特許第6907424号(P6907424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6907424ジアミン化合物、ポリマー、液晶配向剤、液晶配向膜、及び液晶表示素子、並びに、液晶配向膜の製造方法、ジアミン化合物の製造方法、ジニトロ化合物及びジニトロ化合物の製造方法、保護ジアミノ化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6907424
(24)【登録日】2021年7月2日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】ジアミン化合物、ポリマー、液晶配向剤、液晶配向膜、及び液晶表示素子、並びに、液晶配向膜の製造方法、ジアミン化合物の製造方法、ジニトロ化合物及びジニトロ化合物の製造方法、保護ジアミノ化合物
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20210708BHJP
   C07C 205/42 20060101ALI20210708BHJP
   C07C 213/02 20060101ALI20210708BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   C08G73/10
   C07C205/42
   C07C213/02
   G02F1/1337
【請求項の数】19
【全頁数】117
(21)【出願番号】特願2021-80785(P2021-80785)
(22)【出願日】2021年5月12日
【審査請求日】2021年5月17日
(31)【優先権主張番号】特願2020-90869(P2020-90869)
(32)【優先日】2020年5月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】小林 修
(72)【発明者】
【氏名】一條 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】砂川 彩
(72)【発明者】
【氏名】小関 洋平
(72)【発明者】
【氏名】大木 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 剛史
(72)【発明者】
【氏名】北野 文萌
(72)【発明者】
【氏名】小鹿 瑞歩
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−197999(JP,A)
【文献】 特開平9−185064(JP,A)
【文献】 特開平9−297313(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/157463(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/10
C07C 205/42
C07C 213/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるジアミン化合物。
【化1】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表す。RとRは一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。Xは各々独立してハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表し、nは0から4の整数を表す。)
【請求項2】
下記一般式(1−1)で示される、請求項1に記載のジアミン化合物。
【化2】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表す。RとRは一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。Xは各々独立してハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表し、nは0から4の整数を表す。)
【請求項3】
下記一般式(1−2)で示される、請求項1又は2に記載のジアミン化合物。
【化3】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表す。RとRは一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。)
【請求項4】
2つのエステルがシクロプロパン環にトランス配置で置換している、請求項1から3のいずれか一項に記載のジアミン化合物。
【請求項5】
ジアミン類とテトラカルボン酸二無水物類を含む原料組成物を重合させてなるポリマー又はその誘導体であって、
前記ジアミン類の少なくとも1つが請求項1から4のいずれか一項に記載のジアミン化合物であるポリマー。
【請求項6】
請求項5に記載のポリマーを含む、液晶配向剤。
【請求項7】
請求項6に記載の液晶配向剤から形成される液晶配向膜。
【請求項8】
請求項7に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
【請求項9】
請求項6に記載の液晶配向剤を基板に塗布して塗膜を作成する工程と、その塗膜に偏光紫外線を照射する工程とを含む、液晶配向膜の製造方法。
【請求項10】
下記一般式(2)で示されるジニトロ化合物を還元して、下記一般式(1)で示されるジアミン化合物を得る、ジアミン化合物の製造方法。
【化4】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表す。RとRは一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。Xは各々独立してハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表し、nは0から4の整数を表す。)
【化5】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表す。RとRは一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。Xは各々独立してハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表し、nは0から4の整数を表す。)
【請求項11】
下記一般式(7−1)で示される保護ジアミノ化合物を脱保護して、下記一般式(1−1)で示されるジアミン化合物を得る、ジアミン化合物の製造方法。
【化6】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表す。RとRは一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。Xは各々独立してハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表し、nは0から4の整数を表す。Bocはtert−ブトキシカルボニル基を表す。)
【化7】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表す。RとRは一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。Xは各々独立してハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表し、nは0から4の整数を表す。)
【請求項12】
下記一般式(3)で示されるシクロプロパン誘導体と下記一般式(6−1)で示される保護アミノフェノール化合物とを縮合反応させて、下記一般式(7−1)で示される保護ジアミノ化合物を合成した後、脱保護して、下記一般式(1−1)で示されるジアミン化合物を得る、ジアミン化合物の製造方法。
【化8】
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(式中、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表す。RとRは一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。Yは脱離基を表す。)
【化9】
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(式中、Xはハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表し、nは0から4の整数を表す。nが2以上であるとき、複数のXは互いに同一であっても異なっていてもよい。Bocはtert−ブトキシカルボニル基を表す。)
【化10】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表す。RとRは一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。Xは各々独立してハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表し、nは0から4の整数を表す。Bocはtert−ブトキシカルボニル基を表す。)
【化11】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表す。RとRは一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。Xは各々独立してハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表し、nは0から4の整数を表す。)
【請求項13】
下記一般式(2)で示されるジニトロ化合物。
【化12】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表す。RとRは一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。Xは各々独立してハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表し、nは0から4の整数を表す。)
【請求項14】
下記一般式(2−1)で示される、請求項13に記載のジニトロ化合物。
【化13】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表す。RとRは一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。Xは各々独立してハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表し、nは0から4の整数を表す。)
【請求項15】
下記一般式(2−2)で示される、請求項13又は14に記載のジニトロ化合物。
【化14】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表す。RとRは一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。)
【請求項16】
2つのエステルがシクロプロパン環にトランス配置で置換している、請求項13から15のいずれ一項に記載のジニトロ化合物。
【請求項17】
下記一般式(3)で示されるシクロプロパン誘導体と下記一般式(4)で示されるニトロ化合物とを縮合反応させて、下記一般式(2)で示されるジニトロ化合物を合成する、ジニトロ化合物の製造方法。
【化15】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表す。RとRは一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。Yは脱離基を表す。)
【化16】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、Xはハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表し、nは0から4の整数を表す。nが2以上であるとき、複数のXは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【化17】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表す。RとRは一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。Xは各々独立してハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表し、nは0から4の整数を表す。)
【請求項18】
下記一般式(7−1)で示される保護ジアミノ化合物。
【化18】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表す。RとRは一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。Xは各々独立してハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表し、nは0から4の整数を表す。Bocはtert−ブトキシカルボニル基を表す。)
【請求項19】
2つのエステルがシクロプロパン環にトランス配置で置換している、請求項18に記載の保護ジアミノ化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤に使用されるポリマーの原料モノマーとして有用なジアミン化合物、そのジアミン化合物を原料モノマーに用いたポリマー、そのジアミン化合物の合成中間体として有用なジニトロ化合物及び保護ジアミノ化合物に関する。さらに、そのポリマーを含む液晶配向剤、この液晶配向剤を用いて形成される光配向方式の液晶配向膜(光配向膜)、そして、この液晶配向膜を有する液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード、IPS(In-Plane Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、垂直配向型のVA(Multi-domain Vertical Alignment)モード等、様々な駆動方式のものが知られている。これらの液晶表示素子は、テレビ、携帯電話等、各種電子機器の画像表示装置に採用されており、さらなる表示品位の向上を目指して開発が進められている。具体的には、液晶表示素子の性能の向上は、駆動方式、素子構造の改良のみならず、素子に使用される構成部材によっても達成される。そして、液晶表示素子に使用される構成部材のなかでも、特に液晶配向膜は表示品位に係わる重要な材料の1つであり、液晶表示素子の高品位化の要求に応えるべく、盛んに研究が進められている。
ここで、液晶配向膜は、液晶表示素子の液晶層の両側に設けられた一対の基板上に、該液晶層に接して設けられ、液晶層を構成する液晶分子を、基板に対して一定の規則性を持って配向させる機能を有するものである。液晶配向性の高い液晶配向膜を用いることにより、コントラストが高く、残像特性が改善された液晶表示素子を実現することができる(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
こうした液晶配向膜の形成には、現在、ポリアミック酸、可溶性のポリイミドもしくはポリアミック酸エステルを有機溶剤に溶解させた溶液(ワニス)が主に用いられている。これらのワニスにより液晶配向膜を形成するには、ワニスを基板に塗布した後、加熱等により塗膜を固化して各種液晶配向膜を形成し、必要に応じて前述の表示モードに適する配向処理を施す。
具体的には、例えば液晶配向膜とする為のポリイミド膜を基板上に形成する方法としては、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸を含有する液晶配向剤を基板上に塗布した後、焼成してポリイミド膜とする方法や、溶剤可溶性ポリイミドを含有する液晶配向剤を基板上に塗布し溶剤を除去してポリイミド膜とする方法以外に、イミド基含有ジアミンから得たイミド基含有ポリアミック酸を含有する液晶配向剤を基板上に塗布する方法が知られている(例えば、特許文献3を参照)。
また、配向処理方法としては、布などで配向膜の表面を擦ってポリマー分子の方向を整えるラビング法と、配向膜に直線偏光の紫外線を照射することにより、ポリマー分子に光異性化や二量化等の光化学変化を起こさせて膜に異方性を付与する光配向法が知られている。このうち光配向法は、ラビング法に比べて配向の均一性が高く、非接触の配向処理法であるため膜に傷が付かないことや、発塵や静電気等の液晶表示素子の表示不良を発生させる原因を低減できる等の利点がある。
また、上記の光配向法のひとつとして、分解型の光配向法が知られている。この分解型光配向法は、例えば、ポリイミド膜に偏光紫外線を照射することで、分子構造の紫外線吸収の偏光方向依存性を利用して異方的な分解を生じさせ、分解せずに残されたポリイミドにより液晶を配向させる方法である(例えば、特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−197999号公報
【特許文献2】国際公開第2013/157463号
【特許文献3】特開平9−185064号公報
【特許文献4】特開平9−297313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年の液晶表示素子の利用形態の変化に伴い、さらなる高コントラストを実現する液晶表示素子が求められるようになってきた。ここで、高コントラストを実現するためには、液晶層の液晶分子が規則正しく配列した状態をとることが必要であり、それには、液晶層に配向性を付与する液晶配向膜が高い液晶配向性を有することが重要になる。しかし、従来の光配向法で得られる液晶配向膜は液晶配向性が十分でないことから、近年のコントラスト向上の要求に十分に応えられないのが実情である。
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、液晶配向性が高い液晶配向膜を形成できる材料及びその原料を提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のシクロプロパン構造を有するジアミン化合物をジアミンモノマーに用いて合成したポリアミック酸やその誘導体を液晶配向剤に用いることにより、液晶配向性が高い液晶配向膜が得られ、その液晶配向膜を用いることにより、高いコントラストを示す液晶表示素子が実現することを見いだした。本発明は、こうした知見に基づいて完成されたものであり、具体的に以下の構成を有する。
【0007】
[1]下記一般式(1)で示されるジアミン化合物。
【化1】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表す。RとRは一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。Xは各々独立してハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表し、nは0から4の整数を表す。)
[2]下記一般式(1−1)で示される、[1]に記載のジアミン化合物。
【化2】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R、R、X及びnは、それぞれ前記一般式(1)のR、R、X及びnと同義である。)
[3]下記一般式(1−2)で示される、[1]又は[2]に記載のジアミン化合物。
【化3】
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(式中、R及びRは、それぞれ前記一般式(1)のR及びRと同義である。)
[4]2つのエステルがシクロプロパン環にトランス配置で置換している、[1]から[3]のいずれか一項に記載のジアミン化合物。
[5]ジアミン類とテトラカルボン酸二無水物類を含む原料組成物を重合させてなるポリマー又はその誘導体であって、前記ジアミン類の少なくとも1つが[1]から[4]のいずれか一項に記載のジアミン化合物であるポリマー。
[6][5]に記載のポリマーを含む液晶配向剤。
[7][6]に記載の液晶配向剤から形成される液晶配向膜。
[8][7]に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
[9][6]に記載の液晶配向剤を基板に塗布して塗膜を形成する工程と、その塗膜に偏光紫外線を照射する工程とを含む、液晶配向膜の製造方法。
[10]下記一般式(2)で示されるジニトロ化合物を還元して下記一般式(1)で示されるジアミン化合物を得る、ジアミン化合物の製造方法。
【化4】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表す。RとRは一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。Xは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表し、nは0から4の整数を表す。)
【化5】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R、R、X及びnは、それぞれ前記一般式(1)のR、R、X及びnと同義である。)
[11]下記一般式(7−1)で示される保護ジアミノ化合物を脱保護して、下記一般式(1−1)で示されるジアミン化合物を得る、ジアミン化合物の製造方法。
【化6】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表す。RとRは一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。Xは各々独立してハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表し、nは0から4の整数を表す。Bocはtert−ブトキシカルボニル基を表す。)
【化7】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R、R、X及びnは、それぞれ前記一般式(1)のR、R、X及びnと同義である。)
[12]下記一般式(3)で示されるシクロプロパン誘導体と下記一般式(6−1)で示される保護アミノフェノール化合物とを縮合反応させて、下記一般式(7−1)で示される保護ジアミノ化合物を合成した後、脱保護して、下記一般式(1−1)で示されるジアミン化合物を得る、ジアミン化合物の製造方法。
【化8】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表す。RとRは一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。Yは脱離基を表す。)
【化9】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、Xはハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表し、nは0から4の整数を表す。nが2以上であるとき、複数のXは互いに同一であっても異なっていてもよい。Bocはtert−ブトキシカルボニル基を表す。)
【化10】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R、R、X、n及びBocは、それぞれ前記一般式(7−1)のR、R、X、n及びBocと同義である。)
【化11】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R、R、X及びnは、それぞれ前記一般式(1)のR、R、X及びnと同義である。)
[13]下記一般式(2)で示されるジニトロ化合物。
【化12】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R、R、X及びnは、それぞれ前記一般式(2)のR、R、X及びnと同義である。)
[14]下記一般式(2−1)で示される、[13]に記載のジニトロ化合物。
【化13】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R、R、X及びnは、それぞれ前記一般式(2)のR、R、X及びnと同義である。)
[15]下記一般式(2−2)で示される、[13]又は[14]に記載のジニトロ化合物。
【化14】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R及びRは、それぞれ前記一般式(2)のR及びRと同義である。)
[16]2つのエステルがシクロプロパン環にトランス配置で置換している、[13]から[15]のいずれか一項に記載のジニトロ化合物。
[17]下記一般式(3)で示されるシクロプロパン誘導体と下記一般式(4)で示されるニトロ化合物を縮合反応させて、下記一般式(2)で示されるジニトロ化合物を合成する、ジニトロ化合物の製造方法。
【化15】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表す。RとRは一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。Yは脱離基を表す。)
【化16】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、Xは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表し、nは0から4の整数を表す。nが2以上であるとき、複数のXは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【化17】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R、R、X及びnは、それぞれ前記一般式(2)のR、R、X及びnと同義である。)
[18]下記一般式(7−1)で示される保護ジアミノ化合物。
【化18】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、R、R、X、n及びBocは、それぞれ前記一般式(7−1)のR、R、X、n及びBocと同義である。)
[19]2つのエステルがシクロプロパン環にトランス配置で置換している、[18]に記載の保護ジアミノ化合物。
【0008】
以下に、各一般式のR、R及びXにおけるハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、及びYにおける脱離基について説明する。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
炭素数1から6のアルキル基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基等を例示することができる。
炭素数1から6のハロアルキル基としては、上記の炭素数1から6のアルキル基における任意の位置にある任意の数の水素原子がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。ハロゲン原子の具体例については、R、R及びXにおけるハロゲン原子の具体例を参照することができる。ハロアルキル基におけるハロゲン原子の数は、1から5であることが好ましく、1から4であることがより好ましく、1から3であることがさらに好ましい。ハロアルキル基の具体例として、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、1,1−ジフルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3−フルオロプロピル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基等を挙げることができる。
炭素数1から6のアルコキシ基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、1−メチルブチルオキシ基、1−エチルプロピルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、1−メチルペンチルオキシ基、1−エチルブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロへキシルオキシ基等を例示することができる。
脱離基Yとしては、塩素原子、水酸基、4−ニトロフェニルオキシ基、2,4−ジニトロフェニルオキシ基等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のジアミン化合物は、液晶配向剤に使用されるポリマーの原料モノマーとして有用である。このジアミン化合物を用いて合成したポリマーを液晶配向剤に使用することにより、液晶配向性が高い液晶配向膜を形成することができる。そして、この液晶配向膜を液晶表示素子に適用することにより、その液晶層に高い配向性が付与され、高いコントラストで表示を行うことが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本発明における「液晶配向剤」は、その膜を基板上に形成したとき、偏光紫外線を照射することで異方性を付与することができる液晶配向剤であり、本明細書中では単に「液晶配向剤」ということもあれば、「光配向用液晶配向剤」ということもある。また、本発明において「テトラカルボン酸二無水物類」とは、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステル又はテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物を指す。また本発明においては、ジアミン及びジヒドラジドを「ジアミン類」と称することもある。
また、以下の説明では、一般式(1)で示されるジアミン化合物、一般式(2)で示されるジニトロ化合物、一般式(3)で示されるシクロプロパン誘導体、一般式(4)で示されるニトロ化合物、一般式(6−1)で示される保護アミノフェノール化合物、一般式(7−1)で示される保護ジアミノ化合物を、それぞれ、ジアミン化合物(1)、ジニトロ化合物(2)、シクロプロパン誘導体(3)、ニトロ化合物(4)、保護アミノフェノール化合物(6−1)、保護ジアミノ化合物(7−1)ということがある。
【0011】
<ジアミン化合物>
本発明のジアミン化合物は一般式(1)で示される化合物である。
【0012】
【化19】
[この文献は図面を表示できません]
【0013】
一般式(1)において、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表す。RとRは互いに同一であっても異なっていてもよい。また、RとRは一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。メチレン基の置換基として、フッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子、フッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子や炭素数1から4のアルコキシ基で置換されていてもよいアルキル基又は、フッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子、炭素数1から4のアルキル基もしくは炭素数1から4のアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基等を挙げることができる。Xは各々独立してハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表し、nは0から4の整数を表す。2つのnの合計が2以上であるとき、複数のXは互いに同一であっても異なっていてもよい。X及びアミノ基(−NH)の結合位置は、それぞれ、その結合手が結合するベンゼン環の置換可能な位置のいずれかである。
【0014】
この一般式(1)で示されるジアミン化合物(ジアミン化合物(1))をモノマーに用いて合成したポリマーで塗膜を形成し、偏光を照射すると、該塗膜に高い液晶配向性が付与される。これは、以下のメカニズムによるものと推測される。
