特許第6908546号(P6908546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6908546光反射材料用硬化性シリコーン組成物、シリコーン樹脂硬化物、リフレクター、及びLED装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6908546
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】光反射材料用硬化性シリコーン組成物、シリコーン樹脂硬化物、リフレクター、及びLED装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20210715BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20210715BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20210715BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20210715BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20210715BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20210715BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20210715BHJP
【FI】
   C08L83/07
   C08K5/54
   C08K3/22
   C08K3/36
   H01L23/30 F
   H01L33/60
【請求項の数】9
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-39110(P2018-39110)
(22)【出願日】2018年3月5日
(65)【公開番号】特開2019-151768(P2019-151768A)
(43)【公開日】2019年9月12日
【審査請求日】2020年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 真司
(72)【発明者】
【氏名】原田 良文
【審査官】 吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−173891(JP,A)
【文献】 特開2014−118464(JP,A)
【文献】 特開2014−148609(JP,A)
【文献】 特開2014−005334(JP,A)
【文献】 特開2012−201754(JP,A)
【文献】 特開2012−241051(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0049716(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08K 3/00 − 13/08
C08L 1/00 − 101/14
H01L 23/28 − 23/31
H01L 33/00
H01L 33/48 − 33/64
DB名 CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A−1)(a)下記一般式(1)で表されるケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個有する化合物と、(b)下記一般式(4)で表されるアルケニルノルボルネン化合物との付加反応生成物であって、付加反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する付加反応生成物 30〜70質量部、
(A−2)下記一般式(3)で表される化合物 30〜70質量部(但し、前記(A−1)成分及び前記(A−2)成分の合計は100質量部である。)、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に3個以上有する有機ケイ素化合物
(組成物中のケイ素原子に結合した水素原子の合計量が、組成物中の付加反応性炭素−炭素二重結合に対してモル比で0.5〜3.0となる量である)、
(C)ヒドロシリル化反応触媒、
(D)酸化チタン粉末 前記(A−1)、(A−2)及び(B)成分との合計100質量部に対し50〜1000質量部、及び
(E)煙霧質シリカ粉末 前記(A−1)、(A−2)及び(B)成分との合計100質量部に対し1〜50質量部
を含有することを特徴とする光反射材用硬化性シリコーン組成物。
【化1】
(式中Aは下記一般式(2)で表される基から成る群から選ばれる2価の基であり、Rは、独立に非置換若しくは置換の炭素原子数1〜12の1価炭化水素基、又は炭素原子数1〜6のアルコキシ基である。)
【化2】
【化3】
(式中Phはフェニル基であり、Rは独立に非置換若しくは置換の炭素原子数1〜12の1価炭化水素基であり、Rは付加反応性炭素−炭素二重結合含有基であり、nは1〜20の整数である。)
【化4】
(式中、Rは非置換又は置換の炭素原子数2〜12のアルケニル基である。)
【請求項2】
前記(b)が、5−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、6−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、及びこれらの組み合わせのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の光反射材用硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
前記(B)成分が、下記一般式(5)で表されるシロキサン化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光反射材用硬化性シリコーン組成物。
【化5】
(式中、Rは独立に水素原子又はアルケニル基以外の非置換若しくは置換の炭素原子数
1〜12の一価炭化水素基であり、Rはメチル基あるいは水素原子であり、pは1〜10の整数、qは0〜7の整数である。pが付されたシロキサン単位とqが付されたシロキサン単位とは互いにランダムに配列している。)
【請求項4】
25℃における粘度が5〜500Pa・sのものであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の光反射材用硬化性シリコーン組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物を成形、硬化させることにより得られたものであることを特徴とする光反射材料用シリコーン樹脂硬化物。
【請求項6】
硬化直後における、波長430〜800nmの光の反射率が95%以上であり、170℃環境下、1000時間暴露後の波長430〜800nmの光の反射率が82%以上のものであることを特徴とする請求項に記載の光反射材料用シリコーン樹脂硬化物。
【請求項7】
ショアD硬度が65以上のものであることを特徴とする請求項又は請求項に記載の光反射材料用シリコーン樹脂硬化物。
【請求項8】
請求項から請求項のいずれか一項に記載の光反射材料用シリコーン樹脂硬化物からなるものであることを特徴とするリフレクター。
【請求項9】
