特許第6904485号(P6904485)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6904485ウレタン樹脂組成物、発泡ウレタンシート、及び、合成皮革
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6904485
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】ウレタン樹脂組成物、発泡ウレタンシート、及び、合成皮革
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/08 20060101AFI20210701BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20210701BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20210701BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20210701BHJP
   D06N 3/14 20060101ALI20210701BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20210701BHJP
   C08J 3/07 20060101ALI20210701BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20210701BHJP
【FI】
   C08L75/08
   C08K5/09
   C08G18/00
   C08G18/00 C
   C08G18/00 L
   C08G18/08 019
   D06N3/14 101
   C08J9/04 101
   C08J3/07
   C08G101:00
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-545196(P2020-545196)
(86)(22)【出願日】2020年3月24日
(86)【国際出願番号】JP2020012895
(87)【国際公開番号】WO2020217813
(87)【国際公開日】20201029
【審査請求日】2020年8月27日
(31)【優先権主張番号】特願2019-81872(P2019-81872)
(32)【優先日】2019年4月23日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】藤下 章恵
(72)【発明者】
【氏名】前田 亮
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2019−112564(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/017724(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/140025(WO,A1)
【文献】 特開2005−239841(JP,A)
【文献】 特開2004−143641(JP,A)
【文献】 特開2000−345026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 75/00−75/16
C08G 18/00−18/87
C08G 101/00
C08K 5/00−5/59
C08J 3/00−3/28
D06N 3/00−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン樹脂(A)、水(B)、及び、芳香環を有さず、かつ炭素原子数が10以上の疎水部を有する界面活性剤(C)を含有するウレタン樹脂組成物であり、前記ウレタン樹脂組成物が、ウレタン樹脂(A)に由来する、カーボネート構造(X)とオキシアルキレン構造(Y)とを有し、更に、前記ウレタン樹脂(A)が、カルボキシル基を有するグリコール化合物、又は、スルホニル基を有する化合物を原料とするものであり、前記界面活性剤(C)が、ステアリン酸塩であることを特徴とするウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記カーボネート構造(X)と前記オキシアルキレン構造(Y)との質量比[X/Y]が、10/90〜90/10の範囲である請求項1記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤(C)が、ステアリン酸塩である請求項1又は2記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項記載のウレタン樹脂組成物により形成された、密度が200〜1,000kg/mであることを特徴とする発泡ウレタンシート。
【請求項5】
少なくとも、基材(i)、及び、ポリウレタン層(ii)を有する合成皮革であって、前記ポリウレタン層(ii)が、請求項記載の発泡ウレタンシートにより形成されているものであることを特徴とする合成皮革。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン樹脂組成物、発泡ウレタンシート、及び、合成皮革に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、優れた機械的強度、及び柔軟性を有することから、これまでコーティング剤、接着剤等の様々な用途で使用されている。その中で、これまではジメチルホルムアミド(DMF)を含有する溶剤系ウレタン樹脂が広く利用されてきたが、DMFの法的規制は年々厳しくなっており、弱溶剤化、水系化、無溶剤化等に環境対応製品の開発が急務となっている。
