特許第6911220号(P6911220)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6911220
(24)【登録日】2021年7月9日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】めっき装置、およびめっき処理方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/06 20060101AFI20210715BHJP
   C25D 21/12 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
   C25D17/06 C
   C25D17/06 F
   C25D17/06 H
   C25D21/12 C
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2021-520236(P2021-520236)
(86)(22)【出願日】2020年12月23日
(86)【国際出願番号】JP2020048113
【審査請求日】2021年4月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】富田 正輝
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰之
【審査官】 ▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−316890(JP,A)
【文献】 特開2003−221700(JP,A)
【文献】 国際公開第2001/068952(WO,A1)
【文献】 特開2007−046092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/00−17/28
C25D 21/00−21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液を収容するためのめっき槽と、
前記めっき槽に収容されためっき液に被めっき面を下方に向けた状態で円板形状の基板を保持するための基板ホルダと、
前記基板ホルダを昇降させるための昇降機構と、
前記基板ホルダの昇降方向に直交する方向に前記基板ホルダを移動させるための移動機構と、を含み、
前記移動機構は、
前記基板ホルダを前記昇降方向に直交する第1の方向に移動させるための第1の移動機構と、
前記基板ホルダを前記昇降方向および前記第1の方向に直交する第2の方向に移動させるための第2の移動機構と、を含み、
前記移動機構は、前記めっき槽の内部に配置された円板形状のアノードの軸心と、前記基板ホルダに保持された基板の軸心と、を合わせるように前記基板ホルダを移動させる、
めっき装置。
【請求項2】
前記第1の移動機構は、前記第1の方向に伸びる第1のリニアガイドと、第1のリニアガイド上に設けられた第1の支持台と、前記第1の支持台を前記第1のリニアガイドに沿って移動させるための第1の駆動部材と、を含み、
前記第2の移動機構は、前記第2の方向に伸びる第2のリニアガイドと、第2のリニアガイド上に設けられた第2の支持台と、前記第2の支持台を前記第2のリニアガイドに沿って移動させるための第2の駆動部材と、を含み、
前記第1の移動機構および前記第2の移動機構は、基台上に重ねて配置され、
前記昇降機構は、前記第1の支持台または第2の支持台に取り付けられ前記昇降方向に伸びる昇降リニアガイドと、前記基板ホルダを保持する保持部材を前記昇降リニアガイドに沿って移動させるための昇降駆動部材と、を含む、
請求項に記載のめっき装置。
【請求項3】
めっき処理によって前記基板の前記被めっき面に形成されためっき膜厚を計測するためのセンサをさらに含み、
前記移動機構は、前記センサによって計測されためっき膜厚に基づいて前記基板ホルダを移動させるように構成される、
請求項1または2に記載のめっき装置。
【請求項4】
前記めっき槽、前記基板ホルダ、前記昇降機構、および前記移動機構を含むめっきモジュールを複数含む、
請求項1からのいずれか一項に記載のめっき装置。
【請求項5】
めっき槽に収容されためっき液に被めっき面を下方に向けた状態で円板形状の基板を保持するための基板ホルダを、前記基板ホルダの昇降方向に直交する方向に移動させる移動ステップと、
前記基板ホルダを前記めっき槽内に降下させる降下ステップと、
前記めっき槽内に降下された基板ホルダに保持された基板に対してめっき処理を実行するめっきステップと、を含み、
前記移動ステップは、
前記基板ホルダを前記昇降方向に直交する第1の方向に移動させる第1の移動ステップと、
前記基板ホルダを前記昇降方向および前記第1の方向に直交する第2の方向に移動させる第2の移動ステップと、を含み、
