特許第6907558号(P6907558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6907558ポリイオンコンプレックス、電気二重層キャパシタ用電解質および電気二重層キャパシタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6907558
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】ポリイオンコンプレックス、電気二重層キャパシタ用電解質および電気二重層キャパシタ
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/32 20060101AFI20210708BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20210708BHJP
【FI】
   C08G65/32
   H01G11/62
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-11422(P2017-11422)
(22)【出願日】2017年1月25日
(65)【公開番号】特開2018-119058(P2018-119058A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】早野 重孝
(72)【発明者】
【氏名】太田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】立石 洋平
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−505667(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/111801(WO,A1)
【文献】 特開平04−033949(JP,A)
【文献】 特開2003−173799(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/133769(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00− 67/04
C08L 1/00−101/14
H01G 11/00− 11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性基を有するポリエーテル化合物と、対アニオンとして、1価のアニオン性基を分子内に2個以上有する対アニオンとを有し、前記カチオン性を有するポリエーテル化合物が、下記一般式(1)で表される単量体単位からなる、ポリイオンコンプレックス。
【化3】
(上記一般式(1)中、Aは、カチオン性基またはカチオン性基含有基を表し、Rは非イオン性基を表し、nは2以上の整数であり、mは0以上の整数であり、n+mは5以上の整数である。)
【請求項2】
請求項1に記載のポリイオンコンプレックスを含む電気二重層キャパシタ用電解質。
【請求項3】
請求項2に記載の電気二重層キャパシタ用電解質を備える電気二重層キャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン伝導性に優れたポリイオンコンプレックス、ならびに、このようなポリイオンコンプレックスを用いてなる電気二重層キャパシタ用電解質および電気二重層キャパシタに関する。
【0002】
一般に、ポリカチオンとポリアニオンの複合塩を、ポリイオンコンプレックスと総称する。このようなポリイオンコンプレックスにおいては、カチオンおよびアニオンが多価となることにより、個々のイオン対が共有結合で結合された網目状の架橋構造を形成するものであり、幅広い技術分野での応用が期待されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
その一方で、ポリイオンコンプレックスは、ポリカチオンとポリアニオンとが互いの運動性を阻害し易い構成であるため、そのイオン運動性が極めて低いことが一般的であり、そのため、バルクの状態あるいは溶液の状態時に、そのイオン伝導性は極めて低く、そのため、イオン伝導性が必要とされる用途への適用が難しい状況にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−37596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、イオン伝導性に優れたポリイオンコンプレックスを提供することを目的とする。また、本発明は、このようなポリイオンコンプレックスを用いてなる電気二重層キャパシタ用電解質および電気二重層キャパシタを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、カチオン性基を有するポリエーテル化合物と、対アニオンとして、1価のアニオン性基を分子内に2個以上有する対アニオンとを有するポリイオンコンプレックスが、優れたイオン伝導性を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、カチオン性基を有するポリエーテル化合物と、対アニオンとして、1価のアニオン性基を分子内に2個以上有する対アニオンとを有するポリイオンコンプレックスが提供される。
