特許第6905971号(P6905971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6905971
(24)【登録日】2021年6月30日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】鉱油系基油、及び潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 101/02 20060101AFI20210708BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20210708BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20210708BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20210708BHJP
   C10N 40/06 20060101ALN20210708BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20210708BHJP
   C10N 40/12 20060101ALN20210708BHJP
   C10N 40/20 20060101ALN20210708BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20210708BHJP
【FI】
   C10M101/02
   C10N20:02
   C10N30:02
   C10N40:02
   C10N40:06
   C10N40:08
   C10N40:12
   C10N40:20 Z
   C10N40:25
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-501113(P2018-501113)
(86)(22)【出願日】2017年2月3日
(86)【国際出願番号】JP2017004089
(87)【国際公開番号】WO2017145714
(87)【国際公開日】20170831
【審査請求日】2019年9月20日
(31)【優先権主張番号】特願2016-34165(P2016-34165)
(32)【優先日】2016年2月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100153866
【弁理士】
【氏名又は名称】滝沢 喜夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(72)【発明者】
【氏名】黒田 憲寛
(72)【発明者】
【氏名】安西 久夫
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健治
【審査官】 黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−233116(JP,A)
【文献】 特開2007−270082(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/157217(WO,A1)
【文献】 特開2013−053320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00−177/00
C10N 10/00− 80/00
C10G 1/00− 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
40℃における動粘度が4.0mm/s以上6.0mm/s未満であり、100℃における動粘度が1.0mm/s以上2.0mm/s未満であって、且つ、
引火点が140℃以上である、鉱油系基油であって、
回転型レオメータを用いて、角速度6.3rad/s、歪み量0.1〜100%の条件下で計測した、−10℃と−25℃の2点間における複素粘度の温度勾配Δ|η*|が、0.0032Pa・s/℃以下である、鉱油系基油。
【請求項2】
100℃における動粘度が1.5mm/s以上2.0mm/s未満である、請求項1に記載の鉱油系基油。
【請求項3】
前記鉱油系基油の原料油の、アロマ分、ナフテン分、n−パラフィン分、及びイソパラフィン分の全量100体積%に対する、n−パラフィン分が占める割合が50体積%以下である、請求項1又は2に記載の鉱油系基油。
【請求項4】
前記鉱油系基油の原料油のJIS K2254に準拠した蒸留試験において、10容積%留出温度が250℃以上であり、90容積%留出温度が320℃以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の鉱油系基油。
【請求項5】
前記鉱油系基油の原料油の40℃における動粘度が4.0〜6.0mm/sであり、100℃における動粘度が1.0〜2.0mm/sである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の鉱油系基油。
【請求項6】
前記鉱油系基油の原料油を、水素化異性化脱ろう処理を施して得られたものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の鉱油系基油。
【請求項7】
前記原料油を、前記水素化異性化脱ろう処理の後に、さらに水素化仕上げ処理を施して得られたものである、請求項6に記載の鉱油系基油。
【請求項8】
前記鉱油系基油の原料油が、重質軽油を水素化分解して得られる軽油留分を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の鉱油系基油。
【請求項9】
前記鉱油系基油の原料油のパラフィン分(%C)が60以上である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の鉱油系基油。
【請求項10】
