特許第6905843号(P6905843)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6905843
(24)【登録日】2021年6月30日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】塗布処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20210708BHJP
   B05C 11/08 20060101ALI20210708BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   H01L21/30 564C
   B05C11/08
   B05C11/10
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-62250(P2017-62250)
(22)【出願日】2017年3月28日
(65)【公開番号】特開2018-166135(P2018-166135A)
(43)【公開日】2018年10月25日
【審査請求日】2020年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】平尾 剛
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−164277(JP,A)
【文献】 特開平11−040484(JP,A)
【文献】 特開2009−112991(JP,A)
【文献】 特開2003−024863(JP,A)
【文献】 特開2004−296811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/16
B05C 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に塗布液を塗布する塗布処理装置であって、
基板を保持して回転させる基板保持部と、
前記基板保持部に保持された基板に対して塗布液を供給する塗布液供給部材と、
前記基板保持部に保持された基板を囲み得るように、前記基板保持部の外側に配置されたカップと、
を有し、
前記カップの内周面には、少なくとも前記基板保持部に保持された基板の高さ位置から下方に、縦方向の溝が複数形成され、
前記各溝のカップ内周面における縦方向の各上端部は、上方に向かうにつれて広がるようにテーパ状に成形されていることを特徴とする、塗布処理装置。
【請求項2】
前記各溝の断面は、台形であることを特徴とする、請求項1に記載の塗布処理装置。
【請求項3】
前記各溝によって形成される凸条部の上部表面は、溝の底部に対して相対的に撥水性が高いことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の塗布処理装置。
【請求項4】
前記凸条部の上部表面の、溝の底部表面に対する割合は、90%以上であることを特徴とする、請求項に記載の塗布処理装置。
【請求項5】
前記凸条部の上部表面の、溝の底部表面に対する割合は、95%以上であることを特徴とする、請求項に記載の塗布処理装置。
【請求項6】
前記カップの内側に、前記基板保持部を囲む他のカップを有し、
当該他のカップの表面には、縦方向の溝が複数形成されていることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の塗布処理装置。
【請求項7】
前記他のカップにおける各溝の断面は、台形であることを特徴とする、請求項に記載の塗布処理装置。
【請求項8】
基板上に塗布液を塗布する塗布処理装置であって、
基板を保持して回転させる基板保持部と、
前記基板保持部に保持された基板に対して塗布液を供給する塗布液供給部材と、
前記基板保持部に保持された基板を囲み得るように、前記基板保持部の外側に配置されたカップと、
を有し、
前記カップの内周面には、少なくとも前記基板保持部に保持された基板の高さ位置から下方に、縦方向の溝が複数形成され、
前記カップの内側に、前記基板保持部を囲む他のカップを有し、
当該他のカップの表面には、縦方向の溝が複数形成され、
前記他のカップにおける各溝のカップ内周面における縦方向の各上端部は、上方に向かうにつれて広がるようにテーパ状に成形されていることを特徴とする、塗布処理装置。
【請求項9】
前記他のカップにおける各溝の断面は、台形であることを特徴とする、請求項に記載の塗布処理装置。
【請求項10】
前記他のカップにおける前記各溝によって形成される凸条部の上部表面は、溝の底部に対して相対的に撥水性が高いことを特徴とする、請求項〜9のいずれか一項に記載の塗布処理装置。
