(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記集光レンズ及び前記被加工物の少なくとも一方を前記レンズ光軸に垂直な方向に移動させて前記集光レンズと前記被加工物との相対的な位置合わせを行うアライメント手段を備える、
請求項1又は2に記載の亀裂検出装置。
前記集光レンズ及び前記被加工物の少なくとも一方を前記レンズ光軸に垂直な方向に移動させて前記集光レンズと前記被加工物との位置合わせを行うアライメント工程を備える、
請求項5又は6に記載の亀裂検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0023】
図1は、第1の実施形態に係る亀裂検出装置の概略を示した構成図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係る亀裂検出装置10は、被加工物Wに対して検出光L1を照射し、被加工物Wからの反射光L2を検出することで、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さの測定を行う装置である。なお、亀裂検出装置10は、被加工物Wの内部に改質領域を形成するレーザーダイシング装置(不図示)と組み合わされたものであるが、
図1では、図面の複雑化を避けるため、本発明の説明を行う上で必要な亀裂検出装置に係る構成要素のみを図示している。また、本実施形態においては、亀裂Kの亀裂深さとは、被加工物Wの裏面から亀裂Kの下端位置もしくは上端位置までの距離を示すものとして説明するが、もちろん、これに限定されるものではなく、被加工物Wの表面(検出光照射面)からの距離としてもよい。後述する第2の実施形態においても同様である。
【0024】
図1に示すように、亀裂検出装置10は、光源部14と、照明光学系16と、ダイクロイックミラー18と、集光レンズ20と、ハーフミラー22と、検出光学系24と、光検出器26と、フォーカス調整機構28と、アライメント機構29と、制御部30と、を備えている。なお、被加工物Wは、図示しないステージに載置される。
【0025】
光源部14は、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さを検出するための検出光L1を出射するものである。ここで、被加工物Wがシリコンウェーハの場合、検出光L1には、波長1100nm以長の赤外光を用いるのが望ましい。光源部14は、集光レンズ20のレンズ光軸と同軸である主光軸Pに対して平行であって主光軸Pから一方向(
図1の下側)に偏心した光源光軸Qを有する光源32を備えている。すなわち、光源32は、主光軸Pから偏心した位置から主光軸Pに沿って検出光L1を出射する。なお、光源32は、制御部30と接続されており、制御部30により光源32の出射制御が行われる。
【0026】
照明光学系16は、一対のリレーレンズ40、42と、光源32から被加工物Wに向けて照射される検出光L1の範囲を制限する視野絞り44とから構成されている。一対のリレーレンズ40、42は非テレセントリックなアフォーカル光学系を構成するものであり、視野絞り44は集光レンズ20の集光点と共役な位置となるように配置されている。これにより、検出光L1が被加工物Wの内部における集光レンズ20の像面(集光面)の1点に向かって集光して光スポットを形成するので、不要な反射光や散乱光を低減することができ、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さの検出精度を向上させることが可能となる。なお、光源32から出射された検出光L1がコリメート光(平行光)である場合には視野絞り44を省略してもよい。
【0027】
ハーフミラー22は、照明光学系16とフォーカス調整機構28との間に配置されており、入射光の一部を透過し一部を反射する。すなわち、ハーフミラー22は、光源32から照明光学系16を経由して入射する検出光L1の一部を透過し、その透過光(検出光L1)をフォーカス調整機構28、ダイクロイックミラー18を経由して集光レンズ20に導くとともに、被加工物Wからの検出光L1の反射光L2の一部を反射し、その反射光(反射光L2)を検出光学系24に導く。
【0028】
ダイクロイックミラー18は、主光軸Pを90度折り曲げるものである。すなわち、ダイクロイックミラー18は、光源32からの検出光L1を直角に反射して集光レンズ20に導くとともに、被加工物Wからの反射光L2を直角に反射してフォーカス調整機構28を経由してハーフミラー22に導く。なお、ダイクロイックミラー18の代わりに、全反射ミラーを配置してもよい。
【0029】
集光レンズ20は、被加工物Wに対向する位置に配置されており、光源32から照明光学系16、ハーフミラー22、フォーカス調整機構28、ダイクロイックミラー18を介して入射した検出光L1を被加工物Wの内部に集光する。なお、集光レンズ20のレンズ光軸は主光軸Pと同軸となっている。集光レンズ20により被加工物Wの内部に検出光L1が集光されると、被加工物Wからの反射光L2は、集光レンズ20、ダイクロイックミラー18、フォーカス調整機構28を経由してハーフミラー22で反射され、検出光学系24に導かれる。
【0030】