請求項に記載のリフレクターを搭載したものであることを特徴とするLED装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光反射材料、特に白色LED(発光ダイオード)用リフレクター材料として有用なシリコーン樹脂硬化物を与える光反射材料用硬化性シリコーン組成物(白色熱硬化性シリコーン組成物)、該組成物の硬化物、及び該硬化物を用いたリフレクター及びLED装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED等の光半導体素子は、高効率で発光するとともに駆動特性や点灯繰り返し特性に優れるため、インジケーターや光源として幅広く利用されている。特に、白色LEDは、表示装置のバックライトやカメラのフラッシュとして広く応用されており、更には、次世代の照明装置としても期待されている。こうした発光装置には、照射方向の光の取り出し効率を高めるため、発せられた光を反射する部品(以下、リフレクター)が搭載されている。
【0003】
現在、リフレクターに用いる材料(以下、リフレクター材料)としては、ポリフタルアミド樹脂が幅広く利用されている。しかしながら、ポリフタルアミド樹脂は、長期間使用による劣化、特に変色、剥離、機械強度低下などが起こりやすく、昨今の高出力発光素子に適用するのは困難である。
【0004】
こうした問題点を解決するため、特許文献1〜4ではエポキシ樹脂あるいはシリコーンと金属酸化物等を構成成分とするリフレクター材料が、また、特許文献5ではセラミックリフレクター材料が提案されている。しかしながら、これらの固形材料は、優れた耐熱性、機械特性を有する一方、室温においては流動性が乏しいため、成形に高温を必要とするなど取扱い性・作業性に問題がある。また、これらの固形材料は、高温においても流動性に乏しいため、微細な構造体や大面積の構造体を成形するのが困難であるなど工程上の問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許2656336号公報
【特許文献2】特開2008−106226号公報
【特許文献3】特開2008−189833号公報
【特許文献4】特開2013−221075号公報
【特許文献5】特開2008−117932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、室温において高い流動性を有し、耐熱性(熱安定性)、特に耐熱変色性に優れ、かつ、高い光反射率を得ることができる硬化物を与える光反射材料用硬化性シリコーン組成物を提供する。即ち、本発明は、光反射材料、特に白色LED用リフレクター材料として有用なシリコーン樹脂硬化物を与える光反射材料用硬化性シリコーン組成物、及び該組成物の硬化物からなるリフレクター(特に、白色発光ダイオード用)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明では、
(A−1)(a)下記一般式(1)で表されるケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個有する化合物と、(b)付加反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に2個有する多環式炭化水素との付加反応生成物であって、付加反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する付加反応生成物 30〜70質量部、
(A−2)下記一般式(3)で表される化合物 30〜70質量部(但し、前記(A−1)成分及び前記(A−2)成分の合計は100質量部である。)、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に3個以上有する有機ケイ素化合物
(組成物中のケイ素原子に結合した水素原子の合計量が、組成物中の付加反応性炭素−炭素二重結合に対してモル比で0.5〜3.0となる量である)、
(C)ヒドロシリル化反応触媒、
(D)酸化チタン粉末、及び
(E)煙霧質シリカ粉末
を含有する光反射材用硬化性シリコーン組成物を提供する。
【化1】
(式中Aは下記一般式(2)で表される基から成る群から選ばれる2価の基であり、Rは、独立に非置換若しくは置換の炭素原子数1〜12の1価炭化水素基、又は炭素原子数1〜6のアルコキシ基である。)
【化2】
【化3】
(式中Phはフェニル基であり、Rは独立に非置換若しくは置換の炭素原子数1〜12の1価炭化水素基であり、Rは付加反応性炭素−炭素二重結合含有基であり、nは1〜20の整数である。)
【0008】
このような光反射材用硬化性シリコーン組成物であれば、室温において高い流動性を有し、耐熱性(熱安定性)、特に耐熱変色性に優れ、かつ、高い光反射率を得ることができる硬化物を与えることができる。
【0009】
また、前記(b)が、下記一般式(4)で表されるものであることが好ましい。
【化4】
(式中、Rは非置換又は置換の炭素原子数2〜12のアルケニル基である。)
【0010】
また、前記(b)が、5−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、6−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、及びこれらの組み合わせのうちのいずれかであることが好ましい。
【0011】
このような原料(b)であれば、より効果的に硬化物に強度を付与し高硬度とすることができる。
【0012】
また、前記(B)成分が、下記一般式(5)で表されるシロキサン化合物であることが好ましい。
【化5】
(式中、Rは独立に水素原子又はアルケニル基以外の非置換若しくは置換の炭素原子数
1〜12の一価炭化水素基であり、Rはメチル基あるいは水素原子であり、pは1〜10の整数、qは0〜7の整数である。pが付されたシロキサン単位とqが付されたシロキサン単位とは互いにランダムに配列している。)
【0013】
このような(B)成分であれば、リフレクター材料として用いた場合に十分な機械特性を有する硬化物を得ることができる。
【0014】
このとき、25℃における粘度が5〜500Pa・sのものであることが好ましい。
【0015】
このような粘度であれば、流動性が高く、取扱い性・作業性により優れたものとなる。
【0016】
また、本発明では、上記の光反射材料用硬化性シリコーン組成物を成形、硬化させることにより得られたものである光反射材料用シリコーン樹脂硬化物を提供する。
【0017】
このような光反射材料用シリコーン樹脂硬化物であれば、リフレクター材料として好適に用いることができる。
【0018】
このとき、硬化直後における、波長430〜800nmの光の反射率が95%以上であり、170℃環境下、1000時間暴露後の波長430〜800nmの光の反射率が82%以上のものであることが好ましい。
【0019】
このような光反射材料用シリコーン樹脂硬化物であれば、長期間使用による劣化、特に変色、剥離、機械強度低下などが起こりにくいリフレクター材料として好適に用いることができる。
【0020】
またこのとき、ショアD硬度が65以上のものであることが好ましい。
【0021】
このようなショアD硬度であれば、リフレクター材料である硬化物を、ダイシングソー等を用いて切断し個片化するのにより適した硬度となる。
【0022】
また、本発明では、上記の光反射材料用シリコーン樹脂硬化物からなるものであるリフレクターを提供する。
