特許第6906859号(P6906859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906859
(24)【登録日】2021年7月2日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20210708BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20210708BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   H01L21/304 631
   H01L21/304 622N
   B24B49/12
   B24B7/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-175971(P2017-175971)
(22)【出願日】2017年9月13日
(65)【公開番号】特開2019-54056(P2019-54056A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2020年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(72)【発明者】
【氏名】重松 孝一
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−150324(JP,A)
【文献】 特開2014−203836(JP,A)
【文献】 特開2013−056392(JP,A)
【文献】 特開2013−021056(JP,A)
【文献】 特開昭59−011618(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0088441(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 49/12
B24B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側に構造物が形成されたウェーハの裏面側を研削又は研磨する加工装置であって、
該表面側が下方に向けられた状態の該ウェーハを保持するチャックテーブルと、
該チャックテーブルに保持された該ウェーハの上方に露出した該裏面側を研削又は研磨する加工ユニットと、
該ウェーハを収容するカセットが載置されるカセット載置領域と、
該カセット載置領域に載置された該カセットから該ウェーハを搬出し、該チャックテーブルへ搬送する搬送ユニットと、
該ウェーハを該裏面側から撮影し、該表面側が写る画像を取得する赤外線カメラユニットと、
各種情報を報知する報知ユニットと、
各構成要素を制御する制御ユニットと、を備え、
該制御ユニットは、
該カセット載置領域に載置された該カセットから搬出される判定対象のウェーハが加工対象のウェーハであるか否かを判定する判定部と、
該加工対象のウェーハが該表面側に備えるべき該構造物のパターンに関する情報が登録され、該判定部で該判定が実施される際に該情報を該判定部に送る情報登録部と、を備え、
該判定部では、該加工ユニットによる加工前の該判定対象のウェーハを該裏面側から該赤外線カメラユニットで撮影し、該判定対象のウェーハの表面側が写る画像を取得して、該画像に該加工対象のウェーハが該表面側に備えるべき構造物のパターンを発見する場合、該判定対象のウェーハは該加工対象のウェーハであると判定し、該画像に該加工対象のウェーハが該表面側に備えるべき構造物のパターンを発見しない場合、該判定対象のウェーハは該加工対象のウェーハではないと判定し、
該報知ユニットは、該判定部における判定の結果を報知することを特徴とする加工装置。
【請求項2】
該赤外線カメラユニットは、該判定対象のウェーハが該カセット載置領域に載置されたカセットから搬出されてから該チャックテーブルに保持されるまでの経路上で該判定対象のウェーハを撮影することを特徴とする請求項1記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体でなるウェーハを加工する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やコンピュータ等の電子機器に使用されるデバイスチップの製造工程では、まず、半導体でなるウェーハの表面にIC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等の複数のデバイスを形成する。次に、該ウェーハを裏面側から研削して所定の厚みに薄化し、デバイス毎に該ウェーハを分割して個々のデバイスチップを形成する。
