特許第6908087号(P6908087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6908087
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】汚泥濃縮装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/125 20190101AFI20210708BHJP
   B01D 29/11 20060101ALI20210708BHJP
   B01D 29/31 20060101ALI20210708BHJP
   B01D 24/46 20060101ALN20210708BHJP
   B01D 29/62 20060101ALN20210708BHJP
【FI】
   C02F11/125ZAB
   B01D23/00 B
   B01D23/06
   !B01D23/24 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-198316(P2019-198316)
(22)【出願日】2019年10月31日
(62)【分割の表示】特願2015-213176(P2015-213176)の分割
【原出願日】2015年10月29日
(65)【公開番号】特開2020-15045(P2020-15045A)
(43)【公開日】2020年1月30日
【審査請求日】2019年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】大木 康一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 拓也
【審査官】 星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−006016(JP,A)
【文献】 特開平08−028245(JP,A)
【文献】 特開2008−138608(JP,A)
【文献】 特開2008−246430(JP,A)
【文献】 特開2005−265077(JP,A)
【文献】 特開2003−088710(JP,A)
【文献】 特開2007−222726(JP,A)
【文献】 特開2006−075675(JP,A)
【文献】 特開2006−000743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00−11/20
B01D 23/00−35/04
B01D 35/08−37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の小穴を有したパンチングメタルの一重の円筒状巻回体よりなる濾過筒と、
該濾過筒の内部に収容されたスパイラルスクリューとを備え、
該スパイラルスクリューを回転駆動することによって、前記濾過筒内に導入された汚泥を搬送しながら、該汚泥に含まれる水分を前記濾過筒の小穴を通過させて汚泥を濃縮する汚泥濃縮装置において、
前記汚泥は凝集汚泥であり、
前記パンチングメタルの板厚が0.6〜0.8mmであり、
前記パンチングメタルの小穴の直径が0.5〜0.85mmであり、
前記濾過筒のパンチングメタルのすべての前記小穴がパンチングメタルの継目から離隔しており、継目の全域においてパンチングメタルの辺縁同士が溶接されていることを特徴とする汚泥濃縮装置。
【請求項2】
請求項1において、前記濾過筒内周面と前記スパイラルスクリューとのクリアランスが0.3〜0.8mmであることを特徴とする汚泥濃縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥を脱水して濃縮するための汚泥濃縮装置に係り、特に濾過筒内でスパイラルスクリューを回転駆動することによって、濾過筒内に導入された汚泥を搬送しながら濃縮する汚泥濃縮装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種汚泥を廃棄又は焼却するため、汚泥を脱水機にて脱水処理することが行われるが、脱水機に供給される汚泥は、その濃度が高い程、効率的に脱水処理することができる。このため、汚泥の脱水機による脱水処理に先立って、汚泥を凝集剤で凝集させ、この凝集された汚泥(凝集汚泥)から水分を分離して汚泥を脱水処理に適した濃度まで濃縮することが行われ、これを実施するための汚泥濃縮装置が種々提案されて実用に供されている。
【0003】
このような汚泥濃縮装置として、特許文献1に記載された汚泥濃縮装置を図7に示す。
【0004】
凝集汚泥導入管30から汚泥濃縮装置33の濾過筒38内の上部に導入された汚泥は、モータMによって回転するスパイラルスクリュー39によって濾過筒38内を下方へと搬送されながら、水分がパンチングメタルよりなる濾過面38aを通過する。この水分は、分離液として外筒37と濾過筒38の間の空間40に収容され、分離液排出管43から外部に排出される。濃縮された濃縮汚泥は、濾過筒38の下部から濃縮汚泥排出管41へと排出される。
【0005】
濃縮運転によって濾過筒38の濾過面38aに目詰まり等が生じた場合には、圧縮空気供給管44から外筒37内に圧縮空気を噴射し、濾過面38aに目詰まりを生じさせている固形物を除去する。また、洗浄体45を濾過筒38の外周面に沿って上下動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−6016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の汚泥濃縮装置にあっては、濾過筒38は、図6のように多数の小穴51を有したパンチングメタル50を後述の図5と同様にして円筒状に丸め、パンチングメタル50の1対の辺部50a,50bを突き合わせ、該辺部50a,50b同士を溶接によって結合して円筒状としたものである。