前記移動ステップは、前記めっき槽の内部に配置された円板形状のアノードの軸心と、前記基板ホルダに保持された基板の軸心と、を合わせるように前記基板ホルダを移動させる、
めっき処理方法。
【請求項6】
前記めっきステップによって前記基板の前記被めっき面に形成されためっき膜厚を計測する計測ステップをさらに含み、
前記移動ステップは、前記計測ステップによって計測されためっき膜厚に基づいて前記基板ホルダを移動させる第2の移動ステップを含む、
請求項に記載のめっき処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、めっき装置、およびめっき処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
めっき装置の一例としてカップ式の電解めっき装置が知られている。カップ式の電解めっき装置は、被めっき面を下方に向けて基板ホルダに保持された基板(例えば半導体ウェハ)をめっき液に浸漬させ、基板とアノードとの間に電圧を印加することによって、基板の表面に導電膜を析出させる。
【0003】
カップ式の電解めっき装置では、基板に形成されるめっき膜厚を基板全体で均一にすることが求められている。この点、例えば特許文献1には、アノードと基板との間に電界を遮蔽することができるリング状の遮蔽部材を配置することによって、基板の外縁部近傍における電流密度を低下させ、これにより基板の外縁部周辺に厚いめっき膜が形成されるのを抑制することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−51697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、遮蔽部材を配置するだけでは、基板全体のめっき膜厚を十分に均一化することができないおそれがあるので、めっき膜厚を均一化するための他の手法が求められる。
【0006】
この点、本願の発明者らは、めっき装置のアノードの軸心と基板の軸心との位置関係がめっき膜厚のプロファイルに影響を及ぼすことを見出した。また、アノードの軸心と基板の軸心との位置関係を調整することは、例えば、めっき装置を組み立てるときの軸心合わせにおいても重要である。さらに、基板の種類またはめっき液の種類などが異なる新たなめっきプロセスを開始するときには、そのめっきプロセスにおける基板のめっき膜厚のプロファイルの傾向に基づいて、アノードの軸心と基板の軸心を合わせたり、またはあえて軸心をずらせたりするなどの調整が求められる。アノードの軸心と基板の軸心との位置関係を調整するためには、基板を保持する基板ホルダの位置調整を容易に行うことが重要である。
【0007】
そこで、本願は、基板ホルダの位置調整を容易に行うことを1つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によれば、めっき液を収容するためのめっき槽と、前記めっき槽に収容されためっき液に被めっき面を向けた状態で基板を保持するための基板ホルダと、前記基板ホルダを昇降させるための昇降機構と、前記基板ホルダの昇降方向に直交する方向に前記基板ホルダを移動させるための移動機構と、を含む、めっき装置が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態のめっき装置の全体構成を示す斜視図である。
図2図2は、本実施形態のめっき装置の全体構成を示す平面図である。
図3図3は、本実施形態のめっきモジュールの構成を概略的に示す縦断面図である。
図4図4は、本実施形態のめっきモジュールの構成を概略的に示す斜視図である。
図5図5は、基板ホルダのX方向の位置を調整したときの基板のめっき膜厚プロファイルを示す図である。
図6図6は、本実施形態のめっき処理方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0011】
<めっき装置の全体構成>
図1は、本実施形態のめっき装置の全体構成を示す斜視図である。図2は、本実施形態のめっき装置の全体構成を示す平面図である。図1、2に示すように、めっき装置1000は、ロードポート100、搬送ロボット110、アライナ120、プリウェットモジュール200、プリソークモジュール300、めっきモジュール400、洗浄モジュール500、スピンリンスドライヤ600、搬送装置700、および、制御モジュール800を備える。
【0012】
ロードポート100は、めっき装置1000に図示していないFOUPなどのカセットに収納された基板を搬入したり、めっき装置1000からカセットに基板を搬出するためのモジュールである。本実施形態では4台のロードポート100が水平方向に並べて配置されているが、ロードポート100の数および配置は任意である。搬送ロボット110は、基板を搬送するためのロボットであり、ロードポート100、アライナ120、および搬送装置700の間で基板を受け渡すように構成される。搬送ロボット110および搬送装置700は、搬送ロボット110と搬送装置700との間で基板を受け渡す際には、図示していない仮置き台を介して基板の受け渡しを行うことができる。
