(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項4に記載の計量システムであって、上記試料の最大許容エリアが上記入射X線照明ビームにより照明され用いられるよう、上記有限な放射エリアのサイズ、形状又はその双方の変更並びに上記電子ビームのパワーの調整によって、上記発生するX線束が最大化される計量システム。
請求項1に記載の計量システムであって、上記ビーム選択サブシステムの居所が、上記X線照明ビームの上記照明源・上記集束性光学素子間光路上、当該X線照明ビームの当該集束性光学素子・上記試料間光路上、或いはその組合せである計量システム。
請求項13に記載のX線照明サブシステムであって、上記第2コマンド信号が、更に、上記X線輻射を発生させる電子ビームのパワーを上記照明源により調整させるX線照明サブシステム。
請求項14に記載のX線照明サブシステムであって、上記試料の最大許容エリアが上記入射X線照明ビームにより照明され用いられるよう、上記有限な放射エリアのサイズ、形状又はその双方の変更並びに上記電子ビームのパワーの調整によって、上記発生するX線束が最大化されるX線照明サブシステム。
請求項12に記載のX線照明サブシステムであって、上記ビーム選択サブシステムの居所が、上記X線照明ビームの上記照明源・上記集束性光学素子間光路上、当該X線照明ビームの当該集束性光学素子・上記試料間光路上、或いはその組合せであるX線照明サブシステム。
請求項22に記載の方法であって、上記試料の最大許容エリアが上記入射X線照明ビームにより照明され用いられるよう、上記有限な放射エリアのサイズ、形状又はその双方の変更並びに上記電子ビームのパワーの調整によって、上記発生するX線束を最大化させるX線スキャタロメトリ計測方法。
【背景技術】
【0002】
(関連出願への相互参照)
本特許出願は、2017年1月3日付米国暫定特許出願第62/441707号に基づき米国特許法第119条の規定による優先権を主張する出願であるので、この参照によりその主題の全容を本願に繰り入れることにする。
【0003】
半導体デバイス例えば論理デバイス及び記憶デバイスは、通常、一連の処理工程を試料に適用することで製造される。それら処理工程によりそれら半導体デバイスの諸フィーチャ(外形特徴)及び構造階層群が形成される。例えば、多々あるなかでもリソグラフィは、半導体ウェハ上でのパターンの生成を孕む半導体製造プロセスの一つである。半導体製造プロセスの更なる例としては、これに限られるものではないが、化学機械研磨、エッチング、堆積及びイオンインプランテーションがある。複数個の半導体デバイスを1枚の半導体ウェハ上に作成し、その上で個別の半導体デバイスへと分けるようにするとよい。
【0004】
計量プロセスは半導体製造プロセス中の諸工程にて用いられており、それによりウェハ上の欠陥を検出することで歩留まり向上が促進されている。多数の計量依拠技術、例えばスキャタロメトリ(散乱計測法)及びリフレクトメトリ(反射計測法)の装置やそれに係る分析アルゴリズムが、限界寸法、膜厚、組成その他、ナノスケール構造のパラメタを解明すべく広く用いられている。
【0005】
以前から、スキャタロメトリによる限界寸法計測が、薄膜及び/又は及び反復性周期構造からなるターゲットを対象にして実行されている。デバイス製造中には、通常、これらの膜及び周期構造が実デバイス幾何及び素材構造或いは中間デザインの代表となる。デバイス(例.論理デバイス及び記憶デバイス)の小型化が進みナノメートルスケール寸法へと移行しているため、特性解明がより困難になっている。デバイスに複雑な三次元幾何が組み込まれ、多様な物理特性を有する素材が組み込まれたことが、特性解明困難性の一因となっている。例えば、昨今のメモリ構造は高アスペクト比三次元構造であることが多く、そのために光学輻射が下方の層まで浸透しづらくなっている。光学計量ツールで利用される赤外〜可視光なら多くの半透明素材層に浸透可能だが、波長を長めにして良好な浸透深度を提供すると、小さな異常に対し十分な感度が得られなくなる。加えて、複雑な構造(例.FinFET)の特徴を記述するには多数のパラメタが必要であり、そのことがパラメタ相関の増大につながっている。結果として、ターゲットの特徴を記述するパラメタを、入手可能な計測結果から信頼性よく分離させられないことが多くなる。
【0006】
一例としては、スタック内交互配置素材の一つとしてポリシリコンを利用する3D−FLASH(登録商標)デバイスに関し浸透問題を克服する試みにて、長めの波長(例.近赤外)が採用されている。しかしながら、3D−FLASH(登録商標)の鏡状構造により、生来的に、その膜スタック内のより深部へと照明が伝搬するにつれ光強度低下が発生する。これは深部での感度ロス及び相関問題を引き起こす。
【0007】
別例としては、昨今の半導体構造では不透明高k素材が多々採用されつつある。これらの素材で構成された層には光学輻射を浸透させ得ないことが多い。結果として薄膜スキャタロメトリツール、例えばエリプソメータ(楕円偏向計)やリフレクトメータ(反射計)による計測が、ますます困難になってきている。
【0008】
これらの困難事を踏まえ、更に複雑な光学計量ツールが開発されている。例えば、ツールの照明角を複数通りにし、照明波長を短めにし、照明波長域を広めにし、また反射信号からの情報獲得をより無欠にしたもの(例.より以前からある反射率信号やエリプソメータ信号に加え複数個のミュラー行列要素を計測するもの)が開発されている。しかしながら、これらの手法では、多くの先進ターゲット(例.複雑な3D構造、10nm未満の小構造、不透明素材が採用されている構造)の計測及び計測アプリケーション(例.ラインエッジ粗さ計測及びライン幅粗さ計測)に関連する基本的困難事が、信頼性よく克服されていない。
【0009】
原子間力顕微鏡(AFM)及び走査型トンネリング顕微鏡(STM)は、原子分解能を達成可能であるものの、試料の表面しか探査することができない。加えて、AFM顕微鏡やSTM顕微鏡では長い走査時間が必要となる。走査型電子顕微鏡(SEM)では中程度の分解能が達成されるが、構造内の十分な深度まで浸透することができない。そのため、高アスペクト比孔を良好に特性解明することができない。加えて、余儀なき試料帯電がイメージング性能に悪影響を及ぼす。X線リフレクトメータも浸透問題に悩まされており、それにより高アスペクト比構造計測時の有効性が限られている。
【0010】
浸透深度問題を克服するため、従来のイメージング技術例えばTEM、SEM等々では、破壊型標本調製技術例えば集束イオンビーム(FIB)マシニング、イオンミリング、ブランケットエッチング、選択性エッチング等々が併用されている。例えば透過型電子顕微鏡(TEM)では、高程度の分解能が達成されるし任意深度を探査可能だが、試料の破壊的分断が必要となる。素材除去及び計測を数回反復することで、一般には、三次元構造全体に亘り限界計量パラメタを計測するのに必要な情報がもたらされる。しかし、これらの技術では標本破壊や長時間処理が必須となる。これらの種類の計測を完遂するのは面倒で時間がかかるため、エッチング工程及び計量工程のドリフトによる多大な不正確性が入り込む。加えて、これらの技術では多数回の反復が必要であるため、位置揃え誤差が入り込む。
【0011】
透過型小角X線スキャタロメトリ(T−SAXS)システムには、困難事を抱える計測アプリケーションに対処できる見込みがある。しかしながら、有限サイズのX線源を計測下ウェハ上にイメージングすることはなおも困難であり、とりわけ計量ターゲットが小さい場合や計量ターゲットのサイズが変わる場合はそうである。
【0012】
利用できるX線源は、ビーム伝搬方向に対し直交する方向に沿い有限な寸法を有するものである。更に、X線源により放射されるX線束はその線源のサイズに比例する。線源サイズが有限であるため、試料上の入射ビームスポットは、線源サイズと、その光学系の倍率とにより定まる。光学系の倍率とは、集束光学系から像までの距離と、集束光学系から線源までの距離と、の比のことである。可変倍率を実現することで様々なサイズの計量ターゲットを受容可能としつつ、そのターゲット内を通る光子束を最大化させることが、重要な課題である。
【0013】
多くの既存のかすめ入射光学システムでは、一定倍率を提供する固定形状の集束光学系か、可変倍率を提供する可変形状の集束光学系が、採用されている。ビーム発散は、集束光学系の後方にてビームスリットサイズを変化させること、集束光学系の形状を変化させること、或いはその双方により制御される。
【0014】
