(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の気相重合槽と、移送配管を介して前記第1の気相重合槽に接続された第2の気相重合槽と、を備えるポリオレフィン製造システムを用いたポリオレフィンの製造方法であって、下記工程1〜3をすべて含み、下記要件1及び2をすべて満足し、
第2の気相重合槽に、流動層、又は、噴流層が形成され、
接続位置bは、流動層の高さ以上、又は、噴流層の移動層部の高さ以上である、ポリオレフィンの製造方法。
工程1:前記第1の気相重合槽内で、オレフィンを重合してポリオレフィンを含む粒子を得る工程
工程2:前記移送配管を介して前記工程1で得られたポリオレフィンを含む粒子を前記第2の気相重合槽へ移送する工程
工程3:前記第2の気相重合槽内で、前記工程2で移送されたポリオレフィンを含む粒子の存在下、オレフィンを重合する工程
要件1:前記第1の気相重合槽と前記移送配管との接続位置aは、前記第2の気相重合槽と前記移送配管との接続位置bよりも高い。
要件2:前記第1の気相重合槽の圧力をP1とし、前記第2の気相重合槽の圧力をP2とした時に、130kPa≧P1−P2>0を満たす。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態の一例にかかる、ポリオレフィンの製造システム200のフロー図である。この製造システム200は、主として、第1の気相重合系10、第2の気相重合系20、及び、これらを接続する移送配管L5を主として備える。
【0016】
(第1の気相重合系及び第2の気相重合系)
第1の気相重合系10は、第1の気相重合槽12、及び、第1の気相重合槽12の上部から出たガスを下部に戻す循環ラインL1を主として備える。第2の気相重合系20は、第2の気相重合槽22、及び、第2の気相重合槽22の上部から出たガスを下部に戻す循環ラインL3を主として備える。
【0017】
循環ラインL1にはラインL2を介してオレフィンのガスが供給される。循環ラインL3にはラインL4を介してオレフィンのガスが供給される。また、循環ラインL1及びL3には、それぞれラインL2及びラインL4を介して、オレフィン以外に水素、及び/又は、窒素等の不活性ガスを供給することもできる。
【0018】
第1の気相重合槽12及び第2の気相重合槽22では、循環ラインL1及びL3を介してそれぞれ供給されるオレフィンを気相で重合させてポリオレフィンを含む粒子を得る。具体的には、第1の気相重合槽12及び第2の気相重合槽22内において、触媒を含むポリオレフィン粒子を、循環ラインL1及びL3を介して供給されるオレフィンのガスにより流動化又は噴流化した状態で、それぞれオレフィンの重合反応を行うことが好適である。
【0019】
例えば、第1の気相重合槽12及び第2の気相重合槽22の両方で粒子を流動化する場合、
図1に示すように、第1の気相重合槽12、及び第2の気相重合槽22の下部にガス分散板dbを設け、循環ラインL1及びL3から供給するガスをガス分散板dbの下に供給して、ガス分散板db上でポリオレフィン粒子を流動化して流動層FBを形成する。安定的に流動層FBを形成するために、特開2009−161735号公報に記載の最小流動化速度Umf以上となる量のガスを供給することが好適である。流動層FBとは、分散板より上方において粒子が流動化している部分である。
【0020】
第1の気相重合槽12及び第2の気相重合槽22の両方で粒子を噴流化する場合、
図2及び
図3に示すように、第1の気相重合槽12及び第2の気相重合槽22の下部に、下方に行くほど内径が小さくなると共に下端にガス導入用の開口opを有するコーン部材cmを設け、循環ラインL1及びL3から供給するガスをコーン部材cmの下に供給して、コーン部材cmの開口opから上方に吹き出すガスによって、コーン部材cm上でポリオレフィン粒子を噴流化させて噴流層SBを形成する。噴流層SBは、粒子がガスと共に上昇するスパウト部Z1と粒子が充填状態で下降する移動層部Z2とを有する。
【0021】
安定的に噴流層SBを形成させるために、特開2009−161735号公報に記載の最小ガス空塔速度Ums以上になる量のガスを供給することが好適である。また、噴流層での噴流層高さは、特開2009−161735号公報に記載の最大噴流層高さLsMAX以下とすることができる。槽内には、開口opの上方に板状のバッフルbf(
図2のバッフルbf参照)を設けてもよい。また、安定な噴流層を形成させる観点から、槽内に筒状バッフルを設けてもよい。この場合、噴流層の高さは筒状バッフルよりも高いことが好ましい。
【0022】
また、
図4に示すように、第1の気相重合槽12で噴流層SBを形成し、第2の気相重合槽22で流動層FBを形成しても良く、
図5に示すように、第1の気相重合槽12で流動層FBを形成し、第2の気相重合槽22で噴流層SBを形成しても良い。
なお、
図2〜
図4では、コーン部材cmが内装物として槽内に配置されているが、コーン部材cmが槽の底面を構成し、コーン部材cmの開口opにラインを介して直接ガスが供給されても良い。例えば、
図6は、
図3の態様において、コーン部材cmが気相重合槽12,22の底面を構成する場合を示す製造システム200のフロー図である。
【0023】
噴流層SB及び流動層FB内では、ポリオレフィン粒子とモノマーガスとが良好に混合する。したがって、温度均一性が高くなって、粒子の固着などが低減して好ましい。槽内に、粒子の攪拌を促進すべく、補助的に撹拌装置(図示せず)を設けてもよい。
【0024】
循環ラインL1には、サイクロン14、熱交換器16、及び、コンプレッサー18が流れの順に設けられている。循環ラインL3には、サイクロン24、熱交換器26、及び、コンプレッサー28が流れの順に設けられている。
【0025】
第1の気相重合槽12及び第2の気相重合槽22の上部から排出される未反応のオレフィンを含むガスが循環ラインL1、L3を介してサイクロン14、24に供給され、サイクロン14,24はガスから粒子を分離する。熱交換器16、26は、粒子が分離されたガスを冷却する。コンプレッサー18,28は、冷却されたガスを加圧して、第1の気相重合槽12及び第2の気相重合槽22の下部に供給する。サイクロン14、24で分離されたポリオレフィン粒子は第1の気相重合槽12、第2の気相重合槽22に戻してもよい。
【0026】
第1の気相重合槽12及び第2の気相重合槽22には、槽内のポリオレフィン粒子の量(粒子ホールドアップとも呼ばれる)を測定するセンサ35が設けられている。センサ35は、例えば、流動層または噴流層の上下の差圧を測定する差圧センサであることができる。粒子の量が増えると差圧が増えるため、差圧に基づいて粒子の量、例えば、粒子重量(ホールドアップ)、流動層または噴流層の高さ等を取得することができる。
【0027】
(移送配管)
