特許第6903375号(P6903375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903375
(24)【登録日】2021年6月25日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】デバイスチップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20210701BHJP
   B23K 26/351 20140101ALI20210701BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   H01L21/78 S
   H01L21/78 Q
   B23K26/351
   H01L21/302 105A
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-82561(P2017-82561)
(22)【出願日】2017年4月19日
(65)【公開番号】特開2018-182179(P2018-182179A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(72)【発明者】
【氏名】田渕 智隆
【審査官】 鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−193034(JP,A)
【文献】 特開2017−073439(JP,A)
【文献】 特開2016−207921(JP,A)
【文献】 特開2014−127570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/351
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子状に設定された分割予定ラインによって区画される表面側の各領域にデバイスを有し、該デバイスを覆うパシベーション膜が該表面側に形成されたウェーハを加工して該デバイスに対応する複数のデバイスチップを製造するデバイスチップの製造方法であって、
該分割予定ラインに沿って該パシベーション膜を除去するパシベーション膜除去ステップと、
ウェーハの裏面にダイアタッチフィルムを貼るとともに、環状のフレームに装着されたダイシングテープに該ダイアタッチフィルムを介して該ウェーハを支持させるウェーハ支持ステップと、
該パシベーション膜除去ステップと該ウェーハ支持ステップとを実施した後、該パシベーション膜をマスクとして該ウェーハの該表面側からフッ素系ガスを用いるプラズマエッチングを施し、該ウェーハを該分割予定ラインに沿って個々のデバイスチップに分割するとともに、該分割予定ラインに沿って該ダイアタッチフィルムを露出させるウェーハ分割ステップと、
該ウェーハ分割ステップを実施した後、該パシベーション膜をマスクとして該ウェーハの該表面側から酸素系ガスを用いるプラズマエッチングを施し、該ダイアタッチフィルムの該分割予定ラインに沿う一部又は全部を除去するダイアタッチフィルム除去ステップと、を備え
該ウェーハ分割ステップ及び該ダイアタッチフィルム除去ステップでマスクとして用いられた該パシベーション膜は、該デバイスチップに残留し、該デバイスを保護することを特徴とするデバイスチップの製造方法。
【請求項2】
該パシベーション膜除去ステップでは、該ウェーハに対して吸収性を有する波長のレーザービームを該分割予定ラインに沿って照射し、該ウェーハの該表面側に溝を形成することで、該分割予定ラインに沿って該パシベーション膜を除去することを特徴とする請求項1に記載のデバイスチップの製造方法。
【請求項3】
該パシベーション膜除去ステップでは、切削ブレードを該分割予定ラインに沿って切り込ませ、該ウェーハの該表面側に溝を形成することで、該分割予定ラインに沿って該パシベーション膜を除去することを特徴とする請求項1に記載のデバイスチップの製造方法。
【請求項4】
該ダイシングテープは伸張性を有し、