幾つかの例では、相異なる倍率を有する幾つかの集束光学系で以て集束ビームサイズが制御される。言い換えれば、焦点におけるビームサイズと倍率とが実効的に結びついているので、倍率変更に当たり光学素子の変更が必要となる。異なる倍率が必要になるたびに、光学系及び関連するハードウェアを換装することが必要なことは、半導体製造装置においては非現実的なことである。更に、光学系の変更による倍率の変更は、必ず、線源対光学系距離、光学系対焦点距離又はその双方の変更を伴う。実際上、これには、線源に対する光学系の物理的再配置、標本に対する光学系の物理的再配置、並びに光学系及び線源に対する標本の再配置のうちいずれかが必要となる。光学系、線源及び標本相互を物理的に再配置する必要があることは、半導体製造装置においては極めて望ましくない。特許文献1及び2にはこれらの特徴を有するシステムが詳述されているので、この参照を以てそれらの全容を本願に繰り入れることにする。
【0015】
幾つかの例では、集束光学系の出口アパーチャ付近に所在する可変サイズの出口アパーチャ又はスリットにより、ビーム発散が制御される。しかしながら、この手法では、その代償として標本上の光束が減少する。特許文献3にはこの特徴を有するシステムが詳述されているので、この参照を以てその全容を本願に繰り入れることにする。
【0016】
幾つかの例では、集束光学系の幾何形状を変化させて焦点距離を変えることで、倍率変更が達成される。不運なことに、この手法では、光学系及び線源に対するターゲット位置の変更という、半導体製造装置では望ましくないことが必要となる。加えて、達成可能な幾何形状変更量がかなり制限される。そのため、小焦点サイズシステムで達成しうる倍率域が極めて狭くなる。更に、幾何形状変更の実現可能性及び正確性や、形状変化を被る面への反射被覆の付加が、非常に制約されうる。特許文献4にはこの特徴を有するシステムが詳述されているので、この参照を以てその全容を本願に繰り入れることにする。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、その例が添付図面に描かれている発明の背景例及び幾つかの実施形態を詳細に参照することにする。
【0028】
半導体製造環境における現実的なT−SAXS計測では、その回折特性が異なる様々なサイズの計量ターゲットの計測が必要になる。幾つかの例では、本願記載の如くT−SAXS計測により特性解明される計量ターゲットが、計測下ウェハのスクライブライン内に配置される。それらの例では、そのスクライブラインの幅内に収まるようその計量ターゲットがサイズ設定される。幾つかの例ではそのスクライブライン幅が80μm未満とされる。幾つかの例ではそのスクライブラインが50μm未満とされる。一般に、半導体製造にて採用されるスクライブラインの幅は縮小傾向にある。幾つかの例では、本願記載の如くT−SAXS計測により特性解明される計量ターゲットが、計測下ウェハの能動ダイエリア内に配置されて機能的集積回路(例.メモリ、イメージセンサ、論理デバイス等々)の一部となる。
【0029】
一般に、望ましいのは、照明ビームのスポットサイズが計測下計量ターゲットの横方向寸法と密に整合していて、その計測下計量ターゲット周囲の構造からの汚染信号が少ないことである。
【0030】
本願には、様々なサイズの計量ターゲットの透過型小角X線スキャタロメトリ(T−SAXS)計測向けに照明ビームスポットサイズを制御する方法及びシステムが記載されている。
【0031】
ある態様では、X線照明光学系サブシステムに、その物面及び像面が固定個所にある1個又は複数個の集束性光学素子と、倍率及びビーム発散を相独立に制御する1個又は複数個の照明アパーチャ又はスリットとが備わる。その集束光学系には、それぞれ一定の幾何形状を呈する1個又は複数個の反射面が備わる。
【0032】
更なる態様では、その照明源サイズ及び形状を1個又は複数個の照明アパーチャと併せ制御することで、ウェハ上での照明スポットサイズとビーム発散とが、照明束をウェハにてほぼ一定に保ちつつ相独立に制御される。
【0033】
図1には、本願提示の方法例に従い試料の特性を計測するT−SAXS計量ツール100の実施形態が描かれている。
図1に示すように、本システム100を用いることで、集束ビームにより照明された試料101の検査エリア102上に亘りT−SAXS計測を実行することができる。
【0034】
図示実施形態では、計量ツール100が、T−SAXS計測に適するX線輻射を生成するよう構成されたX線照明源110を有している。幾つかの実施形態では、0.01nm〜1nmの波長を生成するようそのX線照明システム110が構成される。一般に、高スループットインライン計量を可能にするのに十分な光束レベルで高輝度X線を発生させうる好適な高輝度X線照明源は、全て、T−SAXS計測用X線照明の供給用に想定することができる。幾つかの実施形態では、X線源に可調モノクロメータを組み込むことで、そのX線源が様々な可選択波長でX線輻射を送給できるようにする。
【0035】
幾つかの実施形態では、15keV超の光子エネルギで以て輻射を発する1個又は複数個のX線源を採用することで、デバイス全体及びウェハ基板を通じ十分透過可能な波長にてそのX線源が光を送給できるようにする。非限定的な例によれば、粒子加速器線源、液体金属ジェット線源、回動アノード線源、静止固体アノード線源、マイクロフォーカス線源、マイクロフォーカス回動アノード線源及び逆コンプトン線源のいずれも、X線源110として採用することができる。一例としては、米国カリフォルニア州パロアルト所在のLyncean Technologies,Inc.から入手可能な逆コンプトン線源が熟慮に値しうる。逆コンプトン線源のように、ある範囲に亘る光子エネルギ域にてX線をもたらしうるという付加的長所があるX線源であれば、様々な可選択波長でX線輻射を送給することができる。
【0036】
X線源の例としては、固体又は液体ターゲットを砲撃しX線輻射を誘起するよう構成された電子ビーム式線源がある。高輝度液体金属X線照明生成方法及びシステムがKLA−Tencor Corp.名義の2011年4月19日付特許文献5に記載されているので、この参照を以てその全容を本願に繰り入れることにする。
【0037】
X線照明サブシステムは照明源110、1個又は複数個の集束性光学素子111並びに一組又は複数組のアパーチャ又はスリットを有しており、それらはX線ビームを整形して試料101へと向かわせる。
図1に記されているように、X線照明源110は、ある有限な横方向寸法(即ちビーム軸に対し直交する非ゼロ寸法)を有する、ある線源エリアに亘ってX線放射を発生させる。集束光学素子111は、試料101上へのX線照明ビーム115の入射により定まる、ある照明エリア102に亘り、試料101上へと線源輻射を集束させる。
【0038】
ある態様では、X線照明光学サブシステムに、1個又は複数個の集束性光学素子と、倍率及びビーム発散を相独立に制御する1個又は複数個の照明アパーチャ又はスリットとが備わる。その集束光学系には、それぞれ一定の幾何形状を呈する1個又は複数個の反射面が備わる。
【0039】
更なる態様では、その照明源サイズ及び形状を、1個又は複数個の照明アパーチャと併せ制御することで、ウェハ上での照明スポットサイズとビーム発散とが、そのウェハにて照明束をほぼ一定に保ちつつ、相独立に制御される。
【0040】
図1に記した照明サブシステム118は、X線照明ビーム115を試料101に供給するものであり、その発散、焦点サイズ及び形状を制御することができる。集束性光学素子(群)111の反射面(群)は同じ集束的幾何形状(群)に属しており、ひいてはその集束性光学素子の物面及び像面がそれら反射面の可作動域全体に亘り固定個所に所在している。ビーム選択サブシステム120は集束光学系111付近に所在しており、集束光学系111で反射された照明ビーム112のうち一部分を選択することで、照明サブシステム118の倍率と、その照明ビーム115の発散とを制御する。
【0041】
図1に記した実施形態では、ビーム選択サブシステム120がブレード122A及びブレード122Bを有している。ブレード122A,122Bは、集束光学系111で反射された照明ビーム112に対し、それぞれアクチュエータ121A,121Bによって相独立に位置決めされる。照明ビーム112の場におけるブレード122A及び122B同士の位置(即ちブレード122A・122B間ギャップ)により、照明ビーム115の発散が制御される。ブレード122A及び122Bが照明サブシステム118の中心軸に対し垂直な方向沿いで照明ビーム112に対し占める位置(即ち入射及び反射ビーム112により定まる平面内で反射ビーム112に対しギャップが占める個所)により、照明サブシステム118の倍率が制御される。
