(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記両親媒性ポリマーが、前記マクロモノマーに由来する構成単位を含む疎水性部と、前記(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位を含む親水性部とを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の防汚塗料用樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「両親媒性ポリマー」とは、分子内に親水性部と疎水性部とを含むポリマーを意味する。親水性部は水に溶解しやすいあるいは水と相溶しやすい性質を有し、疎水性部は水に溶解しにくいあるいは水と相溶しにくい性質を有するポリマーを意味する。
「(メタ)アクリル系モノマー」は、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを意味する。
「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基およびメタクリロイル基の総称である。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの総称である。
「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸の総称である。
数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
【0011】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
本実施形態の防汚塗料用樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物ともいう。)は両親媒性ポリマーを含む。
【0012】
<両親媒性ポリマー>
本実施形態の両親媒性ポリマーは、マクロモノマー(以下、「マクロモノマー(a)」ともいう。)に由来する構成単位と、前記マクロモノマー(a)以外のモノマー(以下、「モノマー(b)」ともいう。)に由来する構成単位と、を含む。
【0013】
両親媒性ポリマーは、典型的には、マクロモノマー(a)に由来する構成単位から構成されるポリマー鎖と、モノマー(b)に由来する構成単位から構成されるポリマー鎖とが結合したブロックコポリマー、またはマクロモノマー(a)に由来する構成単位から構成されるポリマー鎖と、モノマー(b)に由来する構成単位から構成されるポリマー鎖とが結合したグラフトコポリマーの構造を有する。
上記ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーにおいては、マクロモノマー(a)に由来する構成単位から構成されるポリマー鎖が疎水性部で、モノマー(b)に由来する構成単位から構成されるポリマー鎖が親水性部であってもよく、マクロモノマー(a)に由来する構成単位から構成されるポリマー鎖が親水性部で、モノマー(b)に由来する構成単位から構成されるポリマー鎖が疎水性部であってもよい。
【0014】
両親媒性ポリマーにおいて、マクロモノマー(a)に由来する構成単位の含有量は、両親媒性ポリマーを構成する全構成単位の合計に対し、5〜95質量%が好ましい。マクロモノマー(a)に由来する構成単位の含有量が上記範囲内であれば、形成される塗膜の防汚性がより優れる。
本実施形態において、両親媒性ポリマーを構成する全構成単位の合計は、マクロモノマー(a)に由来する構成単位の含有量と、モノマー(b)に由来する構成単位との合計に等しい。
【0015】
[マクロモノマー(a)]
マクロモノマー(a)としては、ラジカル重合性基、又はヒドロキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、チオール基、酸無水物基等の付加反応性の官能基を有するもの等が挙げられる。
【0016】
マクロモノマー(a)がラジカル重合性基を有する場合、マクロモノマー(a)とモノマー(b)とをラジカル重合により共重合させて、本実施形態の両親媒性ポリマーを製造することができる。
マクロモノマー(a)がラジカル重合性基を有する場合、マクロモノマー(a)は一つ以上のラジカル重合性基を有していてもよく、ラジカル重合性基を一つ有していることが好ましい。
【0017】
マクロモノマー(a)が付加反応性の官能基を有する場合、通常、モノマー(b)は、マクロモノマー(a)が有する付加反応性の官能基と反応可能な官能基を有する。かかるモノマー(b)由来の重合性の官能基と、マクロモノマー(a)が有する付加反応性の官能基とを反応させて、両親媒性ポリマーを製造することができる。
マクロモノマー(a)が付加反応性の官能基を有する場合、マクロモノマー(a)は同一または異なる一つ以上の付加反応性の官能基を有していてもよく、付加反応性の官能基を一つ有していることが好ましい。
【0018】
マクロモノマー(a)が有する付加反応性の官能基と、この官能基と反応可能な官能基の組み合わせとしては、例えば、以下の組み合わせが挙げられる。
ヒドロキシル基とカルボキシ基又は酸無水物基との組み合わせ、イソシアネート基とヒドロキシル基またはチオール基との組み合わせ、エポキシ基とアミノ基との組み合わせ、カルボキシ基とエポキシ基との組み合わせ、アミノ基とカルボキシ基との組み合わせ、アミド基とカルボキシ基との組み合わせ、チオール基とエポキシ基との組み合わせ。
【0019】
また、マクロモノマー(a)はラジカル重合性基と官能基とのどちらか一方を有していてもよく、ラジカル重合性基と官能基との両方を有していてもよい。
マクロモノマー(a)がラジカル重合性基と官能基との両方を含有する場合は、モノマー(b)からなる重合物ユニットと付加する官能基、又はモノマー(b)と共重合するラジカル重合性基の何れか以外の官能基、もしくはラジカル重合性基は二つ以上であってもよい。
【0020】
マクロモノマー(a)は、ラジカル重合性基を有することが好ましく、モノマー(b)と共重合可能なラジカル重合性基を有することがより好ましい。
【0021】
マクロモノマー(a)が有するラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基が好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基としては、例えば、CH
2=C(COOR)−CH
2−、(メタ)アクリロイル基、2−(ヒドロキシメチル)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
ここで、Rは水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基を示す。
【0022】
Rにおける非置換のアルキル基としては、例えば、炭素数1〜22の分岐又は直鎖アルキル基が挙げられる。炭素数1〜22の分岐又は直鎖アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基(アミル基)、i−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、i−オクチル基、ノニル基、i−ノニル基、デシル基、i−デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基(ステアリル基)、i−オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基及びドコシル基等が挙げられる。
【0023】
Rにおける非置換の脂環式基としては、単環式のものでも多環式のものでもよく、例えば、炭素数3〜20の脂環式基が挙げられる。脂環式基としては、飽和脂環式基が好ましく、具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、シクロオクチル基、及びアダマンチル基等が挙げられる。
【0024】
Rにおける非置換のアリール基としては、例えば、炭素数6〜18のアリール基が挙げられる。炭素数6〜18のアリール基の具体例としては、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
【0025】
Rにおける非置換のヘテロアリール基としては、例えば、炭素数4〜18のヘテロアリール基が挙げられる。炭素数4〜18のヘテロアリール器の具体例としては、ピリジル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
【0026】
Rにおける非置換の複素環式基としては、例えば、炭素数4〜18の複素環式基が挙げられる。炭素数4〜18の複素環式基の具体例としては、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基等の酸素原子含有複素環式基、γ−ブチロラクトン基、ε−カプロラクトン基、ピロリジニル基、ピロリドン基、モルホリノ基等の窒素原子含有複素環式基等が挙げられる。
【0027】
Rにおける置換基(置換基を有するアルキル基、置換基を有する脂環式基、置換基を有するアリール基、置換基を有するヘテロアリール基、置換基を有する非芳香族の複素環式基のそれぞれにおける置換基)としては、例えば、アルキル基(ただしRが置換基を有するアルキル基である場合を除く)、アリール基、−COOR
11、シアノ基、−OR
12、−NR
13R
14、−CONR
15R
16、ハロゲン原子、アリル基、エポキシ基、シロキシ基、及び親水性又はイオン性を示す基からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
ここで、R
11〜R
16はそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、又は非置換の若しくは置換基を有するアリール基を示す。
【0028】
上記置換基におけるアルキル基、アリール基はそれぞれ、前記の非置換のアルキル基、非置換のアリール基と同様のものが挙げられる。
上記置換基における−COOR
11のR
11としては、水素原子又は非置換のアルキル基が好ましい。すなわち、−COOR
11は、カルボキシ基又はアルコキシカルボニル基が好ましい。アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基が挙げられる。
上記置換基における−OR
12のR
12としては、水素原子又は非置換のアルキル基が好ましい。すなわち、−OR
12は、ヒドロキシ基又はアルコキシ基が好ましい。アルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜12のアルコキシ基が挙げられ、具体例としては、メトキシ基が挙げられる。
【0029】
上記置換基における−NR
13R
14としては、例えばアミノ基、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基等が挙げられる。
上記置換基における−CONR
15R
16としては、例えば、カルバモイル基(−CONH
2)、N−メチルカルバモイル基(−CONHCH
3)、N,N−ジメチルカルバモイル基(ジメチルアミド基:−CON(CH
3)
2)等が挙げられる。
【0030】
上記置換基におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
上記置換基における親水性又はイオン性を示す基としては、例えば、カルボキシ基のアルカリ塩又はスルホ基のアルカリ塩、ポリエチレンオキシド基、ポリプロピレンオキシド基等のポリ(アルキレンオキシド)基及び四級アンモニウム塩基等のカチオン性置換基が挙げられる。
【0031】
Rとしては、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、又は非置換の若しくは置換基を有する脂環式基が好ましく、非置換のアルキル基、又は非置換の若しくは置換基としてアルキル基を有する脂環式基がより好ましい。
上記の中でも、入手のし易さから、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、イソボルニル基及びアダマンチル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、イソボルニル基及びアダマンチル基がより好ましい。
【0032】
マクロモノマー(a)は、ラジカル重合性基を有する単量体(以下、「モノマー(aa1)」とも言う。)に由来する構成単位を2以上有していることが好ましい。
モノマー(aa1)が有するラジカル重合性基としては、マクロモノマー(a)が有することが好ましいラジカル重合性基と同様に、エチレン性不飽和結合を有する基が好ましい。
【0033】
モノマー(aa1)としては、例えば、
