(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
マスフローコントローラにより流量調整されたキャリアガスを原料容器に供給し、原料容器内の固体または液体である原料を気化させ、気化された原料を前記キャリアガスと共に、マスフローメータが設けられた原料ガス供給路を介して基板処理部に供給して基板を処理する基板処理方法において、
前記キャリアガスを前記原料容器に供給し、前記マスフローコントローラの流量設定値及び前記マスフローメータの測定値に基づいて、気化原料の流量及びキャリアガスの流量に関する比率である第1の補正係数を求める工程と、
前記第1の補正係数を用いて、前記気化原料の流量が目標値となるように前記マスフローコントローラの流量設定値を調整して基板を処理する工程と、
前記第1の補正係数を求める工程の後、前記キャリアガスを前記原料容器に供給し、前記マスフローコントローラの流量設定値及び前記マスフローメータの測定値に基づいて、前記気化原料の流量及び前記キャリアガスの流量に関する比率である第2の補正係数を求める工程と、
前記第2の補正係数を用いて、前記気化原料の流量が目標値となるように前記マスフローコントローラの流量設定値を調整して基板を処理する工程と、を含むことを特徴とする基板処理方法。
前記気化原料の流量及び前記キャリアガスの流量に関する前記比率は、前記マスフローコントローラの流量設定値を互いに異なる値に設定して各流量設定値ごとに取得した前記マスフローメータの測定値と前記流量設定値とに基づいて、前記キャリアガスの流量の増減量と前記気化原料の流量の増減量との相関を表す比率であることを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
前記第1の補正係数を求める工程及び前記第2の補正係数を求める工程の各々は、互いに前後する基板の処理時における前記マスフローコントローラの流量設定値及び前記マスフローメータの測定値に基づいて行われ、
前記第2の補正係数を用いて基板を処理する工程は、前記前後する基板に続く基板を処理する工程であることを特徴とする請求項2に記載の基板処理方法。
前記気化原料の流量及び前記キャリアガスの流量に関する前記比率は、前記キャリアガスの流量と前記気化原料の流量との相関を表す比率であることを特徴とする請求項1記載の基板処理方法。
前記第1の補正係数を求める工程及び前記第2の補正係数を求める工程の各々は、基板の処理時における前記マスフローコントローラの流量設定値及び前記マスフローメータの測定値に基づいて行われることを特徴とする請求項4に記載の基板処理方法。
前記第2の補正係数を求める工程の後、前記キャリアガスを前記原料容器に供給し、前記マスフローコントローラの流量設定値及び前記マスフローメータの測定値に基づいて、前記気化原料の流量及び前記キャリアガスの流量に関する比率である第3の補正係数を求める工程と、
前記第3の補正係数を用いて、前記気化原料の流量が目標値となるようにマスフローコントローラの流量設定値を調整した状態で基板を処理する工程と、を含み、
前記第2の補正係数を求める工程と前記第3の補正係数を求める工程との間に処理される基板の枚数は、前記第1の補正係数を求める工程と第2の補正係数を求める工程との間に処理される基板の枚数よりも多いことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
前記第1の補正係数または前記第2の補正係数と、第1の許容範囲と比較し、比較結果に基づいて、前記原料容器中の原料の残存量の不足を検出する工程を含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
マスフローコントローラにより流量調整されたキャリアガスを原料容器に供給し、原料容器内の固体または液体である原料を気化させ、気化された原料を前記キャリアガスと共に、マスフローメータが設けられた原料ガス供給路を介して基板処理部に供給して基板を処理する基板処理装置に用いられるコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の基板処理方法を実行するようにステップ群が組まれていることを特徴とする記憶媒体。
マスフローコントローラにより流量調整されたキャリアガスを原料容器に供給し、原料容器内の固体または液体である原料を気化させ、気化された原料を前記キャリアガスと共に、マスフローメータが設けられた原料ガス供給路を介して基板処理部に供給する原料ガス供給装置において、
前記キャリアガスを前記原料容器に供給し、前記マスフローコントローラの流量設定値及び前記マスフローメータの測定値に基づいて、気化原料の流量及びキャリアガスの流量に関する比率である第1の補正係数を求めるステップと、前記第1の補正係数を用いて、前記気化原料の流量が目標値となるように前記マスフローコントローラの流量設定値を調整して基板を処理するステップと、前記第1の補正係数を求めるステップの後、前記キャリアガスを前記原料容器に供給し、前記マスフローコントローラの流量設定値及び前記マスフローメータの測定値に基づいて、前記気化原料の流量及び前記キャリアガスの流量に関する比率である第2の補正係数を求めるステップと、前記第2の補正係数を用いて、前記気化原料の流量が目標値となるように前記マスフローコントローラの流量設定値を調整して基板を処理するステップとを実行する制御部を含むことを特徴とする原料ガス供給装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の原料ガス供給装置を成膜装置に適用した構成例について説明する。
図1に示すように成膜装置は、基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)100に対してALD法による成膜処理を行なうための基板処理部である成膜処理部40を備え、この成膜処理部40に原料ガスを供給するため原料ガス供給装置で構成された原料ガス供給部10を備えている。なお明細書中においては、キャリアガスと、キャリアガスと共に流れる気化した(昇華した)気化原料と、を併せたガスを原料ガスとする。
