(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に係る有機ケイ素化合物は、平均構造式(1)で表される。
【0015】
ここで、Xは、ポリフェニレンエーテル構造を含むn価の有機基を表し、R
1は、互いに独立して、非置換もしくは置換の炭素原子数1〜10のアルキル基、または非置換もしくは置換の炭素原子数6〜10のアリール基を表し、R
2は、互いに独立して、非置換もしくは置換の炭素原子数1〜10のアルキル基、または非置換もしくは置換の炭素原子数6〜10のアリール基を表し、R
7は、互いに独立して、重合性反応基を含有する一価炭化水素基を表し、A
1は、互いに独立して、単結合、またはヘテロ原子を含有する二価の連結基を表し、A
2は、互いに独立して、単結合、またはヘテロ原子を含まない、非置換もしくは置換の炭素原子数1〜20の二価炭化水素基を表し、mは、1〜3の数であり、pは、1〜10の数であり、qは、1〜10の数であり、n=p+qであり、nは、2〜20の数である。
【0016】
R
1およびR
2の炭素原子数1〜10のアルキル基としては、直鎖状、環状、分枝状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル基等の直鎖または分岐状アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
R
1およびR
2の炭素原子数6〜10のアリール基の具体例としては、フェニル、α−ナフチル、β−ナフチル基等が挙げられる。
また、これら各基の水素原子の一部または全部は、炭素原子数1〜10のアルキル基、F、Cl、Br等のハロゲン原子、シアノ基等で置換されていてもよく、そのような基の具体例としては、3−クロロプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、2−シアノエチル、トリル、キシリル基等が挙げられる。
【0017】
これらの中でも、R
1としては、加水分解性の観点から、炭素原子数1〜5の直鎖のアルキル基が好ましく、メチル、エチル基がより好ましく、メチル基がより一層好ましい。
一方、R
2としては、直鎖のアルキル基が好ましく、メチル、エチル基がより好ましく、メチル基がより一層好ましい。
また、mは、1〜3の整数であり、反応性の観点から2〜3が好ましく、3がより好ましい。
【0018】
上記A
1のヘテロ原子を含有する二価の連結基の具体例としては、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、アミノ結合(−NH−)、スルホニル結合(−S(=O)
2−)、ホスフィニル結合(−P(=O)OH−)、オキソ結合(−C(=O)−)、チオオキソ結合(−C(=S)−)、エステル結合(−C(=O)O−)、チオエステル結合(−C(=O)S−)、チオノエステル結合(−C(=S)O−)、ジチオエステル結合(−C(=S)S−)、炭酸エステル結合(−OC(=O)O−)、チオ炭酸エステル結合(−OC(=S)O−)、アミド結合(−C(=O)NH−)、チオアミド結合(−C(=S)NH−)、ウレタン結合(−OC(=O)NH−)、チオウレタン結合(−SC(=O)NH−)、チオノウレタン結合(−OC(=S)NH−)、ジチオウレタン結合(−SC(=S)NH−)、尿素結合(−NHC(=O)NH−)、チオ尿素結合(−NHC(=S)NH−)等が挙げられる。
これらの中でも、A
1としては、単結合、エーテル結合(−O−)、またはウレタン結合(−OC(=O)NH−)が好ましい。
【0019】
一方、A
2のヘテロ原子を含まない、非置換もしくは置換の炭素原子数1〜20の二価炭化水素基の具体例としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、イソプロピレン、テトラメチレン、イソブチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、トリデカメチレン、テトラデカメチレン、ペンタデカメチレン、ヘキサデカメチレン、へプタデカメチレン、オクタデカメチレン、ノナデカメチレン、エイコサデシレン基等のアルキレン基;シクロペンチレン、シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基;フェニレン、α−,β−ナフチレン基等のアリーレン基などが挙げられる。
これらの中でも、単結合、メチレン、エチレン、トリメチレン、オクタメチレン基が好ましく、単結合、メチレン、エチレン、トリメチレン基がより好ましく、エチレン、トリメチレン基がより一層好ましい。
【0020】
上記R
7の重合性反応基の具体例としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、スチリル基、ビニル基、炭素原子数3以上のアルケニル基、エポキシ基、マレイミド基等が挙げられる。
これらの中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、スチリル基、ビニル基、エポキシ基が好ましく、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0021】
式(1)におけるXは、ポリフェニレンエーテル構造を含むn価の連結基を表し、その中に直鎖状構造、分岐状構造、または架橋構造を有していてもよい。
一分子あたりのnの平均は2〜20であるが、2〜10が好ましく、2〜5がより好ましく、2がより一層好ましい。nが2未満であると加水分解性基および重合性反応基が不足することにより反応性に劣る。一方、nが20を超えると、反応点が多くなり過ぎるため、化合物の保存安定性が悪化したり、硬化物にクラックが発生しやすくなったりすることがある。
【0022】
式(1)におけるpは、R
7の重合性反応基を含有する一価炭化水素基の数を表し、qは、加水分解性基の数を表し、n=p+qである。
一分子あたりのpの平均は1〜10であるが、1〜5が好ましく、1〜2がより好ましく、1がより一層好ましい。pが1未満であると重合性反応基が不足することにより反応性に劣る。一方、pが10を超えると、反応点が多くなり過ぎるため、化合物の保存安定性が悪化したり、硬化物にクラックが発生しやすくなったりすることがある。
