(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6908448
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/015 20060101AFI20210715BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20210715BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20210715BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20210715BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20210715BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20210715BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20210715BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20210715BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
A61K31/015
A61P29/00
A61P37/08
A61P1/04
A61P1/02
A61K47/10
A61K47/18
A61K47/26
A61K9/20
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-125913(P2017-125913)
(22)【出願日】2017年6月28日
(65)【公開番号】特開2019-6736(P2019-6736A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】野崎 学
【審査官】
藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−145049(JP,A)
【文献】
特開2018−108955(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102283949(CN,A)
【文献】
特開平01−279816(JP,A)
【文献】
特許第6871086(JP,B2)
【文献】
口内炎治療用院内製剤の基礎的および臨床的研究,薬剤学,1999年,Vol. 59, Suppl.,p. 22-23
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
A61K 31/015
A61K 9/20
A61K 47/10
A61K 47/18
A61K 47/26
A61P 1/02
A61P 1/04
A61P 29/00
A61P 37/08
・DB
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アズレン誘導体と、(B)多価アルコールと、(C)アミノ安息香酸エチルと、を含み、固形状の口腔粘膜適用外用剤である、医薬組成物。
【請求項2】
さらに(D)糖アルコールを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記(A)成分が、アズレンスルホン酸及びその塩、並びにジメチルイソプロピルアズレンよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
(A)アズレン誘導体と(B)多価アルコールとを含む医薬組成物において、前記(A)成分の安定性を向上させる安定性向上方法であって、
医薬組成物において、前記(A)成分と前記(B)成分と共に、(C)アミノ安息香酸エチルを配合する、安定性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アズレン誘導体を含みながらも、安定性が向上し、優れた製剤安定性を有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アズレン誘導体は、消炎作用、抗アレルギー作用、抗潰瘍作用を有し、口腔咽喉薬や胃腸薬の有効成分として広く使用されている。しかしながら、アズレン誘導体は熱、光あるいは水分で経時的に分解しやすく、通常の製剤での長期保存は困難であった。アズレン誘導体の安定化方法としては、凍結乾燥などを用いることにより無晶化して安定にする方法(特許文献1)、脱酸素剤と共に密封包装する方法(特許文献2)などが挙げられるが、これらの方法では多くの設備と人手を要する。一方、アズレン誘導体に対する安定化剤として、アミノ酸および弱塩基性アルカリ塩を添加する方法(特許文献3)を添加する方法、アルミニウム塩(乳酸アルミニウム、リン酸アルミニウム等)を添加する方法(特許文献4)、エデト酸およびその塩類を添加する方法(特許文献5)、多価アルコールとして特にプロピレングリコールを添加する方法(特許文献6)などが検討されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58−154547号
【特許文献2】特開昭59−176247号公報
【特許文献3】特公昭49−11219号公報
【特許文献4】特開昭59−157014号公報
【特許文献5】特開平1−121216号公報
【特許文献6】特公平2−42811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アズレン誘導体に対する安定化剤として、多価アルコール、特にプロピレングリコールといった液体添加物を添加する方法は、簡便性の点で好ましい。しかしながら、本発明者は、アズレン誘導体を含む医薬組成物を実用化すべく検討を進めたところ、多価アルコールを添加物として用いたとしても、その安定化効果は、実用に耐える長期間の安定性を維持するには不十分であり、製剤安定性が悪いという課題に直面した。