本発明のポリイオンコンプレックスにおいて、前記カチオン性基を有するポリエーテル化合物が、下記一般式(1)で表される単量体単位からなるものであることが好ましい。
【化1】
(上記一般式(1)中、Aは、カチオン性基またはカチオン性基含有基を表し、Rは非イオン性基を表し、nは2以上の整数であり、mは0以上の整数であり、n+mは5以上の整数である。)
【0008】
また、本発明によれば、上記のポリイオンコンプレックスを含む電気二重層キャパシタ用電解質が提供される。
さらに、本発明によれば、上記の電気二重層キャパシタ用電解質を備える電気二重層キャパシタが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、イオン伝導性に優れたポリイオンコンプレックス、ならびに、このようなポリイオンコンプレックスを用いてなる電気二重層キャパシタ用電解質および電気二重層キャパシタを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<ポリイオンコンプレックス>
本発明のポリイオンコンプレックスは、カチオン性基を有するポリエーテル化合物と、対アニオンとして、1価のアニオン性基を分子内に2個以上有する対アニオンとを有する、ポリカチオンとポリアニオンとの複合塩である。
本発明のポリイオンコンプレックスは、カチオン性基を有するポリエーテル化合物の分子内において、複合塩を形成していてもよいし、カチオン性基を有するポリエーテル化合物の分子間において、複合塩を形成していてもよい。また、カチオン性基を有するポリエーテル化合物の分子内および分子間の両方において、複合塩を形成していてもよい。
【0011】
本発明で用いるカチオン性基を有するポリエーテル化合物は、オキシラン構造を含有する化合物のオキシラン構造部分が開環重合することにより得られる単位である、オキシラン単量体単位を主鎖として含んでなるポリエーテル化合物であって、その分子中にカチオン性基を有するものである。
【0012】
本発明で用いるカチオン性基を有するポリエーテル化合物を形成する、オキシラン単量体単位の具体例としては、エチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位、1,2−ブチレンオキシド単位などのアルキレンオキシド単量体単位;エピクロロヒドリン単位、エピブロモヒドリン単位、エピヨードヒドリン単位などのエピハロヒドリン単量体単位;アリルグリシジルエーテル単位などのアルケニル基含有オキシラン単量体単位;フェニルグリシジルエーテル単位などの芳香族エーテル基含有オキシラン単量体単位;グリシジルアクリレート単位、グリシジルメタクリレート単位などの(メタ)アクリロイル基含有オキシラン単量体単位;などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
本発明で用いるカチオン性基を有するポリエーテル化合物は、2種以上のオキシラン単量体単位を含有するものであってもよく、この場合においては、それら複数の繰り返し単位の分布様式は特に限定されないが、ランダムな分布を有していることが好ましい。
【0014】
なお、上記単量体単位のうち、エピハロヒドリン単量体単位、アルケニル基含有オキシラン単量体単位、および(メタ)アクリロイル基含有オキシラン単量体単位は、架橋性基を有するオキシラン単量体単位であり、このような架橋性基を有するオキシラン単量体単位を含有することで、本発明で用いるカチオン性基を有するポリエーテル化合物中に、カチオン性基に加えて架橋性基をも導入でき、この場合には、架橋剤を組み合わせて用いることで、カチオン性基を有するポリエーテル化合物を架橋可能なものとすることができる。この場合における、架橋性基を有するオキシラン単量体単位の割合は、任意の割合とすることができる。なお、架橋性基を有するオキシラン単量体単位としては、架橋性基を有する単量体単位であればよく、上記したものに特に限定されるものではない。また、カチオン性基を有するポリエーテル化合物を構成するオキシラン単量体単位において、カチオン性基と架橋性基とは、同一の繰り返し単位として含まれていてもよいし、別個の繰り返し単位として含まれていてもよいが、別個の繰り返し単位として含まれていることが好ましい。
【0015】
また、本発明で用いるカチオン性基を有するポリエーテル化合物は、オキシラン単量体単位のうち少なくとも一部として、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位を含有する。
【0016】
本発明で用いるカチオン性基を有するポリエーテル化合物に含有させることのできるカチオン性基としては、特に限定されないが、ポリイオンコンプレックスとしてのイオン伝導性をより高めることができるという観点から、周期表第15族または第16族の原子がオニウムカチオン構造を形成したカチオン性基であることが好ましく、窒素原子がオニウムカチオン構造を形成したカチオン性基であることがより好ましい。
【0017】
