(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に基づき構成される人事管理システムについて、添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0016】
図1には、本発明に基づき構成される人事管理システムの一例を模式的に示している。本実施形態の人事管理システム1は、部署(部署A〜部署C)毎に割り当てられている端末手段Y1〜Y3と、該端末手段Y1〜Y3が接続される管理サーバ10と、評価部署端末20と、該端末手段Y1〜Y3、評価部署端末20と、該管理サーバ10とを接続する接続手段としての通信ネットワーク2とを含んでいる。なお、図では説明の便宜上、評価対象となる部署を3つのみ示しているが、当然これに限定されるわけではなく、当該企業が、2部署、或いは、これより多数の部署により組織された場合も含む。また、
図1では、一点鎖線を境に、左側に企業内を、右側に当該企業とは会計を異にする外部組織を示す。
【0017】
管理サーバ10は、コンピュータから構成され、高速な中央演算処理装置(CPU)、大規模な記憶手段(RAM、ROM等の主記憶装置、磁気ディスク等の補助記憶装置等)を備えたものであることが好ましいが、これに限定されるものではない。該管理サーバ10には、コントロール手段、口座記憶手段等が備えられており、詳細については、後述する。
【0018】
本実施形態では、説明の便宜上端末手段Y1〜Y3を部署毎に配置した例を示すが、必ずしも部署毎に1台である必要はなく、従業員1人に1台ずつ割り当てるようにしてもよい。該端末手段Y1〜Y3は、パーソナルコンピュータを使用することができるが、これに限らず携帯型のタブレット型端末を使用する等、後述する業務情報を入力し、管理サーバ10に情報を送信できる機能を備えるものであれば、どのような端末を使用することもできる。
【0019】
通信ネットワーク2は、一般的に知られたインターネット回線を利用することができる。インターネット回線を利用することを想定して通信ネットワーク2を構成することで、端末手段Y1〜Y3が当該企業の外部にある状態でも管理サーバ10にアクセスして必要な情報の入力が可能になる。なお、本発明はこれに限定されず、企業内のみに限定したLAN(Local Area Netwaork)回線のみで当該通信ネットワーク2を構成すること、或いはインターネット回線と企業内のLANを組み合わせて構成することも可能であり、有線、無線を含め端末手段Y1〜Y3と管理サーバ10とを接続することが可能なあらゆるネットワーク手段を採用することができる。
【0020】
図に示すように、各部署A〜Cには、各部署A〜Cに所属する従業員(a1〜a12、b1〜b8、c1〜c10)が紐付けされており、被評価対象となる各部署A〜Cと従業員がグループ化されている。なお、本発明における「部署」は、複数の従業員が所属する集合体を指すものであればよく、形式や名称により限定されず、部門、部、課、係、グループ等、いかなる集合体をも含む。
【0021】
図に示すように、管理サーバ10は、金銭の授受が発生することが想定される外部組織G(サプライヤー、官公庁、輸送会社、ユーザー、ライセンサー、ライセンシー等)と通信ネットワーク2を介して接続されており、外部組織Gと当該企業との業務、及び該業務に対する支払い金額の情報が管理サーバ10で管理されるように構成されている。
【0022】
本実施形態における人事管理システム1の管理サーバ10について、
図2を用いてさらに詳細に説明する。管理サーバ10には、少なくとも、コントロール手段12と、口座記憶手段14が備えられている。該コントロール手段12は、本発明に基づき構成されたポイント設定部12a、ポイント交換部12b、外部支出入管理部12c、人事評価部12d、及び残業ポイント管理部12eにより構成される。
【0023】
外部支出入管理部12cは、外部支出管理部121と、外部収入管理部122とから構成され、人事評価部12dは、部署評価部123と、個人評価部124とから構成されている。該コントロール手段12を構成するポイント設定部12a、ポイント交換部12b、外部支出入管理部12c、人事評価部12d、残業ポイント管理部12eは、コンピュータプログラムから構成され、管理サーバ10のメモリに登録され、端末手段Y1〜Y3から入力された情報に基づき、割り当てられた処理を適宜実行する。また、該口座記憶手段14は、磁気ディスク等の補助記憶装置により構成され、ポイント交換部12bにより管理される。