【0005】
そこで、本発明の目的は、アズレン誘導体及び多価アルコールを含む医薬組成物においてさらに安定性を向上させ、優れた製剤安定性を備えさせる製剤技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、アズレン誘導体及び多価アルコールと共に、アミノ安息香酸エチルを配合した医薬組成物は、安定性が向上し、優れた製剤安定性を備え得ることを見出した。本発明は、この知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0007】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)アズレン誘導体と、(B)多価アルコールと、(C)アミノ安息香酸エチルと、を含む、医薬組成物。
項2. さらに(D)糖アルコールを含む、項1に記載の医薬組成物。
項3. 前記(A)成分が、アズレンスルホン酸及びその塩、並びにジメチルイソプロピルアズレンよりなる群から選択される少なくとも1種である、項1又は2に記載の医薬組成物。
項4. 固形状の口腔粘膜適用外用剤である、項1〜3のいずれかに記載の医薬組成物。
項5. (A)アズレン誘導体と(B)多価アルコールとを含む医薬組成物において、前記(A)成分の安定性を向上させる安定性向上方法であって、
医薬組成物において、前記(A)成分と前記(B)成分と共に、(C)アミノ安息香酸エチルを配合する、安定性向上方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の医薬組成物によれば、アズレン誘導体を含む医薬組成物であっても、優れた製剤安定性を備えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.医薬組成物
本発明の医薬組成物は、(A)アズレン誘導体((A)成分と表記することもある)と、(B)多価アルコール((B)成分と表記することもある)と、(C)アミノ安息香酸エチル((C)成分と表記することもある)と、を含有することを特徴とする。以下、本発明の医薬組成物について詳述する。
【0010】
(A)アズレン誘導体
本発明の医薬組成物は、(A)成分としてアズレン誘導体を含有する。アズレン誘導体とは、アズレン骨格に1又は複数の置換基が結合している化合物及びその塩である。アズレン誘導体は、消炎作用、抗アレルギー作用、抗潰瘍作用等の作用を有し、口腔咽喉薬や胃腸薬の有効成分として公知の成分である。
【0011】
本発明で使用されるアズレン誘導体としては、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、医薬組成物中での安定性向上効果をより良好に得る観点から、アズレン骨格に少なくとも酸性官能基が結合しているアズレン誘導体が挙げられる。当該酸性官能基としては、具体的には、スルホ基、カルボキシル基等が挙げられ、好ましくはスルホ基が挙げられる。
【0012】
本発明で使用されるアズレン誘導体として、具体的には、アズレンスルホン酸(グアイアズレンスルホン酸)、ジメチルイソプロピルアズレン(グアイアズレン)、ジメチルエチルアズレン(カマアズレン)、1,4−ジメチル−7−エチルアズレン−3−スルホン酸(カマアズレンスルホン酸)等が挙げられる。
【0013】
アズレン誘導体が塩の形態である場合、その塩の種類については、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩等のその他の金属塩;アンモニウム塩;酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酪酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等のカルボン酸塩;メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩等の有機スルホン酸塩;メチルアミン塩、トリエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、モルホリン塩、ピペラジン塩、ピロリジン塩、トリピリジン塩、ピコリン塩等の有機アミン塩;塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸塩等が挙げられる。
【0014】
これらのアズレン誘導体は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
これらのアズレン誘導体の中でも、医薬組成物中での安定性向上効果をより良好に得る観点から、好ましくはアズレンスルホン酸及びその塩、並びにジメチルイソプロピルアズレンよりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。アズレンスルホン酸及び/又はその塩としては、好ましくはアズレンスルホン酸及び/又はそのアルカリ金属塩、さらに好ましくはアズレンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
【0016】
本発明の医薬組成物において、(A)成分の含有量については、特に制限されず、使用するアズレン誘導体の種類、付与すべき作用の程度、医薬組成物の製剤形態や用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.001〜10重量%が挙げられる。医薬組成物中での安定性向上効果をより良好に得る観点から、(A)成分の含有量として、好ましくは0.005〜1重量%、より好ましくは0.01〜0.1重量%が挙げられる。また、本発明の医薬組成物が固形状の口腔粘膜適用外用剤である場合、(A)成分の含有量として、好ましくは0.01〜0.1重量%、より好ましくは0.03〜0.08重量、さらに好ましくは0.04〜0.07重量%が挙げられる。
【0017】