カチオン性基の具体例としては、アンモニウム基、メチルアンモニウム基、ブチルアンモニウム基、シクロヘキシルアンモニウム基、アニリニウム基、ベンジルアンモニウム基、エタノールアンモニウム基、ジメチルアンモニウム基、ジエチルアンモニウム基、ジブチルアンモニウム基、ノニルフェニルアンモニウム基、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、n−ブチルジメチルアンモニウム基、n−オクチルジメチルアンモニウム基、n−ステアリルジメチルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基、トリビニルアンモニウム基、トリエタノールアンモニウム基、N,N−ジメチルエタノールアンモニウム基、トリ(2−エトキシエチル)アンモニウム基等のアンモニウム基;ピペリジニウム基、1−ピロリジニウム基、1−メチルピロリジニウム基、イミダゾリウム基、1−メチルイミダゾリウム基、1−エチルイミダゾリウム基、ベンズイミダゾリウム基、ピロリウム基、1−メチルピロリウム基、オキサゾリウム基、ベンズオキサゾリウム基、ベンズイソオキサゾリウム基、ピラゾリウム基、イソオキサゾリウム基、ピリジニウム基、2,6−ジメチルピリジニウム基、ピラジニウム基、ピリミジニウム基、ピリダジニウム基、トリアジニウム基、N,N−ジメチルアニリニウム基、キノリニウム基、イソキノリニウム基、インドリニウム基、イソインドリウム基、キノキサリウム基、イソキノキサリウム基、チアゾリウム基等のカチオン性の窒素原子を含有する複素環を含んでなる基;トリフェニルホスホニウム塩、トリブチルホスホニウム基等のカチオン性のリン原子を含んでなる基;等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、1−メチルピロリジニウム基、トリメチルアンモニウム基、n−ブチルジメチルアンモニウム基、イミダゾリウム基、1−メチルイミダゾリウム基、1−エチルイミダゾリウム基、ベンズイミダゾリウム基、ピリジニウム基、2,6−ジメチルピリジニウム基等が好ましい。なお、本発明で用いるカチオン性基を有するポリエーテル化合物中、含有するカチオン性基は、全て同じものであってもよいし、異なる2種類以上の基を含有するような態様であってもよい。
【0018】
また、本発明で用いるカチオン性基を有するポリエーテル化合物においては、ポリエーテル化合物を構成するオキシラン単量体単位のうち、その少なくとも一部がカチオン性基を有するオキシラン単量体単位であればよく、たとえば、ポリエーテル化合物を構成するオキシラン単量体単位の全てがカチオン性基を有するものであってもよく、あるいは、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位およびカチオン性基を有しないオキシラン単量体単位が混在するものであってもよい。本発明で用いるカチオン性基を有するポリエーテル化合物において、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位が占める割合は、特に限定されず、カチオン性基を有するポリエーテル化合物を構成するオキシラン単量体単位全体に対して、1モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、30モル%以上が特に好ましい。なお、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位が占める割合の上限は、特に限定されない。カチオン性基を有するオキシラン単量体単位が占める割合を上記範囲とすることにより、ポリイオンコンプレックスとしてのイオン伝導性をより適切に高めることができる。
【0019】
本発明で用いるカチオン性基を有するポリエーテル化合物の構造としては特に限定されないが、下記一般式(1)で表される単量体単位からなるものであることが好ましい。
【化2】
(上記一般式(1)中、Aは、カチオン性基またはカチオン性基含有基を表し、Rは非イオン性基を表し、nは2以上の整数であり、mは0以上の整数であり、n+mは5以上の整数である。)
【0020】
上記一般式(1)中、Aは、カチオン性基またはカチオン性基含有基を表し、カチオン性基の具体例としては、上述したものが挙げられ、また、カチオン性基含有基としては、上述したカチオン性基を含有する基が挙げられる。なお、上記一般式(1)中、Aで表されるカチオン性基またはカチオン性基含有基は、全て同じものであってもよいし、異なる2種類以上の基を含有するような態様であってもよい。
【0021】
上記一般式(1)中、Rは、非イオン性基であり、非イオン性の基であれば特に限定されない。
Rとしては、たとえば、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基等の炭素数2〜10のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基等の炭素数2〜10のアルキニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜20のシクロアルキル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の炭素数6〜20のアリール基;等が挙げられる。
