(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0022】
<複合粒子の製造方法>
本実施形態に係る製造方法は、二級又は三級アミノ基を有するポリマー(以下、単に「ポリマー」ともいう。)と金属源とを含有する溶液に還元剤を添加して、金属源から金属ナノ粒子を形成させる還元工程と、還元工程を経た溶液にシリカ源を添加して、ポリマー及び金属ナノ粒子を内包するシリカシェルを形成させるシェル形成工程と、を備える。
【0023】
この製造方法によれば、シリカシェル内に特定のポリマー及び金属ナノ粒子が内包された複合粒子を容易に形成することができる。この製造方法で得られる複合粒子は、各種反応の触媒として好適に利用できる。また、この複合粒子は、ポリマー及び金属ナノ粒子がシリカシェル内に内包されているため、触媒として用いた際に、ポリマー及び金属ナノ粒子が系外に漏出することが避けられ、安定な触媒性能を維持できる。また、この複合粒子は、活性種の凝集による触媒劣化が抑制されるため、触媒として繰り返し使用することができる。さらに、この複合粒子は、触媒として用いた際に、容易に回収及び再利用が可能であり、また、反応生成物への触媒混入も防止される。
【0024】
以下、本実施形態に係る製造方法の各工程について詳述する。
【0025】
(還元工程)
還元工程では、ポリマー及び金属源を含有する溶液(A)に還元剤を添加して、金属源から金属ナノ粒子を形成させる工程である。還元工程により、ポリマー及び金属ナノ粒子を含有する溶液(B)が得られる。
【0026】
溶液(A)では、ポリマーがコロイド凝集体を形成していてよい。溶液(A)の溶媒は特に限定されないが、金属源が溶解可能な溶媒であり、且つ、ポリマーがコロイド凝集体を形成し得る溶媒であることが望ましい。このような溶媒は、例えば、水又は水−アルコール混合溶媒であってよい。水−アルコール混合溶媒の具体例としては、水−エタノール混合溶媒が挙げられる。
【0027】
溶液(A)のpHは中性又は塩基性であることが望ましい。溶液(A)のpHは、例えば8〜12であってよく、好ましくは10〜11である。pHを上記範囲とすることで、後述のシリカシェルの形成を効率良く進行させることができる。溶液(A)のpHは、例えばアンモニアで調整されていてよい。なお、溶液のpHは後述するシリカ源の添加前に調整してもよい。
【0028】
本実施形態では、ポリマーが有する二級又は三級アミノ基が金属源と相互作用することで、コロイド凝集体中に金属源が内包されると考えられる。ポリマーは、二級アミノ基及び三級アミノ基の一方を有していてもよく、両方を有していてもよい。また、ポリマーは、一級アミノ基を更に有していてもよい。金属源との相互作用が顕著に得られる観点から、ポリマーは、分子鎖内に複数の二級又は三級アミノ基を有するポリマーであることが好ましい。このようなポリマーとしては、ポリエチレンイミン(PEI)を好適に用いることができる。ポリエチレンイミンの分子鎖構造は特に限定されず、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0029】
ポリマーとしてポリエチレンイミンを用いる場合、ポリエチレンイミンの重量平均分子量は800以上であることが好ましく、1500以上であることがより好ましい。これにより、ポリエチレンイミンがコロイド凝集体を形成しやすくなる傾向がある。また、ポリエチレンイミンの重量平均分子量は10000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましい。これにより、後述の工程でシリカシェルが形成されやすくなる傾向がある。なお、ポリエチレンイミンの重量平均分子量は、光散乱法で測定される値を示す。
【0030】
金属源は、溶液(A)の溶媒に可溶であり、且つ、還元により0価の金属を形成可能な金属化合物であればよい。金属源は、例えば金属イオンを含むものであってよい。金属源としては、例えば、金属の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩、蓚酸塩、アンモニウム塩、錯塩、及びこれらの複合塩等が挙げられる。金属源に含まれる金属は、例えば、Pd、Pt、Au、Ag、Ir、Rh、Os、Ru、Ni、Cu等であってよい。
【0031】
例えば、金属源がPd源であるとき、Pd源としては、例えば、酢酸パラジウム(Pd(OAc)
2)、塩化パラジウム(PdCl
2)、硝酸パラジウム(Pd(NO
3)
2)等のパラジウム化合物、テトラクロロパラジウム酸(H
2PdCl
4)、テトラクロロパラジウム酸ナトリウム(Na
2PdCl
4)、テトラクロロパラジウム酸カリウム(K
2PdCl
4)、テトラクロロパラジウム酸アンモニウム((NH
4)
2PdCl
4)、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム、ジアンミンジクロロパラジウム、ジアンミンジニトロパラジウム、テトラアンミンパラジウム塩化物、テトラアンミン硝酸パラジウム、ヘキサクロロパラジウム酸、ヘキサクロロパラジウム酸ナトリウム、ヘキサクロロパラジウム酸カリウム、ヘキサクロロパラジウム酸アンモニウム等のパラジウム錯体が挙げられる。Pd源としては、パラジウム錯体が好ましく、中でも、テトラクロロパラジウム酸ナトリウム、テトラクロロパラジウム酸アンモニウムを好適に用いることができる。
【0032】
金属源は一種を単独で用いてよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