前記鉱油系基油の原料油の芳香族分(%C)が10.0以下である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の鉱油系基油。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の鉱油系基油を含む、潤滑油組成物。
【請求項12】
駆動系油、エンジン油、油圧作動油、タービン油、圧縮機油、工作機械用潤滑油、切削油、歯車油、流体軸受け油、及び転がり軸受け油のいずれかとして使用される、請求項11に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の鉱油系基油を含む潤滑油組成物を、動力伝達装置、エンジン、油圧作動機器、タービン、圧縮機、工作機械、切削機、歯車、流体軸受け、及び転がり軸受けのいずれかの機構の潤滑に用いる、潤滑油組成物の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱油系基油、及び、当該鉱油系基油を用いた潤滑油組成物、並びに、潤滑油組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動変速機油(ATF)、無段変速機油(CVTF)、ショックアブソーバー油(SAF)等の駆動系油や、エンジン油、油圧作動油等として用いられる潤滑油組成物には、各用途に応じて、様々な特性が求められている。
潤滑油組成物の特性は、使用する基油の性状に大きく左右される場合が多いため、要求された特性を発現し得る潤滑油組成物を製造することができるような基油の開発も広く行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、引火点が170℃以上、40℃における動粘度が9.0〜14.0mm/s、粘度指数が100以上、蒸留試験における5容積%留出温度が310℃以上、流動点が−30℃以下、及び芳香族分(%C)が0.1以下である、炭化水素系の潤滑油基油が記載されている。
特許文献1の記載によれば、当該潤滑油基油は、従来の粘度を維持しつつ、引火点が高いため、自動車用のパワーステアリング油やトランスミッション油等の高温下で使用される潤滑油組成物に好適であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−182931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、駆動系油として用いられる潤滑油組成物には、高引火点であって良好な安全性を維持しつつも、更なる低粘度化による省燃費性能の向上が要求されつつある。
特許文献1に記載の潤滑油基油は、40℃における動粘度が9.0mm/s以上と高粘度の基油であるため、潤滑油組成物の低粘度化による省燃費性能の向上に適した基油とは言い難い。
【0006】
本発明は、高引火点でありつつも、更なる低粘度化による省燃費性能をより向上させた潤滑油組成物を容易に製造し得る鉱油系基油、及び、当該鉱油系基油を用いた潤滑油組成物、並びに、潤滑油組成物の使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、40℃及び100℃における動粘度を所定の範囲に調製し低粘度化し、さらに引火点が所定値以上である鉱油系基油が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は、下記[1]〜[3]を提供する。
[1]40℃における動粘度が4.0mm/s以上6.0mm/s未満であり、100℃における動粘度が1.0mm/s以上2.0mm/s未満であって、且つ、
引火点が140℃以上である、鉱油系基油。
[2]上記[1]に記載の鉱油系基油を含む、潤滑油組成物。
[3]上記[1]に記載の鉱油系基油を含む潤滑油組成物を、動力伝達装置、エンジン、油圧作動機器、タービン、圧縮機、工作機械、切削機、歯車、流体軸受け、及び転がり軸受けのいずれかの機構の潤滑に用いる、潤滑油組成物の使用方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の鉱油系基油を用いることで、高引火点でありつつも、低粘度化し、駆動系油等として使用した際に省燃費性能をより向上させた潤滑油組成物を容易に製造し得る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔本発明の鉱油系基油の性状〕
本発明の鉱油系基油は、下記要件(I)及び(II)を満たすものである。
・要件(I):40℃における動粘度が4.0mm/s以上6.0mm/s未満であり、100℃における動粘度が1.0mm/s以上2.0mm/s未満である。
・要件(II):引火点が140℃以上である。
なお、本明細書において、40℃又は100℃における動粘度は、JIS K2283に準拠して測定された値を意味し、引火点は、JIS K2265−4に準拠し、クリーブランド開放式(COC)法により測定された値を意味する。
【0010】
一般的に鉱油系基油の性状として、低粘度化するほど、引火点は低くなる傾向にある。
それに対して、本発明の鉱油系基油は、要件(I)で規定するほどに低粘度化されつつも、要件(II)で規定するように、引火点が140℃以上である高引火点の鉱油系基油である。
そのため、本発明の鉱油系基油を用いることで、高引火点でありつつも、低粘度化し、駆動系油等として使用した際に省燃費性能をより向上させた潤滑油組成物を容易に製造し得る。
また、本発明の鉱油系基油は、要件(I)で規定のとおり、40℃における動粘度と100℃における動粘度の差異が比較的小さく、粘度の温度依存性が低い。そのため、本発明の鉱油系基油を用いることで、温度による粘度変化が小さい潤滑油組成物を製造することができる。
【0011】
本発明の鉱油系基油の40℃における動粘度(V40)は、4.0mm/s以上であるが、好ましくは4.2mm/s以上、より好ましくは4.3mm/s以上、更に好ましくは4.4mm/s以上である。
