特許第6904414号(P6904414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6904414液体供給装置、対物レンズ保持装置、顕微鏡、及び液体供給方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6904414
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】液体供給装置、対物レンズ保持装置、顕微鏡、及び液体供給方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/24 20060101AFI20210701BHJP
【FI】
   G02B21/24
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-509433(P2019-509433)
(86)(22)【出願日】2018年3月30日
(86)【国際出願番号】JP2018013989
(87)【国際公開番号】WO2018182020
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2019年9月27日
(31)【優先権主張番号】特願2017-69986(P2017-69986)
(32)【優先日】2017年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(72)【発明者】
【氏名】八十川 利樹
【審査官】 殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−170867(JP,A)
【文献】 特開2006−308676(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0021569(US,A1)
【文献】 特開2015−227940(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/093208(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/138053(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00 − 21/36
G01N 1/00 − 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察対象物の下方に配置された対物レンズに液体を供給する供給口と、
前記対物レンズ上に貯留された液体を回収する回収口と、を備え、
前記供給口及び前記回収口は、前記観察対象物と前記対物レンズとの間の光路における前記対物レンズよりも上方の位置と、前記光路から退避した位置との間を移動可能であり、
前記供給口は、前記対物レンズが下方に移動することに連動して前記光路における前記対物レンズよりも上方の位置へ移動し、該位置において液体を供給し、
前記回収口は、前記対物レンズが下方に移動することに連動して前記光路における前記対物レンズよりも上方の位置であって前記対物レンズの光軸方向における前記供給口の位置よりも上方の位置へ移動し、該位置において液体を回収し
前記対物レンズ上における液体の液面の高さは、前記回収口が配置された位置において規定され、
前記供給口及び前記回収口は、前記対物レンズが上方に移動することに連動して前記光路から退避した位置に移動する、液体供給装置。
【請求項2】
前記回収口は、前記光路における前記対物レンズよりも上方の位置にあるときに、前記供給口よりも前記対物レンズの光軸に近い位置に配置される、請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項3】
前記供給口と前記回収口とを前記光路に挿脱する挿脱機構、を備える、請求項1又は請求項2に記載の液体供給装置。
【請求項4】
前記供給口と前記回収口とを含むノズルユニットを備え、
前記ノズルユニットは、前記対物レンズと前記観察対象物との相対的な移動に連動して前記対物レンズの光軸と交差する軸の周りで回転する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の液体供給装置。
【請求項5】
前記挿脱機構は、
前記観察対象物を支持するステージと前記対物レンズを支持する支持部とのうち一方に設けられるカムと、
前記ステージおよび前記支持部の他方に設けられ前記カムに合わされるカムフォロアと、を備える、請求項に記載の液体供給装置。
【請求項6】
前記供給口と接続され、前記液体を送出する送出装置と、
前記回収口と接続され、前記液体を吸引する吸引装置と、を備え、
前記送出装置による送出の少なくとも一部と並行して前記吸引装置による吸引が行われる、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の液体供給装置。
【請求項7】
前記供給口を有する供給部材と、
前記回収口を有する回収部材と、を備える、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の液体供給装置。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の液体供給装置を備え、
前記対物レンズを保持して位置決めする、対物レンズ保持装置。
【請求項9】
請求項に記載の対物レンズ保持装置と、
前記対物レンズと、を備える、顕微鏡。
【請求項10】
観察対象物の下方に配置された対物レンズに液体を供給口から供給することと、
前記対物レンズ上に貯留された液体を回収口から回収することと、を含み、
前記供給口及び前記回収口は、前記観察対象物と前記対物レンズとの間の光路における前記対物レンズよりも上方の位置と、前記光路から退避した位置との間を移動可能であり、
前記供給口は、前記対物レンズが下方に移動することに連動して前記光路における前記対物レンズよりも上方の位置へ移動し、該位置において液体を供給し、
