(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6911283
(24)【登録日】2021年7月12日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物、及びそれを用いた硬質ポリウレタンフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/66 20060101AFI20210715BHJP
C08L 75/08 20060101ALI20210715BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20210715BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20210715BHJP
C08K 5/053 20060101ALI20210715BHJP
C08K 5/05 20060101ALI20210715BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20210715BHJP
E04B 1/80 20060101ALI20210715BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20210715BHJP
【FI】
C08G18/66 074
C08L75/08
C08G18/48 037
C08K3/32
C08K5/053
C08K5/05
C08G18/00 L
C08G18/48 004
E04B1/80 C
C08G101:00
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-104961(P2016-104961)
(22)【出願日】2016年5月26日
(65)【公開番号】特開2017-179320(P2017-179320A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年4月17日
(31)【優先権主張番号】特願2015-107259(P2015-107259)
(32)【優先日】2015年5月27日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-65451(P2016-65451)
(32)【優先日】2016年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森岡 佑介
(72)【発明者】
【氏名】平田 邦生
【審査官】
西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−075860(JP,A)
【文献】
特開2015−004011(JP,A)
【文献】
特開平10−182785(JP,A)
【文献】
特開2005−015713(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/074642(WO,A1)
【文献】
特開2007−197499(JP,A)
【文献】
特開2003−239418(JP,A)
【文献】
特開平09−104781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00−18/87
C08G 71/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低分子量ポリオール(A)、高分子量ポリオール(B)、トリスクロロプロピルホスフェート(C)、水(D)、及び脂肪族アルコール(E)を含有する組成物であって、
低分子量ポリオール(A)が、当量分子量=100〜200となる、アルキレンオキサイドの重合体であるポリエーテルポリオールの1種又は2種以上の組み合わせであり、
高分子量ポリオール(B)が、当量分子量=900〜2200となる、アルキレンオキサイドの重合体であるポリエーテルポリオールの1種又は2種以上の組み合わせであり、且つ
当該組成物中に、低分子量ポリオール(A)を40〜70重量%、高分子量ポリオール(B)を3〜20重量%、トリスクロロプロピルホスフェート(C)を10〜30重量%、及び水(D)を5〜12重量%含有し、
脂肪族アルコール(E)が、炭素数6〜14の第1級モノアルコールであり、且つ
当該組成物中に2〜10重量%含有すること、
を特徴とする硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項2】
硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物中に、低分子量ポリオール(A)を50〜60重量%、高分子量ポリオール(B)を15〜18重量%、トリスクロロプロピルホスフェート(C)を12〜16重量%、及び水(D)を8〜10重量%含有すること、
を特徴とする請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物が、低分子量ポリオール(A)、高分子量ポリオール(B)、脂肪族アルコール(E)、トリスクロロプロピルホスフェート(C)、及び水(D)を含有し、
低分子量ポリオール(A)が、当量分子量=120〜200となるアルキレンオキサイドの重合体であるポリエーテルポリオールの1種又は2種以上の組み合わせであり、
高分子量ポリオール(B)が、当量分子量=2000〜2200のアルキレンオキサイドの重合体であるポリエーテルポリオールであり、
脂肪族アルコール(E)が、炭素数6〜14の第1級モノアルコールであり、且つ
当該組成物中に、低分子量ポリオール(A)を50〜70重量%、高分子量ポリオール(B)を3〜8重量%、脂肪族アルコール(E)を5〜10重量%、トリスクロロプロピルホスフェート(C)を10〜30重量%、及び水(D)を5〜12重量%含有すること