該ダイアタッチフィルム除去ステップを実施した後、該ダイシングテープを伸張することで、該ダイアタッチフィルムを該分割予定ラインに沿って破断するダイアタッチフィルム破断ステップを更に備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のデバイスチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面側に複数のデバイスを有するウェーハを加工して、各デバイスに対応する複数のデバイスチップを製造するデバイスチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の電子機器に組み込まれるデバイスチップを製造する際には、まず、複数の分割予定ライン(ストリート)によって区画されたウェーハの各領域にIC(Integrated Circuit)等のデバイスを形成する。このウェーハを、例えば、切削装置やレーザー加工装置等により分割予定ラインに沿って切断することで、各デバイスに対応する複数のデバイスチップが得られる。
【0003】
ところで、上述した切削装置を用いるデバイスチップの製造方法では、回転させた切削ブレードでウェーハを粉砕しながら切断するので、デバイスチップに欠け(チッピング)等の破損が発生し易く、その抗折強度も不足しがちである。また、複数の分割予定ラインのそれぞれに切削ブレードを切り込ませなくてはならないので、加工の完了までに比較的長い時間を要してしまう。
【0004】
これに対して、レーザー加工装置を用いるデバイスチップの製造方法では、ウェーハを機械的に削り取ることなく切断するので、欠け等の発生を抑制し、抗折強度を高め、切断に要する幅(切り代)も小さく(狭く)できる。しかし、この製造方法では、隣接するチップの間隔が狭くなるので、搬送等の際にチップ同士が接触し、欠け等の破損を発生させてしまうことがあった。
【0005】
近年では、プラズマエッチングを利用してウェーハを切断する製造方法も提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。この製造方法では、プラズマエッチングによってウェーハの全体を一度に加工できるので、ウェーハの径が大きくなったり、デバイス(デバイスチップ)のサイズが小さくなったりしても、加工に要する時間は延びずに済む。また、ウェーハを機械的に削り取るわけではないないので、欠け等の発生を抑制し、抗折強度を高めることも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−114825号公報
【特許文献2】特開2009−187975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述したプラズマエッチングを利用してウェーハを切断する製造方法では、デバイスチップをプラズマから保護するためのレジストマスクをウェーハに形成する必要がある。レジストマスクの形成には、コストの掛かり易いフォトリソグラフィ等の方法が用いられるので、この製造方法では、デバイスチップの価格を十分に低く抑えることができなかった。
【0008】
また、上述した製造方法で採用されることの多いフッ素系のガスを用いるプラズマエッチングでは、ダイボンディングに使用されるダイアタッチフィルム(DAF:Die Attach Film)を加工できない。そのため、ダイアタッチフィルムがウェーハに貼られている場合には、分割予定ラインに重なるダイアタッチフィルムを切削装置やレーザー加工装置で別に除去する必要があった。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ダイアタッチフィルムが貼られたデバイスチップを低いコストで製造できるデバイスチップの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、格子状に設定された分割予定ラインによって区画される表面側の各領域にデバイスを有し、該デバイスを覆うパシベーション膜が該表面側に形成されたウェーハを加工して該デバイスに対応する複数のデバイスチップを製造するデバイスチップの製造方法であって、該分割予定ラインに沿って該パシベーション膜を除去するパシベーション膜除去ステップと、ウェーハの裏面にダイアタッチフィルムを貼るとともに、環状のフレームに装着されたダイシングテープに該ダイアタッチフィルムを介して該ウェーハを支持させるウェーハ支持ステップと、該パシベーション膜除去ステップと該ウェーハ支持ステップとを実施した後、該パシベーション膜をマスクとして該ウェーハの該表面側からフッ素系ガスを用いるプラズマエッチングを施