【請求項11】
前記凸条部の上部表面の、溝の底部表面に対する割合は、90%以上であることを特徴とする、請求項10に記載の塗布処理装置。
【請求項12】
前記凸条部の上部表面の、溝の底部表面に対する割合は、95%以上であることを特徴とする、請求項10に記載の塗布処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に塗布液を塗布する塗布処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造プロセスにおけるフォトリソグラフィー工程では、例えば基板としての半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)上に所定の塗布液を塗布して反射防止膜やレジスト膜といった塗布膜を形成する塗布処理が行われる。
【0003】
上述した塗布処理においては、回転中のウェハの中心部にノズルから塗布液を供給し、遠心力によりウェハ上で塗布液を拡散することよってウェハ上に塗布膜を形成する、いわゆるスピン塗布法が広く用いられている。この場合、回転するウェハの表面から飛散した塗布液が周囲に飛散するのを防止するため、従来からカップと呼ばれる容器を有する回転式の塗布装置が用いられている。これは、ウェハを水平状態で保持して回転させる基板保持手段の外側に、基板保持手段に保持されたウェハの側方から下方にかけて囲むようなカップが配置されているものであり、ウェハを回転させた際にウェハから周囲へ飛散する塗布液をカップの内周面で受け止めるものであった(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−82647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カップの内周壁面に飛散した塗布液は、自重によってカップ内周壁面を伝って下方に落下していくのであるが、従来技術はその際の格別な工夫がなかった。そのため、付着した塗布液が内周壁面に残留する量が多く、定期メンテナンスの間隔が短くなるという問題があった。また残留したまま塗布液が固着して汚染の原因となるパーティクルを発生させる可能性が高くなったり、メンテナンスの際に固着した塗布液を除去するにも時間を要していた。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、前記したようないわゆる回転式の塗布装置をはじめとする各種塗布装置において、カップに飛散した塗布液の下方への落下を促進させて残留する塗布液の量を少なくして、カップ内周壁に残留する塗布液の量を抑えてパーティクルの発生を少なくし、またメンテナンスサイクルを長くすると共に、メンテナンスの際の固着した塗布液の除去に要する時間の短縮を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、基板上に塗布液を塗布する塗布処理装置であって、基板を保持して回転させる基板保持部と、前記基板保持部に保持された基板に対して塗布液を供給する塗布液供給部材と、前記基板保持部に保持された基板を囲み得るように前記基板保持部の外側に配置されたカップと、を有し、前記カップの内周面には、少なくとも前記基板保持部に保持された基板の高さ位置から下方に、縦方向の溝が複数形成され、前記各溝のカップ内周面における縦方向の各上端部は、上方に向かうにつれて広がるようにテーパ状に成形されていることを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、カップの内周面には、少なくとも前記基板保持部に保持された基板の高さ位置から下方に、縦方向の溝が複数形成されているので、カップ内周面に飛散した塗布液は、溝へと集められて凝集し、溝を伝って下方に滑落することが促進される。
【0009】
前記した塗布処理装置において、各溝の断面は、台形であってもよい。
【0011】
さらに前記各溝によって形成される凸条部(筋状に盛り上がっている部分)の上部表面は、溝の底部に対して相対的に撥水性が高いものであってもよい。これを実現するため、たとえば凸条部の上部表面に撥水処理を施したり、あるいは逆に溝の底部に親水処理を施したり、さらにはこれらの双方の処理を実施してもよい。
【0012】
前記カップの内側に、前記基板保持部を囲む他のカップを有し、当該他のカップの表面に、縦方向の溝を複数形成するようにしてもよい。
【0013】
前記他のカップにおける各溝の断面は、台形であってもよい。
【0014】
