【文献】
天野 貴司,”デジタル乳房画像を用いた乳腺線量の計測”,医用画像情報学会雑誌,2007年,vol.24、No.1,pp.6-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導出部は、前記判定部が判定した前記乳房のタイプが前記予め定められたタイプ以外のタイプである場合、前記放射線画像における、脂肪組織のみで構成されると推定される前記乳房の部分によって得られる脂肪組織画素に対する到達線量に基づいて、前記乳腺の割合を導出する、
請求項3または請求項4に記載の画像処理装置。
前記導出部は、脂肪組織のみで構成されると推定される前記乳房の部分によって得られる脂肪組織画素が前記乳房画像に含まれない場合、前記乳腺組織画素に対する到達線量に基づいて、前記放射線画像における乳房画像の乳腺の割合を導出し、
前記脂肪組織画素が前記乳房画像に含まれる場合、前記脂肪組織画素に対する到達線量に基づいて、前記放射線画像における前記乳房画像の乳腺の割合を導出する
請求項1または請求項2に記載の画像処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は本発明を限定するものではない。
【0020】
まず、本実施形態の放射線画像撮影システム全体の構成の一例について説明する。
図1には、本実施形態の放射線画像撮影システム1の全体の構成の一例を表す構成図を示す。
【0021】
本実施形態の放射線画像撮影システム1は、コンソール6を介して外部のシステム(例えば、RIS:Radiology Information System)から入力された指示(撮影オーダ)に基づいて、医師や放射線技師等のユーザの操作により放射線画像の撮影を行う機能を有している。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の放射線画像撮影システム1は、コンソール6及びマンモグラフィ装置10を備えている。
図2には、本実施形態のコンソール6及びマンモグラフィ装置10の構成の一例を表すブロック図を示す。
【0023】
本実施形態のコンソール6は、無線通信LAN(Local Area Network)等を介して外部システム等から取得した撮影オーダや各種情報等を用いて、マンモグラフィ装置10の制御を行う機能を有している。本実施形態のコンソール6が、本開示の画像処理装置の一例である。
【0024】
本実施形態のコンソール6は、一例として、サーバーコンピュータである。
図2に示すように、コンソール6は、制御部40、記憶部42、I/F(Interface)部44、表示部46、及び操作部48を備えている。制御部40、記憶部42、I/F部44、表示部46、及び操作部48はシステムバスやコントロールバス等のバス49を介して相互に各種情報の授受が可能に接続されている。
【0025】
本実施形態の制御部40は、コンソール6の全体の動作を制御する。本実施形態の制御部40は、CPU(Central Processing Unit)40A、ROM(Read Only Memory)40B、及びRAM(Random Access Memory)40Cを備える。ROM40Bには、CPU40Aで実行される、後述する乳腺割合導出処理プログラムを含む各種のプログラム等が予め記憶されている。RAM40Cは、各種データを一時的に記憶する。
【0026】
記憶部42には、マンモグラフィ装置10で撮影された放射線画像の画像データや、その他の各種情報等が記憶される。記憶部42の具体例としては、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等が挙げられる。I/F部44は、無線通信及び有線通信の少なくとも一方により、マンモグラフィ装置10やRIS及びPACS(Picture Archiving and Communication System:画像保存通信システム)等の外部のシステムとの間で各種情報の通信を行う。
【0027】