また、動粘度(V40)は、6.0mm/s未満であるが、好ましくは5.8mm/s以下、より好ましくは5.7mm/s以下、更に好ましくは5.6mm/s以下である。
【0012】
本発明の鉱油系基油の100℃における動粘度(V100)は、1.0mm/s以上であるが、好ましくは1.2mm/s以上、より好ましくは1.3mm/s以上、更に好ましくは1.4mm/s以上、より更に好ましくは1.5mm/s以上である。
また、動粘度(V100)は、2.0mm/s未満であるが、好ましくは1.95mm/s以下、より好ましくは1.90mm/s以下、更に好ましくは1.85mm/s以下である。
なお、本発明の鉱油系基油は、JIS K2283に準拠して測定される粘度指数が算出不能な鉱油である。
【0013】
また、本発明の鉱油系基油の引火点としては、140℃以上であるが、好ましくは142℃以上、より好ましくは144℃以上、更に好ましくは146℃以上、更に好ましくは150℃以上、より更に好ましくは154℃以上、特に好ましくは160℃以上であり、また、通常180℃以下である。
【0014】
本発明の一態様の鉱油系基油のJIS K2254に準拠した蒸留試験において、当該鉱油系基油の10容量%留出温度としては、好ましくは250℃以上、より好ましくは255℃以上、更に好ましくは280℃以上、より更に好ましくは285℃以上であり、また、通常305℃以下である。
また、本発明の一態様の鉱油系基油のJIS K2254に準拠した蒸留試験において、当該鉱油系基油の90容量%留出温度としては、好ましくは320℃以上、より好ましくは330℃以上、更に好ましくは340℃以上、より更に好ましくは350℃以上であり、また、通常365℃以下である。
【0015】
本発明の一態様の鉱油系基油のアニリン点としては、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは85℃以上、より更に好ましくは90℃以上、特に好ましくは92℃以上であり、また、通常110℃以下である。
アニリン点が70℃以上である鉱油系基油は、パラフィン分が多く、芳香族分が少ない傾向があり、高引火点となり易い。
なお、本明細書において、アニリン点は、JIS K2256(U字管法)に準拠して測定された値を意味する。
【0016】
本発明の一態様の鉱油系基油の15℃における密度としては、好ましくは0.860g/cm以下、より好ましくは0.850g/cm以下、更に好ましくは0.840g/cm以下、より更に好ましくは0.830g/cm以下、特に好ましくは0.825g/cm以下であり、また、通常0.800g/cm以上である。
要件(I)及び(II)を満たしつつ、さらに密度が0.860g/cm以下の鉱油系基油であれば、粘度の温度依存性がより低く、引火点がより高い鉱油系基油とすることができる。
なお、本明細書において、15℃における密度は、JIS K2249に準拠して測定された値である。
【0017】
本発明の一態様の鉱油系基油のパラフィン分(%C)としては、好ましくは60〜80、より好ましくは62〜79、更に好ましくは66〜78、より更に好ましくは68〜77である。
【0018】
本発明の一態様の鉱油系基油のナフテン分(%C)としては、好ましくは10〜40、より好ましくは13〜38、更に好ましくは16〜34、より更に好ましくは20〜32である。
【0019】
本発明の一態様の鉱油系基油の芳香族分(%C)としては、好ましくは2.0未満、より好ましくは1.0未満、更に好ましくは0.1未満である。
【0020】
なお、本明細書において、パラフィン分(%C)、ナフテン分(%C)、及び芳香族分(%C)は、ASTM D−3238環分析(n−d−M法)により測定した、パラフィン分、ナフテン分、及び芳香族分の割合(百分率)を意味する。
【0021】
本発明の一態様の鉱油系基油としては、さらに下記要件(III)を満たすことが好ましい。
・要件(III):回転型レオメータを用いて、角速度6.3rad/s、歪み量0.1〜100%の条件下で計測した、−10℃と−25℃の2点間における複素粘度の温度勾配Δ|η*|(以下、単に「複素粘度の温度勾配Δ|η*|」ともいう)が0.1Pa・s/℃以下である。
なお、本発明の一態様の鉱油系基油が、2種以上の鉱油を組み合わせた混合油である場合、当該混合油が上記要件(III)を満たすものであればよい。
【0022】
上記要件(III)に記載の「歪み量」は、0.1〜100%の範囲で、温度に応じて適宜設定される値である。
また、上記の「複素粘度の温度勾配Δ|η*|」は、−10℃における複素粘度η*の値と、−25℃における複素粘度η*の値とを、それぞれ独立に、もしくは、−10℃から−25℃又は−25℃から−10℃まで温度を連続的に変化させながら測定し、当該値を温度−複素粘度の座標平面においた際、−10℃と−25℃の2点間における複素粘度の単位あたりの変化量(傾きの絶対値)を示す値である。より具体的には、下記計算式(f1)から算出される値を意味する。
・計算式(f1):複素粘度の温度勾配Δ|η*|=|([−25℃における複素粘度η*]−[−10℃における複素粘度η*])/(−25−(−10))|
つまり、要件(III)で規定する「複素粘度の温度勾配Δ|η*|」は、温度を低下させた経時変化を鉱油の低温特性として示している。
【0023】
ところで、鉱油には、ワックス分が含まれているため、鉱油の温度を徐々に低下させていくと、鉱油中のワックス分が析出し、ゲル状構造を形成する。なお、ワックス分は、パラフィン等の構造によって、析出してくる温度が異なる。このワックス分のゲル状構造は、壊れ易いため、機械的な作用で、鉱油の粘度が変化してしまう。従来、使用されている低温粘度特性のパラメータは、このようなワックス分の析出を考慮したものではなかった。
それに対して、要件(III)で規定する「複素粘度の温度勾配Δ|η*|」は、鉱油中に含まれるワックス分の析出速度を加味し、ワックス分の析出に伴う摩擦係数の変化を考慮した、鉱油の低温粘度特性をより示す正確に評価し得る指標である。
【0024】
