(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の中空粒子及びその製造方法、並びに、造孔材、化粧料用粒子及び軽量化材について詳細に説明する。
【0013】
本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0014】
本明細書において、「壁部」及び「シェル」は、中空粒子を形づくる外殻を指し、中空粒子がマイクロカプセルの場合はカプセル壁のことをいう。また、「芯部」又は「コア」は、壁部(シェル)により内包された部分を指す。
また、本明細書において、壁部(シェル)を形成するための材料を「壁材」又は「シェル材」といい、コアに含まれる成分を「コア材」という。
本開示の中空粒子において、「内包」とは、目的物が中空粒子の壁部(シェル)に覆われて閉じ込められている状態を指す。
【0015】
<中空粒子の製造方法>
本開示の中空粒子の製造方法は、水相に、少なくとも多官能イソシアネート化合物と沸点150℃以上の化合物とを含む油相を分散させて分散液を調製する工程(以下、分散工程)と、分散液を加熱処理することで、少なくとも多官能イソシアネート化合物を重合反応させて壁部を形成し、沸点150℃以上の化合物を内包する粒子を得る工程(以下、粒子化工程)と、加熱処理により粒子から沸点150℃以上の化合物を除去することで、単一空間を有する中空粒子を形成する工程(以下、中空粒子形成工程)と、を有している。
【0016】
従来から、中空粒子は様々な分野で使用されており、例えば特開2006−326457号公報のように、マイクロカプセルの形成中又は形成後に、マイクロカプセル中に含まれるトルエン等の揮発性溶媒を気化させることにより中空のマイクロカプセルを得る技術が知られている。
しかしながら、特開2006−326457号公報に記載の技術では、マイクロカプセルの作製にあたり、粒子に内包させる芯成分としてトルエン及びキシレン等の比較的沸点の低い有機溶剤を用いている。沸点の低い有機溶剤を芯成分としてカプセル化しようとすると、カプセル化の過程で有機溶剤が揮発しやすく、カプセル内部で重合反応が進行しやすくなる。そうすると、特開2006−326457号公報に記載の技術では、実際には外郭のみならず内部にもポリマーが生成されることがあり、良好な単一空間の中空構造を安定的に得ることが難しいものと考えられる。
本開示は、上記に鑑み、内包される油相に壁材に加えて沸点が150℃以上の化合物を含ませ、カプセル化して得られた粒子から沸点が150℃以上の化合物を除去することで、内部空間が単一である中空粒子を生産性良く製造することができる。
【0017】
以下、本開示の中空粒子の製造方法における各工程について詳細に説明する。
−分散工程−
分散工程では、水相に、多官能イソシアネート化合物と、沸点が150℃以上の化合物と、を含む油相を分散させて分散液を調製する。
分散液として、乳化剤を用いて乳化した乳化液を調製してもよい。乳化液を調製する場合、沸点が150℃以上の化合物とシェル材である多官能イソシアネート化合物とを少なくとも含む油相を、乳化剤を含む水相に分散させることにより調製することができる。
【0018】
(油相)
本開示における油相は、少なくとも、シェル材である多官能イソシアネート化合物と、沸点が150℃以上の化合物と、を含み、ポリオール及びポリアミンの少なくとも一方を含むことが好ましく、必要に応じて、更に、補助溶媒、添加剤などの他の成分が含まれてもよい。
【0019】
−沸点が150℃以上の化合物−
油相には、沸点が150℃以上の化合物の少なくとも一種が含有される。
後述するように、中空粒子の前駆体である分散粒子が含まれる分散液を加熱処理して「沸点が150℃以上の化合物」を内包する粒子を得た後に更に加熱処理し中空粒子を得る場合に、芯成分中の化合物の沸点が150℃以上の範囲であることで、形成される中空粒子の粒子内部を単一空間の中空構造にすることができる。
【0020】
沸点が150℃以上の化合物の沸点は、単一空間を有する中空構造を形成しやすい点で、後述する粒子化工程で形成される粒子の壁部の壁材である樹脂(好ましくはポリウレタン又はポリウレア)のガラス転移温度(Tg;℃)以上であることが好ましい。
沸点150℃以上の化合物の沸点の上限としては、200℃以下が好ましい。
上記と同様の理由から、好ましい沸点は、160℃〜190℃である。
【0021】
沸点は、1気圧(101325Pa)下における沸点を意味する。
沸点は、定法によって求めることができ、例えばJIS K2254:1998の4項
に規定される常圧法蒸留試験方法によって求めることができる。沸点は、沸点計を用いて測定することもでき、沸点計としてはBPM−2000(東亜ディーケーケー株式会社製、常圧法蒸留試験方式)、DosaTherm300(Dosatec GmbH製)等
を用いることができる。
【0022】
また、沸点が150℃以上の化合物は、分配係数であるClogPの値が4以上であることが好ましい。
CLogPは、値が大きいほど化合物の極性が低いことを示す。
したがって、本開示では、油相に含有される「沸点が150℃以上の化合物」のClogPの値が4以上であると、分散粒子を調製した際に同一相中に存在する多官能イソシアネート化合物が油水界面に移動しやすくなり、多官能イソシアネート化合物の反応は油相中よりむしろ油水界面で進行しやすくなる。結果、壁部の形成が優先的に進行し、形成される粒子の内部は中空構造になりやすい。
【0023】
CLogPの値は、ChemBioDrawUltra13.0を用いて算出される値
である。
【0024】
また、沸点が150℃以上の化合物は、単一空間の中空構造を有する中空粒子を容易に形成する観点から、多官能イソシアネート化合物に対して反応性を持つ官能基を有しない化合物であることが好ましい。ここで、「多官能イソシアネート化合物に対して反応性を持つ官能基」とは、多官能イソシアネート化合物のイソシアネート基と反応し得る基を指し、例えば、水酸基、アミノ基、アルデヒド基、イソシアネート基等が含まれる。また、油相内での重合反応性を有しないことが好ましい観点から、エポキシ基を有しない化合物であることが好ましい。
