(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のシール方法は、搬送方向に搬送される連続シート部材に厚さ方向からエネルギーを付与して、連続シート部材の腹側部と背側部とを融着している。そのため、搬送方向へ搬送されている連続シート部材の動きを阻害しないように、挟持部材間に連続シート部材が挟持される短い時間でエネルギーを連続シート部材に付与して、短い時間で融着を完了させている。
【0006】
ここで、各接合部には、長さ方向(横断方向)に沿って複数の融着された箇所、すなわち融着部が形成される。各融着部は、挟持部材のシール対向面に設けられた融着用の凸部により連続シート部材が押圧されつつ融着されたコア部と、凸部の周囲にコア部を囲むように連続シート部材が融着された外周部と、を有する。そして、融着部の係止強度(引き剥がし強度又は接合強度)は、主に、連続シート部材を厚さ方向から見たときの、融着部の面積の大きさに概ね依存し、したがってコア部及び外周部の面積に概ね依存する。係止強度は、コア部や外周部の面積が大きいほうが強くなる。そして、外周部の面積は、外周部の幅(厚さ)やコア部の外周の長さが大きいほうが大きくなる。
【0007】
このとき、複数の凸部を全て同じ形状にすると、シール対向面に垂直な方向から見た複数の凸部の面積は同じになる。その場合、複数の凸部で形成された複数の融着部における複数のコア部の面積は同じになるので、複数の融着部の係止強度は同じになるはずである。しかし、発明者の検討により、複数の融着部の係止強度は同じにならないことが判明した。具体的には、融着部の形成時に、第1挟持部材の複数の凸部のうち、初期に連続シート部材に当接する凸部により形成される融着部で、係止強度が相対的に低くなる。すなわち、下流側の複数の凸部における先頭付近の凸部に当接した連続シート部材の融着部で、係止強度が相対的に低くなる。一方、終期に連続シート部材に当接する凸部により形成される融着部で、係止強度が相対的に高くなる。すなわち上流側の複数の凸部における最後尾付近の凸部に当接した連続シート部材の融着部で、係止強度が相対的に高くなる。
【0008】
その現象が生じる理由は、発明者の検討によれば、以下のような理由が考えられる。
すなわち、特許文献1のシール方法は、連続シート部材を搬送方向に搬送しながら挟持部材で挟持してシールする形成工程の直前に、腹側連続部分と背側連続部分とを重ね合わせる重ね工程を備える。その重ね工程では、例えば腹側連続部分に背側連続部分を重ね合わせる場合、背側連続部分は、一時的に搬送方向に対して斜めに移動するため、腹側連続部分よりも長い距離を移動することになる。そのため、重ね工程の直後では、搬送方向における背側連続部分のテンションが腹側連続部分のテンションよりも高くなっており、両連続部分の間でテンションが相違している。その状態で、連続シート部材をシールする形成工程を開始すると、下流側の複数の凸部における先頭付近の凸部に当接した連続シート部材が融着されるとき、強く引っ張られた背側連続部分と緩んだ腹側連続部分とが融着される。そのため、融着の時間が短いと、融着部が十分に形成できず、係止強度が低下する。一方、上流側の複数の凸部における最後尾付近の凸部に当接した連続シート部材が融着されるとき、連続シート部材に既に下流側の複数の凸部で形成された融着部が存在するので、腹側連続部分と背側連続部分との間でのテンションの相違は小さくなる。そのため、融着の時間が短くても、融着部は十分に形成でき、係止強度が高くなる。
【0009】
このように、下流側の複数の凸部で形成される融着部と上流側の複数の凸部で形成される融着部との係止強度が相違すると、吸収性物品の一対の接合部における係止強度の左右のバランスが悪くなる。そうなると、吸収性物品の使用後に、一対の接合部で腹側部と背側部とを引き剥がして取り外すとき、必要な力が異なることになり、製品の性能的に何ら問題がないにもかかわらず、不良品との印象を使用者に与えるおそれがある。
【0010】
本発明は、吸収性物品の製造方法において、腹側連続部分と背側連続部分とを重ねた後に、隣接する二つの吸収性物品に跨って一対の接合部(又は融着部)を形成するとき、一対の接合部の係止強度の相違を抑制することが可能な吸収性物品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の吸収性物品の製造方法は(1)腹側部と背側部とを備え、前記腹側部及び前記背側部の幅方向の両端部同士が、長さ方向に延びる一対の接合部で接合されている吸収性物品の製造方法であって、複数の腹側部が前記幅方向に連結された腹側連続部分と、複数の背側部が前記幅方向に連結された背側連続部分とを、前記長さ方向の両側に備える連続シート部材を、前記幅方向が搬送方向に沿い、前記長さ方向が横断方向に沿うように、前記搬送方向に搬送しつつ、前記腹側連続部分及び前記背側連続部分の一方を他方に重ねて、前記腹側部と前記背側部とが重なった、前記吸収性物品の前駆体を連続的に形成する重ね工程と、前記搬送方向に隣接する二つの前記前駆体における下流側の前駆体の上流側端部において、前記横断方向に並ぶ複数の凸部を含む下流側凸部列及び上流側凸部列を有する第1挟持部材における前記下流側凸部列と第2挟持部材とにより、前記腹側部と前記背側部とを挟持して融着し、上流側の前駆体の下流側端部において、前記第1挟持部材における前記上流側凸部列と前記第2挟持部材とにより、前記腹側部と前記背側部とを挟持して融着して、前記隣接する二つの前駆体に跨って前記一対の接合部を形成する接合工程と、を備え、前記接合工程で得た前記一対の接合部は、前記隣接する二つの前駆体の境界線に対して非対称であり、前記下流側の前駆体の前記上流側端部の接合部は、前記横断方向に並ぶ複数の仮留め融着部と、前記複数の仮留め融着部より上流側に位置し、前記横断方向に並ぶ複数の本留め融着部と、を含み、前記上流側の前駆体の前記下流側端部の接合部は、前記横断方向に並ぶ複数の他の本留め融着部を含み、前記仮留め融着部は前記本留め融着部及び前記他の本留め融着部よりも面積が小さい、製造方法。
【0012】
本製造方法では、第1挟持部材の凸部(この場合、下流側凸部列)に先に当接する、下流側の前駆体の上流側端部にて、まず、仮留め融着部で連続シート部材の腹側部と背側部とを仮留めする。それにより、テンションの基点を仮留め融着部にでき、すなわち腹側連続部分と背側連続部分との重ね工程の位置よりも下流側にできる。それにより、仮留め融着部よりも下流側にて、連続シート部材の腹側部のテンションと背側部のテンションとの相違を抑制できる。したがってその後に、連続シート部材の腹側部と背側部とを本留め融着部で本留めするとき、腹側部と背側部のテンションの相違を抑制した状態で本留めできる。その結果、仮留め融着部を設けない場合と比較して、本留め融着部の係止強度を高くできる。それにより、本留め融着部の係止強度と他の本留め融着部の係止強度との相違を抑制して、両者の係止強度をバランスさせることができる。なお、仮留め融着部は、形成工程でのテンションの調整用に設けられるので、係止強度を高くする必要はなく、それゆえ仮留め融着部の面積は本留め融着部や他の仮留め融着部の面積よりも小さくでき、係止強度を小さくできる。よって、例えば、本留め融着部の係止強度と他の本留め融着部の係止強度とをバランスさせる場合には、仮留め融着部の係止強度の影響を低く抑えることができる。以上により、吸収性物品における一対の接合部の係止強度の相違を抑制できる。
【0013】
本発明の吸収性物品の製造方法は、(2)前記複数の本留め融着部の各々の形状は、前記搬送方向の長さの方が、前記横断方向の長さよりも長い、上記(1)に記載の製造方法、でもよい。
本製造方法では、本留め融着部の形状が搬送方向に縦長であり、すなわち下流側凸部列のうちの本留め融着部用の凸部の形状が搬送方向に縦長である。そのため、接合工程において、本留め融着部用の凸部が連続シート部材に接触する時間を長くすることができ、よって本留め融着部を形成する時間を長くできる。それにより、本留め融着部の係止強度をより高くすることができ、本留め融着部の係止強度と他の本留め融着部の係止強度との相違を抑制して、両者の係止強度をよりバランスさせることができる。
【0014】
本発明の吸収性物品の製造方法は、(3)前記複数の仮留め融着部の各々と前記複数の本留め融着部の各々とは前記横断方向の位置が互いにずれている、上記(1)又は(2)に記載の製造方法、であってもよい。
