特許第6907946号(P6907946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6907946酸無水物基を有するブロック共重合体水素化物及びその利用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6907946
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】酸無水物基を有するブロック共重合体水素化物及びその利用
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/00 20060101AFI20210708BHJP
   C08F 297/04 20060101ALI20210708BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20210708BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20210708BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20210708BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   C08C19/00
   C08F297/04
   C08L53/02
   C08K3/01
   C08K3/22
   C03C27/12 L
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-565524(P2017-565524)
(86)(22)【出願日】2017年1月27日
(86)【国際出願番号】JP2017003064
(87)【国際公開番号】WO2017135177
(87)【国際公開日】20170810
【審査請求日】2019年12月10日
(31)【優先権主張番号】特願2016-18251(P2016-18251)
(32)【優先日】2016年2月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】上村 春樹
(72)【発明者】
【氏名】小出 洋平
(72)【発明者】
【氏名】千葉 大道
(72)【発明者】
【氏名】小原 禎二
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−047350(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/069521(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/176258(WO,A1)
【文献】 特開昭63−109049(JP,A)
【文献】 特開2008−045074(JP,A)
【文献】 特開昭63−254119(JP,A)
【文献】 特開昭61−247646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C19/00−19/44
C08F8/00−8/50
C08F297/04
C08L53/00−53/02
C08K3/00−13/08
C03C27/12
B32B17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主成分とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位を主成分とする重合体ブロック(B)とからなり、
重合体ブロック(A)の全量がブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、重合体ブロック(B)の全量がブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときの、wAとwBとの比(wA:wB)が30:70〜55:45であるブロック共重合体の、
主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合及び芳香環の炭素−炭素不飽和結合の90%以上を水素化して得られるブロック共重合体水素化物に、
酸無水物基が導入されてなる変性ブロック共重合体水素化物。
【請求項2】
請求項1に記載の変性ブロック共重合体水素化物100重量部に、波長800〜2,000nmの範囲内のいずれかの領域の赤外線を遮蔽する機能を有する金属酸化物微粒子及び/又は近赤外線吸収色素の合計量で0.001〜2.0重量部を配合してなる樹脂組成物。
【請求項3】
赤外線を遮蔽する機能を有する金属酸化物微粒子が、酸化錫、アルミニウムドープ酸化錫、インジウムドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、錫ドープ酸化亜鉛、珪素ドープ酸化亜鉛、酸化チタン、ニオブドープ酸化チタン、酸化タングステン、ナトリウムドープ酸化タングステン、セシウムドープ酸化タングステン、タリウムドープ酸化タングステン、及び錫ドープ酸化インジウムからなる群より選択されるドープ酸化インジウムからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
赤外線を遮蔽する機能を有する近赤外線吸収色素が、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、イモニウム化合物、ジイモニウム化合物、ポリメチン化合物、ジフェニルメタン化合物、アントラキノン化合物、ペンタジエン化合物、アゾメチン化合物、及び6ホウ化ランタンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項2又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかに記載の樹脂組成物からなる樹脂シート。
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂シートをガラス板間に介在させ、ガラス板と当該樹脂組成物シートを含む積層物を接着させて一体化してなる合わせガラスであって、波長800〜2000nmの範囲内のいずれかの領域に、光線透過率が50%以下の領域を有し、波長550nmでの光線透過率が60%以上であることを特徴とする合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸無水物基を有するブロック共重合体水素化物、前記酸無水物基を有するブロック共重合体水素化物を含む樹脂組成物、前記樹脂組成物からなるシート、及び、前記樹脂シートを接着剤を介してガラス板間に介在させ、ガラス板と当該樹脂シートを含む積層物を接着一体化してなる合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
熱線遮蔽機能を有する合わせガラスは、熱線の入射を防ぎ、夏場の冷房効果を高め、省エネルギー化にも効果があるため、自動車の窓ガラスや建築物の窓ガラス等として有用である(特許文献1〜3)。
【0003】
従来、熱線遮蔽機能を有する合わせガラスとしては、(a)熱線反射膜として、蒸着、スパッタリング加工等によって、ガラス板の表面に金属/金属酸化物の多層コーティングが施された構造のもの、(b)熱線反射膜として、金属/金属酸化物の多層コーティングが施された透明フィルムを、接着剤を介してガラス板間に挟み込んだ構造のもの、(c)赤外線を反射又は吸収する金属微粒子、金属酸化物微粒子及び/又は近赤外線を吸収する色素を含有させた樹脂組成物からなるシート(樹脂組成物シート)をガラス板間に挟み込んだ構造のもの、等が知られている。
これらの内、(a)、(b)の、熱線反射膜を基材に蒸着、スパッタリング加工等によって形成する方法は、製品が高価になり工業的に有利ではない。一方、(c)の、熱線遮蔽機能を有する樹脂組成物シートを使用する方法は、樹脂組成物シートを溶融押出し法等で連続的に生産でき、また、その樹脂組成物シートを、接着剤を介してガラス板間に挟み込んだ合わせガラスも、通常の合わせガラス製造工程で生産できる点で量産性に優れ、工業的に有利である。
【0004】
前記(c)の方法に関するものとして、特許文献4には、ポリビニルアセタール樹脂(以下、「PVB」ということがある。)に、熱線遮蔽機能を有する金属酸化物微粒子を含有してなる合わせガラス用中間膜が開示されている。また、特許文献5、6には、PVBに近赤外線の領域の光を吸収する色素を配合してなる合わせガラス用中間膜が開示されている。
【0005】
しかし、これらの文献に記載の中間膜は、吸湿性の高いPVBを使用するものであるため、この中間膜を用いて貼り合わせた合わせガラスは、高温高湿環境下で使用したり、長期間使用したりした場合において、ガラスの端部から水分が浸透し、周辺部分に白化が生じ易く、周辺部はガラスとの接着性も低下するなど、耐久性が必ずしも十分なものとは言えなかった。また、PVBを使用した中間膜は、ガラスとの接着性を制御するために、ガラスと貼り合わせる前に中間膜中の含水率を厳密に調節しなければならないという製造上の問題もあった(非特許文献1)。
【0006】
また、特許文献7には、PVB、(メタ)アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、アイオノマー樹脂等の、水酸基の含有割合が少ない熱可塑性樹脂中に、近赤外線を吸収する有機色素を分散させた樹脂組成物からなる中間膜を用いることにより、遮熱性を長期間にわたり維持できる、耐久性に優れた合わせガラスが開示されている。
しかしながら、この文献に開示されている樹脂組成物からなる中間膜であっても、必ずしも十分な耐久性を有しているものとは言えない場合があった。
【0007】
一方、特許文献8には、酸無水物基を含有する水素化芳香族ポリマーは、優れた靱性及び高い熱変形温度をもつことが開示されている。また、この特許文献には、ガラス繊維等の繊維状無機フィラーを配合した組成物も記載されている。
しかしながら、この文献には、靱性、熱変形温度及び高温下での物性の維持を目的とすることは記載されているが、熱線遮蔽機能を有する金属酸化物微粒子を高度に分散させ得るかどうかに関しては記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭56−32352号公報
【特許文献2】特開昭63−134232号公報