また、一分子あたりのqの平均は1〜10であるが、1〜5が好ましく、1〜2がより好ましく、1がより一層好ましい。qが1未満であると加水分解性基が不足することにより反応性に劣る。一方、qが10を超えると、反応点が多くなり過ぎるため、化合物の保存安定性が悪化したり、硬化物にクラックが発生しやすくなったりすることがある。
【0023】
上記Xとしては、ポリフェニレンエーテル構造を含むn価の連結基であれば特に限定されるものではないが、銅箔密着性および誘電特性を高めることを考慮すると、本発明では、特に、下記式で表される基が好適である。
【0025】
したがって、本発明の有機ケイ素化合物としては、平均構造式が式(2)で表されるものが好ましく、これらの化合物を用いることで、さらに良好な銅箔密着性および誘電特性が発揮される。
【0027】
これら式中、R
1、R
2、R
7、A
1、A
2およびmは、上記と同じ意味を表し、R
3は、互いに独立して、ハロゲン原子、非置換もしくは置換の炭素原子数1〜12のアルキル基、非置換もしくは置換の炭素原子数1〜12のアルコキシ基、非置換もしくは置換の炭素原子数1〜12のアルキルチオ基、または非置換もしくは置換の炭素原子数1〜12のハロアルコキシ基を表し、R
4は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、非置換もしくは置換の炭素原子数1〜12のアルキル基、非置換もしくは置換の炭素原子数1〜12のアルコキシ基、非置換もしくは置換の炭素原子数1〜12のアルキルチオ基、または非置換もしくは置換の炭素原子数1〜12のハロアルコキシ基を表し、bは、互いに独立して、1〜100の数であり、cは、0より大きく2未満の数であり、Zは、下記式(3)で表される連結基を表す。
【0029】
上記R
4は、上記と同じ意味を表し、Lは、単結合、または下記式(4)〜(11)から選ばれる連結基を表す。
【0031】
上記R
5は、互いに独立して、水素原子または炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、R
6は、互いに独立して炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、kは、1〜12の整数を表し、jは1〜1,000の数を表す。
【0032】
R
3およびR
4の炭素原子数1〜12のアルキル基としては、直鎖状、環状、分枝状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル等の直鎖または分岐状アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
R
3およびR
4の炭素原子数1〜12のアルコキシ基としては、直鎖状、環状、分枝状のいずれでもよく、その具体例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、n−ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、n−ノニルオキシ、n−デシルオキシ、n−ウンデシルオキシ、n−ドデシルオキシ基等の直鎖または分岐状アルコキシ基;シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ、シクロオクチルオキシ基等のシクロアルキルオキシ基が挙げられる。
また、これら各基の水素原子の一部または全部は、F、Cl、Br等のハロゲン原子、メルカプト基、シアノ基等で置換されていてもよく、そのような基の具体例としては、3−クロロプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、3−メルカプトプロピル、2−シアノエチル基等が挙げられる。
R
3およびR
4のハロゲン原子としては、F、Cl、Br等が挙げられる。
【0033】
これらの中でも、R
3としては、製造の容易性の観点から、メチル基、メトキシ基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一方、R
4としては、水素原子、メチル基、メトキシ基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0034】
また、bは、互いに独立して1〜100の数であるが、有機ケイ素化合物の銅箔密着性および誘電特性の観点から、3〜50が好ましく、5〜20がより好ましい。bが1より小さい場合には良好な銅箔密着性および誘電特性が得られない虞があり、bが100より大きい場合には、有機ケイ素化合物の有機樹脂への相溶性が悪化することがある。
【0035】
cは、0より大きく2未満の数であるが、有機ケイ素化合物の銅箔密着性の観点から、0.1〜1.9が好ましく、0.5〜1.5がより好ましく、0.7〜1.3がより一層好ましい。cが0である場合には重合性反応基を含有しないため、有機樹脂と反応せず、良好な銅箔密着性が得られない虞があり、cが2である場合には、加水分解性基を含有しないため、銅箔と反応せず、良好な銅箔密着性が得られない虞がある。
【0036】
さらに、本発明において、−A
1−A
2−基としては、単結合、式(12)または式(13)で表される基が好適であり、式(12)で表される基が特に好適である。
【0038】
上記aは、互いに独立して、1〜20の数を表し、Yは、互いに独立して、酸素原子または硫黄原子を表し、*は式(1)のXまたは式(2)のフェニレン基との結合部位を表す。
aは、互いに独立して1〜20の数であるが、製造の容易性の観点から、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。
Yは、互いに独立して酸素原子または硫黄原子であるが、製造の容易性の観点から、酸素原子が好ましい。
【0039】
本発明の有機ケイ素化合物の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、当該化合物を含む硬化性組成物の粘度等を適切な範囲として作業性を向上させるとともに、得られる硬化物に、十分な銅箔密着性および誘電特性を付与することを考慮すると、重量平均分子量500〜5万が好ましく、1,000〜2万がより好ましく、4,000〜1万がより一層好ましい。なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値である。