腹側連続部分と背側連続部分とが重ね合わされた連続シート部材は、第2挟持部材と第1挟持部材とに挟持された状態で融着される。そのとき、第2挟持部材と連続シート部材との間での相対速度差によって、連続シート部材は、相対的に第1挟持部材により第2挟持部材の表面に押し付けられつつ、その表面を擦るように通過する。その摩擦により、その表面には継続的に摩耗が進行する。ここで、仮留め融着部及び本留め融着部の少なくとも一部は、横断方向の同じ位置に存在すると、搬送方向から見て重なる位置に存在することになる。その場合、第2挟持部材の表面の横断方向の同じ位置を、仮留め融着部用の凸部で押し付けられた連続シート部材が通過し、更に、本留め融着部用の凸部で押し付けられた連続シート部材が通過することになる。そうなると、第2挟持部材の表面における同じ位置での摩耗が増加し、その表面の一部に窪みが生じて、例えば本留め融着部の融着状態が不安定になるおそれがある。そこで、本製造方法では、仮留め融着部と本留め融着部の横断方向の位置を互いにずらしている。その結果、第2挟持部材の表面の横断方向の所定の位置を通過するのは、仮留め融着部用の凸部で押し付けられた連続シート部材及び本留め融着部用の凸部で押し付けられた連続シート部材のいずれか一方になる。したがって、第2挟持部材の表面における所定の位置での摩耗の増加を抑制でき、第2挟持部材と本留め融着部用の凸部などとの対応状態を適切に維持できる。それゆえ、第2挟持部材の表面の一部に窪みが生じて本留め融着部などの融着状態が不安定になる事態を抑制でき、融着状態を安定的に保つことが出来る。それにより、本留め融着部の係止強度を高く維持することができ、本留め融着部の係止強度と他の本留め融着部の係止強度との相違を抑制して、両者の係止強度をバランスさせることができる。
【0015】
本発明の吸収性物品の製造方法は、(4)前記複数の本留め融着部の各々の外周の長さは、前記複数の他の本留め融着部の各々の外周の長さよりも長い、上記(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の製造方法、であってもよい。
隣接する二つの前駆体に跨って形成された一対の接合部では、下流側の前駆体の上流側端部に形成される本留め融着部と、上流側の前駆体の下流側端部に形成される他の本留め融着部とは、同一面積ならば、本留め融着部の方が他の本留め融着部よりも係止強度が低くなる。その理由は、本留め融着部が連続シート部材における相対的に先に凸部(この場合、下流側凸部列)に当接する部分に形成される一方、他の本留め融着部が連続シート部材における相対的に後に凸部(この場合、上流側凸部列)に当接する部分に形成されるからである。そこで、本製造方法では、本留め融着部の外周の長さが、他の本留め融着部の外周の長さよりも長くなるように、各本留め融着部を形成にする。すなわち、本留め融着部用の凸部の外周の長さが、他の本留め融着部用の凸部の外周の長さよりも長くなるように第1狭持部材を形成する。それにより、本留め融着部の面積を相対的に大きくし、係止強度をより大きくすることができる。したがって、本留め融着部の係止強度と他の本留め融着部の係止強度との相違を抑制して、両者の係止強度をバランスさせることができる。
【0016】
本発明の吸収性物品の製造方法は(5)前記上流側の前駆体における前記下流側端部の接合部は、前記複数の他の本留め融着部よりも下流側に位置し、前記横断方向に並ぶ複数の他の仮留め融着部を更に含み、前記他の仮留め融着部の面積は、前記他の本留め融着部の面積よりも小さい、上記(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の製造方法でもよい。
本製造方法では、連続シート部材において、下流側の前駆体における上流側端部だけでなく、上流側の前駆体における下流側端部でも、連続シート部材の腹側部と背側部とを、まず他の仮留め融着部で仮留めし、その後に他の本留め融着部で本留めする。したがって、仮留めにより、テンションの基点を他の仮留め融着部にできるので、連続シート部材の腹側部のテンションと背側部のテンションとの相違をより抑制した状態で、連続シート部材の腹側部と背側部とを本留めすることができる。それにより、上流側の前駆体における下流側端部においても、接合部の係止強度を向上できる。
【0017】
本発明の吸収性物品の製造方法は、(6)前記下流側凸部列及び前記上流側凸部列は、前記横断方向の一方側の端部同士の距離が、他方側の端部同士の距離よりも短い、上記(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の製造方法、であってもよい。
本製造方法では、第1狭持部材の下流側凸部列及び前記上流側凸部列が、搬送方向及び横断方向に垂直な高さ方向から見て略Vの字状(略末広がり状、略逆八の字状)に形成される。そのため接合工程中に、連続シート部材を横断方向に対し、第1挟持部材と第2挟持部材とでほぼ常に押さえることができ、連続シート部材を横断方向にずれ難くでき、安定的に一対の接合部を形成できる。したがって本留め融着部の係止強度と他の本留め融着部の係止強度との相違を抑制して、両者の係止強度をよりバランスさせることができる。
【0018】
本発明の吸収性物品の製造方法は(7)前記横断方向の一方側は前記吸収性物品のレッグ側であり、前記横断方向の他方側は前記吸収性物品のウエスト側であり、前記下流側凸部列及び前記上流側凸部列における、前記横断方向の前記複数の凸部の密度は、前記吸収性物品のレッグ側の方がウエスト側よりも高い、上記(6)に記載の製造方法でもよい。
下流側凸部列及び前記上流側凸部列における横断方向の端部同士の距離が短い側では、下流側凸部列と上流側凸部列の搬送方向の凸部間の距離が近い。そのため、第1挟持部材が連続シート部材に付与するためのエネルギーが下流側凸部列と上流側凸部列とに分散されて、凸部一個当たりのエネルギーが少なくなり、融着部一個当たりの係止強度が低下するおそれがある。そこで、本製造方法では、横断方向の端部同士の距離が短い側において、複数の凸部の密度を高くしている。それにより、凸部一個当たりのエネルギーが少なくても、凸部の密度を高め、凸部の数を増やすことで、全体として十分な係止強度が得られるようにしている。それにより下流側凸部列内及び前記上流側凸部列内における係止強度の相違を抑制することができる共に、本留め融着部の係止強度と他の本留め融着部の係止強度との相違を抑制して、両者の係止強度をバランスさせることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、吸収性物品の製造方法において、腹側連続部分と背側連続部分とを重ねた後に、隣接する二つの吸収性物品に跨って一対の接合部(又は融着部)を形成するとき、一対の接合部の係止強度の相違を抑制することが可能とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る吸収性物品の製造方法について、パンツ型使い捨ておむつ(以下、単に「使い捨ておむつ」ともいう。)を吸収性物品の例として説明する。ただし、本発明は、その例に限定されるものでは無く、本発明の主題の範囲を逸脱しない限り、種々の吸収性物品に対して適用可能である。そのような吸収性物品としては、例えば、いわゆる2ピースタイプの使い捨ておむつなどが挙げられる。
【0022】
まず、本実施の形態に係る使い捨ておむつ1について説明する。
図1及び
図2は本実施の形態に係る使い捨ておむつ1の構成例を示す図である。ただし、
図1は使い捨ておむつ1を使用するときの状態を示す斜視図であり、
図2は使い捨ておむつ1を展開した状態を示す平面図である。使い捨ておむつ1は、
図2に示す状態において、互いに直行する長さ方向Lと、幅方向Wと、厚さ方向Tとを有し、幅方向Wの中心を通り長さ方向Lに延びる長さ方向中心線CLと、長さ方向Lの中心を通り幅方向Wに延びる幅方向中心線CWとを有する。また、長さ方向中心線CLに向かう方向及び遠ざかる方向を、それぞれ幅方向Wの内側の方向及び外側の方向とする。幅方向中心線CWに向かう方向及び遠ざかる方向を、それぞれ長さ方向Lの内側の方向及び外側の方向とする。長さ方向L及び幅方向Wを含む平面面上に置いた使い捨ておむつ1を厚さ方向Tの上方側から見ることを「平面視」といい、平面視で把握される形状を「平面形状」という。「肌側」及び「非肌側」とは使い捨ておむつ1の装着時に、使い捨ておむつ1の厚さ方向Tにおいて相対的に装着者の肌面に近い側及び肌面から遠い側をそれぞれ意味する。これらの方向などは、
図1の使い捨ておむつ1を使用する前の平坦な状態、すなわち
図2の使い捨ておむつ1を幅方向中心線CWに沿う折り線で折り畳んだ状態においても同様に適用される。
【0023】
使い捨ておむつ1は、腹側部11と、背側部13と、腹側部11と背側部13との間の中間部12とを備えたパンツ型のおむつである。腹側部11は、使い捨ておむつ1のうちの装着者の腹部に当てられる部分である。中間部12は、使い捨ておむつ1のうちの装着者の股間部に当てられる部分である。背側部13は、使い捨ておむつ1のうちの装着者の尻部及び/又は背部に当てられる部分である。腹側部11の幅方向Wの両端部11a、11bと背側部13の幅方向Wの両端部13a、13bとは、それぞれ長さ方向Lに沿って厚さ方向Tに重なり合った状態で、一対の接合部14a、14bで互いに接合される。また、使い捨ておむつ1では、腹側部11における長さ方向Lの中間部12とは反対側の端部11eと、背側部13における長さ方向Lの中間部12とは反対側の端部13eとにより、ウエスト開口部WOが形成される。また、使い捨ておむつ1では、中間部12の幅方向Wの両側部12a、12bにより一対のレッグ開口部LO、LOが形成される。
【0024】
