(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の酸化物焼結体においては、焼結体の強度を高め、バルク抵抗を低減するために、スズ酸ガリウム化合物相及び酸化スズ相に加えて、更に、亜鉛、アルミニウム、珪素、インジウム、ゲルマニウム、チタン、ニオブ、タンタル、タングステン、モリブデン及びアンチモンから選択される少なくとも1種の元素が分散していることが要求されている。そして、特許文献2においては、酸化ガリウムと酸化スズのみ原料とした場合、酸化ガリウム濃度が高いと、バルク抵抗が測定不能な程度に高くなったことが示されている(比較例1、4、6及び7)。
【0007】
また、特許文献3には、ガリウム(Ga)、錫(Sn)、酸素(O)及び不可避的不純物からなるスパッタリング用酸化物焼結体ターゲットが記載されているものの、Ga
2O
3の濃度は20mol%以下であることを要件としている。特許文献3には、Ga
2O
3の濃度を30mol%とした場合、測定不能なほどにバルク抵抗率が高くなったことが示されている(比較例4及び5)。
【0008】
このように、高濃度のGaを含有するGa−Sn−O系スパッタリングターゲット部材においては、DCスパッタリングに適した低バルク抵抗率のものは得られていなかった。本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、一実施形態において、高濃度のGaを含有するGa−Sn−O系スパッタリングターゲット部材において、バルク抵抗率(「体積抵抗率」に同じ。)を下げるのに有効な手段を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、高濃度のGaを含有するGa−Sn−O系スパッタリングターゲット部材の結晶構造を粉末XRDにより解析したところ、Ga及びSnの複合酸化物相が多く見られる一方で、酸化錫相の生成量が極めて少ないことを見出した。そして、当該知見を基礎として鋭意検討を重ねた結果、Ga−Sn−O系スパッタリングターゲット部材において、Ga及びSnの複合酸化物相の比率を低くして酸化錫相の比率を高くすると、全体組成が同じ場合でも、体積抵抗率が有意に低下することを見出した。
【0010】
本発明は上記知見に基づき完成したものであり、以下に例示される。
[1]
Ga、Sn及びOを含有し、残部が不可避的不純物で構成され、Ga及びSnの原子比が0.33≦Ga/(Ga+Sn)≦0.75を満たし、粉末X線回折測定における全ピーク面積Iに対するSnO
2相のピーク面積I
Snの比(I
Sn/I)が0.02以上であるスパッタリングターゲット部材。
[2]
粉末X線回折測定における全ピーク面積Iに対するSnO
2相のピーク面積I
Snの比(I
Sn/I)が0.1以上である[1]に記載のスパッタリングターゲット部材。
[3]
粉末X線回折測定における全ピーク面積Iに対するGa
4SnO
8相のピーク面積I
GaSnの比(I
GaSn/I)が0.3以下である[1]又は[2]に記載のスパッタリングターゲット部材。
[4]
粉末X線回折測定における全ピーク面積Iに対するGa
4SnO
8相のピーク面積I
GaSnの比(I
GaSn/I)が0.25以下である[3]に記載のスパッタリングターゲット部材。
[5]
体積抵抗率が50,000Ω・cm以下である[1]〜[4]の何れか一項に記載のスパッタリングターゲット部材。
[6]
相対密度が94%以上である[1]〜[5]の何れか一項に記載のスパッタリングターゲット部材。
[7]
混合粉中のGa
2O
3粉が20mol%以上60mol%以下のモル濃度となるように、Ga
2O
3粉及びSnO
2粉を混合及び粉砕して混合粉を用意する工程1と、
該混合粉を酸素含有雰囲気下、1500℃以上の加熱温度で10時間以上焼結してGa−Sn−O複合酸化物相を含有する焼結体を得る工程2と、
該焼結体を窒素含有雰囲気下、1000℃〜1400℃の加熱温度で10時間以上アニールしてGa−Sn−O複合酸化物相を分解し、SnO
2相を生成する工程3と、
を含む[1]〜[6]の何れか一項に記載のスパッタリングターゲット部材の製造方法。
[8]
工程2における加熱温度から工程3における加熱温度に低下させることにより、工程2と工程3を連続的に行う[7]に記載のスパッタリングターゲット部材の製造方法。
