【実施例】
【0021】
以下、本発明の一実施例に係る研削装置1について、図面に基づいて説明する。なお、以下の実施例において、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0022】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0023】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。なお、本実施例において、「上」、「下」の語は、鉛直方向における上方、下方に対応するものとする。
【0024】
図1は、ドレスユニット8を省略した研削装置1の基本的構成を示す側面図である。
図2は、研削装置1の平面図である。
図3は、ウェハチャック3を示す
図2のI−I線一部切欠側面図である。
図4は、ドレスユニット8を示す平面図である。
図5は、ドレスユニット8及びドレスユニット傾斜機構9の内部構造を示す
図4のII−II線一部切欠側面図である。
図6は、ドレスユニット8の一部の内部構造を示す縦断面図である。
【0025】
研削装置1は、研削手段2でウェハWを裏面研削して薄膜に形成する。研削手段2は、研削砥石21と、研削砥石21を先端に取り付けたスピンドル22と、スピンドル22を鉛直方向Vに送るスピンドル送り機構23と、を備えている。
【0026】
研削砥石21は、スピンドル22の先端に水平に取り付けられている。研削砥石21がウェハWに押し当てられることにより、ウェハWが研削される。
【0027】
スピンドル22は、図示しないモータによって回転軸a1を中心として回転方向C1に沿って研削砥石21を回転させる。
【0028】
スピンドル送り機構23は、コラム4とスピンドル22とを連結する2つのリニアガイド23aと、スピンドル22を鉛直方向Vに昇降させる公知のボールネジスライダ機構(不図示)と、を備えている。
【0029】
研削手段2の下方には、保持手段としてのウェハチャック3が配置されている。なお、複数のウェハWを連続して研削加工するために、研削装置1は、複数のウェハチャック3を備えている。複数のウェハチャック3は、インデックステーブル5の回転軸を中心に円周上で所定の間隔を空けて配置されている。
【0030】
ウェハチャック3は、チャック31と、エアベアリング32と、を備えている。
【0031】
チャック31は、上面にアルミナ等の多孔質材料からなる図示しない吸着体が埋設されている。ウェハチャック3は、チャック31及びエアベアリング32内を通ってチャック31の表面に延びる図示しない管路を備えている。管路は、エアベアリング32のロータ32aに連結された図示しないロータリージョイントを介して図示しない真空源、圧縮空気源及び給水源に接続されている。真空源が起動すると、チャック31に載置されたウェハWがチャック31に吸着保持される。また、圧縮空気源又は給水源が起動すると、ウェハWとチャック31との吸着が解除される。
【0032】
エアベアリング32は、回転軸a2回りに回転可能なロータ32aと、ロータ32aの外周に配置されたステータ32bと、を備えている。ロータ32aとチャック31とは、図示しないボルトで固定されている。ロータ32aは、ロータリージョイントに接続され、回転軸a2を中心にして回転方向C2に沿ってチャック31を回転させる。ロータ32aとステータ32bとの間には、所定の間隙(エアギャップ)が設けられており、この間隙に圧縮空気を外部から供給することにより、ロータ32aがステータ32bに対して非接触で回転することができる。
【0033】
ウェハチャック3は、研削砥石21の回転軸a1に対して回転軸a2を傾斜させるチャック傾斜機構6を備えている。チャック傾斜機構6は、チルトテーブル61と、固定支持部62と、上流側可動支持部63と、下流側可動支持部64と、を備えている。
【0034】
チルトテーブル61は、平面視で略三角形状に形成されている。チルトテーブル61には、固定支持部62、上流側可動支持部63及び下流側可動支持部64が、回転軸a2を中心にして同心円上に120度離れて配置されている。
【0035】
固定支持部62は、チルトテーブル61にボルト62aで締結されている。
【0036】
