特許第6903654号(P6903654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903654
(24)【登録日】2021年6月25日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】多層配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20210701BHJP
【FI】
   H05K3/46 N
   H05K3/46 G
   H05K3/46 X
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-522479(P2018-522479)
(86)(22)【出願日】2017年6月5日
(86)【国際出願番号】JP2017020831
(87)【国際公開番号】WO2017213086
(87)【国際公開日】20171214
【審査請求日】2018年11月16日
【審判番号】不服2020-11173(P2020-11173/J1)
【審判請求日】2020年8月11日
(31)【優先権主張番号】特願2016-112674(P2016-112674)
(32)【優先日】2016年6月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅広
(72)【発明者】
【氏名】品田 詠逸
(72)【発明者】
【氏名】田辺 勇人
【合議体】
【審判長】 酒井 朋広
【審判官】 永井 啓司
【審判官】 須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−286553(JP,A)
【文献】 特開2002−329967(JP,A)
【文献】 特開2004−288989(JP,A)
【文献】 特開2007−335701(JP,A)
【文献】 特開2003−334886(JP,A)
【文献】 特開2001−160686(JP,A)
【文献】 特開2002−198656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線板間を電気的に接続するための電気的接続パッドとプリント配線板間を電気的に接続しない非接続パッドとの両方を同一面内に備える複数枚のプリント配線板を準備するプリント配線板製造工程(I)と、前記複数枚のプリント配線板を前記電気的接続パッド同士が対向するように重ね、前記複数枚のプリント配線板を前記対向する電気的接続パッド同士の間に配置した導電性ペーストにより接合するように積層する積層工程(II)とを有する多層配線板の製造方法において、
前記プリント配線板製造工程(I)では、前記積層工程(II)で前記複数枚のプリント配線板を重ねる際に対向する面のそれぞれに絶縁フィルムを貼り付け(Ia)、
前記対向する面のうち一方の面では、前記電気的接続パッドに対応する位置にのみ、前記電気的接続パッドが露出するように、前記絶縁フィルムに対して穴明けを行い(Ib)、
前記対向する面のうち他方の面では、前記電気的接続パッド及び前記非接続パッドに対応する位置に、前記電気的接続パッド及び前記非接続パッドが露出するように、前記絶縁フィルムに対して穴明けを行い(Ib)、
前記一方の面の前記電気的接続パッドに対応する位置に形成された穴に導電性ペーストを配置する(Ic)、多層配線板の製造方法。
【請求項2】
プリント配線板製造工程(I)では、絶縁フィルムに、ガラス転移温度が180℃以上の熱硬化性樹脂組成物を用いることを特徴とする請求項1に記載の配線板の製造方法。
【請求項3】
プリント配線板製造工程(I)では、絶縁フィルムに、強化材としてフィラーを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の配線板の製造方法。
【請求項4】
プリント配線板製造工程(I)では、絶縁フィルムに対して穴明けを行う際(Ib)に、レーザ加工またはドリル穴明け加工を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の多層配線板の製造方法。
【請求項5】
プリント配線板製造工程(I)では、絶縁フィルムに形成された穴に導電性ペーストを配置する際(Ic)に、保護マスクとしてPETフィルムを用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の多層配線板の製造方法。
【請求項6】
プリント配線板製造工程(I)では、絶縁フィルムに形成された穴に導電性ペーストを配置(Ic)した後、複数枚のプリント配線板を積層する工程(II)よりも前に、温度70〜150℃、時間10〜120分にてプリント配線板の熱処理を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の多層配線板の製造方法。
【請求項7】
積層工程(II)では、一体化積層を行うプリント配線板の平面上の同一箇所に複数の位置合わせ穴を配置し、配置した位置合わせ穴にピンを挿入することでプリント配線板同士の位置合せを行いながら一体化積層を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の多層配線板の製造方法。
【請求項8】
プリント配線板製造工程(I)では、電気的接続パッドが露出するように、絶縁フィルムに対して穴明けを行う際(Ib)に、前記一方の面の前記電気的接続パッドに対応する箇所の絶縁フィルムに対して穴明けによって形成された穴が、導電性ペーストによって全て充填されることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の多層配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多層配線板上に実装される部品は、表面実装によるものが主流となっており、部品と多層配線板を接続するための接続部は年々狭小化されてきている。さらに、部品実装点数も益々増加してきており、多層配線板に明ける穴のピッチの狭小化や配線回路層数の増加が求められてきている。
【0003】
多層配線板は、配線回路が形成された両面銅張積層板を絶縁性接着剤と交互に複数枚重ねて積層一体化して多層配線板とし、必要な箇所に多層配線板を貫通する穴を明けてその内壁をめっきすることにより各層の回路を電気的に接続する構造(貫通スルーホール)を設けることが一般的である。