【0003】
該ウェーハの研削は、研削装置で実施される。該研削装置は、ウェーハを保持するチャックテーブルと、該ウェーハを研削する研削ユニットと、を有し、該研削ユニットは、スピンドルと、該スピンドルの下端に装着された研削ホイールと、を備える。該研削ホイールの下面には、研削砥石が装着されている。該研削ホイールと、該ウェーハを保持する該チャックテーブルと、を互いに略平行なそれぞれの回転軸を中心に回転させ、該研削ホイールを下降させて該研削砥石を該ウェーハに接触させると、該ウェーハが研削される。
【0004】
該ウェーハの裏面側を研削すると、被研削面には微小な凹凸形状が形成され、形成された破砕層によってチップの抗折強度が低下する傾向にある。そこで、研削された該ウェーハの裏面を研磨して該凹凸形状とともに破砕層を除去する。ウェーハを研磨する研磨装置は、該ウェーハを保持するチャックテーブルと、該被加工物を研磨する研磨パッドと、を備える。そして、該研磨パッドと、該ウェーハを保持するチャックテーブルと、を互いに略平行なそれぞれの回転軸を中心に回転させ、該研磨パッドを下降させて該ウェーハに接触させると該ウェーハが研磨される。
【0005】
ウェーハの研削及び研磨は、該研削装置と、該研磨装置と、の機能を併せ持つ装置(特許文献1参照)で実施してもよい。該装置は、研削ホイールと、研磨パッドと、を備え、研削ホイールでウェーハを研削し、さらに、研削された該ウェーハを該研磨パッドで研磨する。
【0006】
これらの加工装置では、チャックテーブルで該ウェーハの表面(デバイス形成面)側を保持して該ウェーハの裏面(デバイス非形成面)側を上方に露出し、該裏面側を予め該加工装置に入力された加工条件で加工する。該加工条件は、ウェーハの種別や形成しようとするデバイスチップの種別等により適切に選択される。加工装置に入力される加工条件等は、例えば、該ウェーハの直径や厚さ、加工による該ウェーハの仕上がり厚さ、研削ホイールや研磨パッドの回転数、チャックテーブルの回転数、加工送り速度等である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−226625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
該加工装置では、何らかの原因で該チャックテーブルに加工対象ではない種別のウェーハを搬送してしまう場合がある。加工対象のウェーハではない種別のウェーハに対して、該加工装置に入力した加工条件で加工を実施すると、所望の加工結果が得られない。そのため、加工装置に搬入されたウェーハが加工対象のウェーハであるか否か、加工を実施する前に判別することが望まれる。
【0009】
該ウェーハの表面にはデバイス等の構造物が形成されており、該表面を観察して該表面に形成されている該構造物を確認できれば該ウェーハの種別を判別できる。しかし、一般的に該ウェーハの裏面側にはデバイス等の構造物が形成されないため、裏面側が上方に向いた状態でチャックテーブルに保持されるウェーハの該裏面側を観察しても該ウェーハの種別を判別するのは困難である。
【0010】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、搬入されたウェーハが、加工対象のウェーハであるか否かを判定できる加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、表面側に構造物が形成されたウェーハの裏面側を研削又は研磨する加工装置であって、該表面側が下方に向けられた状態の該ウェーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された該ウェーハの上方に露出した該裏面側を研削又は研磨する加工ユニットと、該ウェーハを収容するカセットが載置されるカセット載置領域と、該カセット載置領域に載置された該カセットから該ウェーハを搬出し、該チャックテーブルへ搬送する搬送ユニットと、該ウェーハを該裏面側から撮影し、該表面側が写る