(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の砥粒を含み切削ブレードの整形に用いられる整形ドレッシング層と、第2の砥粒を含み整形された切削ブレードの目立てに用いられる目立てドレッシング層と、が積層された積層ドレッシングボードの使用方法であって、
該積層ドレッシングボードの該整形ドレッシング層側をチャックテーブルで保持する保持ステップと、
切削ブレードの下端を該目立てドレッシング層の上面より低い第1の位置まで移動させた上で、該チャックテーブルを加工送り方向に移動させることにより、該目立てドレッシング層側から該積層ドレッシングボードに切削ブレードを切り込ませ、該目立てドレッシング層に第1の溝を形成する目立てドレッシングステップと、
切削ブレードの下端を該第1の溝の底より低い第2の位置まで移動させた上で、該チャックテーブルを加工送り方向に移動させることにより、該第1の溝に沿って該第1の溝の底に切削ブレードを切り込ませ、該整形ドレッシング層に第2の溝を形成する整形ドレッシングステップと、を備えることを特徴とする積層ドレッシングボードの使用方法。
第1の砥粒を含み切削ブレードの整形に用いられる整形ドレッシング層と、第2の砥粒を含み整形された切削ブレードの目立てに用いられる目立てドレッシング層と、が積層された積層ドレッシングボードの使用方法であって、
該積層ドレッシングボードの該目立てドレッシング層側をチャックテーブルで保持する保持ステップと、
切削ブレードの下端を該整形ドレッシング層の上面より低い第1の位置まで移動させた上で、該チャックテーブルを加工送り方向に移動させることにより、該整形ドレッシング層側から該積層ドレッシングボードに切削ブレードを切り込ませ、第1の溝を形成する整形ドレッシングステップと、
切削ブレードの下端を該第1の溝の底より低い第2の位置まで移動させた上で、該チャックテーブルを加工送り方向に移動させることにより、該第1の溝に沿って該第1の溝の底に切削ブレードを切り込ませ、該目立てドレッシング層に第2の溝を形成する目立てドレッシングステップと、を備えることを特徴とする積層ドレッシングボードの使用方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。本実施形態に係る積層ドレッシングボードの使用方法は、保持ステップ(
図3(A)又は
図3(B)参照)、目立てドレッシングステップ(
図3(A)参照)、及び整形ドレッシングステップ(
図3(B)参照)を含む。
【0016】
保持ステップでは、切削ブレードの整形に使用される整形ドレッシング層と、目立てに使用される目立てドレッシング層と、を厚さ方向に重ねた積層ドレッシングボードの整形ドレッシング層側をチャックテーブルで保持する。目立てドレッシングステップでは、目立てドレッシング層側から積層ドレッシングボードに切削ブレードを切り込ませ、目立てドレッシング層に溝(第1の溝)を形成する。
【0017】
整形ドレッシングステップでは、目立てドレッシングステップで形成された溝(第1の溝)の底に切削ブレードを切り込ませ、整形ドレッシング層に溝(第2の溝)を形成する。以下、本実施形態に係る積層ドレッシングボードの使用方法について詳述する。
【0018】
まず、本実施形態に係る積層ドレッシングボードの使用方法に用いられる切削装置等の構成例を説明する。
図1は、本実施形態に係る切削装置2の構成例を模式的に示す斜視図である。
図1に示すように、切削装置2は、各構造を支持する基台4を備えている。基台4の前方の角部には、矩形の開口4aが形成されており、この開口4a内には、昇降機構(不図示)によって昇降するカセット支持台6が設けられている。
【0019】
カセット支持台6の上面には、被加工物11や積層ドレッシングボード21を収容するためのカセット8が載せられる。なお、
図1では、説明の便宜上、カセット8の輪郭のみを示している。また、積層ドレッシングボード21は、必ずしもカセット8に収容されなくて良い。
【0020】
被加工物11は、例えば、シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハである。被加工物11の表面側は、格子状に配列された分割予定ラインで複数の領域に区画されており、各領域には、IC(Integrated Circuit)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等のデバイスが形成されている。
【0021】
被加工物11の裏面側には、被加工物11よりも径の大きいダイシングテープ13が貼付されている。ダイシングテープ13の外周部分は、環状のフレーム15に固定されている。すなわち、被加工物11は、ダイシングテープ13を介してフレーム15に支持されている。