【0003】
その中で、ウレタン樹脂を水中に分散させた水系ウレタン(PUD)は最も盛んに研究がなされている。この水系ウレタンを様々な用途に利用する際には、風合い等の向上を目的に発泡体として成型するニーズも多い。水系ウレタンにより発泡体を成型する方法としては、例えば、マイクロカプセルを配合したり、二酸化炭素等の気体をPUD配合液に分散させる機械発泡などが検討されている(例えば、特許文献1を参照。)。しかしながら、マイクロカプセルを配合する方法では、得られる発泡体の風合いが不良となったり、マイクロカプセルの膨張による平滑性不良が問題となる。また、気体を分散させる方法では、発泡体を製造する過程で配合液にかませた気泡が消失等するため、泡サイズ等の制御が困難であり、風合いの良好な発泡体を安定して得ることは困難であった。
【0004】
また、風合いに加え、近年では人の皮脂に含まれるオレイン酸への耐性や、低温時での実使用にも耐え得る低温屈曲性へのニーズも高く、これらトレードオフの関係にある要求特性を満たすことは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−191810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、水を含有するウレタン樹脂組成物を使用して、風合い、耐オレイン酸性、及び、低温屈曲性に優れるウレタン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ウレタン樹脂(A)、水(B)、及び、芳香環を有さず、かつ炭素原子数が10以上の疎水部を有する界面活性剤(C)を含有するウレタン樹脂組成物であり、前記ウレタン樹脂組成物が、ウレタン樹脂(A)に由来する、カーボネート構造(X)とオキシアルキレン構造(Y)とを有することを特徴とするウレタン樹脂組成物を提供することである。
【0008】
また、本発明は、ウレタン樹脂組成物により形成された、密度が200〜1,000kg/mであることを特徴とする発泡ウレタンシートを提供するものである。また、本発明は、少なくとも、基材(i)、及び、ポリウレタン層(ii)を有する合成皮革であって、前記ポリウレタン層(ii)が、前記発泡ウレタンシートにより形成されているものであることを特徴とする合成皮革を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のウレタン樹脂組成物は、水を含有するウレタン樹脂組成物を使用して、風合い、耐オレイン酸性、及び、低温屈曲性に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のウレタン樹脂組成物は、ウレタン樹脂(A)、水(B)、及び、芳香環を有さず、かつ炭素原子数が10以上の疎水部を有する界面活性剤(C)を含有し、ウレタン樹脂(A)に由来する、カーボネート構造(X)とオキシアルキレン構造(Y)とを有するものである。
【0011】
前記ウレタン樹脂(A)は、後述する水(B)中に分散等し得るものであり、例えば、アニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基等の親水性基を有するウレタン樹脂;乳化剤で強制的に水(B)中に分散したウレタン樹脂などを用いることができる。これらのウレタン樹脂(A)は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、製造安定性の点から、親水性基を有するウレタン樹脂を用いることが好ましく、アニオン性基を有するウレタン樹脂がより好ましい。
【0012】
前記アニオン性基を有するウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、カルボキシル基を有するグリコール化合物、及び、スルホニル基を有する化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を原料として用いる方法が挙げられる。
【0013】
前記カルボキシル基を有するグリコール化合物としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−吉草酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0014】
前記スルホニル基を有する化合物としては、例えば、3,4−ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、2,6−ジアミノベンゼンスルホン酸、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルスルホン酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0015】
前記アニオン性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料を用いる場合の使用量としては、より一層優れた水分散安定性が得られる点から、ウレタン樹脂(A)の原料の合計質量中0.1〜4.8質量%の範囲であることが好ましく、0.5〜4質量%の範囲であることがより好ましく、1〜3質量%の範囲であることが更に好ましい。