【0013】
原料ガス供給部10は、原料のWCl
6を収容した原料容器14を備えている。原料容器14は、常温では固体のWCl
6を収容した容器であり、抵抗発熱体を備えたジャケット状の加熱部13により覆われている。この原料容器14は、温度検出部15にて検出した原料容器14の温度に基づいて、給電部16から供給される給電量を増減することにより、原料容器14内の温度を調節できるように構成されている。装置の運転開始時の加熱部13の設定温度は、固体原料が昇華し、且つWCl
6が分解しない範囲の温度、例えば160℃に設定される。
【0014】
原料容器14内における固体原料の上方側の気相部には、キャリアガス供給路22の下流端部と、原料ガス供給路12の上流端部と、が挿入されている。キャリアガス供給路22の上流端には、キャリアガス、例えばN
2ガスの供給源であるキャリアガス供給源21が設けられ、キャリアガス供給路22には、上流側から第1のマスフローコントローラ(MFC)2、バルブV3、バルブV2がこの順序で介設されている。
【0015】
一方、原料ガス供給路12には、上流側からバルブV4、バルブV5、流量測定部であるマスフローメータ(MFM)1及びバルブV1が設けられている。図中8は原料ガス供給路12から供給されるガスの圧力を測定するための圧力計である。原料ガス供給路12の下流端付近は、後述の反応ガスや置換ガスも流れることから、ガス供給路45として表示している。また原料ガス供給路12におけるMFM1の上流側には、希釈ガスを供給する希釈ガス供給路32の下流側端部が合流している。希釈ガス供給路32の上流側端部には、希釈ガス、例えばN
2ガスの供給源である希釈ガス供給源31が設けられている。希釈ガス供給路32には、上流側から第2のマスフローコントローラ(MFC)3と、バルブV6と、が介設されている。キャリアガス供給路22におけるバルブV2とバルブV3との間と、原料ガス供給路12におけるバルブV4とバルブV5との間は、バルブV7を備えたバイパス流路7にて接続されている。バルブV2、V4及びV7は、切り替え機構に相当する。
【0016】
続いて成膜処理部40について説明する。成膜処理部40は、例えば真空容器41内に、ウエハ100を水平保持すると共に、不図示のヒータを備えた載置台42と、原料ガス等を真空容器41内に導入するガス導入部43と、を備えている。ガス導入部43には、ガス供給路45が接続され、原料ガス供給部10から供給されるガスが、ガス導入部43を介して、真空容器41内に供給されるように構成されている。更に真空容器41には、排気管46を介して、真空排気部44が接続されている。排気管46には、成膜処理部40内の圧力を調整する圧力調整部94を構成する圧力調整バルブ47と、バルブ48とが設けられている。
【0017】
またガス供給路45には、原料ガスと反応する反応ガスを供給する反応ガス供給管50及び置換ガスを供給する置換ガス供給管56が合流されている。反応ガス供給管50の他端側は、反応ガス例えば水素(H
2)ガスの供給源52に接続されたH
2ガス供給管54と、不活性ガス例えば窒素(N
2)ガスの供給源53に接続された不活性ガス供給管51とに分岐されている。また置換ガス供給管56の他端側は置換ガス、例えばN
2ガスの供給源55に接続されている。図中のV50、V51、V54及びV56は、夫々反応ガス供給管50、不活性ガス供給管51、H
2ガス供給管54及び置換ガス供給管56に設けられたバルブである。
【0018】
後述するように、成膜処理部40にて行なわれる金属膜の一種であるW(タングステン)膜の成膜では、固体原料であるWCl
6を気化させた気化原料含む原料ガスと、反応ガスであるH
2ガスとが交互に繰り返してウエハ100に供給されると共に、これら原料ガス及び反応ガスの供給の間には、真空容器41内の雰囲気を置換するために置換ガスが供給される。このように原料ガスは、成膜処理部40に供給期間、休止期間を交互に繰り返して断続的に供給され、この原料ガスの供給制御はバルブV1をオン、オフ制御することにより実行される。このバルブV1は、後述する制御部9により開閉制御されるように構成されおり、「オン」とは、バルブV1を開いた状態、「オフ」とはバルブV1を閉じた状態である。
【0019】
原料ガス供給部10には、制御部9が設けられている。
図2に示すように制御部9は、CPU91、プログラム格納部92、メモリ93及びウエハ100対して行われる成膜処理の処理レシピが記憶される処理レシピ記憶部95を備えている。なお図中90はバスである。また制御部9は、各バルブ群V1〜V7、MFM1、MFC2、MFC3、及び成膜処理部40に接続された圧力調整部94に接続されている。また制御部9は、給電部16に接続されており、給電部16による原料容器14の加熱部13の加熱温度を調整できるように構成されている。さらに制御部9は上位コンピュータ99に接続されている。上位コンピュータ99からは、例えば成膜装置に搬入されるウエハ100のロットの成膜処理のレシピが送られて、処理レシピ記憶部95に記憶される。
【0020】
処理レシピは、各ロットごとに設定されたウエハ100の成膜処理の手順が処理条件と共に作成された情報である。処理条件としては、プロセス圧力、ALD法における成膜処理部40に供給されるガスの供給、休止のタイミング及び原料ガスの流量などが挙げられる。ALD法について簡単に説明すると、まず原料ガスであるWCl
6ガスを例えば1秒間供給してバルブV1を閉じ、ウエハ100表面にWCl
6を吸着させる。次いで置換ガス(N
2ガス)を真空容器41に供給して、真空容器41内を置換する。続いて反応ガス(H
2ガス)を希釈ガス(N
2ガス)と共に真空容器41に供給すると加水分解及び脱塩化反応によりW(タングステン)膜の原子膜がウエハ100の表面に形成される。この後、置換ガスを真空容器41に供給して、真空容器41を置換する。こうして真空容器41内に、WCl
6を含む原料ガス→置換ガス→反応ガス→置換ガスを供給するサイクルを複数回繰り返すことにより、W膜の成膜を行う。
【0021】