【0004】
しかしながら、貫通スルーホールは、プリント配線板の板厚方向全体にわたって配置されるため、貫通スルーホールを配置した平面上の位置には、接続に必要な配線回路層以外の配線回路層では、貫通スルーホールとの電気的な接続を避けるため、貫通スルーホールを避けるように回路パターンを配置する。このため、貫通スルーホール構造では、配線密度を向上させることが困難である。
【0005】
そこで、貫通スルーホールを用いない構造として、導電性ペーストを用いて各層間の接続を行う貫通スルーホールレス構造の多層配線板の製造方法が提案されており、例えば、下記に示すようなものがよく知られている。
【0006】
特許文献1には、不織布に熱硬化性樹脂を含浸させて半硬化状態とした薄型のプリプレグに穴を設けて穴内に導電性ペーストを充填したものを2枚の両面回路基板(絶縁基材の各側に回路パターンの層を有する基板)で挟むように重ね合わせ、加熱、加圧し、前記2枚の両面回路基板の回路が前記プリプレグの穴に充填された導電ペーストにより電気的に接続されるように接着して一枚の多層配線板を形成する方法が開示されている。
【0007】
特許文献2には、導体板上に山形又は略円錐状の導電性バンプを形成してから、加熱軟化させた絶縁性プリプレグ基材に前記導電性バンプをプレス貫挿させ、導電性バンプからなる層間接続部を形成する方法が開示されている。
【0008】
特許文献3には、導体面積率の異なる複数の領域を有する回路基板間に、導体面積率に応じた開口面積で穴明された異形ビアホールを有する接着樹脂シートを配置し、異形ビアホールに導電性ペーストを充填し、熱プレスを行い1枚の多層配線板を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−87870号公報
【特許文献2】特開平9−162553号公報
【特許文献3】特許第5874343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
多層配線板に実装される部品は、表面実装によるものが主流となっており、部品と多層配線板を接続するための接続端子は年々狭小化されてきている。さらに、実装される部品の点数も年々増加してきており、多層配線板の電気的接続のための穴ピッチの狭小化や信号線数の増加が求められてきている。
【0011】
半導体検査用治具用基板やマザーボード等に代表される板厚が5mmを超える大型高多層配線板分野においても、検査部品や実装部品の小型化、狭ピッチ化に伴い、多層配線板の電気的接続のための穴ピッチの狭小化、信号線数の増大等が求められてきている。
【0012】
高板厚の基板に小径の貫通穴を形成するのは、ドリル折れの危険があり、貫通穴を表裏から形成するにも位置合わせ精度の問題もある。まためっきをする際にも貫通穴入口付近と貫通穴中央部のめっき厚の比であるスローイングパワーの良好なめっきをつけるのが困難であり、アスペクト比(板厚を貫通穴の径で割った値)が25を超える基板の製造は非常に困難であった。このようなことから、全板厚を貫通する穴での貫通スルーホール構造のみにより層間接続を行う多層配線板では、アスペクト比の増加により、狭ピッチ化に対応した多層配線板を提供することが困難であるため特許文献1〜3等に記載の多層配線板の製造方法が提案された。
【0013】
特許文献1に記載の多層配線板の製造方法では、不織布を含むプリプレグに設けた穴に充填した導電ペーストにより層間接続を行うため、プリプレグに含まれる不織布の厚みの違いにより接続パッド間の高さがばらつき、接続抵抗値が不安定になるという問題がある。よって、微小な接合端子ピッチを持つ実装部品が高密度に実装される多層配線板において位置精度良く加工を行うことは困難であると考えられる。
【0014】
特許文献2に記載の多層配線板の製造方法では、バンプ貫挿時に、アスペクト比の高い導電性バンプに圧力が加わることで導電性バンプの破損が生じたり、バンプ高さのばらつきやプリント配線板のそりの影響によりバンプが適切に貫通しなかったりすることがあり、歩留まりや信頼性の面で問題が発生する恐れがあった。
【0015】
特許文献3に記載の多層配線板の製造方法では、導電性材料を充填するための異なる開口面積比を有する異形ビアホールを設けた接着樹脂シートを用いており、導電性ペースト充填時に異形ビアホール横に空隙が形成されやすく、その空隙が導電性材料の流動を招き、短絡不良を発生させる可能性があった。
【0016】
本発明は上記状況を鑑みてなされたもので、接続信頼性に優れた、高板厚で、小径かつ狭ピッチ化された電気的接続のための穴を備え、微小な接合端子ピッチを備えた高密度多層配線板を、容易に作製することができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の多層配線板の製造方法は、以下に関する。
【0018】
まず、本発明は、プリント配線板間を電気的に接続するための電気接続パッドとプリント配線板間を電気的に接続しない非接続パッドとの両方を同一面内に備える複数枚のプリント配線板を準備するプリント配線板製造工程(I)と、前記複数枚のプリント配線板を前記電気的接続パッド同士が対向するように重ね、前記複数枚のプリント配線板を前記対向する電気的接続パッド同士の間に配置した導電性ペーストにより接合するように積層する積層工程(II)とを有する多層配線板の製造方法において、前記プリント配線板製造工程(I)では、前記積層工程(II)で前記複数枚のプリント配線板を重ねる際に対向させる面の少なくとも一方の面に絶縁フィルムを貼り付け(Ia)、前記絶縁フィルムを貼り付けた面の電気的接続パッドに対応する位置に、前記電気的接続パッドが露出するように、前記絶縁フィルムに対して穴明けを行い(Ib)、この穴明けによって前記絶縁フィルムに形成された穴に導電性ペーストを配置する(Ic)、多層配線板の製造方法である。これにより、高密度多層配線板を容易に作製することができる多層配線板の製造方法でを提供できる。
【0019】
プリント配線板製造工程(I)では、絶縁フィルムに、ガラス転移温度が180℃以上の熱硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。これによれば、高温の融点を持つ導電性ペーストを加工する温度でも絶縁材料の耐熱性が確保でき、高信頼性の高密度多層配線板を作製することができる。