検出光学系24は、ハーフミラー22で反射した反射光L2を光検出器26に導くためのものであり、1対のリレーレンズ46、48と、被加工物Wからの反射光L2の範囲を制限する視野絞り52とから構成されている。一対のリレーレンズ46、48は非テレセントリックなアフォーカル光学系を構成するものであり、視野絞り52は集光レンズ20の集光点と共役な位置となるように配置されている。視野絞り52は、被加工物Wの表面(検出光照射面)で反射して光検出器26に入射する光を極力抑えることができ、不要な反射光成分を低減して検出精度の向上を図ることができる。
【0031】
光検出器26は、集光レンズ20の集光レンズ瞳20a(
図2参照)と共役な位置となるように配置されており、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの有無に応じて変化する反射光L2を検出するために設けられたものである。光検出器26は、2つに分割された受光面(受光素子)26a、26bを有する2分割フォトディテクタからなり、被加工物Wからの反射光L2を各受光面26a、26bで受光し、各受光面26a、26bで受光した光量に応じた検出信号をそれぞれ制御部30に出力する。なお、光検出器26としては、複数に分割された受光面を有する分割型光検出器であればよく、例えば、2分割フォトディテクタに代えて、4分割フォトディテクタを用いてもよい。光検出器26は、光検出手段の一例である。また、光検出器26の代わりに、赤外線カメラで撮像し、画像処理を行ってもよい。
【0032】
フォーカス調整機構28は、集光点変更手段の一例であり、集光レンズ20の集光点を被加工物Wの厚さ方向(Z方向)に調整するものである。フォーカス調整機構28は、ダイクロイックミラー18とハーフミラー22との間、すなわち、光源部14からの検出光L1と被加工物Wからの反射光L2との共通光路上に配置される。このフォーカス調整機構28は、所定の範囲内で移動する移動レンズを含む複数のレンズからなるフォーカスレンズ群と、フォーカスレンズ群に含まれる移動レンズを主光軸Pに沿った方向に移動させるレンズ駆動部(不図示)とを備え、レンズ駆動部により移動レンズを主光軸Pに沿った方向に移動させることで他のレンズとの間隔を変化させることによって集光レンズ20の集光点を被加工物Wの厚さ方向(Z方向)に変化させる。なお、フォーカス調整機構28(レンズ駆動部)は制御部30に接続されており、制御部30により集光レンズ20の集光点の制御が行われる。
【0033】
なお、本明細書において、集光レンズ20の集光点とは、集光レンズ20により集光された検出光L1の集光点の位置をいう。また、集光レンズ20の集光点の深さ位置(Z方向位置)は、被加工物Wの裏面からの距離で示すものとする。
【0034】
アライメント機構29は、アライメント手段の一例であり、集光レンズ20と被加工物Wとの水平方向(XY方向)における相対的な位置合わせ(アライメント)を行うものである。アライメント機構29は、集光レンズ20をレンズ光軸に垂直な水平方向に微小移動させるレンズ駆動部(不図示)を有している。レンズ駆動部は制御部30に接続されており、制御部30によりレンズ駆動部を制御することで、集光レンズ20と被加工物Wとの水平方向における相対的な位置合わせが行われる。なお、アライメント機構29に代えて、被加工物Wを載置するステージ(不図示)を集光レンズ20に対して相対的に移動させるようにしてもよい。
【0035】
制御部30は、CPU、メモリ、入出力回路部等からなり、亀裂検出装置10の各部の動作を制御する。具体的には、制御部30は、フォーカス調整機構28により集光レンズ20の集光点を被加工物Wの厚さ方向(Z方向)に変化させながら、光検出器26の各受光面26a、26bから出力された検出信号を順次取得し、取得した検出信号に基づいて被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さ(亀裂上端位置又は亀裂下端位置)を検出する処理(亀裂検出処理)を行う。制御部30は、亀裂検出手段の一例である。
【0036】
ここで、本実施形態における亀裂検出処理の原理について説明する。なお、ここでは、亀裂Kの亀裂深さとして亀裂下端位置を検出する場合を一例に説明する。
【0037】
図2は、
図1に示した亀裂検出装置10の照明光学系16及び検出光学系24を含む要部構成の光学的な配置を示した図である。なお、
図2では、図面を簡略化するため、フォーカス調整機構28とハーフミラー22との図示を省略している。
【0038】
本実施形態では、
図2に示すように、光源32からの検出光L1は、主光軸Pに対して偏心した位置から主光軸Pに沿って出射される。そのため、検出光L1は、集光レンズ20の集光レンズ瞳20aの一方側の領域(すなわち、主光軸Pと同軸であるレンズ光軸からずれた位置)に入射する。したがって、集光レンズ20を通過した検出光L1の照射方向は集光レンズ20の像面(集光面)に対して斜め方向となる。すなわち、被加工物Wに対して検出光L1が斜め方向に照射される偏射照明が行われる。なお、集光レンズ20の像面は被加工物Wの表面(検出光照射面)に対して平行となるように配置される。
【0039】
図3A〜
図3Cは、被加工物Wに対して検出光L1の偏射照明が行われたときの様子を示した説明図である。
図3Aは集光レンズ20の集光点に亀裂Kが存在する場合、
図3Bは集光レンズ20の集光点に亀裂Kが存在しない場合、
図3Cは集光レンズ20の集光点と亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)とが一致する場合をそれぞれ示している。
