特許第6908522号(P6908522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6908522
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】熱反応性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 299/00 20060101AFI20210715BHJP
   C08F 290/12 20060101ALI20210715BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20210715BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20210715BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20210715BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20210715BHJP
【FI】
   C08F299/00
   C08F290/12
   G02B5/26
   G02B5/28
   B32B17/10
   B32B7/023
【請求項の数】8
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2017-532595(P2017-532595)
(86)(22)【出願日】2016年8月1日
(86)【国際出願番号】JP2016072507
(87)【国際公開番号】WO2017022708
(87)【国際公開日】20170209
【審査請求日】2019年5月31日
(31)【優先権主張番号】特願2015-156398(P2015-156398)
(32)【優先日】2015年8月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 洋介
【審査官】 佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−171945(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/162217(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/157427(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/161492(WO,A1)
【文献】 特開2014−126642(JP,A)
【文献】 特開2014−130344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/00−290/14
C08F 299/00−299/08
B32B
G02B 5/20−5/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアニン化合物の少なくとも一種(α)、少なくともエチレン性不飽和結合及び親水性基を有する樹脂(β)及び熱重合開始剤(γ)を含有する熱反応性組成物であって、
前記シアニン化合物の少なくとも一種(α)の含有量が、前記樹脂(β)100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部であり、
前記樹脂(β)の含有量は、前記熱反応性組成物の固形分中、30〜99質量%であり、
前記熱重合開始剤(γ)の含有量は、熱反応性組成物の固形分中、0.1〜30質量%であり、
前記シアニン化合物の少なくとも一種(α)として、下記一般式(II)で表される化合物を含み、
前記少なくともエチレン性不飽和結合及び親水性基を有する樹脂(β)が、下記一般式(I−1)で表されるユニット、下記一般式(I−2)で表されるユニット及び下記一般式(I−3)で表されるユニットを有する熱反応性組成物。
【化1】
(式中、環A及び環A’は、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環又はピリジン環を表し、
11及びR11’は、それぞれ独立に、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、−SO3H、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、メタロセニル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、
11及びX11'は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、−CR2324−、炭素原子数3〜6のシクロアルカン−1,1−ジイル基又は−NR25−を表し、
23、R24及びR25は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、−SO3H、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、メタロセニル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、
11及びY11'は、それぞれ独立に、水素原子、又は水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、−SO3H、カルボキシル基、アミノ基、アミド基若しくはメタロセニル基で置換されてもよい炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基若しくは炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、
上記R11、R11’、Y11、Y11'23、R24及びR25におけるアリール基、アリールアルキル基及びアルキル基は、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、−SO3H、カルボキシル基、アミノ基、アミド基又はメタロセニル基で置換されている場合もあり、上記R11、R11’、Y11、Y11'、R23、R24及びR25におけるアリールアルキル基及びアルキル基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は炭素−炭素二重結合で置き換えられている場合もあり、
Qは、炭素原子数7又は9のメチン鎖を構成し、鎖中に環構造を含んでもよい連結基を表し、該メチン鎖中の水素原子は水酸基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基で置換されていてもよく、
及びr’は、0又は環A及び環A’において置換可能な数を表し、
Anq-はq価のアニオンを表し、qは1又は2を表し、pは電荷を中性に保つ係数を表す。)
【化2】
(式中、X1は水素原子又はメチル基を表し、Y1は、二価の結合基であり、R1は、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、該アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基は、ハロゲン原子、水酸基又はニトロ基で置換されている場合もあり、該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−又は−NH−、あるいはこれらの組み合わせの結合基で置き換えられている場合もあり、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。)
【請求項2】
シアニン化合物の少なくとも一種(α)、少なくともエチレン性不飽和結合及び親水性基を有する樹脂(β)及び熱重合開始剤(γ)を含有する熱反応性組成物であって、
前記シアニン化合物の少なくとも一種(α)の含有量が、前記樹脂(β)100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部であり、
前記樹脂(β)の含有量は、前記熱反応性組成物の固形分中、30〜99質量%であり、
前記熱重合開始剤(γ)の含有量は、熱反応性組成物の固形分中、0.1〜30質量%であり、
ガラス基板(A)の一方の面にコーティング層(B)を有し、かつガラス基板(A)の他方の面に赤外線反射膜(C)を有する波長カットフィルタの、前記コーティング層(B)形成用であり、
少なくともエチレン性不飽和結合及び親水性基を有する樹脂(β)が、下記一般式(I−1)で表されるユニット、下記一般式(I−2)で表されるユニット及び下記一般式(I−3)で表されるユニットを有することを特徴とする熱反応性組成物。
【化3】
(式中、X1は水素原子又はメチル基を表し、Y1は、二価の結合基であり、R1は、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、該アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基は、ハロゲン原子、水酸基又はニトロ基で置換されている場合もあり、該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−又は−NH−、あるいはこれらの組み合わせの結合基で置き換えられている場合もあり、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。)
【請求項3】
熱重合開始剤(γ)が、アゾ熱重合開始剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱反応性組成物。
【請求項4】
シアニン化合物の少なくとも一種(α)、少なくともエチレン性不飽和結合及び親水性基を有する樹脂(β)及び熱重合開始剤(γ)を含有する熱反応性組成物であって、
前記シアニン化合物の少なくとも一種(α)の含有量が、前記樹脂(β)100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部であり、
前記樹脂(β)の含有量は、前記熱反応性組成物の固形分中、30〜99質量%であり、
前記熱重合開始剤(γ)の含有量は、熱反応性組成物の固形分中、0.1〜30質量%であり、
前記熱重合開始剤(γ)がアゾ熱重合開始剤であり、
少なくともエチレン性不飽和結合及び親水性基を有する樹脂(β)が、下記一般式(I−1)で表されるユニット、下記一般式(I−2)で表されるユニット及び下記一般式(I−3)で表されるユニットを有することを特徴とする熱反応性組成物。
【化4】
(式中、X1は水素原子又はメチル基を表し、Y1は、二価の結合基であり、R1は、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、該アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基は、ハロゲン原子、水酸基又はニトロ基で置換されている場合もあり、該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−又は−NH−、あるいはこれらの組み合わせの結合基で置き換えられている場合もあり、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。)
【請求項5】
ガラス基板(A)の一方の面に請求項1〜のいずれか一項に記載の熱反応性組成物より得られるコーティング層(B)を有し、かつガラス基板(A)の他方の面に赤外線反射膜(C)を有することを特徴とする波長カットフィルタ。