表示部46は、撮影に関する情報等及び撮影により得られた放射線画像等を表示する。操作部48は、放射線画像の撮影の指示及び撮影された放射線画像の画像処理に関する指示等を、ユーザが入力するために用いられる。操作部48は、一例としてキーボードや各種スイッチの形態を有するものであってもよいし、表示部46と一体化されたタッチパネルの形態を有するものであってもよい。
【0028】
一方、本実施形態のマンモグラフィ装置10は、被検者の乳房を被写体とし、乳房に放射線X(X線)を照射して乳房の放射線画像を撮影する装置である。マンモグラフィ装置10は、
図1に示すように、撮影部12と、撮影部12を支える基台部14と、を備える。
【0029】
撮影部12は、被検者の乳房と接する平面状の撮影面24を有する撮影台16と、乳房を撮影台16の撮影面24との間に挟んで圧迫するための圧迫板20と、撮影台16及び圧迫板20を支持する保持部18と、を備える。なお、圧迫板20には、放射線Xを透過する部材が用いられる。また、本実施形態の撮影部12は、詳細を後述するように、撮影台16を保持した状態で、撮影部回転部19により回転する。
【0030】
保持部18は、撮影面24と放射線源29とを予め定められた間隔離して撮影台16と放射線源29とを支持する。また、保持部18は、圧迫板20も保持しており、圧迫板20をスライド移動させることにより、圧迫板20と撮影面24との間隔が変化する。
【0031】
マンモグラフィ装置10により被検者の乳房の放射線画像を撮影する場合、ユーザにより被検者のポジショニングが行われ、撮影台16の撮影面24に載せられた乳房を、圧迫板20と撮影面24との間で圧迫することで固定する。
【0032】
撮影台16の内部には、乳房及び撮影面24を通過した放射線Xを検出する放射線検出器11が配置されている。放射線検出器11が検出した放射線Xに基づいて放射線画像が生成される。本実施形態の放射線検出器11の種類は、特に限定されず、例えば、放射線Xを光に変換し、変換した光を電荷に変換する間接変換方式の放射線検出器であってもよいし、放射線Xを直接電荷に変換する直接変換方式の放射線検出器であってもよい。本実施形態では、マンモグラフィ装置10の放射線検出器11から出力された放射線画像を表す画像データは、コンソール6に送信される。
【0033】
また、本実施形態のマンモグラフィ装置10は、乳房に対して、撮影方向が頭尾方向である、CC(Cranio-Cauda)撮影と、撮影方向が内外斜位方向であるMLO(Medio-Lateral Oblique)撮影との両方を行うことができる装置である。以下の説明では、放射線画像の撮影において、放射線源29から撮影台16へ放射線Xを出射する場合における放射線源29の位置を「撮影位置」という。
【0034】
CC撮影を行う場合は、撮影面24がマンモグラフィ装置10の上側(被検者の頭側)を向いた状態、すなわち撮影面24の法線方向が垂直となる状態に撮影台16が調整される。また、この場合、放射線源29の位置が、撮影台16の撮影面24と対向する撮影位置に調整される。具体的には、放射線源29の位置が撮影面24の法線CL(
図3A、
図3B参照)に対して垂直方向(すなわち、法線CL(
図3A、
図3B参照)とのなす角度が0度)の撮影位置に調整される。これにより、被検者の頭側から足側に向かって、放射線源29から乳房へ放射線Xが出射されて、CC撮影がなされる。
【0035】
また、MLO撮影を行う場合は、CC撮影を行う場合に比べて撮影面24を45度以上90度未満の範囲内の予め定められた角度まで回転された状態に撮影台16の位置が、撮影部回転部19により調整される。具体的には、被検者の左の乳房を撮影する場合は、一例として
図3Aの破線で示すように、撮影台16を撮影部回転部19により回転させて撮影面24を右側に傾斜させた状態とする。また、被検者の右の乳房を撮影する場合は、
図3Bの破線で示すように、撮影台16を撮影部回転部19により回転させて撮影面24を左側に傾斜させた状態とする。これに対して、放射線源29の位置は、撮影台16の撮影面24と対向する撮影位置に調整される。これにより、被検者の胴体の中心側から外側へ向かって(被検者の乳房同士の間から腕側に向けて)、放射線源29から乳房へ放射線Xが出射されて、MLO撮影がなされる。
