(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
噴霧工程におけるコーティング液(D)の配合量が、ビニルアルコール系重合体(A)100質量部に対して3質量部以上50質量部以下である、請求項1に記載の被覆物の製造方法。
噴霧工程における化合物(B)の配合量が、ビニルアルコール系重合体(A)100質量部に対して0.1質量部以上35質量部以下である、請求項1又は2に記載の被覆物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
ビニルアルコール系重合体(以下、「PVA」と略記することがある)は、従来より、接着剤、紙塗工剤、偏光フィルム、水溶性フィルム、医薬又は化粧品用途組成物、ビニル化合物(例えば、塩化ビニル)の懸濁重合用分散安定剤等に用いられている。
【0003】
各種用途での性能をより一層向上するため、PVAに後変性で特定の官能基を導入することが行われており、該後変性の原料物質の1つとして、特定の官能基を有する低分子化合物をPVAにコーティングした被覆物が使用されている。例えば、特許文献1には、不飽和カルボン酸化合物とPVAとの反応を行う際の原料物質として、不飽和カルボン酸化合物をPVAにコーティングした被覆物が用いられており、具体的に該被覆物はメタノールを用いて不飽和カルボン酸化合物を溶解した後、PVAを浸し、メタノールを乾燥除去することで得られている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、コーティングが不均一なためか、被覆物に融着が生じる、乾燥に長い時間やエネルギーを要し生産性が悪い等の問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はビニルアルコール系重合体に特定の化合物が均一にコーティングされ、融着の低減された被覆物を生産性良く、容易に得る製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、ビニルアルコール系重合体(A)に特定の化合物(B)をコーティングしてなる被覆物の製造方法であって、化合物(B)及び特定の溶媒(C)を含むコーティング液(D)を、ビニルアルコール系重合体(A)に噴霧した後、乾燥させ溶媒(C)を除去する工程を含む被覆物の製造方法により上記課題が解決されることを見出して本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、上記課題は、ビニルアルコール系重合体(A)に化合物(B)をコーティングしてなる被覆物の製造方法であって、分子量が70以上300以下であり、カルボキシ基、エーテル基、エポキシ基及びアミド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する化合物(B)を、溶媒(C)に溶解してコーティング液(D)を得る調液工程、ビニルアルコール系重合体(A)にコーティング液(D)を噴霧して混合物を得る噴霧工程、及び上記混合物から溶媒(C)を除去する乾燥工程、を有する被覆物の製造方法を提供することによって解決される。
【0009】
このとき、混合工程におけるコーティング液(D)の配合量が、ビニルアルコール系重合体(A)100質量部に対して3質量部以上50質量部以下であることが好ましい。また、このとき混合工程における化合物(B)の配合量が、ビニルアルコール系重合体(A)100質量部に対して0.1質量部以上35質量部以下であることも好ましい。
【0010】
さらに、ビニルアルコール系重合体(A)のけん化度が68モル%以上99.9モル%以下であることも好ましい。
【0011】
さらに、溶媒(C)がメタノール又は酢酸メチルを含有することも好ましい。
【0012】
さらにビニルアルコール系重合体(A)が平均粒子径50〜2000μmの粒子であることも好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、ビニルアルコール系重合体に特定の低分子化合物が均一にコーティングされた被覆物を容易に得ることができる。さらに、得られる被覆物は融着が低減されており、使用する溶媒量が少ないため乾燥負荷が低減されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、ビニルアルコール系重合体(A)(以下、「PVA(A)」と略記することがある)に化合物(B)をコーティングしてなる被覆物の製造方法であって、分子量が70以上300以下であり、カルボキシ基、エーテル基、エポキシ基及びアミド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する化合物(B)を、溶媒(C)に溶解してコーティング液(D)を得る調液工程、ビニルアルコール系重合体(A)にコーティング液(D)を噴霧して混合物を得る噴霧工程、及び上記混合物から溶媒(C)を除去する乾燥工程、を有する被覆物の製造方法に関する。なお、本発明における被覆物は、PVA(A)の表面に化合物(B)がコーティングされた物を意味しているが、化合物(B)の一部がPVA(A)の内部に浸透していても構わない。
【0015】
以下、本発明の被覆物の製造方法について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されない。また、本明細書において、数値範囲(各成分の含有量、各成分から算出される値及び各物性等)の上限値及び下限値は適宜組み合わせ可能である。
【0016】
[調液工程]