すなわち、本発明のジアミン化合物(1)は、シクロプロパンの隣り合った炭素にフェニルエステルが結合した構造を有することにより、光照射によって光フリース転位反応が生じると考えられる。そのため、このジアミン化合物(1)を用いて合成したポリマーの塗膜に光配向用の偏光を照射すると、ランダム配向しているポリマー鎖のうち、その偏光方向と概ね平行にあるポリマー主鎖のジアミン由来の構成単位で、選択的に光化学反応(光フリース転位反応)が起きる。その結果、偏光方向に対して概ね直角をなすポリマー鎖による配向成分が支配的になり、特定方向に高度に配向した状態になる。
そして、この配向した膜を液晶表示素子の液晶配向膜として用いると、液晶配向膜の表面と液晶分子の相互作用の結果、液晶分子が、照射した偏光の偏光方向に対して概ね直角の方向に長軸を揃えて均一に配向し、液晶層に高い異方性が付与される。
以上のことから、ジアミン化合物(1)は、液晶配向剤に使用されるポリマーの原料モノマー(ジアミンモノマー)として有用である。そして、このジアミン化合物を用いて合成したポリマーを液晶配向剤に使用することにより、液晶配向性が高い液晶配向膜を形成することができる。そして、この液晶配向膜を液晶表示素子に適用することにより、その液晶層に高い配向性が付与され、高いコントラストで表示を行うことが可能になる。
なお、本明細書中では、ポリマー鎖のうちで特定の方向を向いた成分が支配的になった状態を、ポリマー鎖が配向したと表現し、配向膜を形成しているポリマー鎖が特定方向に配向している状態になることを、異方性を生じると表現することがある。また、ポリマー鎖が特定方向により揃っていることを、高い異方性を持つと表現することがある。
以下において、一般式(1)で示されるジアミン化合物の好ましい例について説明する。
【0015】
[一般式(1−1)で示されるジアミン化合物]
一般式(1)で示されるジアミン化合物の好ましい例としては、下記一般式(1−1)で示されるジアミン化合物を挙げることができる。
【0016】
【化20】
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【0017】
一般式(1−1)において、R、R、X及びnは、それぞれ一般式(1)におけるR、R、X及びnと同義である。Xの結合位置は、その結合手が結合するベンゼン環の置換可能な位置のいずれかである。一般式(1−1)で示されるジアミン化合物を用いて合成されたポリマーは、アミノ基がエステルに対してパラ位に位置しているため、直線性が高くなり、そのポリマーを用いた液晶配向膜は高い異方性を発現することができる。
【0018】
[一般式(1−2)で示されるジアミン化合物]
一般式(1−1)で示されるジアミン化合物の好ましい例として、下記一般式(1−2)で示されるジアミン化合物を挙げることができる。
【0019】
【化21】
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【0020】
一般式(1−2)において、R及びRは、それぞれ一般式(1)におけるR及びRと同義である。一般式(1−2)で示されるジアミン化合物は、その製造における原料入手の容易さから有用である。
また、一般式(1)、(1−1)又は(1−2)で表される化合物の中でも、シクロプロパン環上の2つのエステルがトランス配置であるものが好ましい。
【0021】
[一般式(1−3)で示される化合物]
一般式(1−1)で示されるジアミン化合物の好ましい例として、下記一般式(1−3)で示されるジアミン化合物及びそのエナンチオマー(鏡像異性体)を挙げることができる。一般式(1−3)で示される化合物とそのエナンチオマーは、混合してポリマーの原料に用いてもよいし、当量混合してラセミ体としてポリマーの原料に用いてもよい。
【0022】
【化22】
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【0023】
一般式(1−3)において、R、R、X及びnは、それぞれ一般式(1)におけるR、R、X及びnと同義である。式(1−3)で表されるジアミン化合物及びそのエナンチオマーは、シクロプロパン環上の2つのエステルがトランス配置であるため、直線性が高くなり、そのジアミン化合物を原料に用いたポリマーの液晶配向膜は高い異方性を発現することができる。
及びRは、特性が好ましい点で、水素原子であるか、又はRとRが一体となってメチレン基を形成していることが好ましい。
【0024】
一般式(1)で示されるジアミン化合物の具体例として、下記式(1−2−1)、式(1−3−1)〜式(1−3−13)、及び式(1−4−1)〜式(1−4−13)で示されるジアミン化合物を挙げることができる。下記式において、Meはメチル基を表す。
【0025】
【化23】
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【0026】
式(1−3−1)と式(1−4−1)、式(1−3−2)と式(1−4−2)、式(1−3−3)と式(1−4−3)、式(1−3−4)と式(1−4−4)、式(1−3−5)と式(1−4−5)、式(1−3−6)と式(1−4−6)、式(1−3−7)と式(1−4−7)、式(1−3−8)と式(1−4−8)、式(1−3−9)と式(1−4−9)、式(1−3−10)と式(1−4−10)、式(1−3−11)と式(1−4−11)、式(1−3−12)と式(1−4−12)、及び式(1−3−13)と式(1−4−13)は、それぞれエナンチオマーの関係にある。式(1−3−1)で示されるジアミン化合物と式(1−4−1)で示されるジアミン化合物の混合物、式(1−3−2)で示されるジアミン化合物と式(1−4−2)で示されるジアミン化合物の混合物、式(1−3−3)で示されるジアミン化合物と式(1−4−3)で示されるジアミン化合物の混合物、式(1−3−4)で示されるジアミン化合物と式(1−4−4)で示されるジアミン化合物の混合物、式(1−3−5)で示されるジアミン化合物と式(1−4−5)で示されるジアミン化合物の混合物、式(1−3−6)で示されるジアミン化合物と式(1−4−6)で示されるジアミン化合物の混合物、式(1−3−7)で示されるジアミン化合物と式(1−4−7)で示されるジアミン化合物の混合物、式(1−3−8)で示されるジアミン化合物と式(1−4−8)で示されるジアミン化合物の混合物、式(1−3−9)で示されるジアミン化合物と式(1−4−9)で示されるジアミン化合物の混合物、式(1−3−10)で示されるジアミン化合物と式(1−4−10)で示されるジアミン化合物の混合物、式(1−3−11)で示されるジアミン化合物と式(1−4−11)で示されるジアミン化合物の混合物、式(1−3−12)で示されるジアミン化合物と式(1−4−12)で示されるジアミン化合物の混合物、及び式(1−3−13)で示されるジアミン化合物と式(1−4−13)で示されるジアミン化合物の混合物、をそれぞれジアミン化合物(1)として原料組成物に用いてもよい。
本明細書中では、式(1−3−1)で示されるジアミン化合物と式(1−4−1)で示されるジアミン化合物の混合物を「ジアミン異性体混合物1」、式(1−3−2)で示されるジアミン化合物と式(1−4−2)で示されるジアミン化合物の混合物を「ジアミン異性体混合物2」、式(1−3−3)で示されるジアミン化合物と式(1−4−3)で示されるジアミン化合物の混合物を「ジアミン異性体混合物3」、式(1−3−4)で示されるジアミン化合物と式(1−4−4)で示されるジアミン化合物の混合物を「ジアミン異性体混合物4」、式(1−3−5)で示されるジアミン化合物と式(1−4−5)で示されるジアミン化合物の混合物を「ジアミン異性体混合物5」、式(1−3−6)で示されるジアミン化合物と式(1−4−6)で示されるジアミン化合物の混合物を「ジアミン異性体混合物6」、式(1−3−7)で示されるジアミン化合物と式(1−4−7)で示されるジアミン化合物の混合物を「ジアミン異性体混合物7」、式(1−3−8)で示されるジアミン化合物と式(1−4−8)で示されるジアミン化合物の混合物を「ジアミン異性体混合物8」、式(1−3−9)で示されるジアミン化合物と式(1−4−9)で示されるジアミン化合物の混合物を「ジアミン異性体混合物9」、式(1−3−10)で示されるジアミン化合物と式(1−4−10)で示されるジアミン化合物の混合物を「ジアミン異性体混合物10」、式(1−3−11)で示されるジアミン化合物と式(1−4−11)で示されるジアミン化合物の混合物を「ジアミン異性体混合物11」、式(1−3−12)で示されるジアミン化合物と式(1−4−12)で示されるジアミン化合物の混合物を「ジアミン異性体混合物12」、及び式(1−3−13)で示されるジアミン化合物と式(1−4−13)で示されるジアミン化合物の混合物を「ジアミン異性体混合物13」と称することもある。
【0027】
<ポリマー>
次に、本発明のポリマーについて説明する。
本発明のポリマーは、ジアミン類とテトラカルボン酸二無水物類を含む原料組成物を重合させてなるポリマー又はその誘導体であって、ジアミン類の少なくとも1つが本発明の一般式(1)で示されるジアミン化合物であることを特徴とする。
ジアミン類とテトラカルボン酸二無水物類を含む原料組成物を重合させてなるポリマー又はその誘導体のうち、ジアミン類とテトラカルボン酸二無水物の重合体はポリアミック酸であり、その他のポリマーはポリアミック酸の誘導体である。したがって、本発明のポリマーは、ポリアミック酸又はその誘導体であって、ポリアミック酸のジアミンモノマーの少なくとも1つが本発明の一般式(1)で示されるジアミン化合物であるもの、ということもできる。本発明のポリマーは、ポリアミック酸又はその誘導体の群から選ばれる少なくとも1つのポリマーからなるものである。本発明のポリマーは、ポリアミック酸又はその誘導体のいずれか1種で構成されていてもよいし、ポリアミック酸又はその誘導体の群から選ばれる2種以上の混合物から構成されていてもよい。また、本発明のポリマーは、ポリアミック酸の群から選ばれる1種以上と、ポリアミック酸の誘導体の群から選ばれる1種以上の混合物を構成してもよい。ポリアミック酸の誘導体として、ポリイミド、部分ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリアミック酸−ポリアミドコポリマー及びポリアミドイミドを挙げることができる。本明細書中では、これらをポリアミック酸誘導体と称することもある。
【0028】
以下に、ポリアミック酸又はその誘導体について詳細を説明する。
下記反応式に示すように、ポリアミック酸は、式(DI)で表されるジアミン類と式(AN)で表されるテトラカルボン酸二無水物との重合反応により合成されるポリマーであり、式(PAA)で表される構成単位を有する。ポリアミック酸の合成に用いる、ジアミン類及びテトラカルボン酸二無水物は、それぞれ1種類であっても2種類以上であってもよい。ポリアミック酸を含む液晶配向剤は、液晶配向膜を形成させる工程で加熱焼成すると、ポリアミック酸がイミド化され、式(PI)で表される構成単位を有するポリイミド液晶配向膜を形成することができる。
【0029】
【化24】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、Xは4価の有機基を表す。Xは2価の有機基を表す。)
【0030】
における4価の有機基の好ましい範囲と具体例については、下記のテトラカルボン酸二無水物類の欄に記載したテトラカルボン酸二無水物の対応する構造を参照することができる。Xにおける2価の有機基の好ましい範囲と具体例については、式(1)又は下記のジアミン類の欄に記載したジアミン若しくはジヒドラジドの対応する構造についての記載を参照することができる。
【0031】
ポリアミック酸誘導体は、ポリアミック酸の一部分を他の原子又は原子団に置き換えて特性を改変した化合物であり、特に液晶配向剤に用いる溶剤への溶解性を高くしたものであることが好ましい。このようなポリアミック酸誘導体としては、具体的には1)ポリアミック酸のすべてのアミノ基とカルボキシル基とが脱水閉環反応したポリイミド、2)部分的に脱水閉環反応した部分ポリイミド、3)ポリアミック酸のカルボキシル基がエステルに変換されたポリアミック酸エステル、4)テトラカルボン酸二無水物化合物に含まれる酸二無水物の一部を有機ジカルボン酸に置き換えて反応させて得られたポリアミック酸−ポリアミドコポリマー、さらに5)該ポリアミック酸−ポリアミドコポリマーの一部又は全部を脱水閉環反応させたポリアミドイミドが挙げられる。これらの誘導体のうち、例えばポリイミドとしては、上記式(PI)で表される構成単位を有するものを挙げることができ、ポリアミック酸エステルとしては、下記式(PAE)で表される構成単位を有するものを挙げることができる。
【0032】
【化25】
[この文献は図面を表示できません]
(式中、Xは4価の有機基、Xは2価の有機基、Zは独立してアルキル基を表す。)
【0033】
及びXの好ましい範囲と具体例については、式(PAA)におけるX及びXについての記載を参照することができる。Zにおいては、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基又はtert−ブチル基がより好ましい。
【0034】
本発明のポリアミック酸又はその誘導体は、第1ポリマー鎖と、第1ポリマー鎖とは構造が異なる第2ポリマー鎖を含むブロックポリマーであってもよい。また、ブロックポリマーは、さらに第1ポリマー鎖及び第2ポリマー鎖と構造が異なる他のポリマー鎖を含んでいてもよい。例えば、ポリアミック酸のブロックポリマーは、式(PAA)で示される特定のポリアミック酸(PAA1)の溶液と、ポリアミック酸(PAA1)とX及びXの組み合わせが異なるポリアミック酸(PAA2)の溶液を混合して加熱することにより形成することができる。こうして形成されるポリアミック酸のブロックポリマーは、(PAA1)n1で表されるブロックと(PAA2)n2で表されるブロックを含む。(PAA1)n1及び(PAA2)n2におけるn1及びn2は、各々独立して1以上の整数であり、好ましくは各々独立して2以上の整数である。ブロックポリマーにおいて、ジアミン化合物(1)を原料組成物に用いるポリマー鎖は、いずれか1つであってもよいし、2つ以上であってもよいし、全てのポリマー鎖であってもよい。
ここで、ポリアミック酸ブロックポリマーは、2種以上のポリアミック酸をそれぞれ単独で製造した後に混合し、加熱して合成してもよいし、2種以上のポリアミック酸を同じ反応容器中で合成した後、加熱して合成してもよい。
【0035】
本発明におけるポリアミック酸を、ポリアミック酸誘導体であるポリイミドとする場合には、得られたポリアミック酸溶液を、脱水剤である無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物、及び脱水閉環触媒であるトリエチルアミン、ピリジン、コリジンなどの第三級アミンとともに、温度20〜150℃でイミド化反応させることにより、ポリイミドを得ることができる。あるいは、得られたポリアミック酸溶液から多量の貧溶剤(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤やエチレングリコールなどのグリコール系溶剤)を用いてポリアミック酸を析出させ、析出させたポリアミック酸を、トルエン、キシレン等の溶剤中で、上記の脱水剤及び脱水閉環触媒とともに、温度20〜150℃でイミド化反応させることにより、ポリイミドを得ることもできる。
【0036】
イミド化反応において、脱水剤と脱水閉環触媒の割合は、0.1〜10(モル比)であることが好ましい。脱水剤と脱水閉環触媒の合計使用量は、当該ポリアミック酸の合成に使用したテトラカルボン酸二無水物のモル量の合計に対して1.5〜10倍モルであることが好ましい。このイミド化反応に用いる脱水剤、触媒量、反応温度及び反応時間を調整することによって、イミド化の程度を制御することができ、これによりポリアミック酸の一部のみがイミド化した部分ポリイミドを得ることができる。得られたポリイミドは、反応に用いた溶剤と分離し、他の溶剤に再溶解させて液晶配向剤として使用することもできるし、あるいは溶剤と分離することなく液晶配向剤として使用することもできる。
【0037】
ポリアミック酸エステルは、ポリアミック酸と水酸基含有化合物、ハロゲン化物、エポキシ基含有化合物等とを反応させることにより合成する方法や、テトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸ジエステルもしくはテトラカルボン酸ジエステルジクロライドと、ジアミン類とを反応させることにより合成する方法により得ることができる。テトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸ジエステルは、例えばテトラカルボン酸二無水物を2当量のアルコールと反応させ開環させて得ることができ、テトラカルボン酸ジエステルジクロライドは、テトラカルボン酸ジエステルを2当量以上の塩素化剤(例えば塩化チオニルなど)と反応させることで得ることができる。なお、ポリアミック酸エステルは、アミック酸エステル構造のみを有していてもよく、アミック酸構造とアミック酸エステル構造とが併存する部分エステル化物であってもよい。ジアミン類の少なくとも1つに、一般式(1)で表されるジアミン化合物を用いることで、本発明のポリアミック酸エステルを得ることができる。
【0038】
一般式(1)で表されるジアミン化合物を原料に用いたポリアミック酸又はその誘導体は、ポリイミドの膜の形成に用いられる公知のポリアミック酸又はその誘導体と同様に製造することができる。
テトラカルボン酸二無水物類の総仕込み量は、ジアミン類の合計1モルに対して、0.9〜1.1モルとすることが好ましい。
【0039】
本発明の液晶配向剤はこれらのポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びこれらをイミド化して得られるポリイミドのうちの1種類のみを含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。
【0040】
本発明のポリマーであるポリアミック酸又はその誘導体の分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、5,000〜500,000であることが好ましく、5,000〜50,000であることがより好ましい。ポリアミック酸又はその誘導体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による測定から求めることができる。
【0041】
本発明のポリマーであるポリアミック酸又はその誘導体は、多量の貧溶剤で沈殿させて得られる固形分をIR(赤外分光法)、NMR(核磁気共鳴分析)で分析することによりその存在を確認することができる。また水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等の強アルカリの水溶液によるポリアミック酸又はその誘導体の分解物の有機溶剤による抽出物を、ガスクロマトグラフィー(GC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)又はガスクロマトグラフィー質量分析法(GC−MS)で分析することにより、使用されているモノマーを確認することができる。
【0042】
テトラカルボン酸二無水物類
本発明でポリマーの原料組成物に用いるテトラカルボン酸二無水物類としては、公知のテトラカルボン酸二無水物類から制限されることなく選択することができる。
【0043】
以下にテトラカルボン酸二無水物の例を挙げる。これらのテトラカルボン酸二無水物をテトラカルボン酸ジエステルやテトラカルボン酸ジエステルジクロライドに誘導して、ポリマーの原料に用いてもよい。すなわち、本発明における「テトラカルボン酸二無水物類」には、テトラカルボン酸二無水物の他、テトラカルボン酸二無水物の誘導体、例えばテトラカルボン酸ジエステルやテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物も包含されることとする。これらのうち、いずれか1種を重合に供してもよいし、2種以上を組み合わせて重合に供してもよい。
また、テトラカルボン酸二無水物は、芳香環に直接ジカルボン酸無水物が結合した芳香族系(複素芳香環系を含む)に属するものであってもよいし、芳香環に直接ジカルボン酸無水物が結合していない脂肪族系(複素環系を含む)に属するものであってもよい。
【0044】
このようなテトラカルボン酸二無水物の例として、以下の式(AN−1)〜式(AN−9)、式(AN−11)、式(AN−12)、式(AN−15)、式(AN−10−1)、式(AN−10−2)、及び式(AN−16−1)〜式(AN−16−17)で表されるものが挙げられる。
【0045】
[式(AN−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化26】
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【0046】
式(AN−1)において、R11は各々独立して水素原子又はメチル基を表す。G11は単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基を表す。X11は各々独立して単結合又は−CH−を表す。G12は各々独立して下記の3価の基のいずれかを表す。
【0047】
【化27】
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【0048】
12が>CH−であるとき、>CH−の水素原子はメチル基で置換されていてもよい。G12が>N−であるとき、G11は単結合及び−CH−であることはなく、X11は単結合であることはない。R11は各々独立に水素原子又はメチル基を表す。
【0049】
式(AN−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN−1−1)〜式(AN−1−15)で表される化合物を挙げることができる。
【0050】
【化28】
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【0051】
式(AN−1−2)及び(AN−1−14)において、mは各々独立して1〜12の整数である。
【0052】
[式(AN−2)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化29】
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【0053】
式(AN−2)において、R61は各々独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基を表す。
【0054】
式(AN−2)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN−2−1)〜式(AN−2−3)で表される化合物を挙げることができる。
【0055】
【化30】
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【0056】
[式(AN−3)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化31】
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【0057】
式(AN−3)において、環A11はシクロヘキサン環又はベンゼン環を表す。
【0058】
式(AN−3)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN−3−1)、式(AN−3−2)で表される化合物を挙げることができる。
【化32】
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【0059】
[式(AN−4)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化33】
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【0060】
式(AN−4)において、G13は単結合、−C≡C−、−(CH−、−O−、−S−、−C(CH−、−SO−、−CO−、−C(CF−、下記式(G13−1)又は下記式(G13−2)で表される2価の基を表し、mは1〜12の整数である。環A11は各々独立してシクロヘキサン環又はベンゼン環を表す。G13は環A11の任意の位置に結合してよい。ここで、「任意の位置」とは、その結合手が結合する骨格構造の置換可能な位置のことをいう。以下の説明における「任意の位置」も、同様の意味であることとする。
【0061】
【化34】
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【0062】
式(G13−1)及び式(G13−2)において、G13a及びG13bは各々独立して、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−又は−NHCO−で表される2価の基を表す。各式に表されたフェニレン基は、1,4−フェニレン基又は1,3−フェニレン基であることが好ましい。式(G13−2)において、G13cは炭素数1〜4のアルキレン基又はシクロアルキレン基であり、G13dはメチル基であり、nは0〜2の整数である。
【0063】
式(AN−4)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN−4−1)〜式(AN−4−37)で表される化合物を挙げることができる。
【0064】
【化35】
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【0065】
【化36】
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【0066】
式(AN−4−17)において、mは1〜12の整数である。
【0067】
【化37】
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【0068】
【化38】
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【0069】
【化39】
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【0070】
[式(AN−5)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化40】
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【0071】
式(AN−5)において、R11は各々独立して水素原子又はメチル基を表す。2つのR11のうちベンゼン環上のR11は、ベンゼン環の置換可能な位置のいずれかに結合する。
【0072】
式(AN−5)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN−5−1)〜式(AN−5−3)で表される化合物を挙げることができる。
【0073】
【化41】
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【0074】
[式(AN−6)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化42】
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【0075】
式(AN−6)において、X11は各々独立して単結合又は−CH−を表す。X12は−CH−、−CHCH−又は−CH=CH−を表す。nは1又は2である。nが2であるとき、2つのX12は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0076】
式(AN−6)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN−6−1)〜式(AN−6−12)で表される化合物を挙げることができる。
【0077】
【化43】
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【0078】
[式(AN−7)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化44】
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【0079】
式(AN−7)において、X11は単結合又は−CH−を表す。
【0080】
式(AN−7)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN−7−1)、式(AN−7−2)で表される化合物を挙げることができる。
【0081】
【化45】
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【0082】
[式(AN−8)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化46】
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【0083】
式(AN−8)において、X11は単結合又は−CH−を表す。R12は水素原子、メチル基、エチル基又はフェニル基を表す。環A12はシクロヘキサン環又はシクロヘキセン環を表す。
【0084】
式(AN−8)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN−8−1)、式(AN−8−2)で表される化合物を挙げることができる。
【0085】
【化47】
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【0086】
[式(AN−9)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化48】
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【0087】
式(AN−9)において、rは各々独立して0又は1である。
【0088】
式(AN−9)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN−9−1)〜式(AN−9−3)で表される化合物を挙げることができる。
【0089】
【化49】
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【0090】
[式(AN−10−1)及び式(AN−10−2)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化50】
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【0091】
[式(AN−11)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化51】
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【0092】
式(AN−11)において、環A11は各々独立してシクロヘキサン環又はベンゼン環を表す。
【0093】
式(AN−11)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN−11−1)〜式(AN−11−3)で表される化合物を挙げることができる。
【0094】
【化52】
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【0095】
[式(AN−12)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化53】
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【0096】