ALD法は、原料ガス、置換ガス、反応ガス、置換ガスをこの順番で供給するサイクルを複数回実行するものであることから、このサイクルを規定したレシピにより、オン信号、オフ信号のタイミングが決定される。例えば原料ガスの給断はバルブV1により行われるためバルブV1のオン信号からオフ信号までの期間が原料ガスの供給時間であり、バルブV1のオフ信号からオン信号までの期間が、原料ガスの休止期間である。MFM1、MFC2及びMFC3において気化原料の流量の測定値を求めるにあたって、ALD法を行う場合、原料ガスが間欠的に供給され、その供給時間が短いので、流量測定値が立ち上がって安定する前に立ち下がるため不安定になるおそれがある。このためMFM1、MFC2及びMFC3の各測定値は、この例では後で詳述するようにバルブV1のオン、オフの1周期分の流量の測定値の積分値を1周期の時間で除算した値を測定出力値(指示値)として用いて算出している。
【0022】
メモリ93には、キャリアガスの流量の増減量と、キャリアガスと共に原料ガス供給路12に流れ込む気化原料の流量の増減量と、の関係を示す情報、例えば関係式が記憶される。この関係式は、例えば次の(1)式のように一次式で近似される。
キャリアガスの流量の増減量=補正係数K
n×気化原料の流量の増減量・・・(1)
またメモリ93には、補正係数K
nを算出するための関係式が記憶されている。関係式は、n枚目のウエハ100の処理時における気化原料の流量の測定値をPr
n、n枚目のウエハ100の処理時におけるキャリアガスの流量の測定値をC
nとすると、例えば次の(2)式のような次式で近似される。
補正係数K
n=(C
n−C
n−1)/(Pr
n−Pr
n−1)・・・(2)
式(2)は、(C
n−C
n−1)をΔC
n、(Pr
n−Pr
n−1)をΔPr
nとすると、ΔC
n=補正係数K
n×ΔPr
nであり、横軸をΔPr
n、縦軸をΔC
nとすると、
図3中のグラフ(I)のような傾きの補正係数K
nの一次式となる。
この実施の形態においては、キャリアガスの流量の増減量と、気化原料の流量の増減量と、により算出される補正係数K
nが気化原料の流量と、キャリアガスの流量と、に関する比率に相当する。
そしてメモリ93には、C
n、C
n−1、Pr
n及びPr
n−1を書き込めるように構成されたデータテーブルが記憶されており、後述するようにウエハ100の処理を行うにしたがって、データテーブルを書き換えることができるように構成されている。
【0023】
またメモリ93には、原料容器14に充填されている原料が残りわずかとなったことを判定するための補正係数K
nの第1の補正係数の許容範囲を設定する第1の閾値と、原料容器14内の原料の量が減少し、原料の気化量が少なくなったことを判定するための補正係数K
nの第2の補正係数の許容範囲を設定する第2の閾値とが記憶されている。
図3を参照して説明すると、原料容器14の加熱温度を一定とすると、原料の残量が少なくなると、原料の気化量が少なくなるため、一定量の原料を供給しようとしたときに、より多くのキャリアガスを流す必要がある。
【0024】
そのため
図3のグラフ(I)のときよりも原料の残量が少なくなると、傾き補正係数K
nが急な勾配になる。またグラフ(I)のときよりも原料の残量が多い場合には、原料の気化量が多くなるため、傾き補正係数K
nが緩やかな勾配になる。従って
図3のグラフの傾きにより、即ち補正係数K
nの値が大きくなることにより原料の残量が少なくなったことを確認でき、原料容器14の交換の時期を判断できる。そこで原料容器14内の原料が残りわずかとなったとき(
図3中グラフ(II))の補正係数K
nを第1の閾値として設定する。
【0025】
また原料容器14の交換の時期に到達していなくとも、原料の気化量が少なくなってくると、キャリアガスの単位流量あたりの気化原料の流量が少なくなり、気化原料の流量を変化させるために必要なキャリアガスの流量が大きくなってしまう。またキャリアガスの流量の調整範囲を外れるような調整はできないことから補正係数K
nがキャリアガスの流量の調整ができる範囲、例えばキャリアガスの流量0sccm〜1400sccmの流量の範囲で調整可能な補正係数K
nの値としておく必要がある。そこで原料容器14内の原料が少なくなったとき(
図3中グラフ(III))の補正係数K
nを原料容器14の加熱温度を上昇させて、原料の気化量を増加させる第2の閾値として設定する。
【0026】
さらにメモリ93には補正係数K
nが第2の閾値を超えたときに原料容器14の温度上昇量を算出するための関係式が記憶されている。
図4はこのような関係式の一例を模式的示す特性図であり、横軸は、補正係数K
nの変動量を示し、縦軸は、温度の変化量を示している。そして補正係数K
nが第2の閾値を超えたときには、十分に原料の気化量があるとき、例えば原料容器14に充填された原料が最大量であって、原料容器14の加熱温度が170℃の時の補正係数K
nの値と、n枚目のウエハ100の処理時に測定された補正係数K
nの値と、の差分値から原料容器14の温度の変化量が算出され、原料容器14の加熱部に送信されるように構成されている。十分に原料の気化量があるときの補正係数K
nの値は、即ち基準となる補正係数K
Aは、例えば原料が最大量に充填されているときに原料容器14の加熱温度を170℃に設定した場合におけるキャリアガスの増減量と、帰化原料の増減量との相関関係から設定される補正係数であり、メモリ93に記憶されている。
【0027】
プログラム格納部92に格納されているプログラムには、成膜装置における原料ガス供給部10の動作を実行するためのステップ群が組まれている。なおプログラムという用語は、プロセスレシピなどのソフトウエアも含む意味として使用している。ステップ群の中には、MFM1、MFC2及びMFC3の各流量の測定出力を供給時間の間積分し、その積分値を供給期間の流量値として取り扱って演算するステップが含まれる。なお積分の演算処理については、時定数回路を用いたハード構成を用いてもよい。プログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、コンピュータにインストールされる。