前記他のカップにおける各溝のカップ内周面における縦方向の各上端部は、上方に向かうにつれて広がるようにテーパ状に成形してもよい。
【0015】
前記他のカップにおける前記各溝によって形成される凸条部の上部表面は、溝の底部に対して相対的に撥水性が高いものであってもよい。
【0016】
前記凸条部の上部表面の、溝の底部表面に対する割合は、90%以上であることが好ましく、より好ましくは、前記凸条部の上部表面の、溝の底部表面に対する割合は、95%以上であることがよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、カップ内周面に飛散した塗布液を下方に落下させることを促進できるから、カップ内周面に残留する塗布液の量を少なくしてパーティクルの発生を少なくし、またメンテナンスサイクルを長くすると共に、メンテナンスの際の固着した塗布液の除去に要する時間の短縮を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施の形態にかかる基板処理システムの構成の概略を示す平面図である。
図2】本実施の形態にかかる基板処理システムの構成の概略を示す正面図である。
図3】本実施の形態にかかる基板処理システムの構成の概略を示す背面図である。
図4】レジスト処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。
図5】レジスト処理装置の構成の概略を示す横断面図である。
図6】アウターカップの側面端面図である。
図7】インナーカップの側面図である。
図8】溝の拡大平面図である。
図9】溝の縦断面図である。
図10】台形の溝の縦断面図である。
図11】上端部がテーパ状に成形された溝の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる塗布処理方法を実施する塗布処理装置を備えた基板処理システム1の構成の概略を示す説明図である。図2及び図3は、各々基板処理システム1の内部構成の概略を模式的に示す、正面図と背面図である。なお、本実施の形態では、塗布液がレジスト液であり、塗布処理装置が基板にレジスト液を塗布するレジスト塗布装置である場合を例にとって説明する。
【0020】
基板処理システム1は、図1に示すように複数枚のウェハWを収容したカセットCが搬入出されるカセットステーション10と、ウェハWに所定の処理を施す複数の各種処理装置を備えた処理ステーション11と、処理ステーション11に隣接する露光装置12との間でウェハWの受け渡しを行うインターフェイスステーション13とを一体に接続した構成を有している。
【0021】
カセットステーション10には、カセット載置台20が設けられている。カセット載置台20には、基板処理システム1の外部に対してカセットCを搬入出する際に、カセットCを載置するカセット載置板21が複数設けられている。
【0022】
カセットステーション10には、図1に示すようにX方向に延びる搬送路22上を移動自在なウェハ搬送装置23が設けられている。ウェハ搬送装置23は、上下方向及び鉛直軸周り(θ方向)にも移動自在であり、各カセット載置板21上のカセットCと、後述する処理ステーション11の第3のブロックG3の受け渡し装置との間でウェハWを搬送できる。
【0023】
処理ステーション11には、各種装置を備えた複数、例えば第1〜第4の4つのブロックG1、G2、G3、G4が設けられている。例えば処理ステーション11の正面側(図1のX方向負方向側)には、第1のブロックG1が設けられ、処理ステーション11の背面側(図1のX方向正方向側)には、第2のブロックG2が設けられている。また、処理ステーション11のカセットステーション10側(図1のY方向負方向側)には、第3のブロックG3が設けられ、処理ステーション11のインターフェイスステーション13側(図1のY方向正方向側)には、第4のブロックG4が設けられている。
【0024】
例えば第1のブロックG1には、図2に示すように複数の液処理装置、例えばウェハWを現像処理する現像処理装置30、ウェハWのレジスト膜の下層に反射防止膜(以下「下部反射防止膜」という)を形成する下部反射防止膜形成装置31、ウェハWにレジスト液を塗布してレジスト膜を形成するレジスト塗布装置32、ウェハWのレジスト膜の上層に反射防止膜(以下「上部反射防止膜」という)を形成する上部反射防止膜形成装置33が下からこの順に配置されている。
【0025】
例えば現像処理装置30、下部反射防止膜形成装置31、レジスト塗布装置32、上部反射防止膜形成装置33は、それぞれ水平方向に3つ並べて配置されている。なお、これら現像処理装置30、下部反射防止膜形成装置31、レジスト塗布装置32、上部反射防止膜形成装置33の数や配置は、任意に選択できる。
