(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面とともに説明する。添付図面において、同一または類似の要素には同一または類似の参照符号が付され、各実施形態の説明において同一または類似の要素に関する重複する説明は省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。また、以下の説明において、「上」、「下」等の方向を示す用語は、特に断りのない限り、図示される消音装置の設置状態に関して用いられる。
【0014】
[第1実施形態]
以下、
図1〜
図4Eを参照して、本発明の第1実施形態による消音装置を説明する。消音装置は、互いに隣接して配置される複数の消音ユニット100を備える。
図1は、第1実施形態の消音装置を構成する消音ユニット100の例を示す外観斜視図である。
図2は、
図1の消音ユニット100のA−A線における断面矢視図である。
【0015】
図1〜
図2を参照して、消音ユニット100の全体概要を説明する。本例の消音ユニット100は、実質的に直方体の外形を有しており、内部に気流流路Pを有している。具体的には、消音ユニット100は、筒状の側板101と、筒状の側板101の内側で側板101の長さ方向に沿って配置される多孔板102と、側板101の長さ方向両端に配置される端板103と、を含む枠体(換言すれば、消音ユニット本体)を備える。
図2に示すように、枠体は、気流流路Pの外側に吸音材104を収容する空間Sを画定している。吸音材104は、側板101と多孔板102との間の空間Sに配置され、端板103は、側板101の長さ方向両端で空間Sを閉鎖する。多孔板102は、気流流路Pを通る空気を吸音材104に接触させるための微細な孔が形成された非遮蔽部102Aを有する。非遮蔽部102Aは、一例として、パンチングメタルまたは繊維を板状に成形した繊維板である。繊維板は、例えば、金属繊維を板状に成形したものである。非遮蔽部102Aの周囲には、多孔板102の他の部材への取付けを可能にするための取付け端部102Bが設けられている。尚、以下の説明では、側板101及び端板103を外板、多孔板102を内板と称する場合がある。側板101、多孔板102の取付け端部102B、及び端板103は、消音ユニット100の遮蔽部を形成する。遮蔽部は、多孔板102の非遮蔽部102Aと異なり、空間的な連通を完全に遮断することができる構造部である。遮蔽部は、一般的なアルミ板、亜鉛鋼板等で形成することができる。また、材料自体が遮蔽構造を有するものであれば、プラスチックを含め様々な材質を選択することが可能である。尚、本例の消音ユニット100は、気流流路Pの全体が内板と吸音材104で囲まれるセル型消音
ユニットである。しかし、消音ユニット100は、気流流路Pの一部が外板(具体的には、側板101)のみで囲まれるスプリッタ型消音ユニットであってもよい。
【0016】
図1は、消音ユニット100の側板101の上側表面に形成された凹部32を示している。後述するように、凹部32は、複数の消音ユニット100を互いに接合するための接着剤が配置される部分である。
【0017】
図3は、第1実施形態の消音装置1000を示す正面図である。
図3では、
図1の消音ユニット100が2x2の配置で上下左右に(換言すれば、気流流路Pに対して横方向に又は気流流路Pを横断する方向に)並列に配置されている。しかし、消音装置1000を構成する消音ユニット100の数及びその配列は、図示のものに限られない。
【0018】
第1実施形態の消音装置1000では、隣接する消音ユニット100の互いに対向して配置される2つの表面(換言すれば、接合面)の一方に凹部が形成されている。2つの表面は、凹部に配置される接着剤を介して互いに接合される。図示の例では、接合面は、消音ユニット100の側板101の外側表面である。
【0019】
一例として、
図4Aに、隣接する消音ユニット100の接合部の構成を示す。図示の例では、上下に隣接して配置される2つの消音ユニット100が互いに接合される。具体的には、上側に配置される消音ユニット100の側板101の下側表面(換言すれば、消音ユニット100の下面)と、下側に配置される消音ユニット100の側板101の上側表面(換言すれば、消音ユニット100の上面)とが互いに対向して配置される。
図4Aの下側に配置される側板101に凹部32が形成されている。凹部32に配置される接着剤を介して、側板101が互いに接合される。
図4Aの凹部32は、実質的に半球面状の形態を有している。
図4Aに示すように、凹部32は、接合面となる側板101に対して点状に配置されている。
【0020】