【0023】
さらに、本発明では、上記のリフレクターを搭載したものであるLED装置を提供する。
【0024】
このようなリフレクターやLED装置であれば、長期間にわたって高い光取り出し効率を維持できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物は、室温において、高い流動性を有するため、作業性・取扱い性に優れる。また、上記組成物を硬化させて得られる光反射材料用シリコーン樹脂硬化物は、光反射性能と耐熱性(熱安定性)、特に耐熱変色性に優れる。よって、上記硬化物は光反射材料、例えば、発光装置用、特に白色LED用のリフレクター材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
上述のように、室温において高い流動性を有し、耐熱性(熱安定性)、特に耐熱変色性に優れ、かつ、高い光反射率を得ることができる硬化物を与える光反射材料用硬化性シリコーン組成物の開発が求められていた。
【0027】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有するヒドロシリル化反応による反応付加生成物と、特定の構造を有するオルガノポリシロキサンを含有する熱硬化性シリコーン組成物に酸化チタン粉末を配合することによって、室温において高い流動性を有し、耐熱性(熱安定性)、特に耐熱変色性に優れ、かつ、高い光反射率を得ることができる硬化物を与える光反射材料用硬化性シリコーン組成物を得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0028】
即ち、本発明は、
(A−1)(a)上記一般式(1)で表されるケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個有する化合物と、(b)付加反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に2個有する多環式炭化水素との付加反応生成物であって、付加反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する付加反応生成物 30〜70質量部、
(A−2)上記一般式(3)で表される化合物 30〜70質量部(但し、前記(A−1)成分及び前記(A−2)成分の合計は100質量部である。)、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に3個以上有する有機ケイ素化合物
(組成物中のケイ素原子に結合した水素原子の合計量が、組成物中の付加反応性炭素−炭素二重結合に対してモル比で0.5〜3.0となる量である)、
(C)ヒドロシリル化反応触媒、
(D)酸化チタン粉末、及び
(E)煙霧質シリカ粉末
を含有する光反射材用硬化性シリコーン組成物である。
【0029】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において、Me及びPhはそれぞれメチル基及びフェニル基を表し、粘度は回転粘度計により測定した値である。
【0030】
[(A−1)成分]
本発明の光反射材用硬化性シリコーン組成物の(A−1)成分は、硬化させた後の硬化物に強度を付与し高硬度とする成分である。
【0031】
(A−1)成分は、(a)下記一般式(1)で表されるケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個有する化合物と、(b)付加反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に2個有する多環式炭化水素との付加反応生成物であって、付加反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する付加反応生成物である。以下、(A−1)成分の原料となる原料(a)及び原料(b)について説明する。
【化6】
(式中、Aは、下記一般式(2)で表される基から成る群から選ばれる2価の基であり、Rは、独立に非置換若しくは置換の炭素原子数1〜12の1価炭化水素基、又は炭素原子数1〜6のアルコキシ基である。)
【化7】
【0032】
<原料(a)>
(A−1)成分の反応原料である、(a)上記一般式(1)で表されるケイ素原子に結合した水素原子(以下、「SiH」ということがある)を1分子中に2個有する化合物(原料(a))は、上記一般式(1)中のAが上記一般式(2)で表される2価の基であるので、下記一般式(6)で表される化合物である。
【化8】
(Rは独立に非置換もしくは置換の炭素原子数1〜12の、好ましくは1〜6の、1価炭化水素基又は炭素原子数1〜6のアルコキシ基である)
【0033】
上記一般式(6)中、Rが1価炭化水素基である場合としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、sec−ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o−,m−,p−トリル等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基等のアルケニル基;p−ビニルフェニル基等のアルケニルアリール基;及びこれらの基中の炭素原子に結合した1個以上の水素原子が、ハロゲン原子、シアノ基、エポキシ環含有基等で置換された、例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基;2−シアノエチル基;3−グリシドキシプロピル基等が挙げられる。
【0034】
また、Rがアルコキシ基である場合としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。
【0035】
上記の中でも、Rとしては、アルケニル基及びアルケニルアリール基以外のものが好ましく、特に、1分子中の全てのRがメチル基であるものが、工業的に製造することが容易であり、入手しやすいことから好ましい。
【0036】
この上記一般式(6)で表される化合物としては、例えば、
構造式:HMeSi−p−C−SiMe
で表される1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、
構造式:HMeSi−m−C−SiMe
で表される1,3−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、
構造式:HMeSi−o−C−SiMe
で表される1,2−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン等のシルフェニレン化合物が挙げられる。
【0037】
なお、この上記一般式(6)で表される化合物((A−1)成分の反応原料である上記原料(a))は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0038】
<原料(b)>
(A−1)成分の反応原料である(b)付加反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に2個有する多環式炭化水素(原料(b))において、「付加反応性」とは、ケイ素原子に結合した水素原子の付加(ヒドロシリル化反応として周知)を受け得る性質を意味する。
【0039】