【0025】
沸点が150℃以上の化合物としては、例えば、香料、パラフィンなどが挙げられる。
【0026】
香料としては、例えば、ミルセン(167℃、ClogP=4.33)、リモネン(175℃、ClogP=4.35)、ベンズアルデヒド(179℃)、フェニルアセトアルデヒド(195℃)、酢酸cis−3−ヘキセニル(169℃)、カプロン酸エチル(167℃)、2,3−エポキシ−3−フェニル酪酸エチル(151℃)などが挙げられる。
【0027】
パラフィンとしては、例えば、ノナン(151℃)、デカン(174℃、ClogP=5.98)、ウンデカン(196℃)などが挙げられる。
【0028】
沸点が150℃以上の化合物の油相中における含有量としては、油相の全質量に対して、10質量%〜95質量%の範囲とすることができ、空隙率を高める観点からは含有量は多いほど好ましく、50質量%以上がより好ましい。中でも、中空粒子とした場合の空隙率と耐変形性との両立の観点から、沸点が150℃〜190℃の化合物の含有量が、油相の全質量に対して、30質量%〜90質量%がより好ましく、50質量%〜90質量%が更に好ましい。
【0029】
−多官能イソシアネート化合物−
油相に多官能イソシアネート化合物を含めることで、ポリウレタン及びポリウレアを含む壁部(シェル)を有する中空粒子を得ることができる。
多官能イソシアネート化合物(以下、「ポリイソシアネート」と称することがある。)には、芳香族ポリイソシアネート及び脂肪族ポリイソシアネート等が含まれ、ポリイソシアネートは、2官能のポリイソシアネート及び3官能以上のポリイソシアネートのいずれを用いてもよい。
【0030】
本開示の中空粒子の製造方法では、後述する粒子化工程において、多官能イソシアネート化合物が重合反応することでポリウレタン及びポリウレアが形成され、壁部の壁材としてポリウレタン又はポリウレアを含む中空粒子が形成されることが好ましい。
ポリウレタン又はポリウレアを含む中空粒子は、壁部の厚みを薄くしても安定であり、環境に対する毒性が少なく、人体への悪影響が抑制されている。
ポリウレタン又はポリウレアは、多官能イソシアネート化合物に由来する構造を有するものとすることができる。
【0031】
本開示の、ポリウレタン又はポリウレアを含む中空粒子には、ポリウレタンウレアを含む中空粒子が含まれる。また、ポリウレタン又はポリウレアを含む中空粒子の中でも、ポリウレタンウレアを含む壁部を有する中空粒子が好ましい。
【0032】
中空粒子の壁部(シェル)におけるポリウレタン及びポリウレアは、芳香族ポリイソシアネートに由来する構造及び脂肪族ポリイソシアネートに由来する構造を有するポリマーであることが好ましく、強度の高い壁部を形成しやすい点で、芳香族ポリイソシアネートに由来する構造を有するポリマーであることがより好ましい。
また、本開示におけるポリウレタン及びポリウレアは、強度の高い壁部を形成しやすい点で、3官能以上のポリイソシアネートに由来する構造を有するポリマーであることが好ましい。
【0033】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン及び1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0034】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート、4−クロロキシリレン−1,3−ジイソシアネート、2−メチルキシリレン−1,3−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルヘキサフルオロプロパンジイソシアネート等が挙げられる。
【0035】
以上では、2官能の脂肪族ポリイソシアネート又は芳香族ポリイソシアネートであるジイソシアネート化合物を例示したが、脂肪族ポリイソシアネート及び芳香族ポリイソシアネートとしてジイソシアネート化合物から類推される3官能のトリイソシアネート化合物及び4官能のテトライソシアネート化合物も含まれる。
また、上記ポリイソシアネートと、エチレングリコール系化合物もしくはビスフェノール系化合物等の2官能アルコール又はフェノールと、の付加物も挙げられる。
【0036】
ポリイソシアネートを用いた縮合体、重合体又は付加体の例としては、上記の2官能ポリイソシアネートの3量体であるビューレット体もしくはイソシアヌレート体、トリメチロールプロパン等のポリオールと2官能ポリイソシアネート化合物の付加体として多官能とした化合物、ベンゼンイソシアネートのホルマリン縮合物、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等の重合性基を有するポリイソシアネート化合物の重合体、リジントリイソシアネート等が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物については「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(岩田敬治編、日刊工業新聞社発行(1987))に記載されている。
【0037】
上記の中でも、中空粒子の壁部(シェル)は、3官能以上のポリイソシアネートの重合物を含む態様が好ましい。
3官能以上のポリイソシアネートとしては、例えば、3官能以上の芳香族ポリイソシアネート化合物、3官能以上の脂肪族ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。3官能以上のポリイソシアネート化合物の例としては、2官能のポリイソシアネート化合物(分子中に2つのポリイソシアネート基を有する化合物)と分子中に3つ以上の活性水素基を有する化合物(3官能以上の例えばポリオール、ポリアミン、又はポリチオール等)とのアダクト体(付加物)として3官能以上としたポリイソシアネート化合物(アダクト型)、2官能のポリイソシアネート化合物の3量体(ビウレット型又はイソシアヌレート型)も好ましい。
