特許第6906206号(P6906206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カワノラボの特許一覧 ▶ 株式会社堀場製作所の特許一覧

<>
  • 特許6906206-磁化率測定装置、及び、磁化率測定方法 図000002
  • 特許6906206-磁化率測定装置、及び、磁化率測定方法 図000003
  • 特許6906206-磁化率測定装置、及び、磁化率測定方法 図000004
  • 特許6906206-磁化率測定装置、及び、磁化率測定方法 図000005
  • 特許6906206-磁化率測定装置、及び、磁化率測定方法 図000006
  • 特許6906206-磁化率測定装置、及び、磁化率測定方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906206
(24)【登録日】2021年7月1日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】磁化率測定装置、及び、磁化率測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/76 20060101AFI20210708BHJP
【FI】
   G01N27/76
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-545813(P2017-545813)
(86)(22)【出願日】2016年10月21日
(86)【国際出願番号】JP2016081304
(87)【国際公開番号】WO2017069251
(87)【国際公開日】20170427
【審査請求日】2019年9月3日
(31)【優先権主張番号】特願2015-209292(P2015-209292)
(32)【優先日】2015年10月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515295968
【氏名又は名称】株式会社カワノラボ
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】河野 誠
(72)【発明者】
【氏名】山口 哲司
(72)【発明者】
【氏名】西方 健太郎
【審査官】 小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−253882(JP,A)
【文献】 特表2007−527997(JP,A)
【文献】 特開平09−273987(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/021185(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00 − G01N 15/14
G01N 21/00 − G01N 21/01
G01N 21/17 − G01N 21/61
G01N 27/72 − G01N 27/9093
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子を含む分散媒が内部に収容されたバッチ式のセルと、
前記分散媒に対して磁場勾配を形成する磁場形成機構と、
前記分散媒中の粒子を撮像する撮像機構と、
前記撮像機構で撮像される磁力作用方向の粒子の動きに基づいて、粒子の磁気泳動速度を算出する粒子速度算出部と、
前記撮像機構で撮像される画像中の粒子の大きさに基づいて、粒子の粒子径を算出する第1粒子径算出部と、
前記分散媒に対してレーザ光を照射するレーザ光源と、
レーザ光によって発生する前記分散媒中の粒子により散乱された散乱光を検出する散乱光検出器と、
前記散乱光検出器から出力される出力信号の示す粒子の散乱光の強度に基づいて、動的光散乱法又は静的光散乱法により粒子の粒子径を算出する第2粒子径算出部と、
粒子の磁気泳動速度及び粒子の粒子径に基づいて粒子の磁化率を算出する磁化率算出部と、を備え、
前記磁化率算出部が、粒子が第1閾値粒子径以上の場合には前記第1粒子径算出部で算出される粒子径を用いて前記磁化率を算出し、粒子が第1閾値粒子径未満の場合には前記第2粒子径算出部で算出される粒子径を用いて前記磁化率を算出するように構成されており、
前記撮像機構の撮像方向と前記散乱光検出器の検出方向とが、前記分散媒中の測定点において交差するように構成されていることを特徴とする磁化率測定装置。
【請求項2】
レーザ光によって発生する前記分散媒中の粒子により散乱された散乱光から前記分散媒中の粒子の動きを抽出し、抽出された粒子の動きから算出される拡散係数に基づいて、粒子の粒子径を算出する第3粒子径算出部をさらに備え、
前記磁化率算出部が、粒子が第1閾値粒子径未満第2閾値粒子径以上の場合には前記第3粒子径算出部で算出される粒子径を用いて前記磁化率を算出し、粒子が第2閾値粒子径未満の場合には前記第2粒子径算出部で算出される粒子径を用いて前記磁化率を算出するように構成されている請求項1記載の磁化率測定装置。
【請求項3】
