(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記繊維基材に、凝固剤としての2価の金属塩を付着させ、前記2価の金属塩を付着させた繊維基材を、前記ラテックス組成物中に浸漬させることで、前記繊維基材上に、前記ラテックス組成物からなる層を形成する請求項4に記載の積層体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
共重合体ラテックス
本発明の共重合体ラテックスは、共役ジエン単量体単位50〜88重量%、エチレン性不飽和ニトリル単量体単位10〜40重量%、およびエチレン性不飽和酸単量体単位2〜10重量%を含有する共重合体のラテックスであって、
前記共重合体を乾燥フィルムとした場合における、メチルエチルケトン不溶解分量が70重量%以下であり、メチルエチルケトン膨潤度が40倍以上である。
【0011】
本発明の共重合体ラテックスは、通常、共役ジエン単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体、およびエチレン性不飽和酸単量体、ならびに、必要に応じて用いられる、これらと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体を共重合してなる共重合体のラテックスである。
【0012】
共役ジエン単量体としては、たとえば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンおよびクロロプレンなどが挙げられる。これらのなかでも、1,3−ブタジエンおよびイソプレンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。これらの共役ジエン単量体は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。共重合体ラテックスに含まれる共重合体中における、共役ジエン単量体により形成される共役ジエン単量体単位の含有割合は、50〜88重量%であり、好ましくは55〜80重量%、より好ましくは60〜75重量%である。共役ジエン単量体単位の含有量が少なすぎると、得られる積層体が風合いに劣るものとなるおそれがあり、逆に、多すぎると、得られる積層体が溶剤耐性に劣るものとなるおそれがある。
【0013】
エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−シアノエチルアクリロニトリルなどが挙げられる。なかでも、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。これらのエチレン性不飽和ニトリル単量体は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。共重合体ラテックスに含まれる共重合体中における、エチレン性不飽和ニトリル単量体により形成されるエチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合は、10〜40重量%であり、好ましくは15〜40重量%、より好ましくは20〜40重量%である。エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が少なすぎると、得られる積層体が溶剤耐性に劣るものとなるおそれがあり、一方、多すぎると、得られる積層体が風合いに劣るものとなるおそれがある。
【0014】
エチレン性不飽和酸単量体としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、酸無水物基等の酸性基を含有するエチレン性不飽和単量体であれば特に限定されず、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸単量体;無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸無水物;ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸等のエチレン性不飽和スルホン酸単量体;(メタ)アクリル酸−3−クロロ−2−リン酸プロピル、(メタ)アクリル酸−2−リン酸エチル、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンリン酸等のエチレン性不飽和リン酸単量体;イタコン酸メチル、フマル酸メチル、フマル酸モノブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ−2−ヒドロキシプロピル等のエチレン性不飽和多価カルボン酸部分エステル単量体;などが挙げられる。これらのなかでも、エチレン性不飽和カルボン酸が好ましく、エチレン性不飽和モノカルボン酸がより好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。これらのエチレン性不飽和酸単量体はアルカリ金属塩またはアンモニウム塩として用いることもできる。また、エチレン性不飽和酸単量体は単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
【0015】
共重合体ラテックスに含まれる共重合体中における、エチレン性不飽和酸単量体により形成されるエチレン性不飽和酸単量体単位の含有割合は、2〜10重量%であり、好ましくは3〜9重量%、より好ましくは3〜8重量%である。エチレン性不飽和酸単量体単位の含有量が少なすぎると、積層体を得る際における成形性が低下してしまい、一方、多すぎると、得られる積層体が風合いに劣るものとなるおそれがある。
【0016】
