特許第6903068号(P6903068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの特許一覧

特許6903068高反応性イソブテンホモポリマーまたはコポリマーの製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903068
(24)【登録日】2021年6月24日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】高反応性イソブテンホモポリマーまたはコポリマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/10 20060101AFI20210701BHJP
   C08F 4/14 20060101ALI20210701BHJP
   C08F 4/54 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   C08F10/10
   C08F4/14
   C08F4/54
【請求項の数】14
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2018-543188(P2018-543188)
(86)(22)【出願日】2017年2月13日
(65)【公表番号】特表2019-509374(P2019-509374A)
(43)【公表日】2019年4月4日
(86)【国際出願番号】EP2017053096
(87)【国際公開番号】WO2017140602
(87)【国際公開日】20170824
【審査請求日】2020年2月13日
(31)【優先権主張番号】16155937.2
(32)【優先日】2016年2月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエイエスエフ・ソシエタス・エウロパエア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ローザ コルベラン ロク
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ミュールバッハ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ヴェトリング
(72)【発明者】
【氏名】セルゲイ ヴィー. コスチュク
(72)【発明者】
【氏名】イリーナ ヴァシレンコ
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリー シマン
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−519766(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0201772(US,A1)
【文献】 特開2016−210990(JP,A)
【文献】 英国特許出願公告第01419383(GB,A)
【文献】 特開昭50−023492(JP,A)
【文献】 特開2000−136207(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0041780(US,A1)
【文献】 特表2014−530931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−246/00
C08F 4/00− 4/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量Mn(ゲル透過クロマトグラフィーによって測定)500〜25000を有し、且つポリイソブテン鎖端あたりの末端ビニリデン二重結合の含有率が少なくとも70mol%である、高反応性イソブテンホモポリマーまたはコポリマーの製造方法であって、イソブテン、またはイソブテンを含むモノマー混合物を、重合触媒として有効なアルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体、または重合触媒として有効なアルキルアルミニウムハロゲン化物ドナー錯体の存在下で重合することを含み、前記アルミニウム三ハロゲン化物またはアルキルアルミニウムハロゲン化物を、少なくとも1つの無機水和物で処理し、前記水和物中で結晶水として結合された全ての水の、前記アルミニウム三ハロゲン化物またはアルキルアルミニウムハロゲン化物に対するモル比が、0.001:1〜0.4:1である、前記方法。
【請求項2】
前記無機水和物が、固定の化学量論組成量の結晶水を含み、その水分子の少なくとも一部が結晶格子の定位置に配置されている、固体のイオン性化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
イソブテン、またはイソブテンを含むモノマー混合物を、重合触媒として有効な、アルミニウムトリクロリドドナー錯体またはアルキルアルミニウムクロリドドナー錯体またはジアルキルアルミニウムクロリドドナー錯体の存在下で重合させる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
イソブテン、またはイソブテンを含むモノマー混合物を、アルミニウムトリクロリドドナー錯体、メチルアルミニウムジクロリドドナー錯体、エチルアルミニウムジクロリドドナー錯体、またはイソブチルアルミニウムジクロリドドナー錯体の存在下で重合する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記無機水和物が、一般式[Mm+xa-y]×zH2Oのイオン性化合物であって、前記式中、a、m、xおよびyは正の自然数であり、ただし、x×m=y×aであり、且つzはさらに、正の有理数であってよく、Mは1またはそれより多くのm価の正に帯電されたカチオンを意味し、且つAは1つまたはそれより多くのa価の負に帯電されたアニオンを意味する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
a、m、xおよびyは互いに独立して1、2、3または4である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
zは0超から18までであってよい、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記カチオンMm+が、Cs+、Rb+、K+、NH4+、Na+、Li+、Ba2+、Sr2+、Ca2+、Mg2+、Zn2+、Ni2+、Cu2+、Al3+、Mn2+、Fe2+、Fe3+およびCr3+からなる群から選択される、請求項5から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記アニオンAa-が、NO3-、CN-、I-、Br-、Cl-、F-、SO42-およびCO32-からなる群から選択される、請求項5からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記1つまたはそれより多くの無機水和物が、Na2CO3×10H2O、Na2CO3×1H2O、Na2SO4×10H2O、NiSO4×7H2O、ZnSO4×7H2O、ZnCl2×2H2O、FeSO4×7H2O、MnSO4×H2O、MnSO4×4H2O、MgCl2×6H2O、Mg(OH)2×4MgCO3×4H2O、MgSO4×7H2O、MgSO4×H2O、K2MgSO4×6H2O、(NH42MgSO4×6H2O、CaCl2×6H2O、CaSO4×2H2O、CuCl2×2H2O、CuSO4×5H2O、CuSO4×3H2O、CuSO4×1H2O、CoCl2×6H2O、CoCl2×4H2O、CoCl2×2H2O、CoCl2×1.5H2O、CoCl2×1H2O、CoSO4×7H2O、Al2(SO43×18H2O、Al2(SO43×16H2O、Al2(SO3×10H2O、Al2(SO43×6H2OおよびKAl(SO42×12H2Oからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記ドナーが、少なくとも1つのエーテル官能基を有する化合物、カルボキシルエステル官能基を有する化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、フェノール、アセタールおよびヘミアセタールからなる群から選択される、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ドナーが、一般式R1−O−R2のジヒドロカルビルエーテルであり、前記式中、可変要素R1およびR2は各々独立してC1〜C4−アルキル基、C6〜C12−アリール基、およびC7〜C12−アリールアルキル基である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記重合を、温度−90℃〜+30℃で実施する、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
アルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物ドナー錯体がイソブテン、またはイソブテンを含むモノマー混合物の重合前に別途製造される、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソブテン鎖端あたりの末端ビニリデン二重結合の含有率少なくとも70mol%を有する、高反応性イソブテンホモポリマーまたはコポリマーの新規の製造方法に関する。本発明はさらに、新規のイソブテンポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる低反応性ポリマーとは対照的に、高反応性イソブテンホモポリマーまたはコポリマーは、末端エチレン二重結合(α−二重結合)および引き続く反応、例えばマレイン酸無水物とのアルダー・エン反応に対して感受性のある他の反応性二重結合を、高含有率で、特に実際には通常、ポリイソブテン高分子の個々の鎖端に対して少なくとも70mol%、好ましくは少なくとも75mol%、非常に好ましくは少なくとも80mol%含むポリイソブテンを意味すると理解される。本願の文脈において、ビニリデン基は、ポリイソブテン高分子内での位置が一般式
【化1】
で記載される末端エチレン二重結合を意味し、つまり二重結合がポリマー鎖のα位に存在すると理解される。「ポリマー」は、1つのイソブテン単位によって短縮されたポリイソブテン基を表す。該ビニリデン基は、例えば、立体的にかさ高い反応物質、例えばマレイン酸無水物上への熱付加において最も高い反応性を示す一方で、多くの場合、高分子内側にさらに向かう二重結合は(存在する場合、)官能化反応においてより低い反応性を示す。高反応性ポリイソブテンの使用は、例えば独国特許発明第2702604号明細書(DE-A2702604)内に記載されるとおり、潤滑剤および燃料のための添加剤を製造するための中間生成物としての使用を含む。
【0003】
そのような高反応性ポリイソブテンは、例えば、独国特許発明第2702604号明細書(DE-A2702604)の方法によって、触媒としての三フッ化ホウ素の存在下での液相中でのイソブテンのカチオン重合によって得られる。ここでの欠点は、得られたポリイソブテンが比較的高い多分散度を有することである。多分散度は、生じるポリマー鎖の分子量分布の尺度であり、質量平均分子量Mと数平均分子量Mとの商(PDI=Mw/Mn)に相当する。
【0004】
同様に高い割合の末端二重結合を有するがより狭い分子量分布を有するポリイソブテンは、例えば、欧州特許出願公開第145235号明細書(EP-A145235)、米国特許第5408018号明細書(US5408018)および国際公開第99/64482号(WO99/64482)の方法によって得られ、その重合は失活された触媒、例えば三フッ化ホウ素とアルコールおよび/またはエーテルとの錯体の存在下で行われる。
【0005】
高反応性ポリイソブテンは、イソブテンのカチオンリビング重合、および生じる重合生成物の引き続く脱ハロゲン化によっても、例えば米国特許第5340881号明細書(US5340881)からの方法によっても得られる。しかしながら、そのような方法は複雑であり、なぜなら、二重結合を生成するために、カチオンリビング重合で導入されたハロゲン末端基を別の段階で除去しなければならないからである。
【0006】
場合により、ルイス酸のアルミニウムトリクロリドをイソブテンの重合触媒として使用できることも、例えばHigh Polymers, volume XXIV (part 2), p.713−733 (編集者: Edward C. Leonard), J. Wiley & Sons publishers, New York, 1971からさらに公知である。
【0007】