前記散乱光検出器が、レーザ光によって発生する前記分散媒中の粒子により散乱された散乱光の強度と位置を出力可能なアレイセンサであり、
前記第3粒子径算出部が、
前記撮像機構がレーザ光によって発生する前記分散媒中の粒子により散乱された散乱光で撮像した粒子の動画像、又は、前記散乱光検出器から出力される出力信号に基づいて粒子の動きを抽出する動き抽出部と、
前記動き抽出部で抽出された粒子の動きに基づいて、拡散係数を算出する拡散係数算出部と、
前記拡散係数算出部で算出された拡散係数に基づいて、粒子の粒子径を算出する粒子径演算部と、を備えた請求項2記載の磁化率測定装置。
【請求項4】
前記撮像機構が、
前記分散媒を透過した透過光、又は、前記分散媒中の粒子により反射された反射光で前記分散媒中の粒子を撮像する第1カメラと、
レーザ光によって発生する前記分散媒中の粒子により散乱された散乱光で前記分散媒中の粒子を撮像する第2カメラと、を備え、
前記第1粒子径算出部が、前記第1カメラで撮像される画像中の粒子の大きさに基づいて、粒子の粒子径を算出するように構成されており、
前記第3粒子径算出部が、
前記第2カメラで撮像される動画像に基づいて粒子の動きを抽出する動き抽出部と、
前記動き抽出部で抽出された粒子の動きに基づいて、拡散係数を算出する拡散係数算出部と、
前記拡散係数算出部で算出された拡散係数に基づいて、粒子の粒子径を算出する粒子径演算部と、を備えた請求項2記載の磁化率測定装置。
【請求項5】
前記第3粒子径算出部が、前記撮像機構で撮像される粒子の磁力作用方向とは垂直な方向の動き、又は、前記散乱光検出器から出力される出力信号が示す粒子の磁力作用方向とは垂直な方向の動きに基づいて拡散係数を算出し、当該拡散係数に基づいて粒子径を算出する請求項2記載の磁化率測定装置。
【請求項6】
前記分散媒に対して光を照射するハロゲンランプをさらに備え、
前記撮像機構が前記ハロゲンランプから射出された光が前記分散媒を透過した透過光、又は、前記ハロゲンランプから射出された光が前記分散媒中の粒子により反射された反射光を撮像可能に設けられており、
前記粒子速度算出部が、
前記透過光又は前記反射光に基づいて磁力作用方向の粒子の動きを抽出する磁気泳動抽出部と、
前記磁気泳動抽出部で抽出された磁力作用方向の粒子の動きに基づいて、粒子の磁気泳動速度を算出する磁気泳動速度演算部と、を備えた請求項1に記載の磁化率測定装置。
【請求項7】
前記撮像機構が前記レーザ光源から射出されたレーザ光が前記分散媒を透過した透過光、又は、前記レーザ光源から射出された光が前記分散媒中の粒子により反射された反射光を撮像可能に設けられており、
前記粒子速度算出部が、
前記透過光又は前記反射光に基づいて磁力作用方向の粒子の動きを抽出する磁気泳動抽出部と、
前記磁気泳動抽出部で抽出された磁力作用方向の粒子の動きに基づいて、粒子の磁気泳動速度を算出する磁気泳動速度演算部と、を備えた請求項1に記載の磁化率測定装置。
【請求項8】
前記第1閾値粒子径が1μmである請求項1に記載の磁化率測定装置。
【請求項9】
前記第2閾値粒子径が100nmである請求項2に記載の磁化率測定装置。
【請求項10】
粒子を含む分散媒をバッチ式のセルの内部に収容すること、
磁場形成機構により前記分散媒に対して磁場勾配を形成すること、
撮像機構により前記分散媒中の粒子を撮像すること、
前記撮像機構で撮像される磁力作用方向の粒子の動きに基づいて、粒子の磁気泳動速度を算出すること、
前記撮像機構で撮像される画像中の粒子の大きさに基づいて、粒子の粒子径を算出すること、
レーザ光源により前記分散媒に対してレーザ光を照射すること、
散乱光検出器によりレーザ光によって発生する前記分散媒中の粒子により散乱された散乱光を検出すること、
前記散乱光検出器から出力される出力信号の示す粒子の散乱光の強度に基づいて、動的光散乱法又は静的光散乱法により粒子の粒子径を算出すること、
粒子が第1閾値粒子径以上の場合には前記撮像機構で撮像される画像中の粒子の大きさに基づいて算出される粒子径を用いて粒子の磁化率を算出し、粒子が第1閾値粒子径未満の場合には前記散乱光検出器から出力される出力信号の示す粒子の散乱光の強度に基づいて動的光散乱法又は静的光散乱法により算出される粒子径を用いて粒子の磁化率を算出することを含み、
前記撮像機構の撮像方向と前記散乱光検出器の検出方向とを、前記分散媒中の測定点において交差させることを特徴とする磁化率測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散媒中の粒子の磁化率を測定するために用いられる磁化率測定装置、及び、磁化率測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粒子の磁化率は、粒子径と磁場勾配中における粒子の磁力作用方向の速度である磁気泳動速度とを測定し、これらの値に基づいて算出される。例えば特許文献1に記載の磁化率測定装置では、粒子径の測定方法を粒子径の大きさに応じて切り替えることにより、100nm以上20μm以下の範囲の粒子について磁化率を測定できるよう構成されている。
【0003】