【0008】
従来では、パンチングメタル50の該辺部50aには、略半円形の半穴52があいている。この半穴52部分は溶接されないので、辺部50a,50b同士の溶接強度が低いものとなっており、濾過筒38の強度、耐久性を低下させる一因となっていた。また、濾過筒38の上端及び下端には、後述の環状座が溶接されるが、濾過筒38の上端辺及び下端辺でも半穴52が存在しており、環状座への溶接強度が低いものとなっている。
【0009】
また、特許文献1の汚泥濃縮装置では、上記の通り、濾過筒38に目詰りが生じたときに圧縮空気を噴射して目詰りを解消するが、圧縮空気が直射される圧縮空気噴射ノズル近傍において圧縮空気圧により濾過筒38に損傷や変形が生じ易かった。
【0010】
本発明は、強度及び耐久性に優れた濾過筒を有する汚泥濃縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の汚泥濃縮装置は、多数の小穴を有したパンチングメタルの一重の円筒状巻回体よりなる濾過筒と、該濾過筒の内部に収容されたスパイラルスクリューとを備え、該スパイラルスクリューを回転駆動することによって、前記濾過筒内に導入された汚泥を搬送しながら、該汚泥に含まれる水分を前記濾過筒の小穴を通過させて汚泥を濃縮する汚泥濃縮装置に関するものである。
第1発明では、前記濾過筒のパンチングメタルのすべての前記小穴がパンチングメタルの継目から離隔しており、継目の全域においてパンチングメタルの辺縁同士が溶接されている。
第2発明では、前記濾過筒に向って濾過筒外側から圧縮空気を噴射するノズルが設けられており、該濾過筒の外周面のうち該ノズルに対面するノズル対峙部位に、該ノズルから噴射された圧縮空気が濾過筒を直射することを防止するための遮風板が設置されている。
【0012】
本発明では、前記パンチングメタルの板厚が0.4〜0.8mmであることが好ましい。また、前記濾過筒内周面と前記スパイラルスクリューとのクリアランスが0.3〜0.8mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
第1発明の汚泥濃縮装置にあっては、濾過筒を構成するパンチングメタルの小穴が濾過筒の溶接継目から離隔しており、濾過筒の溶接強度が高く、耐久性に優れる。
第2発明では、濾過筒の目詰り清掃用の圧縮空気噴射ノズルに対峙するように遮風板を設けたことにより、圧縮空気による濾過筒の損傷、変形が防止される。
【0014】
濾過筒のパンチングメタルの厚さを0.4〜0.8mmと大きくすることにより、濾過筒の強度、耐久性が向上する。濾過筒とスパイラルスクリューとのクリアランスを0.3〜0.8mmと大きくすることにより、濾過筒とスパイラルスクリューとの接触が防止され、汚泥濃縮装置の耐久性が向上する。クリアランスを0.3〜0.8mmと大きくしても、濾過性能は維持される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態に係る汚泥濃縮装置の縦断面図である。
図2図1のII部分の拡大図である。
図3図2のIII−III線断面図である。
図4】実施の形態に係るパンチングメタルの一部拡大図である。
図5】濾過筒の上部の模式的な斜視図である。
図6】従来例に係るパンチングメタルの一部拡大図である。
図7】従来例に係る汚泥濃縮装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1〜5を参照して実施の形態に係る汚泥濃縮装置について説明する。
【0017】
図1〜3の通り、この汚泥濃縮装置1は、パンチングメタルの一重の円筒状巻回体よりなる濾過筒2を有している。濾過筒2は、円筒の軸心線を上下方向として設置されている。濾過筒2の上側に上筒3が連なり、濾過筒2の下側に下筒4が連なっている。上筒3及び下筒4の内径は濾過筒2と同一か、又はそれよりも若干大きなものとなっている。濾過筒2と、上筒3及び下筒4とは同軸状となっている。上筒3に汚泥の導入口5が設けられ、下筒4に脱水汚泥の排出口6が設けられている。上筒3の上縁のフランジ3aに上蓋7が取り付けられ、下筒4の下縁のフランジ4aに底蓋8が取り付けられている。
【0018】
上筒3、濾過筒2及び下筒4内を縦通するようにしてスパイラルスクリュー10がこれらと同軸状に配置されている。スパイラルスクリュー10の上端は、上蓋7を貫通して駆動装置11に連結されている。スパイラルスクリュー10の下端は、底蓋8の中央部の軸受部12に回動可能に支持されている。
【0019】
スパイラルスクリュー10は、軸(シャフト)10aと、スパイラル状の羽根10bとを有している。羽根10bと濾過筒2との間のクリアランスCは0.3〜0.8mm具体的には0.5mmに設定されている。
【0020】
濾過筒2を取り巻くように、濾液流出口13a,13bを有した外筒15が濾過筒2と同軸状に設けられている。濾液流出口13aは外筒15の上部に設けられ、濾液流出口13bは外筒15の下部に設けられている。濾過筒2と外筒15との間が濾液排出室14となっている。
【0021】
外筒15の上端にはフランジ15aが設けられ、上筒3の下縁のフランジ3bが重ね合わされ、ボルト等によってフランジ3b、15aが固定されている。フランジ15aは内方へ鍔状に張り出しており、その内周縁に環状座15bが嵌合している。環状座15bは短い円筒状のものである。この環状座15bの内周面に濾過筒2の上端部が内嵌し、溶接等によって固定されている。
