(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アンテナにおいて、基板の通過領域の外縁部に対向する領域における単位面積あたりの前記放射孔の開口率は、前記外縁部に対向する領域から内寄りに外れた領域における単位面積あたりの前記放射孔の開口率よりも小さく設定され、且つ、基板の通過領域の内縁部に対向する領域における単位面積あたりの前記放射孔の開口率は、前記内縁部に対向する領域から外寄りに外れた領域における単位面積あたりの前記放射孔の開口率よりも小さく設定されることを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
前記アンテナにおいて、外縁部に対向する領域から内寄りに外れた領域及び前記内縁部に対向する領域から外寄りに外れた領域は、前記基板の中央部が通過する領域に対向する領域であることを特徴とする請求項2記載のプラズマ処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のプラズマ処理装置の一実施形態である成膜装置1について、
図1の縦断側面図及び
図2の横断平面図を参照しながら説明する。この成膜装置1は、原料ガスであるDCS(ジクロロシラン)ガス、反応ガスであるNH
3ガスを、例えばシリコンからなる基板であるウエハWに夫々供給し、ALDによってウエハWにSiN膜を形成する。ウエハWは直径が300mmの円形である。また、改質ガスであるH
2(水素)ガスを供給することで、SiN膜の改質を行う。NH
3ガス及びH
2ガスについては、プラズマ化されてウエハWに供給される。
【0010】
図1中11は扁平な概ね円形の真空容器(処理容器)であり、側壁及び底部を構成する容器本体11Aと、天板11Bとにより構成されている。図中12は、真空容器11内に水平に設けられる円形の回転テーブルである。図中12Aは、回転テーブル12の裏面中央部を支持する支持部である。図中13は回転機構であり、成膜処理中において支持部12Aを介して回転テーブル12を、その周方向に平面視時計回りに回転させる。なお、図中のXは回転テーブル12の回転軸を表している。
【0011】
回転テーブル12の上面(一面)側には、回転テーブル12の周方向(回転方向)に沿って6つの円形の凹部14が設けられており、各凹部14にウエハWが収納される。つまり、回転テーブル12の回転によって公転するように、各ウエハWは回転テーブル12に載置される。ウエハWが載置される位置についてさらに詳しく説明すると、ウエハWは上記の回転方向に等間隔を空けるように回転テーブル12に載置され、各ウエハWの中心と上記の回転軸Xとの距離は各々等しい。また、
図1中15はヒーターであり、真空容器11の底部において同心円状に複数設けられ、回転テーブル12に載置されたウエハWを加熱する。
図2中16は真空容器11の側壁に開口したウエハWの搬送口であり、ゲートバルブGによって開閉自在に構成される。図示しない基板搬送機構により、ウエハWは搬送口16を介して、真空容器11の外部と凹部14内との間で受け渡される。
【0012】
回転テーブル12上には、原料ガス供給部であるガス給排気ユニット2と、プラズマ形成ユニット3Aと、プラズマ形成ユニット3Bと、プラズマ形成ユニット3Cとが、回転テーブル12の回転方向下流側に向かい、当該回転方向に沿って互いに間隔を空けてこの順に設けられている。ガス給排気ユニット2は、DCSガスをウエハWに供給するユニットである。プラズマ形成ユニット3A〜3Cは、回転テーブル12上に供給されたプラズマ形成用ガスをプラズマ化して、ウエハWにプラズマ処理を行うユニットである。プラズマ形成ユニット3Cは、ウエハWに吸着されたDCSガスを窒化してSiN膜を形成するためのプラズマ処理を行う。プラズマ形成ユニット3A、3Bは、SiN膜を改質するためのプラズマ処理を行う。この改質について具体的に述べると、膜の表面に含まれるDCSガスに由来するCl(塩素)をH
2ガスのプラズマに曝すことで膜から脱離させる。この脱離した部位にプラズマ形成ユニット3CによりNH
3が吸着され、膜を構成するSiが窒化されることで、より純粋な(緻密な)窒化膜が形成される。
【0013】
上記のガス給排気ユニット2の構成について、縦断側面図である
図3及び下面図である
図4も参照しながら説明する。ガス給排気ユニット2は、平面視、回転テーブル12の中央側から周縁側に向かうにつれて回転テーブル12の周方向(回転方向)に広がる扇状に形成されており、ガス給排気ユニット2の下面は、回転テーブル12の上面に近接すると共に対向している。
【0014】
ガス給排気ユニット2の下面には、吐出部をなすガス吐出口21、排気口22及びパージガス吐出口23が開口している。図中での識別を容易にするために、
図4では、排気口22及びパージガス吐出口23に多数のドットを付して示している。ガス吐出口21は、ガス給排気ユニット2の下面の周縁部よりも内側の扇状領域24に多数配列されている。このガス吐出口21は、成膜処理時における回転テーブル12の回転中にDCSガスを下方にシャワー状に吐出して、ウエハWの表面全体に供給する。
【0015】
この扇状領域24においては、回転テーブル12の中央側から回転テーブル12の周縁側に向けて、3つの区域24A、24B、24Cが設定されている。夫々の区域24A、区域24B、区域24Cに設けられるガス吐出口21の夫々に独立してDCSガスを供給できるように、ガス給排気ユニット2には互いに区画されたガス流路25A、25B、25Cが設けられている。各ガス流路25A、25B、25Cの下流端は、各々ガス吐出口21として構成されている。