すなわち、この磁化率測定装置では、粒子径が100nm以上1μm未満の場合には、レーザ光が粒子に照射されて生じる散乱光により粒子の動きを取得し、磁力作用方向とは垂直な方向の粒子の位置について分散を算出し、その分散から拡散係数Dを算出して粒径を算出する。一方、1μm以上20μm以内の場合にはハロゲン光源から分散媒に対して照射されている光により発生する透過光で粒子を撮像し、画像解析により粒子径を算出するように前記磁化率測定装置は構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−253882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年さらに粒子径の小さい場合においても磁化率を測定できるとともに、従来よりも広い粒子径の範囲において磁化率を測定できる磁化率測定装置が求められつつある。
【0006】
本発明は、このような問題を鑑みてなされたものであり、従来よりも粒子径の小さい範囲においても磁化率を測定できるとともに、従来から測定されていた粒子径の範囲についても同様に磁化率を測定することができる磁化率測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る磁化率測定装置は、粒子を含む分散媒が内部に収容されたバッチ式のセルと、前記分散媒に対して磁場勾配を形成する磁場形成機構と、前記分散媒中の粒子を撮像する撮像機構と、前記撮像機構で撮像される磁力作用方向の粒子の動きに基づいて、粒子の磁気泳動速度を算出する粒子速度算出部と、前記撮像機構で撮像される画像中の粒子の大きさに基づいて、粒子の粒子径を算出する第1粒子径算出部と、前記分散媒に対してレーザ光を照射するレーザ光源と、レーザ光によって発生する前記分散媒中の粒子により散乱された散乱光を検出する散乱光検出器と、前記散乱光検出器から出力される出力信号の示す粒子の散乱光の強度に基づいて、動的光散乱法又は静的光散乱法により粒子の粒子径を算出する第2粒子径算出部と、粒子の磁気泳動速度及び粒子の粒子径に基づいて粒子の磁化率を算出する磁化率算出部と、を備え、前記磁化率算出部が、粒子が第1閾値粒子径以上の場合には前記第1粒子径算出部で算出される粒子径を用いて前記磁化率を算出し、粒子が第1閾値粒子径未満の場合には前記第2粒子径算出部で算出される粒子径を用いて前記磁化率を算出するように構成されており、前記撮像機構の撮像方向と前記散乱光検出器の検出方向とが、前記分散媒中の測定点において交差するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る磁化率測定方法は、粒子を含む分散媒をバッチ式のセルの内部に収容すること、磁場形成機構により前記分散媒に対して磁場勾配を形成すること、撮像機構により前記分散媒中の粒子を撮像すること、前記撮像機構で撮像される磁力作用方向の粒子の動きに基づいて、粒子の磁気泳動速度を算出すること、前記撮像機構で撮像される画像中の粒子の大きさに基づいて、粒子の粒子径を算出すること、レーザ光源により前記分散媒に対してレーザ光を照射すること、散乱光検出器によりレーザ光によって発生する前記分散媒中の粒子により散乱された散乱光を検出すること、前記散乱光検出器から出力される出力信号の示す粒子の散乱光の強度に基づいて、動的光散乱法又は静的光散乱法により粒子の粒子径を算出すること、粒子が第1閾値粒子径以上の場合には前記撮像機構で撮像される画像中の粒子の大きさに基づいて算出される粒子径を用いて粒子の磁化率を算出し、粒子が第1閾値粒子径未満の場合には前記散乱光検出器から出力される出力信号の示す粒子の散乱光の強度に基づいて動的光散乱法又は静的光散乱法により算出される粒子径を用いて粒子の磁化率を算出することを含み、前記撮像機構の撮像方向と前記散乱光検出器の検出方向とを、前記分散媒中の測定点において交差させることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、前記第1粒子径算出部は前記撮像機構で撮像される画像中の粒子の大きさに基づいて粒子径を算出するので、例えば1μm以上の粒子径を正確に算出することができる。また、前記第2粒子径算出部は前記散乱光検出器から出力される出力信号の示す粒子の散乱光の強度に基づいて、動的光散乱法又は静的光散乱法により粒子の粒子径を算出するので、例えば100nmよりも小さい粒子径を正確に算出することができる。したがって、従来よりも広い範囲において正確な粒子径を得ることが可能となる。
【0010】
さらに、前記磁化率算出部が、粒子が第1閾値粒子径以上の場合には前記第1粒子径算出部で算出される粒子径を用いて前記磁化率を算出し、粒子が第1閾値粒子径未満の場合には前記第2粒子径算出部で算出される粒子径を用いて前記磁化率を算出するように構成されているので、粒子径の大きさに応じて最も正確な粒子径の値を得られる測定原理を適用できるようになり、従来よりも広い粒子径の範囲で正確な磁化率を得ることができるようになる。
【0011】