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸3,5,5−トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、テルペンアクリレートやその誘導体、水添ロジンアクリレートやその誘導体、(メタ)アクリル酸ドコシル等の炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノオクチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸モノオクチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノオクチル、シトラコン酸モノエチル等のカルボキシ基含有ビニル系単量体;
無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル系単量体;
ジメチルマレート、ジブチルマレート、ジメチルフマレート、ジブチルフマレート、ジブチルイタコネート、ジパーフルオロシクロヘキシルフマレート等の不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体;
(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル等のエポキシ基含有ビニル系単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル系のビニル系単量体;
(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するビニル系単量体;
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系単量体;
ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、マレイン酸ジアリル、ポリプロピレングリコールジアリルエーテル、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能性のビニル系単量体;
(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環系単量体;
(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソブトキシエチル、(メタ)アクリル酸t−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、「プラクセルFM」(ダイセル化学(株)製カプロラクトン付加モノマー、商品名)、「ブレンマーPME−100」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が2であるもの)、商品名)、「ブレンマーPME−200」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が4であるもの)、商品名)、「ブレンマーPME−400」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が9であるもの)、商品名)、「ブレンマー50POEP−800B」(日油(株)製オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−メタクリレート(エチレングリコールの連鎖が8であり、プロピレングリコールの連鎖が6であるもの)、商品名)、「ブレンマー20ANEP−600」(日油(株)製ノニルフェノキシ(エチレングリコール−ポリプロピレングリコール)モノアクリレート、商品名)、「ブレンマーAME−100」(日油(株)製、商品名)、「ブレンマーAME−200」(日油(株)製、商品名)及び「ブレンマー50AOEP−800B」(日油(株)製、商品名)等のグリコールエステル系単量体、
3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤含有単量体、
トリメチルシリル(メタ)アクリレート、トリエチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−プロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−アミルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ヘキシルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−オクチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ドデシルシリル(メタ)アクリレート、トリフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリ−p−メチルフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリベンジルシリル(メタ)アクリレート、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリイソブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−s−ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−2−メチルイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ−t−ブチルシリル(メタ)アクリレート、エチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、n−ブチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピル−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、n−オクチルジ−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルステアリルシリル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルフェニルシリル(メタ)アクリレート、t−ブチルジフェニルシリル(メタ)アクリレート、ラウリルジフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリイソプロピルシリルメチルマレート、トリイソプロピルシリルアミルマレート、トリ−n−ブチルシリル−n−ブチルマレート、t−ブチルジフェニルシリルメチルマレート、t−ブチルジフェニルシリル−n−ブチルマレート、トリイソプロピルシリルメチルフマレート、トリイソプロピルシリルアミルフマレート、トリ−n−ブチルシリル−n−ブチルフマレート、t−ブチルジフェニルシリルメチルフマレート、t−ブチルジフェニルシリル−n−ブチルフマレート、サイラプレーンFM−0711(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンFM−0721(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンFM−0725(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンTM−0701(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンTM−0701T(JNC(株)製、商品名)、X−22−174ASX(信越化学工業(株)製、商品名)、X−22−174BX(信越化学工業(株)製、商品名)、KF−2012(信越化学工業(株)製、商品名)、X−22−2426(信越化学工業(株)製、商品名)、X−22−2404(信越化学工業(株)製、商品名)等の、シランカップリング剤含有モノマー以外のオルガノシリル基含有単量体;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン、
(メタ)アクリル酸2−イソシアナトエチル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロフェニル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)メタクリレート、1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有単量体(ただしハロゲン化オレフィンを除く)、
1−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、1−(2−エチルへキシルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、1−(シクロへキシルオキシ)エチルメタクリレート、2−テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート等のアセタール構造を持つ単量体、
4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、(メタ)アクリル酸−2−イソシアナトエチル等が挙げられる。
これらの単量体は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0034】
マクロモノマー(a)は、ラジカル重合性基を有し、かつ、下記式(AA)で示される構成単位(以下、「構成単位(AA)」とも言う。)を2以上有することが好ましい。
【0036】
(式中、R
1は水素原子、メチル基又はCH
2OHであり、R
2はOR
3、ハロゲン原子、COR
4、COOR
5、CN、CONR
6R
7又はR
8であり、R
3〜R
7はそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基を示し、これらに許容される置換基はそれぞれ、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホ基及びハロゲンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、R
8は非置換の若しくは置換基を有するアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示し、これらに許容される置換基はそれぞれ、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホ基、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するアルケニル含有基及びハロゲンからなる群から選ばれる少なくとも1種である。)
【0037】
R
1としては水素原子、メチル基が好ましく、R
2としてはCOOR
5が好ましい。
R
3〜R
7の非置換のアルキル基、非置換の脂環式基、非置換のアリール基、非置換のヘテロアリール基、非置換の非芳香族の複素環式基は、それぞれ前述のRにおける非置換のアルキル基、非置換の脂環式基、非置換のアリール基、非置換のヘテロアリール基、非置換の非芳香族の複素環式基と同様のものが挙げられる。
【0038】
R
3〜R
7の非置換のアラルキル基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。
【0039】
R
3〜R
7の非置換のオルガノシリル基としては、例えば−SiR
17R
18R
19(ここで、R
17〜R
19はそれぞれ独立に、非置換若しくは置換基を有するアルキル基、非置換若しくは置換基を有する脂環式基、又は非置換若しくは置換基を有するアリール基を示す。)が挙げられる。
R
17〜R
19における非置換若しくは置換基を有するアルキル基としては、前記と同様のものが挙げられ、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、ステアリル基、ラウリル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、2−メチルイソプロピル基、ベンジル基等が挙げられる。
R
17〜R
19における非置換若しくは置換基を有する脂環式基としては、前記と同様のものが挙げられ、例えばシクロヘキシル基等が挙げられる。
R
17〜R
19における非置換若しくは置換基を有するアリール基としては、前記と同様のものが挙げられ、例えばフェニル基、p−メチルフェニル等が挙げられる。
R
17〜R
19はそれぞれ同じでもよく異なってもよい。
【0040】
R
3〜R