共役ジエン単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体およびエチレン性不飽和酸単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体としては、たとえば、スチレン、アルキルスチレン、ビニルナフタレン等のビニル芳香族単量体;フルオロエチルビニルエーテル等のフルオロアルキルビニルエーテル;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド等のエチレン性不飽和アミド単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸−2−シアノエチル、(メタ)アクリル酸−1−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸−2−エチル−6−シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸−3−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体;ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート等の架橋性単量体;などを挙げることができる。これらのエチレン性不飽和単量体は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
共重合体ラテックスに含まれる共重合体中における、その他のエチレン性不飽和単量体により形成されるその他の単量体単位の含有割合は、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下である。
【0018】
また、本発明の共重合体ラテックスは、共重合体ラテックスを構成する共重合体を乾燥フィルムとした場合における、メチルエチルケトン不溶解分量が70重量%以下であり、かつ、メチルエチルケトン膨潤度が40倍以上であるものである。本発明によれば、共重合体ラテックスを構成する共重合体として、上記特定の単量体組成を有し、かつ、メチルエチルケトン不溶解分量およびメチルエチルケトン膨潤度が上記範囲とするものであり、これにより、繊維基材上に、共重合体ラテックスを用いてゴム層を形成し、積層体とした場合における、このようなゴム層のクラックの発生を有効に抑制することができるものである。
【0019】
特に、繊維基材上に、共重合体ラテックスを用いて、ディップ成形し、これによりゴム層を形成することで積層体を得る際には、共重合体ラテックスを凝固させるために凝固剤が用いられるが、凝固剤として、硝酸カルシウム等の2価の金属塩を使用すると、共重合体ラテックスを用いて形成されるゴム層の厚みを比較的厚くすることができるものの、クラックが発生してしまうという問題があった。一方で、凝固剤として、酢酸等の1価の有機酸を使用すると、クラックの発生はある程度抑制できるものの、共重合体ラテックスを用いて形成されるゴム層の厚みを厚くできず、防水性、耐薬品性などを十分に付与できない問題があった。
【0020】
これに対し、本発明者等は、このような繊維基材と、共重合体ラテックスを用いて形成されるゴム層とを備える積層体において、このようなゴム層のクラックの抑制について、鋭意検討を行ったところ、共重合体ラテックスを用いて形成されるゴム層を、繊維基材上に形成する際における状態、具体的には、当該層の最表面における共重合体粒子の粒子融着と、共重合体の分子鎖の相互拡散性とに着目したものである。そして、本発明者等が、さらなる検討を行ったところ、共重合体のゲル分量(架橋構造部分の量)と、膨潤率とを特定の範囲とすることにより、このような粒子融着と分子鎖の相互拡散性とをバランス良く向上させることができ、これにより、共重合体ラテックスを用いて形成されるゴム層のクラックの発生を適切に防止できることを見出したものである。特に、本発明によれば、凝固剤として、硝酸カルシウム等の2価の金属塩を使用し、このようなゴム層の厚みを比較的厚くした場合でも、共重合体ラテックスを用いて形成されるゴム層のクラックの発生を適切に防止できるものであるため、これにより、得られる積層体に対し、十分な防水性および耐薬品性を付与できるものである。
【0021】
本発明の共重合体ラテックスにおいて、共重合体ラテックスを構成する共重合体を乾燥フィルムとした場合における、メチルエチルケトン不溶解分量は、70重量%以下であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。また、メチルエチルケトン不溶解分量の下限は特に限定されないが、通常、0.1重量%以上である。メチルエチルケトン不溶解分量は、共重合体ラテックスに含まれる共重合体のゲル分量を示す指標であり、メチルエチルケトン不溶解分量が多すぎると、繊維基材上に、共重合体ラテックスを用いてゴム層を形成し、積層体とした場合における、ゴム層におけるクラックの抑制効果が得られなくなってしまう。
【0022】
また、本発明の共重合体ラテックスにおいて、共重合体ラテックスを構成する共重合体を乾燥フィルムとした場合における、メチルエチルケトン膨潤度は、40倍以上であり、好ましくは50倍以上、より好ましくは60倍以上である。また、メチルエチルケトン膨潤度の上限は特に限定されないが、通常、500倍以下である。メチルエチルケトン膨潤度は、共重合体ラテックスに含まれる共重合体の膨潤性を示す指標であり、メチルエチルケトン膨潤度が低すぎると、繊維基材上に、共重合体ラテックスを用いてゴム層を形成し、積層体とした場合における、このようなゴム層におけるクラックの抑制効果が得られなくなってしまう。
【0023】