【0016】
前記カルボキシル基及びスルホニル基は、ウレタン樹脂組成物中で、一部又は全部が塩基性化合物に中和されていてもよい。前記塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミン;モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のアルカノールアミン;ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム等を含む金属塩基化合物などを用いることができる。
【0017】
前記カチオン性基を有するウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、アミノ基を有する化合物の1種又は2種以上を原料として用いる方法が挙げられる。
【0018】
前記アミノ基を有する化合物としては、例えば、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン等の1級及び2級アミノ基を有する化合物;N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン等のN−アルキルジアルカノールアミン、N−メチルジアミノエチルアミン、N−エチルジアミノエチルアミン等のN−アルキルジアミノアルキルアミンなどの3級アミノ基を有する化合物などを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0019】
本発明のウレタン樹脂組成物は、前記ウレタン樹脂(A)に由来する、カーボネート構造(X)とオキシアルキレン構造(Y)とを有することにより、優れた耐オレイン酸性及び低温屈曲性を得ることができる。前記カーボネート構造(X)とオキシアルキレン構造(Y)とは、1種のウレタン樹脂(A)から供給されていてもよいし、2種以上のウレタン樹脂(A)より別々に供給されていてもよい。なお、前記カーボネート構造(X)[O−CO−O]は、後述するポリカーボネートポリオール(a2−1)に由来するものであり、前記オキシアルキレン構造(Y)[O−CH−CH]は、後述するポリエーテルポリオール(a2−2)に由来するものである。
【0020】
前記カーボネート構造(X)と前記オキシアルキレン構造(Y)との質量比[X/Y]が、優れた風合いを維持し、耐オレイン酸性及び低温屈曲性を高いレベルで両立できる点から、10/90〜90/10の範囲であることが好ましく、10/90〜60/40の範囲がより好ましい。
【0021】
また、前記質量比[X/Y]としては、前記カーボネート構造(X)とオキシアルキレン構造(Y)とが、1種のウレタン樹脂(A)から供給される場合には、10/90〜90/10の範囲であることが好ましく、10/90〜60/40の範囲がより好ましい。
【0022】
また、前記質量比[X/Y]としては、前記カーボネート構造(X)とオキシアルキレン構造(Y)とが、2種以上のウレタン樹脂(A)より別々に供給される場合には、10/90〜90/10の範囲であることが好ましく、10/90〜60/40の範囲がより好ましい。なお、係る場合は、前記カーボネート構造(X)とオキシアルキレン構造(Y)とは、2種以上のウレタン樹脂(A)より供給される総和を示す。
【0023】
前記カーボネート構造(X)とオキシアルキレン構造(Y)とは、より一層優れた低温屈曲性が得られる点から、1種のウレタン樹脂(A)から供給されることが好ましい。
【0024】
前記ウレタン樹脂(A)としては、具体的には、例えば、ポリイソシアネート(a1)、ポリオール(a2)、及び前記した親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料の反応物を用いることができる。
【0025】
前記ポリイソシアネート(a1)としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記ポリイソシアネート(a1)の使用量としては、製造安定性、及び得られる皮膜の機械物性の点から、前記ウレタン樹脂(A)の原料の合計質量中5〜40質量%の範囲であることが好ましく、10〜30質量%の範囲であることがより好ましい。
【0027】
前記ポリオール(a2)としては、ポリカーボネートポリオール(a2−1)、及び、ポリエーテルポリオール(a2−2)が必須の材料である。また、それ以外には、例えば、ポリエステルポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0028】
前記ポリカーボネートポリオール(a2−1)としては、例えば、炭酸エステル及び/又はホスゲンと、水酸基を2個以上有する化合物との反応物を用いることができる。
【0029】
前記炭酸エステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0030】
前記水酸基を2個以上有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,8−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記ポリエーテルポリオール(a2−2)としては、ポリオキシアルキレンポリオール;活性水素原子を2個以上有する化合物の1種又は2種以上を開始剤として用いて、アルキレンオキシド等の環状エーテルを開環重合させたものなどを用いることができる。
【0032】