画像を取得する赤外線カメラユニットと、各種情報を報知する報知ユニットと、各構成要素を制御する制御ユニットと、を備え、該制御ユニットは、該カセット載置領域に載置された該カセットから搬出される判定対象のウェーハが加工対象のウェーハであるか否かを判定する判定部と、該加工対象のウェーハが該表面側に備えるべき該構造物のパターンに関する情報が登録され、該判定部で該判定が実施される際に該情報を該判定部に送る情報登録部と、を備え、該判定部では、該加工ユニットによる加工前の該判定対象のウェーハを該裏面側から該赤外線カメラユニットで撮影し、該判定対象のウェーハの表面側が写る画像を取得して、該画像に該加工対象のウェーハが該表面側に備えるべき構造物のパターンを発見する場合、該判定対象のウェーハは該加工対象のウェーハであると判定し、該画像に該加工対象のウェーハが該表面側に備えるべき構造物のパターンを発見しない場合、該判定対象のウェーハは該加工対象のウェーハではないと判定し、該報知ユニットは、該判定部における判定の結果を報知することを特徴とする加工装置が提供される。
【0012】
なお、本発明の一態様において、該赤外線カメラユニットは、該判定対象のウェーハが該カセット載置領域に載置されたカセットから搬出されてから該チャックテーブルに保持されるまでの経路上で該判定対象のウェーハを撮影してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係る加工装置は、該ウェーハを裏面側から撮影する赤外線カメラユニットを備える。該赤外線カメラユニットは、該ウェーハを透過する赤外線を捉えることができるため、該ウェーハの表面側が写る画像を取得できる。該画像には、例えば、該ウェーハの表面側に形成されたデバイスや電極等の構造物が写る。
【0014】
また、該加工装置は、判定部と、情報登録部と、を備える制御ユニットを備える。該情報登録部には、加工対象となるウェーハが表面側に備えるべき構造物のパターンに関する情報が登録されている。該判定部は、赤外線カメラに判定対象のウェーハの表面側を撮影させて該表面側が写る画像を取得し、その一方で、該情報登録部に登録された情報を受け取る。
【0015】
該判定部は、該加工対象のウェーハが表面側に備えるべき構造物のパターンを赤外線カメラユニットで取得された画像中に発見する場合に該判定対象のウェーハは該加工対象のウェーハであると判定する。その一方で該構造物のパターンを発見しない場合に該判定対象のウェーハは該加工対象のウェーハではないと判定する。
【0016】
したがって、本発明の一態様により、搬入されたウェーハが、加工対象のウェーハであるか否かを判定できる加工装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】研削装置の構成を模式的に示す斜視図である。
図2図2(A)は、情報登録部に情報として登録された構造物の画像の一例を模式的に示す上面図であり、図2(B)は、赤外線カメラユニットによるウェーハの表面側の撮影の様子を模式的に示す斜視図である。
図3図3(A)は、赤外線カメラユニットによる画像の取得の一例を模式的に示す図であり、図3(B)は、赤外線カメラユニットによる画像の取得の他の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る加工装置は、例えば、シリコン、SiC(シリコンカーバイド)等の少なくとも一部の赤外線を透過する半導体材料からなるウェーハを加工する加工装置である。例えば、本実施形態に係る加工装置は、該ウェーハを研削する研削装置、または、該ウェーハを研磨する研磨装置である。以下、該加工装置が研削装置である場合を例に説明する。図1は、本実施形態に係る研削装置2の構成を模式的に示す斜視図である。
【0019】
研削装置2で研削される半導体材料からなるウェーハ1の表面1aには複数の交差する分割予定ラインが設定されている。該分割予定ラインによって区画される各領域には、複数のIC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイス5(図2(B)参照)が形成されている。また、該ウェーハ1の表面1aには、該デバイス5への電気信号の入出力に寄与する配線層、電極等が形成されている。
【0020】
