特許第6904320号(P6904320)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6904320レジスト材料及びパターン形成方法、並びにバリウム塩
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6904320
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】レジスト材料及びパターン形成方法、並びにバリウム塩
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20210701BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20210701BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20210701BHJP
   C07C 309/12 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   G03F7/004 503Z
   G03F7/039 601
   G03F7/004 503A
   G03F7/20 521
   C07C309/12CSP
【請求項の数】14
【全頁数】90
(21)【出願番号】特願2018-181373(P2018-181373)
(22)【出願日】2018年9月27日
(65)【公開番号】特開2019-74734(P2019-74734A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2020年8月21日
(31)【優先権主張番号】特願2017-201726(P2017-201726)
(32)【優先日】2017年10月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠山 潤
(72)【発明者】
【氏名】佐々見 武志
(72)【発明者】
【氏名】大橋 正樹
【審査官】 川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2017/0115566(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0203030(US,A1)
【文献】 韓国登録特許第10−1748820(KR,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0203024(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸不安定基を含む繰り返し単位を含むベース樹脂、及び下記式(1)で表されるスルホン酸金属塩を含むレジスト材料。
【化1】
(式中、Xは、それぞれ独立に、ヨウ素原子又は臭素原子である。
1は、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアシロキシ基、フッ素原子、塩素原子、アミノ基、−NR2−C(=O)−R3、又は−NR2−C(=O)−O−R3であり、該アルキル基、アルコキシ基又はアシロキシ基の水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ヒドロキシ基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよい。R2は、炭素数1〜6のアルキル基であり、R3は、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数2〜16のアルケニル基又は炭素数6〜12のアリール基であり、これらの基の水素原子の一部又は全部が、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜6のアシル基又は炭素数2〜6のアシロキシ基で置換されていてもよい。
Lは、単結合又は炭素数1〜20の(p+1)価の炭化水素基であり、該炭化水素基は、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、スルトン基、ラクタム基、カーボネート基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。
q+は、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、ルビジウムイオン、ストロンチウムイオン、イットリウムイオン、セシウムイオン、バリウムイオン又はセリウムイオンである。
m及びnは、2≦m≦5、0≦n≦3及び2≦m+n≦5を満たす整数である。pは、1〜3の整数である。qは、1〜3の整数である。)
【請求項2】
前記酸不安定基を含む繰り返し単位が、下記式(a1)又は(a2)で表されるものである請求項1記載のレジスト材料。
【化2】
(式中、RAは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。R11及びR12は、酸不安定基である。Y1は、単結合、又はエステル結合、ラクトン環、フェニレン基及びナフチレン基から選ばれる少なくとも1種を含む炭素数1〜15の連結基である。Y2は、単結合、エステル結合又はアミド結合である。)
【請求項3】
前記ベース樹脂が、更に、下記式(b1)〜(b3)から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含む請求項1又は2記載のレジスト材料。
【化3】
(式中、RAは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
1は、単結合、フェニレン基、−O−Z11−、−C(=O)−O−Z11−又は−C(=O)−NH−Z11−である。
Aは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
2は、単結合、−C(=O)−O−Z11−又は−C(=O)−NH−Z11−である。
3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−Z11−、−C(=O)−O−Z11−又は−C(=O)−NH−Z11−である。
11は、炭素数1〜6のアルカンジイル基、フェニレン基、又は炭素数2〜10のアルケンジイル基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
21〜R28は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の1価炭化水素基である。また、R21とR22とが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R23、R24及びR25のいずれか2つが、又はR26、R27及びR28のいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
-は、非求核性対向イオンである。)
【請求項4】
前記ベース樹脂が、式(b2)で表される繰り返し単位を含む請求項3記載のレジスト材料。
【請求項5】
化学増幅ポジ型レジスト材料である請求項1〜4のいずれか1項記載のレジスト材料。
【請求項6】
更に、有機溶剤を含む請求項1〜5のいずれか1項記載のレジスト材料。
【請求項7】
更に、酸発生剤を含む請求項1〜6のいずれか1項記載のレジスト材料。
【請求項8】
更に、クエンチャーを含む請求項1〜7のいずれか1項記載のレジスト材料。
【請求項9】
更に、界面活性剤を含む請求項1〜8のいずれか1項記載のレジスト材料。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項記載のレジスト材料を基板上に塗布し、加熱してレジスト膜を形成する工程と、該レジスト膜を高エネルギー線で露光する工程と、該露光したレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程とを含むパターン形成方法。
【請求項11】
前記高エネルギー線が、波長3〜15nmの極端紫外線である請求項10記載のパターン形成方法。
【請求項12】
前記高エネルギー線が、加速電圧1〜150kVの電子線である請求項10記載のパターン形成方法。
【請求項13】
レジスト下層の基板面をプラスに荷電した状態で露光を行う請求項11又は12記載のパターン形成方法。
【請求項14】
下記式(2)で表されるバリウム塩。
【化4】
(式中、R1は、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアシロキシ基、フッ素原子、塩素原子、アミノ基、−NR2−C(=O)−R3、又は−NR2−C(=O)−O−R3であり、該アルキル基、アルコキシ基又はアシロキシ基の水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ヒドロキシ基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよい。R2は、炭素数1〜6のアルキル基であり、R3は、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数2〜16のアルケニル基又は炭素数6〜12のアリール基であり、これらの基の水素原子の一部又は全部が、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜6のアシル基又は炭素数2〜6のアシロキシ基で置換されていてもよい。
L'は、単結合、炭素数1〜12のアルカンジイル基、炭素数2〜12のアルケンジイル基又は炭素数6〜10のアリーレン基であり、エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい。
m及びnは、2≦m≦5、0≦n≦3及び2≦m+n≦5を満たす整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト材料及びパターン形成方法、並びにバリウム塩に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。特に、フラッシュメモリー市場の拡大と記憶容量の増大化が微細化を牽引している。最先端の微細化技術としては、ArFリソグラフィーによる65nmノードのデバイスの量産が行われており、次世代のArF液浸リソグラフィーによる45nmノードの量産準備が進行中である。次世代の32nmノードとしては、水よりも高屈折率の液体、高屈折率レンズ及び高屈折率レジスト膜を組み合わせた超高NAレンズによる液浸リソグラフィー、波長13.5nmの極端紫外線(EUV)リソグラフィー、ArFリソグラフィーの二重露光(ダブルパターニングリソグラフィー)等が候補であり、検討が進められている。
【0003】
ところで、近年では加工寸法が最小線幅として50nmをきろうとしているが、加工寸法がそのように小さくなった場合には、現像液の表面張力に抗してパターンを維持する構造強度、基板への接着強度等の要因から、加工を行う基板の表面材質によっては、レジスト膜厚を100nm以下にする必要がある。従来、高解像性化学増幅レジスト膜を形成するために使用されてきたレジスト材料、例えば、アセタール系保護基を有するベース樹脂を用いた場合、化学増幅型レジスト膜の膜厚が150nmの場合はラインエッジラフネスの悪化が大きな問題にならなかったにもかかわらず、膜厚が100nm以下になるとラインエッジラフネスが大幅に悪化してしまう問題が発生した。
【0004】