【0036】
このように、本実施形態のマンモグラフィ装置10では、CC撮影及びMLO撮影のいずれにおいても、撮影位置では、放射線源29と撮影面24とが対向する位置となる。以下では、CC撮影により得られた放射線画像を「CC画像」といい、MLO撮影により得られた放射線画像を「MLO画像」といい、また、総称する場合は単に「放射線画像」という。
【0037】
また、
図2に示すように、本実施形態のマンモグラフィ装置10は、放射線検出器11、撮影部回転部19、放射線源29を有する放射線照射部28、制御部30、記憶部32、I/F部34、及び操作パネル36を備える。放射線検出器11、撮影部回転部19、放射線照射部28、制御部30、記憶部32、I/F部34、及び操作パネル36は、システムバスやコントロールバス等のバス39を介して相互に各種情報の授受が可能に接続されている。
【0038】
本実施形態の制御部30は、マンモグラフィ装置10の全体の動作を制御する。また、本実施形態の制御部30は、放射線画像の撮影を行う場合に、放射線検出器11及び放射線照射部28を制御する。本実施形態の制御部30は、CPU30A、ROM30B、及びRAM30Cを備える。ROM30Bには、CPU30Aで実行される、放射線画像の撮影を制御するためのプログラムを含む各種のプログラム等が予め記憶されている。RAM30Cは、各種データを一時的に記憶する。
【0039】
記憶部32には、放射線検出器11により撮影された放射線画像の画像データや、その他の各種情報等が記憶される。記憶部32の具体例としては、HDDやSSD等が挙げられる。I/F部34は、無線通信または有線通信により、コンソール6との間で各種情報の通信を行う。操作パネル36は、例えば、マンモグラフィ装置10の撮影台16に複数のスイッチとして設けられている。なお、操作パネル36は、タッチパネルとして設けられてもよい。
【0040】
次に、本実施形態の放射線画像撮影システム1の作用について説明する。
図4には、本実施形態の放射線画像撮影システム1全体における、被検者の乳房の放射線画像を撮影する撮影動作の流れの一例を表すフローチャートが示されている。
【0041】
図4に示したステップS10でマンモグラフィ装置10は、コンソール6を介したユーザの指示に従い、放射線画像の撮影を行う。ユーザにより、被検者のポジショニングが行われると、ユーザの指示に応じて、マンモグラフィ装置10が放射線の撮影動作を開始する。
図5には、本実施形態のマンモグラフィ装置10における、放射線画像の撮影動作の流れの一例を表すフローチャートが示されている。
【0042】
図5に示したステップS100で、制御部30は、圧迫板20により、撮影台16の撮影面24に載せられた乳房を圧迫する。
【0043】
圧迫板20により圧迫されることで乳房が固定されると、次のステップS102で制御部30は、圧迫板20の高さ、具体的には、撮影面24と圧迫板20との距離を取得する。制御部30が圧迫板20の高さを取得する方法は特に限定されず、例えば、予め定められた初期位置から、乳房を圧迫するために圧迫板20を移動させた移動量を検出し、初期位置及び移動量に基づいて圧迫板20の高さを取得してもよい。本実施形態の放射線画像撮影システム1では、撮影における圧迫板20の高さを、撮影における乳房の厚みとみなしている。
【0044】
次のステップS104で制御部30は、ユーザの指示に応じて放射線源29から放射線Xを被検者の乳房に向けて照射し、放射線検出器11により、乳房の放射線画像を撮影する。なお、放射線検出器11により撮影された放射線画像の画像データは、撮影の終了直後のタイミングや、コンソール6から画像データの送信を受け付けたタイミング等の予め定められたタイミングで、圧迫板20の高さを表す情報と対応付けた状態でコンソール6に送信される。
【0045】
次のステップS106で制御部30は、圧迫板20による乳房の圧迫を解除する。具体的には、制御部30は、撮影台16から離れる方向(放射線源29に近付く方向)に圧迫板20を移動させることで、乳房の圧迫を解除する。本ステップの終了により、マンモグラフィ装置10における、放射線画像の撮影動作が終了する。