図4Aの半球面状の凹部32は、深さ方向に半円形の断面形状を有する。しかし、凹部32の断面形状は特に限られない。加工性を考慮して矩形状、三角形状等、様々な断面形状の凹部32を形成することができる。凹部32は、接着剤を受け入れる、接着剤の装填部として機能することができる。従って、凹部32の内部容積を、必要とされる接着剤の量に応じて決めることができる。
【0021】
また、点状に配置される凹部32に代えて、またはこれに加えて、
図4B〜
図4Cに示すような、一定の長さを有する細長い溝の形態の凹部132、232が形成されていてもよい。
図4Bは、凹部132が気流の方向(すなわち、側板101の長さ方向)を横切る方向に延びる溝を形成する例を示す。
図4Cは、凹部232が気流の方向に沿って延びる溝を形成する例を示す。しかし、他の例として、
図4Bの溝132と
図4Cの溝232を組み合わせた格子状の溝が形成されてもよい。また、格子状の溝に
図4Aの点状の凹部32が組み合わされてもよい。
【0022】
凹部32は、接合面となる側板101上の特に密閉したい位置に形成することができる。
図4Bのように気流の方向を横切る方向に延びる溝状の凹部132が形成される場合、消音ユニット100どうしの間の隙間を気流や音波が通って漏れることを防止することができる。従って、望ましくない気流音の発生や音波の透過を防ぐことができ、消音装置1000の減音性能の低下を防止することができる。
【0023】
さらに、
図4A〜
図4Cに示すように、第1実施形態では、図の下側に配置される表面101に、凹部32、132、232に挿入可能な凸部35、133、233が形成されている。この場合の接合工程の例が、
図4D及び
図4Eに示されている。
図4D及び
図4
Eに示される2つの表面30、31が、例えば
図4Aの側板101の表面に対応する。表面30、31は、凹部32に配置される接着剤33を介して互いに接合される。具体的には、
図4Dに示すように、接着剤33が、表面30、31の重ね合わせ工程の前に凹部32に配置される。このとき、接着剤33は、その表面張力により凹部32から流れ出すことなく凹部32内に保持され得る。2つの表面30、31を重ね合わせた時に凹部32から漏れ出すのに十分な量の接着剤33を、凹部32に配置することができる。また、2つの表面30、31を重ね合わせた時に凹部32から漏れ出すのに十分な接着剤33の量が、凹部32の容積を超えない場合、粘度の小さい液状の接着剤を使用することができる。次に、
図4Eに示すように、凸部35が凹部32に挿入されるように表面30に表面31を重ね合わせる。これにより、凹部32内の接着剤33が凸部35によって押圧される。
図4Eに示すように、接着剤33は、凹部32から漏れ出し、表面30、31の間で押し広げられる。接着剤33が硬化すると、表面30、31が互いに固定される。こうして、接着剤33により、表面30、31を密着状態で接合することができる。所望の接着面積を得るように、接着剤33の量が調整されてよい。また、接合後の凹部32と凸部35との間には接着剤33が存在するので、接合後の凹部32と凸部35との間の隙間を、必要な接着剤33の量に応じて決めることができる。また、接着剤33として、例えば硬質または軟質の樹脂製、または金属製のカプセル状の容器に収容された接着剤(カプセル入り接着剤)を使用することができる。
【0024】
凹部32と凸部35との組み合わせは、消音ユニット100の位置決めのための目印として機能することができる。尚、
図4D及び
図4Eの例では、表面30、31が図の上下方向(すなわち、接合面30、31に対して略垂直な方向)の相対移動により重ね合わされている。しかし、表面30、31は、接合面30、31に沿う方向(図の横方向)の摺動移動により重ね合わされてもよい。
【0025】
図4Aのような半球面状の凹部32と凸部35が消音ユニット100の上下面に形成される場合、鉛直方向(図の上下方向)以外のどの方向の外力に対しても、凹部32が凸35部に係合することができる。従って、鉛直方向以外のどの方向の外力に対しても高い接合強度を得ることができる。
図4Bのような気流方向を横切る方向に延びる溝状の凹部132の場合、凹部132が対向する凸部133に気流方向で係合することができる。従って、気流方向に加わる力に対して高い接合強度を得ることができる。また、接着剤が硬化するまでは溝状の凹部132に沿って消音ユニット100を移動させることができるので、溝132の方向に沿った消音ユニット100の位置の微調整が可能になる。
図4Cのような気流方向に延びる溝状の凹部232の場合、気流方向を横切る方向で溝232が凸部233と係合することができる。従って、気流方向を横切る方向に加わる力に対して高い接合強度を得ることができる。また、接着剤が硬化するまでは溝状の凹部232に沿って消音ユニット100を移動させることができるので、溝232の方向に沿った消音ユニット100の位置の微調整が可能になる。