上流側可動支持部63は、固定支持部62に対してウェハチャック3の回転方向C2の上流側に配置されている。なお、上流側可動支持部63の構造は、下流側可動支持部64と同様であるから、下流側可動支持部64を例にその構造を説明し、上流側可動支持部63に関する説明を省略する。
【0037】
下流側可動支持部64は、固定支持部62に対してウェハチャック3の回転方向C2の下流側に配置されている。下流側可動支持部64は、チルトテーブル61に埋め込まれたナット64aと、インデックステーブル5に固定され、上部がナット64aに螺合するチルト用ボールネジ64bと、チルト用ボールネジ64bを回転させるチルト用モータ64cと、を備えている。下流側可動支持部64は、固定支持部62より鉛直方向Vに長く形成されている。
【0038】
研削装置1は、研削手段2がウェハWを押圧する際の荷重でチルトテーブル61が落ち込んだ沈降量を計測するスケール7を備えている。
【0039】
研削装置1は、研削砥石21をドレスするドレスユニット8を備えている。ドレスユニット8は、ドレスボード81と、ドレスベース機構82と、ドレスユニット送り機構83と、を備えている。
【0040】
ドレスボード81は、研削砥石21に対向するように配置されて研削砥石21をドレスするドレス材81aと、ドレス材81aを支持するドレス台金81bと、を備えている。ドレス材81aは、研削砥石21よりも高度の小さい材料であり、例えばホワイトアルミナ及び結合剤で形成されている。
【0041】
ドレスベース機構82は、ドレスボード81を回転可能に支持している。具体的には、ドレスベース機構82は、回転軸a3回りに回転可能なロータ82aと、ロータ82aの外周に配置されたステータ82bと、ロータ82aに連結されてドレスボード81を支持するベース部材82cと、を備えている。
【0042】
ロータ82aは、図示しないロータリージョイントに接続され、回転軸a3を中心にして回転方向C3に沿ってドレスボード81及びベース部材82cを回転させる。ロータ82aとステータ82bとの間には、所定の間隙(エアギャップ)が設けられており、この間隙に圧縮空気を外部から供給することにより、ロータ82aがステータ82bに対して非接触で回転することができる。
【0043】
また、ドレスベース機構82には、ロータ82a内を通ってベース部材82cの表面に延びる後述する真空吸着溝82eに接続される管路を備えている。管路は、ロータ82aに連結されたロータリージョイントを介して図示しない真空源及び圧縮空気源に接続されている。
【0044】
ベース部材82cのドレス台金81bに対向する表面82dには、4列の真空吸着溝82eが回転軸a3回りに同心円状に刻設されている。真空源が起動すると、真空吸着溝82eを介してドレス台金81bがベース部材82cに真空引きされて、ドレスボード81がベース部材82cに吸着保持される。また、圧縮空気源が起動すると、真空吸着溝82eを介してドレス台金81bとベース部材82cとの間に圧縮空気が導入されて、ドレスボード81とベース部材82cとの吸着が解除される。
【0045】
ベース部材82の表面82dには、凹部82fに嵌入された位置決めピン82gが突設されている。位置決めピン82gは、ドレス台金81bの裏面81cに凹設された凹部81dに係合している。
【0046】
ドレスユニット送り機構83は、ベーステーブル95に連結された2つのリニアガイド83aと、ベーステーブル95を鉛直方向Vに昇降させる公知のボールネジスライダ機構83bと、を備えている。すなわち、リニアガイド83a及びボールネジスライダ機構83bは、スピンドル送り機構23と平行に配置されている。
【0047】
また、ドレスユニット8は、ドレス材81aの厚みを測定するタッチセンサ84を備えている。タッチセンサ84は、旋回中心84a回りに搖動可能に設けられている。
【0048】
また、ドレスユニット8は、ドレス材81aの表面にクーラント水を供給するノズル85を備えている。なお、ノズル85にクーラント水を広範囲に散水可能なフレアタイプを採用して、研削砥石21及びタッチセンサ84に当てる構成であって構わない。
【0049】
ドレスユニット8は、研削砥石21の回転軸a1に対して回転軸a3を傾斜させるドレスユニット傾斜機構9を備えている。ドレスユニット傾斜機構9は、チルトテーブル91と、固定支持部92と、上流側可動支持部93と、下流側可動支持部94と、を備えている。