【0042】
図2には、計量システム100の照明サブシステム118がより詳細に記されている。
図2に記されている通り、集束性光学素子111は楕円形である。集束性光学素子111の反射面は、半長軸長A及び半短軸長Bを有する楕円形状117をなぞっている。集束性光学素子111の反射面は長さLにより特徴付けられている。照明源110,試料101はそれぞれ集束性光学素子111の物面,像面に所在しており、それらは楕円117の焦点と一致している。幾つかの実施形態では比A/Bが50〜250のうちいずれかの値とされる。
【0043】
図2に記されているように、ブレード122A及び122Bは、集束性光学素子111により反射された照明ビーム112のうち一部分113が、試料101上に入射する照明ビーム115として選択されるよう、位置決めされる。その被選択部分113の主光線116も記されている。主光線116は、集束性光学素子111の反射面上に、かすめ入射角θで入射している。R
1は、照明源110と、集束性光学素子111上における主光線116の入射点との間の距離である。R
2は、集束性光学素子111上における主光線116の入射点と、試料101上における主光線116の入射点との間の距離である。
【0044】
図3及び
図4には、計量システム100の照明サブシステム118がより詳細に記されている。
図3及び
図4は
図2と似ているが、集束性光学素子111で反射された照明ビーム112のうち被選択部分113に違いがある。
【0045】
図2に記されているように、ブレード素子122A及び122Bを然るべく位置決めすることで、照明ビーム112の被選択部分113の主光線116の反射元を、集束性光学素子111の中点(即ちL/2のところ)とすることができる。
図3に記されているように、ブレード素子122A及び122Bを然るべく位置決めすることで、照明ビーム112の被選択部分113の主光線116の反射元を、集束性光学素子111の前端(即ち集束性光学素子111のうち照明源110に最も近い部分)とすることができる。
図4に記されているように、ブレード素子122A及び122Bを然るべく位置決めすることで、照明ビーム112の被選択部分113の主光線116の反射元を、集束性光学素子111の後端(即ち集束性光学素子111のうち照明源110から最も遠い部分)とすることができる。
【0046】
照明サブシステム118の光学倍率はR
1とR
2の比で定まる。
図2〜
図4に記されているように、R
1とR
2の比、ひいてはその照明システムの光学倍率は、照明ビーム112のうち試料101上に入射する照明ビーム115として選択される部分113次第で異なる。より具体的には、その集束性光学素子111上における主光線116の入射個所が変わると、照明サブシステム118の光学倍率も変わる。
【0047】
図3に記した選択では、所与発散の反射ビームに関し最高倍率が提供される。ブレード122A及び122Bの位置決めにより、集束性光学素子111の前端で反射された照明光のみで、試料101上に入射する照明ビーム115が形成されている。
図2に記した選択では、所与発散の反射ビームに関し中庸倍率が提供される。ブレード122A及び122Bの位置決めにより、集束性光学素子111の中葉で反射された照明光のみで、試料101上に入射する照明ビーム115が形成されている。
図4に記した選択では、所与発散の反射ビームに関し最低倍率が提供される。ブレード122A及び122Bの位置決めにより、集束性光学素子111の後端で反射された照明光のみで、試料101上に入射する照明ビーム115が形成されている。
【0048】
図1〜
図4に記したビーム選択サブシステム120では、備わる1枚又は複数枚のブレードが集束性光学素子111・試料101間に所在している。しかしながら、一般に、ビーム選択サブシステム120に備わる1枚又は複数枚のブレードは、集束性光学素子111・試料101間に所在していても、照明源110・集束性光学素子111間に所在していても、或いはその双方に所在していてもかまわない。それらブレードは集束性光学素子111付近(即ち照明源110や試料101よりも集束性光学素子111に近いところ)に所在させる。更に、
図1〜
図4に記したビーム選択サブシステム120では、備わる1枚又は複数枚のブレードによってスリットの輪郭が定まり、それによって照明ビーム115のかたちが定まっている。しかしながら、一般に、ビーム選択サブシステム120は、照明ビーム112のうち一部分113の選択を制御する可動スリット又はアパーチャを実現するのに適していて、本願記載の如く試料101上に入射する照明ビーム115がそれにより形成されるものであれば、どのようなビームブロック素子を有していてもよい。
【0049】
前述の通り、照明サブシステム118の光学倍率はR
1とR
2の比で定まる。公称倍率M
NOMは、等式(1)に記載の通りR
1NOM及びR
2NOMで定まる。R
1NOM,R
2NOMは、それぞれ、選択された照明ビームの主光線がその集束性光学素子の中葉に入射する際のR
1,R
2の値である(例.
図2に描かれているシナリオ)。
【数1】
【0050】
ある小さなかすめ入射角(例.数度オーダ又はそれ未満のθ)を想定すると、最高達成可能倍率M
MAXは等式(2)、最低達成可能倍率M
MINは等式(3)により定義される。
【数2】
【0051】
等式(1)〜(3)により描出されているように、集束性光学素子111の長さが大きいほど倍率域は広くなる。加えて、R
1NOMに対する集束性光学素子の長さLの比により、達成可能倍率の大きさが定まる。幾つかの実施形態では公称倍率が約3、比L/R
1NOMが約3/4とされる。そうした実施形態では達成可能倍率が約1.9〜5.4の範囲内となる。幾つかの実施形態では、照明源110と、集束性光学素子111の反射面上の最寄り点との間の距離が、少なくとも50mmとされる。
【0052】
幾つかの実施形態では、集束性光学素子111の長さが約200mm、R
1NOMが約250mmとされる。幾つかの実施形態では、照明サブシステム118の光学倍率が少なくとも4.3から16以上に及ぶようL、R
1NOM及びR
2NOMが選択される。幾つかの実施形態では、照明サブシステム118の光学倍率が少なくとも1から8以上に及ぶようL、R
1NOM及びR
2NOMが選択される。幾つかの実施形態では、照明サブシステム118の光学倍率が少なくとも2から5以上に及ぶようL、R
1NOM及びR
2NOMが選択される。
【0053】
幾つかの実施形態では、集束性光学素子111に、X線光子を外部全反射により反射させる反射面が備わる。
【0054】
幾つかの実施形態では、集束性光学素子111に、多層被覆との相互作用によってX線光子を反射させる反射面が備わる。それら実施形態のうちあるものでは、その多層被覆が、空間的に周期的で、その周期性が集束性光学素子長さ方向に沿い連続的に変化するものとされる。それら実施形態のうちあるものでは、その多層被覆が、空間的に周期的で、その周期性が多層被覆深さ方向に沿い連続的に変化するものとされる。それら実施形態のうちあるものでは、その多層被覆が、多層被覆深さ方向に沿い空間的に非周期的なものとされる。
【0055】
幾つかの実施形態では、集束性光学素子111に、その長手方向沿い面間距離が一定な均一単結晶素材又は多結晶素材で構成された反射面が備わる。これらの実施形態ではX線光子がブラッグ回折によって反射される。他の幾つかの実施形態では、集束性光学素子111に、その長手方向沿い面間距離が連続的に変化する均一単結晶素材又は多結晶素材で構成された反射面が備わる。これらの実施形態ではX線光子がブラッグ回折によって反射される。
【0056】
幾つかの実施形態では、集束性光学素子111を、同じ幾何形状の反射面を有するワンバウンド光学素子とすることで、その反射面のあらゆる部分が、その集束性光学素子に対し同じ位置に幾何学的焦点を呈するようにする。
【0057】
