗膜の乾燥温度は、均一な導電膜が得られる温度及び基材の耐熱温度以下であれば特に限定するものではないが、室温〜300℃の範囲が好ましく、より好ましくは室温〜200℃の範囲であり、さらに好ましくは90℃〜150℃の範囲である。
【0119】
乾燥雰囲気は大気中、不活性ガス中、真空中、又は減圧下のいずれであってもよい。高分子膜の劣化抑制の観点からは、窒素、アルゴン等の不活性ガス中が好ましい。 得られる導電膜の膜厚としては特に限定するものではないが、10−3〜10μmの範囲が好ましい。より好ましくは10−3〜10−1μmである。
【実施例】
【0120】
以下に、本発明の実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されて解釈されるものではない。なお、本実施例で用いた分析機器及び測定方法を以下に列記する。
【0121】
[自己ドープ型導電性高分子の分子量測定]
本発明のポリチオフェンを0.7〜1.0重量%程度含む水溶液2.0gに50重量%濃度のN、N−ジイソプロピルアミンのメタノール溶液1.2gを加え一晩ゆっくりと撹拌した。濃縮後、65℃で真空乾燥して得られた固形分を1重量%濃度になるようにDMSOに溶解させた。その後、PVDFフィルター(0.45μm)に通液処理した液を下記ゲル浸透クロマトグラフィー分析条件で分析した。
・カラム:東ソー社製TSKgel α−M + guard Column α
・溶離液:DMSO / 10mM−LiBr
・流速:0.6mL / min
・検出:UV(335nm)
・温度:50℃
・注入量:1000ppm(20μL)
・標準:Pullulan
[自己ドープ型導電性高分子の導電率測定]
・フィルムの製膜
スライドガラス(26×70 mm)の真中にビニールテープを貼り,半分の面積(26×35 mm)にポリチオフェン水溶液(約1.0 重量%)を滴下する。赤外水分計(MOC−120H,島津製作所)を用いて空気中,120℃で加熱乾燥後,200℃30分熱処理することで導電性フィルムを作製した。
【0122】
・膜厚測定
スライドガラスに貼ったビニールテープを剥がし,ガラス基板と導電性フィルムの段差を触針式段差計(D−100,KLA Tencor)で測定した。ガラス基板でベースライン補正した後,段差測定から導電性フィルムの膜厚を算出した。
【0123】
・導電率測定
導電性フィルムの電導度は,抵抗率計(ロレスタGP,MCP−T610型,三菱化学)を用いて測定した。4探針プローブ(PSPプローブ,三菱化学)をスタンドに固定し,フィルムを持ち上げることでプローブに接触させた。フィルムサイズ(26×35 mm)および膜厚を入力し,最低3サンプルの測定平均から電導度を算出した。
【0124】
導電率[S/cm]=10/(表面抵抗率[Ω/□]×膜厚[μm]) 。
【0125】
実施例1
ポリチオフェン(A)[下記式(10)及び下記式(11)で表される繰り返し構造を含む重合体]の合成
120.0gの3−[(2、3−ジヒドロチエノ[3、4−b]−[1、4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(99.5%LC純度)と62.5mLの硫酸を約1000mLの純水に溶解した。この混合液に60.55gの硫酸鉄七水和物を加え、さらに165.67gの過硫酸アンモニウムを含む水溶液滴下し、最後に全重量が1500gになるよう純水を加えて調製した。全重量に対するモノマーの仕込み濃度は8.0重量%であった。混合溶液を20℃で13時間、反応液全体が流動するように均一強撹拌させながら重合反応を行った。その後、反応溶液のイオン交換処理、脱塩等を行い、本発明の自己ドープ型ポリチオフェン水溶液(A)を得た。得られたポリチオフェン(A)の重量平均分子量(Mw)は53,167であった。また、保持時間の最も早いピークトップ(X)の分子量(Mp)が54,001であり、そのピーク強度と保持時間がその次に早いピークトップ(Y)のピーク強度の比(Xピーク強度/Yピーク強度)は1.09であった。ゲル浸透クロマトグラフィーチャートを図2に点線で示した。この水溶液をガラス基板上に成膜して得た塗膜の導電率は948S/cmであった。
【0126】
【化7】
【0127】
参考例1
ポリチオフェン(B)[上記式(10)及び上記式(11)で表される繰り返し構造を含む重合体]の合成.
500mLセパラブルフラスコに3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム 10.0g(30mmol)と水 150gを加えた。溶解後、室温下、無水塩化鉄(III) 2.94g(18.1mmol)を加えて20分ゆるやかに攪拌した。その後、過硫酸ナトリウム 14.5g(60.4mmol)と水 100gからなる混合溶液を反応液温度が30℃以下を保持し、ゆるやかに撹拌しながら滴下した。重合液中のモノマー濃度は3.6重量%であった。室温で3時間ゆるやかに攪拌したのち、反応液を800gのアセトンに滴下させ黒色のNa型のポリマーを析出させた。ポリマーを濾過・真空乾燥することで、18.0gの3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウムの粗ポリマーを得た。
【0128】
次に、前記粗ポリマー 14.5gに水を加え2重量%溶液に調製した水溶液のうち700gを、陽イオン交換樹脂Lewatit MonoPlus S100(H型)200mLを充填したカラムに通液(空間速度=1.1)することによりH型のポリマー水溶液を738g得た。更に、本ポリマー水溶液をクロスフロー式限外ろ過(ろ過器=ビバフロー200、分画分子量=5,000、透過倍率=5)により精製することにより上記式(10)及び式(11)で表される繰り返し構造を含む重合体を0.74重量%含む濃群青色水溶液を698g合成した。得られたポリチオフェン(B)の重量平均分子量(Mw)は15,371であった。また、保持時間の最も早いピークトップ(X)の分子量(Mp)が20,889であり、そのピーク強度と保持時間がその次に早いピークトップ(Y)のピーク強度比(Xピーク強度/Yピーク強度)は0.37であった。ゲル浸透クロマトグラフィーチャートを図2に実線で示した。この水溶液をガラス基板上に成膜して得た塗膜の導電率は54S/cmであった。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明のポリチオフェンは、従来(例えば、特許文献1、2)よりも高い導電性を有するため、帯電防止剤、コンデンサの固体電解質、並びに帯電防止フィルム、固体電解コンデンサの固体電解質、巻回型アルミ電解コンデンサ用のセパレータへの利用が可能である。その他、エレクトロクロミック素子、透明電極、透明導電膜、熱電変換材料、化学センサ、アクチュエータ、電磁波シールド材等への応用も期待できる。
図1
図2