【0022】
なお、本実施形態では、シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハを被加工物11としているが、被加工物11の材質、形状、構造等に制限はない。例えば、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる基板を被加工物11として用いることもできる。デバイスの種類、数量、配置等にも制限はない。
【0023】
積層ドレッシングボード21は、例えば、ホワイトアランダム(WA)やグリーンカーボランダム(GC)等の砥粒を、樹脂やセラミックス等の結合材で固定して平板状に形成されている。なお、本実施形態では、平面視で矩形の積層ドレッシングボード21を例示しているが、積層ドレッシングボード21の材質、形状、構造等に制限はない。積層ドレッシングボード21の詳細については後述する。
【0024】
カセット支持台6の側方には、X軸方向(前後方向、加工送り方向)に長い矩形の開口4bが形成されている。この開口4b内には、X軸移動テーブル10、X軸移動テーブル10をX軸方向に移動させるX軸移動機構(不図示)及びX軸移動機構を覆う防塵防滴カバー12が設けられている。
【0025】
X軸移動テーブル10の上方には、主に被加工物11を保持するための第1チャックテーブル14が設けられている。この第1チャックテーブル14は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、Z軸方向(鉛直方向)に概ね平行な回転軸の周りに回転する。また、第1チャックテーブル14は、上述のX軸移動機構によってX軸方向に移動する(加工送り)。
【0026】
第1チャックテーブル14の上面は、被加工物11を保持するための保持面14aになっている。保持面14aは、第1チャックテーブル14の内部に形成された吸引路14b(
図3(A)等参照)等を通じて吸引源(不図示)に接続されている。また、第1チャックテーブル14の周囲には、被加工物11を支持する環状のフレーム15を四方から固定するための4個のクランプ16が設けられている。
【0027】
第1チャックテーブル14に隣接する位置には、積層ドレッシングボード21を保持するための第2チャックテーブル18が設けられている。第2チャックテーブル18は、吸引路(不図示)等を通じて吸引源(不図示)に接続されており、また、第1チャックテーブル14やクランプ16等と共にX軸方向に移動する。なお、第2チャックテーブル18の代わりに、第1チャックテーブル14及びクランプ16を用いて積層ドレッシングボード21を保持することもできる。
【0028】
開口4bの近傍には、上述した被加工物11等をカセット8から第1チャックテーブル14へと搬送するための搬送ユニット(不図示)が設けられている。搬送ユニットで搬送された被加工物11は、例えば、表面側が上方に露出するようにチャックテーブル14の保持面14aに載せられる。
【0029】
基台4の上面には、2組の切削ユニット22を支持するための門型の支持構造24が、開口4bを跨ぐように配置されている。支持構造24の前面上部には、各切削ユニット22をY軸方向(左右方向、割り出し送り方向)及びZ軸方向に移動させる2組の切削ユニット移動機構26が設けられている。
【0030】
各切削ユニット移動機構26は、支持構造24の前面に配置されY軸方向に平行な一対のY軸ガイドレール28を共通に備えている。Y軸ガイドレール28には、各切削ユニット移動機構26を構成するY軸移動プレート30がスライド可能に取り付けられている。各Y軸移動プレート30の裏面側(後面側)には、ナット部(不図示)が設けられている。
【0031】
このナット部には、Y軸ガイドレール28に平行なY軸ボールネジ32がそれぞれ螺合されている。各Y軸ボールネジ32の一端部には、Y軸パルスモータ34が連結されている。Y軸パルスモータ34でY軸ボールネジ32を回転させれば、Y軸移動プレート30は、Y軸ガイドレール28に沿ってY軸方向に移動する。
【0032】
各Y軸移動プレート30の表面(前面)には、Z軸方向に平行な一対のZ軸ガイドレール36が設けられている。Z軸ガイドレール36には、Z軸移動プレート38がスライド可能に取り付けられている。各Z軸移動プレート38の裏面側(後面側)には、ナット部(不図示)が設けられている。
【0033】
このナット部には、Z軸ガイドレール36に平行なZ軸ボールネジ40がそれぞれ螺合されている。各Z軸ボールネジ40の一端部には、Z軸パルスモータ42が連結されている。Z軸パルスモータ42でZ軸ボールネジ40を回転させれば、Z軸移動プレート38は、Z軸ガイドレール36に沿ってZ軸方向に移動する。