すなわち、ウェーハ1の表面1aには、該デバイス5、配線、及び電極等の構造物が形成されている。該表面1a側に形成されたデバイス5を保護するために、該ウェーハ1の表面1aには保護テープ3が配設されている。
【0021】
予め該ウェーハ1は、例えば、該分割予定ラインに沿って裏面1b側から該ウェーハ1を透過する波長のレーザビームが照射される。該レーザビームは、ウェーハ1の内部の所定の深さ位置に集光され、集光位置近傍には多光子吸収により改質層が形成される。改質層が形成された状態のウェーハ1に外力が加えられると、該改質層からウェーハ1の厚さ方向に伸長するクラックが形成される。
【0022】
その後、該ウェーハ1が該研削装置2により裏面1b側から研削及び研磨されて薄化されると、該分割予定ラインに沿って形成されたクラックによりウェーハ1がデバイス5毎に分割され個々のデバイスチップが形成される。
【0023】
近年、ウェーハ1から取得されるデバイスチップの数を増やしてデバイスチップの生産性を向上させるべく、例えば、直径300mmの大型のウェーハ1が使用される。該大型のウェーハ1の厚さは、例えば、725μmで比較的厚いため、改質層の形成のために該ウェーハ1の裏面1b側から照射するレーザビームを所望の深さ位置に集光させるのは容易ではない。
【0024】
そこで、レーザビームを照射する前に、厚さが300μm〜600μmとなるようプリグラインドと呼ばれる事前の研削がウェーハ1に実施される場合がある。その後、レーザビームを照射して改質層を形成し、研削装置2によりウェーハ1を所定の仕上がり厚さに薄化する。
【0025】
後述の通り、本実施形態に係る研削装置2では、ウェーハ1の裏面1b側の研削を実施する前に赤外線カメラユニット40によりウェーハ1を裏面1b側から撮影する。このとき、ウェーハ1の裏面1b側が平坦でなく、例えば、梨地面となっている場合、該裏面1bで赤外光が散乱される恐れがあり、明瞭な撮像画像を取得できない恐れがある。これに対して、ウェーハ1がプリグラインドされていると、該裏面1bは平坦となるため、該裏面1b側からウェーハ1を撮像する際に、該裏面1bで赤外線が散乱されにくい。
【0026】
したがって、ウェーハ1は、赤外線カメラユニット40により撮影される前に裏面1b側が平坦化されていることが望ましい。ただし、本実施形態に係る研削装置2で加工されるウェーハ1はこれに限定されない。
【0027】
次に、研削装置2について詳述する。基台4上には、円盤状のターンテーブル6が水平面内において回転可能に設けられている。ターンテーブル6の上面には、円周方向に120度離間して3個のチャックテーブル8が備えられており、ターンテーブル6を回転させることで各チャックテーブル8が、ウェーハ搬入・搬出領域、粗研削領域、仕上げ研削領域、にそれぞれ位置付けられるようになっている。
【0028】
該ウェーハ搬入・搬出領域では、研削前のウェーハ1が該チャックテーブル8上に載置され、また、研削後に該ウェーハが該チャックテーブル8上から取り外される。該粗研削領域では、研削ユニット(加工ユニット)10aを使用して速い加工送り速度でウェーハ1を研削する粗研削を実施する。該仕上げ研削領域では、研削ユニット(加工ユニット)10bを使用して、該粗研削よりも研削後の該被研削面の平坦性が高くなる仕上げ研削を実施する。
【0029】
チャックテーブル8は、一端が吸引源(不図示)と接続された吸引路(不図示)を内部に有し、該吸引路の他端がチャックテーブル8上の保持面8aに接続されている。該保持面8aは多孔質部材によって構成され、該保持面8a上に載せ置かれたウェーハ1に該多孔質部材を通して該吸引源により生じた負圧を作用させて、チャックテーブル8は被加工物を吸引保持する。
【0030】
基台4の後部にはコラム22a,22bが立設されており、このコラム22a,22bにはそれぞれ研削ユニット10a,10bが設けられている。研削ユニット10a,10bは、それぞれ、上端がスピンドルモータ12a,12bに接続され、該スピンドルモータ12a,12bにより回転駆動される鉛直方向に沿って伸長するスピンドル14a,14bを備える。
【0031】
それぞれのスピンドル14a,14bの下端には、ホイールマウント16a,16bが配設され、それぞれの該ホイールマウント16a,16bの下面には、研削ホイール18a,18bが装着される。該研削ホイール18a,18bは研削砥石20a,20bを備えており、チャックテーブル8に保持されたウェーハを研削する。該研削ホイール18a,18bは、それぞれ、加工送りユニット24a,24bにより上下移動されるように構成されている。
