(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近時、心房細動等の不整脈の治療として、右心房から心房中隔に針を刺して左心房に通じる穴を開け、右心房側からカテーテルを挿入し、左心房と肺静脈との間を焼灼(アブレーション)して、不整脈の原因となる電気信号の伝達経路を遮断する治療法が行われている。右心房から心房中隔に針を刺して左心房に通じる穴を開ける手技は、経心房中隔穿刺法(ブロッケンブロー法)と呼ばれている。
【0003】
経心房中隔穿刺法に用いられる医療器具としては、たとえば特許文献1に記載されているような穿刺アセンブリが提案されている。この穿刺アセンブリは、遠位端および近位端を有する長尺の穿刺針、該穿刺針が挿通される同じく長尺のチューブ状のダイレータ(拡張器)および該ダイレータがスライド可能に挿通される同じく長尺のシースを概略備えて構成されている。
【0004】
このような穿刺アセンブリに用いられるダイレータは、その遠位端に先細のテーパ部を有するダイレータチューブと、穿刺針やシースとの相対位置の調整や固定、あるいは穿刺針の該ダイレータの近位端側からの導入等のため、ダイレータチューブの近位端部に一体的に固定されたハブ(ダイレータハブ)を備えている。
【0005】
ダイレータチューブとダイレータハブとの固定は、たとえば特許文献2に記載されているようなシースとハブの固定構造と同様に、直管部とフレア部を有するかしめピンを用いて行われている。すなわち、ダイレータハブは、遠位端側にチューブが挿入されるチューブ挿入孔と、該チューブ挿入孔と略同時軸上で近位端側に穿刺針を導入するための導入孔とを有しており、導入孔はチューブ挿入孔よりも僅かに大径となっている。ダイレータチューブのかしめピンが内挿されて外側に拡張された近位端部を導入孔に圧入することにより、固定が行われる。
【0006】
しかしながら、かしめピンを用いたダイレータチューブとダイレータハブの従来の固定構造では、穿刺針を挿入する際に、穿刺針の遠位端がかしめピン(フレア部)の近位端もしくは場合によりチューブの近位端に引っかかってしまうことがあり、その挿入作業を円滑に行うことができない場合があった。なお、このような問題は、ダイレータに限られず、シース、その他のチューブとハブとを備える医療用チューブ部品においても同様である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、穿刺針等の線状の医療器具をその内腔に円滑に挿入し得る医療用チューブ部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る医療用チューブ部品は、
遠位端および近位端を有するチューブと、
前記チューブの近位端部が接続固定されたハブと、
前記チューブの近位端部を内側から拡張した状態で該チューブの内腔に内挿された略円筒状の直管部を有するピン部材と、を備え、
前記ハブは、
前記チューブの前記ピン部材が内挿された部分の外側を含んで覆うように密着して設けられた外装部と、
その遠位端が前記チューブの内腔に連通するとともに、該遠位端の内径が前記ピン部材の近位端の外径よりも小さく、その近位端が外部に開口する導入孔と、を有する。
【0010】
本発明に係る医療用チューブ部品は、ハブの導入孔の遠位端の内径がピン部材の近位端の外径よりも小さい。このため、導入孔にその近位端の開口から穿刺針等の線状の医療器具を挿入する際に、該医療器具の遠位端がピン部材の近位端もしくはチューブの近位端に引っかかってしまうことが少なくなる。したがって、医療器具の遠位端がピン部材の内腔を介してチューブ内に円滑に導かれ、挿入作業を円滑に行うことができる。
【0011】
本発明において、前記ピン部材は、前記直管部の近位端に一体的に接合され、その近位端側に向かって略円筒錘状に開いたフレア部を有することができる。このように構成することにより、チューブのハブに対する固定の確実性を向上することができる。
【0012】