【0020】
プリント配線板製造工程(I)では、絶縁フィルムに、強化材としてフィラー等の粒子を含むことが好ましい。これによれば、絶縁フィルムに用いる硬化物の熱膨張率を抑えることができ、高信頼性の高密度多層配線板を作製することができる。
【0021】
プリント配線板製造工程(I)では、絶縁フィルムに対して穴明けを行う際(Ib)に、レーザ加工またはドリル穴明け加工を用いることが好ましい。これによれば、穴明けの方法を選ばず、一般のプリント配線板の製造においても用いる方法で穴を形成できる。レーザ加工による穴明けにおいては、ドリルを用いるよりも小径な穴の加工が容易に行え、微小な接合端子ピッチを備える高密度多層配線板を容易に作製することができ好ましい。
【0022】
プリント配線板製造工程(I)では、絶縁フィルムに形成された穴に導電性ペーストを配置する際(Ic)に、保護マスクとしてPETフィルムを用いることが好ましい。これによれば、あらかじめ絶縁材料に付着させたPETフィルムを、絶縁材料の穴明け時に同時に穴明け加工し、そのまま保護フィルムとして使用することから、ペースト配置位置に合わせた個別の保護マスクを作製しなくともよく、容易に高密度多層配線板を作製することができる。
【0023】
プリント配線板製造工程(I)では、絶縁フィルムに形成された穴に導電性ペースト配置(Ic)した後、複数枚のプリント配線板を積層する工程(II)よりも前に、温度70〜150℃、時間10〜120分にてプリント配線板の熱処理を行うことが好ましい。これによれば、導電性ペーストを充填した後に導電性ペーストの融点よりも低温にて熱処理を行うことで、導電性ペーストの粘度を高め、一体化積層する際に加わる圧力で生じる導電性ペーストの流れを低下させることができ、高信頼性の高密度多層配線板を作製することができる。
【0024】
積層工程(II)では、一体化積層を行うプリント配線板の平面上の同一箇所に複数の位置合わせ穴を配置し、配置した位置合わせ穴にピンを挿入することでプリント配線板同士の位置合せを行いながら一体化積層を行うことが好ましい。これによれば、一体化積層する複数枚のプリント配線板間の位置合わせを容易に行えることから積層中の位置ずれを抑制でき、高信頼性の高密度多層配線板を作製することができる。
【0025】
積層工程(II)では、プリント配線板間を電気的に接続するためのパッドの配置された面のプリント配線板間を電気的に接続するためのパッドが配置されていない部分を、絶縁材料により充填することが好ましい。これによれば、電気的接続パッドの配置されていない部分を積層前にあらかじめ充填しておくことで、電気的接続パッドの配置されていない部分への導電性ペーストの流れ込みを防止できる。また、電気的接続パッド間の高さを均一にすることができるため、高信頼性の高密度多層配線板を作製することができる。
【0026】
プリント配線板製造工程(I)では、電気的接続パッドが露出するように、絶縁フィルムに対して穴明けを行う際(Ib)に、前記絶縁フィルムの厚みが、前記絶縁フィルムに形成された穴から露出した電気的接続パッドの導体回路厚みよりも厚いことが好ましい。これによれば、導電性ペーストを充填するための穴の深さを確実に確保することができ、層間の密着不足や電気的接続を確保するための導電性ペーストの穴外への流動を防止することができ、より高密度な多層配線板を作製することができる。
【0027】
プリント配線板製造工程(I)では、電気的接続パッドが露出するように、絶縁フィルムに対して穴明けを行う際(Ib)に、前記電気的接続パッドに対応する箇所の絶縁フィルムに対して穴明けによって形成された穴が、導電性ペーストによって全て充填されることが好ましい。これによれば、導電性ペーストを絶縁フィルムに設けた穴全てに充填することで、一体化積層後に空隙が生まれず、電気的接続パッド上に配置される導電性バンプの高さを一定にすることができるため、高信頼性の高密度多層配線板を作製することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のプロセスによれば、少なくとも2枚以上のプリント配線板を一体化積層し、プリント配線板間を電気的に接続することで、接続信頼性に優れた、高板厚で、小径かつ狭ピッチ化された電気的接続のための穴を備え、微小な接合端子ピッチを備えた高密度多層配線板を、容易に作製することができる製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の多層配線板の製造方法の一実施形態の各工程を示すブロック図である。
図2】本発明の多層配線板の製造方法の一実施形態におけるプリント配線板製造工程(I)を示す模式断面図である。(a)準備した第一、第二、第三のプリント配線板の模式断面図である。(b)保護マスクを貼り付けた絶縁フィルムをプリント配線板に貼り付けた状態(Ia)を示す模式断面図である。(c)電気的接続パッドに対応する位置の絶縁フィルムに穴明けにより穴を形成した状態(Ib)を示す模式断面図である。(d)絶縁フィルムに形成した貫通穴に導電性材料を配置した状態(Ic)を示す模式断面図である。(e)絶縁フィルム表面の保護フィルムを剥離した状態を示す模式断面図である。
図3】本発明の多層配線板の製造方法の一実施形態における積層工程(II)を示す模式断面図である。(f)第一、第二、第三の3枚のプリント配線板を導電性材料が配置された面と配置されていない面が対向するように重ねて配置した状態(IIa)を示す模式断面図である。(g)加熱・加圧積層を行った後の状態(IIb)を示す模式断面図である。
図4】本発明の多層配線板の製造方法の一実施形態における、プリント配線板同士を対向させる面の両面に絶縁フィルムを貼り付けた場合の模式断面図である。(a)電気的接続パッドに対応する箇所のみの絶縁フィルムに穴明けした面(下側)と、電気的接続パッドと非接続パッドの両方に対応する個所の絶縁フィルムに穴明けした面(上側)とを対向させた場合の模式断面図である。(b)電気的接続パッドに対応する箇所のみの絶縁フィルムに穴明けした面(下側及び上側)同士を対向させた場合の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、各図を用いて、本発明の多層配線板の製造方法の実施形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、3枚のプリント配線板を一体化積層する多層配線板を製造する例を示し、一体化積層前のプリント配線板を、第一のプリント配線板1、第二のプリント配線板6、第三のプリント配線板7で示す。