調液工程では、分子量が70以上300以下であり、カルボキシ基、エーテル基、エポキシ基及びアミド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する化合物(B)を、溶媒(C)に溶解してコーティング液(D)を得る。
【0017】
(化合物(B))
化合物(B)は、分子量が70以上300以下であることが重要である。分子量が70未満であると、沸点が低いため取扱い性が不十分となる。一方、分子量が300を超えると、溶媒(C)への溶解性やPVA(A)に対する親和性が不十分となる。
【0018】
さらに、化合物(B)は、カルボキシ基、エーテル基、エポキシ基及びアミド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を有することも重要である。中でも、得られる被覆物を後変性用途に用いる場合は、反応性の観点から、カルボキシ基又はエポキシ基が好ましい。
【0019】
化合物(B)のうち、カルボキシ基を有する化合物として、例えば、乳酸;没食子酸;イブプロフェン;ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、カプリン酸等の飽和モノカルボン酸又はその誘導体;コハク酸、マロン酸、リンゴ酸等の飽和ジカルボン酸又はその誘導体;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、プロピン酸、2−ペンテン酸、4−ペンテン酸、2−ヘプテン酸、2−オクテン酸、ケイ皮酸、ソルビン酸等の不飽和モノカルボン酸又はその誘導体;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその誘導体等が挙げられる。カルボン酸の誘導体としては、カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物、カルボン酸アルキルエステル等が挙げられる。化合物(B)のうち、エーテル基を有する化合物として、例えばジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等が挙げられ、エポキシ基を有する化合物としてはアリルグリシジルエーテル、スチレンオキシド、ブチレンオキシド、ヘキサンオキシド等が挙げられ、アミド基を有する化合物としてN,N−ジエチル−3−メチルベンズアミド、アセトアミノフェン、クロタミトン、モノフルオロ酢酸アミド等が挙げられる。中でも、PVA(A)との親和性の観点から、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステル又は不飽和ジカルボン酸無水物が好ましく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物が好ましい。
【0020】
(溶媒(C))
溶媒(C)は、メタノール又は酢酸メチルを含有することが好ましく、メタノール及び酢酸メチルを共に含有してもよい。また、溶媒(C)はメタノール又は酢酸メチルに加えて、エタノール、イソプロパノール、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル等の他の溶媒を含有してもよい。溶媒(C)におけるメタノール又は酢酸メチルの含有量に特に制限はないが、溶媒(C)の全量に対するメタノール又は酢酸メチルの含有量は30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0021】
[噴霧工程]
噴霧工程では、PVA(A)にコーティング液(D)を噴霧して混合物を得る。このとき、コーティング液(D)をより均一にPVA(A)にコーティングする観点から、噴霧工程でPVA(A)及びコーティング液(D)を混合することが好ましい。混合するタイミングに特に制限はなく、噴霧した後に混合してもよいし、混合しながら噴霧してもよい。
【0022】
噴霧するコーティング液(D)の平均液滴粒子径は、通常0.1〜30μmであり、0.5〜20μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。平均液滴粒子径が大きすぎるとコーティングにムラが生じる傾向がある。使用できる噴霧器としては、例えば株式会社フルプラ製エクセレントシリーズや、圧搾空気と水を同時に噴霧する2流体スプレーノズル(例えば、株式会社いけうち製 AKIJet)等が挙げられる。
【0023】
(PVA(A))
PVA(A)の粘度平均重合度に特に制限はないが、生産性の面から200以上3500以下が好ましい。粘度平均重合度はJIS−K6726(1994年)に準じて測定して得られる値である。具体的には、けん化度が99.5モル%未満の場合には、けん化度99.5モル%以上になるまでけん化したPVAについて、水中、30℃で測定した極限粘度[η](リットル/g)を用いて下記式により粘度平均重合度(P)を求めた。
P=([η]×10
4/8.29)
(1/0.62)
【0024】
PVA(A)のけん化度に特に制限はないが、68モル%を超え99.9モル%以下が好ましい。けん化度はJIS−K6726(1994年)に準じて測定して得られる値である。PVA(A)のけん化度が68モル%未満の場合は、得られるPVA(A)の水溶性が低下し、種々の用途に適用する際のハンドリング性が低下する傾向となる。一方、けん化度が99.9モル%を超えるPVAは製造が困難な傾向がある。
【0025】