また、これらのうち、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、および炭素数6〜20のアリール基は、任意の位置に置換基を有していてもよい。
【0022】
置換基としては、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ビニルオキシ基、アリルオキシ基等の炭素数2〜6のアルケニルオキシ基;フェニル基、4−メチルフェニル基、2−クロロフェニル基、3−メトキシフェニル基等の置換基を有していてもよいアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチルカルボニル基、エチルカルボニル基等の炭素数1〜6のアルキルカルボニル基;アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等の(メタ)アクリロイルオキシ基;等が挙げられる。なお、上記一般式(1)中、Rで表される非イオン性基は、全て同じものであってもよいし、異なる2種類以上の基を含有するような態様であってもよい。
【0023】
また、上記一般式(1)中、nは2以上の整数であり、mは0以上の整数であればよいが、nは、2〜500の整数であることが好ましく、2〜300の整数であることがより好ましく、3〜150の整数であることがさらに好ましい。また、mは、0〜498の整数であることが好ましく、0〜298の整数であることがより好ましく、0〜147の整数であることがさらに好ましい。また、n+mは、5以上の整数であり、5〜500の整数であることが好ましく、5〜300の整数であることがより好ましく、5〜150の整数であることがさらに好ましいい。 上記一般式(1)中、n、m、n+mを適切に調整することにより、ポリイオンコンプレックスとしてのイオン伝導性をより適切に高めることができる。
【0024】
なお、本発明で用いるカチオン性基を有するポリエーテル化合物の構造が、上記一般式(1)で表される単量体単位からなるものである時、重合体鎖末端は、特に限定されず、任意の基とすることができる。重合体鎖末端基としては、たとえば、上述したカチオン性基、水酸基、または水素原子などが挙げられる。
【0025】
また、本発明で用いる、1価のアニオン性基を分子内に2個以上有する対アニオンは、上述したカチオン性基を有するポリエーテル化合物の対アニオンであり、かつ、1価のアニオン性基を分子内に2個以上有するアニオンである。本発明で用いる、1価のアニオン性基を分子内に2個以上有する対アニオンは、1分子中に、1価のアニオン性基を2個以上有するものであり、そのため、分子全体としては多価のアニオンとなるが、負に荷電した1価の基が、分子内の異なる位置に複数存在した構造を有するものである。なお、本発明で用いる、1価のアニオン性基を分子内に2個以上有するアニオンにおいては、このような負に荷電した1価の基(1価のアニオン性基)は、通常、互いに直接共有結合を介して結合した構造を有するか、あるいは、他の結合基を介して、結合した構造を有するものである。
【0026】
本発明で用いる、1価のアニオン性基を分子内に2個以上有する対アニオンを構成する、1価のアニオン性基としては、負に荷電した1価の基であればよく、特に限定されないが、たとえば、スルホニルイミド基、スルホン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等の共役酸に由来するアニオン性基が挙げられる。スルホニルイミド基に由来するアニオン性基としては、−(SO)N(SO)−、−(SO)N(SOCF)、−(SO)N(SOF)、−(SO)N(SOCFCF)などが挙げられる。スルホン酸基に由来するアニオン性基としては、−CF2SO、−CH2SO、−PhSOなどが挙げられる。カルボキシル基に由来するアニオン性基としては、−CFCOO、−CHCOO、−PhCOOなどが挙げられる。ヒドロキシル基に由来するアニオン性基としては、−CF、−CHなどが挙げられる。
【0027】
1価のアニオン性基を分子内に2個以上有する対アニオンの具体例としては、SCF2CF2CF2SOSCF2CF2SO、CFSOSOCF2CF2OCF2CF2OCF2CF2SOSOCF、ポリ(CH=CHCOO)、CFSOSOCF2CF2OCF2CF2OCF2CF2SOSOCF2CF2OCF2CF2OCF2CF2SOCF2CF2OCF2CF2OCF2CF2SOSOCF、ポリ(CH=CHPh−SOSOCF)、ポリ(CH=CHCOO−SOSOCF)などが挙げられる。
【0028】
なお、その一方で、硫酸イオン(SO2−)や炭酸イオン(CO2−)は、多価のアニオンであるものの、2価のアニオン性基を分子内に1個有するアニオンであるため、1価のアニオン性基を分子内に2個以上有する対アニオンには該当しない。
【0029】