7における置換基(置換基を有するアルキル基、置換基を有する脂環式基、置換基を有するアリール基、置換基を有するヘテロアリール基、置換基を有する非芳香族の複素環式基、置換基を有するアラルキル基、置換基を有するアルカリール基、置換基を有するオルガノシリル基のそれぞれにおける置換基)のうち、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基はそれぞれ前記と同様のものが挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、例えば前記−COOR
11のR
11が非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、又は非置換の若しくは置換基を有するアリール基である基が挙げられる。
アルコキシ基としては、前記−OR
12のR
12が非置換のアルキル基である基が挙げられる。
2級アミノ基としては、前記−NR
13R
14のR
13が水素原子、R
14が非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、又は非置換の若しくは置換基を有するアリール基である基が挙げられる。
3級アミノ基としては、前記−NR
13R
14のR
13及びR
14がそれぞれ非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、又は非置換の若しくは置換基を有するアリール基である基が挙げられる。
非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、ハロゲン原子はそれぞれ前記と同様のものが挙げられる。
【0041】
R
8における非置換のアリール基、非置換のヘテロアリール基、非置換の非芳香族の複素環式基はそれぞれ、前記と同様のものが挙げられる。
R
8における置換基(置換基を有するアリール基、置換基を有するヘテロアリール基、置換基を有する非芳香族の複素環式基それぞれにおける置換基)のうち、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、及びハロゲン原子はそれぞれ、前記と同様のものが挙げられる。
非置換のアルケニル含有基としては、例えばアリル基等が挙げられる。
置換基を有するアルケニル含有基における置換基としては、R
3〜R
7における置換基と同様のものが挙げられる。
【0042】
構成単位(AA)は、CH
2=CR
1R
2に由来する構成単位である。CH
2=CR
1R
2の具体例としては、以下のものが挙げられる。
置換又は非置換のアルキル(メタ)アクリレート[例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、1−メチル−2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−メトキシブチル(メタ)アクリレート]、置換又は非置換のアラルキル(メタ)アクリレート[例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、m−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、p−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート]、置換又は非置換のアリール(メタ)アクリレート[例えば、フェニル(メタ)アクリレート、m−メトキシフェニル(メタ)アクリレート、p−メトキシフェニル(メタ)アクリレート、o−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート]、脂環式(メタ)アクリレート[例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート]、ハロゲン原子含有(メタ)アクリレート[例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート]等の疎水基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エチルヘキサオキシ)エチル(メタ)アクリレート等のオキシエチレン基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;
メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、メトキシポリプロピレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリプロピレングリコールアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル等の末端アルコキシアリル化ポリエーテル単量体;
(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル等のエポキシ基含有ビニル単量体;
ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等の第一級または第二級アミノ基含有ビニル単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の第三級アミノ基含有ビニル単量体;
ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環系塩基性単量体;
トリメチルシリル(メタ)アクリレート、トリエチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−プロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−アミルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ヘキシルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−オクチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ドデシルシリル(メタ)アクリレート、トリフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリ−p−メチルフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリベンジルシリル(メタ)アクリレート、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリイソブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−s−ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−2−メチルイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ−t−ブチルシリル(メタ)アクリレート、エチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、n−ブチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピル−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、n−オクチルジ−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルステアリルシリル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルフェニルシリル(メタ)アクリレート、t−ブチルジフェニルシリル(メタ)アクリレート、ラウリルジフェニルシリル(メタ)アクリレート等のオルガノシリル基含有ビニル単量体;
メタクリル酸、アクリル酸、ビニル安息香酸、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体;
アクリロニトリル、メタクリロニトニル等のシアノ基含有ビニル単量体;
アルキルビニルエーテル[たとえば、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等]、シクロアルキルビニルエーテル[たとえば、シクロヘキシルビニルエーテル等]等のビニルエーテル単量体;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル単量体;
スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;
塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化オレフィン;等。
【0043】
マクロモノマー(a)が、ラジカル重合性基を有し、かつ、構成単位(AA)を2以上有するマクロモノマーである場合、マクロモノマー(a)は、構成単位(AA)以外の他の構成単位をさらに有していてもよい。他の構成単位としては、例えば前述のモノマー(aa1)の例として挙げた単量体のうちCH
2=CR
1R
2に該当しない単量体に由来する構成単位が挙げられる。
【0044】
マクロモノマー(a)は、リコート性の観点から、疎水基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体、オキシエチレン基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体、末端アルコキシアリル化ポリエーテル単量体、エポキシ基含有ビニル単量体、第一級または第二級アミノ基含有ビニル単量体、第三級アミノ基含有ビニル単量体、複素環系塩基性単量体、カルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体、シアノ基含有ビニル単量体、ビニルエーテル単量体、ビニルエステル単量体、芳香族ビニル単量体から選択される1種以上の単量体由来の構成単位であることが好ましい。
【0045】
マクロモノマー(a)において、構成単位(AA)又は他の構成単位を形成する単量体には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸3,5,5−トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、テルペンアクリレートやその誘導体、水添ロジンアクリレートやその誘導体、(メタ)アクリル酸ドコシル等の炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシ基含有ビニル系単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル系単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル等のエポキシ基含有ビニル系単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル系のビニル系単量体;(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系単量体;ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能性のビニル系単量体;アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソブトキシエチル、(メタ)アクリル酸t−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、「プラクセルFM」(ダイセル化学(株)製カプロラクトン付加モノマー、商品名)、「ブレンマーPME−100」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が2であるもの)、商品名)、「ブレンマーPME−200」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が4であるもの)、商品名)、「ブレンマーPME−400」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が9であるもの)、商品名)、「ブレンマー50POEP−800B」(日油(株)製オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−メタクリレート(エチレングリコールの連鎖が8であり、プロピレングリコールの連鎖が6であるもの)、商品名)及び「ブレンマー20ANEP−600」(日油(株)製ノニルフェノキシ(エチレングリコール−ポリプロピレングリコール)モノアクリレート、商品名)、「ブレンマーAME−100」(日油(株)製、商品名)、「ブレンマーAME−200」(日油(株)製、商品名)及び「ブレンマー50AOEP−800B」(日油(株)製、商品名)、サイラプレーンFM−0711(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンFM−0721(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンFM−0725(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンTM−0701(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンTM−0701T(JNC(株)製、商品名)、X−22−174DX(信越化学工業(株)製、商品名)、X−22−2426(信越化学工業(株)製、商品名)、X−22−2475(信越化学工業(株)製、商品名)、(メタ)アクリル酸2−イソシアナトエチル等が挙げられる。
