(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3重合性化合物が、前記第1重合性化合物及び前記第2重合性化合物とは異なる化合物であって、重合性基を複数有し、かつ、重合性基数を分子量で除した比が0.0100以上0.0120未満である重合性化合物を含有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を含有しないものと共に置換基を含有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を含有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を含有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
また、本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、遠紫外線、極紫外線(EUV:Extreme ultraviolet)、X線、並びに電子線等を意味する。また本明細書において光とは、活性光線及び放射線を意味する。本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、遠紫外線、X線、並びにEUV等による露光のみならず、電子線及びイオンビーム等の粒子線による描画も包含する。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタアクリレートを表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタアクリルを表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルを表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド及びメタアクリルアミドを表す。また、本明細書において、「(メタ)アリル」は、アリル及びメタアリルを表す。また、本明細書中において、「単量体」と「モノマー」とは同義である。単量体は、オリゴマー及びポリマーと区別され、重量平均分子量が2,000以下の化合物をいう。本明細書中において、重合性化合物とは、重合性基を含有する化合物のことをいい、単量体であっても、ポリマーであってもよい。重合性基とは、重合反応に関与する基をいう。
【0011】
本発明の硬化性組成物は、カーボンブラックと、重合性化合物とを含有し、重合性化合物が、ε−カプロラクトンの開環構造を有する第1重合性化合物と、水酸基を有する第2重合性化合物を含有する。
上記硬化性組成物において所望の効果が得られる理由の詳細は明らかではないが、所定の2種の重合性化合物を用いることによりカーボンブラックの硬化性組成物層中においてカーボンブラックの凝集が抑えられると共に、重合性化合物同士の相分離も抑制されたためと推測される。
以下では、硬化性組成物が含有する各成分について説明する。
【0012】
<カーボンブラック>
硬化性組成物は、カーボンブラックを含有する。
カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、及び、アセチレンブラックが挙げられる。
中でも、カーボンブラックとしては、ファーネスブラックが好ましい。
また、カーボンブラックは、公知の方法により表面処理が施されていてもよい。
【0013】
カーボンブラックの形状は特に制限はないが、粒子状が好ましい。
カーボンブラックの粒子径は特に制限はないが、分散性及び着色性の点から、平均一次粒子径が、1〜200nmが好ましく、10〜100nmがより好ましい。
なお、カーボンブラックの平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)を用いて測定できる。透過型電子顕微鏡としては、例えば、日立ハイテクノロジーズ社製の透過型電子顕微鏡HT7700を使用できる。
透過型電子顕微鏡を用いて得た粒子像の最大長(Dmax:粒子画像の輪郭上の2点における最大長さ)、及び最大長垂直長(DV−max:最大長に平行な2本の直線で画像を挟んだ時、2直線間を垂直に結ぶ最短の長さ)を測長し、その相乗平均値(Dmax×DV−max)
1/2を粒子径とする。この方法で100個の粒子の粒子径を測定し、その算術平均値を平均粒子径として、カーボンブラックの平均一次粒子径とする。
【0014】
カーボンブラックは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
硬化性組成物中におけるカーボンブラックの含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、10〜80質量%が好ましく、20〜60質量%がより好ましく、30〜50質量%が更に好ましい。
なお、全固形分とは、硬化膜を構成し得る成分を意図し、溶剤は含まれない。
【0015】
カーボンブラックは、適当な分散剤及び溶剤等と共に、ビーズミル、ボールミル、又は、ロッドミル等の混合装置を用いて混合分散して、分散液として使用できる。
上記分散液の調製に使用される溶剤としては、例えば、硬化性組成物が含有し得る溶剤として後述する溶剤のほか、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、ネオペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、及び、シクロヘキサノール等のアルコール類等が挙げられる。
中でも、PGMEA(プロピレングリコールメチルエーテルアセテート)が好ましい。
これらの溶剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0016】
分散液中のカーボンブラックの含有量は、分散液の全質量に対して、1〜70質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。
【0017】
<重合性化合物>
硬化性組成物は、重合性化合物を含有する。
重合性化合物は、ε−カプロラクトンの開環構造を有する第1重合性化合物(以下、単に「第1重合性化合物」ともいう)と、水酸基を有する第2重合性化合物(以下、単に「第2重合性化合物」ともいう)とを含有する。
【0018】
(第1重合性化合物)
第1重合性化合物は、ε−カプロラクトンの開環構造を有する重合性化合物である。
ε−カプロラクトンの開環構造とは、以下式(A)で表される構造である。
【0020】
第1重合性化合物においては、式(A)で表される構造が2つ連なって結合していてもよい。例えば、第1重合性化合物は、式(B)で表される構造を有していてもよい。
【0023】
第1重合性化合物は重合性基を有しており、第1重合性化合物中の重合性基の数は特に制限されないが、1つ以上が好ましく、2つ以上がより好ましく、3つ以上が更に好ましく、5つ以上が特に好ましい。上限は特に制限されないが、例えば、10つ以下が挙げられ、6つ以下が好ましい。
重合性基としては、エチレン性不飽和結合を含有する基が好ましく、例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、及び、(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
【0024】
第1重合性化合物はε−カプロラクトンの開環構造を有していればその構造は特に制限されないが、例えば、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセロール、及び、トリメチロールメラミン等の多価アルコールと、(メタ)アクリル酸及びε−カプロラクトンとをエステル化することにより得られる、ε−カプロラクトン変性多官能(メタ)アクリレートが好ましい。なかでも、式(Z−1)で表される化合物がより好ましい。
【0026】
式(Z−1)中、6つのRは全てが式(Z−2)で表される基であるか、又は、6つのRのうち1〜5つが式(Z−2)で表される基であり、残余が式(Z−3)で表される基である。
なかでも、Rのうち2〜6つが式(Z−2)で表される基であり、かつ、残余が式(Z−3)で表される基であることが好ましく、Rのうち2つが式(Z−2)で表される基であり、残余(残り4つ)が式(Z−3)で表される基であることがより好ましい。
【0028】
式(Z−2)中、R
1は水素原子又はメチル基を表す。mは、1又は2を表す。*は結合位置を表す。
【0030】
式(Z−3)中、R
1は水素原子又はメチル基を表す。*は結合位置を表す。
【0031】
第1重合性化合物としては、例えば、日本化薬からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されており、DPCA−20(上記式(Z−1)〜(Z−3)において、m=1、式(Z−2)で表される基の数=2、R
1が全て水素原子である化合物)、DPCA−30(同式において、m=1、式(Z−2)で表される基の数=3、R
1が全て水素原子である化合物)、DPCA−60(同式において、m=1、式(Z−2)で表される基の数=6、R
1が全て水素原子である化合物)、及び、DPCA−120(同式において、m=2、式(Z−2)で表される基の数=6、R
1が全て水素原子である化合物)等が挙げられる。
【0032】
硬化性組成物中における第1重合性化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1〜30質量%が好ましく、1〜25質量%がより好ましく、3〜20質量%が更に好ましい。
第1重合性化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。2種以上の第1重合性化合物を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0033】
(第2重合性化合物)
第2重合性化合物は、水酸基を有する重合性化合物である。
第2重合性化合物が有する水酸基の数は特に制限されないが、1つ以上が好ましく、1〜3つが好ましく、1つがより好ましい。
【0034】
第2重合性化合物は重合性基を有しており、第2重合性化合物中の重合性基の数は特に制限されないが、1つ以上が好ましく、2つ以上がより好ましく、3つ以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、例えば、10つ以下が挙げられ、6つ以下が好ましい。
重合性基としては、エチレン性不飽和結合を含有する基が好ましく、例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、及び、(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
【0035】
第2重合性化合物としては、式(Z−4)で表される化合物及び式(Z−5)で表される化合物からなる群から選択される化合物が好ましい。
【0037】
式(Z−4)中、Eは、各々独立に、−((CH
2)
yCH
2O)−*1、又は、−((CH
2)
yCH(CH
3)O)−*1を表す。yは、各々独立に、0〜10の整数を表す。mは、各々独立に、0〜10の整数を表す。4つのX
1のうち1〜3つが(メタ)アクリロイル基を表し、残余が水素原子を表す。*1は、X
1側の結合位置を表す。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、4つのmが全て0である態様が好ましく、4つのmが全て0で、かつ、4つのX
1のうち3つが(メタ)アクリロイル基を表し、残余(1つ)が水素原子を表す態様がより好ましい。
つまり、式(Z−4−1)で表される化合物がより好ましい。
【0039】
式(Z−4−1)中、4つのX
1のうち3つが(メタ)アクリロイル基を表し、残余(1つ)が水素原子を表す。
【0040】
式(Z−5)中、Eは、各々独立に、−((CH
2)
yCH
2O)−*1、又は、−((CH
2)
yCH(CH
3)O)−*1を表す。yは、各々独立に、0〜10の整数を表す。nは、各々独立に、0〜10の整数を表す。6つのX
1のうち1〜5つが(メタ)アクリロイル基を表し、残余が水素原子を表す。*1は、X
1側の結合位置を表す。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、6つのnが全て0である態様が好ましく、6つのnが全て0で、かつ、6つのX
1のうち5つが(メタ)アクリロイル基を表し、残余(1つ)が水素原子を表す態様がより好ましい。
つまり、式(Z−5−1)で表される化合物がより好ましい。
【0042】
式(Z−5−1)中、6つのX
1のうち5つが(メタ)アクリロイル基を表し、残余(1つ)が水素原子を表す。
【0043】
硬化性組成物中における第2重合性化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1〜30質量%が好ましく、1〜25質量%がより好ましく、3〜20質量%が更に好ましい。
第2重合性化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。2種以上の第2重合性化合物を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0044】
(その他)
硬化性組成物は、上述した第1重合性化合物及び第2重合性化合物以外の他の重合性化合物を含有していてもよい。
例えば、重合性化合物は、更に、第1重合性化合物及び第2重合性化合物とは異なる化合物であって、重合性基を複数有する第3重合性化合物を含有していてもよい。
硬化性組成物に上記第3重合性化合物(特に、後述する、重合性基数を分子量で除した比が0.0100以上0.0120未満である重合性化合物)が含有されることにより、後述する引き置き経時安定性評価及び現像後波打ち評価がより向上する。
【0045】
第3重合性化合物は、第1重合性化合物及び第2重合性化合物とは異なる化合物である。つまり、第3重合性化合物には、ε−カプロラクトンの開環構造及び水酸基のいずれも有さない化合物である。
【0046】
第3重合性化合物としては、後述する現像後波打ち評価がより向上する点で、式(Z−6)で表される化合物及び式(Z−7)で表される化合物からなる群から選択される化合物が好ましい。
【0048】
式(Z−6)中、Eは、各々独立に、−((CH
2)
yCH
2O)−*2、又は、−((CH
2)
yCH(CH
3)O)−*2を表す。yは、各々独立に、0〜10の整数を表す。mは、各々独立に、0〜10の整数を表す。X
2は、(メタ)アクリロイル基を表す。*2は、X
2側の結合位置を表す。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、4つのmが全て0である態様、又は、4つのmが全て1であり、Eが−((CH
2)
yCH
2O)−*2であり、かつ、4つのyが全て1である態様が挙げられる。
つまり、式(Z−6−1)で表される化合物がより好ましい。
【0050】
4つのmは全て0であるか、又は、1であり、X
2は、(メタ)アクリロイル基を表す。
【0051】
式(Z−7)中、Eは、各々独立に、−((CH
2)
yCH
2O)−*2、又は、−((CH
2)
yCH(CH
3)O)−*2を表す。yは、各々独立に、0〜10の整数を表す。nは、各々独立に、0〜10の整数を表す。X
2は、(メタ)アクリロイル基を表す。*2は、X
2側の結合位置を表す。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、6つのmが全て0である態様が好ましい。
つまり、式(Z−7−1)で表される化合物がより好ましい。
【0053】
X
2は、(メタ)アクリロイル基を表す。
【0054】
なかでも、引き置き経時安定性評価及び現像後波打ち評価がより優れる点で、第3重合性化合物は、第1重合性化合物及び第2重合性化合物とは異なる化合物であって、重合性基を複数有し、かつ、重合性基数を分子量で除した比が0.0100以上0.0120未満である重合性化合物を含有することが好ましい。