電子線(EB)やX線等の非常に短波長な高エネルギー線は、レジスト材料に用いられている炭化水素による吸収がほとんどないため、主に炭化水素で構成されているポリヒドロキシスチレンベースのレジスト材料が検討されている。
【0005】
EBリソグラフィー用レジスト材料は、実用的にはマスク描画用途に用いられてきた。近年、マスク製作技術が問題視されるようになってきた。露光に用いられる光がg線の時代から縮小投影露光装置が用いられており、その縮小倍率は1/5であったが、チップサイズの拡大と投影レンズの大口径化とともに1/4倍率が用いられるようになってきたため、マスクの寸法ズレがウエハー上のパターンの寸法変化に与える影響が問題になっている。パターンの微細化とともに、マスクの寸法ズレの値よりもウエハー上の寸法ズレの方が大きくなってきていることが指摘されている。マスク寸法変化を分母、ウエハー上の寸法変化を分子として計算されたMask Error Enhancement Factor(MEEF)が求められている。45nm級のパターンでは、MEEFが4を超えることも珍しくない。縮小倍率が1/4でMEEFが4であれば、マスク製作において実質等倍マスクと同等の精度が必要であるといえる。
【0006】
マスク製作用露光装置としては、線幅の精度を上げるため、レーザービームによる露光装置にかわってEBによる露光装置が用いられてきた。更に、電子銃の加速電圧を上げることによってより一層の微細化が可能になることから、10kVから30kV、最近は50kVが主流であり、100kVの検討も進められている。
【0007】
ここで、加速電圧の上昇とともに、レジスト膜の低感度化が問題になってきた。加速電圧が上昇すると、レジスト膜内での前方散乱の影響が小さくなるため、EB描画エネルギーのコントラストが向上して解像度や寸法制御性が向上するが、レジスト膜内を素抜けの状態で電子が通過するため、レジスト膜の感度が低下する。マスク露光機は直描の一筆書きで露光するため、レジスト膜の感度低下は生産性の低下につながり、好ましいことではない。高感度化の要求から、化学増幅レジスト材料が検討されている。
【0008】
微細化の進行とともに、酸の拡散による像のぼけが問題になっている(非特許文献1)。寸法サイズ45nm以下の微細パターンでの解像性を確保するためには、従来提案されている溶解コントラストの向上だけでなく、酸拡散の制御が重要であることが提案されている(非特許文献2)。しかしながら、化学増幅レジスト材料は酸の拡散によって感度とコントラストを上げているため、ポストエクスポージャーベーク(PEB)温度や時間を短くして酸拡散を極限まで抑えようとすると、感度とコントラストが著しく低下する。
【0009】
バルキーな酸が発生する酸発生剤を添加して酸拡散を抑えることは有効である。そこで、酸発生剤として重合性不飽和結合を含むオニウム塩に由来する繰り返し単位をポリマーに含ませることが提案されている。特許文献1等には、特定のスルホン酸を発生する重合性不飽和結合を含むスルホニウム塩やヨードニウム塩が提案されている。特許文献1には、スルホン酸が主鎖に直結したスルホニウム塩やヨードニウム塩が提案されている。
【0010】
これまで半導体製造のためのリソグラフィー用レジスト材料として金属が導入されたレジスト材料を用いることは、半導体の動作不良が起きる可能性があるために忌避されていた。しかしながら、半導体製造以外の用途、例えばLCDのカラーフィルター製造用レジスト材料として、共重合が可能なモノマーとして金属を含有した(メタ)アクリレートの使用が示されている。
【0011】
アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を添加したEBリソグラフィー用レジスト材料や帯電防止膜が提案されている(特許文献2)。これによって、解像度を損なうことなくEB露光における感度を向上させることができる。また、金属のカルボン酸塩やβジケトン塩を添加する化学増幅レジスト材料が示されている(特許文献3)。この場合、金属のカルボン酸塩やβジケトン塩は、酸発生剤から発生したスルホン酸とイオン交換することによってクエンチャーとして機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−178317号公報
【特許文献2】特開2010−152136号公報
【特許文献3】特開2013−25211号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】SPIE Vol.5039 p1 (2003)
【非特許文献2】SPIE Vol.6520 p65203L-1 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前述のように、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が進むなか、高解像度でありながら高感度であり、なおかつ露光後のパターン形状が良好でラインエッジラフネス(LWR)や寸法均一性(CDU)が小さいレジスト材料が求められていた。
【0015】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、高解像度でありながら高感度であり、かつ露光後のパターン形状が良好でLWRやCDUが小さいレジスト材料、及びこれを用いたパターン形成方法、並びに該レジスト材料に用い得る新規バリウム塩を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、酸不安定基を有する繰り返し単位を含むベース樹脂、及びヨウ素原子又は臭素原子を複数個で置換されたベンゼン環を含むフルオロスルホン酸のナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、セシウム、バリウム又はセリウム塩を含むレジスト材料を用いることにより、高感度であり、露光後のパターン形状が良好でLWRやCDUが小さい特性を示し、EB描画中の帯電を防止し、特に超LSI製造用あるいはフォトマスクの微細パターン形成材料として好適なレジスト材料が得られることを知見し、本発明を完成させた。
【0017】
すなわち、本発明は、下記レジスト材料及びパターン形成方法、並びにバリウム塩を提供する。
1.酸不安定基を含む繰り返し単位を含むベース樹脂、及び下記式(1)で表されるスルホン酸金属塩を含むレジスト材料。
【化1】
(式中、Xは、それぞれ独立に、ヨウ素原子又は臭素原子である。
1は、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアシロキシ基、フッ素原子、塩素原子、アミノ基、−NR2−C(=O)−R3、又は−NR2−C(=O)−O−R3であり、該アルキル基、アルコキシ基又はアシロキシ基の水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ヒドロキシ基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよい。R2は、炭素数1〜6のアルキル基であり、R3は、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数2〜16のアルケニル基又は炭素数6〜12のアリール基であり、これらの基の水素原子の一部又は全部が、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜6のアシル基又は炭素数2〜6のアシロキシ基で置換されていてもよい。
Lは、単結合又は炭素数1〜20の(p+1)価の炭化水素基であり、該炭化水素基は、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、スルトン基、ラクタム基、カーボネート基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。
q+は、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、ルビジウムイオン、ストロンチウムイオン、イットリウムイオン、セシウムイオン、バリウムイオン又はセリウムイオンである。
m及びnは、2≦m≦5、0≦n≦3及び2≦m+n≦5を満たす整数である。pは、1〜3の整数である。qは、1〜3の整数である。)
2.前記酸不安定基を含む繰り返し単位が、下記式(a1)又は(a2)で表されるものである1のレジスト材料。
【化2】
(式中、RAは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。R11及びR12は、酸不安定基である。Y1は、単結合、又はエステル結合、ラクトン環、フェニレン基及びナフチレン基から選ばれる少なくとも1種を含む炭素数1〜15の連結基である。Y2は、単結合、エステル結合又はアミド結合である。)
3.前記ベース樹脂が、更に、下記式(b1)〜(b3)から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含む1又は2のレジスト材料。
【化3】
(式中、RAは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
1は、単結合、フェニレン基、−O−Z11−、−C(=O)−O−Z11−又は−C(=O)−NH−Z11−である。
Aは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
2は、単結合、−C(=O)−O−Z11−又は−C(=O)−NH−Z11−である。
3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−Z11−、−C(=O)−O−Z11−又は−C(=O)−NH−Z11−である。
11は、炭素数1〜6のアルカンジイル基、フェニレン基、又は炭素数2〜10のアルケンジイル基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
21〜R28は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の1価炭化水素基である。また、R21とR22とが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R23、R24及びR25のいずれか2つが、又はR26、R27及びR28のいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
-は、非求核性対向イオンである。)
4.前記ベース樹脂が、式(b2)で表される繰り返し単位を含む3のレジスト材料。
5.化学増幅ポジ型レジスト材料である1〜4のいずれかのレジスト材料。
6.更に、有機溶剤を含む1〜5のいずれかのレジスト材料。
7.更に、酸発生剤を含む1〜6のいずれかのレジスト材料。
8.更に、クエンチャーを含む1〜7のいずれかのレジスト材料。
9.更に、界面活性剤を含む1〜8のいずれかのレジスト材料。
10.1〜9のいずれかのレジスト材料を基板上に塗布し、加熱してレジスト膜を形成する工程と、該レジスト膜を高エネルギー線で露光する工程と、該露光したレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程とを含むパターン形成方法。
11.前記高エネルギー線が、波長3〜15nmのEUVである10のパターン形成方法。
12.前記高エネルギー線が、加速電圧1〜150kVのEBである10のパターン形成方法。
13.レジスト下層の基板面をプラスに荷電した状態で露光を行う11又は12のパターン形成方法。
14.下記式(2)で表されるバリウム塩。
【化4】