移送配管L5は、第1の気相重合槽12と、第2の気相重合槽22とを連通する。第1の気相重合槽12と移送配管L5との接続位置aは、第2の気相重合槽22と移送配管L5との接続位置bよりも高い。接続位置aは第1の気相重合槽12の粒子の抜き出し口であり、接続位置bは第2の気相重合槽22の粒子の受け入れ口である。
【0028】
接続位置aが接続位置bよりも高いことにより、移送配管L5は第1の気相重合槽12から第2の気相重合槽22に向かって、下り勾配となる部分を少なくとも有する。ここで、移送配管L5の伸びる方向(斜め下又は下向き)と、水平面とのなす角を移送配管の傾斜角度θとする。より一層スムーズな粒子の流れの観点から、傾斜角度θはポリオレフィン粒子の安息角以上であることが好適である。ポリオレフィン粒子の安息角は典型的には30〜40°である。一方で、移送配管L5の水平面とのなす角が90度の場合、パウダーの自重落下により移送は良好になるが、反応槽が多槽の場合、最上流の反応槽の槽高さが高くなり、メンテナンスしにくくなる恐れがある。以上のことを鑑みると、移送配管L5は、θが、0°を超え、90°以下となる部分を有する。好ましくはθが30°以上、80°以下であり、より好ましくは40°以上、75°以下である。
また、移送配管L5に傾斜角度が複数ある場合において、移送配管L5のすべてのθが、0°以上、90°以下となることが好ましく、より好ましくはθは30°以上、80°以下であり、さらに好ましくは40°以上、75°以下である。
【0029】
移送配管L5は、全移送配管中に、第1の気相重合槽12から第2の気相重合槽22に向かって昇り勾配部分及び/又は水平部分があってもかまわないが、スムーズな粒子の移送の観点から、移送配管L5は、配管中に昇り勾配部分を有さないことが好ましく、水平部分も有さないことが好ましい。上り勾配部分の軸方向(斜め上向き)と、水平面とのなす角は30°以下であることが好適である。
【0030】
移送配管L5の一部が接続位置aより高い位置に存在してもよいし、移送配管L5の一部が接続位置bの高さより低い位置に存在していてもよいが、スムーズな粒子の移送の観点から、移送配管L5のすべてが接続位置a以下の高さに存在し、かつ、移送配管L5のすべてが接続位置b以上の高さに存在することが好ましい。
【0031】
接続位置aは、
図1及び
図5に示すように第1の気相重合槽12に流動層FBが形成される場合、ガス分散板db以上流動層FBの高さの1/2以下の範囲内に位置することが好ましい。接続位置aは、ガス分散板dbの直上、すなわち、ガス分散板db以上流動層の高さの1/10以下の範囲内に位置することがより好ましい。
【0032】
接続位置aは、
図2〜
図4、
図6に示すように第1の気相重合槽12に噴流層SBが形成される場合、コーン部材cmと気相重合槽の筒状部材の内周壁との接点を接点fとしたときに、以下の範囲とすることが好適である。すなわち、接続位置aは、コーン部材cmの斜面上に位置するか、コーン部材cmの接点f以上移動層部Z2の高さの1/2以下の範囲内に位置することが好ましく、コーン部材cmの斜面上またはコーン部材cmの接点f以上移動層部Z2の高さの1/10以下の範囲内に位置することがより好ましい。接続位置aは、
図3に示すように、コーン部材cmの斜面上に位置することがさらに好ましい。
【0033】
接続位置bは、
図1及び
図4に示すように第2の気相重合槽22に流動層FBが形成される場合、流動層FBの高さの1/2以上であることが好ましい。接続位置bは、
図2〜
図4に示すように第2の気相重合槽22に噴流層SBが形成される場合、噴流層SBの移動層部Z2の高さの1/2以上であることが好ましい。接続位置bは、流動層FBの高さ以上、又は、噴流層SBの移動層部Z2の高さ以上であることが最も好ましい。
【0034】
移送配管L5は、その途中にバルブ30を有することができる。バルブ30の種類は限定されないが、弁開度を調整することにより、ポリオレフィン粒子の移送量をコントロールしやすく、駆動部へのポリマー粒子のファウリングが発生し難い、Vノッチディスクタイプのボール弁が好ましい。Vノッチディスクタイプのボール弁としては、KITZ製のΛポート弁、KTM製のワンダー弁などが挙げられる。バルブサイズは、移送するポリマー流量により任意に選択可能であるが、大きなバルブの場合、開度変更に時間を要するため、10インチ以下のサイズのバルブが好ましく、6インチ以下のサイズのバルブがより好ましい。
【0035】
センサ35の信号により、第1の気相重合槽12の層内のポリオレフィン粒子の量を一定に保つように、移送配管L5のバルブ30の開度を制御することができる。
【0036】
バルブ30の開度調節は連続的であっても間欠的であってもかまわない。また、連続的であっても、バルブ周辺に貯まってしまう粒子が重合して塊化し、移送配管L5を閉塞させることを防止するために、一度完全にバルブ内及びその近傍の粒子を移送させるべく、定期的にバルブを全開にし、その後全閉にする操作を行ってもよい。
【0037】
(移送配管の長さ)
より一層スムーズな粒子の流れの観点から、移送配管L5の長さは短いほうが好ましい。移送配管L5の勾配、バルブ30及び気相重合槽でない他の槽の設置位置、及び、第1の気相重合槽12と第2の気相重合槽22の設置位置等を考慮して、移送配管L5の長さが最短となるように、移送配管L5を配置することがより好ましい。
【0038】
より安定な流動層または安定な噴流層形成の観点から、流動層FBもしくは噴流層SBの部分に移送配管L5がインサートする部分が存在しないことが好ましい。また、より安定な流動層または安定な噴流層形成の観点から、気相部に移送配管L5がインサートする部分が存在しないことが好ましい。
【0039】
(接続位置a、接続位置b、移送配管L5、バルブ30の径について)
ポリオレフィンの移送量の制御性の観点から、接続位置a、接続位置b、移送配管L5、バルブ30の径は、それらの間にレデューサー(図示せず)を設けるなどして、それぞれ径が異なっていてもかまわない。より一層スムーズな粒子の流れの観点から、接続位置a、接続位置b、移送配管L5、バルブ30の径は同一であることが好ましい。
【0040】
第2の気相重合槽22の層内のポリオレフィン粒子は、ラインL6を介して排出される。
【0041】
(製造方法)
続いて、このような製造システム200を用いたポリオレフィンの製造方法について説明する。
【0042】
(第1の気相重合槽での重合)
まず、第1の気相重合槽12内で、循環ラインL1により供給されるオレフィンを含有するガスを重合させてポリオレフィンを含む粒子を得る。ここで、第1の気相重合槽12において、重合触媒の存在下重合を行うことが好適である。第1の気相重合槽12への重合触媒の供給方法として、図示しない事前重合槽であらかじめ触媒の存在下でポリオレフィン粒子を重合して製造した、触媒を含むポリオレフィン粒子を供給してもよい。あるいは、第1の気相重合槽12への重合触媒として、予備重合触媒、または、固体触媒を直接、第1の気相重合槽12に供給してもよい。
