(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
板状の被加工物を保持する保持テーブルを備えた保持手段と、該保持テーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射して加工を施すレーザー光線照射手段と、を少なくとも含み構成されるレーザー加工装置であって、
該保持手段の上部には、該保持テーブルに保持された被加工物の上面との間に隙間を形成して位置付けられる円板状の透明板を備えた液体チャンバーと、該液体チャンバーの一方から該隙間に液体を供給する液体供給ノズルと、該液体チャンバーの他方から液体を排出する液体排出ノズルと、該円板状の透明板を回転させ該隙間に供給される液体に流速を生成する回転手段と、を備えた液体供給機構が配設され、
該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振する発振器と、該発振器が発振したレーザー光線を集光し該透明板と該隙間に供給された液体とを透過して該保持テーブルに保持された被加工物に照射する集光器と、から少なくとも構成されるレーザー加工装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に基づく実施形態に係るレーザー加工装置について、添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0014】
図1には、本実施形態のレーザー加工装置2の斜視図が示されている。レーザー加工装置2は、基台21と、基台21上に配置される被加工物を保持する保持手段30と、基台21上の保持手段30の側方に矢印Zで示すZ方向に立設される垂直壁部221、及び垂直壁部221の上端部から水平方向に延びる水平壁部222からなる枠体22と、保持手段30に配設される液体供給機構40と、水平壁部222の下面に配設されるレーザー光線照射手段6と、を備えている。
【0015】
図2は、保持手段30、液体供給機構40を構成する液体チャンバー41、液体供給ノズル43、及び液体排出ノズル44の各構成を分解して示す分解図であり、各構成について、以下に説明する。
【0016】
図2に示すように、保持手段30は、基台21上に固定される直方体状の保持基台31と、保持基台31の上面31aに配設される円形の保持テーブル32と、を備える。保持テーブル32は、図示しない回動機構により回転することが可能に構成されている。保持テーブル32の中央領域は、通気性を有する材質、例えばポーラスセラミックスにより構成される円形の吸着チャック32aからなる。吸着チャック32aは、図示しない吸引源に接続され、吸着チャック32aに載置される板状の被加工物を吸引保持する。
【0017】
保持手段30の上部には、図に示す液体供給機構40が配設される。すなわち、保持基台31の上面31aには、液体チャンバー41が載置され固定される。液体チャンバー41は、フレーム基部41aと、フレーム基部41aに連結されるコ字状のフレーム41bと、円板状の透明板42と、からなる。フレーム基部41aは、フレーム41bに対し、透明板42の分だけ厚み寸法が大きく形成されている。フレーム基部41aの内側面411は、平面視で透明板42の円弧に沿った形状をなし、透明板42が位置付けられることで、フレーム基部41a及びフレーム41bにより形成される空間41eの上方を閉塞する。フレーム41bのうち、矢印Yで示すY軸方向に位置付けられて対向する2つの側面の一方には、空間41eと外部とを連通する液体供給口41cが配設され、他方の側面には、空間41eと外部とを連通する液体排出口41dが配設されている。液体供給口41c、及び液体排出口41dは、配設された各側面において、水平方向に延びると共に、吸着チャック32aの直径よりも長い寸法で形成される。
【0018】
フレーム41bの液体供給口41cが配設された側面には、液体供給ノズル43が連結される。また、フレーム41bの液体排出口41dが配設された側面には、液体を排出するための液体排出ノズル44が連結される。液体供給ノズル43及び液体排出ノズル44の厚みは、上記したフレーム41bの厚みと略同一になるように形成されている。