金属源の量は特に限定されず、複合粒子を適用する反応、使用する金属源の種類、使用する還元剤の種類等によって適宜調整してもよい。金属源は、例えば、ポリマー100質量部に対して0.5〜100質量部の範囲で任意に添加してよく、コロイド凝集体に金属源を効率的に内包させる観点からは1〜20質量部であってもよい。
【0034】
還元剤は、金属源を還元できる還元剤であればよい。還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
4)、水素化ホウ素カリウム(KBH
4)、アンモニアボラン(NaBH
4)、ヒドラジン(N
2H
4)、ギ酸ナトリウム(HCOONa)、アスコルビン酸(C
6H
8O
6)等の化学還元剤、水素ガス等の還元性ガスなどが利用できる。還元剤は一種を単独で用いてよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。還元剤として還元性ガスを用いる場合、還元性ガスは窒素、He、Ar等の不活性ガスと混合して用いてもよい。
【0035】
還元剤の添加量は、金属源の種類、還元剤の種類等に応じて適宜調整してよいが、例えば、金属源に含まれる金属原子に対して100〜5000モル%であることが好ましい。還元剤の添加量を金属原子に対して100モル%以上とすることで、金属が十分に還元され、効率よく金属ナノ粒子を形成できる。また、還元剤の添加量を金属原子に対して5000モル%以下とすることで、還元された金属がナノサイズ以上の凝集体を形成することを抑制し、効率よく金属ナノ粒子を形成できる。
【0036】
還元工程は、室温(例えば23℃)下で実施してよく、加温下で実施してもよい。還元工程は、例えば100℃以下で実施してよく、室温下で実施することが好ましい。還元反応に要する時間は、金属源の種類、還元剤の種類等によって異なり、例えば1分以上24時間以下であってよい。還元された金属がナノサイズ以上の凝集体を形成することを抑制する観点からは、還元工程における金属源の還元は、60分以内で実施することが望ましい。
【0037】
還元工程後の溶液(B)中では、ポリマーのコロイド凝集体中に金属ナノ粒子が内包された、ポリマー−金属ナノ粒子凝集体が形成されていると考えられる。
【0038】
(シェル形成工程)
シェル形成工程では、還元工程後の溶液(B)にシリカ源を添加して、ポリマー及び金属ナノ粒子を内包するシリカシェルを形成させる。本実施形態において、溶液(B)中には、ポリマー−金属ナノ粒子凝集体が形成されており、この凝集体の外周面上でシリカ源が加水分解・重縮合して、シリカシェルが形成されると考えられる。
【0039】
溶液(B)のpHは、例えば8〜12であってよく、好ましくは10〜11である。これによりシリカシェルの形成を効率良く進行させることができる。
【0040】
シリカ源としては、テトラアルコキシシランが好適に用いられる。テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトライソプロポキシシラン(TPOS)、テトラブトキシシラン(TBOS)等が挙げられる。これらのうち、入手容易性の観点からは、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)を用いるのが好ましい。
【0041】
シリカ源としては、テトラアルコキシシランとともに他のシリカ源を更に用いてもよい。他のシリカ源としては、例えば、Si原子に直接結合する炭化水素基及びアルコキシ基を有するシラン化合物を用いてよい。このようなシラン化合物を用いることで、焼成等により炭化水素基を脱離させて、シリカシェルを多孔質化させることができる。また、本実施形態では、シラン化合物が有する炭化水素基の炭素原子数を変更することで、シリカシェルの細孔径を調整することができる。このようなシラン化合物としては、例えば、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、トリアルキルアルコキシシラン等が挙げられる。また、シラン化合物は、Si原子に直接結合する炭化水素基を有するシロキサン類であってもよい。
【0042】
上述の他のシリカ源としては、例えば、有機シランカップリング剤として利用される公知のシリカ源が挙げられ、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、エチルトリメトキシシラン(ETMS)、フェニルトリエトキシシラン(PhTES)、トリエトキシクロロシラン(TECS)、トリエトキシフルオロシラン(TEFS)、オクチルトリエトキシシラン(C8TES)、ドデシルトリメトキシシラン(C12TMS)等のトリアルコキシシラン、ジメチルジエトキシシラン(DMDES)、ジフェニルジメトキシシラン(DPhDMS)等のジアルコキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン(BTEE)、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン(BTEB)などが例示できる。
【0043】
上記シラン化合物が有する炭化水素基の炭素原子数は、所望の細孔径に応じて適宜変更してよく、例えば1〜30であってよく、8〜18であることが好ましい。
【0044】