【0031】
本実施の形態の多層配線板の製造方法は、プリント配線板間を電気的に接続するための電気接続パッドとプリント配線板間を電気的に接続しない非接続パッドとの両方を同一面内に備える複数枚のプリント配線板を準備するプリント配線板製造工程(I)と、前記複数枚のプリント配線板を前記電気的接続パッド同士が対向するように重ね、前記複数枚のプリント配線板を前記対向する電気的接続パッド同士の間に配置した導電性ペーストにより接合するように積層する積層工程(II)とを有する多層配線板の製造方法において、前記プリント配線板製造工程(I)では、前記積層工程(II)で前記複数枚のプリント配線板を重ねる際に対向させる面の少なくとも一方の面に絶縁フィルムを貼り付け(Ia)、前記絶縁フィルムを貼り付けた面の電気的接続パッドに対応する位置に、前記電気的接続パッドが露出するように、前記絶縁フィルムに対して穴明けを行い(Ib)、この穴明けによって前記絶縁フィルムに形成された穴に導電性ペーストを配置する(Ic)、多層配線板の製造方法である。
【0032】
本実施の形態において、電気的接続パッドとは、プリント配線板間を電気的に接続するパッドであって、後述する導電性材料を介して対向するように重ねられ、導電性材料によって接合するように積層されることにより、プリント配線板間を電気的に接続するパッドをいう。また、非接続パッドとは、プリント配線板間を電気的に接続するためには用いられないパッドをいう。また、「電気的接続パッドと非接続パッドとの両方を同一面内に備える、第一、第二、第三の複数枚のプリント配線板」とは、第一、第二、第三の複数枚のプリント配線板のそれぞれのプリント配線板が、その表裏面のうちの少なくとも何れか一方の面に、電気的接続パッドと非接続パッドとの両方を備えることをいい、それぞれのプリント配線板が、その表裏面のうちの異なる一つの面に電気的接続パッドと非接続パッドとの両方を備えてもよい。例えば、第一のプリント配線板が、表面に電気的接続パッドと非接続パッドとの両方を備え、第二のプリント配線板及び第三のプリント配線板が裏面に電気的接続パッドと非接続パッドとの両方を備えてもよい。
【0033】
<プリント配線板製造工程(I)>
(プリント配線板の準備)
本発明の製造方法の各工程を図1図2図3図4により説明する。まず、図2(a)に示すように、第一のプリント配線板1、第二のプリント配線板6、第三のプリント配線板7を製造する。この際、第一のプリント配線板1、第二のプリント配線板6、第三のプリント配線板7には、両面回路基板、多層配線板、マルチワイヤ配線板のいずれかを用いることができ、また、それぞれのプリント配線板に異なる種類のものを選択しても構わない。また、第一のプリント配線板1、第二のプリント配線板6、第三のプリント配線板7のサイズや形状は問わず、異なるサイズや異なる形状を組み合わせてもよい。また、それぞれのプリント配線板に用いる基材の種類は問わないが、積層時の加圧加熱による変形(寸法変化)を制御するためには、ガラスクロス等の強化材を含有した絶縁基材が好ましく、さらにはNEMA(National Electrical Manufacturers Association)規格のFR(Flame Retardant)−5グレードの基材やポリイミド樹脂系等のガラス転移温度(ガラス転移点)が高い基材が好ましい。
【0034】
第一のプリント配線板1、第二のプリント配線板6、第三のプリント配線板7は、貫通する穴を電気銅めっきもしくは無電解銅めっきによってスルーホールめっきし、貫通する穴の内部を非導電性の材料で埋めて、それを覆うように金属層を形成した、いわゆる穴埋め、蓋めっきを施したプリント配線板であることが好ましい。プリント配線板の貫通する穴が非導電性材料で穴埋めされた状態の場合、パッドの中央部が非導電性材料となり、プリント配線板間を接続するために必要な導電性材料とプリント配線板の接続部の接触面積が低下する恐れがあるためである。
【0035】
第一のプリント配線板1、第二のプリント配線板6、第三のプリント配線板7の表面仕上げは、金めっきであることが好ましい。通常貫通穴の接続性を確保し、蓋めっきする場合、銅めっきが用いられることが多い。しかし、銅めっきを大気中に放置しておくと、表面に酸化銅皮膜を形成する場合があり、導電性材料との接続性が低下する場合がある。酸化劣化による接続性不良を抑制するためには、金が表面にあることが好ましい。
【0036】
第一のプリント配線板1、第二のプリント配線板6、第三のプリント配線板7において、他のプリント配線板と電気的に接続する面には、電気的接続パッドが配置されている。また、電気的に接続する面には、電気的接続パッドの他、非接続パッドやランド、必要に応じて配線を有していてもよい。
【0037】
(絶縁フィルムの貼り付け(Ia))
次に、図2(b)に示すように、第一プリント配線板1と第三のプリント配線板7の対向する面の少なくとも一方の面に、絶縁フィルム2を貼り付ける。絶縁フィルム2はプリント配線板間の対向する面の少なくとも一方の面に貼り付けることが好ましく、プリント配線板間の対向する面の両面に貼り付けることがより好ましい。この際に用いる絶縁フィルム2としては、絶縁性を有するフィルムであれば何でもよいが、流動性を制御できるものが好ましく、ポリマ成分を含有する樹脂組成物からなるフィルム材料が好ましい。さらに、絶縁フィルムは、熱硬化性樹脂からなることが好ましい。さらに、部品実装時のリフロー条件に耐える必要があるため、硬化物のガラス転移温度は150℃以上であることが好ましく、180℃以上であればより好ましい。このような絶縁フィルムとしては、例えば日立化成株式会社製、商品名:AS−9500が挙げられる。さらには、絶縁フィルムの硬化物の熱膨張率を抑えるため、強化材としてフィラー等の粒子を含有することが好ましく、このような絶縁フィルムとしては、例えば日立化成株式会社製、商品名:AS−300HSが挙げられる。