また、原料(b)は、(i)多環式炭化水素の多環骨格を形成している炭素原子のうち、隣接する2つの炭素原子間に付加反応性炭素−炭素二重結合が形成されているもの、(ii)多環式炭化水素の多環骨格を形成している炭素原子に結合した水素原子が、付加反応性炭素−炭素二重結合含有基によって置換されているもの、又は、(iii)多環式炭化水素の多環骨格を形成している炭素原子のうち、隣接する2つの炭素原子間に付加反応性炭素−炭素二重結合が形成されており、かつ、多環式炭化水素の多環骨格を形成している炭素原子に結合した水素原子が付加反応性炭素−炭素二重結合含有基によって置換されているものの何れであっても差し支えない。ここで、付加反応性炭素−炭素二重結合含有基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ノルボルニル基等のアルケニル基、特に炭素原子数2〜12のもの等が挙げられる。
【0040】
この(b)成分としては、例えば、下記一般式(4)で表されるアルケニルノルボルネン化合物が挙げられる。さらに、下記一般式(4)で表される化合物の具体例としては、下記構造式(7)で表される5−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、下記構造式(8)で表される6−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、及びこれら両者の組み合わせが挙げられる。(以下、これら3者を区別する必要がない場合は、「ビニルノルボルネン」と総称することがある)。
【化9】
(式中、Rは非置換又は置換の炭素原子数2〜12のアルケニル基である。)
【化10】
【化11】
【0041】
なお、上記ビニルノルボルネンのビニル基の置換位置は、シス配置(エキソ形)又はトランス配置(エンド形)のいずれであってもよく、また、このような配置の相違によって、原料(b)の反応性等に特段の差異がないことから、これら両配置の異性体の組み合わせであっても差し支えない。
【0042】
<(A−1)成分の調製>
本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物の(A−1)成分は、SiHを1分子中に2個有する上記原料(a)の1モルに対して、付加反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に2個有する上記原料(b)の1モルを超え10モル以下、好ましくは1モルを超え5モル以下の過剰量を、ヒドロシリル化反応触媒の存在下で付加反応させることにより、付加反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有し、かつ、SiHを有しない付加反応生成物として得ることができる。
【0043】
こうして得られる(A−1)成分は、原料(b)由来の付加反応性炭素−炭素二重結合のほかに、原料(a)に由来する(具体的には、一般式(1)中のRに由来する)付加反応性炭素−炭素二重結合を含み得るので、付加反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含むが、この数は好ましくは2〜6個、より好ましくは2個である。付加反応性炭素−炭素二重結合がこのような数であると、本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物を硬化させて得られる硬化物が脆くなることもない。
【0044】
上記ヒドロシリル化反応触媒としては、従来から公知のものが全て使用することができる。例えば、白金金属を担持したカーボン粉末、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応生成物、白金とジビニルテトラメチルジシロキサン等のビニルシロキサンとの錯体;塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒;パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族金属系触媒が挙げられる。また、付加反応条件、溶媒の使用等については、特に限定されず通常のとおりとすればよい。
【0045】
上記のとおり、(A−1)成分の調製には上記原料(a)に対して過剰モル量の上記原料(b)を用いることから、(A−1)成分は、上記原料(b)の構造に由来する付加反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に2個有するものである。更に、(A−1)成分は、上記原料(a)に由来する残基を有し、その残基が、上記原料(b)の構造に由来するが付加反応性炭素−炭素二重結合を有しない多環式炭化水素の二価の残基によって結合されている構造を含むものであってもよい。
【0046】
即ち、(A−1)成分としては、例えば、下記一般式(9)で表される化合物が挙げられる。
【化12】
(式中、Xは上記原料(a)の化合物の二価の残基であり、Yは上記原料(b)の多環式炭化水素の一価の残基であり、Y´は上記原料(b)の二価の残基であり、mは0〜10、好ましくは0〜5の整数である)
【0047】
なお、上記(Y´−X)で表される繰り返し単位の数であるmの値については、上記原料(a)1モルに対して反応させる上記原料(b)の過剰モル量を調整することにより設定することが可能である。
【0048】
上記一般式(9)中のYとしては、具体的には、例えば、下記構造式で表される一価の残基(以下、これら6者を区別する必要がない場合は、これらを「NB基」と総称し、また、これら6者の構造を区別せずに「NB」と略記することがある。)が挙げられる。
【化13】
【0049】
上記一般式(9)中のY´としては、具体的には、例えば、下記構造式で表される二価の残基が挙げられる。
【化14】
【0050】
但し、上記構造式で表される非対称な二価の残基は、その左右方向が上記記載のとおりに限定されるものではなく、上記構造式は、実質上、個々の上記構造を紙面上で180度回転させた構造をも含めて示している。
【0051】
上記一般式(9)で表される(A−1)成分の好適な具体例を、以下に示すが、これに限定されるものではない。(なお、「NB」の意味するところは、上記のとおりである。)
【0052】
【化15】
(式中、rは0〜10の整数である。)。
【0053】
更に、本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物の(A−1)成分は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0054】
[(A−2)成分]
(A−2)成分は、(A−1)成分と相溶性が高く、硬化させた後の硬化物の強度を落とすことなく、耐熱性(熱安定性)、特に耐熱変色性を付与する成分である。
【0055】
(A−2)成分は、主鎖がジフェニルシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端が付加反応性炭素−炭素二重結合含有基を有するトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンである。(A−2)成分のオルガノポリシロキサンは、一種単独で用いてもよく、分子量、ケイ素原子に結合した有機基の種類等が相違する二種以上を併用してもよい。
【0056】