前記ポリオキシアルキレンポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレングリコール等を用いることができる。これらの中でも、より一層優れた低温屈曲性が得られる点から、ポリオキシプロピレングリコール及び/又はポリオキシテトラメチレングリコールが好ましく、ポリオキシテトラメチレングリコールがより好ましい。
【0033】
前記環状エーテルの炭素原子数は、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4である。前記環状エーテルに含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。前記環状エーテルとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒドリン、テトラヒドロフラン、アルキル化テトラヒドロフラン等を用いることができる。
【0034】
前記開始剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、水等の活性水素原子を2個有する化合物;グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ペンタエリスリトール、糖類等の活性水素原子を3個以上有する化合物などを用いることができる。
【0035】
また、前記ポリエーテルポリオール(a2−2)としては、オキシアルキレン構造(Y)を含有していればよく、エステル結合を導入したポリエーテルポリエステルポリオールを用いてもよい。
【0036】
前記ポリオール(a2)の数平均分子量としては、得られる皮膜の機械的強度の点から、500〜8,000の範囲であることが好ましく、800〜4,000の範囲であることがより好ましい。なお、前記ポリオール(a2)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0037】
前記ポリオール(a2)には、必要に応じて、数平均分子量が50〜450の鎖伸長剤(a2’)を併用しても良い。前記鎖伸長剤(a2’)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、トリメチロールプロパン等の水酸基を有する鎖伸長剤;エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、ヒドラジン等のアミノ基を有する鎖伸長剤などを用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記鎖伸長剤(a2’)を用いる場合の使用量としては、得られるウレタン樹脂(A)の流動開始温度を調整しやすく、より一層優れた引張強度が得られる点から、ウレタン樹脂(A)の原料の合計質量中0.5〜10質量%の範囲であることが好ましく、1〜5質量%の範囲であることがより好ましく、1.5〜4質量%の範囲であることが更に好ましい。
【0039】
前記ウレタン樹脂(A)の製造方法としては、例えば、前記ポリオール(a2)、前記親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料、前記鎖伸長剤(a2’)、及び前記ポリイソシアネート(a1)を一括に仕込み反応させる方法が挙げられる。これらの反応は、例えば50〜100℃で3〜10時間行うことが挙げられる。
【0040】
前記ウレタン樹脂(A)を製造する際の、前記ポリオール(a2)が有する水酸基、前記親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料が有する水酸基及びアミノ基、並びに前記鎖伸長剤(a2’)が有する水酸基及びアミノ基の合計と、前記ポリイソシアネート(a1)が有するイソシアネート基とのモル比[イソシアネート基/(水酸基及びアミノ基)]としては、0.8〜1.2の範囲であることが好ましく、0.9〜1.1の範囲であることがより好ましい。
【0041】
前記ウレタン樹脂(A)を製造する際には、前記ウレタン樹脂(A)に残存するイソシアネート基を失活させることが好ましい。前記イソシアネート基を失活させる場合には、メタノール等の水酸基を1個有するアルコールを用いることが好ましい。前記アルコールの使用量としては、ウレタン樹脂(A)100質量部に対し、0.001〜10質量部の範囲であることが好ましい。
【0042】
また、前記ウレタン樹脂(A)を製造する際には、有機溶剤を用いてもよい。前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル化合物;アセトニトリル等のニトリル化合物;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド化合物などを用いることができる。これらの有機溶媒は単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、前記有機溶剤は、最終のウレタン樹脂組成物を得る際には蒸留法等によって除去されることが好ましい。
【0043】
前記ウレタン樹脂(A)の流動開始温度としては、後述する起泡工程により発生した泡を安定的に保持し(特に乾燥工程において)、安定的に発泡ウレタンシートの密度を好ましい範囲にすることができる点で、80℃以上であることが好ましく、80〜220℃の範囲であることより好ましい。
【0044】