【0046】
なお、ステップS10によって撮影される放射線画像は、撮影オーダや、ユーザの指示等に応じた画像であればよく、CC画像及びMLO画像の一方であってもよいし、両方であってもよい。
【0047】
このようにしてステップS10(
図4参照)における放射線画像の撮影が終了すると、次のステップS12でコンソール6は、
図6に一例を示した後述する乳腺割合導出処理を行い、放射線画像から、乳房の乳腺の割合を導出した後、放射線画像撮影システム1全体における撮影動作が終了する。
【0048】
上述のように、本実施形態のコンソール6は、乳房を撮影した放射線画像から、乳房の乳腺の割合を導出する機能を有する。ここで、放射線画像から乳房の乳腺の割合を導出する原理について説明する。なお、ここでいう乳腺の割合とは、乳房組織に占める乳腺組織の体積比を意味する。乳腺の割合は、放射線Xの照射方向である乳房の厚み方向における乳腺の割合を示すものであって、乳腺がなく脂肪のみからなる場合には乳腺の割合は0になり、乳腺密度が高くなるほど乳腺の割合は大きくなる。
【0049】
図7に示すように、放射線Xは、被写体Wである乳房を透過することにより、減弱するため、放射線検出器11に到達する線量(以下、「到達線量」という)が異なる。
図7に示した(A)は、放射線源29から照射された放射線Xが乳房を透過せずに、直接、放射線検出器11に到達した場合を、(B)は、放射線源29から照射された放射線Xが乳房を透過してから放射線検出器11に到達した場合を模式的に示している。(A)の場合の到達線量と、(B)の場合の到達線量との差((A)−(B))が、乳房による放射線Xの減弱に等しい。乳房による放射線Xの減弱は、乳房の厚みTと、乳房の組成(乳腺の割合R)とによって定まる。乳房の組織が、乳腺組織及び脂肪組織から構成されるとした場合、具体的には、乳房による減弱((A)−(B))は、下記(1)式により、導出される。なお、下記(1)式におけるRは、乳腺の割合(0〜1の数値)を表している。
【0051】
なお、上記(1)式における、
【数2】
は、脂肪組織による放射線Xの減弱を表し、
【0052】
【数3】
は、乳腺組織による放射線Xの減弱を表している。
【0053】
上記(1)式から、放射線画像(乳房画像)の画素毎の乳腺の割合Rは、下記(2)式により導出される。
【0055】
なお、上記(2)式における、I
0は、放射線画像における、乳房を透過せずに直接照射された放射線Xに応じた領域である直接領域(いわゆる、素抜け領域)における到達線量であり、I
1は、乳房領域における到達線量である。
【0056】
上記(2)式により導出された画素毎の乳腺の割合Rを、放射線画像の乳房画像(乳房領域)全体で統合することにより、乳房全体における乳腺の体積及び、乳房全体の体積に対する乳腺の割合を導出することができる。
【0057】
このように、乳房画像の画素毎に乳腺の割合を導出する方法として、例えば、特開2010−253245号公報に記載された方法が知られている。特開2010−253245号公に記載された方法では、放射線画像から得られる情報のみから乳腺の割合を導出するため、乳房全体が脂肪組織のみで構成されていると仮定した場合に得られる脂肪画像Aを推定する。脂肪画像Aについて、下記(3)式が得られるため、下記(3)式を用いて、上記(2)式から乳房の厚みTを消去して得られる下記(4)式により、乳腺の割合を導出する。下記(4)式によれば、脂肪組織が最も多く含まれる部分(画素)について、R=0(0%)が、乳腺の割合として導出される。
【0059】