Topics in Catalysis Vol. 23, p.175−181 (2003)内のJames D. Burringtonらの文献「Cationic polymerization using heteropolyacid salt catalysts」は、イソブテン用の重合触媒としてのアルミニウムトリクロリドを用いて、低い含有率で末端ビニリデン二重結合(α−二重結合)を有する、反応性の低いポリイソブテンしか得られないことを示している。例えば、この文献の178ページの表1はAlClを用いて製造されたポリイソブテンの例を挙げており、それは数平均分子量Mn 1000〜2000、多分散度Mw/Mn 2.5〜3.5を有し、且つビニリデン異性体(α−二重結合)の含有率が5%だけである(65%の「トリ」、5%の「β」および25%の「テトラ」の他に)。
【0008】
Polymer Bulletin Vol.52, p.227−234 (2004)内のSergei V.Kostjukらの文献「Novel initiating system based on AlCl etherate for quasiliving cationic polymerization of styrene」は、スチレンの重合のための、2−フェニル−2−プロパノールおよびアルミニウムトリクロリド/ジ−n−ブチルエーテル錯体で構成される触媒系を記載している。そのように製造されたスチレンポリマーの多分散度Mw/Mnは「〜2.5」(要約参照)または「〜3」(230ページ参照)である。
【0009】
国際公開第11/101281号(WO11/101281)は、重合触媒として作用するアルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体の存在下で、イソブテンを含有するモノマー混合物を重合することによる、高反応性ポリイソブテンポリマーの製造を開示している。反応のための開始剤として、いくつかの有機化合物およびさらには水が開示されている。
【0010】
Dmitriy I. Shiman, Irina V. Vasilenko, Sergei V. Kostjuk, Journal of Polymer Science, Part A: Polymer Chemistry 2014, 52, 2386−2393は、重合触媒としての、アルキルアルミニウムハロゲン化物・エーテル錯体の存在下でイソブテンを重合することによるポリイソブテンポリマーの製造を開示している。開始剤として水を使用でき、さらなる部分の水が反応の間に添加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国特許発明第2702604号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第145235号明細書
【特許文献3】米国特許第5408018号明細書
【特許文献4】国際公開第99/64482号
【特許文献5】米国特許第5340881号明細書
【特許文献6】国際公開第11/101281号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】High Polymers, volume XXIV (part 2), p.713−733 (編集者: Edward C. Leonard), J. Wiley & Sons publishers, New York, 1971
【非特許文献2】James D. Burrington et al., “Cationic polymerization using heteropolyacid salt catalysts”, Topics in Catalysis Vol. 23, p.175−181 (2003)
【非特許文献3】Sergei V.Kostjuk et al., “Novel initiating system based on AlCl3 etherate for quasiliving cationic polymerization of styrene”, Polymer Bulletin Vol.52, p.227−234 (2004)
【非特許文献4】Dmitriy I. Shiman, Irina V. Vasilenko, Sergei V. Kostjuk, Journal of Polymer Science, Part A: Polymer Chemistry 2014, 52, 2386−2393
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、ポリイソブテン鎖端あたり、少なくとも70mol%の高められた含有率で末端ビニリデン二重結合を有すると共に、狭い分子量分布(つまり低い多分散度)を、許容される収率で有する、高反応性イソブテンホモポリマーまたはコポリマーの製造方法を提供することである。該触媒系は同時に、十分な活性および耐用寿命を有し、取り扱いに問題がなく、欠陥が生じにくいものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の課題は、ポリイソブテン鎖端あたりの末端ビニリデン二重結合の含有率が少なくとも70mol%、好ましくは少なくとも75mol%、および非常に好ましくは少なくとも80mol%である、高反応性イソブテンホモポリマーまたはコポリマーの製造方法であって、イソブテン、またはイソブテンを含むモノマー混合物を、重合触媒として有効なアルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体、または好ましくは重合触媒として有効なアルキルアルミニウムハロゲン化物ドナー錯体の存在下で重合することを含み、前記アルミニウム三ハロゲン化物または好ましくはアルキルアルミニウムハロゲン化物を、少なくとも1つの無機水和物で処理する、前記方法によって解決された。
【0015】
イソブテンホモポリマーは、本発明の文脈において、ポリマーに対して、少なくとも98mol%の程度、好ましくは少なくとも99mol%の程度でイソブテンから形成されているポリマーを意味すると理解される。従って、イソブテンコポリマーは、2mol%未満、好ましくは1mol%未満、非常に好ましくは0.7mol%未満、および特に0.5mol%未満の、イソブテン以外の共重合されたモノマー、例えばイソプレンまたは直鎖のブテン、好ましくは1−ブテン、シス−2−ブテン、およびトランス−2−ブテンを含むポリマーを意味すると理解される。
【0016】
本発明の文脈において、以下の定義が一般に定義される基に適用される:
1〜C8−アルキル基は、1〜8個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基である。それらの例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、2−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチル、n−オクチル、およびそれらの構造異性体、例えば2−エチルヘキシルである。そのようなC1〜C8−アルキル基は、少量のヘテロ原子、例えば酸素、窒素またはハロゲン原子、例えば塩素、および/または非プロトン性官能基、例えばカルボキシルエステル基、シアノ基またはニトロ基も含むことができる。
【0017】
1〜C20−アルキル基は、1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基である。それらの例は、前述のC1〜C8−アルキル基、およびさらにn−ノニル、イソノニル、n−デシル、2−プロピルヘプチル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、イソトリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシルおよびn−エイコシルである。そのようなC1〜C20−アルキル基は、少量のヘテロ原子、例えば酸素、窒素またはハロゲン原子、例えば塩素、および/または非プロトン性官能基、例えばカルボキシルエステル基、シアノ基またはニトロ基も含むことができる。
【0018】
5〜C8−シクロアルキル基は、アルキル側鎖を含み得る飽和環式基である。それらの例は、シクロペンチル、2−または3−メチルシクロペンチル、2,3−、2,4−または2,5−ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、2−、3−または4−メチルシクロヘキシル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−または3,6−ジメチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、2−、3−または4−メチルシクロヘプチル、シクロオクチル、2−、3−、4−または5−メチルシクロオクチルである。そのようなC5〜C8−シクロアルキル基は、少量のヘテロ原子、例えば酸素、窒素またはハロゲン原子、例えば塩素、および/または非プロトン性官能基、例えばカルボキシルエステル基、シアノ基またはニトロ基も含むことができる。
【0019】
6〜C20−アリール基またはC6〜C12−アリール基は、好ましくは任意に置換されたフェニル、任意に置換されたナフチル、任意に置換されたアントラセニル、または任意に置換されたフェナントレニルである。そのようなアリール基は、1〜5個の非プロトン性置換基または非プロトン性官能基、例えばC1〜C8−アルキル、C1〜C8−ハロアルキル、例えばC1〜C8−クロロアルキルまたはC1〜C8−フルオロアルキル、ハロゲン、例えば塩素またはフッ素、ニトロ、シアノまたはフェニルを有してよい。そのようなアリール基の例は、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラセニル、フェナントレニル、トリル、ニトロフェニル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、(トリフルオロメチル)フェニル、ビス(トリフルオロメチル)フェニル、(トリクロロ)メチルフェニルおよびビス(トリクロロメチル)フェニルである。
【0020】
7〜C20−アリールアルキル基またはC7〜C12−アリールアルキル基は、好ましくは任意に置換されたC1〜C4−アルキルフェニル、例えばベンジル、o−、m−またはp−メチルベンジル、1−または2−フェニルエチル、1−、2−または3−フェニルプロピルまたは1−、2−、3−または4−フェニルブチル、任意に置換されたC1〜C4−アルキルナフチル、例えばナフチルメチル、任意に置換されたC1〜C4−アルキルアントラセニル、例えばアントラセニルメチル、または任意に置換されたC1〜C4−アルキルフェナントレニル、例えばフェナントレニルメチルである。そのようなアリールアルキル基は、特にアリール部分の上に、1〜5個の非プロトン性置換基または非プロトン性官能基、例えばC1〜C8−アルキル、C1〜C8−ハロアルキル、例えばC1〜C8−クロロアルキル、またはC1〜C8−フルオロアルキル、ハロゲン、例えば塩素またはフッ素、ニトロまたはフェニルを有してよい。
【0021】
適したアルミニウム三ハロゲン化物は特に、アルミニウムトリフルオリド、アルミニウムトリクロリド、またはアルミニウムトリブロミド、好ましくはアルミニウムトリクロリドである。有用なアルキルアルミニウムハロゲン化物は特に、モノ(C1〜C4−アルキル)アルミニウム二ハロゲン化物、またはジ(C1〜C4−アルキル)アルミニウム一ハロゲン化物、例えばメチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド、またはジエチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、好ましくはエチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、またはジイソブチルアルミニウムクロリド、および非常に好ましくはエチルアルミニウムジクロリドおよびイソブチルアルミニウムジクロリドである。好ましい実施態様において、イソブテン、またはイソブテンを含むモノマー混合物を、重合触媒として有効な、アルキルアルミニウムジクロリドドナー錯体またはジアルキルアルミニウムクロリドドナーの存在下で重合させる。
【0022】
アルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物ドナー錯体中のドナーは、アルミニウム三ハロゲン化物またはアルキルアルミニウムハロゲン化物と相互作用できる少なくとも1つの自由電子対を有する電子供与性化合物である。
【0023】
好ましくは、そのようなドナーは、少なくとも1つのエーテル官能基(function)を有する化合物、および少なくとも1つのカルボン酸エステル官能基を有する化合物からなる群から選択される。さらなる可能性のあるドナーは、アルコール、アルデヒド、ケトン、フェノール、アセタールおよびヘミアセタールを含む。
【0024】
ドナー化合物として1つのエーテルを添加することも、1つより多くのエーテルの混合物を添加することも可能である。