(式中、R1は、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアシロキシ基、フッ素原子、塩素原子、アミノ基、−NR2−C(=O)−R3、又は−NR2−C(=O)−O−R3であり、該アルキル基、アルコキシ基又はアシロキシ基の水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ヒドロキシ基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよい。R2は、炭素数1〜6のアルキル基であり、R3は、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数2〜16のアルケニル基又は炭素数6〜12のアリール基であり、これらの基の水素原子の一部又は全部が、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜6のアシル基又は炭素数2〜6のアシロキシ基で置換されていてもよい。
L'は、単結合、炭素数1〜12のアルカンジイル基、炭素数2〜12のアルケンジイル基又は炭素数6〜10のアリーレン基であり、エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい。
m及びnは、2≦m≦5、0≦n≦3及び2≦m+n≦5を満たす整数である。)
【発明の効果】
【0018】
本発明のレジスト材料は、露光前後のアルカリ溶解速度コントラストが大幅に高く、高感度で高解像性を有し、露光余裕度があり、プロセス適応性に優れ、露光後のパターン形状が良好で、その上、特に酸拡散速度を抑制し、LWRやCDUが小さいという特性を示す。したがって、特に超LSI製造用あるいはフォトマスクの微細パターン形成材料として、又はEBやEUV露光用のパターン形成材料として好適なレジスト材料とすることができる。また、本発明のレジスト材料は、半導体回路形成におけるリソグラフィーだけでなく、マスク回路パターンの形成、あるいはマイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド回路形成等にも応用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[レジスト材料]
本発明のレジスト材料は、酸不安定基を含む繰り返し単位を含むベース樹脂、及び所定のスルホン酸金属塩を含むものである。
【0020】
[スルホン酸金属塩]
前記スルホン酸金属塩は、下記式(1)で表されるものである。
【化5】
【0021】
式(1)中、Xは、それぞれ独立に、ヨウ素原子又は臭素原子である。
【0022】
式(1)中、R1は、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアシロキシ基、フッ素原子、塩素原子、アミノ基、−NR2−C(=O)−R3、又は−NR2−C(=O)−O−R3である。前記アルキル基、アルコキシ基又はアシロキシ基の水素原子の一部又は全部は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ヒドロキシ基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよい。R2は、炭素数1〜6のアルキル基であり、R3は、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数2〜16のアルケニル基又は炭素数6〜12のアリール基であり、これらの基の水素原子の一部又は全部が、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜6のアシル基又は炭素数2〜6のアシロキシ基で置換されていてもよい。前記アルキル基、アルコキシ基、アシロキシ基、アルケニル基及びアシル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0023】
これらのうち、R1としては、ヒドロキシ基、−NR2−C(=O)−R3、メチル基、メトキシ基等が好ましい。
【0024】
Lは、単結合又は炭素数1〜20の(p+1)価の炭化水素基であり、該炭化水素基は、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、スルトン基、ラクタム基、カーボネート基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0025】
q+は、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、ルビジウムイオン、ストロンチウムイオン、イットリウムイオン、セシウムイオン、バリウムイオン又はセリウムイオンである。
【0026】
m及びnは、2≦m≦5、0≦n≦3及び2≦m+n≦5を満たす整数であるが、mは、2≦m≦4を満たす整数が好ましく、2又は3がより好ましい。pは、1〜3の整数である。qは、1〜3の整数である。
【0027】
ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、ルビジウムイオン、ストロンチウムイオン、イットリウムイオン、セシウムイオン、バリウムイオン又はセリウムイオンは、EBやEUV露光中に二次電子を発生させ、これに酸発生剤が反応して高感度化する。しかし、レジスト膜内を二次電子がランダムに拡散すると像のぼけとなり、酸発生剤から発生した酸の拡散と相まって像のぼけが増大する。像のぼけは、エッジラフネスの増大を招く。ここで、二次電子がレジスト膜方向すなわち基板と垂直方向に拡散すると、像のぼけを抑えることができる。基板がプラス荷電した場合、二次電子が基板に吸い込まれるように移動するので、二次電子が垂直拡散する。これによって像のぼけの発生を抑え、エッジラフネスを劣化することなく感度を向上させることができる。
【0028】
式(1)で表されるスルホン酸金属塩は、酸発生剤から発生する酸とイオン交換を起こさないため、クエンチャーとしては機能しない。それゆえ、クエンチャーよりも多量に添加することができ、これによってEBやEUVの吸収が増し、高感度化のメリットを享受することができる。
【0029】
式(1)で表されるスルホン酸金属塩としては、具体的には、下記式で表されるナトリウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、ルビジウム塩、ストロンチウム塩、イットリウム塩、セシウム塩、バリウム塩又はセリウム塩である。
【化6】
(式中、X、R1、L、m、n及びpは、前記と同じ。)
【0030】
前記スルホン酸金属塩のアニオンは、ヨウ素原子又は臭素原子で置換されたベンゼン環を含むαフルオロスルホン酸アニオンである。ヨウ素原子は、EUVに極めて強い吸収を有し、これによってEUV露光中にエネルギーを吸収する。前記スルホン酸金属塩において、アニオンがヨウ素原子で置換されたベンゼン環を含むαフルオロスルホン酸アニオンの場合は、EUVを吸収することによって金属イオンから二次電子を発生させる。また、臭素原子は、EUVやEB露光中にイオン化する。アニオンが臭素原子で置換されたベンゼン環を含むαフルオロスルホン酸アニオンの場合は、EUVやEBによって臭素原子がイオン化し、金属イオンから二次電子が発生すると考えられる。このため、ヨウ素原子及び臭素原子は、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、ルビジウムイオン、ストロンチウムイオン、イットリウムイオン、セシウムイオン、バリウムイオン又はセリウムイオンから発生する二次電子の発生効率を向上させる効果がある。
【0031】
前記スルホン酸金属塩のアニオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化7】
【0032】
【化8】
【0033】
【化9】
【0034】
【化10】
【0035】
【化11】
【0036】
【化12】
【0037】
【化13】
【0038】
【化14】
【0039】
【化15】
【0040】
【化16】
【0041】
【化17】
【0042】
【化18】
【0043】
【化19】
【0044】
【化20】
【0045】
【化21】
【0046】
【化22】
【0047】
【化23】
【0048】
【化24】
【0049】
【化25】
【0050】
【化26】
【0051】
【化27】
【0052】
【化28】
【0053】
【化29】
【0054】
【化30】
【0055】
【化31】
【0056】
【化32】
【0057】
【化33】
【0058】
式(1)で表されるスルホン酸金属塩の中でも、下記式(2)で表されるバリウム塩は、バリウムの原子番号が大きく、より多くの電子を有しているので、EBやEUV露光によって放出される二次電子数が多く、レジスト膜を高感度化させる効果が高いという点から好ましい。
【化34】
【0059】
式(2)中、R1、m及びnは、前記と同じ。L'は、単結合、炭素数1〜12のアルカンジイル基、炭素数2〜12のアルケンジイル基又は炭素数6〜10のアリーレン基であり、エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい。前記アルカンジイル基及びアルケンジイル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0060】
本発明のレジスト材料中、前記スルホン酸金属塩の含有量は、後述するベース樹脂100質量部に対し、0.01〜100質量部が好ましく、0.1〜50質量部がより好ましい。
【0061】
式(1)で表されるスルホン酸金属塩は、例えば、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、セシウム、バリウム又はセリウムのヒドロキシ化合物、ハロゲン化合物、炭酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩又はβケトエステル塩と、α位がフッ素化された、複数のヨウ素原子又は臭素原子を有するフルオロスルホン酸のアンモニウム塩との中和反応又は塩交換反応によって合成することができる。
【0062】
[ベース樹脂]
前記ベース樹脂に含まれる酸不安定基を含む繰り返し単位としては、下記式(a1)で表されるもの(以下、繰り返し単位a1ともいう。)又は下記式(a2)で表されるもの(以下、繰り返し単位a2ともいう。)が好ましい。
【化35】
【0063】
式(a1)及び(a2)中、RAは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。R11及びR12は、酸不安定基である。Y1は、単結合、又はエステル結合、ラクトン環、フェニレン基及びナフチレン基から選ばれる少なくとも1種を含む炭素数1〜15の連結基である。Y2は、単結合、エステル結合又はアミド結合である。
【0064】
繰り返し単位a1を与えるモノマーとしては以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RA及びR11は、前記と同じである。
【化36】
【0065】
繰り返し単位a2を与えるモノマーとしては以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RA及びR12は、前記と同じである。
【化37】
【0066】
11又はR12で表される酸不安定基としては、種々選定されるが、例えば、下記式(A−1)〜(A−3)で表されるものが挙げられる。
【化38】
【0067】