を特徴とする硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項4】
高分子量ポリオール(B)のエチレンオキサイドユニットの含有量が3〜20重量%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物と、有機ポリイソシアネートとの反応発泡体である硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項6】
請求項5に記載の硬質ポリウレタンフォームからなる、フォーム密度25kg/m3〜30kg/m3の金属サイディング材。
【請求項7】
請求項5に記載の硬質ポリウレタンフォームからなる、フォーム密度25kg/m3〜30kg/m3の屋根材。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物と有機ポリイソシアネートとを触媒の存在下反応させることを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物と有機ポリイソシアネートとを、触媒の存在下、当該硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物中の活性水素基と、当該有機ポリイソシアネート成分中のNCO基の当量比を60〜130にして反応させることを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物、及びそれを用いた硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から硬質ポリウレタンフォームは、建材関連・家電関連等の断熱材料に使用されている。硬質ポリウレタンフォームの発泡剤としては、クロロフルオロカーボン類が主に使用されていた。しかしながら、クロロフルオロカーボン類の使用は、オゾン層の破壊による環境への悪影響が問題になっている。そしてポリウレタンフォームにとっては、水が有用な発泡剤となった。しかし、発泡剤をクロロフルオロカーボンから水単独に変更することにより与えるフォーム特性への影響は極めて大きく、例えば、各種原料相互の相溶性の低下、液粘度の上昇によるセル荒れ、流れ性の低下による高密度化、断熱性能の低下、特に常温及び高温における寸法安定性能の低下、樹脂骨格等を原因とする脆性の増加、木材、プラスチック、金属等からなる面材との接着強度の低下が例示される。このように、発泡剤として水単独を使用して硬質ポリウレタンフォームを得る場合の欠点は極めて多いが、従来の水発泡硬質フォームの物性改良法としては、一般的にポリイソシアネート成分に異性体を混合する方法(特許文献1参照)、反応触媒の改良(特許文献2参照)、ポリオールの変性の検討等の方法が知られていた。
【0003】
また、寸法安定性の改良手法として、気泡を連通化する手法が挙げられ、連通化技術としては、ポリオール成分に臭素化ポリオール、アミノポリオール等を使用する方法(特許文献3参照)、金型内で外圧を加える方法(特許文献4参照)が知られていた。さらには、例えば、官能基数2〜3.5、水酸基価28〜90mgKOH/g及びポリオキシエチレン単位含有量が5重量%以下であるポリオキシアルキレンポリオールを30〜60重量%含有する方法(特許文献5参照)が知られていた。しかしながら、この方法では、長鎖ポリエーテルポリオールを30重量%以上も使用する必要があり、硬質ポリウレタンフォームの架橋密度の低下から、機械強度などの物性の大幅な低下が引き起こされる恐れがあった。
【0004】
その他の方法として、いわゆる気泡連通化剤を使用する方法がある。例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ミリスチン酸カルシウム等の飽和モノカルボン酸金属塩を使用する方法(特許文献6参照)、連通シリコンを使用する方法(特許文献7参照)が挙げられる。
【0005】
しかしながら、これらの気泡連通化剤は一般に使用されるポリオールとの相溶性が悪く、ポリオール混合物の貯蔵安定性悪化を引き起こす懸念がある。また、十分な連通効果を得るためには、添加量を増やす必要があり、この場合、セルが崩壊し、微細なセル構造を得ることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−300913号公報
【特許文献2】特開平4−298519号公報
【特許文献3】特開平8−20624号公報
【特許文献4】特開平8−59879号公報
【特許文献5】特開平6−25375号公報
【特許文献6】特開昭61−153480号公報
【特許文献7】特開2008−239933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、発泡剤として水のみを使用しても貯蔵安定性に優れるポリオール組成物を提供すること、及び低密度でもフォームの寸法安定性に優れた硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、このような従来の水発泡における問題点を解決するため鋭意研究検討した結果、ポリイソシアネート成分として、有機ポリイソシアネートを用い、ポリオール成分として特定の分子量を有するポリオールを組合せて使用することにより、発泡剤として水を使用しても、ポリオール組成物の貯蔵安定性に優れ、低密度でも優れたフォーム物性を有する硬質ポリウレタンフォームが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下に示す実施形態を含むものである。
【0010】
[1]低分子量ポリオール(A)、
高分子量ポリオール(B)、トリスクロロプロピルホスフェート(C)、及び水(D)を含有する組成物であって、
低分子量ポリオール(A)が、当量分子量=100〜200となる、アルキレンオキサイドの重合体であるポリエーテルポリオールの1種又は2種以上の組み合わせであり、
高分子量ポリオール(B)が、当量分子量=900〜2200となる、アルキレンオキサイドの重合体であるポリエーテルポリオールの1種又は2種以上の組み合わせであり、且つ