【0046】
他の構成単位の好ましい具体例としては、以下の単量体由来の構成単位が挙げられる。
トリイソプロピルシリルメチルマレート、トリイソプロピルシリルアミルマレート、トリ−n−ブチルシリル−n−ブチルマレート、t−ブチルジフェニルシリルメチルマレート、t−ブチルジフェニルシリル−n−ブチルマレート、トリイソプロピルシリルメチルフマレート、トリイソプロピルシリルアミルフマレート、トリ−n−ブチルシリル−n−ブチルフマレート、t−ブチルジフェニルシリルメチルフマレート、t−ブチルジフェニルシリル−n−ブチルフマレート等のオルガノシリル基含有ビニル単量体;
無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル単量体;
クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸モノオクチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノオクチル、シトラコン酸モノエチル等のカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体;
ジメチルマレート、ジブチルマレート、ジメチルフマレート、ジブチルフマレート、ジブチルイタコネート、ジパーフルオロシクロヘキシルフマレート等の不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体;
塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、マレイン酸ジアリル、ポリプロピレングリコールジアリルエーテル等の多官能単量体等。
【0047】
マクロモノマー(a)は、マクロモノマー(a)を構成する構成単位の合計質量(100質量%)のうち、(メタ)アクリル系単量体由来の構成単位が50質量%以上を占めることが好ましく、70質量%以上を占めることがより好ましい。上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
(メタ)アクリル系単量体由来の構成単位としては、前記式(AA)中のR
1が水素原子又はメチル基であり、R
2がCOOR
5である構成単位が好ましい。
【0048】
マクロモノマー(a)としては、2以上の構成単位(AA)を含む主鎖の末端にラジカル重合性基が導入されたマクロモノマーが好ましく、
下記式(a2)の構造を有するものが好ましい。
なお、式(a2)中のCH
2=C(COOR)−CH
2とZとを連結する「・・・」は、2以上の構成単位(AA)を含む主鎖部分を示す。
【0050】
(式中、Rは前述のRと同様であり、Zは末端基である。)
【0051】
式(a2)におけるRとしては、式(AA)におけるR
5と同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0052】
Zは、マクロモノマー(a)の末端基である。
Zとしては、例えば、公知のラジカル重合で得られるポリマーの末端基と同様に、水素原子、ラジカル重合開始剤に由来する基、ラジカル重合性基等が挙げられる。
【0053】
マクロモノマー(a)としては、下記式(1)で表されるものが特に好ましい。
【0055】
(式中、Rは前述のRと同様であり、複数のRはそれぞれ同じでも異なってもよく、Xは水素原子又はメチル基であり、複数のXはそれぞれ同じでも異なってもよく、Zは末端基であり、nは2〜10,000の自然数である。)
【0056】
式(1)におけるRとしては、前記式(AA)におけるR
5と同様である。式(1)におけるZとしては、前記式(a2)におけるZと同様である。
【0057】
マクロモノマー(a)に由来する構成単位が両親媒性ポリマーの疎水性部に含まれる場合、疎水性の観点から、式(1)中のRは、アルキル基、脂環式基、アリール基、ヘテロアリール基又は非芳香族の複素環式基であることが好ましく、アルキル基又は脂環式基であることがより好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。
マクロモノマー(a)に由来する構成単位が両親媒性ポリマーの親水性部に含まれる場合、親水性の観点から、式(1)中のRは水素原子であることが好ましい。
【0058】
マクロモノマー(a)の数平均分子量(Mn)は、300〜100,000であることが好ましく、500〜50,000がより好ましく、1,000〜35,000がさらに好ましい。
マクロモノマー(a)の数平均分子量が前記下限値以上であれば、塗膜性能がより優れ、前記上限値以下であれば、塗装性がより優れる。
マクロモノマー(a)の数平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを基準樹脂として測定される。
【0059】
マクロモノマー(a)を構成する全構成単位の合計(100質量%)に占める構成単位(AA)の割合は、塗膜性能の点から、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0060】
マクロモノマー(a)に由来する構成単位が両親媒性ポリマーの疎水性部に含まれる場合、このマクロモノマー(a)を構成する構成単位(AA)は、疎水性の観点から、式(AA)中のR
3〜R
7がアルキル基、脂環式基、アリール基、ヘテロアリール基又は非芳香族の複素環式基である構成単位(以下、「構成単位(AA1)」ともいう。)を含むことが好ましい。構成単位(AA1)としては、式(AA)中のR
3〜R
7がアルキル基又は脂環式基であるものが好ましく、R
3〜R
7がアルキル基であるものがより好ましい。
疎水性部を形成するマクロモノマー(a)を構成する全構成単位の合計(100質量%)に占める構成単位(AA1)の割合は、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0061】
マクロモノマー(a)に由来する構成単位が両親媒性ポリマーの親水性部に含まれる場合、このマクロモノマー(a)を構成する構成単位(AA)は、親水性の観点から、式(AA)中のR
3〜R
7が水素原子である構成単位(以下、「構成単位(AA2)」ともいう。)を含むことが好ましい。特に、R
2がカルボキシ基であるものが好ましい。
親水性部を形成するマクロモノマー(a)を構成する全構成単位の合計(100質量%)に占める構成単位(AA2)の割合は、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0062】
[モノマー(b)]
モノマー(b)は、マクロモノマー(a)以外のモノマーである。モノマー(b)は、ラジカル重合基を有することが好ましい。モノマー(b)としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0063】
置換又は未置換のアルキル(メタ)アクリレート[例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、1−メチル−2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−メトキシブチル(メタ)アクリレート]、置換又は未置換のアラルキル(メタ)アクリレート[例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、m−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、p−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート]、置換又は未置換のアリール(メタ)アクリレート[例えば、フェニル(メタ)アクリレート、m−メトキシフェニル(メタ)アクリレート、p−メトキシフェニル(メタ)アクリレート、o−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート]、脂環式(メタ)アクリレート[例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート]、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の疎水基含有(メタ)アクリレート;
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エチルヘキサオキシ)エチル(メタ)アクリレート等のオキシエチレン基含有(メタ)アクリレート;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;
メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、メトキシポリプロピレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリプロピレングリコールアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル等の末端アルコキシアリル化ポリエーテル化合物;
(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル等のエポキシ基含有ビニル化合物;
ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド等の第一級または第二級アミノ基含有ビニル化合物;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の第三級アミノ基含有ビニル化合物;
ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環系塩基性ビニル化合物;
トリメチルシリル(メタ)アクリレート、トリエチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−プロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−アミルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ヘキシルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−オクチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ドデシルシリル(メタ)アクリレート、トリフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリ−p−メチルフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリベンジルシリル(メタ)アクリレート、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリイソブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−s−ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−2−メチルイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ−t−ブチルシリル(メタ)アクリレート、エチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、n−ブチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピル−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、n−オクチルジ−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルステアリルシリル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルフェニルシリル(メタ)アクリレート、t−ブチルジフェニルシリル(メタ)アクリレート、ラウリルジフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリイソプロピルシリルメチルマレート、トリイソプロピルシリルアミルマレート、トリ−n−ブチルシリル−n−ブチルマレート、t−ブチルジフェニルシリルメチルマレート、t−ブチルジフェニルシリル−n−ブチルマレート、トリイソプロピルシリルメチルフマレート、トリイソプロピルシリルアミルフマレート、トリ−n−ブチルシリル−n−ブチルフマレート、t−ブチルジフェニルシリルメチルフマレート、t−ブチルジフェニルシリル−n−ブチルフマレート等のオルガノシリル基含有ビニル化合物;