なお、本発明において、メチルエチルケトン不溶解分量およびメチルエチルケトン膨潤度を測定する方法としては、たとえば、次の通りとすることができる。まず、本発明の共重合体ラテックスをキャスト法などで基材上に塗布し、これを乾燥させることで、乾燥フィルムを得て、乾燥フィルムの重量(この重量を「W1」とする。)を測定する。次いで、得られた乾燥フィルムを、25℃、24時間の条件にて、メチルエチルケトン中に浸漬させる。次いで、浸漬後のフィルムについて、重量(この重量を「W2」とする。)を測定した後、105℃、3時間乾燥して、メチルエチルケトンを除去する。そして、メチルエチルケトン除去後のフィルムについて、重量(この重量を「W3」とする。)を測定し、これらの重量の測定結果より、下記式(1)、(2)に従って、メチルエチルケトン不溶解分量およびメチルエチルケトン膨潤度を求めることができる。
メチルエチルケトン不溶解分量(単位:重量%)=(W3/W1)×100 ・・・(1)
メチルエチルケトン膨潤度(単位:倍)=W2/W3 ・・・(2)
【0024】
また、本発明において、メチルエチルケトン不溶解分量およびメチルエチルケトン膨潤度を上記範囲とする方法としては、特に限定されないが、たとえば、共重合体ラテックスを構成する共重合体を製造する際に用いる、連鎖移動剤の種類や連鎖移動剤の使用量を調整する方法や、重合温度を調整する方法などが挙げられる。
【0025】
本発明の共重合体ラテックスは、上述した単量体を含有してなる単量体混合物を共重合することにより得られるが、乳化重合により共重合する方法が好ましい。乳化重合方法としては、従来公知の方法を採用することができる。
【0026】
上述した単量体を含有してなる単量体混合物を乳化重合する際には、通常用いられる、乳化剤、重合開始剤、連鎖移動剤等の重合副資材を使用することができる。これら重合副資材の添加方法は特に限定されず、初期一括添加法、分割添加法、連続添加法などいずれの方法でもよい。
【0027】
乳化剤としては、特に限定されないが、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性乳化剤;ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、ベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン性乳化剤;α,β−不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β−不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性乳化剤などを挙げることができる。なかでも、アニオン性乳化剤が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩がより好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウムおよびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。これらの乳化剤は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。乳化剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0028】
重合開始剤としては、特に限定されないが、たとえば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−α−クミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;などを挙げることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.01〜2重量部である。
【0029】
また、過酸化物開始剤は還元剤との組み合わせで、レドックス系重合開始剤として使用することができる。この還元剤としては、特に限定されないが、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸化合物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;などが挙げられる。これらの還元剤は単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。還元剤の使用量は、過酸化物100重量部に対して3〜1000重量部であることが好ましい。
【0030】
連鎖移動剤としては、特に限定されないが、たとえば、α−メチルスチレンダイマー;t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレン等のハロゲン化炭化水素;テトラエチルチウラムダイサルファイド、ジペンタメチレンチウラムダイサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンダイサルファイド等の含硫黄化合物;などが挙げられる。これらは単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、メルカプタン類が好ましく、t−ドデシルメルカプタンがより好ましく使用できる。連鎖移動剤の使用量は、その種類によって異なるが、メチルエチルケトン不溶解分量およびメチルエチルケトン膨潤度を適切に制御することでき、これにより、これらを上記範囲とすることができるという観点より、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.4〜1.5重量部、より好ましくは0.5〜1.2重量部、さらに好ましくは0.6〜1.0重量部である。
【0031】
乳化重合する際に使用する水の量は、使用する全単量体100重量部に対して、80〜600重量部が好ましく、100〜200重量部が特に好ましい。
【0032】