上記重合性基数を分子量で除した比(重合性基数/分子量)は、0.0103〜0.0115であることが好ましい。
【0055】
硬化性組成物中における第3重合性化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1〜30質量%が好ましく、1〜25質量%がより好ましく、3〜20質量%が更に好ましい。
第3重合性化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。2種以上の第3重合性化合物を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0056】
重合性化合物は、上述した第1重合性化合物、第2重合性化合物、及び、第3重合性化合物以外の重合性化合物を含有していてもよい。
【0057】
硬化性組成物中において、重合性化合物としては、引き置き経時安定性評価及び現像後波打ち評価がより優れる点で、少なくとも4種以上の化合物が含有されることが好ましい。例えば、硬化性組成物に、第1重合性化合物が1種、第2重合性化合物が1種、及び、第3重合性化合物が2種含有される場合、4種の化合物が含有される態様に該当する。
硬化性組成物中における重合性化合物の種類数は、4種以上が好ましく、4〜6種がより好ましく、4〜5種が更に好ましい。
上記効果が得られる理由の詳細は不明だが、現像後波打ち評価が向上した理由に関しては、重合性基数の異なる重合性化合物を含有させることで、硬化膜中における架橋点間の分子量にバラつきが生じやすく、硬化により硬化膜内に生じた収縮の応力を分散させやすくなったためと推測される。
【0058】
硬化性組成物中において、重合性化合物としては、引き置き経時安定性評価及び現像後波打ち評価がより優れる点で、重合性基の数が異なる化合物を少なくとも3種以上含有されることが好ましく、4種以上含有されることがより好ましい。例えば、硬化性組成物に、6つの重合性基を有する第1重合性化合物、5つの重合性基を有する第2重合性化合物、3つの重合性基を有する第2重合性化合物、6つの重合性基を有する第3重合性化合物、及び、4つの重合性基を有する第3重合性化合物が含有される場合、6つの重合性基を有する第1重合性化合物及び6つの重合性基を有する第3重合性化合物はいずれも6つの重合性基を有する化合物であるため、硬化性組成物には、4種の重合性基の数が異なる化合物が含有される態様に該当する。
【0059】
硬化性組成物中における重合性化合物の態様としては、重合性化合物が、式(Z−1)で表される化合物と、式(Z−5)で表される化合物(好ましくは、式(Z−5−1)で表される化合物)と、式(Z−6)で表される化合物(好ましくは、式(Z−6−1)で表される化合物)と、式(Z−7)で表される化合物(好ましくは、式(Z−7−1)で表される化合物)とを含有する態様が好ましい。更に、上記態様においては、重合性化合物は、式(Z−4)で表される化合物(好ましくは、式(Z−4−1)で表される化合物)を含有していてもよい。
【0060】
硬化性組成物中における成分の分析は、公知の方法を組み合わせて実施できる。例えば、質量分析においてエレクトロスプレーイオン化法(好ましくは、ポジティブモード)を用いた液体クロマトグラフィー質量分析法が挙げられる。
【0061】
<任意成分>
上記硬化性組成物は、本発明の効果を奏する範囲内において、カーボンブラック及び重合性化合物以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、重合開始剤、樹脂、重合禁止剤、界面活性剤、着色剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、及び、溶剤が挙げられる。以下では、硬化性組成物中に含有される任意成分について詳述する。
【0062】
<重合開始剤>
硬化性組成物は、重合開始剤を含有していてもよい。
重合開始剤の種類は特に制限されず、公知の重合開始剤が挙げられる。重合開始剤としては、光重合開始剤、及び、熱重合開始剤が挙げられ、光重合開始剤が好ましい。重合開始剤は、着色性が無い重合開始剤、及び、高退色性である重合開始剤から選択されることも好ましい。なお、重合開始剤としては、いわゆるラジカル重合開始剤が好ましい。
【0063】
熱重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、3−カルボキシプロピオニトリル、アゾビスマレノニトリル、及び、ジメチル−(2,2’)−アゾビス(2−メチルプロピオネート)[V−601]等のアゾ化合物、並びに、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、及び、過硫酸カリウム等の有機過酸化物が挙げられる。
熱重合開始剤としては、例えば、加藤清視著「紫外線硬化システム」(株式会社総合技術センター発行:平成元年)の第65〜148頁に記載されている化合物が挙げられる。
【0064】
上記硬化性組成物は光重合開始剤を含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、重合性化合物の重合を開始することができれば特に制限されず、公知の光重合開始剤が挙げられる。光重合開始剤としては、例えば、紫外線領域から可視光領域に対して感光性を有するものが好ましい。また、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよく、重合性化合物の種類に応じてカチオン重合を開始させるような開始剤であってもよい。
また、硬化性組成物は、約300〜800nm(330〜500nmがより好ましい。)の範囲内に少なくとも約50のモル吸光係数を有する化合物を、光重合開始剤として少なくとも1種含有していることが好ましい。
【0065】
光重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を含有するもの、及び、オキサジアゾール骨格を含有するもの等)、α−アミノケトン化合物、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、α−アミノケトン化合物(好ましくは、α−アミノアセトフェノン化合物)、及び、ヒドロキシアセトフェノン等が挙げられる。
【0066】
硬化性組成物は、α−アミノケトン系重合開始剤を含有することが好ましい。硬化性組成物は、後述する残膜率が向上する点で、α−アミノケトン系重合開始剤と共に、更に、オキシムエステル系重合開始剤(以下、「オキシム化合物」ともいう。)を含有することも好ましい。
【0067】
光重合開始剤としては、例えば、特開平10−291969号公報に記載のアミノアセトフェノン系開始剤、及び、特許第4225898号公報に記載のアシルホスフィン系開始剤を用いることができ、上記内容は本明細書に組み込まれる。
ヒドロキシアセトフェノン化合物としては、例えば、IRGACURE−184、DAROCUR−1173、IRGACURE−500、IRGACURE−2959、及びIRGACURE−127(商品名:いずれもBASF社製)が挙げられる。
α−アミノケトン化合物(好ましくは、α−アミノアセトフェノン化合物)としては、例えば、市販品であるIRGACURE−907、IRGACURE−369、及び、IRGACURE−379EG(商品名:いずれもBASF社製)が挙げられる。
アシルホスフィン化合物としては、IRGACURE−819、及び、IRGACURE−TPO(商品名:いずれもBASF社製)が挙げられる。
【0068】
オキシム化合物は、優れた感度、及び、重合効率を有するため、結果として、オキシム化合物を含有する硬化性組成物は顔料の含有量が多い場合であっても、よりすぐれた硬化性を有する。
オキシム化合物としては、特開2001−233842号公報に記載の化合物、特開2000−80068号公報に記載の化合物、及び、特開2006−342166号公報に記載の化合物を用いることができ、上記の内容は本明細書に組み込まれる。
オキシム化合物としては、例えば、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−(4−トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン−2−オン、及び、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
また、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.1653−1660、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年)pp.202−232、特開2000−66385号公報記載の化合物、特開2000−80068号公報、特表2004−534797号公報、及び特開2006−342166号公報に記載の化合物等も挙げられ、上記内容は本明細書に組み込まれる。
【0069】
オキシム化合物の市販品としては、IRGACURE−OXE01(BASF社製)、IRGACURE−OXE02(BASF社製)、IRGACURE−OXE03(BASF社製)、IRGACURE−OXE04(BASF社製)、TR−PBG−304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカアークルズNCI−831及びアデカアークルズNCI−930(ADEKA社製)、N−1919(カルバゾール・オキシムエステル骨格含有光開始剤(ADEKA社製))、並びに、NCI−730(ADEKA社製)等が挙げられる。
【0070】
また上記記載以外のオキシム化合物としては、カルバゾールN位にオキシムが連結した特表2009−519904号公報に記載の化合物;ベンゾフェノン部位にヘテロ置換基が導入された米国特許第7626957号公報に記載の化合物;色素部位にニトロ基が導入された特開2010−15025号公報及び米国特許公開2009−292039号公報に記載の化合物;国際公開特許2009−131189号公報に記載のケトオキシム化合物;トリアジン骨格とオキシム骨格を同一分子内に含有する米国特許7556910号公報に記載の化合物;405nmに吸収極大を有しg線光源に対して良好な感度を有する特開2009−221114号公報に記載の化合物;等が挙げられる。
また、特開2013−29760号公報の段落0274〜0275に記載の化合物を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0071】
オキシム化合物としては、下記式(OX−1)で表される構造を含有する化合物が好ましい。なお、オキシム化合物のN−O結合が(E)体のオキシム化合物であっても、(Z)体のオキシム化合物であってもよい。オキシム化合物としては、(E)体と(Z)体とを併用してもよい。
【0073】
式(OX−1)中、R及びBは各々独立に一価の置換基を表し、Aは二価の有機基を表し、Arはアリール基を表す。
式(OX−1)中、Rで表される一価の置換基としては、一価の非金属原子団が好ましい。
一価の非金属原子団としては、例えば、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環基、アルキルチオカルボニル基、及び、アリールチオカルボニル基が挙げられる。また、これらの基は、1以上の置換基を有していてもよい。また、前述した置換基は、更に他の置換基で置換されていてもよい。
置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、アルキル基、及び、アリール基が挙げられる。
式(OX−1)中、Bで表される一価の置換基としては、アリール基、複素環基、アリールカルボニル基、又は、複素環カルボニル基が好ましく、アリール基、又は、複素環基がより好ましい。これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基と同様である。
【0074】
式(OX−1)中、Aで表される二価の有機基としては、炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、又は、アルキニレン基が好ましい。これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が挙げられる。
【0075】
光重合開始剤として、フッ素原子を含有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を含有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010−262028号公報記載の化合物;特表2014−500852号公報記載の化合物24、36〜40;特開2013−164471号公報記載の化合物(C−3);等が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0076】
光重合開始剤として、下記一般式(1)〜(4)で表される化合物を用いることもできる。
【0079】
式(1)において、R
1及びR
2は、各々独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基、炭素数6〜30のアリール基、又は、炭素数7〜30のアリールアルキル基を表し、R
1及びR
2がフェニル基の場合、フェニル基同士が結合してフルオレン基を形成してもよく、R
3及びR
4は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基又は炭素数4〜20の複素環基を表し、Xは、単結合又はカルボニル基を表す。
【0080】
式(2)において、R
1、R
2、R
3及びR
4は、式(1)におけるR
1、R
2、R
3及びR
4と同義であり、R
5は、−R
6、−OR
6、−SR
6、−COR
6、−CONR
6R
6、−NR
6COR
6、−OCOR
6、−COOR
6、−SCOR
6、−OCSR
6、−COSR
6、−CSOR
6、−CN、ハロゲン原子又は水酸基を表し、R
6は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基又は炭素数4〜20の複素環基を表し、Xは、単結合又はカルボニル基を表し、aは0〜4の整数を表す。
【0081】
式(3)において、R
1は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基、炭素数6〜30のアリール基、又は、炭素数7〜30のアリールアルキル基を表し、R
3及びR
4は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基又は炭素数4〜20の複素環基を表し、Xは、単結合又はカルボニル基を表す。
【0082】
式(4)において、R
1、R
3及びR
4は、式(3)におけるR
1、R
3及びR
4と同義であり、R
5は、−R
6、−OR
6、−SR
6、−COR
6、−CONR
6R
6、−NR
6COR
6、−OCOR
6、−COOR
6、−SCOR
6、−OCSR
6、−COSR
6、−CSOR
6、−CN、ハロゲン原子又は水酸基を表し、R
6は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基又は炭素数4〜20の複素環基を表し、Xは、単結合又はカルボニル基を表し、aは0〜4の整数を表す。
【0083】
上記式(1)及び式(2)において、R
1及びR
2は、各々独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロヘキシル基又はフェニル基が好ましい。R
3は、メチル基、エチル基、フェニル基、トリル基又はキシリル基が好ましい。R
4は、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基が好ましい。R
5は、メチル基、エチル基、フェニル基、トリル基又はナフチル基が好ましい。Xは単結合が好ましい。
また、上記式(3)及び(4)において、R