【0025】
各々のエーテル化合物は、1またはそれより多くのエーテル官能基、例えば1、2、3、4、またはそれより多くのエーテル官能基、好ましくは1または2つのエーテル官能基、非常に好ましくは1つのエーテル官能基を含むことができる。
【0026】
異なる有機化合物の混合物は、少なくとも1つのエーテル官能基を有する、2、3、4またはそれより多くの異なる化合物、好ましくは2または3つの異なる化合物、および非常に好ましくは2つの異なる化合物を含むことができる。
【0027】
本発明の好ましい実施態様において、ドナーとして一般式R1−O−R2のジヒドロカルビルエーテルまたはそれらの混合物を含み、前記式中、可変要素R1およびR2は、各々独立してC1〜C20−アルキル基、好ましくはC1〜C8−アルキル基、特にC1〜C4−アルキル基、C5〜C8−シクロアルキル基、好ましくはC5〜C6−シクロアルキル基、C6〜C20−アリール基、特にC6〜C12−アリール基、またはC7〜C20−アリールアルキル基、特にC7〜C12−アリールアルキル基である、アルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物錯体、特にアルキルアルミニウムジクロリドドナー錯体またはジアルキルアルミニウムクロリドドナー錯体が使用される。C1〜C4−アルキル基、C6〜C12−アリール基、およびC7〜C12−アリールアルキル基が好ましい。
【0028】
上記のジヒドロカルビルエーテルは、開鎖または環式であってよく、ここで、環式エーテルの場合の2つの可変要素R1およびR2は、一緒になって環を形成してよく、そのような環は2または3つのエーテル酸素原子を含むこともできる。そのような開鎖および環式ジヒドロカルビルエーテルの例は、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−sec−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル、ジ−n−ヘプチルエーテル、ジ−n−オクチルエーテル、ジ−(2−エチルヘキシル)エーテル、メチル n−ブチルエーテル、メチル sec−ブチルエーテル、メチルイソブチルエーテル、メチル tert−ブチルエーテル、エチル n−ブチルエーテル、エチル sec−ブチルエーテル、エチルイソブチルエーテル、エチル tert−ブチルエーテル、n−プロピル−n−ブチルエーテル、n−プロピル sec−ブチルエーテル、n−プロピルイソブチルエーテル、n−プロピル tert−ブチルエーテル、イソプロピル n−ブチルエーテル、イソプロピル sec−ブチルエーテル、イソプロピルイソブチルエーテル、イソプロピル tert−ブチルエーテル、メチル n−ヘキシルエーテル、メチル n−オクチルエーテル、メチル 2−エチルヘキシルエーテル、エチル n−ヘキシルエーテル、エチル n−オクチルエーテル、エチル 2−エチルヘキシルエーテル、n−ブチル n−オクチルエーテル、n−ブチル 2−エチル−ヘキシルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−、1,3−および1,4−ジオキサン、ジシクロヘキシルエーテル、ジフェニルエーテル、アルキルアリールエーテル、例えばアニソールおよびフェネトール、ジトリルエーテル、ジキシリルエーテルおよびジベンジルエーテルである。
【0029】
さらには、二官能性エーテル、例えばジアルコキシベンゼン、好ましくはジメトキシベンゼン、非常に好ましくはベラトロール、およびエチレングリコールジアルキルエーテル、好ましくはエチレングリコールジメチルエーテルおよびエチレングリコールジエチルエーテルが好ましい。
【0030】
上記のジヒドロカルビルエーテルの中で、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテルおよびジフェニルエーテルが、アルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物錯体、特にアルキルアルミニウムジクロリドドナー錯体またはジアルキルアルミニウムクロリドドナー錯体のためのドナーとして特に有利であると判明している。
【0031】
好ましい実施態様において、ジヒドロカルビルエーテルの混合物は、第一級ジヒドロカルビル基を有する少なくとも1つのエーテルと、少なくとも1つの第二級または第三級ジヒドロカルビル基を有する少なくとも1つのエーテルとを含む。第一級ジヒドロカルビル基を有するエーテルとは、両方のジヒドロカルビル基が、第一級炭素原子を有するエーテル官能基に結合されているエーテルである一方で、少なくとも1つの第二級または第三級ジヒドロカルビル基を有するエーテルとは、少なくとも1つのジヒドロカルビル基が、第二級または第三級炭素原子を有するエーテル官能基に結合されているエーテルである。
【0032】
明確化のために、例えば、ジイソブチルエーテルは、第一級ジヒドロカルビル基を有するエーテルと考えられ、なぜなら、イソブチル基の第二級炭素原子は、官能性エーテル基の酸素原子に結合されているのではなく、ヒドロカルビル基は第一級炭素原子を介して結合されているからである。
【0033】
第一級ジヒドロカルビル基を有するエーテルについての好ましい例は、ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテルおよびジ−n−プロピルエーテルである。
【0034】
少なくとも1つの第二級または第三級ジヒドロカルビル基を有するエーテルについての好ましい例は、ジイソプロピルエーテル、メチル tert−ブチルエーテル、エチル tert−ブチルエーテルおよびアニソールである。
【0035】
本発明によるエーテルの好ましい混合物は、ジエチルエーテル/ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル/メチル tert−ブチルエーテル、ジエチルエーテル/エチル tert−ブチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル/ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル/メチル tert−ブチルエーテル、およびジ−n−ブチルエーテル/エチル tert−ブチルエーテルである。非常に好ましい混合物は、ジエチルエーテル/ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル/ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル/メチル tert−ブチルエーテルおよびジ−n−ブチルエーテル/エチル tert−ブチルエーテルであり、ジエチルエーテル/ジイソプロピルエーテルの混合物が特に好ましい。
【0036】
本発明のさらに好ましい実施態様において、選択的に、ドナーとして一般式R3−COOR4のヒドロカルビルカルボキシレートを含み、前記式中、可変要素R3およびR4は、互いに独立してC1〜C20−アルキル基、特にC1〜C8−アルキル基、C5〜C8−シクロアルキル基、C6〜C20−アリール基、特にC6〜C12−アリール基、またはC7〜C20−アリールアルキル基、特にC7〜C12−アリールアルキル基である、アルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物錯体、特にアルキルアルミニウムジクロリドドナー錯体またはジアルキルアルミニウムクロリドドナー錯体が使用される。
【0037】
上記のヒドロカルビルカルボキシレートの例は、メチルホルメート、エチルホルメート、n−プロピルホルメート、イソプロピルホルメート、n−ブチルホルメート、sec−ブチルホルメート、イソブチルホルメート、tert−ブチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、n−プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、n−ブチルアセテート、sec−ブチルアセテート、イソブチルアセテート、tert−ブチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、n−プロピルプロピオネート、イソプロピルプロピオネート、n−ブチルプロピオネート、sec−ブチルプロピオネート,イソブチルプロピオネート、tert−ブチルプロピオネート、メチルブチレート、エチルブチレート、n−プロピルブチレート、イソプロピルブチレート、n−ブチルブチレート、sec−ブチルブチレート、イソブチルブチレート、tert−ブチルブチレート、メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチルシクロヘキサンカルボキシレート、n−プロピルシクロヘキサンカルボキシレート、イソプロピルシクロヘキサンカルボキシレート、n−ブチルシクロヘキサンカルボキシレート、sec−ブチルシクロヘキサンカルボキシレート、イソブチルシクロヘキサンカルボキシレート、tert−ブチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート、n−プロピルベンゾエート、イソプロピルベンゾエート、n−ブチルベンゾエート、sec−ブチルベンゾエート、イソブチルベンゾエート、tert−ブチルベンゾエート、メチルフェニルアセテート、エチルフェニルアセテート、n−プロピルフェニルアセテート、イソプロピルフェニルアセテート、n−ブチルフェニルアセテート、sec−ブチルフェニルアセテート、イソブチルフェニルアセテートおよびtert−ブチルフェニルアセテートである。
【0038】
多官能価のヒドロカルビルカルボキシレート、例えばジカルボン酸またはポリカルボン酸のヒドロカルビルエステル、または一官能価のカルボン酸でエステル化された二官能価アルコールまたは多官能価アルコールを使用することも可能である。
【0039】
前者の例は、C1〜C20−アルキルエステル、特にシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テレフタル酸およびイソフタル酸のC1〜C8−アルキルエステルである。
【0040】
後者の例は、1,2−エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、1,8−オクチレングリコール、1,10−デシレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンおよびペンタエリトリトールのホルメート、アセテート、プロピオネート、ブチレートおよびベンゾエートである。
【0041】
上記のヒドロカルビルカルボキシレートの中で、エチルアセテートが、アルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物錯体、特にアルキルアルミニウムジクロリドドナー錯体またはジアルキルアルミニウムクロリドドナー錯体のためのドナーとして特に有利であることが判明している。
【0042】
さらに、アルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物錯体、特にアルキルアルミニウムジクロリドドナー錯体またはジアルキルアルミニウムクロリドドナー錯体のためのドナーとして特に有利なジヒドロカルビルエーテルおよびヒドロカルビルカルボキシレートは、ドナー化合物が合計の炭素数3〜16、好ましくは4〜16、特に4〜12、特に4〜8を有するものであることが判明している。特定の場合のジヒドロカルビルエーテルにおいて、合計6〜14、および特に8〜12個の炭素原子を有するものが特に好ましい。特定の場合のヒドロカルビルカルボキシレートにおいて、合計3〜10、特に4〜6個の炭素原子を有するものが特に好ましい。
【0043】
ドナーとしてのアルコールは、好ましくはC1〜C12−ヒドロカルビルアルコールであり、好ましくは分子あたり1つだけのヒドロキシル基を有する。特に適したC1〜C12−ヒドロカルビルアルコールは、直鎖または分枝鎖のC1〜C12−アルカノール、特に直鎖または分枝鎖のC1〜C6−アルカノール、C5〜C12−シクロアルカノール、およびC7〜C12−アリールアルカノールである。そのような化合物の典型的な例は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、n−ノナノール、n−デカノール、2−プロピルヘプタノール、n−ウンデカノール、n−ドデカノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、2−、3−または4−メチルシクロヘキサノール、シクロヘプタノール、ベンジルアルコール、1−または2−フェニルエタノール、1−、2−または3−フェニルプロパノール、1−、2−、3−または4−フェニルブタノール、(o−、m−またはp−メチルフェニル)メタノール、1,2−エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2,3−プロパントリオール(グリセロール)、1,2−エチレングリコールモノメチルエーテル、1,2−エチレングリコールモノエチルエーテル、1,3−プロピレングリコールモノメチルエーテルおよび1,3−プロピレングリコールモノエチルエーテルである。この種の様々なC1〜C12−ヒドロカルビルアルコールの混合物を使用することも可能である。