幾つかの実施形態では、集束性光学素子111がツーバウンド光学素子、例えばモンテル光学系(光学面横並び配列)、カークパトリック・バエズ光学系(光学面縦続配列)等々とされる。モンテル光学系についての更なる記述が非特許文献1に記載されているので、この参照を以てその全容を本願に繰り入れることにする。カークパトリック・バエズ光学系についての更なる記述が非特許文献2に記載されているので、この参照を以てその全容を本願に繰り入れることにする。これらの実施形態では、各反射面のあらゆる部分がその集束性光学素子に対し同じ位置に幾何学的焦点を呈するよう、集束性光学素子111の各光学面に同じ幾何形状をなぞらせる。幾つかの実施形態では、集束性光学素子111に、90°未満の横断方向沿い角度を有する横並び構成をなし配列された2個の反射面が備わる。更に、それら2個の反射面は、焦点位置後方で測ったビームスポット内強度ギャップが終端され、それら反射面間のギャップがイメージングされるよう、構成される。幾つかの実施形態では、ツーバウンド光学素子の反射面が、共通実装フレームに装着された個々別々な基板で構成される。他の幾つかの実施形態では、それらの反射面例えば横並び構成をなすそれの空間的及び角度的相互配列を能動制御しうるよう、ツーバウンド光学素子の反射面が個々別々な基板で構成され各反射面が個々別々な整列ステージに装着される。
【0058】
幾つかの実施形態では、集束性光学素子111に、それぞれ楕円筒なる幾何形状を呈する2個の光学面が備わる。他の幾つかの実施形態では、集束性光学素子111に、回転楕円体、円筒、楕円筒、球及び環状体のうちいずれかの幾何形状を呈する反射面1個が備わる。
【0059】
幾つかの実施形態では、X線照明サブシステムに、試料101上に入射するX線ビームを単色化するX線モノクロメータが備わる。ある例では、結晶モノクロメータを利用してX線輻射ビームが単色化される。幾つかの例では、そのX線光学系によりそのX線ビームを平行化し又は試料101の検査エリア102上へと集束させ、多層X線光学系を用い1mrad未満の発散とする。これらの例では、その多層X線光学系がビームモノクロメータとしても機能する。
【0060】
幾つかの実施形態では、ビーム整形スリット機構(図示せず)がビーム路内、試料101の直前に配置される。それらのスリットを試料101付近に所在させることで、ビーム発散による入射ビームスポットサイズの拡大を抑えることができる。幾つかの実施形態では、ビーム整形スリット機構のスリットを、試料101への照明ビーム115の入射個所から50mm以内に所在させる。ビーム整形スリット機構の例が、Alexander Bykanov, et al.を発明者とし米国カリフォルニア州ミルピタス所在のKLA−Tencor Corporationを譲受人とする特許文献6に記載されているので、この参照を以てその全容を本願に繰り入れることにする。
【0061】
他の幾つかの実施形態に係る計量システム100では、試料101付近に所在するビーム整形スリット機構を採用しない。これらの実施形態では、ビームの発散具合や、試料101の表面における照明ビームサイズが、ビーム選択サブシステム120によって制御される。これらの実施形態では、計量ターゲット周辺エリアの光子汚染の効果的制御が、計測下ウェハの表面付近にスリットを所在させ用いることなしで達成される。
【0062】
X線検出器119は、T−SAXS計測方式に従い、試料101で散乱されたX線輻射114を収集して、試料101の特性のうち入射X線輻射と相互作用する特性を示す出力信号135を生成する。幾つかの実施形態では、散乱X線114をX線検出器119により収集するのと併せ、試料位置決めシステム140により試料101の位置及び向きを定めることで、散乱X線を角度分解する。
【0063】
幾つかの実施形態では、T−SAXSシステムに、広いダイナミックレンジ(例.10
5超)を有する1個又は複数個の光子計数検出器と、厚手の高吸収性結晶基板とが備わる。幾つかの実施形態では、単一の光子計数検出器により散乱光子の位置及び個数が検出される。
【0064】
幾つかの実施形態では、そのX線検出器により一通り又は複数通りのX線光子エネルギが分解され、その試料の特性を示すX線エネルギ成分毎の信号が生成される。幾つかの実施形態では、そのX線検出器119に、画素化光子計数アレイ、CCDアレイ、マイクロチャネルプレート、フォトダイオードアレイ、マイクロストリップ型比例計数器、ガス充填式比例計数管、シンチレータ及び蛍光素材のうちいずれかが備わる。
【0065】
こうした場合、検出器内X線光子相互作用が、画素の居所及び計数値に加えエネルギにより識別される。幾つかの実施形態では、それらX線光子相互作用が、X線光子相互作用のエネルギを所定の上しきい値及び所定の下しきい値と比較することで識別される。ある実施形態では、この情報が出力信号135により情報処理システム130に送られ、更なる処理及び格納に供される。
【0066】
更なる態様では、T−SAXSシステムを利用し、散乱光の一通り又は複数通りの回折次数に基づき試料の特性(例.構造パラメタ値)が判別される。
図1に記されているように、計量ツール100は情報処理システム130を有しており、それを用いることで、検出器119により生成された信号135を獲得することや、獲得した信号に少なくとも部分的に基づき試料の特性を判別することができる。
【0067】
幾つかの実施形態では、回折輻射強度の計測結果が、ウェハ表面法線に対するX線入射角と関連付けて、収集される。複数通りの回折次数に含まれる情報は、通常、考慮下の各モデルパラメタ間でユニークである。そのため、X線散乱により、注目パラメタの値に関する推定結果が、小さな誤差及び低いパラメタ相関で以てもたらされる。
【0068】
幾つかの例では、T−SAXS依拠計量に際し、計測データでの所定計測モデルの逆解により標本の寸法が判別される。その計測モデルは少数(例.10個かそれ以上のオーダ)の可調パラメタを含み、試料の幾何特性及び光学特性と、計測システムの光学特性とを表すものである。逆解方法としては、これに限られるものではないがモデル依拠回帰、トモグラフィ、機械学習又はそれらの何らかの組合せがある。このようにして、計測された散乱X線強度とモデル化結果との間の誤差が最小になるパラメタ化計測モデルの値に関し解くことで、ターゲットプロファイルパラメタが推定される。
【0069】
更なる態様では、高アスペクト比構造をその全深度に亘り特徴解明するのに十分な分解能が提供される入射角域に亘り、T−SAXS計測が実行される。
【0070】
幾つかの実施形態では、
図1に記した座標系146のY軸周りでの回動と、試料101に固定された座標系147のZ’軸周りでの回動とにより記述される、様々な向きにて計測を実行することが望まれる。これにより、分析に利用可能なデータセットの個数及び多様性を増大させ、様々な大角度面外姿勢が含まれるようにすることで、計測パラメタの精度及び正確性が増し且つパラメタ間相関が低減される。より深くより多様なデータセットで以て試料パラメタを計測することでも、パラメタ間相関が低減され且つ計測の正確性が改善される。例えば垂直姿勢では、T−SAXSによりフィーチャの限界寸法を解明できても、フィーチャの側壁(サイドウォール)角及び高さに対してはほとんど不感となる。これに対し、計測データを広範囲な面外角度位置に亘り収集すれば、フィーチャの側壁角及び高さを解明することができる。
【0071】
図1に描かれているように、計量ツール100に備わる試料位置決めシステム140は、試料101を整列させるよう、且つディフラクトメータ(回折計)のビーム軸に対しある広い入射角域に亘り試料101を指向させるよう、構成されている。言い換えれば、試料位置決めシステム140は、試料101の表面に対し面内整列している1本又は複数本の回動軸周りである広い角度域に亘り試料101を回動させるよう、構成されている。幾つかの実施形態では、試料位置決めシステム140が、試料101の表面に対し面内整列している1本又は複数本の回動軸周りで、少なくとも60°の範囲内で試料101を回動させるように構成される。こうすると、試料101の表面上の任意個数の個所に亘り、計量システム100によって試料101の角度分解計測結果が収集される。ある例では、試料101の所望位置を示すコマンド信号が、情報処理システム130により試料位置決めシステム140のモーションコントローラへと送られる。これに応じ、そのモーションコントローラがコマンド信号を試料位置決めシステム140の諸アクチュエータ向けに生成することで、試料101の所望位置決めが達成される。
【0072】
総じて、試料位置決めシステム140は、これに限られるものではないがゴニオメータステージ、六脚ステージ、角度ステージ及びリニアステージを初め、所望の直線及び角度位置決め性能を達成するのに適する何らかの機械要素の組合せを、有するものとすることができる。
【0073】
本願記載の通り、T−SAXS計測は、半導体ウェハの表面法線に対する照明X線ビームの向き複数通りにて実行される。個々の向きは、X線照明ビームを基準としたウェハ101のいずれか二通りの角度方向回動により記述されるものであり、またその逆も成り立つ。一例としては、その向きを、試料101上に入射するX線照明ビーム116の中心軸を基準として記述することができる。