なお、本実施形態において、絶縁フィルムとは、樹脂組成物からなるフィルム又は樹脂組成物およびフィラーからなるフィルムである。
絶縁フィルム2は、繊維をさらに含有してもよい。ただし、繊維を含有する場合は、小径・狭ピッチ穴加工に悪影響を及ぼすことを防止する観点で、繊維の長さが200μm以下であることが好ましい。
【0038】
第一のプリント配線板1と第三のプリント配線板7同様に、第二のプリント配線板6と第三のプリント配線板7においても、第二のプリント配線板6と第三のプリント配線板7の対向する面の少なくとも一方の面に絶縁フィルムを貼り付けることが好ましく、第二のプリント配線板6と第三のプリント配線板7の対向する面の両面に絶縁フィルムを貼り付けることがより好ましい。
【0039】
絶縁フィルムの表面には、保護フィルム(例えばPETフィルム)を備えるのが好ましい。各工程内での絶縁フィルム表面への異物の付着を防止でき、さらには、次に行う絶縁フィルムの穴明けプロセスで絶縁フィルムと同じ位置に穴明けを行っておくことで、その後の導電性ペースト配置の際に、製品パターンごとの導電性ペースト配置位置に合わせて開口した1品1様の保護マスクを用意しなくとも、穴明けされた保護フィルムを、保護マスクの代わりとして用いることができるため、製造コストの低減を図ることができる。
【0040】
<ガラス転移点の測定>
ガラス転移温度は、次の方法で測定した。
(サンプル作製方法)
熱硬化性樹脂組成物を離型PET(帝人デュポンフィルム社製、A−53)上にアプリケータを用いて、乾燥後の膜厚が100μmになるように塗布し、温度130℃、時間30分の条件で乾燥し、半硬化のフィルムを作製した。その後、離型PETから半硬化のフィルムを剥がし、2枚の金属製の枠に半硬化のフィルムを挟むことで固定させ、温度185℃、時間60分の条件で乾燥することで、硬化した熱硬化性樹脂組成物からなるフィルムを作製した。
(測定方法)
株式会社マック・サイエンス製TMAを用い、冶具:引っ張り、チャック間距離:15mm、測定温度:室温〜350℃、昇温速度:10℃/min、引っ張り荷重:5gf、サンプルサイズ:幅5mm×長さ25mmで測定し、得られた温度−変位曲線から接線法によりガラス転移温度を求めた。
【0041】
(絶縁フィルムへの穴明け(Ib))
次に、図2(c)に示すように、第一のプリント配線板1と第三のプリント配線板7の対向する面の少なくとも一方の面に貼り付けた絶縁フィルム2から電気的接続パッドが露出するように、穴明けを行うのが好ましく、第一のプリント配線板1と第三のプリント配線板7の対向する面の両面に貼り付けた絶縁フィルム2から電気的接続パッドが露出するように、両面とも穴明を行うことがより好ましい。プリント配線板間の対向する面の両面に貼り付けられた絶縁フィルム2に穴明けを行う場合には図4(a)に示すように、導電性ペーストを配置する側の絶縁フィルム2は電気的接続パッドと同一箇所のみ穴明けし、導電性ペーストを配置しない側の絶縁フィルム2は電気的接続パッドと非接続パッドの両方を穴明けすることが好ましい。電気的接続パッドと同一箇所のみ穴明けした絶縁フィルムを対向する面の両面に備える場合、非接続パッド同士が対向する箇所と電気的接続パッド同士が対向する箇所では実際の層間距離が異なるため(図4(b))、接合した際に接続不良を発生させてしまう場合があるが、図4(a)に示すように絶縁フィルムに穴明けした場合、絶縁性を確保しつつ、パッド横の空隙もなく、十分な接続信頼性を確保することができる。
【0042】
この際の穴明け方法としては、レーザ加工や、ドリル加工を用いることができる。これらの加工機として、機械に備えたカメラによりプリント配線板4隅に設けた位置合わせ用の表面パッド位置を読み取り、加工機の制御用ソフトウェアにて、XおよびY方向のオフセット、XおよびY方向のスケール、回転の補正を自動的に行う機能を備える加工機を用いれば、微小な電気的接続パッドを備えた高密度配線板においても、容易に位置合わせが行えるため好ましい。また、レーザ加工による穴明けにおいては、ドリルを用いるよりも小径な穴の加工が容易に行え、微小な電気的接続パッドピッチを備える高密度多層配線板を容易に作製することができ、好ましい。
【0043】
絶縁フィルム2に穴明けする際は、電気的接続パッドと同一箇所への穴明けでよいが、さらに位置精度良く、接続信頼性に優れたプリント配線板を作製するため、電気的接続パッドよりも直径が0〜200μm小さい開口径で穴明けすることが好ましく、電気的接続パッドよりも直径が50〜100μm小さい開口径で穴明けすることがより好ましい。
【0044】
第一のプリント配線板1と第三のプリント配線板7同様に、第二のプリント配線板6と第三のプリント配線板7においても、第一のプリント配線板1と第三のプリント配線板7と同じプロセスにて、絶縁フィルムに穴明けを行う。
【0045】
(導電性ペーストの配置(Ic))
次に、図2(d)に示すように、第一のプリント配線板1と第三のプリント配線板7の対抗する面の少なくとも一方の面において、絶縁フィルム2に形成した穴から露出した電気的接続パッド上に導電性ペーストを配置する。導電性ペーストは、導電性を有していればどのようなものでもよいが、一般的なプリント配線板用絶縁材料の成型温度(200℃以下)で溶融するものであれば、絶縁材料と同時に加工ができ、好ましい。また、導電性ペーストの成分や接合用のパッド表面と金属間結合を形成し、形成後の再溶融温度が250℃以上である材料であれば、リフローを用いた表面実装の際の熱履歴に耐えうる高信頼性の多層配線板を得ることができ、好ましい。このような材料として、例えば、ORMET社製、商品名:HT−710、タツタ電線株式会社製、商品名:MPA500が挙げられる。
【0046】
第二のプリント配線板6と第三のプリント配線板7の少なくとも一方の面においても、第一のプリント配線板1と第三のプリント配線板7同様のプロセスにて、導電性ペーストの配置を行う。
【0047】