図4Bと
図4Cの形態を組み合わせることにより、接合面に沿う方向のあらゆる外力に対して高い接合強度を得ることができる。
【0026】
このように、第1実施形態では、接着剤33を用いて、隣接する消音ユニット100を、所望の位置において密着状態で接合することができる。抑え金物やピン等の接合用の部材が不要であるので、従来技術と比べて、消音装置1000の部品点数を少なくすることができる。また、消音装置1000の組立工数及び組立時間を短縮することができる。また、凹部32、132、232に装填した接着剤33を押し広げることができるので、接着剤33を塗布する作業が不要である。また、2つの表面30、31を密着状態で接合することができるので、音漏れや気流音の発生による減音性能の低下が生じない。
【0027】
また、第1実施形態では、凹部32、132、232に挿入可能な凸部35、133、233との組み合わせが使用される。凹部32、132、232と凸部35、133、2
33は、隣接する消音ユニット100を位置合わせする際の目印として機能することができるので、消音ユニット100の位置合わせが容易になる。また、凹部32、132、232と凸部35、133、233が係合することにより、特に、接合面30、31に沿う方向の外力に対して優れた接合強度を提供することができる。
【0028】
尚、凸部35、133、233が凹部32、132、232に挿入可能である限り、凸部35の形状は特に限られない。例えば、半球面状の凹部32、132、232に対して、円錐状の凸部35、133、233が形成されてもよい。また、
図4B及び
図4Cでは、溝状の凹部132、232が、接合面となる側板101の長さ方向または幅方向の全体にわたって連続的に延びている。しかし、第1実施形態において、溝状の凹部132、232は、接合面となる側板101の長さ方向または幅方向の一部にわたって延びていてもよく、その位置は特に限られない。
【0029】
[第2実施形態]
第1実施形態の消音装置1000では、隣接する消音ユニット100の互いに対向して配置される2つの表面30、31のうち一方の表面30に凹部32が形成され、他方の表面31に、凹部32に挿入可能な凸部35が形成される。しかし、第2実施形態の消音装置では、
図5に示すように、隣接する消音ユニットの互いに対向して配置される2つの表面30、31のうち一方の表面30に凹部32が形成され、他方の表面31において、凹部32に面して配置される部分は平坦である。その他の構成において、第2実施形態の消音装置は、第1実施形態の消音装置1000と実質的に同様である。従って、第1実施形態と共通する構成については、詳しい説明を省略する。第2実施形態において、2つの表面30、31は、例えば、
図6A及び
図6Bに示すような工程で接合することができる。
図6Aに示すように、接着剤33が、重ね合わせ工程の前に凹部32に配置される。このとき、接着剤33は、その表面張力により凹部32から流れ出すことなく凹部32内に保持され得る。2つの表面30、31を重ね合わせた時に凹部32から漏れ出すのに十分な量の接着剤33を、凹部32に配置することができる。次に、
図6Bに示すように、凹部32を覆うように表面30に表面31を重ね合わせる。これにより、凹部32内の接着剤33が押圧される。接着剤33は、凹部32から漏れ出し、表面30、31の間で押し広げられる。接着剤33が硬化すると、表面30、31が互いに固定される。こうして、接着剤33により、表面30、31を密着状態で接合することができる。所望の接着面積を得るように、接着剤33の量が調整されてよい。尚、
図6A及び
図6Bの例では、表面30、31が図の上下方向(すなわち、接合面30、31に対して略垂直な方向)の相対移動により重ね合わされている。しかし、表面30、31は、接合面30、31に沿う方向(図の横方向)の摺動移動により重ね合わされてもよい。
【0030】
第1実施形態と同様に、第2実施形態では、接着剤33を用いて、隣接する消音ユニットを、所望の位置において密着状態で接合することができる。抑え金物やピン等の接合用の部材が不要であるので、従来技術と比べて、消音装置の部品点数を少なくすることができる。また、消音装置の組立工数及び組立時間を短縮することができる。また、凹部32に装填した接着剤33を押し広げることができるので、接着剤33を塗布する作業が不要である。また、2つの表面30、31を密着状態で接合することができるので、音漏れや気流音の発生による減音性能の低下が生じない。
【0031】
また、凹部32に接着剤33を装填することは、平坦な表面の間に接着剤を塗布する場合と比較して、以下の点で有利である。例えば