【0034】
各Z軸移動プレート38の下部には、切削ユニット22が設けられている。この切削ユニット22は、回転軸となるスピンドル44(
図3(A)等参照)の一端側に装着された円環状の切削ブレード46を備えている。また、切削ユニット22に隣接する位置には、被加工物11等を撮像するためのカメラ(撮像ユニット)48が設けられている。
【0035】
各切削ユニット移動機構26でY軸移動プレート30をY軸方向に移動させれば、切削ユニット22及びカメラ48は、Y軸方向に移動する(割り出し送り)。また、各切削ユニット移動機構26でZ軸移動プレート38をZ軸方向に移動させれば、切削ユニット22及びカメラ48は、昇降する。
【0036】
開口4bに対して開口4aと反対側の位置には、円形の開口4cが形成されている。開口4c内には、切削後の被加工物11を洗浄するための洗浄ユニット50が設けられている。X軸移動機構、第1チャックテーブル14、クランプ16、第2チャックテーブル18、切削ユニット22、切削ユニット移動機構26、カメラ48、洗浄ユニット50等の構成要素には、制御ユニット(不図示)が接続されている。各構成要素は、この制御ユニットによって制御される。
【0037】
図2(A)及び
図2(B)は、積層ドレッシングボード21の構成例を模式的に示す斜視図である。
図2(A)及び
図2(B)に示すように、積層ドレッシングボード21は、その厚さ方向に重ねられた目立てドレッシング層21aと整形ドレッシング層21bとを有する。目立てドレッシング層21aは、例えば、樹脂やセラミックス等の結合材に対してグリーンカーボランダム(GC)等の砥粒(第2の砥粒)を混合して形成され、切削ブレード46の目詰まりや目潰れを解消する目立てに適している。
【0038】
一方で、整形ドレッシング層21bは、例えば、樹脂やセラミックス等の結合材に対してホワイトアランダム(WA)等の砥粒(第1の砥粒)を混合して形成され、切削ブレード46の形状をスピンドル44と同心状に整える整形(真円出し)に適している。この整形ドレッシング層21bは、目立てドレッシング層21aに比べて切削ブレードを消耗させる効果が高い。よって、整形ドレッシング層21bに対して切削ブレードを切り込ませる場合には、目立てドレッシング層21aに切り込ませる場合に比べて切削ブレードを深く切り込ませる必要がない。そのため、整形ドレッシング層21bは、目立てドレッシング層21aよりも薄く形成されることが多い。
【0039】
目立てドレッシング層21a及び整形ドレッシング層21bの具体的な厚さは、目立ての際の切削ブレード46の切り込み深さと整形の際の切削ブレード46の切り込み深さとの関係に応じて決定される。例えば、目立ての際の切削ブレード46の切り込み深さは、整形の際の切削ブレード46の切り込み深さの4倍〜8倍、好ましくは、5倍〜6倍程度になるので、この関係に応じて目立てドレッシング層21a及び整形ドレッシング層21bの厚さを決定することができる。
【0040】
本実施形態に係る積層ドレッシングボードの使用方法では、まず、この積層ドレッシングボード21の整形ドレッシング層21b側を保持して、目立てドレッシング層21a側を上方に露出させる保持ステップを行う。本実施形態では、第1チャックテーブル14で積層ドレッシングボード21を保持する例について説明するが、専用の第2チャックテーブル18で積層ドレッシングボード21を保持しても良い。
【0041】
なお、第1チャックテーブル14で積層ドレッシングボード21の整形ドレッシング層21b側を保持するためには、
図2(B)に示すように、ダイシングテープ23を介して環状のフレーム25に積層ドレッシングボード21を支持させる必要がある。すなわち、積層ドレッシングボード21の整形ドレッシング層21b側には、あらかじめダイシングテープ23を貼付しておく。また、ダイシングテープ23の外周部分には、環状のフレーム25を固定しておく。
【0042】
保持ステップでは、積層ドレッシングボード21に貼付されているダイシングテープ23を第1チャックテーブル14の保持面14aに接触させて、吸引源の負圧を作用させる。併せて、クランプ16でフレーム25を固定する。これにより、積層ドレッシングボード21は、目立てドレッシング層21aが上方に露出した状態で、第1チャックテーブル14及びクランプ16に保持される(
図3(A)又は
図3(B)参照)。
【0043】
保持ステップの後には、例えば、上方に露出した目立てドレッシング層21a側から積層ドレッシングボード21に切削ブレード46を切り込ませ、目立てドレッシング層21aに溝(第1の溝)を形成する目立てドレッシングステップを行う。