【0013】
アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせるためのモジュールである。本実施形態では2台のアライナ120が水平方向に並べて配置されているが、アライナ120の数および配置は任意である。プリウェットモジュール200は、めっき処理前の基板の被めっき面を純水または脱気水などの処理液で濡らすことで、基板表面に形成されたパターン内部の空気を処理液に置換する。プリウェットモジュール200は、めっき時にパターン内部の処理液をめっき液に置換することでパターン内部にめっき液を供給しやすくするプリウェット処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリウェットモジュール200が上下方向に並べて配置されているが、プリウェットモジュール200の数および配置は任意である。
【0014】
プリソークモジュール300は、例えばめっき処理前の基板の被めっき面に形成したシード層表面等に存在する電気抵抗の大きい酸化膜を硫酸や塩酸などの処理液でエッチング除去してめっき下地表面を洗浄または活性化するプリソーク処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリソークモジュール300が上下方向に並べて配置されているが、プリソークモジュール300の数および配置は任意である。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。本実施形態では、上下方向に3台かつ水平方向に4台並べて配置された12台のめっきモジュール400のセットが2つあり、合計24台のめっきモジュール400が設けられているが、めっきモジュール400の数および配置は任意である。
【0015】
洗浄モジュール500は、めっき処理後の基板に残るめっき液等を除去するために基板に洗浄処理を施すように構成される。本実施形態では2台の洗浄モジュール500が上下方向に並べて配置されているが、洗浄モジュール500の数および配置は任意である。スピンリンスドライヤ600は、洗浄処理後の基板を高速回転させて乾燥させるためのモジュールである。本実施形態では2台のスピンリンスドライヤが上下方向に並べて配置されているが、スピンリンスドライヤの数および配置は任意である。搬送装置700は、めっき装置1000内の複数のモジュール間で基板を搬送するための装置である。制御モジュール800は、めっき装置1000の複数のモジュールを制御するように構成され、例えばオペレータとの間の入出力インターフェースを備える一般的なコンピュータまたは専用コンピュータから構成することができる。
【0016】
めっき装置1000による一連のめっき処理の一例を説明する。まず、ロードポート100にカセットに収納された基板が搬入される。続いて、搬送ロボット110は、ロードポート100のカセットから基板を取り出し、アライナ120に基板を搬送する。アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。搬送ロボット110は、アライナ120で方向を合わせた基板を搬送装置700へ受け渡す。
【0017】
搬送装置700は、搬送ロボット110から受け取った基板をプリウェットモジュール200へ搬送する。プリウェットモジュール200は、基板にプリウェット処理を施す。搬送装置700は、プリウェット処理が施された基板をプリソークモジュール300へ搬送する。プリソークモジュール300は、基板にプリソーク処理を施す。搬送装置700は、プリソーク処理が施された基板をめっきモジュール400へ搬送する。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。
【0018】
搬送装置700は、めっき処理が施された基板を洗浄モジュール500へ搬送する。洗浄モジュール500は、基板に洗浄処理を施す。搬送装置700は、洗浄処理が施された基板をスピンリンスドライヤ600へ搬送する。スピンリンスドライヤ600は、基板に乾燥処理を施す。搬送装置700は、乾燥処理が施された基板を搬送ロボット110へ受け渡す。搬送ロボット110は、搬送装置700から受け取った基板をロードポート100のカセットへ搬送する。最後に、ロードポート100から基板を収納したカセットが搬出される。
【0019】
<めっきモジュールの構成>