本発明において、前記ピン部材の近位端は、前記チューブの近位端よりも遠位端側に位置していることが好ましい。このように構成することにより、チューブのハブに対する固定の確実性をさらに向上することができる。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る医療用チューブ部品の製造方法は、
遠位端および近位端を有するチューブと、該チューブの近位端部が接続固定されたハブと、を有する医療用チューブ部品の製造方法であって、
前記チューブの近位端部を内側から拡張するように、略円筒状の直管部を有するピン部材を該チューブの近位端部の内腔に圧入する工程と、
遠位端側に略柱状の第1部位および近位端側に該第1部位と一体的に第2部位を有し、該第2部位は該第2部位の遠位端の外径が前記ピン部材の近位端の外径よりも小径とされたその断面が略円形の柱状の部位である内金型を、該遠位端側から該ピン部材の内腔を介して前記チューブに挿入する工程と、
前記チューブの前記ピン部材が内挿された部分および前記内金型の前記第2部位の遠位端側の一部を含む部分の外側に前記ハブの外形に係る空間を画成する外金型を配置する工程と、
前記外金型の内側に溶融樹脂を充填した後に冷却して、前記ハブを成型する工程と、を含む。
【0014】
本発明に係る医療用チューブ部品の製造方法によれば、チューブのピン部材が内挿された部分を含む近位端部の周囲に一体的に密着した状態で、その遠位端がチューブの内腔に連通するとともに、該遠位端の内径がピン部材の近位端の外径よりも小さい導入孔を有するハブを成型することができる。したがって、チューブのハブに対する固定の確実性に優れ、かつ穿刺針等の線状の医療器具の挿入作業を円滑に行い得る医療用チューブ部品を高効率的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係るダイレータを備える穿刺アセンブリについて、図面を参照して説明する。この穿刺アセンブリは、経心房中隔穿刺法(ブロッケンブロー法)を含む手技に好適に用いることができる。この穿刺アセンブリは、
図1Aにその遠位端近傍を拡大して示すように、穿刺針10、ダイレータ20および先端可動シース30を概略備えて構成されている。
【0017】
穿刺針10は、遠位端および近位端を有する長尺のチューブ状の可撓性を有する部材からなり、心房中隔等を穿刺して穿刺孔を形成するため、その遠位端部が鋭利に形成されている。穿刺針10の内腔には、スタイレットやワイヤが摺動可能に挿通される場合がある。穿刺針10は、ステンレス鋼等の金属材料またはポリテトラフルオロエチレン等の樹脂材料からなり、穿刺針10の近位端部には、図示は省略しているが、ハブが一体的に接続固定されている。
【0018】
先端可動シース30は、
図1Cに示すように、シース31、操作部32、グリップ部33、一対のワイヤ34,34およびノブ部材35を概略備えて構成されている。シース31は遠位端および近位端を有する長尺のチューブ状の部材である。シース31の遠位端側の一部はその向きが任意に偏向可能な偏向部(可撓部)31aとなっており、偏向部31aはその余の部分よりも硬度が低く(柔軟に)設定されており、さらに偏向部31aにおいてはその先端にいくにしたがって徐々にまたは段階的に硬度が低くなるように設定されている。
【0019】
シース31の材質は、可撓性を備えるものであれば特に限定されないが、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーであることが好ましく、たとえば、ポリエーテルブロックアミド共重合体などのポリアミド系エラストマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニルなどが用いられる。
【0020】
シース31の近位端部は、操作部32およびグリップ部33に挿通されている。グリップ部33は、シース31の近位端部を覆うように設けられたグリップ本体部材と、そのグリップ本体部材の近位端側に位置するシースハブ36とにより構成されている。シースハブ36は内腔を有していて、シースハブ36の近位端側にはグリップ本体部材内のシース31が、シースハブ36の内腔とシース31の内腔とが連通するように取り付けられている。
【0021】