式(AN−12)において、環A11は各々独立してシクロヘキサン環又はベンゼン環を表す。
【0097】
式(AN−12)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN−12−1)〜式(AN−12−3)で表される化合物を挙げることができる。
【0098】
【化54】
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【0099】
[式(AN−15)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化55】
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【0100】
式(AN−15)において、wは1〜10の整数である。
【0101】
式(AN−15)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN−15−1)〜式(AN−15−3)で表される化合物を挙げることができる。
【0102】
【化56】
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【0103】
上記以外のテトラカルボン酸二無水物として、下記の式(AN−16−1)〜式(AN−16−17)で表される化合物が挙げられる。
【0104】
【化57】
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【0105】
[テトラカルボン酸二無水物類のより好ましい例]
上記テトラカルボン酸二無水物において、後述する液晶配向膜の各特性を向上させる好適な材料について述べる。液晶配向膜を形成した際の異方性あるいは液晶配向性をさらに向上させることを重視する場合には、式(AN−3−2)、式(AN−4−5)、式(AN−4−29)又は式(AN−4−37)で表される化合物がより好ましい。
【0106】
液晶表示素子の透過率を向上させることを重視する場合には、式(AN−1−1)、式(AN−1−2)、式(AN−2−1)、式(AN−3−1)、式(AN−4−17)、式(AN−4−30)、式(AN−5−1)、式(AN−7−2)、式(AN−10−1)、式(AN−16−3)又は式(AN−16−4)で表される化合物が好ましく、中でも式(AN−1−2)においては、m=4〜8が好ましく、式(AN−4−17)においては、m=4〜8が好ましい。
【0107】
液晶表示素子のVHRを向上させることを重視する場合には、式(AN−1−1)、式(AN−1−2)、式(AN−2−1)、式(AN−3−1)、式(AN−4−17)、式(AN−4−30)、式(AN−7−2)、式(AN−10−1)、式(AN−16−3)、式(AN−16−4)又は式(AN−16−17)で表される化合物が好ましく、式(AN−1−2)においては、m=4〜8が好ましく、式(AN−4−17)においては、m=4〜8が好ましい。
【0108】
液晶配向膜の体積抵抗値を低下させることにより、液晶配向膜中の残留電荷(残留DC)の緩和速度を向上させることが、焼き付きを防ぐ方法の1つとして有効である。この目的を重視する場合には、式(AN−1−13)、式(AN−3−2)、式(AN−4−21)、式(AN−4−29)又は式(AN−11−3)で表される化合物が好ましい。
【0109】
式(AN−4−32)、式(AN−4−33)、式(AN−4−34)、式(AN−4−35)、及び式(AN−4−36)は光フリース転位反応を生じる可能性がある化合物である。本発明のジアミン化合物(1)は光反応性を有するため、これと組み合わせるテトラカルボン酸二無水物は光反応性を有することを必須としないが、本発明のジアミン化合物(1)と組み合わせて使用してもよい。
【0110】
ジアミン類
本発明でポリマーの原料組成物に用いるジアミン類は、本発明の一般式(1)で示されるジアミン化合物(ジアミン化合物(1))を含む。ジアミン化合物(1)の説明については、<ジアミン化合物>の欄の記載を参照することができる。ジアミン類が含むジアミン化合物(1)は、1種類であっても2種類以上であってもよい。また、ジアミン類は、ジアミン化合物(1)のみを含んでいてもよいし、その他のジアミン類を含んでいてもよい。
以下において、ジアミン類に用いうる、ジアミン化合物(1)以外のジアミン類(その他のジアミン類)について説明する。
【0111】
その他のジアミン類としては、公知のジアミン類から制限されることなく選択することができる。ここで、「その他のジアミン類」には、ジアミンの他、ジヒドラジドも包含されることとする。
また、ジアミンはその構造によって2種類に分けることができる。即ち、2つのアミノ基を結ぶ骨格を主鎖として見たときに、主鎖から分岐する基、即ち側鎖基を有するジアミンと側鎖基を持たないジアミンである。以下の説明では、このような側鎖基を有するジアミンを側鎖型ジアミンと称することがある。そして、このような側鎖基を持たないジアミンを非側鎖型ジアミンと称することがある。この側鎖基はプレチルト角を大きくする効果を有する基である。
原料組成物に用いるその他のジアミン類のジアミンは、側鎖型ジアミンであっても非側鎖型ジアミンであってもよく、その両方を組み合わせてもよい。非側鎖型ジアミンと側鎖型ジアミンを適切に使い分けることにより、それぞれに必要なプレチルト角に対応することができる。
【0112】
側鎖型ジアミンは、本発明の特性を損なわない程度に併用するのが好ましい。また側鎖型ジアミン及び非側鎖型ジアミンについて、液晶に対する垂直配向性、VHR、及び残像特性等の特性を向上させる目的で取捨選択して使用することが好ましい。
【0113】
[非側鎖型ジアミン]
既知の側鎖を有さないジアミンを以下の式(DI−1)〜(DI−16)に示す。
【0114】
【化58】
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【0115】
【化59】
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【0116】
【化60】
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【0117】
環を構成する炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示す。又、シクロヘキサン環又はベンゼン環上のアミノ基の結合位置は、G21、G22、G33、又はG34の結合位置を除く任意の位置である。
【0118】
上記の式(DI−1)において、G20は、−CH−又は式(DI−1−a)で表される基を表す。G20が−CH−であるとき、m個の−CH−の少なくとも1つは−NH−、−O−に置き換えられてもよく、m個の−CH−の少なくとも1つの水素原子は水酸基又はメチル基で置換されてもよい。mは1〜12の整数である。DI−1におけるmが2以上であるとき、複数のG20は互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、G20が下記式(DI−1−a)で表される基であるとき、mは1である。
【0119】
【化61】
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【0120】
式(DI−1−a)において、vは各々独立して1〜6の整数である。
【0121】
式(DI−3)、式(DI−6)及び式(DI−7)において、G21は各々独立して単結合、−NH−、−NCH−、−O−、−S−、−S−S−、−SO−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CONCH−、−CONH−、−C(CH−、−C(CF−、−(CH−、−O−(CH−O−、−N(CH)−(CH−N(CH)−、−(O−C−O−、−O−CH−C(CF−CH−O−、−O−CO−(CH−CO−O−、−CO−O−(CH−O−CO−、−(CH−NH−(CH−、−CO−(CH−NH−(CH−、−(NH−(CH−NH−、−CO−C−(NH−C−CO−又は−S−(CH−S−を表し、mは各々独立して1〜12の整数であり、kは各々独立して1〜5の整数であり、nは1又は2である。
【0122】
式(DI−4)において、sは各々独立して0〜2の整数である。
式(DI−4)においては、ベンゼン環の少なくとも1つの水素原子は、下記式(DI−4−a)〜(DI−4−i)のいずれかで表される基の群から選ばれる1つで置換されていてもよい。
【0123】
【化62】
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【0124】
【化63】
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【0125】
式(DI−4−a)及び式(DI−4−b)において、R20は各々独立して水素原子又はメチル基を表す。式(DI−4−f)及び式(DI−4−g)において、mは各々独立して0〜12の整数であり、Bocはtert−ブトキシカルボニル基である。
【0126】
式(DI−5)において、G33は単結合、−NH−、−NCH−、−O−、−S−、−S−S−、−SO−、−CO−、−COO−、−CONCH−、−CONH−、−C(CH−、−C(CF−、−(CH−、−O−(CH−O−、−N(CH)−(CH−N(CH)−、−(O−C−O−、−O−CH−C(CF−CH−O−、−O−CO−(CH−CO−O−、−CO−O−(CH−O−CO−、−(CH−NH−(CH−、−CO−(CH−NH−(CH−、−(NH−(CH−NH−、−CO−C−(NH−C−CO−、−S−(CH−S−、−N(Boc)−(CH−N(Boc)−、−NH−(CH−N(Boc)−、−N(Boc)−(CH−、−N(Boc)−(CH−N(CH)ー、−(CH−N(Boc)−CONH−(CH−、−(CH−N(Boc)−(CH−、下記式(DI−5−a)、下記式(DI−5−b)又は下記式(DI−5−c)で表される基であり、mは各々独立して1〜12の整数であり、kは1〜5の整数であり、eは2〜10の整数であり、nは1又は2である。Bocはt−ブトキシカルボニル基である。
【0127】
【化64】
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【0128】
式(DI−5−a)及び式(DI−5−c)において、qは各々独立して0〜6の整数である。R44は水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。
【0129】
式(DI−6)において、G34は各々独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−C(CH−、−C(CF−又は炭素数1〜10のアルキレン基を表し、環A12はシクロヘキサン環又はベンゼン環を表す。
【0130】
式(DI−7)において、G22は各々独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−C(CH−、−C(CF−又は炭素数1〜10のアルキレン基を表す。
【0131】
式(DI−2)〜式(DI−7)中のシクロヘキサン環及びベンゼン環の少なくとも1つの水素原子は、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜3のアルキル基、メトキシ基、水酸基、トリフルオロメチル基、カルボキシ基、カルバモイル基、フェニルアミノ基、フェニル基又はベンジル基で置換されてもよい。式(DI−5)においては、G33が単結合の時にはベンゼン環の少なくとも1つの水素原子はN−(tert−ブトキシカルボニル)アミノ基又はN,N−ビス(tert−ブトキシカルボニル)アミノ基で置換されてもよい。
【0132】
式(DI−11)において、rは0又は1である。式(DI−8)〜式(DI−11)において、環に結合するアミノ基の結合位置は、任意の位置である。
【0133】
式(DI−12)において、R21及びR22は、各々独立して炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基を表し、G23は各々独立して炭素数1〜6のアルキレン基、フェニレン基、又はアルキル基で置換されたフェニレン基を表し、wは1〜10の整数である。
【0134】
式(DI−13)において、R23は各々独立して炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基又は塩素原子を表し、pは各々独立して0〜3の整数であり、qは0〜4の整数である。
【0135】
式(DI−14)において、環Bは単環の複素環式芳香族基を表し、R24は水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、又はアルキニル基を表し、qは各々独立して0〜4の整数である。qが2以上であるとき、複数のR24は互いに同一であっても異なっていてもよい。式(DI−15)において、環Cは複素環式芳香族基又は複素環式脂肪族基を表す。式(DI−16)において、G24は単結合、炭素数2〜6のアルキレン基又は1,4−フェニレン基を表し、rは0又は1である。そして、環を構成する炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示す。式(DI−13)〜式(DI−16)において、環に結合するアミノ基の結合位置は、任意の位置である。
【0136】
次に、既知の側鎖を有さないジアミンについて、具体例を挙げてさらに詳細に説明する。式(DI−1)で表されるジアミンの例を以下の式(DI−1−1)〜式(DI−1−9)に示す。
【0137】
【化65】
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【0138】
式(DI−1−7)及び式(DI−1−8)において、kは各々独立して、1〜3の整数である。式(DI−1−9)において、vは各々独立して1〜6の整数である。
【0139】
式(DI−2)〜式(DI−3)で表されるジアミンの例を以下の式(DI−2−1)、式(DI−2−2)、式(DI−3−1)〜式(DI−3−3)に示す。
【0140】
【化66】
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【0141】
式(DI−4)で表されるジアミンの例を以下の式(DI−4−1)〜式(DI−4−29)に示す。
【0142】
【化67】
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【0143】
【化68】
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【0144】
【化69】
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【0145】
【化70】
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【0146】
【化71】
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【0147】
【化72】
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【0148】
式(DI−4−20)及び(DI−4−21)において、mは1〜12の整数である。これらの式において、Bocはtert−ブトキシカルボニル基である。
【0149】
【化73】
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【0150】
式(DI−5)で表されるジアミンの例を以下の式(DI−5−1)〜式(DI−5−50)に示す。
【0151】
【化74】
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【0152】
式(DI−5−1)において、mは1〜12の整数である。
【0153】
【化75】
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【0154】
式(DI−5−12)及び式(DI−5−13)において、mは各々独立して1〜12の整数である。
【0155】
【化76】
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【0156】
式(DI−5−16)において、vは1〜6の整数である。
【0157】
【化77】
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【0158】
式(DI−5−30)において、kは1〜5の整数である。
【0159】
【化78】
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【0160】
式(DI−5−35)〜式(DI−5−37)及び式(DI−5−39)において、mは各々独立して1〜12の整数であり、式(DI−5−38)及び式(DI−5−39)において、kは各々独立して1〜5の整数であり、式(DI−5−40)において、nは1又は2の整数である。
【0161】
【化79】
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【0162】
式(DI−5−42)〜式(DI−5−44)において、eは2〜10の整数であり、式(DI−5−45)においてR43は、各々独立して水素原子、N−(tert−ブトキシカルボニル)アミノ基又はN,N−ビス(tert−ブトキシカルボニル)アミノ基である。式(DI−5−42)〜式(DI−5−44)において、Bocはtert−ブトキシカルボニル基である。
【0163】
【化80】
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【0164】
【化81】
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【0165】
式(DI−6)で表されるジアミンの例を以下の式(DI−6−1)〜式(DI−6−10)に示す。
【0166】
【化82】
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【0167】
式(DI−7)で表されるジアミンの例を以下の式(DI−7−1)〜式(DI−7−11)に示す。
【0168】
【化83】
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【0169】
式(DI−7−3)及び式(DI−7−4)において、mは1〜12の整数であり、nは各々独立して1又は2である。
【0170】
【化84】
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【0171】
【化85】
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【0172】
式(DI−8)で表されるジアミンの例を以下の式(DI−8−1)〜式(DI−8−4)に示す。
【0173】
【化86】
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【0174】
式(DI−9)で表されるジアミンの例を以下の式(DI−9−1)〜式(DI−9−3)に示す。
【0175】
【化87】
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【0176】
式(DI−10)で表されるジアミンの例を以下の式(DI−10−1)、式(DI−10−2)に示す。
【0177】
【化88】
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【0178】
式(DI−11)で表されるジアミンの例を以下の式(DI−11−1)〜式(DI−11−3)に示す。
【0179】
【化89】
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【0180】
式(DI−12)で表されるジアミンの例を以下の式(DI−12−1)に示す。
【0181】
【化90】
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【0182】
式(DI−13)で表されるジアミンの例を以下の式(DI−13−1)〜式(DI−13−13)に示す。
【0183】
【化91】
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【0184】
【化92】
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【0185】
【化93】
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【0186】
式(DI−14)で表されるジアミンの例を以下の式(DI−14−1)〜式(DI−14−9)に示す。
【0187】
【化94】
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【0188】
式(DI−15)で表されるジアミンの例を以下の式(DI−15−1)〜式(DI−15−12)に示す。
【0189】
【化95】
[この文献は図面を表示できません]
【0190】
【化96】
[この文献は図面を表示できません]
【0191】
式(DI−16)で表されるジアミンの例を以下の式(DI−16−1)に示す。
【0192】
【化97】
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【0193】
[非側鎖型ジヒドラジド]
次に、本発明のポリマーの原料組成物に用いうるジヒドラジドについて説明する。既知の側鎖を有さないジヒドラジドとしては、以下の式(DIH−1)〜(DIH−3)のいずれかで表される化合物を挙げることができる。
【0194】
【化98】
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【0195】
式(DIH−1)において、G25は単結合、炭素数1〜20のアルキレン基、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−C(CH−又は−C(CF−を表す。
式(DIH−2)において、環Dはシクロヘキサン環、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、この基の少なくとも1つの水素原子はメチル基、エチル基又はフェニル基で置換されてもよい。式(DIH−3)において、環Eは各々独立してシクロヘキサン環又はベンゼン環を表し、この基の少なくとも1つの水素原子はメチル基、エチル基又はフェニル基で置換されてもよい。複数の環Eは互いに同一であっても異なっていてもよい。式(DIH−3)において、Yは単結合、炭素数1〜20のアルキレン基、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−C(CH−又は−C(CF−を表す。式(DIH−2)及び式(DIH−3)において、環に結合するヒドラジド基の結合位置は、任意の位置である。
【0196】
式(DIH−1)〜(DIH−3)のいずれかで表される化合物の例を以下の式(DIH−1−1)、式(DIH−1−2)、式(DIH−2−1)〜式(DIH−2−3)、式(DIH−3−1)〜式(DIH−3−6)に示す。
【0197】
【化99】
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式(DIH−1−2)において、mは1〜12の整数である。
【0198】
【化100】
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【0199】
【化101】
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【0200】
[側鎖型ジアミン]
プレチルト角を大きくする目的に適したジアミンについて説明する。プレチルト角を大きくする目的に適した側鎖基をもったジアミンとしては、式(DI−31)〜式(DI−35)、及び式(DI−36−1)〜式(DI−36−8)のいずれかで表されるジアミンが挙げられる。
【0201】
【化102】
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【0202】
式(DI−31)において、G26は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−又は−(CHma−を表し、maは1〜12の整数である。G26の好ましい例は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CHO−及び炭素数1〜3のアルキレン基であり、特に好ましい例は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−CH−及び−CHCH−である。R25は炭素数3〜30のアルキル基、フェニル基、ステロイド骨格を有する基又は下記の式(DI−31−a)で表される基を表す。このアルキル基において、少なくとも1つの水素原子はフッ素原子で置換されてもよく、そして少なくとも1つの−CH−は−O−、−CH=CH−又は−C≡C−で置換されていてもよい。このフェニル基の水素原子は、フッ素原子、メチル基、メトキシ基、フルオロメチルオキシ基、ジフルオロメチルオキシ基、トリフルオロメチルオキシ基炭素数3〜30のアルキル基又は炭素数3〜30のアルコキシ基で置換されていてもよい。ベンゼン環に結合するアミノ基の結合位置はその環において任意の位置であることを示すが、その結合位置は、互いにメタ位又はパラ位の関係となる位置であることが好ましい。即ち、基「R25−G26−」の結合位置を1位としたとき、2つのアミノ基の結合位置は3位と5位、又は2位と5位であることが好ましい。
【0203】
【化103】
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【0204】
式(DI−31−a)において、G27、G28及びG29は結合基であり、これらは、各々独立して単結合又は炭素数1〜12のアルキレン基であり、このアルキレン基の1以上の−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−又は−CH=CH−で置換されていてもよい。環B21、環B22、環B23及び環B24は、各々独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、ナフタレン−2,7−ジイル基又はアントラセン−9,10−ジイル基を表し、環B21、環B22、環B23及び環B24において、少なくとも1つの水素原子はフッ素原子又はメチル基で置換されてもよく、s、t及びuは、各々独立して0〜2の整数であって、これらの合計は1〜5であり、s、t又はuが2であるとき、各々の括弧内の2つの結合基は同じであっても異なってもよく、そして、2つの環は同じであっても異なっていてもよい。R26は水素原子、フッ素原子、水酸基、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のフッ素置換アルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、シアノ基、フルオロメチルオキシ基、ジフルオロメチルオキシ基又はトリフルオロメチルオキシ基を表し、この炭素数1〜30のアルキル基、または炭素数1〜30のアルコキシ基の少なくとも1つの−CH−は下記式(DI−31−b)で表される2価の基で置換されていてもよい。
【0205】
【化104】
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【0206】
式(DI−31−b)において、R27及びR28は、各々独立して炭素数1〜3のアルキル基であり、vは1〜6の整数である。
【0207】
【化105】
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【0208】
式(DI−32)及び式(DI−33)において、G30は各々独立して単結合、−CO−又は−CH−を表し、R29は各々独立して水素原子又はメチル基を表し、R30は各々独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基を表す。式(DI−33)におけるベンゼン環の少なくとも1つの水素原子は、炭素数1〜20のアルキル基又はフェニル基で置換されてもよい。そして、環を構成するいずれかの炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示す。式(DI−32)における2つの基「アミノフェニル−G30−O−」の一方はステロイド核の3位に結合し、もう一方はステロイド核の6位に結合していることが好ましい。式(DI−33)における2つの基「アミノフェニル−G30−O−」のベンゼン環への結合位置は、ステロイド核の結合位置に対して、それぞれメタ位又はパラ位であることが好ましい。式(DI−32)及び式(DI−33)において、ベンゼン環に結合するアミノ基はその環における結合位置が任意であることを示す。
【0209】
【化106】
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【0210】
式(DI−34)及び式(DI−35)において、G31は各々独立して−O−又は炭素数1〜6のアルキレン基を表し、G32は単結合又は炭素数1〜3のアルキレン基を表す。R31は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、このアルキル基の少なくとも1つの−CH−は、−O−、−CH=CH−又は−C≡C−で置き換えられてもよい。R32は炭素数6〜22のアルキル基を表し、R33は水素原子又は炭素数1〜22のアルキル基を表す。環B25は1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基であり、rは0又は1である。そしてベンゼン環に結合するアミノ基はその環における結合位置が任意であることを示すが、各々独立してG31の結合位置に対してメタ位又はパラ位であることが好ましい。
【0211】
さらに具体的に、式(DI−31)で表される化合物の例を以下の式(DI−31−1)〜式(DI−31−55)に示す。
【0212】
【化107】
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【0213】
式(DI−31−1)〜式(DI−31−11)において、R34は各々独立して炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数1〜30のアルコキシ基を表し、好ましくは炭素数5〜25のアルキル基又は炭素数5〜25のアルコキシ基である。R35は各々独立して炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数1〜30のアルコキシ基を表し、好ましくは炭素数3〜25のアルキル基又は炭素数3〜25のアルコキシ基である。
【0214】
【化108】
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【0215】
式(DI−31−12)〜(DI−31−17)において、R36は各々独立して炭素数4〜30のアルキル基を表し、好ましくは炭素数6〜25のアルキル基である。R37は各々独立して炭素数6〜30のアルキル基を表し、好ましくは炭素数8〜25のアルキル基である。
【0216】
【化109】
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【0217】
【化110】
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【0218】
【化111】
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【0219】