[9]
工程3は、1200℃〜1400℃の加熱温度でアニールする[7]又は[8]に記載のスパッタリングターゲット部材の製造方法。
[10]
[1]〜[6]の何れか一項に記載のスパッタリングターゲット部材をスパッタすることを含む成膜方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、ガリウム濃度が高いにも拘わらず、低体積抵抗率のGa−Sn−O系スパッタリングターゲット部材を得ることが可能となる。また、本発明の一実施形態によれば、DCスパッタリングに適した高ガリウム濃度のGa−Sn−O系スパッタリングターゲットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1.組成)
本発明に係るスパッタリングターゲット部材は一実施形態において、Ga、Sn及びOを含有し、残部が不可避的不純物で構成される。不可避的不純物とは、概ね金属製品において、原料中に存在したり、製造工程において不可避的に混入したりするもので、本来は不要なものであるが、微量であり、金属製品の特性に影響を及ぼさないため、許容されている不純物である。本発明に係るスパッタリングターゲット部材において、不可避的不純物の総量は一般的には5000質量ppm以下であり、典型的には3000質量ppm以下であり、より典型的には2000質量ppm以下である。
【0013】
本発明に係るスパッタリングターゲット部材は一実施形態において、Ga及びSnの原子比が0.33≦Ga/(Ga+Sn)≦0.75を満たす。0.33≦Ga/(Ga+Sn)としたのは、本発明は一実施形態において、高濃度のGaを含有するGa−Sn−O系スパッタリングターゲット部材を提供することが目的だからである。0.4≦Ga/(Ga+Sn)とすることも可能であり、0.5≦Ga/(Ga+Sn)とすることも可能である。また、Ga/(Ga+Sn)≦0.75としたのは、低体積抵抗率のスパッタリングターゲットが得られやすいという理由による。体積抵抗率を下げるという観点からは、好ましくはGa/(Ga+Sn)≦0.7であり、より好ましくはGa/(Ga+Sn)≦0.5である。
【0014】
本発明に係るスパッタリングターゲット部材の一実施形態においては、Ga及びSnは酸化物の形態で存在することができる。酸化物としては、酸化ガリウム(Ga
2O
3)、酸化錫(SnO
2)、並びに、Ga及びSnの複合酸化物(例:Ga
4SnO
8、Ga
4Sn
5O
16及びGa
3Sn
4O
12)が例示される。
【0015】
(2.XRD測定)
スパッタリングターゲット部材の体積抵抗率を効果的に下げるためには、粉末X線回折測定における全ピーク面積Iに対するSnO
2相のピーク面積I
Snの比(I
Sn/I)が0.02以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましく、0.10以上であることが更により好ましく、0.15以上であることが更により好ましく、0.20以上であることが更により好ましい。I
Sn/Iの上限は特に設定されないが、一般には0.40以下であり、典型的には0.30以下である。
【0016】
スパッタリングターゲット部材の体積抵抗率を効果的に下げるためには、粉末X線回折測定における全ピーク面積Iに対するGa
4SnO
8相のピーク面積I
GaSnの比(I
GaSn/I)が0.30以下であることが好ましく、0.25以下であることがより好ましく、0.20以下であることが更により好ましい。I
GaSn/Iの下限は特に設定されないが、一般には0.05以上であり、典型的には0.10以上である。
【0017】
XRD測定は以下の手順で行う。測定対象となるスパッタリングターゲット部材を粉砕して粉状にし、目開き100μmの篩で篩別した篩下の粉末を圧粉して測定サンプルとし、粉末X線回折法を用いて、管電圧:40kV、管電流:30mA、スキャンスピード:5°/min、ステップ:0.02°の条件で、横軸が2θ、縦軸がX線強度(cps)のX線回折チャートを得る。次に、得られたX線回折チャートにKα2除去、Sonneveld−Visser法によりバックグラウンド除去のデータ処理を施す。
【0018】
そして以下の基準に従って、I
sn、I