【0032】
基台4の前側となる部分はターンテーブル8が設けられた部分よりも一段高く、基台4の前端にはカセット載置台(カセット載置領域)26a,26bが固定されている。例えば、カセット載置台26a上には研削前のウェーハ1を収容したカセット28aが載置され、カセット載置台26b上には研削の終了したウェーハ1を収容するためのカセット28bが載置される。
【0033】
カセット載置台26a,26bに隣接して基台4上にウェーハ搬送ロボット30が据え付けられている。基台4の前側部分には更に、複数の位置決めピンを有する位置決めテーブル32と、ウェーハ搬入機構(ローディングアーム)34と、ウェーハ搬出機構(アンローディングアーム)36と、研削されたウェーハ1を洗浄及びスピン乾燥するスピンナ洗浄装置38と、が配設されている。
【0034】
基台4の上方には、該カセット載置台(カセット載置領域)26aに載置されたカセット28aから搬出されてから該チャックテーブル8に保持されるまでのウェーハ1の経路上に赤外線カメラユニット40が配設される。該赤外線カメラユニット40は、ウェーハ1を裏面1b側から撮影し、該ウェーハ1を透過した赤外線を捉えてウェーハ1の表面1a側が写る画像を取得する。すなわち、該赤外線カメラユニット40は、該ウェーハ1の表面1a側に形成されたデバイス5等の構造物が写る画像を取得できる。
【0035】
次に、研削装置2が備える制御ユニット42について説明する。該制御ユニット42は研削装置2の各構成要素に接続されており各構成要素を制御する機能を有する。該制御ユニット42には、予め加工対象のウェーハ1を加工するための加工条件が入力されており、該制御ユニット42は該加工条件に従って各構成要素を制御する。該加工条件は、例えば、該ウェーハの直径や厚さ、加工による該ウェーハの仕上がり厚さ、研削ホイールや研磨パッドの回転数、チャックテーブルの回転数、加工送り速度等である。
【0036】
また、制御ユニット42は、該カセット載置台(カセット載置領域)26aに載置された該カセットから搬出されたウェーハ1が、研削装置2で加工の対象とするウェーハ1であるか判定する機能を有する。
【0037】
該制御ユニット42は、判定対象のウェーハ1が加工対象のウェーハ1であるか否かを判定する判定部42aと、該加工対象のウェーハ1が該表面1a側に備えるべきデバイス5等の構造物のパターンに関する情報が登録された情報登録部42bと、を備える。該情報登録部42bは、該判定部42aで判定が実施される際に該情報を該判定部42aに送る機能を有する。
【0038】
該情報登録部42bに登録された該情報は、例えば、加工対象の種別のウェーハ1を赤外線カメラユニット40に撮影させることで取得される画像である。該画像は、研削装置2の外部でウェーハ1を撮影することで取得され該情報登録部に送られた画像でもよい。図2(A)は、該情報登録部42bに登録された画像7の一例を模式的に示す上面図である。該画像7には、デバイスや配線、電極等の構造物9が写る。
【0039】
または、該情報登録部42bには、予め、様々な種別のウェーハ1の表面1a側の画像が登録されていてもよい。この場合、該研削装置2のオペレータが該制御ユニット42に加工対象のウェーハ1の種別を入力することで、該情報登録部42bが該判定部42aに送る画像のウェーハ1の種別が決定される。
【0040】
さらに、該情報登録部42bに登録される情報は、画像でなくてもよい。例えば、該ウェーハ1に形成される構造物の特徴的な部分の寸法に関する情報や、該構造物の設計図でもよい。以上のように、該加工対象のウェーハ1が表面側に備えるべき構造物のパターンに関する情報は、赤外線カメラユニット40で取得される画像から該画像に写るウェーハ1が加工対象のウェーハ1であるか否かを判定するのに使用できる各種の情報である。
【0041】
該判定部42aは、判定対象のウェーハ1の判定時に該情報登録部42bから該加工対象のウェーハ1に関する情報を受け取る。また、赤外線カメラユニット40に、判定対象のウェーハ1を裏面1b側から撮影させて、該判定対象のウェーハ1の表面1a側が写る画像を取得する。該判定部42aは、取得された該判定対象のウェーハ1の表面1aが写る該画像に該加工対象のウェーハ1が表面1a側に備えるべき構造物のパターンが有るか否かを判定する。