本発明のポリイオンコンプレックスは、カチオン性基を有するポリエーテル化合物のカチオン性基の対アニオンとして、上述した1価のアニオン性基を分子内に2個以上有する対アニオンを含有するものであればよく、本発明の作用効果を損なわない範囲において、1価のアニオン性基を分子内に2個以上有する対アニオン以外の対アニオンを含有していてもよい。ただし、優れたイオン伝導性を実現するという観点から、対アニオン全体に対する、1価のアニオン性基を分子内に2個以上有する対アニオンの占める割合は、好ましくは10モル%以上であり、より好ましくは50モル%以上であり、全ての対アニオンが、1価のアニオン性基を分子内に2個以上有する対アニオンであることが特に好ましい。
【0030】
本発明のポリイオンコンプレックスの製造方法は、特に限定されず、目的とする複合塩を得られるものである限りにおいて、任意の製造方法を採用することができる。製造方法の一例を示すと、まず、以下の(A)または(B)の方法により、ベースポリマー(カチオン性基を有しないポリエーテル化合物)を得る。
(A)エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリンなどのエピハロヒドリンを少なくとも含む、オキシラン単量体を含有する単量体を、触媒として、特開2010−53217号公報に開示されている、周期表第15族または第16族の原子を含有する化合物のオニウム塩と、含有されるアルキル基が全て直鎖状アルキル基であるトリアルキルアルミニウムとを含んでなる触媒との存在下で開環重合することにより、ベースポリマーを得る方法。
(B)エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリンなどのエピハロヒドリンを少なくとも含む、オキシラン単量体を含有する単量体を、特公昭46−27534号公報に開示されている、トリイソブチルアルミニウムにリン酸とトリエチルアミンを反応させた触媒の存在下で開環重合することにより、ベースポリマーを得る方法。
【0031】
そして、上記(A)または(B)の方法において得られたベースポリマーに、イミダゾール化合物などのアミン化合物を反応させることにより、ベースポリマーのエピハロヒドリン単量体単位を構成するハロゲン基をオニウムハライド基に変換することで、カチオン性基を有するポリエーテル化合物(カチオン性基とハロゲン化物イオンとから構成されるオニウムハライド基を有するポリエーテル化合物)を得て、次いで、アニオン交換反応により、ハロゲン化物イオンを、1価のアニオン性基を分子内に2個以上有するアニオンに変換することで、ポリイオンコンプレックスを得ることができる。
【0032】
本発明のポリイオンコンプレックスは、カチオン性基を有するポリエーテル化合物と、対アニオンとして、1価のアニオン性基を分子内に2個以上有する対アニオンとを有するものであるため、イオン伝導性に優れるものであり、そのため、このような特性を活かし、後述する電気二重層キャパシタ用電解質用途などの種々の用途に好適に用いることができるものである。特に、本発明のポリイオンコンプレックスは、電気二重層キャパシタ用電解質用途として用いた場合には、優れたイオン伝導性により、電気二重層キャパシタ用の電解質として作用することができることに加えて、電気二重層キャパシタとしてのキャパシタンス(静電容量)を向上させることもでき、そのため、電気二重層キャパシタ用電解質用途として好適に用いることができるものである。
【0033】
<電気二重層キャパシタ用電解質>
本発明の電気二重層キャパシタ用電解質は、上述した本発明のポリイオンコンプレックスを含有する。本発明の電気二重層キャパシタ用電解質は、本発明のポリイオンコンプレックスのみからなるもの(すなわち、本発明のポリイオンコンプレックス100重量%であるもの)であってもよいし、あるいは、本発明のポリイオンコンプレックス以外の成分を含有するものであってもよい。
【0034】
本発明のポリイオンコンプレックス以外の成分としては、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、トルエン、アセトン、テトラヒドロフラン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ビニレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンなどの溶媒;エチルメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、エチルメチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、トリメチルエチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどのイオン液体;カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン、酸化グラフェンなどのナノカーボン;酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化ガリウムなどの金属酸化窒化物;を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、本発明の電解質のイオン伝導性を適切に高めることができるという点より、溶媒およびイオン液体が好適である。
【0035】