【0040】
なお、本発明の有機ケイ素化合物は、溶剤を含んだ状態で用いてもよい。
溶剤としては、式(1)で表される有機ケイ素化合物の溶解能を有していれば特に限定されるものではないが、溶解性および揮発性等の観点から、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤が好ましく、中でも、トルエン、キシレンがより好ましい。
溶剤の添加量は、式(1)で表される有機ケイ素化合物100質量部に対して、100〜20,000質量部が好ましく、200〜10,000質量部がより好ましい。
【0041】
上記式(1)で表される有機ケイ素化合物は、1分子中に複数の水酸基およびポリフェニレンエーテル構造を含む基を有する化合物と、上記水酸基と反応し得る官能基および重合性反応基を有する化合物と、イソシアネート基およびアルコキシシリル基を有する化合物(以下、イソシアネートシランという)とを反応させて得ることができる。
より具体的には、平均構造式(14)で表される、水酸基を有するポリフェニレンエーテル化合物の水酸基と、上記水酸基と反応し得る官能基および重合性反応基を有する化合物を、平均構造式(14)で表される化合物の水酸基が残るような量で反応させ、次いで、余剰の上記水酸基と、式(15)で表されるイソシアネートシランのイソシアネート基との間でウレタン結合を形成する反応を行う。
【0042】
【化15】
(式中、R
3、R
4、bおよびZは、上記と同じ。)
【0043】
【化16】
(式中、R
1、R
2、A
2およびmは、上記と同じ。)
【0044】
式(14)で表される水酸基を有するポリフェニレンエーテル化合物としては、市販品として入手可能であり、そのような市販品としては、例えば、(株)SABICイノベーティブプラスチックス製 PPO(商標)SA90−100、PPO(商標)レジンパウダー、noryl(商標)640−111や、それらの分配再配列処理により、分配再配列されたポリフェニレンエーテル化合物等が挙げられる。
【0045】
一方、式(15)で表されるイソシアネートシランの具体例としては、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルジメチルメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルジメチルエトキシシラン等が挙げられる。
これらの中でも、加水分解性の観点から、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランが好ましく、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0046】
水酸基と反応し得る官能基および重合性反応基を有する化合物が有する上記官能基としては、水酸基と選択的に反応する官能基であれば特に限定されるものではなく、例えば、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、メタンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基、イソシアネート基、イソチオシアネート基等が挙げられるが、カルボン酸ハロゲン化物、ハロゲン原子、イソシアネート基、イソチオシアネート基が好ましく、イソシアネート基がより好ましい。
【0047】
水酸基と反応し得る官能基および重合性反応基を有する化合物としては、特に限定されるものではなく、その具体例としては、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸無水物、メタクリロイルクロリド等のメタクリル基含有化合物;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸無水物、アクリロイルクロリド等のアクリル基含有化合物;p−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン等のスチリル基含有化合物;塩化アリル、塩化メタリル、塩化ブテニル、塩化ペンテニル、塩化ヘキセニル、塩化ヘプテニル、塩化オクテニル、塩化ノネニル等の塩化アルケニル化合物;臭化アリル、臭化メタリル、臭化ブテニル、臭化ペンテニル、臭化ヘキセニル、臭化ヘプテニル、臭化オクテニル、臭化ノネニル等の臭化アルケニル化合物;ヨウ化アリル、ヨウ化メタリル、ヨウ化ブテニル、ヨウ化ペンテニル、ヨウ化ヘキセニル、ヨウ化ヘプテニル、ヨウ化オクテニル、ヨウ化ノネニル等のヨウ化アルケニル化合物;エピクロロヒドリン等のハロゲン化アルキルおよびエポキシ基含有化合物;下記式(16)で表されるイソシアネート基および重合性反応基を有する化合物;アリルイソチオシアネート等のイソチオシアネート化合物などが挙げられる。
【0048】
【化17】
(式中、R
7およびA
2は、上記と同じ。)
【0049】
式(16)で表されるイソシアネート化合物の具体例としては、2−イソシアナトエチルアクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、アリルイソシアネート等が挙げられる。
【0050】
これらの中でも、反応性および入手容易性の観点から、メタクリロイルクロリド、アクリロイルクロリド、p−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、塩化アリル、塩化オクテニル、臭化アリル、エピクロロヒドリン、2−イソシアナトエチルアクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、アリルイソチオシアネートが好ましく、2−イソシアナトエチルアクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、アリルイソチオシアネートがより好ましく、2−イソシアナトエチルアクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートがより一層好ましい。
【0051】
