特許第6904039号(P6904039)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6904039熱可塑性ポリウレタンエラストマーおよびそれを使用した成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6904039
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリウレタンエラストマーおよびそれを使用した成形品
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/42 20060101AFI20210701BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   C08G18/42 002
   C08G18/48
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-85060(P2017-85060)
(22)【出願日】2017年4月24日
(65)【公開番号】特開2018-184490(P2018-184490A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2020年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】横田 博栄
(72)【発明者】
【氏名】小出 和宏
【審査官】 工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−172482(JP,A)
【文献】 特開平03−152112(JP,A)
【文献】 特開平11−080329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00−18/87
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルポリオール(A)、炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(B)、及び有機ジイソシアネート(C)の反応生成物である熱可塑性ポリウレタンエラストマーであって、ポリエステルポリオール(A)が、融点50℃以上のポリエステルポリオール(A1)と、融点50℃未満のポリエステルポリオール(A2)とを含み、その重量比が(A1)/(A2)=50/50〜90/10であり、
前記ポリエステルポリオール(A2)が、2種以上のポリオールと多塩基酸との重縮合物であるポリエステルポリオールであることを特徴とする熱可塑性ポリウレタンエラストマー。
【請求項2】
ASTMD 1238に準拠し、2.16kg荷重で200℃、予熱10分で測定したメルトフローレート(MI10)と、予熱30分で測定したメルトフローレート(MI30)の比(MI30/MI10)が3.5以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー。
【請求項3】
JIS−K−7312に準拠し、試験片を300%伸長して10分間保持した後解放し、解放10分後の標線間距離を測定し、下記式1により求めることができる永久伸びが30%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー。
永久伸び(%)
=(解放10分後の標線間距離mm−40mm)/40mm×100・・・(式1)
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマーから得られる成形品。
【請求項5】
ポリエステルポリオール(A)、炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(B)、及び有機ジイソシアネート(C)を反応させて得られる熱可塑性ポリウレタンエラストマーの製造方法であって、ポリエステルポリオール(A)が、融点50℃以上のポリエステルポリオール(A1)と、融点50℃未満のポリエステルポリオール(A2)とを含み、その重量比が(A1)/(A2)=50/50〜90/10であり、
前記ポリエステルポリオール(A2)が、2種以上のポリオールと多塩基酸との重縮合物であるポリエステルポリオールであることを特徴とする熱可塑性ポリウレタンエラストマーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形加工性が良好で伸縮性に優れた熱可塑性ポリウレタンエラストマー、およびそれを使用した成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタンエラストマーは硬度制御範囲が広く、高い機械強度と耐摩耗性を有することから、工業用のホース、チューブ、ベルト、自動車、家電、玩具の部品、雑貨、スポーツ用品等、幅広い分野で利用されている。なかでも、シート・フィルムや繊維は、その強靭性だけでなく伸縮機能を活かした用途開発が行われており、紙おむつ用、生理ナプキン用、目止め用、防塵用、緩衝材用等に用いられる伸縮性フィルム、あるいは水着、スポーツウェア、靴下、下着等の衣料品へ展開されている。このような用途においては、更なる伸縮機能の向上が求められている。
【0003】
このような要求に対し、これまで多くの提案がなされてきた。一般的には、結晶性の低いポリオールやジオールを用いて、ポリウレタンエラストマー中のソフトセグメントの結晶化を抑えることにより伸縮性や弾性回復性を向上させる方法が一般的に知られている。例えば、分岐構造を有し特定のウレタン結合単位を一定量有するポリウレタンエラストマー(例えば、特許文献1)、1,3−プロパンジオール単位を50モル%以上含有するポリエーテルポリオールを含有するポリウレタンエラストマー(例えば、特許文献2)、あるいはフタル酸骨格を有するポリエステルポリオール単位を有するポリウレタンエラストマー等が優れた伸縮機能を有することが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