次に、めっきモジュール400の構成を説明する。本実施形態における24台のめっきモジュール400は同一の構成であるので、1台のめっきモジュール400のみを説明する。図3は、本実施形態のめっきモジュールの構成を概略的に示す縦断面図である。図3に示すように、めっきモジュール400は、めっき液を収容するためのめっき槽410を備える。めっきモジュール400は、めっき槽410の内部を上下方向に隔てるメンブレン420を備える。めっき槽410の内部はメンブレン420によってカソード領域422とアノード領域424に仕切られる。カソード領域422とアノード領域424にはそれぞれめっき液が充填される。アノード領域424のめっき槽410の底面にはアノード430が設けられる。カソード領域422にはメンブレン420に対向して抵抗体450が配置される。抵抗体450は、基板Wfの被めっき面Wf−aにおけるめっき処理の均一化を図るための部材であり、多数の孔が形成された板状部材によって構成される。めっきモジュール400は、抵抗体450の上部に、めっき液を攪拌するための図示していないパドルを含んでいてもよい。また、めっきモジュール400は、めっき処理によって基板Wfの被めっき面Wf−aに形成されためっき膜厚を計測するためのセンサ455を備える。本実施形態では、センサ455は、抵抗体450の上面の中央に配置されるが、これに限らず、センサ455の配置場所は任意である。
【0020】
また、めっきモジュール400は、被めっき面Wf−aを下方に向けた状態で基板Wfを保持するための基板ホルダ440を備える。基板ホルダ440は、図示していない電源から基板Wfに給電するための給電接点を備える。基板ホルダ440の上面にはシャフト442が固定されている。シャフト442には、基板ホルダ440を保持するための保持部材448が取り付けられている。保持部材448は、シャフト442を介して基板ホルダ440を保持するための水平保持台444と、水平保持台444を保持するための垂直保持台446と、を含む。垂直保持台446は昇降リニアガイド482に上下方向に移動可能に取り付けられている。
【0021】
めっきモジュール400は、被めっき面Wf−aの中央を垂直に伸びる仮想的な回転軸周りに基板Wfが回転するように基板ホルダ440を回転させるための回転機構460を備える。回転機構460は、例えばモータなどの公知の機構によって実現することができる。本実施形態では、シャフト442にプーリ462が取り付けられており、プーリ462にはベルト464が取り付けられている。回転機構460は、ベルト464およびプーリ462を介してシャフト442を回転させることによって基板ホルダ440を回転させるように構成される。
【0022】
また、めっきモジュール400は、基板ホルダ440を傾斜させるための傾斜機構470を備える。本実施形態では、傾斜機構470は、垂直保持台446に回転軸を介して接続されたシリンダ472と、水平保持台444に回転軸を介して接続されたピストンロッド474と、を含む。傾斜機構470は、シリンダ472によってピストンロッド474を押し引きすることによって基板ホルダ440の角度を調整することができる。傾斜機構470は、上記の構成に限定されず、チルト機構などの公知の機構によって実現することができる。
【0023】
めっきモジュール400は、基板ホルダ440をZ軸(鉛直方向)に沿って昇降させるための昇降機構480を備える。本実施形態では、昇降機構480は、昇降方向に伸びる昇降リニアガイド482と、垂直保持台446を昇降リニアガイド482に沿って上下方向に移動させるための昇降駆動部材484と、を含む。昇降駆動部材484は、例えばモータなどの公知の機構によって実現することができる。昇降機構480は、垂直保持台446を昇降リニアガイド482に沿って上下方向に移動させることによって基板ホルダ440を昇降させるように構成される。めっきモジュール400は、昇降機構480を用いて基板Wfをカソード領域422のめっき液に浸漬し、アノード430と基板Wfとの間に電圧を印加することによって、基板Wfの被めっき面Wf−aにめっき処理を施すように構成される。
【0024】
めっきモジュール400は、基板ホルダ440の昇降方向に直交する方向に基板ホルダ440を移動させるための移動機構490を備える。以下、移動機構490について説明する。図4は、本実施形態のめっきモジュールの構成を概略的に示す斜視図である。図4においては図示の明瞭化のために、回転機構460、傾斜機構470、および昇降機構480などを省略している。
【0025】
図4に示すように、移動機構490は、基板ホルダ440を昇降方向(Z軸方向)に直交する第1の方向(Y軸方向)に移動させるための第1の移動機構490−1と、基板ホルダ440を昇降方向および第1の方向に直交する第2の方向(X軸方向)に移動させるための第2の移動機構490−2と、を備える。
【0026】