上記一般式(3)中のRとしての付加反応性炭素−炭素二重結合含有基は、上記<原料(b)>の説明に記載したものと同じく、ケイ素原子に結合した水素原子の付加(ヒドロシリル化反応として周知)を受け得る性質をもつ炭素−炭素二重結合を含有する基である。
【0057】
上記付加反応性炭素−炭素二重結合含有基は、1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
上記付加反応性炭素−炭素二重結合含有基の具体例としては、ビニル基、アリル基、5−ヘキセニル基、プロペニル基、ブテニル基等の炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10のアルケニル基;1,3−ブタジエニル基等の炭素原子数4〜10のアルカジエニル基;アクリロイルオキシ基(−O(O)CCH=CH)、メタクリロイルオキシ基(−O(O)CC(CH)=CH)等の、上記アルケニル基とカルボニルオキシ基との組み合わせ;アクリルアミド基(−NH(O)CCH=CH)等の、上記アルケニル基とカルボニルアミノ基との組み合わせが挙げられる。
【0059】
中でも、(A−2)成分の原料を得るときの生産性及びコストならびに(A−2)成分の反応性等の観点から、上記付加反応性炭素−炭素二重結合含有基としては、ビニル基、アリル基及び5−ヘキセニル基が好ましく、特にビニル基が好ましい。
【0060】
上記一般式(3)中のRは独立に非置換若しくは置換の炭素原子数1〜12の1価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、sec−ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o−,m−,p−トリル等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基等のアルケニル基;p−ビニルフェニル基等のアルケニルアリール基;及びこれらの基中の炭素原子に結合した1個以上の水素原子が、ハロゲン原子、シアノ基、エポキシ環含有基等で置換された、例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基;2−シアノエチル基;3−グリシドキシプロピル基等が挙げられる。
【0061】
上記の中でも、Rとしては、特にメチル基又はフェニル基であるものが、工業的に製造することが容易であり、入手しやすいことから好ましい。
【0062】
(A−2)成分において、ジフェニルシロキサン単位の重合度nは1〜20であり、1〜15であることが好ましく、2〜10であることが更に好ましい。nが20より大きいと、流動性の低下や(A−1)成分との相溶性の低下が起こり、好ましくない。
【0063】
(A−2)成分の配合量は、(A−1)成分及び(A−2)成分の合計100質量部に対し、30〜70質量部であり、好ましくは35〜65質量部、さらに好ましくは40〜60質量部である。(A−2)成分の配合量が30質量部未満になると、耐熱変色性が低下し、70質量部を超えると、硬化物の強度、特に硬さが低下する。
【0064】
(A−2)成分は、例えばジクロロジフェニルシランやジアルコキシジフェニルシラン等の二官能性シランを加水分解・縮合させた後、又は加水分解・縮合と同時に、付加反応性炭素−炭素二重結合含有基を有する末端封止剤で末端を封止することにより得ることができる。
【0065】
[(B)成分]
本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物の(B)成分は、SiHを1分子中に3個以上有する有機ケイ素化合物である。この(B)成分中のSiHが、上記(A−1)及び(A−2)成分が1分子中に少なくとも2個有する付加反応性炭素−炭素二重結合とヒドロシリル化反応により付加して、3次元網状構造の硬化物を与える。
【0066】
このような(B)成分としては、例えば、下記一般式(5)で表されるシロキサン化合物が挙げられる。

【化16】
(式中、Rは独立に水素原子又はアルケニル基以外の非置換若しくは置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基であり、Rはメチル基あるいは水素原子であり、pは1〜10の整数、qは0〜7の整数である。pが付されたシロキサン単位とqが付されたシロキサン単位とは互いにランダムに配列している。)
【0067】
上記一般式(5)中のRとしては、例えば、メチル基、エチル、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、sec−ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o−,m−,p−トリル等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;p−ビニルフェニル基等のアルケニルアリール基;及びこれらの基中の炭素原子に結合した1個以上の水素原子が、ハロゲン原子、シアノ基、エポキシ環含有基等で置換された、例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基;2−シアノエチル基;3−グリシドキシプロピル基等が挙げられる。
【0068】
上記の中でも、Rとしては、特にメチル基又はフェニル基であるものが、工業的に製造することが容易であり、入手しやすいことから好ましい。
【0069】
上記(B)成分の好適な具体例を、以下に示すが、これに限定されるものではない。
【0070】
HMeSiO(HMeSiO)(PhSiO)SiMe
HMeSiO(HMeSiO)(PhSiO)(MeSiO)SiMe
HMeSiO(HMeSiO)(PhSiO)(MeSiO)SiMe
HMeSiO(HMeSiO)(MeSiO)SiMe
【0071】
本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物の(B)成分は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0072】
(B)成分の配合量は、次のように設定されることが好ましい。本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物は、(B)成分以外のSiHを有する成分(例えば、後述の(G)成分)、及び、(A−1)又は(A−2)成分以外のケイ素原子に結合した付加反応性炭素−炭素二重結合を有する成分(例えば、後述の(C)成分として白金との錯体を形成した状態で本組成物中に含有されうるビニルシロキサン)のいずれか一方又は両方を含有することができる。そこで、本組成物中のケイ素原子に結合した付加反応性炭素−炭素二重結合1モルに対して本組成物中のケイ素原子に結合した水素原子の量は、好ましくは0.5〜3.0モル、より好ましくは0.8〜2.0モルである。(B)成分の配合量がこのような条件を満たす量であると、リフレクター材料として用いた場合に十分な機械特性を有する硬化物を本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物から得ることができる。
【0073】
(A−1)及び(A−2)成分のみがケイ素原子に結合した付加反応性炭素−炭素二重結合を有し、かつ、(B)成分のみがSiHを有する場合には、本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物への(B)成分の配合量は、上記(A)成分中の付加反応性炭素−炭素二重結合1モルに対して、(B)成分中のSiHが、好ましくは0.5〜3.0モル、より好ましくは0.8〜2.0モルとなる量とするのがよい。