要件(III)を満たす鉱油系基油は、複素粘度の温度勾配Δ|η*|が0.1Pa・s/℃以下であり、ワックス分の析出速度を速くならないように調整されているため、摩擦係数の上昇を引き起こし難く、より低粘度でありつつも、粘度の温度依存性がより低いものとなる。
そのため、当該鉱油系基油を用いることで、省燃費性能に優れ、温度による粘度変化がより小さい潤滑油組成物を製造することができる。
【0025】
上記観点から、要件(III)で規定するの複素粘度の温度勾配Δ|η*|としては、好ましくは0.08Pa・s/℃以下、より好ましくは0.05Pa・s/℃以下、更に好ましくは0.02Pa・s/℃以下、更に好ましくは0.01Pa・s/℃以下、より更に好ましくは0.005Pa・s/℃以下、特に好ましくは0.0030Pa・s/℃以下である。
また、要件(III)で規定する複素粘度の温度勾配Δ|η*|は、下限値については特に制限は無いが、好ましくは0.0001Pa・s/℃以上、より好ましくは0.0005Pa・s/℃以上、更に好ましくは0.0010Pa・s/℃以上、より更に好ましくは0.0018Pa・s/℃以上である。
【0026】
<本発明の鉱油系基油の調製例>
上記要件(I)〜(III)を満たす、本発明の鉱油系基油は、当該鉱油系基油の原料となる原料油の選択と、原料油を用いた鉱油系基油の製造方法に関して、以下に示す事項を適宜考慮することで、容易に調製することができる。つまり、本発明の鉱油系基油は、以下に示す原料油を、以下に示す精製処理を施して得られた鉱油であることが好ましい。
なお、以下の事項は、調製法の一例であって、これら以外の事項を考慮することによっても調製可能である。
【0027】
[原料油の選択]
本発明の鉱油系基油の原料を原料油という。当該原料油としては、例えば、パラフィン系鉱油、中間系鉱油、ナフテン系鉱油等の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油;当該常圧残油を減圧蒸留して得られる留出油;当該留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化仕上げ、溶剤脱ろう、接触脱ろう、異性化脱ろう、減圧蒸留等の精製処理の一つ以上の処理を施した鉱油又はワックス(GTLワックス等);等が挙げられる。
これらの原料油は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
前記原料油は、要件(I)で規定する程に低粘度化しつつも、温度による粘度依存性が低く、且つ、要件(II)で規定するような高引火点の鉱油系基油に調製する観点から、軽油留分を含むことが好ましく、重質軽油を水素化分解して得られた軽油留分を含むことがより好ましい。
なお、上記観点から、当該軽油留分は、パラフィン分が多く含まれていることが好ましい。
【0029】
前記原料油の40℃における動粘度としては、好ましくは4.0〜6.0mm/s、より好ましくは4.2〜5.8mm/s、更に好ましくは4.4〜5.6mm/sである。
前記原料油の100℃における動粘度としては、好ましくは1.0〜2.0mm/s、より好ましくは1.2〜1.9mm/s、更に好ましくは1.4〜1.85mm/sである。
前記原料油の引火点としては、通常70℃以上140℃未満である。
【0030】
ASTM D−3238環分析(n−d−M法)に準拠して測定した、前記原料油のパラフィン分(%C)、芳香族分(%C)及びナフテン分(%C)としては、要件(I)で規定する程に低粘度化しつつも、温度による粘度依存性が低い鉱油系基油に調製する観点から、以下に示す範囲であることが好ましい。
・パラフィン分(%C):好ましくは60以上、より好ましくは65以上、更に好ましくは68以上、より更に好ましくは70以上であり、また、好ましくは98以下である。
・芳香族分(%C):好ましくは10.0以下、より好ましくは5.0以下、更に好ましくは4.4以下である。
・ナフテン分(%C):好ましくは10〜40、より好ましくは11〜35、更に好ましくは12〜32、より更に好ましくは13〜32である。
【0031】
ASTM D2786及びGC−FID法に準拠して測定した、前記原料油のアロマ分、ナフテン分、n−パラフィン分、及びイソパラフィン分の全量100体積%に対する、各成分が占める割合としては、要件(I)で規定する程に低粘度化しつつも、温度による粘度依存性が低い鉱油系基油に調製する観点から、以下に示す範囲であることが好ましい。
・上記「アロマ分」は、芳香族環を有する炭化水素化合物の総称を意味し、好ましくは25体積%以下、より好ましくは15体積%以下、更に好ましくは10体積%以下であり、また、好ましくは1体積%以上である。
・上記「ナフテン分」は、飽和環状炭化水素化合物の総称を意味し、好ましくは70体積%以下、より好ましくは60体積%以下、更に好ましくは50体積%以下であり、また、好ましくは10体積%以上である。
・上記「n−パラフィン分」は、直鎖状飽和炭化水素化合物の総称を意味し、好ましくは50体積%以下、より好ましくは30体積%以下、更に好ましくは15体積%以下である。
・上記「イソパラフィン分」は、分岐状飽和炭化水素化合物の総称を意味し、好ましくは8体積%以上、より好ましくは25体積%以上、更に好ましくは30体積%以上であり、また、好ましくは70体積%以下である。
【0032】
JIS K2254に準拠した蒸留試験によって測定される、前記原料油の10容積%留出温度が、好ましくは250℃以上、より好ましくは260℃以上、更に好ましくは270℃以上、より更に好ましくは275℃以上であり、また、通常290℃以下である。
また、上記蒸留試験によって測定される、前記原料油の90容積%留出温度が、好ましくは320℃以上、より好ましくは350℃以上、更に好ましくは355℃以上、より更に好ましくは360℃以上、特に好ましくは366℃以上であり、また、通常400℃以下である。
原料油の10容積%留出温度及び90容積%留出温度が上記範囲であることで、要件(II)で規定するような高引火点の鉱油系基油に調製することができる。