式(A−1)中、RL1は、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数4〜20、好ましくは4〜15の3級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のアルキル基であるトリアルキルシリル基、カルボニル基又はエステル結合を含む炭素数4〜20のアルキル基、又は式(A−3)で表される基である。A1は、0〜6の整数である。
【0068】
前記ヘテロ原子を含んでもよい3級アルキル基は、分岐状でも環状でもよく、その具体例としては、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−テトラヒドロピラニル基、2−テトラヒドロフラニル基等が挙げられる。前記トリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が挙げられる。前記カルボニル基又はエステル結合を含むアルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、環状のものが好ましく、その具体例としては、3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が挙げられる。
【0069】
式(A−1)で表される酸不安定基としては、tert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−ペンチルオキシカルボニル基、tert−ペンチルオキシカルボニルメチル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニルメチル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等が挙げられる。
【0070】
更に、式(A−1)で表される酸不安定基として、下記式(A−1)−1〜(A−1)−10で表される基も好適に使用できる。
【化39】
【0071】
式中、A1は、前記と同じである。RL8は、それぞれ独立に、炭素数1〜10ののアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基である。RL9は、水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基である。RL10は、炭素数2〜10のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基である。前記アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0072】
式(A−2)中、RL2及びRL3は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10のアルキル基である。前記アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基等が挙げられる。RL4は、酸素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜18、好ましくは1〜10の1価炭化水素基である。前記1価炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。前記1価炭化水素基としては、炭素数1〜18のアルキル基等が挙げられ、これらの水素原子の一部が、ヒドロキシ基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等で置換されていてもよい。このような置換アルキル基としては、以下に示すもの等が挙げられる。
【0073】
【化40】
【0074】
L2とRL3と、RL2とRL4と、又はRL3とRL4とは、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に、又は炭素原子と酸素原子と共に環を形成してもよく、この場合、環の形成に関与するRL2及びRL3、RL2及びRL4、又はRL3及びRL4は、それぞれ独立に、炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状又は分岐状のアルカンジイル基である。これらが結合して得られる環の炭素数は、好ましくは3〜10、より好ましくは4〜10である。
【0075】
式(A−2)で表される酸不安定基のうち、直鎖状又は分岐状のものとしては、下記式(A−2)−1〜(A−2)−69で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化41】
【0076】
【化42】
【0077】
【化43】
【0078】
【化44】
【0079】
式(A−2)で表される酸不安定基のうち、環状のものとしては、テトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が挙げられる。
【0080】
また、酸不安定基として、下記式(A−2a)又は(A−2b)で表される基が挙げられる。前記酸不安定基によって、ベース樹脂が分子間又は分子内架橋されていてもよい。
【化45】
【0081】
式中、RL11及びRL12は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜8のアルキル基であり、該アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。RL11とRL12とは、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、この場合、RL11及びRL12は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルカンジイル基である。RL13は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルカンジイル基であり、前記アルカンジイル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。B1及びD1は、それぞれ独立に、0〜10の整数、好ましくは0〜5の整数であり、C1は、1〜7の整数、好ましくは1〜3の整数である。
【0082】
Aは、(C1+1)価の炭素数1〜50の脂肪族若しくは脂環式飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、又はヘテロ環基である。また、これらの基の炭素原子の一部がヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、又はこれらの基の炭素原子に結合する水素原子の一部が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アシル基又はフッ素原子で置換されていてもよい。LAとしては、炭素数1〜20のアルカンジイル基、アルカントリイル基、アルカンテトライル基、炭素数6〜30のアリーレン基等が好ましい。前記アルカンジイル基、アルカントリイル基及びアルカンテトライル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。LBは、−CO−O−、−NHCO−O−又は−NHCONH−である。
【0083】
式(A−2a)又は(A−2b)で表される架橋型アセタール基としては、下記式(A−2)−70〜(A−2)−77で表される基等が挙げられる。
【化46】
【0084】
式(A−3)中、RL5、RL6及びRL7は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の1価炭化水素基であり、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、フッ素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。前記1価炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基等が挙げられる。また、RL5とRL6と、RL5とRL7と、又はRL6とRL7とは、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜20の脂環を形成してもよい。
【0085】
式(A−3)で表される基としては、tert−ブチル基、トリエチルカルビル基、1−エチルノルボニル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロペンチル基、2−(2−メチル)アダマンチル基、2−(2−エチル)アダマンチル基、tert−ペンチル基等が挙げられる。
【0086】
また、式(A−3)で表される基として、下記式(A−3)−1〜(A−3)−18で表される基も好適に使用できる。
【化47】
【0087】
式中、RL14は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基である。RL15及びRL17は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜20のアルキル基である。RL16は、炭素数6〜20のアリール基である。前記アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。また、前記アリール基としては、フェニル基等が好ましい。
【0088】
更に、酸不安定基として、下記式(A−3)−19又は(A−3)−20で表される基が挙げられる。前記酸不安定基によって、ポリマーが分子内あるいは分子間架橋されていてもよい。
【化48】
【0089】
式中、RL14は、前記と同じ。RL18は、炭素数1〜20の(E1+1)価の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜20の(E1+1)価の芳香族炭化水素基であり、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。前記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。E1は、1〜3の整数である。
【0090】
式(A−3)で表される酸不安定基を含む繰り返し単位を与えるモノマーとしては、例えば、下記式(A−3)−21で表されるエキソ体構造を含む(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【化49】
【0091】
式中、RAは、前記と同じ。RLc1は、炭素数1〜8のアルキル基、又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基である。前記アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。RLc2〜RLc7、RLc10及びRLc11は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよい1価炭化水素基である。前記ヘテロ原子としては、酸素原子等が挙げられる。前記1価炭化水素基としては、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基等が挙げられる。RLc8及びRLc9は、水素原子である。RLc2とRLc3と、RLc4とRLc6と、RLc4とRLc7と、RLc5とRLc7と、RLc5とRLc11と、RLc6とRLc10と、RLc8とRLc9と又はRLc9とRLc10とは、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよく、この場合、結合に関与する基は炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよい2価炭化水素基である。また、RLc2とRLc11と、RLc8とRLc11と、又はRLc4とRLc6とは、隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい。なお、本式により、鏡像体も表す。