【0074】
[(C)成分]
本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物の(C)成分であるヒドロシリル化反応触媒としては、従来から公知のものが全て使用することができる。例えば、白金金属を担持したカーボン粉末、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応生成物、白金とジビニルテトラメチルジシロキサン等のビニルシロキサンとの錯体;塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒;パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族金属系触媒が挙げられる。
【0075】
本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物への(C)成分の配合量は、触媒としての有効量であればよく、特に制限されないが、上記(A−1)、(A−2)及び(B)成分との合計に対して、白金族金属原子として質量基準で、好ましくは1〜500ppm、特に好ましくは2〜100ppm程度となる量の(C)成分を配合するとよい。このような範囲内の配合量とすることで、硬化反応に要する時間が適度のものとなり、硬化物が着色する等の問題を生じることがない。
【0076】
(C)成分は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0077】
[(D)成分]
本発明の光反射材用硬化性シリコーン組成物の(D)成分は酸化チタン粉末である。(D)成分の酸化チタン粉末(金属化合物粉末)は白色であるため、(D)成分の配合により、本発明の光反射材料用シリコーン樹脂硬化物は良好な光反射率を発現する。
【0078】
(D)成分の粒径は特に限定されないが、(D)成分としては一般に平均粒径が0.1〜200μmの範囲のものが多く市販されており扱いやすく、0.5〜100μmの範囲のものがより好ましい。(D)成分の平均粒径が0.1〜200μmの範囲であると、本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物は流動性が良好となりやすく、また、組成物の硬化物は、表面があらくなりにくく、光反射性能が効果的に向上する。なお、本明細書において、平均粒径とは、レーザー光回折法を用いた粒度分布測定装置により求めた累積分布の50%に相当する体積基準の平均粒径をいう。
【0079】
(D)成分の配合量は、上記(A−1)、(A−2)及び(B)成分との合計100質量部に対し、好ましくは50〜1000質量部であり、より好ましくは60〜900質量部、更により好ましくは100〜800質量部である。配合量が50〜1000質量部の範囲であると、本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物は流動性が良好となりやすく、また、組成物の硬化物は光反射性能が十分となりやすい。
【0080】
(D)成分は、2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0081】
[(E)成分]
本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物の(E)成分は煙霧質シリカ粉末である。(E)成分が組成物中に含まれることにより、(A−1)、(A−2)及び(B)成分と比較して比重が大きい(D)成分の沈降、凝集を防ぎ、ムラのない硬化物を得ることができる。
【0082】
(E)成分の粒径は特に規定されないが、(E)成分としては一般に平均粒径が1〜100nmの範囲のものが多く市販されており扱いやすく、5〜50nmの範囲のものがより好ましい。(E)成分の平均粒径が1〜100nmの範囲であると、より効果的に(D)成分の沈降、凝集を防ぎ、ムラのない硬化物を得ることができる。
【0083】
(E)成分の配合量は、上記(A−1)、(A−2)及び(B)成分との合計100質量部に対し、好ましくは1〜50質量部であり、より好ましくは1〜20質量部、更により好ましくは1〜10質量部である。配合量が50質量部以下であれば、本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物はより良好な流動性を示し、1質量部以上であると、(D)成分の沈降や凝集が起きることがない。
【0084】
(E)成分は、2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0085】
また、本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物には、接着性向上剤を配合することが好ましい。接着性向上剤としては、シランカップリング剤やそのオリゴマー、シランカップリング剤と同様の反応性基を有するシリコーン等が例示されるが、これらの中で、下記(F)成分及び(G)成分が好ましい。
(F)成分は、下記一般式(10)で表される化合物であり、(G)成分は、下記一般式(11)で表される化合物である。
【化17】
(式中、sは1〜3の整数であり、tは0〜2の整数であり、但しs+tは3である。sが付されたアミド単位とtが付されたアミド単位とは互いにランダムに配列している。)
【化18】
(式中、uは1〜2の整数であり、vは2〜4の整数であり、但しu+vは4〜5の整数である。uが付されたシロキサン単位とvが付されたシロキサン単位とは互いにランダムに配列している。)
【0086】
(F)成分及び(G)成分は、本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物及びその硬化物の基材に対する接着性を向上させるために組成物に配合される任意的成分である。ここで、基材とは、金、銀、銅、ニッケルなどの金属材料、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタンなどのセラミック材料、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの高分子材料を指す。(F)成分及び(G)成分のおのおのは、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0087】
(F)成分及び(G)成分のおのおのの配合量は、上記(A−1)、(A−2)、及び(B)成分の合計100質量部に対し、好ましくは1〜30質量部であり、より好ましくは、5〜20質量部である。配合量が1〜30質量部であると、本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物及びその硬化物は、基材に対する接着性が効果的に向上し、また、着色しにくい。
【0088】
(F)成分の好適な具体例としては、下記式で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化19】
【0089】
(G)成分の好適な具体例としては、下記式で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化20】
【0090】
[他の配合成分]