使い捨ておむつ1は、吸収性本体10を備える。吸収性本体10は、液透過性の表面シート2と、液不透過性の裏面シート3と、表面シート2と裏面シート3との間に位置する吸収体4と、を含む。表面シート2としては、例えば液透過性の不織布や織布、液透過孔が形成された合成樹脂フィルム、これらの複合シートなどが挙げられる。裏面シート3としては、例えば液不透過性の不織布や合成樹脂フィルム、これらの複合シート、SMS不織布などが挙げられる。吸収体4としては、例えばパルプ繊維、合成繊維、吸収性ポリマなどが挙げられる。吸収体4と表面シート2及び裏面シート3とはそれぞれ接着剤により接合され、表面シート2と裏面シート3とはそれらの周縁部分にて接着剤により接合される。接着剤は、公知の材料、例えばホットメルト接着剤を使用できる。
【0025】
使い捨ておむつ1は、更に、液不透過性のカバーシート5を備える。本実施の形態では、カバーシート5は、互いに厚さ方向Tに積層され、接着剤等で接合された、肌側に位置するカバーシート5aと非肌側に位置するカバーシート5bとを含む。また、本実施の形態では、カバーシート5bの長さ方向Lの両端部は、カバーシート5aの長さ方向Lの両端部を覆うように、肌側に折り返されている。腹側部11及び背側部13における折り返しの位置のカバーシート5b、5bが、それぞれ腹側部11の端部11e及び背側部13の端部13eを構成する。カバーシート5の肌側の表面には、吸収性本体10が表面シート2を肌側に向けて配置される。使い捨ておむつ1では、カバーシート5bにより使い捨ておむつ1の非肌側の表面、すなわち外面が形成され、表面シート2並びに端部11e及び端部13eのカバーシート5bにより使い捨ておむつ1の肌側の表面、すなわち内面が形成される。カバーシート5の材料としては、例えば、液不透過性の不織布や合成樹脂フィルム、これらの複合シート、SB不織布、SMS不織布など、任意の液不透過性シートが挙げられる。カバーシート5の材料としては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン系材料が挙げられる。カバーシート5の坪量としては、例えば5〜100g/m
2であり、好ましくは10〜50g/m
2である。カバーシート5の厚さ方向Tの寸法(厚み)としては、例えば0.2〜5mmであり、好ましくは0.2〜2mmである。ただし、カバーシート5は一枚でもよいし、折り返されていなくてもよい。
【0026】
使い捨ておむつ1は、液不透過性の一対の防漏壁6a、6bと、弾性部材8(8a、8b、8c、8d、8e)と、を更に備えてもよい。一対の防漏壁6a、6bは、表面シート2の幅方向Wの両側に、長さ方向Lに沿って配置される。弾性部材8a及び弾性部材8bは、それぞれ腹側部11及び背側部13におけるカバーシート5aとカバーシート5bとの間に、幅方向Wに延び、長さ方向Lに間隔を空けて配置され、狭持される。弾性部材8a、8bは、ウエスト開口部WOを伸縮させる。弾性部材8cは、中間部12における背側部13側の部分の幅方向Wの両端部では概ね長さ方向Lに沿うように、かつ中間部12における中央部分では幅方向Wに沿うようにして連続的に配置される。弾性部材8cは、一対のレッグ開口部LO、LOをそれぞれ伸縮させる。一対の防漏壁6a、6bの幅方向Wの内側の端部には、それぞれ長さ方向Lに延びる弾性部材8d及び弾性部材8eが配置される。弾性部材8d、8eは、それぞれ防漏壁6a、6bを伸縮させる。弾性部材8としては例えば糸ゴムが挙げられる。
【0027】
次に、一対の接合部14a、14bの各々の構成について説明する。
【0028】
図3は、使い捨ておむつ1における一対の接合部14a、14bの各々の構成例を模式的に示す部分拡大平面図である。
図3は、
図1の使い捨ておむつ1の接合部14a、14bを背側部13の側から見た図である。接合部14aは背側部13の側から見て右側に位置し、接合部14bは背側部13の側から見て左側に位置する。なお、
図3において、使い捨ておむつ1における幅方向Wの略中央の部分については記載を省略する。接合部14aは、腹側部11の幅方向Wの端部11aと背側部13の幅方向Wの端部13aとが、長さ方向Lに沿って厚さ方向Tに重なり合い、少なくとも複数の箇所で融着され、接合されることで、形成される。同様に、接合部14bは、腹側部11の幅方向Wの端部11bと背側部13の幅方向Wの端部13bとが、長さ方向Lに沿って厚さ方向Tに重なり合い、複数の箇所で融着され、接合されることで、形成される。接合部14a、14bの各々の長さ方向L及び幅方向Wの寸法は、特に制限はないが、例えばそれぞれ50〜250mm及び3〜20mmが挙げられる。
【0029】
接合部14a、14bは、それぞれ融着された箇所、すなわち融着部が複数個、長さ方向Lに沿って間隔を空けて列状に並んで配置された接合列20D、20Uを備える。したがって、接合列20Dは端部11aと端部13aとを接合し、接合列20Uは端部11bと端部13bとを接合する。接合列20Dと接合列20Uとは全体的な配置は、長さ方向中心線CLに対して対称である。ただし、それぞれの複数の融着部の配置を考慮すると、接合列20Dと接合列20Uとは長さ方向中心線CLに対して非対称であり、よって一対の接合部14a、14bは長さ方向中心線CLに対して非対称である。
【0030】
接合部14a、14bは、長さ方向Lにおいて、それぞれウエスト開口部WO側の端部を含むウエスト側端部領域21D、21Uと、レッグ開口部LO側の端部を含むレッグ側端部領域23D、23Uと、ウエスト側端部領域21D、21Uとレッグ側端部領域23D、23Uとの間の中央領域22D、22Uと、を有する。ウエスト側端部領域21D、21U及びレッグ側端部領域23D、23Uは、長さ方向Lにおいて、それぞれウエスト開口部WO側及びレッグ開口部LO側の端部から接合部の1/8〜1/3の範囲の領域であり、中央領域22D、22Uは、残りの領域である。ただし、ウエスト側端部領域21D、21Uとレッグ側端部領域23D、23Uとは長さ方向Lに同じ長さを有する必要はない。本実施の形態では、ウエスト側端部領域21D、21U、中央領域22D、22U、及び、レッグ側端部領域23D、23Uは、それぞれ接合部の約3/10、4/10、3/10の範囲の領域である。
【0031】
本実施の形態では、接合部14aの接合列20Dは、幅方向Wの一方の側(
図3の左側)に位置し、長さ方向Lに延びる仮留め接合列20Daと、幅方向Wの他方の側(
図3の右側)に位置し、長さ方向に延びる本留め接合列20Dbと、を備える。仮留め接合列20Daは、ウエスト側端部領域21D、中央領域22D及びレッグ側端部領域23Dに、それぞれ長さ方向Lに並ぶ複数の仮留め融着部21Da、22Da、23Daを含む。一方、本留め接合列20Dbは、ウエスト側端部領域21D、中央領域22D及びレッグ側端部領域23Dに、長さ方向Lに並ぶ複数の本留め融着部21Db、22Db、23Dbを含む。複数の仮留め融着部21Da、22Da、23Daの構造は同一であってもよいし、少なくとも一つが異なっていてもよい。複数の本留め融着部21Db、22Db、23Dbの構造は同一であってもよいし、少なくとも一つが異なっていてもよい。更に、複数の仮留め融着部22Daについては、それらの全部又は一部(例示:レッグ開口部LO側の一部)がなくてもよい。複数の仮留め融着部23Daについても同様である。使用後に使い捨ておむつ1を取り外すとき、接合部の融着部を引き剥がし易くするためである。
【0032】
一方、本実施の形態では、接合部14bの接合列20Uは、幅方向Wの一方の側(
図3の左側)に位置し、長さ方向Lに延びる他の仮留め接合列20Uaと、幅方向Wの他方の側(
図3の右側)に位置し、長さ方向に延びる他の本留め接合列20Ubと、を備える。他の仮留め接合列20Uaは、ウエスト側端部領域21U、中央領域22U及びレッグ側端部領域23Uに、それぞれ長さ方向Lに並ぶ複数の他の仮留め融着部21Ua、22Ua、23Uaを含む。一方、他の本留め接合列20Ubは、ウエスト側端部領域21U、中央領域22U及びレッグ側端部領域23Uに、それぞれ長さ方向Lに並ぶ複数の他の本留め融着部21Ub、22Ub、23Ubを含む。複数の他の仮留め融着部21Ua、22Ua、23Uaの構造は同一であってもよいし、少なくとも一つが異なっていてもよい。あるいは、複数の他の仮留め融着部21Ua、22Ua、23Uaの構造は無くてもよい。複数の他の本留め融着部21Ub、22Ub、23Ubは同一であってもよいし、少なくとも一つが異なっていてもよい。更に、複数の仮留め融着部22Uaについては、それらの全部又は一部(例示:レッグ開口部LO側の一部)がなくてもよい。複数の仮留め融着部23Uaについても同様である。使用後に使い捨ておむつ1を取り外すとき、接合部の融着部を引き剥がし易くするためである。
【0033】
本実施の形態では、各領域の接合列20D、20Uはいずれも二列である。ただし、接合列20Dは二列より多くてもよく、また、領域ごとに列数が相違していてもよい。一方、接合列20Uは一列でも、二列より多くてもよく、また、領域ごとに列数が相違していてもよい。また、領域の数は、一つでもよいし、二つでもよいし、四つ以上でもよい。
【0034】