【化112】
[この文献は図面を表示できません]
【0220】
【化113】
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【0221】
式(DI−31−18)〜式(DI−31−43)において、R38は各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基を表し、好ましくは炭素数3〜20のアルキル基又は炭素数3〜20のアルコキシ基である。R39は各々独立して水素原子、フッ素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、シアノ基、フルオロメチルオキシ基、ジフルオロメチルオキシ基又はトリフルオロメチルオキシ基を表し、好ましくは炭素数3〜25のアルキル基又は炭素数3〜25のアルコキシ基である。そしてG33は炭素数1〜20のアルキレン基を表す。
【0222】
【化114】
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【0223】
【化115】
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【0224】
【化116】
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【0225】
【化117】
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【0226】
式(DI−32)で表される化合物の例を以下の式(DI−32−1)〜式(DI−32−4)に示す。
【0227】
【化118】
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【0228】
式(DI−33)で表される化合物の例を以下の式(DI−33−1)〜式(DI−33−8)に示す。
【0229】
【化119】
[この文献は図面を表示できません]
【0230】
【化120】
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【0231】
式(DI−34)で表される化合物の例を以下の式(DI−34−1)〜式(DI−34−12)に示す。
【0232】
【化121】
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【0233】
【化122】
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【0234】
【化123】
[この文献は図面を表示できません]
【0235】
【化124】
[この文献は図面を表示できません]
【0236】
式(DI−34−1)〜式(DI−34−12)において、R40は各々独立して水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基、好ましくは水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表し、そしてR41は各々独立して水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を表す。
【0237】
式(DI−35)で表される化合物の例を以下の式(DI−35−1)〜式(DI−35−3)に示す。
【0238】
【化125】
[この文献は図面を表示できません]
【0239】
式(DI−35−1)〜式(DI−35−3)において、R37は各々独立して炭素数6〜30のアルキル基を表し、R41は各々独立して水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を表す。
【0240】
式(DI−36−1)〜式(DI−36−8)で表される化合物を以下に示す。
【0241】
【化126】
[この文献は図面を表示できません]
【0242】
式(DI−36−1)〜式(DI−36−8)において、R42は各々独立して炭素数3〜30のアルキル基を表す。
【0243】
[その他のジアミン類のより好ましい例]
上記ジアミン類において、後述する液晶配向膜の各特性を向上させる好適な材料について述べる。光配向膜を形成した際の異方性あるいは液晶配向性を向上させることを重視する場合には、式(DI−1−3)、式(DI−5−1)、式(DI−5−5)、式(DI−5−9)、式(DI−5−12)、式(DI−5−13)、式(DI−5−29)、式(DI−6−7)、式(DI−7−3)又は式(DI−11−2)で表される化合物を用いるのが好ましい。式(DI−5−1)においては、m=2〜8が好ましく、m=2〜4がより好ましい。式(DI−5−12)においては、m=2〜6が好ましく、m=2〜4がより好ましい。式(DI−5−13)においては、m=1又は2が好ましく、m=1がより好ましい。
【0244】
透過率を向上させることを重視する場合には、式(DI−1−3)、式(DI−2−1)、式(DI−5−1)、式(DI−5−5)、式(DI−5−24)又は式(DI−7−3)で表されるジアミンを用いるのが好ましく、式(DI−2−1)で表される化合物がより好ましい。式(DI−5−1)においては、m=2〜8が好ましく、m=8がより好ましい。式(DI−7−3)においては、m=2又は3、n=1又は2が好ましく、m=3、n=1がより好ましい。
【0245】
液晶表示素子のVHRを向上させることを重視する場合には、式(DI−2−1)、式(DI−4−1)、式(DI−4−2)、式(DI−4−10)、式(DI−4−15)、式(DI−4−22)、式(DI−5−1)、式(DI−5−28)、式(DI−5−30)又は式(DI−13−1)で表される化合物を用いるのが好ましく、式(DI−2−1)、式(DI−5−1)又は式(DI−13−1)で表されるジアミンがより好ましい。式(DI−5−1)においては、m=1が好ましい。式(DI−5−30)においては、k=2が好ましい。
【0246】
液晶配向膜の体積抵抗値を低下させることにより、液晶配向膜中の残留電荷(残留DC)の緩和速度を向上させることが、焼き付きを防ぐ方法の1つとして有効である。この目的を重視する場合には、式(DI−4−1)、式(DI−4−2)、式(DI−4−10)、式(DI−4−15)、式(DI−5−1)、式(DI−5−12)、式(DI−5−13)、式(DI−5−28)、式(DI−4−20)、式(DI−4−21)、又は式(DI−16−1)で表される化合物を用いるのが好ましく、式(DI−4−1)、式(DI−5−1)又は式(DI−5−13)で表される化合物がより好ましい。式(DI−5−1)において、m=2〜8が好ましく、m=4〜8がより好ましい。式(DI−5−12)においては、m=2〜6が好ましく、m=5がより好ましい。式(DI−5−13)においては、m=1又は2が好ましく、m=1がより好ましい。
【0247】
[その他の光反応性ジアミン類]
上記のように、本発明のジアミン化合物(1)は光反応性を示すため、これと併用するその他のジアミン類は光反応性を有することを必須としないが、光反応性を示すジアミン類をジアミン化合物(1)と併用してもよい。例えば光フリース転位反応を生じる可能性がある、その他の光反応性ジアミン化合物として、式(DI−5−32)、式(DI−5−33)、式(DI−5−35)、式(DI−5−36)、式(DI−6−8)、式(DI−6−9)、式(DI−6−10)で表される化合物を挙げることができる。
【0248】
【化127】
[この文献は図面を表示できません]

式(DI−5−35)、式(DI−5−36)において、mは1〜12の整数である。
【0249】
[原料組成物における一般式(1)で表されるジアミン化合物の配合量]
本発明で使用するポリマーの原料組成物において、ジアミン化合物(1)を原料組成物に用いるポリマーにおけるジアミン化合物(1)の配合量は、原料として使用するジアミン類の全量に対して、40〜100モル%が好ましく、50〜100モル%がより好ましい。本発明で使用するポリマーがブロックポリマーである場合におけるジアミン化合物(1)の配合量は、原料として使用するジアミン類の全量に対して、10〜100モル%が好ましく、20〜70モル%がより好ましい。
【0250】
本発明で使用するポリマーの原料組成物において、ジアミン類の一部がモノアミン及びモノヒドラジドからなる群から選択された少なくとも1つに置き換えられていてもよい。置き換える割合は、ジアミン類に対するモノアミン及びモノヒドラジドからなる群から選択された少なくとも1つの比率が40モル%以下の範囲であることが好ましい。このような置き換えは、ポリアミック酸を生成する際の重合反応のターミネーションを起こすことができ、それ以上の重合反応の進行を抑えることができる。このため、このような置き換えによって、得られるポリマー(ポリアミック酸又はその誘導体)の分子量を容易に制御することができ、例えば本発明の効果が損われることなく液晶配向剤の塗布特性を改善することができる。モノアミン又はモノヒドラジドで置き換えられてもよいジアミン類は、本発明の効果が損なわれなければ、1種でも2種以上でもよい。前記モノアミンとしては、例えばアニリン、4−ヒドロキシアニリン、シクロヘキシルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、エイコシルアミン、パラアミノフェニルトリメトキシシラン、及び3−アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0251】
本発明で使用するポリマーの原料組成物は、モノマーとしてモノイソシアネート化合物をさらに含んでいてもよい。モノイソシアネート化合物をモノマーに含むことによって、得られるポリアミック酸又はその誘導体の末端が修飾され、分子量が調節される。この末端修飾型のポリアミック酸又はその誘導体を用いることにより、例えば本発明の効果が損われることなく液晶配向剤の塗布特性を改善することができる。モノマー中のモノイソシアネート化合物の含有量は、モノマー中のジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の総量に対して1〜10モル%であることが、前記の観点から好ましい。モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネート、及びナフチルイソシアネートが挙げられる。
【0252】
本発明のポリマーは、液晶配向膜、光学異方体、位相差膜、光学補償膜、反射防止膜、各種フィルム、又は光学部材等の材料に用いることができる。ここで、本発明のポリマーを液晶配向膜、光学異方体、位相差膜、光学補償膜、反射防止膜、各種フィルム、又は光学部材等に用いる場合、これらのものは本発明のポリマー1種類で構成されていてもよく、本発明のポリマーが2種類以上混合されていてもよい。これらの用途の内、より配向性を重視する用途、例えば位相差膜においては、本発明のポリマー1種類で構成されていることが好ましい。
【0253】
<液晶配向剤>
以下において、本発明のポリマーによる液晶配向剤について詳細に説明する。
本発明の液晶配向剤は、本発明のポリマーを含むことを特徴とする。本発明のポリマーの説明については、<ポリマー>の欄の記載を参照することができる。
本発明の液晶配向剤が含む本発明のポリマーは、1種類であっても2種類以上であってもよい。また、本発明の液晶配向剤が含むポリマーは、本発明のポリマーのみであってもよく、本発明のポリマーに、本発明のポリマー以外のポリマー(その他のポリマー)を混合した混合物であってもよい。なお、本明細書において、ポリマーを1種類のみ含有する液晶配向剤を単層型液晶配向剤と称することがある。ポリマーを2種以上含有する液晶配向剤をブレンド型液晶配向剤と称することがある。ブレンド型液晶配向剤は、特にVHR信頼性やその他の電気的特性を重視する場合に用いられる。
ブレンド型液晶配向剤に用いるその他のポリマーとしては、ポリアミック酸又はその誘導体のいずれか1つ以上が好ましい。その他のポリマーとしてのポリアミック酸又はその誘導体には、一般式(1)で示されるジアミン化合物以外のジアミン類(その他のジアミン類)とテトラカルボン酸二無水物類を含む原料組成物を重合してなるポリマーを用いることができる。テトラカルボン酸二無水物類及びその他のジアミン類の説明については、上記の<ポリマー>の欄の対応する記載を参照することができる。
【0254】
2成分のポリマーを用いる場合、例えば、一方には液晶配向能に優れた性能を有するポリマーを選択し、他方には液晶表示素子の電気的特性を改善するのに優れた性能を有するポリマーを選択する態様があり、液晶配向性と電気特性のバランスの良い液晶配向剤を得るために好適である。
また、この場合、それぞれのポリマーの構造や分子量を制御することにより、一方のポリマーを薄膜の上層に偏析させ、他方のポリマーを薄膜の下層に偏析させることができる。すなわち、こうしたポリマーの構造や分子量の制御により、2種類のポリマーを溶剤に溶解して調製した液晶配向剤の塗膜に、予備乾燥を行って薄膜を形成する過程で、液晶配向能に優れたポリマーを薄膜の上層に、液晶表示素子の電気的特性改善能に優れたポリマーを薄膜の下層に偏析させることができる。これには、混在するポリマーのうち、表面エネルギーの小さなポリマーが上層に、表面エネルギーの大きなポリマーが下層に分離する現象を応用することができる。このような相分離の確認は、形成された液晶配向膜の表面エネルギーが、上層に偏析させることを意図したポリマーのみを含有する液晶配向剤によって形成された膜の表面エネルギーと同じか、または近い値であることで確認することができる。
【0255】
層分離を発現させる方法として、上層に偏析させるポリマーの分子量を下層に偏析させるポリマーの分子量よりも小さくする方法や、上層に偏析させるポリマーをポリイミドとする方法が挙げられる。
【0256】
ここで、一般式(1)で表されるジアミン化合物は、薄膜の上層に偏析させるポリマーの原料モノマーとして用いられてもよく、薄膜の下層に偏析させるポリマーの原料モノマーとして用いられてもよく、また、両方のポリマーの原料モノマーとして用いられてもよいが、薄膜の上層に偏析させるポリマーの原料モノマーとして用いることが好ましい。
【0257】
薄膜の上層に偏析させるポリアミック酸又はその誘導体の原料組成物に用いるテトラカルボン酸二無水物としては、上記に例示した公知のテトラカルボン酸二無水物から制限されることなく選択することができる。
【0258】
薄膜の上層に偏析させるポリアミック酸又はその誘導体の原料組成物に用いるテトラカルボン酸二無水物は、式(AN−1−1)、式(AN−1−2)、式(AN−2−1)、式(AN−3−1)、式(AN−4−5)、式(AN−4−17)又は式(AN−4−21)で表される化合物が好ましく、式(AN−4−17)又は式(AN−4−21)がより好ましい。式(AN−4−17)においては、m=4〜8が好ましい。
【0259】
薄膜の上層に偏析させるポリアミック酸又はその誘導体の原料組成物に用いるジアミン類であって、式(1)で表されるジアミン化合物以外のジアミン類としては、上記に例示した公知のジアミン類から制限されることなく選択することができる。
【0260】
薄膜の上層に偏析させるポリアミック酸又はその誘導体の原料組成物に用いるジアミン類であって、式(1)で表されるジアミン化合物以外のジアミン類としては、式(DI−4−1)、式(DI−4−13)、式(DI−4−15)、式(DI−5−1)、式(DI−7−3)又は式(DI−13−1)で表される化合物を用いるのが好ましい。中でも、式(DI−4−13)、式(DI−4−15)、式(DI−5−1)又は式(DI−13−1)で表される化合物を用いるのがより好ましい。式(DI−5−1)において、m=4〜8が好ましい。式(DI−7−3)においてはm=3、n=1が好ましい。
【0261】
薄膜の下層に偏析させるポリアミック酸又はその誘導体の原料組成物に用いるテトラカルボン酸二無水物としては、上記に例示した公知のテトラカルボン酸二無水物から制限されることなく選択することができる。
【0262】
薄膜の下層に偏析させるポリアミック酸又はその誘導体の原料組成物に用いるテトラカルボン酸二無水物としては、式(AN−1−1)、式(AN−1−13)、式(AN−2−1)、式(AN−3−2)又は式(AN−4−21)で表される化合物が好ましく、式(AN−1−1)、式(AN−2−1)又は式(AN−3−2)で表される化合物がより好ましい。
【0263】
薄膜の下層に偏析させるポリアミック酸又はその誘導体の原料組成物に用いるテトラカルボン酸二無水物は、テトラカルボン酸二無水物の全量中に芳香族テトラカルボン酸二無水物を10モル%以上含むことが好ましく、30モル%以上含むことがより好ましい。
【0264】
薄膜の下層に偏析させるポリアミック酸又はその誘導体の原料組成物に用いるジアミン類であって、式(1)で表されるジアミン化合物以外のジアミン類としては、上記に例示した公知のジアミン類から制限されることなく選択することができる。
【0265】
薄膜の下層に偏析させるポリアミック酸又はその誘導体の原料組成物に用いるジアミン類であって、式(1)で表されるジアミン化合物以外ジアミン類としては、式(DI−4−1)、式(DI−4−2)、式(DI−4−10)、式(DI−4−18)、式(DI−4−19)、式(DI−5−1)、式(DI−5−9)、式(DI−5−28)、式(DI−5−30)、式(DI−13−1)又は式(DIH−2−1)で表される化合物が好ましい。式(DI−5−1)において、m=1又は2である化合物が好ましく、式(DI−5−30)において、k=2である化合物が好ましい。中でも、式(DI−4−1)、式(DI−4−18)、式(DI−4−19)、式(DI−5−9)、式(DI−13−1)又は式(DIH−2−1)で表される化合物がより好ましい。
【0266】
薄膜の下層に偏析させるポリアミック酸又はその誘導体の原料組成物に用いるジアミン類は、芳香族ジアミン及び芳香族ジヒドラジドからなる群から選択された少なくとも1つを、全ジアミン類に対して、30モル%以上含むものである事が好ましく、50モル%以上含むものであることがより好ましい。
【0267】
薄膜の上層に偏析するポリアミック酸又はその誘導体と、薄膜の下層に偏析するポリアミック酸又はその誘導体の合計量に対する、薄膜の上層に偏析するポリアミック酸又はその誘導体の割合は、5重量%〜50重量%が好ましく、10重量%〜40重量%がさらに好ましい。
【0268】
また、本発明の液晶配向剤は、液晶配向剤の塗布性や、ポリアミック酸又はその誘導体の濃度の調整の観点から、溶剤をさらに含有していてもよい。溶剤には、高分子成分を溶解する能力を持った溶剤であれば格別制限なく使用可能であり、例えばポリアミック酸、可溶性ポリイミド等のポリマー成分の製造工程や各用途において通常使用されている溶剤、ポリアミック酸又はその誘導体の親溶剤、塗布性改善を目的とした他の溶剤から、使用目的に応じて適宜選択することができる。溶剤は1種でも2種以上の混合溶剤であってもよい。
【0269】
ポリアミック酸又はその誘導体に対し親溶剤である非プロトン性極性有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルイソブチルアミド、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等が挙げられる。これらの中で、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン又はγ−バレロラクトンが好ましい。
【0270】
塗布性改善等を目的とした他の溶剤の例としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテルが挙げられる。また、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1−ブトキシ−2−プロパノール等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、フェニルアセテート、及びこれらアセテート類等のエステル化合物が挙げられる。さらにマロン酸ジエチル等のマロン酸ジアルキル、乳酸アルキル、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、3−メチル−3−メトキシブチルアルコール、4−メチル−2−ペンタノール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、テトラリン、及びイソホロンが挙げられる。
【0271】
これらの中で、ジイソブチルケトン、4−メチル−2−ペンタノール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、1−ブトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル又はブチルセロソルブアセテートが好ましい。
【0272】
本発明の液晶配向剤におけるポリマー濃度は特に限定されるものではなく、下記の種々の塗布法に合わせ最適な値を選べばよい。通常、塗布時のムラやピンホール等を抑えるため、液晶配向剤重量に対し、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは1〜10重量%である。
【0273】
本発明の液晶配向剤の粘度は、塗布する方法、ポリアミック酸又はその誘導体の濃度、使用するポリアミック酸又はその誘導体の種類、溶剤の種類と割合によって好ましい範囲が異なる。例えば、印刷機による塗布の場合は5〜100mPa・s(より好ましくは10〜80mPa・s)である。5mPa・s以上であれば十分な膜厚が得られやすくなり、100mPa・s以下であれば印刷ムラを抑えやすくなる。スピンコートによる塗布の場合は5〜200mPa・s(より好ましくは10〜100mPa・s)が適している。インクジェット塗布装置を用いて塗布する場合は5〜50mPa・s(より好ましくは5〜20mPa・s)が適している。液晶配向剤の粘度は回転粘度測定法により測定され、例えば回転粘度計(東機産業製TVE−20L型)を用いて測定(測定温度:25℃)される。
【0274】
本発明の液晶配向剤は、ポリマー成分のみから構成されていてもよいし、各種添加剤をさらに含有していてもよい。各種添加剤は、配向膜の各種特性を向上させるために、それぞれの目的に応じて選択して使用することができる。以下に、液晶配向剤に用いうる添加剤の例を示す。
【0275】
(アルケニル置換ナジイミド化合物)
例えば、本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子の電気特性を長期に安定させる目的から、アルケニル置換ナジイミド化合物をさらに含有していてもよい。アルケニル置換ナジイミド化合物は1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。アルケニル置換ナジイミド化合物の含有量は、上記の目的から、ポリアミック酸又はその誘導体に対して1〜50重量%であることが好ましく、1〜30重量%であることがより好ましく、1〜20重量%であることがさらに好ましい。アルケニル置換ナジイミド化合物は、本発明で用いられるポリアミック酸又はその誘導体を溶解する溶剤に溶解させることができる化合物であることが好ましい。好ましいアルケニル置換ナジイミド化合物には、特開2008−096979号公報、特開2009−109987号公報、特開2013−242526号公報に開示されているアルケニル置換ナジイミド化合物が挙げられる。特に好ましいアルケニル置換ナジイミド化合物としては、ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、N,N’−m−キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)又はN,N’−ヘキサメチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)が挙げられる。
【0276】
(ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物)
例えば、本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子の電気特性を長期に安定させる目的から、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物をさらに含有していてもよい。ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物は1種の化合物であってもよいし、2種以上の化合物であってもよい。なお、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物にはアルケニル置換ナジイミド化合物は含まれない。ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物には、好ましいものとして、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−ジヒドロキシエチレン−ビスアクリルアミド、エチレンビスアクリレート、4,4’−メチレンビス(N,N−ジヒドロキシエチレンアクリレートアニリン)、シアヌル酸トリアリル、他に、特開2009−109987号公報、特開2013−242526号公報、国際公開第2014/119682号、国際公開第2015/152014号に開示されているラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物が挙げられる。ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物の含有量は、上記の目的から、ポリアミック酸又はその誘導体に対して1〜50重量%であることが好ましく、1〜30重量%であることがより好ましい。
【0277】
(オキサジン化合物)
例えば、本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子における電気特性を長期に安定させる目的から、オキサジン化合物をさらに含有していてもよい。オキサジン化合物は1種の化合物であってもよいし、2種以上の化合物であってもよい。オキサジン化合物の含有量は、上記の目的から、ポリアミック酸又はその誘導体に対して0.1〜50重量%であることが好ましく、1〜40重量%であることがより好ましく、1〜20重量%であることがさらに好ましい。
【0278】
オキサジン化合物は、ポリアミック酸又はその誘導体を溶解させる溶剤に可溶であり、加えて、開環重合性を有するオキサジン化合物が好ましい。好ましいオキサジン化合物には、式(OX−3−1)、式(OX−3−9)、式(OX−3−10)で表されるオキサジン化合物、他に、特開2007−286597号公報、特開2013−242526号公報に開示されているオキサジン化合物が挙げられる。
【0279】
【化128】
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【0280】
(オキサゾリン化合物)
例えば、本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子における電気特性を長期に安定させる目的から、オキサゾリン化合物をさらに含有していてもよい。オキサゾリン化合物はオキサゾリン構造を有する化合物である。オキサゾリン化合物は1種の化合物であってもよいし、2種以上の化合物であってもよい。オキサゾリン化合物の含有量は、上記の目的から、ポリアミック酸又はその誘導体に対して0.1〜50重量%であることが好ましく、1〜40重量%であることがより好ましく、1〜20重量%であることがさらに好ましい。好ましいオキサゾリン化合物には、特開2010−054872号公報、特開2013−242526号公報に開示されているオキサゾリン化合物が挙げられる。より好ましくは、1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼンが挙げられる。
【0281】
(エポキシ化合物)
例えば、本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子における電気特性を長期に安定させる目的、膜の硬度を向上させる目的、もしくはシール剤との密着性を向上させる目的から、エポキシ化合物をさらに含有していてもよい。エポキシ化合物は1種の化合物であってもよいし、2種以上の化合物であってもよい。エポキシ化合物の含有量は、上記の目的から、ポリアミック酸又はその誘導体に対して0.1〜50重量%であることが好ましく、1〜20重量%であることがより好ましく、1〜10重量%であることがさらに好ましい。
エポキシ化合物としては、分子内にエポキシ環を1つ又は2つ以上有する種々の化合物を用いることができる。
膜の硬度を向上させる目的、もしくはシール剤との密着性を向上させる目的のためには、分子内にエポキシ環を2つ以上有する化合物が好ましく、3つ又は4つ有する化合物がより好ましい。
エポキシ化合物としては、特開2009−175715号公報、特開2013−242526号公報、特開2016−170409号公報、国際公開第2017/217413号に開示されているエポキシ化合物等が挙げられる。好ましいエポキシ化合物としては、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、(3,3’,4,4’−ジエポキシ)ビシクロヘキシル、1,1’−ビ−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、1,4−ブタンジオールグリシジルエーテル、イソシアヌル酸トリス(2,3−エポキシプロピル)、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン又はN,N,N’,N‘−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンが挙げられる。
上記の他、エポキシ環を有するオリゴマーや重合体を添加することもできる。エポキシ環を有するオリゴマーや重合体は特開2013−242526号公報に開示されているオリゴマーや重合体を使用することができる。
【0282】
(シラン化合物)
例えば、本発明の液晶配向剤は、基板及びシール剤との密着性を向上させる目的から、シラン化合物をさらに含有していてもよい。シラン化合物の含有量は、上記の目的から、ポリアミック酸又はその誘導体に対して0.1〜30重量%であることが好ましく、0.5〜20重量%であることがより好ましく、0.5〜10重量%であることがさらに好ましい。
シランカップリング剤としては、特開2013−242526号公報、特開2015−212807号公報、特開2018−173545号公報、国際公開第2018/181566号に開示されているシランカップリング剤を使用することができる。
好ましいシランカップリング剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、パラアミノフェニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン又は3−ウレイドプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0283】
上記記載の添加剤の他、配向膜の強度を上げる目的、又は液晶表示素子における電気特性を長期に安定させる目的から、シクロカーボネート基を持つ化合物、ヒドロキシアルキルアミド部位や水酸基を持つ化合物を添加することもできる。具体的化合物としては、特開2016−118753号公報、国際公開第2017/110976号に開示されている化合物が挙げられる。好ましい化合物としては、以下の式(HD−1)〜式(HD−4)が挙げられる。これらの化合物は、ポリアミック酸又はその誘導体に対して0.5〜50重量%であることが好ましく、1〜30重量%であることがより好ましく、1〜10重量%であることがさらに好ましい。
【0284】
【化129】
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【0285】