【0024】
人事評価部12dは、口座記憶手段14に記憶された口座のポイント残高の情報を参照しながら部署評価、個人評価を実行するものであり、人事評価部12dによって実行され得られた人事評価の情報は、管理サーバ10にアクセスする端末手段の内、人事評価を担う担当者がアクセスしていることが識別された評価部署端末20からのみ閲覧することができるように設定される。
【0025】
本発明の人事管理システム1は、概ね以上のように構成されており、該人事管理システム1で流通するポイントが、どのようにして各部署の口座に蓄積されるのかについて業務の流れを
図3に、口座の構成については
図4を参照しながら説明する。
【0026】
本発明において扱われる部署の口座の一例が
図4(a)に示されている。部署Aの口座は、部署Aのポイントを管理する部署口座XAと、部署Aに紐付けされた従業員(全12名)に割り当てられ個人の業務遂行により発生するポイントを管理するための個人口座a1〜a12と、から構成されている。
【0027】
部署Bの口座は、上記した部署Aと同様に、部署Bのポイントを管理する部署口座XBと、部署Bに紐付けされた従業員(全8名)に割り当てられ個人の業務遂行により発生するポイントを管理するための個人口座b1〜b8とから構成され、部署Cの口座も上記と同様に、部署Cのポイントを管理する部署口座XCと、部署Cに紐付けされた従業員(全10名)に割り当てられ個人の業務遂行により発生するポイントを管理するための個人口座c1〜c10とから構成されている。ここで、「部署口座」とは、部署、及び所属する従業員に部署外から振り込まれたポイント、及び部署、及び所属する従業員が外部の部署、又は個人口座に振り込んだポイントを管理するための口座であり、「個人口座」とは、従業員個人が業務を依頼し、或いは請け負った業務に関連して交換されたポイントを管理するためのものである。より具体的に言えば、部署口座、又は従業員の個人口座から他の部署に所属する従業員の個人口座にポイントが振り込まれた場合は、振り込まれた従業員の個人口座にポイントが加算されると共に、該ポイントが振り込まれた従業員の個人口座が紐付けされた部署の部署口座にも同額のポイントが加算される。また、部署に所属する従業員の個人口座から他の部署に所属する従業員の個人口座にポイントが振り込まれた場合は、振り込んだ従業員の個人口座からポイントが減算されると共に、振り込んだ個人口座が紐付けされた部署の部署口座からも該ポイントが減算される。そして、部署に所属する従業員の個人口座の間、あるいは部署に所属する従業員の個人口座と部署口座との間においてポイントの交換があった場合は、当該部署の部署口座は変動しない。
【0028】
上述した各口座の残高の情報は、管理サーバ10に備えられた口座記憶手段14に記憶されるものであり、人事評価の対象となる所定の期間の期初、例えば年度の初めにおける各部署の部署口座XA、XB、XC、及び各個人口座a1〜a12、b1〜b8、c1〜c10のポイント残高はすべて0に設定される。そして、各部署A〜Cに割り当てられた端末手段Y1〜Y3によって、各部署、各従業員によって遂行される業務、該業務に応じて設定されるポイント、及び各業務が完了した旨の情報等が入力されることにより、各口座のポイント残高が変化する。実際に業務が発生してから各口座のポイント残高が増減する過程を、より具体的に説明する。
【0029】
先ず、外部組織Gに分類されるユーザーUが、当該企業の製品P(1,000万円)を購入すべく営業を担当する部署Cに発注したものとする(
図3中(ア))。本業務は、外部組織Gからの収入となる業務であるため、本件業務を割り当てられた部署Cに所属する従業員c1が、端末手段Y3から、管理サーバ10内に構成されたコントロール手段12の外部支出入管理部12cの外部収入管理部122にアクセスし、部署Cが1,000万円で製品Pを受注したこと、従業員c1に1,000,000ポイントで当該業務が割り当てられたことを入力する。
【0030】
上記製品Pは、ベースとなる製品に対してユーザーUの要求仕様に合わせたカスタマイズが必要であるため、従業員c1は、ユーザーUの要求仕様に基づくカスタマイズを、設計担当の部署Bの従業員b1に依頼する(