上記シラン化合物の使用量は特に限定されない。上記シラン化合物の使用量を変更することで、シリカシェルの気孔率を調整することができる。テトラアルコキシシランに対する上記シラン化合物のモル比は、例えば、100モル%以下であってよく、50モル%以下であることが好ましい。過剰量のシラン化合物を添加するとシリカ塊が形成されやすくなるが、上記モル比であればこのシリカ塊の形成が十分抑制され、所望の複合粒子を効率良く得ることができる。また、テトラアルコキシシランに対する上記シラン化合物のモル比は、例えば、0モル%であってよく、1モル%以上であってもよく、5モル%以上であることが好ましい。
【0045】
シリカ源の添加量は、ポリマー100質量部に対して、500質量部以上であることが好ましく、1000質量部以上であることがより好ましい。シリカ源の添加量を500質量部以上とすることで、ポリマー−金属ナノ粒子凝集体の外周面を十分にシリカシェルで被覆できる。また、シリカ源の添加量は、ポリマー100質量部に対して、4000質量部以下であることが好ましく、2000質量部以下であることがより好ましい。シリカ源の添加量が多すぎると、シリカシェルが厚くなり、触媒としての効果が発揮されにくくなる傾向がある。シリカ源の添加量を4000質量部以下とすることで、後述のアルケン類の製造方法における触媒として一層好適な中空シリカ粒子が得られる。
【0046】
シェル形成工程は、例えば、シリカ源を希釈せずに溶液(B)に滴下することで実施してよい。また、シェル形成工程は、例えば、シリカ源を溶解させた溶液(シリカ源溶液)を準備し、溶液(B)にシリカ源溶液を滴下することで実施してもよい。
【0047】
シリカ源溶液の溶媒は、親水性溶媒であればよく、特に限定されない。シリカ源溶液の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン、アセトニトリルなどが好適に用いられる。シリカ源溶液の濃度は特に限定されず、例えば1〜99.9質量%であってよく、好ましくは10〜99.9質量%である。
【0048】
シリカ源(又はシリカ源溶液)の滴下時間は特に限定されず、一度に全量を加えてよく、60分以内でゆっくりと滴下してもよい。滴下時間を60分以下とすることでポリマー−金属ナノ粒子凝集体がシリカシェルで被覆されやすくなる傾向がある。また、滴下時間を30分以内とすることで、シリカ凝集体の形成を抑え、シリカ凝集体による触媒反応の阻害を避けることができる。
【0049】
シリカ源(又はシリカ源溶液)の滴下時の温度は、200℃以下であってよく、100℃以下であることが好ましい。また、滴下時の温度は室温又はそれ以上であってよい。
【0050】
シェル形成工程では、シリカ源の添加後、シリカシェルが十分に形成されるまでの時間を確保するため、熟成期間を設けてよい。熟成期間では、溶液(B)を撹拌していてよく、静置していてもよい。撹拌することで均一なサイズの複合粒子が得られ易くなる傾向がある。熟成期間の溶液(B)の温度は、室温又はそれ以上であってよく、例えば200℃以下、好ましくは100℃以下である。熟成期間の長さは、シリカ源の種類、溶液(B)のpH等に応じて適宜調整してよく、例えば1〜48時間であってよく、2〜12時間であってもよい。
【0051】
本実施形態では、シェル形成工程により、シリカシェルと、当該シリカシェルに内包されたポリマー及び金属ナノ粒子と、を備える複合粒子が形成される。
【0052】
<複合粒子>
本実施形態に係る複合粒子は、シリカシェルと、シリカシェルに内包された二級又は三級アミノ基を有するポリマーと、シリカシェルに内包された金属ナノ粒子と、を備えている。
【0053】
この複合粒子は、金属ナノ粒子がシリカシェルに内包されているため、各種反応の触媒として使用したとき容易に回収及び再利用が可能であり、また、反応系中への金属ナノ粒子の漏出が抑制され、反応生成物の汚染も防止される。また、この複合粒子は、特定のモノマーが金属ナノ粒子と共にシリカシェル内に内包されているため、特異的な触媒活性を示す。例えば、上記複合粒子は、アルキン類を還元してアルケン類を得る還元反応の触媒として、好適に用いることができる。
【0054】
シリカシェルは多孔質であってよい。シリカシェルの平均細孔径は特に限定されず、ポリマーの分子量や、複合粒子を適用する反応の反応基質又は生成物のサイズ等に応じて適宜変更してよい。また、シリカシェルの平均細孔径を調整することで、反応の選択性の向上を図ることもできる。例えば、後述するアルケン類の製造方法に適用する場合、シリカシェルの平均細孔径は0.5〜10nmであることが好ましく、1〜5nmであることがより好ましい。なお、シリカシェルの平均細孔径は、窒素吸着等温線をBJH(Barrett−Joyner−Halenda)法等により解析することで測定される。
【0055】
本実施形態に係る複合粒子では、シリカシェル中に複数の金属ナノ粒子が内包されていてよい。複合粒子における金属ナノ粒子の含有量は特に限定されず、所望の触媒性能等に応じて適宜変更してよい。
【0056】
複合粒子の平均粒子径は特に限定されず、例えば30〜500nmであってよく、好ましくは50〜200nmである。このような平均粒子径を有することで反応基質が複合粒子内部の金属ナノ粒子と接触しやすくなり、反応効率がより向上する傾向がある。なお、本明細書中、複合粒子の平均粒子径は、透過型顕微鏡(TEM)で観察された複合粒子の中から無作為に選んだ100粒子の平均粒子径を示す。
【0057】