粒子径の大きさに応じてさらに正確に粒子径を測定できるように測定原理をよりきめ細やかに変更できるようにするには、レーザ光によって発生する前記分散媒中の粒子により散乱された散乱光から前記分散媒中の粒子の動きを抽出し、抽出された粒子の動きから算出される拡散係数に基づいて、粒子の粒子径を算出する第3粒子径算出部をさらに備え、前記磁化率算出部が、粒子が第1閾値粒子径未満第2閾値粒子径以上の場合には前記第3粒子径算出部で算出される粒子径を用いて前記磁化率を算出し、粒子が第2閾値粒子径未満の場合には前記第2粒子径算出部で算出される粒子径を用いて前記磁化率を算出するように構成されていればよい。
【0012】
粒子径が前記撮像機構で撮像できる1画素の大きさよりも小さい場合であっても、当該撮像機構の出力に基づいて粒子径を算出できるようにするには、前記散乱光検出器が、レーザ光によって発生する前記分散媒中の粒子により散乱された散乱光の強度と位置を出力可能なアレイセンサであり、前記第3粒子径算出部が、前記撮像機構がレーザ光によって発生する前記分散媒中の粒子により散乱された散乱光で撮像した粒子の動画像、又は、前記散乱光検出器から出力される出力信号に基づいて粒子の動きを抽出する動き抽出部と、前記動き抽出部で抽出された粒子の動きに基づいて、拡散係数を算出する拡散係数算出部と、前記拡散係数算出部で算出された拡散係数に基づいて、粒子の粒子径を算出する粒子径演算部と、を備えたものであればよい。特に前記第3粒子径算出部が、前記散乱光検出器の出力に基づいて粒子径を算出する場合には、前記第2粒子径算出部においても前記散乱光検出器の出力に基づいて粒子径を算出できるので、検出器系の構成を共通化して構成を単純化しやすい。
【0013】
前記第1粒子径算出部、前記第2粒子径算出部、及び、前記第3粒子径算出部においてそれぞれ同時並行で粒子径を算出できるようにするには、前記撮像機構が、前記分散媒を透過した透過光、又は、前記分散媒中の粒子により反射された反射光で前記分散媒中の粒子を撮像する第1カメラと、レーザ光によって発生する前記分散媒中の粒子により散乱された散乱光で前記分散媒中の粒子を撮像する第2カメラと、を備え、前記第1粒子径算出部が、前記第1カメラで撮像される画像中の粒子の大きさに基づいて、粒子の粒子径を算出するように構成されており、前記第3粒子径算出部が、前記第2カメラで撮像される動画像に基づいて粒子の動きを抽出する動き抽出部と、前記動き抽出部で抽出された粒子の動きに基づいて、拡散係数を算出する拡散係数算出部と、前記拡散係数算出部で算出された拡散係数に基づいて、粒子の粒子径を算出する粒子径演算部と、を備えたものであればよい。
【0014】
このようなものであれば、前記第1粒子径算出部、前記第2粒子径算出部、及び、前記第3粒子径算出部がそれぞれ個別の検出器の出力に基づいて粒子径を算出するので、光路の切り替え等を行うことなく、同時に粒子径を算出できる。そして、それぞれ算出された粒子径について最も確からしい測定レンジに入っているものを正しい値として選択することが可能となる。また、3つの測定原理により同時に粒子系を算出できるので、それぞれの測定原理で別々に測定する場合に比べて測定時間を短縮することができる。したがって、サンプルである分散媒中の粒子に時間変化が生じやすいものであったとしても測定ごとに時間変化の影響は表れるのを防ぐことができる。
【0015】
前記撮像機構で撮像される動画像から粒子が磁力勾配中にある場合でも粒子のブラウン運動に起因する動きだけを抽出して正確な粒子径を算出できるようにするには、前記第3粒子径算出部が、前記撮像機構で撮像される粒子の磁力作用方向とは垂直な方向の動き、又は、前記散乱光検出器から出力される出力信号が示す粒子の磁力作用方向とは垂直な方向の動きに基づいて拡散係数を算出し、当該拡散係数に基づいて粒子径を算出すればよい。
【0016】
分散媒中において広い範囲の明視野又は暗視野の動画像を得ることができ、前記撮像機構により撮像される動画像を画像解析することにより前記磁気泳動速度を算出できるようにするには、前記分散媒に対して光を照射するハロゲンランプをさらに備え、前記撮像機構が前記ハロゲンランプから射出された光が前記分散媒を透過した透過光、又は、前記ハロゲンランプから射出された光が前記分散媒中の粒子により反射された反射光を撮像可能に設けられており、前記粒子速度算出部が、前記透過光又は前記反射光に基づいて磁力作用方向の粒子の動きを抽出する磁気泳動抽出部と、前記磁気泳動抽出部で抽出された磁力作用方向の粒子の動きに基づいて、粒子の磁気泳動速度を算出する磁気泳動速度演算部と、を備えたものであればよい。
【0017】
分散媒中において特定の領域の明視野又は暗視野の動画像を得られ、動画像中における粒子の輝度と背景の輝度との差を大きくしやすくして、粒子の磁気泳動速度を動画像から算出しやすくするには、前記撮像機構が前記レーザ光源から射出されたレーザ光が前記分散媒を透過した透過光、又は、前記レーザ光源から射出された光が前記分散媒中の粒子により反射された反射光を撮像可能に設けられており、前記粒子速度算出部が、前記透過光又は前記反射光に基づいて磁力作用方向の粒子の動きを抽出する磁気泳動抽出部と、前記磁気泳動抽出部で抽出された磁力作用方向の粒子の動きに基づいて、粒子の磁気泳動速度を算出する磁気泳動速度演算部と、を備えたものであればよい。