図3中(イ))。この際、従業員c1と、従業員b1との間で、業務に必要な負荷、時間を考慮し、当該設計に係る業務に応じたポイントが設定される。本実施形態では、当該設計業務に応じたポイントを1,000,000ポイントと設定し、請け負った従業員b1は、所属する部署の端末手段Y2から、管理サーバ10のコントロール手段12にアクセスし、ポイント設定部12aに、依頼元の部署情報、当該業務内容、それに応じたポイントを入力する。
【0031】
従業員b1は要求仕様に従いカスタマイズ設計を行い、受注した上記設計業務を完了させる。製品Pの設計図面が完成した旨を従業員c1に報告し(
図3中(ウ))、正式に受領されれば、従業員b1が遂行した業務が完了した旨の情報を、端末手段Y2からコントロール手段12にアクセスして入力する。本件業務は、部署Cから請け負った業務であるため、コントロール手段12のポイント交換部12bは、部署Cの部署口座XCから従業員b1の個人口座b1に対して1,000,000ポイントを振り込むポイント交換を実施する。なお、本実施形態では、部署口座XCから直接個人口座b1にポイントを振り込むようにしたが、これに限定されず、形式的に部署口座Cから担当している従業員である個人口座c1に1,000,000ポイントを振り込み、個人口座c1を経由して部署Bの個人口座b1に振り込むようにしてもよい。この時点では、部署B、部署Cの部署口座XB、XC、従業員b1の個人口座b1は、以下のように変化する。
【0032】
部署B:
部署口座XB=1,000,000ポイント
個人口座b1=1,000,000ポイント
部署C:
部署口座XC=−1,000,000ポイント
【0033】
補足すると、本発明の「ポイント交換部」の作用により、部署口座、又は従業員の個人口座から他の部署に所属する従業員の個人口座にポイントが振り込まれた場合は、振り込まれた従業員の個人口座にポイントが加算されると共に、該従業員が所属する部署の部署口座にも同ポイントが加算されるようになっているため、部署Cの部署口座XCから他の部署Bの従業員b1の個人口座b1に1,000,000ポイントが振り込まれると共に、部署口座XBにも同ポイントが加算されている。
【0034】
完成した設計図面に基づき従業員c1は、製造を担当する部署Aに製品Pの製造を依頼する。従業員b1によって作成された該設計図面は、製造を担当する部署Aに送られ、部署Aが請け負う製品Pの製造業務の負荷、製造に必要な部品代等の製造コストを考慮して8,000,000ポイントが設定され発注される(
図3中(エ))。製品Pの製造は、部署Aに所属する複数の従業員によってなされるものであり、従業員個人ではなく部署Aに発注される。部署Aでは、当該製品Pの製造を担当する担当者として従業員a1〜a4の4名を割り当て、当該製造業務に応じ1人につき500,000ポイントが設定される。そして、該担当者は、部署Aが部署Cから製品Pの製造を8,000,000ポイントで受注したこと、該製造業務を部署A内の従業員a1〜a4に割り当て、従業員a1〜a4が製造に係る業務を500,000ポイントで請け負ったことを、部署Aの端末手段Y1から管理サーバ10にアクセスし、ポイント設定部12aに入力する。なお、本実施形態では、部署Cから部署Aに対して製品Pの製造を依頼したが、例えば、設計を担当する部署Bに対して製造を含めた業務を依頼し、部署Bから部署Aに対して製品Pの製造が依頼されるようにしてもよい。
【0035】
部署Aでは、製品Pを製造するに当たり、部品p1、p2を外部のサプライヤーから購入する必要があるため、外部組織GのサプライヤーSに必要部品p1、p2を600万円で発注する(
図3中(オ))。この業務は、外部組織Gに対する支出を伴うものであるため、コントロール手段12の外部支出管理部12cの外部支出管理部121に業務内容、及び実際の支出予定の金額が登録される。なお、説明の都合上、発注する部品をp1、p2のみで記載したが、実際は複数のサプライヤーに対してより多数の部品が発注されることが想定される。
【0036】
サプライヤーSに発注していた部品p1、p2が部署Aに納品されると(
図3中(カ))、部署Aからは、部品p1、p2に応じた金額600万円がサプライヤーSに支払われる。端末手段Y1から、部品p1、p2が納品され部品p1、p2の代金が支払われた旨の情報がコントロール手段12に入力されると、外部支出管理部121が実行されることにより、口座記憶手段14のポイントを管理するポイント交換部12bに該情報が伝達され、部署Aの部署口座XAから当該代金に相当するポイント=6,000,000ポイントが差し引かれる。この時点では、部署A〜Cの部署口座XA、XB、XC、及び従業員の個人口座b1の残高は、以下のようになる。