し、該ウェーハを該分割予定ラインに沿って個々のデバイスチップに分割するとともに、該分割予定ラインに沿って該ダイアタッチフィルムを露出させるウェーハ分割ステップと、該ウェーハ分割ステップを実施した後、該パシベーション膜をマスクとして該ウェーハの該表面側から酸素系ガスを用いるプラズマエッチングを施し、該ダイアタッチフィルムの該分割予定ラインに沿う一部又は全部を除去するダイアタッチフィルム除去ステップと、を備え、該ウェーハ分割ステップ及び該ダイアタッチフィルム除去ステップでマスクとして用いられた該パシベーション膜は、該デバイスチップに残留し、該デバイスを保護するデバイスチップの製造方法が提供される。
【0011】
上述した本発明の一態様において、該パシベーション膜除去ステップでは、該ウェーハに対して吸収性を有する波長のレーザービームを該分割予定ラインに沿って照射し、該ウェーハの該表面側に溝を形成することで、該分割予定ラインに沿って該パシベーション膜を除去しても良い。
【0012】
また、上述した本発明の一態様において、該パシベーション膜除去ステップでは、切削ブレードを該分割予定ラインに沿って切り込ませ、該ウェーハの該表面側に溝を形成することで、該分割予定ラインに沿って該パシベーション膜を除去しても良い。
【0013】
また、上述した本発明の一態様において、該ダイシングテープは伸張性を有し、該ダイアタッチフィルム除去ステップを実施した後、該ダイシングテープを伸張することで、該ダイアタッチフィルムを該分割予定ラインに沿って破断するダイアタッチフィルム破断ステップを更に備えても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様に係るデバイスチップの製造方法では、ウェーハの表面側のパシベーション膜を分割予定ラインに沿って除去し、ウェーハの裏面にダイアタッチフィルムを貼った上で、このパシベーション膜をマスクとして表面側からフッ素系ガスを用いるプラズマエッチングを施し、更に、パシベーション膜をマスクとして表面側から酸素系ガスを用いるプラズマエッチングを施すので、従来の方法のようにレジストマスクを形成する必要がない。
【0015】
また、フッ素系ガスを用いるプラズマエッチングでウェーハを分割予定ラインに沿って除去し、酸素系ガスを用いるプラズマエッチングでダイアタッチフィルムの一部を分割予定ラインに沿って除去するので、分割予定ラインに重なるダイアタッチフィルムを別の方法で除去する必要もない。よって、本発明の一態様に係るデバイスチップの製造方法によれば、ダイアタッチフィルムが貼られたデバイスチップを低いコストで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(A)は、パシベーション膜除去ステップの後のウェーハの例を模式的に示す斜視図であり、図1(B)は、パシベーション膜除去ステップの後のウェーハの例を模式的に示す断面図である。
図2図2(A)は、パシベーション膜除去ステップの第1態様について説明するための断面図であり、図2(B)は、パシベーション膜除去ステップの第2態様について説明するための断面図である。
図3図3(A)は、ウェーハ支持ステップについて説明するための斜視図であり、図3(B)は、ウェーハ支持ステップについて説明するための断面図である。
図4】プラズマエッチングに使用されるプラズマエッチング装置の構成例を模式的に示す部分断面図である。
図5図5(A)は、ウェーハ分割ステップについて説明するための断面図であり、図5(B)は、ダイアタッチフィルム除去ステップについて説明するための断面図であり、図5(C)は、ダイアタッチフィルム破断ステップについて説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。本実施形態に係るデバイスチップの製造方法では、分割予定ラインによって区画された表面側の各領域にデバイスを有するウェーハを加工して、各デバイスに対応するデバイスチップを製造する。なお、このウェーハの表面側には、デバイスを覆うパシベーション膜が設けられており、各デバイスは、このパシベーション膜によって保護される。
【0018】
具体的には、まず、デバイスを覆うパシベーション膜を分割予定ラインに沿ってウェーハから除去する(パシベーション膜除去ステップ)。また、ウェーハの裏面にダイアタッチフィルムを貼るとともに、環状のフレームに装着されたダイシングテープにダイアタッチフィルムを介してウェーハを支持させる(ウェーハ支持ステップ)。
