【文献】
辻下昌之,燃料・オイルの組成解析技術,住化分析センター SCAS NEWS,日本,株式会社住化分析センター,2017年 8月28日,vol.46,第13−16頁,URL,scas.co.jp/development/scas-news/sn-back-issues/sn-2017-2 web p13-16.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般的に潤滑油組成物に用いられる潤滑油基油は、原油に対して蒸留処理を行った後、各種精製処理を施して、所望の物性を有するように製造されている。
潤滑油基油の製造方法の多くの場合、蒸留処理を行った未精製の留出油は、多量のパラフィンワックス(以下、単に「ワックス分」ともいう)を含むため、流動点が高い。
流動点の低い潤滑油基油とするため、留出油からワックス分を除去するための脱ろう処理が行われる。
【0003】
通常、脱ろう処理は、溶剤脱ろう装置を用いて、ワックス分を含む留出油である脱ろう原料に、メチルエチルケトン等の溶剤を加えて混合して混合油とした後、当該混合油を所望の流動点を下回る温度まで冷却して、ワックス分を析出させて行われる。そして、ワックス分を析出した混合油は、フィルターを通し、ワックス分と脱ろう油とに濾過分離する。
【0004】
近年、潤滑油基油の需要増加に伴い、脱ろう処理での処理量の増加が求められている。
しかしながら、脱ろう原料の供給量を増加しても、フィルターでの濾過速度が遅いため処理量を十分に上げられないという問題が存在する。
脱ろう処理におけるフィルター濾過性を向上させるために、各種ポリマーが脱ろう助剤として添加される場合がある。
例えば、特許文献1には、脱ろう助剤として、少なくとも4つの共重合体を有する混合物を用いた、鉱物組成物からパラフィン(ワックス分)の割合を低下させる方法が開示されている。
特許文献1では、より具体的に、炭素数18〜22(平均20)のアルキル基を有するアルキルアクリレートと、炭素数16〜18(平均17.3)のアルキル基を有するアルキルメタクリレートとの混合モノマーを重合して得られる4種以上の共重合体を用いて、鉱油組成物を脱ろうした際の濾過容量を測定し、フィルター濾過性についての検討されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔脱ろう油の製造方法〕
本発明の脱ろう油の製造方法は、下記工程(1)〜(3)を有する。
・工程(1):ワックス分を含有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定した重量平均分子量(Mw)が900以上である石油留出油に、芳香族モノマーに由来する構成単位(a1)を有するポリマー(A)を添加し、処理液を調製する工程。
・工程(2):前記処理液を冷却し、ワックス分を析出させる工程。
・工程(3):工程(2)の後、前記処理液に対して濾過処理を施し、析出したワックス分を分離し、脱ろう油を得る工程。
【0012】
本発明の脱ろう油の製造方法では、原料油として、ワックス分を含有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定した重量平均分子量(Mw)が900以上である石油留出油(以下、単に「石油留出油」ともいう)を使用する。
一般的に、上記のような高分子量の石油留出油の脱ろう処理において、冷却して析出したワックス分と脱ろう油とを分離するためにフィルターを通す際に、濾過量が低下し、フィルター濾過性が悪化するという問題を有する。
このような問題に対して、本発明の脱ろう油の製造方法では、上記石油留出油に、脱ろう助剤として、芳香族モノマーに由来する構成単位(a1)を有するポリマー(A)を添加した処理液を調製している。
処理液中にポリマー(A)を添加することで、当該処理液を冷却した際に析出するワックス分の形状及び大きさが調整され、液体成分を透過しやすいフィルターケーキを形成しやすくなるものと推測される。その結果、フィルター濾過性に優れ、脱ろう油の生産性を向上し得ると考えられる。
【0013】
始めに、本発明の脱ろう油の製造方法において、脱ろう原料となる「石油留出油」、及び、脱ろう助剤となる「ポリマー(A)」について説明する。
【0014】
<石油留出油>
本発明で用いる石油留出油は、例えば、パラフィン系原油、中間基系原油、ナフテン系原油等の原油を常圧蒸留もしくは減圧蒸留して得られる蒸留塔の塔底に蓄積する残渣油等が挙げられる。
当該残渣油は、重量平均分子量が高く、脱ろう処理や各種精製処理を施して得られるブライトストックの原料となるものである。
【0015】
本発明の一態様で用いる石油留出油の重量平均分子量としては、900以上であるが、好ましくは1000以上、より好ましくは1100以上、更に好ましくは1200以上、より更に好ましくは1300以上であり、また、通常3000以下である。