3官能以上のポリイソシアネート化合物の具体的な例としては、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、ビウレット体、イソシアヌレート体等であってもよい。
【0038】
アダクト型の3官能以上のポリイソシアネート化合物は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例としては、タケネート(登録商標)D−102、D−103、D−103H、D−103M2、P49−75S、D−110N、D−120N(イソシアネート価=3.5 mmol/g;3官能以上の芳香族イソシアネート化合物)、D−140N、D−160N(以上、三井化学株式会社製)、デスモジュール(登録商標)L75、UL57SP(住化バイエルウレタン株式会社製)、コロネート(登録商標)HL、HX、L(日本ポリウレタン株式会社製)、P301−75E(旭化成株式会社製)、バーノック(登録商標)D−750(DIC株式会社製;3官能以上の芳香族イソシアネート化合物)等が挙げられる。
中でも、アダクト型の3官能以上のポリイソシアネート化合物として、三井化学株式会社製のタケネート(登録商標)D−110N、D−120N、D−140N、D−160N、及びDIC株式会社製のバーノック(登録商標)D−750から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
イソシアヌレート型の3官能以上のポリイソシアネート化合物は、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、タケネート(登録商標)D−127N、D−170N、D−170HN、D−172N、D−177N、D−204(三井化学株式会社製)、スミジュールN3300、デスモジュール(登録商標)N3600、N3900、Z4470BA(住化バイエルウレタン)、コロネート(登録商標)HX、HK(日本ポリウレタン株式会社製)、デュラネート(登録商標)TPA−100、TKA−100、TSA−100、TSS−100、TLA−100、TSE−100(旭化成株式会社製)などが挙げられる。
ビウレット型の3官能以上のポリイソシアネート化合物は、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、タケネート(登録商標)D−165N、NP1100(三井化学株式会社製)、デスモジュール(登録商標)N3200(住化バイエルウレタン)、デュラネート(登録商標)24A−100(旭化成株式会社製)などが挙げられる。
【0039】
多官能イソシアネート化合物の油相中における含有量は、中空粒子の大きさ、空隙率、及び壁部の厚み等に応じて適宜調整することができる。
具体的には、多官能イソシアネート化合物の油相中における含有量としては、油相の全質量に対して、1質量%〜90質量%の範囲とすることができる。また、多官能イソシアネート化合物の含有量は、空隙率を高める観点から、5質量%〜70質量%が好ましく、8質量%〜65質量%がより好ましく、8質量%〜50質量%がより好ましい。
【0040】
−ポリオール、ポリアミン−
油相には、ポリオール及びポリアミンを含有することができる。
ポリオールは、1分子あたり2個以上の水酸基を有する任意の構造を有する分子である。ポリオールは、1分子あたり3個以上の水酸基を有することが好ましく、例えば4個、8個の水酸基を有してよい。
ポリオールは、合成ポリオール又は天然ポリオールのいずれでもよく、直鎖状、分枝状又は環状の構造の分子であってもよい。
【0041】
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール(重合度は2、3、4、5、又は6以上であってよい。)、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(重合度は2、3、4、5、又は6以上であってよい。)、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、グリセリン、ポリグリセリン(重合度は2、3、4、5、又は6以上であってよい。)、ペンタエリスリトール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンなどが挙げられる。
また、ポリオールは、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例としては、株式会社ADEKA社製のアデカポリエーテル(Pシリーズ、BPXシリーズ、Gシリーズ、Tシリーズ、EDPシリーズ、SCシリーズ、SPシリーズ、AMシリーズ、BMシリーズ、CMシリーズ、PRシリーズ、GRシリーズ、FC−450、NS−2400、YT−101、F7−67、#50、F1212−29、YG−108、V14−90、Y65−55、等)などを用いることができる。
【0042】
ポリアミンには、ジアミン,トリアミン,テトラアミン等が含まれ、例えば、トリエタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン等が挙げられる。
また、ポリアミンは、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例としては、東ソー株式会社製のエチレンアミン(例:エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、アミノエチルピぺラジン、ピぺラジン、ポリエイト、等)などを用いることができる。
【0043】
ポリオール及びポリアミンの油相中における総含有量としては、空隙率を高める観点から、油相の全質量に対して、0.1質量%〜20質量%の範囲が好ましく、0.1質量%〜10質量%の範囲がより好ましく、0.1質量%〜5質量%の範囲がより好ましい。
【0044】
