特許第6910311号(P6910311)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京エレクトロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6910311-成膜時間の設定方法 図000003
  • 特許6910311-成膜時間の設定方法 図000004
  • 特許6910311-成膜時間の設定方法 図000005
  • 特許6910311-成膜時間の設定方法 図000006
  • 特許6910311-成膜時間の設定方法 図000007
  • 特許6910311-成膜時間の設定方法 図000008
  • 特許6910311-成膜時間の設定方法 図000009
  • 特許6910311-成膜時間の設定方法 図000010
  • 特許6910311-成膜時間の設定方法 図000011
  • 特許6910311-成膜時間の設定方法 図000012
  • 特許6910311-成膜時間の設定方法 図000013
  • 特許6910311-成膜時間の設定方法 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6910311
(24)【登録日】2021年7月8日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】成膜時間の設定方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20210715BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20210715BHJP
   C23C 16/52 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
   H01L21/31 C
   H01L21/316 C
   C23C16/52
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-204(P2018-204)
(22)【出願日】2018年1月4日
(65)【公開番号】特開2019-121674(P2019-121674A)
(43)【公開日】2019年7月22日
【審査請求日】2020年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寿
【審査官】 田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−107344(JP,A)
【文献】 特開2016−213289(JP,A)
【文献】 特開2001−19598(JP,A)
【文献】 特開2008−130916(JP,A)
【文献】 特開2013−225571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/52
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内にある回転テーブル上の周方向に複数の基板を載置し、該回転テーブルを回転させ、所定のサイクルタイムと所定のサイクル数によって設定される所定の成膜時間に亘って成膜処理を実行し、各基板上にシリコン含有膜を成膜する際の成膜時間の設定方法であって、
仮に設定されたサイクルタイムTとサイクル数Nからなる仮の成膜時間T×Nに亘って仮成膜処理を実行し、N−1サイクル終了時間における各基板上に成膜されたシリコン含有膜の膜厚dN−1を測定し、N−1サイクルとNサイクルの途中時間における各基板上に成膜されたシリコン含有膜の膜厚dN−1〜Nを測定し、さらに、Nサイクル終了時間における各基板上に成膜されたシリコン含有膜の膜厚dを測定する、膜厚測定工程と、
各時間におけるそれぞれの基板上のシリコン含有膜間の均一性である面間均一性を比較し、該面間均一性が最も良好な時間を特定して成膜時間とする成膜時間特定工程と、を有することを特徴とする、成膜時間の設定方法。
【請求項2】
前記面間均一性の良否の要素として、それぞれのシリコン含有膜の膜厚の差が最も少ないことが少なくとも含まれていることを特徴とする、請求項1に記載の成膜時間の設定方法。
【請求項3】
前記膜厚測定工程では、前記N−1サイクルと前記Nサイクルの途中時間を複数設定し、複数の途中時間における各基板上に成膜されたシリコン含有膜の膜厚dN−1〜Nを測定し、
前記成膜時間特定工程では、前記N−1サイクル終了時間と、前記Nサイクル終了時間と、2以上の前記途中時間の計4つ以上の時間における面間均一性を比較することを特徴とする、請求項1又は2に記載の成膜時間の設定方法。
【請求項4】
前記途中時間が1秒ずつに区切られていることを特徴とする、請求項3に記載の成膜時間の設定方法。
【請求項5】
前記膜厚測定工程では、測定する膜厚毎に固有の成膜処理を実行するものとし、
膜厚dN−1の測定の際には、成膜時間T×(N−1)に亘って成膜処理を実行し、
膜厚dN−1〜Nの測定の際には、成膜時間T×(N−1〜N)に亘って別途成膜処理を実行し、
膜厚dの測定の際には、成膜時間T×Nに亘って別途成膜処理を実行することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の成膜時間の設定方法。
【請求項6】
前記成膜時間特定工程では、前記回転テーブル上のそれぞれのシリコン含有膜毎に、膜厚dN−1と膜厚dN−1〜Nと膜厚dとを繋ぐグラフを作成し、該グラフを用いて成膜時間を特定することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の成膜時間の設定方法。
【請求項7】
前記成膜時間特定工程では、前記回転テーブル上にある複数の基板のうち、最後に成膜処理が実行される最後成膜基板以外の残りの基板におけるシリコン含有膜の膜厚dを一義的な膜厚dNFIXとして設定し、前記最後成膜基板におけるシリコン含有膜の膜厚dと膜厚dN−1〜Nを繋ぐグラフを求め、該グラフと前記一義的な膜厚dNFIXの交点を求めて成膜時間を特定することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の成膜時間の設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜時間の設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ほぼ円形の平面形状を有する扁平な真空容器と、真空容器内に設けられて真空容器の中心に回転中心を有する回転テーブルと、を備えている処理室と、装置全体の動作をコントロールする制御部とを備えた成膜装置が提案されている。処理室内の回転テーブル上に複数の基板を載置し、回転テーブルを回転させながら基板上にシリコン酸化膜やシリコン窒化膜といったシリコン含有膜を成膜する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−152430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記する回転テーブルを備えた処理室では、吸着エリア(原料ガス供給エリア)、ガス切りエリア(原料ガスと酸化ガス等の反応ガスを分離する分離エリア)、反応エリア(酸化ガス等の反応ガス供給エリア)、ガス切りエリア等が回転方向に順に設けられている。回転テーブルの回転により、回転テーブル上に載置された各基板は、各エリアを順に通過する過程でシリコン含有膜が形成され、サイクルの経過に伴いシリコン含有膜が所定厚(ターゲット膜厚)まで堆積していく。通常、1サイクル当たりのサイクルタイムが設定され、1サイクル当たりに成膜されるシリコン含有膜の膜厚が特定されることから、ターゲット膜厚となるまでのサイクル数が割出される。サイクルタイムと割出されたサイクル数を乗じることにより、ターゲット膜厚を有するシリコン含有膜の形成に要する成膜時間が設定される。