【0022】
外筒15の下端にはフランジ15cが設けられ、下筒4の上縁のフランジ4bが重ね合わされ、ボルト等によってフランジ4b、15cが固定されている。フランジ15cは内方へ鍔状に張り出しており、その内周縁に環状座15dが嵌合している。環状座15dは短い円筒状のものである。この環状座15dの内周面に濾過筒2の下端部が内嵌し、溶接等によって固定されている。
【0023】
外筒15の下部に圧縮空気の噴射用の開口16が設けられ、該開口16に圧縮空気噴射用ノズル17が接続されている。この実施の形態では、該ノズル17は外筒15内の濾液排出室14内に圧縮空気を周回方向に吹き込むように、外筒15の直径方向と交差する角度で外筒15に接続されている。開口16の中心を通る外筒15の直径方向の線Lと、該ノズル17の軸心方向の線Lとの挟角αは50〜70°程度であるが、濾液排出室14内に圧縮空気が周回方向に吹き込まれるように接続されていればよく、これに限定されない。
【0024】
濾過筒2の外周面に沿って、開口16と対面する位置に、遮風板18が設けられている。遮風板18は、円弧状に湾曲した板材よりなり、濾過筒2の外周面に重なっている。遮風板18は、濾過筒2の中心に対し周方向角度θが50〜70°程度となるように周方向に延在している。遮風板18は、その下端に、外方へ張り出す脚片18aを備えており、L字形縦断面形状となっている。この脚片18aが環状座15dの上面に当接し、ボルト(図示略)によって環状座15dに固定されている。遮風板18は、厚さ約3mm程度のステンレス板製とされているが、これに限定されない。
【0025】
外筒15の上下方向の中間付近には、濾液排出室内に洗浄水を供給するための給水口20が設けられ、洗浄水噴射ノズル21が接続されている。
【0026】
次に濾過筒2の構成について図4,5を参照して説明する。この濾過筒2は、長方形の薄板状のパンチングメタル22を一重の円筒状に巻回し、パンチングメタル22の1対の辺22a,22b同士を突き合わせ、溶接して円筒形としたものである。パンチングメタル22は多数の小穴23を有しているが、小穴23は辺22a,22bからは離隔している。パンチングメタル22は、辺22a,22bに沿う部分は、その全長に渡って無穴の板状となっている。この無穴の板状の辺22a,22b同士を溶接したことにより、溶接継目2a上には小穴23が全く存在しない。このため、濾過筒2は溶接継目2a付近の強度が高く、耐久性に優れる。また、小穴23は、パンチングメタル22の上端側及び下端側の辺22cからも離隔しており、パンチングメタル22は辺22cに沿う部分も全長に渡って無穴の板状となっている。この無穴の辺22cを環状座15b,15dに溶接したことにより、濾過筒2と環状座15b,15dとの連結強度が高い。
【0027】
このパンチングメタル2の厚さtは好ましくは0.4〜0.8mmであり、本実施の形態では0.6mmとされている。これにより、濾過筒2の内周側及び外周側の双方から溶接することが可能となり、濾過筒2の強度、耐久性が向上する。なお、この厚さtを0.6mm程度とすると、溶接時のひずみの影響が極めて小さくなると共に、厚さt=0.5mmのものに比べてたわみ量が約40%低減されることが認められた。濾過筒2の厚さtを大きくしたことによる濾過筒2の強度向上効果と、遮風板18を設けたことによる効果が重畳することにより、濾過筒2の耐久性が向上し、汚泥濃縮装置の信頼性も著しく高いものとなる。
【0028】
小穴23の直径は好ましくは0.5〜0.85mmであり、本実施の形態では0.8mmとされている。t=0.6mm、小穴直径=0.8mmの場合、t=0.5mm、小穴直径0.6mmの場合と濾過性能に差異はないことが認められた。
【0029】
前述の通り、濾過筒2とスパイラルスクリュー10とのクリアランスCを約0.5mmとしている。従来ではC=0.3〜0.4mmとしているが、C=0.5mmとしてもC=0.3〜0.4mmの場合と遜色ない濾過性能が得られることが認められた。これにより、製作要求精度を緩和しても濾過筒2とスパイラルスクリュー10との接触が防止されるので、濾過筒2の製作コストが低減される。
【0030】
なお、この汚泥濃縮装置1においても、被処理汚泥は、導入口5から濾過筒2内に導入され、駆動装置11によって回転するスパイラルスクリュー10によって濾過筒2内を下方へ搬送される。この間に水位差を駆動力として、濾液が濾過筒2の小穴23を通過し、濾液排出室14から濾液排出口13a,13bを介して外筒15外に排出される。濃縮された汚泥は、排出口6から排出される。小穴23の目詰りを清掃するために、タイマー等によって定期的に(又は必要に応じ)、ノズル17から圧縮空気を噴射すると共にノズル21から洗浄水を噴射する。
【0031】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の構成とされてもよい。例えば遮風板18は濾過筒2から離隔させて設けてもよい。また、圧縮空気噴射ノズル17や、洗浄水噴射ノズル21は、設置位置を異ならせて複数個設置されてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1,33 汚泥濃縮装置
2,38 濾過筒
10,39 スパイラルスクリュー
15 外筒
17 圧縮空気噴射ノズル
18 遮風板
21 洗浄水噴射ノズル
22,50 パンチングメタル
23,51 小穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7