前記回収口前記対物レンズが下方に移動することに連動して前記光路における前記対物レンズよりも上方の位置であって前記対物レンズの光軸方向における前記供給口の位置よりも上方の位置へ移動し、該位置において液体を回収し
前記対物レンズ上における液体の液面の高さは、前記回収口が配置された位置において規定され、
前記供給口及び前記回収口は、前記対物レンズが上方に移動することに連動して前記光路から退避した位置に移動する、液体供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体供給装置、対物レンズ保持装置、顕微鏡、及び液体供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡の分野において、観察対象物(例、生細胞)が載置されたカバーガラスや培養容器と対物レンズとの間の空間に液体(浸液、液浸媒質)を満たして観察を行うことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0212310号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様においては、液体供給装置を提供する。液体供給装置は、観察対象物の下方に配置された対物レンズに液体を供給する供給口を備えてよい。液体供給装置は、対物レンズ上に貯留された液体を回収する回収口を備えてよい。供給口及び回収口は、観察対象物と対物レンズとの間の光路における対物レンズよりも上方の位置と、光路から退避した位置との間を移動可能であってよい。供給口は、対物レンズが下方に移動することに連動して光路における対物レンズよりも上方の位置へ移動し、該位置において液体を供給してよい。回収口は、対物レンズが下方に移動することに連動して光路における対物レンズよりも上方の位置であって対物レンズの光軸方向における供給口の位置よりも上方の位置へ移動し、該位置において液体を回収してよい。対物レンズ上における液体の液面の高さは、回収口が配置された位置において規定されてよい。供給口及び回収口は、対物レンズが上方に移動することに連動して光路から退避した位置に移動してよい。
【0005】
本発明の第2の態様においては、対物レンズ保持装置を提供する。対物レンズ保持装置は、第1の態様の液体供給装置を備えてよい。対物レンズ保持装置は、対物レンズを保持して位置決めしてよい。
【0006】
本発明の第3の態様においては、顕微鏡を提供する。顕微鏡は、第2の態様の対物レンズ保持装置を備えてよい。顕微鏡は、対物レンズを備えてよい。
【0007】
本発明の第4の態様においては、液体供給方法を提供する。液体供給方法は、観察対象物の下方に配置された対物レンズに液体を供給口から供給することを含んでよい。液体供給方法は、対物レンズ上に貯留された液体を回収口から回収することを含んでよい。供給口及び回収口は、観察対象物と対物レンズとの間の光路における対物レンズよりも上方の位置と、光路から退避した位置との間を移動可能であってよい。供給口は、対物レンズが下方に移動することに連動して光路における対物レンズよりも上方の位置へ移動し、該位置において液体を供給してよい。回収口対物レンズが下方に移動することに連動して光路における対物レンズよりも上方の位置であって対物レンズの光軸方向における供給口の位置よりも上方の位置へ移動し、該位置において液体を回収してよい。対物レンズ上における液体の液面の高さは、回収口が配置された位置において規定されてよい。供給口及び回収口は、対物レンズが上方に移動することに連動して光路から退避した位置に移動してよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る顕微鏡を示す図である。
図2】第1実施形態に係る液体供給装置を示す図である。
図3】第1実施形態に係る液体供給装置の動作を示す図である。
図4】第1実施形態に係る挿脱機構およびその動作を示す図である。
図5】供給口、回収口、及び対物レンズの位置関係の例を示す図である。
図6】供給口、回収口、及び対物レンズの位置関係の例を示す図である。
図7】供給口、回収口、及び対物レンズの位置関係の例を示す図である。
図8】第2実施形態に係る液体供給装置およびその動作を示す図である。
図9】変形例に係る供給部材および回収部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る顕微鏡を示す図である。図1の顕微鏡1は、倒立顕微鏡であるが、実施形態に係る顕微鏡は、正立顕微鏡にも適用可能である。顕微鏡1は、ベース2と、ステージ3と、光源装置4と、照明光学系5と、観察光学系6と、レボルバ7(対物レンズ保持装置)と、液体供給装置8とを備える。ベース2は、例えば机の上面などの設置面に載置され、顕微鏡1の各部を支持する。ステージ3は、ベース2に立設された支柱2aに支持され、標本S(観察対象物)を支持する。ステージ3には開口部3aが設けられ、開口部3aには、標本Sを保持する標本保持部材9(例、スライドガラス)が嵌め込まれる。または、培養容器が載置される。
【0010】
光源装置4は、例えば、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)などの固体光源、あるいはランプ光源を含み、照明光を発する。照明光学系5は、光源装置4からの照明光を、コンデンサレンズ(不図示)を有する照射部11を介して、ステージ3上の標本Sに照射する。図1の例において、照明光学系5は、標本Sに対して対物レンズ12と反対側から照明光を標本Sに照射する透過照明装置である。照明光学系5は、標本Sを落射照明する落射照明装置でもよい。この場合、照明光学系5は、対物レンズ12を介して照明光を標本Sを照射する。また、顕微鏡1は、上記の透過照明装置および落射照明装置の双方を備えてもよい。
【0011】