【0005】
回転テーブル上に載置された各基板は、いずれも同一回数の原料ガス供給を受けることから、本来的には、全ての基板上に形成されるシリコン含有膜の膜厚は等しくなり、各基板上に形成されるシリコン含有膜に関して、膜厚等に関する良好な均一性(面間均一性)が得られるはずである。しかしながら、回転テーブルの回転始動時における原料ガスノズルと各基板との位置関係や、原料ガスのガス出し開始時におけるガスの出具合、さらには、ガス出し終了時のガスの切具合等の様々な要因により、各基板に形成されるシリコン含有膜の膜厚等に関する面間均一性に影響が及び得る。
【0006】
上記する面間均一性への影響に関する課題を装置の性能や装置の制御方法の改善によって解消しようとしても、原料ガス供給領域内において、本来は原料ガスが供給されないはずの回転方向上流側の基板に原料ガスが拡散してしまうことや、原料ガス供給を終了してもノズル内に残存している原料ガスが基板に提供されてしまうことは避けられない。従って、各基板に形成されるシリコン含有膜の膜厚等に関する良好な面間均一性を図る上において、装置の性能向上や装置の制御方法の改善とは異なるアプローチが必要になる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、処理室内の回転テーブル上にある複数の基板上にシリコン含有膜を成膜するに当たり、各基板に形成されるシリコン含有膜の膜厚等に関する良好な面間均一性を得ることのできる成膜時間の設定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明による成膜時間の設定方法の一態様は、処理室内にある回転テーブル上の周方向に複数の基板を載置し、該回転テーブルを回転させ、所定のサイクルタイムと所定のサイクル数によって設定される所定の成膜時間に亘って成膜処理を実行し、各基板上にシリコン含有膜を成膜する際の成膜時間の設定方法であって、
仮に設定されたサイクルタイムTとサイクル数Nからなる仮の成膜時間T×Nに亘って仮成膜処理を実行し、N−1サイクル終了時間における各基板上に成膜されたシリコン含有膜の膜厚dN−1を測定し、N−1サイクルとNサイクルの途中時間における各基板上に成膜されたシリコン含有膜の膜厚dN−1〜Nを測定し、さらに、Nサイクル終了時間における各基板上に成膜されたシリコン含有膜の膜厚dを測定する、膜厚測定工程と、
各時間におけるそれぞれの基板上のシリコン含有膜間の均一性である面間均一性を比較し、該面間均一性が最も良好な時間を特定して成膜時間とする成膜時間特定工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の成膜時間の設定方法によれば、回転テーブルを回転させて複数の基板上にシリコン含有膜を成膜する方法において、各基板に形成されるシリコン含有膜の膜厚等に関する良好な面間均一性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る成膜時間の設定方法が適用される成膜装置の縦断面図である。
図2図1の成膜装置の内部の概略構成を示す斜視図である。
図3図1の成膜装置の内部の概略構成を示す平面図であって、制御部の内部構成を共に示した図である。
図4図1の成膜装置における供給領域及び分離領域の一例を示す縦断面図である。
図5】分離領域のサイズを説明するための図である。
図6図1の成膜装置の他の縦断面図である。
図7図1の成膜装置のさらに他の縦断面図である。
図8図1の成膜装置の一部破断斜視図である。
図9】本発明の実施形態に係る成膜時間の設定方法のフローチャートである。
図10】成膜開始時における原料ガス流れの影響を説明する模式図である。
図11】本発明の実施形態に係る成膜時間の設定方法を行った結果を示す図であり、仮成膜処理のN−1サイクル(74サイクル)乃至Nサイクル(75サイクル)までの各スロットの膜厚の測定結果と、膜厚均一性の算定結果をともに示す図である。
図12図11の測定結果のうち、途中時間(Nサイクルの1秒前)からNサイクルまでの測定結果を抽出して成膜時間を設定する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る成膜時間の設定方法について、添付の図面を参照しながら説明する。以下の説明では、まず、本発明の成膜時間の設定方法が適用され得る成膜装置について説明し、次いで、この成膜装置を用いた本発明の実施形態に係る成膜時間の設定方法について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0012】
[本発明の実施形態に係る成膜時間の設定方法が適用され得る成膜装置]
まず、本発明の実施形態に係る成膜時間の設定方法が適用され得る成膜装置について説明する。本発明の実施形態に係る成膜時間の設定方法は、回転テーブルを備えた種々の成膜装置に適用され得るが、以下、本発明の実施形態に係る成膜時間の設定方法が好適に適用され得る一実施形態に係る成膜装置について説明する。ここで、図1は、本発明の実施形態に係る成膜時間の設定方法が適用される成膜装置の縦断面図であり、図2は、図1の成膜装置の内部の概略構成を示す斜視図である。また、図3は、図1の成膜装置の内部の概略構成を示す平面図であって、制御部の内部構成を共に示した図である。また、図4は、図1の成膜装置における供給領域及び分離領域の一例を示す縦断面図であり、図5は、分離領域のサイズを説明するための図である。さらに、図6及び図7は成膜装置の他の縦断面図であり、図8は、図1の成膜装置の一部破断斜視図である。
【0013】
図1図3のA−A線に沿った断面図)及び図2に示すように、成膜時間の設定方法が適用される成膜装置1000は、概ね円形の平面形状で扁平な真空容器1と、真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、から構成される処理室100と、装置全体の動作をコントロールする制御部200とを備える。真空容器1は、基板であるウエハWを内部に収容し、ウエハWの表面上に成膜処理を施すための処理室である。真空容器1は、容器本体12と、容器本体12から分離可能な天板11とから構成されている。天板11は、例えばO−リングなどの封止部材13を介して容器本体12に取り付けられ、これにより真空容器1が気密に密閉される。天板11及び容器本体12は、例えばアルミニウム(Al)で作製することができる。また、回転テーブル2は、例えば、石英で作製することができる。