【0019】
その後、パシベーション膜をマスクとしてウェーハの表面側からフッ素系ガスを用いるプラズマエッチングを施し、ウェーハを分割予定ラインに沿って個々のデバイスチップに分割するとともに、分割予定ラインに沿ってダイアタッチフィルムを露出させる(ウェーハ分割ステップ)。
【0020】
更に、パシベーション膜をマスクとしてウェーハの表面側から酸素系ガスを用いるプラズマエッチングを施し、ダイアタッチフィルムの分割予定ラインに沿う一部又は全部を除去する(ダイアタッチフィルム除去ステップ)。以下、本実施形態に係るデバイスチップの製造方法について詳述する。
【0021】
本実施形態に係るデバイスチップの製造方法では、まず、デバイスを覆うパシベーション膜を分割予定ラインに沿ってウェーハから除去するパシベーション膜除去ステップを行う。図1(A)は、パシベーション膜除去ステップの後のウェーハ11を模式的に示す斜視図であり、図1(B)は、パシベーション膜除去ステップの後のウェーハ11を模式的に示す断面図である。
【0022】
図1(A)及び図1(B)に示すように、ウェーハ11は、例えば、シリコン(Si)等の材料で円盤状に形成されている。このウェーハ11の表面11a側は、格子状に設定された分割予定ライン(ストリート)13で複数の領域に区画されており、各領域には、IC(Integrated Circuit)等のデバイス15が設けられている。
【0023】
また、ウェーハ11の表面11a側には、デバイス15を覆うパシベーション膜17が形成されている。パシベーション膜17は、例えば、フッ素系ガスを使用するプラズマエッチングと酸素系ガスを使用するプラズマエッチングとに対してある程度の耐性を持つ酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、酸化窒化珪素(SiO)等の材料を用いて形成される。
【0024】
このパシベーション膜17の一部は、分割予定ライン13に沿って除去される。つまり、ウェーハ11の表面11a側には、各デバイス15を覆う複数のパシベーション膜17aが存在している。図2(A)は、分割予定ライン13に沿ってパシベーション膜17を除去するパシベーション膜除去ステップの第1態様について説明するための断面図である。
【0025】
図2(A)に示すように、第1態様では、ウェーハ11の表面11a側に配置されたレーザー照射ユニット2からウェーハ11に対して吸収性を有する波長のレーザービーム2aを照射する(アブレーション加工)。より具体的には、レーザービーム2aを分割予定ライン13に沿って照射し、ウェーハ11の表面11a側に溝11cを形成する。これにより、分割予定ライン13に沿うパシベーション膜17の一部17bが除去され、各デバイス15を覆う複数のパシベーション膜17aが残る。
【0026】
図2(B)は、分割予定ライン13に沿ってパシベーション膜17を除去するパシベーション膜除去ステップの第2態様について説明するための断面図である。図2(B)に示すように、第2態様では、回転させた切削ブレード4を分割予定ライン13に沿って切り込ませ、ウェーハ11の表面11a側に溝11cを形成する。これにより、分割予定ライン13に沿うパシベーション膜17の一部17bが除去され、各デバイス15を覆う複数のパシベーション膜17aが残る。
【0027】
なお、本実施形態では、シリコン等の材料で円盤状に形成されたウェーハ11を用いているが、ウェーハ11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。ウェーハ11は、少なくとも、フッ素系ガスを使用するプラズマエッチングによって加工できるように構成されていれば良い。
【0028】
また、パシベーション膜17の材質、構造、厚さ等にも制限はない。パシベーション膜17は、少なくとも、フッ素系ガスを使用するプラズマエッチングと酸素系ガスを使用するプラズマエッチングとに対して耐性を持っていれば良い。同様に、デバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。
【0029】