図5には、ウェハ101上に入射するX線照明ビーム116の具体的な向きが、角φ及びθにより記述されることが記されている。座標系XYZはX線照明ビーム116に固定されており、そのZ軸がX線照明ビーム116の中心軸と整列している。座標系X’Y’Z’はウェハ101に固定されている。Y軸はウェハ101の表面に対し面内整列しており、そのウェハはY軸周りで角θに亘り回動される。Z’軸はウェハ101の表面に対し垂直であり、X’及びY’はウェハ101の表面と同一面内にある。角φはY軸に対するY’軸の向きを記述している。θ及びφの協働で、X線照明ビーム116に対する試料101の表面の向きがユニークに特定される。この例では、X線照明ビーム116に対する試料101の表面の向きが、試料101の表面に対し垂直な軸(即ちZ’軸)周りでの回動と、ウェハ101の表面に整列している軸(即ちY軸)周りでの回動とにより、記述されている。
【0074】
試料101上での照明ビームスポットサイズは光学倍率に比例する。従って、倍率を所望値に調整すると、試料101の表面における照明ビームスポットサイズが変化する。多くの計測アプリケーションでは、これにより照明ビームスポットサイズの制御を行うことで、最大可能光子束を保ちつつ、注目計量ターゲット周辺の構造上への照明漏出による信号汚染を少なくすることができる。
【0075】
更なる態様では、照明スポットのサイズ,形状が、それぞれ線源のサイズ,形状の変更により制御される。幾つかの実施形態では、ある広い光学倍率域に亘り試料における照明ビームスポットサイズが一定に保たれるよう、照明源サイズが制御される。他の幾つかの実施形態では、試料における照明ビームスポットサイズが調整されて、ある特定の計量ターゲットに係る所望の計測エリアと整合することとなるよう、照明源サイズが制御される。
【0076】
これにより、計量システム100により形成される照明ビーム115が呈する照明ビームスポットサイズを、相異なる計測下計量ターゲットそれぞれのサイズに対しスケール合わせすることや、その計量ターゲット周辺の光子汚染を効果的に制御することが、その計測下計量ターゲット付近にビーム整形スリットを所在させ用いることなしで可能となる。
【0077】
幾つかの実施形態では、照明源110のサイズが、多大な輝度損失なく2の倍数で可調とされる。幾つかの実施形態では、液体金属ジェット(LMJ)X線照明源のサイズを制御することで、10μm半値全幅(FWHM)の円形エリアや、20μm×10μmFWHMの楕円形エリアに亘る照明が、輝度を同レベルに保ちつつ生成される。LMJ照明源の場合、そのX線照明源のサイズは横断方向に沿いLMJアノードを過ぎる方向の電子ビームサイズに比例する。従って、入射時の電子ビームのサイズをLMJアノードで以て調整することでそのX線照明源サイズが制御される。
【0078】
ある例では、計量システム100が10μm半値全幅(FWHM)の円形照明源サイズで以て構成される。情報処理システムは、制御コマンド136をアクチュエータ121A,121Bに送りブレード素子122A,122Bの居所をそれぞれ定めることで、照明サブシステム118の倍率を約5にする。この構成では、計量システム100によって、100μm×100μmの計量ターゲットがある範囲の入射角θ及びある範囲のアジマス角φに亘り計測される。また別の例では、同じ計量システム100(即ち同じ個所に同じ光学部材があるもの)が、10μm×20μmFWHMの楕円形照明源で以て構成される。情報処理システムは、制御コマンド136をアクチュエータ121A,121Bに送りブレード素子122A,122Bの居所をそれぞれ定めることで、照明サブシステム118の倍率を約2.5にする。この構成では、計量システム100によって、50μm×100μmの計量ターゲットがある範囲の入射角θに亘り計測される。この例では、一方の方向(50μm方向)沿いで発散が効果的に制御され、他方の方向(100μm方向)沿いで最多個数の光子が収集される。照明ビームスポットサイズは、照明スポットを再整形すること及び倍率を変化させることで計量ターゲットと整合させる。
【0079】
幾つかの例では、情報処理システム130により制御コマンド137が照明源110へと送られる。これに応じ、照明源110によりスポットサイズ及び形状、照明パワー、スポットオフセット、入射角等々が調整される。ある例では、線源ターゲット上に入射する電子ビームのパラメタが調整され、それによりスポットサイズ及び形状、照明パワー、スポットオフセット、入射角等々が変更される。
【0080】
スリットは、入射輻射の散乱を抑え効果的に阻止する素材で構成される。素材例としては単結晶素材、例えばゲルマニウム、ヒ化ガリウム、燐化インジウム等がある。スリット素材を鋸断するのではなく粒界沿いに開裂させることで、構造境界を過ぎる散乱を減らすことができる。加えて、そのスリットの向きは、入来輻射・スリット素材内部構造間の相互作用によりもたらされる散乱が最少量となるよう、入来ビームを基準として定める。その結晶素材を高密度素材(例.タングステン)製のブレードに装着することで、そのスリットの一辺上でX線ビームを完全に阻止することが可能となる。
【0081】
幾つかの実施形態では、X線照明源110、集束性光学素子111、ビーム選択サブシステム120又はそれらの何らかの組合せが、試料101のそれと同じ雰囲気環境(例.ガスパージ環境)内にて保持される。他方、幾つかの実施形態では、それら構成要素間の光路やいずれかの構成要素内の光路が長くなり、気中X線散乱の影響で検出器上の像にノイズが生じる。そのため、幾つかの実施形態では、X線照明源110、集束性光学素子111、ビーム選択サブシステム120のうちいずれかが、1個又は複数個の真空窓により試料(例.試料101)から分離された1個又は複数個の局所的真空環境内にて保持される。
【0082】
同様に、幾つかの実施形態では、X線検出器119が試料101のそれと同じ雰囲気環境(例.ガスパージ環境)内にて保持される。他方、幾つかの実施形態では、試料101・X線検出器119間距離が長々しくなり、気中X線散乱の影響で被検出信号中にノイズが生じる。そのため、幾つかの実施形態では、そのX線検出器のうち1個又は複数個が、真空窓により試料(例.試料101)から分離された局所的真空環境内にて保持される。
【0083】
真空窓は、X線輻射に対し実質的に透明で好適ないずれかの素材(例.カプトン(登録商標)、ベリリウム等々)で構成すればよい。好適な真空環境を各真空チャンバ内で維持することで、照明ビームの散乱を減らすことができる。好適な真空環境とは、何らかの好適真空度環境、何らかの好適パージ環境であり小原子番号気体(例.ヘリウム)が内在しているもの、それらの何らかの組合せ等のことである。こうして、ビーム路の極力多くを真空中に所在させることで、光束を増やし散乱を減らすことができる。
【0084】
幾つかの実施形態では、試料101を含め光学システム全体が真空中で保持される。但し、一般に、試料位置決めシステム140の構成に関わる複雑性故に、試料101の真空中保持に関わるコストが高くなる。
【0085】
別の更なる態様では、試料の被計測構造の構造モデル(例.幾何モデル、素材モデル又は幾何素材複合モデル)を生成し、その構造モデルに由来する少なくとも1個の幾何パラメタを含むT−SAXS応答モデルを生成し、そしてそのT−SAXS応答モデルで以てT−SAXS計測データの当てはめ分析を実行することで少なくとも1個の試料パラメタ値を解明するよう、情報処理システム130が構成される。その分析エンジンを用いその模擬T−SAXS信号を計測データと比較することで、その標本の幾何特性及び素材特性例えば電子密度の判別を行うことができる。
図1に記した実施形態では情報処理システム130がモデル構築兼分析エンジンとして構成されており、本願記載の如くモデル構築及び分析機能が実現されるようそのエンジンが構成されている。
【0086】
図6は、情報処理システム130により実現されるモデル構築兼分析エンジン150の例を描いた図である。
図6に記されているように、モデル構築兼分析エンジン150は、試料の被計測構造の構造モデル152を生成する構造モデル構築モジュール151を有している。幾つかの実施形態では構造モデル152にその試料の素材特性も組み込まれる。その構造モデル152は、入力としてT−SAXS応答関数構築モジュール153に受領される。T−SAXS応答関数構築モジュール153は、その構造モデル152に少なくとも部分的に依拠してT−SAXS応答関数モデル155を生成する。幾つかの例では、そのT−SAXS応答関数モデル155がX線フォームファクタ