【0014】
図1に示すように、回転テーブル2は円盤状を呈し、中央に円形の開口部を有しており、開口部の周りにおいて、円筒形状のコア部21によって上下から挟まれて保持されている。コア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は容器本体12の底面部14を貫通し、その下端が回転軸22を鉛直軸回りに回転させる駆動部23に取り付けられている。この構成により、回転テーブル2はその中心軸を回転中心として回転することができる。なお、回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20は、その上面に設けられたフランジ部分を介して真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられており、これにより、ケース体20の内部雰囲気が外部雰囲気から隔離されている。
【0015】
図2及び図3に示すように、回転テーブル2の上面には、ウエハWが載置される複数(図示例では5つ)の平面視円形の凹部24が等角度間隔で形成されている。ただし、図3には、ウエハWを1枚のみを示している。
【0016】
図4(a)に、回転テーブル2における凹部24に載置されたウエハWとの縦断面を示す。図示するように、凹部24は、ウエハWの直径よりも僅かに(例えば4mm)大きな直径を有している。さらに、凹部24の深さはウエハWの厚さにほぼ等しい深さとなっている。凹部24の深さとウエハWの厚さがほぼ等しいことから、ウエハWが凹部24内に載置された際に、ウエハWの表面は、回転テーブル2の凹部24以外の領域の表面とほぼ同じ高さになる。仮に、ウエハWと、回転テーブル2の凹部24以外の領域との間に比較的大きな段差があると、この段差によってガスの流れに乱流が生じ、ウエハW上での膜厚均一性が影響を受ける。この影響を低減するために、ウエハWと、回転テーブル2の凹部24以外の領域との表面をほぼ同じ高さにしている。ここで、「ほぼ同じ高さ」とは、高さの差が例えば5mm程度以下を意味しているが、加工精度が許容する範囲内において可及的にゼロに近いことが好ましい。
【0017】
図2乃至図4に示すように、回転テーブル2の回転方向(例えば図3の矢印RD)に沿って、互いに離間した2つの凸部4が設けられている。なお、図2及び図3では、真空容器1の内部の説明を容易にするべく、天板11の図示を省略している。図4に示すように、凸部4は天板11の下面に設けられている。また、図3から分かるように、凸部4は、略扇形の平面形状を有しており、略扇形の頂部は真空容器1の略中心に位置しており、略扇形の円弧は容器本体12の内周壁に沿って位置している。さらに、図4(a)に示すように、凸部4は、その下面44が回転テーブル2や凹部24内に載置されたウエハWから高さh1に位置するように配置されている。
【0018】
また、図3及び図4に示すように、凸部4は、自身が二分割されるように半径方向に延びる溝部43を有しており、溝部43には分離ガスノズル41(42)が収容されている。本実施形態において、溝部43は凸部4を二等分するように形成されるが、例えば、凸部4における回転テーブル2の回転方向上流側が広くなるように溝部43を形成してもよい。図3に示すように、分離ガスノズル41(42)は、容器本体12の周壁部から真空容器1内へ導入され、その基端部であるガス導入ポート41a(42a)を容器本体12の外周壁に取り付けることにより支持されている。
【0019】
分離ガスノズル41(42)は、分離ガスのガス供給源(図示せず)に接続されている。分離ガスとしては、例えばチッ素(N)ガスや希ガス等の不活性ガスが適用できるが、成膜に影響を与えないガスであればその種類は特に限定されない。本実施形態においては、分離ガスとしてNガスが利用される。また、分離ガスノズル41(42)は、回転テーブル2の表面に向けてNガスを吐出するための吐出孔40(図4)を有している。吐出孔40は、長さ方向に所定の間隔で配置されている。本実施形態において、吐出孔40は、約0.5mmの口径を有し、分離ガスノズル41(42)の長さ方向に沿って約10mmの間隔で配列されている。
【0020】
以上の構成により、分離ガスノズル41とこれに対応する凸部4とにより、分離空間Hを画成する分離領域D1が提供される。同様に、分離ガスノズル42とこれに対応する凸部4とにより、分離空間Hを画成する分離領域D2が提供される。また、分離領域D1に対して回転テーブル2の回転方向下流側には、分離領域D1,D2と、回転テーブル2と、天板11の下面45(以下、天井面45)と、容器本体12の内周壁とにより概ね囲まれる第1の領域48A(第1の供給領域)が形成されている。さらに、分離領域D1に対して回転テーブル2の回転方向上流側には、分離領域D1,D2と、回転テーブル2と、天井面45と、容器本体12の内周壁とにより概ね囲まれる第2の領域48B(第2の供給領域)が形成されている。分離領域D1,D2において、分離ガスノズル41,42からNガスが吐出されると、分離空間Hは比較的高い圧力となり、Nガスは分離空間Hから第1の領域48A及び第2の領域48Bに向かって流れる。すなわち、分離領域D1,D2における凸部4により、分離ガスノズル41,42から提供されるNガスが第1の領域48Aと第2の領域48Bへ案内される。
【0021】
また、図2及び図3に示すように、第1の領域48Aにおいて、容器本体12の周壁部から回転テーブル2の半径方向に原料ガスノズル31が導入され、第2の領域48Bにおいて、容器本体12の周壁部から回転テーブルの半径方向にオゾンガス等の酸化ガスを供給する反応ガスノズル32が導入されている。これら原料ガスノズル31と反応ガスノズル32は、分離ガスノズル41,42と同様に、基端部であるガス導入ポート31a,32aを容器本体12の外周壁に取り付けることにより支持されている。なお、適用される酸化ガスとしては、オゾンの他に、酸素であってもよい。また、本実施形態は、ウエハW上に、シリコン含有膜としてシリコン酸化膜(SiO)を形成するものであるが、シリコン含有膜としてシリコン窒化膜(SiN)を形成する実施形態においては、反応ガスノズル32からNH等の窒素含有ガスが供給される。
【0022】
原料ガスノズル31と反応ガスノズル32は、回転テーブル2の上面(ウエハを載置する凹部24のある面)に向けて反応ガスを吐出するための複数の吐出孔33,34を有している(図4参照)。本実施形態において、吐出孔33、34は、約0.5mmの口径を有するとともに、原料ガスノズル31及び反応ガスノズル32の長さ方向に沿って約10mmの間隔で配列されている。
【0023】