平均構造式(14)で表される、水酸基を有するポリフェニレンエーテル化合物の水酸基と、上記水酸基と反応し得る官能基および重合性反応基を有する化合物との反応は、従来公知の一般的な方法で行うことができる。
例えば、塩基性化合物の存在下、メタクリロイルクロリド等のカルボン酸ハロゲン化物と脱塩反応して重合性反応基を導入する方法;塩基性化合物の存在下、p−クロロメチルスチレン、臭化アリル、エピクロロヒドリン等のハロゲン化化合物との求核置換反応による非対称エーテルの合成法(ウィリアムソン合成、ウィリアムソンエーテル合成);2−イソシアナトエチルメタクリラート、アリルイソチオシアネート等のイソ(チオ)シアネート基含有化合物との(チオ)ウレタン化反応などを採用できる。
【0052】
特に、ウィリアムソン合成法を用いる場合には、上記塩基性化合物としては、通常、ウィリアムソン合成法に用いられている各種の塩基性化合物を使用でき、式(14)で表される化合物の水酸基以外とは反応しないものであればいずれを使用してもよい。
具体的には、金属ナトリウム、金属リチウム等のアルカリ金属;金属カルシウム等のアルカリ土類金属;水素化ナトリウム、水素化リチウム、水素化カリウム、水素化セシウム等のアルカリ金属水素化物;水素化カルシウム等のアルカリ土類金属水素化物;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物およびその水溶液、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物およびその水溶液;カリウムターシャリーブトキシド、ナトリウムターシャリーブトキシド等のアルカリ金属およびアルカリ土類アルコキシド;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等のアルカリ金属およびアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属およびアルカリ土類炭酸水素塩;トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン等の3級アミンなどが挙げられる。
これらの中でも、反応効率の観点から、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物またはこれらの水溶液が好ましく、水酸化ナトリウムの水溶液がより好ましい。
【0053】
塩基性化合物の使用量は特に限定されるものではないが、エーテル化反応を十分進行させてハロゲン化化合物の残存を防止するとともに、塩基性化合物の過剰な残存を防止して得られる有機ケイ素化合物の保存安定性や諸特性を高めることを考慮すると、式(14)で表される化合物の水酸基1molに対し、塩基性化合物は0.5〜20molが好ましく、1〜10molがより好ましく、2〜8molがより一層好ましい。
【0054】
上記エーテル化反応では、用いる原料と反応しない溶媒を用いることができる。
その具体例としては、水;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒などが挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、反応効率の観点から、水、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフランが好ましく、水とトルエン混合溶媒、水とキシレンの混合溶媒がより好ましい。
【0055】
エーテル化反応時の反応温度は、特に限定されるものではないが、反応速度を適切にしつつ、ハロゲン化化合物の揮散を抑制することを考慮すると、25〜90℃が好ましく、40〜80℃が好ましく、50〜70℃がより一層好ましい。
また、エーテル化反応は、通常、大気圧下で行うが、上記原料の揮散抑制、反応速度向上等の目的で、加圧下で行ってもよい。
反応時間は特に制限されないが、通常10分〜24時間である。
【0056】
なお、上記エーテル化反応では、反応速度向上のため触媒を使用してもよい。
触媒としては、一般的にウィリアムソン合成法に用いられているものから、式(14)で表される化合物の水酸基以外とは反応しないものを適宜選択すればよい。
その具体例としては、12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ジベンゾ−18−クラウン−6等のクラウンエーテル;テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩等の4級アンモニウム塩;ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等のアルカリ金属ハロゲン化物などが挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、反応性および入手容易性の観点から、18−クラウン−6、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩、ヨウ化カリウムが好ましく、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩、ヨウ化カリウムがより好ましく、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩がより一層好ましい。
上記触媒は、相間移動触媒として作用、またはハロゲン化化合物を活性化し、反応速度を向上させることができる。
【0057】
上記触媒の使用量は触媒量であればよいが、式(14)で表される化合物とハロゲン化化合物の合計に対して、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。
【0058】
この場合、式(14)で表される化合物とハロゲン化化合物との反応割合としては、特に限定されるものではないが、式(14)で表される化合物の水酸基が残るような量で反応させ、次いで、余剰の上記水酸基と、式(15)で表されるイソシアネートシランのイソシアネート基との間でウレタン結合を形成する反応を行うことを考慮すると、式(14)で表される化合物の水酸基1molに対し、ハロゲン化化合物のハロゲン原子が0.1〜0.9molとなる割合が好ましく、0.2〜0.8molとなる割合がより好ましく、0.3〜0.7molとなる割合がより一層好ましい。