【0042】
該判定部42aは、該情報登録部42bから受ける情報として該加工対象のウェーハ1の画像を受ける場合、該情報登録部42bから受けた画像と、該赤外線カメラユニット40により取得された画像と、をパターンマッチング等の手法により比較する。
【0043】
該判定部42aは、両者がマッチングする場合、すなわち、該判定対象のウェーハ1に該加工対象のウェーハ1が備えるべき構造物のパターンを発見する場合、該判定対象のウェーハ1は該加工対象のウェーハ1であると判定する。また、両者がマッチングしない場合、すなわち、該判定対象のウェーハ1に該加工対象のウェーハ1が備えるべき構造物のパターンを発見しない場合、該判定対象のウェーハ1は該加工対象のウェーハ1ではないと判定する。
【0044】
研削装置2は、さらに、該判定部42aに接続された報知ユニット44を備える。該報知ユニット44は、警報ランプ、警報ブザー、または、ディスプレイパネルである。該報知ユニット44は、研削装置2の状態等を研削装置2のオペレータに報知する。また、報知ユニット44は、該判定部42aにおける判定の結果を報知する機能を有する。
【0045】
例えば、該判定部42aが、該判定対象のウェーハ1は該加工対象のウェーハ1であると判定する場合、そのまま研削ユニット10a,10bによる研削を実施できるため、該報知ユニット44は警報等を発しないことにより該判定の結果を報知する。また、該判定部42aが、該判定対象のウェーハ1は該加工対象のウェーハ1ではないと判定する場合、所定の加工条件で研削を実施すると所望の加工結果が得られないため、該報知ユニット44が警報等を発することで該判定の結果を報知する。
【0046】
例えば、該報知ユニット44が警報ランプである場合、該報知ユニット44は赤色ランプを点灯させることで警報を発する。また、該報知ユニット44が警報ブザーである場合、該報知ユニット44は警報ブザーを発することで警報を発する。さらに、該報知ユニット44がディスプレイパネルである場合、該報知ユニット44は該判定の結果を表示する。
【0047】
該判定部42aが、該判定対象のウェーハ1は該加工対象のウェーハ1ではないと判定する場合、該研削装置2は、該ウェーハ1に研削加工を実施せず、例えば、カセット載置台26bに載置されたカセット28aに該ウェーハ1を搬出する。
【0048】
本実施形態に係る研削装置2は、判定対象のウェーハ1の表面1a側を撮影できる赤外線カメラユニット40と、判定部42a及び情報登録部42bを含む制御ユニット42と、を備える。そのため、搬入されたウェーハ1が加工対象のウェーハ1であるか否かを判定でき、所定のウェーハ1に所定の加工条件で適切に研削加工を実施できる。
【0049】
以上のように構成された研削装置2により実施されるウェーハ1の加工方法について説明する。
【0050】
まず、カセット載置台26aにウェーハ1が収容されたカセット28aを載置する。次に、カセット28a内のウェーハ1をウェーハ搬送ロボット30によって位置決めテーブル32に搬送して、該位置決めテーブル32により該ウェーハ1を所定の位置に位置付ける。その後、ウェーハ搬入機構34よりウェーハ搬入・搬出領域に位置付けられたチャックテーブル8上に該ウェーハ1を載置する。以上のウェーハ1をカセット28aから搬出してから該チャックテーブル8上に載置するまでの工程を、搬入ステップとする。
【0051】
なお、該ウェーハ1は予め表面1a側に保護テープ3が貼着された状態で、かつ、予め裏面1b側が上方に向けられた状態でカセット28aに収容されている。または、該ウェーハ1は、表面1a側が上方に向けられた状態で該カセット28a収容されており、該ウェーハ搬送ロボット30により表裏が反転されて該位置決めテーブル32に搬送される。
【0052】
ウェーハ1の該加工方法では、該搬入ステップを実施している間に撮影ステップと、判定ステップと、を実施する。該撮影ステップは、例えば、ウェーハ1がウェーハ搬送ロボット30に保持されている状態で実施されてもよく、ウェーハ1が位置決めテーブル32に置かれた状態で実施されてもよい。該撮影ステップでは、該赤外線カメラユニット40により該ウェーハ1を裏面1b側から撮影して判定対象の該ウェーハ1の表面1a側が写る画像を取得する。