本発明の電気二重層キャパシタ用電解質を、上述した本発明のポリイオンコンプレックスに加えて、溶媒およびイオン液体などの他の成分を含有するものとする場合における、本発明の電気二重層キャパシタ用電解質中における、ポリイオンコンプレックスの含有量は、ポリイオンコンプレックス中のカチオン性基のモル濃度で、好ましくは0.1〜5.0モル/L、より好ましくは0.3〜4.0モル/L、さらに好ましくは0.5〜3.0モル/Lである。ポリイオンコンプレックスの含有量を上記範囲とすることにより、本発明の電解質のイオン伝導性をより適切に高めることができ、これにより、電気二重層キャパシタに適用した場合に、得られる電気二重層キャパシタの出力をより高めることができる。
【0036】
また、電気二重層キャパシタ用電解質に含有させるポリイオンコンプレックスを構成するカチオン性基を有するポリエーテル化合物として、架橋性基を有するものを使用する場合には、電気二重層キャパシタ用電解質中に、架橋剤を含有させることで、架橋性の組成物とし、これを架橋させたものとしてもよい。
【0037】
架橋剤としては、カチオン性基を有するポリエーテル化合物の有する架橋性基の種類などに応じて適宜選択すればよい。架橋剤の具体例としては、ジクミルペルオキシド、ジターシャリブチルペルオキシドなどの有機過酸化物;p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシムなどのキノンジオキシム;トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、4,4’−メチレンビス−o−クロロアニリンなどの有機多価アミン化合物;s−トリアジン−2,4,6−トリチオールなどのトリアジン系化合物;メチロール基を持つアルキルフェノール樹脂;2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンなどのアルキルフェノン型光重合開始剤などの各種紫外線架橋剤;などが挙げられる。たとえば、カチオン性基を有するポリエーテル化合物が有する架橋性基が、エチレン性炭素−炭素不飽和結合含有基である場合には、上記架橋剤のなかでも、有機過酸化物および紫外線架橋剤から選択される架橋剤を用いることが好ましく、紫外線架橋剤を用いることが特に好ましい。これらの架橋剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤の配合量は、特に限定されないが、ポリイオンコンプレックス100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.2〜7重量部がより好ましく、さらに好ましくは0.3〜5重量部である。架橋剤の配合量を上記範囲とすることにより、イオン伝導性を良好に保ちながら、適切に架橋を行うことができる。なお、架橋させるための方法としては、特に限定されず、用いる架橋剤の種類などに応じて、任意の方法を採用することができる。
【0038】
<電気二重層キャパシタ>
本発明の電気二重層キャパシタは、上述した本発明の電気二重層キャパシタ用電解質を含有するものである。本発明の電気二重層キャパシタの構成としては特に限定されないが、たとえば、一対の分極性電極と、これら分極性電極間に介在させたセパレータとからなるキャパシタ素子と、上述した本発明の電気二重層キャパシタ用電解質とを備えるものなどが挙げられる。
【0039】
分極性電極としては、たとえば、炭素質材料とバインダとを含む分極性電極層を集電体上に形成してなるものなどを用いることができる。炭素質材料としては、特に限定されず、一般に活性炭が用いられる。活性炭としては、フェノール系、ピッチ系、ポリアクリロニトリル系などの粉末状、または繊維状のものが例示され、比表面積が1000m2/g以上のものが好ましい。
【0040】
セパレータとしては、分極性電極の間を絶縁できるものであれば特に限定されない。具体的には、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、レーヨンもしくはガラス繊維製の微孔膜または不織布、一般に電解コンデンサ紙と呼ばれるパルプを主原料とする多孔質膜などを用いることができる。セパレータの厚みは、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常は1〜100μm、好ましくは10〜80μm、より好ましくは20〜60μmである。
【0041】
本発明の電気二重層キャパシタは、たとえば、一対の分極性電極と、分極性電極間に介在させたセパレータとからなるキャパシタ素子に、上述した本発明の電気二重層キャパシタ用電解質を含浸させることにより製造することができる。具体的には、一対の分極性電極と、分極性電極間に介在させたセパレータとからなるキャパシタ素子を、必要に応じ捲回、積層または折るなどして容器に入れ、容器内に上述した本発明の電気二重層キャパシタ用電解質を注入し、必要に応じて減圧条件下などで含浸させた後、封口することにより製造することができる。あるいは、キャパシタ素子に予め上述した本発明の電気二重層キャパシタ用電解質を含浸させたものを容器に収納することで製造することもできる。容器としては、コイン型、円筒型、角型、ラミネート型などの公知のものをいずれも用いることができる。