第1の移動機構490−1は、第1の方向に伸びる第1のリニアガイド492と、第1のリニアガイド492上に設けられた第1の支持台493と、第1の支持台493を第1のリニアガイド492に沿って移動させるための第1の駆動部材491と、を含む。第2の移動機構490−2は、第2の方向に伸びる第2のリニアガイド496と、第2のリニアガイド496上に設けられた第2の支持台497と、第2の支持台497を第2のリニアガイド496に沿って移動させるための第2の駆動部材495と、を含む。第1の移動機構490−1および第2の移動機構490−2は、例えば直動ガイドなどの公知の機構によって実現することができる。
【0027】
第1の移動機構490−1および第2の移動機構490−2は、基台494上に重ねて配置される。本実施形態では、基台494上に第1の移動機構490−1が配置され、第1の移動機構490−1上に第2の移動機構490−2が配置されている。昇降リニアガイド482は、第2の支持台497上に固定される。なお、第1の移動機構490−1と第2の移動機構490−2の配置は入れ替えてもよい。第1の移動機構490−1と第2の移動機構490−2のいずれか一方のみを設けてもよい。回転機構460、傾斜機構470、昇降機構480、および移動機構490は、制御モジュール800を介して制御することができる。
【0028】
本実施形態のめっきモジュール400は、移動機構490を備えているため、基板ホルダ440の昇降方向(Z軸方向)に直交する方向(X軸方向およびY軸方向)に基板ホルダ440を容易に移動させることができる。したがって、めっきモジュール400は、基板ホルダ440の位置調整を容易に行うことができる。例えば、めっきモジュール400は大型の装置であり、部品点数も多いため、各部品の公差および組み立て公差により、めっきモジュール400設置時に、基板ホルダ440(基板ホルダ440に保持される基板Wf)の軸心と、アノード430の軸心と、を位置合わせするのに困難が伴う。この点、本実施形態のめっきモジュール400によれば、移動機構490は、アノード430の軸心と、基板ホルダ440に保持された基板Wfの軸心と、を合わせるように基板ホルダ440を移動させることができる。例えば制御モジュール800に含まれる入力インターフェースを介して基板ホルダ440をX軸方向およびY軸方向に移動させることができる。したがって、本実施形態のめっきモジュール400は、めっき膜厚の基板全体の均一性を担保するために、容易に軸心合わせを行うことができる。
【0029】
特に、本実施形態のめっき装置1000のように、複数(24台)のめっきモジュール400を含んでいる場合、各めっきモジュール400について基板ホルダ440とアノード430の軸心合わせを行うには多大な労力がかかる。この点、本実施形態のように移動機構490を備えていれば、複数のめっきモジュール400について容易に軸心合わせを行うことができる。
【0030】
また、本実施形態のめっきモジュール400の移動機構490は、センサ455によって計測されためっき膜厚に基づいて基板ホルダ440を移動させるように構成することができる。すなわち、基板Wfのめっき膜厚の均一性を向上させることを目的として、例えば基板Wfの外縁部の膜厚を微調整するために、アノード430と基板Wfとの間の距離(Z方向の距離)を調整することは知られていた。しかしながら、アノード430と基板Wfとの間の距離を離すと、基板とパドルとの距離も大きくなり、被めっき面Wf−a近傍のめっき液の撹拌効率が落ちることが懸念される。これに対して、本願の発明者らは、アノード430の軸心と基板Wfの軸心との位置関係がめっき膜厚のプロファイルに影響を及ぼすことを見出した。
【0031】
図5は、基板ホルダのX方向の位置を調整したときの基板のめっき膜厚プロファイルを示す図である。図5において、横軸は基板Wfの半径(mm)であり、縦軸はめっき膜厚(任意単位)である。図5は、基板Wfの軸心とアノード430の軸心とを位置合わせした場合(X=0)と、基板Wfの軸心をアノード430の軸心に対してX方向にずらせた場合(X=0.2、0.4、0.6、1.0)のめっき膜厚のプロファイルを示している。
【0032】
図5に示すように、基板Wfの軸心をアノード430の軸心に対してX方向にあえてずらせると、基板Wfの膜厚は特に外縁部において変化する。本実施形態では、基板Wfの軸心をアノード430の軸心に対して0.6mmずらしてめっき処理を行うと、基板Wfのめっき膜厚の均一性を向上させることができた。本実施形態によれば、基板ホルダ440の軸心をアノード430の軸心に対して位置調整することができるので、基板Wfとパドルとの距離を離すことなく、つまりめっき液の攪拌効率を落とすことなく、めっき膜厚の均一性を向上させることができる。
【0033】