【0043】
(ポリオレフィン製造に使用する触媒について)
本発明においてポリオレフィンを製造するために使用される触媒としては、チーグラー・ナッタ型触媒やメタロセン系触媒等が挙げられ、好ましくは、チーグラー・ナッタ型触媒である。チーグラー・ナッタ型触媒としては、例えば、マグネシウム化合物にチタン化合物を接触させて得られる固体触媒成分等のTi−Mg系触媒、マグネシウム化合物にチタン化合物を接触させて得られる固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および必要に応じて電子供与性化合物等の第3成分を含有する触媒等が挙げられ、好ましくは、マグネシウム化合物にチタン化合物を接触させて得られる固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および必要に応じて電子供与性化合物等の第3成分とを含有する触媒であり、さらに好ましくは、マグネシウム化合物にハロゲン化チタン化合物を接触させて得られる固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および電子供与性化合物を含有する触媒である。触媒として、少量のオレフィンを接触させ、予備活性化させたものを用いてもよい。
【0044】
このような触媒及び製造方法の詳細の一例は、例えば、特開2009−161735号に開示されている。
【0045】
第1の気相重合槽12の温度は、通常、0〜120℃であり、好ましくは20〜100℃であり、より好ましくは40〜100℃である。また、第1の気相重合槽12の圧力は、第1の気相重合槽12内でオレフィンが気相として存在し得る範囲内であればよく、通常、常圧〜10MPaG、好ましくは0.2〜8MPaG、より好ましくは0.5〜5MPaGである。ここで、第1の気相重合槽12の圧力をP
1とする。
【0046】
第1の気相重合槽12の上部から連続的にガスを排出し、循環ラインL1により循環すると、未反応のオレフィンモノマーを有効に利用できて好適である。消費されたモノマーは、ラインL2から補充することができる。重合に伴い槽内のポリオレフィン粒子の量が増えていく。ラインL2から補充するガスの量は、第1の気相重合槽12内の圧力が変動しないように制御される。
【0047】
(粒子の移送)
移送配管L5のバルブ30を、連続的、あるいは、間欠的に開けて、第1の気相重合槽12内のポリオレフィン粒子を第2の気相重合槽22に供給する。
【0048】
(ポリオレフィンを含む粒子の平均粒子径について)
移送されるポリオレフィンを含む粒子の平均粒子径は、どのような平均粒子径であってもかまわない。移送されるポリオレフィンを含む粒子の平均粒子径は、100μm〜5000μmが好ましく、150μm〜4000μmがより好ましい。本明細書において、ポリオレフィンを含む粒子の平均粒子径とは、レーザー回折式の粒子径分布測定装置により得られる体積基準の中位径である。
【0049】
(ポリオレフィンを含む粒子の形状について)
ポリオレフィンを含む粒子の形状はいかなる形状であってもかまわないが、より一層スムーズな粒子の流れの観点から、球形に近い形状であるほうが好ましい。
【0050】
(ポリオレフィンを含む粒子の静止かさ密度について)
移送されるポリオレフィンを含む粒子の静止かさ密度は限定されない。ポリオレフィンを含む粒子の静止かさ密度は250〜600kg/m
3が好ましく、300〜550kg/m
3がより好ましい。
【0051】
(第2の気相重合槽での重合)
第2の気相重合槽22内で、第1の気相重合槽12から供給されたポリオレフィン粒子の存在下、循環ラインL3により供給されるオレフィン含有ガスを重合させてポリオレフィンを得る。これにより、第2の気相重合槽22内の粒子は、第1の気相重合槽12から移送したポリオレフィンに加えて第2の気相重合槽22で重合したポリオレフィンを含むことになる。第2の気相重合槽22に対して、予備重合触媒、固体触媒等を別途添加してもよいが、第1の気相重合槽12から供給されるポリオレフィン粒子に含まれる触媒を用いてオレフィンの重合を行うことが好適である。
【0052】
第2の気相重合槽に供給するオレフィンの組成は、第1の気相重合槽で供給するオレフィンの組成と同じでもよいが、互いに異なってもよい。詳しくは後述する。
【0053】
第2の気相重合槽22の温度は、通常、0〜120℃であり、好ましくは20〜100℃であり、より好ましくは40〜100℃である。また、第2の気相重合槽22の圧力は、第2の気相重合槽22内でオレフィンが気相として存在し得る範囲内であればよく、通常、常圧〜10MPaG、好ましくは0.2〜8MPaG、より好ましくは0.5〜5MPaGである。ここで、第2の気相重合槽22の圧力をP
2とする。
【0054】
第2の気相重合槽22の上部から連続的にガスを排出し、循環ラインL3により循環すると、未反応のオレフィンモノマーを有効に利用できて好適である。消費されたモノマーは、ラインL4から補充することができる。重合に伴い槽内の粒子の量が増えていく。ラインL4から補充するガスの量は、第2の気相重合槽22内の圧力が変動しないように制御される。
【0055】
(第1の気相重合槽と第2の気相重合槽との圧力差)
本実施形態では、特に、130kPa≧P
1−P
2≧0を満たすように、第1の気相重合槽12の圧力P
1及び第2の気相重合槽22の圧力P
2を設定する。
第1の気相重合槽12の圧力P
1は、ラインL2から、循環ラインL1を介して、第1の気相重合槽12へ供給されるオレフィンモノマー量と、第1の気相重合槽12から系外へパージされるオレフィンモノマーを含むガスの量により調整することができる。第2の気相重合槽22の圧力P
2は、ラインL4から、循環ラインL3を介して、第2の気相重合槽22へ供給されるオレフィンモノマー量と、第2の気相重合槽22から系外へパージされるオレフィンモノマーを含むガスの量により調整することができる。
オレフィンの重合中、気相重合槽内へ新たなオレフィンモノマーを供給しなければ、重合によりオレフィンモノマーが消費された分、当該気相重合槽内の圧力が低下する。オレフィンの重合中、気相重合槽内の圧力を所定の値とするために、第1の気相重合槽12には、ラインL2から、循環ラインL1を介して、重合により消費されたオレフィンモノマー量に見合う量のオレフィンモノマーを供給し、同様に、第2の気相重合槽22には、ラインL4から、循環ラインL3を介して、重合により消費されたオレフィンモノマー量に見合う量のオレフィンモノマーを供給する。このとき、各気相重合槽内の圧力を所定の値とするために、オレフィンモノマーを含むガスを、各気相重合槽から系外へパージしてもよいし、パージしなくてもよい。
第1の気相重合槽12の圧力P
1及び第2の気相重合槽22の圧力P
2は、上記のとおり、それぞれ独立して調整することができるので、本願発明において、P