【0018】
前記第1閾値粒子径が1μmであれば、ブラウン運動に基づいて粒子径を測定しにくい大きな粒子については前記撮像機構で撮像される動画像に基づいて前記第1粒子径算出部が算出した正確な粒子径を磁化率の算出に用いることができる。また、粒子径が小さいため動画像の画像解析では粒子径を算出するのが困難な場合にはブラウン運動に基づいて前記第2閾値粒子径算出が算出した正確な粒子径を磁化率の算出に用いることができる。したがって、粒子径の大きさによらず正確な磁化率を得ることが可能となる。
【0019】
前記第2閾値粒子径が100nmであれば、粒子径を前記第1粒子径算出部、前記第2粒子径算出部、前記第3粒子径算出部の3つによりそれぞれ最も正確に測定できる測定レンジで粒子径を算出し、より正確な磁化率を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
このように本発明の磁化率測定装置によれば、粒子径が第1閾値粒子径以上の場合には前記撮像機構で撮像された画像に基づいて前記第1粒子径算出部が算出する粒子径により磁化率が算出され、粒子径が第1閾値粒子径よりも小さい場合には動的光散乱法又は静的光散乱法により前記第2粒子径算出部が算出する粒子径により磁化率を算出することができる。したがって、例えば粒子径が100nmを下回るような小さいものであっても前記第2粒子径算出部で得られた正確な粒子径に基づいて磁化率を算出できる。また、前記第1粒子径算出部によりブラウン運動に基づいて正確な粒子径を得にくい大きな粒子径も得ることができるので、従来よりも測定レンジは大きくしつつ、さらに微小な領域の磁化率も得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係る磁化率測定装置を示す模式的斜視図。
図2】第1実施形態の磁化率測定機構における各構成要素間の関係を示す模式的機能ブロック図。
図3】第1実施形態の磁化率測定装置における各粒子径測定機構の構成を示す模式図。
図4】本発明の第2実施形態に係る磁化率測定装置を示す模式的斜視図。
図5】第2実施形態の磁化率測定装置における各粒子径測定機構の構成を示す模式図。
図6】第3実施形態の磁化率測定装置における各粒子径測定機構の構成を示す模式図。
【符号の説明】
【0022】
100・・・磁化率測定装置
IL ・・・レーザ光源
HL ・・・ハロゲン光源
C ・・・セル
DC ・・・撮像機構
DP ・・・散乱光検出器
M ・・・磁場形成機構
1 ・・・第1粒子速度算出部
11 ・・・磁気泳動抽出部
12 ・・・磁気泳動速度演算部
2 ・・・第2粒子速度算出部
3 ・・・第1粒子径算出部
3A ・・・第1粒子径測定機構
4 ・・・第2粒子径算出部
4A ・・・第2粒子径測定機構
5 ・・・第3粒子径算出部
51 ・・・動き抽出部
52 ・・・拡散係数算出部
53 ・・・粒子径演算部
5A ・・・第3粒子径測定機構
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1実施形態に係る磁化率測定装置100について図1乃至図3を参照しながら説明する。
【0024】
第1実施形態の磁化率測定装置100は、従来の粒子径のレンジだけでなく100nmを下回るレンジにおいても磁化率を正確に測定する事を目的としたものである。より具体的には前記磁化率測定装置100は、粒子径の大きさに応じて使用する測定データや粒子径の算出方法を切り替えるように構成してある。
【0025】
まずハードウェアの構成について説明する。
【0026】
前記磁化率測定装置100は、図1に示すように粒子を含む分散媒が内部に収容されたセルCを中心として、ハロゲン光源HL、撮像機構DC、レーザ光源IL、散乱光検出器DP、磁場形成機構Mと、を備えている。さらに前記磁化率測定装置100は、前記撮像機構DC及び前記散乱光検出器DPからの出力に基づいて粒子の速度、粒子径、磁化率を算出する演算機構COM(図1では図示しない)を備えている。
【0027】
各部について詳述する。以下の説明では水平面をXZ平面として上方向をY方向と定義して説明する。
【0028】
前記セルCは、概略直方体形状のものであり、ガラス、石英、透明樹脂等で形成したものである。このセルCを挟んでXZ平面内においてZ軸方向に一直線上に並ぶように前記ハロゲン光源HL及び前記撮像機構DCは設けてある。また、前記レーザ光源IL及び前記散乱光検出器DPはXY平面内において前記セルCを角とするL字状に配置してある。
【0029】
前記ハロゲン光源HLは、前記レーザ光源ILよりも大きいスポット径を有するものであり、Z軸方向に光を射出して前記セルC内の所定範囲を照明するものである。
【0030】
前記撮像機構DCは、第1実施形態では1つのCCDカメラであり、前記ハロゲン光源HLから射出された光のうち、前記セルCを透過した光により粒子の静止画像又は動画像を撮像するものである。
【0031】
前記レーザ光源ILは、X軸方向にレーザ光を射出して前記セルCに対して側方からレーザ光を入射させるものである。例えば図示しないレンズによりその集光位置を変更して前記セルC内における照射点を変更できるようにしてある。