前記ウレタン樹脂(A)の流動開始温度を調整する方法としては、主に後述するウレタン樹脂(A)の原料であるポリオール(a2)の種類、鎖伸長剤(a2’)の使用量、及びポリイソシアネート(a1)の種類により調整する方法が挙げられる。前記流動開始温度を高く調整する方法としては、例えば、ポリオール(a2)としてポリカーボネートポリオールのように結晶性の高いポリオールを用いること、鎖伸長剤(a2’)の使用量を多くすること、ポリイソシアネート(a1)として、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートや4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのように結晶性の高いポリイソシアネートを用いることなどが挙げられる。また、前記流動開始温度を低く調整する方法としては、例えば、ポリオール(a2)としてポリオキシプロピレングリコールのように結晶性の低いポリオールを用いること、鎖伸長剤(a2’)の使用量を少なくすること、ポリイソシアネート(a1)として、イソホロンジイソシアネートやトルエンジイソシアネートのように結晶性の低いポリイソシアネートを用いることなどが挙げられる。よって、これらの方法を適宜選択することによって、前記ウレタン樹脂(A)の流動開始温度を調整することができる。なお、前記ウレタン樹脂(A)の流動開始温度の測定方法は、後述する実施例にて記載する。
【0045】
前記ウレタン樹脂(A)としてアニオン性基を有するウレタン樹脂を用いる場合には、流動開始温度を調整しやすく、より一層優れた泡保持性、及び、風合いが得られる点から、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のポリイソシアネートと、ポリオール(a2)と、カルボキシル基を有するグリコール化合物と、水酸基を有する鎖伸長剤(a2’)を含む鎖伸長剤の反応物であるアニオン性基を有するウレタン樹脂(A−A−1)を用いることが好ましい。
【0046】
前記水(B)としては、例えば、イオン交換水、蒸留水等を用いることができる。これらの水は単独で用いても2種以上を用いてもよい。
【0047】
前記ウレタン樹脂(A)と前記水(B)との質量比[(A)/(B)]としては、水分散安定性、及び作業性の点から、10/80〜70/30の範囲であることが好ましく、20/80〜60/40の範囲であることがより好ましい。
【0048】
前記界面活性剤(C)は、起泡により生じた泡を消失から防止し(泡保持)、優れた風合いを得るために、芳香環を有さず、かつ炭素原子数が10以上の疎水部を有するものを用いることが必須である。
【0049】
前記界面活性剤(C)としては、例えば、下記一般式(1)で表される界面活性剤;脂肪酸塩、コハク酸塩、スルホコハク酸塩、オクタデシルスルホコハク酸塩、スルホコハク酸エステル等を用いることができる。これらの界面活性剤は単独で用いても2種以上を併用しても良い。
【0050】
(式(1)中、Rは炭素原子数が10〜20の直鎖又は分岐構造を有するアルキル基を示し、XはNa、K、NH、モルホリン、エタノールアミン、又はトリエタノールアミンを示す。)
【0051】
前記界面活性剤(C)としては、前記したものの中でも、より一層優れた泡保持性を有することから、前記一般式(1)で表される界面活性剤を用いることが好ましく、炭素原子数が13〜19の直鎖のアルキル基を示すものを用いることがより好ましく、ステアリン酸塩が更に好ましい。
【0052】
前記界面活性剤(C)の使用量としては、より一層優れた泡保持性が得られる点から、前記ウレタン樹脂(A)(=固形分)100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲であることが好ましく、0.1〜5質量部の範囲がより好ましい。
【0053】
前記ウレタン樹脂組成物は、前記ウレタン樹脂(A)、水(B)、及び界面活性剤(C)を必須成分として含有するが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0054】
前記その他の添加剤としては、例えば、架橋剤、中和剤、増粘剤、ウレタン化触媒、充填剤、顔料、染料、難燃剤、レべリング剤、ブロッキング防止剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0055】
前記架橋剤としては、発泡ウレタンシートの機械的強度の向上等の目的で用いられるものであり、例えば、ポリイソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、メラミン架橋剤、オキサゾリン架橋剤等を用いることができる。これらの架橋剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。前記架橋剤を用いる場合の使用量としては、例えば、前記ウレタン樹脂(A)(=固形分)100質量部に対して、0.01〜100質量部の範囲であることが好ましく、0.1〜50質量部の範囲がより好ましく、0.5〜30質量部の範囲が更に好ましく、1〜10質量部が特に好ましい。
【0056】
次に、本発明の発泡ウレタンシートの製造方法について説明する。
【0057】
前記発泡ウレタンシートは、前記ウレタン樹脂組成物を起泡させ起泡液を得、この起泡液を基材に塗布し、乾燥させ、好ましい密度を得ることにより製造される。
【0058】
前記ウレタン樹脂組成物を起泡させ起泡液を得る方法としては、例えば、手による撹拌や、メカニカルミキサー等のミキサーを使用する方法が挙げられる。ミキサーを使用する場合には、例えば、500〜3,000rpmにて10秒〜3分間撹拌させる方法が挙げられる。この際、発泡ウレタンシートの密度を好ましい範囲に調整しやすい点から、起泡させる前後にて、1.3〜7倍の体積にすることが好ましく、1.2〜2倍の体積にすることがより好ましく、1.3〜1.7倍の体積にすることが更に好ましい。