【0092】
ここで、式(A−3)−21で表される繰り返し単位を与えるモノマーとしては、特開2000−327633号公報に記載されたもの等が挙げられる。具体的には、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RAは、前記と同じである。
【化50】
【0093】
式(A−3)で表される酸不安定基を含む繰り返し単位を与えるモノマーとしては、下記式(A−3)−22で表される、フランジイル基、テトラヒドロフランジイル基又はオキサノルボルナンジイル基を含む(メタ)アクリル酸エステルも挙げられる。
【化51】
【0094】
式中、RAは、前記と同じ。RLc12及びRLc13は、それぞれ独立に、炭素数1〜10の1価炭化水素基である。RLc12とRLc13とは、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に脂環を形成してもよい。RLc14は、フランジイル基、テトラヒドロフランジイル基、又はオキサノルボルナンジイル基である。RLc15は、水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜10の1価炭化水素基である。前記1価炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、炭素数1〜10のアルキル基等が挙げられる。
【0095】
式(A−3)−22で表される繰り返し単位を与えるモノマーとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RAは、前記と同じであり、Acはアセチル基であり、Meはメチル基である。
【化52】
【0096】
【化53】
【0097】
前述したもの以外の酸不安定基を含むモノマーとしては、特開2015−166833号公報の段落[0061]〜[0085]に記載されたもの等が挙げられる。
【0098】
前記ベース樹脂は、更に、下記式(b1)〜(b3)で表される繰り返し単位(以下、それぞれ繰り返し単位b1〜b3ともいう。)から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。
【化54】
【0099】
式(b1)〜(b3)中、RAは、前記と同じ。Z1は、単結合、フェニレン基、−O−Z11−、−C(=O)−O−Z11−又は−C(=O)−NH−Z11−である。Aは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。Z2は、単結合、−C(=O)−O−Z11−又は−C(=O)−NH−Z11−である。Z3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−Z11−、−C(=O)−O−Z11−又は−C(=O)−NH−Z11−である。Z11は、炭素数1〜6のアルカンジイル基、フェニレン基、又は炭素数2〜10のアルケンジイル基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。前記アルカンジイル基及びアルケンジイル基は、直鎖状、分岐状若しくは環状のいずれでもよい。
【0100】
式(b1)〜(b3)中、R21〜R28は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の1価炭化水素基である。また、R21とR22とが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R23、R24及びR25のいずれか2つが、又はR26、R27及びR28のいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
【0101】
前記1価炭化水素基は、直鎖状、分岐状若しくは環状のいずれでもよく、その具体例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基等が挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部又は全部が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、アミド基、ニトロ基、メルカプト基、スルトン基、スルホン基又はスルホニウム塩含有基で置換されていてもよく、これらの基の炭素原子の一部が、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、カーボネート基又はスルホン酸エステル結合で置換されていてもよい。
【0102】
繰り返し単位b1〜b3は、酸発生剤として機能する繰り返し単位である。ポリマー主鎖に酸発生剤をバウンドさせることによって、酸拡散距離を縮め、LWRを低減させることができる。
【0103】
前記ベース樹脂が、繰り返し単位b1〜b3のいずれかを含む場合、露光中に金属からの二次電子の発生によって繰り返し単位b1〜b3に含まれる酸発生剤の分解が起こり、これによってレジスト膜の感度が向上する。PEB温度を高くしたり、PEB時間を長くしたりすることによっても高感度化が可能であるが、この場合は酸拡散距離が長くなり、LWRが大きくなる。式(1)で表されるスルホン酸金属塩を添加すると、酸拡散が小さく、かつ酸の発生効率が高くなるので、高感度かつLWRを小さくすることが可能である。
【0104】
式(b1)中、Q-は、非求核性対向イオンである。前記非求核性対向イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハライドイオン、トリフレートイオン、1,1,1−トリフルオロエタンスルホネートイオン、ノナフルオロブタンスルホネートイオン等のフルオロアルキルスルホネートイオン、トシレートイオン、ベンゼンスルホネートイオン、4−フルオロベンゼンスルホネートイオン、1,2,3,4,5−ペンタフルオロベンゼンスルホネートイオン等のアリールスルホネートイオン、メシレートイオン、ブタンスルホネートイオン等のアルキルスルホネートイオン、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオン、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミドイオン、ビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミドイオン等のイミドイオン、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドイオン、トリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチドイオン等のメチドイオンが挙げられる。
【0105】
前記非求核性対向イオンとしては、更に、下記式(K−1)で表されるα位がフッ素原子で置換されたスルホン酸イオン、下記式(K−2)で表されるα及びβ位がフッ素原子で置換されたスルホン酸イオン等が挙げられる。
【化55】
【0106】
式(K−1)中、R51は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は炭素数6〜20のアリール基であり、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、ラクトン環又はフッ素原子を含んでいてもよい。前記アルキル基及びアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0107】
式(K−2)中、R52は、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、アシル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、又はアリールオキシ基であり、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基又はラクトン環を含んでいてもよい。前記アルキル基及びアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0108】
繰り返し単位b1を与えるモノマーとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RA及びQ-は、前記と同じである。
【化56】
【0109】
繰り返し単位b2を与えるモノマーとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RAは、前記と同じである。
【化57】
【0110】
【化58】
【0111】
【化59】
【0112】
【化60】
【0113】
繰り返し単位b3を与えるモノマーとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RAは、前記と同じである。
【化61】
【0114】
【化62】
【0115】
【化63】
【0116】
繰り返し単位b1〜b3のうち、繰り返し単位b2が最も好ましい。
【0117】
前記ベース樹脂は、更に、密着性基としてフェノール性ヒドロキシ基を含む繰り返し単位cを含んでいてもよい。繰り返し単位cを与えるモノマーとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RAは、前記と同じである。
【化64】
【0118】
【化65】
【0119】
前記ベース樹脂は、更に、他の密着性基として、ヒドロキシ基(ただし、フェノール性ヒドロキシ基を除く。)、カルボキシ基、ラクトン環、カーボネート基、チオカーボネート基、カルボニル基、環状アセタール基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、シアノ基、アミド基、−O−C(=O)−S−、及び−O−C(=O)−NH−から選ばれる密着性基を含む繰り返し単位dを含んでいてもよい。
【0120】
繰り返し単位dを与えるモノマーとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RAは、前記と同じである。
【化66】
【0121】
【化67】
【0122】
【化68】
【0123】
【化69】
【0124】
【化70】
【0125】
【化71】
【0126】
【化72】
【0127】
【化73】
【0128】
【化74】
【0129】
【化75】
【0130】
前記ベース樹脂は、更に、インデン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、アセナフチレン、クロモン、クマリン、ノルボルナジエン及びこれらの誘導体に由来する繰り返し単位eを含んでいてもよい。
【0131】
繰り返し単位eを与えるモノマーとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化76】
【0132】
前記ベース樹脂は、更に、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルピレン又はメチレンインダンに由来する繰り返し単位fを含んでもよい。
【0133】