【0044】
分枝鎖および特に直鎖のC1〜C12−アルカノール、特に分枝鎖、および特に直鎖のC1〜C6−アルカノールを、C1〜C12−ヒドロカルビルアルコールとして使用することが特に好ましい。
【0045】
1〜12個の炭素原子を有するドナーとしてのアルデヒドおよびケトンは、脂肪族、脂環式または芳香族の性質であってよい。それらは一般に、アルデヒドまたはケトン官能基の他に、純粋な炭化水素骨格を含み、従って主として炭化水素の性質を有する。しかしかながら、それらは、少量のヘテロ原子、例えば窒素または酸素、またはヒドロキシル基に対して不活性であるさらなる官能基を含んでもよい。
【0046】
そのようなアルデヒドおよびケトンの典型的な例は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、n−ペンタナール、n−ヘキサナール、n−オクタナール、n−デカナール、n−ドデカナール、シクロペンチルカルバルデヒド、シクロヘキシルカルバルデヒド、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、2ーまたは3−フェニルプロピオンアルデヒド、2−、3−または4−フェニルブチルアルデヒド、アセトン、ブタノン、2−または3−ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびアセトフェノンである。この種の様々なアルデヒドまたはこの種の様々なケトンの混合物を使用することも可能である。
【0047】
1〜12個の炭素原子を有するアルデヒドおよびケトンとして、1〜4個の炭素原子を有するアルデヒドおよびケトン、特に1〜4個の炭素原子を有するアルデヒドを使用することが特に好ましい。
【0048】
ドナーとしてのヘミアセタールは、ヒドロカルビルアルコールおよびアルデヒドまたはケトン、好ましくは上記のアルコールおよびアルデヒドまたはケトンの、等モル量の反応によって得ることができる。使用される全(full)アセタールは、2当量のヒドロカルビルアルコールと1当量のアルデヒドまたはケトン、好ましくは上記のアルコールおよびアルデヒドまたはケトンの反応によって得ることができる。ヘミアセタールと全アセタールとの混合物を使用することも可能である。相応のヘミアセタールおよび全アセタールは一般に、互いに化学平衡である。
【0049】
ヒドロカルビルアルコールおよびアルデヒドまたはケトンからヘミアセタールおよび全アセタールを形成するために、アルコールの酸素をカルボニル基の上に付加してヘミアセタールを形成し、第2の段階で第2のアルコール分子を付加し且つ水を除去して全アセタールを形成することを可能にするプロトン酸の存在が必要である。通常、触媒量のプロトン酸で十分である。ここで、典型的なプロトン酸は、無機酸、例えば塩酸または希硫酸、または有機酸、例えばカルボン酸、例えば酢酸、トリクロロ酢酸またはトリフルオロ酢酸、またはスルホン酸、例えばメタンスルホン酸またはトルエンスルホン酸である。
【0050】
モノマーの形態で、例えば濃縮された水溶液の形態で、またはトリオキサンとして、またはパラホルムアルデヒドとして、少なくとも1つのC1〜C12−ヒドロカルビルアルコールとプロトン酸触媒反応してヘミアセタールまたは全アセタールを形成するために使用できるホルムアルデヒドが非常に特に好ましい。
【0051】
そのようなヘミアセタールおよび全アセタールの構造を、以下の一般式(I)に示す:
【化2】
[式中、
可変要素R15およびR16は互いに独立して、水素、C1〜C12−アルキル基、C5〜C12−シクロアルキル基、またはC7〜C12−アリールアルキル基であり、ここで、2つの可変要素R15およびR16は環を形成してもよく、2つの可変要素R15およびR16内の炭素原子の合計は1〜12でなければならず、
可変要素R17は水素(ヘミアセタールの場合)、またはアセタールの場合はC1〜C12−アルキル基、C5〜C12−シクロアルキル基、またはC7〜C12−アリールアルキル基であり、且つ、
可変要素R18は、C1〜C12−アルキル基、C5〜C12−シクロアルキル基、またはC7〜C12−アリールアルキル基である]。
【0052】
そのようなヘミアセタールおよび全アセタールの典型的な個々の例は、メタノールとホルムアルデヒドとのヘミアセタール、メタノールとホルムアルデヒドとの全アセタール、エタノールとホルムアルデヒドとのヘミアセタール、エタノールとホルムアルデヒドとの全アセタール、n−プロパノールとホルムアルデヒドとのヘミアセタール、n−プロパノールとホルムアルデヒドとの全アセタール、n−ブタノールとホルムアルデヒドとのヘミアセタール、n−ブタノールとホルムアルデヒドとの全アセタール、メタノールとアセトアルデヒドとのヘミアセタール、メタノールとアセトアルデヒドとの全アセタール、エタノールとアセトアルデヒドとのヘミアセタール、エタノールとアセトアルデヒドとの全アセタール、n−プロパノールとアセトアルデヒドとのヘミアセタール、n−プロパノールとアセトアルデヒドとの全アセタール、n−ブタノールとアセトアルデヒドとのヘミアセタール、およびn−ブタノールとアセトアルデヒドとの全アセタールである。
【0053】
ドナーとしてのフェノールの例は、置換または非置換のフェノールおよびナフトール、好ましくはフェノールである。
【0054】
フェノールの非常に好ましい例は、以下の式のものである:
【化3】
[式中、
19、R20およびR21は互いに独立して水素またはC1〜C8−アルキル、好ましくはC1〜C4−アルキルである]。
【0055】
好ましくは、R19、R20およびR21は互いに独立して水素、メチル、エチル、イソプロピル、sec−ブチルおよびtert−ブチルであり、非常に好ましくは水素、メチルおよびtert−ブチルである。
【0056】
好ましいフェノールは、フェノール、2−メチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、2−メチル−4−tert−ブチルフェノールおよび4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノールである。
【0057】
好ましいドナー化合物は、エーテル、アルコール、ケトンおよびフェノールであり、より好ましくはエーテル、ケトンおよびフェノールであり、且つも最も好ましくはエーテルである。
【0058】
上記のドナー化合物(官能基の合計として計算)の、アルミニウム三ハロゲン化物に対する、またはアルキルアルミニウムハロゲン化物に対する、特にアルキルアルミニウムジクロリドまたはジアルキルアルミニウムクロリドに対する、ドナー錯体中でのモル比は一般に、0.2:1〜1.5:1、特に0.3:1〜1.2:1、特に0.4:1〜1.1:1の範囲内で変動し、大抵の場合、それは0.4:1〜1:1である。しかしながら、より過剰なドナー化合物、多くの場合、10倍、および特に3倍までのモル過剰のドナー化合物を用いて作業することも可能であり、その際、過剰量のドナー化合物はさらに、溶剤または希釈剤として作用する。
【0059】
上記のアルミニウム三ハロゲン化物またはアルキルアルミニウムハロゲン化物の、イソブテンの単独重合の場合に使用されるイソブテンモノマーに対する、またはイソブテンの共重合の場合に使用される重合性モノマーの総量に対するモル比は、アルミニウム三ハロゲン化物またはアルキルアルミニウムハロゲン化物の各々個々の官能性部位に関して、一般に0.001:1〜0.2:1、好ましくは0.002:1〜0.1:1、非常に好ましくは0.003:1〜0.08:1、特に0.005:1〜0.05:1、および特に0.007:1〜0.03:1である。
【0060】
典型的には、アルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物錯体、特にアルキルアルミニウムジクロリドドナー錯体またはジアルキルアルミニウムクロリドドナー錯体は、重合前に、アルミニウム三ハロゲン化物またはアルキルアルミニウムハロゲン化物から、特に無水アルキルアルミニウムジクロリドまたはジアルキルアルミニウムクロリド、およびドナー化合物から別途製造され、次いで、通常、不活性溶剤、例えばハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン、またはより好ましくは非ハロゲン化炭化水素中に溶解され、重合媒体に添加される。しかしながら、前記錯体をin−situで製造した後に重合することもできる。さらに、あまり好ましくはないものの、アルミニウム三ハロゲン化物またはアルキルアルミニウムハロゲン化物、ドナー錯体、および無機水和物を別々に、イソブテン含有供給物に添加することも可能である。
【0061】
本発明の好ましい実施態様において、アルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物ドナー錯体を、少なくとも1つの無機水和物の存在下で製造し、次いで得られた反応混合物を重合媒体に計量供給する。
【0062】
任意に、反応混合物の固体含分または析出物を、(存在する場合)例えばろ過または傾瀉によって分離除去した後、重合媒体に添加する。
【0063】
本発明の1つの好ましい実施態様において、溶剤としてのハロゲン化炭化水素中、またはより好ましくは非ハロゲン化炭化水素中に溶解されたアルミニウム三ハロゲン化物またはアルキルアルミニウムハロゲン化物を、まず上記のドナーで処理し、次いで少なくとも1つの無機水和物で処理する。次いで、そのように得られた反応混合物を重合媒体に計量供給する。
【0064】
本発明の他のより好ましい実施態様において、溶剤としてのハロゲン化炭化水素中、またはより好ましくは非ハロゲン化炭化水素中に溶解されたアルミニウム三ハロゲン化物またはアルキルアルミニウムハロゲン化物を、まず少なくとも1つの無機水和物で処理し、次いで上記のドナーで処理する。次いで、そのように得られた反応混合物を重合媒体に計量供給する。
【0065】
本発明によれば、少なくとも1つの無機水和物を使用して、アルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物錯体を製造する。理論に束縛されることを意図するものではないが、水和物の効果は、アルミニウム三ハロゲン化物またはアルキルアルミニウムハロゲン化物、もしくはアルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物錯体を予め活性化することであると考えられる。そのように得られた予め活性化されたアルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物錯体は、同じ反応条件であり且つ本発明による無機水和物で処理されていない同じ量の触媒の下での重合と比較して、ポリイソブテン鎖端あたりの末端ビニリデン二重結合の含有率が増加すると共に狭い分子量分布(つまり低い多分散度)を有する反応生成物をもたらす。さらには、予め活性化された触媒を用いると、多くの場合、より高い重合率および/またはより高いポリマー収率が達成される。本発明による無機水和物を用いることで初めて、アルミニウム三ハロゲン化物またはアルキルアルミニウムハロゲン化物、もしくはアルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物錯体が制御された方法で処理されて、予め活性化された触媒が得られることが可能である一方で、無機水和物の代わりに水を使用することは、部分的に加水分解した生成物をみちびく。
【0066】
本文献の文脈において、「水和物」との文言は、水が原子、分子またはイオン、好ましくはイオンに、分子間力を介して結合している化合物を意味する。好ましくは、「水和物」とは、固定の化学量論組成量の結晶水を含む一方で、その水分子の少なくとも一部が結晶格子の定位置に配置されている、固体のイオン性化合物に関する。
【0067】
より好ましくは、水和物は、一般式[Mm+xa-y]×zH2Oのイオン性化合物であり、前記式中、a、m、xおよびyは正の自然数を意味し、ただしx×m=y×aであり、且つ、zはさらに、正の有理数であってよい。前記の一般式は通常、結晶化におけるそれぞれの水和物の式を表す。
【0068】
Mは1つまたはそれより多くの、好ましくは1つのm価の正に帯電されたカチオンを意味し、Aは1つまたはそれより多く、好ましくは1つの、a価の負に帯電されたアニオンを意味する。
【0069】
a、m、xおよびyの典型的な値は互いに独立して1、2、3および4、好ましくは1、2および3、およびより好ましくは1または2である。
【0070】
zの典型的な値は、0超から18まで、好ましくは1〜12、より好ましくは2〜8であってよい。