【0042】
本発明の電気二重層キャパシタは、上述した本発明のポリイオンコンプレックスを含有する電気二重層キャパシタ用電解質を備えるものであるため、本発明のポリイオンコンプレックスが備える高いイオン伝導性により電気二重層キャパシタとして良好に作動可能であり、しかも、高いキャパシタンスをも実現できるものである。そのため、このような特性を活かし、自動車や建機などの蓄電用途や、パーソナルコンピュータ、スマートフォンなどの回路駆動用途などの各種用途に好適に用いることができるものである。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は下記に従った。
【0044】
(1)数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)
ベースポリマー(カチオン性基を有しないポリエーテル化合物)の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算値として測定した。なお、測定器としてはHLC−8320(東ソー社製)を用い、カラムはTSKgel SuperMultiporeHZ−H(東ソー社製)4本を直列に連結して用い、検出器は示差屈折計RI−8320(東ソー社製)を用いた。
【0045】
(2)カチオン性基を有するポリエーテル化合物の構造およびカチオン性基を有するポリエーテル化合物中の、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位の含有率
カチオン性基を有するポリエーテル化合物の構造、およびカチオン性基を有するオキシラン単量体単位の含有率は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて、以下のように測定した。すなわち、まず、試料となるカチオン性基を有するポリエーテル化合物30mgを、1.0mLの重ジメチルスルホキシドに加え、1時間振蕩することにより均一に溶解させた。そして、得られた溶液についてNMR測定を行って、H−NMRスペクトルを得て、定法に従いポリエーテル化合物の構造を帰属した。
また、カチオン性基を有するポリエーテル化合物中の、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位の含有率は、次の方法により算出した。すなわち、まず、主鎖のオキシラン単量体単位に由来するプロトンの積分値から全オキシラン単量体単位のモル数B1を算出した。次に、カチオン性基に由来するプロトンの積分値から、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位のモル数B2を算出した。そして、B1に対するB2の割合(百分率)を、カチオン性基を有するポリエーテル化合物中の、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位の含有率として求めた。
【0046】
(3)電気二重層キャパシタ用電解質の電気化学測定
作用極として、白金電極(BAS株式会社 PTE白金電極 外形6mm 内径3mm)を、参照電極として、Ag/AgCl電極(BAS株式会社 RE−7非水溶媒系参照電極(Ag/AgCl))を、対極として、白金(BAS株式会社、Ptカウンター電極、5cm電極、電極部直径0.5 mm)を、それぞれ用いて、電気二重層キャパシタ用電解質について、サイクリックボルタメトリ測定を行った。なお、測定は、「solartron 1281 Multiplexer」(東陽テクニカ社製)および「solartron 1281 Electrochemical Interphase」(東陽テクニカ社製)を使用した。また、全ての測定は、内部を乾燥窒素で満たした循環式グローブボックス内にて行った。
【0047】
〔製造例1〕
(エピクロロヒドリントのリビングアニオン重合)
アルゴンで置換した攪拌機付きガラス反応器に、テトラノルマルブチルアンモニウムブロミド0.322gおよびトルエン5mlを添加し、これを0℃に冷却した。次いで、トリエチルアルミニウム0.137g(テトラノルマルブチルアンモニウムブロミドに対して1.2モル当量)をノルマルヘキサン0.5mlに溶解したものを添加して、15分間反応させることで、触媒組成物を得た。そして、得られた触媒組成物に、エピクロロヒドリン10.0gを添加し、0℃において重合反応を行った。重合反応開始後、徐々に溶液の粘度が上昇した。1時間反応させた後、重合反応液に少量の2-プロパノールを添加し、反応を停止した。得られた重合反応液をトルエンで希釈した後、2-プロパノールに注ぐことで、白色のゴム状物質を11.9gの収量で得た。また得られたゴム状物質のGPCによる数平均分子量(Mn)は10,300、分子量分布(Mw/Mn)は1.20であった。さらに得られたゴム状物質について、H‐NMR測定を行ったところ、このゴム状物質は、エピクロロヒドリンが開環した繰り返し単位からなるものであることが確認できた。以上より、得られたゴム状物質は、エピクロロヒドリン単位により構成されたポリマー(重合度=110;平均で、エピクロロヒドリン単位110量体)であるといえる。