無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル化合物;
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ビニル安息香酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸モノオクチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノオクチル、シトラコン酸モノエチル、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のカルボキシ基含有エチレン性不飽和化合物;
ジメチルマレート、ジブチルマレート、ジメチルフマレート、ジブチルフマレート、ジブチルイタコネート、ジパーフルオロシクロヘキシルフマレート等の不飽和ジカルボン酸ジエステル;
アクリロニトリル、メタクリロニトニル等のシアノ基含有ビニル化合物;
アルキルビニルエーテル[例えば、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等]、シクロアルキルビニルエーテル[例えば、シクロヘキシルビニルエーテル等]等のビニルエーテル化合物;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル化合物;
スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、マレイン酸ジアリル、ポリプロピレングリコールジアリルエーテル等の多官能化合物等。
これらは1種又は2種以上を必要に応じて適宜選択して使用することができる。
【0064】
モノマー(b)としては、マクロモノマー(a)との共重合性の点で、(メタ)アクリル系モノマーが好ましい。(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、及び置換又は無置換の(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0065】
モノマー(b)に由来する構成単位が両親媒性ポリマーの親水性部に含まれ、モノマー(b)が(メタ)アクリレートである場合、(メタ)アクリレートとしては、親水性の観点から、下記式(b−1)で表される化合物が好ましい。
CH
2=CX−C(=O)−O−(R
22O)
mR
21 (b−1)
(式中、Xは、水素原子又はメチル基であり、
R
21は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又はアリール基であり、
R
22は、炭素数2〜10のアルキレン基であり、
mは、1〜15の整数である。)
【0066】
R
21における炭素数1〜10のアルキル基は、分岐でも直鎖でもよく、具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基及びデシル基等が挙げられる。
アリール基としては、例えば、炭素数6〜18のアリール基が挙げられ、具体例としては、フェニル基及びナフチル基等が挙げられる。
R
21としては、親水性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。つまり末端がヒドロキシ基であることが特に好ましい。
R
22としては、親水性の観点から、エチレン基が好ましい。
mは、1〜10の整数が好ましく、1〜5の整数がより好ましく、1〜3の整数がさらに好ましく、1または2が特に好ましい。
【0067】
モノマー(b)に由来する構成単位が両親媒性ポリマーの疎水性部に含まれ、モノマー(b)が(メタ)アクリレートである場合、(メタ)アクリレートとしては、疎水性の観点から、前述の疎水基含有(メタ)アクリレートが好ましい。中でも下記式(b−2)で表される化合物が好ましい。
CH
2=CX−C(=O)−O−R
23 (b−2)
(式中、Xは、水素原子又はメチル基であり、
R
23は、アルキル基、脂環式基又はアリール基である。)
R
23におけるアルキル基、脂環式基、アリール基は、それぞれ、前記式(AA)中のR
5におけるアルキル基、脂環式基、アリール基と同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0068】
置換又は無置換の(メタ)アクリルアミドとしては、下記式(b−3)で表される化合物が好ましい。
CH
2=CX−C(=O)−NR
24R
25 (b−3)
(式中、Xは、水素原子又はメチル基であり、
R
24及びR
25は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又は−R
26−NR
27R
28である。R
26はアルキレン基であり、R
27及びR
28はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基である。)
【0069】
R
24、R
25、R
27及びR
28におけるアルキル基は、それぞれ、前記式(AA)中のR
6、R
7におけるアルキル基と同様のものが挙げられる。R
24、R
25、R
27及びR
28は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましい。
R
26のアルキレン基としては、炭素数2〜4のアルキレン基が好ましい。
−R
26−NR
27R
28の具体例としては、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基、ブチルアミノエチル基、ジブチルアミノエチル基、ジメチルアミノプロピル基、ジエチルアミノプロピル基、ジメチルアミノブチル基等が挙げられる。
【0070】
[両親媒性ポリマーの好ましい態様(I)]
両親媒性ポリマーの好ましい態様として、以下の両親媒性ポリマー(I)が挙げられる。
両親媒性ポリマー(I):マクロモノマー(a)に由来する構成単位を含む疎水性部と、マクロモノマー(a)以外の(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位を含む親水性部と、を含む両親媒性ポリマー。
【0071】
両親媒性ポリマー(I)の疎水性部を形成するマクロモノマー(a)としては、前記マクロモノマー(a)の説明で、マクロモノマー(a)に由来する構成単位が両親媒性ポリマーの疎水性部に含まれる場合に好ましいものとして挙げたマクロモノマー(a)と同様のものが好ましい。
【0072】
両親媒性ポリマー(I)の親水性部を形成する、マクロモノマー(a)以外の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば前述のモノマー(b)のなかから適宜選択でき、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、特にヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート、及び置換又は無置換の(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
両親媒性ポリマー(I)の親水性部は、(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位として、ヒドロキシ基、カルボキシ基、−(R
22O)
mR
21、−NR
24R
25等の親水基を有する(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位を含むことが好ましい。−(R
22O)
mR
21、−NR
24R
25は、それぞれ前記式(b−1)における−(R
22O)
mR
21、前記式(b−3)における−NR
24R
25と同様である。
前記親水基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート、前記式(b−1)で表される化合物及び前記式(b−3)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
前記親水基を有する(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位の含有量は、親水性部を構成する全構成単位の合計に対し、40質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
【0073】
両親媒性ポリマー(I)の親水性部は、親水性部の親水性を損なわない範囲で、親水基を有しない(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位をさらに含んでもよい。前記親水基を有しない(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば前記式(b−2)で表される化合物が挙げられる。
両親媒性ポリマー(I)の親水性部は、塗膜性能を損なわない範囲で、マクロモノマー(a)および(メタ)アクリル系モノマー以外の他のモノマーに由来する構成単位をさらに含んでもよい。他のモノマーとしては、例えば前述のモノマー(b)のなかから適宜選択できる。
【0074】
両親媒性ポリマー(I)に対する疎水性部の含有量は、両親媒性ポリマー(I)の全質量に対し、5〜90質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましく、30〜60質量%がさらに好ましい。疎水性部の含有量が上記範囲内であれば、形成される塗膜の防汚性がより優れる。
なお、両親媒性ポリマーの全質量は、疎水性部と親水性部との合計に等しい。
【0075】
[両親媒性ポリマーの好ましい態様(II)]
両親媒性ポリマーの好ましい別の態様として、以下の両親媒性ポリマー(II)が挙げられる。
両親媒性ポリマー(II):マクロモノマー(a)に由来する構成単位を含む親水性部と、マクロモノマー以外の(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位を含む疎水性部と、を含む両親媒性ポリマー。
【0076】
両親媒性ポリマー(II)の親水性部を形成するマクロモノマー(a)としては、前記マクロモノマー(a)の説明で、マクロモノマー(a)に由来する構成単位が両親媒性ポリマーの親水性部に含まれる場合に好ましいものとして挙げたマクロモノマー(a)と同様のものが好ましい。
【0077】
両親媒性ポリマー(II)の疎水性部を形成する、マクロモノマー(a)以外の(メタ)アクリル系モノマーとしては、前述のモノマー(b)のなかから適宜選択でき、(メタ)アクリレートが好ましい。
疎水性部は、(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位として、前述のヒドロキシ基、カルボキシ基、−(R
22O)
mR
21、−NR
24R
25等の親水基を有しない(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位を含むことが好ましい。
前記親水基を有しない(メタ)アクリル系モノマーとしては、前記式(b−2)で表される化合物が好ましい。
前記親水基を有しない(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位の含有量は、疎水性部を構成する全構成単位の合計に対し、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
【0078】
両親媒性ポリマー(II)の疎水性部は、疎水性部の疎水性を損なわない範囲で、前記親水基を有する(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位をさらに含んでもよい。
両親媒性ポリマー(II)の疎水性部は、塗膜性能を損なわない範囲で、(メタ)アクリル系モノマー以外のモノマー(b)に由来する構成単位をさらに含んでもよい。他のモノマーとしては、例えば前述のモノマー(b)のなかから適宜選択できる。