【0016】
そして、ガス流路25A、25B、25Cの各上流側は、各々配管を介してDCSガスの供給源26に接続されており、各配管にはバルブ及びマスフローコントローラにより構成されるガス供給機器27が介設されている。ガス供給機器27によって、DCSガス供給源26から供給されるDCSガスの各ガス流路25A、25B、25Cにおける下流側への給断及び流量が制御される。なお、後述するガス供給機器27以外の各ガス供給機器も、ガス供給機器27と同様に構成され、下流側へのガスの給断及び流量を制御する。
【0017】
続いて、上記の排気口22及びパージガス吐出口23について説明する。排気口22及びパージガス吐出口23は、扇状領域24を囲むと共に回転テーブル12の上面に向かうように、ガス給排気ユニット2の下面の周縁部に環状に開口しており、パージガス吐出口23が排気口22の外側に位置している。回転テーブル12上における排気口22の内側の領域は、ウエハWの表面へのDCSの吸着が行われる吸着領域R0を構成する。パージガス吐出口23は、回転テーブル12上にパージガスとして例えばAr(アルゴン)ガスを吐出する。
【0018】
成膜処理中において、ガス吐出口21からの原料ガスの吐出、排気口22からの排気及びパージガス吐出口23からのパージガスの吐出が共に行われる。それによって、
図3中に矢印で示すように回転テーブル12へ向けて吐出された原料ガス及びパージガスは、回転テーブル12の上面を排気口22へと向かい、当該排気口22から排気される。このようにパージガスの吐出及び排気が行われることにより、吸着領域R0の雰囲気は外部の雰囲気から分離され、当該吸着領域R0に限定的に原料ガスを供給することができる。即ち、吸着領域R0に供給されるDCSガスと、後述するガスインジェクター51〜53によって吸着領域R0の外部に供給される各ガスとが混合されることを抑えることができるので、後述するようにウエハWにALDによる成膜処理を行うことができる。
【0019】
図3中23A、23Bは、各々ガス給排気ユニット2に設けられる互いに区画されたガス流路であり、上記の原料ガスの流路25A〜25Cに対しても各々区画されて設けられている。ガス流路23Aの上流端は排気口22、ガス流路23Aの下流端は排気装置28に夫々接続されており、この排気装置28によって、排気口22から排気を行うことができる。また、ガス流路23Bの下流端はパージガス吐出口23、ガス流路23Bの上流端はArガスの供給源29に夫々接続されている。ガス流路23BとArガス供給源29とを接続する配管には、ガス供給機器20が介設されている。
【0020】
続いて、プラズマ形成ユニット3Bについて
図1を参照して説明する。プラズマ形成ユニット3Bは、真空容器11内へ向けてマイクロ波を放射するアンテナ31と、アンテナ31に向けてマイクロ波を供給する同軸導波管32、及びマイクロ波発生器33を備える。アンテナ31は天板11Bに設けられており、後述のガスインジェクター52から反応ガスが供給される領域の上方に位置している。アンテナ31は、誘電体窓34、スロット板35、誘電体プレート36及び冷却ジャケット37を有するラジアルラインスロットアンテナとして構成されている。
【0021】
誘電体窓34はマイクロ波の波長を短縮させるものであり、例えばアルミナセラミックから構成され、真空容器11の天板11Bに形成された開口部を塞ぐように設けられている。誘電体窓34上には金属板であるスロット板35が水平に設けられている。このスロット板35は多数の細長のスロット孔(スリット)38が分散して配設されており、隣り合うスロット孔38同士は組をなし、その長さ方向が互いに直交するように形成されている。そして、このスロット孔38の組は、スロット板35の重心を中心とする複数、例えば3つの同心円に沿って配置されている。
【0022】
さらにスロット板35上には例えばアルミナセラミックからなる誘電体プレート36が設けられている。誘電体プレート36上には例えば導電性の冷却ジャケット37が設けられている。冷却ジャケット37には、アンテナ31を冷却するための冷媒が流通する図示しない冷媒流路が形成されている。ところで、上記の誘電体窓34、スロット板35及び誘電体プレート36は、平面視概略三角形状に構成されている。そして、回転テーブル12の中心側、外周側を夫々内側、外側とすると、これらの誘電体窓34、スロット板35及び誘電体プレート36は、内側から外側に向かうにつれて、平面視回転テーブル12の回転方向にその幅が広がるように配置されており、回転テーブル12に対向する。
【0023】
アンテナ31は同軸導波管32、モード変換器39、導波管41、整合器42を、この順に介してマイクロ波発生器33に接続されている。同軸導波管32は、円柱形状の内側導体43と、その内部に内側導体43を収容した円筒形状の外側導体44と、を備える。内側導体43及び外側導体44の上端部はモード変換器39に接続されている。内側導体43の下端部は、冷却ジャケット37、誘電体プレート36、スロット板35を貫通して誘電体窓34の上面に設けられた凹部に進入している。なお、図中45は、スロット板35において上記の内側導体43が貫通する貫通孔である。外側導体44の下端部は、冷却ジャケット37に接続されている。上記のマイクロ波発生器33は、例えば2.45GHzの周波数のマイクロ波を発生し、このマイクロ波は同軸導波管32にて導波される伝搬モードにマイクロ波を変換するモード変換器39を介して当該同軸導波管32に導入される。そして、このマイクロ波は同軸導波管32を通って、誘電体プレート36に供給され、スロット板35のスロット孔38から誘電体窓34に放射され、当該誘電体窓34からその下方側の空間に供給される。