1−P
2は、各気相重合槽へ供給するオレフィンモノマーの供給量と各気相重合槽から系外へパージするオレフィンモノマーを含むガスの量を調整することにより、制御することができる。
【0056】
ここで、第1の気相重合槽12の気相部に設置した圧力計の指示値を圧力P
1とすることができる。また、第2の気相重合槽22の気相部に設置した圧力計の指示値をP
2とすることができる。気相部とは、流動層FBよりも上方、又は、噴流層SBの移動層部Z2よりも上方のことである。
【0057】
本実施形態にかかるポリオレフィンの製造方法によれば、第1の気相重合槽12と移送配管L5との接続位置aが、第2の気相重合槽22と移送配管L5との接続位置bよりも高い。したがって、重力を利用して第1の気相重合槽12のポリオレフィン粒子を第1の気相重合槽12から第2の気相重合槽22に効率よく移送することができる。したがって、P
1−P
2を130kPa以下に小さくすることができる。これにより、第2の気相重合槽22の圧力P
2が、第1の気相重合槽12の圧力P
1と比べてあまり下がらないため、第2の気相重合槽22におけるポリオレフィンの重合量を多くすることができる。
【0058】
ポリオレフィン粒子をスムーズに移送する観点から、P
1−P
2>0であることが好ましい。
また、130kPa≧P
1−P
2≧0となるようにプロセスを運転していても、何らかの外乱によりP
1及びP
2が変動することがある。したがって、本実施形態において一時的にP
1−P
2<0kPaとなることは許容される。P
1−P
2<0kPaとなる時間T1は、130kPa≧P
1−P
2≧0となる条件で粒子を移送する全時間をT0としたときに、時間T0の1/10以下であることが好適であり、時間T0の1/20以下であることがさらに好適である。
運転中の外乱によりP
1−P
2<0となって粒子の移送量が大きく減ってしまう状態が生じることを防ぐべく、定常状態においてP
1−P
2≧3kPaであることがより好適である。
【0059】
後段の気相重合槽における容積効率向上の観点から、100kPa≧P
1−P
2であることが好ましく、さらには60kPa≧P
1−P
2であることがさらに好ましい。
【0060】
(オレフィン及びポリオレフィンについて)
第1の気相重合槽12及び第2の気相重合槽22に供給するオレフィンの例は、炭素原子数1〜12のα−オレフィンからなる群より選ばれる一種以上のオレフィンである。例えば、気相重合槽にエチレンを供給するとポリエチレンを含む粒子が得られ、プロピレンを供給するとポリプロピレンを含む粒子が得られる。
【0061】
各気相重合槽に供給するオレフィンは、2種類以上のオレフィンを含んでもよい。例えば、エチレン及び炭素原子数3〜12のα−オレフィンからなる群より選ばれる一種以上のオレフィンを供給すると、エチレン−α−オレフィン共重合体を含む粒子が得られる。具体的にはα−オレフィンがプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンであると、それぞれ、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体を含む粒子が得られる。また、気相重合槽にプロピレン及び炭素原子数4〜12のα−オレフィンからなる群より選ばれる一種以上のオレフィンを供給すると、プロピレン−α−オレフィン共重合体を含む粒子が得られる。具体的には、α−オレフィンが1−ブテンであると、プロピレン−1−ブテン共重合体を含む粒子が得られる。
【0062】
オレフィンは、プロピレンを含むことが好ましい。これにより、プロピレンを単量体単位とする重合体または共重合体を含む粒子が得られる。
【0063】
さらに、気相重合槽には、前段から供給されるポリオレフィン粒子を構成する重合体または共重合体と同じ重合体または共重合体を与える組成のオレフィンモノマーを供給してもよいが、前段から供給されるポリオレフィン粒子を構成する重合体または共重合体とは異なる重合体または共重合体を与える組成のオレフィンモノマーを供給してもよい。これにより、単量体単位の種類及び比率が互いに異なる複数種のポリオレフィンを含有した、いわゆる、ヘテロファジックポリオレフィン材料の粒子が得られる。
【0064】
この場合、各オレフィンモノマーは、必ずプロピレンを含むことが好ましく、これにより、プロピレンを単量体単位として必ず含み、かつ、単量体の種類及び比率が互いに異なるプロピレン(共)重合体の混合物である、ヘテロファジックプロピレン重合材料の粒子が得られる。
【0065】
本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料の例は、
(i)プロピレン単独重合体(I−1)とプロピレン共重合体(II)とを含むプロピレン重合材料、または、
(ii)プロピレン共重合体(I−2)とプロピレン共重合体(II)とを含むプロピレン重合材料、または、
(iii)プロピレン単独重合体(I−1)とプロピレン共重合体(I−2)とプロピレン共重合体(II)とを含むプロピレン重合材料である。
【0066】
プロピレン単独重合体(I−1)とは、プロピレンに由来する単量体単位のみからなるプロピレンの単独重合体である。プロピレン共重合体(I−2)およびプロピレン共重合体(II)とは、より具体的には、以下の通りである。
【0067】
プロピレン共重合体(I−2):
プロピレンに由来する単量体単位と、エチレンおよび炭素原子数4以上、12以下のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位とを含有する共重合体であって、エチレンおよび炭素原子数4以上、12以下のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位の含有量が0.01重量%以上、15重量%未満、好ましくは0.01重量%以上、12重量%未満、より好ましくは3重量%以上、10重量%未満である(但し、プロピレン共重合体(I−2)の全重量を100重量%とする)。プロピレンに由来する単量体単位の含有量は、85重量%以上であってもよく、90重量%以上であってもよい。なお、プロピレン単独重合体(I−1)とプロピレン共重合体(I−2)とを併せて「プロピレン重合体(I)」と称する。
【0068】
プロピレン共重合体(II):
エチレンおよび炭素原子数4以上、12以下のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位と、プロピレンに由来する単量体単位とを含有する共重合体であって、エチレンおよび炭素原子数4以上、12以下のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位の含有量が15重量%以上、80重量%以下、好ましくは20重量%以上、70重量%以下、より好ましくは25重量%以上、60重量%以下である(但し、プロピレン重合体(II)の全重量を100重量%とする)。プロピレンに由来する単量体単位の含有量は、20重量%以上、85%以下であることができる。