本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物には、上記成分に加えて、他の成分を配合することは任意である。他の成分としては、例えば、以下に説明するものが挙げられる。
【0091】
<酸化防止剤>
本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物の硬化物中には、上記(A−1)成分中の付加反応性炭素−炭素二重結合が未反応のまま残存している場合があり、例えば、下記構造式で表される2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5−イル)エチル基及び下記構造式で表される2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−6−イル)エチル基のいずれか一方又は両方の中に存在する炭素−炭素二重結合が含まれている場合がある。そして、このような炭素−炭素二重結合が含まれていると、大気中の酸素により酸化され硬化物が着色する原因となる。そこで、本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物に、必要に応じ、酸化防止剤を配合することにより着色を未然に防止することができる。
【化21】
2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5−イル)エチル基
【化22】
2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−6−イル)エチル基
【0092】
この酸化防止剤としては、従来から公知のものが全て使用することができ、例えば、ヒンダードアミン化合物やヒンダードフェノール化合物が例示され、具体的には、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。これらは、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0093】
なお、この酸化防止剤を使用する場合、その配合量は、酸化防止剤としての有効量であればよく、特に制限されないが、上記(A−1)、(A−2)及び(B)成分の合計に対して、質量基準で、好ましくは10〜10,000ppm、特に好ましくは100〜1,000ppm程度配合するのがよい。このような範囲内の配合量とすることによって、酸化防止能力が十分発揮され、着色、酸化劣化等の発生がなく光反射性能に優れた硬化物が得られる。
【0094】
<その他>
また、ポットライフを確保するために、1−エチニルシクロヘキサノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等の付加反応制御剤を配合することができる。
更に、発光素子からの光及び太陽光線等の光エネルギーによる光劣化に対する抵抗性を付与するため光安定剤を用いることも可能である。この光安定剤としては、光酸化劣化で生成するラジカルを捕捉するヒンダードアミン系安定剤が適しており、酸化防止剤と併用することで、酸化防止効果はより向上する。光安定剤の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ベンゾイル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
【0095】
[光反射材料用硬化性シリコーン組成物]
本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物(白色熱硬化性シリコーン組成物)は硬化前には液状であり、その25℃における粘度は好ましくは5〜500Pa・sであり、より好ましくは10〜400Pa・sである。粘度が5〜500Pa・sの範囲であると、得られる組成物は、作業性・取扱い性が良好となりやすく、成形硬化時に泡や空気の巻き込みが発生しにくい。
【0096】
本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物の粘度は、(A−1)(A−2)〜(E)成分及び他の配合成分の配合比率、これら成分の中で液状のものの粘度、ならびに(D)及び(E)成分の平均粒径などにより調節される。
【0097】
[光反射材料用シリコーン樹脂硬化物]
本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物を成形、硬化させることにより、光反射材料用シリコーン樹脂硬化物を得ることができる。本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物は、インジェクションモールド法やトランスファーモールド法など、従来用いられている成形方法に適用することができる。さらに、本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物は、25℃において高い流動性を有するため、これまでの固形リフレクター材料には適用できなかったディスペンス法やポッティング法により成形することができる。なお、本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物の硬化条件は、成形物の形状や硬化方法等により異なり、特に制限されないが、通常、80〜200℃、好ましくは100〜180℃で1分〜24時間、好ましくは5分〜5時間の条件とすることが好ましい。
【0098】
一般的に、リフレクター材料として機能する上では、可視光(波長:430〜800nm)の初期反射率が好ましくは95%以上(即ち、95〜100%)、より好ましくは97%以上(即ち、97〜100%)である。反射率が95%以上であると、硬化物を照明器具などの発光装置のリフレクター材料として用いた場合に、光の取り出し効率がより高くなり、充分な明るさを容易に確保できる。反射率は、硬化物の製造初期のみならず耐熱試験(硬化物を170℃にて1,000時間放置することにより行われるもの)の後においても、82%以上であることが好ましく、84%以上であることがより好ましい。本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物から得られる光反射材料用シリコーン樹脂硬化物は、可視光(波長:430〜800nm)の反射率が95%以上であり、170℃、1,000時間放置後の光反射率が82%以上のものとすることができ、リフレクター材料として十分な反射率を得ることができる。なお、本明細書において光の反射率は、積分球を搭載したスペクトロフォトメーター装置により測定された数値を意味する。
【0099】
リフレクター材料は、ダイシングソー等を用いた切断工程を経て個片化される場合がある。この工程では、十分な硬さがないと切断が困難になるため、リフレクター材料として用いられる本発明の光反射材料用シリコーン樹脂硬化物はショアD硬度65以上あることが好ましく、70以上がより好ましい。
【0100】
[リフレクター及びLED装置]
本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物(白色熱硬化性シリコーン樹脂組成物)は、光反射材料用であり、この光反射材料の用途は特に限定されないが、例えば、LED等の発光装置用、特に白色LED(白色発光ダイオード)用のリフレクター材料として好適に用いることができる。本発明の光反射材料用シリコーン樹脂硬化物からなるものであるリフレクターを搭載した発光装置(特にLED装置、白色LED装置等)は長期間にわたって高い光取り出し効率を維持できる。また、本発明の組成物は流動性が高いために成形しやすいため、白色LEDを含むこれらの発光装置に合わせて、リフレクター材料として用いる本発明の光反射材料用シリコーン樹脂硬化物を所望の形状とすることが容易である。