繰り返し単位a1、a2、b1、b2、b3、c、d、e及びfの含有比率は、0≦a1≦1.0、0≦a2≦1.0、0<a1+a2≦1.0、0≦b1≦0.5、0≦b2≦0.5、0≦b3≦0.5、0≦b1+b2+b3≦0.5、0≦c≦0.9、0≦d≦0.9、0≦e≦0.9、0≦f≦0.5が好ましく、0≦a1≦0.8、0≦a2≦0.8、0.1≦a1+a2≦0.8、0≦b1≦0.4、0≦b2≦0.4、0≦b3≦0.4、0≦b1+b2+b3≦0.4、0≦c≦0.8、0≦d≦0.8、0≦e≦0.8、0≦f≦0.4がより好ましく、0≦a1≦0.7、0≦a2≦0.7、0.15≦a1+a2≦0.7、0≦b1≦0.3、0≦b2≦0.3、0≦b3≦0.3、0≦b1+b2+b3≦0.3、0≦c≦0.7、0≦d≦0.7、0≦e≦0.7、0≦f≦0.3が更に好ましく、0≦a1≦0.7、0≦a2≦0.7、0.15≦a1+a2≦0.7、0≦b1≦0.3、0≦b2≦0.3、0≦b3≦0.3、0.1≦b1+b2+b3≦0.3、0<c≦0.7、0≦d≦0.7、0≦e≦0.7、0≦f≦0.3が最も好ましい。なお、a1+a2+b1+b2+b3+c+d+e+f=1である。
【0134】
前記ベース樹脂の合成方法としては、例えば、繰り返し単位a1、a2、b1、b2、b3、c、d、e及びfを与えるモノマーのうち所望のモノマーを、有機溶剤中、ラジカル重合開始剤を加え、加熱重合を行う方法が挙げられる。
【0135】
重合時に使用する有機溶剤としては、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。重合開始剤としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が挙げられる。反応温度は、好ましくは50〜80℃であり、反応時間は、好ましくは2〜100時間、より好ましくは5〜20時間である。
【0136】
ヒドロキシ基を含むモノマーの場合、重合時にヒドロキシ基をエトキシエトキシ基等の酸によって脱保護しやすいアセタール基で置換しておいて重合後に弱酸と水によって脱保護を行ってもよいし、アセチル基、ホルミル基、ピバロイル基等で置換しておいて重合後にアルカリ加水分解を行ってもよい。
【0137】
ヒドロキシスチレンやヒドロキシビニルナフタレンに由来する繰り返し単位を含むポリマーを合成する場合は、ヒドロキシスチレンやヒドロキシビニルナフタレンのかわりに、アセトキシスチレンやアセトキシビニルナフタレンを用い、重合後、アルカリ加水分解によってアセトキシ基を脱保護して、ヒドロキシスチレン単位やヒドロキシビニルナフタレン単位にしてもよい。
【0138】
アルカリ加水分解時の塩基としては、アンモニア水、トリエチルアミン等が使用できる。また、反応温度としては、好ましくは−20〜100℃、より好ましくは0〜60℃であり、反応時間としては、好ましくは0.2〜100時間、より好ましくは0.5〜20時間である。
【0139】
前記ベース樹脂は、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が、好ましくは1,000〜500,000、より好ましくは2,000〜30,000である。Mwが1,000以上であれば、レジスト材料が耐熱性に優れるものとなり、500,000以下であれば、アルカリ溶解性が低下することもなく、パターン形成後に裾引き現象が生じることもない。
【0140】
更に、前記ベース樹脂においては、多成分共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が広い場合は低分子量や高分子量のポリマーが存在するために、露光後、パターン上に異物が見られたり、パターンの形状が悪化したりする。それゆえ、パターンルールが微細化するに従って分子量や分子量分布の影響が大きくなりやすいことから、微細なパターン寸法に好適に用いられるレジスト材料を得るには、使用するベース樹脂の分子量分布は1.0〜2.0、特に1.0〜1.5と狭分散であることが好ましい。
【0141】
前記ベース樹脂は、組成比率やMw、Mw/Mnが異なる2つ以上のポリマーをブレンドしたものでもよい。前記ベース樹脂は、特にポジ型レジスト材料のベース樹脂として好適である。また、本発明の効果を損なわない範囲で、前記ベース樹脂は、前述したポリマーとは異なるポリマーを含んでもよい。
【0142】
[その他の成分]
前記ベース樹脂及びスルホン酸金属塩に、有機溶剤、溶解阻止剤、酸発生剤、界面活性剤、クエンチャー、アセチレンアルコール類等を目的に応じ、適宜組み合わせて配合してポジ型レジスト材料を構成することによって、露光部では前記ベース樹脂が触媒反応により現像液に対する溶解速度が加速されるので、極めて高感度のポジ型レジスト材料とすることができる。このようなポジ型レジスト材料は、これから得られるレジスト膜の溶解コントラスト及び解像性が高く、露光余裕度があり、プロセス適応性に優れ、露光後のパターン形状が良好でありながら、より優れたエッチング耐性を示し、特に酸拡散を抑制できることから粗密寸法差が小さく、これらのことから実用性が高く、特に超LSI用レジスト材料として非常に有効なものとすることができる。特に、酸発生剤を含有させ、酸触媒反応を利用した化学増幅ポジ型レジスト材料とすると、より高感度のものとすることができるとともに、諸特性が一層優れたものとなり極めて有用なものとなる。
【0143】
前記有機溶剤としては、例えば、特開2008−111103号公報の段落[0144]〜[0145]に記載の、シクロヘキサノン、メチルn−ペンチルケトン等のケトン類;3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類等が挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。前記有機溶剤の含有量は、ベース樹脂100質量部に対し、100〜10,000質量部が好ましく、200〜8,000質量部がより好ましい。
【0144】
ポジ型レジスト材料に溶解阻止剤を配合することによって、露光部と未露光部との溶解速度の差を一層大きくすることができ、解像度を一層向上させることができる。更に、塩基性化合物を添加することによって、例えばレジスト膜中での酸の拡散速度を抑制し、解像度を一層向上させることができるし、界面活性剤を添加することによってレジスト材料の塗布性を一層向上あるいは制御することができる。前記溶解阻止剤としては特開2008−122932号公報の段落[0155]〜[0178]に記載されたものが挙げられる。前記溶解阻止剤を含む場合、その含有量は、ベース樹脂100質量部に対して0.5〜50質量部が好ましく、1〜30質量部がより好ましい。
【0145】
本発明のレジスト材料は、更に、酸発生剤を含んでもよく、例えば、活性光線又は放射線に感応して酸を発生する化合物(光酸発生剤)を含んでもよい。前記光酸発生剤は、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいかなるものでも構わない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等がある。酸発生剤の具体例としては、例えば、特開2008−111103号公報の段落[0122]〜[0142]、特開2009−080474号公報、特開2015−026064号公報に記載されているものが挙げられる。
【0146】
また、下記式(3)又は(4)で表されるオニウム塩も光酸発生剤として好ましい。
【化77】
【0147】
式(3)及び(4)中、L1は、単結合、エーテル結合若しくはエステル結合、又はエーテル結合若しくはエステル結合を含んでいてもよい炭素数1〜6のアルキレン基である。前記アルキレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0148】
式(3)及び(4)中、R101は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子若しくはアミノ基、若しくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、アミノ基若しくは炭素数1〜10のアルコキシ基を含んでいてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアシロキシ基若しくは炭素数1〜20のアルキルスルホニルオキシ基、又は−NR8−C(=O)−R9若しくは−NR8−C(=O)−O−R9であり、R8は、水素原子、又はハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜6のアシル基若しくは炭素数2〜6のアシロキシ基を含んでいてもよい炭素数1〜6のアルキル基であり、R9は、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数2〜16のアルケニル基、又は炭素数6〜12のアリール基であり、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜6のアシル基、又は炭素数2〜6のアシロキシ基を含んでいてもよい。前記アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシロキシ基、アシル基及びアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0149】
これらのうち、R101としては、ヒドロキシ基、−NR8−C(=O)−R9、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、メトキシ基等が好ましい。
【0150】
式(3)及び(4)中、R102は、pが1のときは単結合又は炭素数1〜20の2価の連結基であり、pが2又は3のときは炭素数1〜20の3価又は4価の連結基であり、該連結基は酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を含んでいてもよい。
【0151】
式(3)及び(4)中、Rf1〜Rf4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であるが、これらのうち少なくとも1つはフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。また、Rf1とRf2とが合わさって、カルボニル基を形成してもよい。
【0152】
式(3)及び(4)中、pは、1≦p≦3を満たす整数である。q及びrは、1≦q≦5、0≦r≦3、及び1≦q+r≦5を満たす整数である。qは、1≦q≦3を満たす整数が好ましく、2又は3がより好ましい。rは、0≦r≦2を満たす整数が好ましい。
【0153】
式(3)及び(4)中、MA+は、下記式(5)で表されるスルホニウムカチオン又は下記式(6)で表されるヨードニウムカチオンである。
【化78】
【0154】
式(5)及び(6)中、R103、R104、R105、R106及びR107は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の1価炭化水素基である。また、R103、R104及びR105のいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。前記1価炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基等が挙げられる。これらのうち、炭素数6〜20のアリール基が好ましい。また、これらの基の水素原子の一部又は全部が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、アミド基、ニトロ基、メルカプト基、スルトン基、スルホン基又はスルホニウム塩含有基で置換されていてもよく、これらの基の炭素原子の一部が、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、カーボネート基又はスルホン酸エステル結合で置換されていてもよい。