1は、各々独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロヘキシル基又はフェニル基が好ましい。R
3はメチル基、エチル基、フェニル基、トリル基又はキシリル基が好ましい。R
4は炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基が好ましい。R
5はメチル基、エチル基、フェニル基、トリル基又はナフチル基が好ましい。Xは単結合が好ましい。
式(1)及び式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、特開2014−137466号公報の0076〜0079段落に記載された化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれることとする。
【0084】
上記硬化性組成物に好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示す。また、オキシム化合物としては、国際公開第2015−036910号のTable1に記載の化合物を用いることもでき、上記の内容は本明細書に組み込まれる。
【0087】
オキシム化合物は、350〜500nmの波長領域に極大吸収波長を有するものが好ましく、360〜480nmの波長領域に極大吸収波長を有するものがより好ましく、365nm及び405nmの吸光度が高いものが更に好ましい。
オキシム化合物の365nm又は405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、1,000〜300,000が好ましく、2,000〜300,000がより好ましく、5,000〜200,000が更に好ましい。
オキシム化合物のモル吸光係数は、公知の方法で測定できるが、例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Cary−5 spctrophotometer)にて、酢酸エチルを用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
光重合開始剤は、必要に応じて2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0088】
また、光重合開始剤としては、特開第2008−260927号公報の段落0052、特開第2010−97210号公報の段落0033〜0037、及び、特開第2015−68893号公報の段落0044に記載の化合物を用いることもでき、上記の内容は本明細書に組み込まれる。
【0089】
硬化性組成物中における重合開始剤の含有量は特に制限されないが、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1〜20質量%が好ましい。
重合開始剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。2種以上の重合開始剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0090】
<樹脂>
硬化性組成物は樹脂を含有していてもよい。樹脂としては、例えば、分散剤、及び、アルカリ可溶性樹脂等が挙げられる。
硬化性組成物中における樹脂の含有量は特に制限されないが、硬化性組成物の全固形分に対して、5〜45質量%が好ましい。
樹脂は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の樹脂を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい
【0091】
(分散剤)
上記硬化性組成物は分散剤(樹脂に該当する)を含有することが好ましい。
分散剤は、主に、カーボンブラック及び他の着色剤(特に、顔料)の分散剤として機能する。
硬化性組成物中における分散剤の含有量としては特に制限されないが、硬化性組成物が、より優れた経時安定性、及び、より優れたパターニング性を有する点で、硬化性組成物の全固形分に対して、5〜40質量%が好ましい。
分散剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の分散剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0092】
分散剤としては、特に制限されず、公知の分散剤を用いることができる。
分散剤としては、例えば、高分子分散剤が挙げられる。高分子分散剤としては、例えば、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、及び、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物が挙げられる。
また、分散剤としては、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、及び、顔料誘導体も挙げられる
中でも、分散剤としては、高分子化合物が好ましい。高分子化合物は、その構造から更に直鎖状高分子、末端変性型高分子、グラフト型高分子、及びブロック型高分子に分類できる。
【0093】
高分子化合物は、カーボンブラック又は顔料の表面に吸着し、カーボンブラック又は顔料の再凝集を防止するように作用する。そのため、カーボンブラック又は顔料表面へのアンカー部位を含有する、末端変性型高分子、グラフト型(高分子鎖を含有する)高分子、及び、ブロック型高分子が好ましい。
【0094】
高分子化合物は、グラフト鎖を含有する構造単位を含有することが好ましい。なお、本明細書において、「構造単位」とは「繰り返し単位」と同義である。
このようなグラフト鎖を含有する構造単位を含有する高分子化合物は、溶剤とのより優れた親和性を有する。グラフト鎖を含有する構造単位を含有する高分子化合物は、溶剤とのより優れた親和性を有するため、カーボンブラック又は顔料をより分散させやすく、かつ、カーボンブラック又は顔料を分散させた後に時間が経過しても当初の分散状態がより変化しにくい。また、グラフト鎖を含有する構造単位を含有する高分子化合物は、グラフト鎖を含有するため、後述する重合性化合物、及び/又は、その他の成分等とのより優れた親和性を有する。その結果、グラフト鎖を含有する構造単位を含有する高分子化合物は後述するアルカリ現像時に、未反応の重合性化合物等に起因する残渣を生じにくくなる。
グラフト鎖が長くなる(式量が大きくなる)と立体反発効果が高くなり、カーボンブラック又は顔料の分散性は向上する。一方、グラフト鎖が長すぎると、カーボンブラック又は顔料への吸着力が低下して、カーボンブラック又は顔料の分散性は低下する傾向となる。このため、グラフト鎖の原子数(水素原子を除く)としては、は、40〜10000が好ましく、50〜2000がより好ましく、60〜500が更に好ましい。
ここで、グラフト鎖とは、高分子化合物の主鎖の根元(主鎖から枝分かれしている基において主鎖に結合する原子)から、主鎖から枝分かれしている基の末端までを意図する。
【0095】
グラフト鎖は、ポリマー構造を含有する高分子鎖が好ましい。高分子鎖が含有するポリマー構造としては、特に制限されないが、例えば、ポリ(メタ)アクリレート構造(例えば、ポリ(メタ)アクリル構造)、ポリエステル構造、ポリウレタン構造、ポリウレア構造、ポリアミド構造、及び、ポリエーテル構造が挙げられる。
高分子鎖と溶剤と更に優れた親和性を有し、高分子化合物が、カーボンブラック又は顔料をより分散させやすい点で、高分子鎖は、ポリエステル構造、ポリエーテル構造及びポリ(メタ)アクリレート構造からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、ポリエステル構造、及び、ポリエーテル構造からなる群から選択される少なくとも1種を含有することがより好ましい。
【0096】
高分子化合物が含有する高分子鎖を含有する構造単位に対応し、高分子化合物の合成に用いることができる市販のマクロモノマーとしては、例えば、AA−6、AA−10、AB−6、AS−6、AN−6、AW−6、AA−714、AY−707、AY−714、AK−5、AK−30、及び、AK−32(以上はすべて商品名であり、東亞合成社製である。);ブレンマーPP−100、ブレンマーPP−500、ブレンマーPP−800、ブレンマーPP−1000、ブレンマー55−PET−800、ブレンマーPME−4000、ブレンマーPSE−400、ブレンマーPSE−1300、及び、ブレンマー43PAPE−600B(以上はすべて商品名であり、日油社製である)等;等が挙げられる。
【0097】
上記分散剤は、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、及び、環状又は鎖状のポリエステルからなる群より選択される少なくとも1種の構造を含有することが好ましく、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、及び、鎖状のポリエステルからなる群より選択される少なくとも1種の構造を含有することがより好ましく、ポリアクリル酸メチル構造、ポリメタクリル酸メチル構造、ポリカプロラクトン構造、及び、ポリバレロラクトン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含有することが更に好ましい。
分散剤は、分子中に上記構造を一種単独で含有してもよいし、分子中にこれらの構造を複数種類含有してもよい。
ここで、ポリカプロラクトン構造とは、ε−カプロラクトンを開環した構造を繰り返し単位として含有するものをいう。ポリバレロラクトン構造とは、δ−バレロラクトンを開環した構造を繰り返し単位として含有するものをいう。
【0098】
高分子化合物は、グラフト鎖を含有する構造単位とは異なる(すなわち、グラフト鎖を含有する構造単位には相当しない)疎水性構造単位を含有することが好ましい。ただし、本明細書において、疎水性構造単位は、酸基(例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及び、フェノール性水酸基等)を含有しない構造単位である。
【0099】
疎水性構造単位は、後述するClogP値が1.2以上の化合物(モノマー)に由来する(対応する)構造単位が好ましく、ClogP値が1.2〜8.0の化合物に由来する構造単位がより好ましい。
【0100】
ClogP値は、Daylight Chemical Information System, Inc.から入手できるプログラム“CLOGP”で計算された値である。このプログラムは、Hansch, Leoのフラグメントアプローチ(下記文献参照)により算出される“計算logP”の値を提供する。フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、化学構造を部分構造(フラグメント)に分割し、そのフラグメントに対して割り当てられたlogP寄与分を合計することにより化合物のlogP値を推算している。その詳細は以下の文献に記載されている。本発明では、プログラムCLOGP v4.82により計算したClogP値を用いる。
A. J. Leo, Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol.4, C. Hansch, P. G. Sammnens, J. B. Taylor and C. A. Ramsden, Eds., p.295, Pergamon Press, 1990 C. Hansch & A. J. Leo. SUbstituent Constants For Correlation Analysis in Chemistry and Biology. John Wiley & Sons. A.J. Leo. Calculating logPoct from structure. Chem. Rev., 93, 1281−1306, 1993.
【0101】
logPは、分配係数P(Partition Coefficient)の常用対数を意味し、ある有機化合物が油(一般的には1−オクタノール)と水の2相系の平衡でどのように分配されるかを定量的な数値として表す物性値であり、以下の式で示される。
logP=log(Coil/Cwater)
式中、Coilは油相中の化合物のモル濃度を、Cwaterは水相中の化合物のモル濃度を表す。
logPの値が0をはさんでプラスに大きくなると油溶性が増し、マイナスで絶対値が大きくなると水溶性が増すことを意味し、有機化合物の水溶性と負の相関があり、有機化合物の親疎水性を見積るパラメータとして広く利用されている。
【0102】
高分子化合物は、カーボンブラック又は顔料と相互作用を形成しうる官能基を含有することが好ましい。つまり、高分子化合物は、カーボンブラック又は顔料と相互作用を形成しうる官能基を含有する構造単位を更に含有することが好ましい。
このカーボンブラック又は顔料と相互作用を形成しうる官能基としては、例えば、酸基、塩基性基、配位性基、及び、反応性を有する官能基等が挙げられる。
高分子化合物が、酸基、塩基性基、配位性基、又は、反応性を有する官能基を含有する場合、それぞれ、酸基を含有する構造単位、塩基性基を含有する構造単位、配位性基を含有する構造単位、又は、反応性を有する構造単位を含有することが好ましい。
【0103】
また、酸基を含有する高分子化合物は、後述する溶剤とのより高い親和性を有する。従い、酸基を含有する高分子化合物を含有する硬化性組成物はより優れた塗布性を有する。
これは、酸基を含有する構造単位における酸基がカーボンブラック又は顔料と相互作用しやすく、高分子化合物がカーボンブラック又は顔料を安定的に分散すると共に、カーボンブラック又は顔料を分散する高分子化合物の粘度がより低下し、高分子化合物自体も安定的に分散されやすいためであると推測される。
【0104】
酸基としてアルカリ可溶性基を含有する構造単位は、上記のグラフト鎖を含有する構造単位と同一の構造単位であっても、異なる構造単位であってもよい。
なお、本明細書において、酸基としてアルカリ可溶性基を含有する構造単位は、上記の疎水性構造単位とは異なる構造単位を意図する(すなわち、上記の疎水性構造単位には該当しない)。
【0105】
カーボンブラック又は顔料と相互作用を形成しうる官能基のうち、酸基としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及び、フェノール性水酸基が挙げられ、カルボン酸基、スルホン酸基、及び、リン酸基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、カーボンブラック又は顔料等へのより優れた吸着力を有し、かつ、より優れた分散性を有する点で、カルボン酸基がより好ましい。
すなわち、高分子化合物は、カルボン酸基、スルホン酸基、及び、リン酸基からなる群から選択される少なくとも1種を含有する構造単位を更に含有することが好ましい。
【0106】
高分子化合物は、酸基を含有する構造単位を1種又は2種以上有してもよい。
高分子化合物は、酸基を含有する構造単位を含有してもしなくてもよい。
酸基を含有する構造単位の高分子化合物中における含有量は、高分子化合物の全質量に対して、5〜80質量%が好ましく、アルカリ現像による画像強度のダメージがより抑制される点で、10〜60質量%がより好ましい。
【0107】
カーボンブラック又は顔料と相互作用を形成しうる官能基のうち、塩基性基としては、例えば、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、N原子を含有するヘテロ環、及び、アミド基が挙げられる。中でも、カーボンブラック又は顔料へのより優れた吸着力を有し、かつ、より優れた分散性を有するで、第3級アミノ基が好ましい。高分子化合物は、塩基性基1種を単独で含有しても、2種以上を含有してもよい。高分子化合物は、塩基性基を含有する構造単位を含有してもしなくてもよい。
高分子化合物中における、塩基性基を含有する構造単位の含有量は、高分子化合物の全質量に対して、0.01〜50質量%が好ましく、硬化性組成物がより優れた現像性(アルカリ現像がより阻害されにくい)点で、0.01〜30質量%がより好ましい。