シースハブ36の近位端側には、止血弁を備えたカテーテル挿入口(不図示)が形成されている。先端可動シース30の使用時には、ダイレータ20やその他の医療用カテーテル(電極カテーテルやアブレーションカテーテル)等がシースハブ36のカテーテル挿入口から挿入され、シース31の内腔に案内されて、それぞれの遠位端部が心筋組織の処置すべき部位まで導かれる。シースハブ36の側部には、側注管が形成されていて、その側注管にはチューブ36aを介して三方活栓36bが取り付けられている。三方活栓36bには、たとえばシリンジなどを取り付けて、体内の血液を吸引したり、体内に薬液を送り込んだりすることができる。
【0022】
シース31の遠位端(偏向部31aの遠位端)近傍には、円環状のプルリング37が埋め込まれており、プルリング37の近位端側の180度対向位置には、一対のワイヤ34,34の遠位端がそれぞれ接続固定されている。一対のワイヤ34の近位端は、操作部32の内部において、180度対向位置に把持部38,38を一体的に有する回転操作部材(不図示)にそれぞれ接続されている。
【0023】
図1Cに示したニュートラル状態では、一対のワイヤ34,34が両者とも無張力状態(または略均等に緩く緊張した状態)となり、シース31の遠位端の偏向部31aは、同図に示す通り、直線状に延びた状態となる。このニュートラル状態から、把持部38,38を押圧して回転操作部材を第1方向(
図1Cにおいて矢印B1の方向)に回転させると、一方のワイヤ34が引っ張られ、他方のワイヤ34が緩められることにより、遠位端の偏向部31aが
図1Cにおいて矢印B3に示すように偏向される。これと反対に、回転操作部材を第2方向(
図1Cにおいて矢印B2方向)に回転させると、一方のワイヤ34が緩められ、他方のワイヤ34が引っ張られることにより、遠位端の偏向部31aが
図1Cにおいて矢印B4に示すように偏向される。
【0024】
シース31の遠位端の偏向部31aを偏向させた状態で、ノブ部材35を時計方向に回転させて締め込むことにより、偏向部31aの形状をその状態で固定することができる。
【0025】
ダイレータ20は、遠位端および近位端を有し、その内腔に穿刺針10が摺動可能に挿通される医療用チューブ部品であり、穿刺針10により形成された穿刺孔の径を拡張する拡張器である。ダイレータ20は、
図1Bに示すように、ダイレータチューブ21およびダイレータチューブ21の近位端部に一体的に接続固定されたダイレータハブ22を概略備えて構成されている。
【0026】
ダイレータチューブ21は、長尺のチューブ状の可撓性を有する部材からなる。ダイレータチューブ21の遠位端部には、先細テーパ状のテーパ部21bが設けられており、該テーパ部21bよりも近位端側の部分は直胴状となっている。なお、テーパ部21bは、本実施形態では、その径が所定の傾斜で一様に減少するものとするが、テーパ部21bを複数の区間部に分けて、それぞれを異なる傾斜にしてもよい。ダイレータチューブ21のテーパ部21bに続く所定の区間は、所定の曲率で湾曲するようにくせ付けされている。この湾曲部の区間長および曲率は、手技の種類(穿孔する組織壁の位置や経路)等に応じて適切な値に設定されたものが用いられる。
【0027】
ダイレータチューブ21を構成する材料としては、たとえば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン等のウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、等の各種合成樹脂材料を挙げることができる。ダイレータチューブ21を構成する材料は、熱加工を伴う製造工程によって製造する観点から、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。また、樹脂材料には、改質剤、X線造影剤、顔料等の各種添加剤を添加したものを用いてもよい。さらに、ダイレータチューブ21の材料としては、ダイレータ先端21aに十分な先端強度を付与できる点で、ポリプロピレン等の結晶性樹脂を用いることが好ましい。
【0028】
ダイレータハブ22は、
図2Aおよび