図3(A)は、目立てドレッシングステップで積層ドレッシングボード21に溝(第1の溝)21cが形成される様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【0044】
目立てドレッシングステップでは、まず、第1チャックテーブル14を回転させて、積層ドレッシングボード21の向きを調整する。また、第1チャックテーブル14と切削ユニット22とを相対的に移動させて、積層ドレッシングボード21に対する切削ブレード46の位置を調整する。そして、切削ブレード46の下端を、積層ドレッシングボード21の上面(すなわち、目立てドレッシング層21aの上面)より低く、目立てドレッシング層21aと整形ドレッシング層21bとの界面より高い位置まで移動させる。
【0045】
その後、切削ブレード46を回転させながら第1チャックテーブル14をX軸方向に移動させる。これにより、積層ドレッシングボード21に切削ブレード46を切り込ませ、整形ドレッシング層21bに達しない深さの溝21cを目立てドレッシング層21aに形成できる。上述のように、目立てドレッシング層21aには、切削ブレード46の目立てに適した砥粒(第2の砥粒)等が含まれているので、この溝21cの形成に伴い切削ブレード46は目立てされる。
【0046】
目立てドレッシングステップの後には、例えば、目立てドレッシングステップで形成された溝21cの底に切削ブレード46を切り込ませ、整形ドレッシング層21bに溝(第2の溝)を形成する整形ドレッシングステップを行う。
図3(B)は、整形ドレッシングステップで積層ドレッシングボード21に溝(第2の溝)21dが形成される様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【0047】
整形ドレッシングステップでは、まず、第1チャックテーブル14と切削ユニット22とを相対的に移動させて、溝21cの延長線上に切削ブレード46の位置を合わせる。そして、切削ブレード46の下端を、溝21cの底より低く、積層ドレッシングボード21の下面(すなわち、整形ドレッシング層21bの下面)より高い位置まで移動させる。
【0048】
その後、切削ブレード46を回転させながら第1チャックテーブル14をX軸方向に移動させる。これにより、切削ブレード46を溝21cに沿って切り込ませ、整形ドレッシング層21bに溝21dを形成できる。上述のように、整形ドレッシング層21bには、切削ブレード46の整形に適した砥粒(第1の砥粒)等が含まれているので、この溝21dの形成に伴い切削ブレード46は整形される。目立てドレッシング層21aは整形ドレッシング層21bに比べて消耗し易いので、溝21cの底に目立てドレッシング層21aが残留していても、整形ドレッシングステップへの影響は殆どない。
【0049】
なお、本実施形態のように、積層ドレッシングボード21の整形ドレッシング層21b側を保持する場合には、切削ブレード46を整形する際に積層ドレッシングボード21が分断されないように、整形ドレッシング層21bを厚めに形成しておくと良い。具体的には、整形の際の整形ドレッシング層21bに対する切削ブレード46の切り込み深さよりも整形ドレッシング層21bを50μm〜300μm程度、好ましくは、100μm〜200μm程度厚くする。
【0050】
例えば、整形の際の整形ドレッシング層21bに対する切削ブレード46の切り込み深さが100μm程度の場合、整形ドレッシング層21bの厚さは、150μm〜400μm程度、好ましくは、200μm〜300μm程度となる。このように、整形ドレッシング層21bの厚さに余裕を持たせることで、切削ブレード46を整形する際にも積層ドレッシングボード21が分断されずに済む。
【0051】
なお、積層ドレッシングボード21が分断されてしまうと、分断された小片が飛散して切削ブレード46に衝突し、切削ブレード46を破損させる恐れがある。そのため、上述のように、整形ドレッシング層21bの厚さに余裕を持たせておけば、分断による小片の飛散を防いで切削ブレード46の破損を防止できる。また、この場合には、隣接する溝21c(溝21d)の間隔を十分に狭くして、積層ドレッシングボード21を無駄なく効率的に使用できる。
【0052】
なお、目立ての際の目立てドレッシング層21aに対する切削ブレード46の切り込み深さは、整形の際の整形ドレッシング層21bに対する切削ブレード46の切り込み深さの4倍〜8倍、好ましくは5倍〜6倍程度である。よって、整形の際の整形ドレッシング層21bに対する切削ブレード46の切り込み深さが100μm程度の場合、目立てドレッシング層21aの厚さは、400μm〜800μm程度、好ましくは、500μm〜600μmとなる。
【0053】