【0033】
前記原料油の質量平均分子量(Mw)としては、好ましくは150〜450、より好ましくは180〜400、更に好ましくは200〜350である。
なお、本明細書において、原料油の質量平均分子量(Mw)は、ASTM D2502に準拠して測定された値を意味する。
【0034】
本発明で用いる原料油の40℃及び100℃における動粘度としては、上記のとおり、要件(I)で規定する範囲と大きな差異は無い。
ただし、上記のような低粘度の原料油の引火点は、通常140℃未満であり、要件(II)を満たすものではない。また、当該原料油の要件(III)で規定する複素粘度の温度勾配Δ|η*|も高くなり易く、低温粘度特性の点でも問題がある。
一方で、本発明の鉱油系基油は、このような原料油を用いつつも、以下に示すような精製処理を施すことによって、引火点が高く、且つ、低粘度でありつつも粘度の温度依存性を低く抑え、低温粘度特性に優れたものとしている。
【0035】
[本発明の鉱油系基油の製造方法]
本発明の一態様の鉱油系基油は、上述の原料油に対して、精製処理を施して得られたものであることが好ましい。なお、使用する原料油の種類に応じて、精製処理の種類や精製条件は適宜設定されることが好ましい。
精製処理としては、少なくとも水素化異性化脱ろう処理を含むことが好ましく、水素化異性化脱ろう処理及び水素化仕上げ処理を含むことがより好ましい。
【0036】
つまり、本発明の一態様の鉱油系基油は、水素化異性化脱ろう処理を施して得られたものであることが好ましく、水素化異性化脱ろう処理の後に、さらに水素化仕上げ処理を施して得られたものであることがより好ましい。
以下、「水素化異性化脱ろう処理」及び「水素化仕上げ処理」について説明する。
【0037】
(水素化異性化脱ろう処理)
水素化異性化脱ろう処理は、上述のとおり、原料油中に含まれる直鎖パラフィンを分岐鎖のイソパラフィンへとする異性化を目的に行われる精製処理である。
また、水素化異性化脱ろう処理によって、芳香族分を開環させパラフィン分としたり、硫黄分や窒素分等の不純物の除去等も行うこともできる。
この水素化異性化処理によって、分岐鎖のイソパラフィンの割合が多くなり、温度による粘度依存性が低く、高引火点の鉱油系基油に調製することができる。
【0038】
また、原料油中の直鎖パラフィンの存在については、要件(III)で規定する複素粘度の温度勾配Δ|η*|の値を大きくする要因の一つとなる。そのため、本処理では、直鎖パラフィンを分岐鎖のイソパラフィンへと異性化をし、複素粘度の温度勾配Δ|η*|の値を低く調整することが好ましい。
他に、本処理を行うことで、鉱油系基油の流動点を低下させることもできるため、低温粘度特性をより向上させた鉱油系基油を得ることができる。
【0039】
水素化異性化脱ろう処理は、水素化異性化脱ろう触媒の存在下で行われることが好ましい。
水素化異性化脱ろう触媒としては、例えば、シリカアルミノフォスフェート(SAPO)やゼオライト等の担体に、ニッケル(Ni)/タングステン(W)、ニッケル(Ni)/モリブデン(Mo)、コバルト(Co)/モリブデン(Mo)等の金属酸化物や、白金(Pt)や鉛(Pd)等の貴金属を担持した触媒が挙げられる。
【0040】
水素化異性化脱ろう処理における水素分圧としては、要件(III)及び(IV)を満たす鉱油系鉱油系基油とする観点から、好ましくは2.0〜30MPa、より好ましくは2.5〜27MPa、更に好ましくは3.0〜25MPa、より更に好ましくは3.5〜22MPaである。
【0041】
水素化異性化脱ろう処理における反応温度としては、要件(II)及び(III)を満たす鉱油系基油とする観点から、一般的な水素化異性化脱ろう処理での反応温度よりも高めに設定されることが好ましく、具体的には、好ましくは250〜400℃、より好ましくは275〜380℃、更に好ましくは280〜370℃、より更に好ましくは285〜360℃である。
当該反応温度が高温であることで、直鎖パラフィンを分岐鎖のイソパラフィンへ異性化を促進させることができ、要件(II)及び(III)を満たす鉱油系基油の調製が容易となる。
【0042】
また、水素化異性化脱ろう処理における液時空間速度(LHSV)としては、要件(III)及び(IV)を満たす鉱油系基油とする観点から、好ましくは5.0hr−1以下、より好ましくは3.0hr−1以下、更に好ましくは2.0hr−1以下、より更に好ましくは1.5hr−1以下である。
また、生産性の向上の観点から、水素化異性化脱ろう処理におけるLHSVは、好ましくは0.1hr−1以上、より好ましくは0.2hr−1以上である。
【0043】
水素化異性化脱ろう処理における水素ガスの供給割合としては、供給する原料油1キロリットルに対して、好ましくは100〜2000Nm、より好ましくは200〜1500Nm、更に好ましくは250〜1000Nmである。
【0044】
(水素化仕上げ処理)
水素化仕上げ処理は、原料油中に含まれる芳香族分の完全飽和化、及び、硫黄分や窒素分等の不純物の除去等を目的に行われる精製処理である。
【0045】
水素化仕上げ処理は、水素化触媒の存在下で行われることが好ましい。
水素化触媒としては、例えば、シリカ/アルミナ、アルミナ等の非晶質やゼオライト等の結晶質担体に、ニッケル(Ni)/タングステン(W)、ニッケル(Ni)/モリブデン(Mo)、コバルト(Co)/モリブデン(Mo)等の金属酸化物や、白金(Pt)や鉛(Pd)等の貴金属を担持した触媒が挙げられる。
【0046】
水素化仕上げ処理における水素分圧としては、要件(III)を満たす鉱油系基油とする観点から、一般的な水素化処理での圧力よりも高めに設定されることが好ましく、具体的には、好ましくは16MPa以上、より好ましくは17MPa以上、更に好ましくは18MPa以上であり、また、好ましくは30MPa以下、より好ましくは22MPa以下である。
【0047】
水素化仕上げ処理における反応温度としては、要件(III)を満たす鉱油系基油とする観点から、好ましくは200〜400℃、より好ましくは250〜350℃、更に好ましくは280〜330℃である。