【0024】
プラズマ形成ユニット3Bによりプラズマが形成されて処理が行われる処理領域をプラズマ形成領域R2とすると、既述のように誘電体窓34からマイクロ波が回転テーブル12に供給されることで、プラズマ形成領域R2は、スロット板35及び誘電体窓34の下方に形成される。当該スロット板35及び誘電体窓34の平面形状に対応するように、プラズマ形成領域R2は回転テーブル12の内側から外側に向かうにつれて回転方向に拡幅された、平面視概ね三角形状となり、平面で見て回転テーブル12の周の概ね1/6がこのプラズマ形成領域R2に重なる。既述のようにアンテナ31が設けられることにより、このプラズマ形成領域R2は、回転テーブル12の回転方向に局所的に形成される。そして、プラズマ形成領域R2は、例えば平面で見て1枚のウエハW全体をカバーする大きさを有している。従って、プラズマ形成領域R2は、公転によるウエハWの移動領域の内縁から外縁に亘るように形成される。
【0025】
上記のようにスロット孔38から誘電体窓34にマイクロ波が放射されるため、スロット孔38によるスロット板35の各部の開口率を調整することでプラズマ形成領域R2の各部におけるプラズマの強度を調整することができる。さらに詳しく述べると、プラズマ形成領域R2において、スロット板35の単位面積あたりの開口率が高い領域の下方は、他の領域に比べてマイクロ波の放射量が大きいために供給されるエネルギーが大きいので、プラズマの強度が大きくなる。このスロット板35の構成について、後にさらに詳しく説明する。
【0026】
また、プラズマ形成ユニット3A、3Cはプラズマ形成ユニット3Bと同様に構成されており、
図2においてプラズマ形成ユニット3A、3Cにおけるプラズマ形成領域R3に相当する領域をプラズマ形成領域R1、R3として夫々示している。プラズマ形成領域R1、R2、R3は回転テーブル12の回転方向における位置が異なるが、互いに同じ大きさになるように構成されている。回転テーブル12の回転方向に見て、プラズマ形成領域R1の下流側の端部、プラズマ形成領域R2の上流側端部、プラズマ形成領域R3の下流側端部には、夫々ガスインジェクター51、52、53が設けられている。処理ガス供給部をなすガスインジェクター51、52、53は、例えば先端側が閉じられた細長い管状体として構成され、真空容器11の側壁から中央部領域に向かって水平に伸び、回転テーブル12上のウエハWの通過領域と交差するように夫々設けられている。
【0027】
ガスインジェクター51、52、53には、その長さ方向に沿ってガスの吐出口50が多数、横方向に開口している。例えば、回転テーブル12の回転方向に見て、ガスインジェクター51はプラズマ形成領域R1の上流側に向かうように当該プラズマ形成領域R1にガスを吐出し、ガスインジェクター52はプラズマ形成領域R2の下流側に向かうように当該プラズマ形成領域R2にガスを吐出し、ガスインジェクター53はプラズマ形成領域R3の上流側に向かうように当該プラズマ形成領域R3にガスを吐出する。改質ガス供給部をなすガスインジェクター51、ガスインジェクター52は、処理ガスであるH
2ガスの供給源54に接続されており、反応ガス供給部をなすガスインジェクター53は処理ガスであるNH
3ガスの供給源55に接続されている。
【0028】
プラズマ形成領域R2とプラズマ形成領域R3との間には、分離領域57が設けられている。この分離領域57の天井面は、プラズマ形成領域R2及びプラズマ形成領域R3の各々の天井面よりも低い。分離領域57は
図2に示すように平面的に見て、回転テーブル12の中央側から周縁側に向かうにつれて回転テーブル12の周方向に広がる扇状に形成されており、その下面は回転テーブル12の上面に対向すると共に近接し、分離領域57と回転テーブル12との間のコンダクタンスが抑えられている。
【0029】
また、
図2に示すように回転テーブル12の外側であって、プラズマ形成領域R1の上流側端部、プラズマ形成領域R2の下流側端部及びプラズマ形成領域R3の上流側端部の各々に臨む位置には、第1の排気口47、第2の排気口48及び第3の排気口49が夫々開口している。第1の排気口47は、第1のガスインジェクター51からプラズマ形成領域R1に吐出されたガスを排気する。第2の排気口48は、ガスインジェクター52から吐出されたプラズマ形成領域R2のガスを排気し、分離領域57の回転方向上流側近傍に設けられている。第3の排気口49は、ガスインジェクター53から吐出されたプラズマ形成領域R3のガスを排気し、分離領域57の回転方向下流側近傍に設けられている。
【0030】
上記のように分離領域57と回転テーブル12との間の隙間のコンダクタンスが小さいため、ガスインジェクター52から吐出されたH
2ガスは、当該隙間を回転テーブル12の回転方向下流へ流れることが抑制され、第2の排気口48から排気される。そして、そのようにコンダクタンスが小さいことから、ガスインジェクター53から吐出されたNH
3ガスについても当該隙間を回転テーブル12の回転方向下流へ流れることが抑制されて、第3の排気口49から排気される。図中40は排気装置であり、真空ポンプなどにより構成され、排気管を介して第1の排気口47、第2の排気口48及び第3の排気口49に接続されている。排気管に設けられる図示しない圧力調整部により各排気口47〜49による排気量が調整されることによって、真空容器11内の真空度が調整される。
【0031】