両親媒性ポリマー(II)における親水性部の含有量は、両親媒性ポリマー(II)の全質量に対し、10〜95質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましく、40〜70質量%がさらに好ましい。親水性部の含有量が上記範囲内であれば、形成される塗膜の防汚性がより優れる。
【0079】
<両親媒性ポリマーの特性>
両親媒性ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、5,000〜1,000,000が好ましく、10,000〜500,000がより好ましい。両親媒性ポリマーの重量平均分子量が前記範囲の下限値以上であれば、塗膜性能が優れる。重量平均分子量が前記範囲の上限値以下であれば、塗装性が優れる。
両親媒性ポリマーの重量平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを基準樹脂として測定される。
【0080】
<両親媒性ポリマーの製造方法>
本実施形態の両親媒性ポリマーは、例えば、下記のモノマー混合物を重合することにより製造できる。
【0081】
(1)モノマー混合物
モノマー混合物は、マクロモノマー(a)と、モノマー(b)とを含む。
マクロモノマー(a)は、ラジカル重合性基を有するマクロモノマーであることが好ましい。
前述の両親媒性ポリマー(I)または(II)を製造する場合は、モノマー(b)として、少なくとも(メタ)アクリル系モノマーが用いられ、必要に応じて、(メタ)アクリル系モノマー以外のモノマー(b)をさらに用いてもよい。
【0082】
モノマー混合物中のマクロモノマー(a)の含有量は、モノマー混合物の全質量(全モノマーの合計質量)に対し、5〜95質量%が好ましい。すなわち、両親媒性ポリマーは、マクロモノマー(a)を、全モノマーの合計質量に対して5〜95質量%(仕込み量)含むモノマー混合物を重合させて得られるものであることが好ましい。
両親媒性ポリマーが両親媒性ポリマー(I)である場合、マクロモノマー(a)の含有量は、モノマー混合物の全質量(全モノマーの合計質量)に対し、5〜90質量%がより好ましく、20〜70質量%がさらに好ましく、30〜60質量%が特に好ましい。
両親媒性ポリマーが両親媒性ポリマー(II)である場合、マクロモノマー(a)の含有量は、モノマー混合物の全質量(全モノマーの合計質量)に対し、10〜95質量%がより好ましく、30〜80質量%がさらに好ましく、40〜70質量%が特に好ましい。
マクロモノマー(a)の含有量が上記範囲内であれば、得られる両親媒性ポリマーを用いて形成される塗膜の防汚性がより優れる。
なお、マクロモノマー(a)とモノマー(b)との合計は100質量%である。
【0083】
両親媒性ポリマーが両親媒性ポリマー(I)である場合、モノマー混合物は、前記親水基を有する(メタ)アクリル系モノマーを含むことが好ましい。モノマー混合物中の前記親水基を有する(メタ)アクリル系モノマーの含有量は、マクロモノマー(a)以外のモノマーの合計質量に対し、40質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
両親媒性ポリマーが両親媒性ポリマー(II)である場合、モノマー混合物は、前記親水基を有しない(メタ)アクリル系モノマーを含むことが好ましい。モノマー混合物中の前記親水基を有しない(メタ)アクリル系モノマーの含有量は、マクロモノマー(a)以外のモノマーの合計質量に対し、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
【0084】
マクロモノマー(a)およびモノマー(b)はそれぞれ、公知の方法により製造したものを用いてもよく、市販のものを用いてもよい。
マクロモノマー(a)の製造方法としては、例えば、以下の方法(α1)、(α2)、(α3)、(α4)等が挙げられる。
(α1):構成単位(AA)を形成するモノマーを含むモノマー成分を、コバルト連鎖移動剤を用いて重合する方法。
(α2):構成単位(AA)を形成するモノマーを含むモノマー成分を、連鎖移動剤としてのα−メチルスチレンダイマー等のα置換不飽和化合物を用いて重合する方法。
(α3):構成単位(AA)を形成するモノマーを含むモノマー成分を重合し、得られたポリマーにラジカル重合性基を化学的に結合させる方法。
(α4):構成単位(AA)を形成するモノマーを含むモノマー成分を重合し、得られたポリマーを熱分解する方法。
モノマー成分は、必要に応じて、他の構成単位を形成するモノマーをさらに含んでもよい。
【0085】
方法(α1)〜(α4)において、モノマー成分の重合方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、水系分散重合法等が挙げられる。水系分散重合法としては、懸濁重合法、乳化重合法等が挙げられる。回収工程が簡便である点から、水系分散重合法が好ましく、懸濁重合法が特に好ましい。マクロモノマー(a)を懸濁重合法により製造すると、取扱いが容易である。
重合は、公知のラジカル重合開始剤を用いて、公知の方法で行えばよい。例えば、上記したモノマー成分をラジカル開始剤の存在下に60〜120℃の反応温度で4〜14時間反応させる方法が挙げられる。重合の際、方法(α1)および(α2)では、所定の連鎖移動剤が用いられる。方法(α3)および(α4)では、必要に応じて、連鎖移動剤を用いてもよい。
【0086】
ラジカル重合開始剤としては、公知のものを使用でき、例えば、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ化合物;過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、ラウリルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;等が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】
方法(α3)において、ポリマーにラジカル重合性基を化学的に結合させる方法としては、例えば、ハロゲン基を有するポリマーのハロゲン基を、ラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物で置換することにより製造する方法、酸基を有するビニル系モノマーとエポキシ基を有するビニル系ポリマーとを反応させる方法、エポキシ基を有するビニル系ポリマーと酸基を有するビニル系モノマーとを反応させる方法、水酸基を有するビニル系ポリマーとジイソシアネート化合物とを反応させ、イソシアネート基を有するビニル系ポリマーを得て、このビニル系ポリマーと水酸基を有するビニル系モノマーとを反応させる方法等が挙げられ、いずれの方法によって製造されても構わない。
マクロモノマー(a)の製造方法としては、製造工程数が少なく、連鎖移動定数の高い触媒を使用する点で、コバルト連鎖移動剤を用いる方法(α1)が好ましい。特に方法(α1)において前記モノマー成分の重合を懸濁重合法により行うことが好ましい。
なお、コバルト連鎖移動剤を用いて製造した場合のマクロモノマー(a)は、前記式(a2)の構造を有する。
【0088】
(2)モノマー混合物の重合
モノマー混合物の重合方法としては、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などの公知の重合方法が適用できる。両親媒性ポリマーの生産性、得られる両親媒性ポリマーを用いて形成される塗膜の塗膜性能の点で、溶液重合法が好ましい。
重合は、公知のラジカル重合開始剤を用いて、公知の方法で行えばよい。例えば、上記したモノマー混合物をラジカル開始剤の存在下に60〜120℃の反応温度で4〜14時間反応させる方法が挙げられる。重合の際、必要に応じて、連鎖移動剤を用いてもよい。
【0089】
ラジカル重合開始剤としては、公知のものを使用でき、例えば、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ化合物;過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、ラウリルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;等が挙げられる。
連鎖移動剤としては、公知のものを使用でき、例えば、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、チオグリコール酸オクチル等のチオグリコール酸エステル類、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン等が挙げられる。
溶液重合で用いられる溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルイソブチルケトン、酢酸n−ブチル、エチル3−エトキシプロピオネート等の一般の有機溶剤を使用する事ができる。
【0090】
<防汚塗料用樹脂組成物>
防汚塗料用樹脂組成物は両親媒性ポリマーを1種以上含む。さらに溶剤を含むことが好ましい。溶剤を含むと、塗工適性、形成される塗膜の耐水性、成膜性等がより優れる。
防汚塗料用樹脂組成物は、典型的には、形成される塗膜が海水等の水性液体に溶解しない非溶出型の樹脂組成物である。
【0091】
樹脂組成物中の両親媒性ポリマーの含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物の全質量に対し、5〜85質量%が好ましく、10〜80質量%がより好ましく、30〜75質量%がさらに好ましく、55〜75質量%が特に好ましい。両親媒性ポリマーの含有量が前記上限値以下であれば、耐水性、塗膜硬度等に優れる塗膜を得ることができる。両親媒性ポリマーの含有量が前記下限値以上であれば、VOC含有量の少ない樹脂組成物を容易に得ることができる。
【0092】
[溶剤]
溶剤としては、両親媒性ポリマーを溶解できるものであれば特に限定されない。
例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の一価アルコール類;エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、酢酸ブチル等のケトン類;メチルエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル(別名:メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールアセテート類;n−ペンタン、n−ヘキサン等の脂肪族系炭化水素類;トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族系炭化水素類;等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で、または2種以上を組合わせて用いることができる。
【0093】
樹脂組成物中の溶剤の含有量は、樹脂組成物の全質量に対し、15〜99質量%であることが好ましく、20〜90質量%がより好ましく、25〜75質量%がさらに好ましい。溶剤の含有量が前記下限値以上であれば、耐水性に優れる塗膜を得ることができる。溶剤の含有量が前記上限値以下であれば、VOC含有量の少ない樹脂組成物を容易に得ることができる。
【0094】
樹脂組成物は、他の成分(両親媒性ポリマー、両親媒性ポリマーの製造上不可避の成分、および溶剤以外の成分)をさらに含んでもよい。
他の成分の含有量は、両親媒性ポリマー100質量部に対して200質量部以下が好ましく、0質量部であってもよい。
【0095】
[防汚剤]
樹脂組成物は、他の成分として防汚剤を含んでもよい。
防汚剤としては、無機防汚剤、有機防汚剤等が挙げられ、要求性能に応じて1種または2種以上を適宜選択して使用することができる。
防汚剤としては、例えば、亜酸化銅、チオシアン銅、銅粉末等の銅系防汚剤、他の金属(鉛、亜鉛、ニッケル等)の化合物、ジフェニルアミン等のアミン誘導体、ニトリル化合物、ベンゾチアゾール系化合物、マレイミド系化合物、ピリジン系化合物等が挙げられる。これらは、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0096】