図6Bに示すように凹部32に接着剤33を装填することによって、以下の1.〜3.の効果を得ることができる。
1.接着剤33が凹部32内で表面30と接触する分、接着剤33と表面30、31との間の接着面積を大きくすることができる。従って、接着力を大きくすることができる。
2.接着剤33を厚み方向(例えば、
図6Bの上下方向)で見たときの接着剤33の断面
積を大きくすることができる。従って、接着剤33が硬化した後の接合面に沿う方向(すなわち、
図6Bの左右方向)における接合部の強度を大きくすることができる。
3.接合面に沿う方向に対して凹部32内の接着剤33がストッパーとして作用することができる。
【0032】
[第1変形例]
図7A〜
図7Bは、第2実施形態の第1変形例を示す。第1変形例では、凹部32に、例えば硬質または軟質の樹脂製、または金属製のカプセル状の容器40に収容された接着剤(カプセル入り接着剤)33が配置される。
図7Aに示すように、互いに対向して配置される表面30、31のうち一方の表面30に凹部32が形成されており、他方の表面31における、凹部32に面して配置される部分は平坦である。
図7Aに示すように、容器40は、凹部32に配置されたとき、凹部32の開口から突出する寸法に形成されていてよい。これにより、2つの表面30、31を互いに重ね合わせたとき、容器40を2つの表面30、31の間で押圧し破壊することができる。
図7Bに示すように、破壊された容器40から流れ出した接着剤33が、凹部32を満たすと共に2つの表面30、31の間で押し広げられる。このように、第1変形例では、カプセル状の容器40内に保持された接着剤33が凹部32に装填される。従って、重ね合わせ工程前に接着剤33が凹部32から流れ出すことがない。これにより、表面30、31の重ね合わせ又は位置決めのための作業が容易になる。また、所望の接着面積に応じて、凹部32の内部容積を大きく超える量の接着剤33を使用することができる。
【0033】
図8A及び
図8Bは、第2実施形態の第2変形例を示す。第2変形例では、第1変形例の構成に加えて、表面31に、凹部32内で容器40を押圧または穿孔可能に構成された突起部(例えば、針状部)50が形成されている。従って、重ね合わせ工程において、突起部50により容器40が破壊され、凹部32が接着剤33で満たされると共に、接着剤33が凹部32から漏れ出す。漏れ出した接着剤33は、表面30、31の間で押し広げられる。接着剤33が硬化すると、表面30、31が互いに接合される。
【0034】
[第3実施形態]
次に、
図9及び
図10A〜
図10Bを参照して、第3実施形態の消音装置を説明する。第3実施形態の消音装置では、
図9に示すように、隣接する消音ユニットの互いに対向して配置される表面70、71のうち一方の表面70に凹部72が形成され、他方の表面71に凹部77が形成されている。2つの表面70、71は、隣接する消音ユニットの側板の表面に対応する。凹部72と凹部77は、それぞれの開口が、少なくとも部分的に互いに対向する向きで配置されるように構成される。2つの表面70、71は、対向する凹部72及び凹部77内に配置される接着剤を介して互いに接合される。さらに、第3実施形態は、
図10Aに示すように、一方の凹部72に配置される、カプセル状容器80に入った接着剤73を備える。その他の構成において、第3実施形態による消音装置は、第1実施形態の消音装置1000と実質的に同様である。従って、第1実施形態と共通する構成については、詳しい説明を省略する。
【0035】
カプセル状容器80は、凹部72及び凹部77の深さ方向の合計寸法を超えるように寸法決めされることができる。これにより、重ね合わせ工程において容器80を破壊することができる。
図10Bに示すように、表面70、71を重ね合わせると、凹部72と凹部77の間で容器80が破壊される。破壊された容器80から流れ出した接着剤73が、凹部72及び凹部77を満たすと共に2つの表面70、71の間で押し広げられる。このように、第3実施形態では、カプセル状の容器80内に保持された接着剤73を凹部72に装填することができる。従って、重ね合わせ工程前に接着剤73が凹部72から流れ出すことがない。これにより、表面70、71の重ね合わせ又は位置決めのための作業が容易になる。また、所望の接着面積に応じて、凹部72及び凹部77の内部容積を大きく超え
る量の接着剤73を使用することができる。しかし、接着剤73は、予め容器80に収容されることなく凹部72に配置されてもよい。また、凹部77に、容器80を押圧または穿孔可能に構成された突起部が設けられていてもよい。
【0036】