図4A〜4Cは、光検出器26に受光される反射光L2の様子を示した図であり、それぞれ
図3A〜
図3Cに示した場合に対応するものである。
図5は、被加工物Wからの反射光L2が集光レンズ瞳20aに到達する経路を説明するための図である。なお、ここでは、検出光L1は、集光レンズ瞳20aの一方側(
図4の右側)の第1領域G1を通過して、被加工物Wに対して偏射照明が行われる場合について説明する。
【0040】
図3Aに示すように、集光レンズ20の集光点に亀裂Kが存在する場合には、検出光L1は亀裂Kで全反射して、その反射光L2は主光軸Pに対して検出光L1の光路と同じ側の経路をたどって、集光レンズ瞳20aの検出光L1と同じ側の領域に到達する成分となる。すなわち、
図5に示すように、光源32からの検出光L1が集光レンズ20を介して被加工物Wに照射されるときの検出光L1の経路をR1としたとき、被加工物Wの内部の亀裂Kで全反射した反射光L2は、検出光L1の経路R1とは主光軸Pに対して同じ側(
図5の右側)の経路R2をたどって集光レンズ瞳20aの第1領域G1を通過する。この場合、
図4Aに示すように、光検出器26の受光面26a、26bのうち一方の受光面26a側に反射光L2が受光し、受光面26aから出力される検出信号のレベルが高くなる。
【0041】
図3Bに示すように、集光レンズ20の集光点に亀裂Kが存在しない場合には、検出光L1は被加工物Wの裏面で反射し、その反射光L2は集光レンズ瞳20aの検出光L1と反対側の領域に到達する成分となる。すなわち、
図5に示すように、被加工物Wの裏面で反射した反射光L2は、検出光L1の経路R1とは主光軸Pに対して反対側(
図5の左側)の経路R3をたどって集光レンズ瞳20aの第2領域G2を通過する。この場合、
図4Bに示すように、光検出器26の受光面26a、26bのうち他方の受光面26b側に反射光が受光し、受光面26bから出力される検出信号のレベルが高くなる。
【0042】
図3Cに示すように、集光レンズ20の集光点と亀裂Kの下端位置とが一致する場合には、検出光L1は、亀裂Kで全反射して集光レンズ瞳20aの検出光L1と同じ側の領域に到達する反射光成分L2aと、亀裂Kで全反射されずに被加工物Wの裏面で反射して集光レンズ瞳20aの検出光L1と反対側の領域に到達する非反射光成分L2bとに分割される。すなわち、
図5に示すように、反射光L2のうち、被加工物Wの内部の亀裂Kで全反射した反射光成分L2aは、検出光L1の経路R1とは主光軸Pに対して同じ側(
図5の右側)の経路R2をたどって集光レンズ瞳20aの第1領域G1を通過するとともに、亀裂Kで全反射されずに被加工物Wの裏面で反射した非反射光成分L2bは、検出光L1の経路R1とは主光軸Pに対して反対側(
図5の左側)の経路R3をたどって集光レンズ瞳20aの第2領域G2を通過する。この場合、
図4Cに示すように、光検出器26の受光面26a、26bに反射光L2の各成分L2a、L2bがそれぞれ受光し、受光面26a、26bから出力される検出信号のレベルが略等しくなる。
【0043】
このように光検出器26の受光面26a、26bで受光される光量は、集光レンズ20の集光点に亀裂Kが存在するか否かによって変化する。本実施形態では、このような性質を利用して、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置又は亀裂上端位置)を検出することができる。
【0044】
具体的には、光検出器26の受光面26a、26bから出力される検出信号の出力をそれぞれD1、D2としたとき、集光レンズ20の集光点と亀裂Kの亀裂深さとの関係を示す評価値Sは、次式で表すことができる。
S=(D1−D2)/(D1+D2) ・・・(1)
【0045】
式(1)において、S=0の条件を満たすとき、すなわち、光検出器26の受光面26a、26bで受光される光量が一致するとき、集光レンズ20の集光点と亀裂下端位置(又は亀裂上端位置)とが一致した状態を示す。
【0046】
したがって、制御部30は、フォーカス調整機構28を制御して集光レンズ20の集光点を被加工物Wの厚さ方向(Z方向)に変化させながら、光検出器26の各受光面26a、26bから出力される検出信号を順次取得し、取得した検出信号に基づいて式(1)で示される評価値Sを算出し、この評価値Sを評価することによって亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置又は亀裂上端位置)を検出することができる。
【0047】
次に、第1の実施形態に係る亀裂検出装置10を用いた亀裂検出方法について
図6を参照して説明する。
図6は、第1の実施形態に係る亀裂検出装置10を用いた亀裂検出方法の一例を説明したフローチャートである。なお、本実施形態では、集光レンズ20の集光点は被加工物Wの厚さ方向(Z方向)に予め設定された走査間隔Δzで走査が行われ、その走査範囲における各走査位置をZ
i(i=1、2、・・・n)とする(但し、nは自然数とする)。また、集光レンズ20の集光点の走査範囲は検出対象となる亀裂Kの亀裂深さに応じて設定され、例えば、被加工物Wの厚さ方向の全範囲に設定されていてもよいし、その一部範囲に設定されていてもよい。例えば、亀裂Kの亀裂深さとして亀裂下端位置のみを検出する場合には、被加工物Wの深い位置(裏面に近い側)の一部範囲に走査範囲を限定することで検出効率を向上させることができる。