なお、めっき膜厚の均一性が向上するように初期設定をしたとしても、めっきモジュール400の経年変化、または、めっきプロセスの変更などによって、めっき膜厚の均一性を継続して担保させることは難しい。この場合、メンテナンス作業でめっきモジュール400の再調整作業が必要になる。この点、本実施形態によれば、制御モジュール800を介して基板ホルダ440(基板Wf)側の軸心を調整することができるので、複数のめっきモジュール400の基板ホルダ440の位置をパラメータで管理し、即座に基板ホルダ440の位置を調整することが可能になる。
【0034】
次に、本実施形態のめっき処理方法について説明する。図6は、本実施形態のめっき処理方法を示すフローチャートである。図6のフローチャートは、一例として、めっきモジュール400の設置時の処理を示している。
【0035】
図6に示すように、めっき処理方法は、移動機構490を用いて基板ホルダ440の昇降方向に直交する方向に基板ホルダ440を移動させる(第1の移動ステップ110)。具体的には、第1の移動ステップ110は、めっき槽410の内部に配置されたアノード430の軸心と、基板ホルダ440に保持された基板Wfの軸心と、を合わせるように基板ホルダ440を移動させる。第1の移動ステップ110は、基板ホルダ440を昇降方向(Z軸方向)に直交する第1の方向(X軸方向)に移動させる第1の移動ステップと、基板ホルダ440を昇降方向および第1の方向に直交する第2の方向(Y軸方向)に移動させる第2の移動ステップと、を含む。第1の移動ステップ110は、例えば、オペレータが制御モジュール800の入力インターフェースを介して基板ホルダ440のX軸方向およびY軸方向の移動量を入力することによって実行することができる。第1の移動ステップ110により、基板Wfとアノード430の軸心合わせが完了する。
【0036】
続いて、めっき処理方法は、基板ホルダ440に基板Wfを設置する(ステップ120)。続いて、めっき処理方法は、昇降機構480を用いて基板ホルダ440をめっき槽410内に降下させる(降下ステップ130)。続いて、めっき処理方法は、回転機構460を用いて基板ホルダ440を回転させるとともに、めっき槽410内に降下された基板ホルダ440に保持された基板Wfに対してめっき処理を実行する(めっきステップ140)。
【0037】
続いて、めっき処理方法は、めっきステップ140によって基板Wfの被めっき面Wf−aに形成されためっき膜厚を計測する(計測ステップ150)。計測ステップ150は、センサ455を用いてめっき膜厚を計測することができる。
【0038】
続いて、めっき処理方法は、計測ステップ150によって計測されためっき膜厚に基づいて、移動機構490を用いて基板ホルダ440を移動させる(第2の移動ステップ160)。第2の移動ステップ160は、例えば、基板Wfの軸心をアノード430の軸心に対してX方向および/またはY方向にずらせながら、めっき膜厚の均一性が最も高くなる場所に基板ホルダ440を移動させることができる。
【0039】
続いて、めっき処理方法は、めっき処理を終了すべきか否かを判定する(判定ステップ170)。判定ステップ170は、例えば、めっき処理を開始してから所定の時間が経過したか、または、所定のめっき膜厚が形成されたか、などに基づいて、めっき処理を終了すべきか否かを判定することができる。めっき処理方法は、めっき処理を終了すべきではないと判定したら(判定ステップ170、No)、めっきステップ140に戻って処理を繰り返す。一方、めっき処理方法は、めっき処理を終了すべきと判定したら(判定ステップ170、Yes)、処理を終了する。
【0040】
なお、図6のフローチャートはめっきモジュール400の設置時の処理を示しているので、最初に基板Wfとアノード430の軸心合わせ(第1の移動ステップ110)を実行したが、第1の移動ステップ110は実行されなくてもよい。また、図6のフローチャートは、めっき処理を行いながら基板ホルダ440を移動させる(第2の移動ステップ160)例を示したが、これに限定されない。例えば、めっきモジュール400は、複数枚の基板について、図5に示すように基板Wfの軸心をアノード430の軸心に対して異なる量ずらせてめっき処理を行うことができる。その結果、めっきモジュール400は、複数のめっき膜厚プロファイルを得ることができ、これらを比較することによって、最適な移動量を求めることができる。この場合、めっきモジュール400は、同じめっきプロセスを行う基板に対しては、めっき処理前に、求められた最適な移動量に基づいて、基板ホルダ440を移動させることができる。
【0041】
以上、いくつかの本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【0042】