【請求項6】
透過率が下記(i)〜(iii)を満たすことを特徴とする請求項に記載の波長カットフィルタ。
(i)波長430〜580nmの範囲において、波長カットフィルタの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が75%以上
(ii)波長800〜1000nmにおいて、波長カットフィルタの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が5%以下
(iii)波長560〜800nmの範囲において、波長カットフィルタの垂直方向から測定した場合の透過率が80%となる波長の値(Ya)と、波長カットフィルタの垂直方向に対して35°の角度から測定した場合の透過率が80%となる波長の値(Yb)の差の絶対値が30nm以下である。
【請求項7】
請求項又はに記載の波長カットフィルタを具備することを特徴とする固体撮像装置。
【請求項8】
請求項又はに記載の波長カットフィルタを具備することを特徴とするカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアニン化合物、エチレン性不飽和結合及び親水性基を一分子内に有する樹脂及び熱重合開始剤を含有する熱反応性組成物、及び該熱反応性組成物を用いた波長カットフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話用カメラ等に使用される固体撮像素子(CCDやC−MOS等)の感度は、光の波長の紫外領域から赤外領域にわたっている。一方、人間の視感度は光の波長の可視領域のみである。そのため、撮像レンズと固体撮像素子との間に赤外線カットフィルタを設けることで、人間の視感度に近づくように固体撮像素子の感度を補正している。
【0003】
赤外線カットフィルタとしては、吸収特性を持たない物質を含有する層を組み合わせて多層に積層しそれらの屈折率の差を利用した反射型フィルターか、光吸収剤を透明な基板に含有させるか又は結合させた吸収型フィルターが知られている。
【0004】
特に、吸収型フィルターにおいて、製造時における加熱処理などにより光吸収剤の劣化が起こり、赤外線遮断能の低下が起こることが問題となっている。
特許文献1及び2には、熱重合開始剤を含有する熱反応性組成物が記載されている。また、特許文献3には、シアニン化合物と、エチレン性不飽和結合及び親水性基を一分子内に有する樹脂と光重合開始剤とを含有する組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−256865号公報
【特許文献2】US2010051883A1
【特許文献3】特開2013−173848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の組成物は、耐熱性の点で十分なものといえなかった。
従って、本発明の目的は、耐熱性に優れる熱反応性組成物を提供することにある。また、本発明の別の目的は、上記熱反応性組成物を用いた波長カットフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、シアニン化合物、エチレン性不飽和結合及び親水性基を一分子内に有する樹脂及び熱重合開始剤を含有する熱反応性組成物を用いた波長カットフィルタの耐熱性を低下させず、固体撮像装置等に用いられる波長カットフィルタに好適であることを知見し、本発明に到達した。
【0008】
本発明は、シアニン化合物の少なくとも一種(α)、少なくともエチレン性不飽和結合及び親水性基を有する樹脂(β)及び熱重合開始剤(γ)を含有する熱反応性組成物を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、上記熱反応性組成物を用いて得られる波長カットフィルタ、並びにこれを用いた固体撮像装置及びカメラモジュールを提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
シアニン化合物、エチレン性不飽和結合及び親水性基を一分子内に有する樹脂及び熱重合開始剤を含有する本発明の熱反応性組成物は耐熱性に優れるものである。また、その硬化物は、波長カットフィルタに好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の波長カットフィルタの層構造の一例を示す模式断面図である。
図2】本発明の波長カットフィルタの層構造の別の例を示す模式断面図である。
図3】本発明の固体撮像装置の一つであるカメラモジュールの構成の一形態を示す断面図である。
図4】カメラモジュールの構成の別の形態を示す断面図である。
図5】カメラモジュールの構成の更に別の形態を示す断面図である。
図6】カメラモジュールの構成の更に別の形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の熱反応性組成物について、好ましい実施形態に基づき説明する。
【0013】
本発明の熱反応性組成物は、シアニン化合物の少なくとも一種(α)(以下、シアニン化合物(α)ともいう)、少なくともエチレン性不飽和結合及び親水性基を有する樹脂(β)(以下、樹脂(β)ともいう)、熱重合開始剤(γ)、並びに必要に応じて更に不飽和結合を有するモノマー(ω)及び溶媒(σ)を含有する。以下、各成分について順に説明する。
【0014】
<シアニン化合物(α)>
本発明の熱反応性組成物に用いられるシアニン化合物(α)は、特に制限されず従来公知のものを用いることができるが、入手容易性の観点から、下記一般式(II)で表わされるものが好ましい。
【0015】
【化1】
(式中、環A及び環A’は、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環又はピリジン環を表し、
11及びR11’は、それぞれ独立に、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、−SO3H、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、メタロセニル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、
11及びX11'は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、−CR2324−、炭素原子数3〜6のシクロアルカン−1,1−ジイル基又は−NR25−を表し、
23、R24及びR25は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、−SO3H、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、メタロセニル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、
11及びY11'は、それぞれ独立に、水素原子、又は水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、−SO3H、カルボキシル基、アミノ基、アミド基若しくはメタロセニル基で置換されてもよい炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基若しくは炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、
上記R11、R11’、Y11、Y11'23、R24及びR25におけるアリール基、アリールアルキル基及びアルキル基は、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、−SO3H、カルボキシル基、アミノ基、アミド基又はメタロセニル基で置換されている場合もあり、上記R11、R11’、Y11、Y11'23、R24及びR25におけるアリールアルキル基及びアルキル基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は炭素−炭素二重結合で置き換えられている場合もあり、
Qは、炭素原子数1〜9のメチン鎖を構成し、鎖中に環構造を含んでもよい連結基を表し、該メチン鎖中の水素原子は水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、−NRR’、アリール基、アリールアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよく、該−NRR’、アリール基、アリールアルキル基及びアルキル基は更に水酸基、ハロゲン原子、シアノ基又は−NRR’で置換されていてもよく、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で中断されてもよく、
R及びR’は、アリール基、アリールアルキル基又はアルキル基を表し、
r及びr’は、0又は環A及び環A’において置換可能な数を表し、
Anq-はq価のアニオンを表し、qは1又は2を表し、pは電荷を中性に保つ係数を表す。)
【0016】
上記一般式(II)におけるR11、R11’及びX11及びX11’中のR23、R24及びR25で表されるハロゲン原子並びにR11、R11’ R23、R24、R25、Y11、Y11'で表されるアリール基、アリールアルキル基、アルキル基を置換してもよいハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、
上記一般式(II)におけるR11、R11’及びX11及びX11’中のR23、R24及びR25で表されるアミノ基並びにR11、R11’ R23、R24、R25、Y11、Y11'で表されるアリール基、アリールアルキル基、アルキル基を置換してもよいアミノ基としては、アミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、ドデシルアミノ、アニリノ、クロロフェニルアミノ、トルイジノ、アニシジノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ,ナフチルアミノ、2−ピリジルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、ホルミルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ等が挙げられ、
上記一般式(II)におけるR11、R11’及びX11及びX11’中のR23、R24及びR25で表されるアミド基並びにR11、R11’ R23、R24、R25、Y11、Y11'で表されるアリール基、アリールアルキル基、アルキル基を置換してもよいアミド基としては、ホルムアミド、アセトアミド、エチルアミド、イソプロピルアミド、ブチルアミド、オクチルアミド、ノニルアミド、デシルアミド、ウンデシルアミド、ドデシルアミド、ヘキサデシルアミド、オクタデシルアミド、(2−エチルヘキシル)アミド、ベンズアミド、トリフルオロアセトアミド、ペンタフルオロベンズアミド、ジホルムアミド、ジアセトアミド、ジエチルアミド、ジイソプロピルアミド、ジブチルアミド、ジオクチルアミド、ジノニルアミド、ジデシルアミド、ジウンデシルアミド、ジドデシルアミド、ジ(2−エチルヘキシル)アミド、ジベンズアミド、ジトリフルオロアセトアミド、ジペンタフルオロベンズアミド等が挙げられ、