当該組成物中に、低分子量ポリオール(A)を40〜70重量%、
高分子量ポリオール(B)を3〜20重量%、トリスクロロプロピルホスフェート(C)を10〜30重量%、及び水(D)を5〜12重量%含有すること、
を特徴とする硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【0011】
[2]硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物中に、低分子量ポリオール(A)を50〜60重量%、
高分子量ポリオール(B)を15〜18重量%、トリスクロロプロピルホスフェート(C)を12〜16重量%、及び水(D)を8〜10重量%含有すること、
を特徴とする上記[1]に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【0012】
[3]上記[1]又は[2]に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物に、さらに脂肪族アルコール(E)を含有し、
脂肪族アルコール(E)が、炭素数6〜14の第1級モノアルコールであり、且つ
当該組成物中に2〜10重量%含有すること、
を特徴とする硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【0013】
[4]上記[3]に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物が、低分子量ポリオール(A)、
高分子量ポリオール(B)、脂肪族アルコール(E)、トリスクロロプロピルホスフェート(C)、及び水(D)を含有し、
低分子量ポリオール(A)が、当量分子量=120〜200となるアルキレンオキサイドの重合体であるポリエーテルポリオールの1種又は2種以上の組み合わせであり、
高分子量ポリオール(B)が、当量分子量=2000〜2200のアルキレンオキサイドの重合体であるポリエーテルポリオールであり、
脂肪族アルコール(E)が、炭素数6〜14の第1級モノアルコールであり、且つ
当該組成物中に、低分子量ポリオール(A)を50〜70重量%、
高分子量ポリオール(B)を3〜8重量%、脂肪族アルコール(E)を5〜10重量%、トリスクロロプロピルホスフェート(C)を10〜30重量%、及び水(D)を5〜12重量%含有すること
を特徴とする硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【0014】
[5]
高分子量ポリオール(B)のエチレンオキサイドユニットの含有量が3〜20重量%であることを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【0015】
[6]上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物と、有機ポリイソシアネートとの反応発泡体である硬質ポリウレタンフォーム。
【0016】
[7]上記[6]に記載の硬質ポリウレタンフォームからなる、フォーム密度25kg/m
3〜30kg/m
3の金属サイディング材。
【0017】
[8]上記[6]に記載の硬質ポリウレタンフォームからなる、フォーム密度25kg/m
3〜30kg/m
3の屋根材。
【0018】
[9]上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物と有機ポリイソシアネートとを触媒の存在下反応させることを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【0019】
[10]上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物と有機ポリイソシアネートとを、触媒の存在下、当該硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物中の活性水素基と、当該有機ポリイソシアネート成分中のNCO基の当量比を60〜130にして反応させることを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物は、発泡剤として水のみを使用したポリオール組成物の貯蔵安定性に優れる。また、それを硬質ポリウレタンフォームの製造方法に用いることで、低密度でも寸法安定性に優れる連続気泡の硬質ポリウレタンフォームを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物は、低分子量ポリオール(A)、
高分子量ポリオール(B)、トリスクロロプロピルホスフェート(C)、及び水(D)を含有し、低分子量ポリオール(A)が、当量分子量=100〜200となるアルキレンオキサイドの重合体であるポリエーテルポリオールの1種又は2種以上の組み合わせであり、
高分子量ポリオール(B)が、当量分子量=900〜2200のアルキレンオキサイドの重合体であるポリエーテルポリオールであり、且つ当該組成物中に、低分子量ポリオール(A)を40〜70重量%、
高分子量ポリオール(B)を3〜20重量%、トリスクロロプロピルホスフェート(C)を10〜30重量%、及び水(D)を5〜12重量%含有することをその特徴とする。
【0022】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物に使用する、低分子量ポリオール(A)としては、特に限定するものではないが、例えば、シュークローズ、ソルビトール、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ペンタエリスリトール、グリセリンを開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、アミレンオキサイド、グリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のモノマーの一種又はそれ以上を公知の方法により付加重合することによって得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0023】