ところで、乳房のタイプについて、一般的に、乳房撮影精度管理マニュアルの乳腺密度分類に記載されているタイプである、脂肪性タイプ、乳腺散在タイプ、不均一高濃度タイプ、及び高濃度タイプが知られている。これらのうちの乳腺密度が比較的高い乳房が分類されるタイプである、不均一高濃度タイプ及び高濃度タイプ、いわゆるデンスブレストでは、他のタイプに比べて、脂肪組織画素が乳房画像に含まれない場合が多くなる傾向にある。上記の方法では、乳房を撮影した放射線画像の乳房画像から、脂肪組織のみで構成されていると推定される乳房の部分によって得られる脂肪組織画素の画素値が用いられるが、脂肪組織画素が乳房画像に含まれていない場合、乳腺の割合の導出精度が低下する懸念があった。なお、ここでいう「脂肪組織画素」とは、脂肪組織のみで構成されていると推定される乳房の部分に対応する画素であるが、例えば、少なくとも乳腺組織よりも脂肪組織の割合が高く、かつ脂肪組織の割合が脂肪組織のみとみなすための予め定められた閾値よりも高い乳房の部分に対応する画素であればよい。
【0060】
乳腺密度が比較的高い乳房の場合、脂肪組織画素が乳房画像に含まれない場合が多い一方、乳腺組織のみで構成されていると推定される乳房の部分によって得られる乳腺組織画素が含まれる場合が多い。なお、ここでいう「乳腺組織画素」とは、乳腺組織のみで構成されていると推定される乳房の部分に対応する画素であるが、例えば、少なくとも脂肪組織よりも乳腺組織の割合が高く、かつ乳腺組織の割合が乳腺組織のみとみなすための予め定められた閾値よりも高い乳房の部分に対応する画素であればよい。
【0061】
そのため、本実施形態のコンソール6では、乳腺密度が比較的高い乳房の場合、脂肪組織画素に替わり、乳腺組織画素を用いて、放射線画像(乳房画像)における乳腺の割合を導出する。本実施形態では、一例として、乳腺組織画素の画素値をGとした場合、下記(5)式が得られるため、下記(5)式を用いて、上記(2)式から乳房の厚みTを消去して得られる下記(6)式により、乳腺の割合Rを導出する。下記(6)式によれば、乳腺組織が最も多く含まれる部分(画素)について、R=1(100%)が、乳腺の割合として導出される。
【0063】
なお、乳房の厚みTが得られる場合、コンソール6は、下記(7)式により、乳腺の割合Rを導出してもよい。
【0065】
なお、上記(7)式では、乳房の厚みTを用いているが、撮影において取得した乳房の厚みには誤差が含まれる場合が多く、この誤差は、圧迫板20の種類、圧迫板20の厚み、及び圧迫圧等に応じて変化する。そのため、上記(7)式よりも、(6)式を用いて、乳腺の割合Rを導出することが好ましい。
【0066】
一方、上記(7)式は、直接領域の到達線量I
0が得られない場合に用いることが好ましい。例えば、直接領域における到達線量が多い場合、放射線Xの照射に応じて画素に蓄積された電荷を読み出した信号が放射線検出器11のダイナミックレンジを超えて、画素値が飽和してしまい、到達線量I
0が得られない場合がある。このような場合は、上記(6)式に代えて、上記(7)式を用いて、乳腺の割合Rを導出することが好ましい。
【0067】
次に、
図6を参照してコンソール6で実行される乳腺割合導出処理を説明する。
図6には、本実施形態のコンソール6の制御部40が実行する、乳腺割合導出処理の流れの一例を表したフローチャートが示されている。なお、一例として、本実施形態の乳腺割合導出処理では、高濃度タイプの乳房を、乳腺密度が比較的高い乳房としている。
【0068】
本実施形態のコンソール6では、一例として、マンモグラフィ装置10において、放射線画像の撮影(
図4のステップS10)が終了した場合に、制御部40のCPU40AがROM40Bに記憶されている乳腺割合導出処理プログラムを実行することにより、
図6に示した乳腺割合導出処理を実行する。乳腺割合導出処理が実行されることにより、制御部40が、本開示の取得部、導出部、及び判定部の一例として機能する。
【0069】
図6に示すように、ステップS200で制御部40は、上記ステップS10の撮影によって得られた放射線画像を取得する。具体的には、制御部40は、放射線画像の画像データ、及び放射線画像の画像データに対応付けられている圧迫板20の高さを表す情報を取得する。なお、放射線画像の取得先は、所望の放射線画像が記憶されている装置等であれば特に限定されず、マンモグラフィ装置10及び自装置内の記憶部42等のいずれであってもよい。
【0070】