金属ナノ粒子は、0価の金属から構成されるナノ粒子であってよい。金属ナノ粒子を構成する金属としては、例えば、Pt、Au、Ag、Ir、Rh、Os、Ru、Ni、Cu等が挙げられる。複合粒子は、構成金属が異なる複数の金属ナノ粒子を有していてよく、複数の金属から構成される合金ナノ粒子を有していてもよい。Pt、Rh、Ru等の金属ナノ粒子を含む複合粒子は、分子状水素を還元剤に用いた水素化反応の触媒として好適に用いることができる。また、Au、Ag等の金属ナノ粒子を含む複合粒子は、局在表面プラズモン共鳴を示し、光吸収材、光増感材等の用途に好適に利用できる。
【0058】
金属ナノ粒子の平均粒子径は、例えば0.5〜20nmであってよく、好ましくは1〜5nmである。このような平均粒子径を有することで、触媒として利用した際により高い触媒活性が得られる傾向がある。なお、本明細書中、金属ナノ粒子の平均粒子径は、透過型顕微鏡(TEM)で観察された金属ナノ粒子の中から無作為に選んだ100粒子の平均粒子径を示す。
【0059】
二級又は三級アミノ基を有するポリマー(単に「ポリマー」ともいう。)は、シリカシェル内に金属ナノ粒子と共に内包される。本実施形態では、ポリマーが有する二級又は三級アミノ基と金属ナノ粒子との相互作用により、複合粒子が金属ナノ粒子単体とは異なる特異的な触媒活性を示すと考えられる。ポリマーは、二級アミノ基及び三級アミノ基のいずれかを有していればよく、両方を有していてもよい。また、ポリマーは、二級又は三級アミノ基を複数有していてよい。ポリマーの具体例は上述のとおりである。
【0060】
本実施形態に係る複合粒子は、触媒用途の他に、例えば吸着剤、吸湿剤、脱臭剤、光吸収材、光増感材等の用途にも好適に用いることができる。
【0061】
<中空シリカ粒子の製造方法>
本実施形態に係る中空シリカ粒子の製造方法は、複合粒子のシリカシェル内から、ポリマーを除去する除去工程を備えている。この除去工程により、金属ナノ粒子を内包する中空シリカ粒子が得られる。得られた中空シリカ粒子は、各種反応の触媒等として好適に用いることができる。
【0062】
ポリマーの除去は、例えば、複合粒子を焼成することで行うことができる。
【0063】
複合粒子を焼成する際の焼成温度は、ポリマーを除去できる温度であればよい。焼成温度は300℃以上であることが好ましく、450℃以上であることがより好ましい。これにより、ポリマーが十分に除去され、シリカシェル内を容易に中空にすることができる。また、焼成温度は、1000℃以下であることが好ましく、600℃以下であることがより好ましい。これにより、金属ナノ粒子の凝集が避けられ、触媒活性のより高い中空シリカ粒子を得ることができる。
【0064】
複合粒子の焼成は、酸素を含む雰囲気下で行ってよい。焼成は、例えば空気中で行ってよく、酸素を窒素、He、Ne、Ar、Kr等の不活性ガスで希釈した雰囲気中で行ってもよい。
【0065】
本実施形態では、上記の方法により、金属ナノ粒子を内包する中空シリカ粒子が得られる。この中空シリカ粒子は、各種反応の触媒として好適に利用できる。また、この中空シリカ粒子は、減圧雰囲気下又は乾燥空気中で保存することで、触媒性能を維持したまま長期間保管できる。
【0066】
<中空シリカ粒子>
本実施形態に係る中空シリカ粒子は、シリカシェルとシリカシェルに内包された金属ナノ粒子とを備えている。
【0067】
シリカシェルは多孔質であってよい。シリカシェルの平均細孔径は特に限定されず、中空シリカ粒子を適用する反応の反応基質又は生成物のサイズ等に応じて適宜変更してよい。また、シリカシェルの平均細孔径を調整することで、反応の選択性の向上を図ることもできる。例えば、中空シリカ粒子の平均細孔径は、0.5〜10nmであってよく、好ましくは1〜5nmである。
【0068】
本実施形態に係る中空シリカ粒子では、シリカシェル中に複数の金属ナノ粒子が内包されていてよい。中空シリカ粒子における金属ナノ粒子の含有量は特に限定されず、所望の触媒性能に応じて適宜変更してよい。
【0069】
中空シリカ粒子の表面積は特に限定されず、例えば10〜500m
2/gであってよく、好ましくは20〜200m
2/gである。このような表面積を有することで触媒反応使用時に反応基質を効率的に吸着し、触媒反応を促進するという効果が奏される。なお、本明細書中、中空シリカ粒子の表面積は、窒素吸着等温線からBET(Brunauer−Emmett−Teller)法により算出した値を示す。
【0070】
中空シリカ粒子の平均粒子径は特に限定されず、例えば30〜500nmであってよく、好ましくは50〜200nmである。このような平均粒子径を有することで、一つの中空シリカ粒子内に含まれる金属ナノ粒子の数が限定されるため、金属ナノ粒子の凝集が抑制され、触媒活性が一層向上する傾向がある。なお、本明細書中、中空シリカ粒子の平均粒子径は、TEMにより観察された中空シリカ粒子のうち無作為に選んだ100粒子の平均粒子径を示す。
【0071】
本実施形態に係る中空シリカ粒子は、触媒用途の他に、例えば、吸着剤、吸湿剤、脱臭剤、光吸収材、光増感材等の用途に好適に用いることができる。また、本実施形態に係る中空シリカ粒子は、反射防止材、低誘電率材、断熱材等の充填材、ドラッグデリバリーシステムのための無機担体等の用途にも好適に用いることができる。
【0072】
<触媒>
本実施形態に係る触媒は、上記複合粒子を含む。この触媒は、複合粒子中の金属ナノ粒子が触媒活性を有する各種反応に好適に用いることができる。
【0073】
本実施形態に係る触媒は、金属がナノ粒子としてシリカシェルに内包されているため、金属の系外への漏出が抑制され、安定な触媒性能を長期間維持できる。また、複数の複合粒子のそれぞれに金属ナノ粒子が内包されているため、金属ナノ粒子の過度な凝集による触媒劣化が十分に抑制される。このため、本実施形態に係る触媒は、各種反応に繰り返し使用することができる。