第1実施形態と同様に、第3実施形態では、接着剤73を用いて、2つの表面70、71を密着状態で接合することができる。抑え金物やピン等の接合用の部材が不要であるので、従来技術と比べて、消音装置の部品点数を少なくすることができる。また、消音装置の組立工数及び組立時間を短縮することができる。また、凹部72に装填した接着剤73を押し広げることができるので、接着剤73を塗布する作業が不要である。また、2つの表面70、71を密着状態で接合することができるので、音漏れや気流音の発生による減音性能の低下が生じない。
【0037】
[第4実施形態]
次に、
図11A〜
図13を参照して、本発明の第4実施形態を説明する。
図11Aは、第4実施形態の消音装置に使用される、隣接する消音ユニット100Aの接合部を示す斜視図である。一例として、接合面は、側板101の外側表面である。
図11Bは、
図11Aの側面図である。第4実施形態の消音装置は、図示する接合部の構成を除いて第1実施形態のものと実質的に同様である。従って、第1実施形態と共通する構成については、詳しい説明を省略する。
【0038】
第4実施形態の消音装置において、接合部は、重ね合わせ工程後に消音ユニット100Aの外部から消音ユニット100A間に接着剤(図示せず)を装填可能であるように構成されている。この目的のため、第4実施形態では、接合面となる側板101に形成される凹部332が、消音ユニット100Aの外部に向けて開口する、側板101の長さ方向端部の開口部332aを有している。
【0039】
具体的には、
図11Aに示すように、隣接する消音ユニット100Aのうち下側の消音ユニット100Aの側板101に、溝状の凹部332が形成されており、凹部332が開口部332aを備えている。図示の例では、凹部332は、実質的に、側板101の長さ方向(換言すれば、気流方向)に延びている。開口部332aは、隣接する消音ユニットの側板101が重ね合わされた状態において、消音ユニット100Aの外部(図示の例では、端板103が配置される側)に向けて開口するように形成されている。この構成によれば、上下の側板101を重ね合わせた後に、開口部332aを通じて適宜の手段(図示せず)により接着剤を凹部332に注入または充填することができる。従って、側板101をいったん重ね合わせた後、接着剤による接合の前に、消音ユニット100Aの位置の微調整を行うことができる。また、重ね合わせ工程後に接着剤を装填することができるので、接着剤として、粘度の小さい液状の接着剤を使用することができる。尚、溝状の凹部332は、側板101の幅方向(換言すれば、気流を横切る方向)に延びていてもよい。また、凹部332は、例えば点状など必ずしも溝を形成していなくてもよい。
【0040】
図12A及び
図12Bに、第4実施形態における接合部の他の例を示す。この例では、
図11Aと同様に、溝状の凹部332が形成されている。しかし、
図12Aに示すように、凹部332は、側板101の長さ方向及び幅方向に連続して延びている。側板101の幅方向(換言すれば、気流方向を横切る方向)に延びる部分を含むことによって、この部分の密閉性を高くすることができる。従って、望ましくない気流音の発生や音波の透過を防止することができるので、消音装置の減音性能の低下を防止することができる。尚、図示の例では、側板101の長さ方向の開口部332aに加えて、側板101の幅方向の開口部332aも形成されている。幅方向の開口部332aは、隣接する消音ユニット100Aが重ね合わされた状態において、消音ユニット100Aの側方に向けて開口するように形成されている。しかし、側板101の幅方向の開口部332aは、必ずしも形成され
ていなくてよい。または、消音装置の組立ての手順によって、側板101の幅方向の開口部332aのみが形成され、長さ方向の開口部332aは形成されなくてもよい。
【0041】
図11A〜
図12Bの例では、凹部332に対向する位置に凹部333が形成されており、凹部333は、溝332の開口部332aと同様の開口部333aを有している。しかし、凹部332、333は、互いに対向する側板101の一方にのみ形成されていてもよい。
【0042】
また、
図11A〜
図12Bの例では、凹部332、333は、消音ユニット100Aの上面または下面に形成されている。しかし、凹部332、333は、消音ユニット100Aの側面に形成されていてもよい。
図13では、溝状の凹部332が、消音ユニット100Aの側面に延びている。これにより、消音ユニット100Aの側面における、気流音の発生や音波の透過を防止することができるので、減音性能の低下を防止することができる。
【0043】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態によれば、互いに隣接して配置される複数の消音ユニット及びこれらを収容するケーシングを備える消音装置を提供することができる。ケーシングの内側表面及びこれに対向して配置される消音ユニットの外側表面の少なくとも一方に凹部が形成される。ケーシングの内側表面と消音ユニットの外側表面は、凹部に配置された接着剤を介して互いに接合される。