【0048】
(ステップS10)
まず、図示しない操作部により亀裂検出処理の開始が指示されると、制御部30は、アライメント機構29を制御にして、集光レンズ20を水平方向に移動させることにより被加工物Wと集光レンズ20との相対的な位置合わせ(アライメント)を行う(アライメント工程)。
【0049】
(ステップS12)
次に、制御部30は、変数iを1に設定する(i=1)。
【0050】
(ステップS14)
次に、制御部30は、フォーカス調整機構28のレンズ駆動部を制御して、集光レンズ20の集光点をZ
iに設定する。例えば、1回目の走査が行われる場合(i=1の場合)には、集光レンズ20の集光点を走査開始位置Z
1に設定する。2回目以降の走査が行われる場合(i≧2の場合)には、集光レンズ20の集光点の深さ位置(Z方向位置)をZ
i=Z
i-1+Δzに設定する(集光点変更工程)。
【0051】
(ステップS16)
次に、制御部30は、光源部14の光源32を制御して、光源32から検出光L1を出射する(検出光出射工程)。光源32からの検出光L1は、照明光学系16、ハーフミラー22、フォーカス調整機構28、ダイクロイックミラー18を経由して集光レンズ20に導かれる。そして、集光レンズ20に導かれた検出光L1は、集光レンズ20により被加工物Wの内部に集光する(集光工程)。
【0052】
被加工物Wからの反射光L2は、集光レンズ20、ダイクロイックミラー18、フォーカス調整機構28、ハーフミラー22、検出光学系24を経由して光検出器26に導かれる。そして、光検出器26に導かれた反射光L2は、光検出器26の受光面26a、26bで受光され、各受光面26a、26bで受光した光量に応じた検出信号がそれぞれ出力される(光検出工程)。
【0053】
ここで、本実施形態では、光源32は主光軸Pから偏心した位置から主光軸Pに平行な光源光軸Qに沿って検出光L1を出射するので、集光レンズ20により集光された検出光L1は、被加工物Wには集光レンズ20の像面に対して斜め方向に偏射照明が行われる。そのため、光検出器26の受光面26a、26bで受光される光量は、集光レンズ20の集光点に被加工物Wの内部に形成された亀裂Kが存在するか否かによって変化する。
【0054】
(ステップS18)
次に、制御部30は、光検出器26の受光面26a、26bから出力された検出信号D1、D2をそれぞれ取得する。
【0055】
(ステップS20)
次に、制御部30は、ステップS18で取得した検出信号D1、D2に基づき、現在の走査位置(集光レンズ20の集光点)Z
iに対応する評価値S
iを算出する。なお、評価値S
iは、次式(2)によって算出される。なお、制御部30は、算出した評価値S
iを図示しない記憶部に記憶する。
S
i=(D1−D2)/(D1+D2) ・・・(2)
【0056】
(ステップS22)
次に、制御部30は、変数i=nであるか否かを判断する。i=nでない場合(すなわち、変数iがn未満である場合)にはステップS24に進み、i=nである場合にはステップS26に進む。
【0057】
(ステップS24)
ステップS22においてi=nでない場合には、制御部30は、iを1つインクリメントして(i=i+1)、ステップS14に戻り、ステップS14からステップS22までの処理を繰り返し行う。
【0058】
(ステップS26)
ステップS22においてi=nである場合には、制御部30は、ステップS20において走査位置Z
i毎に算出した評価値S
iに基づき、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さを検出する(亀裂検出工程)。
【0059】
具体的には、制御部30は、各走査位置Z
iに対応する評価値S
iの中から、評価値が0(ゼロ)となるときの走査位置(すなわち、集光レンズ20の集光点の深さ位置)を亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置又は亀裂上端位置)として検出する。なお、各走査位置Z
iに対応する評価値S
iの中に0となる評価値が含まれていない場合には、最も0に近い評価値に対応する走査位置を亀裂Kの亀裂深さとして検出するようにしてもよい。
【0060】
なお、各走査位置Z
iに対応する評価値S
iの中に0となる評価値が含まれていない場合には、各走査位置Z
iに対応する評価値S
iを補間処理することによって評価値が0となるときの走査位置を算出し、その走査位置を亀裂Kの亀裂深さとして検出するようにしてもよい。
【0061】
また、各走査位置Z
iに対応する評価値S
iがいずれも同じ極性(プラスまたはマイナス)である場合には集光レンズ20の集光点の走査範囲には亀裂Kは存在しない、あるいは、全ての範囲にわたって亀裂Kが存在すると判定することが可能である。
【0062】
以上のようにして、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さが検出されると、その検出結果は図示しない表示装置(モニタ)に表示され、亀裂検出処理が終了となる。
【0063】