原料ガスノズル31は原料ガス供給源(図示せず)に接続され、反応ガスノズル32はオゾンガス供給源(図示せず)に接続されている。原料ガスとしては種々のガスを使用できるが、本実施形態においてはシリコン含有ガスが利用され、具体的には、DIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)ガス、3DMAS(トリスジメチルアミノシラン)ガス、BTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン)ガス等のアミノシランガスが挙げられるが、以下、DIPASガスを適用する形態を説明する。また、以下の説明において、原料ガスノズル31の下方の領域に関し、DIPASガスをウエハに吸着させる領域を処理領域P1といい、反応ガスノズル32の下方の領域に関し、Oガスをウエハに吸着したDIPASガスと反応(酸化)させるための領域を処理領域P2という場合がある。
【0024】
また、反応ガスノズル32と分離ガスノズル41の間の回転テーブル2の上方において、プラズマ処理領域を有していてもよい。このプラズマ処理領域には、誘導結合プラズマ発生器(IPC:Inductivity Coupled Plasma)が装備されており、このプラズマ発生器は、例えば13.56MHzの周波数を有する高周波を発生可能な高周波電源に接続されている。容器本体12の外周壁に不図示のガス導入ポートが取り付けられており、ガス導入ポートに支持された不図示の反応ガスノズルが、原料ガスノズル31等と同様に回転テーブル2の半径方向に導入されている。この反応ガスノズルには、アルゴン(Ar)ガスが充填される不図示のアルゴンガス供給源と、酸素(O)ガスが充填される不図示の酸素ガス供給源と、水素(H)ガスが充填される不図示の水素ガス供給源とが接続されている。アルゴンガス供給源、酸素ガス供給源、及び水素ガス供給源から、対応する流量制御器より流量制御されたArガス、Oガス、及びHガスが、所定の流量比(混合比)でプラズマ処理領域に供給される。この反応ガスノズルには、その長手方向に沿って所定の間隔で複数の吐出孔が形成されており、吐出孔から上述のAr/O/Hガスが吐出される。プラズマ発生器に高周波電力が供給されると電磁界が発生し、この電磁界のうちの電界成分をプラズマ処理領域内へ伝播させる。この磁界成分により、反応ガスノズルを介してプラズマ処理領域に供給されるAr/O/Hガスからプラズマが発生し、このAr/O/Hガスのプラズマにより、シリコン含有膜の均一な改質処理が行われる。
【0025】
図4に示すように、分離領域D1には平坦な低い天井面44があり(図示していないが分離領域D2においても同様)、第1の領域48A及び第2の領域48Bには、天井面44よりも高い天井面45がある。このため、第1の領域48A及び第2の領域48Bの容積は、分離領域D1,D2における分離空間Hの容積よりも大きい。また、後述するように、本実施形態による真空容器1には、第1の領域48A及び第2の領域48Bをそれぞれ排気するための排気口61,62が設けられている。これらの排気口61,62により、第1の領域48A及び第2の領域48Bを、分離領域D1,D2の分離空間Hに比べて低い圧力に維持することができる。この場合、分離領域D1,D2の分離空間Hの圧力が高いために、第1の領域48Aにおいて原料ガスノズル31から吐出されるDIPASガスは、分離空間Hを通り抜けて第2の領域48Bへ到達することができない。また、同様に、分離領域D1,D2の分離空間Hの圧力が高いために、第2の領域48Bにおいて反応ガスノズル32から吐出されるOガスは、分離空間Hを通り抜けて第1の領域48Aへ到達することができない。従って、両反応ガスは、分離領域D1,D2によって分離され、真空容器1内の気相中で混合されることは殆ど無い。
【0026】
なお、低い天井面44の回転テーブル2の上面から測った高さh1(図4(a))は、分離ガスノズル41(42)からのNガスの供給量にもよるが、分離領域D1,D2の分離空間Hの圧力を第1の領域48A及び第2の領域48Bの圧力よりも高くできるように設定される。高さh1は、例えば0.5mm乃至10mmに設定されていることが好ましく、中でも可及的に低く設定されていることが好ましい。ただし、回転テーブル2の回転ぶれによって回転テーブル2が天井面44に衝突することを避けるべく、高さh1は、上記数値範囲の中でも3.5mm乃至6.5mm程度に設定されることがより好ましい。また、凸部4の溝部43に収容される分離ガスノズル42(41)の下端から回転テーブル2の表面までの高さh2(図4(a))は、高さh1と同様の理由から、0.5mm乃至4mmに設定されることがよい。
【0027】
また、図5(a)及び(b)に示すように、凸部4において、ウエハ中心WOが通る経路に対応する円弧の長さLは、ウエハWの直径の約1/10乃至約1/1に設定され、約1/6以上に設定されることが好ましい。円弧の長さLがこの数値範囲にあることにより、分離領域D1,D2の分離空間Hを確実に高い圧力に維持することが可能になる。
【0028】
以上の構成を有する分離領域D1,D2によれば、回転テーブル2が例えば約20rpmの回転速度で回転した場合においても、DIPASガスとOガスとをより確実に分離することができる。
【0029】
図1乃至図3を再び参照すると、天板11の天井面45には、コア部21を取り囲むように環状の突出部5が設けられている。突出部5は、コア部21よりも外側の領域において回転テーブル2と対向している。本実施形態においては、図7に明瞭に示すように、空間50の下面の回転テーブル2からの高さh15は、空間Hの高さh1よりも僅かに低い。これは、回転テーブル2の中心部近傍での回転ぶれが小さいためである。具体的には、高さh15は1.0mm乃至2.0mm程度に設定されてよい。なお、他の実施形態においては、高さh15とh1は等しくてもよく、また、突出部5と凸部4は一体に形成されても、別体として形成されて結合されてもよい。なお、図2及び図3は、凸部4を真空容器1内に残したまま天板11を取り外した真空容器1の内部を示している。
【0030】
図1の約半分の拡大図である図6を参照すると、真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されており、この構成により、天板11とコア部21との間の空間52にNガスが供給される。この空間52に供給されたNガスにより、突出部5と回転テーブル2との狭い隙間50は、第1の領域48A及び第2の領域48Bに比べて高い圧力に維持され得る。このため、第1の領域48Aにおいて原料ガスノズル31から吐出されるDIPASガスは、圧力の高い隙間50を通り抜けて第2の領域48Bへ到達することができない。また、第2の領域48Bにおいて反応ガスノズル32から吐出されるOガスは、圧力の高い隙間50を通り抜けて第1の領域48Aへ到達することができない。したがって、双方のガスは、隙間50により分離され、真空容器1内の気相中で混合されることは殆ど無い。すなわち、本実施形態の成膜装置においては、DIPASガスとOガスとを分離するために、回転テーブル2の回転中心部と真空容器1とにより画成されて、第1の領域48A及び第2の領域48Bよりも高い圧力に維持される中心領域Cが設けられている。
【0031】