しかしながら、ソフトセグメントの結晶性の低下に伴い溶融安定性が低下し、フィルム成形においては厚みのばらつきや発泡、紡糸の際に糸切れが頻繁に起こるなど、成形加工性の面で問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−120047号公報
【特許文献2】特開2008−248137号公報
【特許文献3】特開2015−81305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、成形加工性、特に溶融安定性が良好で、伸縮性に優れた熱可塑性ポリウレタンエラストマー、並びにそれを用いて得られる伸縮性に優れた成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は前記課題を解決するべく鋭意検討した結果、特定のポリエステルポリオールを所定量配合することにより、溶融安定性が良好で、伸縮性に優れた熱可塑性ポリウレタンエラストマーが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下の(1)〜(7)の実施形態を含むものである。
【0009】
(1)ポリエステルポリオール(A)、炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(B)、及び有機ジイソシアネート(C)の反応生成物である熱可塑性ポリウレタンエラストマーであって、ポリエステルポリオール(A)が、融点50℃以上のポリエステルポリオール(A1)と、融点50℃未満のポリエステルポリオール(A2)とを含み、その重量比が(A1)/(A2)=50/50〜90/10であることを特徴とする熱可塑性ポリウレタンエラストマー。
【0010】
(2)融点50℃未満のポリエステルポリオール(A2)が、アルキレン基に炭素数1〜10の側鎖アルキル基を少なくとも1つ有する構造単位を含むポリオールと多塩基酸との重縮合物であるポリエステルポリオール、及び2種以上のポリオールと多塩基酸との重縮合物であるポリエステルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリエステルポリオールであることを特徴とする上記(1)に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー。
【0011】
(3)ASTMD 1238に準拠し、2.16kg荷重で200℃、予熱10分で測定したメルトフローレート(MI10)と、予熱30分で測定したメルトフローレート(MI30)の比(MI30/MI10)が3.5以下であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー。
【0012】
(4)JIS−K−7312に準拠し、試験片を300%伸長して10分間保持した後解放し、解放10分後の標線間距離を測定し、下記式1により求めることができる永久伸びが30%以下であることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー。
永久伸び(%)
=(解放10分後の標線間距離mm−40mm)/40mm×100・・・(式1)
(5)上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマーから得られる成形品。
【0013】
(6)ポリエステルポリオール(A)、炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(B)、及び有機ジイソシアネート(C)を反応させて得られる熱可塑性ポリウレタンエラストマーの製造方法であって、ポリエステルポリオール(A)が、融点50℃以上のポリエステルポリオール(A1)と、融点50℃未満のポリエステルポリオール(A2)とを含み、その重量比が(A1)/(A2)=50/50〜90/10であることを特徴とする熱可塑性ポリウレタンエラストマーの製造方法。
【0014】
(7)融点50℃未満のポリエステルポリオール(A2)が、アルキレン基に炭素数1〜10の側鎖アルキル基を少なくとも1つ有する構造単位を含むポリオールと多塩基酸との重縮合物であるポリエステルポリオール、及び2種以上のポリオールと多塩基酸との重縮合物であるポリエステルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリエステルポリオールであることを特徴とする上記(6)に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマーの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、成形加工性に優れ、伸縮性に優れた成形品を安定的に得ることができる。また、従来の熱可塑性ポリウレタンエラストマーが有する強度や耐摩耗性を維持しているため、フィルムやシート等の各種成形用材料に好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明を詳しく説明する。
【0017】
本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ポリエステルポリオール(A)、炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(B)、及び有機ジイソシアネート(C)との反応生成物である。