また、帯電防止の向上を必要とするときは帯電防止剤、低温でイミド化を進行させる場合はイミド化触媒を使用することもできる。イミド化触媒としては、特開2013−242526号公報に開示されているイミド化触媒が挙げられる。
【0286】
<液晶配向膜>
次に、本発明の液晶配向膜について説明する。
本発明の液晶配向膜は、本発明の液晶配向剤を使用して形成されたものである。本発明の液晶配向剤の説明については、上記の<液晶配向剤>の欄の記載を参照することができる。
本発明の液晶配向剤がポリアミック酸を含む場合、液晶配向膜を形成させる過程で該液晶配向剤の塗膜を加熱焼成すると、ポリアミック酸がイミド化反応を起こしてポリイミド系液晶配向膜を形成させることができる。本発明の液晶配向剤は、光配向用の液晶配向剤に適しており、液晶配向膜を形成させる過程における配向処理には光配向法を適用することができる。
【0287】
<液晶配向膜の製造方法>
以下において、本発明の液晶配向膜の製造方法について説明する。
本発明の液晶配向膜は、光配向用液晶配向剤から液晶配向膜を作製する通常の方法によって得ることができる。具体的には、本発明の液晶配向膜は、本発明の液晶配向剤を基板に塗布して塗膜を形成する工程と、その塗膜に光を照射する工程とを用いて形成することができる。さらに、本発明の液晶配向膜は、例えば、本発明の液晶配向剤を基板に塗布して塗膜を形成する工程と、塗膜を加熱乾燥して液晶配向剤の膜を形成する工程と、液晶配向剤の膜に光を照射して異方性を付与する工程と、異方性を付与した液晶配向剤の膜を加熱焼成する工程を経ることによって製造することが好ましい。すなわち、本発明の液晶配向膜については、塗膜工程、加熱乾燥工程の後に光を照射して異方性を付与し、その後加熱焼成工程を経るのが好ましい。また、異方性を付与するために照射する光は、偏光紫外線であることが好ましい。
【0288】
塗膜は、通常の液晶配向膜の作製と同様に、液晶表示素子における基板に本発明の液晶配向剤を塗布することによって形成することができる。基板には、ITO(IndiumTinOxide)、IZO(In−ZnO)、IGZO(In−Ga−ZnO)電極等の電極やカラーフィルタ等が設けられていてもよいガラス製、窒化ケイ素製、アクリル製、ポリカーボネイト製、ポリイミド製等の基板が挙げられる。
【0289】
液晶配向剤を基板に塗布する方法としてはスピンナー法、印刷法、ディッピング法、滴下法、インクジェット法等が一般に知られている。これらの方法は本発明においても同様に適用可能である。
【0290】
加熱乾燥工程は、オーブン又は赤外炉の中で加熱処理する方法、ホットプレート上で加熱処理する方法等が一般に知られている。加熱乾燥工程は溶剤の蒸発が可能な範囲内の温度で実施することが好ましく、加熱焼成工程における温度に対して比較的低い温度で実施することがより好ましい。具体的には加熱乾燥温度は30℃〜150℃の範囲であること、さらには50℃〜120℃の範囲であることが好ましい。
【0291】
加熱焼成工程は、ポリアミック酸又はその誘導体がイミド化反応を呈するのに必要な条件で行うことができる。塗膜の焼成は、オーブン又は赤外炉の中で加熱処理する方法、ホットプレート上で加熱処理する方法等が一般に知られている。これらの方法も本発明において同様に適用可能である。一般に90℃〜300℃程度の温度で1分間〜3時間行うことが好ましく、120℃〜280℃がより好ましく、150℃〜250℃がさらに好ましい。
膜の異方性を向上させることや、液晶表示素子を作製した際の残像特性を向上させることを重視する場合には、加熱工程の昇温を緩やかに行うことが好ましく、例えば、段階的に温度を上げながら、異なる温度で複数回加熱焼成する、又は、低温から高温へと温度を変化させて加熱することができる。また、両方の加熱方法を組み合わせて行ってもよい。
【0292】
異なる温度で複数回加熱焼成する場合、異なる温度に設定された複数の加熱装置を用いてもよいし、1台の加熱装置を用いて、異なる温度に順次変化させながら行ってもよい。
異なる温度で複数回加熱焼成する場合は、初めの焼成温度は90℃〜180℃で行うのが好ましく、最後の温度は185℃〜300℃で行うのが好ましい。例えば、110℃で加熱焼成した後220℃で加熱焼成、110℃で加熱焼成した後230℃で加熱焼成、130℃で加熱焼成した後220℃で加熱焼成、150℃で加熱焼成した後200℃で加熱焼成、150℃で加熱焼成した後220℃で加熱焼成、150℃で加熱焼成した後230℃で加熱焼成、又は170℃で加熱焼成した後200℃で加熱焼成することが好ましい。さらに段階を増やして緩やかに昇温させながら加熱焼成することも好ましい。加熱温度を変えて2段階以上で加熱焼成を行う場合、各加熱工程での加熱時間は5分〜30分であることが好ましい。
【0293】
低温度から高温へと温度を変化させて焼成を行なう場合、初期温度は90℃〜180℃が好ましい。最終温度は185℃〜300℃が好ましく、190℃〜230℃がより好ましい。加熱時間は5分〜60分が好ましく、20分〜60分がより好ましい。昇温スピードは、例えば0.5℃/分〜40℃/分とすることができる。昇温中の昇温スピードは一定でなくともよい。
【0294】
本発明の液晶配向膜の形成方法において、液晶を水平及び/又は垂直方向に対して一方向に配向させるために、薄膜へ異方性を付与する手段として、公知の光配向法を好適に用いることができる。
【0295】
光配向法による本発明の液晶配向膜の形成方法について、詳細に説明する。光配向法を用いた本発明の液晶配向膜は、塗膜を加熱乾燥した後の薄膜に、光の直線偏光又は無偏光を照射することにより、薄膜に異方性を付与し、その膜を加熱焼成することにより形成することができる。または、塗膜を加熱乾燥し、加熱焼成した後に、薄膜に光の直線偏光又は無偏光を照射することにより形成する事ができる。液晶配向性の点から、光の照射工程は加熱焼成工程前に行うのが好ましい。
【0296】
さらに、液晶配向膜の液晶配向能を上げるために、塗膜を加熱しながら光の直線偏光又は無偏光を照射することもできる。光の照射は、塗膜を加熱乾燥する工程、又は加熱焼成する工程で行ってもよく、加熱乾燥工程と加熱焼成工程の間に行ってもよい。
塗膜を加熱乾燥する工程、又は加熱焼成する工程で光を照射する場合の加熱温度は、上記の加熱乾燥工程、又は加熱焼成工程の記載を参考にできる。加熱乾燥工程と加熱焼成工程の間に光を照射する場合の加熱温度は、30℃〜150℃の範囲であることが好ましく、50℃〜110℃の範囲であることがさらに好ましい。
【0297】
光としては、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線又は可視光を用いることができるが、200〜400nmの光を含む紫外線が好ましい。また、直線偏光又は無偏光を用いることができる。これらの光は、前記薄膜に液晶配向能を付与することができる光であれば特に限定されないが、液晶に対して強い配向規制力を発現させたい場合、直線偏光が好ましい。
【0298】
本発明の液晶配向膜は、低いエネルギーの光照射でも高い異方性を示すことができる。前記光照射工程における直線偏光の照射量は0.05〜10J/cmであることが好ましく、0.1〜5J/cmがより好ましい。直線偏光の膜表面に対する照射角度は特に限定されないが、液晶に対する強い配向規制力を発現させたい場合、膜表面に対してなるべく垂直であることが配向処理時間短縮の観点から好ましい。また、本発明の液晶配向膜は、直線偏光を照射することにより、直線偏光の偏光方向に対して直角方向に液晶を配向させることができる。
【0299】
光の直線偏光又は無偏光を照射する工程に使用する光源には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、Deep UVランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ、エキシマランプ、KrFエキシマレーザー、蛍光ランプ、LEDランプ、ナトリウムランプ、マイクロウェーブ励起無電極ランプ、などを制限なく用いることができる。
【0300】
本発明の液晶配向膜は、前述した工程以外の他の工程をさらに含む方法によって好適に得られる。
【0301】
本発明の液晶配向膜は焼成又は光照射後の膜を洗浄液で洗浄する工程は必須としないが、他の工程の都合で洗浄工程を設けることができる。洗浄液による洗浄方法としては、ブラッシング、ジェットスプレー、蒸気洗浄又は超音波洗浄等が挙げられる。これらの方法は単独で行ってもよいし、併用してもよい。洗浄液としては純水、又は、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトンを用いることができるが、これらに限定されるものではない。もちろん、これらの洗浄液は十分に精製された不純物の少ないものが用いられる。このような洗浄方法は、本発明の液晶配向膜の形成における前記洗浄工程にも適用することができる。
【0302】
本発明の液晶配向膜の液晶配向能を高めるために、加熱焼成工程の前後、または、偏光又は無偏光の光照射の前後に、熱や光によるアニール処理を用いることができる。該アニール処理において、アニール温度が30℃〜180℃、好ましくは50℃〜150℃であり、時間は1分〜2時間が好ましい。また、アニール処理に使用するアニール光には、UVランプ、蛍光ランプ、LEDランプなどが挙げられる。光の照射量は0.3〜10J/cmであることが好ましい。
【0303】
本発明の液晶配向膜の膜厚は、特に限定されないが、10〜300nmであることが好ましく、30〜150nmであることがより好ましい。本発明の液晶配向膜の膜厚は、段差計やエリプソメータ等の公知の膜厚測定装置によって測定することができる。
【0304】
本発明の液晶配向膜は特に大きな配向の異方性を持つことを特徴とする。このような異方性の大きさは特開2005−275364号公報等に記載の偏光IRを用いた方法で評価する事ができる。またエリプソメトリーを用いた方法によっても評価することができる。詳しくは、分光エリプソメータによって液晶配向膜のリタデーション値を測定することができる。膜のリタデーション値はポリマー主鎖の配向度に比例して大きくなる。すなわち、大きなリタデーション値を持つポリマーの膜は、大きな配向度を持ち、液晶配向膜として使用した場合、より大きな異方性を持つ液晶配向膜が液晶組成物に対し大きな配向規制力を持つと考えられる。
【0305】
本発明の液晶配向膜は、スマートフォン、タブレット、車載モニター、テレビ等、液晶ディスプレイ用の液晶組成物の配向制御に用いることができる。液晶ディスプレイ用の液晶組成物の配向用途以外に、光学補償材や液晶を用いたマイクロ波・ミリ波帯の広帯域可変移相器等、その他すべての液晶材料の配向制御に用いることができる。また本発明の液晶配向膜は大きな異方性を有するので、単独で光学補償材用途に使用することができる。
【0306】
<液晶表示素子>
次に、本発明の液晶表示素子について説明する。
本発明の液晶表示素子は、本発明の液晶配向膜を有する点に特徴があり、そのコントラストの高さから、高い表示品位を実現することができる。
本発明の液晶表示素子について詳細に説明する。本発明は、対向配置されている一対の基板と、前記一対の基板それぞれの対向している面の一方又は両方に形成されている電極と、前記一対の基板それぞれの対向している面に形成された液晶配向膜と、前記一対の基板間に形成された液晶層と、前記対向基板を挟むように設置されている一対の偏光フィルムとバックライトと駆動装置とを有する液晶表示素子において、前記液晶配向膜が本発明の液晶配向膜により構成されている。
【0307】
電極は、基板の一面に形成される電極であれば特に限定されない。このような電極には、例えばITOや金属の蒸着膜等が挙げられる。また電極は、基板の一方の面の全面に形成されていてもよいし、例えばパターン化されている所望の形状に形成されていてもよい。電極の前記所望の形状には、例えば櫛型又はジグザグ構造等が挙げられる。電極は、一対の基板のうちの一方の基板に形成されていてもよいし、両方の基板に形成されていてもよい。電極の形成の形態は液晶表示素子の種類に応じて異なり、例えばIPS型液晶表示素子(横電界型液晶表示素子)の場合は前記一対の基板の一方に電極が配置され、その他の液晶表示素子の場合は前記一対の基板の双方に電極が配置される。前記基板又は電極の上に前記液晶配向膜が形成される。
【0308】
ホモジニアス配向の液晶表示素子(例えばIPS、FFSなど)の場合は、構成として、少なくとも、バックライト側からバックライト、第一の偏光フィルム、第一の基板、第一の液晶配向膜、液晶層、第二の基板、第二の偏光フィルムを有し、前記偏光フィルムの偏光軸は、第一の偏光フィルムの偏光軸(偏光吸収の方向)と第二の偏光フィルムの偏光軸は交差(好ましくは直交)するように設置される。この時、第一の偏光フィルムの偏光軸と液晶配向方向が平行になるように、又は直交するように設置することができる。第一の偏光フィルムの偏光軸と液晶配向方向が平行になるように設置した液晶表示素子をO−モード、直交するように設置した液晶表示素子をE−モードと言う。本発明の液晶配向膜は、O-モード、E−モードどちらにも適用でき、目的によって選択することができる。
【0309】
液晶配向剤に対して異方性を付加させるために照射する偏光の偏光軸を、バックライト側に配置した偏光フィルムからの偏光の偏光軸と平行に揃える(本発明の液晶配向剤を使用した場合には、O−モードの配置とする)と、液晶配向膜の光吸収波長域の透過率が上昇する。その為、液晶表示素子の透過率を更に改善することができる。
【0310】
前記液晶層は、液晶配向膜が形成された面が対向している前記一対の基板によって液晶組成物が挟持される形で形成される。液晶層の形成では、微粒子や樹脂シート等の、前記一対の基板の間に介在して適当な間隔を形成するスペーサを必要に応じて用いることができる。
【0311】
液晶層の形成方法としては、真空注入法とODF(One Drop Fill)法が知られている。
【0312】
真空注入法では、液晶配向膜面が対向するように、空隙(セルギャップ)を設けて、かつ液晶の注入口を残して、シール剤を印刷し、基板を張り合わせる。基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に、真空差圧を利用して液晶を注入充填した後、注入口を封止し、液晶表示素子を製造する。
【0313】
ODF法では、一対の基板のうちの一方の液晶配向膜面の外周にシール剤を印刷し、シール剤の内側の領域に液晶を滴下した後、液晶配向膜面が対向するように他方の基板を張り合わせる。そして、液晶を基板の全面に押し広げ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化し、液晶表示素子を製造する。
【0314】
基板の張り合わせに用いられるシール剤には、UV硬化型以外に熱硬化型も知られている。シール剤の印刷は、例えばスクリーン印刷法により行なうことができる。
【0315】
液晶組成物には、特に制限はなく、誘電率異方性が正又は負の各種の液晶組成物を用いることができる。誘電率異方性が正の好ましい液晶組成物(ポジ型液晶組成物)には、特許第3086228号公報、特許第2635435号公報、特表平5−501735号公報、特開平8−157826号公報、特開平8−231960号公報、特開平9−241644号公報(欧州特許出願公開第885272号明細書)、特開平9−302346号公報(欧州特許出願公開第806466号明細書)、特開平8−199168号公報(欧州特許出願公開第722998号公報)、特開平9−235552号公報、特開平9−255956号公報、特開平9−241643号公報(欧州特許出願公開第885271号公報)、特開平10−204016号公報(欧州特許出願公開第844229号公報)、特開平10−204436号公報、特開平10−231482号公報、特開2000−087040号公報、特開2001−48822号公報等に開示されている液晶組成物が挙げられる。
【0316】
前記負の誘電率異方性を有する液晶組成物(ネガ型液晶組成物)の好ましい例として、特開昭57−114532号公報、特開平2−4725号公報、特開平4−224885号公報、特開平8−40953号公報、特開平8−104869号公報、特開平10−168076号公報、特開平10−168453号公報、特開平10−236989号公報、特開平10−236990号公報、特開平10−236992号公報、特開平10−236993号公報、特開平10−236994号公報、特開平10−237000号公報、特開平10−237004号公報、特開平10−237024号公報、特開平10−237035号公報、特開平10−237075号公報、特開平10−237076号公報、特開平10−237448号公報(欧州特許出願公開第967261号公報)、特開平10−287874号公報、特開平10−287875号公報、特開平10−291945号公報、特開平11−029581号公報、特開平11−080049号公報、特開2000−256307号公報、特開2001−019965号公報、特開2001−072626号公報、特開2001−192657号公報、特開2010−037428号公報、国際公開第2011/024666号、国際公開第2010/072370号、特表2010−537010号公報、特開2012−077201号公報、特開2009−084362号公報等に開示されている液晶組成物が挙げられる。
【0317】
誘電率異方性が正又は負の液晶組成物に1種以上の光学活性化合物を添加して使用することも何ら差し支えない。
【0318】
また例えば、本発明の液晶表示素子に用いる液晶組成物は、例えば配向性を向上させる観点から、添加物をさらに添加してもよい。このような添加物は、光重合性モノマー、光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合開始剤、重合禁止剤などである。好ましい光重合性モノマー、光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合開始剤、重合禁止剤には、国際公開第2015/146330号等に開示されている化合物が挙げられる。
【0319】
PSA(polymer sustained alignment)モードの液晶表示素子に適合させるために重合可能な化合物を液晶組成物に混合することができる。重合可能な化合物の好ましい例はアクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、ビニルケトンなどの重合可能な基を有する化合物である。好ましい化合物には、国際公開第2015/146330号等に開示されている化合物が挙げられる。
【0320】
<ジニトロ化合物>
次に、本発明のジニトロ化合物について説明する。
本発明のジニトロ化合物は、下記一般式(2)で示される化合物である。
【0321】
【化130】
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【0322】
一般式(2)において、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表す。RとRは互いに同一であっても異なっていてもよい。また、RとRは一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。置換基の説明と好ましい範囲、具体例については、一般式(1)のメチレン基に置換してもよい置換基についての説明と好ましい範囲、具体例を参照することができる。Xは各々独立してハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表し、nは0から4の整数を表す。2つのnの合計が2以上であるとき、複数のXは互いに同一であっても異なっていてもよい。X及びニトロ基(−NO)の結合位置は、それぞれ、その結合手が結合するベンゼン環の置換可能な位置のいずれかである。
【0323】
一般式(2)で示されるジニトロ化合物(ジニトロ化合物(2))は、その還元により容易に、一般式(1)で示されるジアミン化合物(ジアミン化合物(1))に変換することができる。そのため、ジニトロ化合物(2)は、ジアミン化合物(1)の合成中間体として有用である。ジニトロ化合物(2)を合成中間体として、ジアミン化合物(1)を製造する方法については、下記の<ジアミン化合物の製造方法>の欄の記載を参照することができる。
【0324】
ジニトロ化合物(2)の好ましい例として、一般式(2−1)で示されるジニトロ化合物を挙げることができ、より好ましい例として、一般式(2−2)で示されるジニトロ化合物を挙げることができる。また、ジニトロ化合物(2)、(2−1)、(2−2)の中でも、シクロプロパン環上の2つのエステルがトランス配置であるものが好ましい。
【0325】
【化131】
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【0326】
一般式(2−1)のX及びn、並びに一般式(2−1)及び一般式(2−2)のR及びRは、それぞれ一般式(2)のR、R、X及びnと同義である。一般式(2−1)において、Xの結合位置は、その結合手が結合するベンゼン環の置換可能な位置のいずれかである。
ジニトロ化合物(2)の好ましい範囲と具体例については、上記の<ジアミン化合物>の欄における、ジアミン化合物(1)の好ましい範囲と具体例を、2つのアミノ基をニトロ基に置き換えて参照することができる。
【0327】
<保護ジアミノ化合物>
次に、本発明の保護ジアミノ化合物について説明する。
本発明の保護ジアミノ化合物は、下記一般式(7−1)で示される化合物である。
【0328】
【化132】
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【0329】
一般式(7−1)において、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表す。RとRは互いに同一であっても異なっていてもよい。また、RとRは一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。置換基の説明と好ましい範囲、具体例については、一般式(1)のメチレン基に置換してもよい置換基についての説明と好ましい範囲、具体例を参照することができる。Xは各々独立してハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表し、nは0から4の整数を表す。2つのnの合計が2以上であるとき、複数のXは互いに同一であっても異なっていてもよい。Xの結合位置は、その結合手が結合するベンゼン環の置換可能な位置のいずれかである。Bocはtert−ブトキシカルボニル基を表す。
【0330】
一般式(7−1)で示される保護ジアミノ化合物(保護ジアミノ化合物(7−1))は、Boc基で保護されたアミノ基を脱保護することにより容易に、一般式(1−1)で示されるジアミン化合物(ジアミン化合物(1−1))に変換することができる。そのため、保護ジアミノ化合物(7−1)は、ジアミン化合物(1−1)の合成中間体として有用である。保護ジアミノ化合物(7−1)を合成中間体として、ジアミン化合物(1−1)を製造する方法については、下記の<ジアミン化合物の製造方法>の欄の記載を参照することができる。
【0331】
保護ジアミノ化合物(7−1)の中でも、シクロプロパン環上の2つのエステルがトランス配置であるものが好ましい。
保護ジアミノ化合物(7−1)の好ましい範囲と具体例については、上記の<ジアミン化合物>の欄における、ジアミン化合物(1)の好ましい範囲と具体例を、2つのアミノ基を、Boc基で保護されたアミノ基に置き換えて参照することができる。
【0332】
<ジアミン化合物の製造方法>
次に本発明のジアミン化合物の製造方法について説明する。
【0333】
[ジニトロ化合物(2)を経由するジアミン化合物の製造方法]
下記反応スキームに示すように、本発明の一般式(1)で示されるジアミン化合物(ジアミン化合物(1))は、一般式(2)で示されるジニトロ化合物(ジニトロ化合物(2))のニトロ基を還元することにより製造することができる。ジニトロ化合物(2)の説明と好ましい範囲については、上記の<ジニトロ化合物>の欄の記載を参照することができる。
【0334】
【化133】
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【0335】
式中、R、R、X及びnは、それぞれ上記の一般式(1)及び(2)のR、R、X及びnと同義である。
【0336】
ここで、ジニトロ化合物(2)は、一般式(3)で示されるシクロプロパン誘導体と、一般式(4)で表されるニトロ化合物とを縮合反応させることにより製造することができる。
【0337】
【化134】
[この文献は図面を表示できません]
【0338】
一般式(3)において、R及びRは、それぞれ一般式(2)のR及びRと同義である。Yは脱離基を表す。
【0339】
【化135】
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【0340】
一般式(4)において、X及びnは、それぞれ一般式(2)のX及びnと同義である。nが2以上であるとき、複数のXは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0341】
本発明のジアミン化合物の製造方法の好ましい例として、下記反応スキームに示すように、アクリル酸エステル類とハロ酢酸エステル類から調製した1,2−シクロプロパンジカルボン酸ジエステル(3−0)を加水分解して合成したジカルボン酸化合物(3−1)を得る工程(第一工程)と、カルボン酸クロリド化合物(3−2)とする工程(第二工程)と、該ジカルボン酸クロリド化合物(3−2)にニトロ化合物(4)を反応させて、中間体としてのジニトロ化合物(2)を得る工程(第三工程)と、この中間体のニトロ基を還元する工程(第四工程)によりジアミン化合物(1)を合成する方法が挙げられる。
【0342】
【化136】
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【0343】
式中、R、R、X及びnは、それぞれ一般式(1)及び(2)のR、R、X及びnと同義である。Etはエチル基を表す。
第一工程の反応において、ジカルボン酸化合物(3−1)を合成する方法としては、J. Am. Chem. Soc., 114(24), 9401-9408 (1992)等に記載された公知の方法を採用することもできるが、例えばアクリル酸エステル化合物(5−1)とハロ酢酸エステル(5−2)を、水素化ナトリウム又はナトリウム−tert−ブトキシド存在下に反応させてジカルボン酸エステル化合物(3−0)を得た後、水酸化ナトリウム水溶液存在下にエステル部位を加水分解することによりジカルボン酸化合物(3−1)を得る方法が挙げられる。なお、この反応の際、有機溶剤を用いることもできる。用いる有機溶剤として例えば、ジメチルスルホキシドやジメチルホルムアミド等を挙げることができ、収率が良い点でジメチルホルムアミドを用いることが好ましい。また、R及びRが一体となってメチレン基となる場合、ジカルボン酸化合物(3−1)を得る工程(第一工程)として、Helvetica Chimica Acta, 95(2), 268-277 (2012)等に記載された公知の方法を採用することもできる。
【0344】
第二工程の反応において、ジカルボン酸クロリド化合物(3−2)を合成する方法としては、国際公開第2008/112251号又はTetrahedron, 56(29), 5225-5239 (2000)等に記載された公知の方法を採用すればよく、特に制限はないが、例えばジカルボン酸化合物(3−1)を、過剰の塩化チオニル存在下で還流条件にて撹拌する方法が挙げられる。なお、この反応の際、有機溶剤はあってもなくてもよく、有機溶剤を使用した場合には、反応後に、塩化チオニルの留去と同時に有機溶剤を除去すればよい。また、ジカルボン酸クロリド化合物(3−2)は、ジカルボン酸化合物(3−1)を、塩化オキサリル存在下で撹拌することによっても得ることができる。この時、反応促進を目的として触媒を添加してもよい。
【0345】
第二工程の反応に使用する有機溶剤としては、反応に影響を及ぼさない溶剤であれば特に限定されるものではないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFという)、N,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcという)、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという)等のアミド;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(以下、THFという)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン(以下、DMEという)、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル;2−ブタノン、4−メチル2−ペンタノン等のケトン;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル;ジメチルスルホキシド(以下、DMSOという);クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;などを用いることができる。これら溶剤は、単体で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0346】
反応温度は、使用溶剤の沸点以下であればよく、0から200℃程度とすることができるが、0から150℃が好ましく、0から80℃がより好ましい。
【0347】
塩化チオニル又は塩化オキサリルを用いる場合に使用する触媒としては、反応を促進するものであれば特に限定されないが、例えば、DMFが挙げられる。また、使用量としては、特に限定されないが、ジカルボン酸化合物(3−1)に対して通常0.01モル%から50モル%、好ましくは0.1モル%から20モル%である。
【0348】
反応後は、溶剤等を留去し、粗生成物のまま、あるいは精製して次工程に用いる。精製方法は任意であり、再結晶、蒸留、シリカゲルクロマトグラフィー等の公知の方法から適宜選択すればよい。
【0349】
第三工程の反応において、ジカルボン酸クロリド化合物(3−2)からジニトロ化合物(2)を合成する方法としては、特に制限はないが、例えば有機溶剤中、塩基存在下、ニトロ化合物(4)とジカルボン酸クロリド化合物(3−2)とを反応させる方法が挙げられる。
【0350】
第三工程の反応に使用する有機溶剤としては、反応に影響を及ぼさない溶剤であれば特に限定されるものではないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;DMF、DMAc、NMP等のアミド;ジエチルエーテル、THF、1,4−ジオキサン、DME、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル;2−ブタノン、4−メチル2−ペンタノン等のケトン;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル;DMSO;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;などを用いることができる。これら溶剤は、単体で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、ニトロ化合物(4)とジカルボン酸クロリド化合物(3−2)が速やかに反応し縮合する場合には、上記有機溶剤と水を組み合わせるSchotten-Baumann条件を用いても良い。
【0351】
反応温度は、使用溶剤の沸点以下であればよく、0から200℃程度とすることができるが、0から100℃が好ましく、0から50℃がより好ましい。
【0352】
使用する塩基は、副生する酸を捕捉できるものであれば特に限定されないが、例えば、ピリジン、ジメチルアミノピリジン(以下、DMAPとする)、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の有機塩基;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基が挙げられる。