【0037】
部署A:
部署口座XA=−6,000,000ポイント
部署B:
部署口座XB=1,000,000ポイント
個人口座b1=1,000,000ポイント
部署C:
部署口座XC=−1,000,000ポイント
【0038】
部署Aにおいて製品Pの製造を担当する従業員a1〜a4は、割り当てられた当該業務を遂行し、製品Pを組み立てて完成させ、ユーザーUとの窓口となる部署Cに納品する(
図3中(キ))。なお、部署A、部署Cは同じ企業内の部署であることから、当該「納品」は、必ずしも製品Pを物理的に部署Cに移動させることを意味せず、製品Pを部署A内に、或いは、当該企業内の所定の完成品置場に保管し、製品Pが完成した旨の報告が部署Cになされることでもよい。そして、製品Pが部署Cに納品された後、製造を担当した部署Aの端末手段Y1から、製品Pの製造業務が完了した旨をコントロール手段12に入力する。これにより、ポイント設定部12aに設定されていたポイントに基づいて、部署Cの部署口座XCから部署Aの部署口座XAに8,000,000ポイントが振り込まれ、それと同時に部署口座XAから部署Aに所属する製造を担当した従業員a1〜a4の個人口座a1〜a4のそれぞれに500,000ポイントが振り込まれる。ここで、本発明に基づき構成されたコントロール手段12では、部署口座から当該部署に所属する従業員にポイントを振り込んだ場合は、部署口座XAの口座を変動させないようにしている。これにより、各口座の残高は以下のようになる。
【0039】
部署A:
部署口座XA=2,000,000ポイント
個人口座a1=500,000ポイント
個人口座a2=500,000ポイント
個人口座a3=500,000ポイント
個人口座a4=500,000ポイント
部署B:
部署口座XB=1,000,000ポイント
個人口座b1=1,000,000ポイント
部署C:
部署口座XC=−9,000,000ポイント
個人口座c1=−9,000,000ポイント
【0040】
上記の口座残高の変化について補足すると、部署Cの部署口座XCから部署Aに振り込まれた8,000,000ポイントは、部署Aの部署口座XAに振り込まれ、該部署口座XAの残高が−6,000,000ポイントから2,000,000ポイントとなる。そして、部署口座XAから、製品Pの製造を担当した従業員a1〜a4の各個人口座a1〜a4に500,000ポイントが振り込まれる。ここで、上述したように、同じ部署内におけるポイントの交換では部署口座を変動させないようにしているので、部署Aの部署口座XAは2,000,000ポイントのままで変化はしない。
【0041】
部署Cは、製品Pの完成を受け、当該製品PをユーザーUに納品する(
図3中(ク))。製品Pを受領したユーザーUは、製品Pの代金として1,000万円を部署Cに支払う。この、納品完了、支払完了情報を従業員c1が端末手段Y3から入力する。ユーザーUから支払われた代金1,000万円は、外部組織Gから支払われる現実の金銭であり、
図3に示す外部収入管理部122が実行されることにより、ユーザーUから1,000万円の収入があった旨の情報がポイント交換部12bに送られ、代金1,000万円に相当する10,000,000ポイントが部署Cの部署口座XCに振り込まれる。それと同時に当該業務が完了したことにより、部署口座XCから、部署Cにおいて当該業務を担当した従業員c1の個人口座c1に1,000,000ポイント振り込まれる。以上で、製品Pが外部組織GのユーザーUから発注され、企業内にて各部署が連携し、最終的に製品PがユーザーUに納入されるまでの業務が遂行されたことになる。これにより、各口座の残高は以下のようになる。
【0042】
部署A:
部署口座XA=2,000,000ポイント
個人口座a1=500,000ポイント
個人口座a2=500,000ポイント
個人口座a3=500,000ポイント
個人口座a4=500,000ポイント
部署B:
部署口座XB=1,000,000ポイント
個人口座b1=1,000,000ポイント
部署C:
部署口座XC=1,000,000ポイント
個人口座c1=1,000,000ポイント
【0043】