【0059】
また、式(14)で表される化合物の水酸基とイソ(チオ)シアネート基含有化合物との(チオ)ウレタン化反応を行う場合、式(14)で表される化合物とイソ(チオ)シアネート基含有化合物との反応割合としては、特に限定されるものではないが、式(14)で表される化合物の水酸基が残るような量で反応させ、次いで、余剰の上記水酸基と、式(15)で表されるイソシアネートシランのイソシアネート基との間でウレタン結合を形成する反応を行うことを考慮すると、式(14)で表される化合物の水酸基1molに対し、イソ(チオ)シアネート基含有化合物のイソ(チオ)シアネート基が0.1〜0.9molとなる割合が好ましく、0.2〜0.8molとなる割合がより好ましく、0.3〜0.7molとなる割合がより一層好ましい。
【0060】
また、上記(チオ)ウレタン化反応には、反応速度向上のため触媒を使用してもよい。
触媒としては、一般的に(チオ)ウレタン化反応で使用されているものから適宜選択すればよく、その具体例としては、ジブチルスズオキシド、ジオクチルスズオキシド、スズ(II)ビス(2−エチルヘキサノエート)、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート等が挙げられる。
触媒の使用量は触媒量であればよいが、通常、式(14)で表される化合物とイソ(チオ)シアネート基含有化合物の合計に対して0.001〜1質量%である。
【0061】
さらに、上記(チオ)ウレタン化反応には、用いる原料と反応しない溶媒を用いることができる。
その具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセタート等のエステル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒などが挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0062】
(チオ)ウレタン化反応時の反応温度は、特に限定されるものではないが、反応速度を適切にしつつ、アロファネート化等の副反応を抑制することを考慮すると、25〜90℃が好ましく、40〜80℃がより好ましい。
反応時間は特に制限されないが、通常10分〜24時間である。
【0063】
本発明においては、上記工程に基づいて式(14)で表される化合物の水酸基が残るように重合性反応基を導入した後、余剰の上記水酸基と、式(15)で表されるイソシアネートシランのイソシアネート基との間でウレタン結合を形成する反応を行う。
余剰の上記水酸基と、式(15)で表されるイソシアネートシランのイソシアネート基との間でウレタン結合を形成する反応においては、上記(チオ)ウレタン化反応時の触媒、溶媒、反応温度、反応時間等の反応条件を同様に用いることができる。
【0064】
余剰の上記水酸基と、式(15)で表されるイソシアネートシランのイソシアネート基との反応割合は、ウレタン化反応時の副生物を抑制するとともに、得られる有機ケイ素化合物の保存安定性や特性を高めることを考慮すると、余剰の上記水酸基1molに対し、式(15)で表されるイソシアネートシランのイソシアネート基が1〜1.2molとなる割合が好ましく、1〜1.1molとなる割合がより好ましい。
【0065】
本発明の硬化性組成物は、式(1)で表される有機ケイ素化合物を含む。
本発明の式(1)で表される有機ケイ素化合物は、当該有機ケイ素化合物の構造に由来し、従来の有機ケイ素化合物に比べ、これを含有する硬化性組成物を用いて得られる硬化物の銅箔密着性および誘電特性を向上させる。
本発明の硬化性組成物において、有機ケイ素化合物の含有量は、特に限定されるものでなないが、硬化性組成物中に、0.1〜10質量%程度が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。なお、有機ケイ素化合物が溶剤を含む場合、上記含有量は、溶剤を除いた不揮発分を意味する。
【0066】
また、本発明の硬化性組成物は、有機樹脂を含むものが好ましい。
有機樹脂としては、特に限定されるものではなく、その具体例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート類およびポリカーボネートブレンド、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、重合性反応基含有ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレンとポリフェニレンエーテルとのブレンド、セルロースアセテートブチレート、ポリエチレン樹脂等から用途等に応じて適宜選択すればよいが、高周波領域の電気信号を利用する電子機器に備えられるプリント配線板の基板材料として用いることを考慮すると、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、重合性反応基含有ポリフェニレンエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体またはこれらのブレンドが好ましい。
この場合、用いる有機樹脂に応じて適宜な硬化剤を配合してもよく、例えば、エポキシ樹脂を用いる場合にはイミダゾール化合物等の硬化剤や、重合性反応基含有ポリフェニレンエーテル樹脂を用いる場合には過酸化物等の硬化剤を配合することができる。
また、架橋成分として、例えばシアネートエステル化合物等を適宜配合してもよく、さらに、使用目的に応じて、接着性改良剤、紫外線吸収剤、保存安定性改良剤、可塑剤、充填剤、顔料等の各種添加剤を添加してもよい。
【実施例】
【0067】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、下記において、粘度は、B型回転粘度計による25℃における測定値であり、分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)測定により求めたポリスチレン換算の重量平均分子量であり、不揮発分は、アルミシャーレ上で105℃、3時間加熱乾燥後の加熱残量法による測定値である。