【0071】
カチオンMm+は、任意のm価の正に帯電されたカチオン、好ましくはm価の正に帯電された金属カチオン、より好ましくは元素周期律表の第1、2および3族の典型元素の、または第6、7、8または1族の遷移元素のカチオンを意味することができる。
【0072】
好ましいカチオンMm+の例は、Cs+、Rb+、K+、NH4+、Na+、Li+、Ba2+、Sr2+、Ca2+、Mg2+、Zn2+、Ni2+、Cu2+、Al3+、Mn2+、Fe2+、Fe3+およびCr3+、より好ましくはNa+、Ca2+、Mg2+、Cu2+、Al3+およびFe3+である。
【0073】
アニオンAa-は、任意のa価の負に帯電されたアニオンを意味することができる。
【0074】
好ましいアニオンAa-についての例は、NO3-、CN-、I-、Br-、Cl-、F-、SO42-、CO32-であり、より好ましくはCl-、SO42-およびCO32-および特にSO42-である。
【0075】
水和物の例は、Na2CO3×10H2O、Na2CO3×1H2O、Na2SO4×10H2O、NiSO4×7H2O、ZnSO4×7H2O、ZnCl2×2H2O、FeSO4×7H2O、MnSO4×H2O、MnSO4×4H2O、MgCl2×6H2O、Mg(OH)2×4MgCO3×4H2O、MgSO4×7H2O、MgSO4×H2O、K2MgSO4×6H2O、(NH42MgSO4×6H2O、CaCl2×6H2O、CaSO4×2H2O、CuCl2×2H2O、CuSO4×5H2O、CuSO4×3H2O、CuSO4×1H2O、CoCl2×6H2O、CoCl2×4H2O、CoCl2×2H2O、CoCl2×1.5H2O、CoCl2×1H2O、CoSO4×7H2O、Al2(SO43×18H2O、Al2(SO43×16H2O、Al2(SO3×10H2O、Al2(SO43×6H2Oである。
【0076】
ミョウバンの場合、2つのカチオンMm+が、式M+3+(SO42×12H2Oのイオン性塩を形成できる。M+は、K+、Na+、Rb+、Cs+およびNH4+からなる群から選択でき、M3+は、Al3+、Ga3+、In3+、Sc3+、Ti3+、V3+、Cr3+、Mn3+、Fe3+、Co3+、Rh3+およびIr3+からなる群から選択できる。好ましいミョウバンとして、KAl(SO42×12H2Oが言及される。
【0077】
それらの水和物の中で、Na2CO3×10H2O、Na2SO4×10H2O、ZnSO4×7H2O、MgSO4×7H2O、MgCl2×6H2O、K2MgSO4×6H2O、CuSO4×5H2O、CoCl2×6H2O、Al2(SO43×18H2OおよびKAl(SO42×12H2Oが好ましい。
【0078】
水和物中の結晶水として結合している全ての水の、上記のアルミニウム三ハロゲン化物またはアルキルアルミニウムハロゲン化物に対するモル比は、一般に0.001:1〜1:1、好ましくは0.005:1〜0.8:1、非常に好ましくは0.007:1〜0.7:1、特に0.01:1〜0.5:1、および特に0.015:1〜0.4:1である。
【0079】
さらには、重合を好ましくは、有機ヒドロキシル化合物または有機ハロゲン化合物および水から選択される、少なくとも1つの一官能価または多官能価、特に一官能価、二官能価または三官能価の開始剤水を追加的に使用して実施する。上記の開始剤の混合物、例えば2つまたはそれより多くの有機ヒドロキシル化合物の混合物、2つまたはそれより多くの有機ハロゲン化合物の混合物、1つまたはそれより多くのヒドロキシル化合物と1つまたはそれより多くの有機ハロゲン化合物との混合物、1つまたはそれより多くのヒドロキシル化合物と水との混合物、または1つまたはそれより多くの有機ハロゲン化合物と水との混合物を使用することも可能である。開始剤は、一官能価、二官能価または多官能価であってよく、つまり、1、2またはそれより多くのヒドロキシル基またはハロゲン原子が開始剤分子中に存在でき、それが重合反応を開始させる。二官能価または多官能価の開始剤の場合、2つまたはそれより多くの、特に2つまたは3つのポリイソブテン鎖端を有する、テレケリックイソブテンポリマーが典型的には得られる。
【0080】
開始剤または開始剤として使用される水と、アルミニウム三ハロゲン化物またはアルキルアルミニウムハロゲン化物、もしくはアルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物錯体の処理のために使用される無機水和物中の結晶水との間の違いは、開始剤は、重合によって得られるポリイソブテンポリマー中に少なくとも部分的に組み込まれることであり、なぜなら、開始剤は、重合を開始させるものとして作用するからである。従って、予め活性化されたアルミニウム三ハロゲン化物またはアルキルアルミニウムハロゲン化物、もしくはアルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物錯体が、反応混合物から別途製造されることが好ましい。
【0081】
1つだけのヒドロキシル基を分子内に有し且つ一官能価の開始剤として適している有機ヒドロキシル化合物は特に、アルコールおよびフェノール、特に一般式R5−OHのものを含み、前記式中、R5は、C1〜C20−アルキル基、特にC1〜C8−アルキル基、C5〜C8−シクロアルキル基、C6〜C20−アリール基、特にC6〜C12−アリール基、またはC7〜C20−アリールアルキル基、特にC7〜C12−アリールアルキル基である。さらに、R5基は、上記の構造の混合物も含むことができ、且つ/または既に上述したもの以外の官能基、例えばケト官能基、ニトロキシドまたはカルボキシル基、および/または複素環式構造要素を有することができる。
【0082】
そのような有機モノヒドロキシル化合物の典型的な例は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、フェノール、p−メトキシフェノール、o−、m−およびp−クレゾール、ベンジルアルコール、p−メトキシベンジルアルコール、1−および2−フェニルエタノール、1−および2−(p−メトキシフェニル)エタノール、1−、2−および3−フェニル−1−プロパノール、1−、2−および3−(p−メトキシフェニル)−1−プロパノール、1−および2−フェニル−2−プロパノール、1−および2−(p−メトキシフェニル)−2−プロパノール、1−、2−、3−および4−フェニル−1−ブタノール、1−、2−、3−および4−(p−メトキシフェニル)−1−ブタノール、1−、2−、3−および4−フェニル−2−ブタノール、1−、2−、3−および4−(p−メトキシフェニル)−2−ブタノール、9−メチル−9H−フルオレン−9−オール、1,1−ジフェニルエタノール、1,1−ジフェニル−2−プロピン−1−オール、1,1−ジフェニルプロパノール、4−(1−ヒドロキシ−1−フェニルエチル)ベンゾニトリル、シクロプロピルジフェニルメタノール、1−ヒドロキシ−1,1−ジフェニルプロパン−2−オン、ベンジル酸、9−フェニル−9−フルオレノール、トリフェニルメタノール、ジフェニル(4−ピリジニル)メタノール、α,α−ジフェニル−2−ピリジンメタノール、4−メトキシトリチルアルコール(特に固相としての重合体結合)、α−tert−ブチル−4−クロロ−4’−メチルベンズヒドロール、シクロヘキシルジフェニルメタノール、α−(p−トリル)−ベンズヒドロール、1,1,2−トリフェニル−エタノール、α,α−ジフェニル−2−ピリジンエタノール、α,α−4−ピリジルベンズヒドロール N−オキシド、2−フルオロトリフェニルメタノール、トリフェニルプロパルギルアルコール、4−[(ジフェニル)ヒドロキシメチル]ベンゾニトリル、1−(2,6−ジメトキシフェニル)−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノール、1,1,2−トリフェニルプロパン−1−オールおよびp−アニスアルデヒドカルビノールである。
【0083】
2つのヒドロキシル基を分子中に有し且つ二官能価の開始剤として適している有機ヒドロキシル化合物は特に、二価アルコールまたはジオールであって炭素の総数2〜30、特に3〜24、特に4〜20を有するもの、およびビスフェノールであって炭素の総数6〜30、特に8〜24、特に10〜20を有するもの、例えばエチレングリコール、1,2−およひ1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、1,2−、1,3−または1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ベンゼン(o−、m−またはp−ジクミルアルコール)、ビスフェノール A、9,10−ジヒドロ−9,10−ジメチル−9,10−アントラセンジオール、1,1−ジフェニルブタン−1,4−ジオール、2−ヒドロキシトリフェニルカルビノールおよび9−[2−(ヒドロキシメチル)フェニル]−9−フルオレノールである。
【0084】
1つのハロゲン原子を分子中に有し且つ一官能価の開始剤として適している有機ハロゲン化合物は特に、一般式R6−Halの化合物であり、前記式中、Halは、フッ素、ヨウ素および特に塩素および臭素から選択されるハロゲン原子であり、且つR6はC1〜C20−アルキル基、特にC1〜C8−アルキル基、C5〜C8−シクロアルキル基、またはC7〜C20−アリールアルキル基、特にC7〜C12−アリールアルキル基である。さらに、R6基は、上記の構造の混合物も含むことができ、且つ/または既に上述したもの以外の官能基、例えばケト官能基、ニトロキシドまたはカルボキシル基、および/または複素環式構造要素を有することができる。
【0085】
そのような一ハロゲン化合物の典型的な例は、塩化メチル、臭化メチル、塩化エチル、臭化エチル、1−クロロプロパン、1−ブロモプロパン、2−クロロプロパン、2−ブロモプロパン、1−クロロブタン、1−ブロモブタン、sec−ブチルクロリド、sec−ブチルブロミド、イソブチルクロリド、イソブチルブロミド、tert−ブチルクロリド、tert−ブチルブロミド、1−クロロペンタン、1−ブロモペンタン、1−クロロヘキサン、1−ブロモヘキサン、1−クロロヘプタン、1−ブロモヘプタン、1−クロロオクタン、1−ブロモオクタン、1−クロロ−2−エチルヘキサン、1−ブロモ−2−エチルヘキサン、シクロヘキシルクロリド、シクロヘキシルブロミド、ベンジルクロリド、ベンジルブロミド、1−フェニル−1−クロロエタン、1−フェニル−1−ブロモエタン、1−フェニル−2−クロロエタン、1−フェニル−2−ブロモエタン、1−フェニル−1−クロロプロパン、1−フェニル−1−ブロモプロパン、1−フェニル−2−クロロプロパン、1−フェニル−2−ブロモプロパン、2−フェニル−2−クロロプロパン、2−フェニル−2−ブロモプロパン、1−フェニル−3−クロロプロパン、1−フェニル−3−ブロモプロパン、1−フェニル−1−クロロブタン、1−フェニル−1−ブロモブタン、1−フェニル−2−クロロブタン、1−フェニル−2−ブロモブタン、1−フェニル−3−クロロブタン、1−フェニル−3−ブロモブタン、1−フェニル−4−クロロブタン、1−フェニル−4−ブロモブタン、2−フェニル−1−クロロブタン、2−フェニル−1−ブロモブタン、2−フェニル−2−クロロブタン、2−フェニル−2−ブロモブタン、2−フェニル−3−クロロブタン、2−フェニル−3−ブロモブタン、2−フェニル−4−クロロブタンおよび2−フェニル−4−ブロモブタンである。
【0086】
2つのハロゲン原子を分子中に有し且つ二官能価の開始剤として適している有機ハロゲン化合物は、例えば、1,3−ビス(1−ブロモ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン(1,3−ジクミルクロリド)および1,4−ビス(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン(1,4−ジクミルクロリド)である。
【0087】
開始剤は、より好ましくは、1つまたはそれより多くのヒドロキシル基が各々sp3混成炭素原子に結合されている有機ヒドロキシル化合物、1つまたはそれより多くのハロゲン原子が各々sp3混成炭素原子に結合されている有機ハロゲン化合物、および水から選択される。それらの中で、1つまたはそれより多くのヒドロキシル基が各々sp3混成炭素原子に結合されている有機ヒドロキシル化合物から選択される開始剤が特に好ましい。
【0088】
開始剤としての有機ハロゲン化合物の場合、さらに、1つまたはそれより多くのハロゲン原子が第二級、または特に第三級sp3混成炭素原子に結合されているものが特に好ましい。
【0089】