図2Bに示すように構成されている。ダイレータチューブ21の内腔21aの近位端部には、ダイレータチューブ21の近位端部を内側から拡張した状態でピン部材23が内挿(圧入)されている。
【0029】
ピン部材23は、ダイレータチューブ21の内径よりも僅かに大きい外径を有する略円筒状の直管部23aと、該直管部23aの近位端に一体的に接合され、その近位端側に向かって略円筒錘状(漏斗状)に開いたフレア部23bとを有している。ピン部材23は、たとえばステンレス鋼(SUS304、SUS316)等の金属からなる柱状または環状のブロックを、旋盤等を用いて切削加工することにより製造することができる。なお、ピン部材23は、プレス加工により製造してもよい。
【0030】
ピン部材23は、本実施形態では、その全部がダイレータチューブ21内に埋没するように、すなわち、ピン部材23のフレア部23bの近位端がダイレータチューブ21の近位端よりも遠位端側(ダイレータチューブ21の内側)に位置するように挿入されている。このように深く挿入することにより、ダイレータチューブ21の近位端部のフレア部23bの近位端よりも近位端側に越えた部分が、自己の復元力により軸心側に僅かに収縮するため、後述するように、ダイレータハブ22と一体化された状態で、ダイレータチューブ21のダイレータハブ22からの抜出防止の確実性を高くすることができる。ただし、ピン部材23は、フレア部23bの近位端がダイレータチューブ21の近位端に略一致していてもよいし、フレア部23bの近位端側の一部または全部がダイレータチューブ21の近位端側(外側)に位置していてもよい。
【0031】
ダイレータハブ22は、ダイレータチューブ21のピン部材23が内挿された部分の外側を含んで覆うように密着して設けられた略円筒状の円筒部(外装部)22aを有している。円筒部22aは、その近位端が外部に開口する導入孔22dを有している。導入孔22dの遠位端は、ダイレータチューブ21の内腔21aにピン部材23の内腔を介して連通している。導入孔22dの遠位端の内径D1は、ピン部材23の近位端(フレア部23bの近位端)の外径D2(
図4A参照)よりも小さい値に設定されている。
【0032】
本実施形態では、導入孔22dは、近位端側が直胴部となっており、遠位端側が遠位端側に向かって細くなるテーパ状のテーパ部となっている。ただし、導入孔22dは、その全体が直胴状またはテーパ状であってもよいし、傾斜角の異なる複数のテーパ部から構成されてもよい。
【0033】
円筒部22aは、導入孔22dと同軸上にダイレータチューブ21の近位端部(ピン部材23が内挿された部分)およびその近傍部分を密着して保持するチューブ保持孔22eを有している。
【0034】
円筒部22aの外側には、円筒部22aの軸心を含む面に略平行する略板状の2つの羽根部22b,22bが一体的に形成されている。羽根部22bは、術者が円筒部22aを把持して、ダイレータ20をその軸心周りに回転させる場合に、指が滑ることなく容易にかつ微調整可能に回転させるための部位である。羽根部22bは、本実施形態では、2つを略180度対向位置に配置しているが、1つでもよいし、3つ以上配置してもよい。3つ以上配置する場合には、略等角度間隔で放射状に配置することが好ましい。
【0035】
円筒部22aの近位端部の外周には、雄ねじ部22cが形成されている。この雄ねじ部22cは、穿刺針10をダイレータ20に解除可能に固定するため、穿刺針10の近位端部に設けられたハブ(不図示)に形成された雌ねじ部と螺合できるようになっている。
【0036】
ダイレータハブ22を構成する材料としては、たとえば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン等のウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、等の各種合成樹脂材料を挙げることができる。ダイレータチューブ21を構成する材料は、後述するインサート成型法を用いる製造工程によって製造する観点から、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。また、樹脂材料には、改質剤、顔料等の各種添加剤を添加したものを用いてもよい。
【0037】