なお、上述したポイントの振り込み、交換等は、単なる一例にすぎず、業務に伴ってポイントが振り込まれる際の振り込み先、ポイント額等、ポイント交換の時期は適宜部署、従業員間において調整される。例えば、上述した実施例では、製品Pのカスタマイズ設計を、部署Bの従業員b1に直接依頼したが、従業員b1個人ではなく、部署Bに対して業務を依頼し、適宜部署B内にて必要業務を適任者に振り分けてもらうようにしてもよく、その場合はカスタマイズ設計の対価となるポイントは部署Cの部署口座XCから部署Bの部署口座XBに振り込まれ、部署口座XBから個人口座b1へ業務に応じたポイントが振り込まれることとなる。
【0044】
上述した実施形態においては、業務完了までの過程で、各口座の残高が負の値(マイナス)になることがあった。よって、この途中の段階で評価を行う場合、各従業員が業務を問題なく遂行しているにも係わらず、口座の残高に基づいて評価を実施すると、評価の結果において不公平が生じる場合が想定される。よって、これを防止すべく、業務発生から完了までの間のポイントを一時的に立て替えて振り込む、仮想の「銀行(バンク)」のような役割を担う構成をポイント交換部に備えることもできる。本実施形態でいえば、部署Cの部署口座XCから部署Bの従業員b1の個人口座b1への振り込み、製品Pを製造した部署Aの部署口座XAへのポイント振り込み、或いは、部署Aから外部組織GのサプライヤーSに対する金銭の支払いに伴うポイントの支出を、当該「銀行(バンク)」が立て替えて実施し、各業務の完了に伴いポイントが各口座に振り込まれた時点で、立て替えられていたポイント分を、当該「銀行(バンク)」に返済するようにしてもよい。そのようにすることで、順調に遅滞もなく遂行されている業務であるにも関わらず、評価のタイミングによって不当にマイナスの評価をされることが防止される。
【0045】
上述したように、各部署、従業員が請け負った業務が遂行されることにより、部署口座、個人口座のポイントの残高が増減する。
図4(a)には、所定期間、例えば6ケ月間の業務を遂行することにより蓄積された口座のポイント残高が示されている。なお、
図4(a)では、部署Bを除く部署A、Cについては、全ての個人口座についての残高を示しておらず、一部省略されている。ここで、
図4(a)に示すように、部署Aの部署口座XAの残高は12,000,000ポイントであり、各個人口座の内、最も残高が高い個人口座は個人口座a3の1,250,000ポイント、最も残高が低い個人口座は、個人口座a4の500,000ポイントであったことが理解される。
【0046】
同様に、部署Bの部署口座XBの残高は12,000,000ポイントであり、個人口座の残高が最も高いのは、個人口座b8の1,600,000ポイント、最も低いのは個人口座b2の900,000ポイントであること、さらに、部署Cの部署口座XCの残高は13,000,000ポイントであり、個人口座の残高が最も高いのは個人口座c2の2,500,000ポイント、最も低いのは個人口座c10の900,000ポイントであることが理解される。なお、上述したように、各口座の残高は業務を遂行するに伴い単純に増加するものではなく、業務の発注、受注を互いにし合うことで増減するものである。また、部署口座は、各部署に所属する従業員の個人口座のポイントの他に、部署口座に直接振り込まれたポイントも含んでおり、必ずしも個人口座のポイントの合算とならないことは上述した説明から明らかなとおりである。
【0047】
人事評価部12dの部署評価部123、個人評価部124の作用について説明する。部署評価部123は、所定の期間の部署の評価を実行すべく、所定の期間の期末日における各部署A〜Cの部署口座XA〜XCの残高を当該部署の所属人数(部署A:12名、部署B:8名、部署C:10名)で除算する。これにより、
図4(b)に示されているように、各部署の一人当たりのポイントが算出される。この数値に基づいて部署A〜Cの評価を実施する。
図4(b)の例では、最も高い評価を得るのは、部署Bであり、最も低い評価となるのは、部署Aとなる。このように、単純に部署の部署口座の残高が大きくても必ずしもその部署が高評価とはならず、一人当たりのポイントが高い部署が、効率よく企業の業績に貢献したとして評価されるのである。
【0048】
これに対し、個人の評価は、個人評価部124を実行することで、個人口座のポイントの残高に基づいて実施される。
図4(a)から明らかなように、最も残高が高かった従業員は、部署Cに所属する従業員c2であり、最も低かった従業員は、部署Aに所属する従業員a4であった。このように、部署の評価、及び当該個人口座のポイントの残高に基づいて部署、個人の評価が実施されることになる。
【0049】