導電性ペーストを配置する方法としては、例えば、スクリーン印刷法、ディスペンサ法を用いることができる。導電性ペーストの中には、金属材料をバインダ樹脂に混合することで低粘性としてスクリーン印刷やディスペンサ加工が容易になるようにしているものがあるが、そのような導電性ペーストを用いる場合は、後に続くプロセスにおいて導電性ペーストの形状を保持できるように、導電性ペースト配置後に熱処理を行い、バインダ樹脂の予備硬化を行い、粘性を高めることが好ましい。この際の温度が70℃以下、時間が10分以下の場合、充分に粘性を高めることができず、形状が崩れる場合がある。また、温度150℃以上、時間120分以上の場合、粘性が高くなりすぎたり、バインダ樹脂の硬化が進み、導電材料が溶融しても充分な金属間化合物を形成できなかったり、積層時に変形できず、充分な接続性を確保出来ない場合がある。
【0048】
なお、図2(e)に示すように、絶縁フィルム2の表面に保護フィルム3を備えるものを使用した場合は、保護フィルム3を剥離する。
【0049】
<積層工程(II)>
次に、図3(f)に示すように、第一のプリント配線板1を1枚、第三のプリント配線板7を少なくとも1枚以上、第二のプリント配線板6を1枚の順に、導電性ペーストを配置した面と、導電性ペーストを配置しない面が対向するように重ねて配置し(IIa)、図3(g)に示すように、加熱・加圧積層を行う(IIb)。これにより、それぞれのプリント配線板間が電気的に接続される。なお、絶縁フィルムの表面に保護フィルムを備えるものを使用した場合は、プリント配線板同士を重ね合わせる前に、保護フィルムを剥離する。
【0050】
積層の際には、第一のプリント配線板1と第二のプリント配線板6と第三のプリント配線板7の平面上の同一箇所に複数の位置合わせ穴を配置し、第一のプリント配線板1に配置した位置合わせ穴に、積層後の多層配線板の板厚よりも短く、積層する第一のプリント配線板1と第三のプリント配線板7の総板厚よりも長いピンを挿入し、そのピンを、第三のプリント配線板7に配置した位置合わせ穴、さらには、第二のプリント配線板6に配置した位置合わせ穴に挿入することで、プリント配線板同士の位置合せを行いながら積層を行うのが、各プリント配線板同士を精度よく位置合わせすることができ、好ましい。
【実施例】
【0051】
(実施例1)
ガラスエポキシ多層材料(日立化成株式会社製、商品名:E−679)を用いて、基板サイズ500mm×500mm、板厚3.0mmの26層配線板を形成した。直径0.15mmのドリルにて、貫通スルーホール間の最小ピッチ0.40mmのパターンで20000穴の穴明けを行い、穴の内壁を銅めっきして電気的に接続し、全ての穴内を穴埋め樹脂(太陽インキ製造株式会社製、商品名:THP−100DX1)を用いて樹脂埋めを行った後、厚付け無電解銅めっきによる40μmの蓋めっきを行った。また、プリント配線板の表面層の片方の面には、貫通穴の位置に直径0.30mmの電気的接続パッドを配置した。また、基板4隅の490mm×490mmの位置に、直径5.0mmの位置合わせ穴を設けた。この基板を、第一のプリント配線板とした。
【0052】
次に、第一のプリント配線板と同じ材料とプロセスを用いて、板厚3.0mmの26層配線板を形成し、第二のプリント配線板とした。この際、第二のプリント配線板の表面層の片方の面には、20000穴の貫通穴の位置に直径0.30mmの電気的接続パッドを配置した。また、基板4隅の490mm×490mmの位置に、直径5.0mmの位置合わせ穴を設けた。
【0053】
次に、サイズ510mm×510mmで、片面に厚み0.025mmのPETフィルムが付いた公称厚み0.065mmの絶縁フィルム(日立化成株式会社製、商品名:AS−300HS)を、第一のプリント配線板の電気的接続パッドを配置した面に、絶縁フィルムが電気的接続パッドに接するように載せ、真空ラミネータを用いて、温度85℃、圧力0.5MPa、加圧時間30秒(真空引き30秒)の条件で、貼り付けを行った。
【0054】
次に、第一のプリント配線板において、絶縁フィルムを貼り付けた面から、COレーザ加工機を用いて、電気的接続パッドが露出するように絶縁フィルムの穴明けを行った。この際、絶縁フィルムに明ける穴の仕上がり穴径は0.25mmとし、プリント配線板の表面パターンと穴位置の位置合わせは、レーザ加工機に備わったカメラによりプリント配線板4隅に設けた位置合わせ用の表面パッド位置を読み取り、レーザ加工機の制御用ソフトウェアにて、XおよびY方向のオフセット、XおよびY方向のスケール、回転の補正を行った。
【0055】
次に、スクリーン印刷機を用いて、スクリーン印刷法にて前記の穴に導電性ペースト(タツタ電線株式会社製、商品名:MPA500)を充填した。充填した穴数は20000穴であった。この際、スクリーン版は、厚み0.1mmのメタルマスクとし、印刷領域として480mm×480mmの開口を設けたものとした。また、導電性ペーストを配置しない部分のプリント配線板表面の保護マスクとして、絶縁フィルム表面に付着しているPETフィルムを使用した。
【0056】
次に、絶縁フィルム表面に付着している0.025mmのPETフィルムを絶縁材から剥離した。
【0057】
次に、第一のプリント配線板と第二のプリント配線板を重ね合わせ、真空プレス機にて温度180℃、時間90分、圧力3MPaのプレス条件にて加熱・加圧プレスを行い、接着した。この際、第一のプリント配線板の導電性ペーストが配置された面と、第二のプリント配線板の導電性ペーストが配置されていない面が対向するように第二のプリント配線板を重ねて配置した。第一のプリント配線板と第二のプリント配線板の位置合せは、第一のプリント配線板と第二のプリント配線板の平面上の490mm×490mmの基板4隅の位置に直径5.0mmのドリルにてあらかじめ明けておいた位置合わせ穴に、長さ5mm、直径5.0mmのピンを挿入することで行った。
【0058】
(実施例2)
第一のプリント配線板と第二のプリント配線板に、ポリイミド多層材料(日立化成株式会社製、商品名:I−671)を用いたこと以外は実施例1と同様に多層配線板の製造を行った。
【0059】
(実施例3)
絶縁フィルムとして日立化成株式会社製、商品名:AS−9500を用いたこと以外は実施例1と同様に多層配線板の製造を行った。
【0060】
(実施例4)
絶縁フィルム穴明けの際にドリル加工を用いたこと以外は実施例1と同様に基板の製造を行った。加工するドリルとして直径0.25mm、先端角140度のドリルを用い、穴明けの深さ制御は、穴明け機に備えたセンサにより基板表面の位置を検知し、表面からの加工量を0.130mmとして行った。また、機械に備えたカメラによりプリント配線板4隅に設けた位置合わせ用の表面パッド位置を読み取り、加工機の制御用ソフトウェアにて、XおよびY方向のオフセット、XおよびY方向のスケール、回転の補正を行った。