そのようなsp3混成炭素原子上に、ヒドロキシル基の他にR5、R6およびR7基を有し得る開始剤が特に好ましく、前記基は各々独立して水素、C1〜C20−アルキル、C5〜C8−シクロアルキル、C6〜C20−アリール、C7〜C20−アルキルアリールまたはフェニルであり、ここで、任意の芳香環は、1つまたはそれより多くの、好ましくは1つまたは2つのC1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、C1〜C4−ヒドロキシアルキルまたはC1〜C4−ハロアルキル基を置換基として有することもでき、ここで、前記可変要素R5、R6およびR7の1つ以下は水素であり、且つ前記可変要素R5、R6およびR7の少なくとも1つは、1つまたはそれより多くの、好ましくは1つまたは2つのC1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、C1〜C4−ヒドロキシアルキルまたはC1〜C4−ハロアルキル基を置換基として有し得るフェニルである。
【0090】
水、メタノール、エタノール、1−フェニルエタノール、1−(p−メトキシフェニル)エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、2−フェニル−2−プロパノール(クメン)、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、1−フェニル−1−クロロエタン、2−フェニル−2−クロロプロパン(クミルクロリド)、tert−ブチルクロリド、および1,3−または1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ベンゼンから選択される開始剤が非常に特に好ましい。それらの中で、水、メタノール、エタノール、1−フェニルエタノール、1−(p−メトキシフェニル)エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、2−フェニル−2−プロパノール(クメン)、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、1−フェニル−1−クロロエタン、および1,3−または1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ベンゼンから選択される開始剤が特に好ましい。
【0091】
上記の開始剤の、イソブテンの単独重合の場合に使用されるイソブテンモノマーに対する、またはイソブテンの共重合の場合に使用される重合性モノマーの総量に対するモル比は、開始剤の各々個々の官能性部位に関して、一般に0.0005:1〜0.1:1、特に0.001:1〜0.075:1、特に0.0025:1〜0.05:1である。水が単独の開始剤として、またはさらなる開始剤としての有機ヒドロキシル化合物および/または有機ハロゲン化合物と組み合わせて使用される場合、水の、イソブテンの単独重合の場合に使用されるイソブテンモノマーに対する、またはイソブテンの共重合の場合に使用される重合性モノマーの総量に対するモル比は、特に0.0001:1〜0.1:1、特に0.0002:1〜0.05:1である。
【0092】
ある割合の有機ヒドロキシルまたはハロゲン化合物として添加される開始剤分子が、ポリマー鎖中に組み込まれる。そのような組み込まれる有機開始剤分子によって開始されるポリマー鎖の割合(Ieff)は、100%までであってよく、一般には5〜90%である。残りのポリマー鎖は、開始剤分子としての微量の湿分に起因する水、または連鎖移動反応のいずれかから生じる。
【0093】
本発明のさらに好ましい実施態様において、重合は、各々、イソブテンの単独重合の場合に使用されるイソブテンモノマー1モルに対して、またはイソブテンの共重合の場合に使用される重合性モノマーの総量の1モルに対して、0.01〜10mmol、特に0.05〜5.0mmol、特に0.1〜1.0mmolの、窒素含有塩基性化合物の存在下で実施される。
【0094】
使用されるそのような窒素含有塩基性化合物は、一般式R7−NR89の脂肪族、脂環式または芳香族アミン、またはアンモニアであってよく、前記式中、可変要素R7、R8およびR9は各々独立して水素、C1〜C20−アルキル基、特にC1〜C8−アルキル基、C5〜C8−シクロアルキル基、C6〜C20−アリール基、特にC6〜C12−アリール基、またはC7〜C20−アリールアルキル基、特にC7〜C12−アリールアルキル基である。それらの可変要素のいずれも水素ではない場合、アミンは第三級アミンである。それらの可変要素の1つが水素である場合、アミンは第二級アミンである。それらの可変要素の2つが水素である場合、アミンは第一級アミンである。それらの可変要素の全てが水素である場合、アミンはアンモニアである。
【0095】
そのような一般式R7−NR89のアミンの典型的な例は、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、イソブチルアミン、tert−アミルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−tert−アミルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−(2−エチルヘキシル)アミン、ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジフェニルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−tert−ブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、トリ−イソブチルアミン、トリ−tert−アミルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−(2−エチルヘキシル)アミン、トリシクロペンチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリフェニルアミン、ジメチルエチルアミン、メチル−n−ブチルアミン、N−メチル−N−フェニルアミン、N,N−ジメチル−N−フェニルアミン、N−メチル−N,N−ジフェニルアミンまたはN−メチル−N−エチル−N−n−ブチルアミンである。
【0096】
さらに、使用されるそのような窒素含有塩基性化合物は、複数の、特に2つまたは3つの窒素原子を有し且つ2〜20の炭素原子を有する化合物であってもよく、ここで、それらの窒素は各々独立して水素原子または脂肪族、脂環式または芳香族の置換基を有することができる。そのようなポリアミンの例は、1,2−エチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,4−ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、N−メチル−1,2−エチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,2−エチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,2−エチレンジアミンまたはN,N−ジメチル−1,3−プロピレンジアミンである。
【0097】
しかしながら、この種の適した窒素含有塩基性化合物は特に、飽和、部分的に不飽和、または不飽和の窒素含有の5員または6員の複素環であって、1、2または3つの環窒素原子を含み、且つ酸素および硫黄の群からの1または2つのさらなる環ヘテロ原子および/またはヒドロカルビル基、特にC1〜C4−アルキル基および/またはフェニル、および/または官能基またはヘテロ原子、特にフッ素、塩素、臭素、ニトロおよび/またはシアノを置換基として有し得るものであり、例えばピロリジン、ピロール、イミダゾール、1,2,3−または1,2,4−トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、ピペリジン、ピラザン、ピラゾール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2,3−、1,2,4−または1,2,5−トリアジン、1,2,5−オキサチアジン、2H−1,3,5−チアジアジンまたはモルホリンである。
【0098】
しかしながら、非常に特に適したこの種の窒素含有塩基性化合物は、ピリジンまたはピリジンの誘導体(特にモノ−、ジ−またはトリ−C1〜C4−アルキル置換されたピリジン)、例えば2−、3−または4−メチルピリジン(ピコリン)、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−または3,6−ジメチルピリジン(ルチジン)、2,4,6−トリメチルピリジン(コリジン)、2−、3−または4−tert−ブチルピリジン、2−tert−ブチル−6−メチルピリジン、2,4−、2,5−、2,6−または3,5−ジ−tert−ブチルピリジンまたは2−、3−または4−フェニルピリジンである。
【0099】
単独の窒素含有塩基性化合物、またはそのような窒素含有塩基性化合物の混合物を使用することが可能である。
【0100】
イソブテンまたはイソブテンを含むモノマー混合物を、重合されるべきモノマーとして使用するために、適したイソブテン源は、純粋なイソブテンと、イソブテン系の(isobutenic)C4炭化水素流、例えばC4ラフィネート、特に「ラフィネート1」、イソブタン脱水素からのC4カット、スチーム・クラッカーからの、およびFCCクラッカー(流動接触分解)からのC4カットとの両方であるが、ただし、それらは本質的に、その中に存在する1,3−ブタジエンが除去されている。FCC精油所ユニットからのC4炭化水素流は、「b/b」流としても知られている。さらに適したイソブテン系のC4炭化水素流は、例えば、プロピレン・イソブタンの共酸化の生成物流、またはメタセシスユニットからの生成物流であり、それらは一般に、慣例的な精製および/または濃縮の後に使用される。適したC4炭化水素流は一般に、500ppm未満、好ましくは200ppm未満のブタジエンを含む。1−ブテンの存在、およびシス−およびトランス−2−ブテンの存在は、本質的に重要ではない。典型的には、上記のC4炭化水素流中のイソブテン濃度は、40〜60質量%の範囲内である。例えば、ラフィネート1は一般に、本質的に30〜50質量%のイソブテン、10〜50質量%の1−ブテン、10〜40質量%のシス−およびトランス−2−ブテン、および2〜35質量%のブタンからなり、本発明による重合方法においては、ラフィネート1中の非分枝鎖のブテンは一般に実際には不活性な挙動であり、且つイソブテンだけが重合される。
【0101】
好ましい実施態様において、重合のために使用されるモノマー源は、イソブテン含有率1〜100質量%、特に1〜99質量%、特に1〜90質量%、より好ましくは30〜60質量%を有する、工業的なC炭化水素流、特にラフィネート1流、FCC製油所ユニットからのb/b流、プロピレン・イソブタン共酸化からの生成物流、またはメタセシスユニットからの生成物流である。
【0102】
特に、ラフィネート1流がイソブテン源として使用される場合、特に、重合が−20℃〜+30℃、特に0℃〜+20℃の温度で行われる場合、単独の開始剤として、またはさらなる開始剤として水を使用することが有用であることが判明している。しかしながら、−20℃〜+30℃、特に0℃〜+20℃の温度で、ラフィネート1流がイソブテン源として使用される場合、開始剤の使用を省略することも可能である。
【0103】
上記のイソブテン系のモノマー混合物は、収率または選択性を決定的に損なうことなく、少量の汚染物質、例えば水、カルボン酸または鉱酸を含むことができる。そのような有害な物質を、例えば固体吸着剤、例えば活性炭、分子ふるいまたはイオン交換体上に吸着させることにより、イソブテン系モノマー混合物から除去することによって、それらの不純物の濃縮を防ぐことが適切である。
【0104】
イソブテンのモノマー混合物、またはイソブテン系炭化水素混合物を、イソブテンと共重合可能なオレフィン性不飽和モノマーを用いて変換することも可能である。イソブテンのモノマー混合物が、適切なコモノマーと共に共重合されるべき場合、そのモノマー混合物は好ましくは少なくとも5質量%、より好ましくは少なくとも10質量%、および特に少なくとも20質量%のイソブテン、および好ましくは最高で95質量%、より好ましくは最高で90質量%、および特に最高で80質量%のコモノマーを含む。
【0105】
有用な共重合性モノマーは、ビニル芳香族化合物、例えばスチレンおよびα−メチルスチレン、C1〜C4−アルキルスチレン、例えば2−、3−および4−メチルスチレン、および4−tert−ブチルスチレン、ハロスチレン、例えば2−、3−または4−クロロスチレン、および5〜10個の炭素原子を有するイソオレフィン、例えば2−メチルブテン−1、2−メチルペンテン−1、2−メチルヘキセン−1、2−エチルペンテン−1、2−エチルヘキセン−1および2−プロピルヘプテン−1を含む。さらに有用なコモノマーは、シリル基を有するオレフィン、例えば1−トリメトキシシリルエテン、1−(トリメトキシシリル)プロペン、1−(トリメトキシシリル)−2−メチル−プロペン−2、1−[トリ(メトキシエトキシ)シリル]エテン、1−[トリ(メトキシエトキシ)シリル]プロペン、および1−[トリ(メトキシエトキシ)シリル]−2−メチルプロペン−2を含む。さらに、重合条件に依存して、有用なコモノマーはイソプレン、1−ブテンおよびシス−およびトランス−2−ブテンも含む。