パシベーション膜除去ステップの後には、環状のフレームに装着されたダイシングテープにウェーハを支持させるウェーハ支持ステップを行う。図3(A)は、ウェーハ支持ステップについて説明するための斜視図であり、図3(B)は、ウェーハ支持ステップについて説明するための断面図である。
【0030】
ウェーハ支持ステップでは、まず、ウェーハ11の裏面11bにダイアタッチフィルム(DAF:Die Attach Film)19を貼る。ダイアタッチフィルム19は、例えば、ウェーハ11より僅かに径の大きい円形のフィルムであり、所定の接着力を有している。このダイアタッチフィルム19は、主にポリイミド系の樹脂やエポキシ系の樹脂を用いて形成される。ただし、ダイアタッチフィルム19の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。
【0031】
その後、ウェーハ11の裏面11b側に設けられたダイアタッチフィルム19よりも径の大きい円形のダイシングテープ21の中央部分を、このダイアタッチフィルム19に貼る。併せて、ダイシングテープ21の外周部分を、ウェーハ11及びダイアタッチフィルム19を囲む環状のフレーム23に貼る。
【0032】
すなわち、ダイアタッチフィルム19を介して、環状のフレーム23に装着されたダイシングテープ21にウェーハ11を支持させる。なお、本実施形態では、パシベーション膜除去ステップの後にウェーハ支持ステップを行っているが、パシベーション膜除去ステップの前にウェーハ支持ステップを行うこともできる。
【0033】
パシベーション膜除去ステップ及びウェーハ支持ステップの後には、フッ素系ガスを用いるプラズマエッチングにより、ウェーハ11を分割予定ライン13に沿って個々のデバイスチップに分割するウェーハ分割ステップを行う。図4は、プラズマエッチングに使用されるプラズマエッチング装置6の構成例を模式的に示す部分断面図であり、図5(A)は、ウェーハ分割ステップについて説明するための断面図である。なお、図4では、一部の構成要素を機能ブロックで示している。
【0034】
図4に示すように、プラズマエッチング装置6は、処理空間8を形成する真空チャンバ10を備えている。真空チャンバ10は、底壁10aと、上壁10bと、第1側壁10cと、第2側壁10dと、第3側壁10eと、第4側壁(不図示)とを含む直方体状に形成されており、第2側壁10dには、ウェーハ11を搬入、搬出するための開口12が設けられている。
【0035】
開口12の外側には、開口12を開閉するためのゲート14が設けられている。このゲート14は、その下方に配置された開閉機構16によって上下に移動する。開閉機構16は、エアシリンダ18と、ピストンロッド20とを含んでいる。エアシリンダ18はブラケット22を介して真空チャンバ10の底壁10aに固定されており、ピストンロッド20の先端はゲート14の下部に連結されている。
【0036】
開閉機構16でゲート14を開くことにより、開口12を通じてウェーハ11を真空チャンバ10の処理空間8に搬入し、又は、ウェーハ11を真空チャンバ10の処理空間8から搬出できる。真空チャンバ10の底壁10aには、排気口24が形成されている。この排気口24は、真空ポンプ等の排気ユニット26に接続されている。
【0037】
真空チャンバ10の処理空間8には、下部電極28と上部電極30とが対向するように配置されている。下部電極28は、導電性の材料で形成されており、円盤状の保持部32と、保持部32の下面中央から下方に延びる円柱状の支持部34とを含む。
【0038】
支持部34は、真空チャンバ10の底壁10aに形成された開口36に通されている。開口36内において、底壁10aと支持部34との間には、環状の絶縁部材38が配置されており、真空チャンバ10と下部電極28とは絶縁されている。下部電極28は、真空チャンバ10の外部で高周波電源40に接続されている。
【0039】
保持部32の上面には、凹部が形成されており、この凹部には、ウェーハ11を保持するための絶縁性のテーブル42が設けられている。テーブル42には、吸引路42aが形成されており、この吸引路42aは、下部電極28の内部に形成された吸引路44等を介して吸引源46に接続されている。
【0040】
テーブル42の内部には、複数の電極42bが埋め込まれている。例えば、この電極42bに電力を供給することで、各電極42bとウェーハ11との間に電気的な力(代表的には、静電引力)を作用させて、ウェーハ11を吸着、保持できる。真空チャンバ10の処理空間8が減圧されると、吸引源46の負圧でウェーハ11を保持できなくなる。そこで、この電気的な力を用いてウェーハ11を保持する。