【0069】
プロピレン共重合体(I−2)としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−1−デセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−デセン共重合体等が挙げられ、好ましくは、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体が挙げられる。
【0070】
プロピレン共重合体(II)の例も上記と同様である。
【0071】
本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料としては、例えば、(ポリプロピレン)−(エチレン−プロピレン共重合体)ヘテロファジック重合材料、(プロピレン−エチレン共重合体)−(エチレン−プロピレン共重合体)ヘテロファジック重合材料、(ポリプロピレン)−(エチレン−プロピレン共重合体)−(エチレン−プロピレンプロピレン共重合体)ヘテロファジック重合材料等が挙げられる。ここで、「(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)重合材料」との記載は、「プロピレン系重合体(I)がプロピレン単独重合体であり、プロピレン共重合体(II)がプロピレン−エチレン共重合体であるヘテロファジックプロピレン重合材料」を意味する。他の類似の表現においても同様である。
【0072】
本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料において、ヘテロファジックプロピレン重合材料に含まれるプロピレン共重合体(II)は、好ましくは32重量%以上、より好ましくは35重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上である(但し、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする)。
【0073】
本実施形態において、プロピレン共重合体(I−2)またはプロピレン共重合体(II)に用いられる、炭素原子数4以上、12以下のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチル−1−ペンテン等が挙げられ、好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、より好ましくは1−ブテンである。
【0074】
例えば、第1の気相重合槽12に供給する粒子を構成するポリオレフィン、第1の気相重合槽12で重合するポリオレフィン、第2の気相重合槽22で重合するポリオレフィンのうちの少なくとも2つ以上を互いに異ならせることにより、所望のヘテロフファジックプロピレン重合材料を製造することができる。
例えば、第1の気相重合槽に供給するオレフィンの組成と、第2の気相重合槽に供給するオレフィンの組成を互いに異ならせればよい。
【0075】
本発明は、上記実施形態に限定されず、様々な変形態様をとることができる。
【0076】
(気相重合槽間の装置の存在について)
例えば、移送配管L5は、第1の気相重合槽12と第2の気相重合槽22との間にバルブ以外に気相重合槽ではない装置を一つ以上有していてもかまわない。このような装置の例として、サイクロン等の粒子の分離装置、ホッパーなどの粒子の中間貯留装置などがあげられる。これらの装置も、バルブ30と同様に、移送配管L5とフランジ等で接続されているか、溶接等で接続されている。第1の気相重合槽12と第2の気相重合槽22との間にこれらの装置が存在した場合でも、第1の気相重合槽12と移送配管L5との接続位置aは、第2の気相重合槽22と移送配管L5との接続位置bよりも高いこと(要件1)、及び、第1の気相重合槽12の圧力P
1と、第2の気相重合槽22の圧力P
2とが、130kPa≧P
1−P
2≧0(要件2)を満たすこと、が必要である。
【0077】
第1の気相重合槽12と第2の気相重合槽22との間の気相重合槽ではない装置を装置A1とし、装置A1の圧力をP
A1としたとき、130kPa≧P
1−P
A1≧0、及び/又は、130kPa≧P
A1−P
2≧0を満たし、さらに、130kPa≧P
1−P
2≧0を満たすことが好ましい。第1の気相重合槽12と第2の気相重合槽22との間に気相重合槽でない装置がN個(ただし、Nは2以上の整数)存在する場合には、n番目の装置の圧力をP
Anとし、n−1番目の装置の圧力をP
A(n−1)としたときに、130kPa≧P
1−P
A1≧0、n=2〜Nのうち1つ以上の整数において130kPa≧P
A(n−1)−P
An≧0、及び130kPa≧P
AN−P
2≧0からなる群より選ばれる少なくとも1つの式を満たし、かつ、130kPa≧P
1−P
2≧0を満たすことが好ましい。第1の気相重合槽12と第2の気相重合槽22との間に気相重合槽でない装置がN個(ただし、Nは2以上の整数)存在する場合に130kPa≧P
1−P
A1≧0、かつ、n=2〜Nのすべてにおいて130kPa≧P
A(n−1)−P
An≧0、かつ、130kPa≧P
AN−P
2≧0を満たし、さらに130kPa≧P
1−P
2≧0を満たすことがより好ましい。
このとき、気相重合槽でない装置と移送配管L5との接続位置を接続位置cとした際に、接続位置cが接続位置aより高くてもよいし、接続位置cが接続位置bより低くてもよいが、接続位置cが、接続位置aと同じ高さ又は接続位置aより低く、接続位置cが接続位置bと同じ高さ又は接続位置bより高いことが好ましい。ただし、接続位置aは接続位置bより高いことが必要である。
【0078】
(移送配管のブロー)
移送配管L5に、通常よりも大きいポリオレフィン粒子の塊化物が流入して、スムーズな粒子の移送を妨げるようになった場合、及び、粒子の移送をよりスムーズにさせるために、移送配管L5に、移送配管L5よりも高い圧力のオレフィンガスもしくは窒素等の不活性ガスを連続的もしくは間欠的に流してもよい。その際に、一時的にP
1−P
2<0kPaとなってもよい。ただし、連続的にオレフィンガスもしくは不活性ガスを供給する際は、一時的にP
1−P
2<0kPaとなってもよいものの、定常状態では130kPa≧P
1−P
2≧0を満たす必要がある。
【0079】
(気相重合槽の数)
上記実施形態のポリオレフィンの製造システム200は気相重合槽を合計2つ有しているが、気相重合槽を3つ以上有していてもよい。この場合、これらの気相重合槽がそれぞれ移送配管L5により直列に接続され、各移送配管L5及びこの移送配管L5で接続された一対の気相重合槽の組み合わせユニットが、それぞれ、移送配管L5の接続位置a,b、及び、一対の気相重合槽のそれぞれの圧力が上述の要件1,2を満たしている必要がある。この場合、3段以上の多段の気相重合槽を有しているにもかかわらず、最後段での圧力が下がりにくくなる。各気相重合槽での重合により得られたポリオレフィン粒子は、移送配管L5により後段の気相重合槽に順次移送されることができる。