【0106】
本発明による方法をコポリマーの製造のために使用する場合、前記方法を、ランダムポリマーが優先的に形成されるように、またはブロックコポリマーが優先的に形成されるように構成することができる。ブロックコポリマーを製造するために、例えば、種々のモノマーを連続的に重合反応に供給し、この場合、第2のコモノマーは、第1のコモノマーが既に少なくとも部分的に重合されるまで特に添加されない。このようにして、ジブロック、トリブロック、およびより高次のブロックのコポリマーが得られ、それはモノマー添加の順により、末端のブロックとして1種または他のコモノマーのブロックを有する。しかしながら、場合によっては、ブロックコポリマーは、全てのコモノマーが重合反応に同時に供給され、それらの1つが他のものよりも著しく迅速に重合する場合にも形成される。これは特に、イソブテンおよびビニル芳香族化合物、特にスチレンが本発明による方法において共重合される場合に該当する。これは好ましくは末端ポリスチレンブロックを有するブロックコポリマーを形成する。これは、ビニル芳香族化合物、特にスチレンが、イソブテンよりも著しくよりゆっくりと重合するという事実に起因する。
【0107】
重合を連続的またはバッチ式のいずれかで行うことができる。連続的な方法は、イソブテンの連続的な重合のための従来技術の方法と類似して、三フッ化ホウ素系触媒の存在下で液相中で実施できる。
【0108】
本発明による方法は、低温、例えば−90℃〜0℃での実施、または高温、つまり少なくとも0℃、例えば0℃〜+30℃、または0℃〜+50℃での実施のいずれのためにも適している。しかしながら、本発明による方法における重合は、好ましくは比較的低温、一般に−70℃〜−10℃、特に−60℃〜−15℃で実施される。
【0109】
本発明による方法における重合が、重合されるべきモノマーまたはモノマー混合物の沸点で、またはそれより上で行われる場合、好ましくは、圧力容器内、例えばオートクレーブ内、または圧力反応器内で実施される。
【0110】
本発明による方法における重合は、好ましくは不活性希釈剤の存在下で実施される。使用される不活性希釈剤は、重合反応の間に一般に生じる反応溶液の粘度の上昇を、発生する反応熱の除去が確実にされ得る程度に低減するために適しているべきである。適した希釈剤は、使用される試薬に対して不活性である溶剤または溶剤混合物である。適した希釈剤は、例えば、脂肪族炭化水素、例えばn−ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンおよびイソオクタン、脂環式炭化水素、例えばシクロペンタンおよびシクロヘキサン、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエンおよびキシレン、およびハロゲン化炭化水素、特にハロゲン化脂肪族炭化水素、例えば塩化メチル、ジクロロメタンおよびトリクロロメタン(クロロホルム)、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタンおよび1−クロロブタン、およびさらに、ハロゲン化芳香族炭化水素、およびアルキル側鎖においてハロゲン化されたアルキル芳香族化合物、例えばクロロベンゼン、モノフルオロメチルベンゼン、ジフルオロメチルベンゼンおよびトリフルオロメチルベンゼン、および上述の希釈剤の混合物である。使用される希釈剤、または上記の溶剤混合物中で使用される構成要素も、イソブテン系C4炭化水素流の不活性成分である。非ハロゲン化溶剤が、上記のリストのハロゲン化溶剤よりも好ましい。
【0111】
本発明の好ましい実施態様において、アルキルアルミニウムジクロリドドナー錯体またはジアルキルアルミニウムクロリドドナー錯体を、非ハロゲン化溶剤と共に重合触媒として、ハロゲン化溶剤の不在下で使用する。
【0112】
本発明の重合を、不活性希釈剤としての、ハロゲン化炭化水素中、特にハロゲン化脂肪族炭化水素中、またはハロゲン化炭化水素の、特にハロゲン化脂肪族炭化水素の混合物中、または少なくとも1つのハロゲン化炭化水素、特にハロゲン化脂肪族炭化水素と少なくとも1つの脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素との混合物、例えばジクロロメタンとn−ヘキサンとの、典型的には体積比10:90〜90:10、特に50:50〜85:15での混合物中で実施できる。使用の前に、希釈剤は、例えば固体吸着剤、例えば活性炭、分子ふるいまたはイオン交換体上への吸着によって、不純物、例えば水、カルボン酸または鉱酸が、好ましくは除去されている。
【0113】
好ましい実施態様において、本発明の重合を、ハロゲン不含の脂肪族、または特にハロゲン不含の芳香族炭化水素、特にトルエン中で実施する。この実施態様について、上記の有機ヒドロキシル化合物および/または上記の有機ハロゲン化合物と組み合わせた水、または特に単独の開始剤としての水が特に有利であることが判明している。
【0114】
本発明による方法における重合を、好ましくは、実質的に非プロトン性の反応条件下、および特に実質的に無水の反応条件下で実施する。実質的に非プロトン性の反応条件、および実質的に無水の反応条件とは、それぞれ、反応混合物中のプロトン性の不純物の含有率および水の含有率が50ppm未満、および特に5ppm未満であることを意味すると理解される。従って、一般に、原料を使用の前に物理的手段および/または化学的手段で乾燥させる。より具体的には、溶剤として使用される脂肪族または脂環式炭化水素を、慣例的な予備精製および予備乾燥の後、微量の水を溶剤から本質的に除去するために十分な量で、有機金属化合物、例えば有機リチウム、有機マグネシウムまたは有機アルミニウム化合物と混合することが有用であることが判明している。そのように処理された溶剤は次いで、好ましくは凝縮されて直接的に反応容器に入れられる。重合されるべきモノマーを用いて、特にイソブテンを用いて、またはイソブテン混合物を用いて、同様の方法で進めることも可能である。他の慣例的な乾燥剤、例えば分子ふるいまたは予備乾燥された酸化物、例えば酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化カルシウムまたは酸化バリウムを用いる乾燥も適している。金属、例えばナトリウムまたはカリウムを用いた、または金属アルキルを用いた乾燥が選択できないハロゲン化溶剤は、このために適した乾燥剤を用いて、例えば塩化カルシウム、五酸化リンまたは分子ふるいを用いて水または微量の水を除去する。類似の方法で、同様に金属アルキルでの処理が選択できない原料、例えばビニル芳香族化合物を乾燥させることも可能である。使用される開始剤のいくつかまたは全てが水である場合、その水開始剤を制御された特定の量で使用できるように、残留湿分を、反応前に乾燥させることによって溶剤およびモノマーから好ましくは非常に本質的または完全に除去すべきであり、その結果、より高い工程制御および結果の再現性が得られる。
【0115】
イソブテンの、またはイソブテン系出発材料の重合は一般に、アルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物錯体、特にアルキルアルミニウムジクロリドドナー錯体またはジアルキルアルミニウムクロリドドナー錯体が、イソブテンまたはイソブテン系モノマー混合物と、所望の反応温度で接触する際に自発的に進行する。ここでの手順は、最初にモノマーを(任意に希釈剤中で)装入して、それを反応温度にして、次いでアルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物錯体、特にアルキルアルミニウムジクロリドドナー錯体またはジアルキルアルミニウムクロリドドナー錯体を添加するという手順であってよい。該手順は、最初にアルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物錯体、特にアルキルアルミニウムジクロリドドナー錯体またはジアルキルアルミニウムクロリドドナー錯体を(任意に希釈剤中で)装入して、次いでモノマーを添加するという手順であってもよい。その場合、重合の開始は、全ての反応物質が反応容器内に存在する時点であるとみなされる。
【0116】
イソブテンコポリマーを製造するためには、最初にモノマーを(任意に希釈剤中で)装入して、次いでアルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物錯体、特にアルキルアルミニウムジクロリドドナー錯体またはジアルキルアルミニウムクロリドドナー錯体を添加するという手順であってよい。反応温度を、アルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物錯体の、特にアルキルアルミニウムジクロリドドナー錯体またはジアルキルアルミニウムクロリドドナー錯体の添加の前またはその後に確立することができる。該手順は、最初に1つだけのモノマーを(任意に希釈剤中で)装入して、次いでアルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物錯体、特にアルキルアルミニウムジクロリドドナー錯体またはジアルキルアルミニウムクロリドドナー錯体を添加し、そして、特定の時間の後にのみ、例えば少なくとも60%、少なくとも80%または少なくとも90%のモノマーが変換されたときにさらなるモノマーを添加するという手順であってもよい。代替的に、アルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物錯体、特にアルキルアルミニウムジクロリドドナー錯体またはジアルキルアルミニウムクロリドドナー錯体を(任意に希釈剤中で)最初に装入し、次いでモノマーを同時または連続的に添加してもよく、次いで、所望の反応温度を確立してよい。その場合、重合の開始は、アルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物錯体、特にアルキルアルミニウムジクロリドドナー錯体またはジアルキルアルミニウムクロリドドナー錯体、および前記モノマーの少なくとも1つが反応容器内に存在する時点であるとみなされる。
【0117】
ここで記載されるバッチ式手順の他に、本発明による方法における重合を連続的な方法として構成することもできる。この場合、原料、つまり重合されるべきモノマー、任意に希釈剤、および任意にアルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物錯体、特にアルキルアルミニウムジクロリドドナー錯体またはジアルキルアルミニウムクロリドドナー錯体を、連続的に重合反応に供給し、且つ反応生成物を連続的に取り出して、多かれ少なかれ、安定な状態の重合条件を反応器内で確立する。重合されるべきモノマーを、そのままで、希釈剤または溶剤で希釈して、またはモノマー含有炭化水素流として、供給できる。
【0118】
重合触媒として有効なアルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体、またはアルキルアルミニウムハロゲン化物錯体、特にアルキルアルミニウムジクロリドドナー錯体またはジアルキルアルミニウムクロリドドナー錯体は一般に、重合媒体中に溶解、分散または懸濁された形態で存在する。アルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物錯体を、特にアルキルアルミニウムジクロリドドナー錯体またはジアルキルアルミニウムクロリドドナー錯体を、慣例的な担体材料上へ担持させることも可能である。本発明の重合方法のために適した反応器のタイプは、典型的には撹拌タンク型反応器、ループ型反応器、および管型反応器、さらに、流動層(fluidized bed)反応器、溶剤を用いる、または用いない撹拌タンク型反応器、流動床(fluid bed)反応器、連続的な固定床反応器、およびバッチ式の固定床反応器(バッチモード)である。
【0119】
本発明による方法において、重合触媒として有効なアルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物錯体、特にアルキルアルミニウムジクロリドドナー錯体またはジアルキルアルミニウムクロリドドナー錯体を、一般に、アルミニウム三ハロゲン化物ドナー錯体またはアルキルアルミニウムハロゲン化物錯体中の、特にアルキルアルミニウムジクロリドドナー錯体またはジアルキルアルミニウムクロリドドナー錯体中のアルミニウムの、イソブテンの単独重合の場合にはイソブテンに対する、またはイソブテンの共重合の場合には使用される重合性モノマーの総量に対するモル比が、1:5〜1:5000、好ましくは1:10〜1:5000、特に1:15〜1:1000、特に1:20〜1:250の範囲内である量で使用する。
【0120】