なお、本明細書において、石油留出油の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定した値である。
【0016】
本発明の一態様で用いる石油留出油の100℃における動粘度としては、好ましくは20.0〜60.0mm
2/s、より好ましくは23.0〜55.0mm
2/s、更に好ましくは25.0〜50.0mm
2/sである。
なお、本明細書において、動粘度は、JIS K2283:2000に準拠して測定及び算出された値を意味する。
【0017】
本発明の一態様で用いる石油留出油の引火点としては、好ましくは300℃以上、より好ましくは310℃以上、更に好ましくは320℃以上であり、また、通常350℃以下である。
なお、本明細書において、引火点は、JIS K2265−4に準拠し、クリーブランド開放法(COC法)により測定された値を意味する。
【0018】
本発明の一態様で用いる石油留出油の
13C−NMRスペクトルにおける化学シフト10〜50ppmでの全炭素原子に対する3級炭素原子の割合は、通常1.5〜2.5%である。
なお、本明細書において、3級炭素原子の割合は、実施例に記載の方法に基づき、測定された値を意味する。
当該3級炭素原子の割合は、石油留出油中に含まれる分岐鎖パラフィンの含有量を間接的に示すものであり、その残りは、直鎖パラフィンの含有量を示しているといえる。
つまり、本発明で用いる石油留出油は、上述のとおり、高分子量の成分を多量に含むものであるが、分岐鎖パラフィンの含有割合は少なく、直鎖パラフィンの含有割合が多い傾向にある。
一般的に、直鎖パラフィンは、常温で固化し易く、脱ろう処理において析出されるワックス分のほとんどが直鎖パラフィンである。
また、直鎖パラフィンは、ある一つの方向に成長し易いことから板状結晶を形成し易い。この板状結晶間には、油分を多く含みやすいことが知られており、脱ろう処理の際にフィルター濾過性をより悪化させる要因となる。
しかしながら、本発明の脱ろう油の製造方法によれば、このような直鎖パラフィンを比較的多く含む石油留出油を用いた場合においても、フィルター濾過性を改善し、脱ろう油の生産性を向上し得る。
【0019】
また、本発明の一態様で用いる石油留出油の流動点としては、通常40〜50℃である。
なお、本明細書において、流動点は、JIS K2269:1987に準拠して測定された値を意味する。
【0020】
<ポリマー(A)>
本発明で用いるポリマー(A)は、芳香族モノマーに由来する構成単位(a1)を有する重合体であるが、構成単位(a1)と共に、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(a2)を有する共重合体であってもよく、構成単位(a1)及び(a2)以外の他の構成単位(a3)を有する共重合体であってもよい。
【0021】
ポリマー(A)の重量平均分子量としては、好ましくは5〜120万、より好ましくは10万〜100万、更に好ましくは20万〜80万、より更に好ましくは20万〜50万である。
【0022】
(構成単位(a1))
構成単位(a1)を構成する芳香族モノマーとしては、重合性基を有する芳香族化合物であればよく、例えば、スチレン、メチルスチレン及びエチルスチレン等のアルキル置換スチレン、並びに、ブロモスチレン等のハロゲン置換スチレン等のスチレン系モノマー;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族基含有(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン、ジビニルキシレン、ジビニルビフェニル、ビス(ビニルフェニル)メタン、ビス(ビニルフェニル)エタン、ビス(ビニルフェニル)プロパン、ビス(ビニルフェニル)ブタン等の芳香族基含有ビニル化合物;等が挙げられる。
これらの芳香族モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、当該芳香族モノマーとしては、スチレン系モノマーが好ましく、スチレンがより好ましい。
【0023】
本発明の一態様で用いるポリマー(A)において、構成単位(a1)の含有量は、ポリマー(A)の構成単位の全量(100質量%)基準で、好ましくは12質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、また、通常100質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0024】
(構成単位(a2))