図1に示すように成膜装置1には、コンピュータからなる制御部10が設けられており、制御部10にはプログラムが格納されている。このプログラムについては、成膜装置1の各部に制御信号を送信して各部の動作を制御し、後述の処理が実行されるようにステップ群が組まれている。具体的には、回転機構13による回転テーブル12の回転数、各ガス供給機器による各ガスの流量及び給断、各排気装置28、40による排気量、マイクロ波発生器33からのアンテナ31へのマイクロ波の給断、ヒーター15への給電などが、プログラムによって制御される。ヒーター15への給電の制御は、即ちウエハWの温度の制御であり、排気装置40による排気量の制御は、即ち真空容器11内の圧力の制御である。このプログラムは、ハードディスク、コンパクトディスク、DVD、メモリカードなどの記憶媒体に格納され、制御部10にインストールされる。
【0032】
この成膜装置1における処理の概略を述べると、回転テーブル12が回転することで、当該回転テーブル12に載置されたウエハWが公転する。この公転中にプラズマ形成ユニット3A〜3Cにより、プラズマ形成領域R1〜R3にプラズマが形成されると共に吸着領域R0にDCSガスが供給されることで、ウエハWに対してALDによる成膜と膜の改質とが行われる。ところで、上記のようにプラズマ形成領域R1〜R3を構成するアンテナ31を構成するスロット板35の各部の開口率によってプラズマ形成領域R1〜R3のプラズマの強度の分布が調整されるが、スロット板35の各部において単位面積あたりの開口率は均一とされていない。そのようにスロット板35が構成される理由を以下に説明する。
【0033】
以下の説明では特に記載無い限り、同じ形状の多数のスロット孔38が、等間隔でスロット板35に分散して形成されることでスロット孔38の各部の単位面積あたりの開口率は均一ないしは概ね均一であり、スロット板35の下方の各部に均一ないしは概ね均一な強度でプラズマが形成されるものとする。先ず、回転テーブル12の概略図である
図5を参照して説明する。既述したようにプラズマ形成領域R1〜R3については回転テーブル12の内側から外側に広がる領域であるため、回転テーブル12の中心を通る回転テーブル12の直径に沿った2つの直線と回転テーブル12の周端に沿った円弧とに囲まれる扇状領域として概略的に示すことができる。
図5では代表して、プラズマ形成領域R1、R3について斜線を付して示しているが、これらのうち、プラズマ形成領域R3を取り上げて説明する。
【0034】
回転テーブル12の角速度をωとする。なお、処理中においてこのωは一定、即ち回転数が一定となるように回転テーブル12は回転する。そして、
図5に示すように、回転テーブル12の内側から外側に至る各部において、線速度は互いに異なるがこの角速度ωについては各々等しい。このように角速度ωが等しいとは、単位時間あたりの回転角度(θ/t)が等しいということである。上記のようにプラズマ形成領域R3は概略的に扇状であることから、当該プラズマ形成領域R3において回転テーブル12の径方向に互いに離れ、回転テーブル12の回転方向の一端から他端に亘る当該回転方向に沿った複数の円弧状の線を引いたものとすると、これらの線は上記の角速度ωが互いに等しい領域であるため、当該各円弧状の線は、同じ時間だけウエハWにプラズマエネルギーを与える領域である。具体的に、
図5中、回転テーブル12の内側から外側に向かって互いに異なる位置に引いた、この円弧状の3本の線を61A、61B、61Cとして表示しており、これらの円弧状の線61A〜61Cは、同じ時間だけウエハWにプラズマエネルギーを与える領域である。
【0035】
上記のようにプラズマ形成領域R3内の各部でプラズマエネルギーの強度は互いに等しいものとしているので、プラズマエネルギーが与えられる時間が等しいということは、同等の量のプラズマエネルギーが与えられるということである。従ってプラズマ形成領域R3において、回転テーブル12の径方向において互いに離れた位置に、回転テーブル12の回転方向の一端から他端に亘る当該回転方向に沿った円弧状の線を各々引くとすると、それらの円弧状の線は同等のプラズマエネルギーを与える領域である。つまり、上記の円弧状の線61A、61B、61Cは、互いに同等のプラズマエネルギーを与える領域である。
【0036】
また、既述のようにウエハWは公転することによってプラズマ形成領域R3を通過して処理されることから、回転テーブル12の中心からの距離が異なる位置毎に、当該回転テーブル12の回転方向に沿ってエネルギーを受ける円弧状の線が存在するものとして見ることができる。ここで、仮にウエハWが
図6に示すように、プラズマ形成領域R3と同じ扇状に形成されており、扇頂部が中心に向かうように回転テーブル12に載置されるものとする。このウエハWにおいて上記の円弧状のエネルギーを受ける3本の線を代表して62A、62B、62Cとして示しており、これらのエネルギーを受ける線62A〜62Cの回転テーブル12の中心からの距離は、
図5で述べたエネルギーを与える円弧状の線61A〜61Cの回転テーブル12の中心からの距離と夫々等しい。従って、このウエハWにおけるエネルギーを受ける線62A、62B、62Cの各長さは、プラズマ形成領域R3におけるエネルギーを与える線61A、61B、61Cの各長さと夫々等しい。
【0037】
これはウエハWが扇状であるとした場合、当該ウエハWにおける回転テーブル12の回転方向に沿った円弧状の線62A、62B、62Cはその長さに対応したエネルギーを線61A、61B、61Cから受けることができ、ウエハWにおける各線62A、62B、62C間で均一性高くプラズマ処理が行われるということである。つまり、回転テーブル12の内側から外側に向かう径方向に沿って見たときに、ウエハWには均一性高くプラズマのエネルギーが供給されることを意味している。しかし、ウエハWは