上記一般式(II)におけるR11、R11’及びX11及びX11’中のR23、R24及びR25で表されるメタロセニル基並びにR11、R11’ R23、R24、R25、Y11、Y11'で表されるアリール基、アリールアルキル基、アルキル基を置換してもよいメタロセニル基としては、フェロセニル、ニッケロセニル、ジルコノセニル、チタノセニル、ハフノセニル等が挙げられ、
上記一般式(II)におけるR11、R11’、Z11、Z12、Z13及びY11及びY11'並びにX11及びX11’中のR23、R24及びR25で表される炭素原子数6〜30のアリール基としては、フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−iso−プロピルフェニル、4−iso−プロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−iso−ブチルフェニル、4−tert−ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、4−オクチルフェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニル、4−ステアリルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル、2,5−ジ−tert−ブチルフェニル、2,6−ジ−tert−ブチルフェニル、2,4−ジ−tert−ペンチルフェニル、2,5−ジ−tert−アミルフェニル、2,5−ジ−tert−オクチルフェニル、2,4−ジクミルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、(1,1’−ビフェニル)−4−イル、2,4,5−トリメチルフェニル、フェロセニル等が挙げられ、
上記一般式(II)におけるR11、R11’及びY11及びY11'並びにX11及びX11’中のR23、R24及びR25で表される炭素原子数7〜30のアリールアルキル基としては、ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン−2−イル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル、フェロセニルメチル、フェロセニルプロピル等が挙げられ、
上記一般式(II)におけるR11、R11及びY11、Y11'並びにX11及びX11’中のR23、R24及びR25で表される炭素原子数1〜8のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、iso−ブチル、アミル、iso−アミル、tert−アミル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、iso−ヘプチル、tert−ヘプチル、1−オクチル、iso−オクチル、tert−オクチル等が挙げられる。
上記R11、R11’及びY11、Y11'並びにX11及びX11’中のR23、R24及びR25における、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、−SO3H基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基又はメタロセニル基で置換されてもよい炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基及び炭素原子数1〜20のアルキル基としては、上記R11等の説明で例示したアリール基、アリールアルキル基、アルキル基及びこれらの基中の水素原子が、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、−SO3H基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基又はメタロセニル基で置換されているものが挙げられ、これらの置換基の位置及び数は制限されない。
また、上記R11、R11’及びY11、Y11'並びにX11及びX11’中のR23、R24及びR25におけるアリールアルキル基及びアルキル基中のメチレン基が、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は炭素−炭素二重結合で置き換えられている場合、これらの置換の数及び位置は任意である。
例えば、上記炭素原子数1〜8のアルキル基がハロゲン原子で置換された基としては、例えば、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ノナフルオロブチル等が挙げられ、
上記炭素原子数1〜8のアルキル基が、−O−で中断された基としては、メチルオキシ、エチルオキシ、iso−プロピルオキシ、プロピルオキシ、ブチルオキシ、ペンチルオキシ、iso−ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ等のアルコキシ基や、2−メトキシエチル、2−(2−メトキシ)エトキシエチル、2−エトキシエチル、2−ブトキシエチル、4−メトキシブチル、3−メトキシブチル等のアルコキシアルキル基等が挙げられ、
上記炭素原子数1〜8のアルキル基がハロゲン原子で置換され、且つ−O−で中断された基としては、例えば、クロロメチルオキシ、ジクロロメチルオキシ、トリクロロメチルオキシ、フルオロメチルオキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、ノナフルオロブチルオキシ等が挙げられる。
【0017】
上記一般式(II)において、X11及びX11’で表される炭素原子数3〜6のシクロアルカン−1,1−ジイル基としては、シクロプロパン−1,1−ジイル、シクロブタン−1,1−ジイル、2,4−ジメチルシクロブタン−1,1−ジイル、3,3−ジメチルシクロブタン−1,1−ジイル、シクロペンタン−1,1−ジイル、シクロヘキサン−1,1−ジイル等が挙げられる。
【0018】
上記一般式(II)におけるQで表わされる、炭素原子数1〜9のメチン鎖を構成し、鎖中に環構造を含んでもよい連結基としては、下記(Q−1)〜(Q−11)の何れかで表される基が、製造が容易であるため好ましい。炭素原子数1〜9のメチン鎖における炭素原子数には、メチン鎖及び鎖中に環構造を含んでもよい連結基を表し、該連結基をさらに置換する基(例えば下記R14〜R19、Z’)の炭素原子(例えば、連結基(Q−1)における両末端の炭素原子)を含まない。
【0019】
【化2】
(式中、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びZ’は、各々独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、−NRR’、アリール基、アリールアルキル基又はアルキル基を表し、該−NRR’、アリール基、アリールアルキル基及びアルキル基は、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基又は−NRR’で置換されていてもよく、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で中断されていてもよく、
R及びR’は、アリール基、アリールアルキル基又はアルキル基を表す。)
【0020】
上記R14、R15、R16、R17、R18、R19及びZ’で表わされるハロゲン原子、アリール基、アリールアルキル又はアルキル基としては、R11等の説明で例示したものが挙げられ、R及びR’で表されるアリール基、アリールアルキル基又はアルキル基としてはR11等の説明で例示したものが挙げられる。
【0021】
上記一般式(II)中のpAnq-で表されるq価のアニオンとしては、メタンスルホン酸アニオン、ドデシルスルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ナフタレンスルホン酸アニオン、ジフェニルアミン−4−スルホン酸アニオン、2−アミノ−4−メチル−5−クロロベンゼンスルホン酸アニオン、2−アミノ−5−ニトロベンゼンスルホン酸アニオン、ナフタレンジスルホン酸アニオン、ナフトールスルホン酸アニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸アニオン、特開平10−235999号公報、特開平10−337959号公報、特開平11−102088号公報、特開2000−108510号公報、特開2000−168223号公報、特開2001−209969号公報、特開2001−322354号公報、特開2006−248180号公報、特開2006−297907号公報、特開平8−253705号公報、特表2004−503379号公報、特開2005−336150号公報、国際公開2006/28006号公報等に記載されたスルホン酸アニオン等の有機スルホン酸アニオンの他、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化物イオン、塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、オクチルリン酸イオン、ドデシルリン酸イオン、オクタデシルリン酸イオン、フェニルリン酸イオン、ノニルフェニルリン酸イオン、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスホン酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、励起状態にある活性分子を脱励起させる(クエンチングさせる)機能を有するクエンチャー陰イオンやシクロペンタジエニル環にカルボキシル基やホスホン酸基、スルホン酸基等の陰イオン性基を有するフェロセン、ルテオセン等のメタロセン化合物陰イオン等が挙げられる。
【0022】
本発明で用いられるシアニン化合物(α)の具体例としては、下記化合物No.1〜104が挙げられる。なお、以下の例示では、アニオンを省いたシアニンカチオンで示している。
【0023】
【化3】
【0024】

【化4】
【0025】

【化5】
【0026】

【化6】
【0027】
【化7】
【0028】
【化8】
【0029】
【化9】
【0030】
【化10】
【0031】
【化11】
【0032】
【化12】
【0033】
【化13】
【0034】
上記一般式(II)で表される化合物の中では、以下のものが好ましい。
環A又は環A’がベンゼン環又はナフタレン環であるもの。
r又はr’が、0〜2であるもの。
r又はr’が1以上の場合、R11及びR11’が、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基、フェロセニル基、無置換の炭素原子数1〜8(特に1〜4)のアルキル基又は炭素原子数1〜8(特に1〜4)のハロゲン置換アルキル基であるもの。
11及びX11'が、酸素原子、硫黄原子、−CR2324〔特に、R23及びR24が、無置換又はハロゲン原子で置換されている場合もあり、炭素−炭素二重結合で置き換えられている場合もある炭素原子数1〜8(特に1〜4)のアルキル基、無置換又はハロゲン原子で置換されている場合もあり、炭素−炭素二重結合で置き換えられている場合もある炭素原子数7〜20(特に7〜15)のアリールアルキル基〕又は炭素原子数3〜6のシクロアルカン−1,1−ジイル基であるもの。さらに、酸素原子、硫黄原子、−CR2324−〔特に、R23及びR24が無置換の炭素原子数1〜4のアルキル基〕がより好ましい。