図7は、図3のB−B線に沿った断面図の約半分を示し、ここには、凸部4と、凸部4と一体に形成された突出部5とが図示されている。図示の通り、凸部4は、その外縁においてL字状に屈曲する屈曲部46を有している。屈曲部46は、回転テーブル2と容器本体12との間の空間を概ね埋めており、原料ガスノズル31からのDIPASガスと反応ガスノズル32からのOガスとがこの隙間を通して混合するのを阻止する。屈曲部46と容器本体12との間の隙間、及び屈曲部46と回転テーブル2との間の隙間は、例えば、回転テーブル2から凸部4の天井面44までの高さh1とほぼ同一に設定されてよい。また、屈曲部46があるため、分離ガスノズル41,42(図3)からのNガスは、回転テーブル2の外側に向かっては流れ難い。従って、分離領域D1,D2から第1の領域48A及び第2の領域48BへのNガスの流れが促進される。なお、屈曲部46の下方にブロック部材71bを設けることにより、分離ガスが回転テーブル2の下方まで流れるのを更に抑制することができる。
【0032】
なお、屈曲部46と回転テーブル2との間の隙間は、回転テーブル2の熱膨張を考慮し、回転テーブル2が後述のヒータユニットにより加熱された場合に、上記の間隔(h1程度)となるように設定することが好ましい。
【0033】
一方、図3に示すように、第1の領域48A及び第2の領域48Bにおいて、容器本体12の内周壁は外方側に窪み、ここに排気領域6が形成されている。この排気領域6の底部には、図3及び図6に示すように、例えば排気口61,62が設けられている。これら排気口61,62は、それぞれ排気管63を介して真空排気装置である例えば共通の真空ポンプ64(図1参照)に接続されている。この構成により、主に第1の領域48A及び第2の領域48Bが排気され、上述の通り、第1の領域48A及び第2の領域48Bの圧力を、分離領域D1,D2の分離空間Hの圧力よりも低くすることができる。なお、図3では、容器本体12の内周壁が外方側に窪んだ箇所に排気領域6が設けられているが、この構成は必須ではなく、底部に排気口61、62が設けられていれる様々な構成が適用可能である。
【0034】
また、図3に示すように、第1の領域48Aに対応する排気口61は、回転テーブル2の外側(排気領域6)において原料ガスノズル31の下方に位置している。これにより、原料ガスノズル31の吐出孔33(図4)から吐出されるDIPASガスは、回転テーブル2の上面に沿って、原料ガスノズル31の長手方向に排気口61へ向かって流れることができる。
【0035】
再び図1を参照すると、排気管63には圧力調整器65が設けられ、これにより真空容器1内の圧力が調整される。複数の圧力調整器65を、対応する排気口61,62に対して設けてもよい。また、排気口61,62は、排気領域6の底部(真空容器1の底部14)に限らず、真空容器の容器本体12の周壁部に設けてもよい。また、排気口61,62は、排気領域6における天板11に設けてもよい。ただし、天板11に排気口61,62を設ける場合、真空容器1内のガスが上方へ流れるため、真空容器1内のパーティクルが巻き上げられて、ウエハWが汚染されるおそれがある。このため、排気口61,62は、図示のように底部に設けるか、容器本体12の周壁部に設けることが好ましい。また、排気口61,62を底部に設けることにより、排気管63、圧力調整器65、及び真空ポンプ64を真空容器1の下方に設置することができるため、成膜装置1000のフットプリントを縮小する点で有利である。
【0036】
図1、及び図6乃至図8に示すように、回転テーブル2と容器本体12の底部14との間の空間には、加熱部としての環状のヒータユニット7が設けられ、これにより、回転テーブル2上に載置されるウエハWが所定の温度に加熱される。また、回転テーブル2の下方及び外周の近くに、ヒータユニット7を取り囲むようにしてブロック部材71aが設けられていることにより、ヒータユニット7が置かれている空間がヒータユニット7の外側の領域から区画される。また、ブロック部材71aより内側にガスが流入することを防止するために、ブロック部材71aの上面と回転テーブル2の下面との間には僅かな隙間が形成されている。ヒータユニット7が収容される領域には、この領域をパージするべく、複数のパージガス供給管73が、容器本体12の底部を貫通するように所定の角度間隔をおいて接続されている。なお、ヒータユニット7の上方において、ヒータユニット7を保護する保護プレート7aが、ブロック部材71aと、後述する隆起部Rとにより支持されており、これにより、ヒータユニット7が設けられる空間にDIPASガスやOガスが仮に流入したとしても、ヒータユニット7をこれらのガスから保護することができる。保護プレート7aは、例えば石英から作製することが好ましい。
【0037】
図6に示すように、底部14は、環状のヒータユニット7の内側に隆起部Rを有している。隆起部Rの上面は、回転テーブル2及びコア部21に接近しており、隆起部Rの上面と回転テーブル2の裏面との間、及び隆起部Rの上面とコア部21の裏面との間に僅かな隙間を残している。また、底部14は、回転軸22が通り抜ける中心孔を有している。この中心孔の内径は、回転軸22の直径よりも僅かに大きく、フランジ部20aを通してケース体20と連通する隙間を残している。また、フランジ部20aの上部にはパージガス供給管72が接続されている。
【0038】
このような構成により、図6に示すように、回転軸22と底部14の中心孔との間の隙間、コア部21と底部14の隆起部Rとの間の隙間、及び底部14の隆起部Rと回転テーブル2の裏面との間の隙間を通して、パージガス供給管72から回転テーブル2の下方空間へNガスが流れる。また、パージガス供給管73からヒータユニット7の下方空間へNガスが流れる。そして、これらのNガスは、ブロック部材71aと回転テーブル2の裏面との間の隙間を通して排気口61へ流れ込む。このように流れるNガスは、DIPASガス(もしくはOガス)が、回転テーブル2の下方空間を回流してOガス(DIPASガス)と混合することを防止する分離ガスとして働く。
【0039】
図2図3及び図8に示すように、容器本体12の周壁部には搬送口15が形成されている。ウエハWは、搬送口15を通して搬送アーム10により真空容器1の中へ、又は真空容器1から外へと搬送される。この搬送口15にはゲートバルブ(図示せず)が設けられ、これにより搬送口15が開閉される。また、凹部24の底面には3つの貫通孔(図示せず)が形成されており、これらの貫通孔を通して、3本の昇降ピン16(図8参照)が上下動することができる。昇降ピン16は、ウエハWの裏面を支えて当該ウエハWを昇降させ、ウエハWの搬送アーム10との間で受け渡しを行う。
【0040】
また、図3に示すように、実施形態に係る成膜装置1000は、装置全体の動作のコントロールを行うための制御部200を備えている。この制御部200は、例えばコンピュータで構成されるプロセスコントローラ200aと、ユーザインタフェース部200bと、メモリ装置200cとを有する。ユーザインタフェース部200bは、成膜装置の動作状況を表示するディスプレイや、成膜装置の操作者がプロセスレシピを選択したり、プロセス管理者がプロセスレシピのパラメータを変更したりするためのキーボードやタッチパネル(図示せず)などを有する。
【0041】
なお、制御部200は、後述する成膜時間の設定方法を実行するための制御も行う。
【0042】