【0108】
カーボンブラック又は顔料と相互作用を形成しうる官能基のうち、配位性基、及び、反応性を有する官能基としては、例えば、アセチルアセトキシ基、トリアルコキシシリル基、イソシアネート基、酸無水物基、及び、酸塩化物基等が挙げられる。中でも、カーボンブラック又は顔料へのより優れた吸着力を有し、カーボンブラック又は顔料をより分散させやすい点で、アセチルアセトキシ基が好ましい。高分子化合物は、配位性基、及び、反応性を有する官能基1種を単独で含有しても、2種以上を含有してもよい。高分子化合物は、配位性基を含有する構造単位、及び、反応性を有する官能基を含有する構造単位のいずれをも含有してもしなくてもよい。
高分子化合物中における、配位性基を含有する構造単位、及び、反応性を有する官能基の含有量としては、高分子化合物の全質量に対して、10〜80質量%が好ましく、硬化性組成物がより優れた現像性(アルカリ現像がより阻害されにくい)点で、20〜60質量%がより好ましい。
【0109】
高分子化合物中における、カーボンブラック又は顔料と相互作用を形成しうる官能基を含有する構造単位の含有量は、カーボンブラック又は顔料との相互作用、経時安定性、及び現像液への浸透性の観点から、高分子化合物の全質量に対して、0.05〜90質量%が好ましく、1.0〜80質量%がより好ましく、10〜70質量%が更に好ましい。
【0110】
更に、高分子化合物は、画像強度等の諸性能を向上する目的で、本発明の効果を損なわない限りにおいて、グラフト鎖を含有する構造単位、疎水性構造単位、及び、カーボンブラック又は顔料と相互作用を形成しうる官能基を含有する構造単位とは異なる、他の構造単位(例えば、分散組成物に用いられる溶剤との親和性を有する官能基等を含有する構造単位等)を更に含有してもよい。
他の構造単位としては、例えば、アクリロニトリル類、及び、メタクリロニトリル類からなる群から選択されるラジカル重合性化合物に由来の構造単位等が挙げられる。
高分子化合物は、他の構造単位1種を単独で含有して、2種以上を含有してもよい。
高分子化合物中における他の構造単位の含有量は、高分子化合物の全質量に対して、0%〜80質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましい。他の構造単位の含有量が0〜80質量%であると、硬化性組成物は、より優れたパターン形成性を有する。
【0111】
高分子化合物の酸価は特に制限されないが、0〜250mgKOH/gが好ましく、10〜200mgKOH/gがより好ましく、20〜120mgKOH/gが更に好ましい。
高分子化合物の酸価は、例えば、高分子化合物中における酸基の平均含有量から算出できる。また、高分子化合物中の酸基を含有する構造単位の含有量を変化させることで所望の酸価を有する高分子化合物を得ることができる。
【0112】
高分子化合物の重量平均分子量は、硬化性組成物がより優れた現像性を有し、かつ、得られる着色膜が、現像工程においてより剥離しにくい点で、GPC(Gel Permeation Chromatography:ゲル浸透クロマトグラフィー)法によるポリスチレン換算値として、4,000〜300,000が好ましく、5,000〜200,000がより好ましく、6,000〜100,000が更に好ましく、10,000〜50,000が特に好ましい。
GPC法は、HLC−8020GPC(東ソー製)を用い、カラムとしてTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ2000(東ソー製、4.6mmID×15cm)を、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる方法に基づく。なお、高分子化合物は、公知の方法に基づいて合成できる。
【0113】
高分子化合物の具体例としては、楠本化成社製「DA−7301」、BYKChemie社製「Disperbyk−101(ポリアミドアミン燐酸塩)、107(カルボン酸エステル)、110(酸基を含有する共重合体)、111(リン酸系分散剤)、130(ポリアミド)、161、162、163、164、165、166、170、190(高分子共重合体)」、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和ポリカルボン酸)」、EFKA社製「EFKA4047、4050〜4010〜4165(ポリウレタン系)、EFKA4330〜4340(ブロック共重合体)、4400〜4402(変性ポリアクリレート)、5010(ポリエステルアミド)、5765(高分子量ポリカルボン酸塩)、6220(脂肪酸ポリエステル)、6745(フタロシアニン誘導体)、6750(アゾ顔料誘導体)」、味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821、PB822、PB880、PB881」、共栄社化学社製「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合体)」、楠本化成社製「ディスパロンKS−860、873SN、874、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル)、DA−703−50、DA−705、DA−725」、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン重縮合物)」、「ホモゲノールL−18(高分子ポリカルボン酸)」、「エマルゲン920、930、935、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン86(ステアリルアミンアセテート)」、日本ルーブリゾール製「ソルスパース5000(フタロシアニン誘導体)、22000(アゾ顔料誘導体)、13240(ポリエステルアミン)、3000、12000、17000、20000、27000(末端部に機能部を含有する高分子)、24000、28000、32000、38500(グラフト共重合体)」、日光ケミカル社製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)」、川研ファインケミカル製 ヒノアクトT−8000E等、信越化学工業製「オルガノシロキサンポリマーKP341」、裕商製「W001:カチオン系界面活性剤」、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、「W004、W005、W017」等のアニオン系界面活性剤、森下産業製「EFKA−46、EFKA−47、EFKA−47EA、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー450」、サンノプコ製「ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100」等の高分子分散剤、ADEKA製「アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P−123」、及び三洋化成製「イオネット(商品名)S−20」等が挙げられる。また、アクリベースFFS−6752、アクリベースFFS−187、アクリキュア−RD−F8、及び、サイクロマーPを用いることもできる。
また、ビックケミー社製のDISPERBYK−130、DISPERBYK−140、DISPERBYK−142、DISPERBYK−145、DISPERBYK−180、DISPERBYK−187、DISPERBYK−191、DISPERBYK−2001、DISPERBYK−2010、DISPERBYK−2012、DISPERBYK−2025、BYK−9076、味の素ファインテクノ社製のアジスパーPB821、アジスパーPB822、及び、アジスパーPB881等を用いることもできる。
これらの高分子化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0114】
なお、高分子化合物としては、特開2013−249417号公報の段落0127〜0129に記載の化合物を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0115】
また、分散剤としては、特開2010−106268号公報の段落0037〜0115(対応するUS2011/0124824の段落0075〜0133)のグラフト共重合体を使用することもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、分散剤としては、特開2011−153283号公報の段落0028〜0084(対応するUS2011/0279759の段落0075〜0133)の酸性基が連結基を介して結合してなる側鎖構造を含有する構成成分を含有する高分子化合物を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、分散剤としては、特開2016−109763号公報の段落0033〜0049に記載された樹脂を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0116】
(アルカリ可溶性樹脂)
硬化性組成物は、アルカリ可溶性樹脂(樹脂に該当する)を含有することが好ましい。アルカリ可溶性樹脂とは、アルカリ溶液に溶解する樹脂を意図する。
硬化性組成物中におけるアルカリ可溶性樹脂の含有量としては特に制限されないが、硬化性組成物がより優れたパターニング性を有する点で、硬化性組成物の全固形分に対して、0.5〜30質量%が好ましい。
アルカリ可溶性樹脂は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上のアルカリ可溶性樹脂を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0117】
アルカリ可溶性樹脂は、硬化性基を有することが好ましい。硬化性基としては、重合性基が好ましい。重合性基の例示としては、上記第1重合性化合物が有する重合性基で例示した基が挙げられる。
アルカリ可溶性樹脂は、カルド構造を有することが好ましい。
【0118】
アルカリ可溶性樹脂としては、分子中に少なくとも1つのアルカリ可溶性基を含有する樹脂が挙げられ、例えば、ポリヒドロキシスチレン樹脂、ポリシロキサン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、(メタ)アクリル/(メタ)アクリルアミド共重合体樹脂、エポキシ系樹脂、及び、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0119】
アルカリ可溶性樹脂の具体例としては、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物との共重合体が挙げられる。
不飽和カルボン酸は特に制限されないが、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、及び、ビニル酢酸等のモノカルボン酸類;イタコン酸、マレイン酸、及び、フマル酸等などのジカルボン酸、又は、その酸無水物;フタル酸モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)等の多価カルボン酸モノエステル類;等が挙げられる。
【0120】
共重合可能なエチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル等が挙げられる。また、特開2010−97210号公報の段落0027、及び、特開2015−68893号公報の段落0036〜0037に記載の化合物を用いることもでき、上記の内容は本明細書に組み込まれる。
【0121】
また、共重合可能なエチレン性不飽和化合物であって、側鎖にエチレン性不飽和基を含有する化合物を組み合わせて用いてもよい。エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリル酸基が好ましい。側鎖にエチレン性不飽和基を含有するアクリル樹脂は、例えば、カルボン酸基を含有するアクリル樹脂のカルボン酸基に、グリシジル基又は脂環式エポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物を付加反応させて得ることができる。
【0122】
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、及び、特開昭59−71048号に記載されている側鎖にカルボン酸基を含有するラジカル重合体;欧州特許第993966号、欧州特許第1204000号、及び、特開2001−318463号等の各公報に記載されているアルカリ可溶性基を含有するアセタール変性ポリビニルアルコール系バインダー樹脂;ポリビニルピロリドン;ポリエチレンオキサイド;アルコール可溶性ナイロン、及び、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンとの反応物であるポリエーテル等;国際公開第2008/123097号に記載のポリイミド樹脂;等を用いることができる。
【0123】
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、特開2016−75845号公報の段落0225〜0245に記載の化合物を用いることもでき、上記内容は本明細書に組み込まれる。
【0124】
アルカリ可溶性樹脂としては、ポリイミド前駆体を用いることもできる。ポリイミド前駆体は、酸無水物基を含有する化合物とジアミン化合物とを40〜100℃において付加重合反応することにより得られる樹脂を意図する。
【0125】
<重合禁止剤>
上記硬化性組成物は重合禁止剤を含有していてもよい。硬化性組成物が重合禁止剤を含有すると、硬化性組成物中において重合性化合物の意図しない重合を抑制することができ、硬化性組成物がより優れた経時安定性を有する。また、硬化性組成物中における重合性化合物の意図しない重合が抑制されるため、硬化性組成物はより優れたパターニング性も有する。
重合禁止剤としては、例えば、フェノール系重合禁止剤(例えば、p−メトキシフェノール、2,5−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジtert−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、及び、4−メトキシナフトール等);ハイドロキノン系重合禁止剤(例えば、ハイドロキノン、及び、2,6−ジ−tert−ブチルハイロドロキノン等);キノン系重合禁止剤(例えば、ベンゾキノン等);フリーラジカル系重合禁止剤(例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシルフリーラジカル、及び、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシルフリーラジカル等);ニトロベンゼン系重合禁止剤(例えば、ニトロベンゼン、及び、4−ニトロトルエン等);フェノチアジン系重合禁止剤(例えば、フェノチアジン、及び、2−メトキシフェノチアジン等);等が挙げられる。
なかでも、硬化性組成物がより優れた本発明の効果を有する点で、フェノール系重合禁止剤、又は、フリーラジカル系重合禁止剤が好ましい。
なお、上記重合開始剤は、硬化性組成物の調製時に他の成分と共に混合されてもよいし、上記樹脂の合成の際等に用いられたものが、上記樹脂と共に、その他の成分と混合されてもよい。
【0126】
硬化性組成物中における重合禁止剤の含有量としては特に制限されないが、硬化性組成物がより優れた経時安定性、及び、より優れた硬化性を有する点で、硬化性組成物の全固形分に対して、0.00001〜1質量%が好ましい。
重合禁止剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の重合禁止剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0127】