構成単位(a2)を構成するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのアルキル(メタ)アクリレートは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
構成単位(a2)を構成するアルキル(メタ)アクリレートが有するアルキル基の炭素数としては、好ましくは1〜40、より好ましくは1〜30、更に好ましくは1〜20である。
なお、当該アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
【0026】
本発明の一態様で用いるポリマー(A)において、構成単位(a2)の含有量は、ポリマー(A)の構成単位の全量(100質量%)基準で、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、より更に好ましくは60質量%以上であり、また、好ましくは88質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
【0027】
(構成単位(a3))
構成単位(a3)を構成するモノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール類が挙げられる。
カルボキシ基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸及びその無水物、2−カルボキシエチルメタクリレート等が挙げられる。
エポキシ基を有するモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0028】
本発明の一態様で用いるポリマー(A)において、構成単位(a3)の含有量は、ポリマー(A)の構成単位の全量(100質量%)基準で、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%、更に好ましくは2〜10質量%である。
【0029】
以下、本発明の脱ろう油の製造方法の各工程について説明する。
【0030】
<工程(1)>
工程(1)は、上述の石油留出油にポリマー(A)を添加し、処理液を調製する工程である。
原料油となる石油留出油、及び、ポリマー(A)の詳細は、上述のとおりである。
工程(1)における、前記石油留出油の全量100体積%に対する、ポリマー(A)の樹脂分換算での配合量としては、フィルター濾過性をより向上させ、脱ろう油の生産性を高める観点から、好ましくは50体積ppm以上、より好ましくは200体積ppm以上、更に好ましくは300体積ppm以上、より更に好ましくは500体積ppm以上、特に好ましくは650体積ppm以上であり、また、好ましくは2000体積ppm以下、より好ましくは1500体積ppm以下、更に好ましくは1000体積ppm以下、より更に好ましくは900体積ppm以下である。
【0031】
なお、工程(1)において、石油留出油に、さらに有機溶剤を配合し、処理液を調製することが好ましい。
当該有機溶剤としては、例えば、アセトン、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メチレンクロリド、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のN−アルキルピロリドン;トルエン、キシレン等の芳香族類;等が挙げられる。
これらの有機溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0032】
本発明の一態様において、パラフィン分(%C
P)の割合を低下させた脱ろう油を製造する観点から、有機溶剤としては、ケトン類と芳香族類との混合溶剤を用いることが好ましく、メチルエチルケトンとトルエンとの混合溶剤を用いることがより好ましい。
ケトン類と芳香族類との混合溶剤を用いる場合、当該混合溶剤中のケトン類と芳香族類の含有量比〔ケトン類/芳香族類〕としては、体積比で、好ましくは5/95〜95/5、より好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜80/20、より更に好ましくは30/70〜70/30である。
なお、メチルエチルケトンとトルエンとの混合溶剤を用いる場合においても、両者の含有量比は上記範囲であることが好ましい。
【0033】
本工程で調製する処理液中の有機溶剤と石油留出油との含有量比〔有機溶剤/石油留出油〕としては、質量比で、好ましくは1/1〜15/1、より好ましくは2/1〜10/1、更に好ましくは2.5/1〜8/1、より更に好ましくは3/1〜6/1である。
【0034】
工程(1)において、石油留出油、ポリマー(A)、及び有機溶剤を配合し、撹拌して、処理液を調製する。