ここで、本発明に基づき構成される人事管理システムにおいては、上記した業務実績に応じて交換が行われて変化する部署口座、個人口座のポイントの残高から、さらに残業ポイント管理部12eに基づき算出される残業ポイントを減算するようになっている。当該残業ポイント管理部12eの作用について、
図5、6を参照しながら説明する。
【0050】
図5には、コントロール手段12に記憶されている残業ポイント算出テーブルの一例が示されている。
図5の残業ポイント算出テーブルに示されているように、残業ポイントは以下の式(1)に基づき算出される。
残業ポイント=残業時間係数(0.3〜10.0)×[モデル単価]×残業時間・・・(1)
【0051】
上記式(1)についてさらに詳述する。
「残業時間」とは、周知のとおり、企業内で定められた定時時間を越えて業務を実施した場合の労働時間であり、一般的には月単位で管理されているため、実際には、従業員が1箇月の間に働いた月間業務時間から月間定時業務時間を差し引くことにより算出される。例えば、1日あたりの定時時間を8時間とし、月間の稼働日数が20日である場合、月間定時業務時間は160時間である。よって、実際に働いた月間業務時間が210時間である場合は、残業時間が50時間となる。なお、有給休暇を消化した場合は、月間定時業務時間から有給休暇取得分の時間が差し引かれて、残業時間が算出される。また、残業時間の管理は、例えば、各自に与えられている端末手段から入力されることにより管理されるが、一般的に普及しているタイムカード、或いは、職場への入退室を管理する電子的なカード等から得られる勤務時間情報に基づいて実行されてもよい。
【0052】
上記「モデル単価」とは、従業者に与えられている職務上の等級に応じて設定される基本的な給与額(基本給)から算出される時間当たりの給与単価である。例えば、入社してからの在籍年数、毎年の評価等によって職務上の等級は変化し、職務上の等級が高くなるほど、該モデル単価は大きな値となる。例えば、一般的な従業員におけるモデル単価は、1,200〜3,000の間で設定される。
【0053】
上記「残業時間係数」とは、
図5(a)〜(f)に示すように残業時間の数値の大小に応じて変化する値であり、例えば0.3〜10.0の間で設定される。該残業時間係数は、残業時間が少ない場合は、小さな値が設定され、残業時間が所定の設定時間を超えるごとに大きな値が設定される。以下に、より具体的に残業ポイントを算出する方法を説明する。
【0054】
図6(a)には、
図5に示す残業ポイント算出テーブルに基づいて、部署Bに所属する従業員b1〜b8の月間の残業ポイントを算出する例を示す。該従業員b1〜b8の内、最も職務上の等級が高いのは従業員b1であり、モデル単価は2,500が設定され、以下、従業員b2〜b8についてのモデル単価はそれぞれ2,000〜1,200が設定されている。
【0055】
従業員b1〜b8の残業時間は、
図6(a)の表に示す通り、40h〜140hとなっている。例えば、従業員b1の残業時間は40hであることから、
図5の残業ポイント算出テーブルの(a)の欄の残業時間「0−45」範囲に収まっていることが理解され、残業時間係数は「0.3」となる。よって、従業員b1の残業ポイントは(a)欄の残業ポイント演算式が適用され、以下の式(2)のように算出される。
残業ポイント(b1)=0.3×2,500×40(h)=30,000・・・(2)
【0056】
さらに、従業員b2、b3は、残業時間が60hであり、モデル単価が2,000である。この二人の従業員b2、b3の残業ポイントについて演算する場合、
図5に示す残業ポイント算出テーブルを参照すると、従業員b2、b3の残業時間が(a)の「0−45」の範囲を超え(b)の「45−60」の範囲であることから、45hまでの残業時間については、(a)欄の残業ポイント演算式が適用され、残業時間が45hを超える分(15h)については、(b)欄の残業ポイント演算式が適用される。すなわち、以下の式(3)のようにして算出される。
残業ポイント(b2、b3)=0.3×2,000×45(h)
+2.0×2,000×15(h)=87,000・・・(3)
【0057】
各従業員b4〜b8の残業ポイントを算出する場合は、(a)〜(f)の欄の残業ポイント算出式が適用され、以下のように計算される。
残業ポイント(b4)=0.3×1,500×45(h)
+2.0×1,500×15(h)
+3.0×1,500×20(h)=155,250・・・(4)
残業ポイント(b5、b6)=0.3×1,500×45(h)