図6に示すような扇状では無く円形である。つまり、実際にはエネルギーを与える円弧状の線61A、61B、61Cの長さは、エネルギーを受ける円弧状の線62A、62B、62Cの長さと対応していない。即ち、回転テーブル12を上記の径方向に沿って見たときに、エネルギーを与える円弧状の領域の大きさと、ウエハWにおいてエネルギーを受ける円弧状の領域の大きさとの対応が一様では無い。
【0038】
図7を用いて、このプラズマのエネルギーを与える領域とプラズマのエネルギーを受ける領域との関係をさらに詳しく説明する。
図7では、平面で見て回転テーブル12の公転によってウエハWが移動する領域を、当該回転テーブル12の径方向に6つに等分割し、回転テーブル12の内側から外側に向かって環状分割領域63A、63B、63C、63D、63E、63Fとして示したものである。また、環状分割領域63A〜63Fを互いに区画する仮想線を、回転テーブル12の内側から外側に向けて64A、64B、64C、64D、64E、64F、64Gとして示している。
【0039】
また
図7においては、回転テーブル12の中心から周端に向かって径方向に2本の直線を互いに30°の角度をなすように引き、これらの直線に挟まれ、且つ環状分割領域63C、環状分割領域63Fに夫々含まれる領域に斜線を付し、夫々弧状領域65C、65Fとしている。既述のようにプラズマ形成領域において、角速度が等しい領域は同等の量のプラズマエネルギーを与えることになるので、弧状領域65C、65Fがプラズマ形成領域R3に含まれるとすると、弧状領域65C、65Fはそのように同等の量のプラズマエネルギーをウエハWに与える領域である。しかし
図7に示すように、ウエハWにおいて環状分割領域63Cを通過する部位の面積は、弧状領域65Cの面積の概ね2倍である。それに対してウエハWにおいて環状分割領域63Fを通過する部位の面積は、弧状領域65Fの面積よりも小さい。つまり、ウエハWの形状とプラズマ形成領域R3との形状とのずれに起因して、回転テーブル12の外側では回転テーブル12の内側から外側に至る中央部に比べると、過剰な量のプラズマエネルギーがウエハWに供給される。
【0040】
図8を参照し、上記のウエハWの形状とプラズマ形成領域R3の形状とのずれの影響についてさらに説明する。この
図8でもプラズマ形成領域R3に斜線を付して示しており、プラズマ形成領域R3内にウエハWが収まった状態を示している。そして、上記の仮想線64A〜64Gについて、プラズマ形成領域R3に含まれるがウエハWに重ならない箇所を、実線による比較的太い線で示している。この太線の長さの合計値が大きいほど、その仮想線が引かれた回転テーブル12の径方向における位置において、回転テーブル12の径方向におけるエネルギーを受ける領域、即ちウエハWの面積に対してエネルギーを与える領域の面積が過剰になっている。またこれ以降、ウエハWにおいて回転テーブル12の内側の端部から外側の端部に至り、当該ウエハWの直径に沿う直線を軸Aとし、
図8では当該軸Aを実線で示している。
【0041】
図9のグラフは、上記の各仮想線における太線の長さの合計値に相当するデータを示している。グラフの縦軸は、仮想線毎の太線の長さの合計値に対応する値を示す。より詳しく述べると、この合計値に対応する値とは、当該長さの合計値が大きいほど値が小さくなるものとし、且つ仮想線64Cの太線の長さの合計値を10としたときの相対値である。既述のように太線を設定していることから、この縦軸の値は、ウエハWに対して過剰に供給されているプラズマのエネルギーの量に対応すると言える。またグラフの横軸は、ウエハWの軸Aにおける位置について、ウエハWの中心を0mmとしたときの当該中心から離れた距離として示しており(単位:mm)、回転テーブル12の内側寄りの位置については+の符号を、回転テーブル12の外側寄りの位置については−の符号を夫々付している。仮想線が軸Aと重なる位置を、グラフの横軸について当該仮想線についての太線の合計値を表す位置としている。
【0042】
図9では、グラフ中に各太線の合計値に対応する値をプロットし、各プロット(点)を線で結んで示している。またこのグラフ中において、当該グラフの横軸に沿った細い補助線を示している。そして、この補助線からグラフの縦軸に沿って各プロットに向かうように太い補助線を付しているが、上記のように64A〜64Gの太線の合計値に対応するようにプロットを行っているため、この縦軸に沿った太い補助線の長さは、
図8で示した64A〜64Gの各太線の長さの合計値に対応する。そして、上記のように各プロットを結んで取得されるグラフの波形は、後述の評価試験で示す、各部の開口率が概ね均一なスロット板35を用いたときのウエハWに成膜される膜の膜厚分布に概ね等しい。具体的に述べると、
図9では回転テーブル12の径方向に沿って見たときに、ウエハWの両端部は中央部に比べてプラズマにより過剰にエネルギーが供給されており、回転テーブル12の外側寄りの端部の方が、回転テーブル12の内側寄りの端部よりも過剰にプラズマエネルギーが供給されていることを示している。一方、評価試験では、軸Aに沿って膜厚を見たときに、軸Aにおける両端部の膜厚は中央部の膜厚に比べて小さく、回転テーブル12の外側寄りの端部の膜厚の方が、回転テーブル12の内側寄りの端部の膜厚よりも小さい膜厚分布となっていた。つまり、ウエハWに対して過剰に供給されるプラズマのエネルギーとウエハWの膜厚とは互いに関連しており、過剰にプラズマエネルギーが供給されるほど、膜厚が小さくなる。
【0043】
そこで、回転テーブル12の内側から外側に至る各領域で、ウエハWの面積の大きさに対して供給されるプラズマエネルギーが適切にするために、上記のスロット板35においては回転テーブル12の径方向に沿った領域毎に単位面積あたりの開口率が異なるようにスロット孔38が形成されている。