単量体の添加方法としては、たとえば、反応容器に使用する単量体を一括して添加する方法、重合の進行に従って連続的または断続的に添加する方法、単量体の一部を添加して特定の転化率まで反応させ、その後、残りの単量体を連続的または断続的に添加して重合する方法等が挙げられ、いずれの方法を採用してもよい。単量体を混合して連続的または断続的に添加する場合、混合物の組成は、一定としても、あるいは変化させてもよい。また、各単量体は、使用する各種単量体を予め混合してから反応容器に添加しても、あるいは別々に反応容器に添加してもよい。
【0033】
さらに、必要に応じて、キレート剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤、粒子径調整剤等の重合副資材を用いることができ、これらは種類、使用量とも特に限定されない。
【0034】
乳化重合を行う際の重合温度は、特に限定されないが、メチルエチルケトン不溶解分量およびメチルエチルケトン膨潤度を適切に制御することでき、これにより、これらを上記範囲とすることができるという観点より、好ましくは5〜55℃、より好ましくは10〜50℃、さらに好ましくは15〜45℃である。なお、重合反応の進行により、重合温度を変化させる場合においては、いずれの温度も上記範囲となるように制御することが好ましい。なお、重合時間は5〜40時間程度である。
【0035】
以上のように単量体混合物を乳化重合し、所定の重合転化率に達した時点で、重合系を冷却したり、重合停止剤を添加したりして、重合反応を停止する。重合反応を停止する際の重合転化率は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは93重量%以上である。
【0036】
重合停止剤としては、特に限定されないが、たとえば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ハイドロキノン誘導体、カテコール誘導体、ならびに、ヒドロキシジメチルベンゼンチオカルボン酸、ヒドロキシジエチルベンゼンジチオカルボン酸、ヒドロキシジブチルベンゼンジチオカルボン酸などの芳香族ヒドロキシジチオカルボン酸およびこれらのアルカリ金属塩などが挙げられる。重合停止剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.05〜2重量部である。
【0037】
重合反応を停止した後、所望により、未反応の単量体を除去し、固形分濃度やpHを調整することで、共重合体のラテックスを得ることができる。
【0038】
また、本発明で用いる共重合体のラテックスには、必要に応じて、老化防止剤、防腐剤、抗菌剤、分散剤などを適宜添加してもよい。
【0039】
本発明で用いる共重合体ラテックスに含まれる共重合体の数平均粒子径は、好ましくは60〜300nm、より好ましくは80〜150nmである。粒子径は、乳化剤および重合開始剤の使用量を調節するなどの方法により、所望の値に調整することができる。
【0040】
ラテックス組成物
本発明のラテックス組成物は、上記本発明の共重合体ラテックスと、架橋剤とを含有する。
【0041】
架橋剤としては、特に限定されないが、有機過酸化物や、硫黄系架橋剤を用いることができ、これらのなかでも、硫黄系架橋剤が好ましい。
硫黄系架橋剤としては、粉末硫黄、硫黄華、沈降性硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄などの硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、ジベンゾチアジルジスルフィド、カプロラクタムジスルフィド、含リンポリスルフィド、高分子多硫化物などの含硫黄化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなどの硫黄供与性化合物;などが挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0042】
本発明のラテックス組成物中における、架橋剤の使用量は、共重合体ラテックス中に含まれる共重合体100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部であり、より好ましくは0.05〜3重量部、さらに好ましくは0.1〜2重量部である。架橋剤の使用量を上記範囲とすることにより、得られる積層体を風合いおよび溶剤耐性により優れたものとすることができる。
【0043】
また、架橋剤として、硫黄を使用する場合には、架橋促進剤(加硫促進剤)や、酸化亜鉛を配合することが好ましい。
【0044】
架橋促進剤(加硫促進剤)としては、特に限定されないが、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸などのジチオカルバミン酸類およびそれらの亜鉛塩;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、2−メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジエチルチオ・カルバイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(2,6−ジメチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2−(4′−モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、4−モルホニリル−2−ベンゾチアジル・ジスルフィド、1,3−ビス(2−ベンゾチアジル・メルカプトメチル)ユリアなどが挙げられる。これらのなかでも、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛が好ましい。これらの架橋促進剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。架橋促進剤の使用量は、共重合体ラテックス中に含まれる共重合体100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。