このように本実施形態によれば、集光レンズ20の集光点を被加工物Wの厚さ方向に変化させながら、被加工物Wに対して検出光L1を斜め方向に照射する偏射照明を行い、そのときに光検出器26の受光面26a、26bから出力される検出信号を順次取得し、取得した検出信号に基づいて算出される評価値Sを評価することによって被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置又は亀裂上端位置)を検出することが可能となる。したがって、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さを非破壊かつ精度よく検出することができる。
【0064】
また、本実施形態において、集光レンズ20の集光点を被加工物Wの裏面近傍に固定した状態で(すなわち、集光レンズ20の集光点を被加工物Wの厚さ方向に変化させることなく)検出するようにしてもよい。この場合、被加工物Wの裏面まで亀裂Kが到達しているか否かを簡易に判定することが可能となる。
【0065】
なお、本実施形態では、亀裂Kの亀裂深さとして亀裂下端位置を検出する場合について説明したが、これに限らず、亀裂上端位置も同様にして検出することが可能である。すなわち、例えば、亀裂Kが被加工物Wの裏面まで伸展している場合において、集光レンズ20の集光点の深さ位置を被加工物Wの裏面から徐々に遠ざけていくとすると、被加工物Wの裏面近傍では検出光L1は亀裂Kで全反射して、その反射光L2は主光軸Pに対して検出光L1の光路と同じ側の経路をたどって、集光レンズ瞳20aの検出光L1と同じ側の領域に到達する成分となる。一方、亀裂上端位置よりも上方(被加工物Wの表面に近い側)では検出光L1は被加工物Wの裏面で反射し、その反射光L2は集光レンズ瞳20aの検出光L1と反対側の領域に到達する成分となる。
【0066】
換言すれば、亀裂下端位置を検出する場合と同じ手順で亀裂上端位置も検出可能である。また、被加工物Wからの反射光L2が集光レンズ瞳20aのどちら側の領域に戻るかの情報を用いることにより、亀裂上端位置と亀裂下端位置との識別を行うことが可能である。
【0067】
また、本実施形態における亀裂検出装置10は、上述したように、図示しないレーザーダイシング装置と組み合わされたものであり、集光レンズ20及びダイクロイックミラー18はレーザーダイシング装置のレーザー加工部と共用されるが、これに限らず、レーザーダイシング装置とは組み合わされずに、単独の亀裂検出装置として構成されていてもよい。
【0068】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。以下、第1の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的部分を中心に説明する。
【0069】
まず、第2の実施形態における課題について説明する。
【0070】
上述した第1の実施形態では、アライメント機構29によって集光レンズ20と被加工物Wとの水平方向の相対的な位置合わせ(アライメント)が行われるが、集光レンズ20と被加工物Wとのアライメント精度が十分でない場合には、集光レンズ20の集光点と亀裂Kとの間に水平方向の位置ずれが生じ、亀裂検出処理の検出結果に誤差が発生する要因となる。
【0071】
図7A〜7Cは、亀裂検出処理の誤差要因を説明するための図である。
図7Aは、主光軸P(集光レンズ20の光軸)と亀裂軸(亀裂Kの長手軸)Mとが一致している場合、
図7Bは、主光軸Pが亀裂軸Mに対して一方側にずれた場合、
図7Cは、主光軸Pが亀裂軸Mに対して他方側にずれた場合を示している。
【0072】
図7Aに示すように、主光軸Pと亀裂軸Mとが一致している場合には、集光レンズ20の集光点は亀裂軸M又はその延長線に配置されるため、集光レンズ20の集光点に基づいて亀裂Kの亀裂深さを精度良く検出することができる。すなわち、この場合には、実際の亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)dと集光レンズ20の集光点の深さ位置とが等しくなっており、集光レンズ20の集光点の深さ位置から亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)を正確に検出することが可能である。一方、
図7Bや
図7Cに示すように、主光軸Pが亀裂軸Mに対して水平方向にずれた場合には、集光レンズ20の集光点は亀裂軸M又はその延長線から水平方向に位置ずれした状態となる。このような状態において、集光レンズ20の集光点に基づいて亀裂Kの亀裂深さを検出しようとすると、検出された亀裂Kの深さに検出誤差Δdが発生する。しかも、その検出誤差Δdは集光レンズ20の集光点と亀裂軸Mとの水平方向の位置ずれ量に応じて比例する。例えば、
図7Bに示すように、主光軸Pが亀裂軸Mに対して一方側(
図7Bの右側)にずれた場合には、実際の亀裂Kの下端位置dよりも高い位置である集光レンズ20の集光点の深さ位置d1が亀裂Kの亀裂深さとして検出される。また、
図7Cに示すように、主光軸Pが亀裂軸Mに対して他方側(
図7Bの左側)にずれた場合には、実際の亀裂Kの下端位置dよりも低い位置である集光レンズ20の集光点の深さ位置d2が亀裂Kの亀裂深さとして検出される。
【0073】
このように第1の実施形態における亀裂検出処理では、集光レンズ20と被加工物Wとのアライメント精度が十分でないと、亀裂軸Mに対する主光軸P(集光レンズ20のレンズ光軸)の位置ずれ量に応じた検出誤差Δdが生じる要因となる。
【0074】