低分子量ポリオール(A)の含有量は、硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物中に40〜70重量%であり、40〜50重量%が好ましい。40重量%未満の場合、ポリオール混合物の相溶性が不十分で、ポリオール混合物の相分離、濁りが発生し、70重量%を超える場合、連通化が不十分でフォームの収縮を引き起こす。
【0024】
また、低分子量ポリオール(A)の当量分子量は100〜200である。100未満の場合、ポリオール混合物の相溶性が不十分で、ポリオール混合物の相分離、濁りが発生し、200を超える場合、フォームの連通化が不十分でフォームの収縮を引き起こす。
【0025】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物に使用する
高分子量ポリオール(B)としては、特に限定するものではないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、アミレンオキサイド、グリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のモノマーの一種又はそれ以上を公知の方法により付加重合することによって得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0026】
高分子量ポリオール(B)の含有量は、硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物中に3〜20重量%であり、15〜18重量%が好ましい。3重量%未満の場合連通化が不十分でフォームの収縮を引き起こし、20重量%を超える場合ポリオール混合物の相溶性が不十分で、ポリオール混合物の相分離、濁りが発生する。
【0027】
また、
高分子量ポリオール(B)の当量分子量は900〜2200である。900未満の場合フォームの連通化が不十分でフォームの収縮を引き起こし、2200を超える場合ポリオール混合物の相溶が不十分で、ポリオール混合物の相分離、濁りが発生する。
【0028】
なお、エチレンオキサイドユニットを含有するポリエーテルポリオールも好適に使用することができる。ポリエーテルポリオール中のエチレンオキサイドユニットの含有量としては、好ましくは3〜20重量%、さらに好ましくは6〜15重量%である。
【0029】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物に使用するトリスクロロプロピルホスフェート(C)は、フォームに難燃性能を付与する難燃剤としての機能を主として与えるものである。トリスクロロプロピルホスフェート以外の難燃剤としては、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、テトラキス(2−クロロエチル)エチレンジホスフェート、2,2−ビス(クロロメチル)−1,3−プロパンビス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、2,2−ビス(クロロメチル)トリメチレンビス(ビス(2−クロロエチル)ホスフェート)、ポリオキシアルキレンビスジクロロアルキルホスフェート、含ハロゲン系ホスフェートホスホネートオリゴマーエステル、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、ジメチルメチルホスフォネート、ジエチルフェニルホスフォネート、ジメチルフェニルホスフォネート、レゾルシノールジフェニルホスフェート、亜リン酸エチル、亜リン酸ジエチル、エチルエチレンフォスフェートオリゴマー、芳香族系リン酸オリゴマーエステル(レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジキシレニルホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート等)、リン酸化合物に水酸基を有するいわゆる含リンポリオール等、ハロゲン系リン酸エステル又は非ハロゲン系リン酸エステル及びそのオリゴマー等が挙げられる。
【0030】
これらの難燃剤は、性能に悪影響を及ぼさない範囲で一種又は二種以上を併用することができる。
【0031】
トリスクロロプロピルホスフェート(C)の含有量は、硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物中に10〜30重量%であり、12〜16重量%がより好ましい。10重量%未満では、自己消火性を有するフォームが得られない。30重量%より多い場合、フォーム強度が低下し、収縮を引き起こす。
【0032】
本発明に使用する発泡剤としての水(D)は、反応に影響を与える成分を含むものでなければ、特に制限なく使用することができる。市水、イオン交換水又は蒸留水を好適に使用することができる。水(D)の含有量は5〜12重量%であり、8〜10重量%がより好ましい。5重量%未満の場合フォームの発泡倍率が不十分で、高密度フォームとなる。12重量%を超える場合フォームの発泡倍率が高くなり、フォーム強度が低下する。
【0033】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物には、脂肪族アルコール(E)を併用することができる。脂肪族アルコール(E)としては、炭素数6〜14の第1級モノアルコールが好ましく、例えば、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール等が挙げられる。
【0034】