各融着部21Da〜23Da、21Db〜23Db、21Ua〜23Ua、21Ub〜23Ubの平面形状は、特に制限は無く、例えば、円、長円(角丸長方形)、楕円、多角形、星形、線形などが挙げられる。例えば、仮留め融着部21Da〜23Da、21Ua〜23Uaの平面形状は円が挙げられる。それら融着部の少なくとも一つは他の少なくとも一つと、形状が相違してもよい。一方、本留め融着部21Db〜23Db、21Ub〜23Ubの平面形状は幅方向Wに長い長円(角丸長方形)が挙げられる。それら融着部の少なくとも一つは他の少なくとも一つと、形状が相違してもよい。
【0035】
図4は、一対の接合部14a、14bの各融着部の構成例を示す模式図である。
図4(a)は融着部を厚さ方向Tから見た図であり、
図4(b)は
図4(a)のVIb−VIb断面図である。各融着部の構成は、形状の相違はあるが基本的な構成は同様である。融着部は、コア部BAと、コア部BAを囲むように形成された外周部BWと、を有する。コア部BAは、融着部の形成時に凸部で押圧されて融着された部分であり、外周部BWはその時に凸部の周囲で融着された部分である。コア部BAは厚さ方向Tに薄く、外周部BWは厚さ方向Tに厚い。融着部の係止強度は、主に、厚さ方向Tから見たときの、融着部の面積の大きさに概ね依存し、したがってコア部BA及び外周部BWの面積に概ね依存する。係止強度は、コア部BAや外周部BWの面積が大きいほうが強くなる。そして、外周部BWの面積は、外周部BWの幅(厚さ)やコア部BAの外周の長さが大きいほど大きい。
【0036】
図3を参照して、複数の仮留め融着部21Da〜23Daの各々は複数の本留め融着部21Db〜23Dbの各々よりも面積が小さく、外周の長さが短い。例えば仮留め融着部21Daは本留め融着部21Dbよりも面積が小さく、好ましくは仮留め融着部22Daは本留め融着部22Dbよりも面積が小さく、好ましくは仮留め融着部23Daは本留め融着部23Dbよりも面積が小さい。仮留め融着部23Daは本留め融着部21Dbよりも面積が小さいことが好ましい。これらの関係は外周の長さにも同様に当てはめ得る。したがって、複数の仮留め融着部21Da〜23Daの各々は、複数の本留め融着部21Db〜23Dbの各々よりも係止強度面積が小さい。仮留め融着部21Da〜23Daの各々の大きさとしては、形状が円の場合、例えば直径0.5〜5mmが挙げられる。仮留め融着部が0.5mm未満であると、製造時に融着部を形成するときに使用されるアンビルの凸部が小さ過ぎて、凸部が摩耗し易く長期での生産が難しくなる。仮留め融着部が5mmよりも大きいと、使用後に使い捨ておむつ1を取り外すとき、大きな仮留め融着部と本留め融着部との両方を引き剥がす必要があり、非常に引き剥がし難くなるおそれがある。本留め融着部21Db〜23Dbの各々の大きさとしては、形状が
図4のような幅方向Wに長い長円(角丸長方形)の場合、例えば円部分の直径(幅)0.5〜5mm、長方形部分の長さ1〜20mmが挙げられる。隣り合う仮留め接合列20Daと本留め接合列20Dbとの間の距離としては、例えば1〜10mmが挙げられ、隣り合う仮留め融着部間の距離は例えば1〜30mmが挙げられ、隣り合う本留め融着部間の距離は例えば1〜10mmが挙げられる。隣り合う融着部同士の間隔は一定でもよいし、位置により変化してもよい。仮留め融着部と本留め融着部との間の間隔は例えば1〜30mmが挙げられる。間隔が1mm未満だと、仮留め融着部と本留め融着部とが近すぎるため、両者の外周部が重なってしまったり、仮留め融着部と本留め融着部とが搬送中のズレにより連続してしまったりするおそれがある。一方、間隔が30mmを超えると、製造時に接合部を形成するとき、弾性部材の伸縮の影響が出てしまい、仮留め融着部にて安定させたテンション(後述)が不安定になるおそれがある。
【0037】
本実施の形態では、複数の他の仮留め融着部21Ua〜23Uaの各々は複数の他の本留め融着部21Ub〜23Ubの各々よりも面積が小さく、外周の長さが短い。例えば他の仮留め融着部21Uaは他の本留め融着部21Ubよりも面積が小さく、好ましくは他の仮留め融着部22Uaは他の本留め融着部22Ubよりも面積が小さく、好ましくは他の仮留め融着部23Uaは他の本留め融着部23Ubよりも面積が小さい。他の仮留め融着部23Uaは他の本留め融着部21Ubよりも面積が小さいことが好ましい。これらの関係は外周の長さにも同様に当てはめ得る。したがって、複数の他の仮留め融着部21Ua〜23Uaの各々は複数の他の本留め融着部21Ub〜23Ubの各々よりも係止強度が小さい。他の仮留め融着部21Ua〜23Uaの各々の大きさとしては、形状が円の場合、例えば直径0.5〜5mmが挙げられる。その理由は、仮留め融着部21Da〜23Daの場合と同様である。他の本留め融着部21Ub〜23Ubの各々の大きさとしては、形状が
図4のような幅方向Wに長い長円(角丸四角形)の場合、例えば円部分の直径(幅)0.5〜5mm、長方形部分の長さ1〜20mmが挙げられる。隣り合う他の仮留め接合列20Uaと他の本留め接合列20Ubとの距離としては、例えば1〜10mmが挙げられ、隣り合う他の仮留め融着部間の距離は例えば1〜10mmが挙げられ、隣り合う他の本留め融着部間の距離は例えば1〜10mmが挙げられる。隣り合う融着部同士の間隔は一定でもよいし、位置により変化してもよい。他の仮留め融着部21Ua〜23Uaと他の本留め融着部21Ub〜23Ubとの間の間隔は例えば1〜30mmが挙げられる。その理由は、仮留め融着部21Da〜23Daと本留め融着部21Db〜23Dbの場合と同様である。
【0038】
上記のように、複数の融着部の配置を考慮すると、接合列20Dと接合列20Uとは長さ方向中心線CLに対して非対称である。したがって、仮留め接合列20Da及び本留め接合列20Dbと、他の仮留め接合列20Ua及び他の本留め接合列20Ubとは、長さ方向中心線CLに対して非対称である。よって、複数の仮留め融着部21Da〜23Da及び複数の本留め融着部21Db〜23Dbと、複数の他の仮留め融着部21Ua〜23Ua及び複数の他の本留め融着部21Ub〜23Ubとは、長さ方向中心線CLに対して非対称である。
【0039】
本実施の形態では、一対の接合部14a、14bの接合列20D及び接合列20Uは、超音波シール法で形成されている。一対の接合部14a、14bにおける接合列20D及び接合列20Uが形成された部分以外の部分では、その全部又は一部が例えば接着剤(例示:ホットメルト接着剤)などで接合されていてもよい。
【0040】
図5は、
図3の接合部14aのカバーシートの構成例を示す模式図である。この図は、幅方向Wの端部の側から見た接合部14aにおけるカバーシート5の積層状態の一例を模式的に示す。ただし、この図において、弾性部材8a、8b、8cは省略される。なお、接合部14bは、接合部14aと端面形状が同じため、その説明は省略される。本実施の形態では、腹側部11の端部11aでは、カバーシート5bにおける長さ方向Lのウエスト開口部WO側の端部が、カバーシート5aの長さ方向Lの端部を覆うように、肌側に折り返されている。それにより、端部11aは、カバーシート5b、カバーシート5a及び折り返されたカバーシート5bという三層のカバーシートが積層された領域Aと、カバーシート5a及びカバーシート5bという二層のカバーシートが積層された領域Bと、を有する。同様に、背側部13の端部13aでは、カバーシート5bにおける長さ方向Lのウエスト開口部WO側の端部が、カバーシート5aの長さ方向Lの端部を覆うように、肌側に折り返されている。それにより、端部13aは、三層のカバーシートが積層された領域Aと、二層のカバーシートが積層された領域Bと、を有する。そして、図中の白抜き矢印に示されるように、これら端部11aと端部13aとが厚さ方向Tに重なり合うように積層され、融着装置(後述)により各融着部で融着され、接合されることにより、接合部14aが構成される。本実施の形態では、端部11aと端部13aとは、互いの領域A同士及び領域B同士を接合させている。領域Aの大きさは特に制限はないが、例えば10mm〜100mmが挙げられる。なお、腹側部11及び背側部13の各々におけるカバーシート5の積層数については特に制限されることはなく、一層でもよいし、二層以上の複数層でもよい。また、カバーシート5は折り返されていなくてもよい。
【0041】
次に、本実施の形態に係る使い捨ておむつ1の製造方法について説明する。
まず、本製造方法に使用される、接合部を形成するための融着装置について説明する。
図6は、実施の形態に係る融着装置の構成例を示す模式図である。融着装置90は、シール対向面92aを有するアンビル92(第1狭持部材)を備えた回転体(図示されず)と、シール対向面91aを有する超音波ホーン91(第2狭持部材)とを備える。アンビル92は、シール対向面92aが回転体の外周面に概ね一致するように回転体内に配置される。シール対向面92aは、融着部を形成するための複数の凸部が列状に配置された下流側凸部列30D及び上流側凸部列30Uを含む。下流側凸部列30D及び上流側凸部列30Uは、それぞれ製造途中の吸収性物品の前駆体の搬送方向MDにおける下流側及び上流側に位置する。下流側凸部列30D及び上流側凸部列30Uの複数の凸部は、搬送方向MDに対して垂直な横断方向CDに沿って延在する。シール対向面91aは、下流側凸部列30D及び上流側凸部列30Uの少なくとも一方に対面する面積を有する。