【0061】
(実施例5)
導電性ペースト充填の直後に、電気乾燥機にて温度70℃、時間10分の乾燥処理を実施した以外は実施例1と同様に多層配線板の製造を行った。
【0062】
(実施例6)
導電性ペースト充填の直後に、電気乾燥機にて温度150℃、時間90分の乾燥処理を実施した以外は実施例1と同様に多層配線板の製造を行った。
【0063】
(実施例7)
第一のプリント配線板として、板厚3.0mm、絶縁ワイヤを用いた信号層数4層、全層数18層のマルチワイヤ配線板を用いた以外は実施例1と同様に多層配線板の製造を行った。
【0064】
(実施例8)
ガラスエポキシ多層材料(日立化成株式会社製、商品名:E−679)を用いて、基板サイズ500mm×500mm、板厚2.0mmの18層配線板を形成した。直径0.15mmのドリルにて、貫通スルーホール間の最小ピッチ0.40mmのパターンで20000穴の穴明けを行い、全ての穴内を穴埋め樹脂(太陽インキ製造株式会社製、商品名:THP−100DX1)を用いて樹脂埋めを行った後、厚付け無電解銅めっきによる40μmの蓋めっきを行った。また、基板の表面層の片方の面には、貫通穴の位置に直径0.30mmの電気的接続パッドを配置した。また、基板4隅の490mm×490mmの位置に、直径5.0mmの穴を設けた。この基板を、第一のプリント配線板とした。
【0065】
次に、第一のプリント配線板と同じ材料構成とプロセスを用いて、板厚2.0mmの18層配線板を形成し、第二のプリント配線板とした。この際、第二のプリント配線板の表面層の片方の面には、20000穴の貫通穴の位置に直径0.30mmの電気的接続パッドを配置した。また、基板4隅の490mm×490mmの位置に、直径5.0mmの位置合わせ穴を設けた。
【0066】
次に、第一のプリント配線板と同じ材料構成とプロセスを用いて、板厚2.0mmの18層配線板を形成し、第三のプリント配線板とした。この際、第二のプリント配線板の表面層の両面において、20000穴の貫通穴の位置に直径0.30mmの電気的接続パッドを配置した。また、基板4隅の490mm×490mmの位置に、直径5.0mmの位置合わせ穴を設けた。
【0067】
次に、サイズ510mm×510mmで、片面に厚み0.025mmのPETフィルムが付いた公称厚み0.075mmの絶縁フィルム(日立化成株式会社製、商品名:AS−300HS)を、第一のプリント配線板の電気的接続パッドを配置した面に、絶縁フィルムが電気的接続パッドに接するように載せ、真空ラミネータを用いて、温度85℃、圧力0.5MPa、加圧時間30秒(真空引き30秒)の条件で、貼り付けを行った。
【0068】
次に、サイズ510mm×510mmで、片面に厚み0.025mmのPETフィルムが付いた公称厚み0.065mmの絶縁フィルム(日立化成株式会社製、商品名:AS−300HS)を、第三のプリント配線板の電気的接続パッドを配置した面の片側に、絶縁フィルムが電気的接続パッドに接するように載せ、真空ラミネータを用いて、温度85℃、圧力0.5MPa、加圧時間30秒(真空引き30秒)の条件で、貼り付けを行った。
【0069】
次に、第一のプリント配線板と第三のプリント配線板それぞれについて、絶縁フィルムを貼り付けた面から、COレーザ加工機を用いて、接続パッドが露出するように絶縁フィルムの穴明けを行った。この際、仕上り穴径は0.30mmとし、プリント配線板の表面パターンと穴位置の位置合わせは、レーザ加工機に備わったカメラによりプリント配線板4隅に設けた位置合わせ用の表面パッド位置を読み取り、レーザ加工機の制御用ソフトウェアにて、XおよびY方向のオフセット、XおよびY方向のスケール、回転の補正を行った。
【0070】
次に、第一のプリント配線板と第三のプリント配線板それぞれについて、スクリーン印刷機を用いて、スクリーン印刷法にて前記の穴に導電性ペースト(タツタ電線株式会社製、商品名:MPA500)を充填した。この際、スクリーン版は、厚み0.1mmのメタルマスクとし、印刷領域として480mm×480mmに開口を設けたものとした。また、導電性ペーストを配置しない部分のプリント配線板表面の保護マスクとして、絶縁フィルム表面に付着しているPETフィルムを使用した。
【0071】
次に、絶縁フィルム表面に付着しているPETフィルムを絶縁材から剥離した。
【0072】
次に、第一のプリント配線板と、第三のプリント配線板と、第二のプリント配線板とを重ね合わせ、真空プレス機にて温度180℃、時間90分、圧力3MPaのプレス条件にて加熱・加圧プレスを行い、接着した。この際、第一のプリント配線板の導電性ペーストが配置された面に、第三のプリント配線板の導電性ペーストが配置されていない面が対向するように第三のプリント配線板を重ねて配置し、さらに、第三のプリント配線板の導電性ペーストが配置された面に、第二のプリント配線板の導電性ペーストが配置されていない面が対向するように第二のプリント配線板を重ねて配置し、プリント配線板同士の位置合せは、第一のプリント配線板と第二のプリント配線板と第三のプリント配線板の平面上の490mm×490mmの基板4隅の位置に直径5.0mmのドリルにてあらかじめ明けておいた穴に、長さ5mm、直径5.0mmのピンを挿入することで行った。
【0073】
(比較例1)
ガラスエポキシ多層材料(日立化成株式会社製、商品名:E−679)を用いて、基板サイズ500mm×500mm、板厚3.0mmの26層配線板を形成した。直径0.15mmのドリルにて、貫通スルーホール間の最小ピッチ0.40mmのパターンで20000穴の穴明けを行い、穴の内壁を銅めっきして電気的に接続し、全ての穴内を穴埋め樹脂(太陽インキ製造株式会社製、商品名:THP−100DX1)を用いて樹脂埋めを行った後、厚付け無電解銅めっきによる40μmの蓋めっきを行った。また、基板の表面層の片方の面には、貫通穴の位置に直径0.30mmの電気的接続パッドを配置した。また、基板4隅の490mm×490mmの位置に、直径5.0mmの位置合わせ穴を設けた。この基板を、第一のプリント配線板とした。
【0074】