【0050】
チルトテーブル91には、固定支持部92、上流側可動支持部93及び下流側可動支持部94が、回転軸a3を中心にして同心円上に120度離れて配置されている。
【0051】
固定支持部92は、チルトテーブル91とベーステーブル95とを鉛直方向Vに連結するボルトである。なお、
図5中の符号92aは、チルトテーブル91とベーステーブル95との間に介装された球面座金である。
【0052】
上流側可動支持部93は、固定支持部92に対してドレスボード81の回転方向C3の上流側に配置されている。なお、上流側可動支持部93の構造は、下流側可動支持部94と同様であり、上流側可動支持部93に関する説明を省略する。
【0053】
下流側可動支持部94は、固定支持部92に対してドレスボード81の回転方向C3の下流側に配置されている。下流側可動支持部94は、調整つまみ94aと、チルト用ボールネジ94bと、を備えている。
【0054】
調整つまみ94aは、円筒状に形成されており、先端がチルトテーブル91に嵌合されている。調整つまみ94aには、挿通孔94cが形成されている。
【0055】
チルト用ボールネジ94bは、挿通孔94cに挿通され、先端がベーステーブル95に嵌合されている。チルト用ボールネジ94aと調整つまみ94bとの間には、ばね94dが介装されている。チルト用ボールネジ94bが回転すると、チルト用ボールネジ94bが螺進した分だけ、チルトテーブル91が上昇するように構成されている。
【0056】
研削装置1の動作は、制御装置10によって制御される。制御装置10は、研削装置1を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。制御装置10は、例えば、CPU、メモリ等により構成される。なお、制御装置10の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作することにより実現されても良い。
【0057】
制御装置10は、図示しない厚みセンサが計測したウェハWの厚みに基づいて、所望のウェハ厚を得られるように、回転軸a2を回転軸a1に対して傾斜させて、研削砥石21がウェハWを研削する加工範囲を調整する。なお、厚みセンサは、研削装置1の構成に含まれるものに限定されず、例えば、研削装置1の外部装置で計測されたデータを制御装置10にフィードバックさせるものであっても構わない。上流側可動支持部63及び下流側可動支持部64がそれぞれ独立して鉛直方向Vに沿って伸縮し、チルトテーブル61が固定支持部62を基準として傾斜することにより、回転軸a2を傾斜させることができる。
【0058】
制御装置10には、回転軸a1に対する回転軸a2の角度(チルト角)、すなわち研削砥石21に対するウェハWの接触角度に応じたウェハWの研削量のデータが記憶されている。これにより、研削前のウェハWの厚み又は研削中のウェハWの厚みを計測し、この厚みと所望のウェハの厚みの差分から研削量及び回転軸a1に対する回転軸a2のチルト角を調整する。また、回転軸a1に対する回転軸a3の角度(チルト角)に応じた研削砥石21の研削面21aの形状に関するデータが記憶されている。
【0059】
次に、ドレスユニット8の作用について、図面に基づいて説明する。
図7は、ドレスユニット8で研削砥石21をドレスする様子を示す模式図である。
図8は、ドレスユニット8に作用する押圧力の分布示す模式図である。
図9は、押圧力によるドレスボード81の変形が抑制される様子を示す模式図である。
【0060】
ドレスユニット8は、ウェハWを研削した後の研削砥石21の研削面21aをドレスする。具体的には、ウェハWの研削が終了すると、研削砥石21が鉛直方向Vの上方に退避する。その後、ボールネジスライダ機構83bが駆動して、ドレス材81aが研削砥石21の研削面21aに接近する。
【0061】
そして、研削砥石21及びドレスボード81をそれぞれ回転させながら、ドレスボード81を研削砥石21に向けて押し当てることにより、研削砥石21の研削面21aがドレス材81aによってドレスされる。
【0062】
ボールネジスライダ機構83bが、スピンドル送り機構23と平行に配置されていることにより、ボールネジスライダ機構83bが、ドレスボード81を研削砥石21に押し当てる際の鉛直方向Vに沿った押圧力を受けるため、研削砥石21を安定してドレスすることができる。