【0353】
反応後は、溶剤を留去し、粗生成のまま、あるいは精製して次工程に用いる。精製方法は任意であり、再結晶、蒸留、抽出、酸性又は塩基性水溶液による洗浄、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の公知の手法から適宜選択すればよい。
【0354】
第四工程の反応において、ジニトロ化合物(2)のニトロ基をアミノ基へ還元する方法としては、公知の方法を採用すればよい。
還元に用いる水素源としては、水素ガス、ヒドラジン、塩化水素、塩化アンモニウム、ギ酸アンモニウム等が挙げられる。
接触水素化に用いる触媒としては、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、ニッケル、鉄、亜鉛、スズ等の金属粉末が挙げられ、金属の粉末が活性体に担持されたものであってもよい。触媒の種類は、水素源の種類や反応条件に応じて適宜決定されるため、特に限定されないが、ニトロ基のみ還元できる触媒であればよく、好ましくはパラジウム−炭素、酸化白金、ラネーニッケル、白金−炭素、ロジウム−アルミナ、硫化白金炭素等が挙げられる。
例えば、パラジウム−炭素、酸化白金、ラネーニッケル、白金−炭素、ロジウム−アルミナ、硫化白金炭素、還元鉄、塩化鉄、スズ、塩化スズ、亜鉛等を触媒として用い、水素ガス、ヒドラジン、塩化水素、塩化アンモニウム等を水素源として用いることがある。特に、ジニトロ化合物(2)のエステル部位に起因する副反応を起こしにくく、容易に目的物を得ることができることから、接触水素化又は塩化スズ若しくはその水和物等を用いるBechamp還元反応が好ましい。
【0355】
また、触媒量は水素源の種類や反応条件に応じて適宜決定されるため、特に限定されないが、原料のジニトロ化合物(2)に対して金属換算で通常0.01モル%から50モル%、好ましくは0.1モル%から20モル%である。例えば、塩化スズの使用量としては、反応条件に応じて適宜決定されるため、特に限定されないが、原料のジニトロ化合物に対して通常1モル当量から50モル当量、好ましくは5モル当量から20モル当量である。また、塩化スズの代わりに塩化スズ二水和物を用いても良い。
【0356】
反応溶剤としては、反応に影響を及ぼさない溶剤を用いることができる。例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;DMF、DMAc、NMP等のアミド;THF、1,4−ジオキサン、DME、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル;2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン等のケトン;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール;DMSO;水などを用いることができる。これら溶剤は、単体で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0357】
反応温度は、原料や生成物が分解することなく、用いる溶剤の沸点以下の温度であればよく、そうした温度範囲から反応が効率よく進行する温度を選択して反応を行うことができる。具体的には、反応温度は−78℃から溶剤の沸点以下の温度が好ましく、合成の簡易性の観点から、0℃から溶剤の沸点以下の温度がより好ましい。
【0358】
接触水素化は、反応速度の向上並びに低温での反応を可能にする等の観点から、オートクレーブを用いるなどして、加圧条件の下で行ってもよい。
【0359】
そして、得られた反応混合物から溶剤を留去した後、再結晶、蒸留、シリカゲルクロマトグラフィー等の公知の手法を用いて精製することにより、本発明のジアミン化合物(1)を得ることができる。
【0360】
また、本発明のジアミン化合物の製造方法の好ましい例として、下記反応スキームに示すように、ジカルボン酸化合物(3−1)とニトロ化合物(4)を反応させて、中間体としてのジニトロ化合物(2)を得る工程(第五工程)と、このジニトロ化合物(2)のニトロ基を還元する工程によりジアミン化合物(1)を合成する方法も挙げられる。
【0361】
【化137】
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【0362】
式中、R、R、X及びnは、それぞれ一般式(2)のR、R、X及びnと同義である。ジカルボン酸化合物(3−1)の合成方法、および、ジニトロ化合物(2)からジアミン化合物(1)への還元方法の説明と具体的な条件については、上記の第一工程および第四工程についての記載を参照することができる。
【0363】
第五工程では、例えばHelvetica Chimica Acta, 95(2), 268-277(2012)に記載の方法にて合成したジカルボン酸化合物(3−1)を、有機溶剤中、縮合剤存在下にニトロ化合物(4)と反応させることにより、ジニトロ化合物(2)(中間体)を得ることができる。なお、ジカルボン酸化合物(3−1)は、上記の第一工程の説明で挙げた他の合成方法で合成したものであってもよい。
【0364】
第五工程の反応において、ジカルボン酸化合物(3−1)とニトロ化合物(4)を縮合する方法としては、公知の方法(シュテークリヒエステル化反応等)を採用すればよく、特に制限はないが、例えば縮合剤存在下に反応させる方法が挙げられる。
【0365】
反応に使用する有機溶剤としては、反応に影響を及ぼさない溶剤であれば特に限定されるものではないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;DMF、DMAc、NMP等のアミド;ジエチルエーテル、THF、1,4−ジオキサン、DME、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル;2−ブタノン、4−メチル2−ペンタノン等のケトン;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル;DMSO;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;などを用いることができる。これら溶剤は、単体で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0366】
反応温度は、使用溶剤の沸点以下であればよく、−20から200℃程度とすることができるが、−10から100℃が好ましく、0から50℃がより好ましい。
【0367】
反応後は、粗生成のまま、あるいは精製して次工程に用いる。精製方法は任意であり、再結晶、蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の公知の手法から適宜選択すればよい。
【0368】
使用する縮合剤は、エステル化を促進できるものであれば特に限定されないが、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(以下、DCCという)、ジイソプロピルカルボジイミド(以下、DICという)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(以下、EDC又はWSCIという)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩(以下、EDC・HClという)等が挙げられる。
【0369】
使用する触媒としては、反応を促進するものであれば特に限定されないが、例えば、DMAP、ピリジンなどが挙げられる。また、使用量としては、特に限定されないが、ジカルボン酸化合物(3−1)に対して通常1モル%から100モル%、好ましくは10モル%から50モル%である。
【0370】
[保護ジアミノ化合物(7)を経由するジアミン化合物の製造方法]
さらに、本発明のジアミン化合物の製造方法の好ましい例として、下記反応スキームに示すように、シクロプロパン誘導体(3)とBoc保護されたアミノ基を有するフェノール化合物(6)を反応させて、中間体として保護ジアミノ化合物(7)を得る工程(第六工程)と、この中間体の保護基を脱保護する工程(第七工程)によりジアミン化合物(1)を合成する方法も挙げられる。
【0371】
【化138】
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【0372】
式中、R、R、X、n及びYは、それぞれ一般式(1)及び(2)のR、R、X及びn、一般式(3)のYと同義である。Bocは、tert−ブトキシカルボニル基を表す。シクロプロパン誘導体(3)には、ジカルボン酸化合物(3−1)を好ましく用いることができる。ジカルボン酸化合物(3−1)の合成方法の説明と具体的な条件については、上記の第一工程についての記載を参照することができる。
【0373】
第六工程は、例えばジカルボン酸化合物(3−1)とBoc保護アミノ基を有するフェノール化合物(6)を縮合反応させて保護ジアミノ化合物(7)を得る工程であり、ニトロ化合物(4)の代わりにBoc保護されたアミノ基を有するフェノール化合物(6)を用いること以外は、上記の第五工程と同様にして行うことができる。すなわち、第六工程には公知の縮合方法(シュテークリヒエステル化反応等)を採用すればよく、特に制限はない。
【0374】
ここで、Boc保護されたアミノ基を有するフェノール化合物(6)の好ましい例として、下記一般式(6−1)で示される保護アミノフェノール化合物(保護アミノフェノール化合物(6−1))を挙げることができる。保護アミノフェノール化合物(6−1)を用いることにより、エステル基に対するパラ位に保護アミノ基を有する保護ジアミノ化合物(7−1)が合成され、これを脱保護することにより、上記のジアミン化合物(1−1)を製造することができる。保護ジアミノ化合物(7−1)の説明と好ましい範囲については、上記の<保護ジアミノ化合物>の欄の記載を参照することができ、ジアミノ化合物(1−1)の説明と好ましい範囲、具体例については、上記の<ジアミン化合物>の欄の記載を参照することができる。
【0375】
【化139】
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【0376】
一般式(6−1)において、X、n及びBocは、それぞれ一般式(6)のX、n及びBocと同義である。
【0377】
第六工程で用いるBoc保護されたアミノ基を有するフェノール化合物(6)は、例えば、特開2015−176110号公報に記載の方法で調製すればよい。
【0378】
第七工程は、第六工程で得た保護ジアミノ化合物(7)のBoc基を脱保護してジアミン化合物(1)を得る工程である。Boc基の脱保護は、酸を用いる公知の脱保護方法により行うことができ、脱保護用の酸には、例えば、トリフルオロ酢酸等を用いることができる。
【実施例】
【0379】
以下、実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0380】
ジニトロ化合物、ジアミン化合物およびジアミン異性体混合物の合成
各合成例で示した反応式において、Meはメチル基、Etはエチル基を表す。また、各反応式では、化合物がトランス体である場合、一方のエナンチオマーのみを示しているが、他方のエナンチオマーも原料、生成物に含まれていることとする。
【0381】
[合成例1] ジニトロ化合物1の合成
【化140】
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【0382】
trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ジエチル(10.0g,53.7mmol)のエタノール(100mL)溶液を氷冷した後、水酸化ナトリウム(8.60g,215mmol)の水(100mL)溶液を加えた。この混合物を1時間かけて室温まで徐々に昇温した後、15時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を減圧下に濃縮し、エタノールを留去した。残渣を再び氷冷し、濃塩酸(20mL)を加えた後、過剰量の食塩を加え、酢酸エチル(100mL×8回)にて抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、減圧下に濃縮することにより、trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸の白色固体(収量6.44g、収率92%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ1.89−1.77(m,2H),1.26−1.14(m,2H).
【0383】
【化141】
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【0384】
trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸(6.00g,46.1mmol)に塩化チオニル(30mL)を加えて、70℃で4時間撹拌した後、減圧下に濃縮し、塩化チオニルを留去することにより粗製のtrans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸塩化物を得た。このカルボン酸塩化物はTHF(90mL)溶液とし、次の反応に全量使用した。
アルゴン雰囲気下、4−ニトロフェノール(13.5g,96.8mmol)のTHF(100mL)溶液にトリエチルアミン(16.3g,161mmol)を加え、氷冷した。この混合物を激しく撹拌しながら、上記で調製したカルボン酸塩化物のTHF溶液を5分間かけて加えた後、室温まで昇温させ、室温で2時間半撹拌した。この反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液(100mL)を加え、減圧下に濃縮した。残渣を酢酸エチル(300mL×3回)にて抽出した後、飽和炭酸水素ナトリウム(300mL)にて洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下に濃縮することにより、trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ジ(4−ニトロフェニル)の淡黄色固体(7.36g)を得た。さらに、水層に残留する固体をろ取し、水で洗浄することにより、trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ジ(4−ニトロフェニル)の淡黄色固体(6.72g)を回収し、上記の7.36gと合わせることにより、ジニトロ化合物1(trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ジ(4−ニトロフェニル))(合計収量14.1g,収率82%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ8.31(d,J=9.2Hz,4H),7.35(d,J=9.2Hz,4H),2.66−2.59(m,2H),1.86−1.78(m,2H).
【0385】
[合成例2] ジアミン異性体混合物1(ジアミン化合物(1−4−1)とそのエナンチオマーの混合物)の合成
【化142】
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【0386】
アルゴン雰囲気下、ジニトロ化合物1(14.0g,37.6mmol)の酢酸エチル(370mL)溶液に塩化すず(II)二水和物(84.8g,376mmol)を加え、加熱還流下、4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却し、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1L)に加えた後、酢酸エチル(300mL×3回)にて抽出した。得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(300mL)、飽和食塩水(300mL)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下濃縮した。得られた残渣を、クロロホルム:メタノールの混合溶剤を溶離液に用い、その割合を100:0〜95:5の範囲で変化させながらシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、目的のジアミン異性体混合物1(ジアミン化合物(1-4-1)とそのエナンチオマーの混合物)の白色固体(収量8.50g、収率72%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ6.90(d,J=8.8Hz,4H),6.67(d,J=8.8Hz,4H),3.64(brs,4H),2.53−2.47(m,2H),1.71−1.65(m,2H).
【0387】
[合成例3] ジニトロ化合物2の合成
【化143】
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【0388】
3−オキサビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,4−ジオン(10.0g,81.9mmol)の水(160mL)懸濁液を加熱還流下、3時間撹拌した。室温まで冷却した後、減圧下に濃縮することにより、cis−1,2−シクロプロパンジカルボン酸の淡黄色固体(収量10.7g)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ12.26(brs,2H),2.53(dd,J=8.3,6.6Hz,2H),2.01(td,J=6.6,4.2Hz,1H),1.64(td,J=8.3,4.2Hz,1H).
【0389】
【化144】
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【0390】
cis−1,2−シクロプロパンジカルボン酸(8.02g,61.6mmol)のトルエン(40mL)懸濁液に塩化チオニル(40mL)及びDMF(0.4mL)を加えて、100℃で4時間撹拌した後、減圧下に濃縮することにより、粗製のcis−1,2−シクロプロパンジカルボン酸塩化物を得た。このカルボン酸塩化物はTHF(80mL)溶液とし、次の反応に全量使用した。
アルゴン雰囲気下、4−ニトロフェノール(17.9g,129mmol)のTHF(160mL)溶液にトリエチルアミン(21.9g,216mmol)を加え、氷冷した。この混合物を激しく撹拌しながら、上記で調製したカルボン酸塩化物のTHF溶液を5分間かけて加えた後、室温まで昇温させ、室温で2時間半撹拌した。この反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液(200mL)を加え、減圧下に濃縮した。残渣を酢酸エチル(300mL×3回)にて抽出した後、飽和炭酸水素ナトリウム(300mL)にて洗浄した。生じた固体をろ取し、水(100mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄した後、再び水(100mL)で洗浄した。得られた固体を減圧下に乾燥することにより、目的のジニトロ化合物2(cis−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ジ(4−ニトロフェニル))の淡黄色固体(収量12.6g、収率55%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ8.26(d,J=9.2Hz,4H),7.29(d,J=9.2,4H),2.53(dd,J=8.5,6.7Hz,2H),2.01(td,J=6.7,5.4Hz,1H),1.64(td,J=8.5,5.4Hz,1H).
【0391】
[合成例4] ジアミン化合物(1-2-1)の合成
【化145】
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【0392】
アルゴン雰囲気下、ジニトロ化合物2(14.2g,38.1mmol)の酢酸エチル(380mL)溶液に塩化すず(II)二水和物(86.0g,381mmol)を加え、加熱還流下、3時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1L)に加えた後、セライトにてろ過した。得られた混合物を酢酸エチル(300mL×3回)にて抽出した後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(300mL)、飽和食塩水(300mL)で洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下に濃縮した。残渣を、クロロホルム:メタノールの混合溶剤を溶離液に用い、その割合を100:0〜95:5の範囲で変化させながらシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した後、更に酢酸エチル(50mL)とヘキサン(50mL)にて再沈殿することにより、目的のジアミン化合物(1-2-1)(cis−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ジ(4−アミノフェニル))の白色固体(収量8.52g、収率72%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ6.87(d,J=8.8Hz,4H),6.62(d,J=8.8Hz,4H),3.61(brs,4H),2.37(dd,J=8.4,6.7Hz,2H),1.91(td,J=6.7,5.2Hz,1H),1.45(td,J=8.4,5.2Hz,1H).
【0393】
[合成例5] ジニトロ化合物3の合成
【化146】
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【0394】
氷冷下、濃硫酸(20mL)にアセト酢酸エチル(26.6g,204mmol)を30分かけて滴下した。滴下後、この混合物を室温まで昇温させ、22時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を氷(60g)に注ぎ込んだ後、氷が全量溶けるまで撹拌した。得られた混合物を、ジエチルエーテル(100mL×3回)にて抽出した後、10wt%炭酸ナトリウム水溶液にて洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、減圧下に濃縮した。得られた残渣を、ヘキサン:酢酸エチルの混合溶剤を溶離液に用い、その割合を100:0〜80:20の範囲で変化させてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、4,6−ジメチル−2−オキソ−2H−ピラン−5−カルボン酸エチルの淡黄色油状物質(収量6.88g、収率34%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ6.01(s,1H),4.35(q,J=7.1Hz,2H),2.40(s,3H),2.23(s,3H),1.37(t,J=7.1Hz,3H).
【0395】
【化147】
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【0396】
アルゴン雰囲気下、4,6−ジメチル−2−オキソ−2H−ピラン−5−カルボン酸エチル(25.0g,127mmol)のクロロホルム(50mL)溶液を氷冷した後、撹拌しながら、臭素(23.3g,146mmol)のクロロホルム(50mL)溶液を30分かけて滴下した。この混合物を室温まで昇温した後、24時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を氷(300g)に注ぎ込んだ後、氷が全量溶けるまで撹拌した。混合物を酢酸エチル(150mL×3回)にて抽出した後、10wt%炭酸ナトリウム水溶液(300mL)、飽和食塩水(100mL)にて洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧下に濃縮することで生じた粗固体を、ヘキサン(100mL)で洗浄することにより、3−ブロモ−4,6−ジメチル−2−オキソ−2H−ピラン−5−カルボン酸エチルの淡黄色固体(収量33.1g、収率95%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ4.37(q,J=7.1Hz,2H),2.35(s,3H),2.34(s,3H),1.38(q,J=7.1Hz,3H).
【0397】
【化148】
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【0398】
3−ブロモ−4,6−ジメチル−2−オキソ−2H−ピラン−5−カルボン酸エチル(34.0g,124mmol)の1,4−ジオキサン(70mL)溶液を油浴(110℃)にて加温した後、加熱還流下、7M水酸化カリウム水溶液(171mL)を20分かけて滴下した。滴下後、そのままの温度で1時間撹拌した後、氷冷し、50%硫酸(68mL)を徐々に加えた。反応混合物をろ過し、ジエチルエーテル(150mL)にて洗浄した。混合物をジエチルエーテル(150mL×3回)抽出した後、飽和食塩水(100mL)にて洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥した後、減圧下に濃縮することにより粗生成物を得た。これを酢酸エチル(10mL)−ヘキサン(100mL)にて再結晶することにより、trans−3−メチレン−1,2−シクロプロパンジカルボン酸の褐色結晶(収量5.92g、収率34%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ12.8(brs,2H),5.66−5.62(m,2H),2.63−2.59(m,2H).
【0399】
【化149】
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【0400】
アルゴン雰囲気下、trans−3−メチレン−1,2−シクロプロパンジカルボン酸(10.0g,70.4mmol)のジクロロメタン(700mL)溶液に4−ニトロフェノール(24.5g,176mmol)を加えた後、氷冷下で撹拌しながらEDC・HCl(33.7g,176mmol)、DMAP(1.72g,14.1mmol)を加えた。この混合物を徐々に室温まで昇温させながら6時間撹拌した後、水(150mL)を加えた。この反応混合物を酢酸エチル(500mL×3回)にて抽出し、有機層を硫酸ナトリウムにて乾燥した後、減圧下に濃縮した。得られた粗固体をエタノール(5mL)−酢酸エチル(20mL)−ヘキサン(20mL)にて再沈殿した後、80℃の湯(500mL)で洗浄することにより、ジニトロ化合物3(trans−3−メチレン−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ジ(4−ニトロフェニル))の淡黄色固体(収量16.7g、収率62%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ8.31(d,J=9.2Hz,4H),7.35(d,J=9.2Hz,4H),5.98−5.94(m,2H),3.32−3.28(m,2H).
【0401】
[合成例6] ジアミン異性体混合物2(ジアミン化合物(1−3−2)とそのエナンチオマーの混合物)の合成
【化150】
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【0402】
アルゴン雰囲気下、ジニトロ化合物3(15.0g,39.0mmol)の酢酸エチル(300mL)溶液に塩化すず(II)二水和物(88.0g,390mmol)を加え、加熱還流下、4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1.1L)に加えた後、セライトにてろ過した。ろ液を酢酸エチル(300mL×3回)にて抽出した後、飽和食塩水(300mL)にて洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下に濃縮した。得られた残渣を、クロロホルム:メタノール=90:10の混合溶剤を溶離液に用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、目的のジアミン異性体混合物2(ジアミン化合物(1−3−2)とそのエナンチオマーの混合物)の白色固体(収量7.05g、収率56%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ6.81(d,J=8.8Hz,4H),6.54(d,J=8.8Hz,4H),5.90−5.85(m,2H),5.08(brs,4H),3.12−3.08(m,2H).
【0403】
[合成例7] ジニトロ化合物4の合成
【化151】
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【0404】
trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸(2.00g,15.4mmol)、4−ニトロ−o−クレゾール(4.93g,31.6mmol)をジクロロメタン(154mL)に溶解し、氷冷した。そこへ、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(6.18g,31.6mmol)と4−ジメチルアミノピリジン(0.38g,3.1mmol)を加え、室温まで昇温し24時間撹拌した。反応終了後、反応混合物に水(50mL)を加え、酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。合一した有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、減圧下に濃縮した。得られた粗生成物をメタノール(40mL)で洗浄することにより、ジニトロ化合物4[trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビス(2−メチル−4−ニトロフェニル)]の黄色固体(収量5.03g、収率82%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ8.27(dd,J=2.8,0.6Hz,2H),8.16(ddd,J=8.8,2.8,0.6Hz,2H),7.51(d,J=8.8Hz,2H),2.71−2.67(m,2H),2.29(s,6H),1.85−1.81(m,2H).
【0405】
[合成例8] ジアミン異性体混合物3(ジアミン化合物(1−3−3)とそのエナンチオマーの混合物)の合成
【化152】
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【0406】
水素雰囲気下、trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビス(2−メチル−4−ニトロフェニル)(5.02g,12.5mmol)、10%パラジウム炭素(0.53g,0.50mmol)、テトラヒドロフラン(200mL)の混合物を室温で17時間撹拌した。反応終了後、反応混合物をテトラヒドロフラン(200mL)で洗浄しながらセライト濾過し、ろ液を減圧下に濃縮した。得られた固体をメタノール(30mL)で洗浄することにより、目的のジアミン異性体混合物3(ジアミン化合物(1−3−3)とそのエナンチオマーの混合物)の淡黄色固体(収量2.47g、収率58%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ6.73(d,J=8.5Hz,2H),6.43(d,J=2.5Hz,2H),6.38(dd,J=8.5,2.5Hz,2H),4.98(brs,4H),2.44−2.40(m,2H),1.97(s,6H),1.65−1.61(m,2H).