【0042】
アンビル92と超音波ホーン91との間に、回転体の外周面に沿って搬送方向MDに吸収性物品の前駆体が搬送される。アンビル92と超音波ホーン91とは、搬送方向MDに略垂直な高さ方向TDに沿って相対的に接近可能である。ただし、アンビル92を含む回転体の外周面に沿う方向(搬送方向MD)に対し、超音波ホーン91は所定の範囲だけ往復運動する。ここで、所定の範囲とは、外周面に沿った所定の周の長さ(弧)の範囲であり、例えば対応する回転体の回転角としては30度以下の範囲であり、あるいは例えば下流側凸部列30Dの下流側端部と上流側凸部列30Uの上流側端部との距離の5倍以内の範囲である。したがって、超音波ホーン91は所定の範囲だけ、周方向(搬送方向MD)の上流側から下流側に移動(外周面に追従)しつつ、アンビル92と共に前駆体を挟持し、その後に前駆体から離間しつつ、下流側から上流側に移動する。そして超音波ホーン91が上流側から下流側に移動するとき、アンビル92のシール対向面92aの下流側凸部列30Dと、超音波ホーン91のシール対向面91aとが、高さ方向TDに接近し、吸収性物品の前駆体の腹側部と背側部とを挟持し、超音波振動(と圧力)により融着して、接合列20Dを形成する。それと共に、シール対向面92aの上流側凸部列30Uと、シール対向面91aとが、前駆体の腹側部と背側部とを挟持し、超音波振動(と圧力)により融着して、接合列20Uを形成する。このとき、搬送方向MDを幅方向Wと平行にして並んだ二つの前駆体のうちの下流側の前駆体における接合列20D(
図3の右側)と、上流側の前駆体における接合列20U(
図3の左側)と、が形成される。接合列20D及び接合列20Uは、同時に形成されてもよく、先に接合列20Dが形成され、後に接合列20Uが形成されてもよい。融着装置90としては、例えば特許文献1の装置が挙げられる。なお、超音波ホーン91は搬送方向MDに往復運動しなくてもよい。
【0043】
図7は、融着装置90のアンビル92の凸部列の構成例を示す模式図である。下流側凸部列30D及び上流側凸部列30Uは、横断方向CDにおいて、それぞれウエスト側端部領域31D、31Uと、レッグ側端部領域33D、33Uと、ウエスト側端部領域31D、31Uとレッグ側端部領域33D、33Uとの間の中央領域32D、32Uと、を有する。ウエスト側端部領域31D、31Uは、それぞれ接合部14a、14bのウエスト側端部領域21D、21Uに対応する。レッグ側端部領域33D、33Uは、それぞれ接合部14a、14bのレッグ側端部領域23D、23Uに対応する。中央領域32D、32Uは、それぞれ接合部14a、14bの中央領域22D、22Uに対応する。
【0044】
本実施の形態では、下流側凸部列30Dは、搬送方向MDの下流側(
図7の左側)に位置し、横断方向CDに延びる仮留め凸部列30Daと、搬送方向MDの上流側(
図7の右側)に位置し、横断方向CDに延びる本留め凸部列30Dbと、を備える。仮留め凸部列30Daは、ウエスト側端部領域31D、中央領域32D及びレッグ側端部領域33Dに、それぞれ搬送方向MDに並ぶ複数の仮留め凸部31Da、32Da、33Daを含む。一方、本留め凸部列30Dbは、ウエスト側端部領域31D、中央領域32D及びレッグ側端部領域33Dに、それぞれ搬送方向MDに並ぶ複数の本留め凸部31Db、32Db、33Dbを含む。複数の仮留め凸部31Da、32Da、33Daの構造は同一であってもよいし、少なくとも一つが異なっていてもよい。複数の本留め凸部31Db、32Db、33Dbの構造は同一でもよいし、少なくとも一つが異なってもよい。更に、複数の仮留め凸部32Daについては、それらの全部又は一部(例示:レッグ開口部LO側の一部)がなくてもよい。複数の仮留め凸部33Daについても同様である。使用後に使い捨ておむつ1を取り外すとき、接合部の融着部を引き剥がし易くするためである。
【0045】
一方、本実施の形態では、上流側凸部列30Uは、搬送方向MDの下流側(
図7の左側)に位置し、横断方向CDに延びる仮留め凸部列30Uaと、搬送方向MDの上流側(
図7の右側)に位置し、横断方向CDに延びる本留め凸部列30Ubと、を備える。仮留め凸部列30Uaは、ウエスト側端部領域31U、中央領域32U及びレッグ側端部領域33Uに、それぞれ搬送方向MDに並ぶ複数の仮留め凸部31Ua、32Ua、33Uaを含む。一方、本留め凸部列30Ubは、ウエスト側端部領域31U、中央領域32U及びレッグ側端部領域33Uに、それぞれ搬送方向MDに並ぶ複数の本留め凸部31Ub、32Ub、33Ubを含む。複数の仮留め凸部31Ua、32Ua、33Uaの構造は同一であってもよいし、少なくとも一つが異なっていてもよい。あるいは、複数の仮留め凸部31Ua、32Ua、33Uaの構造は無くてもよい。複数の本留め凸部31Ub、32Ub、33Ubは同一でもよいし、少なくとも一つが異なってもよい。更に、複数の仮留め凸部32Uaについては、それらの全部又は一部(例示:レッグ開口部LO側の一部)がなくてもよい。複数の仮留め凸部33Uaについても同様である。使用後に使い捨ておむつ1を取り外すとき、接合部の融着部を引き剥がし易くするためである。
【0046】
複数の仮留め凸部31Da〜33Daの各々は複数の本留め凸部31Db〜33Dbの各々よりも面積が小さく、よって外周の長さが短い。具体的には、仮留め凸部31Daは本留め凸部31Dbよりも面積が小さく、好ましくは仮留め凸部32Daは本留め凸部32Dbよりも面積が小さく、好ましくは仮留め凸部33Daは本留め凸部33Dbよりも面積が小さい。仮留め凸部33Daは本留め凸部31Dbよりも面積が小さいことが好ましい。これらの関係は、外周の長さにも同様に当てはまる。仮留め凸部31Da〜33Daの各々の大きさとしては、形状が円の場合、例えば直径0.5〜5mmが挙げられる。仮留め凸部が0.5mm未満であると、凸部が小さ過ぎて、凸部が摩耗し易く長期での生産が難しくなる。仮留め凸部が5mmよりも大きいと、使用後に使い捨ておむつ1を取り外すとき、凸部で形成された大きな仮留め融着部と本留め融着部との両方を引き剥がす必要があり、非常に引き剥がし難くなるおそれがある。本留め凸部31Db〜33Dbの各々の大きさとしては、形状が幅方向Wに長い長円(角丸長方形)の場合、例えば円部分の直径(幅)0.5〜5mm、長方形部分の長さ1〜20mmが挙げられる。隣り合う仮留め凸部列30Daと本留め凸部列30Dbとの間の距離としては、例えば1〜10mmが挙げられ、隣り合う仮留め凸部間の距離は例えば1〜30mmが挙げられ、隣り合う本留め凸部間の距離は例えば1〜10mmが挙げられる。隣り合う凸部同士の間隔は一定でもよいし、位置により変化してもよい。仮留め凸部と本留め凸部との間の間隔は例えば1〜30mmが挙げられる。間隔が1mm未満だと、仮留め凸部と本留め凸部とが近すぎるため、両者で形成される仮留め融着部と本留め融着部との外周部が重なってしまったり、仮留め融着部と本留め融着部とが搬送中のズレにより連続してしまったりするおそれがある。一方、間隔が30mmを超えると、製造時に接合部を形成するとき弾性部材の伸縮の影響が出てしまい、仮留め融着部にて安定させたテンションが不安定になるおそれがある。
【0047】
本実施の形態では、複数の仮留め凸部31Ua〜33Uaの各々は複数の本留め凸部31Ub〜33Ubの各々よりも面積が小さく、外周の長さが短い。具体的には、仮留め凸部31Uaは本留め凸部31Ubよりも面積が小さく、好ましくは仮留め凸部32Uaは本留め凸部32Ubよりも面積が小さく、好ましくは仮留め凸部33Uaは本留め凸部33Ubよりも面積が小さい。仮留め凸部33Uaは本留め凸部31Ubよりも面積が小さいことが好ましい。これらの関係は外周の長さにも当てはまる。仮留め凸部31Ua〜33Uaの各々の大きさとしては、その形状が円の場合、例えば直径0.5〜5mmが挙げられる。その理由は、仮留め凸部31Da〜33Daの場合と同様である。本留め凸部31Ub〜33Ubの各々の大きさとしては、その形状が幅方向Wに長い長円(角丸長方形)の場合、例えば円部分は直径(幅)0.5〜5mm、長方形部分は長さ1〜20mmが挙げられる。隣り合う仮留め凸部列30Uaと本留め凸部列30Ubとの間の距離としては、例えば1〜10mmが挙げられ、隣り合う仮留め凸部間の距離は例えば1〜30mmが挙げられ、隣り合う本留め凸部間の距離は例えば1〜10mmが挙げられる。隣り合う凸部同士の間隔は一定でもよく、位置により変化してもよい。仮留め凸部31Ua〜33Uaと本留め凸部31Ub〜33Ubとの間の間隔は例えば1〜30mmが挙げられる。その理由は、仮留め凸部31Da〜33Daと本留め凸部31Db〜33Dbの場合と同様である。
【0048】