【0059】
得られた起泡液を離型紙等の基材に塗布する方法としては、例えば、ロールコーター、ナイフコーター、コンマコーター、アプリケーター等を使用する方法が挙げられる。
【0060】
前記塗布物の乾燥方法としては、例えば、60〜130℃の温度で30秒〜10分間乾燥させる方法が挙げられる。
【0061】
以上の方法により得られる発泡ウレタンシートの厚さとしては、例えば、5〜200μmである。
【0062】
前記発泡ウレタンシートの密度としては、より一層好ましい風合い及び引張強度が得られる点から、200〜1,000kg/mであることが好ましく、300〜900kg/mの範囲がより好ましく、400〜800kg/mの範囲が更に好ましい。なお、前記発泡ウレタンシートの密度は、発泡ウレタンシートの質量を体積で割ることにより算出した値を示す。
【0063】
次に、本発明の合成皮革について説明する。
【0064】
本発明の合成皮革は、少なくとも、基材(i)、及び、ポリウレタン層(ii)を有する合成皮革であって、前記ポリウレタン層(ii)が、前記発泡ウレタンシートにより形成されたものである。
【0065】
前記合成皮革の製造方法としては、例えば、
(X)前記ウレタン樹脂組成物を起泡させ起泡液を得、この起泡液を離型紙上に塗布し、乾燥させ、前記基材(i)と貼り合わせる方法、
(Y)前記ウレタン樹脂組成物を起泡させ起泡液を得、この起泡液を、離型紙上に作製した表皮層上に塗布し、乾燥させ、前記基材(i)と貼り合わせる方法、
(Z)前記ウレタン樹脂組成物を起泡させ起泡液を得、この起泡液を前記基材(i)上に塗布し、乾燥させ、必要に応じて、その上に、離型紙上に作製した表皮層(iii)を貼り合わせる方法などが挙げられる。
【0066】
前記基材(i)としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維、ポリ乳酸繊維、綿、麻、絹、羊毛、グラスファイバー、炭素繊維、それらの混紡繊維等による不織布、織布、編み物等の繊維基材;前記不織布にポリウレタン樹脂等の樹脂を含浸させたもの;前記不織布に更に多孔質層を設けたもの;熱可塑性ウレタン(TPU)等の樹脂基材などを用いることができる。
【0067】
前記ポリウレタン層(ii)は、前記発泡シートにより形成されたものであり、その密度としては、より一層優れた風合いと剥離強度とを両立した合成皮革を得ることができる点から、300〜900kg/mの範囲であることが好ましく、400〜800kg/mの範囲がより好ましい。なお、前記ポリウレタン層(ii)の密度は、10cm四方あたりの合成皮革の重量から10cm四方あたりの基材(i)の重量を減じた値を、ポリウレタン層(ii)の厚さで除した値を示す。なお、前記ポリウレタン層(ii)の密度は、前記ウレタン樹脂組成物を起泡具合により調整することができる。
【0068】
前記表皮層(iii)としては、公知の材料により公知の方法で形成することができ、例えば、溶剤系ウレタン樹脂、水系ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂等を用いることができる。柔軟な風合い、及び耐熱性、耐加水分解性を重視する場合は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を用いることが好ましい。また、環境対応でのDMF低減化のためには、水系ポリカーボネート系ウレタン樹脂を用いることがより好ましい。
【0069】
前記表皮層(iii)上には、必要に応じて、耐擦傷性向上等を目的に表面処理層(iv)を設けても良い。前記表面処理層(iv)としては、公知の材料により公知の方法で形成することができる。
【0070】
以上、本発明の合成皮革は、前記した風合い及び引張強度に優れる発泡ウレタンシートを用いることにより、更に剥離強度にも優れ、かつ、その表面上に意匠性に優れるエンボス加工を均一に作製できるものである。
【0071】
前記ポリウレタン層(ii)上にエンボス加工する方法としては、例えば、合成皮革のポリウレタン層(ii)上に、凹凸模様等の意匠性を施した離型紙を載置し、予熱したロール等で熱プレスする方法;凹凸模様等の意匠性を施したロールコーターを使用して、熱プレスする方法が挙げられる。前記熱プレス時には、例えば50〜200℃でロールを加熱することができる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0073】
[合成例1]ウレタン樹脂(A−1)組成物の調製
メチルエチルケトン3,281質量部及びオクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、ポリカーボネートポリオール(1,6−ヘキサンジオールを原料とするもの、数平均分子量;2,000)1,000質量部と、2,2−ジメチロールプロピオン酸17質量部と、エチレングリコール47質量部と、ジフェニルメタンジイソシアネート344質量部とを溶液粘度が20,000mPa・sに達するまで70℃で反応させた後、メタノール3質量部を加えて反応を停止させてウレタン樹脂のメチルエチルケトン溶液を得た。このウレタン樹脂溶液にポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(Hydrophile−Lipophile Balance(以下、「HLB」と略記する);14)70質量部と、トリエチルアミン13質量部を混合させた後に、イオン交換水800質量部を加えて転相乳化させることで前記ウレタン樹脂(A−1)が水に分散した乳化液を得た。