【0028】
本発明の実施の形態に係る成膜装置の作用について、
図5に示すフローチャートを用いて説明する。ここでは1ロットには、2枚以上のウエハ100、例えば25枚のウエハ100が含まれるものとする。
まず例えばステップS1に示すようにダミーレシピを実行し、ロットの先頭のウエハ100の処理時のキャリアガスの流量を決定するための第1の補正係数に相当する補正係数K
0を取得する。
【0029】
本実施の形態においては、ダミーレシピは、原料容器14を迂回させた状態で、処理レシピと同じタイミングでバルブの開閉を行い、成膜処理部40にキャリアガスを供給する第1のダミー処理と、原料容器14にキャリアガスを供給した状態で、処理レシピと同じタイミングでバルブの開閉を行い、成膜処理部40にキャリアガスを供給する第2のダミー処理を行う。ここでは、ダミーレシピにおいて、第1のダミー処理を1回行った後、第2のダミー処理を2回繰り返す。
【0030】
ダミーレシピは、ウエハ100を成膜処理部に搬送しない状態で実行され、まずMFC2及びMFC3の設定値を、処理レシピに書き込まれている、原料ガスの流量の目標値に応じて、予め決められたキャリアガスの流量値及び希釈ガスの流量値に設定して行われる。
なおダミーレシピは、成膜処理部40に例えばダミーウエハを搬入した状態で行うようにしてもよい。このMFC2の設定値は、例えば原料容器14に固体原料が最大まで補充された状態において、処理レシピの設定温度、例えば170℃で、原料容器14を加熱したとするときの、予め設定された基準となる補正係数K
Aと、処理レシピにおける気化原料の流量の目標値に基づいて決定される(MFC2の設定値=補正係数K
A×気化原料の流量の目標値)。
【0031】
希釈ガスの流量の設定については、気化原料の流量が小さく、例えば希釈ガスにより希釈された原料ガスの総流量をキャリアガス及び希釈ガスの合計流量として決めている場合には、総流量からキャリアガスの流量設定値を差し引いた値として決められる。また気化原料の流量も総流量に含める場合には、原料の供給量の目標値は、例えば単位時間当たりの重量として取り扱われることから、プロセス圧力と原料の供給量の目標値とに基づいて、総流量と原料を供給するためのキャリアガスの流量を求める。従って、総流量から原料の供給量と、キャリアガスの流量と、の合計値を差し引いた値が希釈ガスの流量の設定値となる。
更に処理レシピにおける成膜処理部40に供給される原料ガスの供給、休止の周期と同じスケジュールでバルブV1の開閉を行うように設定され、ダミーレシピにおける成膜処理部40内の圧力は、処理レシピにより決められた圧力に設定されて作業が行われる。
【0032】
ダミーレシピの作業について説明する。先ず第1のダミー処理においては、バルブV3、V5、V6、V7を開き、時刻t0以降にて、処理レシピにおけるバルブV1の開閉のタイミングと同じ周期でバルブV1の開閉を行う。ここでは、例えば時刻t0から時刻t100までの間にバルブV1を1秒間開き、1秒間閉じる動作を100回くり返す。なお真空容器41内は、既に真空排気されている。これにより、キャリアガス供給源21から、キャリアガスがMFC2の設定値に対応する流量でキャリアガス供給路22、バイパス流路7の順に流れて、原料ガス供給路12を流れる(バイパスフロー)。その後原料ガス供給路12において、希釈ガス供給路32から供給される希釈ガスと混合されてMFM1を流れ、こうしてキャリアガスと希釈ガスとの混合ガスが成膜処理部40に間欠的に流れ込む。この第1のダミー処理により、MFM1、MFC2及びMFC3による流量の相関(オフセット値)を把握する。このオフセット値は、MFM1、MFC2及びMFC3間の指値の誤差を補正する補正値であり、以後の明細書中のMFM1、MFC2及びMFC3にて測定されている値は、MFM1、MFC2及びMFC3にて示された値をオフセット値により補正して算出している値である。
【0033】
また続いて第2のダミー処理においては、時刻t0において、バルブV7を閉じバルブV2及びV4を開く。これによりキャリアガス供給路22から原料容器14にMFC2により設定された流量でキャリアガスが供給され、原料容器14内において気化した原料がキャリアガスと共に原料ガス供給路12に流れる。更に希釈ガス供給路32から原料ガス供給路12に流れ込む希釈ガスが合流する。そして時刻t0から処理レシピにおけるバルブV1の開閉の周期で、バルブV1の開閉を行う。ここではバルブV1を1秒間開き、1秒間閉じる動作をくり返す。これにより希釈ガスと混合された原料ガスが成膜処理部40に送られる(オートフロー)。従ってキャリアガスの流量値及び希釈ガスの流量値、成膜処理部40の圧力、バルブV1の開閉の周期を第1のダミー処理と同じ設定値として、キャリアガスを原料容器14に供給して、原料ガスを成膜処理部40に供給することになる。
【0034】
そして2回行われる第2のダミー処理において、各々MFM1、MFC2及びMFC3の各々においてガスの流量が測定され、第2のダミー処理の各々においてキャリアガスの流量C
n、気化原料の実流量Pr
nが測定される。さらにC
n及びPr
nにより1枚目のウエハ100の処理におけるキャリアガスの流量を決定するための補正係数K
0が設定される。このキャリアガスの流量C
n、気化原料の実流量Pr
nを測定し、補正係数K
nを取得する作業が取得作業に相当し、本実施の形態では、第2のダミー処理において行われる取得作業が第1の取得作業に相当する。
【0035】
図6(a)は、時刻t0〜t100の間の原料ガスの給断を行うバルブV1の状態を示しており、オンの時間帯が原料ガスの供給期間に相当し、オフの時間帯が原料ガスの休止期間に相当する。
図6(b)は、例えば時刻t0〜t100の間において、MFM1にて計測される原料ガスの流量の測定出力の推移を示す。このようにバルブV1を開いている時間が短いため、MFM1にて計測される原料ガスの流量の測定出力はバルブV1のオン指令の後、急激に立ち上がり、バルブV1のオフ指令の後直ぐに立ち下がるパターンとなる。なお