11及びY11'が、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基若しくはフェロセニル基で置換されている場合もあり、酸素原子若しくは−CO−で置き換えられている場合もある炭素原子数6〜30(特に6〜12)のアリール基、炭素原子数7〜30(特に7〜15)のアリールアルキル基若しくは炭素原子数1〜8のアルキル基であるもの。さらに、ハロゲン原子で置換されている場合もあり、酸素原子で置き換えられている場合もある炭素原子数7〜30(特に7〜15)のアリールアルキル基若しくは炭素原子数1〜8のアルキル基が、より好ましい。
Qが、炭素原子数7又は9のメチン鎖を構成するもの。また、炭素原子数7又は9のメチン鎖を構成し、該メチン鎖中の水素原子が水酸基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基で置換されているもの。また、炭素原子数7又は9のメチン鎖を構成し、鎖中に環構造を有するもの。
【0035】
本発明で用いられるシアニン化合物(α)は、その製造方法は特に限定されず、周知一般の反応を利用した方法で得ることができ、例えば、特開2010−209191号公報に記載されているルートの如く、該当する構造を有する化合物と、イミン誘導体との反応により合成する方法が挙げられる。
【0036】
本発明で用いられるシアニン化合物(α)は、塗膜の極大吸収波長(λmax)が650〜1200nmであるのが好ましく、650〜900nmがさらに好ましい。塗膜の極大吸収波長(λmax)が本発明の1200nm以上であると、本願発明の効果を発揮せず、650nm未満であると、可視光線を吸収するため好ましくない。
【0037】
本発明の熱反応性組成物において、上記シアニン化合物(α)の含有量は、単独又は複数種の合計で、後述する樹脂(β)の固形分100質量部に対してシアニン化合物の少なくとも一種(α)の合計で0.01〜10質量部である。シアニン化合物(α)の含有量が0.01質量部より小さいと、本発明の硬化物において十分な赤外線遮蔽能が得られない場合があり、10質量部より大きいと、熱反応性組成物中でシアニン化合物(α)の析出が起こる場合がある。
【0038】
<樹脂(β)>
上記樹脂(β)としては、エチレン性不飽和結合及び親水性基を一分子内に有する樹脂である限り、特に限定されず従来用いられているものを用いることができる。
親水性基としては、水酸基、チオール基、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基、アミド基又はその塩等が挙げられ、水酸基及びカルボキシル基が、樹脂(β)のアルカリへの溶解性が高いため好ましい。
樹脂(β)における親水性基の好ましい官能基当量(親水性基1当量を含む樹脂の質量)は、50〜10000である。
樹脂(β)の好ましい質量平均分子量は、1000〜500000である。
【0039】
上記樹脂(β)の中でも下記一般式(I−1)で表されるユニット、下記一般式(I−2)で表されるユニット及び下記一般式(I−3)で表されるユニットを有するものが、現像性や耐熱性が高いので好ましい。
【0040】
【化14】
(式中、X1は水素原子又はメチル基を表し、Y1は、二価の結合基であり、R1は、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、該アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基は、ハロゲン原子、水酸基又はニトロ基で置換されている場合もあり、該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−又は−NH−、あるいはこれらの組み合わせの結合基で置き換えられている場合もあり、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。)
【0041】
上記一般式(I−2)におけるY1で表される二価の結合基としては、下記一般式(1)で表される構造が挙げられる。
【0042】
【化15】
(式中、X2は、−CR56−、−NR7−、二価の炭素原子数1〜35の鎖状炭化水素基、二価の炭素原子数3〜35の脂環式炭化水素基、二価の炭素原子数6〜35の芳香族炭化水素基、二価の炭素原子数2〜35の複素環含有基、又は下記(1−1)〜(1−3)で表されるいずれかの置換基を表し、R5及びR6は、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、Z1及びZ2は、それぞれ独立に、直接結合、−O−、−S−、−SO2−、−SO−、−NR7−又は−PR8−を表し、R7及びR8は、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、
上記R5、R6、R7及びR8におけるアルキル基、アリール基及びアリールアルキル基は、ハロゲン原子、水酸基又はニトロ基で置換されていてもよく、上記R5、R6、R7及びR8におけるアルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−又は−NH−基で置き換えられている場合もある。但し、上記一般式(1)で表される基の炭素原子数は1〜35の範囲内である。)
【0043】
【化16】
(上記式中、R71は水素原子、置換基を有していてもよいフェニル基、又は炭素原子数3〜10のシクロアルキル基を表し、
72は炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又はハロゲン原子を表し、上記アルキル基、アルコキシ基及びアルケニル基は置換基を有していてもよく、
fは0〜5の整数である。)
【0044】
【化17】
【0045】
【化18】
(上記式中、R73及びR74は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30のアリールアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2〜20の複素環含有基又はハロゲン原子を表し、
該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は不飽和結合、−O−又は−S−で中断されていてもよく、
73は、隣接するR73同士で環を形成していてもよく、
dは0〜4の数を表し、
fは0〜8の数を表し、gは0〜4の数を表し、
hは0〜4の数を表し、
gとhの数の合計は2〜4である。)
【0046】
上記一般式(I−3)におけるR1で表される炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30(好ましくは7〜20)のアリールアルキル基としては、上記(α)成分であるシアニン化合物の説明で例示したアリール基又はアリールアルキル基が挙げられる。
炭素原子数1〜20のアルキル基としては、上記シアニン化合物(α)の説明で例示したアルキル基の他、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル等が挙げられる。
【0047】
上記一般式(1)において、X2で表される二価の炭素原子数1〜35の鎖状炭化水素基としては、メタン、エタン、プロパン、iso−プロパン、ブタン、sec−ブタン、tert−ブブタン、iso−ブタン、ヘキサン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、ヘプタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、iso−ヘプタン、tert−ヘプタン、1−メチルオクタン、iso−オクタン、tert−オクタン等が、Z1及びZ2で置換された基が挙げられ、
二価の炭素原子数3〜35の脂環式炭化水素基としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、2,4−ジメチルシクロブタン、4−メチルシクロヘキサン等が、Z1及びZ2で置換された基等が挙げられ、
二価の炭素原子数6〜35の芳香族炭化水素基としては、フェニレン、ナフチレン、ビフェニル等の基が、Z1及びZ2で置換された基等が挙げられ、
二価の炭素原子数3〜35の複素環含有基としては、ピリジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ヘキサヒドロトリアジン、フラン、テトラヒドロフラン、クロマン、キサンテン、チオフェン、チオラン等が、Z1及びZ2で置換された基が挙げられ、これらの基は複数組み合わせられてもよい。また、これらの鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基は、ハロゲン原子、水酸基又はニトロ基で置換されていてもよい。またこれらの鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基におけるメチレン基は−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−又は−NH−基で置き換えられている場合もある。
【0048】
上記一般式(1)におけるR5、R6、R7及びR8で表される炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基としては、上記シアニン化合物(α)の説明で例示したアルキル基、アリール基、アリールアルキル基が挙げられ、
上記R5、R6、R7及びR8におけるアルキル基、アリール基及びアリールアルキル基は、ハロゲン原子、水酸基又はニトロ基で置換されていてもよく、上記R5、R6及びR7におけるアルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NH−、又はこれらの基を複数組み合わせた基で中断されていてもよく、これらの置換位置及び中断位置は特に制限されない。
【0049】
上記(1−1)で表される置換基において、R71で表される炭素原子数3〜10のシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロへブチル、シクロオクチル等が挙げられ、
72で表される炭素原子数1〜10のアルキル基としては、R1で表される炭素原子数1〜40のアルキル基として例示した基のうち、所定の炭素原子数を満たす基等が挙げられ、
72で表される炭素原子数1〜10のアルコキシ基としては、メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、第二ブチルオキシ、第三ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、第三アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、第三ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、第三オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等が挙げられる。
72で表されるアルキル基、アルコキシ基及びアルケニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基が挙げられる。
【0050】
上記(1−3)で表される基において、R73及びR74で表される置換基を有していてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基としては、R1で表される炭素原子数1〜20のアルキル基として例示した基のうち、所定の炭素原子数を満たす基等が挙げられ、