GaSn及びIを求め、I
Sn/I及びI
GaSn/Iを算出する。
SnO
2相のピーク面積I
snは2θ=26.2°〜26.9°、33.5°〜44.2°、51.4°〜52.0°のそれぞれの範囲におけるピーク面積の合計を指す。
Ga
4SnO
8相のピーク面積I
GaSnは2θ=14.2°〜14.8°、25.1°〜25.8°、34.5°〜35.0°、52.9°〜53.5°のそれぞれの範囲におけるピーク面積の合計を指す。
全ピーク面積Iは2θ=10°〜60°の範囲におけるピーク面積の合計を指す。
【0019】
各ピーク面積は、上記角度範囲の各ピークの最大ピーク強度Imax(バックグラウンド除去後のcpsが0のところからの最大ピーク強度までの高さ(単位:cps))に、ピークの半値幅Wh(強度がI
max/2となる位置のピーク幅(単位:2θ))を乗じることによって算出する。
【0020】
(3.体積抵抗率)
本発明に係るスパッタリングターゲット部材は一実施形態において、体積抵抗率が50,000Ω・cm以下である。スパッタリングターゲット部材の低抵抗化は、スパッタリングの安定性に寄与することができる。体積抵抗率は好ましくは25,000Ω・cm以下であり、より好ましくは15,000Ω・cm以下であり、例えば5,000〜50,000Ω・cmとすることができる。
【0021】
体積抵抗率は、直流四探針法を用いて、測定対象となるスパッタリングターゲット部材の任意の5点の体積抵抗率を測定箇所の偏りがないように測定したときの平均値とする。
【0022】
(4.相対密度)
スパッタリングターゲット部材の相対密度は、体積抵抗率に影響を与えることから、高い方が望ましい。スパッタリングターゲット部材に割れや亀裂が発生するのを抑制する観点でもスパッタリングターゲット部材の相対密度は高い方が好ましい。本発明に係るスパッタリングターゲット部材は一実施形態において、相対密度が94%以上である。相対密度は好ましくは95%以上であり、より好ましくは98%以上であり、例えば94〜98%とすることができる。
【0023】
本発明において「相対密度」は、相対密度=(測定密度/理論密度)×100(%)で表される。理論密度とは、焼結体の各構成元素において、酸素を除いた元素の酸化物の理論密度から算出される密度の値である。本発明のGa−Sn−Oターゲットであれば、各構成元素であるガリウム、錫、酸素のうち、酸素を除いたガリウム、錫の酸化物として、酸化ガリウム(Ga
2O
3)と酸化錫(SnO
2)を理論密度の算出に用いる。ここで、焼結体中のガリウムと錫の元素分析値(at%、又は質量%)から、酸化ガリウム(Ga
2O
3)と酸化錫(SnO
2)の質量比に換算する。例えば、換算の結果、酸化ガリウムが25質量%、酸化錫が75質量%のGTOターゲットの場合、理論密度は、(Ga
2O
3の密度(g/cm
3)×25+SnO
2の密度(g/cm
3)×75)/100(g/cm
3)として算出する。Ga
2O
3の理論密度は6.44g/cm
3、SnO
2の理論密度は6.95g/cm
3として計算する。一方、測定密度とは、重量を体積で割った値である。焼結体の場合は、アルキメデス法により体積を求めて算出する。
【0024】
(5.製造方法)
以下に、本発明に係るスパッタリングターゲット部材の好適な製法を例示的に説明する。原料粉として、酸化ガリウム(Ga
2O
3)粉及び酸化錫(SnO
2)粉を用意する。不純物による電気特性への悪影響を避けるために、純度3N(99.9質量%)以上の原料粉を用いることが好ましく、純度4N(99.99質量%)以上の原料粉を用いることがより好ましい。
【0025】
次いで、Ga
2O
3粉及びSnO
2粉を所定のモル比で混合及び粉砕して混合粉を用意する。混合紛中のGa及びSnの原子比が、先述した0.33≦Ga/(Ga+Sn)≦0.75を満たすように、Ga
2O
3粉及びSnO
2粉を混合する。具体的には、混合粉中のGa
2O
3粉が20mol%以上であるのが好ましい。高濃度のGaを含有するGa−Sn−O系スパッタリングターゲット部材を提供するという観点からは、混合粉中のGa
2O
3粉を30mol%以上とすることも可能であり、混合粉中のGa
2O
3粉を40mol%以上とすることも可能である。また、得られるスパッタリングターゲットの体積抵抗率を下げるという観点からは、混合粉中のGa