【0041】
また、保持部32の内部には、冷却流路48が形成されている。冷却流路48の一端は、支持部34に形成された冷媒導入路50を介して冷媒循環ユニット52に接続されており、冷却流路48の他端は、支持部34に形成された冷媒排出路54を介して冷媒循環ユニット52に接続されている。この冷媒循環ユニット52を作動させると、冷媒は、冷媒導入路50、冷却流路48、冷媒排出路54の順に流れ、下部電極28を冷却する。
【0042】
上部電極30は、導電性の材料で形成されており、円盤状のガス噴出部56と、ガス噴出部56の上面中央から上方に延びる円柱状の支持部58とを含む。支持部58は、真空チャンバ10の上壁10bに形成された開口60に通されている。開口60内において、上壁10bと支持部58との間には、環状の絶縁部材62が配置されており、真空チャンバ10と上部電極30とは絶縁されている。
【0043】
上部電極30は、真空チャンバ10の外部で高周波電源64に接続されている。また、支持部56の上端部には、昇降機構66に連結された支持アーム68が取り付けられており、この昇降機構66及び支持アーム68によって、上部電極30は上下に移動する。
【0044】
ガス噴出部56の下面には、複数の噴出口70が設けられている。この噴出口70は、ガス噴出部56に形成されたガス流路72及び支持部58に形成されたガス流路74を介して、SF(フッ素系ガス)供給源76、C供給源78、及びO(酸素系ガス)供給源80に接続されている。このSF供給源76、C供給源78、O供給源80、ガス流路72,74、及び噴出口70によって、真空チャンバ10内にガスを導入するガス導入部が構成される。
【0045】
開閉機構16、排気ユニット26、高周波電源40、吸引源46、冷媒循環ユニット52、高周波電源64、昇降機構66、SF供給源76、C供給源78、O供給源80等は、制御ユニット82に接続されている。
【0046】
制御ユニット82には、例えば、排気ユニット26から、処理空間8の圧力に関する情報が通知される。また、制御ユニット82には、冷媒循環ユニット52から、冷媒の温度に関する情報(すなわち、下部電極28の温度に関する情報)が通知される。
【0047】
さらに、制御ユニット82には、SF供給源76、C供給源78、O供給源80から、各ガスの流量に関する情報が通知される。制御ユニット82は、これらの情報や、ユーザから入力される他の情報等に基づいて、上述した各構成要素を制御するための制御信号を出力する。
【0048】
ウェーハ分割ステップでは、まず、開閉機構16でゲート14を下降させる。次に、開口12を通じて、ダイシングテープ21に支持されたウェーハ11を真空チャンバ10の処理空間8に搬入し、下部電極28のテーブル42に載せる。具体的には、表面11a側を上方に位置付けるようにウェーハ11をテーブル42の上に載せる。
【0049】
なお、ウェーハ11の搬入時には、昇降機構66で上部電極30を上昇させておく。その後、吸引源46の負圧を作用させる。併せて、電極42bに電力を供給する。これにより、ウェーハ11は、テーブル42の上に固定される。なお、ウェーハ11をテーブル42に固定した後には、吸引源46の負圧を遮断して良い。
【0050】
また、開閉機構16でゲート14を上昇させて、処理空間8を密閉する。更に、上部電極30と下部電極28とがプラズマエッチングに適した所定の位置関係となるように、昇降機構66で上部電極30を下降させる。そして、排気ユニット26を作動させ、処理空間8を減圧する。
【0051】
この状態で、エッチング用のガスを所定の流量で供給しつつ、下部電極28及び上部電極30に所定の高周波電力を供給すると、下部電極28及び上部電極30との間にラジカルやイオンを含むプラズマが発生する。その結果、マスクとして機能するパシベーション膜17aで覆われていないウェーハ11の表面11a側がこのプラズマに曝される。
【0052】
本実施の形態のウェーハ分割ステップでは、エッチング、保護膜形成、及びクリーニングの3つのステップを繰り返し行い、図5(A)に示すように、ウェーハ11の表面11aから裏面11bに達するカーフ(切り口)11dを分割予定ライン13に沿って形成する。