【0074】
本実施形態に係る触媒は、複合粒子をそのまま用いたものであってよく、複合粒子と他の触媒成分とを組み合わせたものであってもよい。また、本実施形態に係る触媒は、複合粒子を反応器に充填したものであってよく、複合粒子同士をバインダー等で結合したものであってもよい。
【0075】
本実施形態に係る触媒を適用可能な反応は、金属ナノ粒子を構成する金属種によって異なる。例えば、金属ナノ粒子がPdナノ粒子である場合、アルキン類を反応基質としてアルケン類を得る還元反応、オレフィン又はカルボニル化合物を反応基質にしてアルカンを得る還元反応、アルコールを反応基質にしてケトンを得る酸化反応、水素及び酸素を反応基質にして過酸化水素を得る反応、鈴木・宮浦カップリング反応、ヘック反応等に好適に適用できる。また、Pt、Rh、Ru等の金属ナノ粒子を含む複合粒子は、分子状水素を還元剤に用いたオレフィン又はカルボニル化合物の水素化反応等の触媒として好適に用いることができる。また、Au、Ag等の金属ナノ粒子を含む複合粒子は、局在表面プラズモン共鳴を示し、光吸収材、光増感材等の用途に好適に利用できる。
【0076】
<アルケン類の製造方法>
本実施形態に係る複合粒子を用いた化合物の製造方法の一例として、アルケン類の製造方法について以下に詳述する。
【0077】
本実施形態に係るアルケン類の製造方法は、炭素−炭素三重結合を有するアルキン類を、上記複合粒子を含む触媒の存在下で還元して、炭素−炭素二重結合を有するアルケン類を得る工程を備える。
【0078】
この製造方法では、触媒として複合粒子を用いているため、アルキン類からアルケン類への還元反応が効率良く進行するとともに、過度な還元によるアルカン類の生成が抑制され、高収率でアルケン類を得ることができる。
【0079】
アルキン類は、炭素−炭素三重結合を有する化合物であればよく、特に限定されない。アルキン類は、例えば、下記式(1)で表される化合物であってよい。
【0081】
式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基又は複素環式基を示し、これらの基は置換基を有していてもよい。R
1及びR
2は互いに結合して炭素−炭素三重結合とともに環を形成していてもよい。
【0082】
R
1及びR
2における炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、及び、これらの基が2以上結合した基が挙げられる。
【0083】
脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、ドデシル基等の炭素数1〜20(好ましくは1〜10)程度のアルキル基;ビニル、アリル、1−ブテニル基等の炭素数2〜20(好ましくは2〜10)程度のアルケニル基;エチニル、プロピニル基等の炭素数2〜20(好ましくは2〜10)程度のアルキニル基などが挙げられる。
【0084】
脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基等の3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロへキセニル基等の3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルケニル基;パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル、アダマンチル等の橋かけ環式炭化水素基などが挙げられる。
【0085】
芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、ナフチル基等の炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0086】
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基としては、例えば、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基等のシクロアルキル−アルキル基などが挙げられる。
【0087】
脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基としては、アラルキル基(例えば、炭素数7〜18のアラルキル基)、アルキル置換アリール基(例えば、炭素数1〜4のアルキル基が1〜4個程度置換したフェニル基又はナフチル基など)、アリール置換アルケニル基(アルケニル基の炭素数は、例えば2〜10)(例えば、2−フェニルビニル基)などが挙げられる。
【0088】
炭化水素基は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(例えば、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基など)、シアノ基、ニトロ基、アシル基、置換又は無置換アミノ基(例えば、炭化水素基置換アミノ基、アシル基置換アミノ基、無置換アミノ基など)、スルホ基、複素環式基などを有していてもよい。ヒドロキシル基、カルボキシル基等は、有機合成の分野で慣用の保護基で保護されていてもよい。また、脂環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基の環には、芳香族性又は非芳香属性の複素環が縮合していてもよい。
【0089】
R
1及びR