【0026】
これら現像処理装置30、下部反射防止膜形成装置31、レジスト塗布装置32、上部反射防止膜形成装置33では、例えばウェハW上に所定の塗布液を塗布するスピンコーティングが行われる。スピンコーティングでは、例えば塗布ノズルからウェハW上に塗布液を吐出すると共に、ウェハWを回転させて、塗布液をウェハWの表面に拡散させる。なお、レジスト塗布装置32の構成については後述する。
【0027】
例えば第2のブロックG2には、図3に示すようにウェハWの加熱や冷却といった熱処理を行う熱処理装置40や、レジスト液とウェハWとの定着性を高めるためのアドヒージョン装置41、ウェハWの外周部を露光する周辺露光装置42が上下方向と水平方向に並べて設けられている。これら熱処理装置40、アドヒージョン装置41、周辺露光装置42の数や配置についても、任意に選択できる。
【0028】
例えば第3のブロックG3には、複数の受け渡し装置50、51、52、53、54、55、56が下から順に設けられている。また、第4のブロックG4には、複数の受け渡し装置60、61、62が下から順に設けられている。
【0029】
図1に示すように第1のブロックG1〜第4のブロックG4に囲まれた領域には、ウェハ搬送領域Dが形成されている。ウェハ搬送領域Dには、例えばY方向、X方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アーム70aを有する、ウェハ搬送装置70が複数配置されている。ウェハ搬送装置70は、ウェハ搬送領域D内を移動し、周囲の第1のブロックG1、第2のブロックG2、第3のブロックG3及び第4のブロックG4内の所定の装置にウェハWを搬送できる。
【0030】
また、ウェハ搬送領域Dには、第3のブロックG3と第4のブロックG4との間で直線的にウェハWを搬送するシャトル搬送装置80が設けられている。
【0031】
シャトル搬送装置80は、例えば図3のY方向に直線的に移動自在になっている。シャトル搬送装置80は、ウェハWを支持した状態でY方向に移動し、第3のブロックG3の受け渡し装置52と第4のブロックG4の受け渡し装置62との間でウェハWを搬送できる。
【0032】
図1に示すように第3のブロックG3のX方向正方向側の隣には、ウェハ搬送装置100が設けられている。ウェハ搬送装置100は、例えばX方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アーム100aを有している。ウェハ搬送装置100は、搬送アーム100aによってウェハWを支持した状態で上下に移動して、第3のブロックG3内の各受け渡し装置にウェハWを搬送できる。
【0033】
インターフェイスステーション13には、ウェハ搬送装置110と受け渡し装置111が設けられている。ウェハ搬送装置110は、例えばY方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アーム110aを有している。ウェハ搬送装置110は、例えば搬送アーム110aにウェハWを支持して、第4のブロックG4内の各受け渡し装置、受け渡し装置111及び露光装置12との間でウェハWを搬送できる。
【0034】
次に、上述したレジスト塗布装置32の構成について説明する。レジスト塗布装置32は、図4図5に示すように内部を密閉可能な処理容器120を有している。処理容器120の側面には、ウェハWの搬入出口(図示せず)が形成されている。
【0035】
処理容器120内には、ウェハWを保持して回転させる基板保持部としてのスピンチャック121が設けられている。スピンチャック121は、例えばモータなどのチャック駆動部122により所定の速度に回転できる。また、チャック駆動部122には、例えばシリンダなどの昇降駆動機構が設けられており、スピンチャック121は昇降自在になっている。
【0036】
スピンチャック121の周囲には、ウェハWから飛散又は落下する液体を受け止め、回収する図6に示したアウターカップ130と、アウターカップ130の内周側に位置する図7に示した、他のカップとしてのインナーカップ140とを有している。
【0037】
図5に示すようにアウターカップ130のX方向負方向(図5の下方向)側には、Y方向(図5の左右方向)に沿って延伸するレール150が形成されている。レール150は、例えばアウターカップ130のY方向負方向(図5の左方向)側の外方からY方向正方向(図5の右方向)側の外方まで形成されている。レール150には、2本のアーム151、152が設けられている。
【0038】