図10にそのように構成されたスロット板35の一例の平面図を示している。スロット板35において、上記の環状分割領域63A〜63Fに重なる領域をスロット板分割領域66A〜66Fとしている。つまり、
図10に示すように公転するウエハWはスロット板分割領域66A〜66Fの下方を通過する。そして、既述のようにスロット板35においてはスロット孔38の組が同心円に沿って配置されるが、スロット板分割領域66毎に形成されるスロット孔38の大きさが互いに異なっている。
【0044】
そのようにスロット孔38が構成されていることにより、単位面積あたりの開口率としては、スロット板分割領域66C>スロット板分割領域66B>スロット板分割領域66Aであり、スロット板分割領域66C>スロット板分割領域66D>スロット板分割領域66E>スロット板分割領域66Fであり、スロット板分割領域66Fが最も小さくなるようにしている。つまり、各スロット板分割領域66A〜66F内の任意の位置について、例えば単位面積として回転テーブル12の回転方向に沿った円弧状で、同じ形状且つ同じ大きさの領域A1を設定した場合に、領域A1内のスロット孔38の面積の合計/領域A1の面積が、スロット板分割領域66A〜66F間において既述の関係になるということである。より具体的な一例を挙げると、ウエハWの中央部が通過する領域に対向するスロット板分割領域66Cにおける単位面積あたりの開口率を100%としたときに、スロット板分割領域66D及びスロット板分割領域66Bについては90%、スロット板分割領域66A、66Eについては70%、スロット板分割領域66Fについては40%となるように、当該単位面積あたりの開口率を設定する。なお、
図10は各領域のスロット孔38の大きさの概要を示すものであり、正確にこのような記載の開口率を有するようには描かれていない。
【0045】
つまりアンテナ31において、ウエハWの通過領域の外縁部に対向する領域であるスロット板分割領域66Fにおける単位面積あたりのスロット孔38の開口率は、このスロット板分割領域66Fから回転テーブル12の内寄りに外れた領域であるスロット板分割領域66E〜66Cにおける単位面積あたりのスロット孔38の開口率よりも小さく設定されている。そして、アンテナ31において、ウエハWの通過領域の内縁部に対向する領域であるスロット板分割領域66Aにおける単位面積あたりのスロット孔38の開口率は、このスロット板分割領域66Aから回転テーブル12の内寄りに外れた領域であるスロット板分割領域66B、66Cにおける単位面積あたりのスロット孔38の開口率よりも小さく設定されている。
【0046】
このように
図9のグラフで示した過剰なエネルギーの分布に対応するように、スロット板分割領域66A〜66Fの単位面積あたりの開口率を設定する。
図9のグラフより、スロット分割領域66A〜66Fで均一なプラズマエネルギーが放射されるとした場合には、特に環状分割領域63Fにおいて当該環状分割領域63Fを通過するウエハWの面積に対して供給されるプラズマエネルギーが過剰になり、当該グラフに示すように、ウエハWの外周側の端部ではグラフの縦軸の値が4以下となる。そこで、スロット板分割領域66Fについては、上記のようにウエハWの中央部が通過する領域に対応するスロット板分割領域66Cにおける単位面積あたりの開口率を100%としたときに、例えば40%以下にすることが好ましい。プラズマ形成ユニット3Cのスロット板35について説明したが、プラズマ形成ユニット3A、3Bの各スロット板35についても、このプラズマ形成ユニット3Cのスロット板35と同様に構成されている。
【0047】
以下、成膜装置1による処理について詳しく説明する。先ず、基板搬送機構によって6枚のウエハWを、回転テーブル12の各凹部14に搬送する。そして、真空容器11の搬送口16に設けられるゲートバルブGを閉鎖して、当該真空容器11内を気密にする。凹部14に載置されたウエハWは、ヒーター15によって所定の温度に加熱される。そして、第1〜第3の排気口47、48、49からの排気によって、真空容器11内を所定の圧力の真空雰囲気にすると共に、回転テーブル12が所定の回転数で回転する。
【0048】
そして、ガスインジェクター51、52からH
2ガスがプラズマ形成領域R1、R2に夫々供給され、ガスインジェクター53からNH
3ガスがプラズマ形成領域R3に供給される。このように各ガスが供給される一方で、マイクロ波発生器33からマイクロ波が供給され、このマイクロ波によってプラズマ形成領域R1、R2にH
2ガスのプラズマが、プラズマ形成領域R3にNH
3ガスのプラズマが夫々形成される。また、ガス給排気ユニット2においてはガス吐出口21からDCSガス、パージガス吐出口23からArガスが夫々吐出されると共に、排気口22から排気が行われる。
図11は真空容器11内において、このように各部からガスが供給された状態を示しており、各ガスの流れを矢印で表示している。
【0049】
回転テーブル12の回転によってウエハWが吸着領域R0に位置すると、DCSガスが当該ウエハWの表面に供給されて吸着される。引き続き回転テーブル12が回転して、ウエハWがプラズマ形成領域R1へ移動する。このとき、既述のようにプラズマ形成ユニット3Aのスロット板35が形成されているため、プラズマ形成領域R1における回転テーブル12の径方向に沿って見たときのH2ガスのプラズマの強度は、