下流側凸部列30Dと上流側凸部列30Uとは全体的な配置としては、シール対向面72aにおける搬送方向MDの中心を通り横断方向CDに延びる中心線C1に対して対称である。ただし、複数の凸部の配置を考慮すると、下流側凸部列30Dと上流側凸部列30Uとは中心線C1に対して非対称である。したがって、仮留め凸部列30Da及び本留め凸部列30Dbと、仮留め凸部列30Ua及び本留め凸部列30Ubとは、中心線C1に対して非対称である。よって、複数の仮留め凸部31Da〜33Da及び複数の本留め凸部31Db〜33Dbと、複数の仮留め凸部31Ua〜33Ua及び複数の本留め凸部31Ub〜33Ubとは、中心線C1に対して非対称である。
【0049】
本実施の形態では、下流側凸部列30Dと上流側凸部列30Uとの間の距離は、ウエスト側端部領域31D、31U側の端部ではW01であり、レッグ側端部領域33D、33U側の端部ではW02であり、両者の関係はW01≧W02である。したがって、下流側凸部列30D及び上流側凸部列30Uは、搬送方向MD及び横断方向CDに垂直な高さ方向から見て略Vの字状(略末広がり状、略逆八の字状)に形成されている。両者の成す角は、例えば0〜20度が好ましく、融着部の安定形成の観点から2〜10度がより好ましい。ただし、両者の成す角が20度よりも大きいと、使い捨ておむつ1における一対の接合部14a、14bの占める割合が大きくなり、資材が無駄になる。更に、両者の成す角が20度よりも大きいと、使い捨ておむつ1におけるウエスト開口部WO付近の幅とレッグ開口部LOの上側付近の幅とが大きく異なってしまい、装着者の体型に合い難くなる。
【0050】
本実施の形態では、各領域の下流側凸部列30D及び上流側凸部列30Uはいずれも二列ずつ存在する。ただし、下流側凸部列30Dは二列より多くてもよく、また、領域ごとに列数が相違していてもよい。一方、上流側凸部列30Uは一列でも、二列より多くてもよく、また、領域ごとに列数が相違していてもよい。
【0051】
本実施の形態では、下流側凸部列30D(、上流側凸部列30U)において、搬送方向MDの下流側の部分に仮留め凸部列30Da(、30Ua)が配置され、上流側の部分に本留め凸部列30Db(、30Ub)が配置されている。その結果、製造途中の吸収性物品の前駆体を仮留め凸部列30Daが最初に挟持され、本留め凸部列30Dbがその後に挟持されることになる。それにより、前駆体における腹側部及び背側部の端部にまず仮留めの融着を行い、その後に本留めの融着を行うことができる。なお、搬送方向MDが逆向きならば、
図7の下流側凸部列30Dと上流側凸部列30Uとは中心線C1に対して左右反転した形状になる。それに伴い、
図3の接合列20Dと接合列20Uとは長さ方向中心線CLに対して左右反転した形状になる。
【0052】
次に、本実施の形態に係る使い捨ておむつ1の製造方法を説明する。
図8は、実施の形態に係る使い捨ておむつ1の製造方法を示す斜視図であり、本製造方法における重ね工程及び接合工程を示す。また、
図9は、
図8の製造方法における接合工程、すなわち接合部14a、14bの形成過程を示す模式図である。本製造方法は、重ね工程と、形成工程とを備える。以下、具体的に説明する。
【0053】
まず、従来知られた製造方法により、連続シート部材101aを形成する。ただし、連続シート部材101aは、複数の腹側部11が幅方向W(搬送方向MD)に連結された腹側連続部分111と、複数の背側部13が幅方向W(搬送方向MD)に連結された背側連続部分113とを、長さ方向L(横断方向CD)の両側に備える。なお、連続シート部材101aは、腹側連続部分111と背側連続部分113との間に、複数の中間部12が幅方向W(搬送方向MD)に連結された中間連続部分112を含む。ここで、連続シート部材101aにおいて、長さ方向L(横断方向CD)に並ぶ腹側部11、中間部12及び背側部13上には吸収性本体10が配置されており、これらは一体として使い捨ておむつ1(
図2)の前駆体1aとみることができる。すなわち、連続シート部材101aは、展開した状態の使い捨ておむつ1(
図2)の前駆体1aが幅方向W(搬送方向MD)に連結された構造を有するとみることができる。連続シート部材101aの横断方向CDの一方の端縁111e側には、連続シート部材101a内に、弾性部材8a用の弾性部材108aが含まれ、他方の端縁113e側には、弾性部材8b用の弾性部材108bが含まれる。更に、連続シート部材101a内に、弾性部材8c、8c用の弾性部材108c、108cが配置される。弾性部材108c、108cはそれぞれ波形に湾曲しつつ、搬送方向MDに延在する。弾性部材108c、108cとで囲まれた領域に、使い捨ておむつ1のレッグ開口部LOとなる端部12a、12bが形成される。
【0054】
次いで、腹側連続部分111及び背側連続部分113の一方を他方に重ねる重ね工程を実行する。すなわち、重ね工程は、連続シート部材101aを、幅方向Wが搬送方向MDに沿い、長さ方向Lが横断方向CDに沿うように、搬送方向MDに搬送しつつ、腹側連続部分111に背側連続部分113を重ねて、腹側部11と背側部13とを重ねる。言い換えると、腹側連続部分111上に背側連続部分113を、横断方向CDの端縁111eと端縁113eとが重なるように折り畳む。それにより、腹側部11と背側部13とが重ね合わされた吸収性物品の前駆体1bが連続的に形成される。すなわち、吸収性物品の前駆体1bが搬送方向MDに連続した連続シート部材101bが形成される。なお、腹側連続部分111上に背側連続部分113を折り畳む(重ねる)には、公知の折り畳み部材(装置)を用いることができる。重ね工程は、腹側連続部分111を背側連続部分113に重ねてもよい。
【0055】
次いで、搬送方向MDに隣接する二つの前駆体1b、1bに跨る領域20Qに一対の接合部14a、14bを形成する接合工程を実行する。接合工程は、まず、連続シート部材101bを融着装置90に供給し、回転体の外周面に沿って搬送してする。そして、搬送方向MDに隣接する二つの前駆体1b、1bにおける下流側の前駆体1bの上流側端部にて、アンビル92(第1挟持部材)の下流側凸部列30Dと超音波ホーン91(第2挟持部材)とで、腹側部11と背側部13とを極めて短時間に挟持して融着し、接合部14aを形成する。すなわち、接合工程は、まず、接合列20Dを形成する。接合工程は、更に、搬送方向MDに隣接する二つの前駆体1b、1bにおける上流側の前駆体1bの下流側端部にて、アンビル92(第1挟持部材)の上流側凸部列30Uと超音波ホーン91(第2挟持部材)とで、腹側部11と背側部13とを極めて短時間に挟持して融着し、接合部14bを形成する。すなわち、接合工程は、更に接合列20Uを形成する。それらにより、隣接する二つの前駆体1b、1bに跨って一対の接合部14a、14bが形成される。そして、接合工程が連続的に行われることで、一対の接合部14a、14bを備える吸収性物品の前駆体1cが搬送方向MDに連続した連続シート部材101cが形成される。
このとき、連続シート部材101bが回転体の外周面に沿って搬送方向MDに所定速度(例示:100m/min.)で搬送され、かつ、超音波ホーン91が回転体の外周面に沿って所定範囲(例示:回転体の回転角度が25度)内しか追従しかない状態において、搬送方向MDに垂直な高さ方向TDから超音波ホーン91が連続シート部材101bに押し付けられる。そのため、超音波ホーン91と連続シート部材101bとの接触は、例えば数10msから100ms程度の極めて短時間に挟持して融着して、行われる。
【0056】
ただし、
図8に示される連続シート部材101a、101b、101cよりも搬送方向MDの上流側及び下流側には、例えば互いに対面配置された一対の搬送ロールなど(図示されず)がそれぞれ設けられている。そして、重ね工程及び接合工程にて、連続シート部材101a、101b、101cが、それら上流側及び下流側の一対の搬送ロールの間で、搬送方向MDに所定テンションで引っ張られつつ、連続シート部材101aが連続シート部材101bを経て連続シート部材101cに加工される。
【0057】
その後、連続シート部材101cにおいて、隣接する二つの前駆体1c、1cの境界線C10に沿って下流側の前駆体1cを切断する。境界線C10は、接合列20Dと接合列20Uとの間における搬送方向MDの中心を通り横断方向CDに延びる線に相当する。それにより、使い捨ておむつ1が製造される。
【0058】
連続シート部材を搬送方向に搬送しながら挟持部材で挟持してシールする形成工程の直前に、腹側連続部分と背側連続部分とを重ね合わせる重ね工程を行うとき、下流側凸部列による融着部の係止強度が低くなり、上流側凸部列による融着部の係止強度が高くなる。その理由は、以下のとおりである。重ね工程にて背側連続部分を腹側連続部分に重ねる場合、背側連続部分は一時的に搬送方向に対し斜めに移動し、腹側連続部分よりも搬送方向に長い距離を移動する。その場合、重ね工程の直後では、背側連続部分が腹側連続部分よりも引っ張られた状態になり、よって高いテンションの状態になる。その状態で、形成工程を開始すると、下流側凸部列における先頭付近の凸部に当接した連続シート部材が融着されるとき、強く引っ張られた背側連続部分と緩んだ腹側連続部分とが融着される。そのため、融着の時間が短いと、融着部が十分に形成できず、係止強度が低下する。一方、上流側凸部列における最後尾付近の凸部に当接した連続シート部材が融着されるとき、連続シート部材に既に下流側凸部列で形成された融着部が存在するので、背側連続部分と腹側連続部分との間でのテンションの相違は小さくなる。そのため、融着の時間が短くても、融着部は十分に形成でき、係止強度が高くなる。それゆえ、下流側凸部列による融着部と、上流側凸部列による融着部との間に係止強度のアンバランスが生じるおそれがある。