【0048】
〔製造例2〕
(重合体中のエピクロロヒドリン単位の1−メチルイミダゾールによる4級化)
製造例1で得られたポリマー8.0gと、1−メチルイミダゾール22.0gと、N, N−ジメチルホルムアミド16.0gとを、アルゴンで置換した攪拌機付きガラス反応器に添加し、80℃に加熱することで反応を開始した。80℃で144時間反応させた後、室温に冷却することで反応を停止した。得られた反応溶液を一部抜き取り、50℃で120時間減圧乾燥をしたところ、赤褐色の樹脂状物質を15.0gの収量で得た。この樹脂状物質について、H‐NMR測定を行ったところ、H‐NMR(DMSO−d6)δ=9.80−9.40(brs,1H,MeIm+),8.10−7.70(brs,2H,MeIm+),4.80−3.75(brs,−CHCH(CHR)O−),3.63(3H,MeIm+)であり、プロトンの積分比から、出発原料の製造例1で得られたポリマー中の全てのエピクロロヒドリン単位におけるクロロ基が、1−メチルイミダゾリウムクロリド基に置換された、ポリ(メチルグリシジルイミダゾリウムクロリド)と同定した。元素分析を行ったところ、各元素の組成比は、構造から予測される組成比とよく一致した。以上により、1−メチルイミダゾリウムクロリド基を有する、重合度=110であるポリエーテル化合物であると同定された。
【0049】
〔実施例1〕
(1−メチルイミダゾリウムクロリド基を有するポリエーテル化合物のビスリチウム(ヘキサフルオロプロペニルビススルホナート)によるアニオン交換)
ビスリチウム(ヘキサフルオロプロペニルビススルホナート)(LiOSCF2CF2CF2SO)Li0.92gを溶解させた蒸留水30mlを攪拌機付きガラス反応器に添加した。次いで、製造例2で得られた1−メチルイミダゾリウムクロリド基を有するポリエーテル化合物1.0gを蒸留水10mlに溶解し、ガラス反応器に滴下し室温で30分間反応させた。反応後、沈殿した粘稠な水アメ状物質を回収し、蒸留水10mlで繰り返し洗浄することにより、無機塩を除去した。凝固により得られた水アメ状物質を50℃で12時間減圧乾燥したところ、無色透明のガラス状物質を1.5gの収量で得た。得られたガラス状物質について、H‐NMR測定を行ったところ、H‐NMR(DMSO−d6)δ=8.80−9.00(brs,1H,MeIm+),7.50−7.80(brs,2H,MeIm+),4.50−3.20(brs,−CHCH(CHR)O−),3.90(3H,MeIm+)であり、出発原料である製造例2で得られた1−メチルイミダゾリウムクロリド基を有するポリエーテル化合物の繰り返し単位中の1−メチルイミダゾリウムクロリド基の塩化物イオンの全てがヘキサフルオロプロペニルビススルホナートジアニオン(SCF2CF2CF2SO)に交換された、対アニオンとしてヘキサフルオロプロペニルビススルホナートジアニオンを有する、重合度=110であるポリイオンコンプレックスAであると同定された。元素分析を行ったところ、各元素の組成比は、構造から予測される組成比とよく一致した。
【0050】
〔実施例2〕
実施例1で得られたポリイオンコンプレックスAを、プロピレンカーボネートに、カチオン性基のモル濃度で1.0モル/Lとなるように混合することで、透明な組成物(電気二重層キャパシタ用電解質)を得た。得られた組成物について、上記した測定系にて、乾燥窒素雰囲気下、23℃の環境にて、電気化学測定を行った。具体的には、参照電極であるAg/AgCl電極に対して、−0.75Vの電位を作用極の白金電極に印加し、作用極上のキャパシタンスを測定したところ、飽和時のキャパシタンスは15μF/cmであった。一方、参照電極であるAg/AgCl電極に対して、+0.75Vの電位を作用極の白金電極に印加し、作用極上のキャパシタンスを測定したところ、飽和時のキャパシタンスは18μF/cmであった。
【0051】
〔比較例1〕
エチルメチルイミダゾリウムトリフルオロメチルスルホナートを、プロピレンカーボネートに、イオン基のモル濃度で1.0モル/Lとなるように混合することで、透明な組成物(電気二重層キャパシタ用電解質)を得た。得られた組成物について、上記した測定系にて、乾燥窒素雰囲気下、23℃の環境にて、電気化学測定を行った。具体的には、参照電極であるAg/AgCl電極に対して、−0.75Vの電位を作用極の白金電極に印加し、作用極上のキャパシタンスを測定したところ、飽和時のキャパシタンスは8μF/cmであった。一方、参照電極であるAg/AgCl電極に対して、+0.75Vの電位を作用極の白金電極に印加し、作用極上のキャパシタンスを測定したところ、飽和時のキャパシタンスは8μF/cmであった。
【0052】
〔評価〕
以上、実施例2および比較例1の結果より、カチオン性基を有するポリエーテル化合物と、対アニオンとして、1価のアニオン性基を分子内に2個以上有する対アニオンとを有するポリイオンコンプレックスは、電気二重層キャパシタ用電解質として使用した場合に、良好に電気二重層キャパシタを作動させることができ、その優れたイオン伝導性が示された。しかも、電気二重層キャパシタのカソード、アノード両極ともにキャパシタンスが高くなるという効果も確認できた。