第2の実施形態では、集光レンズ20と被加工物Wとのアライメント精度が十分でない場合でも、上述したような検出誤差Δdによる影響をなくして、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さを精度良く検出できるようにしたものである。
【0075】
図8は、第2の実施形態に係る亀裂検出装置の概略を示した構成図である。
図8中、
図1と共通又は類似する構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0076】
図8に示すように、第2の実施形態に係る亀裂検出装置10Aは、光源部14の構成が第1の実施形態とは異なっている。
【0077】
すなわち、第2の実施形態における光源部14は、主光軸Pに対して平行であって主光軸Pから一方向(
図8の下側)に偏心した光源光軸Q1を有する第1光源32と、主光軸Pに対して平行であって主光軸Pから一方向とは反対側の他方向(
図8の上側)に偏心した光源光軸Q2を有する第2光源34とを備えている。第1光源32は、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置又は亀裂上端位置)を検出するための検出光(第1検出光)L1
Aを出射する。第2光源34は、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置又は亀裂上端位置)を検出するための検出光(第2検出光)L1
Bを出射する。なお、第1光源32及び第2光源34は制御部30と接続されており、制御部30により各光源32、34の出射制御が行われる。
【0078】
次に、第2の実施形態における亀裂検出処理の原理について
図9を参照して説明する。
図9は、第2の実施形態における亀裂検出処理の原理を説明するための図であり、亀裂軸Mに対して主光軸Pが水平方向に位置ずれしている場合を示している。
【0079】
図9に示すように、第2の実施形態においては、制御部30の制御に従って、第1光源32及び第2光源34を選択的に切り替えつつ、各光源32、34からそれぞれ出射された検出光L1
A、L1
Bが被加工物Wに対して互いに異なる斜め方向から照射される偏射照明が行われる。
【0080】
ここで、第1光源32からの検出光L1
A(
図9の右側から照射される光束)によって検出される亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)は、実際の亀裂Kの下端位置dよりも低い位置である集光レンズ20の集光点の深さ位置d
Aとなる。また、第2光源34からの検出光L1
B(
図9の左側から照射される光束)によって検出される亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)は、実際の亀裂Kの下端位置dよりも高い位置である集光レンズ20の集光点の深さ位置d
Bとなる。この場合、各検出光L1
A、L1
Bによりそれぞれ検出される亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)d
A、d
Bよりもこれらの位置の平均値(中間値)を亀裂Kの下端位置とする方が実際の亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)の真値により近い値となる。第2の実施形態では、このような原理を利用して亀裂Kの亀裂深さを検出している。これにより、集光レンズ20と被加工物Wとのアライメント精度が十分でない場合でも、亀裂軸Mに対する主光軸Pの位置ずれに伴う誤差を取り除くことができ、上述した第1の実施形態に比べて、亀裂検出処理を精度よくかつ安定して行うことができる。
【0081】
次に、第2の実施形態に係る亀裂検出装置10Aを用いた亀裂検出方法について
図10を参照して説明する。
図10は、第2の実施形態に係る亀裂検出装置10Aを用いた亀裂検出方法の一例を説明したフローチャートである。なお、
図10は、
図6に示した処理内容にステップS11、ステップS27、ステップS28、ステップS30を追加したものであり、共通する処理は説明を簡略化または省略する。ここでは、亀裂Kの亀裂深さとして、亀裂Kの下端位置を検出する場合を一例に説明する。
【0082】
(ステップS10)
まず、制御部30は、アライメント機構29により被加工物Wと集光レンズ20との相対的な位置合わせ(アライメント)を行う。
【0083】
(ステップS11)
次に、制御部30は、変数kを1に設定する(i=1)。
【0084】
(ステップS12〜ステップS24)
次に、制御部30は、変数iを1に設定した後(ステップS12)、集光レンズ20の集光点の深さ位置(Z方向位置)をZ
iに設定し(ステップS14)、被加工物Wに対して偏射照明を実行する(ステップS16)。例えば、k=1である場合には、制御部30は、第1光源32及び第2光源34のうち第1光源32のみをONにして、第1光源32から被加工物Wに対して検出光L1
Aの偏射照明を行う(第1検出光出射工程)。また、k=2である場合には、制御部30は、第1光源32及び第2光源34のうち第2光源34のみをONにして、第2光源34から被加工物Wに対して検出光L1
Bの偏射照明を行う(第2検出光出射工程)。
【0085】
次に、制御部30は、光検出器26の受光面26a、26bから出力された検出信号D1、D2をそれぞれ取得し(ステップS18)、取得した検出信号D1、D2に基づいて評価値S