<界面活性剤>
硬化性組成物は、界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤を含有する硬化性組成物はより優れた塗布性を有する。
【0128】
界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、及び、シリコーン系界面活性剤が挙げられる。
【0129】
例えば、硬化性組成物がフッ素系界面活性剤を含有すると、硬化性組成物の液特性(特に、流動性)がより向上する。即ち、フッ素系界面活性剤を含有する硬化性組成物を用いて基板上に硬化性組成物層を形成する場合、基板と硬化性組成物との界面張力を低下させることにより、基板への濡れ性が改善され、硬化性組成物の塗布性が向上する。このため、少量の液量で数μm程度の硬化性組成物層を形成した場合であっても、厚みムラの小さいより均一な厚みを有する硬化性組成物層を形成できる。
【0130】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有量としては、特に制限されないが、3〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、7〜25質量%が更に好ましい。フッ素含有量が、3〜40質量%であるフッ素系界面活性剤を含有する硬化性組成物によれば、より均一な厚みを有する硬化性組成物層を形成することができ、結果として、硬化性組成物はより優れた省液性を有する。また、上記範囲内であると、フッ素系界面活性剤が、硬化性組成物中でより溶解しやすい。
【0131】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF171、同F172、同F173、同F176、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437、同F475、同F479、同F482、同F554、同F780(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC1068、同SC−381、同SC−383、同S393、同KH−40(以上、旭硝子(株)製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520、及び、PF7002(OMNOVA社製)等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としてブロックポリマーを用いることもでき、例えば、特開第2011−89090号公報に記載されたが化合物を用いることもでき、上記内容は本明細書に組み込まれる。
【0132】
硬化性組成物中における、界面活性剤の含有量としては特に制限されないが、硬化性組成物の全固形分に対して、0.001〜2.0質量%が好ましい。
界面活性剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。界面活性剤を2種以上併用する場合は、合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0133】
<着色剤>
硬化性組成物は、着色剤を含有してもよい。本明細書において、カーボンブラックは、着色剤には含まれない。
【0134】
着色剤としては、各種公知の顔料(着色顔料)、及び、染料(着色染料)を用いることができる、顔料としては、無機顔料及び有機顔料が挙げられる。
着色剤を含有する場合、その含有量は、得られる硬化膜の光学特性に応じて決定することができる。また、着色剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0135】
(顔料)
無機顔料の種類は特に制限されず、公知の無機顔料が挙げられる。
無機顔料としては、例えば、亜鉛華、鉛白、リトポン、酸化チタン、酸化クロム、酸化鉄、沈降性硫酸バリウム及びバライト粉、鉛丹、酸化鉄赤、黄鉛、亜鉛黄(亜鉛黄1種、亜鉛黄2種)、ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄カリ)ジルコングレー、プラセオジムイエロー、クロムチタンイエロー、クロムグリーン、ピーコック、ビクトリアグリーン、紺青(プルシアンブルーとは無関係)、バナジウムジルコニウム青、クロム錫ピンク、陶試紅、並びにサーモンピンク等が挙げられる。また、黒色の無機顔料としては、Co、Cr、Cu、Mn、Ru、Fe、Ni、Sn、Ti、及びAgからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を含有する金属酸化物、金属窒素物、及び、金属酸窒化物等が挙げられる。
【0136】
無機顔料としては、含有量が少なくても、高い光学濃度を有する着色膜を形成できる点で、チタンブラック、又は、金属顔料等が好ましく、後述する現像後波打ち評価及び残膜率評価がより優れる点で、チタンブラックがより好ましい。
金属顔料としては、例えば、Nb、V、Co、Cr、Cu、Mn、Ru、Fe、Ni、Sn、Ti、及びAgからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を含有する金属酸化物、金属窒素物、及び、金属酸窒化物等が挙げられる。
【0137】
有機顔料としては、例えば、カラーインデックス(C.I.)ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214等、
C.I.ピグメントオレンジ 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等、
C.I.ピグメントレッド 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279,294(キサンテン系、Organo Ultamarine,Bluish Red)等;
C.I.ピグメントグリーン 7,10,36,37,58,59等;
C.I.ピグメントバイオレット 1,19,23,27,32,37,42等;
C.I.ピグメントブルー 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,29,60,64,66,79,80,87(モノアゾ系),88(メチン/ポリメチン系)等;
が挙げられる。なお、顔料は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0138】
(染料)
染料としては、例えば特開昭64−90403号公報、特開昭64−91102号公報、特開平1−94301号公報、特開平6−11614号公報、特登2592207号、米国特許4808501号明細書、米国特許505950号明細書、米国特許5667920号明細書、特開平5−333207号公報、特開平6−35183号公報、特開平6−51115号公報、及び、特開平6−194828号公報等に開示されている色素を用いることができ、上記内容は本明細書に組み込まれる。
染料を化学構造で区分すると、ピラゾールアゾ化合物、ピロメテン化合物、アニリノアゾ化合物、トリフェニルメタン化合物、アントラキノン化合物、ベンジリデン化合物、オキソノール化合物、ピラゾロトリアゾールアゾ化合物、ピリドンアゾ化合物、シアニン化合物、フェノチアジン化合物、及び、ピロロピラゾールアゾメチン化合物等を用いることができる。また、色素多量体を用いてもよい。色素多量体としては、特開2011−213925号公報、及び、特開2013−041097号公報に記載された化合物が挙げられる。また、分子内に重合性基を含有する重合性染料を用いることもでき、市販品としては、例えば、和光純薬株式会社製RDWシリーズが挙げられる。
【0139】
(赤外線吸収剤)
上記着色剤は、更に赤外線吸収剤を含有してもよい。なお、赤外線吸収剤は上述した無機粒子とは異なる成分を意図する。
本明細書において、赤外線吸収剤とは、赤外領域(好ましくは、波長650〜1300nm)の波長の光を吸収を作用を有する化合物を意味する。赤外線吸収剤としては、波長675〜900nmの波長領域に極大吸収波長を有する化合物が好ましい。
このような分光特性を有する化合物としては、例えば、ピロロピロール化合物、銅化合物、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、イミニウム化合物、チオール錯体系化合物、遷移金属酸化物系化合物、スクアリリウム化合物、ナフタロシアニン化合物、クオタリレン化合物、ジチオール金属錯体系化合物、及び、クロコニウム化合物が挙げられる。
【0140】
上記分光特性を有する着色剤としては、例えば、特開平07−164729号公報の段落0004〜0016に記載された化合物、特開2002−146254号公報の段落0027〜0062に記載された化合物、特開2011−164583号公報の段落0034〜0067に記載されたCu及び/又はPを含む酸化物の結晶子からなり数平均凝集粒子径が5〜200nmである近赤外線吸収粒子を用いることもでき、上記の内容は本明細書に組み込まれる。
【0141】
波長675〜900nmの波長領域に極大吸収波長を有する化合物としては、シアニン化合物、ピロロピロール化合物、スクアリリウム化合物、フタロシアニン化合物、及びナフタロシアニン化合物からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
また、赤外線吸収剤は、25℃の水に1質量%以上溶解する化合物が好ましく、25℃の水に10質量%以上溶解する化合物がより好ましい。このような化合物を用いると、耐溶剤性が良化する。
ピロロピロール化合物は、特開2010−222557号公報の段落0049〜0062を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれることとする。シアニン化合物及びスクアリリウム化合物は、国際公開2014/088063号公報の段落0022〜0063、国際公開2014/030628号公報の段落0053〜0118、特開2014−59550号公報の段落0028〜0074、国際公開2012/169447号公報の段落0013〜0091、特開2015−176046号公報の段落0019〜0033、特開2014−63144号公報の段落0053〜0099、特開2014−52431号公報の段落0085〜0150、特開2014−44301号公報の段落0076〜0124、特開2012−8532号公報の段落0045〜0078、特開2015−172102号公報の段落0027〜0067、特開2015−172004号公報の段落0029〜0067、特開2015−40895号公報の段落0029〜0085、特開2014−126642号公報の段落0022〜0036、特開2014−148567号公報の段落0011〜0017、特開2015−157893号公報の段落0010〜0025、特開2014−095007号公報の段落0013〜0026、特開2014−80487号公報の段落0013〜0047、及び、特開2013−227403号公報の段落0007〜0028等を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0142】
硬化性組成物中における着色剤の含有量としては特に制限されないが、一般に、硬化性組成物の全固形分に対して、0.0001〜70質量%が好ましい。着色剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の着色剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0143】
<紫外線吸収剤>
硬化性組成物は、紫外線吸収剤を含有してもよい。紫外線吸収剤を含有する硬化性組成物により得られる硬化膜はより優れたパターン形状(より精細なパターン形状)を有する。
紫外線吸収剤としては、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、及び、トリアジン系等の紫外線吸収剤を用いることができる。 紫外線吸収剤としては、例えば、特開2012−068418号公報の段落0137〜0142(対応するUS2012/0068292の段落0251〜0254)に記載の化合物を用いることができ、上記内容は本明細書に組み込まれる。
紫外線吸収剤としては、ジエチルアミノ−フェニルスルホニル系紫外線吸収剤(大東化学社製、商品名:UV−503)等を用いることもできる。
紫外線吸収剤としては、特開2012−32556号公報の段落0134〜0148に記載の化合物を用いることもでき、上記内容は本明細書に組み込まれる。
硬化性組成物中における紫外線吸収剤の含有量としては、特に制限されないが、硬化性組成物の全固形分に対して、0.001〜15質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.1〜5質量%が更に好ましい。
【0144】
<シランカップリング剤>
硬化性組成物はシランカップリング剤を含有してもよい。
本明細書において、シランカップリング剤とは、分子中に以下の加水分解性基とそれ以外の官能基とを含有する化合物を意図する。上記加水分解性基とは、珪素原子に直結し、加水分解反応及び/又は縮合反応によってシロキサン結合を生じ得る置換基を意図する。加水分解性基としては、例えば、ケイ素原子に直結した、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、及びアルケニルオキシ基等が挙げられる。加水分解性基が炭素原子を含有する場合、その炭素数は6以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。特に、炭素数4以下のアルコキシ基又は炭素数4以下のアルケニルオキシ基が好ましい。
【0145】
シランカップリング剤は、加水分解性基が結合した珪素原子以外の珪素原子、及び、フッ素原子のいずれをも含有しないことが好ましい。上記シランカップリング剤を含有する硬化性組成物を用いて基板上に硬化膜を形成すると、硬化膜は、基板へのより優れた密着性を有する。
【0146】
上記硬化性組成物中におけるシランカップリング剤の含有量は、硬化性組成物中の全固形分に対して、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜8質量%がより好ましく、1.0〜6質量%が更に好ましい。
シランカップリング剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上のシランカップリング剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0147】
<溶剤>
硬化性組成物は、溶剤を含有することが好ましい。溶剤としては特に制限されず公知の溶剤を用いることができる。
硬化性組成物中における溶剤の含有量としては特に制限されないが、一般に、硬化性組成物の固形分濃度が、10〜90質量%となるよう調整されることが好ましく、10〜50質量%となるよう調整されることがより好ましい。
溶剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の溶剤を併用する場合には、硬化性組成物の全固形分が上記範囲内となるよう調整されることが好ましい。
【0148】
溶剤としては、例えば、水、又は、有機溶剤が挙げられる。
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、N−メチル−2−ピロリドン、及び、乳酸エチル等が挙げられる。
【0149】
なかでも、後述する面内均一性評価がより優れる点で、沸点が170℃以上の溶剤(好ましくは、有機溶剤)が好ましい。なお、上記溶剤の沸点の上限は特に制限されないが、取り扱い性の点から、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。
【0150】
<硬化性組成物の製造方法>