【実施例】
【0101】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例中、粘度は回転粘度計であるスパイラル粘度計(株式会社マルコム、型式:PC−1T)を用いて測定した25℃における値である。
【0102】
下記の例において、シリコーンオイル又はシリコーンレジンの組成を示す記号を以下に示す。又、各シリコーンオイル又は各シリコーンレジンのモル数は、各成分中に含有されるビニル基又はケイ素原子結合水素原子のモル数を示すものである。
:(CHHSiO1/2
Vi:(CH=CH)(CHSiO1/2
ViΦ:(CH=CH)(C)(CH)SiO1/2
:(CH)HSiO2/2
Φ:(C)(CH)SiO2/2
2Φ:(CSiO2/2
【0103】
[合成例1](A−1)成分の調製
撹拌装置、冷却管、滴下ロート及び温度計を備えた5Lの4つ口フラスコに、ビニルノルボルネン(商品名:V0062、東京化成社製;5−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンと6−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンとの略等モル量の異性体混合物)1785g(14.88モル)、及び、トルエン455gを加え、オイルバスを用いて85℃に加熱した。これに、5質量%の白金を担持したカーボン粉末3.6gを添加し、撹拌しながら1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン1698g(8.75モル)を180分間かけて滴下した。滴下終了後、更に110℃で加熱攪拌を24時間行った後、室温まで冷却した。その後、白金担持カーボンをろ過して除去し、トルエン及び過剰のビニルノルボルネンを減圧留去して、無色透明なオイル状の反応生成物(25℃における粘度:12820mPa・s)3362gを得た。
【0104】
反応生成物を、FT−IR、NMR、GPC等により分析した結果、このものは、
(1)p−フェニレン基を2個有する化合物(下記に代表的な構造式の一例を示す):約41モル%、
【化23】
(2)p−フェニレン基を3個有する化合物(下記に代表的な構造式の一例を示す):約32モル%
【化24】
(3)p−フェニレン基を4個以上有する化合物:約27モル%
の混合物であることが判明した。また、混合物全体としての付加反応性炭素−炭素二重結合の含有割合は、0.36モル/100gであった。
【0105】
[実施例1〜4、比較例1〜4]
下記の(A−1)〜(H)成分を表1に示す配合量(単位:質量部)で配合し、実施例1〜4、比較例1〜4の各々の組成物を得た。即ち、まず、5リットルゲートーミキサー(井上製作所(株)製、商品名:5リットルプラネタリミキサー)に(A)成分、(D)成分、(E)成分及び(H)成分を表1に示す配合量で仕込み、室温にて1時間混合し、次に(B)成分、(F)成分及び(G)成分を表1に示す配合量で加えて均一になるように室温にて30分混合し、最後に(C)成分を表1に示す配合量で加えて均一になるように室温にて減圧下30分混合して白色の硬化性シリコーン組成物を得た。得られた組成物の粘度を測定した。結果を表1に示す。
【0106】
(A−1)合成例1で得られた反応生成物、
(A−2−1)平均分子式:MViΦ2Φで表されるオルガノポリシロキサン
(A−2−2)平均分子式:MVi2Φで表されるオルガノポリシロキサン
(A−3)平均分子式:MViΦで表されるオルガノポリシロキサン
(B)平均分子式:M2Φ、で表されるオルガノポリシロキサン
(C)白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体トルエン溶液(白金原子を1質量%含有)
(D)平均粒径0.5μmの酸化チタン粉末、
(E)平均粒径14nmの煙霧質シリカ粉末、
(F)下記式で表される化合物
【化25】
(G)下記式で表される化合物
【化26】
(H)1−エチニル−1−シクロヘキサノールの50質量%トルエン溶液(付加反応制御剤)
【0107】
【表1】
【0108】
次に、実施例1〜4、比較例1〜4の各々の組成物を型に流し込み、150℃、100
MPaで15分間加圧硬化させ、その後、150℃、常圧のオーブンにて3時間硬化させて、厚み2mmの硬化物(それぞれ表2中のH1〜H4、H5〜H8)を得た。得られた硬化物の特性を表2に示す。硬化物の特性は以下のとおりにして観察又は測定した。
【0109】
外観:顕微鏡を用いて各硬化物の表面を観察した。下記の基準に従い結果を表2に示した。
外観均一(○)、フィラーの凝集のよるムラ(×)
【0110】
硬さ(ショアD):ASTM D 2240 に準じて、各硬化物の硬度(Shore D)を測定した。
【0111】
ダイシング性:0.2mm厚みの銅板上に各組成物を塗布し上記条件で硬化させ、1mm厚の硬化物を作製した。室温に放置後、粘着フィルムを基板に貼付し、(株)ディスコ製ダイシング装置(DAD341型)を用いて5mm×5mmのサイズに切断した。下記の基準に従い結果を表2に示した。
切断面良好(○)、バリ発生(×)
【0112】
光反射率:積分球を搭載した日立(株)製スペクトロフォトメーター装置U−3310
を用いて、430〜800nmの波長領域で25℃にて測定した。
【0113】
【表2】
【0114】
次に、硬化物H1〜H8を170℃にて1,000時間放置して耐熱試験を行った。初期(試験前)の光反射率と試験後の光反射率との差をとることで、耐熱性を評価した。評価結果を表3に示す。光反射率の差が小さいほど耐熱性が高いと評価される。目視にて観察したところ、全ての硬化物は初期白色であったが、耐熱試験後、H5のみ明らかに褐色に変化していた。
【0115】
【表3】
【0116】
表1〜3に示すように、本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物を用いた実施例1〜4においては、いずれの組成物も粘度が低く、したがって流動性に優れていた。また、初期においては高い光反射率が得られているとともに、耐熱試験後においても光反射率の低下は僅かであった。即ち、耐熱性(特に、耐熱変色性)にも優れていることが分かった。
【0117】
一方、比較例1では、耐熱試験後の光反射率の低下が著しく、耐熱性(特に、耐熱変色性)が不良であった。比較例2及び3では、硬化物の硬度が低いため、ダイシング性が不良であった。また、比較例4では、硬化物の良好な外観が得られなかった。
【0118】
以上の結果は、本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物が、室温において高い流動性を有し、その硬化物は、高硬度でダイシング工程に適しているだけでなく、初期の光反射率、及び耐熱変色性に優れることを示している。よって、本発明の光反射材料用硬化性シリコーン組成物の硬化物は、光反射材料、特に白色LED用リフレクター材料として有用である。
【0119】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。