iを算出する(ステップS20)。なお、制御部30は、算出した評価値S
iを図示しない記憶部に記憶する。
【0086】
次に、制御部30は、i=nであるか否かを判断し(ステップS22)、i=nでない場合にはiを1つインクリメントして、ステップS14に戻り、ステップS14からステップS22までの処理を繰り返し行う。
【0087】
ステップS22においてi=nである場合には、ステップS20において走査位置Z
i毎に算出した評価値S
iに基づき、被加工物Wの厚さ方向における亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)を検出する(ステップS26)。
【0088】
(ステップS27)
次に、制御部30は、k=2であるか否かを判断する。k=2でない場合にはステップS28に進み、k=2である場合にはステップS30に進む。
【0089】
(ステップS28)
ステップS27においてk=2でない場合には、kを1つインクリメントして(k=k+1)、ステップS12に戻り、ステップS12からステップS26までの処理を繰り返し行う。
【0090】
すなわち、第2の実施形態における亀裂検出方法では、光源部14に配置された第1光源32及び第2光源34のうち、1回目の測定(k=1の場合)では第1光源32から被加工物Wに対して検出光L1
Aの偏射照明を行ったときの亀裂Kの亀裂深さd
Aが検出され、2回目の測定(k=2の場合)では第2光源34から被加工物Wに対して検出光L1
Bの偏射照明を行ったときの亀裂Kの亀裂深さd
Bが検出される。
【0091】
(ステップS30)
次に、制御部30は、第1光源32からの検出光L1
Aを用いて検出された亀裂Kの亀裂深さ(第1亀裂深さ)d
Aと、第2光源34からの検出光L1
Bを用いて検出された亀裂Kの亀裂深さ(第2亀裂深さ)d
Bとの平均値d
M(=(d
A+d
B)/2)を真の亀裂深さ(亀裂下端位置)として算出する。なお、制御部30は、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さの検出結果として、上述のようにして算出した真の亀裂深さd
Mを図示しない表示装置(モニタ)に表示する。
【0092】
以上のようにして、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さが検出されると、その検出結果は図示しない表示装置(モニタ)に表示され、亀裂検出処理が終了となる。
【0093】
次に、第2の実施形態における効果を検証するために、
図7に示した亀裂検出装置10Aを用いて評価実験を行った結果について
図11〜
図13を参照して説明する。
【0094】
図11は、第1光源32からの検出光L1
Aが被加工物Wに対して偏射照明が行われたときに検出器50の受光面26a、26bから出力される検出信号の出力を示したグラフである。
図11において、横軸は集光レンズ20の集光点の深さ位置を示し、縦軸は光検出器26の受光面26a、26bから出力される検出信号の出力を示している。また、出力Aは光検出器26の受光面26aから出力される検出信号の出力を示し、出力Bは光検出器26の受光面26bから出力される検出信号の出力を示している。
【0095】
図10に示したフローチャートに従って亀裂検出処理が行われる場合、1回目の測定(k=1)では、集光レンズ20の集光点の深さ位置を順次変化させながら(Z
i=Z
1、Z
2、・・・、Z
n)、検出器50の受光面26a、26bから出力される検出信号が順次取得される。このとき、検出器50の受光面26a、26bから出力される検出信号は、例えば、
図11に示すように、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの有無に応じて出力が変化する。なお、図示は省略したが、2回目の測定(k=2)においても、第2光源34からの検出光L1
Bが被加工物Wに対して偏射照明が行われたときに検出器50の受光面26a、26bから出力される検出信号が
図11に示したグラフと同様にして取得される。
【0096】
図12は、1回目の測定(k=1)で第1光源32からの検出光L1に基づいて算出された評価値S
Aと、2回目の測定(k=2)で第2光源34からの反射光L2に基づいて算出された評価値S
Bを示したグラフである。
図12において、横軸は集光レンズ20の集光点の深さ位置を示し、縦軸は各集光点に対応する評価値S
A、S
Bを示している。
【0097】
図12に示すように、1回目の測定と2回目の測定とでは、評価値S
A、S
Bが0となるときの集光レンズ20の集光点の深さ位置が互いに異なっている(
図12の点T1、T2を参照)。これは、上述したように、亀裂軸Mに対して主光軸Pが水平方向に位置ずれしているために生じる誤差要因となっている。そのため、1回目の測定と2回目の測定のいずれか一方の測定により算出された評価値に基づいて亀裂Kの亀裂深さを検出しようとすると、アライメント精度が十分でない場合には、検出精度の低下を招く要因となる。
【0098】
これに対し、第2の実施形態では、このような検出誤差をなくすため、上述したように、1回目の測定で算出された評価値S
Aに基づいて検出される亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)d
Aと、2回目の測定で算出された評価値S