【0155】
式(3)又は(4)で表されるオニウム塩のアニオンとしては、式(1)で表されるスルホン酸金属塩のアニオンとして前述したもののうち、式(3)又は(4)を満たすものが挙げられる。
【0156】
前記酸発生剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。前記酸発生剤を含む場合、その含有量は、ベース樹脂100質量部に対し、0.1〜50質量部が好ましい。なお、前記ベース樹脂が繰り返し単位b1〜b3から選ばれる少なくとも1種を含む場合、前記酸発生剤は、含んでも含まなくてもよい。
【0157】
前記界面活性剤としては、特開2008−111103号公報の段落[0165]〜[0166]に記載されたものが挙げられる。界面活性剤を添加することによって、レジスト材料の塗布性を一層向上あるいは制御することができる。界面活性剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明のレジスト材料において、前記界面活性剤を含む場合、その含有量は、ベース樹脂100質量部に対し、0.0001〜10質量部が好ましく、0.001〜5質量部がより好ましい。
【0158】
本発明のレジスト材料には、クエンチャーを配合してもよい。前記クエンチャーとしては、従来型の塩基性化合物が挙げられる。従来型の塩基性化合物としては、第1級、第2級、第3級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシ基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類等が挙げられる。特に、特開2008−111103号公報の段落[0146]〜[0164]に記載の第1級、第2級、第3級のアミン化合物、特にはヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合、ラクトン環、シアノ基、スルホン酸エステル結合を有するアミン化合物あるいは特許第3790649号公報に記載のカーバメート基を有する化合物等が好ましい。このような塩基性化合物を添加することによって、例えば、レジスト膜中での酸の拡散速度を更に抑制したり、形状を補正したりすることができる。
【0159】
また、前記クエンチャーとして、特開2008−158339号公報に記載されているα位がフッ素化されていないスルホン酸及びカルボン酸の、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。α位がフッ素化されたスルホン酸、イミド酸又はメチド酸は、カルボン酸エステルの酸不安定基を脱保護させるために必要であるが、α位がフッ素化されていないオニウム塩との塩交換によってα位がフッ素化されていないスルホン酸又はカルボン酸が放出される。α位がフッ素化されていないスルホン酸及びカルボン酸は脱保護反応を起こさないために、クエンチャーとして機能する。
【0160】
更に、下記式(7)で表されるカルボン酸オニウム塩もクエンチャーとして好適に使用できる。
【化79】
【0161】
式(7)中、R201は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜40の1価炭化水素基である。前記1価炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、炭素数1〜40のアルキル基、炭素数2〜40のアルケニル基、炭素数2〜40のアルキニル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数7〜40のアラルキル基等が挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部又は全部が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、アミド基、ニトロ基、メルカプト基、スルトン基、スルホン基又はスルホニウム塩含有基で置換されていてもよく、これらの基の炭素原子の一部が、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、カーボネート基又はスルホン酸エステル結合で置換されていてもよい。
【0162】
式(7)中、MB+は、オニウムカチオンである。前記オニウムカチオンとしては、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、アンモニウムカチオン等が挙げられるが、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンが好ましい。
【0163】
前記カルボン酸オニウム塩のアニオン部分としては、下記式(8)で表されるものが好ましい。
【化80】
【0164】
式(4)中、R202及びR203は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である。R204は、水素原子、ヒドロキシ基、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜35の1価炭化水素基である。前記前記1価炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、炭素数1〜35のアルキル基、炭素数2〜35のアルケニル基、炭素数2〜35のアルキニル基、炭素数6〜35のアリール基、炭素数7〜35のアラルキル基等が挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部又は全部が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、アミド基、ニトロ基、メルカプト基、スルトン基、スルホン基又はスルホニウム塩含有基で置換されていてもよく、これらの基の炭素原子の一部が、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、カーボネート基又はスルホン酸エステル結合で置換されていてもよい。
【0165】
前記クエンチャーとして、特開2013−25211号公報に記載の金属塩のクエンチャーを添加することもできる。具体的には、ナトリウム、マグネシウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、カドニウム、インジウム、錫、アンチモン、セシウム、ジルコニウム及びハフニウムから選ばれる金属の炭素数1〜20の1〜4価のカルボン酸塩、又は該金属とβジケトン類との錯体をクエンチャーとして添加することもできる。
【0166】
前記クエンチャーとしては、更に、特開2008−239918号公報に記載のポリマー型のクエンチャーが挙げられる。これは、コート後のレジスト表面に配向することによってパターン後のレジストの矩形性を高める。ポリマー型クエンチャーは、液浸露光用の保護膜を適用したときのパターンの膜減りやパターントップのラウンディングを防止する効果もある。
【0167】
前記クエンチャーを含む場合、その含有量は、ベース樹脂100質量部に対し、0.01〜20質量部が好ましく、0.02〜15質量部がより好ましい。クエンチャーは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、前記クエンチャーがポリマー型クエンチャーである場合、その含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意とすることができる。
【0168】
前記アセチレンアルコール類としては、特開2008−122932号公報の段落[0179]〜[0182]に記載されたものが挙げられる。アセチレンアルコール類の含有量は、レジスト材料中0〜2質量%が好ましく、0.02〜1質量%がより好ましい。
【0169】
[パターン形成方法]
本発明のパターン形成方法は、前記レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後、高エネルギー線で露光する工程と、現像液を用いて現像する工程とを含む。この場合、前記高エネルギー線で露光する工程において、波長3〜15nmのEUVやEB、特には加速電圧が1〜150kVの範囲のEBを光源として用いることができる。
【0170】
式(1)で表されるスルホン酸金属塩は、導電性の金属塩であるため、EB描画中のレジスト膜の耐電を防止する効果がある。このため、レジスト膜の上に必ずしも帯電防止膜を形成しなくてもよい。更に、前記スルホン酸金属塩は、波長13.5nmのEUVに強い吸収がある。EUVで露光したときに前記金属の外殻電子が励起され、酸発生剤に電子が移動し、酸の発生効率が高まり、レジスト膜の感度が向上するメリットがある。
【0171】
本発明のレジスト材料を種々の集積回路製造に用いる場合は、公知のリソグラフィー技術を適用することができる。例えば、本発明のレジスト材料を、集積回路製造用の基板あるいは該基板上の被加工層(Si、SiO2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)や、マスク回路製造用の基板あるいは該基板上の被加工層(Cr、CrO、CrON、MoSi2、SiO2等)上に、スピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法により、塗布膜厚が0.01〜2μmとなるように塗布する。これをホットプレート上で、好ましくは60〜150℃で10秒〜30分間、より好ましくは80〜120℃で30秒〜20分間プリベークする。
【0172】
次いで、紫外線、遠紫外線、EB、X線、軟X線、エキシマレーザー、γ線、シンクロトロン放射線、EUV等の高エネルギー線から選ばれる光源で、目的とするパターンを所定のマスクを通じて又は直接露光を行う。露光は、露光量が1〜200mJ/cm2程度、特に10〜100mJ/cm2、又は0.1〜100μC/cm2程度、特に0.5〜50μC/cm2となるように行うことが好ましい。次に、ホットプレート上で、好ましくは60〜150℃で10秒〜30分間、より好ましくは80〜120℃で30秒〜20分間PEBする。
【0173】
更に、0.1〜10質量%、好ましくは2〜5質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリンヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ水溶液の現像液を用い、3秒〜3分間、好ましくは5秒〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することにより、光を照射した部分は現像液に溶解し、露光されなかった部分は溶解せず、基板上に目的のポジ型のパターンが形成される。
【0174】
有機溶剤現像によってネガ型のパターンを得ることもできる。現像液としては、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ブテニル、酢酸イソペンチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、ギ酸イソペンチル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸ペンチル、乳酸イソペンチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、ギ酸ベンジル、ギ酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチル等が挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0175】