硬化性組成物は、上記の各成分を公知の混合方法(例えば、攪拌機、ホモジナイザー、高圧乳化装置、湿式粉砕機、及び、湿式分散機等を用いた混合方法)により混合して調製できる。硬化性組成物の調製に際しては、各成分を一括配合してもよいし、各成分をそれぞれ、溶剤に溶解又は分散した後に逐次配合してもよい。また、配合する際の投入順序及び作業条件は特に制限されない。
【0151】
硬化性組成物は、異物の除去及び欠陥の低減などの目的で、フィルタでろ過することが好ましい。フィルタは特に制限されず、公知のフィルタを用いることができる。
フィルタの材料としては、特に制限されないが、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、及び、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂(高密度、超高分子量を含む)等により形成されるフィルタが挙げられる。なかでもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)、又は、ナイロンにより形成されるフィルタが好ましい。
フィルタの孔径としては、特に制限されないが、一般に、0.1〜7.0μmが好ましく、0.2〜2.5μmがより好ましく、0.2〜1.5μmが更に好ましく、0.3〜0.7μmが特に好ましい。
フィルタを使用する際、異なるフィルタを組み合わせてもよい。その際、第1のフィルタでのフィルタリングは、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。異なるフィルタを組み合わせて2回以上フィルタリングを行う場合、2回目のフィルタリングに用いるフィルタの孔径は、1回目のフィルタリングに用いるフィルタの孔径と比較して、同じ、又は、大きい方が好ましい。また、材料が同じで、異なる孔径のフィルタを組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照できる。
市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール社製、アドバンテック東洋社製、日本インテグリス社製(旧日本マイクロリス社)、及び、キッツマイクロフィルタ社製等が挙げられる。
【0152】
第2のフィルタは、上記第1のフィルタと同様の材料等で形成されたものを使用できる。第2のフィルタの孔径は特に制限されないが、一般に、0.2〜10.0μmが好ましく、0.2〜7.0μmがより好ましく、0.3〜6.0μmが更に好ましい。
硬化性組成物は、金属(粒子、及び、イオン)、ハロゲンを含む金属塩、酸、及び、アルカリ等の不純物を実質的に含有しないことが好ましい。なお、本明細書において、実質的に含有しない、とは、下記測定方法により検出できないことを意図する。
硬化性組成物、上記成分、及び、上記フィルタ等に含有される不純物の含有量としては特に制限されないが、それぞれ全質量に対して1質量ppm以下が好ましく、1質量ppb以下がより好ましく、100質量ppt以下が更に好ましく、10質量ppt以下が特に好ましく、実質的に含有しないことが最も好ましい。
なお、上記不純物の含有量は、誘導結合プラズマ質量分析装置(横河アナリティカルシステムズ製、Agilent 7500cs型)により測定することができる。
なお、ppmはparts per million、ppbは、parts per billion、pptはparts per trillionを表す。
【0153】
<硬化膜、及び、硬化膜の製造方法>
本発明の実施形態に係る硬化膜は、上記硬化性組成物を硬化して得られた硬化膜である。硬化膜の厚みとしては特に制限されないが、一般に0.2〜7μmが好ましく、0.4〜5μmがより好ましい。
上記厚みは平均厚みであり、硬化膜の任意の5点以上の厚みを測定し、それらを算術平均した値である。
【0154】
硬化膜の製造方法は特に制限されないが、上記硬化性組成物を基板上に塗布して塗膜を形成して、塗膜に対して硬化処理を施し、硬化膜を製造する方法が挙げられる。
硬化処理の方法は特に制限されず、光硬化処理又は熱硬化処理が挙げられ、パターン形成が容易である点から、光硬化処理(特に、活性光線又は放射線を照射することによる硬化処理)が好ましい。
【0155】
本発明の実施形態に係る硬化膜は、上記硬化性組成物を用いて形成された硬化性組成物層を硬化して得られた硬化膜である。
硬化膜の製造方法としては特に制限されないが、以下の工程を含有することが好ましい。
・硬化性組成物層形成工程
・露光工程
・現像工程
以下、各工程について説明する。
【0156】
(硬化性組成物層形成工程)
硬化性組成物層形成工程は、上記硬化性組成物を用いて、硬化性組成物層を形成する工程である。硬化性組成物を用いて、硬化性組成物層を形成する工程としては、例えば、基板上に、硬化性組成物を塗布して、硬化性組成物層を形成する工程が挙げられる。
基板の種類は特に制限されないが、固体撮像素子として用いる場合は、例えば、ケイ素基板が挙げられ、カラーフィルタ(固体撮像素子用カラーフィルタを含む)として用いる場合には、ガラス基板(ガラスウェハ)等が挙げられる。
基板上への硬化性組成物の塗布方法としては、スピンコート法、スリット塗布法、インクジェット法、スプレー塗布法、回転塗布法、流延塗布法、ロール塗布法、及び、スクリーン印刷法等の各種の塗布方法が挙げられる。
基板上に塗布された硬化性組成物は、通常、70〜150℃で1〜4分間程度の条件下で乾燥され、硬化性組成物層が形成される。
【0157】
(露光工程)
露光工程では、硬化性組成物層形成工程において形成された硬化性組成物層に、パターン状の開口部を備えるフォトマスクを介して、活性光線又は放射線を照射して露光し、光照射された硬化性組成物層だけを硬化させる。
露光は、放射線の照射により行うことが好ましく、g線、h線、及び、i線等の紫外線を用いることが好ましい。また、光源としては高圧水銀灯が好ましい。照射強度は特に制限されないが、5〜1500mJ/cm
2が好ましく、10〜1000mJ/cm
2がより好ましい。
【0158】
(現像工程)
露光工程に次いで、現像処理(現像工程)を行い、露光工程における未露光部分を現像液に溶出させる。これにより、光硬化した部分だけが基板上に残る。
現像液としては、特に制限されないが、例えば、無機アルカリ現像液及び有機アルカリ現像液などのアルカリ水溶液が挙げられ、なかでも、有機アルカリ現像液が好ましい。現像条件としては特に制限されないが、現像温度が、一般に、20〜40℃が好ましく、現像時間が、一般に20〜180秒が好ましい。
無機アルカリ現像液に含有されるアルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硅酸ナトリウム、及び、メタ硅酸ナトリウム等が挙げられる。
無機アルカリ現像液中における上記アルカリ性化合物の含有量としては特に制限されないが、一般に、無機アルカリ現像液の全質量に対して、0.001〜10質量%が好ましく、0.005〜0.5質量%がより好ましい。
また、有機アルカリ現像液に含有されるアルカリ性化合物としては、例えば、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、及び、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセンが挙げられる。
有機アルカリ現像液中における上記アルカリ性化合物の含有量としては特に制限されないが、一般に、有機アルカリ現像液の全質量に対して、0.001〜10質量%が好ましく、0.005〜0.5質量%がより好ましい。
【0159】
アルカリ水溶液には、例えば、メタノール、及び、エタノール等の水溶性有機溶剤が含有されていてもよい。また、アルカリ水溶液には、界面活性剤が含有されていてもよい。
なお、このようなアルカリ水溶液を現像液として使用した場合には、現像後に硬化膜を純水で洗浄(リンス)することが好ましい。
【0160】
なお、硬化膜の製造方法は、その他の工程を含有してもよい。
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
その他の工程としては、例えば、基材の表面処理工程、前加熱工程(プリベーク工程)、後加熱工程(ポストベーク工程)、及び、後露光工程(露光、現像後に再度露光する工程)等が挙げられる。
上記前加熱工程及び後加熱工程における加熱温度としては、80〜300℃が好ましい。前加熱工程及び後加熱工程における加熱時間としては、30〜300秒が好ましい。
上記後露光工程における露光は、放射線の照射により行うことが好ましく、g線、h線、及び、i線等の紫外線を用いることが好ましい。また、光源としては高圧水銀灯が好ましい。照射強度は特に制限されないが、5〜1500mJ/cm
2が好ましく、10〜1000mJ/cm
2がより好ましい。
【0161】
上記硬化膜は、パーソナルコンピュータ、タブレット、携帯電話、スマートフォン、及び、デジタルカメラ等のポータブル機器;プリンタ複合機、及び、スキャナ等のOA(Office Automation)機器;監視カメラ、バーコードリーダ、現金自動預け払い機(ATM:automated teller machine)、ハイスピードカメラ、及び、顔画像認証を使用した本人認証機能を有する機器等の産業用機器;車載用カメラ機器;内視鏡、カプセル内視鏡、及び、カテーテル等の医療用カメラ機器;生体センサ、バイオセンサー、軍事偵察用カメラ、立体地図用カメラ、気象及び海洋観測カメラ、陸地資源探査カメラ、並びに、宇宙の天文及び深宇宙ターゲット用の探査カメラ等の宇宙用機器;等に使用される光学フィルタ及びモジュールの遮光部材及び遮光膜、更には反射防止部材及び反射防止膜に好適である。
また、硬化膜を用いた「遮光」には、光を減衰させながら硬化膜を通過させる光減衰をも含んでもよい。
【0162】
上記硬化膜は、マイクロLED(Light Emitting Diode)及びマイクロOLED(Organic Light Emitting Diode)等の用途にも用いることができる。上記硬化膜は、マイクロLED及びマイクロOLEDに使用される光学フィルタ及び光学フィルム等のほか、遮光機能又は反射防止機能を付与する部材に対して好適である。
マイクロLED及びマイクロOLEDの例としては、特表2015−500562号公報及び特表2014−533890号公報に記載されたものが挙げられる。
【0163】
上記硬化膜は、量子ドットディスプレイに使用される光学及び光学フィルムとして好適である。また、遮光機能及び反射防止機能を付与する部材として好適である。
量子ドットディスプレイの例としては、米国特許出願公開第2013/0335677号、米国特許出願公開第2014/0036536号、米国特許出願公開第2014/0036203号、及び、米国特許出願公開第2014/0035960号に記載されたものが挙げられる。
上記硬化膜は、自動車等の車両用前照灯に用いられるヘッドライトユニットの遮光部材及び/又は遮光膜に使用するのも好ましい。また、反射防止部材及び反射防止膜等に使用するのも好ましい。
【0164】
<固体撮像装置、及び、固体撮像素子>
本発明の実施形態に係る固体撮像装置、及び、固体撮像素子は、上記硬化膜を含有する。固体撮像素子が硬化膜を含有する形態としては特に制限されず、例えば、基板上に、固体撮像素子(CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等)の受光エリアを構成する複数のフォトダイオード及びポリシリコン等からなる受光素子を有し、支持体の受光素子形成面側(例えば、受光部以外の部分及び/又は色調整用画素等)又は形成面の反対側に上記硬化膜を備えて構成したものが挙げられる。
固体撮像装置は、上記固体撮像素子を含有する。
【0165】
固体撮像装置、及び、固体撮像素子の構成例を
図1〜
図2を参照して説明する。なお、
図1〜
図2では、各部を明確にするため、相互の厚み及び/又は幅の比率は無視して一部誇張して表示している。
図1に示すように、固体撮像装置100は、矩形状の固体撮像素子101と、固体撮像素子101の上方に保持され、この固体撮像素子101を封止する透明なカバーガラス103とを備えている。更に、このカバーガラス103上には、スペーサー104を介してレンズ層111が重ねて設けられている。レンズ層111は、支持体113とレンズ材112とで構成されている。レンズ層111は、支持体113とレンズ材112とが一体成形された構成でもよい。レンズ層111の周縁領域に迷光が入射すると光の拡散によりレンズ材112での集光の効果が弱くなり、撮像部102に届く光が低減する。また、迷光によるノイズの発生も生じる。そのため、このレンズ層111の周縁領域は、遮光膜114が設けられて遮光されている。本発明の実施形態に係る硬化膜は上記遮光膜114としても用いることができる。
【0166】
固体撮像素子101は、その受光面となる撮像部102で結像した光学像を光電変換して、画像信号として出力する。この固体撮像素子101は、2枚の基板を積層した積層基板105を備えている。積層基板105は、同サイズの矩形状のチップ基板106及び回路基板107からなり、チップ基板106の裏面に回路基板107が積層されている。
【0167】
チップ基板106として用いられる基板の材料としては特に制限されず、公知の材料を用いることができる。
【0168】
チップ基板106の表面中央部には、撮像部102が設けられている。また、撮像部102の周縁領域に迷光が入射すると、この周縁領域内の回路から暗電流(ノイズ)が発生するため、この周縁領域は、遮光膜115が設けられて遮光されている。本発明の実施形態に係る硬化膜は遮光膜115として用いることもできる。
【0169】
チップ基板106の表面縁部には、複数の電極パッド108が設けられている。電極パッド108は、チップ基板106の表面に設けられた図示しない信号線(ボンディングワイヤでも可)を介して、撮像部102に電気的に接続されている。
【0170】
回路基板107の裏面には、各電極パッド108の略下方位置にそれぞれ外部接続端子109が設けられている。各外部接続端子109は、積層基板105を垂直に貫通する貫通電極110を介して、それぞれ電極パッド108に接続されている。また、各外部接続端子109は、図示しない配線を介して、固体撮像素子101の駆動を制御する制御回路、及び固体撮像素子101から出力される撮像信号に画像処理を施す画像処理回路等に接続されている。
【0171】
図2に示すように、撮像部102は、受光素子201、カラーフィルタ202、マイクロレンズ203等の基板204上に設けられた各部から構成される。カラーフィルタ202は、青色画素205b、赤色画素205r、緑色画素205g、及びブラックマトリクス205bmを有している。本発明の実施形態に係る硬化膜は、ブラックマトリクス205bmとして用いることもできる。
【0172】
基板204の材料としては、前述のチップ基板106と同様の材料を用いることができる。基板204の表層にはpウェル層206が形成されている。このpウェル層26内には、n型層からなり光電変換により信号電荷を生成して蓄積する受光素子201が正方格子状に配列形成されている。
【0173】
受光素子201の一方の側方には、pウェル層206の表層の読み出しゲート部207を介して、n型層からなる垂直転送路208が形成されている。また、受光素子201の他方の側方には、p型層からなる素子分離領域209を介して、隣接画素に属する垂直転送路208が形成されている。読み出しゲート部207は、受光素子201に蓄積された信号電荷を垂直転送路208に読み出すためのチャネル領域である。
【0174】
基板204の表面上には、ONO(Oxide−Nitride−Oxide)膜からなるゲート絶縁膜210が形成されている。このゲート絶縁膜210上には、垂直転送路208、読み出しゲート部207、及び素子分離領域209の略直上を覆うように、ポリシリコン又はアモルファスシリコンからなる垂直転送電極211が形成されている。垂直転送電極211は、垂直転送路208を駆動して電荷転送を行わせる駆動電極と、読み出しゲート部207を駆動して信号電荷読み出しを行わせる読み出し電極として機能する。信号電荷は、垂直転送路208から図示しない水平転送路及び出力部(フローティングディフュージョンアンプ)に順に転送された後、電圧信号として出力される。