後述する粒子化工程において壁部が形成されることで、中空粒子の前駆体である、「沸点が150℃以上の化合物」を内包する粒子が得られる。その後の中空粒子形成工程で更に加熱処理を施した際に粒子内部を中空にしやすくする観点から、粒子の壁部の壁材である樹脂は、ガラス転移温度(Tg;℃)が「沸点が150℃以上の化合物」の沸点以下とされていることが好ましい。
中でも、壁部の樹脂のガラス転移温度(Tg)が、上記と同様の理由から、「沸点が150℃以上の化合物」の沸点より10℃以上低いことが好ましく、30℃以上低いことがより好ましく、50℃以上低いことが更に好ましい。
【0045】
なお、壁部の樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて測定される値である。
【0046】
(水相)
本開示における水相は、少なくとも水系溶媒を含むことが好ましく、少なくとも水系溶媒及び乳化剤を含むことがより好ましい。
【0047】
−水系媒体−
本開示の水系媒体は、水、水及びアルコール等が挙げられ、イオン交換水等を用いることができる。
水系媒体の水相中における含有量としては、水相に油相を乳化分散して得られる乳化液の全質量に対して、20質量%〜80質量%が好ましく、30質量%〜70質量%がより好ましく、40質量%〜60質量%が更に好ましい。
【0048】
−乳化剤−
乳化剤には、分散剤もしくは界面活性剤又はこれらの組み合わせが含まれる。
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール及びその変性物(例えばアニオン変性ポリビニルアルコール)、ポリアクリル酸アミド及びその誘導体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エチレン−アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、アラビアゴム及びアルギン酸ナトリウムなどを挙げることができ、ポリビニルアルコールが好ましい。
【0049】
ポリビニルアルコールとしては、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、株式会社クラレ製のクラレポバール(登録商標)シリーズ(例:3−98、5−98、28−98、60−98、27−96、3−88、5−88、22−88、44−88、95−88、48−80、L−10、25−88KL、32−97KL、3−86SD、LM−20、LM−10HD、105−88KX、200−88KX、等)、日本酢ビ・ポバール株式会社製の顆粒品Jシリーズ(JC−25、JC−33、JC−40、JF−02、JF−03、JF−04、JF−05、JF−10、JF−17、JF−17L、JF−20、JM−17、JM−17L、JM−23、JM−26、JM−33、JT−05、JT−13Y、JP−03、JP−04、JP−05、JP−10、JP−15、JP−18、JP−20、JP−24、JP−33、JP−45、JP−24E、JL−05E、JL−18E、JL−22E、JL−25E、JR−05、JF−17S、JP−05S、JP−18S、JP−20S、JP−24S、等)、Vシリーズ(V、VC−10、VC−13、VC−20、VF−17、VF−20、VM−17、VT−13KY、VP−18、VP−20、等)、日本合成化学社製のゴーセノール(N−300、NL−05、A−300、AL−06R、GH−23、GH−22、GH−20、GH−20R、GH−17R、GM−14R、GM−14L、GL−05、GL−03、KH−20、KH−17、KL−05、KL−03、KP−08R、NK−05R、等)、ゴーセネックス(Z−100、Z−200、Z−205、Z−210、Z−220、Z−300、Z−320、Z−410、K−434、L−3266、CKS−50、T−330H、T−330、T−350、LW−100、LW−200、EG−05、EG−40、WO−320N、等)、デンカ社製のデンカポバール(K−05、K−17E、K−17C、H−12、H−17、H−24、B−05、B−17、B−20、B−24、B−33、K−177、NP−05F、EP−130、U−12、PC−1000、PC−2000、PC−5000F、PC−5500、W−100、D−100、F−3005、B−24N、W−20N、W−24N、MP−10、MP−10R、等)などを用いることができる。
【0050】
分散剤は、シェル材と反応しないこと又は極めて反応し難いことが好ましく、例えばゼラチンなどの分子鎖中に反応性のアミノ基を有するものは、予め反応性を失わせる処理をしておくことが好ましい。
【0051】
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
ノニオン界面活性剤は、特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系化合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系化合物、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル系化合物、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル系化合物、グリセリン脂肪酸部分エステル系化合物、ソルビタン脂肪酸部分エステル系化合物、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル系化合物、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル系化合物、ショ糖脂肪酸部分エステル系化合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル系化合物、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル系化合物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル系化合物、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル系化合物、ポリオキシエチレン化ひまし油系化合物、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル系化合物、脂肪酸ジエタノールアミド系化合物、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン系化合物、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0053】
アニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アビエチン酸塩、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、アルキルポリオキシアルキレンスルホアルキルエーテルの塩、アルケニルポリオキシアルキレンスルホアルキルエーテルの塩などが挙げられる。
【0054】
カチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩(例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド)、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
【0055】
両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン、アミノカルボン酸、スルホベタイン、アミノ硫酸エステル、及びイミタゾリンが挙げられる。
【0056】
乳化剤の濃度は、乳化液の全質量に対して、0質量%超20質量%以下が好ましく、0.005質量%以上10質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上10質量%以下が更に更に好ましく、1質量%以上5質量%以下が更に好ましい。
【0057】
水相は、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤などの他の成分を含有してもよい。他の成分を含有する場合の含有量は、水相の全質量に対して、0質量%超20質量%以下が好ましく、0.1質量%超15質量%以下がより好ましく、1質量%超10質量%以下が更に好ましい。
【0058】
(分散)
分散は、油相を油滴として水相に分散させることをいい、水相に乳化剤(例えば界面活性剤)を含めて乳化させることも含まれる。
分散は、油相と水相との分散に通常用いられる手段、例えば、ホモジナイザー、マントンゴーリー、超音波分散機、ディゾルバー、ケディーミル、又はその他の公知の分散装置を用いて行うことができる。
【0059】
水相に対する油相の混合比率(油相/水相;質量基準)としては、0.1〜1.5が好ましく、0.2〜1.2がより好ましく、0.4〜1.0が更に好ましい。混合比率が0.1〜1.5の範囲内であると、適度の粘度に保持でき、製造適性に優れ、分散液の安定性に優れる。
【0060】
−粒子化工程−
粒子化工程では、分散工程で得た分散液を加熱処理することで、少なくとも上記の多官能イソシアネート化合物を重合反応させて壁部を形成し、「沸点が150℃以上の化合物」を内包する粒子を得る。
ここでの加熱処理により、分散液中における油水界面にて多官能イソシアネート化合物が重合反応して壁部が形成され、芯成分として「沸点が150℃以上の化合物」が内包される。
【0061】
本工程では、少なくとも多官能イソシアネート化合物を重合反応させる。重合は、分散液中の油相に含まれるシェル材を水相との界面で重合させることにより行われる。これにより、壁部(シェル)が形成される。この際、油相を内包する粒子が水相中に分散された分散液(例えば、マイクロカプセルの水分散液)が調製される。
壁部の形成にあたっては、分散液に加熱処理を施す。加熱処理する際の温度は、通常は40℃〜100℃が好ましく、50℃〜80℃がより好ましい。
また、加熱時間は、加熱温度にも依存し、通常は0.5時間〜10時間程度が好ましく、1時間〜5時間程度がより好ましい。加熱温度が高い程、重合時間を短くすることができるが、油水界面での多官能イソシアネートの重合反応を促進することで単一空間の中空構造が形成されやすくなる観点から、低温で長時間重合させることが望ましい。
【0062】
重合中に粒子同士の凝集を防止するため、水性溶液(例えば、水、酢酸水溶液など)を更に加えて粒子同士の衝突確率を下げることが好ましく、充分な攪拌を行うことも好ましい。重合中にあらためて凝集防止用の分散剤を添加してもよい。
更に、必要に応じて、ニグロシン等の荷電調節剤、又はその他任意の補助剤を添加することができる。補助剤は、壁部の形成時又は任意の時点で添加することができる。
【0063】
−中空粒子形成工程−
中空粒子形成工程では、粒子化工程での壁部の形成終了後に、更に加熱処理を行い、粒子化工程で形成された粒子から「沸点が150℃以上の化合物」を除去する。これにより、単一空間の中空構造を有する中空粒子が得られる。
【0064】
本工程では、上記の粒子化工程で調製された分散液(例えばマイクロカプセルの水分散液)に対して加熱処理が行われる。この場合、分散液中の水系媒体を予め除いた後、粒子を加熱処理することが好ましい。
具体的には、分散液に対して乾燥処理を施して水系媒体を粒子から分離して粉体化し、得られた粉体に対して加熱処理を行うことが好ましい。これにより、分散液から取り出された芯成分を内包する粒子(即ち、中空粒子の前駆体粒子)が加熱され、粒子に内包されている「沸点が150℃以上の化合物」が粒子の壁部を通じて効率良く外部へ放出される。これにより、内部中空の粒子を形成することができる。
【0065】
本工程で加熱処理する際の加熱温度は、「沸点が150℃以上の化合物」を効率良く除去しやすい観点から、内包する「沸点が150℃以上の化合物」の沸点以上の温度以上であることが好ましく、170℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることがより好ましい。また、加熱温度の上限は、特に制限されるものではなく、例えば250℃以下とすることができる。