【特許文献3】特開平7−157344号公報
【特許文献4】特開2001−302288号公報
【特許文献5】特開2012−66954号公報
【特許文献6】特開2013−209234号公報
【特許文献7】特開2011−42552号公報
【特許文献8】WO01/070833号(US2002/0002233A1)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】藤崎靖之、日化協月報、35(10)、28(1982)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、優れた遮熱機能を有し、かつ、耐湿性及び耐久性に優れた合わせガラスの中間膜形成材料として好適な樹脂組成物、この樹脂組成物からなる樹脂シート、及び、前記樹脂シートを、接着剤を介してガラス板間に介在させ、ガラス板と当該樹脂組成物シートを含む積層物を接着一体化してなる合わせガラスを提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した。その結果、特定のブロック共重合体水素化物に酸無水物基が導入された変性ブロック共重合体水素化物に、赤外線を遮蔽する機能を有する金属酸化物微粒子及び/又は近赤外線吸収色素を特定量配合してなる樹脂組成物は透明性が優れること、及び、当該樹脂組成物からなるシートを、接着剤を介してガラス板間に介在させ、接着一体化してなる合わせガラスは、優れた熱線反射機能を有し、かつ、耐湿性及び耐久性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
かくして本発明によれば、下記(1)の酸無水物基が導入された変性ブロック共重合体水素化物(E)、(2)〜(4)の樹脂組成物、(5)の前記樹脂組成物からなる樹脂シート、(6)の前記樹脂シートを使用した合わせガラスが提供される。
(1)少なくとも2つの、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主成分とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位を主成分とする重合体ブロック(B)とからなり、
重合体ブロック(A)の全量がブロック共重合体(C)全体に占める重量分率をwAとし、重合体ブロック(B)の全量がブロック共重合体(C)全体に占める重量分率をwBとしたときの、wAとwBとの比(wA:wB)が30:70〜55:45であるブロック共重合体(C)の、
主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合及び芳香環の炭素−炭素不飽和結合の90%以上を水素化して得られるブロック共重合体水素化物(D)に、
酸無水物基が導入されてなる変性ブロック共重合体水素化物(E)。
(2)前記(1)記載の変性ブロック共重合体水素化物(E)100重量部に、波長800〜2,000nmの範囲内のいずれかの領域の赤外線を遮蔽する機能を有する、金属酸化物微粒子及び/又は近赤外線吸収色素を、これらの合計量で0.001〜2.0重量部を配合してなる樹脂組成物(EC)。
ここで、「金属酸化物微粒子及び/又は近赤外線吸収色素」とは、「金属酸化物微粒子」、「近赤外線吸収色素」、「金属酸化物微粒子及び近赤外線吸収色素」のいずれかの態様を表す(以下にて同じ)。
(3)赤外線を遮蔽する機能を有する金属酸化物微粒子が、酸化錫、アルミニウムドープ酸化錫、インジウムドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、錫ドープ酸化亜鉛、珪素ドープ酸化亜鉛、酸化チタン、ニオブドープ酸化チタン、酸化タングステン、ナトリウムドープ酸化タングステン、セシウムドープ酸化タングステン、タリウムドープ酸化タングテン、及び、錫ドープ酸化インジウムからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする(2)記載の樹脂組成物(EC)。
【0013】
(4)赤外線を遮蔽する機能を有する近赤外線吸収色素が、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、イモニウム化合物、ジイモニウム化合物、ポリメチン化合物、ジフェニルメタン化合物、アントラキノン化合物、ペンタジエン化合物、アゾメチン化合物、及び6ホウ化ランタンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする(2)又は(3)に記載の樹脂組成物(EC)。
(5)前記(2)〜(4)のいずれかに記載の樹脂組成物(EC)からなる樹脂シート(ES)。
(6)前記(5)に記載の樹脂シート(ES)をガラス板間に介在させ、ガラス板と当該樹脂シート(ES)を含む積層物を接着させて一体化してなる合わせガラスであって、波長800〜2000nmの範囲内のいずれかの領域に、光線透過率が50%以下の領域を有し、波長550nmでの光線透過率が60%以上であることを特徴とする合わせガラス(EG)。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、新規な酸無水物基を有するブロック共重合体水素化物(E)、この酸無水物基を有するブロック共重合体水素化物を含む、優れた遮熱機能を有し、かつ、耐湿性及び耐久性に優れた合わせガラスの中間膜形成材料として好適な樹脂組成物(EC)、この樹脂組成物(EC)からなる樹脂シート(ES)、及び、樹脂シート(ES)を、接着剤を介してガラス板間に介在させ、ガラス板と当該樹脂組成物シートを含む積層物を接着一体化してなる合わせガラスが提供される。
本発明の合わせガラス(EG)は、従来の熱線遮蔽機能を有する合わせガラスの問題点、即ち、耐湿性及び耐久性の問題を解決し、実用面においても濁りが少なく、優れた外観特性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を、(1)変性ブロック共重合体水素化物(E)、(2)樹脂組成物(EC)、(3)樹脂組成物(EC)からなる樹脂シート(ES)、(4)樹脂シート(ES)を積層した合わせガラス(EG)に項分けして、詳細に説明する。
【0016】
(1)変性ブロック共重合体水素化物(E)
本発明の変性ブロック共重合体水素化物(E)は、ブロック共重合体(C)の、主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合及び芳香環の炭素−炭素不飽和結合の90%以上を水素化して得られるブロック共重合体水素化物(D)に、酸無水物基が導入されてなる高分子である。
【0017】
〔ブロック共重合体(C)〕
ブロック共重合体(C)は、少なくとも2つの、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主成分とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位を主成分とする重合体ブロック(B)とからなり、
重合体ブロック(A)の全量が、ブロック共重合体(C)全体に占める重量分率をwAとし、重合体ブロック(B)の全量が、ブロック共重合体(C)全体に占める重量分率をwBとしたときの、wAとwBとの比(wA:wB)が30:70〜55:45である高分子である。
【0018】
重合体ブロック(A)は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)を主成分とする重合体ブロックである。
重合体ブロック(A)中の、構造単位(a)の含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。重合体ブロック(A)中の構造単位(a)の含有量が少な過ぎると、樹脂組成物(EC)の耐熱性が低下するおそれがある。
【0019】
重合体ブロック(A)は、構造単位(a)以外の成分を含有していてもよい。他の成分としては、鎖状共役ジエン由来の構造単位(b)及び/又はその他のビニル化合物由来の構造単位(以下、「構造単位(j)」ということがある。)が挙げられる。
その含有量は、重合体ブロック(A)に対し、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。
重合体ブロック(A)中の構造単位(b)及び/又は構造単位(j)の含有量が多くなり過ぎると、樹脂組成物(EC)の耐熱性が低下するおそれがある。
ブロック共重合体(C)に含まれる複数の重合体ブロック(A)同士は、上記の範囲を満足するものであれば、互いに同一であっても、相異してもよい。
【0020】
重合体ブロック(B)は、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位(b)を主成分とする重合体ブロックである。
重合体ブロック(B)中の、構造単位(b)の含有量は、通常70重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
重合体ブロック(B)中の、構造単位(b)の含有量が上記範囲にあると、樹脂組成物(EC)は柔軟性を有し、成形した樹脂シート(ES)をガラス板間に積層した合わせガラス(EG)は耐熱衝撃性や耐貫通性が良好であるため好ましい。
【0021】
重合体ブロック(B)は、構造単位(b)以外の成分を含有していてもよい。他の成分としては、芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)及び/又はその他のビニル化合物由来の構造単位(j)が挙げられる。
その含有量は、重合体ブロック(B)に対して、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
重合体ブロック(B)中の、構造単位(a)及び/又は構造単位(j)の含有量があまりに多いと、樹脂組成物(EC)の柔軟性が損なわれ、成形した樹脂シート(ES)を中間膜に使用した場合、得られる合わせガラス(EG)の耐熱衝撃性や耐貫通性が損なわれるおそれがある。
ブロック共重合体(C)が重合体ブロック(B)を複数有する場合、重合体ブロック(B)同士は、互いに同一であっても、相異なっていてもよい。