(B)多価アルコール
本発明の医薬組成物は、(B)成分として多価アルコールを含有する。多価アルコールは、医薬組成物中におけるアズレン誘導体の安定化剤として公知であるがその安定化作用は不十分である。本発明の医薬組成物中では、多価アルコールが含まれ、本来、不十分な安定性しか有しない組成であっても、効果的に安定性を向上させることができる。
【0018】
多価アルコールとしては、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、イソプレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の2価アルコール;グリセリン等の3価アルコール、マクロゴール4000、マクロゴール6000等のポリエチレングリコール等が挙げられる。これらの多価アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
これらの多価アルコールの中でも、好ましくは2価アルコール、更に好ましくはプロピレングリコール、及びグリセリンが挙げられる。
【0020】
本発明の医薬組成物において、(B)成分の含有量については、特に制限されず、使用する多価アルコールの種類、医薬組成物の製剤形態や用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば1〜90重量%、好ましくは3〜80重量%が挙げられる。
【0021】
本発明の医薬組成物において、(A)成分に対する(B)成分の比率については、(A)成分及び(B)成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分1重量部当たり、(B)成分が例えば1500〜5000重量部、好ましくは1800〜5000重量部、さらに好ましくは1900〜4500重量部が挙げられる。
【0022】
(C)アミノ安息香酸エチル
本発明の医薬組成物は、(C)成分として、アミノ安息香酸エチルを含有する。アミノ安息香酸エチルは、エチル4−アミノベンゾエート、ベンゾカイン等とも称される公知の局所麻酔剤である。医薬組成物中で、アズレン誘導体は多価アルコールと共存しても安定性は不十分であるが、本発明の医薬組成物では、アズレン誘導体と多価アルコールとが含まれ、本来、安定性が不十分である組成であっても、アミノ安息香酸を配合することによって、効果的に安定性を向上させることができる。
【0023】
本発明の医薬組成物において、(C)成分の含有量については、特に制限されず、医薬組成物の製剤形態や用途等に応じて適宜設置すればよいが、0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%が挙げられる。本発明の医薬組成物が粘膜適用外用剤である場合、(C)成分の含有量としては、好ましくは0.1〜3重量%、より好ましくは0.1〜2.5重量%が挙げられる。さらに、本発明の医薬組成物が固形状の口腔粘膜適用外用剤である場合、(C)成分の含有量としては、好ましくは0.05〜1重量%、より好ましくは0.05〜0.5重量%、さらに好ましくは0.05〜0.3重量%、一層好ましくは0.05〜0.2重量%が挙げられる。
【0024】
本発明の医薬組成物において、(A)成分に対する(C)成分の比率については、(A)成分及び(C)成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分1重量部当たり、(C)成分が例えば0.5〜80重量部、好ましくは25〜80重量部、さらに好ましくは40〜80重量部、一層好ましくは70〜80重量部が挙げられる。本発明の医薬組成物が固形状の口腔粘膜適用外用剤である場合、(A)成分1重量部当たり、(C)成分が例えば0.5〜3.5重量部、好ましくは0.7〜3.5重量部が挙げられる。
【0025】
(D)糖アルコール
本発明の医薬組成物は、(D)成分として糖アルコールを含んでもよい。糖アルコールは、基剤や矯味剤として用いられる公知の成分である。糖アルコールは、アズレン誘導体と多価アルコールとを含む薬剤組成物に配合すると、アズレン誘導体の安定性を低下させる傾向を示すが、本発明の医薬組成物では、アズレン誘導体と多価アルコールに加えて糖アルコールが含まれ、本来、安定性が低下する組成であっても、効果的に安定性を向上させることができる。
【0026】
糖アルコールとしては、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ソルビトール、キシリトール、イソマルトース、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、ラクチトール、パラチノース、還元パラチノース等が挙げられ、好ましくは、ソルビトール、キシリトール、イソマルトース、エリスリトール、マルチトール、還元パラチノースが挙げられる。これらの糖アルコールは1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
本発明の医薬組成物において(D)成分を含有させる場合、その含有量については、特に制限されず、医薬組成物の製剤形態や用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば2重量%以上、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上が挙げられる。また、本発明の医薬組成物が固形状の口腔粘膜適用外用剤である場合、(D)成分の含有量として、例えば10〜99.5重量%、好ましくは90〜99.5重量%、より好ましくは95〜99重量%が挙げられる。
【0028】
本発明の医薬組成物において(D)成分を含有させる場合、(A)成分に対する(D)成分の比率については、(A)成分及び(D)成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分1重量部当たり、(D)成分が例えば90〜1800重量部、好ましくは95〜300重量部が挙げられる。本発明の医薬組成物が固形状の口腔粘膜適用外用剤である場合、(A)成分1重量部当たり、(D)成分が例えば100〜1800重量部、好ましくは150〜1800重量部、より好ましくは1000〜1700重量部が挙げられる。