【0048】
水素化仕上げ処理における液時空間速度(LHSV)としては、要件(III)を満たす鉱油系基油とする観点から、好ましくは5.0hr−1以下、より好ましくは2.0hr−1以下、更に好ましくは1.0hr−1以下であり、また、生産性の観点から、好ましくは0.1hr−1以上、より好ましくは0.2hr−1以上、更に好ましくは0.3hr−1以上である。
【0049】
水素化仕上げ処理における水素ガスの供給割合としては、供給する油分(水素化異性化脱ろう処理が施された精製油)1キロリットルに対して、好ましくは100〜2000Nm、より好ましくは200〜1500Nm、更に好ましくは250〜1100Nmである。
【0050】
(後処理)
上述の精製処理の終了後、得られた精製油に対して、減圧蒸留を施し、40℃における動粘度が要件(I)で規定の範囲となる留分を回収することで、本発明の鉱油系基油を得ることができる。
ここで得られる鉱油系基油は、要件(I)で規定するように低粘度化されつつも、高引火点を有するものである。
なお、減圧蒸留の諸条件(圧力、温度、時間等)としては、得られる鉱油系基油の40℃及び100℃における動粘度が、要件(I)で規定の範囲内となるように、適宜調整される。
【0051】
〔潤滑油組成物〕
本発明の潤滑油組成物は、上述の本発明の鉱油系基油を含むものであるが、当該鉱油系基油と共に、合成油を含有してもよい。
【0052】
前記合成油としては、例えば、α−オレフィン単独重合体、又はα−オレフィン共重合体(例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体等の炭素数8〜14のα−オレフィン共重合体)等のポリα−オレフィン;イソパラフィン;ポリオールエステル、二塩基酸エステル(例えば、ジトリデシルグルタレート等)、三塩基酸エステル(例えば、トリメリット酸2−エチルヘキシル)、リン酸エステル等の各種エステル;ポリフェニルエーテル等の各種エーテル;ポリアルキレングリコール;アルキルベンゼン;アルキルナフタレン;フィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス)を異性化することで得られる合成油等が挙げられる。
これらの合成油は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0053】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、合成油の含有量は、当該潤滑油組成物中に含まれる本発明の鉱油系基油の全量100質量部に対して、好ましくは0〜30質量部、より好ましくは0〜20質量部、更に好ましくは0〜10質量部、より更に好ましくは0〜5質量部である。
【0054】
本発明の一態様の潤滑油組成物中に含まれる、本発明の鉱油系基油の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、通常60質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上、また、通常100質量%以下、より好ましくは99.99質量%以下、更に好ましくは99質量%以下である。
【0055】
なお、本発明の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、さらに一般的に用いられる潤滑油用添加剤を含有してもよい。
このような潤滑油用添加剤としては、例えば、流動点降下剤、粘度指数向上剤、金属系清浄剤、分散剤、耐摩耗剤、極圧剤、酸化防止剤、消泡剤、摩擦調整剤、防錆剤、金属不活性化剤等が挙げられる。
なお、当該潤滑油用添加剤として、複数の添加剤を含有する市販品の添加剤パッケージを用いてもよい。
また、上記の添加剤としての機能を複数有する化合物(例えば、耐摩耗剤及び極圧剤としての機能を有する化合物)を用いてもよい。
さらに、各潤滑油用添加剤は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0056】
これらの潤滑油用添加剤の各含有量は、本発明の効果を損なわない範囲内で、添加剤の種類に応じて、適宜調整することができるが、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、通常0.001〜15質量%、好ましくは0.005〜10質量%、より好ましくは0.01〜8質量%である。
【0057】
<潤滑油組成物の用途>
本発明の潤滑油組成物は、上述の本発明の鉱油系基油を含むため、高引火点であり、省燃費性能に優れる。
そのため、本発明の潤滑油組成物は、例えば、自動変速機油(ATF)、無段変速機油(CVTF)、ショックアブソーバー油(SAF)、パワーステアリングオイル、電動モーター油等の駆動系油;エンジン油;油圧作動油;タービン油;圧縮機油;工作機械用潤滑油;切削油;歯車油;流体軸受け油;転がり軸受け油等に好適に用いることができる。
特に、近年電気自動車やハイブリッド車においては、変速機と電動モーターとをパッケージ化することにより小型軽量化が求められており、変速機油に要求される性能に加え、電動モーター油に要求される冷却性も併せ持つ潤滑油組成物が必要とされている。本発明の潤滑油組成物は、低粘度であるため、一定の冷却性能もあり、このような電気自動車やハイブリッド車への用途にも好適である。
また、本発明の潤滑油組成物は、冷凍機油、圧延油、絶縁油、エラストマー軟化剤としても使用することができる。
【0058】
つまり、本発明は、下記(1)及び(2)の潤滑油組成物の使用方法も提供し得る。
(1)本発明の鉱油系基油を含む潤滑油組成物を、動力伝達装置(自動変速機、無段変速機、ショックアブソーバー、パワーステアリング、電動モーター等)、エンジン、油圧作動機器、タービン、圧縮機、工作機械、切削機、歯車、流体軸受け、及び転がり軸受けのいずれかの機構の潤滑に用いる、潤滑油組成物の使用方法。