【0022】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン; α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン等の置換基として炭素数1〜6のアルキル基を有するスチレン類;4−メトキシスチレン等の置換基として炭素数1〜6のアルコキシ基を有するスチレン類;4−フェニルスチレン等の置換基としてアリール基を有するスチレン類;1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン等のビニルナフタレン類;等が挙げられる。これらの中でも、吸湿性の観点から、スチレン、置換基として炭素数1〜6のアルキル基を有するスチレン類等の、極性基を含有しない芳香族ビニル化合物が好ましく、工業的な入手の容易さから、スチレンが特に好ましい。
【0023】
鎖状共役ジエン系化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。これらの中でも、吸湿性の観点から、極性基を含有しない鎖状共役ジエン系化合物が好ましく、工業的な入手の容易さから、1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
【0024】
その他のビニル系化合物としては、鎖状ビニル化合物、環状ビニル化合物、不飽和の環状酸無水物、不飽和イミド化合物等が挙げられる。これらの化合物は、ニトリル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。これらの中でも、吸湿性の観点から、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン等の炭素数2〜20の鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキサン、ノルボルネン等の炭素数5〜20の環状オレフィン;1,3−シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン化合物;等の、極性基を含有しないものが好ましい。
【0025】
ブロック共重合体(C)は、少なくとも2個の重合体ブロック(A)と少なくとも1個の重合体ブロック(B)からなる。ブロック共重合体(C)中の重合体ブロック(A)の数は、通常3個以下、好ましくは2個であり、ブロック共重合体(C)中の重合体ブロック(B)の数は、通常2個以下、好ましくは1個である。
ブロック共重合体(C)中の重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)の数が多くなると、ブロック共重合体(C)を水素化して得られるブロック共重合体水素化物(D)において、重合体ブロック(A)由来の水素化重合体ブロック(以下、「水素化重合体ブロック(A)」ということがある。)と重合体ブロック(B)由来の水素化重合体ブロック(以下、「水素化重合体ブロック(B)」ということがある。)との相分離が不明瞭になり、水素化重合体ブロック(A)に基づく高温側のガラス転位温度(以下、「Tg」ということがある。)が低下して、本発明の樹脂組成物(F)の耐熱性が低下するおそれがある。
【0026】
ブロック共重合体(C)のブロックの形態は、特に限定されず、鎖状型ブロックでもラジアル型ブロックでもよいが、鎖状型ブロックであるのが、機械的強度に優れ好ましい。
ブロック共重合体(C)の最も好ましい形態は、重合体ブロック(B)の両端に重合体ブロック(A)が結合したトリブロック共重合体(A)−(B)−(A)、及び重合体ブロック(A)の両端に重合体ブロック(B)が結合し、更に、該両重合体ブロック(B)の他端にそれぞれ重合体ブロック(A)が結合したペンタブロック共重合体(A)−(B)−(A)−(B)−(A)である。
【0027】
また、重合体ブロック(A)の全量がブロック共重合体(C)に占める重量分率をwAとし、重合体ブロック(B)の全量がブロック共重合体(C)に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)は、30:70〜55:45、好ましくは35:65〜53:47、より好ましくは40:60〜50:50である。
wAが多過ぎる場合は、得られる樹脂組成物の耐熱性が高くなるが、柔軟性が低く、樹脂組成物からなる樹脂シートを中間膜の材料として使用した合わせガラスでは、低温熱衝撃でガラスが割れ易くなる。一方、wAが少な過ぎる場合は、樹脂組成物の耐熱性が低下するおそれがある。
【0028】
ブロック共重合体(C)の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常40,000〜200,000、好ましくは45,000〜150,000、より好ましくは50,000〜100,000である。また、ブロック共重合体(C)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下である。Mw及びMw/Mnが上記範囲となるようにすると、本発明に係る樹脂組成物(EC)及び/又はそれからなるシート(ES)は、耐熱性や機械的強度が良好となる。
【0029】
ブロック共重合体(C)の製造方法は、特に限定されない。例えば、WO2003/018656号パンフレット、WO2011/096389号パンフレット、等に記載の方法を採用することができる。
【0030】
〔ブロック共重合体水素化物(D)〕
ブロック共重合体水素化物(D)は、上記のブロック共重合体(C)の主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合、並びに、芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化したものである。その水素化率は通常90%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上である。
水素化率が高いほど、成形体の耐候性、耐熱性及び透明性が良好である。
ブロック共重合体水素化物(D)の水素化率は、ブロック共重合体水素化物(D)のH−NMRを測定することにより求めることができる。
【0031】
不飽和結合の水素化方法や反応形態等は特に限定されず、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を高くでき、重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましい。このような水素化方法としては、例えば、WO2011/096389号パンフレット、WO2012/043708号パンフレット等に記載された方法を挙げることができる。
【0032】
水素化反応終了後においては、水素化触媒、又は水素化触媒及び重合触媒を反応溶液から除去した後、得られた溶液からブロック共重合体水素化物(D)を回収することができる。回収されたブロック共重合体水素化物[D]の形態は限定されるものではないが、通常はペレット形状にして、その後の酸無水物基の導入反応に供することができる。
【0033】
ブロック共重合体水素化物(D)の分子量は、THFを溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常40,000〜200,000、好ましくは45,000〜150,000、より好ましくは50,000〜100,000である。また、ブロック共重合体水素化物(D)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下にする。Mw及びMw/Mnが上記範囲となるようにすると、本発明の樹脂組成物の耐熱性や機械的強度が良好となる。
【0034】
〔変性ブロック共重合体水素化物(E)〕
本発明の変性ブロック共重合体水素化物(E)は、上記ブロック共重合体水素化物(D)に、酸無水物基が導入された高分子である。
本発明の変性ブロック共重合体水素化物(E)を得る方法は、特に限定されない。例えば、上記ブロック共重合体水素化物(D)に、有機過酸化物の存在下で、不飽和カルボン酸無水物をグラフト化反応させて、酸無水物基を導入することにより、得ることができる。
ブロック共重合体水素化物(D)に酸無水物基を導入することにより、金属酸化物微粒子を配合した樹脂組成物中の金属酸化物微粒子の分散性を高めることができる。
【0035】
グラフト化反応に使用する不飽和カルボン酸無水物としては、ブロック共重合体水素化物(D)とグラフト化反応して、ブロック共重合体水素化物(D)に酸無水物基を導入するものであれば、特に限定されない。
【0036】
不飽和カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、アリルコハク酸無水物、2−フェニルマレイン酸無水物、cis−アコニット酸無水物等が挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、無水マレイン酸、無水イタコン酸、及び5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物が好適に用いられる。これらの不飽和カルボン酸無水物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
グラフト化反応に使用する有機過酸化物としては、1分間半減期温度が170〜190℃のものが好ましく使用される。
有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシド、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等が好適に用いられる。
これらの過酸化物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
ブロック共重合体水素化物(D)への酸無水物基の導入量は、通常、ブロック共重合体水素化物(D)100重量部に対し、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜7重量部、より好ましくは0.3〜4重量部である。
酸無水物基の導入量が多過ぎると、得られる変性ブロック共重合体水素化物(E)の吸湿性が高くなり、機能性素子を積層した合わせガラス等の用途によっては金属部品や機能性素子等の腐食が起こる等の問題が生じ易くなる。一方、酸無水物基の導入量が少な過ぎると、変性ブロック共重合体水素化物(E)に配合する赤外線を遮蔽する機能を有する金属酸化物微粒子の分散性の改善効果が小さく、成形品のヘイズが十分小さくならない。