【0029】
その他の成分
本発明の医薬組成物は、前述する成分の他に、必要に応じて、他の薬理成分を含有していてもよい。このような薬理成分としては、例えば、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン等)、アミノ安息香酸エチル以外の局所麻酔剤(プロカイン、テトラカイン、ブピパカイン、メピパカイン、クロロプロカイン、プロパラカイン、メプリルカイン又はこれらの塩、オキセサゼイン、ロートエキス、リドカイン等)、第四級アンモニウム塩以外の殺菌剤(ヨウ素、ポピドンヨード、ヨウ化カリウム、グルコン酸クロルヘキシジン、アクリノール等)、抗炎症剤(グリチルリチン酸二カリウム、グリチルレチン酸、インドメタシン、フェルビナク、ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム等)、皮膚保護剤(コロジオン、ヒマシ油等)、血行促進成分(ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、カプサイシン、トウガラシエキス等)、ビタミン類(ビタミンA等)、ムコ多糖類(コンドロイチン硫酸ナトリウム、グルコサミン等)等が挙げられる。
【0030】
また、本発明の医薬組成物は、所望の製剤形態にするために、必要に応じて、前述する成分以外の基材や添加剤が含まれていてもよい。このような基剤や添加剤については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、油類(オリーブ油、サフラワー油、大豆油、つばき油、とうもろこし油、なたね油、ひまわり油、綿実油、落花生油、ラード、スクワラン、魚油等)、鉱物油(流動パラフィン、パラフィン、ゲル化炭化水素、ワセリン等)、ワックス類・ロウ類(ミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、セレシン、ライスワックス、マイクロクリスタリンワックス等)、エステル油(ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、オレイン酸エチル等)、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸(ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、リノール酸、ラノリン等)、脂肪酸エステル(パルミチン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、リノール酸エチル等)、低級アルコール(エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等)、高級アルコール(ステアリルアルコール、セタノール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ラノリンアルコール等)、コレステロール、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、2−エチルヘキサン酸セチル、シリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン、環状シリコーン等)等の油性基剤;POE(10〜50モル)フィトステロールエーテル、POE(10〜50モル)ジヒドロコレステロールエーテル、POE(10〜50モル)2−オクチルドデシルエーテル、POE(10〜50モル)デシルテトラデシルエーテル、POE(10〜50モル)オレイルエーテル、POE(2〜50モル)セチルエーテル、POE(5〜50モル)ベヘニルエーテル、POE(5〜30モル)ポリオキシプロピレン(5〜30モル)2−デシルテトラデシルエーテル、POE(10〜50モル)ポリオキシプロピレン(2〜30モル)セチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、これらのリン酸・リン酸塩(POEセチルエーテルリン酸ナトリウムなど)、POE(20〜60モル)ソルビタンモノオレート、POE(10〜60モル)ソルビタンモノイソステアレート、POE(10〜80モル)グリセリルモノイソステアレート、POE(10〜30モル)グリセリルモノステアレート、POE(20〜100モル)・ポリオキシプロピレン変性シリコーン、POE・アルキル変性シリコーン、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノパルミチン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ジラウリン酸ポリエチレングリコール、ジパルミチン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、ジリシノレイン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(5〜100)、ポリソルベート(20〜85)、グリセリン脂肪酸エステル(モノステアリン酸グリセリン等)、水素添加大豆リン脂質、水素添加ラノリンアルコール等の界面活性剤;清涼化剤(メントール、カンフル、ボルネオール、ハッカ水、ハッカ油等)、防腐剤(メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸等)、着香剤(シトラール、1,8−シオネール、シトロネラール、ファルネソール等)、着色剤(タール色素(褐色201号、青色201号、黄色4号、黄色403号等)、カカオ色素、クロロフィル、酸化アルミニウム等)、粘稠剤(アルギン酸ナトリウム、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