防汚剤として、より具体的には、4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリル、マンガニーズエチレンビスジチオカーバメイト、ジンクジメチルジチオカーバメート、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、ジンクエチレンビスジチオカーバメイト、ロダン銅、4,5−ジクロロ−2−nオクチル−3(2H)イソチアゾロン、N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N,N’−ジメチル−N’−フェニル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、2−ピリジンチオール−1−オキシド亜鉛塩、テトラメチルチウラムジサルファイド、Cu−10%Ni固溶合金、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、3−ヨード−2−プロピニールブチルカーバメイト、ジヨードメチルパラトリスルホン、ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート、フェニル(ビスピリジル)ビスマスジクロライド、2−(4−チアゾリル)−ベンゾイミダゾール、メデトミジン、ピリジン−トリフェニルボラン等が挙げられる。
【0097】
防汚剤は、上記の中でも、亜酸化銅、4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3カルボニトリル(以下、「防汚剤(1)」ともいう。)およびメデトミジンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
亜酸化銅と防汚剤(1)とを組み合わせる場合、配合比率(質量比)は、亜酸化銅/防汚剤(1)=80/20〜99/1が好ましく、90/10〜99/1がより好ましい。
亜酸化銅および防汚剤(1)のいずれか一方または両方と、これら以外の他の防汚剤とを組み合わせてもよい。
【0098】
樹脂組成物が防汚剤を含有する場合、樹脂組成物中の防汚剤の含有量は、特に制限されないが、両親媒性ポリマー100質量部に対し、10〜200質量部が好ましく、50〜150質量部がより好ましい。防汚剤の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、形成される塗膜の防汚効果がより優れる。防汚剤の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜物性が優れる。
【0099】
[他の樹脂]
樹脂組成物は他の成分として、両親媒性ポリマー以外の他の樹脂を含んでもよい。
他の樹脂としては熱可塑性樹脂(以下、単に熱可塑性樹脂ともいう。)が好ましい。樹脂組成物が熱可塑性樹脂を含むと、耐クラック性や耐水性等の塗膜物性が向上する。
熱可塑性樹脂の例としては、塩素化パラフィン;塩化ゴム、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン;ポリビニルエーテル;ポリプロピレンセバケート;部分水添ターフェニル;ポリ酢酸ビニル;(メタ)アクリル酸メチル系共重合体、(メタ)アクリル酸エチル系共重合体、(メタ)アクリル酸プロピル系共重合体、(メタ)アクリル酸ブチル系共重合体、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル系共重合体等のポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル;ポリエーテルポリオール;アルキド樹脂;ポリエステル樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、塩化ビニル−イソブチルビニルエーテル共重合体、塩化ビニル−イソプロピルビニルエーテル共重合体、塩化ビニル−エチルビニルエーテル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;シリコーンオイル;ワックス;ワックス以外の常温で固体の油脂、ひまし油等の常温で液体の油脂およびそれらの精製物;ワセリン;流動パラフィン;ロジン、水添ロジン、ナフテン酸、脂肪酸およびこれらの2価金属塩;等が挙げられる。ワックスとしては、例えば、蜜蝋等の動物由来のワックス;植物由来のワックス;アマイド系ワックス等の半合成ワックス;酸化ポリエチレン系ワックス等の合成ワックス等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
可塑剤として機能し、塗膜の耐クラック性や耐剥離性の向上効果が得られる点では、塩素化パラフィンが好ましい。
沈降防止剤やたれ防止剤として機能し、樹脂組成物の貯蔵安定性や顔料分散性の向上効果が得られる点では、半合成ワックス、合成ワックス等の有機系ワックスが好ましく、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリアマイドワックスがより好ましい。
【0100】
樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含有量は、特に制限されないが、両親媒性ポリマー100質量部に対し、0.1〜50質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、耐クラック性や耐水性などの塗膜物性がより優れ、前記範囲の上限値以下であれば、可撓性や吸水性がより優れる。
【0101】
樹脂組成物は、塗膜表面に潤滑性を付与し、生物の付着を防止する目的で、ジメチルポリシロキサン、シリコーンオイル等のシリコン化合物、フッ素化炭化水素等の含フッ素化合物等を含んでもよい。
【0102】
樹脂組成物は、各種の顔料、脱水剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤(例えば沈降防止剤)、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、スリップ剤、防腐剤、可塑剤、粘性制御剤等の添加剤を含んでもよい。
顔料としては、酸化亜鉛、タルク、シリカ、硫酸バリウム、カリ長石、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、マイカ、カーボンブラック、弁柄、酸化チタン、フタロシアニンブルー、カオリン、石膏等が挙げられる。特に、酸化亜鉛やタルクが好ましい。
脱水剤としては、シリケート系、イソシアネート系、オルソエステル系、無機系等が挙げられる。より具体的には、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、オルトホウ素エステル、オルト珪酸テトラエチル、無水石膏、焼石膏、合成ゼオライト(モレキュラーシーブ)等が挙げられる。防汚塗料組成物に脱水剤を含有させることによって水分を補足し、貯蔵安定性を向上させることができる。
【0103】
熱可塑性樹脂以外の沈降防止剤やたれ防止剤としては、ベントナイト系、微粉シリカ系、ステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩等が挙げられる。
【0104】
熱可塑性樹脂以外の可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤;アジピン酸イソブチル、セバシン酸ジブチル等の脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールアルキルエステル等のグリコールエステル系可塑剤;トリクレジルホスフェート(TCP)、トリアリールホスフェート、トリクロロエチルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤;エポキシ大豆油、エポキシステアリン酸オクチル等のエポキシ系可塑剤;ジオクチルすずラウリレート、ジブチルすずラウリレート等の有機すず系可塑剤;トリメリット酸トリオクチル、トリアセチレン等が挙げられる。防汚塗料組成物に可塑剤を含有させることによって塗膜の耐クラック性や耐剥離性を高めることができる。可塑剤としては、上記の中でも、TCPが好ましい。
【0105】
樹脂組成物のVOCの含有量は、420g/L以下が好ましく、400g/L以下がより好ましく、380g/L以下がさらに好ましい。
「VOC」とは、常温常圧で容易に揮発する有機化合物(揮発性有機化合物)を意味する。VOC含有量は、樹脂組成物の比重および加熱残分の値を用いて、下記式から算出される。VOC含有量は、溶剤の含有量により調整できる。
VOC含有量(g/L)=樹脂組成物の比重×1000×(100−加熱残分)/100
【0106】
樹脂組成物の比重は、25℃において、容量が100mLの比重カップに、樹脂組成物を満たし、質量を測定することにより算出される。
樹脂組成物の加熱残分(固形分)は、以下の方法により求められる。
測定試料(樹脂組成物)0.50gをアルミニウム製の皿に測りとり、トルエン3mLをスポイトで加えて皿の底に一様に広げ、予備乾燥を行う。予備乾燥は、測定試料を皿全体にのばし、本乾燥で溶剤を揮発させやすくするための処理である。予備乾燥では、70〜80℃の水浴上で測定試料およびトルエンを加熱溶解させ、蒸発乾固させる。予備乾燥後、105℃の熱風乾燥機で2時間の本乾燥を行う。測定試料の予備乾燥前の質量(乾燥前質量)と、本乾燥後の質量(乾燥後質量)とから、以下の式により加熱残分(固形分)を求める。
加熱残分(固形分)=乾燥後質量(g)/乾燥前質量(g)×100(%)
【0107】
樹脂組成物の加熱残分(固形分)は、45〜85質量%が好ましく、55〜80質量%がより好ましく、60〜75質量%がさらに好ましい。樹脂組成物の加熱残分が前記範囲の下限値以上であれば、VOC含有量が充分に低くなる。加熱残分が前記範囲の上限値以下であれば、樹脂組成物の粘度を低くしやすい。
【0108】
樹脂組成物の、25℃においてB型粘度計で測定される粘度は、5,000mPa・s未満が好ましく、4,000mPa・s未満がより好ましく、3,000mPa・s未満がさらに好ましく、2,000mPa・s未満が特に好ましい。樹脂組成物の粘度が前記上限値以下であれば、塗装しやすい。
樹脂組成物の粘度の下限は特に限定されないが、塗装時の塗料タレ抑制の点では、1,000mPa・s以上が好ましい。
樹脂組成物の粘度は、溶剤の添加量等によって調整できる。
【0109】
<防汚塗料用樹脂組成物の製造方法>
樹脂組成物の製造方法は特に限定されない。両親媒性ポリマーと任意の他の成分を混合して固体状の樹脂組成物としてもよく、両親媒性ポリマーと溶剤と任意の他の成分を混合して液状の樹脂組成物としてもよい。
液状の樹脂組成物はそのまま、または溶剤で希釈して防汚塗膜の製造に用いることができる。固体状の樹脂組成物は、溶剤と混合して防汚塗膜の製造に用いることができる。
【0110】
<塗膜>
樹脂組成物からなる塗膜(以下、単に塗膜ともいう)は、外表面の水中における平均面粗さ(Q)が1nm<(Q)<10nmである。該平均面粗さ(Q)は、実施例に記載の方法により測定される値であり、塗膜を水中に浸漬させ十分に膨潤させた状態で外表面に形成される凹凸の程度を表す。
前記平均面粗さ(Q)の下限は2nm以上が好ましく、3nm以上がより好ましく、3.5nm以上がさらに好ましく、4nm以上が特に好ましい。該平均面粗さ(Q)の上限は、9.9nm以下が好ましく、9.5nm下がより好ましい。
該平均面粗さ(Q)が上記の範囲内であると防汚性に優れる。例えば、付着期幼生(キプリス幼生)に対する防汚性に優れる。
【0111】
塗膜の水中における平均面粗さ(Q)は相分離構造によって調整できる。例えば表層近傍の吸水率が不均一となる組成では、平均面粗さ(Q)が大きくなる傾向があり、表層近傍の吸水率が類似となる組成では、平均面粗さ(Q)が小さくなる傾向がある。
例えば、両親媒性ポリマーが、マクロモノマー(a)に由来する構成単位を含む疎水性部と、モノマー(b)に由来する構成単位を含む親水性部とを含む場合、親水性部の親水性がより高くなるようにモノマー(b)を選択すると平均面粗さ(Q)が大きくなり、親水性部の親水性がより低くなるようにモノマー(b)を選択すると平均面粗さ(Q)が小さくなる傾向がある。
【0112】
塗膜を水中に浸漬したときに外表面に凹凸が形成される理由は、以下のように考えられる。
両親媒性ポリマーにおいて、疎水性部と親水性部とは非相溶である。そのため、両親媒性ポリマーを含む塗膜を形成する際に疎水性部と親水性部とを相分離させ、ミクロまたはナノ不均一構造を有する塗膜を得ることができる。ミクロまたはナノ不均一構造としては、例えば、海島構造、シリンダー構造、ラメラ構造、共連続構造等が挙げられる。
疎水性部からなる領域は、疎水性部と親水性部とが相分離せずに存在している領域に比べて、海水等の水性液体との親和性が低く、吸水率が低い。また、親水性部からなる領域は、疎水性部と親水性部とが相分離せずに存在している領域に比べて、海水等の水性液体との親和性が高く、吸水率が高い。疎水性部と親水性部からなる領域が塗膜の表面に存在することで、吸水率が不均一となり、塗膜を水中に浸漬させて十分に膨潤させた状態で外表面に凹凸が形成されると考えられる。
【0113】