本願は、一実施形態として、めっき液を収容するためのめっき槽と、前記めっき槽に収容されためっき液に被めっき面を向けた状態で基板を保持するための基板ホルダと、前記基板ホルダを昇降させるための昇降機構と、前記基板ホルダの昇降方向に直交する方向に前記基板ホルダを移動させるための移動機構と、を含む、めっき装置を開示する。
【0043】
さらに、本願は、一実施形態として、前記移動機構は、前記基板ホルダを前記昇降方向に直交する第1の方向に移動させるための第1の移動機構と、前記基板ホルダを前記昇降方向および前記第1の方向に直交する第2の方向に移動させるための第2の移動機構と、を含む、めっき装置を開示する。
【0044】
さらに、本願は、一実施形態として、前記第1の移動機構は、前記第1の方向に伸びる第1のリニアガイドと、第1のリニアガイド上に設けられた第1の支持台と、前記第1の支持台を前記第1のリニアガイドに沿って移動させるための第1の駆動部材と、を含み、前記第2の移動機構は、前記第2の方向に伸びる第2のリニアガイドと、第2のリニアガイド上に設けられた第2の支持台と、前記第2の支持台を前記第2のリニアガイドに沿って移動させるための第2の駆動部材と、を含み、前記第1の移動機構および前記第2の移動機構は、基台上に重ねて配置され、前記昇降機構は、前記第1の支持台または第2の支持台に取り付けられ前記昇降方向に伸びる昇降リニアガイドと、前記基板ホルダを保持する保持部材を前記昇降リニアガイドに沿って移動させるための昇降駆動部材と、を含む、めっき装置を開示する。
【0045】
さらに、本願は、一実施形態として、前記移動機構は、前記めっき槽の内部に配置されたアノードの軸心と、前記基板ホルダに保持された基板の軸心と、を合わせるように前記基板ホルダを移動させる、めっき装置を開示する。
【0046】
さらに、本願は、一実施形態として、めっき処理によって前記基板の前記被めっき面に形成されためっき膜厚を計測するためのセンサをさらに含み、前記移動機構は、前記センサによって計測されためっき膜厚に基づいて前記基板ホルダを移動させるように構成される、めっき装置を開示する。
【0047】
さらに、本願は、一実施形態として、前記めっき槽、前記基板ホルダ、前記昇降機構、および前記移動機構を含むめっきモジュールを複数含む、めっき装置を開示する。
【0048】
さらに、本願は、一実施形態として、めっき槽に収容されためっき液に被めっき面を向けた状態で基板を保持するための基板ホルダを、前記基板ホルダの昇降方向に直交する方向に移動させる移動ステップと、前記基板ホルダを前記めっき槽内に降下させる降下ステップと、前記めっき槽内に降下された基板ホルダに保持された基板に対してめっき処理を実行するめっきステップと、を含む、めっき処理方法を開示する。
【0049】
さらに、本願は、一実施形態として、前記移動ステップは、前記基板ホルダを前記昇降方向に直交する第1の方向に移動させる第1の移動ステップと、前記基板ホルダを前記昇降方向および前記第1の方向に直交する第2の方向に移動させる第2の移動ステップと、を含む、めっき処理方法を開示する。
【0050】
さらに、本願は、一実施形態として、前記移動ステップは、前記めっき槽の内部に配置されたアノードの軸心と、前記基板ホルダに保持された基板の軸心と、を合わせるように前記基板ホルダを移動させる第1の移動ステップを含む、めっき処理方法を開示する。
【0051】
さらに、本願は、一実施形態として、前記めっきステップによって前記基板の前記被めっき面に形成されためっき膜厚を計測する計測ステップをさらに含み、前記移動ステップは、前記計測ステップによって計測されためっき膜厚に基づいて前記基板ホルダを移動させる第2の移動ステップを含む、めっき処理方法を開示する。
【符号の説明】
【0052】
400 めっきモジュール
410 めっき槽
430 アノード
440 基板ホルダ
444 水平保持台
446 垂直保持台
448 保持部材
455 センサ
460 回転機構
470 傾斜機構
480 昇降機構
482 昇降リニアガイド
484 昇降駆動部材
490 移動機構
490−1 第1の移動機構
490−2 第2の移動機構
491 第1の駆動部材
492 第1のリニアガイド
493 第1の支持台
494 基台
495 第2の駆動部材
496 第2のリニアガイド
497 第2の支持台
800 制御モジュール
1000 めっき装置
Wf 基板
Wf−a 被めっき面
【要約】
基板ホルダの位置調整を容易に行う。
めっきモジュール400は、めっき液を収容するためのめっき槽410と、めっき槽410に収容されためっき液に被めっき面Wf−aを向けた状態で基板Wfを保持するための基板ホルダ440と、基板ホルダ440を昇降させるための昇降機構480と、基板ホルダ440の昇降方向に直交する方向に基板ホルダ440を移動させるための移動機構490と、を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6