Bに基づいて検出される亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)d
Bとの平均値d
Mを真の亀裂深さ(亀裂下端位置)として算出している。
【0099】
図13は、主光軸Pと亀裂軸Mとの水平方向の位置関係を変えながら亀裂Kの亀裂深さを測定した結果を示したグラフである。
図13において、横軸は主光軸Pと亀裂軸Mとの水平方向の位置ずれ量を示し、縦軸は亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)を示している。
【0100】
図13に示すように、1回目の測定(k=1)で検出された亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)と2回目の測定(k=2)で検出された亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)は、主光軸Pと亀裂軸Mとの水平方向の位置ずれがない場合には一致し、その位置ずれ量が大きくなるにつれて徐々に誤差が大きくなる。したがって、1回目の測定と2回目の測定のいずれか一方の測定結果を用いて亀裂Kの亀裂深さを検出しようとする場合には、集光レンズ20と被加工物Wとのアライメント精度が高く要求されることになり、アライメント精度が十分でない場合には、検出誤差が大きくなることが
図13に示した結果から分かる。
【0101】
これに対し、第2の実施形態では、1回目の測定(k=1)で検出された亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)と2回目の測定(k=2)で検出された亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)との平均値を真の亀裂深さとしているので、
図13の破線で示したように、主光軸Pと亀裂軸Mとの間に位置ずれが生じている場合でも、主光軸Pと亀裂軸Mとが一致している場合の測定結果と略同様の結果が得られる。
【0102】
このように第2の実施形態によれば、光源部14は主光軸Pから互いに異なる方向に偏心した位置に配置された第1光源32及び第2光源34を備え、各光源32、34を選択的に切り替えつつ、第1光源32からの検出光L1
Aに基づいて検出される亀裂Kの亀裂深さと、第2光源34からの検出光L1
Bに基づいて検出される亀裂Kの亀裂深さとの平均値を亀裂Kの亀裂深さとして求める。これにより、集光レンズ20と被加工物Wとのアライメント精度が十分でない場合でも、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さを精度よくかつ安定して検出することが可能となる。
【0103】
なお、第2の実施形態において、集光レンズ20の集光点の深さ位置を被加工物の厚さ方向に走査するだけでなく、さらに、被加工物Wの厚さ方向に直交する水平方向(XY方向)に走査するようにしてもよい。この場合、
図13に示したように、主光軸Pと亀裂軸Mとが一致したときの測定結果を真の亀裂深さとすることが可能である。
【0104】
(その他の発明の開示)
上述した各実施形態では、被加工物Wの内部に照射される検出光L1は集光レンズ20により集光された集光光束となっているが、例えば、被加工物Wの内部に照射する光束を集光光束とせず、平行光束(細い平行ビーム)とし、その平行光束を瞳位置で検出し、光量比のみで亀裂深さ(亀裂下端位置や亀裂上端位置)を検出するようにしてもよい。
【0105】
図14は、クサビ型プリズムを用いて被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さを検出する方法を説明するための図である。
図15は、クサビ型プリズムの外観を示した概略図である。
【0106】
図14に示すように、クサビ型プリズム70(
図15参照)は被加工物Wに対向するように配置される。クサビ型プリズム70にはその光軸70aに対して一方側(
図14右側)の領域から細い平行ビームL3を入射させる。
【0107】
このとき、被加工物Wの内部に入射した平行ビームL3のうち、一部の光束は、亀裂Kで全反射されずに被加工物Wの裏面で反射し、その反射光は
図14の符号L4aで示すような光束となり、クサビ型プリズム70の光軸70aに対して他方側の領域(入射光束とは反対側の領域)を通る戻り光となる。一方、他の光束は亀裂Kで全反射し、その反射光は
図14の符号L4bで示すような光束となり、クサビ型プリズム70の光軸70aに対して一方側の領域(入射光束と同じ側の領域)を通る戻り光となる。
【0108】
平行ビームL3の入射光束の幅、被加工物Wに対する平行ビームL3の入射角度は既知であるとして、被加工物Wからの反射光(戻り光)L4a、L4bの光量比(強度比)を図示しない光検出器で測定することにより、被加工物Wの裏面から亀裂Kの下端位置までの距離(すなわち、亀裂深さ)の概略値を知ることができる。また、亀裂Kの上端位置についても同様にして概略値を知ることができる。
【0109】
なお、
図14の破線矢印で示すように、被加工物Wの表面での反射光は外乱光となりうるが、クサビ型プリズム70を被加工物Wの表面に十分に近づけておくことで、符号L4aで示す光束からなる反射光(戻り光)との分離が可能となる。
【0110】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。