73及びR74で表される置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30のアリール基としては、R11等で表される炭素原子数6〜30のアリール基として例示した基等が挙げられ、
73及びR74で表される置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30のアリールオキシ基としては、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、2−メチルフェニルオキシ、3−メチルフェニルオキシ、4−メチルフェニルオキシ、4−ビニルフェニル二オキシ、3−iso−プロピルフェニルオキシ、4−iso−プロピルフェニルオキシ、4−ブチルフェニルオキシ、4−tert−ブチルフェニルオキシ、4−へキシルフェニルオキシ、4−シクロヘキシルフェニルオキシ、4−オクチルフェニルオキシ、4−(2−エチルヘキシル)フェニルオキシ、2,3−ジメチルフェニルオキシ、2,4−ジメチルフェニルオキシ、2,5−ジメチルフェニルオキシ、2.6−ジメチルフェニルオキシ、3.4−ジメチルフェニルオキシ、3.5−ジメチルフェニルオキシ、2,4−ジーtert−ブチルフェニルオキシ、2,5−ジーtert−ブチルフェニルオキシ、2,6−ジーtert−ブチルフェニルオキシ、2.4−ジーtert−ペンチルフェニルオキシ、2,5−tert−アミルフェニルオキシ、4−シクロへキシルフェニルオキシ、2,4,5−トリメチルフェニルオキシ、フェロセニルオキシ等の基が挙げられ、
73及びR74で表される置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30のアリールチオ基としては、上記置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30のアリールオキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換した基等が挙げられ、
73及びR74で表される置換基を有していてもよい炭素原子数8〜30のアリールアルケニル基としては、上記置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30のアリールオキシ基の酸素原子をビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル、2−ペンテニル、2−オクテニル等のアルケニル基で置換した基等が挙げられ、
73及びR74で表される炭素原子数7〜30のアリールアルキル基としては、R71及びR72で表される炭素原子数7〜30のアリールアルキル基として例示した基等が挙げられ、
73及びR74で表される置換基を有していてもよい炭素原子数2〜20の複素環含有基としては、ピリジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ヘキサヒドロトリアジン、フラン、テトラヒドロフラン、クロマン、キサンテン、チオフェン、チオラン等が挙げられる。
73及びR74で表される上記各種の基が有していてもよい上記の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基が挙げられる。
【0051】
上記一般式(I−1)〜(I−3)で表されるユニットの構成比(モル比)は、(I−1):(I−2):(I−3)=0.1〜0.65:0.3〜0.8:0.001〜2であり、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合など、いずれの配列を取っていてもよい。
【0052】
上記一般式(I−1)、(I−2)及び(I−3)で表されるユニットを有する樹脂(β)の中では、以下のものが好ましい。
1は、炭素原子数1〜8のアルキル基及び炭素原子数7〜30のアリールアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜4のアルキル基がより好ましい。
1は、二価の結合基が、上記一般式(1)で表される構造の場合、X2は、炭素原子数1〜15のアルキレン基が好ましく、シクロアルキレン基を有する炭素原子数7〜15のアルキレン基がより好ましい。これらのアルキレン基中の水素原子は、ハロゲン原子、水酸基又はニトロ原子で置換されていてもよく、また、アルキレン基中の鎖状アルキレン部分におけるメチレン基は−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−又は−NH−基で置き換えられている場合もある。
1及びZ2は、直接結合であるのが好ましい。
【0053】
上記樹脂(β)は、酸価が好ましくは10〜200mg/KOH、さらに好ましくは30〜150mg/KOHである。酸価が10mg/KOH未満であると、アルカリ現像性が十分に得られない場合があり、200mg/KOHより大きいと、樹脂(β)の製造が困難である恐れがある。
ここで、酸価とは、JIS K0050及びJISK 0211によるものである。
【0054】
本発明の熱反応性組成物において、上記樹脂(β)の含有量は、本発明の熱反応性組成物の固形分中、30〜99質量%、特に60〜95質量%が好ましい。上記樹脂(β)の含有量が30質量%より小さいと、硬化物の力学的強度が不足しクラックが入る場合があり、99質量%より大きいと、露光による硬化が不十分になりタックが発生する場合がある。
【0055】
<熱重合開始剤(γ)>
上記熱重合開始剤(γ)としては、従来既知の化合物を用いることが可能であり、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(メチルイソブチレ−ト)、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の過酸化物系重合開始剤、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらは一種又は二種以上を混合して用いることができる。
【0056】
上記熱重合開始剤(γ)の中でも、耐熱性の点から、アゾ系重合開始剤が好ましく、アゾビス系化合物がより好ましい。アゾビス系化合物としては、下記一般式(A)で表される化合物が工業的に入手しやすい点から好ましく挙げられる。
【0057】
【化18A】
(式中、R101は置換基を有している場合もある分岐又は直鎖の炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R102は置換基を有している場合もある分岐又は直鎖の炭素原子数1〜10のアルキル基あるいは下記一般式(B)で表される基であり、前記アルキル基におけるメチレン基は−O−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NH−、−NH−CO−又は炭素−炭素二重結合で置き換えられていてもよく、同じ炭素原子と結合するR101とR102とは互いに連結して環を形成してもよい。X101はシアノ基、−CONR103104、−COOR105、−C=N−R106又は置換基を有している場合もある分岐又は直鎖の炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R103、R104、R105及びR106はそれぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基である。)
【0058】
【化18B】
(式中、R111、R112及びR113はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を有している場合もある炭素原子数1〜4のアルキル基であり、R111、R112は互いに連結して環を形成していてもよく、*は結合部分を表す。)
【0059】
101、R102、X101、R103、R104、R105、R106、R111、R112及びR113で表されるアルキル基としては上記R11等で表されるアルキル基として例示した基のうち上記所定の炭素原子数を満たすものが挙げられる。
101とR102とが互いに連結して形成する環としては、シクロアルキル環が挙げられ、好ましくは炭素原子数3〜8のシクロアルキル環である。
111、R112が互いに連結して形成する環としては、イミダゾール環が挙げられる。
101、R102、X101、R111、R112及びR113表されるアルキル基が置換基を有する場合の置換基としては、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、カルボキシル基又は水酸基が挙げられる。
【0060】
本発明の熱反応性組成物において、上記熱重合開始剤(γ)の含有量は、本発明の熱反応性組成物の固形分中、0.1〜30質量%、特に0.5〜10質量%が好ましい。上記熱重合開始剤(γ)の含有量が0.1質量%より小さいと、十分な耐熱性が得られない場合があり、30質量%より大きいと、熱反応性組成物中に熱重合開始剤(γ)が析出する場合がある。
【0061】
<不飽和結合を有するモノマー(ω)>
本発明の熱反応性組成物には、更に不飽和結合を有するモノマー(ω)を加えることができる。上記不飽和結合を有するモノマーとしては、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸亜鉛、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ターシャリーブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ビスフェノールZジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。 上記の中でも、不飽和結合を複数有するモノマーが、赤外線遮蔽能及び耐熱性を向上させることができるため好ましい。
【0062】
<溶媒(σ)>
本発明の熱反応性組成物には、更に溶媒(σ)を加えることができる。該溶媒としては、通常、必要に応じて上記の各成分(シアニン化合物(α)等)を溶解又は分散しえる溶媒、例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、コハク酸ジメチル、テキサノール等のエステル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、イソ−又はn−プロパノール、イソ−又はn−ブタノール、アミルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、1−t−ブトキシ−2−プロパノール、3−メトキシブチルアセテート、シクロヘキサノールアセテート等のエーテルエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等のBTX系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;テレピン油、D−リモネン、ピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(コスモ松山石油(株))、ソルベッソ#100(エクソン化学(株))等のパラフィン系溶媒;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒;カルビトール系溶媒、アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、酢酸、アセトニトリル、二硫化炭素、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられ、これらの溶媒は1種又は2種以上の混合溶媒として使用することができる。これらの中でも、ケトン類、エーテルエステル系溶媒等、特にプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、シクロヘキサノン等が、熱反応性組成物において樹脂(β)及び熱重合開始剤(γ)との相溶性がよいので好ましい。