【0018】
本発明で用いられるポリエステルポリオール(A)は、融点50℃以上のポリエステルポリオール(A1)と、融点50℃未満のポリエステルポリオール(A2)とを含み、その重量比が(A1)/(A2)=50/50〜90/10であり、好ましくは60/40〜80/20である。ポリエステルポリオール(A)中の融点50℃以上のポリエステルポリオール(A1)が50重量%未満では溶融安定性が劣り、長時間の成形において流動性の変化や発泡が起こり、得られる成形物の物性が安定しない。一方、ポリエステルポリオール(A)中の融点50℃以上のポリエステルポリオール(A1)が90重量%を超えると、得られる成形品の伸縮性が低下する。なお、本発明における融点とは、示差走査熱量計を用いてポリエステルポリオールを−100℃から100℃まで10℃/分で昇温した際に現れる吸熱ピークのピークトップの温度である。
【0019】
本発明で用いられるポリエステルポリオール(A1)は、融点が50℃以上のポリエステルポリオールであり、例えば低分子量ポリオールと多塩基酸とを公知の方法で反応させて得られるもの等が挙げられる。
【0020】
低分子量ポリオールとしては、水酸基を2つ以上有する分子量60〜400の化合物であることが好ましい。このような低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−又は1,3−プロパンジオール、1,2−又は1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、アルカン(7〜22)ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−又は1,4−シクロヘキサンジメタノール及びそれらの混合物、1,4−シクロヘキサンジオール、アルカン−1,2−ジオール(C17〜20)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ノルマルプロピル−1,3−プロパンジオール、2−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、2−ノルマルブチル−1,3−プロパンジオール、2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2−ターシャリーブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ノルマルプロピル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−3−エチル−1,4−ブタンジオール、2−メチル−3−エチル−1,4−ブタンジオール、2,3−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,3,4−トリエチル−1,5−ペンタンジオール、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールF、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、p−キシリレングリコール、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソフタレート、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、レゾルシン、ヒドロキノン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、ビスフェノールF、ビスフェノールA等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール、テトラメチロールメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトール、D−マンニットなどの水酸基を4つ以上有する多価アルコール等が挙げられる。
【0021】
多塩基酸としては、カルボキシル基を2つ以上有する分子量90〜400の化合物であることが好ましい。例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1−ジメチル−1,3−ジカルボキシプロパン、3−メチル−3−エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバシン酸、その他の脂肪族ジカルボン酸(炭素数11〜13)、スベリン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、メチルヘキサン二酸、シトラコン酸、水添ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ダイマー酸、ヘット酸、及び、それらカルボン酸から誘導される酸無水物、酸ハライド等が挙げられる。
【0022】
また、ポリエステルポリオール(A1)として、前記した低分子量ポリオールを開始剤として、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類を開環重合して得られるポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール等も挙げることができる。
【0023】