【0066】
加熱処理時の加熱時間は、加熱温度及び粒子の量に依存するため、加熱時における加熱温度等の条件に応じて適宜選択すればよく、例えば、上記の加熱温度の範囲で1時間〜5時間とすることができ、1時間〜3時間としてもよい。
【0067】
本工程での加熱処理は、公知の加熱器を用いて行うことができ、例えば、温風器(ドライヤー)、オーブン、赤外線ヒーター等を用いることができる。
【0068】
また、粒子の加熱処理前に予め分散液中の水系媒体を除く場合、水系媒体の除去は公知の乾燥装置を用いて行ってもよく、例えば、スプレードライヤー等が好適に用いられる。また、濾過装置等で脱水してもよい。
【0069】
中空粒子の一例として、壁部(シェル)と壁部に内包された芯部(コア)とを有するマイクロカプセルが挙げられる。
【0070】
〜中空粒子の性状〜
以下、本開示における中空粒子の諸性状(形状、空隙率、メジアン径、壁厚、単分散)について詳述する。
【0071】
(形状)
中空粒子の形状には、特に制限はなく、用途又は目的等に応じて適宜選択することができ、例えば、球状、棒状、板状等のいずれでもよい。中でも、粒子形状は、球状であることが好ましく、真球であることがより好ましい。
中空粒子の形状は、粒子表面を走査型電子顕微鏡(例えば、日本電子株式会社製のJSM−7800F)により観察することにより確認することができる。
【0072】
(空隙率)
中空粒子における空隙率は、空間を確保する点で大きいほど好ましく、10%〜90%の範囲であることが好ましい。中でも、中空粒子を用いて所望の領域又は材料中に一定以上の空間を確保する観点からは、空隙率は、20%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましい。
【0073】
空隙率は、試料断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することで、全断面積に対する空隙部の面積の比率を算出することで求められる。
【0074】
(メジアン径)
中空粒子の体積標準のメジアン径(D50)としては、0.1μm〜500μmであることが好ましく、空隙量の観点からは、1μm以上であることがより好ましく、視認性の観点からは、200μm以下であることがより好ましい。
【0075】
中空粒子の体積標準のメジアン径は、分散条件を変更すること等により制御することができる。
ここで、中空粒子の体積標準のメジアン径とは、中空粒子全体を体積累計が50%となる粒子径を閾値に2つに分けた場合に、大径側と小径側での粒子の体積の合計が等量となる径をいう。
本開示において、中空粒子の体積標準のメジアン径は、マイクロトラックMT3300EXII(日機装株式会社製)を用いて測定される。
【0076】
(壁厚)
本開示における中空粒子の壁部の厚み(壁厚)としては、0.01μm以上10μm以下の範囲であることが好ましい。中空粒子の壁厚が0.01μm以上であることで、中空粒子が変形し難くなる。中空粒子の壁厚が10μm以下であることで空隙率が高くなるという利点がある。
上記と同様の観点から、中空粒子の壁厚は、より好ましくは0.05μm〜5μmであり、さらに好ましくは0.1μm〜4μmであり、特に好ましくは0.5μm〜4μmである。
【0077】
壁厚は、5個の中空粒子の個々の壁厚(μm)を走査型電子顕微鏡(SEM)により求めて平均した平均値をいう。
具体的には、中空粒子を含有する液を任意の支持体上に塗布し、乾燥させて塗布膜を形成する。得られた塗布膜の断面切片を作製し、その断面をSEMを用いて観察し、任意の5個の中空粒子を選択して、それら個々の中空粒子の断面を観察して壁厚を測定して平均値を算出することにより求められる。
【0078】
(粒子の単分散)
本開示における中空粒子は、単分散性が高いものであることが好ましい。
「単分散性が高い」とは、粒径分布の範囲が狭いこと、即ち、粒径のバラツキが少ないことを意味する。逆に、「単分散性が低い」とは、粒径分布の範囲が広いこと、即ち、粒径のバラツキが多いことを意味する。
より具体的には、中空粒子の単分散性の高低は、CV値(coefficient of variation;変動係数)を用いて表すことができる。ここで、CV値とは、下記式で求められる値である。
CV値(%)=(標準偏差/体積平均粒径)×100
CV値が低いほど中空粒子の単分散性が高く、CV値が高いほど中空粒子の単分散性が低いことが表される。
本開示において、体積平均粒径及び標準偏差は、マイクロトラックMT3300EXII(日機装株式会社製)を用いて算出される。
【0079】
例えば、中空粒子の「単分散性が高い」とは、中空粒子の粒径分布のCV値が、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下、更により好ましくは30%以下、最も好ましくは25%以下であることをいうこともできる。CV値が上記範囲である場合、中空粒子の粒径の単分散性が高いため、中空粒子の取扱い、機能発現の制御などが容易になる。
【0080】
中空粒子の形態は、例えば、中空粒子を分散させて含む中空粒子分散液、中空粒子の粉体等が挙げられ、好ましくは、中空粒子が粉体の形態である。
【0081】
本開示の中空粒子の、壁部(シェル)に内包された芯部(コア)は、空間として存在していることが好ましい。
なお、芯部には、本開示の効果を著しく損なわず、単一空間の中空構造の形成を著しく損なわない範囲で、用途等に応じて、コア材が内包されていてもよい。コア材としては、上記の沸点が150℃以上の化合物以外の溶媒、補助溶媒、添加剤等が挙げられる。
【0082】
(溶媒)
コア材は、沸点が150℃以上の化合物以外の溶媒を含有してもよい。
溶媒の例としては、1,1,2,2,−テトラクロルエタン、キシレン、クロルベンゼン、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、スチレン、テトラクロルエチレン、トルエンなどが挙げられる。