以上のように、本実施形態に係る積層ドレッシングボードの使用方法では、目立てドレッシング層21aに切削ブレード46を切り込ませて目立てドレッシングを行い、整形ドレッシング層21bに切削ブレード46を切り込ませて整形ドレッシングを行うので、目立てドレッシングと整形ドレッシングとを切り替える際にドレッシングボードを載せ替える必要がない。つまり、ドレッシングボードの載せ替え頻度を低くできる。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、目立てドレッシングステップを行った後に整形ドレッシングステップを行っているが、目立てドレッシングステップを行う前に整形ドレッシングステップを行うこともできる。
図4は、目立てドレッシングステップの前に行われる整形ドレッシングステップで積層ドレッシングボード21に溝(第2の溝)21dが形成される様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【0055】
上述した目立てドレッシングステップの前に行われる整形ドレッシングステップ(第1整形ドレッシングステップ)では、まず、第1チャックテーブル14を回転させて、積層ドレッシングボード21の向きを調整する。また、第1チャックテーブル14と切削ユニット22とを相対的に移動させて、積層ドレッシングボード21に対する切削ブレード46の位置を調整する。そして、切削ブレード46の下端を、目立てドレッシング層21aと整形ドレッシング層21bとの界面より低く、積層ドレッシングボード21の下面(すなわち、整形ドレッシング層21bの下面)より高い位置まで移動させる。
【0056】
その後、切削ブレード46を回転させながら第1チャックテーブル14をX軸方向に移動させる。これにより、積層ドレッシングボード21に切削ブレード46を切り込ませ、整形ドレッシング層21bに達する深さの溝(第3の溝)21eを形成できる。上述のように、整形ドレッシング層21bには、切削ブレード46の整形に適した砥粒(第1の砥粒)等が含まれているので、この溝21eの形成に伴い切削ブレード46は整形される。目立てドレッシング層21aは整形ドレッシング層21bに比べて消耗し易いので、目立てドレッシング層21aが残留していても、整形ドレッシングステップへの影響は殆どない。
【0057】
また、上記実施形態では、積層ドレッシングボード21の整形ドレッシング層21b側を第1チャックテーブル14で保持しているが、目立てドレッシング層21a側を保持しても良い。この変形例では、まず、積層ドレッシングボード21の目立てドレッシング層21a側を保持して、整形ドレッシング層21b側を上方に露出させる保持ステップを行う。
【0058】
なお、第1チャックテーブル14で積層ドレッシングボード21の目立てドレッシング層21a側を保持できるように、積層ドレッシングボード21の目立てドレッシング層21a側には、あらかじめダイシングテープ27を貼付しておく(
図5(A)又は
図5(B)参照)。また、ダイシングテープ27の外周部分には、環状のフレーム29を固定しておく(
図5(A)又は
図5(B)参照)。
【0059】
保持ステップでは、積層ドレッシングボード21に貼付されているダイシングテープ27を第1チャックテーブル14の保持面14aに接触させて、吸引源の負圧を作用させる。併せて、クランプ16でフレーム29を固定する。これにより、積層ドレッシングボード21は、整形ドレッシング層21bが上方に露出した状態で、第1チャックテーブル14及びクランプ16に保持される(
図5(A)又は
図5(B)参照)。
【0060】
保持ステップの後には、例えば、上方に露出した整形ドレッシング層21b側から積層ドレッシングボード21に切削ブレード46を切り込ませ、溝(第1の溝)を形成する整形ドレッシングステップを行う。
図5(A)は、変形例に係る整形ドレッシングステップで積層ドレッシングボード21に溝(第1の溝)21fが形成される様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【0061】
変形例に係る整形ドレッシングステップでは、まず、第1チャックテーブル14を回転させて、積層ドレッシングボード21の向きを調整する。また、第1チャックテーブル14と切削ユニット22とを相対的に移動させて、積層ドレッシングボード21に対する切削ブレード46の位置を調整する。そして、切削ブレード46の下端を、積層ドレッシングボード21の上面(すなわち、整形ドレッシング層21bの上面)より低い位置、好ましくは、整形ドレッシング層21bと目立てドレッシング層21aとの界面より低い位置まで移動させる。
【0062】