【0053】
撮影ステップでは、例えば、まず判定対象の該ウェーハ1を広い視野で捉えられる低倍率のレンズを使用してウェーハ1の表面1a側を捉え、ウェーハ1の表面1a側に形成された各構造物のおおよその位置関係を把握する。次に、該構造物を鮮明に捉えられる高倍率のレンズに切り替えて、後述の判定ステップで判定に使用される領域の該構造物が鮮明に写る画像を取得する。ただし、該撮影ステップは、一つのレンズだけを使用して実施してもよい。
【0054】
なお、該ウェーハ1の表面1a側から該表面1aを撮影しようとする場合、該保護テープ3で赤外線が遮られて該ウェーハ1の表面側に形成された該構造物が取得される画像に写らない可能性がある。
【0055】
該撮影ステップを実施した後、判定ステップを実施する。該判定ステップでは、該判定部42aは該赤外線カメラユニット40から該画像を取得し、該情報登録部42bから加工対象のウェーハ1に関する情報を取得する。該判定部42aは、該画像と、該情報と、から該搬入ステップで搬入されたウェーハ1が該加工対象のウェーハ1であるか否かを判定する。
【0056】
判定の例について説明する。図3(A)は、赤外線カメラユニット40による画像の取得の一例を模式的に示す図である。該情報登録部42bに図2(A)に示す画像7が登録されており、赤外線カメラユニット40により図3(A)に示す画像7aが取得された場合、画像7に写る各構造物9のパターンが画像7aに写る各構造物9aのパターンと一致するため、搬入されたウェーハ1が該加工対象のウェーハ1であると判定される。
【0057】
また、図3(B)は、赤外線カメラユニット40による画像の取得の他の一例を模式的に示す図である。赤外線カメラユニット40により画像7bが取得された場合、情報登録部42bに登録された画像7に写る各構造物9のパターンが画像7bに写る各構造物9bのパターンと一致しないため、搬入されたウェーハが該加工対象のウェーハ1ではないと判定される。
【0058】
該判定ステップを実施した後、報知ステップを実施する。報知ステップでは、該判定部42aの判定結果を報知ユニット44により報知する。該判定ステップで、研削装置2に搬入されたウェーハ1が該加工対象のウェーハ1であると判定された場合、搬入されたウェーハ1をチャックテーブル8上に保持し、研削ユニット10a,10bを用いて該ウェーハ1を研削する研削ステップを実施する。
【0059】
該加工方法によると、該研削装置2に搬入されたウェーハ1が加工対象であるウェーハ1であることを確認してから研削を実施できる。そのため、適切な加工条件でウェーハ1を加工でき、所望の加工結果を得られる。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、研削装置2の情報登録部42bには、加工対象のウェーハ1が備えるべき構造物のパターンに関する情報と併せて、該加工対象のウェーハ1に実施する加工の加工条件が該情報に関連付けられて登録されてもよい。
【0061】
その場合、判定部42aが判定対象のウェーハ1が加工対象のウェーハ1であると判定する際に、制御ユニット42は該情報に関連付けられて該情報登録部42bに登録された該加工条件を研削ユニット10a,10bに送る。該研削ユニット10a,10bでは、該加工条件に従って研削を実施する。
【0062】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0063】
1 ウェーハ
1a 表面
1b 裏面
3 保護テープ
5 デバイス
7,7a,7b 画像
9,9a,9b 構造物
2 研削装置
4 基台
6 ターンテーブル
8 チャックテーブル
8a 保持面
10a,10b 研削ユニット
12a,12b スピンドルモータ
14a,14b スピンドル
16a,16b ホイールマウント
18a,18b 研削ホイール
20a,20b 研削砥石
22a,22b コラム
24a,24b 加工送りユニット
26a,26b カセット載置台
28a,28b カセット
30 ウェーハ搬送ロボット
32 位置決めテーブル
34 ウェーハ搬入機構(ローディングアーム)
36 ウェーハ搬出機構(アンローディングアーム)
38 スピンナ洗浄装置
40 赤外線カメラユニット
42 制御ユニット
42a 判定部
42b 情報登録部
44 報知ユニット
図1
図2
図3