次のステップS202で制御部40は乳房のタイプが高濃度タイプであるか否かを判定する。制御部40が乳房のタイプが高濃度タイプであるか否かを判定する方法は特に限定されない。例えば、乳房画像から乳房領域及びスキンラインを検出し、乳房領域の単一組成度合いを表す第1の指標値を算出し、また、乳房画像における、スキンラインから乳房領域内に向かう予め定められた範囲において、脂肪組織と乳腺組織との境界を検出し、境界の強度及びスキンラインからの距離の少なくとも一方に基づいて、乳房領域に対する乳腺の詰まり度合いを表す第2の指標値を算出し、第1の指標値及び第2の指標値に基づいて乳房のタイプを識別する方法が挙げられる。
【0071】
また例えば、制御部40は、特開平11−019077号公報等に記載された技術を用いて判定してもよい。この公報に記載された技術では、放射線画像における乳房画像について、その画素値のヒストグラムを導出し、導出したヒストグラムの形状に基づいて、乳房のタイプを分類する。
【0072】
乳房のタイプが高濃度タイプ、いわゆるデンスブレストの場合、ステップS202の判定が肯定判定となり、ステップS204へ移行する。
【0073】
ステップS204で制御部40は、乳腺組織画素の画素値を用いて、乳腺の割合を導出した後、ステップS208へ移行する。具体的には、制御部40は、放射線画像における乳房画像に含まれる乳腺組織画素を検出し、検出した乳腺組織画素の画素値を用いて、上記(6)式、または上記(7)式を適用して乳腺の割合Rを導出する。なお、上記(6)式及び上記(7)式のいずれを適用するかについては、予め定めておく形態としてもよいし、ユーザの指示等に応じて決定する形態としてもよい。また、直接領域の到達線量I
0が得られているか、乳房の厚みTが得られているかに応じて、適用する式を(6)式と(7)式とで切り替える制御を制御部40が行う形態としてもよい。
【0074】
なお、制御部40が、乳房画像から乳腺組織画素を検出する方法は特に限定されず、例えば、特開2010−253245号公報等に記載された技術を用いて検出すればよい。この公報に記載された技術を用いる場合、まず、放射線画像を、乳房画像と直接領域とに分割し、次いで、乳房画像内における、大胸筋領域を抽出して、乳房画像から大胸筋領域を除く。そして、大胸筋領域が除かれた乳房画像内で最も放射線Xの透過量が少ない画素を、乳腺組織領域画素として検出する。
【0075】
なお、本実施形態では、乳房全体に対する乳腺の割合を導出するが、本実施形態に限定されず、例えば、乳腺密度が高く見える部分、及び乳腺密度が低く見える部分等、局所的な乳腺の割合を導出する形態としてもよい。
【0076】
一方、乳房のタイプが高濃度タイプ、いわゆるデンスブレストではない場合、ステップS202の判定が否定判定となり、ステップS206へ移行する。
【0077】
ステップS206で制御部40は、脂肪組織画素の画素値を用いて、乳腺の割合を導出した後、ステップS208へ移行する。具体的には、制御部40は、放射線画像における乳房画像に含まれる脂肪組織画素を検出し、検出した脂肪組織画素の画素値を用いて、上記(4)式を適用して乳腺の割合Rを導出する。
【0078】
なお、制御部40が、乳房画像から脂肪組織画素を検出する方法は特に限定されず、例えば、上記特開2010−253245号公報等に記載された技術を用いて検出すればよい。この公報に記載された技術を用いる場合、まず、放射線画像を、乳房画像と直接領域とに分割し、次いで、乳房画像内における、大胸筋領域を抽出して、乳房画像から大胸筋領域を除く。そして、大胸筋領域が除かれた乳房画像内で最も放射線Xの透過量が多い画素を、脂肪組織画素として検出する。
【0079】
ステップS208で制御部40は、放射線画像、及び導出した乳腺の割合を表示部46に表示させた後、本乳腺割合導出処理を終了する。
【0080】
なお、制御部40は、上記ステップS204またはS206で導出した乳腺の割合に基づいて分類される予め定められたカテゴリのうちの、いずれに該当するかを判別して、乳腺の割合に加えて表示させるようにしてもよい。この場合における「カテゴリ」とは、上述した、乳房のタイプと同様であってもよいし、異なっていてもよく、その基準は特に限定されない。例えば、乳房全体の乳腺の割合と、局所的な乳腺の割合とを導出する形態とした場合、両者の組合せに応じて分類されるカテゴリであってもよい。