【0407】
[合成例9] ジニトロ化合物5の合成
【化153】
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【0408】
trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸(3.03g,23.2mmol)に塩化チオニル(15.4mL)を加え、70℃で4時間撹拌した。反応終了後、減圧下に濃縮することにより塩化チオニルを留去し、粗生成のtrans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸塩化物を得た。この酸塩化物はTHF(46mL)溶液とし、次の反応に全量使用した。
アルゴン雰囲気下、4−ニトロ−m−クレゾール(7.64g,48.9mmol)のTHF(50mL)溶液にトリエチルアミン(11.3mL,81.5mmol)を加え、氷冷した。この溶液に先に調製した酸塩化物のTHF溶液を5分間かけて滴下した後、室温まで昇温させ18時間撹拌した。反応終了後、反応混合物に水(100mL)を加え、減圧下に濃縮した。残渣を酢酸エチル(100mL×3)で抽出した後、飽和塩化ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、減圧下に濃縮した。得られた残渣をメタノール(50mL)で洗浄することにより、ジニトロ化合物5[trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビス(3−メチル−4−ニトロフェニル)]の黄土色固体(収量8.09g,収率87%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ8.10(d,J=8.9Hz,2H),7.42(d,J=2.4Hz,2H),7.35(dd,J=2.4,8.9Hz,2H),2.62−2.59(m,2H),2.54(s,6H),1.80−1.76(m,2H).
【0409】
[合成例10] ジアミン異性体混合物4(ジアミン化合物(1−3−4)とそのエナンチオマーの混合物)の合成
【化154】
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【0410】
アルゴン雰囲気下、trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビス(3−メチル−4−ニトロフェニル)(3.02g,7.55mmol)の酢酸エチル(76mL)溶液に塩化すず(II)二水和物(17.6g,75.5mmol)を加え、加熱還流下2時間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(300mL)に加えた後、セライト濾過し、ろ液を酢酸エチル(100mL×3)で抽出した。合一した有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200mL)、飽和食塩水(200mL)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧下に濃縮した。得られた残渣を、クロロホルム:メタノールの混合溶剤を溶離液に用い、その割合を95:5〜85:15の範囲で変化させながらシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより、目的のジアミン異性体混合物4(ジアミン化合物(1−3−4)とそのエナンチオマーの混合物)の淡黄色固体(収量2.09g、収率81%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ6.74(d,J=2.4Hz,2H),6.69(dd,J=2.4,8.5Hz,2H),6.58(d,J=8.5Hz,2H),4.82(brs,4H),2.38−2.34(m,2H),2.04(s,6H),1.61−1.57(m,2H).
【0411】
[合成例11] ジニトロ化合物6の合成
【化155】
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【0412】
trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸(1.81g,13.9mmol)に塩化チオニル(9.2mL)を加え、70℃で4時間撹拌した。反応終了後、減圧下に濃縮することにより塩化チオニルを留去し、粗生成のtrans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸塩化物を得た。この酸塩化物はTHF(28mL)溶液とし、次の反応に全量使用した。
アルゴン雰囲気下、2,6−ジメチル−4−ニトロフェノール(4.97g,29.2mmol)のTHF(30mL)溶液にトリエチルアミン(6.7mL,48.6mmol)を加え、氷冷した。この溶液に先に調製した酸塩化物のTHF溶液を30分間かけて滴下した後、室温まで昇温して21時間撹拌した。反応終了後、反応混合物に水(150mL)を加え、沈殿物をろ取した後、メタノール(30mL)で洗浄することにより、ジニトロ化合物6[trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビス(2,6−ジメチル−4−ニトロフェニル)]の薄茶色固体(収量5.58g,収率94%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ8.10(s,4H),2.78−2.75(m,2H),2.26(s,12H),1.89−1.85(m,2H).
【0413】
[合成例12] ジアミン異性体混合物5(ジアミン化合物(1−3−5)とそのエナンチオマーの混合物)の合成
【化156】
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【0414】
アルゴン雰囲気下、trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビス(2,6−ジメチル−4−ニトロフェニル)(2.55g,6.0mmol)の酢酸エチル(60mL)溶液に塩化すず(II)二水和物(13.8g,59.5mmol)を加え、加熱還流下1時間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(300mL)に加えた後、セライト濾過し、ろ液を酢酸エチル(100mL×3)で抽出した。合一した有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200mL)、飽和食塩水(200mL)にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧下に濃縮した。得られた残渣を、クロロホルム:メタノールの混合溶剤を溶離液に用い、その割合を95:5〜85:15の範囲で変化させながらシリカゲルクロマトグラフィーで精製した後に、メタノール(50mL)で洗浄することにより、目的のジアミン異性体混合物5[ジアミン化合物(1−3−5)とそのエナンチオマーの混合物]の淡黄色固体(収量1.41g、収率64%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ6.26(s,4H),4.88(brs,4H),2.47−2.44(m,2H),1.94(s,12H),1.69−1.66(m,2H).
【0415】
[合成例13] ジニトロ化合物7の合成
【化157】
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【0416】
trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸(1.91g,14.7mmol)に塩化チオニル(9.8mL)を加え、70℃で4時間撹拌した後、減圧下濃縮することにより塩化チオニルを留去し、粗生成のtrans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸塩化物を得た。この酸塩化物はTHF(30mL)溶液とし、次の反応に全量使用した。
アルゴン雰囲気下、2−フルオロ−4−ニトロフェノール(4.98g,30.8mmol)のTHF(32mL)溶液にトリエチルアミン(7.10mL,51.3mmol)を加え、氷冷した。この溶液に先に調製した酸塩化物のTHF溶液を10分間かけて滴下した後、室温まで昇温させ16時間撹拌した。反応終了後、反応混合物に水(100mL)を加え、減圧下に濃縮した。残渣を酢酸エチル(100mL×3)で抽出した後、飽和塩化ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥、減圧下に濃縮した。得られた残渣をメタノール(50mL)で洗浄することにより、ジニトロ化合物7[trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビス(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)]の白色固体(収量5.29g,収率88%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ8.39(d,J=2.6Hz,1H),8.37(d,J=2.6Hz,1H),8.22−8.19(m,2H),7.78(d,J=7.7Hz,1H),7.75(d,J=7.7Hz,1H),2.76−2.72(m,2H),1.89−1.85(m,2H).19F−NMR(376MHz,DMSO−d):δ−124.4(s,2F).
【0417】
[合成例14] ジアミン異性体混合物6(ジアミン化合物(1−3−6)とそのエナンチオマーの混合物)の合成
【化158】
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【0418】
アルゴン雰囲気下、trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビス(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)(3.20g,7.83mmol)の酢酸エチル(78mL)溶液に塩化すず(II)二水和物(18.2g,78.3mmol)を加え、加熱還流下1時間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(300mL)に加えた後、セライト濾過し、ろ液を酢酸エチル(100mL×3)で抽出した。合一した有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200mL)、飽和食塩水(200mL)にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧下に濃縮した。得られた残渣を、クロロホルム:メタノールの混合溶剤を溶離液に用い、その割合を95:5〜85:15の範囲で変化させながらシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより、目的のジアミン異性体混合物6[ジアミン化合物(1−3−6)とそのエナンチオマーの混合物]の淡黄色固体(収量2.34g、収率86%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ6.94(t,J=8.8Hz,2H),6.43(dd,J=8.8,2.5Hz,2H),6.34(dd,J=8.8,2.5Hz,2H),5.39(brs,4H),2.48−2.44(m,2H),1.68−1.64(m,2H).19F−NMR(376MHz,DMSO−d):δ−130.1(s,2F).
【0419】
[合成例15] ジニトロ化合物8の合成
【化159】
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【0420】
trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸(1.90g,14.6mmol)に塩化チオニル(9.8mL)を加え、70℃で4時間撹拌した後、減圧下に濃縮することにより塩化チオニルを留去し、粗生成のtrans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸塩化物を得た。この酸塩化物はTHF(30mL)溶液とし、次の反応に全量使用した。
アルゴン雰囲気下、3−フルオロ−4−ニトロフェノール(4.92g,30.7mmol)のTHF(32mL)溶液にトリエチルアミン(7.10mL,51.2mmol)を加え、氷冷した。この溶液に先に調製した酸塩化物のTHF溶液を5分かけて滴下した後、室温まで昇温して16時間撹拌した。反応終了後、反応混合物に水(100mL)を加え、沈殿物をろ取して乾燥することにより、ジニトロ化合物8[trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビス(3−フルオロ−4−ニトロフェニル)]の白色固体(収量2.87g,収率48%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ8.28(t,J=8.9Hz,2H),7.67(dd,J=12.0,2.4Hz,2H),7.38(ddd,J=12.0,8.9,2.4Hz,2H),2.66−2.62(m,2H),1.84−1.80(m,2H).19F−NMR(376MHz,DMSO−d):δ−115.3(s,2F).
【0421】
[合成例16] ジアミン異性体混合物7(ジアミン化合物(1−3−7)とそのエナンチオマーの混合物)の合成
【化160】
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【0422】
アルゴン雰囲気下、trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビス(3−フルオロ−4−ニトロフェニル)(2.81g,6.89mmol)の酢酸エチル(70mL)溶液に塩化すず(II)二水和物(16.0g,68.9mmol)を加え、加熱還流下1時間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200mL)に加えた後、セライト濾過し、ろ液を酢酸エチル(100mL×3)で抽出した。合一した有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(150mL)、飽和食塩水(150mL)にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧下に濃縮した。得られた残渣を、クロロホルム:メタノールの混合溶剤を溶離液に用い、その割合を95:5〜85:15の範囲で変化させながらシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより、目的のジアミン異性体混合物7[ジアミン化合物(1−3−7)とそのエナンチオマーの混合物]の淡黄色固体(収量1.08g、収率45%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ6.97−6.93(m,2H),6.78−6.71(m,4H),2.42−2.39(m,2H),1.65−1.61(m,2H).19F−NMR(376MHz,DMSO−d):δ−132.8(s,2F).
【0423】
[合成例17] ジニトロ化合物9の合成
【化161】
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【0424】
trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸(3.01g,23.2mmol)に塩化チオニル(15.4mL)を加え、70℃で4時間撹拌した後、減圧下に濃縮することにより塩化チオニルを留去し、粗生成のtrans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸塩化物を得た。この酸塩化物はTHF(46mL)溶液とし、次の反応に全量使用した。
アルゴン雰囲気下、2−クロロ−4−ニトロフェノール(8.61g,48.6mmol)のTHF(50mL)溶液にトリエチルアミン(11.2mL,81.0mmol)を加え、氷冷した。この溶液に先に調製した酸塩化物のTHF溶液を5分間かけて滴下した後、室温まで昇温して18時間撹拌した。反応終了後、反応混合物に水(150mL)を加え、沈殿物をろ取して乾燥することにより、ジニトロ化合物9[trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビス(2−クロロ−4−ニトロフェニル)]の白色固体(収量9.96g,収率98%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ8.51(d,J=2.7Hz,2H),8.32(dd,J=9.0,2.7Hz,2H),7.77(d,J=9.0Hz,2H),2.77−2.73(m,2H),1.92−1.88(m,2H).
【0425】
[合成例18] ジアミン異性体混合物8(ジアミン化合物(1−3−8)とそのエナンチオマーの混合物)の合成
【化162】
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【0426】
アルゴン雰囲気下、trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビス(2−クロロ−4−ニトロフェニル)(2.10g,4.76mmol)の酢酸エチル(48mL)溶液に塩化すず(II)二水和物(11.1g,47.6mmol)を加え、加熱還流下1時間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200mL)に加えた後、セライト濾過し、ろ液を酢酸エチル(100mL×3)で抽出した。合一した有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200mL)、飽和食塩水(200mL)にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧下に濃縮した。得られた残渣を、クロロホルム:メタノールの混合溶剤を溶離液に用い、その割合を95:5〜85:15の範囲で変化させながらシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより、目的のジアミン異性体混合物8[ジアミン化合物(1−3−8)とそのエナンチオマーの混合物]の白色固体(収量1.19g、収率65%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ6.97(d,J=8.7Hz,2H),6.67(d,J=2.6Hz,2H),6.51(dd,J=8.7,2.6Hz,2H),5.38(brs,4H),2.49−2.45(m,2H),1.71−1.68(m,2H).
【0427】
[合成例19] ジニトロ化合物10の合成
【化163】
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【0428】
trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸(1.75g,13.5mmol)に塩化チオニル(9.0mL)を加え、70℃で4時間撹拌した後、減圧下に濃縮することにより塩化チオニルを留去し、粗生成のtrans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸塩化物を得た。この酸塩化物はTHF(27mL)溶液とし、次の反応に全量使用した。
アルゴン雰囲気下、3−クロロ−4−ニトロフェノール(5.01g,28.3mmol)のTHF(30mL)溶液にトリエチルアミン(6.50mL,47.2mmol)を加え、氷冷した。そこへ、上記で調製した酸塩化物のTHF溶液を5分間かけて滴下した後、室温まで昇温して18時間撹拌した。反応終了後、反応混合物に水(100mL)を加え、沈殿物をろ取することにより、ジニトロ化合物10[trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビス(3−クロロ−4−ニトロフェニル)]の淡黄色固体(収量3.48g,収率58%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ8.21(d,J=8.9Hz,2H),7.83(d,J=2.4Hz,2H),7.52(dd,J=8.9,2.4Hz,2H),2.66−2.62(m,2H),1.83−1.80(m,2H).
【0429】
[合成例20] ジアミン異性体混合物9(ジアミン化合物(1−3−9)とそのエナンチオマーの混合物)の合成
【化164】
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【0430】
アルゴン雰囲気下、trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビス(3−クロロ−4−ニトロフェニル)(3.43g,7.77mmol)の酢酸エチル(78mL)溶液に塩化すず(II)二水和物(18.1g,77.7mmol)を加え、加熱還流下1時間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200mL)に加えた後、セライト濾過し、ろ液を酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。合一した有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(150mL)、飽和食塩水(150mL)にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧下に濃縮した。得られた残渣を、ヘキサン:酢酸エチル=50:50の混合溶剤を溶離液に用いてシリカゲルクロマトグラフィーで精製した後に、メタノール(30mL)で洗浄することにより、目的のジアミン異性体混合物9[ジアミン化合物(1−3−9)とそのエナンチオマーの混合物]の白色固体(収量2.09g、収率70%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ7.12(d,J=2.6Hz,2H),6.87(dd,J=8.7,2.6Hz,2H),6.78(d,J=8.7Hz,2H),5.34(brs,4H),2.43−2.39(m,2H),1.65−1.61(m,2H).
【0431】
[合成例21] ジニトロ化合物11の合成
【化165】
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【0432】
trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸(2.022g,15.5mmol)に塩化チオニル(10.4mL)を加え、70℃で4時間撹拌した後、減圧下に濃縮することにより塩化チオニルを留去し、粗生成のtrans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸塩化物を得た。この酸塩化物はTHF(31mL)溶液とし、次の反応に全量使用した。
アルゴン雰囲気下、2−メトキシ−4−ニトロフェノール(5.63g,32.6mmol)のTHF(31mL)溶液にトリエチルアミン(7.5mL,54.4mmol)を加え、氷冷した。この溶液に先に調製した酸塩化物のTHF溶液を15分間かけて滴下した後、室温まで昇温して16時間撹拌した。反応終了後、反応混合物に水(80mL)を加え、沈殿物をろ取することにより、ジニトロ化合物11[trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビス(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)]の白色固体(収量6.34g,収率94%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ7.95(d,J=2.6Hz,2H),7.92(dd,J=8.6,2.6Hz,2H),7.54(d,J=8.6Hz,2H),3.95(s,6H),2.63−2.59(m,2H),1.80−1.76(m,2H).
【0433】
[合成例22] ジアミン異性体混合物10(ジアミン化合物(1−3−10)とそのエナンチオマーの混合物)の合成
【化166】
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【0434】
アルゴン雰囲気下、trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビス(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)(3.16g,7.30mmol)の酢酸エチル(73mL)溶液に塩化すず(II)二水和物(17.0g,73.0mmol)を加え、加熱還流下2時間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(300mL)に加えた後、セライト濾過し、ろ液を酢酸エチル(100mL×3)で抽出した。合一した有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200mL)、飽和食塩水(200mL)にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧下に濃縮した。得られた残渣を、クロロホルム:メタノールの混合溶剤を溶離液に用い、その割合を95:5〜85:15の範囲で変化させながらシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより、目的のジアミン異性体混合物10[ジアミン化合物(1−3−10)とそのエナンチオマーの混合物]の白色固体(収量1.68g、収率62%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ6.74(d,J=8.5Hz,2H),6.31(d,J=2.4Hz,2H),6.09(dd,J=8.5,2.4Hz,2H),5.08(brs,4H),3.67(s,6H),2.35−2.32(m,2H),1.60−1.57(m,2H).
【0435】
[合成例23] ジニトロ化合物12の合成
【化167】
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【0436】
trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸(2.27g,17.5mmol)に塩化チオニル(11.6mL)を加え、70℃で4時間撹拌した後、減圧下に濃縮することにより塩化チオニルを留去し、粗生成のtrans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸塩化物を得た。この酸塩化物はTHF(35mL)溶液とし、次の反応に全量使用した。
アルゴン雰囲気下、3−メトキシ−4−ニトロフェノール(6.20g,36.7mmol)のTHF(35mL)溶液にトリエチルアミン(8.5mL,61.1mmol)を加え、氷冷した。この溶液に先に調製した酸塩化物のTHF溶液を40分かけて滴下した後、室温まで昇温して18時間撹拌した。反応終了後、反応混合物に水(100mL)を加え、酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。合一した有機層を飽和食塩水(50mL×2)にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧下に濃縮した。得られた残渣を、クロロホルム:メタノール=99:1の混合溶剤を溶離液に用いてシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより、ジニトロ化合物12[trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビス(3−メトキシ−4−ニトロフェニル)]の白色固体(収量1.94g,収率26%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ8.01(d,J=8.8Hz,2H),7.33(d,J=2.3Hz,2H),7.01(dd,J=8.8,2.3Hz,2H),3.92(s,6H),2.64−2.60(m,2H),1.82−1.78(m,2H).
【0437】
[合成例24] ジアミン異性体混合物11(ジアミン化合物(1−3−11)とそのエナンチオマーの混合物)の合成
【化168】
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【0438】
アルゴン雰囲気下、trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビス(3−メトキシ−4−ニトロフェニル)(1.90g,4.40mmol)の酢酸エチル(44mL)溶液に塩化すず(II)二水和物(10.2g,44.0mmol)を加え、加熱還流下1時間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200mL)に加えた後、セライト濾過し、ろ液を酢酸エチル(100mL×3)で抽出した。合一した有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)、飽和食塩水(100mL)にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧下に濃縮した。得られた残渣を、クロロホルム:メタノール=90:10の混合溶剤を溶離液に用いてシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより、目的のジアミン異性体混合物11[ジアミン化合物(1−3−11)とそのエナンチオマーの混合物]の淡黄色固体(収量1.18g、収率72%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ6.68(d,J=2.4Hz,2H),6.60(d,J=8.4Hz,2H),6.49(dd,J=8.4,2.4Hz,2H),4.68(brs,4H),3.74(s,6H),2.42−2.38(m,2H),1.64−1.61(m,2H).
【0439】
[合成例25] ジニトロ化合物13の合成
【化169】
[この文献は図面を表示できません]
【0440】
trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸(2.04g,15.7mmol)に塩化チオニル(10.5mL)を加え、70℃で4時間撹拌した後、減圧下に濃縮することにより塩化チオニルを留去し、粗生成のtrans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸塩化物を得た。この酸塩化物はTHF(30mL)溶液とし、次の反応に全量使用した。
アルゴン雰囲気下、3−ニトロフェノール(4.68g,33.0mmol)のTHF(34mL)溶液にトリエチルアミン(7.6mL,54.9mmol)を加え、氷冷した。この溶液に先に調製した酸塩化物のTHF溶液を10分間かけて滴下した後、室温まで昇温して25時間撹拌した。反応終了後、反応混合物に水(100mL)を加え、減圧下に濃縮した。残渣を酢酸エチル(100mL×3)で抽出した後、飽和塩化ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥、減圧下に濃縮した。得られた残渣を、クロロホルム:メタノールの混合溶剤を溶離液に用い、その割合を95:5〜85:15の範囲で変化させながらシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより、ジニトロ化合物13[trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビス(3−ニトロフェニル)]の黄色固体(収量4.27g、収率73%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ8.21−8.16(m,4H),7.79−7.72(m,4H),2.67−2.63(m,2H),1.83−1.80(m,2H).
【0441】
[合成例26] ジアミン異性体混合物12(ジアミン化合物(1−3−12)とそのエナンチオマーの混合物)の合成
【化170】
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【0442】
アルゴン雰囲気下、trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビス(3−ニトロフェニル)(2.04g,5.47mmol)の酢酸エチル(55mL)溶液に塩化すず(II)二水和物(12.7g,54.7mmol)を加え、加熱還流下4時間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200mL)に加えた後、セライト濾過し、ろ液を酢酸エチル(100mL×3)で抽出した。合一した有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200mL)、飽和食塩水(200mL)にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧下に濃縮した。得られた残渣を、クロロホルム:メタノールの混合溶剤を溶離液に用い、その割合を95:5〜85:15の範囲で変化させながらシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより、目的のジアミン異性体混合物12[ジアミン化合物(1−3−12)とそのエナンチオマーの混合物]の淡黄色油状物(収量1.34g、収率79%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ7.02(t,J=8.0Hz,2H),6.44(ddd,J=8.0,2.2,0.8Hz,2H),6.32(t,J=2.1Hz,2H),6.27(ddd,J=8.0,2.2,0.8Hz,2H),5.29(brs,4H),2.43−2.39(m,2H),1.64−1.60(m,2H).
【0443】
[合成例27] ジアミン異性体混合物13(ジアミン化合物(1−3−13)とそのエナンチオマーの混合物)の合成
【化171】
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【0444】
trans−3−メチレン−1,2−シクロプロパンジカルボン酸(3.20g,22.5mmol)のメタノール(48mL)溶液に、濃硫酸(0.1mL)を加え、40℃で4時間半撹拌した。減圧下に濃縮することで溶剤を留去した後に、水(100mL)を加え、酢酸エチル(30mL×3)で抽出した。得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)と飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL)にて洗浄した後に、無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧下に濃縮することにより、trans−3−メチレン−1,2−シクロプロパンジメチルエステルの黄色油状物(収量3.74g、収率98%)を得た。H−NMR(400MHz,CDCl):δ5.68(t,J=2.4Hz,2H),3.72(s,6H),2.89(t,J=2.4H,2H).
【0445】
【化172】
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【0446】
trans−3−メチレン−1,2−シクロプロパンジメチルエステル(1.28g,9.02mmol)に、ヒドラジン一水和物(1.1mL,22.6mmol)、アセトニトリル(75ml)を加えた。酸素雰囲気下、低圧水銀ランプ(UVL-20PH-6)を照射しながら42時間撹拌した。反応終了後、反応液をショートカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル100mL)により精製することにより、trans−3−メチル−1,2−シクロプロパンジメチルエステルの茶色油状物(収量1.20g、収率77%)を得た。H−NMR(400MHz,CDCl):δ3.71(s,3H),3.69(s,3H),2.29(dd,J=9.6,4.6Hz,1H),2.11(dd,J=5.6,4.6Hz,1H),1.88−1.79(m,1H),1.26(d,J=6.4Hz,3H).