このようなポリエステルポリオール(A1)は、融点が50℃以上のものであれば特に制限はない。具体的には、例えばポリ(エチレンアジペート)ポリオール、ポリ(プロピレンアジペート)ポリオール、ポリ(ブチレンアジペート)ポリオール、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)ポリオール、これらのアジペート残基がマレート、スクシネート、グルタレート、ピメレート、スベレート、アゼレート、セバシエート残基に変えたもの、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。なかでも入手の容易さから、ポリ(ブチレンアジペート)ポリオール、ポリ(ブチレンアゼレート)、ポリ(ブチレンセバシエート)、ポリカプロラクトンポリオールが好ましい。
【0024】
本発明に用いられるポリエステルポリオール(A2)は、融点50℃未満のものであり、前記した低分子量ポリオールと多塩基酸の重縮合物、あるいはラクトン系ポリオールから選択されることが好ましく、加えて25℃において液状、又は70℃における粘度が200〜5000mPa・sであることが好ましい。また、前記低分子量ポリオールとして、アルキレン基に炭素数1〜10の側鎖アルキル基を少なくとも1つ有する構造単位を含む低分子量ポリオール(以降「分岐ジオール」とも言う)を用いることが好ましい。
【0025】
このようなポリエステルポリオールとしては、例えば分岐ジオールと多塩基酸の重縮合物であるポリエステルポリオール(以下、アルキル分岐鎖を有するポリエステルポリオールと言う。)、2種以上の前記した低分子量ポリオールと多塩基酸の重縮合物であるポリエステルポリオール、及びラクトン系ポリオールに前記した低分子量ポリオールを共重合したポリオール等が挙げられる。
【0026】
アルキル分岐鎖を有するポリエステルポリオールとして、例えばポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオール/アジピン酸)ポリオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオール/イソフタル酸)ポリオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオール/セバシン酸)ポリオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオール/アジピン酸/イソフタル酸)ポリオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオール/アジピン酸/テレフタル酸)ポリオール、ポリ(2−メチル−1,3−プロパンジオール/アジピン酸)ポリオール等が挙げられる。
【0027】
2種以上の低分子量ポリオールと多塩基酸の重縮合物であるポリエステルポリオールとしては、例えばポリ(エチレン/ブチレンアジペート)ポリオール、ポリ(エチレン/ヘキシレンアジペート)ポリオール、ポリ(ブチレン/ヘキシレンアジペート)ポリオール、ポリ(エチレン/ブチレン/へキシレンアジペート)ポリオール、これらのアジペート残基がマレート、スクシネート、グルタレート、ピメレート、スベレート、アゼレート、セバシエート残基に変えたポリオール等が挙げられる。なかでも良好な伸縮性を発現させる観点から、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオール/アジピン酸)ポリオール、エチレンユニットとブチレンユニットのモル比が20/80〜80/20の範囲にあるポリ(エチレン/ブチレンアジペート)ポリオールが好ましい。
【0028】
本発明の炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(B)としては、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等が挙げられる。なかでも、良好な強度を発現させるためには、炭素数2〜6の脂肪族ジオールが好ましく、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが特に好ましい。
【0029】
本発明の有機ジイソシアネート(C)としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、及び前記イソシアネートのビウレット体、ダイマー体、トリマー体、ダイマー・トリマー体、カルボジイミド体、ウレトンイミン体、2官能以上のポリオール等と前記イソシアネートとの反応で得られるアダクト体等が挙げられる。これらの有機ジイソシアネートは、単独あるいは2種以上の混合物のいずれの形態で用いてもよい。
【0030】
次に、本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマーの特性、及び製造方法について説明する。
【0031】
本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ASTMD 1238に準拠し、2.16kg荷重で200℃、予熱10分で測定したメルトフローレート(MI10)と予熱30分のメルトフローレート(MI30)の比(MI30/MI10)が3.5以下であることが好ましく、3.0以下であることが更に好ましい。MI30/MI10が3.5を超えると、大型の押出成形のような比較的長時間溶融状態に置かれた場合、流動性の変化が大きく、安定した成形加工が困難となりやすく、また、樹脂の分解によって気泡が発生するなど物性が安定した成形品を得にくくなる恐れがある。なお、押出成形に使用するにはMI10が2〜8であることが好ましい。
【0032】
本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、試験片を300%伸長して10分間保持し、荷重除去10分後の永久伸びが30%以下であることが好ましく、25%以下であることが更に好ましい。永久伸びが30%を超えると弾性回復性に乏しく、伸縮性が要求される用途に展開しにくくなる恐れがある。