【0045】
また、酸化亜鉛の使用量は、共重合体ラテックス中に含まれる共重合体100重量部に対して、好ましくは5重量部以下、より好ましく0.1〜3重量部、さらに好ましくは0.5〜2重量部である。
【0046】
なお、本発明のラテックス組成物には、粘度を所望の範囲とするために、粘度調整剤を含有させてもよい。粘度調整剤としては、カルボキシメチルセルロース系増粘剤、ポリカルボン酸系増粘剤および多糖類系増粘剤などが挙げられる。本発明のラテックス組成物の粘度は、500〜8,000mPa・sとすることが好ましい。
【0047】
また、本発明のラテックス組成物には、必要に応じて、老化防止剤、酸化防止剤、防腐剤、抗菌剤、湿潤剤、分散剤、顔料、染料、充填材、補強材、pH調整剤などの各種添加剤を所定量添加することもできる。
【0048】
本発明のラテックス組成物の固形分濃度は、好ましくは15〜45重量%、より好ましくは25〜45重量%である。また、本発明のラテックス組成物の表面張力は、好ましくは25〜40mN/mである。
【0049】
積層体
本発明の積層体は、繊維基材上に、上述した本発明のラテックス組成物を用いてゴム層を形成してなり、繊維基材と、本発明のラテックス組成物を用いて形成されたゴム層とを備えるものである。
【0050】
繊維基材上に、上述した本発明のラテックス組成物を用いてゴム層を形成する方法としては、特に限定されないが、ディップ成形法を用いて形成することが好ましい。ディップ成形法としては、従来公知の方法を採用することができ、たとえば、直接浸漬法、アノード凝着浸漬法、ティーグ凝着浸漬法などが挙げられる。なかでも、ラテックス組成物を用いて形成されるゴム層の厚みを均一にし易いという点で、アノード凝着浸漬法が好ましい。以下、一実施形態としてのアノード凝着浸漬法によるディップ成形法を説明する。まず、繊維基材を被せたディップ成形型を凝固剤溶液に浸漬して、繊維基材の表面に凝固剤を付着させる。
【0051】
ディップ成形型としては、材質は磁器製、ガラス製、金属製、プラスチック製など種々のものが使用できる。型の形状は最終製品である積層体の形状に合わせたものとすればよい。たとえば、積層体が手袋である場合、ディップ成形型の形状は、手首から指先までの形状のもの、肘から指先までの形状のもの等、種々の形状のものを用いることができる。また、ディップ成形型は、その表面の全体または一部分に、光沢加工、半光沢加工、非光沢加工、織り柄模様加工などの表面加工が施されているものであってもよい。
【0052】
凝固剤溶液は、ラテックス粒子を凝固し得る凝固剤を、水やアルコールまたはそれらの混合物に溶解させた溶液である。凝固剤としては、特に限定されないが、ラテックス組成物を用いて形成されるゴム層の厚みを比較的厚くすることができるという観点より、2価の金属塩を用いることが好ましい。このような2価の金属塩としては、たとえば、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛等のハロゲン化金属;硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛等の硝酸塩;酢酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛等の酢酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等の硫酸塩;等が挙げられる。これらのなかでも、塩化カルシウムおよび硝酸カルシウムが好ましく、硝酸カルシウムがより好ましい。
【0053】
凝固剤は、通常、水、アルコール、またはそれらの混合物の溶液として使用する。凝固剤濃度は、通常、1〜40重量%、好ましくは2.5〜30重量%である。
【0054】
次いで、凝固剤を付着させた繊維基材を備えるディップ成形型を、上述した本発明のラテックス組成物に浸漬し、その後、ディップ成形型を引き上げ、繊維基材の表面にディップ成形層としてのゴム層を形成する。次いで、ディップ成形型に形成されたディップ成形層としてのゴム層を加熱し、ディップ成形層を構成している共重合体の架橋を行う。
【0055】
架橋のための加熱温度は、好ましくは60〜160℃、より好ましくは80〜150℃である。加熱温度が低すぎると、架橋反応に長時間要するため生産性が低下するおそれがある。一方、加熱温度が高すぎると、共重合体の酸化劣化が促進されて得られる積層体の物性が低下するおそれがある。加熱処理の時間は、加熱処理温度に応じて適宜選択すれば良いが、通常、5〜120分である。
【0056】
なお、本発明においては、本発明のラテックス組成物をディップ成形に供する前に、熟成(前加硫ともいう。)させることが好ましい。熟成させる際の温度条件としては、好ましくは20〜50℃である。また、熟成させる際の時間は、繊維基材とラテックス組成物を用いて形成されるゴム層との剥離がなく、溶剤ガスの透過性を抑制する観点から、好ましくは4時間以上120時間以下、より好ましくは24時間以上72時間以下である。この時間が短すぎたり長すぎたりすると、得られる積層体においてゴム層を形成する共重合体の繊維基材への浸透が不十分となったり、浸透しすぎたりしてしまう。
【0057】
本発明においては、ゴム層に加熱処理を施す前に、ゴム層を、20〜80℃の温水に0.5〜60分程度浸漬して、水溶性不純物(乳化剤、水溶性高分子、凝固剤など)を除去しておくことが好ましい。
【0058】