なお、調製した処理液の温度としては、好ましくは55〜80℃、より好ましくは60〜78℃、更に好ましくは65〜75℃である。
【0035】
<工程(2)>
工程(2)は、工程(1)で得た前記処理液を冷却し、ワックス分を析出させる工程である。
工程(2)における冷却後の処理液の温度としては、得られる脱ろう油の所望の流動点によって適宜設定されるが、好ましくは−40〜0℃、より好ましくは−30〜−5℃、更に好ましくは−25〜−10℃である。
工程(2)における処理液の冷却速度としては、好ましくは0.5〜5.0℃/分、より好ましくは1.0〜4.0℃/分、更に好ましくは2.0〜3.0℃/分である。
【0036】
<工程(3)>
工程(3)は、工程(2)の後、前記処理液に対して濾過処理を施し、析出したワックス分を分離し、脱ろう油を得る工程である。
工程(3)での濾過処理時の処理液の温度としては、上記工程(2)での冷却後の処理液の温度と同程度であることが好ましく、具体的には、好ましくは−40〜0℃、より好ましくは−30〜−5℃、更に好ましくは−25〜−10℃である。
【0037】
一般的に、原料油として、上述の高分子量の石油留出油を用いると、フィルター濾過性の低下が問題となる。
しかしながら、本発明の脱ろう油の製造方法においては、工程(1)の処理液の調製の際に、ポリマー(A)を添加しているため、フィルター濾過性が大幅に向上し得る。
本発明の一態様において、工程(3)における濾過処理の濾過速度としては、好ましくは0.060cm
3/(cm
2・s)以上、より好ましくは0.080cm
3/(cm
2・s)以上、更に好ましくは0.095cm
3/(cm
2・s)以上、より更に好ましくは0.100cm
3/(cm
2・s)以上、特に好ましくは0.120cm
3/(cm
2・s)以上である。
【0038】
また、本発明の一態様において、単位面積当たりの濾過量が、以下の量に到達するまでの時間の好適値は、下記のとおりである。
・濾過量1.88cm
3/cm
2に到達するまでの時間:好ましくは30秒未満、より好ましくは25秒未満、更に好ましくは20秒未満、より更に好ましくは17秒未満、特に好ましくは15秒未満。
・濾過量2.45cm
3/cm
2に到達するまでの時間:好ましくは45秒未満、より好ましくは40秒未満、更に好ましくは30秒未満、より更に好ましくは25秒未満、特に好ましくは20秒未満。
・濾過量3.01cm
3/cm
2に到達するまでの時間:好ましくは60秒未満、より好ましくは50秒未満、更に好ましくは40秒未満、より更に好ましくは35秒未満、特に好ましくは30秒未満。
・濾過量3.57cm
3/cm
2に到達するまでの時間:好ましくは70秒未満、より好ましくは60秒未満、更に好ましくは50秒未満、より更に好ましくは45秒未満、特に好ましくは40秒未満。
【0039】
工程(3)の濾過処理により得られた脱ろう油の流動点としては、好ましくは−5℃以下、より好ましくは−10℃以下、更に好ましくは−15℃以下、より更に好ましくは−18℃以下であり、また、通常−40℃以上、好ましくは−30℃以上である。
得られる脱ろう油の流動点が−5℃以下であれば、原料油である石油留出油に含まれていたワックス分が十分に除去されているといえる。
【0040】
また、工程(3)の濾過処理により得られた脱ろう油のパラフィン分(%C
P)は、好ましくは65〜80、より好ましくは68〜78、更に好ましくは70〜75である。
当該脱ろう油のナフテン分(%C
N)は、好ましくは18〜33、より好ましくは20〜30、更に好ましくは22〜27である。
当該脱ろう油の芳香族分(%C
A)は、好ましくは0.1〜10、より好ましくは1.0〜8.0、更に好ましくは1.5〜4.0である。
なお、本明細書において、脱ろう油のパラフィン分(%C
P)、ナフテン分(%C
N)及び芳香族分(%C
A)は、ASTM D−3238環分析(n−d−M法)により測定された値を意味する。
【0041】
工程(3)により得られた脱ろう油は、さらに精製処理を施してもよい。
精製処理としては、例えば、水素化異性化処理、水素化仕上げ処理、白土処理等が挙げられる。
【実施例】
【0042】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、各種物性の測定法又は評価法は、下記のとおりである。
【0043】
(1)100℃における動粘度
JIS K2283:2000に準拠して測定した。
(2)引火点
JIS K2265−4に準拠し、クリーブランド開放法(COC法)により測定した。
(3)流動点
JIS K2269:1987に準拠して測定した。
(4)パラフィン分(%C
P)、ナフテン分(%C
N)芳香族分(%C
A)
ASTM D−3238環分析(n−d−M法)により測定した。
【0044】
(5)石油留出油の3級炭素の割合