その後、切削ブレード46を回転させながら第1チャックテーブル14をX軸方向に移動させる。これにより、積層ドレッシングボード21に切削ブレード46を切り込ませ、溝21fを形成できる。上述のように、整形ドレッシング層21bには、切削ブレード46の整形に適した砥粒(第1の砥粒)等が含まれているので、この溝21fの形成に伴い切削ブレード46は整形される。
【0063】
なお、この変形例に係る整形ドレッシングステップでは、溝21fの底に目立てドレッシング層21aが露出する深さまで切削ブレード46を切り込ませることが好ましい。整形ドレッシング層21bは目立てドレッシング層21aに比べて消耗し難く、溝21fの底に目立てドレッシング層21aを露出させない場合には、後の目立てドレッシングステップで、溝21fに残留する整形ドレッシング層21bの影響を受け易いためである。
【0064】
変形例に係る整形ドレッシングステップの後には、例えば、整形ドレッシングステップで形成された溝21fの底に切削ブレード46を切り込ませ、目立てドレッシング層21aに溝(第2の溝)を形成する目立てドレッシングステップを行う。
図5(B)は、変形例に係る目立てドレッシングステップで積層ドレッシングボード21に溝(第2の溝)21gが形成される様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【0065】
変形例に係る目立てドレッシングステップでは、まず、第1チャックテーブル14と切削ユニット22とを相対的に移動させて、溝21fの延長線上に切削ブレード46の位置を合わせる。そして、切削ブレード46の下端を、溝21fの底より低く、積層ドレッシングボード21の下面(すなわち、目立てドレッシング層21aの下面)より高い位置まで移動させる。
【0066】
その後、切削ブレード46を回転させながら第1チャックテーブル14をX軸方向に移動させる。これにより、切削ブレード46を溝21fに沿って切り込ませ、目立てドレッシング層21aに溝21gを形成できる。上述のように、目立てドレッシング層21aには、切削ブレード46の目立て適した砥粒(第2の砥粒)等が含まれているので、この溝21gの形成に伴い切削ブレード46は目立てされる。
【0067】
なお、この変形例のように、積層ドレッシングボード21の目立てドレッシング層21a側を保持する場合には、切削ブレード46を目立てする際に積層ドレッシングボード21が分断されないように、目立てドレッシング層21aを厚めに形成しておくと良い。具体的には、目立ての際の目立てドレッシング層21aに対する切削ブレード46の切り込み深さよりも目立てドレッシング層21aを50μm〜300μm程度、好ましくは、100μm〜200μm程度厚くする。
【0068】
例えば、目立ての際の目立てドレッシング層21aに対する切削ブレード46の切り込み深さが500μm程度の場合、整形ドレッシング層21bの厚さは、550μm〜800μm程度、好ましくは、600μm〜700μm程度となる。このように、目立てドレッシング層21aの厚さに余裕を持たせることで、切削ブレード46を整形する際にも積層ドレッシングボード21が分断されずに済む。
【0069】
また、上記実施形態及び変形例では、1つの積層ドレッシングボード21を交換するまでの間に、整形ドレッシングステップで切削ブレード46を積層ドレッシングボード21に切り込ませる回数と、目立てドレッシングステップで切削ブレード46を積層ドレッシングボード21に切り込ませる回数とが概ね等しくなる場合を想定しているが、例えば、いずれか一方の回数が他方の回数に比べて著しく多くなることも考えられる。
【0070】
このような場合には、切削ブレード46を切り込ませる回数に合わせて、目立てドレッシング層21a又は整形ドレッシング層21bの厚さを調整すると良い。例えば、整形ドレッシングステップで切削ブレード46を切り込ませる回数が目立てドレッシングステップで切削ブレード46を切り込ませる回数の2倍程度であれば、この比を考慮して整形ドレッシング層21bを厚くする。
【0071】
より具体的には、例えば、整形の際の整形ドレッシング層21bに対する切削ブレード46の切り込み深さが100μm程度であれば、整形ドレッシング層21bの厚さを100μm増やすことで、1本の溝に対応する位置に切削ブレード46を2回切り込ませることができるようになる。つまり、整形ドレッシングステップで切削ブレード46を切り込ませる回数を2倍に増やせる。
【0072】
このように、切削ブレードの切り込み回数に応じて目立てドレッシング層21aや整形ドレッシング層21bの厚さを調整することで、積層ドレッシングボード21の全体を無駄なく使用してコストを下げることができると共に、ドレッシングボードの載せ替え頻度を更に低くできる。
【0073】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。