次いで、加熱処理により架橋したゴム層を含む繊維製基材を、ディップ成形型から剥がすことで、積層体を得ることができる。また、積層体をディップ成形型から剥がした後、さらに60〜120℃の温度で、10〜120分の加熱処理(後架橋工程)を行ってもよい。さらに、積層体の内側および/または外側の表面に、塩素化処理やコーティング処理などによる表面処理層を形成してもよい。
【0059】
本発明の積層体におけるゴム層の厚みは、好ましくは0.1〜0.8mm、より好ましくは0.1〜0.5mm、さらに好ましくは0.3〜0.5mmである。本発明によれば、本発明の共重合体ラテックスを用いて得られるラテックス組成物を使用して、ゴム層を形成するものであるため、ゴム層のクラックの発生を有効に抑制することでき、特に、ゴム層の厚みを上記のように比較的厚くした場合でも、ゴム層のクラックの発生を有効に抑制することできるものであり、これにより、得られる積層体を、防水性および耐薬品性などに十分優れたものとすることができる。そのため、本発明の積層体は、作業用手袋、特に家庭用、農業用、漁業用および工業用等の保護手袋に好適に用いることができる。なお、本発明の積層体を構成するゴム層は、繊維基材上に形成されるものであることから、そのミクロ構造においては、ゴム層の形状は、繊維基材の表面形状に依存することとなるが、本発明においては、繊維基材表面を構成する各繊維に着目した場合に、各繊維の繊維径のトップ部分からのゴム層の厚み(すなわち、繊維基材表面を構成する1本の繊維に着目した場合に、ゴム層が最も薄く現れる部分の厚み)を平均したものをゴム層の厚みとする。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験、評価は下記によった。
【0061】
メチルエチルケトン不溶解分量、メチルエチルケトン膨潤度
実施例及び比較例で製造した共重合体ラテックスを、キャスト法により基材上に塗布し、これを25℃で、120時間乾燥させることで、乾燥フィルムを得て、得られた乾燥フィルムの重量(この重量を「W1」とする。)を測定した。次いで、得られた乾燥フィルムを、25℃、24時間の条件にて、メチルエチルケトン中に浸漬させた後、浸漬後のフィルムについて、重量(この重量を「W2」とする。)を測定した後、105℃で、3時間乾燥して、メチルエチルケトンを除去した。そして、メチルエチルケトン除去後のフィルムについて、重量(この重量を「W3」とする。)を測定し、これらの重量の測定結果を用いて、下記式(1)、(2)に従って、メチルエチルケトン不溶解分量およびメチルエチルケトン膨潤度を求めた。
メチルエチルケトン不溶解分量(単位:重量%)=(W3/W1)×100 ・・・(1)
メチルエチルケトン膨潤度(単位:倍)=W2/W3 ・・・(2)
【0062】
ゴム層厚み
実施例及び比較例で製造した保護手袋について、ゴム層の厚みを光学顕微鏡にて測定した。具体的には、測定試料として、作製した保護手袋の中指の先から12cmの掌部分のゴム層が積層された断面を、光学顕微鏡(キーエンス社製VHX−200)を用いて観察することで、ゴム層厚みを求めた。なお、本測定においては、切断面のうち、繊維基材としての繊維製手袋表面を構成する各繊維に着目し、各繊維の繊維径のトップ部分からのゴム層の厚み(すなわち、繊維製手袋表面を構成する各繊維に着目し、ゴム層が最も薄く現れる部分の厚み)の測定を、測定視野範囲内において行い、これを平均したものをゴム層厚みとした。
【0063】
ゴム層のクラックの有無
ゴム層のクラックの有無は、実施例及び比較例で製造した保護手袋の、ゴム層を形成させた部分のき裂を評価することにより行った。具体的には、ゴム層を形成させた部分のき裂を、JIS K 6259の「附属書1(規定)き裂の評価方法」の表1(き裂の状態)に記載の「き裂の大きさ,深さ及びランク付け」における評価基準に従って行った。すなわち、実施例及び比較例で製造した保護手袋表面のき裂の状態を、上記基準にしたがって、ランク付けを行い、ランクが「1(き裂が、肉眼では見えないが10倍の拡大鏡では確認できるもの)」となったものを「○(クラック無し)」と判定し、ランクが「2(き裂が、肉眼で確認できるもの)」以上となったものを「×(クラック有り)」と判定した。さらに、き裂が、肉眼でも10倍の拡大鏡でも確認できなかったものについては、「◎(クラック無し)」と判定した。
【0064】
実施例1
(共重合体(A1)のラテックスの製造)
重合反応器に、アクリロニトリル27部、1,3−ブタジエン67.5部、メタクリル酸5.5部、t−ドデシルメルカプタン0.8部、イオン交換水132部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部、β−ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩0.5部、過硫酸カリウム0.3部およびエチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.05部を仕込み、重合温度を37℃に保持して重合を開始した。そして、重合転化率が70%になった時点で、重合温度を45℃に昇温し、継続して重合転化率が93%になるまで反応させ、その後、重合停止剤としてジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.1部を添加して重合反応を停止した。そして、得られた共重合体ラテックスから、未反応単量体を減圧にして留去した後、固形分濃度とpHを調整し、固形分濃度45重量%、pH8.5の共重合体(A1)のラテックスを得た。得られたラテックス中に含まれる共重合体(A1)の組成は、アクリロニトリル単位27重量%、1,3−ブタジエン単位68重量%、メタクリル酸単位5重量%であった。また、上記方法にしたがって測定された共重合体(A1)のラテックスのメチルエチルケトン不溶解分量は5重量%以下、メチルエチルケトン膨潤度は100倍であった。