酸無水物基が導入されたことは、IRスペクトルで確認することができる。また、その導入量は、IRスペクトルの吸光度から算出することができる。
【0039】
グラフト化反応に使用する不飽和酸無水物の量は、ブロック共重合体水素化物(D)100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜7重量部、より好ましくは0.3〜4重量部である。同時に使用する過酸化物の量は、ブロック共重合体水素化物(D)100重量部に対して、通常0.05〜2重量部、好ましくは0.1〜1重量部、より好ましくは0.2〜0.5重量である。
【0040】
ブロック共重合体水素化物(D)と不飽和カルボン酸無水物とを、過酸化物の存在下で反応させる方法は、特に限定されない。例えば、ブロック共重合体水素化物(D)、不飽和カルボン酸無水物及び過酸化物からなる混合物を、二軸混練機にて溶融状態で所望の時間混練することにより、ブロック共重合体水素化物(D)に酸無水物基を導入することができる。
【0041】
二軸混練機による混練温度は、通常180〜220℃、好ましくは185〜210℃、より好ましくは190〜200℃である。また、加熱混練時間は、通常0.1〜10分、好ましくは0.2〜5分、より好ましくは0.3〜2分程度である。加熱混練温度、加熱混練時間(滞留時間)が上記範囲になるようにして、連続的に混練、押出しをすればよい。
【0042】
変性ブロック共重合体水素化物(E)の形態は、特に限定されるものではないが、通常はペレット形状にして、その後の成形加工や添加剤の配合に供することができる。
【0043】
変性ブロック共重合体水素化物(E)の分子量は、導入される酸無水物基の量が少ないため、原料として用いたブロック共重合体水素化物(D)の分子量と実質的には変わらない。ただし、過酸化物の存在下で、不飽和カルボン酸無水物と反応させるため、重合体の架橋反応、切断反応が併発し、変性ブロック共重合体水素化物(E)の分子量分布の値は大きくなる。
【0044】
変性ブロック共重合体水素化物(E)の分子量は、THFを溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常40,000〜200,000、好ましくは45,000〜150,000、より好ましくは50,000〜100,000である。また、分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3.5以下、より好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下である。Mw及びMw/Mnが上記範囲となるようにすると、本発の樹脂組成物(EC)及び/又はそれからなる樹脂シート(ES)の耐熱性や機械的強度が維持され易くなる。
【0045】
(2)樹脂組成物(EC)
本発明の樹脂組成物(EC)は、変性ブロック共重合体水素化物(E)に対して、波長800〜2000nmの範囲内のいずれかの領域の赤外線を遮蔽する機能を有する、金属酸化物微粒子及び/又は近赤外線吸収色素を配合してなる。
【0046】
(金属酸化物微粒子)
金属酸化物微粒子は、波長800〜2000nmの範囲内のいずれかの領域の赤外線を遮蔽する機能を有するものである。
ここで、「波長800〜2000nmの範囲内のいずれかの領域の赤外線を遮蔽する機能を有する」とは、「用いる金属酸化物微粒子が、波長800〜2000nmの範囲内のいずれかの領域において、赤外線を吸収して、結果として赤外線が通過するのを遮断する機能を有する」という意味である。
用いる金属酸化物微粒子は、波長800〜2000nmの範囲内のいずれかの領域において、最大吸収波長を有するものであっても、波長800〜2000nmの範囲外のいずれかの領域外において、最大吸収波長を有するものであってもよい。
【0047】
金属酸化物微粒子としては、酸化錫、アルミニウムドープ酸化錫、インジウムドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化錫等の錫酸化物の微粒子;酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、錫ドープ酸化亜鉛、珪素ドープ酸化亜鉛等の亜鉛酸化物の微粒子;酸化チタン、ニオブドープ酸化チタン等のチタン酸化物の微粒子;酸化タングステン、ナトリウムドープ酸化タングステン、セシウムドープ酸化タングステン、タリウムドープ酸化タングステン、ルビジウムドープ酸化タングステン等のタングステン酸化物の微粒子;酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウム等のインジウム酸化物の微粒子;等が挙げられる。
これらの金属酸化物微粒子は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
金属酸化物微粒子の平均粒子径は、通常0.001〜0.2μm、好ましくは0.005〜0.15μm、より好ましくは0.01〜0.1μmである。平均粒子径がこの範囲内であると、可視光領域の透明性を維持して、より優れた熱線遮蔽性を付与することができる。
【0049】
樹脂組成物(EC)において、上記金属酸化物微粒子の配合量は、変性ブロック共重合体水素化物(E)100重量部に対して、通常0.001〜1.0重量部、好ましくは0.002〜0.5重量部、より好ましくは0.005〜0.3重量部である。配合量がこの範囲内であると、可視光領域の透明性を維持して、より優れた熱線遮蔽性を付与することができる。
【0050】
(近赤外線吸収色素)
近赤外線吸収色素は、波長800〜2000nmの範囲内のいずれかの領域の赤外線を遮蔽する機能を有するものである。
ここで、「波長800〜2000nmの範囲内のいずれかの領域の赤外線を遮蔽する機能を有する」とは、「用いる近赤外線吸収色素が、波長800〜2000nmの範囲内のいずれかの領域において、赤外線を吸収して、結果として赤外線が通過するのを遮断する機能を有する」という意味である。用いる近赤外線吸収色素は、波長800〜2000nmの範囲内のいずれかの領域において、最大吸収波長を有するものであっても、波長800〜2000nmの範囲外のいずれかの領域外において、最大吸収波長を有するものであってもよい。
【0051】
近赤外線吸収色素としては、例えば、4,5−オクタキス(フェニルチオ)−3,6−{テトラキス(2,6−ジメチルフェノキシ)−テトラキス(n−ヘキシルアミノ)}銅フタロシアニン、4,5−オクタキス(フェニルチオ)−3,6−{テトラキス(2,6−ジメチルフェノキシ)−テトラキス(2−エチルヘキシルアミノ)}銅フタロシアニン、4,5−オクタキス(4−クロロフェニルチオ)−3,6−{テトラキス(2,6−ジメチルフェノキシ)−テトラキス(n−ヘキシルアミノ)}銅フタロシアニン、4,5−オクタキス(2−メチルフェニルチオ)−3,6−{テトラキス(2,6−ジメチルフェノキシ)−テトラキス(n−ヘキシルアミノ)}銅フタロシアニン、4,5−オクタキス(4−メトキシフェニルチオ)−3,6−{テトラキス(2,6−ジメチルフェノキシ)−テトラキス(n−ヘキシルアミノ)}銅フタロシアニン、4,5−オクタキス(フェニルチオ)−3,6−{テトラキス(2,6−ジメチルフェノキシ)−テトラキス(3−エトキシプロピルアミノ)}銅フタロシアニン、4,5−オクタキス(5−tert−ブチル−2−メチルフェニルチオ)−3,6−{テトラキス(2,6−ジメチルフェノキシ)−テトラキス(n−ヘキシルアミノ)}銅フタロシアニン、4,5−オクタキス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−{テトラキス(2,6−ジメチルフェノキシ)−テトラキス(DL−1−フェニルエチルアミノ)}酸化バナジウムフタロシアニン、4,5−オクタキス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−{テトラキス(2,6−ジメチルフェノキシ)−テトラキス(ベンジルアミノ)}酸化バナジウムフタロシアニン等のフタロシアニン化合物;
バナジル 5,14,23,32−テトラキス(4−ニトロフェニル)−2,3−ナフタロシアニナト、バナジル 5,14,23,32−テトラキス(4−アセトアミドフェニル)−2,3−ナフタロシアニナト、バナジル 5,14,23,32−テトラキス(4−アセトアミドフェニル)−2,3−ナフタロシアニナト、テトラフエニルチオテトラヘキシル−1,2−ナフタロシアニンバナジルオキシ等のナフタロシアニン化合物;
ジイモニウム化合物(ヘキサフルオロリン酸−N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(シクロヘキシルメチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム、
ヘキサフルオロアンチモン酸−N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(n−プロピル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム、テトラフルオロホウ酸−N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(n−プロピル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム、N,N,N’,N’−テトラキス(p−ジ(iso−ブチル)アミノフェニル)−p−フェニレンジイモニウム等のイモニウム化合物;
5−アニリノ−2,3,3−トリメチルインドレニン、5,5’−[(1,2−エタンジイル)ビス(オキシ)ビス(3−メトキシ−4,1−フェニレン)ビス(4−シアノ−2,2−ジメチル−4−ペンテン−3−オン)]、5,5’−[(1,3−プロパンジイル)ビス(オキシ)ビス(3−メトキシ−4,1−フェニレン)ビス(4−シアノ−2,2−ジメチル−4−ペンテン−3−オン)]、5,5’−[(1,4−ブタンジイル)ビス(オキシ)ビス(3−メトキシ−4,1−フェニレン)ビス(4−シアノ−2,2−ジメチル−4−ペンテン−3−オン)]、5,5’−[(1,5−ペンタンジイル)ビス(オキシ)ビス(3−メトキシ−4,1−フェニレン)ビス(4−シアノ−2,2−ジメチル−4−ペンテン−3−オン)]、5,5’−[(1,6−ヘキサンジイル)ビス(オキシ)ビス(3−メトキシ−4,1−フェニレン)ビス(4−シアノ−2,2−ジメチル−4−ペンテン−3−オン)]、5,5’−[(2−ブテン−1,4−ジイル)ビス(オキシ)ビス(3−メトキシ−4,1−フェニレン)ビス(4−シアノ−2,2−ジメチル−4−ペンテン−3−オン)]等のポリメチン化合物;