顕微鏡1は、例えば、照明光学系5は標本S(ステージ3)の上方に配置される。照明光学系5は、例えば、ベース2のうち背面側(図1中右側)の柱状部に支持される。なお、顕微鏡1は、光源装置4を備えなくてもよい。例えば、光源装置4は、外部装置であるファイバーを備えた照明光導入装置を、顕微鏡1に取り付けられてもよい。
【0012】
観察光学系6は、対物レンズ12を含む。観察光学系6の一部は鏡筒13に保持される。鏡筒13には接眼レンズ14が取り付けられ、観察者は、観察光学系6により形成された標本Sの像を、接眼レンズ14を介して観察することができる。また、顕微鏡1は、観察光学系6により形成された標本Sの像を撮像素子(図示せず)により撮像可能であり、観察者は、撮像素子により取得される画像により観察を行うこともできる。なお、顕微鏡1は、接眼レンズ14を介した観察と、撮像された画像による観察との少なくとも一方が可能なものであればよい。
【0013】
また、顕微鏡1は、例えば、照明光学系5から標本Sに照射された照明光のうち標本Sで散乱した光により像を形成することで、観察(例、明視野観察)に利用される。図1において、顕微鏡1は、標本Sの上方から照明光を照射し、標本Sで透過散乱した光を観察に用いる。顕微鏡1は、偏斜照明を用いるものでもよいし、標本Sで反射散乱した光を観察に用いるものでもよい。また、顕微鏡1は、蛍光観察に利用されるものでもよい。蛍光観察を行う場合、照明光として、標本Sに含まれる蛍光物質を励起する励起光を用いて、蛍光物質から放射される蛍光が観察に用いられる。また、標本Sには発光プローブが添加され、顕微鏡1は、発光プローブによって発光する細胞の観察などに用いられてもよい。
【0014】
レボルバ7は、対物レンズ12を保持し、対物レンズ12の位置決めに利用される。レボルバ7は、対物レンズ12を保持して移動可能(回転可能)な可動部15と、可動部15を支持する固定部16とを備える。可動部15は、対物レンズ12の他に対物レンズ17も保持可能である。対物レンズ17は、例えば対物レンズ12と倍率、焦点距離が異なる。可動部15は、回転軸15aの周りで、固定部16に対して回転可能である。本実施形態では、回転運動可能なレボルバ7を例示したが直線運動可能なスライダーに対物レンズ12を保持するものでもよい。
【0015】
可動部15は、例えば、対物レンズ12および対物レンズ17を保持した状態で回転軸15a周りで回転することにより、標本Sからの光の光路LPに対物レンズ12が配置される状態と、光路LPに対物レンズ17が配置される状態とを切替可能である。対物レンズ12は、光路LPに配置された状態において、対物レンズ12の光軸12aが鉛直方向と平行になるように、可動部15に取り付けられる。可動部15の回転軸15aは、例えば、鉛直方向に対して傾斜する方向(非平行かつ非垂直)に設定される。可動部15の回転軸15aは、対物レンズ12の光軸12aに対して傾斜している。
【0016】
図1の倒立顕微鏡では、対物レンズ12の光軸12aと平行な方向にレボルバ7を移動可能である。例えば、対物レンズ12が光路LPに配置された状態において、その光軸12aは鉛直方向と平行であり、対物レンズ12を備えるレボルバ7は、標本Sを支持するステージ3に対して鉛直方向に移動可能である。なお、ステージ3が鉛直方向に移動可能でもよいし、対物レンズ12を備えるレボルバ7およびステージ3がそれぞれ鉛直方向に移動可能でもよい。
【0017】
図1において、対物レンズ12は、昇降機構18(上下動部)によってレボルバ7が鉛直方向に移動することにより、移動する。昇降機構18は、ベース2の底部に設けられ、レボルバ7の固定部16を支持する。昇降機構18は、固定部16を鉛直方向に移動させることで、固定部16に支持された可動部15、及び可動部15に取り付けられた対物レンズ12を鉛直方向に移動させる。例えば、昇降機構18は、固定部16を上方に移動させることで、対物レンズ12を上方に移動させ、対物レンズ12を標本S(ステージ3)に接近させる。なお、昇降機構18は、モーターやアクチュエータなどからの駆動力によって固定部16を移動させるものでもよいし、観察者が操作ノブを操作し人力を伝達することによって固定部16を移動させるものでもよい。
【0018】
顕微鏡1は、液浸観察が可能な液浸顕微鏡であり、液体供給装置8は、対物レンズ12と標本Sとの間の空間に液体(浸液、液浸媒質)を供給可能である。この液体としては、例えば、水、油などが用いられる。液体供給装置8は、例えば、レボルバ7に設けられるが、レボルバ7と別の部分に設けられてもよく、レボルバ7を備えない顕微鏡にも利用可能である。
【0019】
ところで、液浸観察を行う場合、一般的に、標本が保持されるスライドガラスや培養容器の底部(標本保持部材)と対物レンズとの間に保持される液体の量が適切であることが望まれる。ここで、焦点距離が異なる複数の対物レンズから所望の対物レンズを選択して用いる場合、対物レンズのうち最も標本側の光学部材(先玉レンズ)と、スライドガラスとの間のギャップ(ワーキングディスタンス)が対物レンズの種類に応じて変化する。そこで、実施形態に係る液体供給装置8は、標本保持部材と対物レンズ12との間に供給される液体の量を精度よく調整可能とした。以下、液体供給装置8について、詳しく説明する。
【0020】
図2(A)は液体供給装置8を上方から見た平面図、図2(B)液体供給装置8を側方から見た側面図である。液体供給装置8は、供給口31aと、回収口32aとを備える。供給口31aは、対物レンズ12と観察対象物(図1の標本S)との間に液体を供給する。回収口32aは、供給口31aから供給された液体を回収する。供給口31aおよび回収口32aは、対物レンズ12の光軸方向(光軸12aに平行な方向)における位置が互いに異なる条件と、対物レンズ12の光軸12aに対して垂直な方向における光軸12aに対する位置が互いに異なる条件との一方または双方を満たす。
【0021】