【数3】
に基づくものとされる;式中、Fはフォームファクタ、qは散乱ベクトル、ρ(r)はその試料の電子密度を球座標に従い表したものである。そして、X線散乱強度が
【数4】
により与えられる。そのT−SAXS応答関数モデル155は、入力として当てはめ分析モジュール157に受領される。その当てはめ分析モジュール157は、そのモデル化T−SAXS応答を、それに対応する計測データと比較することで、その試料の幾何特性及び素材特性を求める。
【0087】
幾つかの例では、モデル化データの実験データへの当てはめが、χ二乗値を最小化することで達成される。例えば、T−SAXS計測の場合、χ二乗値は
【数5】
として定義することができる。
【0088】
式中、S
jSAXS experimentは「チャネル」j内被計測T−SAXS信号126であり、その指数jにより一組のシステムパラメタ、例えば回折次数、エネルギ、角度座標等々が記述される。S
jSAXS model(v
1,…,v
L)は、「チャネル」jに係るモデル化T−SAXS信号S
jを一組の構造(ターゲット)パラメタv
1,…,v
Lに関し評価したものであり、それらのパラメタにより幾何(CD、側壁角、オーバレイ等々)及び素材(電子密度等々)が記述される。σ
SAXS,jは第jチャネルに係る不確定性である。N
SAXSはそのX線計量におけるチャネルの総数である。Lはその計量ターゲットを特徴付けるパラメタの個数である。
【0089】
等式(6)では、別々のチャネルに係る不確定性間に相関がないことが仮定されている。別々のチャネルに係る不確定性間に相関がある例では、それら不確定性間の共分散を計算することができる。こうした例では、T−SAXS計測に係るχ二乗値を
【数6】
と表すことができる。
【0090】
式中、V
SAXSはSAXSチャネル不確定性の共分散行列であり、Tはその転置を表している。
【0091】
幾つかの例では、当てはめ分析モジュール157により、T−SAXS計測データ135を対象にT−SAXS応答モデル155で以て当てはめ分析を実行することで、少なくとも1個の試料パラメタ値が解明される。幾つかの例ではχ
SAXS2が最適化される。
【0092】
上述の通り、T−SAXSデータの当てはめはχ二乗値の最小化により達成される。とはいえ、一般に、T−SAXSデータの当てはめを他の関数により達成してもよい。
【0093】
T−SAXS計量データの当てはめは、注目幾何及び/又は素材パラメタに対し有感ならどの種類のT−SAXSテクノロジでも役立つ。試料とのT−SAXSビーム相互作用を記述する適正なモデルが用いられる限り、試料パラメタは決定論的なもの(例.CD、SWA等々)とも統計的なもの(例.rms側壁高粗さ、粗さ相関長等々)ともすることができる。
【0094】
一般に、情報処理システム130は、リアルタイム限界寸法決め(RTCD)を利用しモデルパラメタにリアルタイムアクセスするよう構成されるが、事前算出モデルのライブラリにアクセスして試料101に係る少なくとも1個の試料パラメタ値を求めるようにしてもよい。一般に、ある種の形態のCDエンジンを用いることで、試料に割り当てられているCDパラメタと、計測された試料に係るCDパラメタとの間の差異を、評価することができる。試料パラメタ値算出方法及びシステムの例がKLA−Tencor Corp.名義の2010年11月2日付特許文献7に記載されているので、この参照を以てその全容を本願に繰り入れることにする。
【0095】
幾つかの例では、モデル構築兼分析エンジン150によって、フィードサイドウェイ分析、フィードフォワード分析及びパラレル分析の何らかの組合せでパラメタ計測結果の正確性が改善される。フィードサイドウェイ分析とは、同じ試料の別エリア上で複数個のデータセットを採取し、第1データセットから求めた共通パラメタを第2データセット側に引き渡して分析に供することである。フィードフォワード分析とは、別々の試料上でデータセットを採取し、ステップ的コピーイグザクトパラメタフィードフォワード手法を用い爾後の分析に共通パラメタを先渡しすることである。パラレル分析とは、複数個のデータセットに対する非線形当てはめ方法論の並列的又は同時的適用であり、当てはめ中に少なくとも1個の共通パラメタが結合されるもののことである。
【0096】
複数ツール兼構造分析とは、フィードフォワード、フィードサイドウェイ又はパラレル分析であり、回帰、ルックアップテーブル(即ち「ライブラリ」マッチング)、或いは他の複数データセット当てはめ手順に依拠するもののことである。複数ツール兼構造分析方法及びシステムの例がKLA−Tencor Corp.名義の2009年1月13日付特許文献8に記載されているので、この参照を以てその全容を本願に繰り入れることにする。
【0097】
別の更なる態様では、1個又は複数個の注目パラメタの初期推定値が、計測ターゲットに対し入射X線ビームをある一通りの向きにして実行されたT−SAXS計測を踏まえ導出される。それら初期推定値は、注目パラメタの開始値として、複数通りの向きでのT−SAXS計測により収集された計測データによる計測モデルの回帰用に、実装される。このようにすると、注目パラメタの密推定値が比較的少量の情報処理労力で以て求まり、またその密推定値をかなり大きなデータセットに亘る回帰用の開始点として実装することで、注目パラメタの精緻化推定値が少量の総情報処理労力で以て得られる。
【0098】
別の態様では、計量ツール100に備わる情報処理システム(例.情報処理システム130)が、本願記載のビーム制御機能が実現されるよう構成される。
図1に記した実施形態では、情報処理システム130が、例えば入射照明ビーム115の強度、発散、スポットサイズ、偏向、スペクトラム及び配置を初め、いずれかの照明特性を制御するよう動作させうるビームコントローラとして、構成されている。
【0099】
図1に描かれているように、情報処理システム130は検出器119に可通信結合されている。情報処理システム130は、検出器119から計測データ135を受領するよう構成されている。ある例では、計測データ135に、試料応答の計測結果(即ち諸次回折成分の強度)の指示子を含ませる。検出器119の表面上における応答計測結果の分布に基づき、試料101上における照明ビーム116の入射個所及びエリアが情報処理システム130により導出される。ある例では、情報処理システム130によりパターン認識技術を適用することで、試料101上における照明ビーム116の入射個所及びエリアが計測データ135に基づき導出される。幾つかの例では、情報処理システム130によりコマンド信号137をX線照明源110に送ることで、照明源の所望サイズ及び形状、照明波長が選択され、或いはそのX線放射が方向転換される。幾つかの例では、情報処理システム130によりコマンド信号136をビーム選択サブシステム120に送ることで、入射照明ビーム116が試料101に所望のビームスポットサイズ及び向きで以て到来するようビームスポットサイズを変化させる。ある例では、コマンド信号136により、ビーム選択サブシステム120に、照明サブシステム118の倍率と照明ビーム115の発散とを相独立に調整させる。他の幾つかの例では、情報処理システム130によりコマンド信号をウェハ位置決めシステム140に送ることで、入射照明ビーム115が試料101に対し所望の個所及び角度姿勢にて到来するよう試料101の位置及び向きを定める。
【0100】
更なる態様では、T−SAXS計測データを用い、被計測構造の画像が、検出された回折次数の強度計測結果に基づき生成される。幾つかの実施形態では、包括電子密度メッシュからの散乱を記述すべくT−SAXS応答関数モデルが一般化される。計測された信号にこのモデルを整合させつつ、そのメッシュにおけるモデル化電子密度に制約を加え連続性及び疎エッジを強制することで、その標本の三次元画像がもたらされる。
【0101】
幾何モデルに依拠したパラメトリック逆変換がT−SAXS計測に依拠した限界寸法(CD)計量には望ましいけれども、計測される試料がその幾何モデルの仮定事項から逸脱しているときには、それと同じT−SAXS計測データから生成された試料マップが、モデル誤差を識別及び補正するのに有用である。
【0102】
幾つかの例では、その画像が、同じスキャタロメトリ計測データの幾何モデル依拠パラメトリック逆変換により推定された構造特性と比較される。食い違いを用いることで、計測される構造の幾何モデルを更新して計測性能を向上させることができる。この能力によって正確なパラメトリック計測モデルに集束させることは、製造プロセスを制御、監視及びトラブルシュートする上で、集積回路計測時にはひときわ重要となる。