【0063】
本発明の熱反応性組成物において、上記溶媒(σ)の使用量は、溶媒(σ)以外の組成物の濃度が5〜30質量%になることが好ましい。溶媒(σ)以外の組成物の濃度が5質量%より小さい場合、膜厚を厚くする事が困難となったり、所望の波長光を十分に吸収できない場合があり、30質量%を超える場合、組成物の析出による組成物の保存性が低下したり、粘度が向上してハンドリングが低下したりする場合がある。
【0064】
本発明の熱反応性組成物には、更に無機化合物を含有させることができる。該無機化合物としては、例えば、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化イリジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化カリウム、シリカ、アルミナ等の金属酸化物;層状粘土鉱物、ミロリブルー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、コバルト系、マンガン系、ガラス粉末、マイカ、タルク、カオリン、フェロシアン化物、各種金属硫酸塩、硫化物、セレン化物、アルミニウムシリケート、カルシウムシリケート、水酸化アルミニウム、白金、金、銀、銅等が挙げられ、これらの中でも、酸化チタン、シリカ、層状粘土鉱物、銀等が好ましい。本発明の熱反応性組成物において、上記無機化合物の含有量は、上記樹脂(β)100質量部に対して、好ましくは0.1〜50質量部、より好ましくは0.5〜20質量部であり、これらの無機化合物は1種又は2種以上を使用することができる。
【0065】
これら無機化合物は、例えば、充填剤、反射防止剤、導電剤、安定剤、難燃剤、機械的強度向上剤、特殊波長吸収剤、撥インク剤等として用いられる。
【0066】
本発明の熱反応性組成物において、顔料及び/又は無機化合物を用いる場合、分散剤を加えることができる。該分散剤としては、顔料及び/又は無機化合物を分散又は安定化できるものであれば特に制限されず、市販の分散剤、例えばビックケミー社製、BYKシリーズ等を用いることができ、これらの中でも、塩基性官能基を有するポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタンからなる高分子分散剤、塩基性官能基として窒素原子を有し、窒素原子を有する官能基がアミン、及び/又はその四級塩であり、アミン価が1〜100mgKOH/gのものが好適に用いられる。
【0067】
また、本発明の熱反応性組成物には、必要に応じて、p−アニソール、ハイドロキノン、ピロカテコール、t−ブチルカテコール、フェノチアジン等の熱重合抑制剤;可塑剤;接着促進剤;充填剤;消泡剤;レベリング剤;表面調整剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;分散助剤;凝集防止剤;触媒;硬化促進剤;架橋剤;増粘剤等の慣用の添加物を加えることができる。
【0068】
本発明の熱反応性組成物において、上記のシアニン化合物(α)、樹脂(β)及び熱重合開始剤(γ)以外の任意成分(但し、不飽和結合を有するモノマー(ω)及び溶媒(σ)は除く)の含有量は、その使用目的に応じて適宜選択され特に制限されないが、好ましくは、上記樹脂(β)100質量部に対して合計で50質量部以下とする。
【0069】
本発明の熱反応性組成物においては、上記樹脂(β)と共に、他の有機重合体を用いることによって、本発明の熱反応性組成物からなる硬化物の特性を改善することもできる。上記有機重合体としては、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−エチルアクリレート共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ウレタン樹脂、ポリカーボネートポリビニルブチラール、セルロースエステル、ポリアクリルアミド、飽和ポリエステル、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、これらの中でも、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸−メチルメタクリレート共重合体、エポキシ樹脂が好ましい。
他の有機重合体を使用する場合、その使用量は、上記樹脂(β)100質量部に対して、好ましくは10〜500質量部である。
【0070】
本発明の熱反応性組成物には、更に、連鎖移動剤、増感剤、界面活性剤、シランカプリング剤、メラミン化合物等を併用することができる。
【0071】
上記連鎖移動剤又は増感剤としては、一般的に硫黄原子含有化合物が用いられる。例えばチオグリコール酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプト酪酸、N−(2−メルカプトプロピオニル)グリシン、2−メルカプトニコチン酸、3−[N−(2−メルカプトエチル)カルバモイル]プロピオン酸、3−[N−(2−メルカプトエチル)アミノ]プロピオン酸、N−(3−メルカプトプロピオニル)アラニン、2−メルカプトエタンスルホン酸、3−メルカプトプロパンスルホン酸、4−メルカプトブタンスルホン酸、ドデシル(4−メチルチオ)フェニルエーテル、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−2−ブタノール、メルカプトフェノール、2−メルカプトエチルアミン、2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−3−ピリジノール、2−メルカプトベンゾチアゾール、メルカプト酢酸、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)等のメルカプト化合物、該メルカプト化合物を酸化して得られるジスルフィド化合物、ヨード酢酸、ヨードプロピオン酸、2−ヨードエタノール、2−ヨードエタンスルホン酸、3−ヨードプロパンスルホン酸等のヨード化アルキル化合物、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトイソブチレート)、ブタンジオールビス(3−メルカプトイソブチレート)、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、ブタンジオールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、トリスヒドロキシエチルトリスチオプロピオネート、下記化合物C1、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等の脂肪族多官能チオール化合物、昭和電工社製カレンズMT BD1、PE1、NR1等が挙げられる。
【0072】
【化19】
【0073】
上記界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等のフッ素界面活性剤、高級脂肪酸アルカリ塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩等のアニオン系界面活性剤、高級アミンハロゲン酸塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド等の非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤を用いることができ、これらは組み合わせて用いてもよい。
【0074】
上記シランカップリング剤としては、例えば信越化学社製シランカップリング剤を用いることができ、これらの中でも、KBE−9007、KBM−502、KBE−403等のイソシアネート基、メタクリロイル基、エポキシ基を有するシランカップリング剤が好適に用いられる。
【0075】
上記メラミン化合物としては、(ポリ)メチロールメラミン、(ポリ)メチロールグリコールウリル、(ポリ)メチロールベンゾグアナミン、(ポリ)メチロールウレア等の窒素化合物中の活性メチロール基(CH2OH基)の全部又は一部(少なくとも2つ)がアルキルエーテル化された化合物を挙げることができる。ここで、アルキルエーテルを構成するアルキル基としては、メチル基、エチル基又はブチル基が挙げられ、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、アルキルエーテル化されていないメチロール基は、一分子内で自己縮合していてもよく、二分子間で縮合して、その結果オリゴマー成分が形成されていてもよい。具体的には、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラブトキシメチルグリコールウリル等を用いることができる。これらの中でも、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン等のアルキルエーテル化されたメラミンが好ましい。
【0076】
本発明の熱反応性組成物は、溶剤がない固形状態の場合には溶剤に溶解又は分散させた後、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スリットコーター、ディップコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の手段で、ソーダガラス、石英ガラス、半導体基板、金属、紙、プラスチック等の支持基体上に適用することができる。また、一旦フィルム等の支持基体上に施した後、他の支持基体上に転写することもでき、その適用方法に制限はない。
【0077】
本発明の熱反応性組成物を硬化させる際の加熱条件は、70〜250℃で1〜100分である。プレベイクした後、加圧して、ポストベイクしてもよいし、異なる数段階の温度でベイクしてもよい。
加熱条件は各成分の種類及び配合割合によって異なるが、例えば、70〜180℃で、オーブンなら5〜15分間、ホットプレートなら1〜5分間である。その後、塗膜を硬化させるために100〜250℃、好ましくは180〜250℃ 、より好ましくは200〜250℃ で、オーブンなら30〜90分間、ホットプレートなら5〜30分間加熱処理することによって硬化膜を得ることができる。
【0078】
本発明の熱反応性組成物(又はその硬化物)は、熱反応性塗料或いはワニス、熱反応性接着剤、プリント基板、或いはカラーテレビ、PCモニタ、携帯情報端末、デジタルカメラ等のカラー表示の液晶表示パネルにおけるカラーフィルタ、CCDイメージセンサのカラーフィルタ、プラズマ表示パネル用の電極材料、粉末コーティング、印刷インク、印刷版、接着剤、歯科用組成物、立体造形用樹脂、ゲルコート、電子工学用のフォトレジスト、電気メッキレジスト、エッチングレジスト、液状及び乾燥膜の双方、はんだレジスト、種々の表示用途用のカラーフィルタを製造するための或いはプラズマ表示パネル、電気発光表示装置、及びLCDの製造工程において構造を形成するためのレジスト、電気及び電子部品を封入するための組成物、ソルダーレジスト、磁気記録材料、微小機械部品、導波路、光スイッチ、めっき用マスク、エッチングマスク、カラー試験系、ガラス繊維ケーブルコーティング、スクリーン印刷用ステンシル、ステレオリトグラフィによって三次元物体を製造するための材料、ホログラフィ記録用材料、画像記録材料、微細電子回路、脱色材料、画像記録材料のための脱色材料、マイクロカプセルを使用する画像記録材料用の脱色材料、印刷配線板用フォトレジスト材料、UV及び可視レーザー直接画像系用のフォトレジスト材料、プリント回路基板の逐次積層における誘電体層形成に使用するフォトレジスト材料或いは保護膜等の各種の用途に使用することができ、その用途に特に制限はない。