図6(a)における供給期間と休止期間との比率は便宜上のものである。
【0036】
そのためMFM1、MFC2及びMFC3の各流量測定出力を制御部9により各々原料ガスの供給、休止の1周期の間積分し、その積分値を1周期の時間Tで割った値を流量の測定値とする。ここでは、
図6(a)に示すバルブV1のオン指令に基づいて、例えば時刻t0にガスの流量の積分動作を開始し、次のバルブV1のオン指令が出力される時刻t1に当該積分動作が終了する。このt0からt1までを1周期とする。
【0037】
そしてMFM1、MFC2及びMFC3の各々においてt0からt1までの流量を積分した積分値を1周期の時間T、即ち時刻t0からt1までの時間(t1−t0)で割った値(積分値/(t1−t0))を夫々時刻t0からt1におけるMFMの測定値m1、MFC2の測定値m2及びMFC3の測定値m3とする。このようにt0からt1、t1からt2…の各周期において、m1、m2及びm3の各値を求める。
図7は、MFM1において測定されたt0からt1、t1からt2…の各周期におけるm1の一例を示している。
【0038】
ここで成膜処理部40にガスを供給するときに、ガスの供給開始からしばらくの間は、ガスの流量が安定しにくい傾向にある。そのため例えば処理レシピが実行される時刻t0からt100までに、原料ガスの給断が100サイクル行われるとすると、例えば
図7に示すように96サイクル目から100サイクルまでの処理レシピの最後の5周期において各々測定された5つの測定値を平均して、MFM1の測定値の平均値M1を算出する。同様にMFC2及びMFC3においても、96サイクル目から100サイクルまでの処理レシピの最後の5周期において各々測定された5つの測定値を平均して、MFC2の測定値の平均値M2及びMFC3の測定値の平均値M3を算出する。本実施の形態においては、MFM1の測定値の平均値M1、MFC2の測定値の平均値M2及びMFC3の測定値の平均値M3がMFM1の測定値、MFC2の測定値及びMFC3の測定値に相当する。なお「MFC2の設定値」及び「MFC3の設定値」であってもMFC2の測定値及びMFC3の測定値に含むものとする。
【0039】
そして第2のダミー処理の1回目において求められた平均値M1、M2及びM3に基づいて、ダミー処理の1回目における気化原料の実流量Pr
aと、キャリアガスの実流量C
aとを算出する。(気化原料の実流量Pr
a=M1−(M2+M3)、キャリアガスの実流量C
a=M2)。
さらに第2のダミー処理の2回目において、例えば第2のダミー処理の1回目における気化原料の実流量Pr
aと基準となる補正係数K
Aからキャリアガスの増減量を算出し、第2のダミー処理の2回目におけるキャリアガスの設定値C
bを決定する。そしてキャリアガスの流量を設定値C
bに設定して、第2のダミー処理の2回目を行い平均値M1、M2及びM3に基づいて、第2のダミー処理の2回目における気化原料の実流量Pr
bを算出する。そして2回のダミー処理にて求められたC
a、C
b及びPr
a、Pr
bより、1枚目のウエハ100の処理に用いられる第1の補正係数K
0が算出される(補正係数K
0=(C
b−C
a)/(Pr
b−Pr
a))。
【0040】
続いて
図5中のステップS2において、ウエハ100の番号nが1と入力され、ステップS3にて、1枚目のウエハ100を成膜処理部40に搬入し、成膜処理部40の圧力を処理レシピにより決められた圧力に設定する。次いでステップS4に示すようにダミーレシピにおいて取得された補正係数K
0と、例えば2回目の第2のダミー処理における気化原料の実流量Pr
bと気化原料の目標値との差分値より、1枚目のウエハ100の処理におけるキャリアガスの流量の増減量が算出され、MFC2の流量が調整される。(1枚目のウエハ100の処理におけるキャリアガス流量の増減量=補正係数K
0×気化原料の実流量Pr
bと気化原料の目標値との差分値)。
【0041】
また希釈ガスの流量は、原料ガスの総流量を一定にするように設定されている。そのためここでは、原料ガスの総流量から1枚目のウエハ100の処理におけるキャリアガス流量と、気化原料の目標流量と、を差し引いた流量に調整される(1枚目のウエハ100の処理における希釈ガスの流量=原料ガスの総流量−(1枚目のウエハ100の処理におけるキャリアガス流量設定値+気化原料の流量の目標値)。
【0042】
さらにステップS5に進み、処理レシピに従って、第2のダミー処理と同じタイミングにて、バルブV1が開閉される。これにより補正係数K
0に基づいて調整された流量のキャリアガスが流れて、成膜処理部40に原料ガスが供給され、1枚目のウエハ100が処理される。
そして1枚目のウエハ100を処理するときに、ステップS1の第2のダミー処理と同様に、処理レシピで行われる100周期のガスの給断における最後の5周期のガスの給断おいて平均値M1、M2及びM3が測定され、1枚目のウエハ100の処理における気化原料の実流量Pr
1と、1枚目のウエハ100の処理におけるキャリアガスの実流量C
1と、が算出される。
【0043】
またステップS6において、Pr
1及びC
1と、補正係数K
0の設定に用いた気化原料の実流量とキャリアガスの流量、例えばPr
b及びC
bが補正係数計算用のデータテーブルに入力される。さらにステップS7において、補正係数計算用のデータテーブルから補正係数K
1が算出され(補正係数K
1=(C
1−C
b)/(Pr
1−Pr
b))、新たな補正係数K
nとして設定される。
【0044】
さらにステップS8に進み1枚目のウエハ100が搬出され、ステップS9に進む。そしてステップS9にて新たに設定された補正係数K
1と第1の閾値とを比較し、補正係数K
1が第1の閾値を超えていない場合には、「NO」となり、ステップS10に進む。
【0045】
またステップS10において、補正係数K
1と第2の閾値とを比較し、補正係数K
1が第2の閾値を超えていない場合には、「NO」となり、ステップS11に進む。そして1枚目のウエハ100は最終ウエハ100ではないため、ステップS12に進みn=2に設定して、ステップS3に戻る。