【0044】
図14A及び
図14Bは、それぞれ、第5実施形態の消音装置1000Aの断面図及び側面図である。消音装置1000Aは、複数の(図示の例では4つ)の消音ユニット100と、ケーシング500と、を備える。
図14A及び
図14Bは、ケーシング500の内側表面に凹部501が形成される例を示す。消音ユニット100の外側表面における、ケーシング500の内側表面に対向する部分は平坦である。
図14Bの側面図では、凹部501の位置が破線で示されている。
図14Aは、
図14BのB1−B1線に沿う断面矢視図である。本例では、凹部501は、半球面状の形態を有している。
【0045】
尚、第5実施形態に使用される消音ユニット100として、上記各実施形態の消音ユニットまたは従来の消音ユニットを適宜使用することができる。本実施形態では、複数の消音ユニット100が、ケーシング500ごと換気設備の風路に設置され、使用される。
【0046】
図15A及び
図15Bは、半球面状の凹部501に代えて、気流方向に延びる溝状の凹部1501がケーシング500の内側表面に形成される例を示す、
図14A及び
図14Bに対応する図である。
【0047】
図16は、
図15A及び
図15Bの構成に加えて、消音ユニット100の側板101における、凹部1501に対向して配置される部分に凹部232が形成される例を示している。凹部232は、
図4Cに示すような気流方向に延びる溝の形態を有している。しかし、ケーシング500と側板101の両方に、
図14Bに示されるような点状に配置され、互いに対向する凹部が形成されてもよい。
図16に示す例では、消音ユニット100の各側面に凹部232が形成されているので、消音ユニット100とケーシング500だけでなく、隣接する消音ユニット100どうしも凹部232の接着剤によって接合することができる。
【0048】
図17に示す例では、消音ユニット100の側板101にのみ凹部232が形成される。
図17の例では、消音ユニット100の各側面に凹部232が形成されている。従って、消音ユニット100とケーシング500だけでなく、隣接する消音ユニット100どう
しも凹部232の接着剤によって接合することができる。
【0049】
尚、第5実施形態の各断面図において、気流流路Pの外側に配置される吸音材は図示を省略されている。
【0050】
第1〜第4実施形態で説明した消音ユニット間の接合方法を、適宜、第5実施形態の消音ユニット100とケーシング500の接合に使用することができる。また、第5実施形態において、ケーシング500及び/または消音ユニット100に形成される凹部501、1501、232は、ケーシング500及び消音ユニット100が互いに位置決めされた状態で、消音装置1000Aの外部に向けて連通可能な開口部を有することができる。そのような開口部は、
図11A〜
図13に示す例に従って、形成することができる。これにより、ケーシング500及び消音ユニット100を位置決めした後に、開口部を通して接着剤を凹部に注入または充填することができる。
【0051】
また、ケーシング500は、ケーシング500及び/または消音ユニット100に形成される凹部501、1501、232内に開口するように、ケーシング500の壁を貫通する貫通孔を有していてもよい。
【0052】
上記各実施形態では、消音ユニットが横置きで配置される(換言すれば、気流方向が水平に保持されるように配置される)例を説明した。しかし、これは本発明の実施形態を限定しない。
図18に示すような縦置きで配置される消音ユニット400を備える消音装置にも、本発明の各実施形態を適用することができる。この場合、
図18に示すように、消音ユニット400の気流流路Pは、鉛直方向に延びるように配置される(換言すれば、気流流路Pの方向に直列に配置される)。また、接合面は、側板401の長さ方向両端に取り付けられる端板403の外側表面である。例えば、下側の消音ユニット400の端板403に半球面状の凹部432を形成し、上側の消音ユニット400の端板403に、凹部432に挿入可能な凸部433を形成することができる。接合面が側板である上記の各実施形態を、適宜、端板403に適用することができる。
【0053】
[その他]
上記各実施形態では、消音ユニットの例として、セル型消音ユニットを説明した。しかし、本発明の他の実施形態によれば、消音ユニットは、スプリッタ型消音ユニットでもよい。スプリッタ型消音ユニットは、気流流路の一部が外板(具体的には、側板)のみで囲まれる消音ユニットである。