図2(B)において、供給口31aおよび回収口32aは、対物レンズ12の光軸方向における位置が互いに異なる条件を満たす。回収口32aの少なくとも一部は、対物レンズ12の光軸方向において、供給口31aと異なる位置に配置される。図2(B)において、回収口32aの少なくとも一部は、供給口31aよりも上方に配置される。なお、実施例に係る供給口31aおよび回収口32aの位置については、後に図5から図7でも説明する。
【0022】
液体供給装置8は、図2(B)に示すように、ノズルユニット21と、挿脱機構22とを備える。
【0023】
挿脱機構22は、カム23およびカムフォロア24を含む。カム23は、対物レンズ12を支持する支持部(レボルバ7の固定部16)に設けられる。カムフォロア24を備えるステイ26は、観察対象物(標本S)を支持するステージ3の対物レンズ側の面に設けられる。カム23は、レボルバ7の固定部16に対して、鉛直方向に相対移動しないように固定されている。カム23には回転軸25が固定されており、回転軸25は、固定部16に回転可能に支持されている。カム23は、回転軸25の周りで固定部16に対して回転可能である。回転軸25は、例えば水平方向と平行に延びており、カム23は、固定部16に対して回転軸25に垂直な方向に移動しないように支持される。
【0024】
カム23は、カム溝23aを有し、カムフォロア24(ピン)はカム溝23aの内壁に合わされている。カム溝23aの内壁はカムフォロア24(ピン)の外壁に接触している。カムフォロア24は、ステイ26に取り付けられており、ステイ26はステージ3に固定されている。カムフォロア24は、ステージ3に対して移動しないように、固定されている。従って、供給口31a及び回収口32aの光軸12a方向の位置は、可動部15における対物レンズ12の装着部(胴付面)から一定の位置に位置決めが可能となる。
【0025】
ノズルユニット21は、カム23上に取り付けられ、カム23と一体化されている。ノズルユニット21は、供給口31aを有する供給部材31と、回収口32aを有する回収部材32とを備える。ノズルユニット21には、流入口21aおよび流出口21bが設けられる。流入口21aは、配管33を介して、液体の送出装置36(図1参照)と接続される。流出口21bは、配管34を介して、吸引装置37(図1)参照と接続される。ノズルユニット21には、流入口21aと供給口31aとを結ぶ内部流路(管路)、及び流出口21bと回収口32aとを結ぶ内部流路(管路)が設けられている。
【0026】
供給口31aは、対物レンズ12の上方の光路LPに液体を供給する。供給口31aは、例えば、対物レンズ12のうち最も標本Sに近い光学部材(例、先玉レンズ)のうち、対物レンズ12の鏡筒から外部へ露出している部分35(図2(A)に示す)の外周35aに対して、水平方向において内側に配置される。なお、供給口31aは、水平方向において、対物レンズ12の鏡筒における先端面の位置に配置されてもよい。この場合、例えば、対物レンズ12の鏡筒における先端面の一部に撥液性の領域を設け、この領域の内側に液体が保持される構成にしてもよい。
【0027】
回収口32aは、供給口31aよりも上方に配置され、対物レンズ12の上方の光路LPから液体を回収する。回収口32aは、対物レンズ12の光軸12aに対する放射方向において、供給口31aと異なる位置に配置される。回収口32aから対物レンズ12の光軸12aまでの距離は、供給口31aから対物レンズ12の光軸12aまでの距離よりも短く設定される。例えば、回収口32aは、水平方向において、対物レンズ12の光軸12aとほぼ同じ位置に配置される。供給口31aは、対物レンズ12の光軸12aに対する放射方向において、回収口32aよりも外側に配置される。
【0028】
図2(A)に示すように、供給部材31および回収部材32は、それぞれ、水平方向に直線的に延びており、対物レンズ12の光軸12aの方向において、供給部材31と回収部材32とが重ねて配置される。ここでは、供給部材31と回収部材32が一体化されている。なお、供給部材31、回収部材32は、上述の構成に限定されず、適宜変更可能である。供給部材31、回収部材32の変形例については、図9などで説明する。
【0029】
ここで、液体供給装置8の構成に基づき、実施形態に係る液体供給方法について説明する。図3は、本実施形態に係る液体供給装置の液体供給および液体回収の動作を示す図である。図3(A)に示すように、液体の送出装置36(供給ポンプ)から液体の供給が停止された状態において、供給部材31および回収部材32は、対物レンズ12と位置決めされる。図3(A)の状態において、供給口31aおよび回収口32aは、対物レンズ12の光軸方向における位置が互いに異なる条件と、対物レンズ12の光軸12aに対して垂直な方向における光軸12aに対する位置が互いに異なる条件との一方または双方を満たすように、配置される。
【0030】
次に、図3(B)に示すように、送出装置36は液体の供給を開始し、吸引装置37は、送出装置36による送出の少なくとも一部と並行して吸引を行う。例えば、送出装置36と吸引装置37とは、同じスイッチで動作開始と停止とが切り替えられ、ほぼ同時に動作を開始する。これにより、対物レンズ12上に液滴状に液体LQが貯留され、供給された液体の総量が増加するにつれて、液面LQaの高さが増加する。供給される液は、図3(B)に示されるように対物レンズ12上に半球状の形状を成して満たされていく。
【0031】
図3(B)の状態においては、液面LQaの上端が回収口32aの高さまで達しておらず、回収口32aから液体LQがほぼ回収(吸引)されない。この状態では、回収口32aから、例えば雰囲気ガス(例、空気)が回収される。図3(C)に示すように、液面LQaの上端が回収口32aの高さまで達すると、回収口32aの位置で液体LQが回収されるようになり、液面LQaの高さがほぼ一定に保たれる。これにより、対物レンズ12上に所定の量の液体LQが保持される。
【0032】