【0019】
液体供給ノズル43には、液体が供給される供給口43aと、供給口43aから供給された液体が通過する通路43bと、通路43bを通過した液体が排出される排出口43cと、が備えられる。図中点線で示すように、供給口43aは、液体供給ノズル43の下面に配設され、通路43bは、液体供給ノズル43内部に形成され、排出口43cは、液体チャンバー41の液体供給口41cと対向する位置に液体供給口41cと同一形状で形成される。液体チャンバー41に対し液体供給ノズル43を連結することにより、液体供給ノズル43の排出口43cと、液体チャンバー41の液体供給口41cが一致させられ、液体供給ノズル43の供給口43a、と液体チャンバー41の空間41eと、が連通した状態となる。
【0020】
液体排出ノズル44は、液体供給ノズル43と同一形状で構成され、液体排出ノズル44には、液体が供給される供給口44cと、供給口44cから供給された液体が通過する通路44bと、通路44bを通過した液体が排出される排出口44aと、が備えられる。
図2に示すように、液体排出ノズル44の供給口44cは、液体チャンバー41の液体排出口41dと対向する位置に、液体チャンバー41の液体排出口41dと同一形状で形成される。通路44bは液体チャンバー44の内部に形成され、排出口44aは、液体チャンバー41の下面に配設されている。液体チャンバー41に対し液体供給ノズル43、及び液体排出ノズル44を連結することにより、液体チャンバー41の空間41eを介して、液体供給ノズル43の供給口43aと、液体排出ノズル44の排出口44aと、が連通した状態となる。
【0021】
液体チャンバー41の下面縁部には、全周にわたりパッキンが配設されており(図示は省略する。)、保持基台31の上面31aに液体チャンバー41を載置し、透明板42によって閉じた状態にすることで、保持テーブル32上に略密閉された隙間が形成される。
【0022】
透明板42は、上記したように円板状をなしており、その中心に透明板42を回転させる回転手段(モータM)の回転軸が固定されている。モータMは、
図1に示すように、枠体22の水平壁部222に配設されている。モータMが回転することにより、透明板42が液体チャンバー41を上方から閉塞した状態で、透明板42を矢印R1で示す方向に回転させられる。なお、透明板42は、被加工物を保持テーブル32上に載置したり、保持テーブル32から取り出したりする際には、モータMと共に外方に(
図1に矢印Aで示す方向。)移動させて液体チャンバー41上を開放することができるように構成されている。透明板42は、例えば、ガラス板によって形成される。
【0023】
さらに、
図3を参照しながら、液体供給機構40、及び液体供給機構40の周辺構成について説明する。
図3では、保持テーブル32に、板状の被加工物としてデバイスが表面に形成されたウエーハ10を吸引保持した状態を示している。
図3の上方に、ウエーハ10及び透明板42の一部を拡大した概略断面図として示すように、ウエーハ10と透明板42との間には、0.5mm〜2.0mm程度の隙間Sが形成される。
図3に示すように、本実施形態に係るレーザー加工装置2は、液体供給機構40内に液体が常に供給されるように、液体供給ポンプ45、濾過フィルター46、及び液体貯留タンク47を備えている。液体貯留タンク47は、濾過フィルター46に配設されている。液体供給ポンプ45と液体供給ノズル43とは、第一のホース48aで接続され、液体排出ノズル44と濾過フィルター46とは、第二のホース48bで接続され、濾過フィルター46と液体供給ポンプ45とは、第三のホース48cで接続される。各ホース48a〜48cは、樹脂製のフレキシブルホースで形成されている。
【0024】