【0175】
垂直転送電極211上には、その表面を覆うように遮光膜212が形成されている。遮光膜212は、受光素子201の直上位置に開口部を有し、それ以外の領域を遮光している。本発明の実施形態に係る硬化膜は、遮光膜212として用いることもできる。
遮光膜212上には、BPSG(borophospho silicate glass)からなる絶縁膜213、P−SiNからなる絶縁膜(パシベーション膜)214、透明樹脂等からなる平坦化膜215からなる透明な中間層が設けられている。カラーフィルタ202は、中間層上に形成されている。
他にも、固体撮像素子(固体撮像装置)への硬化膜の適用方法としては、硬化膜(遮光膜)を光減衰膜として使用する方法等も挙げられ、例えば、一部の光が光減衰膜を通過した上で受光素子に入射するように光減衰膜を配置して、固体撮像素子のダイナミックレンジを改善する方法がある。
【0176】
<ブラックマトリクス>
ブラックマトリクスは、本発明の実施形態に係る硬化膜を含有する。ブラックマトリクスは、カラーフィルタ、固体撮像装置、及び、液晶表示装置に含有されることがある。
ブラックマトリクスとしては、上記で既に説明したもの;液晶表示装置等の表示装置の周縁部に設けられた黒色の縁;赤、青、及び、緑の画素間の格子状、及び/又は、ストライプ状の黒色の部分;TFT(thin film transistor)遮光のためのドット状、及び/又は、線状の黒色パターン;等が挙げられる。このブラックマトリクスの定義については、例えば、菅野泰平著、「液晶ディスプレイ製造装置用語辞典」、第2版、日刊工業新聞社、1996年、p.64に記載がある。
ブラックマトリクスは表示コントラストを向上させるため、また薄膜トランジスタ(TFT)を用いたアクティブマトリックス駆動方式の液晶表示装置の場合には光の電流リークによる画質低下を防止するため、高い遮光性(光学濃度ODで3超)を有することが好ましい。
【0177】
ブラックマトリクスの製造方法としては特に制限されないが、上記の硬化膜の製造方法と同様の方法により製造できる。具体的には、基板に硬化性組成物を塗布して、硬化性組成物層を形成し、露光、及び、現像してパターン状の硬化膜(ブラックマトリクス)を製造することができる。なお、ブラックマトリクスとして用いられる硬化膜の膜厚としては、0.1〜4.0μmが好ましい。
【0178】
上記基板の材料としては、特に制限されないが、可視光(波長:400〜800nm)に対して80%以上の透過率を有することが好ましい。このような材料としては、具体的には、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、及び、ホウケイ酸ガラス等のガラス;ポリエステル系樹脂、及び、ポリオレフィン系樹脂などのプラスチック;等が挙げられ、耐薬品性、及び、耐熱性の観点から、無アルカリガラス、又は、石英ガラス等が好ましい。
【0179】
<カラーフィルタ>
本発明の実施形態に係るカラーフィルタは、硬化膜を含有する。
カラーフィルタが硬化膜を含有する形態としては、特に制限されないが、基板と、上記ブラックマトリクスと、を備えるカラーフィルタが挙げられる。すなわち、基板上に形成された上記ブラックマトリクスの開口部に形成された赤色、緑色、及び、青色の着色画素と、を備えるカラーフィルタが例示できる。
【0180】
ブラックマトリクス(硬化膜)を含有するカラーフィルタは、例えば、以下の方法により製造することができる。
まず、基板上に形成されたパターン状のブラックマトリクスの開口部に、カラーフィルタの各着色画素に対応する顔料を含有した樹脂組成物の塗膜(樹脂組成物層)を形成する。次に、樹脂組成物層に対して、ブラックマトリクスの開口部に対応したパターンを有するフォトマスクを介して露光する。次いで、現像処理により未露光部を除去した後、ベークすることでブラックマトリクスの開口部に着色画素を形成することができる。一連の操作を、例えば、赤色、緑色、及び、青色顔料を含有した各色用樹脂組成物を用いて行うことにより、赤色、緑色、及び、青色画素を有するカラーフィルタを製造できる。
【0181】
<画像表示装置>
本発明の実施形態に係る画像表示装置は、硬化膜を含有する。画像表示装置(典型的には、液晶表示装置が挙げられ、以下では液晶表示装置について説明する。)が硬化膜を含有する形態としては特に制限されないが、すでに説明したブラックマトリクス(硬化膜)を含有するカラーフィルタを含有する形態が挙げられる。
【0182】
本実施形態に係る液晶表示装置としては、例えば、対向して配置された一対の基板と、それらの基板の間に封入されている液晶化合物とを備える形態が挙げられる。上記基板としては、ブラックマトリクス用の基板として既に説明したとおりである。
【0183】
液晶表示装置の具体的な形態としては、例えば、使用者側から、偏光板/基板/カラーフィルタ/透明電極層/配向膜/液晶層/配向膜/透明電極層/TFT(Thin Film Transistor)素子/基板/偏光板/バックライトユニットをこの順に含有する積層体が挙げられる。
【0184】
液晶表示装置としては、上記に制限されず、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている液晶表示装置が挙げられる。また、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている液晶表示装置が挙げられる。
【実施例】
【0185】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0186】
まず、硬化性組成物に含まれる成分を、以下に示す。
【0187】
<製造例1:カーボンブラック分散組成物(C−1)の調製>
通常のオイルファーネス法で、カーボンブラックを製造した。但し、原料油としては、Na分量、Ca分量、及び、S分量の少ないエチレンボトム油を用い、ガス燃料を用いて燃焼を行った。更に、反応停止水としては、イオン交換樹脂で処理した純水を用いた。
ホモミキサーを用いて、得られたカーボンブラック(540g)を純水(14500g)と共に5,000〜6,000rpmで30分撹拌し、スラリーを得た。このスラリーをスクリュー型撹拌機付容器に移して、約1,000rpmで混合しながらエポキシ樹脂「エピコート828」(ジャパンエポキシレジン製)(60)を溶解したトルエン(600g)を少量ずつ添加した。約15分で、水に分散していたカーボンブラックは全量トルエン側に移行し、約1mmの粒となった。
次に、60メッシュ金網で水切りを行った後、分離された粒を真空乾燥機に入れ、70℃で7時間乾燥し、トルエン及び水を除去した。得られた被覆カーボンブラックの樹脂被覆量は、カーボンブラックと樹脂の合計量に対して10質量%であった。
得られた被覆カーボンブラック(20質量部)に対し、分散剤としてDisperbyk−167(ビックケミー社製)(4.5質量部)、顔料誘導体としてS12000(ルーブリゾール社製)(1質量部)を加え、固形分濃度が35質量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を加えた。
得られた分散物を攪拌機により十分に攪拌し、プレミキシングを行った。更に、分散物に対し、寿工業(株)製のウルトラアペックスミルUAM015を使用して下記条件にて分散処理を行い、分散組成物を得た。分散終了後、フィルターによりビーズと分散液を分離して、カーボンブラック分散組成物(C−1)を調製した。
(分散条件)
・ビーズ径:φ0.05mm
・ビーズ充填率:75体積%
・ミル周速:8m/sec
・分散処理する混合液量:500g
・循環流量(ポンプ供給量):13kg/hour
・処理液温度:25〜30℃
・冷却水:水道水
・ビーズミル環状通路内容積:0.15L
・パス回数:90パス
【0188】
<カーボンブラック分散組成物(C−2)の調製>
カラー用カーボンブラック(三菱化学社製「MA−8」、平均粒子径24μm、DBP(フタル酸ジブチル)吸油量58ml/100g)(25質量部)に、分散剤としてEFKA4046(BASF社製)(5質量部)、顔料誘導体としてS12000(ルーブリゾール社製)(1質量部)を加え、更にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を固形分濃度が30質量%となるように加えた。分散液の全質量は181gであった。
得られた分散物を攪拌機により十分に攪拌し、プレミキシングを行った。更に、分散物に対し、寿工業(株)製のウルトラアペックスミルUAM015を使用して下記条件にて分散処理を行い、分散組成物を得た。分散終了後、フィルターによりビーズと分散液を分離して、カーボンブラック分散組成物(C−2)を調製した。
(分散条件)
・ビーズ径:φ0.05mm
・ビーズ充填率:75体積%
・ミル周速:8m/sec
・分散処理する混合液量:500g
・循環流量(ポンプ供給量):13kg/hour
・処理液温度:25〜30℃
・冷却水:水道水
・ビーズミル環状通路内容積:0.15L
・パス回数:90パス
【0189】
<カーボンブラック分散組成物(C−3)の調製>
上記<カーボンブラック分散組成物(C−3)の調製>の際に調製した被覆カーボンブラック(20質量部)に対し、後述するアルカリ可溶性樹脂(b−1)(4.5質量部)、顔料誘導体としてS12000(ルーブリゾール社製)(1質量部)を加え、固形分濃度が35質量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を加えた。
得られた分散物を攪拌機により十分に攪拌し、プレミキシングを行った。更に、分散物に対し、寿工業(株)製のウルトラアペックスミルUAM015を使用して下記条件にて分散処理を行い、分散組成物を得た。分散終了後、フィルターによりビーズと分散液を分離して、カーボンブラック分散組成物(C−3)を調製した。
(分散条件)
・ビーズ径:φ0.05mm
・ビーズ充填率:75体積%
・ミル周速:8m/sec
・分散処理する混合液量:500g
・循環流量(ポンプ供給量):13kg/hour
・処理液温度:25〜30℃
・冷却水:水道水
・ビーズミル環状通路内容積:0.15L
・パス回数:90パス
【0190】
<特定樹脂1の合成>
特開2010−106268号公報の段落0338〜0340の製造方法を参照して、特定樹脂1を得た。
なお、特定樹脂1の式中、xは90質量%、yは0質量%、zは10質量%であった。また、特定樹脂1の重量平均分子量は40000であり、酸価は100mgKOH/gであり、グラフト鎖の原子数(水素原子を除く)は117であった。
【0191】
【化17】
【0192】
<チタンブラック分散組成物(T−1)の調製>
平均粒径15nmの酸化チタンMT−150A(商品名:テイカ(株)製)を100g、BET表面積300m
2/gのシリカ粒子AEROPERL(登録商標)300/30(エボニック製)を25g、及び、分散剤Disperbyk190(商品名:ビックケミー社製)を100g秤量し、これらをイオン電気交換水71gに加えた。その後、KURABO製MAZERSTAR KK−400Wを使用して、公転回転数1360rpm及び自転回転数1047rpmにて混合物を20分間処理することにより、混合物水溶液を得た。この混合物水溶液を石英容器に充填し、小型ロータリーキルン(株式会社モトヤマ製)を用いて酸素雰囲気中で920℃に加熱した。その後、窒素で小型ロータリーキルン内の雰囲気を置換し、同温度でアンモニアガスを小型ロータリーキルン内に100mL/minで5時間流すことにより窒化還元処理を実施した。終了後回収した粉末を乳鉢で粉砕し、Si原子を含み、粉末状のチタンブラックA−1〔チタンブラック粒子及びSi原子を含む被分散体。比表面積:73m
2/g〕を得た。
【0193】
上記で調製したチタンブラックA−1(20質量部)に対し、分散剤として特定樹脂1(5.5質量部)を加え、固形分濃度が35質量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を加えた。
得られた分散物を攪拌機により十分に攪拌し、プレミキシングを行った。更に、分散物に対し、寿工業(株)製のウルトラアペックスミルUAM015を使用して下記条件にて分散処理を行い、分散組成物を得た。分散終了後、フィルターによりビーズと分散液を分離して、チタンブラック分散組成物(T−1)を調製した。
(分散条件)
・ビーズ径:φ0.05mm
・ビーズ充填率:75体積%
・ミル周速:8m/sec
・分散処理する混合液量:500g
・循環流量(ポンプ供給量):13kg/hour
・処理液温度:25〜30℃
・冷却水:水道水
・ビーズミル環状通路内容積:0.15L
・パス回数:90パス
【0194】
<光重合性単量体>
(M−1):(KAYARAD DPCA−20:日本化薬株式会社製:下記構造で示される化合物: a=2,b=4)
【0195】
【化18】
【0196】
(M−2):(KAYARAD DPCA−30:日本化薬株式会社製:上記構造で示される化合物a=3,b=3)
(M−3):(KAYARAD DPCA−60:日本化薬株式会社製:上記構造で示される化合物a=6,b=0)
(M−4):(KAYARAD DPHA:日本化薬株式会社製:下記構造で示される化合物の混合物)
【0197】
【化19】
【0198】
(M−5):(M−305:東亞合成社製:下記構造で示される化合物の混合物)
【0199】
【化20】
【0200】
(M−6):(A−DPH:新中村化学社製:下記構造で示される化合物)
【0201】
【化21】
【0202】
(M−7):(NKエステル A−TMMT:新中村化学社製:下記構造で示される化合物)
【0203】
【化22】
【0204】
(M−8):(KAYARAD RP−1040:日本化薬株式会社製:式(Z−6)で表される化合物)
【0205】
以下に、第3重合性化合物に該当する化合物の「分子量を重合性基数で除した比(分子量/重合性基数)」を示す。
なお、表1中の「M−4」及び「M−5」に関しては、M−4及びM−5中の第3重合性化合物に該当する化合物の「分子量を重合性基数で除した比(分子量/重合性基数)」を示す。
【0206】
【表1】
【0207】
<アルカリ可溶性樹脂(b−1)(カルボキシル基を有するエポキシアクリレート樹脂(b−1))の合成>
500mL四つ口フラスコ中に、下記式(a)で表されるビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(235g)(エポキシ当量235)、テトラメチルアンモニウムクロライド(110mg)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(100mg)、アクリル酸(72.0g)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(300g)を仕込み、これに25mL/分の速度で空気を吹き込みながら90〜100℃で加熱溶解した。
【0208】
【化23】
【0209】
次に、溶液が白濁した状態のまま徐々に昇温し、120℃に加熱して完全溶解させた。ここで溶液は次第に透明粘稠になったがそのまま撹拌を継続した。この間、酸価を測定し、1.0mg−KOH/g未満になるまで加熱撹拌を続けた。酸価が目標に達するまで12時間を要した。その後、溶液を室温まで冷却し、ビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレートを得た。
次いで、得られたビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレート(617.0g)にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(300g)を加えて溶解した後、ビフェニル−3,3',4,4'−テトラカルボン酸二酸無水物(73.5g)及び臭化テトラエチルアンモニウム(1g)を混合し、徐々に昇温して110〜115℃で4時間反応させた。