図9で説明したグラフに対応した強度となっている。具体的に述べると、プラズマ形成領域R1を回転テーブル12の径方向に見て、回転テーブル12の内側寄りの端部のプラズマ強度、回転テーブル12の外側寄りの端部のプラズマ強度は、当該径方向の中央部のプラズマ強度よりも小さい。特に、回転テーブル12の外側寄りの端部のプラズマ強度は最も小さくなっている。このようにプラズマの強度の分布が形成されることで、ウエハWの軸Aに沿って見たときに、供給されるプラズマエネルギーの積分値が揃い、プラズマ形成領域R1を通過するまでにウエハWはその面内で均一性高くプラズマ処理されて、付着したDCSによる層の改質が行われる。
【0050】
続いて、ウエハWがプラズマ形成領域R2へ移動し、プラズマ形成領域R1に位置するときと同様に面内で均一性高くプラズマ処理され、引き続き改質が行われる。その後、ウエハWがプラズマ形成領域R3へ移動し、NH3ガスによるプラズマ処理される。このプラズマ形成領域R3においても、プラズマ形成領域R1に位置するときと同様に面内で均一性高くプラズマ処理されることにより、NH3がウエハWの面内で均一性高く、ウエハWに吸着されたDCSガスと反応して反応生成物であるSiNの薄膜が形成される。回転テーブル12の回転が続けられ、ウエハWが吸着領域R0、プラズマ形成領域R1、プラズマ形成領域R2、プラズマ形成領域R3を順に繰り返し移動し、SiNの薄層が堆積することでSiN膜の膜厚が上昇すると共に改質が進行する。各プラズマ形成領域R1〜R3にて既述のように均一性高くプラズマ処理が行われることで、ウエハWの面内各部で膜厚が互いに揃った状態で、当該膜厚が上昇する。そしてSiN膜の膜厚が所望の大きさとなると、ガス給排気ユニット2における各ガスの吐出及び排気が停止し、プラズマ形成領域R1〜R3へのガスの供給及びマイクロ波の供給が各々停止する。然る後、ウエハWは、基板搬送機構によって成膜装置1から搬出される。
【0051】
この成膜装置1によれば、プラズマ形成ユニット3A〜3Cにおけるマイクロ波を放射するアンテナ31について、回転テーブル12の径方向に沿って見たときにスロット孔38による単位面積あたりの開口率が異なっている。そのように開口率が異なることで、回転テーブル12の中心部側の端部の単位面積あたりのプラズマ強度及び回転テーブル12の周縁部側の端部の単位面積あたりのプラズマ強度は、回転テーブル12の中心部における単位面積あたりのプラズマ強度よりも小さくなるようにしている。それによって、ウエハWの面内に均一性高いプラズマ処理を行うことができ、ウエハWの面内で形成される膜厚の均一性を高くすることができる。
【0052】
ところで、
図10に示すスロット板35ではスロット孔38の大きさを調整することで、既述のようにスロット板分割領域66A〜66Fの単位面積あたりの開口率を調整しているが、スロット孔38の数を調整することで当該単位面積あたりの開口率を調整してもよい。例えば
図12では、互いに同じ大きさのスロット孔38が形成されたスロット板35を示している。スロット板分割領域66A、66Eについてはスロット孔38の数が比較的少ないことにより、単位面積あたりの開口率は、これらスロット板分割領域66A、66Eに比べてスロット板分割領域66B〜66Eが大きい。そのようにスロット孔38が形成されることで、ウエハWに供給されるプラズマのエネルギーの均一性が高くなるようにしている。
【0053】
なお、スロット板分割領域66B〜66Fの単位面積あたりの開口率が均一で、スロット板分割領域66Aの単位面積あたりの開口率のみが当該スロット板分割領域66B〜66Fの単位面積あたりの開口率よりも小さくなるようにスロット板35を形成してもよい。また、スロット板分割領域66A〜66Eの単位面積あたりの開口率が均一で、スロット板分割領域66Fの単位面積あたりの開口率のみが当該スロット板分割領域66A〜66Eの単位面積あたりの開口率よりも小さくなるようにスロット板35を形成してもよい。つまり、ウエハWにおいて回転テーブル12の径方向に見た内側の端部、外側の端部のいずれか一方に供給されるプラズマエネルギーが抑制されるようにスロット板35を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。なお、スロット孔38の大きさを調整するにあたり、既述の例では各スロット孔38は相似形としているがそのように相似形とはせず、スロット孔38の開口幅を互いに変えたり、スロット孔38の長さを互いに変えたりしてもよい。また、同じ組をなすスロット孔38同士が、互いに異なる大きさとされてもよい。
【0054】
ところで、プラズマ形成領域R1〜R3のうち1つのみを、既述したスロット板35を用いて処理を行うようにしてもよい。その場合においても、H
2ガスによる改質またはNH
3ガスによる窒化が均一性高く行われることで、膜厚の均一性を高くすることができる。また、既述のスロット板35が適用されるプラズマ形成ユニットとしては改質ガス、成膜用の反応ガスをプラズマ化するものには限られず、例えばウエハWの表面に形成された膜をエッチングするために回転テーブル12上に供給されたエッチングガスをプラズマ化するものであってもよい。また、ALDによって成膜を行う装置に適用されることには限られず、CVD(Chemical Vapor Deposition)によって成膜を行う装置に適用してもよい。なお本発明は、既述した各実施の形態には限られず、各実施の形態は適宜変更したり、組み合わせたりすることができる。
【0055】
・評価試験
以下、本発明に関連して行われた評価試験について説明する。
評価試験1
この評価試験1は、