【0032】
前記散乱光検出器DPは、光電子倍増管(PMT)を用いたものである。この散乱光検出器DPは前記レーザ光源ILから射出されたレーザ光が前記セルC内の分散媒中の粒子によりY軸方向に散乱された散乱光を検出するものである。この散乱光検出器DPは散乱角の異なる散乱光を取得できるようにその測定位置を変更できるようにしてある。このため、サンプルである分散媒中の粒子の濃度に応じて散乱光を測定するのに前記セルCに対して適した角度に前記散乱光検出器DPを設定して、粒子分析をより正確に行うことが可能である。
【0033】
前記磁場形成機構Mは、前記セルCの外側に挟むようにY軸方向に離間させて設けた一対の磁石である。この磁石は永久磁石又は電磁石のいずれであってもよい。この磁場形成機構MによりX軸方向に磁場勾配が形成されるようにしてある。したがって、分散媒中の粒子はX軸方向に磁気泳動することになる。ここで、磁場勾配とは磁力線の密度が変化している領域であり、例えば対向する磁石間の外縁部分に形成される。
【0034】
前記演算機構COMは、CPU、メモリ、入出力手段、A/D・D/Aコンバータ、表示手段等からなるいわゆるコンピュータである。前記メモリに格納されている磁化率測定装置用プログラムが実行され、各種機器と協業することにより前記磁化率測定装置100のソフトウェア部分を実現する。すなわち、前記演算機構COMは図2の機能ブロック図に示すように第1粒子速度算出部1、第2粒子速度算出部2、第1粒子径算出部3、第2粒子径算出部4、第3粒子径算出部5、磁化率算出部6としての機能を発揮するように構成してある。
【0035】
各部について詳述する。
【0036】
前記第1粒子速度算出部1は、前記撮像機構DCで撮像される磁力作用方向の粒子の動きに基づいて、粒子の磁気泳動速度を算出するものである。より具体的には、前記第1粒子速度算出部1は、磁気泳動抽出部11と、磁気泳動速度演算部12と、を備えている。
【0037】
前記磁気泳動抽出部11は、前記ハロゲン光源HLから射出された光のうち前記セルCを透過した透過光で撮像されたハロゲン光動画像に基づいて磁力作用方向の粒子の動きを抽出する。より具体的には、前記磁気泳動抽出部11は所定のサンプリングタイムごとに撮像されたハロゲン光動画像から粒子のX軸方向の動きを抽出する。
【0038】
前記磁気泳動速度演算部12は、前記磁気泳動抽出部11で抽出された磁力作用方向の粒子の動きに基づいて、粒子の磁気泳動速度を算出する。より具体的にはサンプリングタイムごとの粒子の位置から粒子のX軸方向の移動距離を取得し、サンプリングタイム又は移動にかかった時間で割ることで磁気泳動速度を算出する。
【0039】
ここで、前記第1粒子速度算出部1で算出される磁気泳動速度は、粒子の粒径が例えば100nmよりも大きく、磁気泳動による移動を前記撮像機構DCによって十分な正確さで測定できる場合に前記磁化率算出部6において用いられる。
【0040】
前記第2粒子速度算出部2は、前記散乱光検出器DPの出力に基づいて、粒子の磁気泳動速度を算出するものである。より具体的には前記第2粒子速度算出部2は、粒子の動的散乱により得られる信号を分離、解析することでその速度を算出する。この第2粒子速度算出部2で算出される磁気泳動速度は、例えば粒子の粒子径が100nmよりも小さく前記第1粒子速度算出部1において十分な正確さで磁気泳動速度を算出できない場合に前記磁化率算出部6で用いられる。
【0041】
前記第1粒子径算出部3は、前記撮像機構DCで撮像される画像中の粒子の大きさに基づいて、粒子の粒子径を算出する。より具体的には前記第1粒子径算出部3はハロゲン光静止画像の画素に対する粒子の大きさを画像解析により算出し、算出された粒子の大きさを粒子径とする。このため第1粒子径算出部3では粒子径が1画素の大きさよりも小さい場合には原理的に粒子径を正確に測定することはできない。一方、第1粒子径算出部3は、画像により粒子の大きさを直接測定できるので例えば粒子のブラウン運動の影響が表れにくい大きさの粒子径であっても正確にその粒子径を測定することができる。
【0042】
前記第2粒子径算出部4は、前記散乱光検出器DPから出力される出力信号の示す粒子の散乱光の強度に基づいて、動的光散乱法により粒子の粒子径を算出するように構成してある。より具体的には、前記第2粒子径算出部4は、粒子の動的散乱により得られる信号を分離、解析して粒子径を算出する。このため第2粒子径算出部4で算出される粒子径は例えば粒子径が100nmよりも小さい場合でも十分な正確さで粒子径を算出する事が可能である。
【0043】
前記第3粒子径算出部5は、レーザ光によって発生する前記分散媒中の粒子により散乱された散乱光から前記分散媒中の粒子の動きを抽出し、抽出された粒子の動きから算出される拡散係数に基づいて、粒子の粒子径を算出するように構成してある。この第3粒子径算出部5で算出される粒子径は前記撮像画像の1画素の大きさよりも粒子径が小さい場合でも算出可能である。より具体的には前記第3粒子径算出部5は、動き抽出部51と、拡散係数算出部52と、粒子径演算部53とを備えている。