【0083】
(補助溶媒)
コア材として、必要に応じて、中空粒子の壁部を形成する壁材(シェル材)の油相中への溶解性を高めるための油相成分として補助溶媒を含有してもよい。
補助溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン等のケトン系化合物、酢酸エチル等のエステル系化合物、イソプロピルアルコール等のアルコール系化合物等が挙げられる。好ましくは、補助溶媒は、沸点が130℃以下である。補助溶媒には、上記の溶媒は含まれない。
【0084】
(添加剤)
例えば、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、ワックス、臭気抑制剤などの添加剤は、必要に応じて、マイクロカプセルに内包することができる。
【0085】
<造孔材の製造方法>
本開示の造孔材の製造方法は、既述の本開示の中空粒子の製造方法により中空粒子を製造する工程と、製造した中空粒子と原材料とを混合する工程(以下、混合工程)と、を含んでいる。
本開示の中空粒子の製造方法による中空粒子の製造については、既述の通りであり、ここでは詳細な説明を省略する。
【0086】
中空粒子の製造後は、製造した中空粒子と原材料とを混合する混合工程が設けられる。
混合工程では、例えば粉体化して得られた粉末状の中空粒子と、所望とする原材料と、を混合する。原材料としては、セラミック原料、各種樹脂、接着剤、セメント、モルタル、コンクリート等が挙げられる。
混合は、公知の混合方法により容易に行え、例えば、乾式の混合法を用いて行うことが可能である。
【0087】
上記の混合工程を経て得られた混合物である造孔材は、例えば成形し、熱処理を与えて中空粒子を熱分解除去したり、成形後の成型物に中空粒子をそのまま残すことで、成形物中に気孔を形成することができる。
【0088】
造孔材としては、例えば、多孔セラミックを製造するための多孔セラミック用造孔材、多孔樹脂を製造するための多孔樹脂用造孔材、建材用コンクリート、土木用コンクリート(例えば道路面用コンクリート)等が挙げられる。
多孔セラミック用造孔材は、例えば、セラミックスフィルター又はセラミックス人工骨の造孔材として用いることができる。
造孔材は、例えば、土木用コンクリート及び建材用コンクリートの凍結耐久性もしくは凍結融解変化の応力緩和を目的として、例えば特開2016−17026号公報及び特表2009−527451号公報に記載の中空微小球として用いることができる。
また、造孔材は、タイヤのグリップ力向上を目的として、例えば特開2015−137332号公報に記載の中空粒子として用いることができる。また、造孔材は、シリコンウエハなどの研磨シートの研磨レート向上を目的として、例えば特開2006−297497号公報に記載の微小中空エレメントとして用いることができる。また、造孔材は、衝撃吸収フィルムの衝撃吸収性能向上を目的として、例えば特開2016−30394号公報に記載の発泡体の形成体として用いることができる。さらに、造孔材は、接着剤の柔軟性向上を目的として、例えば特開2010−275453号公報に記載の中空粒子として用いることができる。
本開示の造孔材は、他の原材料と混合して用いることもできる。混合する際は、例えば、粉体化して得られた粉末状の中空粒子と所望とする他の原材料とを混合する。他の原材料としては、セラミック原料、各種樹脂、接着剤、セメント、モルタル、コンクリート等が挙げられる。
【0089】
<化粧料用粒子の製造方法>
本開示の化粧料用粒子の製造方法は、既述の本開示の中空粒子の製造方法により中空粒子を製造する工程を含んでおり、吸油性もしくは吸水性である化粧料用粒子が製造される。
本開示の中空粒子の製造方法による中空粒子の製造については、既述の通りであり、ここでは詳細な説明を省略する。
本開示の化粧料用粒子は、ポリウレタン又はポリウレアで形成された壁部を有するので、吸油性もしくは吸水性を有しており、化粧料の用途に適している。
【0090】
<軽量化材の製造方法>
本開示の軽量化材の製造方法は、既述の本開示の中空粒子の製造方法により中空粒子を製造する工程と、製造した中空粒子と原材料とを混合する工程(混合工程)とを含んでおり、任意の工程として熱処理により混合後の混合物中から中空粒子を除去する工程(以下、除去工程)と、を含んでいる。
本開示の中空粒子の製造方法による中空粒子の製造については、既述の通りであり、ここでは詳細な説明を省略する。
【0091】
中空粒子の製造後は、製造した中空粒子と原材料とを混合する混合工程が設けられる。
混合工程では、例えば粉体化して得られた粉末状の中空粒子と、軽量化しようとする所望の原材料と、を混合する。原材料としては、樹脂材料、無機材料等が挙げられる。
混合は、公知の混合方法により容易に行え、例えば、乾式の混合法を用いて行うことが可能である。
【0092】
上記の混合工程の後には、任意の工程として、熱処理により混合工程で得た混合物中から中空粒子を除去する除去工程が設けられる。除去工程において、中空粒子の壁部が例えば焼成除去されることで、中空粒子が混入された混合物(例えば、混合物が成形された成形体)の内部に空隙部が形成される。中空粒子が材料内部に混合されるか、除去工程によって空隙部が形成された結果、空隙部を有して軽量化された材料(例えば、成形物)を製造することができる。軽量化材として用いられる用途としては、上記の造孔材の項に記載された用途が挙げられる。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0094】
なお、本実施例では、中空粒子の一例であるマイクロカプセルを作製した場合を中心に説明する。但し、本開示の中空粒子は、実施例で示すマイクロカプセルに制限されるものではない。
【0095】
また、本実施例において、体積基準のメジアン径は、マイクロトラックMT3300EXII(日機装株式会社製)により測定した。壁部の厚み(壁厚)は、中空粒子を切断した断面を走査型電子顕微鏡JSM−7800F(日本電子株式会社製)により観察して測定した。