メモリ装置200cは、プロセスコントローラ200aに種々のプロセスを実施させる制御プログラム、プロセスレシピ、及び各種プロセスにおけるパラメータなどを記憶している。また、これらのプログラムには、例えば後述する成膜時間の設定方法を行わせるためのステップ群を有しているものがある。これらの制御プログラムやプロセスレシピは、ユーザインタフェース部200bからの指示に従って、プロセスコントローラ200aにより読み出されて実行される。また、これらのプログラムは、コンピュータ可読記憶媒体200dに格納され、これらに対応した入出力装置(図示せず)を通してメモリ装置200cにインストールしてよい。コンピュータ可読記憶媒体200dは、ハードディスク、CD、CD−R/RW、DVD−R/RW、フレキシブルディスク、半導体メモリなどであってよい。また、プログラムは通信回線を通してメモリ装置200cへダウンロードしてもよい。
【0043】
[実施形態に係る成膜時間の設定方法]
次に、図9乃至図12を用いて、実施形態に係る成膜時間の設定方法を説明する。ここで、図9は、本発明の実施形態に係る成膜時間の設定方法のフローチャートであり、図10は、成膜開始時における原料ガス流れの影響を説明する模式図である。
【0044】
本実施形態に係る成膜時間の設定方法は、回転テーブル2の回転速度が1秒以上で、比較的サイクルタイムの長い成膜処理における成膜時間の設定の際に好適に適用される。例えば、本実施形態では回転テーブル2の回転速度が20rpmの場合を取り上げて説明しており、この場合の回転テーブル2の1回転当たりの時間であるサイクルタイムTは3秒となる。すなわち、実施形態に係る成膜時間の設定方法においては、比較的回転速度の遅い回転テーブル2を使用してシリコン含有膜を成膜する際の成膜時間の設定方法を説明する。
【0045】
図9に示すように、実施形態に係る成膜時間の設定方法では、まず、予め設定されているターゲット膜厚に基づいて、サイクルタイムTとサイクル数Nを仮に設定する(ステップS300)。通常の成膜処理においては、ターゲット膜厚が9nmや10nm等として設定される。また、回転テーブル2の回転速度、すなわちサイクルタイムTも設定され、サイクルタイムT当たりにウエハW上に成膜されるシリコン含有膜の膜厚も予め測定され、管理者には既知の情報として取得されている。例えば、サイクルタイムT当たりのシリコン含有膜の膜厚が、10オングストローム(Å)等として取得されている。従って、ターゲット膜厚をサイクルタイムT当たりの膜厚で除すことにより、サイクル数Nが算定される。そして、サイクルタイムTに対して算定されたサイクル数Nを乗じることにより、仮の成膜時間が設定できる。
【0046】
従来は、上記の算定方法によって設定されるT×Nを成膜時間とし、この成膜時間にて成膜処理を実行していた。しかしながら、回転テーブル2を回転させて複数のウエハW上に成膜処理を実行する成膜方法では、上記方法で設定された成膜時間(T×N)に亘って成膜処理を実行した際に、様々な要因により、各ウエハWのシリコン含有膜の例えば膜厚に関する面間均一性に関して改善の余地があることが判明している。この面間均一性を図る指標として、主には各ウエハWのシリコン含有膜の膜厚の均一性があるが、その他、各ウエハWのシリコン含有膜の膜質の均一性等もある。
【0047】
ここで、図10を参照して、面間均一性に影響を及ぼす一つの要因を説明する。図10には、図2,3等を用いて説明してきた処理室100と同様に、5つの凹部24を周方向に等間隔に備えた回転テーブル2を示しており、各凹部24にウエハWが載置されている。なお、図示を省略するが、本実施形態では、図2,3に示す処理室100がプラズマ処理領域を有している装置を適用し、プラズマ処理領域にAr/O/Hガスを供給するとともに、プラズマ処理領域においてプラズマ発生器に高周波電力を供給してAr/O/Hガスからプラズマを発生させ、シリコン含有膜の改質処理も行っているが、この改質処理についての詳細な説明は省略する。以下、各凹部24に番号を付して、第1スロット乃至第5スロットと呼ぶことにする。回転テーブル2の回転開始時において、原料ガスノズル31は第1スロットと第5スロットの中間に位置しており、回転テーブル2は時計方向(X方向)に回転するものとする。
【0048】
回転テーブル2が時計方向に回転を開始すると、まず、第1スロットに原料ガスであるDIPASガスが供給され、以後、順に第2スロットから第5スロットまで原料ガスがこの順に供給される。すなわち、第5スロットに載置される基板Wは、最後に原料ガスが供給されて成膜処理される、最後成膜基板である。
【0049】
そして、3秒のサイクルタイムT経過時には、第1スロットと第5スロットの中間位置に原料ガスノズル31が戻る。回転テーブル2の回転により、各スロットは原料ガスノズル31の後に反応ガスノズル32を通過し、図示例においてはウエハW上に吸着しているDIPASにOガスが供給され、サイクルタイムT当たりの膜厚(例えばおよそ10オングストロームの膜厚)のシリコン含有膜が形成される。
【0050】
本来的には、5つのスロットに対して均等量の原料ガスが供給されるはずである。しかしながら、実際には、図10に示すように、原料ガスのガス出しの際に、原料ガス供給領域内において、本来は原料ガスが供給されない回転方向上流側の第5スロットのウエハWに対して原料ガスが拡散してしまい(図中のY方向)、回転テーブル2の回転によって原料ガスノズル31が第5スロットに到達する前段で既に第5スロットには多少の原料ガスが吸着している。なお、既述するように、中心領域Cには高圧の分離ガスが流れていることにより、原料ガスが第2スロット乃至第4スロットに流れ込むことは一般に抑制される。
【0051】
各スロットに対して均等に原料ガスを供給するべく、回転テーブル2の回転開始時における原料ガスノズル31の位置は、隣接するスロットとスロットの間に位置決めされるのがよく、例えば、図示例のようにスロットとスロットの中間位置に位置決めされる。しかしながら、スロットとスロットの間の位置に原料ガスノズル31が位置決めされ、回転テーブル2が回転を開始して各スロットに対して原料ガスが順次供給される成膜方法においては、図10に示すガス出し時のY方向へのガス流れが生じることは避けられない。
【0052】
そのため、このガス流れに起因する余分な原料ガスが原料ガスノズル31の回転方向上流側のスロットに供給され得る。本発明者等は、このことが各スロットのウエハW上に形成されるシリコン含有膜の膜厚に関する面間均一性を阻害する要因の一つであることを特定している。
【0053】
なお、面間均一性を阻害する他の要因としては、成膜処理の終了に際して原料ガスノズル31からの原料ガスの供給を終了した際に、原料ガスノズル31内に残っている原料ガスが流れ出し、いくつかのスロットに対して余分な原料ガスが供給されることなどが挙げられる。そして、このことは、原料ガスノズル31が図示例のようにインジェクタ形式ではなくて、ガス供給面が広幅のシャワーヘッド形式の場合に顕著になり得る。
【0054】
本実施形態に係る成膜時間の設定方法は、各スロット間のシリコン含有膜の膜厚等に関する面間均一性の改善を図ることを可能としている。すなわち、各スロット間の面間均一性の改善を、成膜装置を改良することや、ガス供給制御もしくは回転テーブルの回転制御等の改良からアプローチするのではなくて、成膜時間の設定によって図ることとした。