2,3,4−トリオクタデカノキシベンゾヒドロール、[フェニル(2,3,4−トリオクタデカノキシフェニル)メチル]アミン、4,4’−ジドコソキシベンゾヒドロール、
ジ(4−ドコソキシフェニル)メチルアミン、4,4−ジ(12−ドコソキシドデシルオキシ)ベンゾヒドロール、アミノ−ビス[4−(12−ドコソキシドデシルオキシ)フェニル]メタン、N−ベンジル−[ビス(4−ドコシルオキシフェニル)]メチルアミン、
(4−メトキシ−フェニル)−[4−(3,4,5−トリスオクタデシロキシ−シクロヘキシルメトキシ)−フェニル]−メタノール、{(4−メトキシ−フェニル)−[4−(3,4,5−トリスオクタデシロキシ−シクロヘキシルメトキシ)−フェニル]−メチル}−アミン、[ビス−(4−ドコソキシ−フェニル)−メチル]−アミン等のジフェニルメタン化合物;
1,4−ビス((エテニルフェニル)アミノ)−9,10−アントラキノン、1,8−ビス((エテニルフェニル)アミノ)−9,10−アントラキノン、1−((エテニルフェニル)アミノ)−9,10−アントラキノン、1−エテニルフェニルアミノ−4−ヒドロキシ−9,10−アントラキノン、1−((エテニルフェニル)アミノ)−4−((4−メチルフェニル)アミノ)−9,10−アントラキノン、1,4−ビス((アリルオキシエチルフェニル)アミノ)−9,10−アントラキノン、1−(アリルオキシメチルフェニル)アミノ−4−ヒドロキシ−9,10−アントラキノン、1−(アリルオキシエチルフェニル)アミノ−4−ヒドロキシ−9,10−アントラキノン、1−(4−(2−(アリルアミノカルボニルオキシ)エチル)フェニルアミノ−4−ヒドロキシアントラキノン、1−(4−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル)アミノ−ヒドロキシ−9,10−アントラキノン等のアントラキノン化合物;
1,5−ビス(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−p−トリルスルホニル−2,4−トリメチレン−2,4−ペンタジエン、1,5−ビス(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルスルホニル−2,4−トリメチレン−2,4−ペンタジエン、1,5−ビス(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−3−p−トリルスルホニル−2,4−トリメチレン−1,4−ペンタジエン、1,5−ビス(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−3−フェニルスルホニル−2,4−トリメチレン−1,4−ペンタジエン、1,5−ビス(4−N,N−ジエチルアミノフェニル)−1−p−トリルスルホニル−2,4−トリメチレン−2,4−ペンタジエン、1,5−ビス(4−N,N−ジエチルアミノフェニル)−3−p−トリルスルホニル−2,4−トリメチレン−1,4−ペンタジエン、1,5−ビス(4−N,N−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)−1−p−トリルスルホニル−2,4−トリメチレン−2,4−ペンタジエン、1,5−ビス(4−N,N−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)−3−p−トリルスルホニル−2,4−トリメチレン−1,4−ペンタジエン、1,5−ビス(4−N,N−ジブチルアミノフェニル)−1−p−トリルスルホニル−2,4−トリメチレン−2,4−ペンタジエン、
1,5−ビス(4−N,N−ジブチルアミノフェニル)−3−p−トリルスルホニル−2,4−トリメチレン−1,4−ペンタジエン、1,5−ビス(4−N,N−ジブチルアミノフェニル)−3−p−トリルスルホニル−2,4−トリメチレン−1,4−ペンタジエン等のペンタジエン化合物;
ピロロピリミジン−5−オンアゾメチン、ピロロピリミジン−7−オンアゾメチン、(2−ヒドロキシ−N−(2’−メチル−4’−メトキシフェニル)−1−{[4−[(4,5,6,7−テトラクロロ−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−3−イリデン)アミノ]フェニル]アゾ}−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボキシアミド)等のアゾメチン化合物;
6ホウ化ランタン;等が挙げられる。
これらの近赤外線吸収色素は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0052】
本発明の樹脂組成物(EC)において、上記近赤外線吸収色素の配合量は、変性ブロック共重合体水素化物(E)の100重量部に対して、通常0.001〜1.0重量部、好ましくは0.002〜0.7重量部、より好ましくは0.005〜0.5重量部である。配合量がこの範囲内であると、可視光領域の透性を維持して、より優れた熱線遮蔽性を付与することができる。
【0053】
本発明の樹脂組成物(EC)においては、金属酸化物微粒子及び近赤外線吸収色素を組み合わせて配合することが、可視光線領域の光線透過率を著しく低下させることなく、波長800〜2000nmの広域の赤外線をより効果的に遮蔽することができるため好ましい。
【0054】
(その他の配合剤)
本発明においては、樹脂組成物(EC)に、樹脂に一般的に配合される各種の添加剤を配合することもできる。好ましい添加剤としては、柔軟性、接着温度の低下及び金属との接着性等を調整するための軟化剤、紫外線を遮蔽するための紫外線吸収剤、加工性等を高めるための酸化防止剤やブロッキング防止剤、耐久性を高めるための光安定剤等が挙げられる。
【0055】
軟化剤としては、変性ブロック共重合体水素化物(E)に均一に溶解ないし分散できるものが好ましく、数平均分子量300〜5,000の炭化水素系重合体がより好ましい。
【0056】
炭化水素系重合体の具体例としては、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリ−1−オクテン、エチレン・α−オレフィン共重合体等の低分子量体及びその水素化物; ポリイソプレン、ポリイソプレン−ブタジエン共重合体等の低分子量体及びその水素化物等が挙げられる。
【0057】
軟化剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、透明性、耐光性を維持し、軟化効果に優れている点で、低分子量(数平均分子量が、好ましくは500〜3,000、より好ましくは500〜2,500)のポリイソブチレン水素化物、低分子量(数平均分子量が、好ましくは500〜3,000、より好ましくは500〜2,500)のポリイソプレン水素化物が好ましい。
【0058】
低分子量の炭化水素系重合体の配合量は、変性ブロック共重合体水素化物(E)100重量部に対して、通常30重量部以下、好ましくは25重量部以下、より好ましくは20重量部以下である。低分子量の炭化水素系重合体の配合量を多くすると、合わせガラス用の中間膜とした場合に、耐熱性が低下したり、溶出物が増加し易くなる傾向がある。
【0059】
紫外線吸収剤としては、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物等が使用できる。
酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノ−ル系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が使用できる。光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤等が使用できる。
【0060】
変性ブロック共重合体水素化物(E)に配合される、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、光安定剤等は、それぞれ1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの添加剤それぞれの配合量は、変性ブロック共重合体水素化物(E)100重量部に対して、通常5重量部以下、好ましくは2重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。
【0061】
本発明の樹脂組成物(EC)の製造方法は、樹脂組成物の製造方法として一般に用いられる公知の方法が適用できる。例えば、変性ブロック共重合体水素化物(E)のペレット、金属酸化物微粒子、近赤外線吸収色素、及び/又は、これらを適当な溶剤中に分散させたもの、必要に応じて他の配合剤を、タンブラーミキサー、リボンブレンダー、ヘンシェルタイプミキサー等の混合機を使用して均等に混合した後、二軸押出機等の連続式溶融混練機により溶融混合し、押出してペレット状にすることによって樹脂組成物(EC)を製造することができる。
【0062】
また、上記と同様の方法で金属酸化物微粒子及び/又は近赤外線吸収色素、必要に応じて他の配合剤を高濃度に含有する樹脂組成物(以下、「マスターペレット(EC)」ということがある。)を作製し、このマスターペレット(EC)と変性ブロック共重合体水素化物(E)のペレットを混合して、単軸押出機、二軸押出機等により溶融混合し、押出してペレット状にすることによって樹脂組成物(EC)を製造することもできる。
【0063】
(3)樹脂シート(ES)
本発明の樹脂シート(ES)は、本発明の樹脂組成物(EC)からなる。
すなわち、本発明の樹脂シート(ES)は、本発明の樹脂組成物(EC)を成形して得られるものであり、可視光線領域(およそ波長360〜800nm)での光線透過性を有し、赤外線領域(波長800〜2000nm)での光線を遮蔽する機能を有する。
本発明の樹脂組成物(EC)からなるシート(ES)は、波長800〜2000nmの範囲内の赤外線を遮蔽することにより、遮熱性に優れたものとなる。
【0064】