ダイレータ20のサイズは特に限定されないが、経心房中隔穿刺法に用いる穿刺アセンブリを構成するダイレータとする場合には、全長は、600〜1000mmの範囲で設定される。ダイレータチューブ21(直胴部)の外径は、2.0〜4.0mmの範囲で設定され、内径は、1.0〜3.5mmの範囲で設定される。
【0038】
ピン部材23の直管部23aの外径は、1.7〜2.3mmの範囲で設定され、内径は1.5〜1.9mmの範囲で設定される。フレア部23bの近位端の外径は、3.5〜4.5mmの範囲で設定される。ピン部材23の直管部23aの軸方向の寸法は2.5〜3.5mmの範囲で設定され、フレア部23bの軸方向の寸法は1.2〜1.8mmの範囲で設定される。
【0039】
上述した実施形態では、ダイレータハブ22の導入孔22dの遠位端の内径D1がピン部材23の近位端の外径D2(
図4A参照)よりも小さい。このため、導入孔22dにその近位端側の開口から穿刺針10を挿入する際に、穿刺針10の鋭利に形成された遠位端がピン部材23の近位端(フレア部23bの近位端)やダイレータチューブ21の近位端に引っかかってしまうことが少なくなる。したがって、穿刺針10の遠位端がピン部材23の内腔を介してダイレータチューブ21内に円滑に導かれ、ダイレータ20に対する穿刺針10の挿通作業を円滑に行うことができる。
【0040】
また、上述した実施形態では、ピン部材23は、直管部23aの近位端に一体的に接合され、その近位端側に向かって略円筒錘状に開いたフレア部23bを有している。ダイレータチューブ21の近位端部は、ダイレータハブ22のチューブ保持孔22eの内面と、ピン部材23の直管部23aおよび外側に広がったフレア部23bとで挟持されている。加えて、ピン部材23の近位端(フレア部23bの近位端)は、ダイレータチューブ21の近位端よりも遠位端側(ダイレータチューブ21の内側)に位置しており、ダイレータチューブ21の近位端部のピン部材23の近位端よりも近位端側の部分がその軸心側に自己の復元力によって縮んだ状態となっている。このため、ダイレータチューブ21の近位端部はダイレータハブ22に強固に保持され、ダイレータチューブ21のダイレータハブ22に対する固定の確実性が極めて高い。
【0041】
次に、上述した穿刺アセンブリを用いる経心房中隔穿刺法(ブロッケンブロー法)を含むカテーテルアブレーションについて、簡単に説明する。まず、足の付け根の静脈から先端可動シース30を挿入して、その遠位端を右心房まで導く。次いで、先端可動カテーテル30の内腔に、穿刺針10が挿通されたダイレータ20を挿入し、その遠位端を先端可動シース30の遠位端から突出させる。このとき、先端可動シース30の遠位端を適宜に湾曲させるとともに、ダイレータ20を適宜に回転させて、その遠位端の位置を心房中隔の穿刺すべき位置に合わせる。
【0042】
この状態で、穿刺針10を進出させて、心房中隔に穿刺孔を形成し、次いで、ダイレータ20を進出させて、穿刺孔を拡張する。その後、拡張した穿刺孔から先端可動シース30を進出させて、その遠位端を左心房に至らしめ、ダイレータ20および穿刺針10を抜去する。先端可動シース30の内腔を介して、アブレーションカテーテルを挿入し、その遠位端を位置決めしつつ、左心房内の心筋組織壁の適宜な箇所を焼灼する。
【0043】
次に、インサート成型法により、ダイレータ20を製造する場合の製造工程について説明する。ダイレータ20の製造では、
図3Aおよび
図3Bに示すインサート成型用の金型を用いる。この金型は、
図3Aに示す内金型41と、
図3Bに示す外金型42とを備えている。
【0044】
内金型41は、チューブ内挿入部(第1部位)41aおよび導入孔成型部(第2部位)41bを有している。チューブ内挿入部41aは、内金型41の遠位端側に配置された略柱状の部位であり、ダイレータチューブ21の内腔21aおよびピン部材23の内腔に挿入される部位である。チューブ内挿入部41aは、本実施形態では、ダイレータチューブ21の内腔21aおよびピン部材23の直管部23aの内腔に嵌入可能な円柱状となっている。
【0045】