【0065】
(ラテックス組成物の調製)
そして、上記にて得られた共重合体(A1)のラテックス(共重合体(A1)換算で100部)に、コロイド硫黄(細井化学社製)の水分散液をコロイド硫黄換算で1部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(大内神興化学工業社製)の水分散液をジブチルジチオカルバミン酸亜鉛換算で0.5部、および、酸化亜鉛(正同化学工業社製)を酸化亜鉛換算で2部となるように添加した。なお、これらを添加する際には、ラテックスを撹拌した状態で、各配合剤の水分散液を所定の量ゆっくり添加した。そして、添加物が均一に混合された後に、粘度調整剤としてアロン(東亜合成社製)を添加して、粘度を4,000mPa・sに調整することで、ラテックス組成物を得た。
また、得られたラテックス組成物はディップ成形に供する前に、熟成(前加硫ともいう。)を施して使用した。熟成させる際の温度条件を30℃とした。また、熟成させる時間を48時間とした。
【0066】
(積層体(保護手袋)の製造)
上記にて得られたラテックス組成物を使用して、積層体(保護手袋)を、以下の方法により製造した。
すなわち、まず、繊維製手袋を被せたセラミックス手袋型を、硝酸カルシウム2.5重量%のメタノール溶液からなる凝固剤溶液に10秒間浸漬し、引き上げた後に30℃で1分の条件で乾燥させて凝固剤を繊維製手袋に付着させた。その後、凝固剤を付着させた繊維製手袋を被せた手袋型を、上記にて得られたラテックス組成物に20秒間浸漬し、引き上げた後に30℃で10分間乾燥し、次いで70℃で10分間乾燥させた。その後、60℃の温水に90秒浸漬して水溶性の不純物を溶出させた後、再度30℃で10分乾燥させた。さらに125℃で30分間の熱処理を行うことで、ディップ成形層に架橋処理を施した。次いで、架橋した積層体を手袋型から剥し、繊維製手袋にゴム層が形成されてなる保護手袋を得た。そして、得られた保護手袋について、ゴム層の厚み、およびクラックの有無の測定を行った。結果を表1に示す。
【0067】
実施例2
(共重合体(A2)のラテックスの製造)
t−ドデシルメルカプタンの使用量を0.8部から0.7部に変更するとともに、重合反応を重合転化率が96%となるまで行った以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度45重量%、pH8.5の共重合体(A2)のラテックスを得た。得られたラテックス中に含まれる共重合体(A2)の組成は、アクリロニトリル単位27重量%、1,3−ブタジエン単位68重量%、メタクリル酸単位5重量%であった。また、上記方法にしたがって測定された共重合体(A2)のラテックスのメチルエチルケトン不溶解分量は50重量%、メチルエチルケトン膨潤度は70倍であった。
【0068】
(ラテックス組成物の調製、積層体(保護手袋)の製造)
そして、共重合体(A1)のラテックスに代えて、上記にて得られた共重合体(A2)のラテックスを使用した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物を調製し、調製したラテックス組成物を用いて、保護手袋を得た。そして、得られた保護手袋について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
実施例3
(共重合体(A3)のラテックスの製造)
t−ドデシルメルカプタンの使用量を0.8部から0.6部に変更するとともに、重合反応を重合転化率が96%となるまで行った以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度45重量%、pH8.5の共重合体(A3)のラテックスを得た。得られたラテックス中に含まれる共重合体(A3)の組成は、アクリロニトリル単位27重量%、1,3−ブタジエン単位68重量%、メタクリル酸単位5重量%であった。また、上記方法にしたがって測定された共重合体(A3)のラテックスのメチルエチルケトン不溶解分量は60重量%、メチルエチルケトン膨潤度は60倍であった。
【0070】
(ラテックス組成物の調製、積層体(保護手袋)の製造)
そして、共重合体(A1)のラテックスに代えて、上記にて得られた共重合体(A3)のラテックスを使用した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物を調製し、調製したラテックス組成物を用いて、保護手袋を得た。そして、得られた保護手袋について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0071】
実施例4
(共重合体(A4)のラテックスの製造)
アクリロニトリルの使用量を27部から22部に、1,3−ブタジエンの使用量を67.5部から74.5部に、メタクリル酸の使用量を5.5部から3.5部に、t−ドデシルメルカプタンの使用量を0.8部から0.6部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度45重量%、pH8.5の共重合体(A4)のラテックスを得た。得られたラテックス中に含まれる共重合体(A4)の組成は、アクリロニトリル単位22重量%、1,3−ブタジエン単位75重量%、メタクリル酸単位3重量%であった。また、上記方法にしたがって測定された共重合体(A4)のラテックスのメチルエチルケトン不溶解分量は5重量%以下、メチルエチルケトン膨潤度は130倍であった。
【0072】
(ラテックス組成物の調製、積層体(保護手袋)の製造)