次いで、前記乳化液からメチルエチルケトンを留去することによって、ウレタン樹脂(A−1)50質量%を含むウレタン樹脂組成物を得た。
【0074】
[合成例2]ウレタン樹脂(A−2)組成物の調製
メチルエチルケトン3,281質量部及びオクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、ポリオキシテトラメチレングリコール(数平均分子量;2,000)1,000質量部と、2,2−ジメチロールプロピオン酸17質量部と、エチレングリコール47質量部と、MDIを344質量部とを溶液粘度が20,000mPa・sに達するまで70℃で反応させた後、メタノール3質量部を加えて反応を停止させてウレタン樹脂のメチルエチルケトン溶液を得た。このウレタン樹脂溶液にポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(HLB;14)70質量部と、トリエチルアミン13質量部を混合させた後に、イオン交換水800質量部を加えて転相乳化させることで前記ウレタン樹脂(A−2)が水に分散した乳化液を得た。
次いで、前記乳化液からメチルエチルケトンを留去することによって、ウレタン樹脂(A−2)50質量%を含むウレタン樹脂組成物を得た。
【0075】
[合成例3]ウレタン樹脂(A−3)組成物の調製
メチルエチルケトン3,281質量部及びオクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、ポリカーボネートポリオール(1,6−ヘキサンジオールを原料とするもの、数平均分子量;2,000)300質量部と、ポリオキシテトラメチレングリコール(数平均分子量;2,000)700質量部と、2,2−ジメチロールプロピオン酸17質量部と、エチレングリコール47質量部と、MDIを344質量部とを溶液粘度が20,000mPa・sに達するまで70℃で反応させた後、メタノール3質量部を加えて反応を停止させてウレタン樹脂のメチルエチルケトン溶液を得た。このウレタン樹脂溶液にポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(HLB;14)70質量部と、トリエチルアミン13質量部を混合させた後に、イオン交換水800質量部を加えて転相乳化させることで前記ウレタン樹脂(A−3)が水に分散した乳化液を得た。
次いで、前記乳化液からメチルエチルケトンを留去することによって、ウレタン樹脂(A−3)50質量%を含むウレタン樹脂組成物を得た。
【0076】
[合成例4]ウレタン樹脂(A−4)組成物の調製
メチルエチルケトン3,281質量部及びオクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、ポリカーボネートポリオール(1,6−ヘキサンジオールを原料とするもの、数平均分子量;2,000)500質量部と、ポリオキシテトラメチレングリコール(数平均分子量;2,000)500質量部と、2,2−ジメチロールプロピオン酸17質量部と、エチレングリコール47質量部と、MDIを344質量部とを溶液粘度が20,000mPa・sに達するまで70℃で反応させた後、メタノール3質量部を加えて反応を停止させてウレタン樹脂のメチルエチルケトン溶液を得た。このウレタン樹脂溶液にポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(HLB;14)70質量部と、トリエチルアミン13質量部を混合させた後に、イオン交換水800質量部を加えて転相乳化させることで前記ウレタン樹脂(A−4)が水に分散した乳化液を得た。
次いで、前記乳化液からメチルエチルケトンを留去することによって、ウレタン樹脂(A−4)50質量%を含むウレタン樹脂組成物を得た。
【0077】
[実施例1]
合成例1で得られたウレタン樹脂(A−1)組成物30質量部及び合成例2で得られたウレタン樹脂(A−2)組成物70質量部に、増粘剤(Borchers社製「Borchi Gel ALA」)2質量部、ステアリン酸アンモニウム0.5質量部、架橋剤(日本触媒株式会社製「エポクロスWS−700」)4質量部を加え、メカニカルミキサーを使用して2,000rpmで1分間撹拌し、起泡させ、1.5倍の体積にした起泡液を得た。
これを離型紙に塗布し、80℃で3分間、さらに120℃で2分間乾燥させることで、発泡ウレタンシートを製造した。
【0078】
[実施例2]
実施例1において、ウレタン樹脂(A−1)の配合量を50質量部、ウレタン樹脂(A−2)の配合量を50質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、発泡ウレタンシートを得た。
【0079】
[実施例3]
実施例1において、ウレタン樹脂(A−1)の配合量を80質量部、ウレタン樹脂(A−2)の配合量を20質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、発泡ウレタンシートを得た。
【0080】
[実施例4]
合成例3で得られたウレタン樹脂(A−3)組成物100質量部に、増粘剤(Borchers社製「Borchi Gel ALA」)2質量部、ステアリン酸アンモニウム0.5質量部、架橋剤(日本触媒株式会社製「エポクロスWS−700」)4質量部を加え、メカニカルミキサーを使用して2,000rpmで1分間撹拌し、起泡させ、1.5倍の体積にした起泡液を得た。