【0080】
(コンプレッサーの数)
上記実施形態では、気相重合槽毎にコンプレッサーを有しているが、一つのコンプレッサーから複数の気相重合槽にガスを供給してもよい。その場合でも、各気相重合槽の圧力は、圧力調整バルブ等の公知の手段により個別に設定できる。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例に基づいて、より具体的に説明するが、もとより本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0082】
実施例A−1〜A−15(コールド実験)
実施例A−1〜A−15では、
図1に示した製造システム200を用いた。高圧側となる第1の気相重合槽12において、循環ラインL1から供給するプロピレンガスでポリプロピレン粒子の流動層または噴流層を形成し、低圧側となる第2の気相重合槽22において循環ラインL3から供給するプロピレンガスでポリプロピレン粒子の流動層を形成しつつ、移送配管L5を介して第1の気相重合槽12から第2の気相重合槽22へとポリプロピレン粒子の連続移送を行った。
【0083】
高圧側の第1の気相重合槽12の粒子ホールドアップを約12.5kg、低圧側の第2の気相重合槽22の粒子ホールドアップを約9kgとした。粒子ホールドアップは、各気相重合槽に設けられた差圧計35で流動層の差圧を測定することにより算出した。まず、高圧側の第1の気相重合槽12の圧力P
1を約2.0MPa(ゲージ圧)とし、高圧側の第1の気相重合槽12の圧力P
1と低圧側の第2の気相重合槽22の圧力P
2との差P
1−P
2を表1に示す所定の差圧とした。次に、粒子移送量を調整するバルブ30を全閉状態から所定の開度まで開とし、高圧側の第1の気相重合槽12から低圧側の第2の気相重合槽22へポリプロピレン粒子を約2.5kg連続的に移送した。粒子移送量を調整するバルブ30を所定の開度まで開としてから全閉とするまでの時間をストップウォッチで測定した。実際に移送されたポリプロピレン粒子の移送量は低圧側の第2の気相重合槽22の差圧計35より求めた低圧側の第2の気相重合槽22の粒子ホールドアップの増加量より求めた。粒子移送速度は粒子移送量から移送にかかった時間を割ることで求めた。ポリプロピレン粒子の移送時、高圧側の第1の気相重合槽12から低圧側の第2の気相重合槽22へ粒子と共にガスも同伴されることから、高圧側の第1の気相重合槽12へは多量のプロピレンガスを供給した。一方で、低圧側の第2の気相重合槽22へはプロピレンガスを供給せず、移送時に流入してくるガスを図示しないラインからパージさせることで、気相重合槽間の差圧P
1−P
2を所定の値に維持した。その他の移送条件は以下のとおりとした。
【0084】
移送配管L5の内径:1インチ
移送配管L5の傾斜(水平面と傾斜部の軸線とのなす傾斜角度θ):60°
バルブ30のサイズ:1インチ
バルブ30の種類:Λポート弁
高圧側の気相重合槽12の圧力:2MPa(ゲージ圧)
高圧側の気相重合槽12の槽温:70℃
低圧側の気相重合槽22槽温:70℃
高圧側の気相重合槽12のガス雰囲気:プロピレン100%
低圧側の気相重合槽22のガス雰囲気:プロピレン100%
高圧側の気相重合槽12の循環ガス流量:27m
3/時間
低圧側の気相重合槽22の循環ガス流量:27m
3/時間
高圧側の気相重合槽12の内径:25cm
低圧側の気相重合槽22の内径:25cm
ポリプロピレン粒子の平均粒径:1169μm
ポリプロピレン粒子の詳細:プロピレンの単独重合体
ポリプロピレン粒子のかさ密度:378kg/m
3
【0085】
(静止かさ密度の測定)
静止かさ密度はJIS K6721に従い、かさ比重測定装置を用いて測定した。
【0086】
(ポリオレフィンを含む粒子の平均粒子径の測定)
ポリオレフィンを含む粒子の平均粒子径はレーザー回折式粒子径分布測定装置(HELOS、Sympatec社製)を用いて測定した。
【0087】
表1に各気相重合槽における噴流層又は流動層の別、高圧側の第1の気相重合槽12の圧力P
1と低圧側の第2の気相重合槽22の圧力との差圧P
1−P
2、弁開度、粒子移送速度、移送安定性を示した。移送安定性において、ポリプロピレン粒子の連続移送時にとぎれることなく移送することができれば○とした。弁開度を所定の値に固定していたとしても粒子の連続移送が途切れて移送がなされなくなった場合、または全くパウダーの移送がなされない場合を×とした。
【0088】
【表1】
【0089】
実施例B−1〜B−31と比較例B−1(コールド実験)
図7に示した装置を用いて、高圧側の第1の気相重合槽132から次工程の低圧側の第2の気相重合槽に見立てた金属容器137へとポリプロピレン粒子の連続移送を行った。
第1の気相重合槽132にはブロア131を有するガス供給ラインL101が接続され、コーン部材132aとバッフル132bとの間に噴流層を形成した。第1の気相重合槽132と金属容器137とは、傾斜角度θの移送配管L102で接続され、移送配管L102には、バルブ135及びバルブ136が設けられている。金属容器137には、金属容器138〜140がラインL103で接続され、ラインL103には圧力計145が設けられている。ラインL103には、バルブ144を介して真空ポンプ146がラインL104により接続されている。第1の気相重合槽132には、噴流層の高さを測定する差圧センサ134が設けられている。金属容器137の重量は、重量測定器142で測定される。
【0090】
まず、バルブ(ボール弁)135を全閉、バルブ(ボール弁)136を全開、バルブ144を全閉とし、ブロア131から第1の気相重合槽132にガス供給ラインL101でガスを供給して、第1の気相重合槽132内でポリプロピレン粒子の噴流層を形成した。次に、流量調整用のバルブ136の開度を所定の開度に調整した後、バルブ144を全開にし、真空ポンプ146にて第1の気相重合槽132の圧力P
1と金属容器137の圧力P
2との差圧P
1−P
2が表2に示す所定の差圧となるように、金属容器137〜140の連結体を、圧力計145を見ながら減圧後、バルブ144を全閉にした。なお、表2における差圧が正とは、第1の気相重合槽132の圧力P1が、金属容器137の圧力P2よりも高いことを意味し、負とはその逆を意味する。次に、バルブ135を任意の秒数全開にして第1の気相重合槽132の噴流化しているポリプロピレン粒子を傾斜角度θの移送配管L102を介して金属容器137に供給し、その後バルブ135を全閉にした。バルブ135を全開としていた時間を移送にかかった時間とした。金属容器137の移送前後の重量増加分に基づいて実際に金属容器137に移送されたポリプロピレン粒子の移送量を求めた。粒子移送速度は粒子移送量から移送にかかった時間を割ることで求めた。4つの金属容器137−140が連結されているため、粒子移送中に金属容器137にガスが流入しても、金属容器137の圧力P