PVA(A)の製造方法に特に制限はないが、通常、ビニルエステル系単量体を重合してビニルエステル系重合体を得た後、該ビニルエステル系重合体をけん化することで得られる。重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法等の従来公知の方法を採用できる。工業的観点から、溶液重合法、乳化重合法又は分散重合法が好ましい。重合操作にあたっては、回分法、半回分法及び連続法のいずれの重合方式も採用できる。
【0026】
ビニルエステル系単量体としては、例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプリル酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、中でも酢酸ビニルが工業的観点から好ましい。
【0027】
ビニルエステル系単量体の重合に際し、本発明の趣旨を損なわない範囲で、他の単量体を共重合してもよい。当該他の単量体としては例えば、エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン類;(メタ)アクリル酸及びその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどの(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド;N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩又はその4級塩、N−メチロール(メタ)アクリルアミド及びその誘導体などの(メタ)アクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸及びその塩又はそのエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルなどが挙げられる。このような他の単量体を共重合させる場合、その共重合量は、通常5モル%以下である。
【0028】
また、ビニルエステル系単量体の重合に際して、得られるビニルエステル系重合体の粘度平均重合度を調節することなどを目的として、連鎖移動剤を共存させても差し支えない。連鎖移動剤としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;2−ヒドロキシエタンチオール、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類;トリクロロエチレン、パークロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類が挙げられ、中でもアルデヒド類及びケトン類が好適に用いられる。連鎖移動剤の添加量は、添加する連鎖移動剤の連鎖移動定数及び目的とするビニルエステル系重合体の粘度平均重合度に応じて決定されるが、通常、ビニルエステル系単量体に対して0.1〜10質量%である。
【0029】
ビニルエステル系重合体のけん化反応には、従来公知の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシドなどの塩基性触媒、又はp−トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いた、加アルコール分解ないし加水分解反応が適用できる。けん化反応に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素などが挙げられ、これらは1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用できる。中でも、メタノール又はメタノールと酢酸メチルとの混合溶液を溶媒として用い、塩基性触媒である水酸化ナトリウムの存在下にけん化反応を行うのが簡便であり好ましい。
【0030】
PVA(A)の形態に特に制限はないが、化合物(B)をより均一にコーティングできる観点から、粒子であることが好ましい。PVA(A)からなる粒子の粒子径は、通常、50〜2000μmである。なお、本明細書において、PVA(A)からなる粒子の粒子径はJIS−K6726(1994年)の方法にて求められた平均粒子径である。
【0031】
噴霧工程におけるコーティング液(D)の配合量は、PVA(A)100質量部に対して3質量部以上50質量部以下が好ましく、5質量部以上45質量部以下がより好ましい。コーティング液(D)の配合量が3質量部未満の場合は、コーティングのムラが発生する傾向がある。一方、配合量が50質量部を超える場合は、溶媒(C)を除去する乾燥工程に多大なエネルギーや時間がかかるため生産性が低下する傾向や、得られる被覆物が融着しやすい傾向となる。
【0032】
また、混合工程における化合物(B)の配合量は、PVA(A)100質量部に対して0.1質量部以上35質量部以下が好ましく、0.3質量部以上25質量部以下がより好ましい。化合物(B)の配合量が0.1質量部未満の場合は、コーティングされた化合物(B)が少ないため、被覆物として各種用途での性能を向上することが困難となる傾向がある。一方、配合量が35質量部を超える場合は、コーティングされた化合物(B)が剥がれやすくなる傾向がある。
【0033】
[乾燥工程]
乾燥工程では、混合工程で得られる上記混合物から溶媒(C)を除去する。上記混合物の乾燥温度に特に制限はなく、氷点下での凍結乾燥からPVA(A)の分解温度である230℃付近まで任意に設定できる。生産性及び経済性の観点から、20℃以上180℃以下が好ましく、20℃以上150℃以下がより好ましい。
【0034】
[被覆物の用途]
本発明の製造方法により得られる被覆物は種々の用途に使用できる。以下にその例を挙げるが、これに限定されるものではない。