第1のアーム151には、塗布液としてレジスト液を供給する、塗布液供給部材としてのレジスト液供給ノズル154が支持されている。第1のアーム151は、第1の移動機構としてのノズル駆動部155により、レール150上を移動自在である。これにより、レジスト液供給ノズル154は、アウターカップ130のY方向正方向側の外方に設置された待機部156からアウターカップ130内のウェハWの中心部上方を通って、アウターカップ130のY方向負方向側の外側に設けられた待機部157まで移動できる。また、ノズル駆動部155によって、第1のアーム151は昇降自在であり、レジスト液供給ノズル154の高さを調節できる。
【0039】
第2のアーム152には、レジスト液の溶剤を供給する溶剤供給ノズル158が支持されている。第2のアーム152は、第2の移動機構としてのノズル駆動部159によってレール150上を移動自在となっている。これにより、溶剤供給ノズル158は、アウターカップ130のY方向正方向側の外側に設けられた待機部160から、アウターカップ130内のウェハWの中心部上方まで移動できる。待機部160は、待機部156のY方向正方向側に設けられている。また、ノズル駆動部159によって、第2のアーム152は昇降自在であり、溶剤供給ノズル158の高さを調節できる。
【0040】
アウターカップ130の下部には、環状の壁体131が設けられており、インナーカップ140の下部には、環状の壁体141が設けられている。これら壁体131、141との間に排出路をなす隙間dが形成されている。またさらに、インナーカップ140の下方には、円環状の水平部材142、筒状の外周垂直部材143、内周垂直部材144、底部に位置する円環状の底面部材145によって、屈曲路が形成されている。この屈曲路によって、気液分離部が構成されている。
【0041】
そして、壁体131と外周垂直部材143との間における底面部材145には、回収した液体を排出する排液口132が形成されており、この排液口132には排液管133が接続されている。一方、外周垂直部材143と内周垂直部材144との間における底面部材145には、雰囲気を排気する排気口1465が形成されており、この排気口116には排気管147が接続されている。
【0042】
前記したアウターカップ130の内周面には、図6に示したように、多数の溝170が縦方向に形成されている。この溝170の上端部h、すなわち溝170が形成され始めているのは、上部は図4に示したように、スピンチャック121上に保持されたウェハWの上面の高さ位置からであり、溝170の下端部bは、スピンチャック121上に保持されたウェハWの下面の高さ位置よりもさらに下方である。
【0043】
図8、9に示したように、溝170によって凸条部171が形成される。そして本実施の形態では、凸条部171の上部表面171aは、溝170の底部に対して相対的に撥水性が高くなっている。これを実現するためには、たとえば凸条部171の上部表面171aに撥水処理を施したり、あるいは逆に溝170の底部170aに親水処理を施せばよい。さらにはこれらの双方の処理、すなわち凸条部171の上部表面171aに撥水処理を施すと共に、溝170の底部170aに親水処理を施すようにしてもよい。また溝170の側部170bにも親水処理を施してもよい。
【0044】
前記したインナーカップ140の外周面、及びインナーカップ140の傾斜した上面140a(図4に示している)にも、図6に示したように、多数の溝170が縦方向に形成されている。そして、アウターカップ130の溝170と同様、溝170によって形成される凸条部の上部表面は、溝170の底部に対して相対的に撥水性が高くなっている。
【0045】
以上の基板処理システム1には、図1に示すように制御部200が設けられている。制御部200は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、基板処理システム1におけるウェハWの処理を制御するプログラムが格納されている。また、プログラム格納部には、上述の各種処理装置や搬送装置などの駆動系の動作を制御して、基板処理システム1における後述の塗布処理を実現させるためのプログラムも格納されている。なお、前記プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどのコンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、その記憶媒体から制御部200にインストールされたものであってもよい。
【0046】