つまり、対物レンズ12上に供給される液の液面LQaの高さは、対物レンズ12の先端部と回収口32aとの間隔で規定されているが、対物レンズ12の種類によって対物レンズ12の鏡筒の長さに差異がある。これを考慮した場合、対物レンズを保持する可動部15の胴付面(観察位置にある状態)を基点として液の液面LQaの高さを規定してもよい。規定される液面の高さに応じ、供給口31aの先端と回収口32aの先端は規定される。本実施形態では、対物レンズを保持する可動部15の胴付面(観察位置にある状態)から供給口31aの先端の間隔は約60mmとした。
【0033】
また、本実施形態では、供給口31aの先端と回収口32aの先端の径は同じとし、各々の内径は約0.3mm、外径は0.5mmとした。この内径は、液体の吸引や供給をスムーズに行えることを考慮しているが、これに限定されることなく、より大きな径としてもよい。送出供給口31aの先端と回収口32aの先端の径は異なっていても良く、対物レンズ12上に一定の液を供給することを考慮すれば、供給口31aの内径よりも回収口32aの内径を大きくすることも可能である。
【0034】
また、供給口31aの内径よりも回収口32aの内径を小さくすることも可能であるが、対物レンズ12上に供給される液の液量が回収される液量より多い場合、既定の液量を超える液が対物レンズ12上に供給されてしまうおそれがある。このような場合、吸引装置37による液体の吸引量や送出装置36による液体の送出量を制御することにより、規定の量の液を対物レンズ12上に供給することが可能である。液の供給量は、約15マイクロリットル/秒以上20マイクロリットル/秒以下が好ましい。また、対物レンズ12上へ液を規定量供給するために、供給側を15マイクロリットル/秒とし、吸引側を20マイクロリットル/秒とすることが好ましい。
【0035】
対物レンズ12上に供給する液体の量は、ワーキングディスタンスによって異なってくるが、例えば、約10マイクロリットル以上約100マイクロリットル以下である。ワーキングディスタンスは、対物レンズの種類によっても異なるが、例えば、約0.15mm以上約2.00mm以下である。
【0036】
対物レンズ12上の液体LQが所定の量になった後、送出装置36による液体LQの供給が停止され、吸引装置37による吸引が停止される。次に、供給部材31および回収部材32は、挿脱機構22(図2(B)参照)によって、対物レンズ12の上方の光路から退避する。この後、対物レンズ12とステージ3とを接近させ、標本が保持されるスライドガラスや培養容器の底部(標本保持部材)との間に液体LQが挟持された状態にさせる。
【0037】
前記の例では、回収口32aにおける吸引動作は、液体の供給動作と共に開始されるが、液体が供給され液面LQの上端が回収口32aの高さに達した時点、または達する直前に回収動作を介してもよい。この制御は、供給口31aと回収口32aの径や液体の供給量、回収量、または両口の位置関係によって適宜制御することが好ましい。
【0038】
このように、実施形態に係る液体供給方法は、対物レンズ12と観察対象物(標本S)との間の光路LPに液体を供給することと、光路に対する液体の供給位置(供給口31a)よりも上方において光路LPから液体を回収することと、を含む。
【0039】
図4は、本実施形態に係る挿脱機構およびその動作を示す図である。図4(A)には挿脱機構22を側方から見た側面図を示し、図4(B)にはノズルユニット21を対物レンズ12の光軸方向である上方から見た平面図を示した。
【0040】
挿脱機構22は、ステージ3に対する対物レンズ12の光軸方向の相対的な移動に連動して、供給部材31および回収部材32を移動させる。カム23におけるカム溝23aの内壁は、直線的に延びる第1壁W1と、第1壁W1に対して交差する方向に延びる第2壁W2とを含む。カムフォロア24はカム溝23aの内壁に接しており、カム23は、カム溝23aの内壁とカムフォロア24とが離れないように、バネなどによってカムフォロア24へ押し付けられている。
【0041】
図4(A)の左図において、カムフォロア24は、カム23のカム溝23aの第1壁W1に接している。この状態から、レボルバ7(図1参照)の固定部16が上方に移動すると、固定部16に支持されている対物レンズ12およびカム23が上方に移動する。一方、カムフォロア24は、ステージ3に支持されており、鉛直方向の位置が変化しない。そのため、カム23は、カムフォロア24に対して相対的に上方に移動し、カム溝23aの第2壁W2がカムフォロア24に接触する。
【0042】
第2壁W2は、第1壁W1に対して交差する方向に延びており、カムフォロア24から下方へ向かって押されることで、その分力により水平方向の力を受ける。カム23は、この分力によって回転軸25の周りで回転し、ノズルユニット21は、図4(A)の右図および図4(B)に示すように、対物レンズ12の上方の光路LPから退避する。図4(A)の右図に示すように対物レンズがステージ3に接近する。この状態が観察可能になる位置である。
【0043】
また、対物レンズ12が上方に移動することにより、対物レンズ12上の液体は、標本Sを保持する標本保持部材9(図1参照)の下面に接触し、対物レンズ12と標本保持部材9との間の空間が液体で満たされる。この状態において、液体は少なくとも対物レンズ12の光軸12aを含む観察領域を満たす状態になっていればよい。
【0044】
上述の実施形態において、液体供給装置8は、対物レンズ12と観察対象物との間の光路LPに液体を供給する供給口31aと、供給口31aよりも上方に配置され、光路LPから液体を回収する回収口32aと、を備える。
【0045】
したがって、図3に示すように対物レンズ12上の液面LQaの高さが回収口32aの位置(高さ)により定まる。よって、対物レンズ12の上方の光路LPに保持される液体の量が回収口32aの位置により調整されるので、光路LPに保持される液体の量を精度よく調整することができる。
【0046】