導入孔成型部41bは、内金型41の近位端側に配置されたその断面が略円形の柱状の部位であり、チューブ内挿入部41aと略同軸上に配置され、その遠位端がチューブ内挿入部41aの近位端に一体的に接合されている。導入孔成型部41bは、円柱状もしくは遠位端側が細くなる円錐状またはこれらの単一もしくは複数の組み合わせから構成することができる。
【0046】
また、導入孔成型部41bの遠位端の外径は、ピン部材23の近位端の外径D2(
図4A参照)よりも小径とされ、ピン部材23の直管部23aの内径と略同一もしくはこれよりも大径とされている。導入孔成型部41bは、本実施形態では、近位端側に単一の円柱状の区間部と遠位端側に単一の遠位端側が細くなる円錐状の区間部41cから構成されている。本実施形態では、導入孔成型部41bの遠位端の外径は、ピン部材23の近位端の内径よりも小径とされ、ピン部材23の直管部23aの内径よりも大径とされている。本実施形態では、導入孔成型部41bとチューブ内挿入部41aとの接合部分には、段差が形成されているが、段差無く接続されていてもよい。
【0047】
外金型42は、ダイレータチューブ21のピン部材23が内挿された部分および内金型41の導入孔成型部41bの円柱状の区間部の遠位端側の一部を含む部分の外側にダイレータハブ22の外形に係る空間を画成するためのハブ成型部42a,42b,42cを有している。また、外金型42は、ダイレータチューブ21を配置するための管状のチューブ配置部42eおよび内金型41の導入孔成型部41bを配置するための管状の内金型配置部42dを有している。
【0048】
ハブ成型部42a,42b,42cは、ハブ22の円筒部22a、羽根部22b,22bおよび雄ねじ部22cにそれぞれ対応する凹形状を有している。外金型42は、2分割構造となっており、開いた状態で、内金型41が挿入されたダイレータチューブ21をセットし、閉じることができるようになっている。また、外金型42は、ハブ成型部42a,42b,42cに溶融した樹脂を充填するための樹脂通路(不図示)を有している。
【0049】
次に、
図4A〜
図4Eを参照する。まず、
図4Aに示すように、ダイレータチューブ21の内腔21aにピン部材23を挿入(圧入)する。ダイレータチューブ21の近位端部は、
図4Bに示すように、ピン部材23の外形に沿って内側から外側に拡張される。本実施形態では、ピン部材23は、ピン部材23の近位端がダイレータチューブ21の近位端よりも所定寸法だけ遠位端側(ダイレータチューブ21の内側)に位置するように、ダイレータチューブ21内に挿入する。ダイレータチューブ21の近位端部のピン部材23の近位端よりも近位端側の部分は、
図4Bに示すように、自己の復元性により僅かに内側に縮んだ状態となる。
【0050】
この状態で、
図4Cに示すように、内金型41のチューブ内挿入部41aを、ダイレータチューブ21の近位端の開口からピン部材23の内腔を経てダイレータチューブ21の内腔21aに至るように挿入する。本実施形態では、内金型41の導入孔成型部41bの円錐状の区間部41cの遠位端の外径が、ピン部材23の近位端(フレア部23bの近位端)の内径より小径で、ピン部材23の直管部23aの内径よりも大径に設定されているため、円錐状の区間部41cの遠位端がフレア部23bの内面の途中の部分に当接して、両者の位置決めがなされるようになっている。
【0051】
次いで、
図4Dに示すように、外金型42を開いた状態で、ダイレータチューブ21の近位端部(ピン部材23が内挿された部分よりも遠位端側の近傍部分)を、外金型42のチューブ配置部42eに装着(配置)するとともに、内金型41の導入孔成型部41bの円柱状の区間部を外金型42の内金型配置部42dに装着(配置)する。このとき、外金型42に対して、内金型41およびダイレータチューブ21の近位端部の軸方向の位置関係を、予め決められた所定の関係になるように設定する。その後、外金型42を閉じる。この位置合わせは、たとえば外金型42と内金型41とに相対する嵌合部を設けておき、これらを嵌合させることにより、行うようにできる。
【0052】
その後、