測定対象となる石油留出油を重クロロホルム溶剤に溶解させた試料について、核磁気共鳴装置(NMR装置)(ブルカー・バイオスピン社製、製品名「BURUKERDRX500MHz」)を用いて、下記の測定条件にて、
13C−NMRスペクトルを得た。
得られた
13C−NMRスペクトルの化学シフト10〜50ppmの範囲における全ピークの面積の合計に対する、三級炭素原子に由来するピークの面積の割合を、全炭素原子に対する「3級炭素原子の割合」とし、算出した。
(測定条件)
・共鳴周波数:125MHz
・測定条件フリップアングル:30度パルス
・パルス繰り返し時間:10秒
・積算回数:1000回
・化学シフトの基準:クロロホルム由来の3本のピークのうち、真ん中のピークを77.23ppmに設定
・観測中心:100ppm
・スペクトル幅:238ppm
【0045】
(6)重量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法に準拠し測定し、標準ポリスチレン換算にて算出した。使用したGPC装置及びカラム、並びに、測定条件は下記のとおりである。
・GPC装置:Waters 1515 Isocratic HPLC Pump + Waters 2414 Refractive Index Detector
・カラム:「TSKgel SuperMultiporeHZ−M」(東ソー社製)を2本連結したもの
・カラム温度:40℃
・溶離液:テトラヒドロフラン
・流速:0.35mL/min
・検出器:屈折率検出器
・標準試料:ポリスチレン
【0046】
実施例1〜3、比較例1〜2、参考例1〜3
表1に示す種類の石油留出油に対して、表1に示す種類及び配合量のポリマーを添加し、さらに、表1に示す配合量のトルエン及びメチルエチルケトン(MEK)の混合溶媒(トルエン/MEK=1/1(体積比))を加えて、70℃の処理液を調製した。
そして、この調製した処理液を表1に示す温度まで冷却し、ワックス分を析出させた。
次いで、通気度150m
3/m
2/分の濾布を用いて、減圧度−70kPaにて、冷却後の処理液を吸引濾過し、析出したワックス分を分離し、脱ろう油を得た。
なお、この際の濾過速度及び単位面積当たりの濾過量が1.88、2.45、3.01、及び3.57(単位はいずれも「cm
3/cm
2」)に到達するまでの時間は表1に示すとおりであった。
【0047】
実施例、比較例、及び参考例で使用した、表1に示す石油留出油及びポリマーの詳細は以下のとおりである。
<石油留出油>
・「残渣油」:原油を減圧蒸留した際に塔底に残存している残渣油を水素化精製して得られた、ワックス分を含有する残渣油。Mw=1440、Mw/Mn=1.1、100℃動粘度=30mm
2/s、流動点=45℃、引火点=325℃、3級炭素の割合=2.0%。
・「500N鉱油」:ワックス分を含有する鉱油。Mw=869、Mw/Mn=1.1、100℃動粘度=10mm
2/s、流動点=40℃、引火点=260℃、3級炭素の割合=2.7%。
【0048】
<ポリマー>
・「ポリマー(1)」:製品名「VISCOPLEX9シリーズ」(Evonik社製)。スチレンに由来の構成単位とアルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位とを有する、Mw=40万の共重合体。
・「ポリマー(2)」:製品名「AR101M」(三洋化成工業株式会社製)。芳香族モノマーに由来の構成単位を有さず、アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位を有する共重合体。
・「ポリマー(3)」:製品名「R148」(Infineum社製)。芳香族モノマーに由来の構成単位を有さず、アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位を有する共重合体。
【0049】
【表1】
【0050】
なお、実施例1で得た脱ろう油について、パラフィン分(%C
P)=71.3、ナフテン分(%C
N)=25.8、芳香族分(%C
A)=2.9であった。
また、参考例1で得た脱ろう油について、パラフィン分(%C
P)=69.3、ナフテン分(%C
N)=28.3、芳香族分(%C
A)=2.4であった。
【0051】
表1より、実施例1〜3では、原料油として、高分子量の減圧蒸留後の残渣油を用いているにも関わらず、比較例1〜2に比べて、濾過速度が速く、所定の濾過量の到達時間も短く、フィルター濾過性に優れた結果となった。また、実施例1〜3で得られた脱ろう油は、流動点が低いことから、ワックス分も十分に除去されているといえる。
なお、実施例1〜3でのフィルター濾過性は、500N鉱油を用いた参考例1〜3と比べて、同程度以上の効果を有する結果となった。