+2.0×1,500×15(h)
+3.0×1,500×20(h)
+4.0×1,500×20(h)
+5.0×1,500×20(h)=425,250・・・(5)
残業ポイント(b7)=0.3×1,200×45(h)
+2.0×1,200×15(h)
+3.0×1,200×20(h)
+4.0×1,200×20(h)
+5.0×1,200×20(h)=340,200・・・(6)
残業ポイント(b8)=0.3×1,200×45(h)
+2.0×1,200×15(h)
+3.0×1,200×20(h)
+4.0×1,200×20(h)
+5.0×1,200×20(h)
+10.0×1,200×20(h)=580,200・・・(7)
【0058】
算出された残業ポイントの結果を、
図6(a)の「残業ポイント」欄にも示している。上記した式(2)〜(7)の結果から理解されるように、残業時間が少ないほど、残業時間係数が小さく設定されているため、残業時間当たりの残業ポイントは少なく算出される。逆に、残業時間が多いほど、残業時間係数が大きくなるように設定されているため、時間当たりの残業ポイントも大きくなる。また、残業時間が増加するに従って大きくなる残業時間係数の増加率は一様ではなく、45hを超える場合、120hを超える場合に、その増加率が大きくなるように設定されており、この増加率は、企業の人事管理者の政策的な観点から決定される。なお、上記した残業時間例は、あくまでも残業ポイントの算出方法を説明するための事例であって、従業員が実際に80hを超えるような残業を行うことは、人事管理上も推奨されない。
【0059】
上記した各式(2)〜(7)によって算出された従業員b1〜b8の残業ポイントは、
図4(a)に示されている個人口座b1〜b8の残高から減算される。すなわち、
図6(b)の左側に示す残業ポイントが考慮されない個人口座の残高は、
図6(b)の右側に示された残高へ減少する。従業員が残業した場合は、従業員には残業代が支払われるため、減算されたポイントは、例えば、残業代を支払う部署である経理部、或いは残業を管理する人事部の部署口座へと振り込まれる。また、各個人口座b1〜b8から減算されたポイントは、部署口座XBからも減算され、部署口座XBの残高は、12,000,000から、9,869,850に減少し、部署Bの部署口座の1人当たりのポイント残高が1,233,731/人となる(小数点以下は切捨て)。
【0060】
以上説明したように、従業員が残業した場合は、業務の遂行によって得られるポイントから、残業した時間に応じて設定される残業ポイントが減算される。この残業によって減算された場合の影響について、
図4、6を参照しながら説明する。なお、説明の都合上、ポイント残高の蓄積期間を6ケ月とするが、その間、便宜的に部署Aと、部署Cの従業員は残業をしなかったものとし、部署Bは、上記した1ケ月間のみ上記した時間だけ残業をしたものとして説明する。
【0061】
上述したように、残業による減算が無い場合は、
図4(b)に示したように、部署に所属する従業員1人当たりのポイント残高は、部署Bが一番高くなる。よって、そのままであれば、部署Bが最も高い評価を受けることになる。しかし、上記したように、各従業員b1〜b8の残業ポイントが減算されることにより、結果として部署Cの1人当たりのポイント残高よりも小さい値となり、部署Bは、部署Cよりも低い評価となる。また、部署Bの従業員b8は、部署B内で最も高いポイントの残高を保有していたものの、残業ポイントが減算されることにより3番目のポイント残高となり、また、残業をせずに業務を遂行した他部署の従業員と比べても格別に高いものといえなくなり、従業員b8は残業ポイントが減算された後のポイント残高に応じた評価を受けることになる。
【0062】
このようにして残業ポイントを減算して得られた部署口座、個人口座の残高に基づいて、人事評価がなされ、例えば、昇級に向けた評価や、賞与金額の算定等が実施される。なお、必ずしも当該ポイントの残高にのみに基づいて賞与の全額が算定される必要はなく、全従業員に対して共通の算定式にて支払われる基礎部分、例えば、基本月給×2か月分に、上述した口座の残高に基づく評価によって算定された金額が賞与の一部として加算されることにしてもよい。また、個人口座の残高の数値をそのまま評価としても良いが、閾値となるポイント値を複数設定し、個人口座の残高を該閾値と比較することで、例えば5段階の評価に振り分けてもよい。さらに、部署毎に業務内容が著しく異なり、個人口座の残高に基づいて部署間を越えて一律に従業員を評価することが好ましくない場合は、個人口座のポイント残高に基づいて部署内における各従業員の評価のみを実施して昇級の評価としたり、部署評価に基づき各部に配分された賞与の原資を、この個人口座に基づく評価に基づいて配分したりしてもよい。