上記した構成により、液体供給ポンプ45から吐出された液体Wは、第一のホース48a、及び液体供給ノズル43を介して液体チャンバー41に供給され、液体チャンバー41に供給された液体Wは、液体排出ノズル44を通過して排出される。このとき、透明板42は、モータMによって矢印R1で示す方向に回転させられる。モータMは、液体チャンバー41を通過する液体Wに対して透明板42を回転させて流速を生成する回転手段を構成する。そして、液体排出ノズル44から排出された液体Wは、濾過フィルター46に導かれて濾過され、液体供給ポンプ45に戻される。本実施形態の液体供給機構40においては、液体チャンバー41のフレーム基部41a及びフレーム41bと、保持基台31の上面31aとの隙間や、フレーム基部41a及びフレーム41bと透明板42との隙間等から徐々に液体Wが漏出することが許容されるが、漏出した液体Wを基台21上で回収し、濾過フィルター46に還流させるようにしてもよい。また、上記した漏出により液体Wが減少する場合は、液体貯留タンク47から適宜補填すればよい。なお、液体貯留タンク47は、濾過フィルター46に直付けされており、濾過フィルター46に導かれた液体Wに含まれる気泡を排出する機能も備えている。
【0025】
以上のような構成によって、液体Wは、液体供給機構40、液体供給ポンプ45、濾過フィルター46、及び液体貯留タンク47において循環される。液体チャンバー41を流れる液体Wの流速は、透明板42を回転させる速度や液体供給ポンプ45の圧送効率を調整したり、液体チャンバー41の容積を変更したり、液体供給口41c、及び液体排出口41dの開口面積を調整したりすることによって調整することができ、所定の流速になるように調整されている。
【0026】
次に、
図1、
図4及び
図5を参照しながら、レーザー光線照射手段6について説明する。なお、
図5は、
図4に示すレーザー光線照射手段6の分解斜視図である。
【0027】
レーザー光線照射手段6は、枠体22の水平壁部222の下面に図示しない固定手段により固定される案内板60と、案内板60にY軸方向において移動自在に支持されたY軸方向可動部材62と、Y軸方向可動部材62をY軸方向に移動させるY軸方向移動機構64とを含む。案内板60のX軸方向両端下部には、Y軸方向に延びる一対の案内レール60aが形成されている。
図4、及び
図5に示すとおり、Y軸方向可動部材62は、X軸方向に間隔をおいて配置された一対の被案内部66と、被案内部66の下端間に架け渡されX軸方向に延びる装着部68とを有する。各被案内部66の上部には、Y軸方向に延びる被案内レール66aが形成されている。被案内部66の被案内レール66aと案内板60の案内レール60aとが係合することにより、Y軸方向可動部材62は、Y軸方向に移動自在に案内板60に支持される。また、装着部68のY軸方向両端下部には、X軸方向に延びる一対の案内レール68aが形成されている。Y軸方向移動機構64は、案内板60の下方においてY軸方向に延びるボールねじ70と、ボールねじ70の片端部に連結されたモータ72とを有する。ボールねじ70の門型形状のナット部70aは、装着部68の上面に固定されている。ボールねじ70のモータ72が連結されないもう一方の片端部は、ナット部70aに螺合された後、案内板60の前方縁部に形成された支持片部60bに回転自在に支持される。そして、Y軸方向移動機構64は、ボールねじ70によりモータ72の回転運動を直線運動に変換してY軸方向可動部材62に伝達し、案内板60の案内レール60aに沿ってY軸方向可動部材62をY軸方向に移動させる。
【0028】
図5を参照しながら、レーザー光線照射手段6の説明を続ける。レーザー光線照射手段6は、さらに、X軸方向に移動自在にY軸方向可動部材62の装着部68に装着されたX軸方向可動板74と、X軸方向可動板74をX軸方向に移動させるX軸方向移動機構76とを含む。X軸方向可動板74のY軸方向両端部と装着部68の案内レール68aとが係合することにより、X軸方向可動板74はX軸方向に移動自在に装着部68に装着される。X軸方向移動機構76は、装着部68の上方において、X軸方向に延びるボールねじ78と、ボールねじ78の片端部に連結され一方の被案内部66に支持されたモータ80とを有する。ボールねじ78のナット部78aは、装着部68の開口68bを通ってX軸方向可動板74の上面に固定される。ボールねじ78のモータ80が連結されないもう一方の片端部は、モータ80が固定されない他方の被案内部66に回転自在に支持される。そして、X軸方向移動機構76は、ボールねじ78によりモータ80の回転運動を直線運動に変換してX軸方向可動板74に伝達し、装着部68の案内レール68aに沿ってX軸方向可動板74をX方向に移動させる。