2における複素環式基は、複素環を有する基である。複素環は、芳香族性複素環又は非芳香族性複素環であってよい。複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、フラン環、テトラヒドロフラン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、γ−ブチロラクトン環等の5員環、4−オキソ−4H−ピラン環、テトラヒドロピラン環、モルホリン環等の6員環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、4−オキソ−4H−クロメン環、クロマン環、イソクロマン環等の縮合環など)、ヘテロ原子として硫黄原子を含む複素環(例えば、チオフェン環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環等の5員環、4−オキソ−4H−チオピラン環等の6員環、ベンゾチオフェン環等の縮合環など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール環、ピロリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環等の5員環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環等の6員環、インドール環、インドリン環、キノリン環、アクリジン環、ナフチリジン環、キナゾリン環、プリン環等の縮合環など)などが挙げられる。複素環式基には、上記炭化水素基が有していてもよい置換基のほか、アルキル基(例えば、メチル、エチル基等の炭素数1〜4のアルキル基など)、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基等)などの置換基を有していてもよい。
【0090】
アルキン類の具体例としては、例えば、アセチレン、メチルアセチレン(プロピン)、ジメチルアセチレン(2−ブチン)、ジエチルアセチレン、メチルエチルアセチレン、メチルプロピルアセチレン、ジプロピルアセチレン、ジブチルアセチレン、ジフェニルアセチレン、フェニルアセチレン、エチルフェニルアセチレン、4−クロロフェニルアセチレン、4−ブロモフェニルアセチレン、p−トリルアセチレン、フェニルビニルアセチレン、ジベンジルアセチレン、p−メトキシフェニルアセチレン、アセチレンジカルボン酸ジメチル(DMAD)、プロパルギルアルコール等が挙げられる。
【0091】
アルケン類は、アルキン類の三重結合が二重結合に還元された化合物である。アルケン類としては、例えば、上述したアルキン類の三重結合を二重結合に置き換えた化合物が例示できる。
【0092】
還元反応における触媒の使用量は適宜変更してよい。例えば、触媒の使用量は、触媒中の金属原子(金属ナノ粒子を構成する金属原子)が、アルキン類に対して0.05〜5mol%となる量であってよく、0.1〜1mol%となる量であることが好ましい。
【0093】
還元反応は、溶媒中で実施してよい。溶媒は特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、メシチレン、キシレン、シクロヘキサン、1,4−ジオキサン、ジクロロメタン等の種々の有機溶媒を用いることができる。溶媒は、反応基質の溶解性及び触媒分散性の観点からは、極性溶媒であることが好ましい。また、溶媒は、反応速度及びアルケン選択性の観点からは、メタノール、エタノール又は1,4−ジオキサンであることが特に好ましい。これらの溶媒は一種を単独で用いてよく、二種以上を混合して用いてもよい。溶媒の使用量は、例えば、反応基質であるアルキン類の濃度が0.01〜5質量%となるように設定することが好ましい。
【0094】
還元反応は、水素の存在下で実施してよい。例えば還元反応は、反応系中への水素バブリングを行いながら実施してよい。還元反応の反応温度は特に限定されず、例えば0〜200℃であってよく、室温〜50℃であることが好ましい。また、還元反応は、触媒を充填した固定床反応層に水素及び反応基質を気相条件やトリクルベッド条件で接触させて実施してもよい。
【0095】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0096】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0097】
(実施例1)
<複合粒子の作製>
28%NH
3アンモニア水溶液2.8mLに、PEI(平均分子量1800、Branch型、ALFA AESAR社製)0.12gを加え、室温で15分撹拌溶解した後、Na
2PdCl
4水溶液(濃度20mg/mL)0.8mL及びエタノール90mLを加え、更に室温で30分間攪拌した。
【0098】
次に、還元剤としてのNaBH
4水溶液(濃度20mg/mL)2.0mLを加え、室温で30分攪拌することで、Pd
2+イオンをPdナノ粒子へと還元させた。その後、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)1.8mLを素早く溶液中に滴下し、室温にて6時間攪拌することでシリカシェルを形成させた。溶液中の沈殿物を遠心分離(6000rpm、5分)により回収し、水及びエタノール(各50mL)で洗浄後、一晩真空乾燥することで、Pdナノ粒子及びポリマー(PEI)を内包する複合粒子(複合粒子A−1)0.45gを得た。得られた複合粒子A−1のTEMによる観察結果を