次に、以上のように構成された基板処理システム1を用いて行われるウェハ処理について説明する。まず、複数のウェハWを収納したカセットCが、基板処理システム1のカセットステーション10に搬入され、ウェハ搬送装置23によりカセットC内の各ウェハWが順次処理ステーション11の受け渡し装置53に搬送される。
【0047】
次にウェハWは、第2のブロックG2の熱処理装置40に搬送され温度調節処理される。その後、ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって例えば第1のブロックG1の下部反射防止膜形成装置31に搬送され、ウェハW上に下部反射防止膜が形成される。その後ウェハWは、第2のブロックG2の熱処理装置40に搬送され、加熱処理され、温度調節される。
【0048】
次にウェハWはアドヒージョン装置41に搬送され、アドヒージョン処理される。その後ウェハWは、第1のブロックG1のレジスト塗布装置32に搬送され、ウェハW上にレジスト膜が形成される。
【0049】
ここで、レジスト塗布装置32におけるレジスト塗布処理について詳述する。レジストの塗布処理にあたっては、先ずスピンチャック121の上面でウェハWを吸着保持する。そして溶剤供給ノズル158をウェハWの中心部の上方に移動させ、ウェハWの中心部にレジスト液の溶剤を吐出する。次いでウェハWをたとえば2000rpmで回転させ、ウェハW上の溶剤をスピン塗布法によってウェハ全面に拡散させ、いわゆるプリウェット処理を行う。その後溶剤供給ノズル158を退避させた後、ウェハWの中心部上方にレジスト液供給ノズル154を移動させ、ウェハWを低回転で回転させながら、レジスト液供給ノズル154からウェハW上にレジスト液を供給する。
【0050】
そしてレジスト液供給ノズル154からのレジスト液の供給量が所定の量に達した時点でレジスト液の供給を停止し、次いでレジスト液供給ノズル154を退避させる。その後、より高速の回転数でウェハWを回転させ、ウェハWの中心部に供給されたレジスト液をウェハWの全面に拡散させてレジスト液の塗布処理を行う。
【0051】
かかるプロセスにおいて、スピンチャック121の上面で吸着保持したウェハWの上面からは、レジスト液の溶剤やレジスト液が周囲に飛散する。それらの液滴はアウターカップ130の内周面に向けて飛散する。飛散したこれらの処理液は、アウターカップ130で受け止められ、壁体131を伝って下方の排液口132へと導かれるのであるが、本実施の形態では、前記したようにアウターカップ130の内周面全面には、縦方向に溝170が形成されているので、アウターカップ130の内周面に付着したこれらの処理液は、溝170を滑落していく。したがって付着したこれらの処理液の下方への落下が促進される。
【0052】
しかも本実施の形態では、溝170によって形成された凸条部171の上部表面171aは、溝170の底部170aや側部170bに対して、相対的に撥水性が高くなっている。そのため凸条部171の上部表面171aに付着した前記した各処理液の液滴は、図8に示したように、凸条部171の上部表面171aで凝集して成長し、相対的に親水性のある溝170の底部170aや側部170bに引き込まれやすくなる。その結果、これらの処理液は、溝170を伝って滑落しやすくなり、下方への落下がさらに促進される。
【0053】
したがって、アウターカップ130の内周面に残留するレジスト液等の塗布液の量が少なくなり、その分パーティクルの発生も抑えられる。また残留する塗布液の量が少ないので、メンテナンスサイクルを長くとることができ、さらにメンテナンスの際の固着したレジスト液の除去に要する時間についても、これを短縮することができる。
【0054】
一方、ウェハWの周縁部から下方に落下したレジスト液や溶剤は、インナーカップ140の外周表面や、傾斜した上面140aに付着するが、かかる場合でも、インナーカップ140の外周表面や、傾斜した上面140aには、アウターカップ130と同様な溝170が形成されているので、下方への滑落が促進され、インナーカップ140の外周表面や、傾斜した上面140aにレジスト液等の塗布液が残留することは抑えられる。また溝170によって形成された凸条部171の上部表面171aを、溝170の底部170aや側部170bに対して、相対的に撥水性を高くすることで、さらに塗布液等の滑落が促進される。なおかかる意味で、インナーカップ140は、落下した処理液をガイドする機能が大きいので、本実施の形態ではインナーカップと呼称しているものの、カップについては、いわゆるガイド部材として呼称してもよい。したがって、インナーカップという名称に限らず、本発明におけるインナーカップと同様な機能を有する部材は、本発明の他のカップの概念に含まれるものである。
【0055】