キサンタンガム、カラギーナン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム等)、pH調整剤(リン酸、塩酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、酒石酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)、湿潤剤(dl−ピロリドンカルボン酸ナトリウム液、D−ソルビトール液等)、安定化剤(ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エデト酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、DL−アラニン、グリシン、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、クロロゲン酸、カテキン、ローズマリー抽出物等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、粘着剤、緩衝剤、溶解補助剤、可溶化剤、保存剤等の添加剤が挙げられる。
【0031】
製剤形態
本発明の医薬組成物の剤型については、特に制限されず、液状、半固形状(ゲル状、軟膏状、ペースト状等)、固形状等のいずれであってもよいが、好ましくは水性製剤である液状、半固形状、又は固形状が挙げられ、より好ましくは液状又は固形状が挙げられる。
【0032】
また、本発明の医薬組成物は、外用医薬品又は内服用医薬品のいずれであってもよい。外用医薬品としては、粘膜適用外用剤及び皮膚適用外用剤が挙げられ、好ましくは、粘膜適用外用剤が挙げられる。粘膜適用外用剤としては、口腔粘膜適用外用剤及び他の粘膜適用外用剤(例えば坐剤及び膣剤)が挙げられ、好ましくは口腔粘膜適用外用剤が挙げられる。具体的には、皮膚適用外用剤としては、ジェル剤、クリーム剤、ローション剤、乳液剤、液剤、貼付剤、エアゾール剤、軟膏剤、パック剤等が挙げられ、粘膜適用外用剤としては、ジェル剤、クリーム剤、ローション剤、乳液剤、液剤、軟膏剤、ゼリー剤、固形剤等が挙げられる。液剤としては、水性製剤が挙げられる。固形剤としては、飴剤、ドロップ剤、トローチ剤、タブレット剤、チュアブル剤、グミ剤、可食性フィルム剤等が挙げられる。これらの製剤形態への調製は、第十七改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法に従って、製剤形態に応じた添加剤を用いて製剤化することにより行うことができる。
【0033】
これらの製剤形態の中でも、好ましくは、水性製剤である液状の外用剤、または、固形状の粘膜適用外用剤が挙げられ、より好ましくは、飴剤、ドロップ剤、トローチ剤、タブレット剤、チュアブル剤、グミ剤、可食性フィルム剤等の固形状の口腔粘膜適用外用剤が挙げられる。
【0034】
2.安定性向上方法
更に、本発明は、アズレン誘導体と多価アルコールとを含む医薬組成物において、アズレン誘導体の安定性を向上させる方法を提供する。具体的には、本発明の安定性向上方法は、医薬組成物において、(A)アズレン誘導体と(B)多価アルコールと共に、(C)アミノ安息香酸エチルを配合することを特徴とする。なお、アズレン誘導体の安定性の向上は、アズレン誘導体と多価アルコールとを含む医薬組成物を光暴露した際、当該医薬組成物に(C)成分を配合しない場合に比べて、アズレン誘導体が呈する青色の経時的退色が遅延することにより確認することができる。本発明の安定性向上方法において、使用される成分の種類や配合量、医薬組成物の製剤形態等については、前記「1.医薬組成物」の欄に記載の通りである。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
試験例
表2に示す組成の医薬組成物(液剤)を調製した。得られた医薬組成物45mlをガラス製スクリュー管瓶(容量50ml)に充填し、光安定性試験装置(LT−120A ナガノサイエンス株式会社)を用い、照度4,000ルクス、20℃の条件下で10日間光を照射した。その後、各医薬組成物の外観を目視にて観察し、アズレンスルホン酸ナトリウムの色調変化(光安定性)を評価した。具体的には、得られた医薬組成物の色調を、表1に示す参考例1の医薬組成物の、調製直後における色調を10、光照射10日後における色調を0とした場合の相対値で評価した。なお、試験例において、表中の各成分の配合量を示す数値の単位は重量%である。
【0037】
【表1】
【0038】
得られた結果を表2に示す。アズレンスルホン酸ナトリウムに多価アルコール(プロピレングリコール、グリセリン)を配合しても、多価アルコールを含まない参考例1に比べて色調変化の抑制度合はわずかであるため、安定性はわずかしか向上しない(比較例1、4)。また、さらに糖アルコール(イソマルトース、ソルビトール)を配合すると、色調変化の抑制度合はさらに下がり、安定性は低下する(比較例2、3)。これに対して、アズレンスルホン酸ナトリウムに多価アルコールを含むとともにアミノ安息香酸エチルを含む場合は、色調変化の抑制度合は顕著に向上し、効果的に安定性が向上した(実施例1〜7)。このような安定性向上効果は、糖アルコールを含む場合にも確認できた(実施例4〜6)。
【0039】
なお、代表例として実施例3と比較例1とを挙げ、アズレンスルホン酸ナトリウムの色調変化を表す写真を表3に示す。
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
処方例
表4〜8に示す組成の医薬組成物(液剤、ドロップ剤、トローチ剤、口腔軟膏剤、軟膏・クリーム剤)を調製した。得られた医薬組成物についてはいずれも、実施例と同様に、光安定性に優れた製剤であった。
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
【表6】
【0045】
【表7】
【0046】
【表8】