(1)分散剤用途:塗料、接着剤等の有機・無機顔料の分散安定剤、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等の各種ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤及び分散助剤
(2)接着剤用途:接着剤、粘着剤、再湿接着剤、各種バインダー、セメントやモルタル用添加剤
(3)被覆剤用途:紙のコーティング剤、サイズ剤、繊維加工剤、皮革仕上剤、塗料、防曇剤、金属腐食防止剤、亜鉛メッキ用光沢剤、帯電防止剤、医薬被覆剤
(4)乳化剤用途:乳化重合用乳化剤、ビチュメン等の後乳化剤
(5)凝集剤用途:水中懸濁物及び溶存物の凝集剤、金属凝集剤
(6)成形物用途:繊維、シート、パイプ、チューブ、防漏膜、ケミカルレース用水溶性繊維、スポンジ
(7)フィルム用途:水溶性フィルム、偏光フィルム、バリアフィルム
(8)薬剤徐放用途:医薬用被膜、土壌改質剤、農薬添加剤、医薬添加剤
(9)後変性用途:低分子有機化合物、高分子有機化合物、無機化合物との後変性用途
【0035】
中でも、本発明の製造方法により得られる被覆物の好適な用途は、上記(8)薬剤徐放用途及び(9)後変性用途である。
【0036】
被覆物を後変性用途として用いる場合は、PVA(A)を反応場として利用し、コーティングされた化合物(B)と反応可能な別の化合物を反応させることが可能である。また、PVA(A)とコーティングされた化合物(B)同士を反応させることも可能である。これら後変性は任意の反応条件の下に行うことが可能である。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。以下の実施例及び比較例において、特に断りがない場合、「部」及び「%」はそれぞれ質量部及び質量%を示す。
【0038】
[PVA(A)の粘度平均重合度]
PVA(A)の粘度平均重合度はJIS−K6726(1994年)に準じて測定した。具体的には、けん化度が99.5モル%未満の場合には、けん化度99.5モル%以上になるまでけん化したPVAについて、水中、30℃で測定した極限粘度[η](リットル/g)を用いて下記式により粘度平均重合度(P)を求めた。
P=([η]×10
4/8.29)
(1/0.62)
【0039】
[PVA(A)のけん化度]
PVA(A)のけん化度は、JIS−K6726(1994年)に記載の方法により求めた。
【0040】
[PVA(A)の形状]
後述する製造方法で用いたPVA(A)の形状は粒子であり、JIS−K6726(1994年)の方法にて求めた平均粒子径は500〜600μmであった。
【0041】
[被覆物の融着]
後述する製造方法で得られた被覆物をポリエチレン製の袋に入れ、室温下(20℃)で30秒軽く手で振り混ぜた後取り出した。被覆物の粒子同士の融着具合を、目視確認及び融着した塊の質量測定により、以下の基準で評価を行った。なお、被覆物の粒子同士の融着が多い場合、その後の利用、例えば薬剤徐放用途に用いる場合は徐放性が悪化したり、後変性に用いる場合は反応ムラが生じる傾向となる。
A:被覆物の粒子同士の融着はほぼ見られなかった。
B:被覆物の粒子同士の融着がやや見られた。
C:被覆物の粒子同士の融着が多く見られた。
【0042】
(実施例1)
化合物(B)として分子量114のアリルグリシジルエーテルを、溶媒(C)としてメタノールを用いて3%の濃度で溶解し、コーティング液(D)を調液した。続いて、PVA(A)として粘度平均重合度500、けん化度80モル%のPVA100部を容量500mlのポリエチレン製のボトルに入れ、上記コーティング液(D)20部を噴霧器(株式会社フルプラ製、エクセレント500)を用いて0.8g/秒の速度で噴霧しながら上記ボトルを手で振り混ぜ、混合物を得た。この時、PVA(A)100部に対して、化合物(B)の配合量は0.6部であった。その後、室温下(20℃)で真空乾燥機を用いて12時間乾燥させることで、上記混合物から溶媒(C)を除去して被覆物を得た。得られた被覆物について、上述の方法により融着の度合いを評価したところ、融着はほぼ見られなかった。
【0043】
(実施例2〜11、比較例1及び比較例2)
化合物(B)の種類及び溶媒(C)に溶解する濃度、溶媒(C)の種類、コーティング液(D)の噴霧量、PVA(A)の種類を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして被覆物の製造を行った。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
(比較例3)
化合物(B)として分子量130のイタコン酸20部を、溶媒(C)としてメタノールを用いて20%の濃度で溶解し、コーティング液(D)を調液した。続いて、PVA(A)として粘度平均重合度300、けん化度72モル%のPVA100部を上記コーティング液(D)40部に添加し、さらに10分浸漬することで混合物を得た。この時、PVA(A)100部に対して、化合物(B)の配合量は8部であった。その後、室温下(20℃)で真空乾燥機を用いて、上記混合物から溶媒(C)を除去して被覆物を得た。得られた被覆物について、上述の方法により融着の度合いを評価したところ、コーティング液(D)を噴霧しなかったため、融着が多く見られた。
【0046】
実施例に示されているように、本発明の製造方法によれば、融着の少ない被覆物が得られる。被覆物の融着が少ないため、その後の使用、例えば後変性用途における反応ムラを低減することが期待でき、本発明の工業的な有用性はきわめて高い。