また、上述の実施形態において、回収口32aは、対物レンズ12の光軸12aに対する放射方向において、供給口31aと異なる位置に配置される。したがって、供給口31aから供給された液体が直接的に回収口32aに回収されることを抑制することができ、例えば、対物レンズ12上に液体を効率よく供給することができる。なお、回収口32aは、対物レンズ12の光軸12aに対する放射方向において、供給口31aと同じ位置に配置されてもよい。
【0047】
また、上述の実施形態において、回収口32aから対物レンズ12の光軸12aまでの距離は、供給口31aから対物レンズ12の光軸12aまでの距離よりも短く設定される。したがって、対物レンズ12上の液滴を光軸12aに対して回転対称な形状に近づけることが容易であり、例えば視野の中心に対して回転対称的に液体を分布させることができる。なお、回収口32aから対物レンズ12の光軸12aまでの距離は、供給口31aから対物レンズ12の光軸12aまでの距離と同じに設定されてもよいし、長く設定されてもよい。
【0048】
また、上述の実施形態において、液体供給装置8は、供給口31aを有する供給部材31と、回収口32aを有する回収部材32と、供給部材31および回収部材32を光路LPに挿脱する挿脱機構22と、を備える。したがって、例えば、観察時において供給部材31および回収部材32が視野の妨げになることを抑制すること、対物レンズ12との干渉(衝突)を避けること等ができる。
【0049】
また、上述の実施形態において、対物レンズ12の光軸12aの方向において、供給部材31と回収部材32とが重ねて配置される。したがって、供給部材31および回収部材32の設置スペース(フットプリント)を減らすことができ、例えば供給部材31および回収部材32と他の部材との干渉(衝突)を避けることができる。
【0050】
なお、対物レンズ12の光軸12aの方向において、供給部材31と回収部材32とが重ならないように配置されてもよい。例えば、供給口31aから供給された液体が回収口32aに直接的に吸い込まれないように、対物レンズ12の光軸12aに交差する面内で、供給部材31と回収部材32の位置をずらしてもよいが、必須では無い。例えば、吸引装置37による液体の吸引量や送出装置36による液体の送出量を制御すれば、供給部材31と回収部材32との位置ずらさなくてもよい。供給部材31と回収部材32との位置をずらす場合、供給口31aの先端と回収口32aの先端との光軸12aに交差する面内でのずらし量は、約1mm以上約2mm以下が好ましい。
【0051】
本実施形態では、図3に示すように回収口32aは、対物レンズ12の光軸12aの位置になるように位置決めされる。これは、対物レンズ12上に供給される液の形状が半球状であることに起因する。すなわち図3(B)、(C)のように、対物レンズ12上に供給された液は半球状となる。その液面LQaが半球状の液の頂点となり、対物レンズ12の光軸に略一致する。このため、半球状となった液の最も高い位置に配置された回収口32aで液の回収を実行でき、規定量の液を対物レンズ12上に供給しやすくなる。
【0052】
回収口32aの光軸12aに対する垂直方向の位置は、上記の様に光軸12aに一致した位置でもよいし、光軸12aからずれた位置でもよい。垂直方向において回収口32aと光軸12aとで位置がずれている場合、対物レンズ12上に供給される液体の量により、対物レンズ12上に形成される液体の体積も異なってくることから、供給する液量を加味して調整すればよい。
【0053】
図5は、対物レンズの光軸に対して垂直な方向から見た場合の供給口と回収口との位置関係を示す図である。図5(A)において、供給口31aの先端と回収口32aの両先端は、光軸12a方向に沿って直線状に隣接して設置される。供給口31aと回収口32aとの位置関係は、図5(A)の配置に限定されるものではなく、図5(B)あるいは図6の配置でもよい。図5(B)において、光軸12上には、回収口32aのみ位置決めされ、供給口31aは光軸12から外れた位置に位置決めされる。
【0054】
図6は、供給口と回収口との位置関係を示す図である。図6(A)は、対物レンズの光軸に対して垂直な方向から見た図であり、図6(B)は、対物レンズの光軸方向から見た図である。図6において、供給口31aおよび回収口32aは、対物レンズ12の光軸12aに対して垂直な方向における光軸12aに対する位置が互いに異なる条件を満たす。回収口32aの少なくとも一部は、対物レンズ12の光軸12aと垂直な方向において、供給口31aと異なる位置に配置される。
【0055】
図6(A)において、光軸12上には回収口32aが位置決めされ、供給口31aは、光軸12からずれた位置に配置される。ここでは、供給口31aおよび回収口32aとが、光軸方向において同じ位置(対物レンズ12から同じ高さ)に配置される。また、図6(B)に示すように、供給口31aと回収口32aとは、光軸12方向に対する垂直方向の位置であって供給部材31及び回収部材32の長手方向において、位置がずれている。
【0056】
図5および図6において、供給口31aと回収口32aは、接触して位置決めされる。この場合、省スペース化することができる。なお、供給口31aと回収口32aは、間隔を空けて位置決めされてもよい。この間隔は、例えば、ワーキングディスタンスや、対物レンズ12とステージ3の間隔を考慮して決定される。
【0057】
図7は、対物レンズの光軸に対して垂直な方向から見た場合の供給口と回収口との位置関係を示す図である。図7(A)において、供給口31aは、回収口32aの内側に配置される。すなわち、図2に示した供給部材31は、回収部材32内に挿入されている。供給部材31は、その外周が回収部材32の内周が覆われるように配置される。この配置において、回収口32aの一部は、対物レンズ12の光軸方向において、対物レンズ12の先端から供給口31aよりも遠い位置に配置される。これは、対物レンズ12に液体を供給する場合の対物レンズ12上に形成される液体の形状を考慮したものであり、液体は対物レンズ12上に半球状の形状を維持するように供給される。そのため、半球状の頂部に回収口32aが掛かる位置関係とすることで、対物レンズ12上に供給する液の液量を制御可能となる。