塗膜の外表面の水中接触角は、120〜144°が好ましく、125〜142°がより好ましく、130〜140°がさらに好ましい。水中接触角が上記下限値以上であると、塗膜の外表面での水性液体との摩擦抵抗が充分に小さいため、塗膜を設けることによる摩擦低減効果が優れる。上記上限値を超えると、水性液体との摩擦抵抗が大きくなり、塗膜を設けることによる摩擦低減効果が充分に得られない可能性がある。
塗膜の外表面の水中接触角とは、塗膜を水中に浸漬した状態で、塗膜の外表面に触れた空気の接触角を意味する。水中接触角は、実施例に記載の方法により測定される。
塗膜の外表面の水中接触角は、両親媒性ポリマーの親水性部の割合等により調整できる。例えば両親媒性ポリマーの親水性部が多いほど、水中接触角が大きくなる傾向がある。
【0114】
塗膜の外表面の押し込み弾性率は、15〜2900MPaが好ましく、30〜2800MPaがより好ましく、35〜2700MPaがさらに好ましい。押し込み弾性率が上記下限値以上であると、塗膜表面のタック性が少ないため、取扱い性が良好となる。上記上限値以下であると、塗膜の形状追随製が良好となる。
塗膜の外表面の押し込み弾性率は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
塗膜の外表面の押し込み弾性率は、両親媒性ポリマーのガラス転移温度(Tg)等により調整できる。例えば両親媒性ポリマーのガラス転移温度(Tg)が大きいほど、押し込み弾性率が大きくなる傾向がある。
【0115】
塗膜の吸水率は、20%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましい。吸水率が上記下限値以上であれば、塗膜表面に流れが束縛された水の層が形成されやすく、塗膜を設けることによる摩擦低減効果が優れる。
塗膜の吸水率は、JIS K 7209:2000プラスチック−吸水率の求め方に準拠する測定方法で得られる値である。
塗膜の吸水率は、両親媒性ポリマーの親水性部の割合等により調整できる。例えば両親媒性ポリマーの親水性部が多いほど、吸水率が大きくなる傾向がある。
【0116】
塗膜は、ミクロ又はナノの不均一構造を有し、このミクロ又はナノの不均一構造に対応した凹凸が塗膜の表面に形成されていることが好ましい。
例えば樹脂組成物が溶剤を含む場合に、溶剤として、疎水性部および親水性部のいずれか一方と馴染みにくく、他方と馴染みやすい溶剤を用いることで、上記のような塗膜を形成できる。これは、塗膜を形成する際、溶剤と馴染みにくい部分が会合体を形成して構造が固定化され、溶剤と馴染みやすい部分は溶媒和により溶剤の揮発方向(上方)に突出していくことで、溶剤と馴染まない部分が凹部、溶剤と馴染みやすい部分が凸部になるためと考えられる。溶剤と疎水性部または親水性部との馴染みやすさは、SP値(溶解パラメータ)により判断できる。
【0117】
<防汚塗膜の製造方法>
防汚塗料用樹脂組成物を用いて塗膜を製造する方法は特に限定されず、公知の方法により行うことができる。例えば、樹脂組成物に、必要に応じて溶剤を加え、被塗装物の表面に、刷毛塗り、吹き付け塗り、ローラー塗り、沈漬塗り等の手段で塗布し、乾燥することにより塗膜を形成できる。
樹脂組成物の塗布後の乾燥は、通常、室温で行うことができ、必要に応じて加熱乾燥を行ってもよい。
【0118】
被塗装物としては、特に限定されず、例えば船舶、漁網、港湾施設、オイルフェンス、橋梁、水中構造物(海底基地等)等が挙げられる。
例えば海洋構造物や船舶において海水と接する部分に樹脂組成物を塗装して防汚塗膜を設けることで、この部分の海水による腐食や、航行速度低下の原因となる海中生物の付着を抑制できる。
被塗装物の表面に下地塗膜が設けられており、該下地塗膜の上に、樹脂組成物の塗膜を形成してもよい。下地塗膜は、例えばウオッシュプライマー、塩化ゴム系やエポキシ系等のプライマー、中塗り塗料等を用いて形成できる。
樹脂組成物の塗布量は、形成する塗膜の厚さに応じて設定される。
塗膜の厚さは特に限定されない。防汚や水性液体との摩擦低減の目的では、典型的には、10〜400μmである。
【0119】
本実施形態の樹脂組成物を用いて形成される塗膜は、外表面の水中における平均面粗さ(Q)が上記の範囲であり、防汚性に優れる。そのため、被塗装物の表面に本実施形態の樹脂組成物を用いて塗膜を形成することで、前記表面に優れた防汚性を付与することができる。
また、該塗膜の水中接触角が上記の範囲であると、該塗膜の表面と水性液体との摩擦抵抗を低減できる。例えば船舶の航行中に海水から摩擦抵抗を受ける部分に塗膜を形成することで、航行中の海水との摩擦抵抗が小さくなり、燃費の軽減や省エネルギー化が可能である。
【実施例】
【0120】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。以下において「部」は「質量部」を表す。
実施例中の評価は、以下に示す方法で行った。
【0121】
(水中における平均表面粗さ(Q))
走査型プローブ顕微鏡SPA−400(日立ハイテクノロジーズ社製、商品名)を用いて測定した。カンチレバーはSI−DF3(日立ハイテクノロジーズ社製、商品名)を使用し、塗膜の外表面の水中における形状像を観察した。測定範囲は1μm四方とし、得られた形状像から平均面粗さ(Ra)を算出し、得られた値を、「水中における平均面粗さ(Q)」とした。
【0122】
具体的には以下の手順で実施した。
評価対象の樹脂組成物を、乾燥後の厚さが200μm以上になるようにガラス基板上に塗工し、室温下で乾燥させて塗膜を形成した。得られた塗膜を12時間以上水中に浸漬させ、十分に吸水させた後、水中における形状の測定に供した。測定条件は、ダイナミック・フォース・モード、測定範囲は1μm四方とした。得られた形状像についてJIS B 0601(2001)に準拠する方法で算術平均面粗さ(Ra)を算出した。
【0123】
(水中接触角(captive bubble法による接触角))
評価対象の樹脂組成物を、76mm×26mm×1mm(厚さ)のスライドガラス上に、乾燥膜厚200μmになるように塗工し、室温下で乾燥させて塗膜を形成した。
塗膜の外表面の水中接触角測定は、自動接触角計DM−301(協和界面科学社製、商品名)を用い、水中で、塗膜の表面に気泡を接触させるcaptive bubble法を用いて行った。水中接触角が大きいほど、塗膜の外表面の親水性が高いことを意味する。
【0124】
(押し込み弾性率)
評価対象の樹脂組成物を、76mm×26mm×1mm(厚さ)のスライドガラス上に、乾燥膜厚200μmになるように塗工し、室温下で乾燥させて塗膜を形成した。
微小硬度計HM−2000(フィッシャーインストルメンツ社製、商品名)にて、ビッカース圧子、荷重7mN/100s、クリープ60s、R=0.4mN/100sの測定条件(「s」は秒、「R」はリリース速度を表す。)で、塗膜の押し込み弾性率を測定した。
【0125】
(付着率(防汚性の評価))
評価対象の樹脂組成物を、乾燥後の厚さが200μm以上になるようにアクリル板(5cm×5cm×1mm(厚さ))上にスピンコートし、室温下で乾燥させて塗膜を形成した。この塗膜をポリプロピレン容器(8cm×8cm×4.5cm(高さ))の底面に静置し、海水100mlと付着期幼生(キプリス幼生)100個体を投入した。室温22℃±2、横振とう(3cm往復60回分/分)により容器内の海水に動きを加えた状態に保持して、7日後に付着期幼生が塗膜に付着・変態した個体数(付着率)を実体顕微鏡下で計数した。投入した100個体に対する、塗膜に付着・変態した個体数の割合を、付着率(%)とした。付着率が低いほど防汚性に優れることを意味する。
【0126】
<製造例1:マクロモノマーの製造>
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水900部、メタクリル酸2−スルホエチルナトリウム60部、メタクリル酸カリウム10部及びメチルメタクリレート(MMA)12部を入れて撹拌し、重合装置内を窒素置換しながら、50℃に昇温した。その中に、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.08部を添加し、更に60℃に昇温した。昇温後、滴下ポンプを使用して、MMAを0.24部/分の速度で75分間連続的に滴下した。反応溶液を60℃で6時間保持した後、室温に冷却して、透明な水溶液である固形分10質量%の分散剤1を得た。
【0127】
次に、撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.1部及び分散剤1(固形分10質量%)0.25部を入れて撹拌し、均一な水溶液とした。次に、MMAを100部、連鎖移動剤としてビス[(ジフルオロボリル)ジフェニルグリオキシメイト]コバルト(II)を0.0016部及び重合開始剤として「パーオクタО」(登録商標)(1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、日油株式会社製)0.1部を加え、水性懸濁液とした。
次に、重合装置内を窒素置換し、80℃に昇温して4時間反応し、さらに重合率を上げるため、90℃に昇温して2時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、マクロモノマーを含む水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、脱水し、40℃で16時間乾燥して、マクロモノマー(MM1)を得た。このマクロモノマー(MM1)の数平均分子量は7200であった。
【0128】
<実施例1>
冷却管付フラスコに、マクロモノマー(MM1)50部、モノマー(b)として2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)(大阪有機化学工業(株)製)50部、及び溶剤としてメチルセロソルブ(関東化学(株)製、試薬特級)250部を含有するモノマー組成物を投入し、窒素バブリングにより内部を窒素置換した。次いで、モノマー組成物を加温して内温を70℃に保った状態で、ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、0.4部(和光純薬(株)、和光特級)をモノマー組成物に加えた後、4時間保持し、次いで80℃に昇温して1時間保持し、重合を完結させた。この後、重合反応物を室温まで冷却し、大量のジイソプロピルエーテル(純正化学(株))で再沈殿させた。再沈殿によって析出したポリマーを回収し、50℃及び50mmHg(6.67kPa)以下の条件で一晩真空乾燥して両親媒性ポリマーを得た。
【0129】
次に、両親媒性ポリマー25部とメチルセロソルブ75部をガラス容器に配合し、室温下で、スターラーで2時間撹拌して両親媒性ポリマーおよび溶剤を含む樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物について上記の方法で、水中における平均表面粗さ(Q)、水中接触角、押し込み弾性率、付着率を測定した。これらの結果を表1に示す(以下、同様)。
平均表面粗さ(Q)の測定において撮像した、塗膜の走査型プローブ顕微鏡像を
図1に示す。
【0130】
<実施例2〜4、比較例1〜2>
実施例1において、モノマー(b)を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を製造した。
表1に示したモノマーは以下のものである。
HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、東京化成工業(株)製。
HEAA:2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、KJケミカルズ(株)製。
ブレンマー350:ブレンマーPE350(商品名)、日油(株)製、ポリエチレングリコール−モノメタクリレート、エチレングリコールの連鎖が平均8個であるもの。
AcSi:アクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル、東京化成工業(株)製。
MMA:メタクリル酸メチル、三菱レイヨン(株)製。
【0131】
実施例1、2は、モノマー(b)としてヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを用いた例である。
実施例3は、モノマー(b)として第二級アミノ基含有ビニル化合物を用いた例である。
実施例4は、モノマー(b)としてオキシエチレン基を含有する(メタ)アクリレートを用いた例である。
比較例1は、マクロモノマー(a)に代えてMMAを用いた例である。
比較例2は、モノマー(b)としてオルガノシリル基含有ビニル化合物を用いた例である。
【0132】
【表1】
【0133】
塗膜の水中における平均面粗さ(Q)が1nm<(Q)<10nmの範囲内である実施例1〜4は、付着率が低く防汚性に優れることが確認された。
一方、塗膜の平均面粗さ(Q)が10nmである比較例1、および平均面粗さ(Q)が1nmである比較例2は、付着率が高く防汚性に劣ることが確認された。