2はほとんど上昇しなかった。
【0091】
表2に、移送配管L102の傾斜角度、バルブ136のサイズ、第1の気相重合槽132の圧力P
1と金属容器137の圧力P
2の差P
1−P
2である差圧、バルブ136の開度、粒子移送速度、粒子移送安定性を示した。その他の移送条件は以下のとおりとした。なお、バルブ136のサイズが1/2又は3/4の場合、バルブの前後にレデューサーをつけた。
【0092】
移送配管L102の内径:2インチ
移送配管L102の傾斜角度θ:45°または60°
粒子移送量を調節するバルブ136のサイズ:1/2インチまたは3/4インチまたは2インチ
粒子移送量を調整するバルブ136の種類:ボール弁
第1の気相重合槽132の圧力:大気圧
第1の気相重合槽132の槽温:常温
金属容器137の槽温:常温
第1の気相重合槽132のガス雰囲気:大気
金属容器137のガス雰囲気:大気
第1の気相重合槽132へのガス供給量:6.6m
3/時間
第1の気相重合槽132の内径:50cm
第1の気相重合槽132の粒子ホールドアップ:50kg
ポリプロピレン粒子の平均粒径:1169μm
ポリプロピレンの種類:プロピレンの単独重合体
ポリプロピレン粒子のかさ密度:378kg/m
3
【0093】
【表2】
【0094】
実施例Cと比較例C(ヘテロファジックプロピレン重合材料の重合実験)
(1−1a)予備重合
内容積3Lの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気処理した。n−ヘキサン1.3L、トリエチルアルミニウム20ミリモル、t−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン0.4ミリモルを収容させた。その中に固体触媒成分28gを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン28gを約10分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積260Lの攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタン170Lを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0095】
(1−1b)本重合
バルク重合リアクターAと3つの気相重合反応器(多段気相重合リアクターB,流動層型リアクターC,流動層型リアクターD)とをこの順に直列に配置した製造システムにおいて、下記重合工程Iにおいてプロピレン単独重合体(I−1)を製造し、生成ポリマーを失活することなく後段に移送し、下記重合工程IIにおいてプロピレン単独重合体(I−1)を製造し、生成ポリマーを失活することなく後段に移送し、下記重合工程III−1および下記重合工程III−2においてエチレン−プロピレン共重合体(II)を製造した。
【0096】
[重合工程I(オレフィン事前重合反応装置を用いたプロピレンの重合)
攪拌機付きSUS304製ベッセルタイプのバルク重合リアクターAを用いて、プロピレン及びエチレンのバルク重合を行い、プロピレン単独重合体(I−1)を製造した。すなわち、プロピレン、水素、トリエチルアルミニウム、t−ブチル−n−プロピルジメトキシシランおよび(1−1a)で製造した予備重合触媒成分のスラリーをバルク重合リアクターAに連続的に供給し、重合反応を行い、プロピレン単独重合体(I−1)を主成分とするポリオレフィン粒子を得た。反応条件は以下の通りとした。
【0097】
重合温度:55℃、
攪拌速度:150rpm、
リアクターの液レベル:18L、
プロピレンの供給量:25kg/時間、
水素の供給量:82.5NL/時間、
トリエチルアルミニウムの供給量:26.6ミリモル/時間(実施例C)、29ミリモル/時間(比較例C)、
t−ブチル−n−プロピルジメトキシシランの供給量:1.32ミリモル/時間(実施例C)、1.39ミリモル/時間(比較例C)、
予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):1.53g/時間(実施例C)、1.49g/時間(比較例C)、
重合圧力:3.45MPa(ゲージ圧)。
【0098】
[重合工程II(多段気相重合反応装置によるプロピレン単独重合(気相重合))]
鉛直方向に6段の反応領域を有し、その内最上段が流動層であり、残りの5段が噴流層である多段気相重合リアクターBを多段気相重合反応装置として準備した。前段のバルク重合リアクターAから上記多段気相重合リアクターBの最上段である流動層に、重合工程Iで得たポリオレフィン粒子および液状プロピレンを含むスラリーを失活させることなく間欠的に供給した。
【0099】
多段気相重合リアクターB内でのポリオレフィン粒子の段間移送は、ダブル弁方式により行った。この移送手段は、上段の反応領域と下段の反応領域を1インチサイズの配管で接続し、配管に二つの開閉弁を設け、下側の弁を閉じた状態で上側の弁を開け、上段の反応領域から弁の間にポリオレフィン粒子を溜め込み、その後、上側の弁を閉じた後に下側の弁を開けることで下段の反応領域にポリプロピレン粒子を移送するものである。
【0100】
上記構成の多段気相重合リアクターBの下部からプロピレンおよび水素を連続的に供給した。これにより、各反応領域にそれぞれ流動層または噴流層を形成させ、ガス組成および圧力を一定に保つようプロピレン及び水素の供給量をコントロールし、過剰ガスをパージしながらモノマーの重合をさらに行ってプロピレン単独重合体(I−1)を製造し、プロピレン単独重合体(I−1)を主成分とするポリオレフィン粒子を得た。反応条件は以下の通りとした。
【0101】
重合温度:70℃、
重合圧力:2.00MPa(ゲージ圧)
【0102】
[重合工程III−1(流動層型リアクターCによるプロピレン−エチレン共重合(気相重合))]
前段の多段気相重合リアクターBの最下段の流動層から排出されるポリオレフィン粒子を流動層型オレフィン重合反応装置としての流動層型リアクターCにΛポートバルブを有する移送配管により間欠的に供給した。前段の多段気相重合リアクターBの最下段の流動層とこの移送配管との接続位置は、流動層型リアクターCとこの移送配管との接続位置よりも高かった。移送配管の傾斜角度θは60°であった。重合工程III−1の流動層型リアクターCは鉛直方向に1段の流動層の反応領域を有していた。
実施例Cにおける多段気相重合リアクターBの圧力2.00MPa、流動層型リアクターCの圧力は1.97MPaであるから、P
1−P