【0029】
さらに、
図5〜
図8を参照しながら、レーザー光線照射手段6の光学系の構成について説明する。
図5に示すように、レーザー光線照射手段6は、枠体22の水平壁部222に内蔵されパルス状のレーザー光線LBを発振する発振器82と、発振器82が発振したレーザー光線LBの出力を調整するアッテネーター(図示は省略する)と、発振器82とY軸方向に間隔をおいてY軸方向可動部材62の装着部68の下面に装着された直角プリズムミラー84と、X軸方向可動板74の下面にZ軸方向に移動自在に装着された集光器86と、集光器86をZ軸方向に移動して集光器86の集光点のZ軸方向を調整する集光点位置調整手段(図示は省略する。)と、を含む。発振器82は、例えば、被加工物に対して吸収性を有する波長(例えば、355nm)のレーザー光線LBを発振するようになっている。
図6に示すように、発振器82からY軸方向に照射されたレーザー光線LBは、直角プリズムミラー84によって90度進行方向が変換され、集光器86に導かれる。
【0030】
図7に示すように、集光器86の上部ハウジング86aの内部には、発振器82が発振したレーザー光線LBを分散させる分散手段としてのポリゴンミラー91及びポリゴンミラー91を矢印R2で示す方向に高速回転させるモータ92と、レーザー光線LBを集光して被加工物に照射する集光レンズ(fθレンズ)86bとを備えている。
図8に示すように、ポリゴンミラー91は、複数枚のミラーMが、ポリゴンミラー91の回転軸に対して同心状に配置されている。fθレンズ86bは、上記したポリゴンミラー91の下方に位置しており、レーザー光線LBを集光して保持テーブル32上の被加工物に照射する。fθレンズには、直角プリズムミラー84から導かれたレーザー光線LBが、回転するミラーMによってX軸方向にその照射方向が分散するように導かれ、被加工物上において、X軸方向の所定範囲に分散して照射される。
【0031】
図5に戻り説明を続けると、X軸方向可動板74の下面には、集光器86と共に、集光器86とX軸方向に間隔をおいて装着されたアライメント手段88が配設されている。アライメント手段88は、保持テーブル32に保持される被加工物を撮像してレーザー加工すべき領域を検出するようになっている。さらに、レーザー光線照射手段6は、図示しない集光点位置調整手段を備えている。集光点位置調整手段の具体的な構成の図示は省略するが、例えば、ナット部が集光器86に固定されZ軸方向に延びるボールねじと、このボールねじの片端部に連結されたモータとを有する構成でよい。このような構成によりモータの回転運動を直線運動に変換し、Z軸方向に配設される案内レール(図示は省略する。)に沿って集光器86を移動させ、これによって、集光器86によって集光されるレーザー光線LBの集光点のZ軸方向の位置を調整する。
【0032】
本発明のレーザー加工装置2は、概ね上記したとおりの構成を備えており、その作用について、以下に説明する。
【0033】
まず、本実施形態で板状の被加工物となる、表面にデバイスが形成されたシリコン(Si)からなるウエーハ10を用意する。ウエーハ10を用意したならば、
図1に示す透明板42を一次的に外方(図中矢印Aで示す方向。)に移動させて、液体チャンバー41上を開放し、保持テーブル32の吸着チャック32a上にデバイスが形成された表面を上にしてウエーハ10を載置する。吸着チャック32a上にウエーハ10を載置したならば、図示しない吸引源を作動して、吸着チャック32a上に吸引力を生成し、ウエーハ10を吸着し保持させる。ウエーハ10を吸着チャック32aに保持したならば、透明板42を液体チャンバー41上に移動して液体チャンバー41上を閉塞した状態とする。
【0034】
ウエーハ10を吸着チャック32aに保持し、透明板42によって液体チャンバー41の上方を閉塞したならば、液体貯留タンク47に対して十分な液体Wを補填し、液体供給ポンプ45、及びモータMを作動する。液体供給機構40に供給される液体Wとして、例えば、純水が利用される。
【0035】