次に、第一のプリント配線板と同じ材料とプロセスを用いて、板厚3.0mmの26層配線板を形成し、第二のプリント配線板とした。この際、第二のプリント配線板の表面層の片方の面には、20000穴の貫通穴の位置に直径0.30mmの電気的接続パッドを配置した。また、基板4隅の490mm×490mmの位置に、直径5.0mmの位置合わせ穴を設けた。
【0075】
次に、公称厚み0.06mmのプリプレグ(日立化成株式会社製、商品名:E−679F)を用い、このプリプレグに、COレーザ加工機を用いて、仕上り穴径0.25mmの穴明けを行った。
【0076】
次に、メタルマスクを用いてプリプレグに設けた穴に導電性ペースト(タツタ電線株式会社製、商品名:MPA500)を充填した。
【0077】
次に、第一のプリント配線板と、導電性ペーストを穴内に充填したプリプレグと、第二のプリント配線板を重ね合わせ、真空プレス機にて温度180℃、時間90分、圧力3MPaのプレス条件にて加熱・加圧プレスを行い、接着した。この際、第一のプリント配線板と第二のプリント配線板の接続パッドが配置された面が対向するように配置し、第一のプリント配線板と第二のプリント配線板の間にプリプレグが挟まるように重ね合わせた。第一のプリント配線板と、プリプレグ、第二のプリント配線板の位置合せは、第一のプリント配線板と、プリプレグ、第二のプリント配線板の平面上の490mm×490mmの基板4隅の位置に直径5.0mmのドリルにてあらかじめ明けておいた位置合わせ穴に、長さ5mm、直径5.0mmのピンを挿入することで行った。
【0078】
(比較例2)
ガラスエポキシ多層材料(日立化成株式会社製、商品名:E−679)を用いて、基板サイズ500mm×500mm、板厚3.0mmの26層配線板を形成した。直径0.15mmのドリルにて、貫通スルーホール間の最小ピッチ0.40mmのパターンで20000穴の穴明けを行い、穴の内壁を銅めっきして電気的に接続し、全ての穴内を穴埋め樹脂(太陽インキ製造株式会社製、商品名:THP−100DX1)を用いて樹脂埋めを行った後、厚付け無電解銅めっきによる40μmの蓋めっきを行った。また、基板の表面層の片方の面には、貫通穴の位置に直径0.25mmの電気的接続パッドを配置した。また、基板4隅の490mm×490mmの位置に、直径5.0mmの位置合わせ穴を設けた。この基板を、第一のプリント配線板とした。
【0079】
次に、第一のプリント配線板と同じ材料とプロセスを用いて、板厚3.0mmの26層配線板を形成し、第二のプリント配線板とした。この際、第二のプリント配線板の表面層の片方の面には、20000穴の貫通穴の位置に直径0.30mmの電気的接続パッドを配置した。また、基板4隅の490mm×490mmの位置に、直径5.0mmの位置合わせ穴を設けた。
【0080】
次に、第一のプリント配線板の電気的接続パッド上に、共晶はんだペースト(千住金属工業株式会社製、商品名:M705−WSG36−T5K)を、メタルマスクを用いてスクリーン印刷し、ピーク温度235℃、時間5秒の条件にてリフロー処理を行い、高さ0.13mmの山形のはんだバンプを形成した。
【0081】
次に、第一のプリント配線板と、公称厚み0.060mmの絶縁フィルムAS−300HSと、第二のプリント配線板を重ね合わせ、真空プレス機にて温度180℃、時間90分、圧力3MPaのプレス条件にて加熱・加圧プレスを行い、接着した。この際、第一のプリント配線板に形成したはんだバンプと、第二のプリント配線板の電気的接続パッドが対向するようにプリント配線板を重ね合わせ、第一のプリント配線板と、第二のプリント配線板の間には、公称厚み0.075mmの絶縁フィルムAS−300HSが挟まるように配置し、プリント配線板同士の位置合せは、第一のプリント配線板と第二のプリント配線板の平面上の490mm×490mmの4隅の位置に直径5.0mmのドリルにてあらかじめ明けておいた位置合わせ穴に、長さ5mm、直径5.0mmのピンを挿入することで行った。
【0082】
(比較例3)
公称厚み0.06mmのプリプレグ(日立化成株式会社製、商品名:E−679F)を用い、第一のプリント配線板の電気的接続パッドを配置した面に、プリプレグが電気的接続パッドに接するように載せ、真空プレス機を用いて、温度150℃、圧力1.0MPa、加圧時間30分、真空引き有りの条件で、貼り付けを行った。また、導電性ペーストの印刷において、ペーストを配置する穴の位置のみを絶縁フィルムの穴径と同径で開口したメタルマスクを用いた。これ以外は、実施例1と同様の条件で多層配線板の製造を行った。
【0083】
実施例、比較例にて製造した多層配線板の特性を、下記にて評価した。
【0084】
評価パターンとして、400穴の接合点と、接合した第一のプリント配線板、第二のプリント配線板、第三のプリント配線板の内層接続とを含むディジーチェーンパターンを10個用いた。初期の接続抵抗値は、1つのディジーチェーンパターンの始端と終端にて、ミリオームメータを用いて抵抗値の測定を行い、その後、測定した抵抗値を400穴で割り、1点あたりの接続抵抗値を求め、さらには全10個のパターンについて平均を求めた。
【0085】
リフロー耐熱後の接続抵抗値は、初期接続抵抗値を測定した10個のディジーチェーンパターンにおいて評価した。リフロー装置を用いて、ピーク温度235℃、時間5秒の条件にて3回処理を行った。リフロー処理後に、ミリオームメータを用いて接続抵抗値の測定を行い、さらには全10個のパターンについて平均を求めた。
【0086】
実施例における評価結果を、表1、表2に示す。
【表1】
【表2】
【0087】
比較例における評価結果を、表3に示す。
【表3】
【0088】
表1〜3に示すように、比較例の製造方法で作製した多層配線板は、初期接続抵抗値において断線が認められたのに対し、実施例の製造方法で作製した多層配線板は、初期接続抵抗値およびリフロー耐熱後の接続抵抗値において断線は認められず、本発明の多層配線板の製造方法によれば、接続信頼性に優れた、微小な接合端子ピッチを備えた高密度多層配線板を提供することができる。
【符号の説明】
【0089】
1…第一のプリント配線板
2…絶縁フィルム
3…保護フィルム
4…導電性ペースト充填用の穴
5…導電性ペースト
6…第二のプリント配線板
7…第三のプリント配線板
8…パッド
8a…電気的接続パッド
8b…非接続パッド
図1
図2
図3
図4