【0055】
図9に戻り、サイクルタイムTとサイクル数Nが仮に設定され、T×Nにて算定される仮の成膜時間を設定した後、まず、最終サイクルの1つ手前のN−1サイクルまでの仮成膜処理を実行する(第1の仮成膜処理、ステップS302)。仮成膜処理では、図10に示すように隣接スロット間に原料ガスノズル31を位置決めし、原料ガスノズル31からのガス出しを開始すると同時に、図10では図示を省略している分離ガスノズル41,42(図2,3参照)からNガスを供給し、さらに反応ガスノズル32からOガスを供給して、回転テーブル2の回転も同時に開始する。なお、原料ガスノズル31の初期の位置が面間均一性の良否に決定的な要因とは必ずしもならないことより、原料ガスノズル31の初期の位置決めは必須ではない。そして、回転テーブルをN−1サイクルまで回転させて、第1スロット乃至第5スロットにシリコン含有膜を成膜する。なお、この成膜方法は、回転テーブル2の回転を継続しながら各ウエハWの表面へのシリコン含有ガスの吸着と、ウエハWの表面に吸着したシリコン含有ガスの酸化をこの順番で多数回に亘って行う原子層成膜法(ALD法:Atomic Layer Deposition)による。
【0056】
N−1サイクルの仮成膜処理が終了した後、各ガスの供給を停止するとともに回転テーブル2の回転を停止する。そして、第1スロット乃至第5スロットに成膜されているN−1サイクルまでの各シリコン含有膜の膜厚dN−1を、エリプソメータ等の膜厚測定機にて測定する(ステップS304)。
【0057】
次に、回転テーブル2からシリコン含有膜が成膜されているウエハWを取り外し、処理室100からアンロードした後、シリコン含有膜が成膜されていない新規のウエハWを処理室100内にロードして各スロットの凹部24に載置し、原料ガスノズル31を図10と同様に隣接する2つのスロットの中間位置に位置決めする。ここでは、N−1サイクルとNサイクルの間の時間を複数に分割し、分割された時間までの仮成膜処理を実行する。本実施形態では、サイクルタイムTが3秒であることから、N−1サイクルからNサイクルまでを1秒ずつに区切り、N−1サイクル+1秒までの第2の仮成膜処理と、N−1サイクル+2秒(Nサイクル−1秒とも言える)までの第2の仮成膜処理を実行する。すなわち、仮の成膜時間が1秒異なる2度の第2の仮成膜処理を実行する。
【0058】
まず、回転テーブル2からシリコン含有膜が成膜されているウエハWを取り外し、処理室100からアンロードした後、シリコン含有膜が成膜されていない新規のウエハWを処理室100内にロードして各スロットの凹部24に載置し、原料ガスノズル31を図10と同様に隣接する2つのスロットの中間位置に位置決めする。そして、N−1サイクル+1秒までの仮成膜時間に亘って第2の仮成膜処理を実行し(ステップS306)、第1スロット乃至第5スロットに成膜されているN−1サイクル+1秒までの各シリコン含有膜の膜厚dN−1サイクル+1秒を、エリプソメータにて測定する(ステップS308)。
【0059】
次に、回転テーブル2からシリコン含有膜が成膜されているウエハWを取り外し、処理室100からアンロードした後、シリコン含有膜が成膜されていない新規のウエハWを処理室100内にロードして各スロットの凹部24に載置し、原料ガスノズル31を図10と同様に隣接する2つのスロットの中間位置に位置決めする。そして、N−1サイクル+2秒までの仮成膜時間に亘って2度目の第2の仮成膜処理を実行し(ステップS306)、第1スロット乃至第5スロットに成膜されているN−1サイクル+2秒までの各シリコン含有膜の膜厚dN−1サイクル+2秒を、エリプソメータにて測定する(ステップS308)。
【0060】
次に、回転テーブル2からシリコン含有膜が成膜されているウエハWを取り外し、処理室100からアンロードした後、シリコン含有膜が成膜されていない新規のウエハWを処理室100内にロードして各スロットの凹部24に載置し、原料ガスノズル31を図10と同様に隣接する2つのスロットの中間位置に位置決めする。最後は、当初仮に設定したNサイクルまでの仮成膜処理を実行し(第3の仮成膜処理、ステップS310)、第1スロット乃至第5スロットに成膜されているNサイクルまでの各シリコン含有膜の膜厚dを、エリプソメータにて測定する(ステップS312)。
【0061】
以上、ステップS300乃至ステップS312は、本実施形態における成膜時間の設定方法における膜厚測定工程である。
【0062】
次に、ステップS304にて測定された、N−1サイクル時における第1スロット乃至第5スロットの各膜厚dN−1の群、ステップS308にて測定された、N−1サイクルとNサイクルの途中時間における第1スロット乃至第5スロットの各膜厚dN−1〜Nの群、及び、ステップS312にて測定された、Nサイクル時における第1スロット乃至第5スロットの各膜厚dの群において、面間均一性を比較する(ステップS314)。
【0063】
面間均一性を比較した結果、仮にNサイクル時の第1スロット乃至第5スロットの各膜厚dの群の面間均一性が他の時間の群の面間均一性に比べて良好である、例えば、各膜厚dの厚みが最も近接している、と判断される場合は、当初、仮に設定しているNサイクルまでの時間を正式に成膜時間として設定する(ステップS316)。
【0064】
一方、面間均一性を比較した結果、N−1サイクル時の第1スロット乃至第5スロットの各膜厚dN−1の群の面間均一性が他の時間の群の面間均一性に比べて良好であると判断される場合は、当初、仮に設定しているNサイクルを修正し、N−1サイクルまでの時間を正式に成膜時間として設定する(ステップS316)。
【0065】
以上、ステップS314,S316は、本実施形態における成膜時間の設定方法における成膜時間特定工程である。
【0066】
しかしながら、実際には、既述する原料ガスの提供開始時の影響等に起因して、仮に設定されるNサイクルとその1つ手前のN−1サイクルの間において(上記N−1サイクル+1秒もしくはN−1サイクル+2秒)、面間均一性が最も良好となる時間が特定され易い。そこで、以下、図11及び図12を用いて、NサイクルとN−1サイクルの間において成膜時間を特定し、設定する方法(成膜時間特定工程)を説明する。
【0067】
図11は、実施形態に係る成膜時間の設定方法を行った結果を示す図であり、仮成膜処理のN−1サイクル(ここでは、74サイクル)乃至Nサイクル(ここでは、75サイクル)までの各スロットにおけるシリコン含有膜の膜厚の測定結果と膜厚均一性の算定結果をともに示す図である。ここでは、Nサイクル終了後においても原料ガスノズル31からの原料ガスの出流れ分があることから、この出流れ分を酸化するべく、Nサイクル+1秒(226秒)までの膜厚測定を行っているが、図11においては、222秒から225秒までの膜厚の経時変化に注目すればよい。ここで、膜厚均一性は、各時間における第1スロット乃至第5スロットのシリコン含有膜の膜厚の平均値と対象スロットのシリコン含有膜の膜厚の差分を平均値で除し、100を乗じてパーセンテージで示すものである。
【0068】