【0059】
しかし、本製造方法では、そのような下流側凸部列による融着部と上流側凸部列による融着部との間の係止強度のアンバランス(相違)を抑制できる。まず、本製造方法では、アンビル92(第1挟持部材)の凸部(下流側凸部列30D)に先に当接する、搬送方向MDの下流側の前駆体1bの上流側端部にて、仮留め融着部21Da(〜23Da)で連続シート部材101bの腹側部11と背側部13とを仮留めする。それにより、テンションの基点を、仮留め融着部21Da(〜23Da)にでき、すなわち腹側連続部分111と背側連続部分113との重ね工程の位置よりも下流側の位置にできる。よって、仮留め融着部21Da(〜23Da)よりも下流側において、連続シート部材101bの腹側部11のテンションと背側部13のテンションとの相違を抑制できる。その後に、本製造方法では、連続シート部材101bの腹側部11と背側部13とを本留め融着部21Db(〜23Db)で本留めする。そのとき、腹側部11と背側部13のテンションの相違を抑制した状態で本留めできるので、仮留め融着部21Da(〜23Da)を設けない場合と比較して、本留め融着部21Db(〜23Db)の係止強度を高くできる。それにより、本留め融着部21Db(〜23Db)の係止強度と他の本留め融着部21Ub(〜23Ub)の係止強度との相違を抑制して、両者の係止強度をバランスさせることができる。以上により、使い捨ておむつ1のような吸収性物品における一対の接合部14a、14bの係止強度の相違を抑制できる。なお、仮留め融着部21Da(〜23Da)は、形成工程でのテンションの調整用に設けられるので、係止強度を高くする必要はなく、それゆえ仮留め融着部21Da(〜23Da)の面積は本留め融着部21Db(〜23Db)や他の本留め融着部21Ub(〜23Ub)の面積よりも小さくでき、係止強度を小さくできる。したがって、例えば、本留め融着部21Db(〜23Db)の係止強度と他の本留め融着部21Ub(〜23Ub)の係止強度とをバランスさせることに対して、仮留め融着部21Da(〜23Da)の係止強度の影響を低く抑えることができる。
【0060】
本実施の形態では好ましい態様として、複数の本留め融着部21Db(〜23Db)の各々の形状は、搬送方向MDの長さの方が、横断方向CDの長さよりも長くなっている。
本好ましい態様では、本留め融着部21Db(〜23Db)の形状が搬送方向MDに縦長である。すなわち、下流側凸部列30Dのうちの本留め融着部21Db(〜23Db)用の凸部(仮留め凸部31Da(〜33Da))の形状が搬送方向MDに縦長である。そのため、接合工程において、本留め融着部21Db(〜23Db)用の凸部(仮留め凸部31Da(〜33Da))が連続シート部材101bに接触する時間を長くすることができ、よって本留め融着部21Db(〜23Db)を形成する時間を長くできる。それにより、本留め融着部21Db(〜23Db)の係止強度をより高くすることができ、本留め融着部21Db(〜23Db)の係止強度と他の本留め融着部21Ub(〜23Ub)の係止強度との相違を抑制し、両者の係止強度をよりバランスさせることができる。
【0061】
本実施の形態では好ましい態様として、複数の仮留め融着部21Da(〜23Da)の各々と複数の本留め融着部21Db(〜23Db)の各々とは横断方向CDの位置が互いにずれている。
腹側連続部分111と背側連続部分113とが重ね合わされた連続シート部材101bは、超音波ホーン91とアンビル92とに挟持された状態で超音波振動(と圧力)により融着される。そのとき、超音波ホーン91と連続シート部材101bとの間での相対速度差によって、連続シート部材101bは、相対的にアンビル92により超音波ホーン91のシール対向面91aに押し付けられつつ、シール対向面91aを擦るように通過する。その摩擦により、シール対向面91aには継続的に摩耗が進行する。ここで、仮留め融着部21Da(〜23Da)及び本留め融着部21Db(〜23Db)の少なくとも一部は、横断方向CDの同じ位置に存在すると、搬送方向MDから見て重なる位置に存在することになる。その場合、シール対向面91aの横断方向CDの同じ位置を、仮留め凸部31Da(〜33Da)で押し付けられた連続シート部材101bが通過し、更に、本留め凸部31Db(〜33Db)で押し付けられた連続シート部材101bが通過することになる。そうなると、シール対向面91aにおける同じ位置での摩耗が増加し、シール対向面91aの一部に窪みが生じて、例えば本留め融着部21Db(〜23Db)の融着状態が不安定になるおそれがある。そこで、本好ましい態様として、仮留め融着部21Da(〜23Da)と本留め融着部21Db(〜23Db)の横断方向CDの位置を互いにずらす。すなわち、仮留め凸部31Da(〜33Da)と本留め凸部31Db(〜33Db)の横断方向CDの位置を互いにずらす。その結果、シール対向面91aの横断方向CDの所定の位置を通過するのは、仮留め凸部31Da(〜33Da)で押し付けられた連続シート部材101b及び本留め凸部31Db(〜33Db)で押し付けられた連続シート部材101bのいずれか一方になる。したがって、シール対向面91aにおける所定の位置での摩耗の増加を抑制でき、シール対向面91aと本留め凸部31Db(〜33Db)などとの対応状態を適切に維持できる。それゆえ、シール対向面91aの一部に窪みが生じて本留め融着部21Db(〜23Db)などの融着状態が不安定になる事態を抑制でき、融着状態を安定的に保つことが出来る。それにより、本留め融着部21Db(〜23Db)の係止強度を高く維持することができ、本留め融着部21Db(〜23Db)の係止強度と他の本留め融着部21Ub(〜23Ub)の係止強度との相違を抑制して、両者の係止強度をバランスさせることができる。
【0062】
本実施の形態では好ましい態様として、複数の本留め融着部21Db(〜23Db)の各々の外周の長さは、複数の他の本留め融着部21Ub(〜23Ub)の各々の外周の長さよりも長くなっている。例えば、隣接する二つの前駆体1b、1bに跨って形成された一対の接合部14a、14bでは、下流側の前駆体1bの上流側端部に形成される本留め融着部21Db(〜23Db)と、上流側の前駆体1bの下流側端部に形成される他の本留め融着部21Ub(〜23Ub)とは、同一面積(又は同一外周長さ)ならば、本留め融着部21Db(〜23Db)の方が他の本留め融着部21Ub(〜23Ub)よりも係止強度が低くなるおそれがある。その理由は、本留め融着部21Db(〜23Db)が連続シート部材101bにおける相対的に先に凸部(この場合、下流側凸部列30D)に当接する部分に形成される一方、他の本留め融着部21Ub(〜23Ub)が連続シート部材101bにおける相対的に後に凸部(この場合、上流側凸部列30U)に当接する部分に形成されるからである。そこで、本好ましい態様として、本留め融着部21Db(〜23Db)の外周の長さが、他の本留め融着部21Ub(〜23Ub)の外周の長さよりも長くなるように、各本留め融着部21Db(〜23Db)、21Ub(〜23Ub)を形成する。すなわち、本留め融着部21Db(〜23Db)用の凸部(下流側凸部列30Dの本留め凸部31Db(〜33Db))の外周の長さが、他の本留め融着部21Ub(〜23Ub)用の凸部(上流側凸部列30Uの他の本留め凸部31Ub(〜33Ub))の外周の長さよりも長くなるようにアンビル92(第1狭持部材)を形成する。それにより、本留め融着部21Db(〜23Db)の面積を相対的に大きくし、係止強度をより大きくできる。したがって、本留め融着部21Db(〜23Db)の係止強度と他の本留め融着部21Ub(〜23Ub)の係止強度との相違を抑制して、両者の係止強度をバランスさせることができる。
【0063】
本実施の形態では好ましい態様として、上流側の前駆体1bにおける下流側端部の接合部(接合列20U)は、複数の他の本留め融着部21Ub(〜23Ub)よりも下流側に位置し、横断方向CDに並ぶ複数の他の仮留め融着部21Ua(〜23Ua)を含み、他の仮留め融着部21Ua(〜23Ua)の面積は、他の本留め融着部21Ub(〜23Ub)の面積よりも小さい。すなわち、本好ましい態様では、連続シート部材101bにおいて、下流側の前駆体1bにおける上流側端部だけでなく、上流側の前駆体1bにおける下流側端部でも、連続シート部材101bの腹側部11と背側部13とを、まず他の仮留め融着部21Ua(〜23Ua)で仮留めし、その後に他の本留め融着部21Ub(〜23Ub)で本留めする。したがって、仮留めにより、テンションの基点を他の仮留め融着部21Ua(〜23Ua)にできるので、連続シート部材101bの腹側部11のテンションと背側部13のテンションとの相違をより抑制した状態で、連続シート部材101bの腹側部11と背側部13とを本留めすることができる。それにより、上流側の前駆体における下流側端部においても、接合部14bの係止強度を向上できる。