【0103】
幾つかの例では、その画像が電子密度、吸光率、複素屈折率又はそれら素材特性の組合せについての二次元(2D)マップとされる。幾つかの例では、その画像が電子密度、吸光率、複素屈折率又はそれら素材特性の組合せについての三次元(3D)マップとされる。そのマップの生成に用いられる物理的制約は比較的少数である。幾つかの例では、1個又は複数個の注目パラメタ、例えば限界寸法(CD)、側壁角(SWA)、オーバレイ、エッジ配置誤差、ピッチウォーク等々が、もたらされたマップから直に推定される。他の幾つかの例では、モデル依拠CD計測に採用されているパラメトリック構造モデルにより考慮される期待値域から標本の幾何又は素材が外れているときに、そのマップを用いウェハプロセスがデバッグされる。ある例では、そのマップと、その被計測パラメタに従いそのパラメトリック構造モデルによって予測された構造の表現物との間の差異を用い、そのパラメトリック構造モデルが更新されその計測性能が改善される。更なる詳細が特許文献9に記載されているので、この参照を以てその全容を本願に繰り入れることにする。付加的な詳細が特許文献10に記載されているので、この参照を以てその全容を本願に繰り入れることにする。
【0104】
更なる態様では、モデル構築兼分析エンジン150を利用し、X線計測光学計測結合分析モデルが生成される。幾つかの例では、例えば厳密結合波分析(RWCA)に基づく光学シミュレーションによりマクスウェルの方程式が解かれ、光学信号例えば反射率が様々な偏向、エリプソメトリパラメタ、位相変化等々に関し算出される。
【0105】
複数通りの相異なる入射角でのX線回折次数強度検出結果及び光学強度検出結果が、結合幾何パラメタ化応答モデルで以て結合当てはめ分析され、それに基づき1個又は複数個の注目パラメタの値が判別される。光学強度を計測するための光学計量ツールは、X線計量システム例えば
図1に記したシステム100と機械的に一体化されていてもいなくてもよい。更なる詳細が特許文献11及び12に記載されているので、それら文献それぞれの全容をこの参照を以て本願に繰り入れることにする。
【0106】
一般に、計量ターゲットを特徴付けるアスペクト比は、その計量ターゲットの最大高さ寸法(即ちウェハ表面に対し垂直な方向の寸法)を最大横方向寸法(即ちウェハ表面に対し整列している方向の寸法)により除したものとして定義される。幾つかの実施形態では、その計測下計量ターゲットのアスペクト比が少なくとも20とされる。幾つかの実施形態では、その計量ターゲットのアスペクト比が少なくとも40とされる。
【0107】
ご認識頂くべきことに、本件開示の随所に記載の諸ステップは、単一のコンピュータシステム130で実行してもよいし、それに代え複数個のコンピュータシステム130で実行してもよい。更に、システム100の諸サブシステム、例えばビーム選択サブシステム120、照明源110、試料位置決めシステム140等々に、本願記載のステップのうち少なくとも一部分を実行するのに適したコンピュータシステムが備わっていてもよい。従って、上掲の記述は本発明に対する限定事項としてではなく、単なる例証として解されるべきである。更に、当該1個又は複数個の情報処理システム130は、本願記載のどの方法実施形態のどの他ステップ(群)を実行するようにも構成することができる。
【0108】
加えて、コンピュータシステム130をX線照明源110、ビーム選択サブシステム120、試料位置決めシステム140及び検出器119に可通信結合させる要領は、本件技術分野で既知ないずれの要領でもよい。例えば、上記1個又は複数個の情報処理システム130を、X線照明源110、ビーム選択サブシステム120、試料位置決めシステム140及び検出器119に係る情報処理システムにそれぞれ結合させてもよい。また例えば、X線照明源110、ビーム選択サブシステム120、試料位置決めシステム140及び検出器119のうちいずれかを、コンピュータシステム130に結合された単一のコンピュータシステムにより直に制御してもよい。
【0109】
コンピュータシステム130を、本システムのサブシステム(例.X線照明源110、ビーム選択サブシステム120、試料位置決めシステム140、検出器119等)からのデータ又は情報を伝送媒体、例えば有線及び/又は無線区間を有するそれにより受領及び/又は獲得するよう、構成してもよい。このようにして、その伝送媒体を、コンピュータシステム130とシステム100の他サブシステムとの間のデータリンクとして働かせればよい。
【0110】
計量システム100のコンピュータシステム130を、他システムからのデータ又は情報(例.計測結果、モデリング入力、モデリング結果等々)を伝送媒体、例えば有線及び/又は無線区間を有するそれにより受領及び/又は獲得するよう、構成してもよい。このようにして、その伝送媒体を、コンピュータシステム130と他システム(例.計量システム100のオンボードメモリ、外部メモリ又は外部システム)との間のデータリンクとして働かせればよい。例えば、データリンクを介し格納媒体(即ちメモリ132又は180)から計測データ(例.信号135)を受け取るよう情報処理システム130を構成してもよい。一例としては、検出器119を用い取得した結果を恒久的又は半恒久的記憶デバイス(例.メモリ132又は180)内に格納させることができる。この場合、その計測結果をオンボードメモリから、或いは外部メモリシステムからインポートすることができる。更に、伝送媒体を介しコンピュータシステム130により他システムにデータを送ってもよい。一例としては、コンピュータシステム130により求められた試料パラメタ値170を恒久的又は半恒久的記憶デバイス(例.メモリ180)内に格納させることができる。この場合、計測結果を他システムにエキスポートすることができる。
【0111】
情報処理システム130には、これに限られるものではないが、パーソナルコンピュータシステム、メインフレームコンピュータシステム、ワークステーション、イメージコンピュータ、並列プロセッサその他、本件技術分野で既知なあらゆる装置が包含されうる。一般に、語「情報処理システム」は、記憶媒体から得た命令を実行するプロセッサを1個又は複数個有するデバイス全てが包含されるよう、広く定義することができる。
【0112】
方法例えば本願記載のそれを実現するプログラム命令134を、伝送媒体例えばワイヤ、ケーブル又は無線伝送リンク上で伝送してもよい。例えば、
図1に描かれているように、メモリ132に格納されているプログラム命令を、バス133上を通しプロセッサ131へと伝送させる。プログラム命令134はコンピュータ可読媒体(例.メモリ132)に格納される。コンピュータ可読媒体の例としてはリードオンリメモリ、ランダムアクセスメモリ、磁気ディスク、光ディスク及び磁気テープがある。
【0113】
幾つかの実施形態では、本願記載のスキャタロメトリ分析が製造プロセスツールの一部分として実現される。製造プロセスツールの例としては、これに限られるものではないが、リソグラフィック露出ツール、成膜ツール、インプラントツール及びエッチングツールがある。こうすることで、T−SAXS分析の結果を用い製造プロセスを制御することができる。ある例では、1個又は複数個のターゲットから収集されたT−SAXS計測データが製造プロセスツールへと送られる。そのT−SAXS計測データが本願記載の如く分析され、その結果を用いその製造プロセスツールの動作が調整される。
【0114】
本願記載のスキャタロメトリ計測を用いることで、様々な半導体構造の特性を解明することができる。構造の例としては、これに限られるものではないが、FinFET、低次元構造例えばナノワイヤやグラフェン、サブ10nm構造、リソグラフィック構造、スルー基板ビア(TSV)、メモリ構造例えばDRAM、DRAM4F2、FLASH(登録商標)、MRAM及び高アスペクト比メモリ構造がある。構造特性の例としては、これに限られるものではないが、幾何パラメタ例えばラインエッジ粗さ、ライン幅粗さ、孔(ポア)サイズ、孔密度、側壁角、プロファイル、限界寸法、ピッチ、厚み、オーバレイと、素材パラメタ例えば電子密度、組成、グレイン構造、モルホロジ、応力、歪み及び元素種別とがある。幾つかの実施形態では計量ターゲットが周期的構造とされる。他の幾つかの実施形態では計量ターゲットが非周期性とされる。
【0115】