【0068】
[1]有機ケイ素化合物の合成
[実施例1−1]
有機ケイ素化合物1の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた200mLセパラブルフラスコに、PPO(商標)SA90−100((株)SABICイノベーティブプラスチックス製)16g、トルエン80g、ジオクチルスズジラウレート0.02gおよび3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシトルエン0.02gを仕込み、80℃に加熱した。その中に、2−イソシアナトエチルメタクリレート1.7gを滴下投入し、次いで3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン2.2gを滴下投入し、80℃にて2時間加熱撹拌した。IR測定により原料のイソシアネート基由来の吸収ピークが完全に消失し、代わりにウレタン結合由来の吸収ピークが生成したことを確認し、反応終了とした。
得られた反応生成物は、褐色透明液体であり、重量平均分子量4,900、粘度4.9mm
2/s、不揮発分23質量%であった。
得られた反応生成物は、重合性反応基がメタクリルオキシ基、加水分解性基がトリメトキシシリル基、重合性反応基:加水分解性基=50:50(モル比)に相当する。
【0069】
[実施例1−2]
有機ケイ素化合物2の合成
2−イソシアナトエチルメタクリレートの量を3.0gに、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランの量を0.4gに変更した以外は、実施例1−1と同様の手順で合成した。
得られた反応生成物は、褐色透明液体であり、重量平均分子量5,000、粘度5.5mm
2/s、不揮発分22質量%であった。
得られた反応生成物は、重合性反応基がメタクリルオキシ基、加水分解性基がトリメトキシシリル基、重合性反応基:加水分解性基=90:10(モル比)に相当する。
【0070】
[実施例1−3]
有機ケイ素化合物3の合成
2−イソシアナトエチルメタクリレートの量を0.3gに、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランの量を4.0gに変更した以外は、実施例1−1と同様の手順で合成した。
得られた反応生成物は、褐色透明液体であり、重量平均分子量5,300、粘度6.2mm
2/s、不揮発分25質量%であった。
得られた反応生成物は、重合性反応基がメタクリルオキシ基、加水分解性基がトリメトキシシリル基、重合性反応基:加水分解性基=10:90(モル比)に相当する。
【0071】
[実施例1−4]
有機ケイ素化合物4の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた200mLセパラブルフラスコに、PPO(商標)レジンパウダー((株)SABICイノベーティブプラスチックス製)40g、トルエン110g、ジオクチルスズジラウレート0.05gおよび3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシトルエン0.05gを仕込み、80℃に加熱した。その中に、2−イソシアナトエチルメタクリレート0.2gを滴下投入し、次いで3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン0.25gを滴下投入し、80℃にて2時間加熱撹拌した。その後、IR測定により原料のイソシアネート基由来の吸収ピークが完全に消失し、代わりにウレタン結合由来の吸収ピークが生成したことを確認し、反応終了とした。
得られた反応生成物は、褐色透明液体であり、重量平均分子量102,000、粘度1,200mm
2/s、不揮発分27質量%であった。
得られた反応生成物は、重合性反応基がメタクリルオキシ基、加水分解性基がトリメトキシシリル基、重合性反応基:加水分解性基=50:50(モル比)に相当する。
【0072】
[実施例1−5]
有機ケイ素化合物5の合成
特開2015−086329号公報の実施例『PPE−3』に記載の方法に基づき、noryl640−111((株)SABICイノベーティブプラスチックス製)の分配再配列により、分配再配列されたポリフェニレンエーテルを得た。
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた200mLセパラブルフラスコに、上記で得られた分配再配列されたポリフェニレンエーテル40g、トルエン110g、ジオクチルスズジラウレート0.05gおよび3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシトルエン0.05gを仕込み、80℃に加熱した。その中に、2−イソシアナトエチルメタクリレート10.6gを滴下投入し、次いで3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン13.9gを滴下投入し、80℃にて2時間加熱撹拌した。その後、IR測定により原料のイソシアネート基由来の吸収ピークが完全に消失し、代わりにウレタン結合由来の吸収ピークが生成したことを確認し、反応終了とした。
得られた反応生成物は、褐色透明液体であり、重量平均分子量6,200、粘度49mm
2/s、不揮発分30質量%であった。
得られた反応生成物は、重合性反応基がメタクリルオキシ基、加水分解性基がトリメトキシシリル基、重合性反応基:加水分解性基=50:50(モル比)に相当する。
【0073】
[実施例1−6]
有機ケイ素化合物6の合成
2−イソシアナトエチルメタクリレートを、2−イソシアナトエチルアクリレート1.5gに変更した以外は、実施例1−1と同様の手順で合成した。
得られた反応生成物は、褐色透明液体であり、重量平均分子量4,800、粘度4.5mm
2/s、不揮発分22質量%であった。
得られた反応生成物は、重合性反応基がアクリルオキシ基、加水分解性基がトリメトキシシリル基、重合性反応基:加水分解性基=50:50(モル比)に相当する。
【0074】
[実施例1−7]
有機ケイ素化合物7の合成
2−イソシアナトエチルメタクリレートを、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート2.6gに変更した以外は、実施例1−1と同様の手順で合成した。