【0064】
本実施の形態では好ましい態様として、下流側凸部列30D及び上流側凸部列30Uは、横断方向CDの一方側の端部同士の距離W02が、他方側の端部同士の距離W01よりも短い。すなわち、本好ましい態様では、アンビル92(第1狭持部材)の下流側凸部列30D及び上流側凸部列30Uが、搬送方向MD及び横断方向CDに垂直な高さ方向から見て略Vの字状(略末広がり状、略逆八の字状)に形成されている。そのため、接合工程中に、連続シート部材101bを横断方向CDに対して、アンビル92(第1挟持部材)と超音波ホーン91(第2挟持部材)とで常に押さえることができ、連続シート部材101bを横断方向CDにずれ難くすることができ、安定的に一対の接合部14a、14bを形成できる。したがって、本留め融着部21Db(〜23Db)の係止強度と他の本留め融着部21Ub(〜23Ub)の係止強度との相違を抑制して、両者の係止強度をよりバランスさせることができる。下流側凸部列30D及び上流側凸部列30Uの成す角は、例えば0〜20度が挙げられ、融着部の安定形成の観点から2〜10度が好ましい。両者の成す角が20度よりも大きいと、使い捨ておむつ1における一対の接合部14a、14bの占める割合が大きくなり、製造時に資材が無駄になる。更に、両者の成す角が20度よりも大きいと、使い捨ておむつ1におけるウエスト開口部WO付近の幅とレッグ開口部LOの上側付近の幅とが大きく異なってしまい、装着者の体型に合い難くなる。
【0065】
本実施の形態では好ましい態様として、横断方向CDの一方側は吸収性物品(使い捨ておむつ1)のレッグ側であり、横断方向CDの他方側は吸収性物品のウエスト側であり、下流側凸部列30D及び上流側凸部列30Uにおける、横断方向CDの複数の凸部(31Da〜33Da及び/若しくは31Db〜33Db、並びに/又は、31Ua〜33Ua及び/若しくは31Ub〜31Ub)の密度は、吸収性物品(使い捨ておむつ1)のレッグ側の方が、ウエスト側よりも高い。例えば、下流側凸部列30D及び上流側凸部列30Uにおける横断方向CDの端部同士の距離が短い側では、下流側凸部列30Dと上流側凸部列30Uの搬送方向MDの凸部間の距離が近い。そのため、アンビル92(第1挟持部材)が連続シート部材101bに付与するためのエネルギーが下流側凸部列30Dと上流側凸部列30Uとに分散されて、凸部一個当たりのエネルギーが少なくなり、融着部一個当たりの係止強度が低下するおそれがある。そこで、本好ましい態様では、横断方向CDの端部同士の距離が短い側において、複数の凸部の密度を高くしている。それにより、凸部一個当たりのエネルギーが少なくても、凸部の密度を高める、すなわち凸部の数を増やすことで、全体として十分な係止強度が得られるようにしている。それにより、下流側凸部列30D内及び上流側凸部列30U内における係止強度の相違を抑制することができる共に、本留め融着部21Db〜23Dbの係止強度と他の本留め融着部21Ub〜21Ubの係止強度との相違を抑制して、両者の係止強度をバランスさせることができる。
【0066】
図7のアンビル92の凸部列は、下流側凸部列30Dと上流側凸部列30Uとが、搬送方向MD及び横断方向CDに垂直な高さ方向から見て略Vの字状(略末広がり状、略逆八の字状)に形成される。ただし、
図10に示す、融着装置90のアンビル92の凸部列の他の構成例のように、下流側凸部列30Dと上流側凸部列30Uとがいずれも横断方向CDに平行であってもよい。その場合、製造される使い捨ておむつ1では下流側凸部列30Dと上流側凸部列30Uとは中心線C1に対して非対称であるが、Vの字状の場合と比較して、着用者に視覚的に非対称を気づかせ難くすることができる。
【実施例】
【0067】
以下、
図3、
図4、
図7を参照しつつ、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこのような実施例のみに限定されるものではない。
【0068】
(1)試料
上記の実施の形態の製造方法を用いて実施例の使い捨ておむつ1を製造した。そのとき、
図7に示す下流側凸部列30Dと上流側凸部列30Uを有するアンビル92を用い、
図3に示す一対の接合部14a、14bを形成した。得られた試料を実施例の試料とした。一方、上記の製造方法を少し変更して比較例の使い捨ておむつ1を製造した。そのとき、
図7における仮留め凸部列30Daを除いた下流側凸部列30Dと仮留め凸部列30Uaを除いた上流側凸部列30Uを有するアンビル92を用い、
図3における仮留め接合列20Daと仮留め接合列20Uaを有さない一対の接合部14a、14bを形成した。得られた試料を比較例の試料とした。
【0069】
(2)幅の測定
上記(1)で作製された実施例の使い捨ておむつ1において、接合部14aの接合列20Dのウエスト側端部領域21Dにおける複数の本留め融着部21Dbの各々について、
図4(a)の外周部BWの位置P1〜P4につき、
図4(b)の外周部BWの断面の幅を電子顕微鏡で計測して、位置P1〜P4の幅とした。
上記(1)で作製された比較例の使い捨ておむつ1において、接合部14aの接合列20Dのウエスト側端部領域21Dにおける複数の本留め融着部21Dbの各々について、
図4(a)の外周部BWの位置P1〜P4につき、
図4(b)の外周部BWの断面の幅を電子顕微鏡で計測して、位置P1〜P4の幅とした。
【0070】
(3)接合部14aの係止強度の測定
上記(1)で作製された実施例及び比較例の各使い捨ておむつにおける接合部14aの係止強度(引き剥がし強度又は接合強度)を次の試験方法により測定した。
(i)各使い捨ておむつより、腹側部11と背側部13とが貼り合わされた接合部14aを取り出し、25mm幅に切断して係止強度試験用サンプルを作製した。
(ii)係止強度試験用サンプルの腹側部11及び背側部13のそれぞれの長さ方向における端部を、引張試験機(型番AG−1kNI、株式会社島津製作所製)のチャック(チャック間距離10mm)に挟んだ。
(iii)引張試験機にて、係止強度試験用サンプルの腹側部11及び背側部13を180°方向に剥離するように引っ張り、荷重値を測定した。
(iv)測定された荷重値の最大値を係止強度(N/25mm)とした。なお、係止強度のCV値は、CV値=係止強度の標準偏差/係止強度の平均値、で算出した。
以上の測定結果を表1に示した。
【0071】
【表1】
【0072】
仮留め凸部列を含む下流側凸部列30Dを有するアンビル92を用いて製造された実施例の試料の方が、仮留め凸部列を含まない下流側凸部列30Dを有するアンビル92を用いて製造された比較例の試料よりも、本留め融着部の幅が拡大した。そして、実施例の試料の方が、比較例の試料よりも、本留め融着部の係止強度が強くなると共に、係止強度のCV値が減少した。以上のことから、仮留め凸部列を用いることで、融着部の係止強度を向上できると共に、係止強度のばらつきを抑制できることが判明した。
【0073】
(4)一対の接合部14a14bの各々の係止強度の測定
上記(1)で作製された実施例及び比較例の各使い捨ておむつにおける一対の接合部14a、14bの各々の係止強度(引き剥がし強度又は接合強度)を次の試験方法により測定した。
(i)各使い捨ておむつより、腹側部11と背側部13とが貼り合わされた接合部14a及び接合部14bをそれぞれ取り出し、それぞれ25mm幅に切断して係止強度試験用サンプルを作製した。
(ii)係止強度試験用サンプルの腹側部11及び背側部13のそれぞれの長さ方向における端部を、引張試験機(型番AG−1kNI、株式会社島津製作所製)のチャック(チャック間距離10mm)に挟んだ。
(iii)引張試験機にて、係止強度試験用サンプルの腹側部11及び背側部13を180°方向に剥離するように引っ張り、荷重値を測定した。
(iv)測定された荷重値の最大値を係止強度(N/25mm)とした。なお、係止強度のCV値は、CV値=係止強度の標準偏差/係止強度の平均値、で算出した。
以上の測定結果を表2に示した。
【0074】
【表2】
【0075】
仮留め凸部列を含む下流側凸部列30Dを有するアンビル92を用いて製造された実施例の試料の方が、仮留め凸部列を含まない下流側凸部列30Dを有するアンビル92を用いて製造された比較例の試料よりも、左右の接合部の係止強度の差が小さくなることが判明した。そして、実施例の試料の方が、比較例の試料よりも、係止強度のσ、CV値が減少した。以上のことから、仮留め凸部列を用いることで、一対の接合部(融着部)の係止強度の相違を抑制できると共に、係止強度のばらつきを抑制できることが判明した。
【0076】
本発明の吸収性物品の製造方法は、上述した各実施の形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組合せや変更等が可能である。すなわち、各実施の形態に記載の各種の技術は互いに矛盾の生じない限り他の実施の形態にも適用可能である。