液体供給ポンプ45、及びモータMの作動を開始して、所定時間経過することにより、液体チャンバー41の空間41eが液体Wで満たされると共に、液体Wが、矢印R1で示す方向に回転する透明板42の下面に接することにより加速され、液体Wの流速が生成される。このようにして、液体Wが液体供給機構40内部を安定的に、かつ高速で循環する状態となる。
【0036】
液体供給機構40によって、液体Wが安定的に、かつ高速で循環している状態で、レーザー光線照射手段6のX軸方向移動機構76によりX軸方向可動板74を移動させると共に、Y軸方向移動機構64によりY軸方向可動部材62をY軸方向に移動させ(
図4、及び
図5を参照。)、アライメント手段88を、ウエーハ10の上方に位置付ける。透明板42は、上述したように、保持テーブル32全体を上方から覆うように配設されていることから、アライメント手段88は、ウエーハ10上のデバイスを含む全ての領域を捉えることが可能である。アライメント手段88をウエーハ10の上方に位置付けたならば、アライメント手段88によりウエーハ10を撮像する。この際、ウエーハ10は、透明板42、及び液体Wを介して撮像される。次いで、アライメント手段88により撮像したウエーハ10の画像に基づいて、ウエーハ10と、集光器86との位置合わせを行う。この位置合わせの後に、保持テーブル32を回転させ、かつ、X軸方向移動機構76でX軸方向可動板74を移動させると共に、Y軸方向移動機構64でY軸方向可動部材62を移動させることにより、ウエーハ10上に格子状に形成された分割予定ラインがX軸方向に沿って位置付けられると共に、分割予定ラインの片端部、すなわち、レーザー光線の照射開始位置に集光器86が位置付けられる。次いで、図示しない集光点位置調整手段によって集光器86をZ軸方向に移動させ、ウエーハ10の分割予定ラインにおける片端部の表面高さに集光点を位置付ける。
【0037】
集光器86をZ軸方向に移動して、集光点位置をウエーハ10の表面高さに位置付けたならば、レーザー光線照射手段6を作動させながら、X軸方向移動機構76によってX軸方向可動板74をX軸方向に対して所定の移動速度で移動させる。ウエーハ10にレーザー光線LBを照射してレーザー加工を実施する際は、
図7、
図8に基づいて説明したように、ポリゴンミラー91をモータ92によって適宜の回転速度で回転させる。ポリゴンミラー91を構成するミラーMの位置がポリゴンミラー91の回転と共に変化することで、ウエーハ10に対してレーザー光線LBが分散されて照射される。所定のミラーMにレーザー光線LBが照射された後は、ポリゴンミラー91の回転方向R2における下流側のミラーMにレーザー光線LBが照射され、ウエーハ10に対してレーザー光線LBが分散されて照射される。発振器82からレーザー光線LBが発振され、ポリゴンミラー91が回転している間、このようなレーザー加工が繰り返される。なお、ポリゴンミラー91を構成するミラーMの枚数、ポリゴンミラー91の回転速度等は、被加工物に応じて適宜決定される。
【0038】
上記したレーザー加工装置2におけるレーザー加工条件は、例えば、以下の加工条件で実施することができる。
レーザー光線の波長 :226nm、355nm、532nm、1064nm
平均出力 :10〜100W
繰り返し周波数 :0〜300MHz
パルス幅 :50fs〜1ns
加工送り速度 :10〜1000mm/s
【0039】
本実施形態では、保持テーブル32上に液体供給機構40の液体チャンバー41が載置されており、
図7に示すように、回転する透明板42の作用によって、液体Wが、加工送りされる方向となるX軸方向と直交するY軸方向であって、透明板42の回転方向R1に沿うように流れる。この状態で、レーザー光線LBが、透明板42、及び液体Wを透過してウエーハ10上の分割予定ラインに照射され、アブレーション加工が実施される。ウエーハ10の表面に対してアブレーション加工が施されると、レーザー光線LBが照射される位置にある液体Wに気泡が発生する。本実施形態では、ウエーハ10上に供給される液体Wに対し、透明板42の回転によって流速を生成し、液体Wを速やかに液体排出ノズル44側に流すようになっている(