図1(a)に示す。複合粒子A−1の表面積は42.9m
2/g、細孔容積は0.20cm
3/gであった。
【0099】
<中空シリカ粒子の作製>
0.21gの複合粒子A−1を、焼成炉を用い、大気雰囲気下、550℃で300分焼成することにより、Pdナノ粒子を内包する中空シリカ粒子(中空シリカ粒子A−1)を得た。得られた中空シリカ粒子のTEMによる観察結果を
図1(b)に示す。中空シリカ粒子の表面積は34.8m
2/g、細孔容積は0.19cm
3/gであった。
【0100】
(実施例2)
PEIとして、ALDRICH社製の平均分子量2500、Linear型のPEIを用いたこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子(複合粒子A−2)を作製した。得られた複合粒子A−2のTEMによる観察結果を
図2に示す。複合粒子A−2の表面積は41.2m
2/g、細孔容積は0.20cm
3/gであった。
【0101】
(実施例3)
TEOSの添加量を0.9mLに変更したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子(複合粒子A−3)を作製した。得られた複合粒子A−3のTEMによる観察結果を
図3に示す。複合粒子A−3の表面積は42.9m
2/g、細孔容積は0.21cm
3/gであった。
【0102】
(実施例4)
TEOSの添加量を1.35mLに変更したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子(複合粒子A−4)を作製した。得られた複合粒子A−4のTEMによる観察結果を
図4に示す。複合粒子A−4の表面積は40.0m
2/g、細孔容積は0.16cm
3/gであった。
【0103】
(実施例5)
TEOSの添加量を2.7mLに変更したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子(複合粒子A−5)を作製した。得られた複合粒子A−5のTEMによる観察結果を
図5に示す。複合粒子A−5の表面積は36.9m
2/g、細孔容積は0.093cm
3/gであった。
【0104】
(実施例6)
TEOSの添加量を1.35mLに変更したこと以外は、実施例2と同様にして複合粒子(複合粒子A−6)を作製した。得られた複合粒子A−6のTEMによる観察結果を
図6に示す。複合粒子A−6の表面積は42.5m
2/g、細孔容積は0.17cm
3/gであった。
【0105】
(実施例7)
TEOSの添加量を2.7mLに変更したこと以外は、実施例2と同様にして複合粒子(複合粒子A−7)を作製した。得られた複合粒子A−7のTEMによる観察結果を
図7に示す。複合粒子A−7の表面積は24.2m
2/g、細孔容積は0.080cm
3/gであった。
【0106】
(実施例8)
シリカ源として、1.6mLのTEOSと0.2mLのフェニルトリエトキシシラン(PhTES)とを用いたこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子(複合粒子A−8)を作製した。得られた複合粒子A−8のTEMによる観察結果を
図8に示す。複合粒子A−8の表面積は53.4m
2/g、細孔容積は0.22cm
3/gであった。
【0107】
(実施例9)
Na
2PdCl
4水溶液に代えて、H
2PtCl
4水溶液(濃度20mg/mL)0.8mLを用いたこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子の作製を行い、Pdナノ粒子及びポリマー(PEI)を内包する複合粒子(複合粒子A−9)を得た。得られた複合粒子A−9のTEMによる観察結果を
図9に示す。
【0108】
(比較例1)
PEIに代えて、ポリアリルアミン水溶液(平均分子量1600、50wt%水溶液、ニットーボーメディカル株式会社製)0.24gを用いたこと以外は、実施例1と同様の作業を行い、沈殿物を回収した。回収した沈殿物をTEMで観察したところ、Pdナノ粒子及びポリマーを内包する複合粒子の形成は確認できなかった。比較例1のTEMによる観察結果を
図10に示す。
【0109】
(比較例2)
PEIに代えて、ポリビニルピロリドン(商品名:K−30、平均分子量40000、ナカライテスク社製)0.12gを用いたこと以外は、実施例1と同様の作業を行い、沈殿物を回収した。回収した沈殿物をTEMで観察したところ、Pdナノ粒子及びポリマーを内包する複合粒子の形成は確認できなかった。比較例2のTEMによる観察結果を
図11に示す。
【0110】
(反応例A−1)
54mgの複合粒子A−1、102mgのフェニルアセチレン、5mLのメタノール(MeOH)、5mLの1,4−ジオキサン及び0.3mgのビフェニル(内部標準物質)を反応管に入れ、水素を10mL/minで流通させながら30℃で撹拌し、反応を行った。所定の反応時間で反応液の一部を取り出し、各反応時間毎に、アルキン類(フェニルアセチレン)、アルケン類(スチレン)及びアルカン類(エチルベンゼン)の含有割合を求めた。結果は表1に示すとおりであった。
【0111】
(反応例A−2)
複合粒子A−1に代えて複合粒子A−2を用いたこと以外は、反応例A−1と同様にして反応を行った。所定の反応時間で反応液の一部を取り出し、分析を行った。結果は表1に示すとおりであった。
【0112】
(反応例A−3)
複合粒子A−1に代えて、44mgの中空シリカ粒子A−1を用いたこと以外は、反応例A−1と同様にして反応を行った。所定の反応時間で反応液の一部を取り出し、分析を行った。結果は表1に示すとおりであった。