2O
3粉を60mol%以下とすることも可能であり、混合粉中のGa
2O
3粉を55mol%以下とすることも可能である。
【0026】
混合と粉砕が不十分であると、製造したスパッタリングターゲット部材中に各成分が偏析して、高抵抗率領域と低抵抗率領域が存在することになり、スパッタ成膜時に高抵抗率領域での帯電等によるアーキングなどの異常放電の原因となってしまうので、充分に混合と粉砕を行うことが望ましい。好適な混合と粉砕の方法としては、例えば、原料粉を水に投入し分散させてスラリー化し、このスラリーを湿式媒体攪拌ミル(ビーズミル等)を用いて微粉砕する方法が挙げられる。
【0027】
微粉砕後のスラリーは乾燥することが好ましい。乾燥は、限定的ではないが、例えば熱風乾燥機で100〜150℃×5〜48hrの条件で行うことができる。乾燥後は篩別して粗大粒子を分離することが好ましい。篩別は、目開き500μm以下の篩で行うことが好ましく、目開き250μm以下の篩で行うことがより好ましい。ここで、目開きはJIS Z8801−1:2006に準拠して測定される。
【0028】
混合と粉砕を行って得られる混合粉は、メジアン径が5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが更により好ましい。
【0029】
混合粉のメジアン径は、エタノールを分散媒として1分間の超音波分散後、レーザー回折散乱法粒度測定装置を用いて粒度の累積分布を測定したときの体積基準によるメジアン径(D50)を指す。
【0030】
次に、所望の形状の金型に混合粉を充填し、プレスして成形体を作製する。プレス時の面圧は例えば400〜1000kgf・cm
2とすることができる。
【0031】
次に、成形体を酸素含有雰囲気下、1500℃以上の加熱温度で10時間以上焼結してGa−Sn−O複合酸化物相を含有する焼結体を得る。酸素含有雰囲気下で加熱するとしたのはSnO
2の蒸発を抑制し焼結体の密度を向上させるためである。酸素含有雰囲気としては、例えば、酸素雰囲気及び空気雰囲気が挙げられる。焼結工程における加熱温度を1500℃以上としたのは焼結の反応速度が十分に早いためである。焼結工程における加熱温度は1550℃以上が好ましく、1600℃以上がより好ましい。1500℃以上の加熱温度での加熱時間を10時間以上としたのは、焼結を十分に進行させるためである。当該加熱時間は15時間以上が好ましく、20時間以上がより好ましい。
【0032】
焼結工程後、所定のアニール工程を実施すると、Ga−Sn−O複合酸化物相が分解してSnO
2相が生成する。これにより、SnO
2相の比率が上昇し、体積抵抗率が有意に低下する。アニールは、該焼結体を窒素含有雰囲気下、1000℃〜1400℃の加熱温度で10時間以上行うことが好ましい。窒素含有雰囲気下で加熱するとしたのはSnO
2の還元により焼結体のバルク抵抗率を低下させる目的による。窒素含有雰囲気としては、例えば、窒素雰囲気及び空気雰囲気が挙げられる。アニール工程における加熱温度は、分解の反応速度が十分早い、1000℃以上が好ましく、1100℃以上がより好ましく、1200℃以上が更により好ましい。また、アニール工程における加熱温度はGa−Sn−O複合酸化物が生成しない、1400℃以下が好ましく、1300℃以下がより好ましい。1000〜1400℃の加熱温度で10時間以上アニールを行うのは、十分に分解反応を進行させるためである。当該加熱時間は15時間以上が好ましく、20時間以上がより好ましい。
【0033】
焼結工程における加熱温度からアニール工程における加熱温度に低下させることにより、焼結工程とアニール工程を連続的に行うのが生産効率上好ましい。しかしながら、焼結工程後、室温まで冷却した後に再度アニール温度まで焼結体を加熱してもよい。
【0034】
上記工程によって得られた酸化物焼結体は、必要に応じて平面研削機、円筒研削機、マシニング等の加工機で所望の形状に加工することにより、スパッタリングターゲット部材に仕上げることができる。スパッタリングターゲット部材は、単独で使用してもよいし、適宜バッキングプレートに接合して使用することができる。バッキングプレートとの接合方法としては、例えば、銅製のバッキングプレートに、インジウム系合金などをボンディングメタルとして、貼り合わせる方法が挙げられる。