【0079】
本発明の熱反応性組成物は、特定の赤外線を遮断する目的で使用され、特に波長カットフィルタを形成するための熱反応性組成物として有用である。
【0080】
続いて、本発明の波長カットフィルタについて説明する。
本発明の波長カットフィルタは、ガラス基板(A)の一方の面に、本発明の熱反応性組成物より得られるコーティング層(B)を有し、且つガラス基板(A)の他方の面に赤外線反射膜(C)を有するものである。コーティング層(B)及び赤外線反射膜(C)はそれぞれガラス基板(A)の各面に積層されている。図1に示すように、本発明の熱反応性組成物より得られるコーティング層(B)を有する側を光の入射側としてもよく、図2に示すように、赤外線反射膜(C)を有する側を光の入射側としてもよい。以下、各層について順に説明する。
【0081】
<ガラス基板(A)>
本発明の波長カットフィルタに用いられるガラス基板(A)としては、可視域で透明なガラス材料から適宜選択して使用することができるが、ソーダ石灰ガラス、白板ガラス、硼珪酸ガラス、強化ガラス、石英ガラス、リン酸塩系ガラス等を用いることができ、中でもソーダ石灰ガラスは、安価で入手容易なため好ましく、白板ガラス、硼珪酸ガラス及び強化ガラスは、入手容易で硬度が高く加工性に優れるため好ましい。
【0082】
さらに、ガラス基板(A)にシランカップリング剤等の前処理を施した後に、本発明の熱反応性組成物からなる塗工液を塗布してコーティング層(B)を形成すると、塗工液乾燥後の染料を含有するコーティング層(B)のガラス基板に対する密着性が高まる。
【0083】
上記シランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシラン等が挙げられる。
【0084】
また、ガラス基板(A)とコーティング層(B)との間に、下地層を有していてもよい。下地層は、平均一次粒子径が5〜100nmの一次粒子が凝集した平均二次粒子径が20〜250nmである金属酸化物微粒子の凝集体を、下記に示す溶媒に分散させた塗工液を、下記に示す塗布方法により塗工することにより得られ、厚さが30〜1000nmである。上記金属酸化物微粒子の凝集体は、塗工液全量に対して0.1〜50質量%が好ましい。
【0085】
ガラス基板(A)の厚さは、特に限定されないが、0.05〜8mmが好ましく、軽量化及び強度の点から0.05〜1mmがさらに好ましい。
【0086】
本発明では、基材がガラス板のため、基材上に直接塗工、乾燥した後切断加工することが可能であり、構造やプロセスが簡易となる。また、基板がガラス板のため、プラスチックである場合より耐熱性(260℃リフロー耐性)が高い。
【0087】
<コーティング層(B)>
本発明の波長カットフィルタに用いられる、本発明の熱反応性組成物より得られるコーティング層(B)は、上述のように、本発明の熱反応性組成物をガラス基板(A)上に塗布することにより形成することができる。得られた塗膜は必要に応じ加熱して硬化させる。
【0088】
染料を含有するコーティング層(B)の厚さは1〜200μmであるのが、均一な膜が得られ薄膜化に有利であるため好ましい。1μm未満だと機能を十分に発現することができず、200μmを超えると、塗布時に溶媒が残留する恐れがある。
【0089】
<赤外線反射膜(C)>
本発明の波長カットフィルタに用いられる赤外線反射膜(C)は、700〜1200nmの波長域の光を遮断する機能を有するものであり、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層された誘電体多層膜により形成される。
【0090】
上記低屈折率層を構成する材料としては、屈折率1.2〜1.6の材料を用いることができ、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が挙げられる。
【0091】
上記高屈折率層を構成する材料としては、屈折率が1.7〜2.5の材料を用いることができ、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化インジウム等が挙げられる他、これらを主成分とし、酸化チタン、酸化錫、酸化セリウム等を少量含有させたもの等が挙げられる。
【0092】
上記低屈折率層と高屈折率層を積層する方法については、これらの層を積層した誘電体多層膜が形成される限り特に制限はないが、例えば、ガラス基板上に、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法等により低屈折率層と高屈折率層を交互に積層した誘電体多層膜を形成する方法が挙げられる。また、あらかじめ誘電体多層膜を形成し、これをガラス基板に接着剤で貼り合わせることもできる。
積層数は、10〜80層であり、25〜50層であるのが、プロセス及び強度の点から好ましい。
【0093】
上記低屈折率層と高屈折率層の厚みは、それぞれ、通常、遮断しようとする光線の波長λ(nm)の1/10〜1/2の厚みである。厚みが0.1λ未満あるいは0.5λより大きくなると、屈折率(n)と物理膜厚(d)との積(nd)がλ/4の倍数で表される光学膜厚と大きく異なって特定波長の遮断・透過ができない恐れがある。
【0094】
上記赤外線反射膜(C)としては、前記の誘電体多層膜の他、極大吸収波長が700〜1100nmの染料を含有する膜、高分子を積層させたもの、コレステリック液晶を塗布して形成した膜等の有機材料を用いたものを使用することもできる。
【0095】
本発明の波長カットフィルタは、透過率が下記(i)〜(iii)を満たすことが好ましい。尚、透過率の測定は、日本分光(株)製紫外可視近赤外分光光度計V−570で測定した。
(i)波長430〜580nmの範囲において、波長カットフィルタの垂直方向(ガラス基板の板面に対して垂直な方向、以下同様)から測定した場合の透過率の平均値が75%以上である。
(ii)波長800〜1000nmにおいて、波長カットフィルタの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が5%以下である。
(iii)波長560〜800nmの範囲において、波長カットフィルタの垂直方向から測定した場合の透過率が80%となる波長の値(Ya)と、波長カットフィルタの垂直方向に対して35°の角度から測定した場合の透過率が80%となる波長の値(Yb)の差の絶対値が30nm以下である。
波長カットフィルタにおいて、上記(i)の波長430〜580nmの範囲における透過率の平均値が75%未満であると、可視光領域における光をほとんど透過しないことになる。(i)の波長430〜580nmの範囲における透過率の平均値は、80%以上であることが更に好ましい。上記(ii)の波長800〜1000nmにおける透過率の平均値が5%を超えると、赤外線領域における光をほとんどカットしないため、人間の視感度に近づくよう感度を補正することが困難になる恐れがある。(ii)の波長800〜1000nmにおける透過率の平均値は1%以下であることが更に好ましい。
また、上記(iii)のYaとYbの差の絶対値が30nmを超えると、光の入射角による依存性が高くなり、光の入射角によって波長カットフィルタの特性が変化するため、画面の中心と周辺で色合いが変化する等の弊害が生じる恐れがある。(iii)のYaとYbの差の絶対値は5nm以下であることが更に好ましく、3nm以下であることが更に一層好ましい。
【0096】
本発明の波長カットフィルタの具体的な用途としては、自動車や建物の窓ガラス等に装着される熱線カットフィルタ;デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ウェブカメラ、携帯電話用カメラ等の固体撮像装置におけるCCDやCMOS等の固体撮像素子用視感度補正用;自動露出計;プラズマディスプレイ等の表示装置等を挙げることができる。
【0097】
次に、本発明の固体撮像装置及びカメラモジュールについて説明する。
本発明の固体撮像装置は、本発明の波長カットフィルタを撮像素子の前面に備える以外は従来の固体撮像装置と同様に構成される。本発明の波長カットフィルタ1は、図5及び図6に示すように、固体撮像素子2の光入射側で固体撮像素子以外の部分に固定してもよいし、図3及び図4に示すように、固体撮像素子2の前面に直接固定してもよい。
【0098】
本発明の固体撮像装置には、必要に応じて、光学ローパスフィルタ、反射防止フィルタ、カラーフィルタ等を配置することができ、これらを積層する順序に特に制限はない。
【0099】
図3及び図4に示すように、本発明の固体撮像装置の一つであるカメラモジュールに関し、本発明の波長カットフィルタ1が、固体撮像素子2の光入射側で固体撮像素子に積層されている場合について具体的に説明する。
図3及び図4は、本発明の固体撮像装置の一つであるカメラモジュールの構成の一形態を示す断面図である。カメラモジュールは、半導体基板に平面視矩形状に形成された固体撮像素子2と、固体撮像素子2の受光部3の反対側に、光入射側から染料を含有するコーティング層(B)・ガラス基板(A)・赤外線反射膜(C)の順に積層された波長カットフィルタ1(図3)/又は赤外線反射膜(C)・ガラス基板(A)・染料を含有するコーティング層(B)の順に積層された波長カットフィルタ1(図4)と、固体撮像素子2の一面において受光部3を除いた領域に形成され、固体撮像素子2及び波長カットフィルタ1を接着剤4で接合する。固体撮像装置であるカメラモジュールは、波長カットフィルタ1を通して外部からの光を取り込み、固体撮像素子2の受光部3に配置された受光素子によって受光する。
【0100】
図5及び図6に示すように、本発明の固体撮像装置の一つであるカメラモジュールに関し、本発明の波長カットフィルタ1が、固体撮像素子2の光入射側で固体撮像素子以外の部分に固定されている場合について具体的に説明する。
図5及び図6は、本発明の固体撮像装置の一つであるカメラモジュールの構成の一形態を示す断面図である。カメラモジュールは、半導体基板に平面視矩形状に形成された固体撮像素子2と、固体撮像素子2の受光部3の反対側に、光入射側から染料を含有するコーティング層(B)・ガラス基板(A)・赤外線反射膜(C)の順に積層された波長カットフィルタ1(図5)/又は赤外線反射膜(C)・ガラス基板(A)・染料を含有するコーティング層(B)の順に積層された波長カットフィルタ1(図6)と、固体撮像素子2の一面において受光部3を除いた領域に形成される。固体撮像装置であるカメラモジュールは、波長カットフィルタ1を通して外部からの光を取り込み、固体撮像素子2の受光部3に配置された受光素子によって受光する。
【0101】
接着剤4としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等のUV硬化性接着剤あるいは熱硬化性樹脂を用いることができ、該接着剤4を均一に塗布した後、必要に応じて周知のフォトリソグラフィ技術を用いて接着剤4をパターニングし、熱硬化により接合する。接合する際には、真空環境内で貼り合せ後に真空加圧を行ってもよい。
【0102】