これを離型紙に塗布し、80℃で3分間、さらに120℃で2分間乾燥させることで、発泡ウレタンシートを製造した。
【0081】
[実施例5]
合成例4で得られたウレタン樹脂(A−4)組成物100質量部に、増粘剤(Borchers社製「Borchi Gel ALA」)2質量部、ステアリン酸アンモニウム0.5質量部、架橋剤(日本触媒株式会社製「エポクロスWS−700」)4質量部を加え、メカニカルミキサーを使用して2,000rpmで1分間撹拌し、起泡させ、1.5倍の体積にした起泡液を得た。
これを離型紙に塗布し、80℃で3分間、さらに120℃で2分間乾燥させることで、発泡ウレタンシートを製造した。
【0082】
[比較例1]
合成例1で得られたウレタン樹脂(A−1)組成物30質量部及び合成例2で得られたウレタン樹脂(A−2)組成物70質量部に、増粘剤(Borchers社製「Borchi Gel ALA」)2質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5質量部、架橋剤(日本触媒株式会社製「エポクロスWS−700」)4質量部を加え、メカニカルミキサーを使用して2,000rpmで1分間撹拌し、起泡させ、1.5倍の体積にした起泡液を得た。
これを離型紙に塗布し、80℃で3分間、さらに120℃で2分間乾燥させることで、シートを製造した。
【0083】
[比較例2]
合成例1で得られたウレタン樹脂(A−1)組成物100質量部に、増粘剤(Borchers社製「Borchi Gel ALA」)2質量部、ステアリン酸アンモニウム0.5質量部、架橋剤(日本触媒株式会社製「エポクロスWS−700」)4質量部を加え、メカニカルミキサーを使用して2,000rpmで1分間撹拌し、起泡させ、1.5倍の体積にした起泡液を得た。
これを離型紙に塗布し、80℃で3分間、さらに120℃で2分間乾燥させることで、発泡ウレタンシートを製造した。
【0084】
[比較例3]
合成例2で得られたウレタン樹脂(A−2)組成物100質量部に、増粘剤(Borchers社製「Borchi Gel ALA」)2質量部、ステアリン酸アンモニウム0.5質量部、架橋剤(日本触媒株式会社製「エポクロスWS−700」)4質量部を加え、メカニカルミキサーを使用して2,000rpmで1分間撹拌し、起泡させ、1.5倍の体積にした起泡液を得た。
これを離型紙に塗布し、80℃で3分間、さらに120℃で2分間乾燥させることで、発泡ウレタンシートを製造した。
【0085】
[数平均分子量の測定方法]
合成例で用いたポリオール等の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した。
【0086】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0087】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0088】
[ウレタン樹脂(A)の流動開始温度の測定方法]
合成例で得られたウレタン樹脂組成物を離型紙に塗布し(塗布厚さ150μm)、熱風乾燥機にて70℃、4分間、次いで120℃で2分間乾燥することで乾燥物を得た。この乾燥物を、株式会社島津製作所製フローテスター「CFT−500A」(口径1mm、長さ1mmのダイスを使用、荷重98N、昇温速度3℃/分)を使用して、流動開始温度を測定した。
【0089】
[風合いの評価方法]
得られた発泡ウレタンシートを手で触り、以下のように評価した。
「A」:柔軟性に富む。
「B」:やや柔軟性がある。
「C」:柔軟性が劣る。
「D」:硬い。
【0090】
[耐オレイン酸性の方法]
実施例及び比較例で得られた発泡ウレタンシートを、不織布に貼り合わせることで合成皮革を得た。得られた合成皮革を幅50mm、長さ50mmに裁断したものを試験片とした。この試験片を80℃でオレイン酸に24時間浸漬した後取り出し、表面に付着したオレイン酸を紙ウエスで軽く拭き取った。オレイン酸浸漬前後の外観変化を目視観察し、以下のように評価した。
「T」:外観変化なし。
「F」:合成皮革が膨張、及び/又は、変形している。
【0091】
[低温屈曲性の方法]
実施例及び比較例で得られた発泡ウレタンシートを、不織布に貼り合わせることで合成皮革を得た。得られた合成皮革をフレキソメーター(株式会社安田精機製「低温フレキシオメーター」)で屈曲性試験(−30℃、100回/毎分)を行い、合成皮革の表面に我が生じるまでの回数を測定し、以下のように評価した。
「A」:15,000回以上
「B」:10,000回以上15,000回未満
「C」:10,000回未満
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
本発明のウレタン樹脂組成物は、優れた風合い、耐オレイン酸性、及び、低温屈曲性を有することが分かった。
【0095】
一方、比較例1は、界面活性剤(C)の代わりに、芳香環を有するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いた態様であるが、泡保持性が不良であり、風合いが硬く不良であった。
【0096】
比較例2は、オキシアルキレン構造(Y)を含有しないウレタン樹脂組成物を用いた態様であるが、低温屈曲性が不良であった。
【0097】
比較例3は、カーボネート構造(X)を含有しないウレタン樹脂組成物を用いた態様であるが、耐オレイン性が不良であった。