脂肪族アルコール(E)を併用する場合、2〜10重量%が好ましく、3〜8重量%がさらに好ましい。2重量%未満では、ポリオール混合物の相溶が不十分で、ポリオール混合物の相分離、濁りが発生する恐れがある。10重量%より多い場合、フォーム強度が低下する恐れがある。
【0035】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物は、更に、触媒、整泡剤、その他の添加剤を含有してもよい。
【0036】
触媒としては、特に限定するものではないが、例えば、テトラメチルエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルプロパンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン等の3級アミン類、スタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート等の有機スズ化合物が挙げられる。また、イミダゾール類、例えばトリメチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等が挙げられる、これらは単独又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0037】
整泡剤は、通常の硬質ポリウレタンフォーム用の整泡剤を特に制限することなく使用することができる。例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルなどのポリオキシアルキレン系のもの、オルガノポリシロキサン、シロキサンオキシアルキレンコポリマーなどの有機シリコン系の整泡剤が挙げられる。
【0038】
その他の添加剤として、通常の硬質ポリウレタンフォーム用に用いられる、可塑剤、難燃剤、着色剤等を好適に使用することができる。
【0039】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物と有機ポリイソシアネートとを触媒の存在下反応させることで、硬質ポリウレタンフォームが得られる。
【0040】
有機ポリイソシアネートとしては、特に限定するものではないが、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(以下「ポリメリックMDI」と略す。)が好適である。ポリメリックMDIのNCO含有量は、28.0〜33.0重量%、好ましくは28.5〜32.8重量%で、25℃における粘度が110〜200mPa・s、官能基数は、2.1以上、好ましくは2.2〜3.1である。ポリメリックMDIは、アニリンとホルマリンとの縮合反応によって得られるポリフェニルメタンポリアミンを、ホスゲン化することによって得られる。そのためポリメリックMDIの組成は、縮合時の原料組成や反応条件によって基本的に決定される。
【0041】
有機ポリイソシアネートとしては、具体的には、ホスゲン化後の反応液、又は反応液から溶媒の除去、又は一部のポリメリックMDIを留出分離した缶出液が好ましく、反応条件、分離条件等の異なった数種の混合物であってもよい。本発明に好適に使用されるポリメリックMDIは、ベンゼン環を二個有する二核体とベンゼン環を三個以上有する多核体から成るものである。
【0042】
また、本発明に使用する有機ポリイソシアネートとしては、ポリメリックMDIと他のポリイソシアネートを併用することができる。他のポリイソシアネートとしては、例えばフェニレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、水素添加TDI、水素添加MDI等の脂環族ジイソシアネート等がある。これらは、単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0043】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、本発明の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物中の活性水素基と、有機ポリイソシアネート成分中のNCO基の当量比(以下、「NCOインデックス」と称する。)を60〜130にして反応させることが好ましい。更に好ましくは、80〜110の範囲である。NCOインデックスが下限未満では、フォーム強度が低下し、収縮を引き起こすおそれがあり、上限より高い場合、フォームがもろくなり、面材との十分な接着強度が得られない場合がある。
【0044】
ここで、NCOインデックスは以下の式で表わされる。
NCOインデックス=(NCO基/活性水素基)×100
【0045】
このようにして得られた硬質ポリウレタンフォームは、寸法安定性に優れており、軽量構造材、断熱材としての性能、吸音性等を有しているので、主に建築材料の分野、例えば、屋上断熱用の金属サイディング材として使用できる。構造体としての密度が25kg/m
3〜30kg/m
3の硬質ポリウレタンフォームは、屋根材として好適に使用できる。
【実施例】
【0046】
以下に、実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによりなんら限定されるものではない。
【0047】
[フリーフォーム発泡条件]
有機ポリイソシアネートとポリオール混合物をそれぞれ温度20℃に調節し、攪拌(6000rpm)混合して、フリー発泡により硬質ポリウレタンフォームを得た。フリー密度は、発泡から10分経過後に、サンプルを20cm×20cm×12cmのサイズに切り出し測定した。発泡容器は、型温20℃、サイズ25cm×25cm×25cmの角アルミBOXを用いた。
【0048】
[厚み20mmモールド発泡条件]
有機ポリイソシアネートとポリオール混合物をそれぞれ温度20℃に調節し、攪拌(6000rpm)混合して、厚み20mmの硬質ポリウレタンフォームを得た。発泡容器は、型温50℃に温調した、25cm×50cm×厚み2cmの型枠を用い、脱型時間は2分とした。
【0049】
[物性測定条件]