実装基板8は、ガラスエポキシ基板やセラミック基板等を用いたリジッド基板であり、固体撮像素子2を制御する制御回路が設けられているものである。
実装基板8上に固体撮像素子2を配置し、続いて、実装基板8のレンズホルダ7が固着される位置に予め接着剤4を塗布しておく。
レンズキャップ6は、レンズ5を保護するものである。また、レンズホルダ7は、レンズ5を保持するものであり、実装基板8に取り付けられて固体撮像素子2を覆う箱状のベース部7aと、レンズ5を保持する円筒形状の鏡筒部7bとを備えている。
【0103】
続いて、レンズホルダ7の下端面が塗布された接着剤4に接するようにレンズホルダ7を実装基板8上に配置し、更に固体撮像素子2の受光部3とレンズホルダ7内のレンズ5との距離が、レンズ5の焦点距離に一致するようにレンズホルダ7の位置の調節を行う。
【0104】
レンズホルダ7の位置調節を行った後、接着剤4に対して紫外線を照射し、接着剤4を硬化させ、カメラモジュールを製造することができる。
レンズホルダ7が固定された実装基板8全体を、約85℃ で加熱して、熱硬化により更に接着剤4の硬化を十分に行ってもよい。
【0105】
尚、カメラモジュールの製造方法においては、紫外線を照射する工程の後に、実装基板8全体を加熱する工程を含むため、レンズホルダ7、レンズ5及び波長カットフィルタ1はいずれも、耐熱性の高い材料を用いることが必要とされる。具体的には、前述のように接着剤4の熱硬化のための加熱の他、実装基板8の下面に配置される複数のはんだを、約260℃ で加熱溶融処理して他の基板にはんだ付けするため、リフロー耐性を持った材料で形成されていることが望ましい。
【実施例】
【0106】
以下、実施例等を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0107】
[製造例1]樹脂(β)No.1の調製
アクリル酸40質量部及びブチルメタクリレート50質量部を、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)200質量部に溶解し、この溶液に、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル4質量部を加え、80℃で3時間撹拌した。続いて、アクリル酸で変性したセロキサイド2021P(ダイセル化学社製脂環式エポキシ樹脂)10質量部を加え、120℃で3時間撹拌し、樹脂(β)No.1を得た。
この樹脂(β)No.1は、上記一般式(I)において、X1が水素原子又はメチル基であり、Y1が、上記一般式(1)で表される二価の結合基(X2は、下記式(n)で表される基であり、Z1及びZ2は、直接結合である)であり、R1は、炭素原子数1〜8のアルキル基であり、R2〜R3は水素原子であり、R4はメチル基である樹脂(β)である。
【0108】
【化20】
(n)
【0109】
[製造例2]樹脂(β)No.2の調製
メタクリル酸20質量部、グリシジルメタクリレート20質量部及びベンジルメタクリレート50質量部をシクロヘキサノン500質量部に溶解し、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル4質量部を加えて、80℃で3時間撹拌した。続いて、アクリル酸20質量部を加えて120℃で3時間撹拌し、樹脂(β)No.2を得た。
【0110】
[製造例3]樹脂(β)No.3の調製
グリシジルメタクリレート50質量部、ベンジルメタクリレート5部及びスチレン40質量部をプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)500質量部に溶解し、ラジカル重合開始剤として1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン1質量部を加えて、140℃で2時間撹拌した。次いで、アクリル酸20質量部を加えて120℃で3時間撹拌し、樹脂(β)No.3を得た。
【0111】
[製造例4]樹脂(β)No.4の調製
グリシジルメタクリレート40質量部、ベンジルメタクリレート5部、スチレン40質量部をプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)500質量部に溶解し、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル10質量部を用いて80℃で3時間撹拌した。次いで、アクリル酸20質量部を加えて、120℃で3時間撹拌し、樹脂(β)No.4を得た。
【0112】
[製造例5]樹脂(β)No.5の調製
グリシジルメタクリレート40質量部、ベンジルメタクリレート5部、スチレン40質量部をプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)500質量部に溶解し、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル5質量部を加えて、80℃で3時間撹拌した。次いで、アクリル酸20質量部を加えて、120℃で3時間攪拌した。次いで、テトラヒドロフタル酸無水物5質量部を加えて120℃で3時間撹拌した後、樹脂(β)No.5を得た。
【0113】
[実施例1−1〜1−10及び比較例1−1〜1−5]熱反応性組成物No.1〜No.11及び比較組成物No.1〜No.5の調製
<ステップ1>染料液No.1〜No.10及び比較染料液No.1〜No.5の調製
(A)成分として[表1]〜[表3]に示すシアニン化合物(α)に溶媒(σ)を加え、撹拌して溶解させて染料液No.1〜No.10及び比較染料液No.1〜No.5を得た。
【0114】
<ステップ2>熱反応性組成物No.1〜No.10及び比較組成物No.1〜No.5の調製
[表1]〜[表3]の配合に従い、上記染料液No.1〜No.10及び比較染料液No.1〜No.5に、樹脂(β)、重合開始剤(γ)(又は(γ´))及び不飽和結合を有するモノマー(ω)並びに溶媒(σ)を加えて撹拌し、熱反応性組成物No.1〜No.10及び比較組成物No.1〜No.5を調製した。
【0115】
【表1】
【0116】
A−1:化合物No.76のヘキサフルオロリン酸塩
A−2:化合物No.100のヘキサフルオロリン酸塩
A−3:化合物No.100のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸塩
A−4:化合物No.102のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸塩
A−5:化合物No.103のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸塩
B−1:製造例1で得られた樹脂(β)No.1
B−2:ACA Z251(ダイセル・オルネクス社製アクリル化アクリレート)
B−3:ACA Z250(ダイセル・オルネクス社製アクリル化アクリレート)
B−4:ACA 200M(ダイセル・オルネクス社製アクリル化アクリレート)
B−5:SPC−1000(昭和電工社製アクリル樹脂)
B−6:SPC−3000(昭和電工社製アクリル樹脂)
B−7:製造例2で得られた樹脂(β)No.2
B−8:製造例3で得られた樹脂(β)No.3
B−9:製造例4で得られた樹脂(β)No.4
B−10:製造例5で得られた樹脂(β)No.5
C−1:V−60(和光純薬社製油溶性アゾ重合開始剤)
C−2:V−70(和光純薬社製油溶性アゾ重合開始剤)
C−3:V−65(和光純薬社製油溶性アゾ重合開始剤)
C−4:V−59(和光純薬社製油溶性アゾ重合開始剤)
C−5:V−40(和光純薬社製油溶性アゾ重合開始剤)
C−6:VAm−110(和光純薬社製油溶性アゾ重合開始剤)
C’−1:Irg−907(BASF社製光重合開始剤)
C’−2:SP−246(ADEKA社製光重合開始剤)
C’−3:OXE−01(BASF社製光重合開始剤)
C’−4:OXE−02(BASF社製光重合開始剤)
D−1:アロニックスM450(東亞合成社製アクリル系モノマー)
D−2:アロニックスM315(東亞合成社製アクリル系モノマー)
E−1:シクロヘキサノン
E−2:ジアセトンアルコール
E−3:メチルエチルケトン
【0117】
【表2】
【0118】

【表3】
【0119】
[評価例1−1〜1−10及び比較評価例1−1〜1−5]
実施例1−1〜1−10で得られた熱反応性組成物No.1〜No.10及び比較例1−1〜1−5で得られた比較組成物No.1〜No.5を、それぞれガラス基板に410rpm×7秒の条件で塗工し、ホットプレートで乾燥(90℃、10分)させた。乾燥後、ホットプレートで150℃×10分加熱して塗膜を硬化させた。硬化後の塗膜を、150℃×1時間の条件で加熱して耐熱性を評価した。評価は、加熱前後の最大吸収波長の透過率変化を算出することによって行った。透過率変化量は以下の式で求めた。
透過率変化量(%)=(X−Y)/X×100(Xは、加熱前の最大吸収波長の透過率、Yは加熱後に測定した、当該波長における透過率)
これらの結果を、[表4]に示す。
【0120】
【表4】
(表4中、「−」は均一に成膜できないため評価できないことを示す。)
【0121】
上記[表4]の結果より、本発明の熱反応性組成物は色差の変化が少なく、耐熱性が高いことは明らかである。
【0122】
[実施例2−1〜2−10]波長カットフィルタNo.1〜No.10の製造
厚さ100μmのガラス基板(A)の一方の面に、真空蒸着法によりシリカ(SiO2)層と酸化チタン(TiO2)層とを交互に積層して、全層数が30層で厚さ約3μmの赤外線反射膜(C)を形成した。
得られた赤外反射膜(C)を施したガラス基板(A)の赤外反射膜とは異なる面に、実施例1−1〜1−10で得られた熱反応性組成物(塗工液)No.1〜No.10を、バーコーター#30により塗布(膜厚10μm)した後、100℃で10分間乾燥させ、波長カットフィルタNo.1〜No.10を作製した。
【0123】
[評価例2−1〜2−10]
実施例2−1〜2−10で得られた本発明の波長カットフィルタNo.1〜No.10について、i)波長430〜580nmの範囲において、波長カットフィルタの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値、ii)波長800〜1000nmにおいて、波長カットフィルタの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値及びiii)波長560〜800nmの範囲において、波長カットフィルタの垂直方向から測定した場合の透過率が80%となる波長の値(Ya)と、波長カットフィルタの垂直方向に対して35°の角度から測定した場合の透過率が80%となる波長の値(Yb)の差の絶対値を求めた。結果を[表5]に示す。尚、上透過率の測定は、日本分光(株)製紫外可視近赤外分光光度計V−570で測定した。
【0124】
【表5】
【0125】
上記[表5]の結果より、本発明の波長カットフィルタは、波長430〜580nmの範囲において透過率が高く、波長800〜1000nmにおいて透過率が低く、かつ入射角依存性が低い。
【0126】
以上の結果より、ガラス基板(A)の一方の面に染料を含有するコーティング層(B)を形成し、かつガラス基板(A)の他方の面に赤外線反射膜(C)を有することを特徴とする本発明の波長カットフィルタは、入射角依存性が低い。よって、本発明の波長カットフィルタは、固体撮像装置及びカメラモジュールに有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6