【0033】
本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、例えばワンショット法やプレポリマー法等の公知の方法によって製造可能である。
【0034】
ワンショット法としては、例えばポリエステルポリオール(A)と炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(B)と有機ジイソシアネート(C)とを一括で反応させる3液反応方法が挙げられる。
【0035】
プレポリマー法としては、例えばポリエステルポリオール(A)に、水酸基に対してイソシアネート基が過剰となるように有機ジイソシアネート(C)を予め120℃以下の温度で反応させて得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(B)とを反応させる2液反応方法が挙げられる。
【0036】
上記反応方法の具体例としては、例えば上記の原料を定量ポンプで計量し混合撹拌した後、バット上に流し込み樹脂化する方法。シリンダー温度を好ましくは80〜250℃、更に好ましくは120〜250℃に設定された押出機に上記の原料を供給し、該押出機内で原料を混練、搬送しながら重合を行い、熱可塑性ポリウレタンエラストマーをダイから押し出す方法。ニーダーに全ての原料を仕込み、好ましくは80〜250℃、更に好ましくは120〜250℃で反応させる方法等を挙げることができる。
【0037】
本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、融点50℃以上のポリエステルポリオール(A1)、炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(B)、及び有機ジイソシアネート(C)との反応生成物である熱可塑性ポリウレタンエラストマー(D1)と、融点50℃未満のポリエステルポリオール(A2)、炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(B)、及び有機ジイソシアネート(C)との反応生成物である熱可塑性ポリウレタンエラストマー(D2)を前記方法により予め合成後、(D1)と(D2)の重量比がD1/D2=50/50〜90/10で溶融混練して製造することも可能である。
【0038】
本発明におけるポリエステルポリオール(A)と炭素数2〜10の脂肪族ジオール(B)との配合割合は、ポリエステルポリオール(A)の活性水素基モル数に対する脂肪族ジオール(B)の活性水素基モル数の比([脂肪族ジオール(B)の活性水素基モル数]/[ポリエステルポリオール(A)の活性水素基モル数]=R’値)が、TPUのハードセグメント量の指標であり、物性発現を左右するという観点から、R’値は、好ましくは0.1〜15、より好ましくは0.3〜12である。
【0039】
本発明において、ポリエステルポリオール(A)と炭素数2〜10の脂肪族ジオール(B)の活性水素基モル数を合計した、全活性水素基モル数に対する有機ジイソシアネート(C)の全イソシアネート基モル数の比([全イソシアネート基モル数]/[全活性水素基モル数]=R値)は、TPUの分子量や粘度を好ましい範囲に調整するという観点から、好ましくは0.7〜1.3、より好ましくは0.8〜1.2である。
【0040】
本発明においては、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを得る際に触媒を使用してもよい。この触媒としては、通常用いられているウレタン化触媒が使用できる。例えば、ビスマス、鉛、錫、鉄、アンチモン、ウラン、カドミウム、コバルト、トリウム、アルミニウム、水銀、亜鉛、ニッケル、セリウム、モリブデン、バナジウム、銅、マンガン、ジルコニウム、チタン、カルシウム等を含有する有機化合物、無機化合物等が挙げられ、有機金属化合物、特に有機錫化合物が好ましい。代表的な有機錫触媒としては、例えばオクタン酸第一錫、オレイン酸第一錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレート、ジブチル錫メルカプトプロピオネート、ジブチル錫ドデシルメルカプチド等が挙げられる。これらの中でもジアルキル錫化合物が特に好ましい。
【0041】
使用する触媒の量は他の原料の性質、反応条件、所望の反応時間等によって決定されるので特に制限されるものではないが、概ね触媒は反応混合物の全重量の0.0001〜5重量%、好ましくは0.001〜2重量%の範囲で使用される。
【0042】
本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、各種添加剤や他の熱可塑性樹脂を添加し使用することも可能である。
【0043】
添加剤としては、滑剤、溶媒、加水分解防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、充填剤、可塑剤、発泡剤、難燃剤、ブロッキング防止剤、防カビ剤、加工助剤、補強用繊維等を挙げることができる。
【0044】
他の熱可塑性樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、クロルスルホン化ポリエチレン、ポリアセタール樹脂、ポリエステルエラストマー樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム等を挙げることができる。
【0045】