(2)本発明の鉱油系基油を含む潤滑油組成物を、冷凍機、圧延機、電気機器(変圧器、ケーブル、コンデンサー等)に用いる、潤滑油組成物の使用方法。
【実施例】
【0059】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、各種物性の測定法又は評価法は、下記のとおりである。
【0060】
(1)40℃及び100℃における動粘度
JIS K2283に準拠して測定した。
(2)引火点
JIS K2265−4に準拠し、クリーブランド開放式(COC)法により測定した。
(3)芳香族分(%C)、ナフテン分(%C)、パラフィン分(%C
ASTM D−3238環分析(n−d−M法)により測定した。
(4)15℃における密度
JIS K2249に準拠して測定した。
(5)20℃における屈折率
JIS K0062に準拠して測定した。
(6)10容量%留出温度、90容量%留出温度
JIS K2254に準拠して測定した。
(7)アニリン点
JIS K2256(U字管法)に準拠して測定した。
(8)質量平均分子量(Mw)
ASTM D2502に準拠して測定した。
【0061】
(9)−25℃と−10℃の2点間における複素粘度の温度勾配Δ|η*|
Anton Paar社製レオメータ「Physica MCR 301」を用いて、以下の手順で測定した。
まず、−25℃又は−10℃の測定温度に調整したコーンプレート(直径50mm、傾斜角1°)に、測定対象の鉱油系基油を挿入し、同じ温度で10分間保持した。なお、この際、挿入した溶液に歪みを与えないように留意した。
そして、−25℃又は−10℃の測定温度にて、角速度6.3rad/s、歪み量0.1〜100%の範囲で当該測定温度に応じて適宜設定した値の条件下にて、振動モードで、−25℃又は−10℃における複素粘度η*を測定した。
そして、−25℃及び−10℃における複素粘度η*の値から、前記計算式(f1)から、「複素粘度の温度勾配Δ|η*|」を算出した。
【0062】
(10)アロマ分、ナフテン分、n−パラフィン分、及びイソパラフィン分の割合
ASTM D2786に準拠し、アロマ分、ナフテン分、総パラフィン分(n−パラフィン分+イソパラフィン分)を求めた。次いで、GC−FID法に準拠し、n−パラフィン分を求め、総パラフィン分とn−パラフィン分との差からイソパラフィン分を求めた。
その上で、アロマ分、ナフテン分、n−パラフィン分、及びイソパラフィン分の全量100体積%に対する、各成分が占める割合を算出した。
【0063】
表1に、実施例及び比較例で使用した原料油(I)〜(IV)の各種性状を示す。
なお、原料油(I)及び(II)は、重質軽油を水素化分解装置によって水素化分解して得られた軽油留分を含むものである。
原料油(III)は、減圧重質油を水素化分解装置によって水素化分解して得られた軽油留分を含むものである。
原料油(IV)は、直留の軽油留分を深度脱硫して得られた軽油留分を含むものである。
【0064】
【表1】
【0065】
実施例1(鉱油系基油(1)の製造)
表1に記載の原料油(I)を、白金−ゼオライト系触媒(担体であるゼオライトに白金が担持した触媒)を用いて、反応温度290℃、水素分圧4MPa、水素と原料油(I)との供給量比〔水素/原料油(I)〕422Nm/kL、LHSV1.1hr−1の条件下で水素化異性化脱ろう処理を施し、精製油(i)を得た。
次いで、精製油(i)を、減圧蒸留し、40℃における動粘度が4.0〜6.0mm/sの範囲となる留分を回収し、鉱油系基油(1)を得た。
【0066】
実施例2(鉱油系基油(2)の製造)
表1に記載の原料油(II)を、白金−ゼオライト系触媒(担体であるゼオライトに白金が担持した触媒)を用いて、反応温度292℃、水素分圧4MPa、水素と原料油(II)との供給量比〔水素/原料油(II)〕422Nm/kL、LHSV1.1hr−1の条件下で水素化異性化脱ろう処理を施し、精製油(ii)を得た。
次いで、精製油(ii)を、減圧蒸留し、40℃における動粘度が4.0〜6.0mm/sの範囲となる留分を回収し、鉱油系基油(2)を得た。
【0067】
実施例3(鉱油系基油(3)の製造)
表1に記載の原料油(I)を、白金−ゼオライト系触媒(担体であるゼオライトに白金が担持した触媒)を用いて、反応温度287℃、水素分圧4MPa、水素と原料油(I)との供給量比〔水素/原料油(I)〕422Nm/kL、LHSV1.1hr−1の条件下で水素化異性化脱ろう処理を施し、精製油(iii)を得た。
次いで、精製油(iii)を、ニッケル・タングステン−アルミナ系触媒(担体であるアルミナにニッケル及びタングステンが担持した触媒)を用い、反応温度290℃、水素分圧18.5MPa、水素と精製油(iii)との供給量比〔水素/精製油(iii)〕1000Nm/kL、LHSV0.6hr−1の条件下で水素化仕上げ処理を施し、精製油(iii−1)を得た。
そして、精製油(iii−1)を、減圧蒸留し、40℃における動粘度が4.0mm/s以上5.0mm/s未満の範囲となる留分を回収し、鉱油系基油(3)を得た。
【0068】
実施例4(鉱油系基油(4)の製造)
表1に記載の原料油(II)を、白金−ゼオライト系触媒(担体であるゼオライトに白金が担持した触媒)を用いて、反応温度294℃、水素分圧4MPa、水素と原料油(II)との供給量比〔水素/原料油(II)〕422Nm/kL、LHSV1.1hr−1の条件下で水素化異性化脱ろう処理を施し、精製油(iv)を得た。
次いで、精製油(iv)を、ニッケル・タングステン−アルミナ系触媒(担体であるアルミナにニッケル及びタングステンが担持した触媒)を用い、反応温度290℃、水素分圧18.5MPa、水素と精製油(iv)との供給量比〔水素/精製油(iv)〕1000Nm/kL、LHSV0.6hr−1の条件下で水素化仕上げ処理を施し、精製油(iv−1)を得た。
そして、精製油(iv−1)を、減圧蒸留し、40℃における動粘度が5.0mm/s以上6.0mm/s以下の範囲となる留分を回収し、鉱油系基油(4)を得た。
【0069】
実施例5(鉱油系基油(5)の製造)