【0053】
エッチングのステップでは、SF供給源76からSF(フッ素系ガス)を所定の流量(例えば、1000sccm)で供給しつつ、下部電極28及び上部電極30に所定の高周波電力(例えば、下部電極28に100W、上部電極30に2600W)を付与する。また、処理空間8の圧力を概ね一定(例えば、180mTorr)に保つ。
【0054】
これにより、ウェーハ11のパシベーション膜17aに覆われていない領域を、SFを原料とするラジカルやイオン等のプラズマに曝して除去できる。なお、エッチングの時間(プラズマに曝す時間)は、カーフ11dの側壁が除去され過ぎない程度にする。例えば、6.0秒程度にすると良い。
【0055】
保護膜形成のステップでは、C供給源78からCを所定の流量(例えば、700sccm)で供給しつつ、下部電極28及び上部電極30に所定の高周波電力(例えば、下部電極28に50W、上部電極30に2600W)を付与する。また、処理空間8の圧力を概ね一定(例えば、60mTorr)に保つ。
【0056】
これにより、カーフ11dにフッ素系の材料を堆積させて保護膜を形成できる。このフッ素系の材料でなる保護膜は、SF等を用いるプラズマエッチングに対してある程度の耐性を有している。なお、保護膜形成の時間(堆積の時間)に特段の制限はないが、保護膜を厚くし過ぎると、カーフ11dの底に形成された保護膜をクリーニングの工程で除去し切きれなくなる。よって、堆積時間は、例えば、2.0秒程度にすると良い。
【0057】
クリーニングのステップでは、SF供給源76からSFを所定の流量(例えば、1000sccm)で供給しつつ、下部電極28及び上部電極30に所定の高周波電力(例えば、下部電極28に250W、上部電極30に2600W)を付与する。また、処理空間8の圧力を概ね一定(例えば、180mTorr)に保つ。
【0058】
下部電極28に供給される電力を大きくすると、プラズマエッチングの異方性は高められる。これにより、SFを原料とするラジカルやイオン等のプラズマによって、カーフ11dの底に形成された保護膜を除去し、側壁だけに保護膜を残留させることができる。その結果、エッチングのステップでカーフ11dを深さ方向に加工できるようになる。なお、クリーニングの時間は、保護膜の厚み等に応じて設定されるが、例えば、1.5秒程度にすると良い。
【0059】
ウェーハ11が分割予定ライン13に沿って個々のデバイスチップ25に分割され、カーフ11dの底にダイアタッチフィルム19の上面19aが露出すると、ウェーハ分割ステップは終了する。なお、このウェーハ分割ステップでは、SF等のフッ素系ガスを用いてプラズマを発生させるので、ダイアタッチフィルム19は殆ど加工されない。
【0060】
そこで、ウェーハ分割ステップの後には、酸素系ガスを用いるプラズマエッチングにより、ダイアタッチフィルム19の分割予定ライン13に沿う一部又は全部を除去するダイアタッチフィルム除去ステップを行う。図5(B)は、ダイアタッチフィルム除去ステップについて説明するための断面図である。
【0061】
ダイアタッチフィルム除去ステップでは、O供給源70からO(酸素系ガス)を所定の流量(例えば、200sccm)で供給しつつ、下部電極28及び上部電極30に所定の高周波電力(例えば、下部電極28に0W、上部電極30に3500W)を付与する。また、処理空間8の圧力を概ね一定(例えば、5mTorr)に保つ。
【0062】
これにより、カーフ11dの底部に露出しているダイアタッチフィルム19を、オゾン(O)を含むプラズマに曝して、その一部又は全部を除去できる。このダイアタッチフィルム除去ステップでは、カーフ11dの底部に露出しているダイアタッチフィルム19の全部を除去して、ダイアタッチフィルム19を分断しても良いし、図5(B)に示すように、ダイアタッチフィルム19の一部を除去して、凹部19bを形成しても良い。
【0063】
ダイアタッチフィルム除去ステップでダイアタッチフィルム19に凹部19bを形成した場合には、次に、ダイシングテープ21を伸張して、ダイアタッチフィルム19を分割予定ライン13に沿って破断するダイアタッチフィルム破断ステップを行うと良い。ただし、この場合には、伸張性のあるダイシングテープ21を使用する必要がある。
【0064】