図8には、この場合に制御部40が表示部46に表示させる、放射線画像、乳腺の割合を表す情報、及びカテゴリを表す情報の表示の一例を示す。
図8では、放射線画像50に乳房画像54及び直接領域(直接領域の画像)56が含まれており、乳腺の割合を表す情報60及びカテゴリを表す情報62を、放射線画像50の直接領域56に重ねて表示させた例を示している。
【0081】
以上説明したように、本実施形態のコンソール6では、制御部40が、乳房を撮影した放射線画像を取得する取得部と、取得部が取得した放射線画像における、乳房を透過せずに直接照射された放射線Xの領域である直接領域に対する到達線量と、乳腺組織のみで構成されると推定される乳房の部分によって得られる乳腺組織画素に対する到達線量と、に基づいて、放射線画像における乳房画像の乳腺の割合を導出する導出部と、して機能する。
【0082】
また、本実施形態のコンソール6では、制御部40が、乳房を撮影した放射線画像、及び放射線画像の撮影における、乳房の厚みを表す情報を取得する取得部と、取得部が取得した乳房の厚みTを表す情報と、放射線画像における乳腺組織のみで構成されると推定される乳房の部分によって得られる乳腺組織画素に対する到達線量と、に基づいて、放射線画像における乳房画像の乳腺の割合を導出する導出部と、して機能する。
【0083】
このように、本実施形態のコンソール6は、直接領域に対する到達線量と、乳腺組織画素に対する到達線量に基づいて乳腺の割合を導出する機能を有する。また、本実施形態のコンソール6は、乳房の厚みTを表す情報と、乳腺組織画素に対する到達線量とに基づいて乳腺の割合を導出する機能を有する。
【0084】
乳腺密度が比較的高い乳房は、いわゆるデンスブレストといわれ、脂肪組織画素を含まない可能性が高い。しかしながら、本実施形態のコンソール6によれば、乳腺密度が比較的高い乳房であっても、精度良く乳腺の割合を導出することができる、
【0085】
なお、本実施形態のコンソール6で実行される乳腺割合導出処理では、高濃度タイプの乳房、すなわちデンスブレストと判定された場合(
図6のステップS202でYの場合)に、乳腺の割合の導出に、乳腺組織画素の画素値を用いる形態としたが、ステップS202の判定に替えて、
図9に示した乳腺割合導出処理の他の例におけるステップS203のように、放射線画像(乳房画像)に、脂肪組織画素が含まれているか否かを判定し、含まれていない場合は否定判定となりステップS204へ移行して乳腺組織画素の画素値を用いて乳腺割合を導出し、脂肪組織画素が含まれている場合は肯定判定となりステップS206へ移行して脂肪組織画素の画素値を用いて乳腺割合を導出する形態としてもよい。
【0086】
また、本実施形態のコンソール6で実行される乳腺割合導出処理では、乳腺組織画素の画素値を用いた乳腺割合の導出、及び脂肪組織画素の画素値を用いた乳腺割合の導出の一方を行う形態とした。しかしながら、高濃度タイプの乳房であっても、乳房画像に脂肪組織画素が含まれる場合があり、また、乳腺の割合が低い乳房であっても、乳房画像に乳腺組織画素が含まれる場合があるため、両方の導出を行う形態としてもよい。この場合の乳腺割合導出処理の一例を
図10に示す。
【0087】
図10に示した乳腺割合導出処理では、
図6に示した乳腺割合導出処理のステップS202が行われない。そのため、ステップS200の後に、ステップS204及びS206が順次行われる。また、
図10に示した乳腺割合導出処理では、ステップS206の後に、ステップS207が行われ、ステップS208に代わりステップS208AまたはステップS208Bが行われる点で、
図6に示した乳腺割合導出処理と異なっている。