図19に、従来のスプリッタ型消音ユニット200を示す。
図19には、消音ユニット200の気流流路Pが、側板201及び多孔板202によって囲まれることが示されている。
図1の消音ユニット100と同様に、気流流路Pの外側で、多孔板202と側板201との間の空間に図示しない吸音材が配置され、当該空間が端板203により閉鎖されている。側板201または端板203に凹部を形成し、隣接する消音ユニット200を凹部に配置される接着剤で接合することができる。また、複数の消音ユニット200を収容するケーシングの内側表面及び消音ユニット200の側板201の少なくとも一方に凹部を形成し、ケーシングと消音ユニット200を、凹部に配置される接着剤で接合することができる。
【0054】
本発明の各実施形態において、凹部に配置される接着剤として各種の接着剤を使用することができるが、特に、耐熱性及び/または高粘度接着剤を使用することが好ましい。耐熱性接着剤は、消音ユニットを通る気流の温度が高い場合または外部から消音ユニットに高熱が伝わってくる場合に対応することができるので、好ましい。例えば、道路トンネル用換気設備の用途では、消音ユニットは、100℃までの周囲環境に耐え得ることが使用条件となっている。従って、100℃を超える耐熱温度、好ましくは、150℃以上の耐熱温度、さらに好ましくは、200℃以上の耐熱温度を有する接着剤を使用することがで
きる。そのような耐熱性を有する接着剤の例として、シリコーン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤等が挙げられる。特に、エポキシ系接着剤及びアクリル系接着剤は、金属どうしの接着性に優れる点で好ましく使用することができる。
【0055】
高粘度接着剤としては、好ましくは約50Pa・s以上、より好ましくは100Pa・s以上の粘度を有する接着剤を使用することができる。このような接着剤の例として、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、シリコーン系接着剤等が挙げられる。第3実施形態のように、凹部と凹部の間に接着剤が配置される場合には、一方の表面の凹部に装填された接着剤は、他方の表面の凹部に接触するまで、その形状をある程度保持する必要がある。従って、100Pa・s以上の粘度を有する接着剤を使用することが好ましい。また、凹部と平面の間に接着剤が配置される場合には、約50Pa・s以上の粘度を有する接着剤を使用することが好ましい。しかし、接着剤がカプセル状容器に収容される場合には、接着剤は、必ずしも高粘度接着剤でなくてもよい。尚、本発明の実施形態において使用される接着剤の粘度は、JIS K 6833−1に規定する測定方法により、例えば単一円筒形回転粘度計を用いて測定された値である。
【0056】
所望の耐熱性及び高粘度を有する接着剤として、シリコーン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤等を、適宜配合して用いることができる。
【0057】
尚、本発明の実施形態において、消音ユニットの全ての接合面が接着剤で接合される必要はない。接着剤による接合に加えて、従来の他の方法による接合が行われてもよい。また、接着剤は、凹部に装填されるだけでなく、凹部以外の箇所に塗布されてもよい。また、接合面どうしを位置決めするのに十分な時間をとるために、接着強度が徐々に高まる特性を有する接着剤を用いることができる。
【0058】
また、本発明の各実施形態では、各消音ユニットの表面に部分的に滑り止め加工を行ってもよい。滑り止め加工は、例えば、微細な凹凸を形成するように表面を粗くすること、両面テープを使用すること、滑り止め材を接着剤で貼付すること、等によって行うことができる。滑り止めは、接着剤が配置される表面(例えば、消音ユニットの上面)と同じ面に施されてもよいし、異なる面(例えば、消音ユニットの側面)に施されてもよい。滑り止めによって消音ユニットを強固に固定することができ、施工品質が高まる。また、凹部を形成することができない位置がある場合には、そのような位置に滑り止めを施すことにより、固定を強化することができる。
【0059】
以上説明したように、本発明の各実施形態によれば、凹部に配置された接着剤を用いて接合面を密着状態で接合することができる。抑え金物やピン等の接合用の部材が不要であるので、従来技術と比べて、消音装置の部品点数を少なくすることができる。また、消音装置の組立工数及び組立時間を短縮することができる。また、凹部に装填した接着剤を押し広げることができるので、接着剤を塗布する作業が不要である。また、接合面を密着状態で接合することができるので、音漏れや気流音の発生等による減音性能の低下が生じない。