【0063】
また、ボールネジスライダ機構83bが、研削砥石21の中心Oとスピンドル送り機構23との間に配置されていることにより、リニアガイド83a及びボールネジスライダ機構83bに片持ち支持されたベーステーブル95にドレスボード81を研削砥石21に押し当てる際の鉛直方向Vに沿った押圧力が局所的に作用することが抑制され、リニアガイド83aに片持ち支持されたベーステーブル95が研削砥石21をドレスする際の反力で跳ね上がることが抑制されるため、研削砥石21をさらに安定してドレスすることができる。
【0064】
研削砥石21をドレッシングする際には、クーラント水がドレス材81aの表面に供給される。クーラント水が供給されている状態でドレスボード81が回転することにより、余剰のクーラント水が遠心力で飛散し、ドレス材81aの表面には極めて薄い水膜WFが形成される。水膜WFを形成する一例としては、クーラント水の供給量を0.1〜0.5l/min、ドレスボード81の回転数を400rpm以下に設定することが考えられる。このようにして、タッチセンサ84は、水膜WFを介してドレス材81aに接触するため、タッチセンサ84の摩耗が抑制される。なお、クーラント水は、研削砥石21及びタッチセンサ84に当たるように供給されるのが好ましい。
【0065】
ドレスユニット8の回転軸a3は、ドレスユニット傾斜機構9によって傾斜することにより、研削砥石21の研削面21aを曲面状にドレスすることができる。例えば、上流側可動支持部93及び下流側可動支持部94を伸長させてチルトテーブル91が傾斜することにより、研削砥石21の中心部を外周部より厚い中凸状に研削砥石21の研削面21aを形成することができる。また、上流側可動支持部93及び下流側可動支持部94が収縮してチルトテーブル91が傾斜することにより、研削砥石21の中心部を外周部より薄い中凹状に研削砥石21の研削面21aを形成することができる。
【0066】
また、ウェハチャック3を傾斜させる場合には、チルトテーブル61のチルト角とチルトテーブル91のチルト角とを一致させるようにチルトテーブル91の上流側可動支持部93及び下流側可動支持部94を伸縮させる。研削砥石21の研削面21aをウェハチャック3の傾きに応じて予めドレスすることにより、ドレスボード81の傾きに応じてウェハWの形状を間接的に定めることができる。
【0067】
ドレス台金81bの裏面81cがベース部材82cに真空吸着されていることにより、ドレスボード81は径方向Rに滑り拘束される。したがって、
図8(a)に示すように、ドレスボード81に作用する押圧力が径方向Rに分散して、厚み方向Tへの歪みが軽減される。
【0068】
一方、
図8(b)に示す比較例のように、ドレス台金81bがベース部材82cにボルトBで締結されている場合には、ドレスボード81は径方向Rに固定される。このような場合には、ボルトBがドレスボード81に作用する押圧力を集中して受けるため、厚み方向Tへの歪みが生じる。
【0069】
また、
図9に示すように、ドレスボード81に作用する押圧力でドレス台金81bが体積一定のまま変形しようとするとき、すなわち、厚み方向Tに薄く径方向Rに拡がるように変形しようとするときであっても、ドレス台金81bの裏面81cがベース部材82cに真空吸着されていることにより、ドレス台金81bの径方向Rへの拡がりを抑制し、ドレス台金81bの厚み方向Tへの歪みが軽減される。
【0070】
このようにして、上述した研削装置1は、ドレスボード81が真空漏れすることなくベース部材82cに真空吸着されることにより、ドレスボード81とベース部材82cとの間に研削屑が介在しないことを間接的に確認でき、ドレスボード81をベース部材82cに正しい姿勢で取り付けることができる。
【0071】
また、ドレスボード81をベース部材82cにボルト等を用いて固着する場合に比べて、ドレスボード81をベース部材82cに載せて真空吸着させるだけでドレスボード81をベース部材82cに簡便に取り付けることができる。
【0072】
さらに、位置決めピン82gが凹部81dに係合することにより、ベース部材82cに対してドレスボード81を正確且つ簡便に取り付けることができる。
【0073】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。