現像の終了時には、リンスを行う。リンス液としては、現像液と混溶し、レジスト膜を溶解させない溶剤が好ましい。このような溶剤としては、炭素数3〜10のアルコール、炭素数8〜12のエーテル化合物、炭素数6〜12のアルカン、アルケン、アルキン、芳香族系の溶剤が好ましく用いられる。
【0176】
具体的に、炭素数3〜10のアルコールとしては、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−ペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、シクロヘキサノール、1−オクタノール等が挙げられる。
【0177】
炭素数8〜12のエーテル化合物としては、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ−sec−ブチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−tert−ペンチルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル等が挙げられる。
【0178】
炭素数6〜12のアルカンとしては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、メチルシクロペンタン、ジメチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン等が挙げられる。炭素数6〜12のアルケンとしては、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、ジメチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等が挙げられる。炭素数6〜12のアルキンとしては、ヘキシン、ヘプチン、オクチン等が挙げられる。
【0179】
芳香族系の溶剤としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、メシチレン等が挙げられる。
【0180】
なお、本発明のレジスト材料は、高エネルギー線の中でもEB、EUV、X線、軟X線、γ線、シンクロトロン放射線による微細パターニングに最適である。特に、波長3〜15nmのEUVや加速電圧1〜150kVのEB、好ましくは加速電圧1〜100kVのEB、特には加速電圧1〜50kVの低加速電圧EBを光源として用いれば、より微細なパターンを形成することができる。
【実施例】
【0181】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
【0182】
[1]スルホン酸金属塩の合成
[合成例1−1]2−{4−(2,3,5−トリヨードベンゾイルオキシ)−ブチリルオキシ}−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホン酸ベンジルトリメチルアンモニウムの合成
【化81】
【0183】
特許第5019071号公報の合成例1−24−1を参考に、これに記載のトリフェニルスルホニウム 2−ヒドロキシ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホネートのかわりにベンジルトリメチルアンモニウム 2−ヒドロキシ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホネートを用いることで、ベンジルトリメチルアンモニウム 2−(4−クロロブチリルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホネートを調製した。
調製したベンジルトリメチルアンモニウム 2−(4−クロロブチリルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホネート16g、2,3,5−トリヨード安息香酸20g、ヨウ化ナトリウム0.5g、炭酸カリウム6.1g及びジメチルホルムアミド200mLを混合し、90℃で一晩攪拌した。室温に戻した後、ジメチルホルムアミドを減圧下にてある程度除去し、続いてメチルイソブチルケトンを加えてから水洗を行った。洗浄後減圧濃縮を行い、残渣にジイソプロピルエーテルを加えて結晶を析出させ、これを濾過によって回収し、最後に減圧加熱乾燥を行うことで、目的物である2−{4−(2,3,5−トリヨードベンゾイルオキシ)−ブチリルオキシ}−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホン酸ベンジルトリメチルアンモニウム23gを得た(収率71%)。
【0184】
[合成例1−2]2−{4−(2,3,5−トリヨードベンゾイルオキシ)−ブチリルオキシ}−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホン酸バリウムの合成
【化82】
【0185】
前記2−{4−(2,3,5−トリヨードベンゾイルオキシ)−ブチリルオキシ}−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホン酸ベンジルトリメチルアンモニウム14gをメタノール43gに溶解させ、これにイオン交換樹脂(デュオライト255LFH、住化ケムテックス(株)製)42gを加えて2時間攪拌した。続いてイオン交換樹脂を濾別して減圧濃縮を行い、メタノールを除去した後、水酸化バリウム八水和物1.6gと純水50gを氷冷下にて加え、30分攪拌した。攪拌後減圧濃縮を行い、メチルイソブチルケトンを加えて再度減圧濃縮を行い、残渣にジイソプロピルエーテルを加えて結晶を析出させ、これを濾過によって回収、最後に減圧加熱乾燥を行うことで、目的物である2−{4−(2,3,5−トリヨードベンゾイルオキシ)−ブチリルオキシ}−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホン酸バリウム(バリウム塩1−1)4.7gを得た(収率50%)。
【0186】
[合成例1−3〜1−17]バリウム塩1−2〜1−8、セシウム塩1−1、ルビジウム塩1−1、ストロンチウム塩1−1、セリウム塩1−1、マグネシウム塩1−1〜1−3、及びカルシウム塩1−1の合成
アニオンの種類及び/又は金属ヒドロキシドの金属の種類を変えた以外は、合成例1−2と同様の方法で、バリウム塩1−2〜1−8、セシウム塩1−1、ルビジウム塩1−1、ストロンチウム塩1−1、セリウム塩1−1、マグネシウム塩1−1〜1−3、カルシウム塩1−1を合成した。
【0187】
バリウム塩1−1〜1−8、セシウム塩1−1、ルビジウム塩1−1、ストロンチウム塩1−1、セリウム塩1−1、マグネシウム塩1−1〜1−3、及びカルシウム塩1−1の構造を以下に示す。
【化83】
【0188】
【化84】
【0189】
[合成例2−1〜2−16]バリウム塩2−1〜2−8、セシウム塩2−1、ルビジウム塩2−1、ストロンチウム塩2−1、セリウム塩2−1、マグネシウム塩2−1〜2−3、及びカルシウム塩2−1の合成
アニオンの種類及び/又は金属ヒドロキシドの金属の種類を変えた以外は、合成例1−2と同様の方法で、バリウム塩2−1〜2−8、セシウム塩2−1、ルビジウム塩2−1、ストロンチウム塩2−1、セリウム塩2−1、マグネシウム塩2−1〜2−3、及びカルシウム塩2−1を合成した。
【0190】
バリウム塩2−1〜2−8、セシウム塩2−1、ルビジウム塩2−1、ストロンチウム塩2−1、セリウム塩2−1、マグネシウム塩2−1〜2−3、及びカルシウム塩2−1の構造を以下に示す。
【化85】
【0191】
【化86】
【0192】
[2]ベース樹脂の合成
各々のモノマーを組み合わせてTHF中で共重合反応を行い、メタノールに晶出し、更にヘキサンで洗浄を繰り返した後に単離、乾燥して、以下に示す組成のベース樹脂(ポリマー1〜5)を得た。得られたベース樹脂の組成は1H−NMRにより、Mw及びMw/Mnは溶剤としてTHFを用いたGPCにより確認した。
【0193】
[合成例3−1]ポリマー1
Mw=7,900
Mw/Mn=1.97
【化87】
【0194】
[合成例3−2]ポリマー2
Mw=8,300
Mw/Mn=1.98
【化88】
【0195】
[合成例3−3]ポリマー3
Mw=8,300
Mw/Mn=1.76
【化89】
【0196】
[合成例3−4]ポリマー4
Mw=9,000
Mw/Mn=1.98
【化90】
【0197】
[合成例3−5]ポリマー5
Mw=8,400
Mw/Mn=1.91
【化91】
【0198】
[3]レジスト材料の調製
[実施例1−1〜1−24、2−1〜2−20、比較例1−1〜1−3]
界面活性剤としてスリーエム社製界面活性剤FC-4430を100ppmの濃度で溶解させた溶剤に、表1〜3に示される組成で各成分を溶解させた溶液を、0.2μmサイズのフィルターで濾過してポジ型レジスト材料を調製した。
【0199】
表1〜3中の各組成は、以下のとおりである。
酸発生剤:PAG1〜PAG6
【化92】
【0200】
クエンチャー:Amine1、Amine2、ピバル酸セシウム、クエンチャー1〜2
【化93】
【0201】
有機溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)
CyH(シクロヘキサノン)
GBL(γ−ブチロラクトン)
DAA(ジアセトンアルコール)
【0202】
【表1】
【0203】
【表2】
【0204】
【表3】
【0205】
[4]EB露光評価
[実施例3−1〜3−24、4−1〜4−20、比較例2−1〜2−3]
表1〜3に示す各レジスト材料を、日産化学工業(株)製反射防止膜DUV-62を60nm膜厚で形成したSi基板上にスピンコートし、ホットプレートを用いて105℃で60秒間プリベークして膜厚50nmのレジスト膜を作製した。これに、エリオニクス社製EB描画装置(ELS-F125、加速電圧125kV)を用いて露光し、ホットプレート上で表4〜6記載の温度で60秒間PEBを行い、2.38質量%TMAH水溶液で30秒間現像を行って、寸法24nmのホールパターンを得た。
(株)日立ハイテクノロジーズ製の測長SEM(CG5000)を用いて、ホールが24nmで形成されるときの露光量を測定してこれを感度とし、また、このときのホール50個の寸法を測定し、CDU(寸法バラツキ3σ)を求めた。結果を表4〜6に示す。
【0206】
【表4】
【0207】
【表5】
【0208】
【表6】
【0209】
表4〜6に示した結果より、本発明のレジスト材料は、CDUが小さくかつ高感度であることがわかった。一方、比較例のレジスト材料は、感度とCDUが本発明のレジスト材料に比べて大きかった。すなわち、本発明のレジスト材料のように、ベース樹脂として、酸不安定基を含む繰り返し単位と、好ましくは酸発生剤を含む繰り返し単位とを含むポリマーに、ヨウ素原子又は臭素原子複数個で置換されたベンゼン環を含むフルオロスルホン酸のナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、セシウム、バリウム又はセリウム塩を添加したレジスト材料は、高解像度、高感度で、かつLWRも小さいため、超LSI用レジスト材料、マスクパターン形成材料等として非常に有効に用いることができるといえる。