図10に示したステップS207で制御部40は、ステップS204において導出された乳腺の割合、及びステップS206において導出された乳腺の割合の両方共が、予め定められた閾値以上(両乳腺割合≧閾値)であるか否かを判定する。ここで判定に用いる閾値とは、例えば、デンスブレストであるか否かの判定に用いることが可能な閾値が挙げられる。両方の乳腺の割合が閾値以上の場合、ステップS207の判定が肯定判定となり、ステップS208Aへ移行する。ステップS208Aで制御部40は、放射線画像、及び乳腺組織画素を用いて導出した(ステップS204で導出した)乳腺の割合を表示部46に表示させた後、本乳腺割合導出処理を終了する。一方、少なくとも一方の乳腺の割合が閾値未満の場合、ステップS207の判定が否定判定となり、ステップS208Bへ移行する。ステップS208Bで制御部40は、放射線画像、及び脂肪組織画素を用いて導出した(ステップS206で導出した)乳腺の割合を表示部46に表示させた後、本乳腺割合導出処理を終了する。
【0088】
なお、上記実施形態では、高濃度タイプの乳房を、乳腺密度が比較的高い乳房とした形態について説明したが、乳腺密度が比較的高い乳房をどのような乳房とするかは、上記実施形態に限定されない。例えば、不均一高濃度タイプ、及び高濃度タイプのいずれか一方である乳房を、乳腺密度が比較的高い乳房とする形態としてもよい。また、例えば、米国のBI−RADS(Breast Imaging Reporting and Data System)(登録商標)評価システムによる分類に応じた形態としてもよい。BI−RADSでは、乳腺密度に応じて4つのカテゴリー(a〜d)のいずれかに分類するが、カテゴリーd、またはカテゴリーc及びdに分類される乳房を、乳腺密度が比較的高い乳房とする形態としてもよい。また例えば、いわゆるデンスブレストと定義される乳房を、乳腺密度が比較的高い乳房とする形態としてもよい。なお、デンスブレストと定義される具体的な乳房については、乳房撮影精度管理マニュアル、及びオペレーティングシステムBI−RADS等の予め定められた基準に基づけばよい。具体的に、いずれの基準に基づくかは、本開示の技術が運用される国や、その時点の標準規格等に応じることができる。また、乳腺密度が比較的高い乳房についてどのような乳房とするか、及びデンスブレストの定義をいずれの基準に基づくかについては、予めコンソール6内に設定されていてもよいし、ユーザによる設定が可能とされていてもよい。
【0089】
また、上記実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を実行することにより実行した乳腺割合導出処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(field-programmable gate array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、乳腺割合導出処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0090】
また、上記実施形態では、マンモグラフィ装置10の制御部30に格納されるプログラム、及びコンソール6の制御部40に格納される乳腺割合導出処理プログラム等の各種プログラムは、予め制御部30及び制御部40のROM(30B、40B)に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。各種プログラムは各々、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD−ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、各種プログラムは各々、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0091】
また、上記実施形態における放射線Xは、特に限定されるものではなく、X線やγ線等を適用することができる。
【0092】
その他、上記実施形態で説明した放射線画像撮影システム1、コンソール6、及びマンモグラフィ装置10等の構成及び動作等は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることはいうまでもない。また、上記各実施形態を適宜組み合わせてもよいこともいうまでもない。