沸点は、沸点計(DosaTherm300、Dosatec GmbH製)を用いて
測定した。
Tgは、示差走査型熱量計(DSC−60A、(株)島津製作所社製)を用いて測定した。
CLogPの値は、ChemBioDrawUltra13.0を用いて算出した。
【0096】
(実施例1)
リモネン(沸点175℃;沸点が150℃以上の化合物)50質量部と、壁材として芳香族ポリイソシアネートであるバーノック(登録商標)D−750(DIC株式会社製、トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体;多官能イソシアネート化合物)49.5質量部と、アデカポリエーテルEPD−300(株式会社ADEKA社製、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン;ポリエーテルポリオール)0.5質量部と、を撹拌混合して油相を得た。
次に、クラレポバール(登録商標)PVA−217E(株式会社クラレ製、ポリビニルアルコール(PVA);乳化剤)の5質量%水溶液を用意した。この水溶液100質量部に油相100質量部を加えて、1400rpm(revolutions per minute)の回転数で乳化分散して乳化液(エマルション分散液)を調製した(分散工程)。乳化分散後、調製した乳化液を70℃まで加温することにより油水界面で芳香族ポリイソシアネートを重合反応させて壁部(シェル)を形成し、シェルにより芯(コア)成分としてリモネンを内包したマイクロカプセルの水分散液を得た(粒子化工程)。
得られた水分散液中のマイクロカプセルの体積基準のメジアン径(D50)は、15μmであった。
【0097】
続いて、上記で得られたマイクロカプセルの水分散液を、スプレードライヤー(ミニスプレードライヤーB−290、BUCHI社製)によって粉体化し、更に200℃のドライオーブン内で3時間加熱処理を行い、マイクロカプセル内からリモネンを除去することにより、中空マイクロカプセルを形成した(中空粒子形成工程)。
中空粒子である中空マイクロカプセルは、壁厚が1.5μmであり、体積基準のメジアン径(D50)が15μmであった。また、中空マイクロカプセルのカプセル壁(壁部)のガラス転移温度(Tg)を示差走査型熱量計(DSC−60A、(株)島津製作所社製)を用いて測定したところ、105℃であった。
【0098】
中空マイクロカプセルの表面を走査型電子顕微鏡JSM−7800F(日本電子株式会社製)により観察することにより、中空マイクロカプセルの粒子形状(外部形状)を確認した。
【0099】
また、中空マイクロカプセルの粒子粉体を、PVA−217E(株式会社クラレ製、ポリビニルアルコール(PVA))の5質量%水溶液を接着剤としてコーティングしたPETフィルムに付着させた後、ミクロトーム(EM UC7、Leica社製)で裁断して裁断面を走査型電子顕微鏡JSM−7800F(日本電子株式会社製)により観察し、中空マイクロカプセルの粒子内の状態(内部形状)を確認した。
【0100】
中空マイクロカプセルの粒子を裁断した裁断面を走査型電子顕微鏡JSM−7800F(日本電子株式会社製)により観察し、全裁断面積に対する空隙部の面積の比率を算出することで、中空マイクロカプセルの空隙率(%)を算出した。
【0101】
(実施例2〜実施例9)
実施例1において、油相の調製に用いた多官能ポリイソシアネート、ポリオール、及び有機溶剤の含有量、又は乳化時の撹拌回転数をそれぞれ表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、マイクロカプセル水分散液を調製し、中空マイクロカプセルを形成した後、粒子形状及び粒子内の状態の確認、並びに空隙率の算出を行った。
【0102】
(実施例10)
実施例1において、リモネンをデカンに代えたこと、及び乳化時の撹拌回転数を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、マイクロカプセル水分散液を調製し、中空マイクロカプセルを形成した後、粒子形状及び粒子内の状態の確認、並びに空隙率の算出を行った。
【0103】
(実施例11)
実施例1において、ポリオールをポリアミン(テトラエチレンペンタミン、東ソー株式会社製)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、マイクロカプセル水分散液を調製し、中空マイクロカプセルを形成した後、粒子形状及び粒子内の状態の確認、並びに空隙率の算出を行った。
【0104】
(実施例12)
実施例1において、芳香族ポリイソシアネートであるバーノック(登録商標)D−750を、同量のタケネート(登録商標)D−165N(三井化学株式会社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、マイクロカプセル水分散液を調製し、中空マイクロカプセルを形成した後、粒子形状及び粒子内の状態の確認、並びに空隙率の算出を行った。
【0105】
(比較例1〜2)
実施例1において、沸点が150℃以上の化合物、及び乳化時の撹拌回転数を表1に示ように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、マイクロカプセル水分散液を調製し、更に粉体化し、150℃のドライオーブン内で3時間加熱処理を行った。その後、実施例1と同様の方法にて、粒子形状及び粒子内の状態の確認、並びに空隙率の算出を行った。
【0106】
【表1】
【0107】
表1に示すように、実施例では、単一の中空構造を有する中空粒子を生産性良く作製することができた。
これに対して、実施例で用いた「沸点が150℃以上の化合物」に代えて沸点が100℃を下回る低沸点の有機溶剤を用いた比較例1では、内部中空の粒子を形成することができなかった。また、「沸点が150℃以上の化合物」に代え、沸点が100℃を超えるが150℃に満たない程度の有機溶剤を用いた比較例2では、中空の粒子は得られたものの、単一空間を有する中空構造の粒子を形成することは困難であった。