【0063】
本発明に基づく人事管理システムの人事評価が行われると、従業員は、いかにして残業時間を増大させずに、目的の業務を達成するのかを自発的に考えることになる。また、各部署を統括する管理者は、残業時間が増大して残業ポイントを算出する際の残業時間係数が高くなることを抑制すべく、従業員が行う業務の効率化をより推進することになる。さらに、特定の個人に業務が集中することにならないように、自然に業務負担の平準化が図られることになり、部署内の業務の効率化が図られ、結果的に企業そのものの業務の効率化が図られることになる。
【0064】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲で種々の変形例が想定され得る。例えば、
図5に示した残業ポイント算出テーブルでは、残業時間が「0−45(h)」の場合の残業時間係数を0.3として設定したが、例えば繁忙期等が長引き、やむを得ず残業をすることが多少許容されるべきであると判断される場合は、残業時間が「0−45(h)」である場合の残業時間係数を「0」としてもよい。
【0065】
本実施形態では、上述の人事管理システム1上において流通するポイントは、現実に流通する貨幣と同等の数値をそのまま用いたがこれに限定されず、現実に流通する貨幣と切り離し、仮想通貨として考案された独自のポイントとすることができる。なお、現実に流通する貨幣と同等の数値をポイントとして流通させれば、各従業員、或いは部署が企業に対してどの程度貢献したのかが一目瞭然となる効果が得られるので好ましい。また、現実の貨幣と同等のポイントを流通させることにより、業務を外部に依頼するか、企業内部の部署に依頼するかのコスト判断も効率よくでき、無駄なコストを削減することにも繋がる。
【0066】
さらに、本実施形態のコントロール手段12のポイント設定部12bでは、業務が発生する都度、発注者、受注者の間で当該業務の難易度、必要なマンパワー、期間等を考慮した上で交換するポイント額を調整し決定していた。これにより、効率よく業務を遂行する部署、或いは従業員が低いポイントで業務を請け負うことが可能であることが明確になり、依頼しようとする業務の実施に係るコストパフォーマンスに優れた部署、或いは従業員を容易に選択することが可能となる。他方、依頼する業務が、定型業務、或いは定型業務の組み合わせであれば、該業務に相応しいポイント額を、ポイントテーブル等で予め定めておき、端末手段から業務種類を入力するたけでポイントが自動的に設定されるようにしてもよい。このようにすれば、ポイントを設定する際のミスや、定型業務であるにも係わらず、依頼する従業員によって必要なポイントが異なってしまう等の不公平が生じる問題を回避することができる。
【0067】
また、上述した実施形態の説明においては、外部組織Gとの間における金銭の支出、収入の例として、ユーザーU、サプライヤーSとのやり取りについて説明したが、企業活動における外部組織Gとの間における支出、収入は、他にも様々な例が想定される。例えば、企業において特許出願を扱う部署では、出願業務を遂行する過程で外部組織G、例えば特許庁に対する支出が頻繁に生じる。また、製品の納品に係る輸送を外部の輸送会社に委託した場合は、輸送費用が外部組織G(輸送会社)に対する支出として管理される。さらに、企業が所有する不動産の管理を行う部署であれば、当該不動産を借りているテナントからのテナント料が、外部組織Gからの収入として管理され得る。そして、それぞれの支出、収入に応じたポイントが、当該業務を担当する部署の部署口座から差し引かれたり、振り込まれたりするのである。
【0068】
上述した本実施形態では、企業内の管理サーバ10にコントロール手段12、口座記憶手段14を配設した例を示したが、該コントロール手段12、口座記憶手段14が現実に配設される場所は特に限定されない。昨今では、災害時等における情報の喪失等を回避するため、企業の外部にサーバを分散して配置することも行われており、通信ネットワーク2を介して企業の外部に配置されたサーバに該コントロール手段12、口座記憶手段14を登録し、人事管理システムを構成することができる。