得られた反応生成物は、褐色透明液体であり、重量平均分子量5,500、粘度6.2mm
2/s、不揮発分20質量%であった。
得られた反応生成物は、重合性反応基がアクリルオキシ基、加水分解性基がトリメトキシシリル基、重合性反応基:加水分解性基=67:33(モル比)に相当する。
【0075】
[実施例1−8]
有機ケイ素化合物8の合成
2−イソシアナトエチルメタクリレートを、アリルイソチオシアネート1.1gに変更した以外は、実施例1−1と同様の手順で合成した。
得られた反応生成物は、褐色透明液体であり、重量平均分子量4,500、粘度4.1mm
2/s、不揮発分21質量%であった。
得られた反応生成物は、重合性反応基がビニル基、加水分解性基がトリメトキシシリル基、重合性反応基:加水分解性基=50:50(モル比)に相当する。
【0076】
[実施例1−9]
有機ケイ素化合物9の合成
[第1段階]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた300mLセパラブルフラスコに、PPO(商標)SA90−100((株)SABICイノベーティブプラスチックス製)50g、トルエン130g、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩0.54g、3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシトルエン0.06gおよび30%水酸化ナトリウム水溶液54.1gを仕込み、60℃に加熱した。その中に、臭化アリル4.1gを滴下投入し、60℃にて6時間加熱撹拌した。その後、静置して二層分離した水層を分液し、中性となるまで有機層を水洗し、さらに、有機層を減圧濃縮(80℃、5mmHg)して揮発成分を除去し、重合性反応基としてビニル基が導入された化合物を褐色固体として得た。
【0077】
[第2段階]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた200mLセパラブルフラスコに、上記第1段階で得られたビニル基が導入された化合物16g、トルエン80g、ジオクチルスズジラウレート0.02gおよび3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシトルエン0.02gを仕込み、80℃に加熱した。その中に、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン2.2gを滴下投入し、80℃にて2時間加熱撹拌した。IR測定により原料のイソシアネート基由来の吸収ピークが完全に消失し、代わりにウレタン結合由来の吸収ピークが生成したことを確認し、反応終了とした。
得られた反応生成物は、褐色透明液体であり、重量平均分子量4,600、粘度2.7mm
2/s、不揮発分23質量%であった。
得られた反応生成物は、重合性反応基がビニル基、加水分解性基がトリメトキシシリル基、重合性反応基:加水分解性基=50:50(モル比)に相当する。
【0078】
[実施例1−10]
有機ケイ素化合物10の合成
臭化アリルを、p−クロロメチルスチレン5.2gに変更した以外は、実施例1−9と同様の手順で合成した。
得られた反応生成物は、褐色透明液体であり、重量平均分子量5,700、粘度3.8mm
2/s、不揮発分21質量%であった。
得られた反応生成物は、重合性反応基がスチリル基、加水分解性基がトリメトキシシリル基、重合性反応基:加水分解性基=50:50(モル比)に相当する。
【0079】
[実施例1−11]
有機ケイ素化合物11の合成
[第1段階]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた300mLセパラブルフラスコに、PPO(商標)SA90−100((株)SABICイノベーティブプラスチックス製)50g、トルエン130g、3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシトルエン0.06gおよびトリエチルアミン3.8gを仕込み、60℃に加熱した。その中に、メタクリロイルクロリド3.5gを滴下投入し、60℃にて6時間加熱撹拌した。その後、水150gを投入して反応を停止した。続いて、静置して二層分離した水層を分液し、中性となるまで有機層を水洗し、さらに、有機層を減圧濃縮(80℃、5mmHg)して揮発成分を除去し、重合性反応基としてメタクリルオキシ基が導入された化合物を褐色固体として得た。
【0080】
[第2段階]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた200mLセパラブルフラスコに、上記第1段階で得られたメタクリルオキシ基が導入された化合物16g、トルエン80g、ジオクチルスズジラウレート0.02gおよび3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシトルエン0.02gを仕込み、80℃に加熱した。その中に、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン2.2gを滴下投入し、80℃にて2時間加熱撹拌した。IR測定により原料のイソシアネート基由来の吸収ピークが完全に消失し、代わりにウレタン結合由来の吸収ピークが生成したことを確認し、反応終了とした。
得られた反応生成物は、褐色透明液体であり、重量平均分子量5,000、粘度3.0mm
2/s、不揮発分20質量%であった。
得られた反応生成物は、重合性反応基がメタクリルオキシ基、加水分解性基がトリメトキシシリル基、重合性反応基:加水分解性基=50:50(モル比)に相当する。
【0081】
[実施例1−12]
有機ケイ素化合物12の合成
臭化アリルを、エピクロロヒドリン3.1gに変更し、第1段階、第2段階における3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシトルエンを用いなかった以外は、実施例1−9と同様の手順で合成した。
得られた反応生成物は、褐色透明液体であり、重量平均分子量5,200、粘度2.9mm