【0113】
(比較反応例a−1)
複合粒子A−1に代えて、54mgのSBA−15メソポーラスシリカ固定化Pd/PEI触媒(Strem Chemicals社製、製品コード:46−2087)を用いたこと以外は、反応例A−1と同様にして反応を行った。所定の反応時間で反応液の一部を取り出し、分析を行った。結果は表1に示すとおりであった。
【0114】
(比較反応例a−2)
複合粒子A−1に代えて、11mgのリンドラー触媒(東京化学工業株式会社製、製品コード:P1703)を用いたこと以外は、反応例A−1と同様にして反応を行った。所定の反応時間で反応液の一部を取り出し、分析を行った。結果は表1に示すとおりであった。
【0115】
【表1】
【0116】
表1に示すとおり、反応例A−1〜反応例A−3では、従来公知の触媒を用いた比較反応例a−1及びa−2と同等の高い選択性でアルケン類が得られた。また、反応例A−1〜反応例A−3では、反応を長時間継続した場合でもアルカン類が生成されにくく、反応の選択性が優れていることが確認された。
【0117】
(反応例B−1)
54mgの複合粒子A−1、178mgのジフェニルアセチレン、5mLのメタノール(MeOH)、5mLの1,4−ジオキサン及び0.3mgのビフェニル(内部標準物質)を反応管に入れ、水素を10mL/minで流通させながら30℃で撹拌し、反応を行った。所定の反応時間で反応液の一部を取り出し、各反応時間毎に、アルキン類(ジフェニルアセチレン)、アルケン類(スチルベン)及びアルカン類(1,2−ジフェニルエタン)の含有割合を求めた。結果は表2に示すとおりであった。
【0118】
(反応例B−2)
複合粒子A−1に代えて複合粒子A−2を用いたこと以外は、反応例B−1と同様にして反応を行った。所定の反応時間で反応液の一部を取り出し、分析を行った。結果は表2に示すとおりであった。
【0119】
(反応例B−3)
複合粒子A−1に代えて44mgの中空シリカ粒子A−1を用いたこと以外は、反応例B−1と同様にして反応を行った。所定の反応時間で反応液の一部を取り出し、分析を行った。結果は表2に示すとおりであった。
【0120】
(反応例B−4)
溶媒として、メタノール及び1,4−ジオキサンに代えてエタノール(10mL)を用いたこと以外は、反応例B−1と同様にして反応を行った。所定の反応時間で反応液の一部を取り出し、分析を行った。結果は表2に示すとおりであった。
【0121】
(反応例B−5)
溶媒として、メタノール及び1,4−ジオキサンに代えてシクロヘキサン(10mL)を用いたこと以外は、反応例B−1と同様にして反応を行った。所定の反応時間で反応液の一部を取り出し、分析を行った。結果は表3に示すとおりであった。
【0122】
(反応例B−6)
1,4−ジオキサンを用いず、メタノールの使用量を10mLとしたこと以外は、反応例B−1と同様にして反応を行った。所定の反応時間で反応液の一部を取り出し、分析を行った。結果は表3に示すとおりであった。
【0123】
(比較反応例b−1)
複合粒子A−1に代えて、54mgのSBA−15メソポーラスシリカ固定化Pd/PEI触媒(Strem Chemicals社製、製品コード:46−2087)を用いたこと以外は、反応例B−1と同様にして反応を行った。所定の反応時間で反応液の一部を取り出し、分析を行った。結果は表3に示すとおりであった。
【0124】
(比較反応例b−2)
複合粒子A−1に代えて、11mgのリンドラー触媒(東京化学工業株式会社製、製品コード:P1703)を用いたこと以外は、反応例B−1と同様にして反応を行った。所定の反応時間で反応液の一部を取り出し、分析を行った。結果は表3に示すとおりであった。
【0125】
【表2】
【0126】
【表3】
【0127】
表2及び表3に示すとおり、反応例B−1〜反応例A−6では、従来公知の触媒を用いた比較反応例b−1及びb−2と同等又はより高い選択性でアルケン類が得られた。また、反応例B−1、B−2、B−4〜B−6では、反応を長時間継続した場合でもアルカン類が生成されにくく、反応の選択性が優れていることが確認された。
【0128】
(反応例C−1)
反応例B−1と同様の反応を8時間行った後、反応液中の複合粒子を遠心分離(6000rpm、5分)により回収し、エタノール30mLで洗浄後、一晩真空乾燥することで、使用済み複合粒子を得た。使用済み複合粒子54mgを用いて、再度、反応例B−1と同様の反応を8時間行った。この複合粒子の再利用実験を計4回繰り返し、1回目の反応及び使用済み複合粒子を用いた2〜5回目の反応でのアルキン類の転化率とアルケン類の選択率を求めた。結果は表4に示すとおりであった。
【0129】
【表4】
【0130】
(確認試験1)
反応例B−1と同様の反応を8時間行い、反応液中の複合粒子を遠心分離(6000rpm、5分)により回収した。反応前の複合粒子及び反応後の複合粒子について、それぞれ熱分析測定を行い、600℃まで加熱したときの重量減少率からPEIの含有量を推定した。その結果、反応前の複合粒子は24.4質量%、反応後の複合粒子は24.1質量%であった。この結果から、還元反応中に、PEIの複合粒子外への漏出がほとんど無いことが確認された。また、反応前の複合粒子及び反応後の複合粒子について、それぞれICP化学分析測定を行い、Pd含有量を求めた。その結果、反応前の複合粒子及び反応後の複合粒子のいずれもPd含有量は0.9質量%であり、還元反応中に、Pdナノ粒子の複合粒子外への漏出がほとんど無いことが確認された。