表1に記載の原料油(III)を、白金−ゼオライト系触媒(担体であるゼオライトに白金が担持した触媒)を用いて、反応温度285℃、水素分圧4MPa、水素と原料油(III)との供給量比〔水素/原料油(III)〕422Nm/kL、LHSV1.1hr−1の条件下で水素化異性化脱ろう処理を施し、精製油(v)を得た。
次いで、精製油(v)を、ニッケル・タングステン−アルミナ系触媒(担体であるアルミナにニッケル及びタングステンが担持した触媒)を用い、反応温度290℃、水素分圧18.5MPa、水素と当該精製油(v)との供給量比〔水素/精製油(v)〕1000Nm/kL、LHSV0.6hr−1の条件下で水素化仕上げ処理を施し、精製油(v−1)を得た。
そして、精製油(v−1)を、減圧蒸留し、40℃における動粘度が4.0〜6.0mm/sの範囲となる留分を回収し、鉱油系基油(5)を得た。
【0070】
実施例6(鉱油系基油(6)の製造)
表1に記載の原料油(IV)を、白金−ゼオライト系触媒(担体であるゼオライトに白金が担持した触媒)を用いて、反応温度293℃、水素分圧4MPa、水素と原料油(IV)との供給量比〔水素/原料油(IV)〕422Nm/kL、LHSV1.1hr−1の条件下で水素化異性化脱ろう処理を施し、精製油(vi)を得た。
次いで、精製油(vi)を、ニッケル・タングステン−アルミナ系触媒(担体であるアルミナにニッケル及びタングステンが担持した触媒)を用い、反応温度290℃、水素分圧18.5MPa、水素と精製油(vi)との供給量比〔水素/精製油(vi)〕1000Nm/kL、LHSV0.6hr−1の条件下で水素化仕上げ処理を施し、精製油(vi−1)を得た。
そして、精製油(vi−1)を、減圧蒸留し、40℃における動粘度が4.0〜6.0mm/sの範囲となる留分を回収し、鉱油系基油(6)を得た。
【0071】
実施例7(鉱油系基油(7)の製造)
表1に記載の原料油(I)を、白金−ゼオライト系触媒(担体であるゼオライトに白金が担持した触媒)を用いて、反応温度289〜292℃、水素分圧20.6MPa、水素と原料油(I)との供給量比〔水素/原料油(I)〕1000Nm/kL、LHSV0.65hr−1の条件下で水素化異性化脱ろう処理を施し、精製油(vii)を得た。
次いで、精製油(vii)を、ニッケル・タングステン−アルミナ系触媒(担体であるアルミナにニッケル及びタングステンが担持した触媒)を用い、反応温度290℃、水素分圧20.6MPa、水素と精製油(vii)との供給量比〔水素/精製油(vii)〕1000Nm/kL、LHSV0.65hr−1の条件下で水素化仕上げ処理を施し、精製油(vii−1)を得た。
そして、精製油(vii−1)を、減圧蒸留し、40℃における動粘度が4.0〜6.0mm/sの範囲となる留分を回収し、鉱油系基油(7)を得た。
【0072】
実施例8(鉱油系基油(8)の製造)
表1に記載の原料油(II)を、白金−ゼオライト系触媒(担体であるゼオライトに白金が担持した触媒)を用いて、反応温度294℃、水素分圧20.6MPa、水素と原料油(II)との供給量比〔水素/原料油(II)〕1000Nm/kL、LHSV0.65hr−1の条件下で水素化異性化脱ろう処理を施し、精製油(viii)を得た。
次いで、精製油(viii)を、ニッケル・タングステン−アルミナ系触媒(担体であるアルミナにニッケル及びタングステンが担持した触媒)を用い、反応温度290℃、水素分圧20.6MPa、水素と精製油(viii)との供給量比〔水素/精製油(viii)〕1000Nm/kL、LHSV0.65hr−1の条件下で水素化仕上げ処理を施し、精製油(viii−1)を得た。
そして、精製油(viii−1)を、減圧蒸留し、40℃における動粘度が4.0〜6.0mm/sの範囲となる留分を回収し、鉱油系基油(8)を得た。
【0073】
実施例9(鉱油系基油(9)の製造)
実施例3と同様の条件にて、表1に記載の原料油(I)を、水素化異性化脱ろう処理及び水素化仕上げ処理を施して得られた精製油(iii−1)を、減圧蒸留し、40℃における動粘度が5.0mm/s以上6.0mm/s以下の範囲となる留分を回収し、鉱油系基油(9)を得た。
【0074】
実施例10(鉱油系基油(10)の製造)
実施例4と同様の条件にて、表1に記載の原料油(II)を、水素化異性化脱ろう処理及び水素化仕上げ処理を施して得られた精製油(iv−1)を、減圧蒸留し、40℃における動粘度が4.0mm/s以上5.0mm/s以下の範囲となる留分を回収し、鉱油系基油(10)を得た。
【0075】
実施例11(鉱油系基油(11)の製造)
表1に記載の原料油(III)を、ニッケル・タングステン−アルミナ系触媒(担体であるアルミナにニッケル及びタングステンが担持した触媒)を用い、反応温度290℃、水素分圧20.6MPa、水素と原料油(III)との供給量比〔水素/原料油(III)〕1000Nm/kL、LHSV0.6hr−1の条件下で水素化仕上げ処理を施し、精製油(iii−2)を得た。
そして、精製油(iii−2)を、減圧蒸留し、40℃における動粘度が4.0〜6.0mm/sの範囲となる留分を回収し、鉱油系基油(11)を得た。
【0076】
比較例1〜2
比較例1では、表1に記載の原料油(III)をそのまま鉱油系基油(a)とし、上述の各種性状を測定した。
また、比較例2では、表1に記載の原料油(IV)をそのまま鉱油系基油(b)とし、上述の各種性状を測定した。
【0077】
鉱油系基油(1)〜(12)及び(a)〜(b)の各種性状を表2及び表3に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
実施例1〜11で製造した鉱油系基油(1)〜(11)は、低粘度でありつつも、引火点が140℃以上と高い結果となった。そのため、これらの鉱油系基油を用いた潤滑油組成物は、高引火点でありつつも、更なる低粘度化によって省燃費性能をより向上させたものとなり得ると考えられる。
一方、比較例1〜2の鉱油系基油(a)〜(b)は、低粘度であるが、引火点が140℃未満と低く、安全性に問題がある結果となった。