2/s、不揮発分20質量%であった。
得られた反応生成物は、重合性反応基がエポキシ基、加水分解性基がトリメトキシシリル基、重合性反応基:加水分解性基=50:50(モル比)に相当する。
【0082】
[比較例1−1]
有機ケイ素化合物13の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた反応装置に、2官能性フェニレンエーテル樹脂(三菱ガス化学(株)製、OPE−1000)500g、ポリテトラメトキシシラン(多摩化学(株)製、Mシリケート51)447gを仕込み、90℃に加熱して融解混合し、均一溶液とした。その中に、触媒としてジブチルスズジラウレート0.22gを加え、90℃で15時間脱メタノール反応することで、対応する有機ケイ素化合物を得た。
【0083】
[比較例1−2]
有機ケイ素化合物14の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた反応装置に、2官能性フェニレンエーテル樹脂(三菱ガス化学(株)製、OPE−1000)71.8g、ポリメチルトリメトキシシラン(多摩化学工業(株)製、MTMS−A)45.3gを仕込み、90℃に加熱して融解混合し、均一溶液とした。その中に、触媒としてジブチルスズジラウレート0.02gを加え、90℃で15時間脱メタノール反応することで、対応する有機ケイ素化合物を得た。
【0084】
[2]硬化性組成物およびその硬化物品の調製
硬化性組成物およびその硬化物品を調製する際に用いる各成分について説明する。
[PPE]
・(株)SABICイノベーティブプラスチックス製 PPO(商標)SA9000(重合性反応基としてメタクリルオキシ基を含有するポリフェニレンエーテル樹脂)
[架橋剤]
・架橋剤1:新中村化学工業(株)製 DCP(トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート)
・架橋剤2:日本化成(株)製 TAIC(商標)(トリアリルイソシアヌレート)
[有機樹脂]
・有機樹脂1:Cray Valley製 Ricon156(ポリブタジエン)
・有機樹脂2:Cray Valley製 Ricon100(スチレン−ブタジエン共重合体)
[充填剤]
・(株)アドマテックス製 SC2300-SVJ(ビニルシランで表面処理された球状シリカ)
[硬化剤]
・日油(株)製 パーブチルP(1,3−ビス(ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、過酸化物)
[有機ケイ素化合物]
・有機ケイ素化合物:上記実施例1−1〜1−12、比較例1−1,1−2で得られた有機ケイ素化合物
【0085】
[実施例2−1]
PPEおよびトルエンを質量比で1:1となるように混合した後、混合溶液を80℃にて1時間加熱撹拌してPPEをトルエンに完全に溶解させ、その後25℃まで冷却することによってPPEの50質量%トルエン溶液を得た。
続いて、表1に記載の配合割合(質量部、ただし有機ケイ素化合物は不揮発分換算値)にしたがって、PPEの50質量%トルエン溶液(不揮発分換算値)、架橋剤、有機樹脂、充填剤、硬化剤および上記実施例1−1で得られた有機ケイ素化合物1を混合し、30分間撹拌して完全に溶解させ、ワニス状の硬化性組成物(樹脂ワニス)を得た。
続いて、得られた樹脂ワニスをガラスクロス(日東紡績(株)製、♯1078タイプ、WEA1078)に含浸後、120℃で3分間加熱乾燥してプリプレグを得た。この際、硬化後の厚みが60μm程度となるように調整した。
得られたプリプレグ1枚の両面を、銅箔(古河電気工業(株)製 GT−MP、厚さ12μm)に挟んで積層し、真空条件下、220℃で90分、圧力40kgf/cm
2の条件で加熱加圧することにより、硬化物品である評価基板1を得た。
また、上記で得られたプリプレグを12枚重ね、上記と同様の方法で加熱加圧することにより、硬化物品である評価基板2を得た。
【0086】
[実施例2−2〜2−12、および比較例2−1,2−2]
表1,2に示されるように、有機ケイ素化合物1を、実施例1−2〜1−12および比較例1−1〜1−2で得られた有機ケイ素化合物2〜14にそれぞれ変更した以外は、実施例2−1と同様にして硬化性組成物およびその硬化物品を作製した。
【0087】
[比較例2−3,2−4]
表2に示されるように、有機ケイ素化合物1を、比較例2−3としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越化学工業(株)製)、比較例2−4としてフェニルトリメトキシシラン(KBM−103、信越化学工業(株)製)にそれぞれ変更した以外は、実施例2−1と同様にして硬化性組成物およびその硬化物品を作製した。
【0088】
[比較例2−5]
表2に示されるように、有機ケイ素化合物1を用いなかった以外は、実施例2−1と同様にして硬化性組成物およびその硬化物品を作製した。
【0089】
上記の手順で調製された各評価基板1または2について、以下に示す方法により評価を行った。
[誘電特性]
アジレント・テクノロジー(株)製の「N5230A」を用い、空洞共振器摂動法にて10GHzにおける銅張積層板の比誘電率および誘電正接を測定した。銅張積層板としては、上記にて作製した評価基板2から銅箔を除去したものを用いた。結果を下記表1,2に併せて示す。
[銅箔密着強度]
銅張積層板表面の銅箔の引剥がし強さ(銅箔密着強度)を、JIS C 6481に準拠した方法で測定した。この際、幅20mm、長さ100mmの試験片上に、幅10mm、長さ100mmのパターンを形成し、引張試験機を用いて50mm/分の速度で銅箔を引剥がし、その際の引剥がし強さ(kN/m)を銅箔密着強度として評価した。結果を下記表1,2に併せて示す。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
表1,2に示されるように、実施例1−1〜1−12で得られた有機ケイ素化合物は、比較例1−1,1−2で得られた有機ケイ素化合物、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよびフェニルトリメトキシシランに比べ、銅箔密着性および比誘電率や誘電正接といった誘電特性に優れる硬化物を与えることがわかる。