2=0.03MPaとなった。比較例Cにおける多段気相重合リアクターBの圧力2.00MPa、流動層型リアクターCの圧力は1.60MPaであるから、P
1−P
2=0.40MPaとなった。バルブの開度調節により、前段の多段気相重合リアクターBの最下段の流動層から流動層型リアクターCにポリオレフィン粒子を移送した。
【0103】
上記構成の流動層型リアクターCにプロピレン、エチレンおよび水素を連続的に供給し、ガス組成および圧力を一定に保つようにガス供給量の調整および過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンとエチレンとの共重合を行ってエチレン−プロピレン共重合体(II)の製造を行い、プロピレン単独重合体(I−1)に加えてエチレン−プロピレン共重合体(II)を含むヘテロファジックプロピレン重合材料の粒子を得た。反応条件は以下の通りとした。
【0104】
重合温度:70℃、
実施例Cの重合圧力:1.97MPa(ゲージ圧)
比較例Cの重合圧力:1.60MPa(ゲージ圧)
【0105】
実施例Cの流動層型リアクターC内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が25.3モル%であった。なお、リアクター内ガスの濃度比は、プロピレン濃度、エチレン濃度より求められる。比較例Cの流動層型リアクターC内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が24.5モル%であった。
【0106】
[重合工程III−2(流動層型リアクターDによるプロピレン−エチレン共重合(気相重合))]
前段の流動層型リアクターCから排出されるポリオレフィン粒子を流動層型オレフィン重合反応装置としての流動層型リアクターDにΛポートバルブを有する移送配管により間欠的に供給した。前段の流動層型リアクターCとこの移送配管との接続位置は、流動層型リアクターDとこの移送配管との接続位置よりも高かった。移送配管の傾斜角度θは60°であった。重合工程III−2の流動層型リアクターCは鉛直方向に1段の流動層の反応領域を有していた。
【0107】
実施例Cにおける流動層型リアクターCの圧力は1.97MPa、流動層型リアクターDの圧力は1.93MPaであるから、P
1−P
2=0.04MPaとなった。比較例Cにおける流動層型リアクターCの圧力は1.60MPa、流動層型リアクターDの圧力は1.20MPaであるから、P
1−P
2=0.40MPaとなった。バルブの開度調節により、前段の流動層型リアクターCから流動層型リアクターDにポリオレフィン粒子を移送した。
【0108】
以下の条件以外は、上記重合工程III−1と同様の方法でプロピレンとエチレンとの共重合を行ってエチレン−プロピレン共重合体(II)のさらなる製造を行い、プロピレン単独重合体(I−1)及びエチレン−プロピレン共重合体(II)を含むヘテロファジックプロピレン重合材料の粒子を得た。
【0109】
重合温度:70℃、
実施例Cの重合圧力:1.93MPa(ゲージ圧)
比較例Cの重合圧力:1.20MPa(ゲージ圧)
【0110】
実施例Cでは流動層型リアクターDにおいてはリアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が25.4モル%であった。
比較例Cでは流動層型リアクターDにおいてはリアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(プロピレン+エチレン)が24.1モル%であった。
【0111】
(得られたヘテロファジックプロピレン重合材料中のエチレン単位含有量(単位:重量%))
高分子ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店刊)の第619頁に記載のIRスペクトル測定に準拠し、IRスペクトル法によって得られたヘテロファジックプロピレン重合材料中のエチレン単位含有量を求めた。なお、ここでいう「エチレン単位」とはエチレン由来の構造単位を意味する。
【0112】
ヘテロファジックプロピレン重合材料に含まれるエチレン−プロピレン共重合体(II)中のエチレンに由来する単量体単位の含有量を、以下の式により求めた。
ヘテロファジックプロピレン重合材料に含まれるエチレン−プロピレン共重合体(II)中のエチレンに由来する単量体単位の含有量=(ヘテロファジックプロピレン重合材料中のエチレン単位含有量)/(全重合体生産量に占める重合工程(III-1+III-2)で生産される重合体の割合)×100
【0113】
(容積効率について)
ここでは、全ての気相重合槽(重合工程IIで用いる多段気相重合リアクターB、重合工程III−1で用いる流動層型リアクターC、及び、重合工程III−2で用いる流動層型リアクターD)の合計容積に対する、全ての気相重合槽におけるポリオレフィンの合計生産量を表す指標として「容積効率(II+III−1+III−2)」を求めた。また、重合工程III−1で用いる流動層型リアクターC及び重合工程III−2で用いる流動層型リアクターDの気相重合槽の合計容積に対する、重合工程III−1及び重合工程III−2でのポリオレフィンの生産量を表す指標として、「容積効率(III−1+III−2)」を求めた。本明細書では、容積効率を求めるにあたり、気相重合槽の容積に相当する値として、粒子ホールドアップ質量を用いた。
容積効率(II+III−1+III−2)は、以下の方法により算出されるPP/CAT(II+III−1+III−2)を、重合工程IIと重合工程III−1と重合工程III−2の粒子ホールドアップ質量の合計で割った値である。
容積効率(III−1+III−2)は、以下の方法により算出されるPP/CAT(III−1+III−2)を、重合工程III−1及びIII−2の粒子ホールドアップ質量の合計で割った値である。
【0114】
(PP/CATについて)
PP/CAT(II+III−1+III−2)とは、重合工程IIと重合工程III−1と重合工程III−2の時間当たりのポリオレフィン合計生産量を、固体触媒供給量で割った値である。PP/CAT(II+III−1+III−2)は、固体触媒供給量当たりの全気相重合工程(重合工程II、III−1及びIII−2)の時間当たりの生産量を示している。
PP/CAT(III−1+III−2)とは、重合工程III−1及びIII−2の時間当たりのポリオレフィン合計生産量を、固体触媒供給量で割った値である。PP/CAT(III−1+III−2)は固体触媒供給量当たりの重合工程III−1及びIII−2の時間当たりの生産量を示している。
【0115】
実施例C、比較例Cの重合条件及び生産量等を表3に示した。
【0116】
【表3】
【0117】
上記より、実施例Cでは、比較例Cに比べて容積効率(II+III−1+III−2)および容積効率(III−1+III−2)が大きく、生産効率がよい。