【0035】
(6.成膜方法)
本発明の一実施形態によれば、スパッタリングターゲット部材をスパッタすることを含む成膜方法が提供される。スパッタ法としては、限定的ではないが、RFマグネトロンスパッタ法、DCマグネトロンスパッタ法、ACマグネトロンスパッタ法、パルスDCマグネトロンスパッタ法等を好適に使用することができる。本発明に係るスパッタリングターゲット部材の一実施形態においては、低体積抵抗率であることから、特にDCマグネトロンスパッタ法及びパルスDCマグネトロンスパッタ法に好適である。
【実施例】
【0036】
以下、本発明及びその利点の理解を容易にするための実施例を示すが、本発明は実施例に限定されるべきではない。
【0037】
下記に示す実施例及び比較例において、各種の測定や評価が必要となるが、その条件を以下に示す。
(メジアン径)
各種粉末のメジアン径は、エタノールを分散媒として1分間の超音波分散後、レーザー回折散乱法粒度測定装置(日機装株式会社製、Microtrac MT3000)を用いて粒度の累積分布を測定したときの体積基準によるメジアン径(D50)を指す。
【0038】
(体積抵抗率)
直流四探針法を用いた抵抗率測定器(エヌピーエス株式会社製、型式FELL−TC−100−SB−Σ5+、測定治具RG−5)を使用して、先述した方法でスパッタリングターゲット部材の体積抵抗率を測定する。
【0039】
(相対密度)
測定対象となるスパッタリングターゲット部材の実測密度をアルキメデス法で求め、相対密度=実測密度/理論密度によって相対密度を求める。
【0040】
(XRD測定)
XRD測定は、株式会社リガク製の全自動多目的X線回折装置(型式:Ultima)を用いて先述した測定条件に従って行い、得られたXRDチャートからI
sn/I及びI
GaSn/Iを算出する。
【0041】
(比較例1)
原料粉として、Ga
2O
3粉(メジアン径2.60μm)及びSnO
2粉(メジアン径1.25μm)を用意した。Ga
2O
3:SnO
2=1:1のモル比でGa
2O
3粉及びSnO
2粉を水中に投入してスラリー化した。当該スラリーをビーズミルを用いて粉砕混合した。粉砕混合後のスラリーを熱風乾燥機で120℃×20時間乾燥し、目開き250μmの篩で篩別して篩下の混合粉を回収した。混合粉のメジアン径は0.84μmであった。次いで、得られた混合粉1000gをφ210mmの金型に充填し、面圧400〜1000kgf/cm
2でプレスして円盤状の成形体を得た。この成形体を酸素雰囲気下で1600℃の温度に加熱し、10時間保持し、焼結体(スパッタリングターゲット部材)を得た。
【0042】
(比較例2)
比較例1と同様の条件で作製した成形体を、酸素雰囲気下で1550℃の温度に加熱し、10時間保持し、焼結体(スパッタリングターゲット部材)を得た。
【0043】
(比較例3)
比較例1と同様の条件で作製した成形体を、空気雰囲気下で1600℃の温度に加熱し、10時間保持し、焼結体(スパッタリングターゲット部材)を得た。
【0044】
(実施例1)
比較例1と同様の条件で作製した成形体を、酸素雰囲気中で1600℃の温度に加熱し、10時間保持した。その後、1000℃まで温度を下げ、空気雰囲気下で20時間保持し、焼結体(スパッタリングターゲット部材)を得た。
【0045】
(実施例2)
比較例1と同様の条件で作製した成形体を、酸素雰囲気中で1600℃の温度に加熱し、10時間保持した。その後、1200℃まで温度を下げ、空気雰囲気下で20時間保持し、焼結体(スパッタリングターゲット部材)を得た。
【0046】
(実施例3)
Ga
2O
3粉及びSnO
2粉をGa
2O
3:SnO
2=20:80のモル比となるように混合した以外は、実施例1と同様の条件で、混合粉を作製した。混合粉のメジアン径は0.92μmであった。次いで、実施例1と同様の加熱条件で成形体の作製及び焼結を行い、焼結体(スパッタリングターゲット部材)を得た。
【0047】
【表1】
【0048】
<考察>
比較例1〜3、実施例1〜2は、原料組成が同一であるにも関わらず、I
Sn/Iが大きいことで、実施例1〜2は体積抵抗率が顕著に低下したことが理解できる。また、実施例3の結果から、体積抵抗率はGaのモル比を下げることで更に大きく低下することも理解できる。