【0046】
次いでn枚目のウエハ100、ここでは2枚目のウエハ100が成膜処理部40に搬入され、ステップS4にて、補正係数K
1を用いて気化原料の流量を目的の流量とするようにキャリアガスの流量が増減される。さらにステップS5に進み、2枚目のウエハ100の処理を行い、2枚目のウエハ100の処理におけるキャリアガスの実流量C
2及び2枚目のウエハ100の処理における気化原料の実流量Pr
2が取得されて、ステップS6にて補正係数計算用のデータテーブルに入力される。さらにステップS7において、補正係数計算用のデータテーブルから補正係数K
2が算出され(補正係数K
2=(C
2−C
1)/(Pr
2−Pr
1))、新たに設定される。さらにステップS9及びS10において、補正係数K
2は、第1の閾値及び第2の閾値と比較される。このようにステップS3からステップS8の工程と、ステップS9及びステップS10における第1及び第2の閾値との比較を繰りかえし、ロットの全ウエハ100に対して順次の処理が行われる。既述の補正係数K
1及び補正係数K
2、K
3…は第2の補正係数に相当する。
【0047】
図8は、上述のように各ウエハ100の処理を行った時の、ダミーレシピ実行時及び各ウエハ100の処理時における気化原料の流量の実測値、補正係数及び原料容器14における原料ガスの気化量の一例を模式的に示したものである。例えばアイドル状態においては、原料容器14を加熱して原料を気化させているが、キャリアガスの供給を開始していない。そしてアイドル状態から、1ロット目のウエハ100の処理が開始されると、キャリアガスの原料容器14への供給が開始されて、原料ガスが成膜処理部40に供給されるように切り替わる。しかしながらアイドル状態においては、気化した原料が原料容器14から排出されないため、原料容器14内の気化原料の濃度が高まっている傾向にある。そのため
図8中の下段のグラフに示すようにアイドル状態から、キャリアガスを原料容器14供給するように切り替えたときに気化原料の流量が開始直後に一時的に多くなり、その後緩やかに減少する。そのためダミーレシピにおいては、予め設定された補正係数K
Aを用いて、目標値となる気化原料を供給するようにキャリアガスの流量を調整したときに気化原料が目標値よりも多く流れやすい。従ってキャリアガスの増減量に対する気化原料の流量の増減量は、大きくなっている(補正係数K
nは、補正係数K
Aよりも小さくなっている)はずである。そのため補正係数K
Aを用いてキャリアガスの流量値を補正したときに気化原料の流量の増減量が、目標とする増減量よりも大きくなってしまう。従って
図8の上段の図に示すように、ダミーレシピにおけるプロセスの要求範囲ではあっても、理想的な範囲からは外れてしまうことがある。そしてキャリアガスの流量に対して、補正係数K
A通りの流量で原料が捕捉されにくい傾向は、処理レシピによりしばらく継続することがあり、ロットの初期のウエハ100の処理における気化原料の実流量が目標値から乱れてしまうことがある。
【0048】
上述の実施の形態では、ダミーレシピにおける気化原料の実流量と、キャリアガスの流量の設定値とに基づいて、
図8の中段のグラフに示すように気化原料の流量の増減量に対するキャリアガスの増減量が小さい補正係数K
0が改めて設定される。さらに続いて1枚目のウエハ100の処理を行うときに、ダミーレシピにおける気化原料の実測値Pr
bと気化原料の目標値との差分値と補正係数K
0とによりキャリアガスの増減量を取得しキャリアガスの流量が調整される。従ってロットの先頭のウエハの処理において、原料の気化量が多いが、補正係数K
Aよりも小さい補正係数K
0が設定し直されることにより、気化原料の実流量が大きく変動されなくなるため、プロセス要求範囲内の更に理想の供給量に近い値となる。その後ウエハ100の処理枚数が増えるうちに原料の気化量は継時的に減少していくが、各ウエハ100の処理時のキャリアガスの測定値C
nと、気化原料の実流量Pr
nとにより、補正係数K
nが逐一修正される。この例では、原料の気化量が徐々に減少するのに呼応させるように補正係数K
nを増加させるので、各ウエハ100に供給される気化原料の実流量が安定する。このように成膜処理の開始初期においては、補正係数K
A通りに原料が捕捉されにくいが、
図8中の上段に示すように1枚目のウエハ100の処理における気化原料の実流量が目標値に近い値になる。さらに後続のウエハ100においても直前のウエハ100におけるキャリアガスの実流量と、気化原料の実流量との相関を示す補正係数K
nによりキャリアガスの増減量が調整されるため、各ウエハ100の処理における気化原料の供給量が目標値に近くなる。
【0049】
またウエハ100の処理を継続していくと、原料容器14に充填されている原料が少なくなる。これにより
図9中の下段のグラフに示すように原料の気化量が少なくなり、キャリアガスに捕捉される原料が徐々に少なくなる。従ってキャリアガスの増減量に対する気化原料の増減量が小さくなる。そのため補正係数K
nが一定値となるように設定されている場合には、補正係数から算出されたキャリアガスの変動量では、気化原料が十分に増減されず、原料の気化量が徐々に少なくなる状況下においては、気化原料の実流量は、気化原料の目標値から徐々に少なくなっていってしまう。
【0050】
しかし、上述の実施の形態においては、直前のウエハ100の処理におけるキャリアガスの実流量と、気化原料の実流量との相関を示す補正係数K
nによりキャリアガスの流量が調整される。そのため原料の気化量が少なくなるに従い、
図9の中段の図に示すように補正係数K
nは大きくなるように補正される。このようにウエハ100の処理枚数が増えるに従い、気化原料の増減量に対する、キャリアガスの流量の増減量が徐々に大きくなるよう補正され、
図9の上段の図に示すように各ウエハ100の処理における気化原料の供給量が目標値に近く安定した値になる。
【0051】
このように各ウエハ100の処理を行い、最後のウエハ100、ここでは25枚目のウエハ100においても、ステップS9、ステップS10にて補正係数K
nと、第1の閾値及び第2の閾値と、を比較し、補正係数K