【0058】
また、図7(B)において、供給口31aは、回収口32aの中心よりも対物レンズ12に近い方に偏心して配置される。この場合、回収口32aの下部領域は、供給口31aに占められる比率が図7(A)よりも高くなる。この場合、供給口31aの供給領域と回収口32a回収領域の光軸方向の機能の差別化がより明確になる。図7(A)、(B)において、供給口31aと回収口32aは、対物レンズ12の光軸方向において直線上に位置決めされているが、これに限定されるものではなく、どちらか一方が光軸からずれて位置決めされてもよい。また、図7(C)に示すように、回収口32aは、供給口31aの内側に配置されてもよい。
【0059】
また、上述の実施形態において、対物レンズ12の光軸12aの方向において、対物レンズ12と観察対象物(標本S)とが相対的に移動可能であり、挿脱機構22は、対物レンズ12と観察対象物との相対的な移動に連動して、供給部材31および回収部材32を移動させる。したがって、例えば、供給部材31および回収部材32を移動させる上で複雑な制御が不要となり、また、供給部材31および回収部材32と対物レンズ12との干渉(衝突)を避けることができる。上述の実施形態において、挿脱機構22は、対物レンズ12と観察対象物とを相対的に移動させる駆動力を利用して供給部材31および回収部材32を移動させるので、供給部材31および回収部材32を移動させる駆動力を供給するアクチュエータなどを省くことができる。
【0060】
なお、挿脱機構22は、対物レンズ12と観察対象物との相対的な移動と独立して、供給部材31および回収部材32を移動させてもよい。また、挿脱機構22は、対物レンズ12と観察対象物とを相対的に移動させる駆動力を利用せずに、アクチュエータなどによって供給部材31および回収部材32を移動させてもよい。
【0061】
上述の実施形態において、液体供給装置8は、供給部材31および回収部材32を含むノズルユニット21を備え、挿脱機構22は、対物レンズ12と観察対象物との相対的な移動に連動して、ノズルユニット21を対物レンズ12の光軸12aと交差する軸の周りで回転させる。したがって、挿脱機構22は、構成をシンプルにしつつ、対物レンズ12上の光路LPに供給部材31および回収部材32を効率よく挿脱することができる。なお、挿脱機構22は、供給部材31および回収部材32を互いに独立させて移動させてもよい。また、挿脱機構22は、供給部材31および回収部材32の少なくとも一方を、光軸12aと平行な軸の周りで回転させてもよいし、光軸12aと交差する面内で平行移動させてもよい。
【0062】
また、上述の実施形態において、挿脱機構22は、観察対象物(標本S)を支持するステージ3と対物レンズ12を支持する支持部とのうち一方に設けられるカム23と、ステージ3および支持部の他方に設けられカム23に合わされるカムフォロア24と、を備える。
【0063】
したがって、挿脱機構22は、供給部材31および回収部材32を対物レンズ12の移動に連動して、移動させることができる。なお、カム23がステージ3に設けられ、カムフォロア24が対物レンズ12を支持する支持部に設けられてもよい。また、挿脱機構22は、カム23およびカムフォロア24を用いる構成以外のものでもよい。
【0064】
また、上述の実施形態において、液体供給装置8は、供給口31aと接続され、液体を送出する送出装置36と、回収口32aと接続される吸引装置37と、を備え、送出装置36による送出の少なくとも一部と並行して吸引装置37による吸引が行われる。したがって、液体の送出を開始してから吸引を終了するまでの時間を短縮すること、送出装置36と吸引装置37との制御をシンプルにすることなどができる。なお、吸引装置37は、送出装置36による送出が終了した後に、吸引を開始してもよい。
【0065】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。本実施形態において、上述の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。図8は、本実施形態に係る液体供給装置およびその動作を示す図である。本実施形態に係る顕微鏡は、正立顕微鏡である。対物レンズ12は、標本Sに対して上方に配置される。図8(A)に示すように、倒立顕微鏡の場合と同様に、回収口32a(回収部材32)は、供給口31a(供給部材31)よりも上方に配置される。これは、液体の供給と回収において形成される液体が配置される部材が対物レンズ12上か標本保持部材9(図1参照)上であるかの違いがあるが、何れの場合も供給される液体の形態が半球状であることに起因する。供給部材31および回収部材32は、液体の送出装置36(供給ポンプ)から液体の供給が停止された状態において、対物レンズ12と位置決めされる。
【0066】
次に、図8(B)に示すように、送出装置36は液体LQの供給を開始し、吸引装置37は、送出装置36による送出の少なくとも一部と並行して吸引を行う。これにより、標本保持部材9(図1参照)上に液滴状に液体LQが貯留され、供給された液体の総量が増加するにつれて、液面LQaの高さが増加する。液面LQaの上端が回収口32aの高さまで達すると、回収口32aの位置で液体LQが回収されるようになり、液面LQaの高さがほぼ一定に保たれる。これにより、標本保持部材9上に所定の量の液体LQが保持される。
【0067】
対物レンズ12上の液体LQが所定の量になった後、図8(B)に示すように、送出装置36による液体LQの供給が停止され、吸引装置37による吸引が停止される。次に、供給部材31および回収部材32は、標本保持部材9の上方(対物レンズ12の下方)の光路LPから退避する。
【0068】
[変形例]
図9は、変形例に係る供給部材および回収部材を示す図である。図9(A)に示す第1変形例の供給部材31および回収部材32は、対物レンズ12の光軸12aの側の端部(先端)の位置がほぼ同じである。供給口31aは、下方に向かって開いており、回収口32aは、側方に向かって開いている。このように、供給口31aと回収口32aとで開放されている方向が異なる場合、供給口31aから供給された液体LQが回収口32aから直接的に回収される(吸い込まれる)ことが抑制される。