図9で説明した評価試験である。ガス給排気ユニット2において、回転テーブル12の外周側の区域24Cにおけるガス吐出口21の数を変更して成膜処理を行い、ウエハWの軸A上における膜厚を測定した。既述したように、この評価試験で用いる各プラズマ形成ユニット3A〜3Cのスロット板35における面内各部の単位面積あたりの開口率は概ね均一である。評価試験1−1としてはガス吐出口21の数を21個、評価試験1−2としてはガス吐出口21の数を256個、評価試験1−3としてはガス吐出口21の数を45個とした。
【0056】
図13のグラフは、上記の評価試験1の結果を示したものである。
図13のグラフについて、横軸は
図9のグラフの横軸と同じくウエハWの軸A上の位置(単位:mm)を示し、グラフの縦軸は膜厚(単位:Å)を示している。評価試験1−1の結果については三角のプロットで、評価試験1−2の結果については四角のプロットで、評価試験1−3の結果については丸のプロットで夫々示している。このグラフに示すように、評価試験1−1、1−2、1−3ともに、回転テーブル12の内側の端部、外側の端部における膜厚は比較的小さくなっている。そして内側の端部の膜厚と外側の端部の膜厚とでは、外側の端部における膜厚の方が小さい。このように評価試験1−1〜1−3の膜厚の分布は、
図9のグラフで説明した過剰なプラズマエネルギーの分布と対応している。
【0057】
・評価試験2
先ず、当該評価試験2で用いたALDによりウエハWにSiO
2(酸化シリコン)膜を形成する成膜装置7について、成膜装置1との差異点を中心に説明する。
図14はその成膜装置7の概略平面図を示したものである。この成膜装置7について成膜装置1との差異点を中心に説明すると、回転テーブル12の回転方向に互いに異なる位置にガスインジェクター71、72からシリコンを含む原料ガスと、酸化ガスとが夫々供給される。ガスインジェクター71、72はガスインジェクター51〜53と同様の構成であるが、下方にガスを吐出するように吐出口50は下方に向けられている。これらの原料ガスが供給される原料ガス供給領域と酸化ガスが供給される酸化領域との間には、互いに雰囲気を分離する分離ガスが供給される図示しない分離領域が設けられている。また、この回転テーブル12上には図示しないガスインジェクターにより、膜の改質を行うための例えばアルゴンと酸素とからなる混合ガスである改質用ガスが供給され、且つ当該改質用ガスがプラズマ化されるプラズマ形成領域R4が設けられる。従って、公転によりウエハWは原料ガス供給領域、酸化領域、プラズマ形成領域R4を順番に通過することで成膜処理及び改質処理が行われる。
【0058】
成膜装置7の天板には、この改質領域の上方に石英からなる窓73が設けられ、この窓73上には接地された金属板74が設けられる。金属板74の上方には図示しない絶縁体を介して水平軸回りに巻回されたコイル75が設けられ、高周波電源76から当該コイル75に例えば周波数が13.56MHzの高周波が供給される。上記の金属板74には、コイル75の巻回方向に沿って間隔をおいて、平面視コイル75と交差する細長のスリット77が多数設けられている。また、金属板74にはスリット77により囲まれ、コイル75の中心部の開口領域と重なるように開口部78を備えている。当該金属板74はファラデーシールドとして構成されており、高周波が供給されたコイル75の周囲に発生する電磁波のうちの電界成分を減衰させて、磁界成分と共にスリット77を介して窓73を介して回転テーブル12上に放射する役割を有する。そのように供給された高周波により、改質ガスの誘導結合によるプラズマが形成される。つまり、スリット77は電磁波を回転テーブル12に放射する放射孔をなす。
【0059】
上記の成膜装置7でSiO
2膜を形成し、既述のウエハWの軸Aにおける膜厚を測定した。これを評価試験2−1とする。また、金属板74のスリット77の一部を金属からなるテープを貼付して塞いだことを除いては、評価試験2−1と同様の条件でSiO
2膜を成膜し、ウエハWの軸Aにおける膜厚を測定した。これを評価試験2−2とする。なお、
図14では金属板74において、そのようにテープを貼付した箇所を鎖線で囲って示している。
【0060】
図15は、評価試験2の結果を示すグラフである。グラフの横軸はウエハWの軸Aにおける位置(単位:mm)を示しているが、
図9のグラフとは異なり、回転テーブル12の内側の端部を0mmとして示している。グラフの縦軸は膜厚(単位:Å)を示している。評価試験2−1では、50mm及び250mmにおける位置の膜厚が他の位置の膜厚に比べて小さい。しかし、評価試験2−2では250mmの位置における膜厚は、100mm〜200mmにおける膜厚よりも大きい。また50mmの位置における膜厚の差と、他の位置における膜厚の差とが、試験2−1に比べて評価試験2−2では小さい。ウエハWにおけるこれら50mmの位置、250mmの位置は、上記のテープで塞がれた位置に対応する。
【0061】
つまり、この評価試験2からは、ガスをプラズマ化するための電磁波を放射する放射孔を塞ぐことによって、対応する位置の膜厚が小さくなることを抑制することができることが確認された。この結果から、マイクロ波をスロット孔38から放射する上記の成膜装置1のアンテナ31においても、スロット孔38の大きさを調整することで、対応する位置に成膜される膜厚を調整することができることが分かる。つまり、この評価試験2からは本発明の効果が確認された。なお、発明の実施の形態で説明したアンテナ31の代りに、この評価試験2で説明した窓73、コイル75、金属板74をアンテナとして成膜装置に設け、金属板74の面内におけるスリット77の開口率を調整してウエハWの面内に供給されるプラズマ強度を調整する場合も本発明の権利範囲に含まれる。従って、処理容器に供給される電磁波としてはマイクロ波には限られない。