【0060】
また、凹部に挿入可能な凸部が設けられる実施形態では、凹部と凸部が、接合面を位置合わせする際の目印として機能することができる。従って、位置決め作業が容易になる。また、凹部と凸部を係合させることができるので、特に、接合面に沿う方向の外力に対して優れた接合強度を提供することができる。
【0061】
また、消音装置が組立てられた状態で外部に開口する開口部が設けられる実施形態では、組み立て後に開口部を通して凹部に接着剤を装填することができるので、位置決め作業が容易になる。
【0062】
以上、いくつかの例に基づいて本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明には、その均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【0063】
本発明は、以下の実施形態を含む。
1. 内部に気流流路を有する複数の消音ユニットを備える消音装置であって、
気流流路に対して横方向に並列配置される複数の消音ユニットの互いに対向して配置される2つの表面の少なくとも一方に凹部が形成されており、凹部に接着剤が配置される、消音装置。
2.内部に気流流路を有する複数の消音ユニットを備える消音装置であって、
気流流路の方向に直列配置される複数の消音ユニットの互いに対向して配置される2つの表面の少なくとも一方に凹部が形成されており、凹部に接着剤が配置される、消音装置。
3. 凹部に配置されるように構成された、接着剤を収容するカプセル状部材を備える、上記1または2に記載の消音装置。
4. 互いに隣接して配置される複数の消音ユニットおよび複数の消音ユニットを収容するケーシングを備える消音装置であって、ケーシング及び消音ユニットの互いに対向して配置される2つの表面の少なくとも一方に凹部が形成されており、凹部に接着剤が配置される、消音装置。
5. 凹部は、2つの表面が重ね合された状態で消音装置の外部に向けて開口可能な開口部を形成する、上記1、2または4に記載の消音装置。
6. ケーシングが、凹部内に開口する貫通孔を含む、上記4に記載の消音装置。
7. 2つの表面は、凹部が形成された第1の表面と、凹部に面して配置される平坦な部分を含む第2の表面である、上記1〜6のいずれかに記載の消音装置。
8. 2つの表面は、凹部が形成された第1の表面と、凹部に挿入可能な凸部が形成された第2の表面である、上記1〜6のいずれかに記載の消音装置。
9. 2つの表面は、凹部が形成された第1の表面と、凹部が形成された第2の表面であり、第1の表面の凹部の開口と第2の表面の凹部の開口は、少なくとも部分的に互いに対向する向きで配置される、上記1〜6のいずれかに記載の消音装置。
10. 2つの表面は、凹部が形成された第1の表面と、凹部に面して配置される平坦な部分を含む第2の表面であり、
平坦な部分は、凹部内でカプセル状部材を押圧または穿孔可能に構成される突起部を含む、上記3に記載の消音装置。
11. 凹部が溝の形状を有している、上記1〜10のいずれかに記載の消音装置。
12. 複数の消音ユニットを備える消音装置を組立てる方法であって、隣接する消音ユニットの互いに対向して配置される2つの表面を少なくとも部分的に接合する工程を含み、
接合する工程は、
2つの表面のうち少なくとも一方の表面に形成された凹部に接着剤を配置する工程と、
2つの表面を互いに重ね合わせる工程と、を含む、方法。
13. 凹部に接着剤を配置する工程は、接着剤を収容するカプセル状部材を凹部に配置する工程を含む、上記12に記載の方法。
14. 2つの表面のうち他方の表面に凸部が形成されており、
重ね合わせる工程は、凹部に凸部を挿入する工程を含む、上記13に記載の方法。
15. 複数の消音ユニット及び複数の消音ユニットを収容するケーシングを備える消音
装置を組立てる方法であって、ケーシング及び消音ユニットの互いに対向して配置される2つの表面を少なくとも部分的に接合する工程を含み、
接合する工程は、
2つの表面のうち少なくとも一方に形成された凹部に接着剤を配置する工程と、
2つの表面を互いに重ね合わせる工程と、を含む、方法。
16. 凹部は、2つの表面が重ね合された状態で消音装置の外部に向けて開口可能な開口部を形成しており、
接着剤を配置する工程は、開口部を通して凹部に接着剤を注入する工程を含む、上記15に記載の方法。
17. ケーシングが、凹部内に開口する貫通孔を含み、
接着剤を配置する工程は、貫通孔から凹部内に接着剤を注入する工程を含む、上記15に記載の方法。
18. 2つの表面のうち他方の表面に凹部が形成されており、
重ね合わせる工程は、2つの表面の凹部の開口を少なくとも部分的に互いに対向して配置することを含む、上記12、13及び15〜17のいずれかに記載の方法。