【0447】
【化173】
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【0448】
氷冷下、trans−3−メチル−1,2−シクロプロパンジメチルエステル(1.20g,6.97mmol)のエタノール(14mL)溶液に、水酸化ナトリウム(1.12g,27.9mmol)の水(14mL)溶液を5分間かけて滴下した。反応終了後、減圧下に濃縮することにより溶剤を留去した。残渣に氷冷下にて濃塩酸(3.0mL)を加えた後、酢酸エチル(30mL×3)で抽出した。合一した有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧下に濃縮することにより、trans−3−メチル−1,2−シクロプロパンジカルボン酸の淡黄色固体(収量0.91g、収率91%)を得た。H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ12.5(brs,2H),2.01(dd,J=9.6,4.6Hz,1H),1.78(dd,J=5.8,4.6Hz,1H),1.73−1.65(m,1H),1.17(d,J=6.2Hz,3H).
【0449】
【化174】
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【0450】
アルゴン雰囲気下、trans−3−メチル−1,2−シクロプロパンジカルボン酸(867mg,6.02mmol)とtert‐ブチルN−(4−ヒドロキシフェニル)カルバメート(2.64g,12.6mmol)をジクロロメタン(60mL)に溶解し、氷冷した。このものに1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(2.47g,12.6mmol)と4−ジメチルアミノピリジン(147mg,1.20mmol)を加え、室温まで昇温して64時間撹拌した。反応終了後、水(100mL)を加え、クロロホルム(30mL×3)にて抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をメタノール(20mL)にて洗浄することにより、trans−3−メチル−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ジtert−ブチルN−(4−ヒドロキシフェニル)の白色固体(収量2.33g、収率73%)を得た。H‐NMR(400MHz,DMSO‐d):δ9.41(brs,2H),7.49−7.45(m,4H),7.08−7.05(m,4H),2.57(dd,J=9.7,4.6Hz,1H),2.27(dd,J=5.9,4.6Hz,1H),2.09(m,1H),1.48(s,18H),1.31(d,J=6.3Hz,3H).
【0451】
【化175】
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【0452】
氷冷下、trans−3−メチル−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ジtert−ブチルN−(4−ヒドロキシフェニル)(2.27g,4.30mmol)のジクロロメタン(43mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(8.4mL)を10分間以上かけて滴下した後、室温まで昇温した。反応終了後、氷冷下で飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200mL)を加え、クロロホルム(50mL×3)で抽出した。合一した有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧下に濃縮することにより、trans−3−メチル−1,2−シクロプロパンジカルボン酸ジ−4−アミノフェニルの白色固体(収量1.13g、収率80%)を得た。H−NMR(400MHz,CDCl):δ6.92−6.88(m,4H),6.69−6.64(m,4H),2.61(dd,J=9.7,4.6Hz,1H),2.39(dd,J=5.9,4.6Hz,1H),2.11−2.03(m,1H),1.40(d,J=6.4Hz,3H).H‐NMR(400MHz,DMSO‐d):δ6.82−6.77(m,4H),6.57−6.52(m,4H),5.06(brs,4H),2.49−2.47(m,1H),2.20(dd,J=5.9,4.6Hz,1H),2.06−1.97(m,1H),1.28(d,J=6.2Hz,3H).
【0453】
trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸の合成
ジニトロ化合物の合成に用いるtrans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸は、下記合成例28〜31によって合成することができる。
【0454】
[合成例28]
【化176】
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【0455】
DMF(30mL)に水素化ナトリウム(5.24g,120mmol)を加えた混合溶液を2℃まで冷却した後、アクリル酸エチル(10.0g,99.9mmol)とクロロ酢酸エチル(12.2g,99.9mmol)のDMF(20mL)溶液を45分かけて滴下した。2時間後室温まで昇温し、そのまま20時間撹拌した。反応終了後、氷冷下、反応混合物に5M塩酸(30mL)をゆっくりと滴下した後、水(50mL)を加え撹拌し、ジエチルエーテル(50mL×3)で抽出を行った。合一した有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)、飽和食塩水(50mL×2)で洗浄した後、硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧下に濃縮した。得られた残渣(12.1g)のトランス体:シス体は97:3であった。この残渣をエタノール(200mL)溶液とし、全量次の反応に用いた。
先の反応で得られたエタノール溶液を氷冷下、水酸化ナトリウム(16.0g,400mmol)の水(200mL)溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、反応液を徐々に室温まで昇温し、15時間撹拌した。反応終了後、減圧下に濃縮することによりエタノールを留去した。得られた水層をヘキサン(150mL×3)で洗浄した後、氷冷下、水層に濃塩酸(40mL)を滴下した。しばらく撹拌した後、酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。合一した有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧下に濃縮した。得られた粗生成物を酢酸エチル(40mL)、ヘキサン(200mL)で洗浄することにより、trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸の白色固体(収量5.88g,収率45%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ12.6(brs,2H),1.91−1.87(m,2H),1.29−1.25(m,2H).
【0456】
[合成例29]
水素化ナトリウム(2.62g,59.9mmol)のDMF(10mL)溶液を、−10℃に冷却し、アクリル酸エチル(5.00g,49.9mmol)とクロロ酢酸エチル(6.12g,49.9mmol)のDMF(15mL)溶液を20分かけて滴下し、24時間撹拌した。氷冷下、この反応液に5M塩酸(15mL)をゆっくりと滴下し、水(30mL)を加え撹拌した後、ジエチルエーテル(50mL×3)で抽出を行った。合一した有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)、飽和食塩水(50mL×2)で洗浄した後、硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧下に濃縮した。得られた残渣(8.50g)のトランス体:シス体は98:2であった。この残渣をエタノール(100mL)溶液とし、全量次の反応に用いた。
先の反応で得られたエタノール溶液を氷冷下、水酸化ナトリウム(8.00g,200mmol)の水(100mL)溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、反応液を徐々に室温へ昇温し、15時間撹拌した。反応終了後、減圧下に濃縮することによりエタノールを留去した。得られた水層をヘキサン(100mL×3)で洗浄した後、氷冷下、水層に濃塩酸(20mL)を滴下した。しばらく撹拌した後、酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。合一した有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧下に濃縮した。得られた粗生成物を酢酸エチル(18mL)、ヘキサン(30mL)で洗浄することにより、trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸の白色固体(収量3.08g,収率48%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ12.6(brs,2H),1.91−1.87(m,2H),1.29−1.25(m,2H).
【0457】
[合成例30]
DMF(50mL)に水素化ナトリウム(4.30g,98.44mmol)を加えた混合溶液を2℃まで冷却した後、アクリル酸エチル(10.0g,99.9mmol)とクロロ酢酸エチル(12.2g,99.9mmol,1.0eq.)を40分かけて滴下した。2時間後室温に昇温し、20時間撹拌した。反応終了後、氷冷下、この反応混合物に5M−塩酸(30mL)をゆっくりと滴下した後、水(50mL)を加え撹拌し、ジエチルエーテル(50mL×3)で抽出を行った。合一した有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)、飽和食塩水(50mL×2)で洗浄した後、硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧下に濃縮した。得られた残渣(18.8g)のトランス体とシス体の比率はtrans:cis=85:15であった。この残渣をエタノール(200mL)溶液とし、全量次の反応に用いた。
先の反応で得られたエタノール溶液を氷冷下、水酸化ナトリウム(16.0g,400mmol)の水(200mL)溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、反応液を徐々に室温へ昇温し、15時間撹拌した。反応終了後、減圧下に濃縮することによりエタノールを留去した。得られた水層をヘキサン(150mL×3)で洗浄した後、氷冷下、水層に濃塩酸(40mL)を滴下した。しばらく撹拌した後、酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。合一した有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧下に濃縮した。得られた粗生成物を酢酸エチル(48mL)、ヘキサン(40mL)で洗浄することにより、trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸の白色固体(収量6.46g,収率50%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ12.6(brs,2H),1.91−1.87(m,2H),1.29−1.25(m,2H).
【0458】
[合成例31]
ナトリウム−tert−ブトキシド(11.8g,120mmol)のDMF(30mL)混合溶液を2℃まで冷却した後、アクリル酸エチル(10.0g,99.9mmol)とクロロ酢酸エチル(12.2g,99.9mmol)のDMF(20mL)溶液を40分間かけて滴下した。2時間後室温まで昇温し、そのまま20時間撹拌した。反応終了後、氷冷下、この反応混合物に5M塩酸(30mL)をゆっくりと滴下した後、水(50mL)を加え撹拌し、ジエチルエーテル(50mL×3)で抽出を行った。合一した有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)、飽和食塩水(50mL×2)で洗浄した後、硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧下に濃縮した。得られた残渣(17.8g)はエタノール(200mL)溶液とし、全量次の反応に用いた。
先の反応で得られたエタノール溶液を氷冷下、水酸化ナトリウム(16.0g,400mmol)と水(200mL)溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、反応液を徐々に室温まで昇温し、15時間撹拌した。応終了後、減圧下に濃縮することによりエタノールを留去した。氷冷下、得られた水層に濃塩酸(40mL)を滴下した。しばらく撹拌した後、酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。合一した有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧下に濃縮した。得られた粗生成物を酢酸エチル(22mL)、ヘキサン(20mL)で洗浄することにより、trans−1,2−シクロプロパンジカルボン酸の白色固体(収量7.50g,収率58%)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ12.6(brs,2H),1.91−1.87(m,2H),1.29−1.25(m,2H).
【0459】
測定法と評価法
本実施例で使用した測定法と評価法を下記に示す。
[重量平均分子量(Mw)の測定]
ポリアミック酸の重量平均分子量は、2695セパレーションモジュール・2414示差屈折計(Waters製)を用いてGPC法により測定し、ポリスチレン換算することにより求めた。得られたポリアミック酸をリン酸−DMF混合溶液(リン酸/DMF=0.6/100:重量比)で、ポリアミック酸濃度が約2重量%になるように希釈した。カラムはHSPgel RT MB−M(Waters製)を使用し、前記混合溶液を展開剤として、カラム温度50℃、流速0.40mL/minの条件で測定を行った。標準ポリスチレンは東ソー(株)製TSK標準ポリスチレンを用いた。
【0460】
[コントラストの測定]
作製した液晶セルの輝度−電圧特性(B−V特性)を測定し、最小輝度と最大輝度の比を用いてコントラスト(CR)を求めた。CRの値が大きいほど、明暗表示が鮮明であり、コントラストが良好であることを意味し、3000以上で優れたコントラストを有すると言える。
CR=Bmax/Bmin
式において、BmaxはB−V特性における最大輝度を示し、BminはB−V特性における最小輝度を示す。
【0461】
[AC残像の測定]
AC残像は国際公開2000/43833号パンフレットに記載の方法に従って測定した。具体的には、作製した液晶セルの輝度−電圧特性(B−V特性)を測定し、これをストレス印加前の輝度−電圧特性:B(before)とした。次に、液晶セルに4.5V、60Hzの交流を20分間印加した後、1秒間ショートし、再び輝度−電圧特性(B−V特性)を測定した。これをストレス印加後の輝度−電圧特性:B(after)とした。ここでは、B(before)およびB(after)の特性値として、測定した各輝度−電圧特性の電圧1.3Vにおける輝度を用い、下記式にて輝度変化率ΔB(%)を求めた。ΔB(%)の値が小さいほど、AC残像の発生を抑制できること、すなわち残像特性が良好であることを意味する。ΔBが3%未満であれば「○」、3%以上であれば「×」として評価し、「○」であれば残像特性が良好と言える。
ΔB(%)={[B(after)−B(before)]/B(before)}×100
【0462】
本実施例で使用した化合物
[一般式(1)で表されるジアミン化合物]
本実施例でワニスの調製に使用した一般式(1)で表されるジアミン化合物を下記に示す。
【0463】
【化177】
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【0464】
[その他のジアミン化合物]
本実施例及び比較例でワニスの調製に使用したその他のジアミン化合物を下記に示す。これらのうち、化合物(DI−5−32)、化合物(DI−5−35)及び化合物(DI−6−8)は光反応性ジアミン化合物である。下記式中のmについては、表1〜表5中に値を記載した。
【0465】
【化178】
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【0466】
[テトラカルボン酸二無水物]
本実施例及び比較例でワニスの調製に使用したテトラカルボン酸二無水物を下記に示す。下記式中のmについては、表1〜表5中に値を記載した。
【0467】
【化179】
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【0468】
本実施例及び比較例でワニスの調製に使用した溶剤を下記に示す。
NMP: N−メチル−2−ピロリドン
BC: ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)
【0469】
本実施例及び比較例でワニスの調製に使用した添加剤を下記に示す。
Ad.1:3−アミノプロピルトリエトキシシラン
Ad.2:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
Ad.3:(3,3’,4,4’−ジエポキシ)ビシクロヘキシル
Ad.4:1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン
【0470】
ワニスの調製
本実施例で使用したワニスは、下記の手順で調製した。ここで、ワニスの調製例1〜7、及び21〜37で調製したワニスA1〜A7、及びA21〜A37は、ジアミン化合物(1)の少なくとも1つをジアミンモノマーとして用いたポリアミック酸の溶液であり、ワニスの調製例8〜10で調製したワニスA8〜A10は、その他の光反応性ジアミン化合物(DI−5−32)、(DI−5−35)、又は(DI−6−8)を用いて合成したポリアミック酸の溶液である。ワニスの調製例11〜13、及び41〜43で調製したワニスB1〜B6は、光反応性ジアミン化合物を原料に用いないで合成したポリアミック酸の溶液であり、ワニスA1〜A10、A21〜A37、及びC1〜C6とブレンドして使用するものである。ワニスの調製例14〜19で調製したワニスC1〜C6は、光反応性ジアミン化合物を用いずに合成した第1のポリアミック酸と、ジアミン化合物(1)を用いて合成した第2のポリアミック酸のブロックポリマーの溶液である。
【0471】
[ワニスの調製例1] ワニスA1の調製
攪拌翼、窒素導入管を装着した100mL3つ口フラスコに、ジアミン異性体混合物1(0.883g)を入れ、NMP(10.0g)を加えて撹拌した。この溶液に、テトラカルボン酸二無水物(AN−3−2)(0.617g)とNMP(2.5g)を加え、12時間室温で攪拌させた。そこにNMP(6.0g)及びBC(5.0g)を加え、溶質のポリマーの重量平均分子量が目的の重量平均分子量になるまで、その溶液を80℃で加熱攪拌して、溶質の重量平均分子量がおよそ18,000であり、樹脂分濃度が6重量%であるワニスA1を得た。
【0472】
[ワニスの調製例2〜13、21〜37] ワニスA2〜A10、ワニスA21〜A37、ワニスB1〜B6の調製
ジアミン類及びテトラカルボン酸二無水物類として用いる化合物を、表1〜表3に示すように変更したこと以外は、調製例1と同様にしてポリマー濃度が6重量%のワニスA2〜A10、及びA21〜A37を調製した。また、ジアミン類及びテトラカルボン酸二無水物類として用いる化合物を、表4に示すように変更したこと以外は、調製例1と同様にしてワニスB1〜B6を調製した。ワニスB1〜B6においては、ポリマーの重量平均分子量が50,000程度になるように加熱撹拌の条件を調整した。生成したポリマーの重量平均分子量(Mw)を表1〜表4に示す。なお、表1〜表4において、ジアミン類として2つ以上の化合物が掲載されている調製例では、その全ての化合物を合わせてジアミン類として使用したことを意味し、テトラカルボン酸二無水物類として2つ以上の化合物が掲載されている調製例では、その全ての化合物を合わせてテトラカルボン酸二無水物類として使用したことを意味する。角括弧内の数値は、配合比(モル%)を表し、空欄はその欄に対応する化合物を使用していないことを意味する。下記表5においても、同様である。
【0473】
【表1】
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【0474】
【表2】
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【0475】
【表3】
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【0476】
【表4】
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【0477】
[ワニスの調製例14] ワニスC1の調製
本調製例では、2段階の重合工程を行ってポリアミック酸のブロックポリマーを合成した。
(1)第1段の重合工程
攪拌翼、窒素導入管を装着した200mLの3つ口フラスコに、ジアミン化合物(DI−4−1)(0.408g)、ジアミン化合物(DI−13−1)(1.011g)、及びNMP(20.0g)を加え撹拌した。この溶液に、テトラカルボン酸二無水物(AN−4−21)(1.17g)、テトラカルボン酸二無水物(AN−1−1)(0.747g)、及びNMP(10.0g)を入れ、室温で6時間攪拌を続け、第1のポリアミック酸の溶液を得た。
(2)第2段の重合工程
第1段の重合を行ったフラスコに、ジアミン異性体混合物1(1.57g)、テトラカルボン酸二無水物(AN−3−2)(1.10g)、さらにNMP(34.0g)を入れ、室温で24時間攪拌を続け、第1のポリアミック酸と第2のポリアミック酸の混合溶液を得た。この反応溶液にBC(30.0g)を加えて、60℃に加熱しながら、8時間攪拌を行い、ポリマー固形分濃度が6重量%のポリアミック酸ブロックポリマー溶液を得た。このポリアミック酸ブロックポリマー溶液をワニスC1とする。
【0478】
[ワニスの調製例15〜19] ワニスC2〜C6の調製
ジアミン類及びテトラカルボン酸二無水物類として用いる化合物を、表5に示すように変更したこと以外は、調製例14と同様にして樹脂分濃度が6重量%のワニスC2〜C6を調製した。
【0479】
【表5】
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【0480】
[実施例1]
<液晶配向剤の調製及びコントラストの測定>
ワニスA1を、4重量%になるようにNMP・BC混合溶液(NMP/BC=7/3重量比)で希釈、撹拌し、液晶配向剤1を調製した。
FFS電極付きガラス基板及びカラムスペーサー付きガラス基板に、液晶配向剤1をスピンナー法により塗布した。塗布後、基板を60℃で80秒間加熱し、溶剤を蒸発させた後、ウシオ電機(株)製マルチライトML−501C/Bを用い、基板に対して鉛直方向から、偏光板を介して紫外線の直線偏光を照射した。この時の露光エネルギーは、ウシオ電機(株)製紫外線積算光量計UIT−150(受光器:UVD−S254)を用いて光量を測定し、波長254nmで1.0J/cmになるよう、露光時間を調整した。その後、220℃にて30分間焼成処理を行い、膜厚およそ100nmの配向膜を形成した。
次いで、これらの配向膜が形成された基板2枚を、液晶配向膜が形成されている面を対向させ、かつ、対向する液晶配向膜の間に液晶組成物を注入するための空隙を設けて貼り合わせた。この時、それぞれの液晶配向膜に照射された直線偏光の偏光方向が平行になるようにした。これらのセルにポジ型液晶組成物Aを注入し、セル厚5μmの液晶セル(液晶表示素子)を作製した。
【0481】
<ポジ型液晶組成物A>
【化180】
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(物性値)
相転移温度NI:100.1℃、誘電率異方性Δε:5.1、屈折率異方性Δn:0.093、粘度η:25.6mPa・s.
【0482】
作成した液晶セルを用いて、上記記載のようにコントラストの測定を行なった。その結果、コントラストは3800であった。
【0483】
[実施例2]〜[実施例17]、[実施例21]〜[実施例62]、[比較例1]〜[比較例3]
ワニスA1の代わりに、表6〜表7に示すワニスを使用した以外は、実施例1と同様にして、液晶配向剤2〜17、21〜62、及び比較液晶配向剤1〜3を調製した。なお、表6〜表7において、2以上のワニスが掲載されている調製例では、その全てのワニスを表6〜表7に示す配合比(重量比)で混合し、液晶配向剤を調製した。また、液晶配向剤8〜17、38〜40、50、51、54、及び57には、表6〜表7に示す添加剤をワニス中のポリマー重量に対して表6〜表7に示す重量部で加えた。調製した各液晶配向剤を用いて、実施例1と同様にして液晶配向膜付きの基板を作製し、その基板を組み込んだ液晶セルについて、コントラストの測定を行った。ただし、液晶配向膜形成時の紫外線の照射条件は表6〜表7に示す露光量で行った。各実施例で使用した液晶配向剤とコントラストの評価結果を表6〜表7に示す。
【0484】
【表6】
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【0485】
【表7】
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【0486】
表6〜表7に示すように、液晶配向膜にジアミン化合物(1)のポリマーを使用した実施例1〜17、及び21〜62の液晶セルは、いずれもコントラストが3300以上であり、ジアミン化合物(1)以外の光反応性ジアミン化合物である化合物(DI−5−32)のポリマーを使用した比較例1、化合物(DI−5−35)のポリマーを使用した比較例2、及び化合物(DI−6−8)のポリマーを使用した比較例3の液晶セルよりもコントラストが高い値であった。このことから、ジアミン化合物(1)由来の構成単位は、他の光反応性ジアミン化合物由来の構成単位よりも膜の配向性付与に効果的に寄与することがわかった。
【0487】
[実施例80]
<AC残像の測定>
液晶配向剤23を用いて作製した実施例23の液晶セルを用いて、上記記載のようにAC残像の評価を行なった。その結果、ΔBは1.8%であったので、「○」として評価した。
【0488】
[実施例81]〜[実施例87]、[比較例4]
液晶配向剤23の代わりに、表8に示す液晶配向剤を使用した液晶セル、すなわち実施例24〜26、21、29、48、49、及び比較例1の液晶セルを用いて、実施例80と同様にして、AC残像の評価を行なった。各実施例で使用した液晶配向剤と液晶配向膜の形成条件、AC残像の評価結果を表8に示す。
【0489】
【表8】
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【0490】
表8に示すように、液晶配向膜にジアミン化合物(1)のポリマーを使用した実施例80〜87の液晶セルは、いずれもAC残像の評価が「○」であり、ジアミン化合物(1)以外の光反応性ジアミン化合物である化合物(DI−5−32)のポリマーを使用した比較例4の液晶セルよりもAC残像は優れていた。このことから、ジアミン化合物(1)由来の構成単位は、他の光反応性ジアミン化合物由来の構成単位よりも優れたAC残像を示す液晶セルを作製できるとわかった。
【産業上の利用可能性】
【0491】
本発明のジアミン化合物を用いて合成されたポリマーを液晶配向剤に用いることにより、液晶配向性が高い液晶配向膜が実現する。そして、この液晶配向膜を用いることにより、コントラストが高く、各種利用形態で使用できる液晶表示素子を提供することができる。よって、本発明は産業上の利用可能性が高い。
【要約】
【課題】高い液晶配向性を示す液晶配向膜の材料及びその原料を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるジアミン化合物。さらに、そのジアミン化合物を含むジアミン類とテトラカルボン酸二無水物類を含む原料組成物を重合させてなるポリマーを含む液晶配向剤。
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(式中、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表す。RとRは一体となって置換されていてもよいメチレン基を形成してもよい。Xは各々独立にハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のハロアルキル基又は炭素数1から6のアルコキシ基を表し、nは0から4の整数を表す。)
【選択図】なし