幾つかの例では、これに限られるものではないがスピン注入磁化反転ランダムアクセスメモリ(STT−RAM)、三次元NANDメモリ(3D−NAND)又は立体NANDメモリ(V−NAND(登録商標))、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、三次元FLASH(登録商標)メモリ(3D−FLASH(登録商標))、抵抗変化型ランダムアクセスメモリ(Re−RAM)及び相変化ランダムアクセスメモリ(PC−RAM)を初め、高アスペクト比半導体構造の限界寸法、厚み、オーバレイ及び素材特性の計測が本願記載のT−SAXS計測システムで以て実行される。
【0116】
図7には、本発明の計量システム100による実施に適する方法200が描かれている。ある態様によれば、ご認識頂けるように、予めプログラミングされているアルゴリズムを、情報処理システム130に備わる1個又は複数個のプロセッサにより実行することによって、方法200のデータ処理ブロックを実行することができる。以下の記述は計量システム100の文脈で提示されているが、ここでご認識頂けるように、計量システム100の具体的な構造的側面で限定事項が表されるわけではなく、それは専ら例証として解されるべきである。
【0117】
ブロック201では、ある量のX線輻射がある有限な放射エリアに亘り生成される。
【0118】
ブロック202では、上記ある量のX線輻射のうち少なくとも一部分が1個又は複数個の反射面で反射される。当該1個又は複数個の反射面上のどの個所での反射に関しても物面の居所及び像面の居所は固定とする。
【0119】
ブロック203では、X線光学システムに対する1個又は複数個の可動スリット又はアパーチャの位置を、そのX線光学システムの中心軸に対し垂直な方向に沿い調整することで、上記有限な放射エリアの像の光学倍率が制御される。
【0120】
ブロック204では、1個又は複数個の可動スリット又はアパーチャの開口を調整することで、当該1個又は複数個のスリット又はアパーチャの位置に基づきX線輻射から選択されたX線照明ビームの発散が制御される。そのX線照明ビームを計測下試料上に入射させる。
【0121】
ブロック205では、その入射X線照明ビームに応じた計測下試料からの散乱X線輻射が検出される。
【0122】
ブロック206では、計測下試料上に配置されている計測ターゲットに係る注目パラメタの値が、検出されたX線輻射に基づき判別される。
【0123】
本願記載の語「限界寸法」には、構造のあらゆる限界寸法(例.下部限界寸法、中部限界寸法、上部限界寸法、側壁角、格子高さ等々)、いずれか2個以上の構造間の限界寸法(例.2個の構造間の距離)、並びに2個以上の構造間のずれ(例.重なり合う格子構造間のオーバレイ位置ずれ等々)が包含される。構造の例としては三次元構造、パターン化構造、オーバレイ構造等々がある。
【0124】
本願記載の語「限界寸法アプリケーション」や「限界寸法計測アプリケーション」にはあらゆる限界寸法計測が包含される。
【0125】
本願記載の語「計量システム」には、限界寸法アプリケーション及びオーバレイ計量アプリケーションを初め、その態様を問わず試料の特性解明に少なくとも部分的に採用されるシステム全てが包含される。とはいえ、これらの技術用語により本願記載の語「計量システム」の範囲が制限されるわけではない。加えて、本願記載の計量システムをパターニング済ウェハ及び/又は未パターニングウェハの計測向けに構成してもよい。その計量システムを、LED検査ツール、エッジ検査ツール、背面検査ツール、マクロ検査ツール又はマルチモード検査ツール(1個又は複数個のプラットフォームから同時にデータを得るものを含む)その他、本願記載の計測技術から利を受けるどのような計量又は検査ツールとして構成してもよい。
【0126】
本願には、試料の処理に使用しうる半導体処理システム(例.検査システムやリソグラフィシステム)に関する諸実施形態が記述されている。本願で用いられている語「試料」は、本件技術分野で既知な手段により処理(例.印刷又は欠陥検査)されうるウェハ、レティクルその他の標本全てを指している。
【0127】
本願中の用語「ウェハ」は、総じて、半導体又は非半導体素材で形成された基板を指している。その例としては、これに限られるものではないが、単結晶シリコン、ヒ化ガリウム及び燐化インジウムがある。そうした基板は半導体製造設備にて普通に見受けられ及び/又は処理されうる。場合によっては、ウェハが基板のみで構成されることがある(いわゆるベアウェハ)。そうではなく、ウェハが、基板上に形成された1個又は複数個の異種素材層を有することもある。ウェハ上に形成された1個又は複数個の層が「パターニング」されていることも「未パターニング」なこともありうる。例えば、ウェハ内に複数個のダイがありそれらが可反復パターンフィーチャを有していることがありうる。
【0128】
「レティクル」は、レティクル製造プロセスのどの段階にあるレティクルでもよいし、レティクルの完成品でもよいし、また半導体製造設備での使用向けにリリースされていてもいなくてもよい。レティクル或いは「マスク」は、一般に、その上にほぼ不透明な領域が形成されておりその領域がパターンをなしているほぼ透明な基板として定義される。その基板は、例えば、ガラス素材例えばアモルファスSiO
2を含有する。レジストで覆われたウェハの上方にレティクルを配してリソグラフィプロセスのうち露出工程を行うことで、そのレティクル上のパターンをそのレジストへと転写することができる。
【0129】
ウェハ上に形成される1個又は複数個の層がパターンをなしてもなさなくてもよい。例えば、ウェハ内の複数個のダイそれぞれが、可反復パターンフィーチャを有するようにしてもよい。そうした素材層の形成及び処理によって、最終的にはデバイスの完成品を得ることができる。ウェハ上には数多くの種類のデバイスを形成しうるので、どのような種類のものであれ本件技術分野で既知なデバイスがその上に作成されるウェハを包括することを意図して、本願では語ウェハが用いられている。
【0130】
1個又は複数個の例示的実施形態では、上述の機能がハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又はそれらの何らかの組合せの態で実現されうる。ソフトウェアの態で実現する際には、それらの機能が1個又は複数個の命令又はコードとしてコンピュータ可読媒体上に格納され又はその媒体上で伝送されうる。コンピュータ可読媒体にはコンピュータ格納媒体及び通信媒体の双方、例えばコンピュータプログラムをある場所から別の場所へと転送するのに役立つ媒体全てが包含される。格納媒体は、汎用又は専用コンピュータによるアクセスが可能な入手可能媒体であれば、どのような媒体でもよい。限定としてではなく例として言うなら、そうしたコンピュータ可読媒体は、RAM、ROM、EEPROM、CD−ROMその他の光ディスクストレージ、磁気ディスクストレージその他の磁気格納装置を初め、命令又はデータ構造の形態を採る所望のプログラムコード手段の搬送又は格納に使用することが可能で、且つ汎用又は専用コンピュータ或いは汎用又は専用プロセッサがアクセスすることが可能な、あらゆる媒体を以て構成することができる。また、どのような接続であれコンピュータ可読媒体と称して差し支えない。例えば、ソフトウェアをウェブサイト、サーバその他のリモートソースから送信するに当たり同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、ディジタル加入者線(DSL)又は無線テクノロジ例えば赤外線、無線周波数若しくはマイクロ波が用いられるのであれば、それら同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、DSL又は無線テクノロジ例えば赤外線、無線周波数若しくはマイクロ波は媒体の定義に収まる。本願中の用語ディスク(disk/disc)には、コンパクトディスク(CD)、レーザディスク、XRF(登録商標)ディスク、ディジタルバーサタイルディスク(DVD)、フロッピーディスク及びブルーレイ(登録商標)ディスクを初め、通常はデータが磁気的に再生されるディスク(disk)及びレーザで以てデータが光学的に再生されるディスク(disc)が包含される。上掲のものの組合せもまたコンピュータ可読媒体の範囲内に包含されるべきである。
【0131】
ある特定の諸実施形態を教示目的で上述したが、本件特許出願の教示は一般的な適用可能性を有するものであり、上述の具体的諸実施形態に限定されるものではない。従って、上述の諸実施形態の諸特徴については、特許請求の範囲中で説明されている発明の技術的範囲から離隔することなく、様々な修正、適合化並びに組合せを実施することができる。