【0069】
図9(B)に示す第2変形例の供給部材31および回収部材32は、対物レンズ12の光軸12aに対して異なる方向から延びている。例えば、供給部材31と回収部材32とは、向き合うように配置され、水平方向において供給口31aの位置と回収口32aの位置とがほぼ同じである。水平方向において、供給口31aの位置と回収口32aの位置は、それぞれ、対物レンズ12の光軸12aとほぼ同じ位置である。
【0070】
図9(C)に示す第3変形例の供給部材31および回収部材32は、対物レンズ12の光軸12aに対して同じ方向から延びている。例えば、水平方向において供給口31aの位置と回収口32aの位置とがほぼ同じである。水平方向において、供給口31aの位置と回収口32aの位置は、それぞれ、対物レンズ12の光軸12aとほぼ同じ位置である。このような供給部材31および回収部材32を用いる場合、回収の開始タイミングを供給の開始タイミングより遅らせることで、供給口31aから供給された液体LQが回収口32aから直接的に回収されることを抑制してもよい。
【0071】
また、回収口32aの撥液性を供給口31aの撥液性に対して調整することにより、供給口31aから供給された液体LQが回収口32aから直接的に回収されることを抑制してもよい。例えば、回収口32aの撥液性を供給口31aの撥液性より高くしてもよい。なお、供給口31aから供給された液体LQの一部が回収口32aから直接的に回収されてもよい。
【0072】
なお、本発明の技術範囲は、上述の実施形態などで説明した態様に限定されるものではない。上述の実施形態などで説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述の実施形態などで説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の実施形態などで引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【0073】
なお、上述の実施形態において、顕微鏡1は、透過照明を用いるが、落射照明を用いるものでもよい。この場合、標本Sで反射散乱した光、あるいは標本Sに含まれる蛍光物質からの蛍光を用いて、標本Sの像を観察することができる。
【0074】
実施形態に係る液体供給装置は、対物レンズ上への液体の供給と回収の実行を自動的に制御することが可能であり、液浸観察でのタイムラプス観察の開始から終了までの各動作を自動化することが可能になる。
【0075】
自動制御としては、タイムラプス観察において対物レンズ上に供給されている液体を交換する時期を予め定めた時期に回収と供給の動作を実行させる制御があげられる。液体の回収と供給の動作は、観察時期により近い時期に行うようにすることが好ましい。更にこの場合、液体の回収と供給に要する時間を考慮し、液体の回収と供給動作が観察時期と重複がないようにすることが重要である。液体の回収と供給の動作には、対物レンズとステージの間隔を広げる動作と液体の回収と供給動作と、液体の交換が終了した後、再度対物レンズとステージの間隔を戻す動作が含まれる。
【0076】
また、撮影された画像を自動的に解析し、液体の交換の必要性を判断してもよい。判断は、撮像された画像の明るさやコントラスト、焦点のずれ等を自動的に解析することで可能である。この画像とは観察対象物である細胞自身の画像や細胞が存在していない培地の画像があげられる。タイムラプス観察が開始される前の段階における細胞や培地の画像情報を予め取得しておき、この画像を基礎情報とし、タイムラプス観察開始後にこの基礎情報と観察画像とを対比し、対比情報から液体の状態の変化を判断することが可能である。この場合、変化が生じることが予想される観察対象物である生細胞の画像を除く、例えば培地の画像を基に対比することが好ましい。生細胞の画像情報を使用する場合、通常の培養過程では生じることがないと想定できる画像の特徴を基にしても良い。例えば、急激な画像全体の明るさの変化や細胞の輪郭の急激な焦点ずれなどを検出することでもよい。このいようにタイムラプス観察中における画像を基に液体の交換の要否を判断することで、より無駄の無い液体の交換が可能になる。
【0077】
上記の様に液体の交換の要否判断のための画像の取得は、タイムラプス観察における観察時期に撮影された観察画像を使用しても良いし、観察時期となる前に液体の交換の必要性を判断するための画像を取得し、これを用いて判断しても良い。観察時期に取得した観察画像を用いて判断する場合、液体の交換が必要と判断された場合、液体の回収と供給を実行した後に再度、観察画像を取得し直すことも有効である。観察画像を取得し直すステップが入った場合、予め定めたタイムラプス観察のスケジュールを自動的に変更するようにしてもよい。
【0078】
生細胞のタイムラプス観察の場合、細胞の状態が変化する過程を観察するが、状態の変化は一定ではなく、細胞の培養時期によって大きく異なる。そのため、細胞の状態の変化が大きくなる時期を中心に液体の交換を実行することも可能である。予め細胞の状態変化が大きくなる時期が判っている場合、この期間に液体の交換を実行し、この時期以外の時期は液体の交換を実行しないか、または液体交換の間隔を大きくすることも有効である。
【符号の説明】
【0079】
1・・・顕微鏡、7・・・レボルバ、8・・・液体供給装置、12・・・対物レンズ、12a・・・光軸、21・・・ノズルユニット、22・・・挿脱機構、23・・・カム、24・・・カムフォロア、31・・・供給部材、31a・・・供給口、32・・・回収部材、32a・・・回収口、36・・・送出装置、37・・・吸引装置、S・・・標本、LP・・・光路、LQ・・・液体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9