【0044】
前記動き抽出部51は、前記撮像機構DCがレーザ光によって発生する前記分散媒中の粒子により散乱された散乱光で撮像した粒子の動画像に基づいて粒子の動きを抽出する。すなわち、前記レーザ光源ILから射出されたレーザ光のうち粒子によりZ軸方向に散乱された散乱光により撮像された粒子の動きを示すレーザ散乱光動画像に基づいて前記動き抽出部51は粒子の磁気泳動による動きを抽出する。
【0045】
前記拡散係数算出部52は、前記動き抽出部51で抽出された粒子の動きに基づいて、拡散係数を算出する。より具体的にはレーザ散乱光動画像から得られる粒子のブラウン運動に基づいて拡散係数は算出される。このとき、磁気泳動の影響を受けているX軸方向の動きを無視し、直交する方向であるY軸方向の動きのみに基づいて拡散係数を算出してもよい。また、粒子のX軸及びY軸方向の動きを加味して拡散係数を算出してもよい。
【0046】
前記粒子径演算部53は、前記拡散係数算出部52で算出された拡散係数に基づいて、粒子の粒子径を算出する。
【0047】
ここで、前記第1粒子径算出部3、前記第2粒子径算出部4、前記第3粒子径算出部5とハロゲン光源HL、レーザ光源IL、撮像機構DC、散乱光検出器DPとの関係について図3を参照しながら説明する。図3は説明の便宜上、前記第1粒子径算出部3、前記第2粒子径算出部4、前記第3粒子径算出部5において重複して使用されるレーザ光源IL及び撮像機構DCについては別々に2回記載している。
【0048】
図3に示すように前記第1粒子径算出部3は、前記ハロゲン光源HL、及び、前記撮像機構DCとともに第1粒子径測定機構3Aをなすものである。すなわち、第1粒子径測定機構3Aは、ハロゲン光動画像に基づいて画像解析により粒子径を算出するように構成してある。
【0049】
また、前記第2粒子径算出部4は、前記レーザ光源IL、及び、前記散乱光検出器DPとともに第2粒子径測定機構4Aをなすものである。すなわち、第2粒子径測定機構4Aは、粒子の動的散乱に基づいて粒子径を算出するように構成してある。
【0050】
さらに、前記第3粒子径算出部5は、前記レーザ光源IL、及び、前記撮像機構DCとともに第3粒子径測定機構5Aをなすものである。すなわち、第3粒子径測定機構5Aは、粒子のレーザ散乱光動画像に基づいて拡散係数を算出し粒子径を算出するようにしてある。
【0051】
このように、前記第1粒子径測定機構3A、前記第2粒子径測定機構4A、前記第3粒子径測定機構5Aはそれぞれ別々の手法で粒子径を算出するものであるが、第1実施形態では前記レーザ光源ILと前記撮像機構DCを一部共有することで、前記磁化率測定装置100としての構成を簡素化してある。
【0052】
前記磁化率算出部6は、粒子の磁気泳動速度及び粒子径、前記磁場形成機構Mにより形成される磁場勾配に基づいて当該粒子の磁化率を算出する。ここで、前記磁化率算出部6は、粒子の粒子径のオーダに応じていずれの磁気泳動速度又は粒子径を用いるかを決定する。すなわち、前記磁化率算出部6は、粒子が第1閾値粒子径である1μm以上の場合には前記第1粒子径算出部3で算出される粒子径を用いて前記磁化率を算出し、粒子が第1閾値粒子径である1μm未満の場合には前記第2粒子径算出部4で算出される粒子径を用いて前記磁化率を算出するように構成してある。さらに第1実施形態では、粒子が第1閾値粒子径である1μm未満第2閾値粒子径である100nm以上の場合には前記第3粒子径算出部5で算出される粒子径を用いて前記磁化率を算出し、粒子が第2閾値粒子径である100nm未満の場合には前記第2粒子径算出部4で算出される粒子径を用いて前記磁化率を算出するように構成してある。
【0053】
このように構成された第1実施形態の磁化率測定装置100であれば、100nmを下回る小さい粒子径の場合には前記第2粒子径算出部4で動的光散乱法により算出される正確な粒子径に基づいて磁化率を算出することができる。また、100nmよりも大きい場合については前記第1粒子径算出部3及び前記第3粒子径算出部5で算出される粒子径を用いて磁化率が算出されるので、従来のように粒子径が大きい場合でも正確な磁化率を得ることができる。
【0054】
したがって、非常に小さい粒子径から比較的大きな粒子径まで1つの磁化率測定装置100によって磁化率を測定することができる。
【0055】
また、第1実施形態の磁化率測定装置100は磁気泳動速度と粒子径が前記磁気生成機構により形成された磁場勾配の粒子の散乱光、透過光に基づいて得られるので、例えば光学系の位置を変更したり、セルCを移動させて照射点を変更したりする必要が無い。したがって、粒子径について広いレンジの測定を実現しつつ、前記磁化率測定装置100としての構成は簡素化しやすい。
【0056】
次に第1実施形態の磁化率測定装置100の変形例について説明する。
【0057】
前記第2粒子径算出部4はY軸方向のレーザ散乱光に基づいて動的光散乱法により粒子径を算出していたが、静的光散乱法により粒子径を算出するように構成してもよい。さらに前記第3粒子径算出部5は、前記撮像機構DCの出力を用いずにPMTアレイである前記散乱光検出器DPにおいてY軸方向のレーザ散乱光で測定される粒子の動きに基づいて拡散係数を算出し、粒子径を算出するように構成してもよい。