なお前記した実施の形態では、図9に示したように、溝170の断面が方形であったが、図10に示したように、溝170の断面は台形であってもよい。
【0056】
また凸条部171の上部表面171aの、溝170の底部170a表面に対する割合は、90%以上であることが好ましく、より好ましくは95%以上であることがよい。この場合、たとえば凸条部171の上部表面171aの幅が、溝170の底部170aの幅の90%以上、あるいは95%以上とすればよい。
【0057】
ところで、本実施の形態では、図9に示したように、アウターカップ130における溝170の上端部hは、スピンチャック121上に保持されたウェハWの上面の高さ位置に対応する位置であったが、もちろんアウターカップ130の上端部から溝170を形成してもよい。
【0058】
但し、アウターカップ130の上端部付近が、スピンチャック121に保持された状態のウェハWの周辺部に近接している場合、アウターカップ130の上端部付近に撥水処理がされていると、ウェハWの回転によって飛散したレジスト液やその他の処理液が、アウターカップ130の上端部付近に飛散した際、跳ね返ってウェハWの表面に飛散する場合もありうる。
【0059】
このような観点から、先の実施の形態では、アウターカップ130における溝170の上端部hは、スピンチャック121上に保持されたウェハWの上面の高さ位置に対応する位置としていた。
【0060】
したがって、そのような跳ね返りを抑制するため、溝170の上端部hからアウターカップ130の上端部にかけた領域では、積極的に親水処理することが好ましい。
【0061】
また溝170の上端部hからアウターカップ130の上端部にかけた領域に付着したレジスト液やその他の処理液については、これを積極的に下方の溝170に導くことが好ましい。
【0062】
図11に示した例は、そのように溝170の上端部hからアウターカップ130の上端部にかけた領域Fに付着した処理液を、溝170へと導きやすくするため、溝170各上端部170cは、上方に向かうにつれて広がるようにテーパ状に成形してある。これによって、領域Fに付着、残留する処理液は、溝170へと導かれやすくなり、領域Fにレジスト液等の処理液が残留、固着することは抑えられる。
【0063】
また前記した例では、溝170は直線状のもの、すなわち溝170の側部170bが相互に平行なものであったが、これに限らず、溝170自体の幅を、例えば下方に行くにつれて幅広にしたり、あるいは逆に下方に行くにつれて幅狭にしたりしてもよい。前者の場合には、凸条部171が上方で幅広となり、付着した塗布液等をより凝集させることが可能になり、後者の場合には、下方に行くにつれて溝内で塗布液等を凝集させて、滑落を促進させることが可能になる。このような溝の形状の選択は、例えば塗布液の粘度によって行ってもよい。
【0064】
前記実施の形態は、塗布処理装置としてレジスト液をウェハWに塗布するレジスト塗布装置に適用した例であったが、本発明は、そのようにレジスト液の塗布のみならず、各種の塗布液、例えば反射防止膜の形成に用いられる塗布液やSOGなどにおいても適用可能である。すなわちウェハをはじめとする各種基板の表面に塗布液を塗布する際、周囲にこれら塗布液が飛散する処理装置に適用があるものである。
【0065】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。本発明はこの例に限らず種々の態様を採りうるものである。本発明は、基板がウェハ以外のFPD(フラットパネルディスプレイ)、フォトマスク用のマスクレチクルなどの他の基板である場合にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、基板上に塗布液を塗布する塗布処理装置に有用である。
【符号の説明】
【0067】
1 基板処理システム
30 現像処理装置
31 下部反射防止膜形成装置
32 レジスト塗布装置
33 上部反射防止膜形成装置
40 熱処理装置
41 アドヒージョン装置
42 周辺露光装置
121 スピンチャック
130 アウターカップ
140 インナーカップ
154 レジスト液供給ノズル
158 溶剤供給ノズル
161 溶剤供給ノズル
170 溝
171 凸条部
200 制御部
W ウェハ
図1
図2
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図5
図6
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図8
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図11