酸無水物基の消失を確認した後、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸(38.0g)を混合し、90℃で6時間反応させ、酸価100mg−KOH/g、分子量(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量、以下同様)3,900のアルカリ可溶性樹脂(b−1)を得た。
【0210】
<アルカリ可溶性樹脂(b−2)(カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b−2))の合成>
【0211】
【化24】
【0212】
上記構造のエポキシ化合物(エポキシ当量264)(50g)、アクリル酸(13.65g)、メトキシブチルアセテート(60.5g)、トリフェニルホスフィン(0.936g)、及び、パラメトキシフェノール(0.032g)を、温度計、攪拌機及び冷却管を取り付けたフラスコに入れ、攪拌しながら90℃で酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応させた。反応には12時間を要し、エポキシアクリレート溶液を得た。
上記エポキシアクリレート溶液(25質量部)、トリメチロールプロパン(TMP)(0.76質量部)、ビフェニルテトラカルボン酸2無水物(BPDA)(3.3質量部)、及び、テトラヒドロフタル酸無水物(THPA)(3.5質量部)を、温度計、攪拌機及び冷却管を取り付けたフラスコに入れ、攪拌しながら105℃までゆっくり昇温し反応させた。樹脂溶液が透明になったところで、メトキシブチルアセテートで希釈し、固形分50質量%となるよう調製し、酸価131mgKOH/g、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)2600のアルカリ可溶性樹脂(b−2)(カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b−2))を得た。
【0213】
<アルカリ可溶性樹脂(b−3)(カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b−3))の合成>
日本化薬(株)製「XD1000」(ジシクロペンタジエン・フェノール重合物のポリグリシジルエーテル、エポキシ当量252)(300質量部)、メタクリル酸(87質量部)、p−メトキシフェノール(0.2質量部)、トリフェニルホスフィン(5質量部)、及び、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(255質量部)を反応容器に仕込み、100℃で酸価が3.0mgKOH/gになるまで攪拌した。次いで、更にテトラヒドロ無水フタル酸(145質量部)を反応容器に添加し、120℃で4時間反応させ、固形分50質量%、酸価100mgKOH/g、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)2600のアルカリ可溶性樹脂(b−3)(カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b−3))を得た。
【0214】
(b−4):ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(共重合比=70/30、分子量30000)
【0215】
<光重合開始剤>
(I−1)α−アミノケトン系開始剤:Irgacure−907(商品名、BASFジャパン社製)
(I−2)α−アミノケトン系開始剤:Irgacure−369(商品名、BASFジャパン社製)
(I−3)OXE−03:Irgacure OXE01(商品名、BASFジャパン社製)
(I−4)OXE−04:Irgacure OXE02(商品名、BASFジャパン社)
(I−5)下記構造の化合物
【0216】
【化25】
【0217】
(I−6)下記構造の化合物
【0218】
【化26】
【0219】
(I−7)DAROCUR TPO(商品名、BASFジャパン社、下記構造の化合物)
【0220】
【化27】
【0221】
<溶剤>
(S−1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)(沸点:146℃)
(S−2)シクロペンタノン(沸点:131℃)
(S−3)シクロヘキサノン(沸点:155℃)
(S−4)シクロヘキサノ−ルアセテート(沸点:173℃)
(S−5)プロピレングリコールジメチルエーテル(沸点:175℃)
(S−6)ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点:213℃)
(S−7)ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点:247℃)
【0222】
<シランカップリング剤>
AD―1:SH6040(東レ・ダウコーニング社製)
<界面活性剤>
SF―1:F−475(大日本インキ化学工業社製)
<重合禁止剤>
A―1:4−メトキシフェノール
【0223】
<硬化性組成物の調製>
全固形分に対する各成分の質量%が表2〜4に記載の組成となるように各成分を混合し、更に、固形分濃度が15質量%となるように各種溶剤を加え、スターラーにより攪拌して、硬化性組成物を調製した。
【0224】
<引き置き経時安定性評価>
調製した硬化性組成物を8インチのシリコン基板上にスピンコート法により露光後の膜厚が2.0μmとなるように塗布し、塗膜に対して100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行い、硬化性組成物層を得た。その後、欠陥検査装置ComPLUS(アプライドマテリアルズ社製)を使用して、硬化性組成物層の表面の0.5μm以上の欠陥数を検査した。
次に、形成した硬化性組成物層を、温度23℃及び湿度45%環境下で72時間にわたって引き置きした後、再度、欠陥検査装置ComPLUS(アプライドマテリアルズ社製)を使用して、硬化性組成物層の表面の0.5μm以上の欠陥数を検査し、引き置き前後での欠陥数の差(引き置き後の欠陥数−引き置き前の欠陥数)を算出した。下記観点で欠陥評価を行い、A〜Bが実用上問題ないレベルと判断した。
(評価基準)
A:欠陥数の差が50個以下で実用上問題ないレベル。
B:欠陥数の差が50個より多く、300個以下で実用上問題ないレベル。
C:欠陥数の差が300個より多く、実用上問題のあるレベル。
【0225】
<欠陥評価>
調製した硬化性組成物を8インチのシリコン基板上にスピンコート法により露光後の膜厚が2.0μmとなるように塗布し、塗膜に対して100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行い、硬化性組成物層を得た。その後、欠陥検査装置ComPLUS(アプライドマテリアルズ社製)を使用して、硬化性組成物層の表面の0.5μm以上の欠陥数を検査した。下記観点で欠陥評価を行った。
(評価基準)
A:欠陥数が100個以下で実用上問題ないレベル。
B:欠陥数が100個より多く、300以下で実用上問題ないレベル。
C:欠陥数が300個より多く、実用上問題のあるレベル。
【0226】
<面内均一性評価>
<欠陥評価>と同様の手順によって硬化性組成物層を形成した。次に、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を使用して基板全域に200mJ/cm
2の露光量で露光し、硬化膜を得た。接触式膜厚計(Dektak)を用いて、硬化膜の膜厚を56点測定し、その3σを算出した。
下記観点で面内均一性の評価を行った。
(評価基準)
A:3σが0.1μm以下
B:3σが0.1μm以上、0.5μm未満
C:3σが0.5μm以上
【0227】
<パターン状の硬化膜の作製>
CT−4000L(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)が0.1μmの膜厚で形成された8インチのシリコン基板に、調製した硬化性組成物をスピンコート法により露光後の膜厚が2.0μmとなるように塗布した後、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行い、硬化性組成物層を得た。
その後、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を使用して所定のマスクを介して200mJ/cm
2の露光量で、硬化性組成物層を露光した。露光後の硬化性組成物層に対し、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド0.3%水溶液を用い、23℃での30秒間のパドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンス処理を行い、更に純水にて水洗し、幅100μmの線形パターンを有するパターン状の硬化膜を得た。
【0228】
<残渣評価>
上記<パターン状の硬化膜の作製>で作製したパターン状の硬化膜を有するシリコン基板を走査型電子顕微鏡(SEM)で確認し、現像部分の膜面を観察した。
下記観点で残渣の評価を行った。
(評価基準)
A:残渣が基板内に見られず、実用上問題ないレベル。
B:残渣が基板内に数箇所見られ、実用上問題ないレベル。
C:残渣が基板内一部に見られ、基板内一部を除けば実用上問題ないレベル。
D:残渣が基板内全面に見られ、問題があるレベル。
E:現像部分に膜が残っており、使用不可なレベル
【0229】
<アンダーカット評価>
上記<パターン状の硬化膜の作製>で作製したパターン状の硬化膜を有するシリコン基板の断面をSEMで確認し、パターンエッジにおける庇の幅を計測した。下記観点でアンダーカットの評価を行った。
(評価基準)
A:アンダーカットが3μm以下であり、実用上問題ないレベル。
B:アンダーカットが3μmより大きく、5μm以下であり、実用上問題ないレベル。
C:アンダーカットが5μmより大きく、10μm以下であり、実用上問題ないレベル。
D:アンダーカットが10μmより大きく実用上問題があるレベル。
【0230】
<現像後波打ち評価>
上記<パターン状の硬化膜の作製>で作製したパターン状の硬化膜に対して更に200℃のホットプレートを用いて300秒間加熱処理(ポストベーク)を行った。
その後、光学顕微鏡MT−3600LW(FLOVEL社製)を使用して、硬化膜のパターンエッジの外観を確認し、パターン状の硬化膜の線幅を255点測定して、線幅の3σを算出した。下記観点で現像後波打ちの評価を行った。
(評価基準)
A:パターンエッジに波打ちが見られず、3σ≦1μmで実用上問題ないレベル。
B:パターンエッジに波打ちがわずかに見られるが、3σ≦5μmで実用上問題ないレベル。
C:パターンエッジに波打ちが見られる、又は、3σ>5μmで実用上問題あるレベル。
【0231】
<残膜率評価>
上記<パターン状の硬化膜の作製>の現像前の露光された硬化性組成物層の露光部の膜厚と、現像後に得られた硬化膜の膜厚とを接触式膜厚計(Dektak)にて測定し、膜厚変化率を下記計算式の様にして算出した。下記観点で残膜率の評価を行った。
残膜率(%)=(現像後に得られた硬化膜の膜厚)/(現像前の露光された硬化性組成物層の露光部の膜厚)×100
(評価基準)
A:残膜率が80%以上で実用上問題ないレベル。
B:残膜率が70%以上80%未満で実用上問題ないレベル。
C:残膜率が70%より小さい。
【0232】
表2〜4中の各成分の「含有量(質量%)」は、硬化性組成物の全固形分に対する各成分の含有量(質量%)を表す。
なお、「カーボンブラック」欄の(C−1)などの表記は、カーボンブラック分散組成物(C−1)を用いたことを意図し、含有量(質量%)はカーボンブラックの含有量を表す。
また、「アルカリ可溶性樹脂」欄の「残部」とは、各実施例および比較例における全固形分(100質量%)から、アルカリ可溶性樹脂以外の成分(例えば、カーボンブラック、チタンブラック、光重合開始剤、重合性化合物、シランカップリング剤、界面活性剤、重合禁止剤、および、カーボンブラック分散組成物またはチタンブック分散組成物中の分散剤など)の合計含有量(質量%)を除したものを意図する。
【0233】
【表2】
【0234】
【表3】
【0235】
【表4】
【0236】
上記表2〜4に示すように、本発明の硬化性組成物であれば、所望の効果が得られることが確認された。
なお、実施例1と7との比較より、硬化性化合物として少なくとも4種以上の化合物が含有される場合(又は、重合性化合物として、重合性基の数が異なる化合物が少なくとも3種以上含有される場合)、引き置き経時安定性評価及び現像後波打ち評価がより優れることが確認された。
また、実施例3〜6と他の実施例との比較より、式(Z−1)で表される化合物と、式(Z−5)で表される化合物(好ましくは、式(Z−5−1)で表される化合物)と、式(Z−6)で表される化合物(好ましくは、式(Z−6−1)で表される化合物)と、式(Z−7)で表される化合物(好ましくは、式(Z−7−1)で表される化合物)とを含有する態様が好ましいことが確認された。
また、実施例1と3との比較より、オキシムエステル系重合開始剤を使用する場合、残膜率評価がより優れることが確認された。
また、実施例7と8との比較より、α−アミノケトン系重合開始剤を使用する場合、アンダーカット評価がより優れることが確認された。
また、実施例7と実施例13〜14との比較より、第1重合性化合物が式(Z−1)で表される化合物であり、6つのRのうち2つが上記式(Z−2)で表される基であり、残余が上記式(Z−3)で表される基である化合物の場合、残渣評価がより優れることが確認された。
また、実施例7と17〜21との比較より、沸点が170℃以上の溶剤を使用する場合、面内均一性評価がより優れることが確認された。
また、実施例7と35との比較より、チタンブラックを使用する場合、現像後波打ち評価及び残膜率評価がより優れることが確認された。
【0237】
<ウエハレベルレンズ用遮光膜の作製及び評価>
以下の操作により、レンズ膜を形成した。
〔1.樹脂膜の形成〕
レンズ用硬化性組成物(脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学社製EHPE−3150)にアリールスルホニウム塩誘導体(ADEKA社製SP−172)を1質量%添加して組成物)(2mL)を5×5cmのガラス基板(厚さ1mm、Schott社製、BK7)に塗布し、200℃で1分間加熱して硬化させ、ガラス基板上に樹脂膜を形成した。
硬化性組成物層の膜厚が2.0μmになるように、スピンコートの塗布回転数を調整して、樹脂膜を形成したガラス基板上に、実施例の硬化性組成物を均一に塗布し、表面温度120℃のホットプレートにより120秒間加熱処理した。
次に、高圧水銀灯を用い、10mmのホールパターンを有するフォトマスクを介して露光量500mJ/cm
2で得られた硬化性組成物層を露光した。
露光後の硬化性組成物層に対し、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド0.3質量%水溶液を用い、23℃の温度で60秒間パドル現像を行った。その後スピンシャワーにてリンスを行い、更に純水にて水洗し、ガラス基板の周縁部にパターン状の硬化膜を得た。
【0238】
パターン状の硬化膜を形成したガラス基板上に、レンズ用硬化性組成物(脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学社製EHPE−3150)にアリールスルホニウム塩誘導体(ADEKA社製SP−172)を1質量%添加して組成物)を用いて、硬化性樹脂層を形成し、レンズ形状を持つ石英モールドで形状を転写して、高圧水銀ランプにより400mJ/cm
2の露光量で硬化させることにより、ウエハレベルレンズを複数有するウエハレベルレンズアレイを作製した。
作製されたウエハレベルレンズアレイを切断し、これにレンズモジュールを作製した後に、固体撮像素子及びセンサ基板を取り付け、固体撮像装置を作製した。得られたウエハレベルレンズは、レンズ開口部に残渣物が無く良好な透過性を有し、かつ、硬化膜の部分の塗布面の均一性が高く、遮光性が高いものであった。