図4Eに示すように、外金型42の不図示の樹脂通路を介して、溶融した樹脂材料43を流し込み、外金型42のハブ成型部42a,42b,42cに充填する。次いで、冷却した後に外金型42を開き、内金型41を抜去することにより、ダイレータチューブ21とダイレータハブ22が一体化された状態のダイレータ20が製造される。
【0053】
上述したようなインサート成型法を用いることにより、ダイレータハブ22の成型と同時にダイレータチューブ21を一体化させることができ、これらを別々に形成ないし成型して、後に一体化する場合と比較して、製造工数を少なくすることができる。また、このようなインサート成型法を用いることにより、ダイレータハブ22のチューブ保持孔22eにおけるダイレータチューブ21に対する密着性が高くなり、ダイレータチューブ21の強固な固定が可能である。さらに、導入孔22dの遠位端の内径D1をピン部材23の近位端の外径D2よりも小さくすることが可能であり、穿刺針10の挿入作業を円滑に行い得るダイレータ20を容易に製造することができる。
【0054】
ただし、ダイレータ20の製造は、上述した製造方法により製造されるものに限定されず、他の製造方法で製造してもよい。たとえば、ダイレータチューブとは別にダイレータハブに係る部分を製造し、その後にダイレータチューブの近位端部をダイレータハブに保持させるようにしてもよい。この場合には、ダイレータハブの導入孔やチューブ保持孔に、ダイレータチューブのピン部材が内挿されて拡張された近位端部を、軸方向から挿入する方法は、構造的に取り得ない。
【0055】
この場合には、ダイレータハブ22に係る部分を、導入孔22dまたはチューブ保持孔22eの軸心を含む面で2分割した2つの部材から構成し、ダイレータチューブ21の近位端部を内側に保持した状態で当該2つの部材を一体化させるようにすればよい。ただし、上述したインサート成型法による方が、製造工数が少なく、より強固な固定を実現できるため、有利である。
【0056】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上述した実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0057】
たとえば上述した実施形態では、経心房中隔穿刺法(ブロッケンブロー法)に用いられる穿刺アセンブリを構成するダイレータに本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、他の目的で、生体に形成された穿孔や狭窄管腔等を拡張するために用いられるダイレータに適用することができる。たとえば、超音波内視鏡ガイド下経十二指腸的(または経胃経肝的)胆道ドレナージ(EUS−BD)、換言すれば、超音波内視鏡下瘻孔形成術による閉塞性黄疸治療を施行する際に用いられるダイレータとしても本発明に係るダイレータを好適に用いることができる。
【0058】
EUS−BDは、超音波内視鏡を十二指腸(または胃)に挿入し、超音波画像をリアルタイムに観察しながら、十二指腸(または胃)壁から穿刺針で総胆管(または肝内胆管)を穿刺し、この穿刺孔を介してガイドワイヤを胆管に挿入した後、そのガイドワイヤに沿わせて十二指腸(または胃)内部と総胆管(または肝内胆管)内部とをつなぐバイパスとなるステントを挿入・留置する手技である。
【0059】
たとえば、胃と肝内胆管とをバイパスする場合には、超音波内視鏡画像を見ながら胃壁から腹腔を経て肝内胆管に至るように穿刺針で穿刺し、ガイドワイヤを挿通して経路を確保し、穿刺孔をステントデリバリーシステムの遠位端部を挿入できる程度にダイレータで拡張した後に、ステントデリバリーシステムの遠位端部(ステント配置部)を該穿刺孔に挿通し、この状態でアウターシースを引き抜き、ステントをリリース(露出・拡径)させることにより、該穿刺孔にステントを留置する。
【0060】
また、本発明に係るダイレータは、ガン細胞等により狭窄した胆管にステント留置等の処置を行うために、狭窄した胆管を予め拡張しておくためにも好適に用いることができる。さらに、経皮的処置に用いられるダイレータにも用いることができる。本発明は、これらのような手技の際に用いられるダイレータにも好適に適用できるが、さらに他の手技に用いられるダイレータにも広く適用することができる。