樹脂シート(ES)は、本発明の樹脂組成物(EC)をシート状に成形して得られるものである。樹脂シート(ES)は、2枚の板ガラスの間に配置して、接着剤を介するか又は介さずに一体に貼り合わせして合わせガラスとした際に、波長800〜2000nmの範囲内に、光線透過率が50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下の領域を有し、波長550nmでの光線透過率が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上となるものである。
【0065】
樹脂シート(ES)の厚みは、特に限定されず、合わせガラスにした場合に上記光線透過率となるように適宜選定することができる。
樹脂シート(ES)の厚さは、通常0.1〜3.0mm、好ましくは0.2〜2.5mm、より好ましくは0.3〜2.0mmである。
【0066】
樹脂シート(ES)を作製する方法としては、特に限定されず、溶融押出し成形法、カレンダー成形法等の、従来公知の成形法が適用できる。例えば、溶融押出し成形法により、樹脂シート(ES)を形成する場合、樹脂温度は、通常170〜230℃、好ましくは180〜220℃、より好ましくは190〜210℃の範囲で適宜選択される。樹脂温度がこの範囲である場合に、樹脂シート(ES)の表面にゆず肌やダイライン等の不良を生じ難く、また、シート厚さ変動も小さくなるため好ましい。
【0067】
樹脂シート(ES)の表面は、平面状やエンボス加工を施した形状等とすることができる。また、樹脂シート(ES)同士のブロッキングを防止するために、樹脂シート(ES)の片面に、離型フィルムを重ねて保管することもできる。
【0068】
本発明の樹脂シート(ES)は、合わせガラス同様に、可視光線領域の光透過性と遮熱性を有しているため、農業用シート、ガラス窓用遮熱シート、競技場用屋根材等としても有用である。
【0069】
(4)合わせガラス(EG)
本発明の合わせガラスは、本発明の樹脂シート(ES)をガラス板間に介在させ、ガラス板と当該樹脂シート(ES)を含む積層物を接着させて一体化してなる合わせガラスであって、波長800〜2000nmの範囲内のいずれかの領域に、光線透過率が50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下の領域を有し、波長550nmでの光線透過率が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上を有するものであるであることを特徴とする。
【0070】
本発明の合わせガラス(EG)は、少なくとも2枚以上のガラス板の間に、少なくとも1枚の樹脂シート(ES)を介在させて積層一体化してなる合わせガラスである。ガラス板と樹脂シート(ES)は直接接触させて合わせガラスとすることもできるが、高温高湿環境に暴露した際のガラスと樹脂シート(ES)との間の強固な接着性を維持するために、ガラス板と樹脂シート(ES)の間に接着層を介在させて積層することが望ましい。
【0071】
接着層は、例えば、アクリル樹脂系接着剤、α−オレフィン系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エチレン−酢酸ビニル樹脂ホットメルト接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリビニルブチラール樹脂系接着剤、アルコキシリル基が導入されたブロック共重合体水素化物等により形成することができる。これらの内、例えば、WO2012/043708号パンフレット、WO2014/077267号パンフレット等に記載されているアルコキシシリル基が導入されたブロック共重合体水素化物を接着層に使用した場合は、得られる合わせガラスの、透明性、耐熱性、高温高湿環境下でのガラスと接着層の強固な接着性等が優れるため好ましい。
【0072】
本発明の合わせガラス(EG)の層構成は特に限定されない。具体的には、ガラス板/樹脂シート(ES)/ガラス板、ガラス板/接着層/樹脂シート(ES)/接着層/ガラス板、ガラス板/接着層/樹脂シート(ES)/接着層/機能性シート/接着層/ガラス板、ガラス板/接着層/樹脂シート(ES)/接着層/ガラス板/接着層/機能性シート/接着層/ガラス板、等の順に積層されたものが挙げられる。
【0073】
ここで、機能性シートとしては、ディスプレイ素子、調光素子、液晶素子、サーモクロミック素子、フォトクロミック素子、エレクトロクロミック素子、ダイクロイックミラー、赤外線反射フィルム等が挙げられる。
【0074】
使用するガラス板の材質は特に限定されない。例えば、アルミノシリケート酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、ウランガラス、カリガラス、ケイ酸ガラス、結晶化ガラス、ゲルマニウムガラス、石英ガラス、ソーダガラス、鉛ガラス、バリウム瑚珪酸ガラス、瑚珪酸ガラス等が挙げられる。また、強化ガラス、化学強化ガラス等も使用できる。
【0075】
使用するガラス板の厚さは特に限定されないが、通常0.5〜10mm程度である。厚さが0.05〜0.5mm程度の極薄ガラス板を使用することもできる。
また、合わせガラス(EG)に使用する2枚以上のガラス板同士は、厚さや材質等が互いに同一であっても、相異なっていてもよい。例えば、厚さ2.1mmのガラス板/厚さ0.38mmの接着層/厚さ0.76mmのシート(ES)/厚さ0.38mmの接着層/厚さ0.3mmの薄板ガラスの5層構成となるような、異なる厚さのガラス板を使用することもできる。
【0076】
合わせガラス(EG)を製造する方法は特に限定されず、オートクレーブを使用する方法、真空ラミネータを使用する方法等が適用できる。
例えば、第1のガラス板/接着剤シート/樹脂シート(ES)/接着剤シート/第2のガラス板の順に重ねた積層物を、減圧可能な耐熱性の樹脂製袋に入れて脱気後、オートクレーブを使用して、加熱加圧下で接着させて合わせガラスを製造する方法; 第1のガラス板/接着剤シート/樹脂シート(ES)/接着剤シート/第2のガラス板の順に重ねた積層物を、真空ラミネータを使用して、加熱下で真空圧着して接着させる方法等がある。
オートクレーブを使用する場合は、通常、加熱温度は120〜150℃、圧力は0.3〜1.1MPaであり、真空ラミネータを使用する場合は、通常、加熱温度130〜170℃、圧力は0.01〜0.1MPaである。
【0077】
本発明の合わせガラス(EG)は、変性ブロック共重合体水素化物(E)に、赤外線を遮蔽する機能を有する金属酸化物微粒子及び/又は近赤外線吸収色素を配合することにより、透明性が改善された樹脂組成物(EC)からなる樹脂シート(ES)を使用することを特徴としている。変性ブロック共重合体水素化物(E)は、吸湿性や透湿性が低いため、合わせガラス(EG)を高温高湿度環境下で長期間使用した場合であっても、ガラス間の樹脂層が変色したり、白化する等の不具合が発生したりすることが少ない。
【0078】
本発明の合わせガラス(EG)は、従来の熱線遮蔽機能を有する合わせガラスの問題点、即ち、耐湿性及び耐久性の問題を解決し、実用面においても濁りが少なく優れた外観特性を有する。
本発明の合わせガラス(EG)は、可視光線領域で透明性を有し、赤外線領域で遮蔽性を有しているため、透明性と遮熱性を両立させることが可能である。従って、建築物の窓ガラス、屋根用ガラス、部屋用遮熱壁材、自動車用窓ガラス、サンルーフ用ガラス、鉄道車両や船舶用の窓ガラス等として有用である。
【実施例】
【0079】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は特に断りのない限り、重量基準である。
【0080】
本実施例における評価は、以下の方法によって行う。
(1)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
ブロック共重合体(C)、ブロック共重合体水素化物(D)及び変性ブロック共重合体水素化物(E)の分子量は、THFを溶離液とするGPCによる標準ポリスチレン換算値として求めた。GPCは38℃において測定した。測定装置としてHLC8020GPC(東ソー社製)を用いた。
(2)水素化率
ブロック共重合体水素化物(D)の主鎖、側鎖及び芳香環の水素化率は、H−NMRスペクトルを測定して算出した。
(3)全光線透過率
全光線透過率の測定は、積分球式分光光度計(V−670、日本分光社製)を使用して、波長550nm及び800〜2500nmの領域で測定した。
(4)ヘイズ
ヘイズの測定は、ヘイズメータ(NDH7000SP、日本電色工業社製)を使用して行った。
【0081】
(5)耐湿性
試験法JIS R3212に準拠して、平面な合わせガラス試験片(縦300mm、横300mm)を、温度50℃、相対湿度95%RHの恒温恒湿槽内で、336時間ほぼ鉛直に配置して保存した後、外観変化の目視評価を行った。
目視観察の結果、試験片に、ひび割れ、膨れ、剥離、変色、泡、濁り等の変化が認められない場合を、良好(◎);試験片に、ひび割れ、膨れ、剥離が無く、変色、泡、濁りがあっても、試験片端部から10mm以内に限られる場合を、許容(○);試験片端部から10mm以上内側に、ひび割れ、膨れ、剥離、変色、泡、濁り等のいずれかがある場合を、不良(×)と評価した。
(6)耐熱性
平面な合わせガラス試験片(縦300mm、横300mm)を、沸騰水中で、鉛直の状態に浸漬し、2時間保持した後、外観変化の目視評価を行った。
試験片にひび割れ、泡、その他欠点が認められない場合を、良好(◎);試験片にひび割れが無く、泡、その他欠点が有っても試験片端部から10mm以内に限られる場合を、許容(○);試験片端部から10mm以上内側に、ひび割れ、泡、その他欠点のいずれかがある場合を、不良(×)と評価した。
【0082】
[実施例1]酸無水物基を有する変性ブロック共重合体水素化物(E1)の製造
(1)ブロック共重合体(C1)の製造
攪拌装置を備え、内部が十分に窒素置換された反応器に、脱水シクロヘキサン400部、脱水スチレン10部及びジブチルエーテル0.475部を入れた。全容を60℃で攪拌しながら、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.88部を加えて重合を開始させた。引続き全容を60℃で攪拌しながら、脱水スチレン15部を40分間に亘って連続的に反応器内に添加して重合反応を進め、添加終了後、そのままさらに60℃で20分間全容を攪拌した。反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、この時点での重合転化率は99.5%であった。