物性測定は以下に示す方法によって行った。
【0050】
フォーム密度はJIS A 9511によって測定し、単位はkg/m
3である。
湿熱寸法安定性はASTM D 2126によって測定し、相対湿度95%の雰囲気で48時間70℃に保って行い、単位は%である。
高温寸法安定性はASTM D 2126によって測定し、48時間80℃に保って行い、単位は%である。
低温寸法安定性はASTM D 2126によって測定し、48時間−30℃に保って行い、単位は%である。
圧縮強度はJIS A 9511によって測定し、クロスヘッドスピード2mm/分であり、単位はkPaである。
独立気泡率はASTM D 2856によって測定し、単位は%である。
酸素指数はJIS K 7201によって測定した。
寸法安定性は、体積変化率が±2%以内のものを○とした。
酸素指数は、21.0以上のものを自己消火性あり(○)とした。
貯蔵安定性は、保管温度20℃及び5℃でそれぞれ90日間静置し、濁り、分離が無いものを○とした。
フォーム外観は、目視にて評価し、セルが微細で均一なものを○とした。
【0051】
<実施例1〜11>
表1に示すポリオール、添加剤、触媒、発泡剤等を使用して硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物とし、ポリメリックMDI(MR−200 東ソー社製)とを用いて硬質ポリウレタンフォームを製造した。また、表1に示す成分を温度20℃に調節し、攪拌(6000rpm)混合して、フリー発泡により硬質ポリウレタンフォームを得た。
【0052】
厚み20mmのモールド発泡は、表1に示すポリオール、添加剤、触媒、発泡剤等を使用して硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物とし、ポリメリックMDI(MR−200 東ソー社製)とを用いて硬質ポリウレタンフォームを製造した。結果を表2に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
[表1の説明]
f:平均官能基数
OHV:水酸基価(mgKOH/g)
Mn:数平均分子量
低分子量ポリオール(A):
(A)−1:ポリエーテルポリオール(シュークローズ系)、平均官能基数4.3、水酸基価440、数平均分子量550
(A)−2:ポリエーテルポリオール(シュークローズ系)、平均官能基数4.3、水酸基価310、数平均分子量780
(A)−3:ポリエーテルポリオール(グリセリン系)、平均官能基数3、水酸基価245、数平均分子量690
(A)−4:ポリエーテルポリオール(エチレンジアミン系)、平均官能基数4、水酸基価750、数平均分子量300
(A)−5:ポリエーテルポリオール(グリセリン系)、平均官能基数3、水酸基価1120、数平均分子量150
(A)−6:ポリエーテルポリオール(グリセリン系)、平均官能基数3、水酸基価540、数平均分子量311
高分子量ポリオール(B):
(B)−1:ポリエーテルポリオール(プロピレングリコール系)、平均官能基数2、水酸基価28、数平均分子量4000
(B)−2:ポリエーテルポリオール(プロピレングリコール系)、平均官能基数2、水酸基価27、数平均分子量4200
(B)−3:ポリエーテルポリオール(プロピレングリコール系)、平均官能基数2、水酸基価26、数平均分子量4400
(B)−4:ポリエーテルポリオール(グリセリン系)、平均官能基数3、水酸基価56、数平均分子量3000
(B)−5:ポリエーテルポリオール(グリセリン系)、平均官能基数3、水酸基価62、数平均分子量2700、エチレンオキサイドユニット含有量10重量%
オクタノール:別称 2エチルヘキサノール
TCPP:トリスクロロプロピルホスフェート
整泡剤:B−8871 EVONIK社製
触媒(1):TOYOCAT−TE 東ソー社製
触媒(2):TOYOCAT−DT 東ソー社製
ポリイソシアネート:MR−200 東ソー社製
【0055】
【表2】
【0056】
<比較例1〜5>
表3に示すポリオール、添加剤、触媒、発泡剤等を使用してポリオール成分とし、実施例1〜11と同様の操作を行い、硬質ポリウレタンフォームを得た。結果を表4に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
[表3の説明]
f:平均官能基数
OHV:水酸基化(mgKOH/g)
Mn:数平均分子量
高分子量ポリオール(B):
(B)−6:ポリエーテルポリオール(プロピレングリコール系)、平均官能基数2、水酸基価66、数平均分子量1700
【0059】
【表4】
【0060】
実施例1〜11に用いたポリオール混合物は、保管温度20℃、5℃での貯蔵安定性試験で、相分離及び濁りは認められなかった。
【0061】
実施例1〜11で得られた硬質ポリウレタンフォームは、湿熱条件、高温条件、低温条件での寸法安定性に優れ、良好なフォーム物性を有し、屋根材として使用することができる。
【0062】
比較例1は、
高分子量ポリオール(B)−1を(B)−6に変更した以外は、実施例1と同じ条件で行った。フォームは寸法安定性に劣り、収縮が発生したため実用性が無かった。
【0063】
比較例2
高分子量ポリオール(B)−1を(B)−6に変更した以外は、実施例4と同じ条件で行った。フォームは寸法安定性に劣り、収縮が発生したため実用性が無かった。
【0064】
比較例3
高分子量ポリオール(B)−2を(B)−6に変更した以外は、実施例6と同じ条件で行った。フォームは寸法安定性に劣り、収縮が発生したため実用性が無かった。
【0065】
比較例4
高分子量ポリオール(B)−4の添加量を削減した以外は、実施例9と同じ条件で行った。フォームは寸法安定性に劣り、収縮が発生したため実用性が無かった。
【0066】
比較例5
低分子ポリオール(A)−4および(A)−5の比率を変更した以外は、実施例1と同じ条件で行った。このポリオール混合物は、保管温度20℃、5℃での貯蔵安定性試験で、相分離、濁りが発生し、実用性が無かった。