各時間における各スロットのシリコン含有膜の膜厚測定結果を、図11に示すように、時間軸と膜厚軸を有するグラフ上にプロットし、スロット毎に各時間における膜厚のプロット同士を直線で繋いで折れ線グラフを作成する。なお、図示例のように、プロット同士を直線で繋ぐ変わりに、曲線で繋いだり、各プロット間を通る近似曲線を求めてグラフ化してもよい。
【0069】
図10に示すように、本実施形態にかかる仮成膜処理では、第1スロットと第5スロットの中間位置に原料ガスノズル31を位置決めし、回転テーブル2を回転させて第1スロットから原料ガスの供給を行っている。図11における第1スロットの膜厚の経時変化を見ると、N−1サイクル(74サイクル)開始時の222秒から次の223秒の間に原料ガスの供給が行われることに応じて、膜厚は9.32nmから9.40nmへ厚くなっている。さらに、1秒後の224秒、及びNサイクル(75サイクル)時の225秒においては、第1スロットへの原料ガスの供給がないことから膜厚の変動は殆ど無く、Nサイクル時(225秒時)に9.41nmの膜厚となっている。
【0070】
第2スロットも223秒までの間に原料ガスの供給があることにより、膜厚の経時変化の傾向は第1スロットとほぼ同様であり、222秒で9.31nmの膜厚は、225秒で9.41nmと第1スロットとほぼ同様の膜厚の変化量となる。
【0071】
第3スロットでは、223秒と224秒の間に原料ガスの供給が行われることから、222秒及び223秒でほぼ同様の膜厚であり(それぞれ、9.30nm、9.31nm)、224秒で9.40nmに膜厚が厚くなり、224秒から225秒にかけては膜厚の変化がない。
【0072】
第4スロットは、他のスロットとは傾向が若干異なるものの、223秒と224秒の間に原料ガスの供給が行われ、9.34nmから9.38nmに膜厚が厚くなり、224秒から225秒にかけても膜厚が厚くなる結果、最終的には他のスロットと同様に9.41nmの膜厚となっている。
【0073】
以上、第1スロット乃至第4スロットの4つのスロットに関しては、N−1サイクルである222秒時の各シリコン含有膜の膜厚は同程度であり(9.30nm乃至9.32nm)、Nサイクルである225秒時の各シリコン含有膜の膜厚も同程度である(9.40nm乃至9.41nm)。
【0074】
一方、第5スロットのシリコン含有膜の膜厚の経時変化を見ると、N−1サイクルである222秒時のシリコン含有膜の膜厚は9.35nmであり、他のスロットの222秒時におけるシリコン含有膜の膜厚に比べて0.04nm程度厚くなっている。また、Nサイクルである225秒時のシリコン含有膜の膜厚は9.43nmであり、他のスロットの225秒時におけるシリコン含有膜の膜厚に比べて0.03nm程度厚くなっている。
【0075】
このように第5スロットのシリコン含有膜の膜厚が他のスロットのシリコン含有膜の膜厚に比べて若干厚くなっている理由は、上記するように、原料ガスの供給開始時における第5スロットへの流れ込みが一つの要因である。いずれにしても、成膜時間を当初設定した75サイクルで225秒とした場合、第5スロットのシリコン含有膜の膜厚と他のスロットのシリコン含有膜の膜厚との間に誤差があることから、各スロットにおけるシリコン含有膜の膜厚に関する面間均一性に関しては、改善の余地がある。
【0076】
図11より、仮に設定されたNサイクル(225秒)の仮の成膜時間と、その1秒手前の224秒の間において、5つのスロットのシリコン含有膜の膜厚の経時変化グラフの交点が含まれるエリアARの存在が確認できる。そこで、図12に示すように、224秒から225秒までの経時変化グラフを抽出する。
【0077】
第1スロット乃至第4スロットに関しては、225秒時のシリコン含有膜の膜厚に差は殆ど無く、224秒時のシリコン含有膜の膜厚の差も僅かである。そこで、第5スロット以外の第1スロット乃至第4スロットの224秒と225秒の間は、共通する膜厚とし、かつ膜厚の変化が無いものとし、一義的な膜厚dNFIXとして設定する。図示例では、224秒から225秒までの間の第1スロット乃至第4スロットのシリコン含有膜の膜厚dを一義的に膜厚dNFIX=9.41nmとし、y=9.41なる時間軸に平行なグラフ(図12における点線グラフ)を作成する。
【0078】
また、第5スロットに関しては、224秒の膜厚プロットと225秒の膜厚プロットを直線で繋ぎ、時間で変動する一次関数のグラフを作成する。図示例では、y=0.08x−8.57なる一次関数グラフとなる。
【0079】
2つのグラフ、y=9.41と、y=0.08x−8.57との交点を求めると、成膜時間は224.75秒となる。本実施形態による成膜時間の設定方法では、この224.75秒を、正式な成膜時間と特定し、224.75秒を成膜時間に設定する。すなわち、当初、仮に設定したサイクルタイムT(=3秒)×75サイクル=225秒から0.25秒マイナスした時間(あるいは、74サイクルである222秒に2.75秒プラスした時間)を成膜時間とする。
【0080】
ここで、以下の表1において、N−1サイクル時(222秒時)における各スロットのシリコン含有膜の膜厚に関する面間均一性に関する算定結果と、上記方法にて求めた224.75秒時におけるにおける各スロットのシリコン含有膜の膜厚に関する面間均一性に関する算定結果を示す。
【0081】
【表1】
表1において、1S乃至5Sは、それぞれ第1スロット乃至第5スロットを示す。
【0082】
表1より、成膜時間が224.75秒の場合は、第5スロットのシリコン含有膜の膜厚も他のスロットのシリコン含有膜の膜厚と同程度となり、優れた面間均一性が得られることが確認できる。
【0083】
このように、回転テーブル2を回転させながら複数のウエハW上にシリコン含有膜を順に成膜処理する成膜方法において、ターゲット膜厚と回転テーブルの回転速度(サイクルタイムT)に基づいて仮のサイクル数Nと仮の成膜時間を設定する。サイクルN−1時における各スロットのシリコン含有膜の膜厚を測定するとともに、サイクルN時における各スロットのシリコン含有膜の膜厚を測定する。さらに、サイクルN−1からサイクルNの間の時間を分割し、各分割時間において、各スロットのシリコン含有膜の膜厚を測定する。これらの測定結果に基づき、面間均一性が最も良好な成膜時間を、サイクルN−1とサイクルNの間に特定し、これを成膜時間とすることにより、各ウエハWに形成されるシリコン含有膜の膜厚等に関し、優れた面間均一性を得ることができる。
【0084】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0085】
1 真空容器
2 回転テーブル(回転テーブル)
4 凸部
24 凹部
31 原料ガスノズル
32 反応ガスノズル
41,42 分離ガスノズル
51 分離ガス供給管
61,62,63 排気口
63 排気管
65 圧力調整器
7 ヒータユニット
72,73 パージガス供給管
81 分離ガス供給管
100 処理室
200 制御部
1000 成膜装置
W ウエハ(基板)
P1 第1の処理領域
P2 第2の処理領域
D 分離領域
C 中心領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12