反応を停止させるために、反応混合物を、例えばプロトン性化合物を添加することによって、特に水、アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノールおよびイソプロパノール、またはそれらと水との混合物を添加することによって、または塩基性水溶液、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムまたは水酸化カルシウム、アルカリ金属またはアルカリ土類金属炭酸塩、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウムまたは炭酸カルシウム、またはアルカリ金属またはアルカリ土類金属炭酸水素塩、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウムまたは炭酸水素カルシウムの水溶液を添加することによって、好ましくは失活させる。
【0121】
本発明による方法は、ポリイソブテン鎖端あたりの末端ビニリデン二重結合(α−二重結合)の含有率が少なくとも70mol%、好ましくは少なくとも75mol%、および非常に好ましくは少なくとも80mol%、好ましくは少なくとも85mol%、より好ましくは少なくとも90mol%、より好ましくは91mol%より多く、および特に少なくとも95mol%、例えば事実上100mol%である、高反応性イソブテンホモポリマーまたはコポリマーを製造するために役立つ。より具体的には、本発明による方法は、イソブテンと、少なくとも1つのビニル芳香族モノマー、特にスチレンとから形成され、且つ、ポリイソブテン鎖端あたりの末端ビニリデン二重結合(α−二重結合)の含有率が少なくとも70mol%、好ましくは少なくとも75mol%、好ましくは少なくとも80mol%、好ましくは少なくとも85mol%、より好ましくは少なくとも90mol%、より好ましくは91mol%より多く、および特に少なくとも95mol%、例えば事実上100mol%である、高反応性イソブテンコポリマーを製造するためにも役立つ。イソブテンと少なくとも1つのビニル芳香族モノマー、特にスチレンとのそのようなコポリマーを製造するために、イソブテン、またはイソブテン系炭化水素カットを、イソブテン対ビニル芳香族化合物の質量比5:95〜95:5、特に30:70〜70:30で、少なくとも1つのビニル芳香族モノマーと共重合させる。
【0122】
本発明による方法により製造された高反応性イソブテンホモポリマーまたはコポリマー、特にイソブテンホモポリマーは、好ましくは多分散度(PDI=Mw/Mn)1.05〜3.5未満、好ましくは1.05〜3.0未満、好ましくは1.05〜2.5未満、好ましくは1.05〜2.3、より好ましくは1.05〜2.0、および特に1.1〜1.85を有する。最適な工程レジームの場合、典型的なPDI値は1.2〜1.7である。本発明による方法によって製造された高反応性イソブテンホモポリマーまたはコポリマーは、好ましくは、数平均分子量Mn(ゲル透過クロマトグラフィーによって測定)好ましくは500〜250000、より好ましくは500〜100000、さらにより好ましくは500〜25000、および特に500〜5000を有する。さらにより好ましくは、イソブテンホモポリマーは、500〜10000、および特に500〜5000、例えば約1000または約2300の数平均分子量Mnを有する。
【0123】
末端ビニリデン二重結合を有し且つ組み込まれた開始剤分子も含み且つ本発明により製造されたイソブテンホモポリマー中で主要な割合で生じるいくつかのイソブテンポリマーは、新規の化合物である。従って、本発明は、一般式Iのイソブテンポリマーも提供する:
【化4】
[式中、
10、R11およびR12は各々独立して水素、C1〜C20−アルキル、C5〜C8−シクロアルキル、C6〜C20−アリール、C7〜C20−アルキルアリールまたはフェニルであり、ここで任意の芳香環は1つまたはそれより多くのC1〜C4−アルキル基またはC1〜C4−アルコキシ基、または一般式II
【化5】
の部分を置換基として有することもでき、ここで、可変要素R10、R11またはR12の1つ以下は水素であり、且つ可変要素R10、R11またはR12の少なくとも1つは、1つまたはそれより多くのC1〜C4−アルキル基またはC1〜C4−アルコキシ基、または一般式IIの部分を置換基として有することもできるフェニルであり、且つ
nは9〜4500、好ましくは9〜180、特に9〜100、特に12〜50の数である]。
【0124】
好ましい実施態様において、R10、R11およびR12は各々独立して水素、C1〜C4−アルキル、特にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、または1つまたは2つのC1〜C4−アルキル基またはC1〜C4−アルコキシ基、または一般式IIの部分を置換基として有することもできるフェニルであり、ここで、可変要素R10、R11およびR12の1つ以下は水素であり、且つ可変要素R10、R11およびR12の少なくとも1つは、1つまたは2つのC1〜C4−アルキル基またはC1〜C4−アルコキシ基、または一般式IIの部分を置換基として有することもできるフェニルであり、且つ、nは9〜4500、好ましくは9〜180、特に9〜90、特に15〜45の数である。
【0125】
本発明による方法は、イソブテンまたはイソブテンを含むモノマー混合物を、カチオン性条件下で、一般に20〜100%、特に35〜90%の十分に高い変換率で、一般に5〜120分、特に30〜120分の短い反応時間でうまく重合して、ポリイソブテン鎖端あたりの末端ビニリデン二重結合含有率少なくとも70mol%、好ましくは少なくとも75mol%、および非常に好ましくは少なくとも80mol%を有し且つ狭い分子量分布を有する、高反応性イソブテンホモポリマーまたはコポリマーをもたらす。
【0126】
本発明による方法の利点は、水和物の使用により、反応の収率が、開始剤を用いない反応と比較して高められると共に、ポリイソブテン鎖端あたりの末端ビニリデン二重結合の含有率が、同等の反応条件下で開始剤としての水の存在下で行われた同じ反応と比較して増加した生成物をみちびくことである。
【0127】
以下の実施例は、本発明を限定することなく、詳細に説明することが意図されている。
【実施例】
【0128】
重合反応を、コールドフィンガーコンデンサを備えたガラス管内、または場合によりPTFEライニングを備えたステンレス鋼反応器内で、アルゴン雰囲気下、10℃で行った。
【0129】
典型的な手順の例として、iBuAlCl2の予めの活性化を、ガラス反応器内、アルゴン雰囲気下で室温で行った。所要量のMgSO4×7H2O(0.026g)をフラスコ内に装入した。次いで、トルエン(またはn−ヘキサン)中、1MのiBuAlCl2溶液5mLをフラスコに添加し、且つ、反応混合物を、塩が完全に溶解するまで撹拌した。
【0130】
典型的な手順の例として、イソブチレン(3.25g、5.8×10-2mol)を、ジイソプロピルエーテル(0.18mL、1M)およびiBuAlCl2(0.22mL、1M)のn−ヘキサン(またはトルエン)中の溶液、およびn−ヘキサン(4.8mL)からなる、総体積5.25mLの混合物へと添加することにより重合を開始した。次いで、反応の開始から3分後、6μL(3.3×10-4mol)の脱イオンH2Oを、マイクロシリンジを介して前記系に導入した。予め決められた反応時間の後、約2mLのエタノールを反応器に注入して、重合を終わらせる。急冷された反応混合物をn−ヘキサンによって希釈し、0.5Mの硝酸および脱イオン水で洗浄して、アルミニウム含有残留物を除去し、減圧下で蒸発させて乾燥させ、真空中(≦60℃)で乾燥させて、ポリマー生成物をもたらした。
【0131】
生成物の収率を重量測定により測定した。数平均分子量Mnおよび質量平均分子量Mwは、ポリスチレン標準を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC、MnSEC)によって、または1H NMR(MnNMR)によって測定した。そのように得られた値を使用して、多分散度PDI=Mw/Mnを計算した。反応生成物の組成を1H−NMR法によって測定し、An−Ru Guo, Xiao−Jian Yang, Peng−Fei Yan, Yi−Xian Wu, Journal of Polymer Science, Part A: Polymer Chemistry 2013, 51, 4200−4212(特に4205ページおよび4206ページの図5参照)内に記載されるような構造であると特定された。
【0132】
本発明の文脈において、「exo」との用語は、1ページの式1に示されるとおり、末端エチレン二重結合、ビニリデン基、またはα−二重結合に関する。それらの用語は、本文を通じて同義的に使用される。
【0133】
「全ビニリデン」との用語は、上記のexoと称される末端エチレン二重結合、およびさらに以下の式の右に示されるようなポリマー主鎖で内部に位置する二重結合を意味する:
【化6】
【0134】
「三置換」との用語は、左下および中央下の式に示されるようなβ−二重結合に関する。それらの用語は、本文を通じて同義的に使用される。
【0135】
さらには、「四置換」構造要素は、中央上の式に示されるとおり見出される。
【0136】
例1(比較):
重合反応を上述のとおりに行った。反応時間は10分であった。MnSEC=1300g/mol(MnNMR=820g/mol)を有するポリイソブテンポリマーが収率46%で得られた。ポリマーの多分散度および二重結合の分布を表1に示す。
【表1】
【0137】
例2(比較):
重合反応を上記のとおりに行ったが、まずは水を有する洗浄フラスコを通じて、次いで触媒のn−ヘキサン溶液を通じて10分間、アルゴンをゆっくりとした流れでバブリングさせることにより、iBuAlCl2を予め活性化した。重合時間は10分であった。MnSEC=1390g/mol(MnNMR=1130g/mol)を有するポリイソブテンポリマーが収率82%で得られた。ポリマーの多分散度および二重結合の分布を表2に示す。
【表2】
【0138】
例3:
重合反応を上記のとおりに行ったが、MgCl2×6H2O(触媒に対して2mol%のH2O)を触媒の1Mのn−ヘキサン溶液中に溶解させることにより、iBuAlCl2を予め活性化した。重合時間は10分であった。MnSEC=1600g/mol(MnNMR=1020g/mol)を有するポリイソブテンポリマーが収率55%で得られた。ポリマーの多分散度および二重結合の分布を表3に示す。
【表3】
【0139】
例4:
重合反応を上記のとおりに行ったが、CuSO4×5H2O(触媒に対して8mol%のH2O)を触媒の1Mのn−ヘキサン溶液中に溶解させることにより、iBuAlCl2を予め活性化した。重合時間は10分であった。MnSEC=1200g/mol(MnNMR=910g/mol)を有するポリイソブテンポリマーが収率69%で得られた。ポリマーの二重結合の分布を表4に示す。
【表4】
【0140】
例5:
重合反応を上記のとおりに行ったが、CuSO4×5H2O(触媒に対して10mol%のH2O)を触媒の1Mのn−ヘキサン溶液中に溶解させることにより、iBuAlCl2を予め活性化した。重合時間は10分であった。MnSEC=1190g/mol(MnNMR=1390g/mol)を有するポリイソブテンポリマーが収率59%で得られた。ポリマーの二重結合の分布を表5に示す。
【表5】
【0141】
例6:
重合反応を上記のとおりに行ったが、MgSO4×7H2O(触媒に対して15mol%のH2O)を触媒の1Mのn−ヘキサン溶液中に溶解させることにより、iBuAlCl2を予め活性化した。重合時間は10分であった。MnSEC=1070g/mol(MnNMR=1250g/mol)を有するポリイソブテンポリマーが収率62%で得られた。ポリマーの多分散度および二重結合の分布を表6に示す。
【表6】
【0142】
例7:
重合反応を上記のとおりに行ったが、MgSO4×7H2O(触媒に対して10mol%のH2O)を触媒の1Mのn−ヘキサン溶液中に溶解させることにより、iBuAlCl2を予め活性化した。重合時間は10分であった。MnSEC=1070g/mol(MnNMR=1250g/mol)を有するポリイソブテンポリマーが収率60%で得られた。ポリマーの二重結合の分布を表7に示す。
【表7】
【0143】
例8:
重合反応を上記のとおりに行ったが、MgSO4×7H2O(触媒に対して30mol%のH2O)を触媒の1Mのn−ヘキサン溶液中に溶解させることにより、iBuAlCl2を予め活性化した。重合時間は10分であった。MnSEC=1760g/mol(MnNMR=1540g/mol)を有するポリイソブテンポリマーが収率70%で得られた。ポリマーの多分散度および二重結合の分布を表8に示す。
【表8】
【0144】
例9(比較):
重合反応を上記のとおりに行ったが、触媒の1Mのn−ヘキサン溶液中に0.033Mの水を添加することにより、iBuAlCl2+OiPr2の混合物を予め活性化した。激しい反応および析出物の形成が観察された。重合時間は10分であった。ポリイソブテンポリマー(評価されず)が収率4%で得られた。