nが第1の閾値及び第2の閾値よりも低い場合には、ステップS11に進み、最後のウエハ100であるため終了する。
【0052】
続いて
図5に示すステップS9及びS10にて補正係数K
nが各閾値を超えていると判定された場合について説明する。先ず取得された補正係数K
nが第1の閾値よりも小さく、第2の閾値寄りも大きい場合には、ステップS8にてn枚目のウエハ100を搬出した後、ステップS9、ステップS10の順に進み、ステップS13に進む。続いてステップS13において原料容器14の加熱温度を調整して、原料の気化量を調整する。既述のように原料容器14の原料の充填量が少なくなるにしたがって、原料の気化量が少なくなっていくため、補正係数K
nは、
図10の中段のグラフに示すように徐々に大きな値となっていく。
【0053】
そして例えばn枚目のウエハ100の処理において算出された補正係数K
nが、例えば第2の閾値を上回ったとすると、ステップS7にて設定された補正係数K
nの値と予め設定されている十分に原料の気化量があるときの補正係数、例えば補正係数K
Aの値との差分値と、
図4に示した補正係数K
nの差分値と、原料容器14の温度の増減量との関係式とにより、原料容器14の温度の増加量が求められる。そして原料容器14の温度の増加量が原料容器14の給電部16に入力される。これにより
図10の下段のグラフに示すように原料容器14の加熱部13の加熱温度が上昇し、原料の気化量が多くなり、補正係数K
Aに相当する気化量になる。
【0054】
次いでn+1枚目のウエハ100を処理するにあたっては、補正係数K
Aに相当する気化量になっているため、気化原料の流量が目標値となるようにキャリアガスの流量が設定されて処理が行われる。これにより
図10の上段のグラフに示すように、気化原料の実流量は、目標値に近い値に安定する。さらにn+1枚目のウエハ100の処理において、算出される補正係数K
n+1は、補正係数K
Aに近い値に戻される。
【0055】
その後ステップS11に進み、後続のウエハ100がある場合には、ステップS12を介してステップS3に戻って、ウエハ100の処理が継続される。またステップS11にて、最終ウエハ100の場合には終了する。
またステップS9にて補正係数K
nが第1の閾値を越えていると判断される場合には、「Yes」となり、ステップS14に進み、アラームを出力した後、終了となり、例えば原料ガス供給部10のメンテナンスを行う。例えば原料容器14の残量がきわめて少なくなった場合には、n枚目のウエハ100の処理において、原料容器14の温度を調整し直しても、原料の気化量が想定通りに増えないことがある。このような場合には、n+1枚目のウエハ100の処理において、第1の閾値を上回る補正係数K
n+1が検出されることになる。
【0056】
上述の実施の形態によれば、原料容器14内の原料を気化させた気化原料をキャリアガスと共に原料ガスとして成膜処理部40に供給して、ウエハ100の処理を行うにあたって、ウエハ100の処理開始前に行うダミーレシピにおいて、キャリアガスの実流量C
a、C
bと、気化原料の実流量Pr
a、Pr
bを測定し、キャリアガスと気化原料と相関を示す補正係数K
0を求めている。そして補正係数K
0を用いて、目標値となるようにキャリアガスの流量を調整している。さらにn−1枚目及びn枚目のウエハ100の処理時におけるキャリアガスの実流量C
n−1、C
nと、気化原料の実流量Pr
n−1、Pr
nから、キャリアガスの流量の増減量と気化原料の流量の増減量との相関を示す補正係数K
nを求め、補正係数K
nを用いて、目標値となるように流量を調整した気化原料をn+1枚目のウエハ100に供給して処理している。従って、原料の気化量に応じた適切な補正係数によりキャリアガスの流量を調整し、気化原料の供給量を調整することができる。
【0057】
また上述の実施の形態においては、原料容器14に残存する原料が少ないときに算出される補正係数K
nを第1の閾値として設定している。そして測定された補正係数K
nが第1の閾値を超えたときには、アラームを出力し、装置を停止するようにしている。そのため、原料容器14の交換時期を把握することができる。
また原料容器14における原料の残量は十分にあるが、原料の気化量が減少したときに算出される補正係数K
nを第2の閾値として設定し、測定された補正係数K
nが第2の閾値を超えたときには、原料容器14の温度を調整するようにしている。そのため原料の気化量が減少したことを把握し、原料容器14の温度を上昇させて、原料の気化量を増加させることができる
【0058】
また上述の実施の形態においては、処理レシピにおいて100周期のガス給断サイクルを行うときに、序盤の周期における測定値を用いずに、後半の周期における測定値を用いて平均値M1、M2及びM3を算出している。処理レシピにおいてガスの供給を開始したときに処理の序盤においては、ガスの供給量が乱れやすい。そのため後半の周期における測定値を用いて平均値M1、M2及びM3を算出することでより安定した値を取得することができ、補正係数K
nの値の正確性が向上する効果がある。
【0059】
また本発明は、ウエハ100の1枚ごとに補正係数K
nを調整する例に限られない。例えば成膜装置の稼働開始の初期においては、補正係数K
nが変化しやすく、ウエハ100の処理枚数が増えるにしたがって、補正係数K
nは安定する。従って成膜装置のアイドル後、ダミーレシピを行った後、例えば25枚のロットのウエハ100を処理するにあたって、最初の数枚、例えば5枚のウエハ100を処理するにあたっては、1枚処理するごとに補正係数K
nを取得して、キャリアガスの流量を調整する。
【0060】
続いて例えば2枚のウエハ100を処理するごとに補正係数K
nを書き換え、その後、3枚ごと、4枚ごとと、補正係数K
nを書き換える間隔を徐々に長くするようにしてもよい。そして後続のウエハ100を新たな補正係数K
nを用いてキャリアガスの流量を調整して処理を行う。このように成膜装置のアイドル後は、少ない枚数のウエハ100によって短い間隔で補正係数K