本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマーを成形することによって伸縮性に優れた成形品を得ることができる。成形方法は特に限定されるものではなく、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー加工、ロール加工等が挙げられ、樹脂板、フィルム、シート、チューブ、ホース、ベルト、ロール、合成皮革、靴底、自動車部品、エスカレーターハンドレール、道路標識部材、繊維等の種々の形状の成形品を製造できる。
【0046】
本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー及びその成形品の利用分野は特に制限されず、電気・電子部品、精密機器、家電・AV機器、OA機器、自動車、農林水産、食品、繊維、衣類、皮革、医療等の多くの分野に用いることができる。
【実施例】
【0047】
本発明について、実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、本実施例における「部」は重量基準である。
また、以下に示す実施例1〜10のうち、実施例6〜10は本発明の範囲に属しない参考例としての試験例である。
【0048】
<実施例1〜10、比較例1〜8>
撹拌機と温度計の付いた反応容器に、脂肪族ジオール(B)49.3部、酸化防止剤1.5部、光安定剤1.5部、さらにポリエステルポリオール(A1)とポリエステルポリオール(A2)を、表1、表2に記載の量を投入し均一に混合した。
【0049】
得られた混合液を100℃に加熱した後、有機ジイソシアネート成分(C)としてMDI227.4部を加え、ハンドミキサーで強制撹拌し、反応温度が130℃に達した時点で離型紙上に流し込み固化させた。得られた固形物を120℃の電気炉で1時間熟成させ、室温まで冷却した後、固形物を粉砕しフレーク状のTPUを得た。
【0050】
得られたフレーク状のTPUは押出機でペレット化し、105℃で16時間乾燥した。得られた熱可塑性ポリウレタンエラストマーのペレットを180〜220℃でTダイ押出成形または射出成形することにより、厚さ0.15mmのフィルム、厚さ2mmのシートを作製し、物性評価を行った。
【0051】
本実施例にて使用した原料を以下に示す。
1)融点50℃以上のポリエステルポリオール(A1):
・ポリブチレンアジペートポリオール(商品名:N−4012、東ソー社製、数平均分子量:2000、融点:54℃、70℃における粘度:970mPa・s)
2)融点50℃未満のポリエステルポリオール(A2):
・ポリエチレン/ブチレンアジペートポリオール(商品名:N−4057、東ソー社製、数平均分子量:2000、エチレン/ブチレン=47/53(モル比)、融点25℃、70℃における粘度:800mPa・s)
・3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペートポリオール(商品名:クラレポリオールP−2010、クラレ社製、数平均分子量:2000、融点−65℃、25℃における粘度:5700mPa・s)
3)脂肪族ジオール:1,4−ブタンジオール(BASF社製)
4)有機ジイソシアネート:ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(商品名:MT、東ソー社製)
5)酸化防止剤:IRGANOX245(BASF社製)
6)光安定剤:TINUVIN622LD(BASF社製)。
【0052】
得られた熱可塑性ポリウレタンエラストマーの評価を下記の通り行った。結果を表1、2に示す。
【0053】
<評価方法>
<メルトフローレート>
ASTMD 1238に準拠し、日本ダイニコス社製メルトインデクサーLMI400型を使用し、2.16kg荷重、200℃で、予熱10分と予熱30分のメルトフローレートを測定した。予熱10分で測定したメルトフローレート(MI10)と、予熱30分で測定したメルトフローレート(MI30)の比(MI30/MI10)が3.5以下であれば良好とした。また、予熱30分後のメルトフローレート測定後のストランド中の気泡の有無を確認し、気泡が無い場合、成形加工性が良好と言える。
【0054】
<永久伸び>
JIS−K−7312に準拠し(1号ダンベル使用幅10mm×標線間距離40mm)、オリエンテック社製テンシロンUTA−500を用いて、測定温度25℃、湿度50%の環境下、クロスヘッドスピード100mm/minで300%まで伸長させ10分間保持、その後解放することで荷重を除去し、解放10分後に標線間距離を測定し下記式1により永久伸びを算出した。永久伸びが30%以下であれば良好とした。
永久伸び(%)
=(解放10分後の標線間距離mm−40mm)/40mm×100・・・(式1)。
【0055】
<機械物性>
Tダイ押出成形により得た厚さ0.15mmのフィルムを用いて、JIS K 7311(ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの試験方法)に記載の測定方法に従って測定した。
・測定項目:100%モジュラス(M100)、切断時引張強度、切断時伸び。
【0056】
<硬さ>
射出成形により得た厚さ2mmのシートを用いて、温度25℃、湿度50%の条件下、協和界面化学社製CA−DT・A型を使用し、JIS R3257に準拠して測定した。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
実施例1〜10の熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、比較例1、4、6に比べ、永久伸びが小さく伸縮性に優れる。また、比較例2、3、5、7に比べ、予熱10分後のMI(MI10)と予熱30分後のMI(MI30)の比(MI30/MI10)は小さく、予熱30分後のMI測定後のストランドを観察しても気泡が観察されず、溶融安定性も良好であった。