次に、反応液に、脱水イソプレン50.0部を130分間に亘って連続的に添加し、添加終了後そのまま30分間攪拌を続けた。この時点で、反応液をGCにより分析した結果、重合転化率は99.5%であった。
その後、更に、反応液に脱水スチレン25.0部を、70分間に亘って連続的に添加し、添加終了後そのまま60分攪拌した。この時点で、反応液をガスクロマトグラフィー(GC)により分析した結果、重合転化率はほぼ100%であった。
【0083】
ここで、イソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止させることによって、(A)−(B)−(A)型のブロック共重合体(C1)を含む重合体溶液を得た。ブロック共重合体(C1)の重量平均分子量(Mw)は47,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、wA:wB=0:50であった。
【0084】
(2)ブロック共重合体水素化物(D1)の製造
次に、上記の重合体溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として、珪藻土担持型ニッケル触媒(製品名「E22U」、ニッケル担持量60%、日揮触媒化成社製)4.0部、及び脱水シクロヘキサン30部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度190℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行った。
水素化反応により得られた反応溶液に含まれるブロック共重合体水素化物(D1)の重量平均分子量(Mw)は49,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。
【0085】
水素化反応終了後、反応溶液を濾過して水素化触媒を除去した後、フェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名「Songnox1010」、松原産業社製)0.1部をキシレン1.9部に溶解した溶液2.0部を添加して溶解させた。
次いで、上記溶液を、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶液から、シクロヘキサン、キシレン及びその他の揮発成分を除去した。溶融ポリマーをダイからストランド状に押出し、冷却後、ペレタイザーによりブロック共重合体水素化物(D1)のペレット95部を作製した。
得られたペレット状のブロック共重合体水素化物(D1)の重量平均分子量(Mw)は49,500、分子量分布(Mw/Mn)は1.10、水素化率はほぼ100%であった。
【0086】
(3)変性ブロック共重合体水素化物(E1)の製造
得られたブロック共重合体水素化物(D1)のペレット100部に対して、無水マレイン酸2.0部及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(製品名「パーヘキサ(登録商標)25B」、日油社製)0.2部を添加した。この混合物を、二軸押出し機を用いて、樹脂温度200℃、滞留時間60〜70秒で混練し、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、酸無水物無基を有する変性ブロック共重合体水素化物(E1)のペレット96部を得た。
【0087】
得られた変性ブロック共重合体水素化物(E1)のペレット10部をシクロヘキサン100部に溶解した後、脱水アセトン400部中に注いで、変性ブロック共重合体水素化物(E1)を凝固させ、精製した。凝固物を分離し、25℃で真空乾燥して、変性ブロック共重合体水素化物(E1)のクラム9.0部を単離した。
変性ブロック共重合体水素化物(E1)のFT−IRスペクトルを測定したところ、1790cm−1にーCO−O−CO−基に由来する新たな吸収帯が観察された。この吸収帯の吸光度と、C−H結合に由来する2920cm−1の吸光度の比から、あらかじめ作成した検量線に基づき、ブロック共重合体水素化物(D1)の100部に対して無水マレイン酸1.8部が結合したことが確認された。
【0088】
[実施例2]酸無水物基を有する変性ブロック共重合体水素化物(E2)の製造
実施例1で製造したブロック共重合体水素化物(D1)のペレット100部に対して、イタコン酸無水物2.0部及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.2部を添加した。この混合物を、実施例1と同様にして、二軸押出し機を用いて溶融混練することにより、酸無水物無基を有する変性ブロック共重合体水素化物(E2)のペレット94部を得た。
【0089】
得られた変性ブロック共重合体水素化物(E2)のペレットを、実施例1と同様にして、溶解した後、凝固して精製し、変性ブロック共重合体水素化物(E2)を単離した。
変性ブロック共重合体水素化物(E2)のFT−IRスペクトルを測定したところ、1790cm−1にーCO−O−CO−基に由来する新たな吸収帯が観察された。この吸収帯の吸光度と、C−H結合に由来する2920cm−1の吸光度の比から、あらかじめ作成した検量線に基づき、ブロック共重合体水素化物(D1)の100部に対してイタコン酸無水物1.7部が結合したことが確認された。
【0090】
[実施例3]樹脂組成物(EC1)、樹脂シート(E1S1)及び合わせガラス(EG1)の製造
実施例1で製造した変性ブロック共重合体水素化物(E1)のペレット100部に対し、ジイモニウム塩化合物系近赤外線吸収色素(製品名「KAYASORB IRG−022」、日本化薬社製)0.25部を加え、ミキサーにて混合した。この混合物を、幅400mmのTダイを備えた二軸押出し機(製品名「TEM−37B」、東芝機械社製)を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数150rpmの条件で溶融混練し、Tダイから押出して厚さ760μmの変性ブロック共重合体水素化物(E1)に近赤外線吸収色素を配合した樹脂組成物(E1C1)からなる樹脂シート(E1S1)を作製した。
【0091】
得られた樹脂シート(E1S1)から、縦50mm、横50mmの試験片を切り出し、23℃の水に24時間浸漬した前後の測定重量の差から、シート(E1S1)の吸水性は、0.01%/24時間であった。
【0092】
得られた樹脂シート(E1S1)から、縦290mm、横290mmの試験片を切り出した。
また、別途WO2012/043708号パンフレットに記載の方法に従って作製したアルコキシシリル基を有するスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体水素化物(スチレン/イソプレン:50/50重量比、アルコキシシリル基含有量1.8重量%、Mw:39,000)からなる厚さ100μmの接着用シートから縦300mm、横300mmのシートを切り出した。
次いで、厚さ1.1mm、縦300mm、横300mmの2枚の青板ガラスの間に、ガラス板/接着用シート/樹脂シート(E1S1)/接着用シート/ガラス板の順に重ねて積層物とした。樹脂シート(E1S1)は接着用シートの中央部に配置し、合わせガラスにした場合に、樹脂シート(E1S1)の端部が全周に亘って接着用シートの端部より内側に位置し、接着層内に封入されるようにした。
この積層物を、NY(ナイロン)/PP(ポリプロピレン)製の厚さ75μmの袋に入れ、袋の開口部の中央部を200mm幅残して両側をヒートシーラーでヒートシールした後、密封パック器(BH−951、パナソニック社製)を使用して、袋内を脱気しながら開口部をヒートシールして積層物を密封包装した。
その後、密封包装した積層物をオートクレーブに入れて、30分間、温度140℃、圧力0.8MPaで加熱加圧し、合わせガラス(E1G1)を作製した。
【0093】
作製した合わせガラス(E1G1)を目視観察した結果、ひび割れ、膨れ、剥離、変色、泡、濁り等の異常は認められず、良好な外観であった。
【0094】
合わせガラス(E1G1)から、ガラスカッターを使用して縦70mm、横50mmの試験片を切り出した。この試験片の波長300〜2500nmにおける光線透過率を、分光光度計を使用して測定した。その結果、全光線透過率は、波長550nmで86%、1150nmで3%、2000nmで83%の値であり、合わせガラス(E1G1)は、可視領域での良好な光透過性を有し、近赤外線領域で十分な遮光性を有していることが分かった。
ヘイズメータを使用して測定した波長550nmでのヘイズ値は0.5%であり、十分低い値であった。
また、合わせガラス(E1G1)を使用し、耐湿性及び耐熱性の評価を行った結果、耐湿性の評価は良好(◎)、耐熱性の評価も良好(◎)であった。
【0095】
[比較例1]ブロック共重合体水素化物(D1)を使用した樹脂組成物(D1C1)及び合わせガラス(D1G1)の製造
変性ブロック共重合体水素化物(E1)のペレットに代えて、実施例1で製造したブロック共重合体水素化物(D1)のペレット100部を使用する以外は、実施例3と同様にして、ブロック共重合体水素化物(D1)に近赤外線吸収色素を配合した樹脂組成物(D1C1)からなる樹脂シート(D1S1)を作製した。
実施例3と同様にして測定した樹脂シート(D1S2)の吸水性は、0.01%/24時間であった。
【0096】
樹脂シート(E1S1)に代えて、樹脂シート(D1S1)を使用する以外は、実施例3と同様にして、ガラス板/接着用シート/樹脂シート(D1S1)/接着用シート/ガラス板の順に積層した合わせガラス(D1G1)を作製した。
【0097】
作製した合わせガラス(D1G1)を目視観察した結果、ひび割れ、膨れ、剥離、変色、泡は認められなかったが、濁りが確認された。
【0098】
実施例3と同様にして合わせガラス(D1G1)の全光線透過率及びヘイズ値を測定した。その結果、全光線透過率は波長550nmで85%、1150nmで3%、2000nmで83%の値を示し、波長550nmでのヘイズ値は3.2%であった。実施例3に比べて全光線透過率はほぼ同等であったが、ヘイズ値が大きく、濁りが大きかった。
また、合わせガラス(D1G1)を使用した、耐湿性及び耐熱性の評価では、いずれの評価も良好(◎)であった。
【0099】
[実施例4]樹脂組成物(E1C2)及び合わせガラス(E1G2)の製造