nを算出して、キャリアガスの流量を調整する。その後徐々に補正係数K
nの算出に用いるウエハ100の枚数を多くして、補正係数K
nを算出する間隔を徐々に長くするようにしてもよい。
またダミーレシピにて第1の補正係数K
0を求めるにあたっては、基準となる補正係数K
Aを予め設定するときに算出するキャリアガスの実流量C及び気化原料の実流量Prと、ダミー処理にて取得されたキャリアガスの実流量C及び気化原料の実流量Prを用いて算出してもよい。
【0061】
また補正係数を更新する手法として、上述の例は、n枚目の処理時におけるMFM1の測定値とMFM1の目標値との差分に対応するようにMFC2の設定値を調整して(n+1)枚目の処理を行うようにしている。しかし本発明は、このような手法に限らず、例えば定期的に補正係数算出専用の作業を行い、算出された補正係数を用いて以後の処理を行うようにしてもよい。専用の作業としては、例えば既述のダミー処理、あるいはMFCの設定値を互いに異なる2つの値に順次設定し、各設定ごとにウエハ100を成膜処理部40内に入れずにガスを流す処理を行い、補正係数を求める手法を挙げることができる。
【0062】
また補正係数K
nは、
図1中のMFM1及びMFC2によって算出される原料ガスの流量と、キャリアガスの流量と、に基づいて定められる値であればよく、例えば(キャリアガスの流量の差分値/気化原料の流量の差分値)、(キャリアガスの流量の差分値/(キャリアガスの流量の差分値+気化原料の流量の差分値))、(気化原料の流量の差分値/キャリアガスの流量の差分値)、(気化原料の流量の差分値/(キャリアガスの流量の差分値+気化原料の流量の差分値))などの値も適用することができる。
【0063】
また例えば成膜装置においてロットの処理を行う前や真空容器41内のクリーニング処理の後に、真空容器41に成膜ガスを供給し膜を内面に析出させ、真空容器41のコンディションの状態を整えるプリコートが行われるが、このプリコート処理において、第1の補正係数K
0の測定を行い、続けてウエハ100の処理を開始するようにしてもよい。
【0064】
さらに上述の実施の形態では、原料の量が減少したときに、ステップS9にて補正係数K
nが大きくなり、第1の閾値を超えることを想定しているが、補正係数K
nの値が、小さくなり過ぎたときにもアラームを出力するようにしてもよい。例えば原料容器14の加熱温度が高すぎる場合、あるいは、MFM1、MFC2やMFC3に異常が発生した場合には、補正係数K
nの値が、小さくなり過ぎることも想定される。従って、補正係数K
nの下限値となる第3の閾値を設定し、補正係数K
nが第3の閾値を下回った場合に、ステップS14に進み、アラームを出力した後、処理を停止し、メンテナンスを行うようにしてもよい。
またあるいは、気化原料の流量が多すぎることを判断するための閾値を設定し、原料の気化量が多すぎるときに原料容器14の加熱温度を下げて原料の気化量を減少させるようにしてもよい。
【0065】
さらにステップS13にて、原料容器14の温度を調整して、原料の気化量を上昇させるにあたって、目標となる温度に次のウエハ100の処理のときに一気に上げずに複数枚のウエハ100を処理するときに徐々に原料容器14の温度を上昇させて、目標となる温度に到達させるようにしてもよい。
例えばn枚目のウエハ100の処理時に設定された補正係数K
nが第2の閾値を超えており、
図4に従って目標とする温度の増減値Taが算出されたとすると、n+1枚目のウエハ100においては、例えば給電部13にTaの50%の増減値を加算して処理を行い、n+2枚目のウエハ100においては、n+1枚目のウエハ100における温度増減値と併せてTaの75%の増減値、n+3枚目のウエハ100においては、n+1枚目及びn+2枚目のウエハ100における温度増減値と併せてTaの88%の増減値と処理を継続するうちに温度の増減値の総計を増減値Taに徐々に近づける。温度の増減値が大きい場合には、原料の気化量が一気に変動しまい、原料の気化量が安定しにくくなる。そのため温度を徐々に上昇させることにより、原料の気化量が安定しやすくなり、成膜処理部40に供給される気化原料の流量が安定しやすくなる。
【0066】
また原料容器14の温度を昇温させた後に、ダミーレシピ、例えば第2のダミー処理を一回行い、補正係数K
nを算出した後に、後続のウエハ100の処理を行うようにしてもよい。
【0067】
また基板処理に用いる原料は、WCl
6に限られるものではなく、例えばWCl
5(五塩化タングステン)、MoCl
5(五塩化モリブデン)ZrCl
4(塩化ジルコニウム(IV))、HfCl
4(塩化ハフニウム(IV))、AlCl
3(塩化アルミニウム)などであってもよい。あるいは液体原料を気化させて供給する装置であってもよい。また本発明は、原料ガスと反応ガスとを混合した後、基板に供給する基板処理装置に用いてもよい。
【0068】
本発明の実施の形態の他の例として、補正係数K
nは、n枚目のウエハ100にて測定されたC
n、Pr
nを用いて設定してもよい。
そして例えば
図5のフローチャートのステップS6において、補正係数K
nを下記の式(3)より求める
補正係数K
n=C
n/Pr
n・・・(3)
【0069】
そして続くn+1枚目のウエハ100の処理において、キャリアガスの流量を(キャリアガスの流量=補正係数K
n×気化原料の流量の目標値)より算出するようにすればよい。このように構成することで、原料の気化量が変動したときに、補正係数K
nが調整されるため気化原料の供給量を安定させることができる。この例では、キャリアガスの流量と、気化原料の流量と、で求められる補正係数K
nが気化原料の流量と、キャリアガスの流量と、に関する比率に相当する。また直前の3枚以上のウエハ100において測定されたC
n、Pr
nを用い、例えば複数のウエハ100のC
n、Pr
nを夫々平均して算出するようにしてもよい。
【0070】
なお気化原料の流量及びキャリアガスの流量に関する比率の基になるマスフローコントローラの流量は、マスフローコントローラの流量設定値の他に、マスフローコントローラによる実流量の測定値を含む概念である。