そして、共重合体(A1)のラテックスに代えて、上記にて得られた共重合体(A4)のラテックスを使用した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物を調製し、調製したラテックス組成物を用いて、保護手袋を得た。そして、得られた保護手袋について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0073】
比較例1
(共重合体(A5)のラテックスの製造)
t−ドデシルメルカプタンの使用量を0.8部から0.3部に変更するとともに、重合反応を重合転化率が96%となるまで行った以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度45重量%、pH8.5の共重合体(A5)のラテックスを得た。得られたラテックス中に含まれる共重合体(A5)の組成は、アクリロニトリル単位27重量%、1,3−ブタジエン単位68重量%、メタクリル酸単位5重量%であった。また、上記方法にしたがって測定された共重合体(A5)のラテックスのメチルエチルケトン不溶解分量は77重量%、メチルエチルケトン膨潤度は36倍であった。
【0074】
(ラテックス組成物の調製、積層体(保護手袋)の製造)
そして、共重合体(A1)のラテックスに代えて、上記にて得られた共重合体(A5)のラテックスを使用した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物を調製し、調製したラテックス組成物を用いて、保護手袋を得た。そして、得られた保護手袋について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
比較例2
(共重合体(A6)のラテックスの製造)
重合開始時の保持温度を37℃から60℃に変更するとともに、重合転化率が70%になった時点における重合温度を45℃から80℃に変更した以外は、実施例3と同様にして、固形分濃度45重量%、pH8.5の共重合体(A6)のラテックスを得た。得られたラテックス中に含まれる共重合体(A6)の組成は、アクリロニトリル単位27重量%、1,3−ブタジエン単位68重量%、メタクリル酸単位5重量%であった。また、上記方法にしたがって測定された共重合体(A6)のラテックスのメチルエチルケトン不溶解分量は79重量%、メチルエチルケトン膨潤度は27倍であった。
【0076】
(ラテックス組成物の調製、積層体(保護手袋)の製造)
そして、共重合体(A1)のラテックスに代えて、上記にて得られた共重合体(A6)のラテックスを使用した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物を調製し、調製したラテックス組成物を用いて、保護手袋を得た。そして、得られた保護手袋について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0077】
比較例3
(共重合体(A7)のラテックスの製造)
アクリロニトリルの使用量を27部から32.5部に、1,3−ブタジエンの使用量を67.5部から59部に、メタクリル酸の使用量を5.5部から8.5部に、それぞれ変更するとともに、重合開始時の保持温度を37℃から40℃に変更するとともに、重合転化率が70%になった時点における重合温度を45℃から60℃に変更し、かつ、重合反応を重合転化率が96%となるまで行った以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度45重量%、pH8.5の共重合体(A7)のラテックスを得た。得られたラテックス中に含まれる共重合体(A7)の組成は、アクリロニトリル単位32重量%、1,3−ブタジエン単位60重量%、メタクリル酸単位8重量%であった。また、上記方法にしたがって測定された共重合体(A7)のラテックスのメチルエチルケトン不溶解分量は53重量%、メチルエチルケトン膨潤度は33倍であった。
【0078】
(ラテックス組成物の調製、積層体(保護手袋)の製造)
そして、共重合体(A1)のラテックスに代えて、上記にて得られた共重合体(A7)のラテックスを使用した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物を調製し、調製したラテックス組成物を用いて、保護手袋を得た。そして、得られた保護手袋について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
表1中、連鎖移動剤の使用量は、重合に使用したモノマーの合計100部に対する量。
【0080】
表1に示すように、共役ジエン単量体単位、エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、およびエチレン性不飽和酸単量体単位を所定割合で含有する共重合体のラテックスであって、共重合体のメチルエチルケトン不溶解分量が70重量%以下であり、メチルエチルケトン膨潤度が40倍以上であるものを用いた場合には、積層体(保護手袋)を構成するゴム層は、その厚みが0.3mm以上と比較的厚い場合でも、クラックの発生が有効に抑制されたものであり、ゴム層を形成することにより得られる特性、たとえば、防水性や、耐薬品性などの各種特性が十分なものであった(実施例1〜4)。
一方、共重合体のメチルエチルケトン不溶解分量が70重量%超、メチルエチルケトン膨潤度が40倍未満であるものを用いた場合には、積層体(保護手袋)を構成するゴム層は、クラックが発生してしまい、ゴム層を形成することにより得られる特性、たとえば、防水性や、耐薬品性などが十分に得られないものであった(比較例1,2)。
また、共重合体のメチルエチルケトン不溶解分量が70重量%以下ではあるものの、メチルエチルケトン膨潤度が40倍未満であるものを用いた場合にも、積層体(保護手袋)を構成するゴム層は、クラックが発生してしまい、ゴム層を形成することにより得られる特性、たとえば、防水性や、耐薬品性などが十分に得られないものであった(比較例3)。