近赤外線吸収色素に代えて、中赤外線を遮蔽するアンチモンドープ酸化錫(ATO)微粒子水分散体(平均粒径40nm、住友大阪セメント社製)0.2部を使用する以外は、実施例3と同様にして、厚さ760μmの変性ブロック共重合体水素化物(E1)にATO微粒子を配合した樹脂組成物(E1C2)からなる樹脂シート(E1S2)を作製した。
実施例3と同様にして測定した樹脂シート(E1S2)の吸水性は、0.01%/24時間であった。
【0100】
樹脂シート(E1S1)に代えて樹脂シート(E1S2)を使用する以外は、実施例3と同様にして、ガラス板/接着用シート/樹脂シート(E1S2)/接着用シート/ガラス板の順に積層した合わせガラス(E1G2)を作製した。
【0101】
作製した合わせガラス(E1G2)を目視観察した結果、ひび割れ、膨れ、剥離、変色、泡、濁り等の異常は認められず、良好な外観であった。
【0102】
実施例3と同様にして合わせガラス(E1G2)の全光線透過率及びヘイズ値を測定した。その結果、全光線透過率は、波長550nmで79%、1150nmで50%、2000nmで2%の値を示し、波長550nmでのヘイズ値は0.4%であった。濁りは小さく、透明性が優れる合わせガラスであった。
また、合わせガラス(E1G2)を使用した、耐湿性及び耐熱性の評価では、いずれの評価も良好(◎)であった。
【0103】
[比較例2]ブロック共重合体水素化物(D1)を使用した樹脂組成物(D1C2)及び合わせガラス(D1G2)の製造
変性ブロック共重合体水素化物(E1)のペレットに代えて実施例1で製造したブロック共重合体水素化物(D1)のペレットを使用する以外は、実施例4と同様にして、ブロック共重合体水素化物(D1)にATO微粒子を配合した樹脂組成物(D1C2)からなる樹脂シート(D1S2)を作製した。
【0104】
樹脂シート(E1S1)に代えて樹脂シート(D1S2)を使用する以外は、実施例3と同様にして、ガラス板/接着用シート/樹脂シート(D1S2)/接着用シート/ガラス板の順に積層した合わせガラス(D1G2)を作製した。
【0105】
作製した合わせガラス(D1G2)を目視観察した結果、ひび割れ、膨れ、剥離、変色、泡は認められなかったが、濁りが確認された。
【0106】
実施例3と同様にして合わせガラス(D1G2)の全光線透過率及びヘイズ値を測定した。その結果、全光線透過率は、波長550nmで79%、1150nmで49%、2000nmで4%の値を示し、波長550nmでのヘイズ値は3.8%であった。実施例4に比べて全光線透過率はほぼ同等であったが、ヘイズ値が大きく、濁りが大きかった。
また、合わせガラス(D1G2)を使用した、耐湿性及び耐熱性の評価では、いずれの評価も良好(◎)であった。
【0107】
[実施例5]樹脂組成物(E1C3)及び合わせガラス(E1G3)の製造
実施例3で使用したジイモニウム塩化合物系近赤外線吸収色素に代えて、近赤外線を遮蔽する六ホウ化ランタン(平均粒径50nm、住友金属鉱山社製)0.003部を使用する以外は、実施例3と同様にして、厚さ760μmの変性ブロック共重合体水素化物(E1)に近赤外線遮蔽剤を配合した樹脂組成物(E1C3)からなる樹脂シート(E1S3)を作製した。
実施例3と同様にして測定した樹脂シート(E1S3)の吸水性は、0.01%/24時間であった。
【0108】
樹脂シート(E1S1)に代えて樹脂シート(E1S3)を使用する以外は、実施例3と同様にして、ガラス板/接着用シート/樹脂シート(E1S3)/接着用シート/ガラス板の順に積層した合わせガラス(E1G3)を作製した。
【0109】
作製した合わせガラス(E1G3)を目視観察した結果、ひび割れ、膨れ、剥離、変色、泡、濁り等の異常は認められず、良好な外観であった。
【0110】
実施例3と同様にして合わせガラス(E1G3)の全光線透過率及びヘイズ値を測定した。その結果、全光線透過率は、波長550nmで70%、1150nmで32%、2000nmで82%の値を示し、波長550nmでのヘイズ値は0.5%であった。濁りは小さく、透明性が優れる合わせガラスであった。
また、合わせガラス(E1G3)を使用した、耐湿性及び耐熱性の評価では、いずれの評価も良好(◎)であった。
【0111】
[実施例6]樹脂組成物(E2C2)及び合わせガラス(E2G2)の製造
変性ブロック共重合体水素化物(E1)のペレットに代えて変性ブロック共重合体水素化物(E2)のペレットを使用する以外は、実施例4と同様にして、厚さ760μmの変性ブロック共重合体水素化物(E2)にATO微粒子を配合した樹脂組成物(E2C2)からなる樹脂シート(E2S2)を作製した。
実施例3と同様にして測定した樹脂シート(E2S2)の吸水性は、0.01%/24時間であった。
【0112】
樹脂シート(E1S1)に代えて樹脂シート(E2S2)を使用する以外は、実施例3と同様にして、ガラス板/接着用シート/樹脂シート(E2S2)/接着用シート/ガラス板の順に積層した合わせガラス(E2G2)を作製した。
【0113】
作製した合わせガラス(E2G2)を目視観察した結果、ひび割れ、膨れ、剥離、変色、泡、濁り等の異常は認められず、良好な外観であった。
【0114】
実施例3と同様にして合わせガラス(E2G2)の全光線透過率及びヘイズ値を測定した。その結果、全光線透過率は、波長550nmで79%、1150nmで50%、2000nmで2%の値を示し、波長550nmでのヘイズ値は0.4%であった。濁りは小さく、透明性が優れる合わせガラスであった。
また、合わせガラス(E2G2)を使用した、耐湿性及び耐熱性の評価では、いずれの評価も良好(◎)であった。
【0115】
[比較例3]変性エチレン・酢酸ビニル共重合体を使用した樹脂組成物(R1C2)及び合わせガラス(R1G2)の製造
エチレン・酢酸ビニル共重合体(製品名「エバフレックス(登録商標)EV150」、酢酸ビニル含有量33重量%、融点61℃、三井・デュポンポリケミカル社製)のペレット100部に、実施例4で使用したのと同じATO微粒子0.2部を混合した。この混合物100部に、更に、トリアリルイソシアヌレート5.0部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM−503」、信越化学工業社製)1.0部、及びジクミルパーオキサイド(商品名「パークミルD」、日油社製)0.5部を添加して混合した。
【0116】
この混合物を、実施例3で使用したのと同じTダイを備えた二軸押出し機を用いて、シリンダー温度90℃、スクリュー回転数100rpmの条件で溶融混練し、Tダイから押出してATO微粒子を含むエチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂組成物(R1C2)からなる厚さ760μmの樹脂シート(R1S2)を作製した。
実施例3と同様にして測定した樹脂シート(R1S2)の吸水性は、0.11%/24時間であった。
【0117】
得られた樹脂シート(R1S2)を使用して、縦300mm、横300mmの試験片を切り出し、オートクレーブの温度を150℃とする以外は、実施例3と同様にして合わせガラス(R1G2)を作製した。
【0118】
作製した合わせガラス(R1G2)を目視観察した結果、ひび割れ、膨れ、剥離、変色、泡は認められなかったが、濁りが確認された。
【0119】
実施例3と同様にして合わせガラス(R1G2)の全光線透過率及びヘイズ値を測定した。その結果、全光線透過率は、波長550nmで81%、1150nmで49%、2000nmで2%の値を示し、波長550nmでのヘイズ値は4.0%であった。実施例4に比べて全光線透過率はほぼ同等であったが、ヘイズ値が大きく、濁りが大きかった。
また、合わせガラス(R1G2)を使用し、耐湿性及び耐熱性の評価を行った。耐湿性の評価では、試験片に、ひび割れ、膨れ、剥離、変色、泡は発生していなかったが、合わせガラスの端部から約20mmの範囲に白濁が生じており、耐湿性の評価は不良(×)であった。一方、耐熱性の評価では、試験片に、ひび割れ、膨れ、剥離、変色、泡は発生しておらず、白濁の発生している領域も合わせガラスの端部から10mm以内であり、評価は許容(○)であった。
【0120】
本実施例及び比較例の結果から以下のことがわかる。
主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合及び芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化して得られるブロック共重合体水素化物(D)に、有機過酸化物の存在下で不飽和酸無水物を反応させることにより、酸無水物基が導入されてなる変性ブロック共重合体水素化物(E)が得られる(実施例1、2)。
本発明の酸無水物基が導入された変性ブロック共重合体水素化物(E)に、波長800〜2000nmの範囲内のいずれかの領域の赤外線を遮蔽する機能を有する金属酸化物微粒子及び/又は近赤外線吸収色素を配合してなる樹脂組成物(EC)からなる樹脂シート(ES)を、中間膜の部材として使用して作製した合わせガラス(EG)は、可視光線での光透過性が良好で、近赤外線及び/又は中赤外線領域で十分な遮光性を有しており、耐湿性、耐熱性が良好である(実施例3〜6)。
変性ブロック共重合体水素化物(E)に代えて、変性前のブロック共重合体水素化物(D)を使用した場合、波長800〜2000nmの範囲内のいずれかの領域の赤外線を遮蔽する機能を有する金属酸化物微粒子及び/又は近赤外線吸収色素を配合してなる樹脂組成物(DC)からなる樹脂シート(DS)を、中間膜の部材として使用して作製した合わせガラス(DG)は、可視光線領域で濁りが大きく、外観が良好なものではない(比較例1、2)。
変性ブロック共重合体水素化物(E)に比較して吸水性の高い樹脂であるEVAに、金属酸化物微粒子を配合してなる樹脂組成物(R1C2)からなる樹脂シート(R1S2)を、中間膜として使用して作製した合わせガラス(R1G2)は、可視光線での光透過性が良好で、中赤外線領域で十分な遮光性を有しているが、耐湿性に劣っている(比較例3)。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明によれば、酸無水物基を導入した特定の変性ブロック共重合体水素化物(E)に、赤外線を遮蔽する機能を有する金属酸化物微粒子及び/又は近赤外線吸収色素を配合してなる樹脂組成物(EC)からなる樹脂シート(EG)を、合わせガラスの中間膜材料として使用することにより、耐湿性、耐熱性が良好で、かつ、濁りが少なく優れた外観を有する遮熱機能を有する合わせガラス(EG)が提供される。