図5(C)は、ダイアタッチフィルム破断ステップについて説明するための断面図である。このダイアタッチフィルム破断ステップでは、ダイシングテープ21をウェーハ11の径方向に沿って伸張(拡張)して、ダイアタッチフィルム19にウェーハ11の径方向の力を加える。
【0065】
上述のように、本実施の形態では、ダイアタッチフィルム19に凹部19bが形成されている。よって、ダイシングテープ21を伸張してダイアタッチフィルム19に径方向の力を加えると、ダイアタッチフィルム19は凹部19bを起点に破断される。つまり、ダイアタッチフィルム19は分割予定ライン13に沿って各デバイスチップ25に対応するダイアタッチフィルム27へと分割される。これにより、ダイアタッチフィルム27が貼られたデバイスチップ25が完成する。
【0066】
なお、ウェーハ分割ステップ及びダイアタッチフィルム除去ステップでマスクとして用いられたパシベーション膜17aは、そのままデバイスチップ25に残留し、デバイス15を保護する。すなわち、本実施形態では、デバイスチップ25の一部となるパシベーション膜17aが、ウェーハ分割ステップ及びダイアタッチフィルム除去ステップのマスクとして用いられる。
【0067】
以上のように、本実施形態に係るデバイスチップの製造方法では、ウェーハ11の表面11a側のパシベーション膜17を分割予定ライン13に沿って除去し、ウェーハ11の裏面11bにダイアタッチフィルム19を貼った上で、このパシベーション膜17をマスクとして表面11a側からフッ素系ガスを用いるプラズマエッチングを施し、更に、パシベーション膜17をマスクとして表面11a側から酸素系ガスを用いるプラズマエッチングを施すので、従来の方法のようにレジストマスクを形成する必要がない。
【0068】
また、フッ素系ガスを用いるプラズマエッチングでウェーハ11を分割予定ライン13に沿って除去し、酸素系ガスを用いるプラズマエッチングでダイアタッチフィルム19の一部を分割予定ライン13に沿って除去するので、分割予定ライン13に重なるダイアタッチフィルム19を別の方法で除去する必要もない。よって、本発明の一態様に係るデバイスチップの製造方法によれば、ダイアタッチフィルム27が貼られたデバイスチップ25を低いコストで製造できる。
【0069】
なお、本発明は、上記実施形態の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、ウェーハ支持ステップの前に研削等の方法でウェーハ11を薄くしても良い。この場合には、薄いデバイスチップ25を形成でき、更に、ウェーハ分割ステップに要する時間も短縮される。
【0070】
また、上記実施形態のウェーハ分割ステップでは、エッチング、保護膜形成、及びクリーニングの3つのステップを繰り返し行っているが、本発明のウェーハ分割ステップでは、少なくとも、フッ素系ガスを用いるプラズマエッチングにより、ウェーハ11を分割予定ライン13に沿って分割できれば良い。
【0071】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0072】
11 ウェーハ
11a 表面
11b 裏面
11c 溝
11d カーフ(切り口)
13 分割予定ライン(ストリート)
15 デバイス
17 パシベーション膜
17a パシベーション膜
17b 一部
19 ダイアタッチフィルム
21 ダイシングテープ
23 フレーム
25 デバイスチップ
27 ダイアタッチフィルム
2 レーザー照射ユニット
2a レーザービーム
4 切削ブレード
6 プラズマエッチング装置
8 処理空間
10 真空チャンバ
10a 底壁
10b 上壁
10c 第1側壁
10d 第2側壁
10e 第3側壁
12 開口
14 ゲート
16 開閉機構
18 エアシリンダ
20 ピストンロッド
22 ブラケット
24 排気口
26 排気ユニット
28 下部電極
30 上部電極
32 保持部
34 支持部
36 開口
38 絶縁部材
40 高周波電源
42 テーブル
42a 吸引路
42b 電極
44 吸引路
46 吸引源
48 冷却流路
50 冷媒導入路
52 冷媒循環ユニット
54 冷媒排出路
56 ガス噴出部
58 支持部
60 開口
62 絶縁部材
64 高周波電源
66 昇降機構
68 支持アーム
70 噴出口
72 ガス流路
74 ガス流路
76 SF供給源
78 C供給源
80 O供給源
82 制御ユニット
図1
図2
図3
図4
図5