図1を参照。)ため、レーザー光線LBの照射位置の近傍に発生した気泡は、速やかに液体チャンバー41の下流側に流され除去される。これにより、ポリゴンミラー91を用いてウエーハ10に対してレーザー光線LBを分散させて照射する場合において、アブレーション加工により発生する気泡を避けてウエーハ10にレーザー光線LBを照射することができ、良好なアブレーション加工を継続して実施することができる。さらに、本実施形態によれば、アブレーション加工により、デブリが発生しても、液体チャンバー41内を液体Wが継続して流れていることにより、液体W中に放出されたデブリが速やかに液体チャンバー41から除去される。この液体W中に放出されたデブリは、濾過フィルター46により速やかに捕捉されるため、再び液体チャンバー41に循環されることが防止される。
【0040】
上記したアブレーション加工を所定の分割予定ラインに実施したならば、Y軸方向移動機構64でY軸方向可動部材62をY軸方向に移動させ、集光器86を、隣接した未加工の分割予定ラインの片端部に位置付けて、上記したアブレーション加工と同様のレーザー加工を実施する。そして、隣接する全ての分割予定ラインに対してアブレーション加工を実施したならば、保持テーブル32を90度回転させることで、先に加工した分割予定ラインに直交する未加工の分割予定ラインに対しても同様のアブレーション加工を実施する。このようにして、ウエーハ10上の全ての分割予定ラインに対してアブレーション加工を実施することができる。
【0041】
上記したように、保持テーブル32上には、液体チャンバー41により閉塞された空間41eが形成され、少なくとも保持テーブル32上は、回転する透明板42で覆われる。そして、空間41e内に液体Wを所定の流速で流通させ、回転する透明板42aと、液体Wを介してレーザー光線を照射してレーザー加工を実施する。これにより、ウエーハ10の表面から発生する気泡や、レーザー加工により発生するデブリ等が速やかに除去され、レーザー加工の妨げになることがなく、また、加工後のデバイスにデブリが付着すること等を防止して品質を低下させることがない。
【0042】
上記した実施形態では、基台21上に固定された保持手段30上に被加工物であるウエーハ10を載置し、水平壁部262の下面に配設したレーザー光線照射手段6の集光器86を移動させることにより所望のレーザー加工を行うようにしたが、本発明はこれに限定されず、水平壁部222の下面先端部に集光器86をX軸方向、Y軸方向に対しては固定的に配設し、保持手段30側を集光器86に対してX軸方向、Y軸方向に移動させるようにしてレーザー加工を実施するようにしてもよい。その場合は、回転手段を構成するモータMを保持手段30に設置するようにし、透明板42を保持手段30と共に移動させるようにすればよい。
【0043】
また、上記した実施形態においては、液体供給機構40を、保持手段30の保持基台31の上面31aに配設したが、本発明はこれに限定されず、液体供給機構40を集光器86に設置することによって、保持手段30の上部に配設するようにしてもよい。その場合、集光器86は水平壁部222下面に固定されると共に、回転する透明板42は、
図2、
図3に示すよりも小さな円板状で構成される。そして、保持基台31は、基台21上のX軸方向(加工送り方向)、Y軸方向(割り出し送り方向)に移動するように構成されることが好ましい。
【0044】
なお、上記した実施形態では、透明板42aをガラス板で形成したが、これに限定されず、レーザー光線LBを透過する透明な板であればよく、例えば、アクリル板等、樹脂製の板であってもよい。
【0045】
上記した実施形態では、発振器82から照射されたレーザー光線LBを、ポリゴンミラー91により分散させて集光レンズ86bに導くようにした例を提示したが、これに限定されず、ポリゴンミラー91に代えて、固定して設置される反射ミラーであってもよい。さらに、上記した実施形態では、ウエーハ10になされるレーザー加工は、アブレーション加工である例を提示したが、被加工物の内部に改質層を形成する加工(例えば、特許文献2に記載のレーザー加工。)、所謂シールドトンネルを形成する加工(例えば、特許文献3に記載のレーザー加工。)に適用することを妨げない。