【0058】
また、前記第1実施形態では前記散乱光検出器DPとして光電子倍増管を用いていたが、この散乱光検出器DPは、レーザ光によって発生する前記分散媒中の粒子により散乱された散乱光の強度と位置を出力可能なPMTアレイセンサを用いても構わない。
【0059】
次に本発明の第2実施形態に係る磁化率測定装置100について図4及び図5を参照しながら説明する。なお、第1実施形態において説明した部材に対応する部材には同じ符号を付すこととする。なお、図5については図3と同様に重複使用している構成については分かりやすさのため2つ別々に記載してある。
【0060】
第2実施形態に係る磁化率測定装置100は、図4に示すようにPMTアレイセンサである前記散乱光検出器DPが、Y軸方向のレーザ散乱光ではなく、Z軸方向のレーザ散乱光を測定可能に構成してある。より具体的には前記散乱光検出器DPは前記撮像機構DCに対してX軸方向に並んで設けてあり、前記散乱光検出器DPと前記撮像機構DCのいずれか一方において前記セルCからの光を検出できるように移動可能に構成してある。
【0061】
図5に示すように第2実施形態においては前記第2粒子径測定機構4A及び前記第3粒子径測定機構5Aの構成が第1実施形態と異なっている。前記第2粒子径測定機構4Aは、Y軸方向のレーザ散乱光に基づいて動的光散乱法又は静的光散乱法により粒子径を算出していたが、第2実施形態ではZ軸方向への散乱光に基づいて動的光散乱法又は静的光散乱法により粒子径を算出するようにしてある。
【0062】
一方、前記第3粒子径測定機構5Aは前記散乱光検出器DPの出力に基づいて粒子の動きを抽出し、その動きから拡散係数を算出して粒子径を算出するように構成してある。
【0063】
すなわち、第2実施形態では図5に示すように第2粒子径測定機構4A及び第3粒子径測定機構5Aにおいてレーザ光源IL及び散乱光検出器DPを共有するように構成してある。
【0064】
このようなものであっても第1実施形態と同様に幅広い粒子径のレンジにおいて正確な粒子径を得ることが可能であり、ひいては様々な粒子径において正確な磁化率を得ることができる。
【0065】
次に第3実施形態の磁化率測定装置100について説明する。
【0066】
図6に示すように第3実施形態では第3粒子径測定機構5Aを省略し、第1粒子径測定機構3A及び第2粒子径測定機構4Aのみで粒子径を測定するようにしてある。このため、前記磁化率算出部6は、第1閾値粒子径である1μmを境にしていずれの粒子径測定機構により測定された粒子径を磁化率の計算に用いるのかを変更するように構成してある。
【0067】
このような第3実施形態であっても第1実施形態と第2実施形態と同様に100nmよりも小さい粒子径についても正確に測定でき、広いレンジにおいて正確な磁化率を測定できる。
【0068】
その他の実施形態について説明する。
【0069】
第1実施形態及び第2実施形態の磁化率測定装置100では、光源又は検出器について前記第1粒子径測定機構3A、前記第2粒子径測定機構4A、前記第3粒子径測定機構5Aにおいて共有するようにしていたが、各粒子径測定機構について独自の検出器を設けるようにしてもよい。
【0070】
より具体的には前記撮像機構DCが、前記分散媒を透過した透過光、又は、前記分散媒中の粒子により反射された反射光で前記分散媒中の粒子を撮像する第1カメラと、レーザ光によって発生する前記分散媒中の粒子により散乱された散乱光で前記分散媒中の粒子を撮像する第2カメラと、を備え、前記第1粒子径算出部3が、前記第1カメラで撮像される画像中の粒子の大きさに基づいて、粒子の粒子径を算出するように構成されており、前記第3粒子径算出部5が、前記第2カメラで撮像される動画像に基づいて粒子の動きを抽出する動き抽出部51と、前記動き抽出部51で抽出された粒子の動きに基づいて、拡散係数を算出する拡散係数算出部52と、前記拡散係数算出部52で算出された拡散係数に基づいて、粒子の粒子径を算出する粒子径演算部53と、を備えたものであればよい。
【0071】
また、第1粒子径算出部3において撮像される静止画像又は動画像はハロゲン光の透過光に限られず反射光により撮像されたものであってもよい。また、ハロゲン光源HLの代わりにレーザ光源ILを用いて前記撮像機構DCを構成するCCDカメラで粒子の動きをトラッキングしてその速度や粒径を測定してもよい。
【0072】
第1閾値粒子径及び第2閾値粒子径は、それぞれ1μm及び100nmに限られるものではなく、適宜閾値を設定してもよい。
【0073】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る磁化率測定装置であれば、従来よりも粒子径の小さい範囲においても磁化率を測定できるとともに、従来から測定されていた粒子径の範囲についても同様に磁化率を測定することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6